目次
- 1 たいこ叩きのシベリウス交響曲第7番名盤試聴記
- 1.1 タニア・ミラー指揮 ヴィクトリア交響楽団
- 1.2 ロリン・マゼール指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.3 サー・サイモン・ラトル指揮 デンマーク王立管弦楽団
- 1.4 エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.5 サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団
- 1.6 ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団
- 1.7 コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団
- 1.8 マーク・エルダー指揮 ハレ管弦楽団
- 1.9 ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団
- 1.10 サー・エイドリアン・ボールト指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.11 クリストバル・アルフテル指揮 北ドイツ放送交響楽団
たいこ叩きのシベリウス交響曲第7番名盤試聴記
タニア・ミラー指揮 ヴィクトリア交響楽団
★★★★
大きな表現はありませんが、静寂感があって、シベリウスらしい寒さもあります。ゆったりと雄大なトロンボーンの主題。作品自体が分厚い響きを要求しないので、このオケでも良い演奏です。最後のトロンボーンも強すぎずとても良いバランスでした。
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ロリン・マゼール指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★
大きいクレッシェンドで始まる弦の冒頭。とても大きい表現です。ゆったりと柔らかいトロンボーンの第一主題。かなり激しい振幅があり、熱い演奏です。シベリウスの冷たい空気感はありません。次から次から大きな波が押し寄せてくるような豊かな表現です。
シベリウスらしくない熱い演奏で表現も積極的でした。これははこれで良かったと思います。
サー・サイモン・ラトル指揮 デンマーク王立管弦楽団
★★★★
湧き上るような弦。とても良い雰囲気で始まりました。全体の響きに溶け込んだトロンボーン。アンサンブルの精度の高く静寂感があります。終結部のトロンボーンは黄昏を感じさせる演奏でした。壮絶な最後でした。
オーケストラも上手く、雰囲気のある演奏で、終結部のトロンボーンもとても良かったです。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★
かなり速いテンポで表現力豊かです。フルートなどは静寂感があります。てとも強い表現意欲のある演奏で大きなうねりがあります。朗々と歌うトロンボーンですが、他の演奏に比べてかなり強いので、神々しさはありません。とても現実的です。かなり激しく感情の起伏があります。トランペットもトロンボーンもホルンも一般的な演奏に比べるとかなり強く、違う作品を聞いているような感覚になります。速いテンポでグイグイ進みますが、ガリガリと強いエッジの効いた個性的な演奏です。独特の世界観を作り出すムラヴィンスキーもやはり偉大な巨匠だったんだなーと感じさせる演奏です。最後も強烈でした。
バーンスタインとま全く違いますが、ムラヴィンスキーの強烈な個性が表出されたスピード感がありながら、起伏の大きな演奏で、作品のイメージを根底から覆すような演奏でした。
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サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団
★★★★
表現力豊かで、暖かい演奏です。克明に語りかけて来ます。くっきりと浮かぶフルート。ムラヴィンスキーほどではありませんが、かなりはっきりと浮かび上がるトロンボーン。一つ一つの楽器を克明に浮かび上がらせて、鮮明な演奏です。また、激しい起伏もあります。普段聞く演奏よりもかなり激しいです。バルビローリの感情がとても良く表現された演奏です。
バルビローリの感情がとても良く表現された演奏で、起伏も激しい演奏でした。一つ一つの楽器もくっきりと浮かび上がる克明な演奏でした。
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ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団
★★★★
ピンポイントで滑らかな木管。控えめで一抹の不安を感じさせる演奏です。遠くから響いて来る柔らかいトロンボーン。ゆったりとしていて、とても穏やかで荒々しい表現の無い演奏です。
穏やかで、荒々しい表現は無く、一抹の不安や寂しさを感じさせる演奏でした。
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コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団
★★★☆
一楽章、はっきりと克明な動きの冒頭。続いては動きが止まったように静かですが淡白で密度が薄いような感じがします。トロンボーンは他の楽器に埋もれるように遠くから響きます。スケルツォ的な部分では、活発に音は動きますがあまり大きく歌うことは無く、全体の骨格は静止しているようで、がっちりとした枠の中で音楽が作られているようです。オケが僅かですが遠く、俯瞰するような感じで、2番の時にも感じたスケールの小さい演奏のようにも感じます。終結部のトロンボーンも神々しい雰囲気は感じられませんでした。
大きな表現の無い演奏でした。がっちりとした枠組みの中で音楽が演奏されている感じで、オケを俯瞰するような少し遠い音場感で、訴えかけてくる感じがあまりありませんでした。
マーク・エルダー指揮 ハレ管弦楽団
★★★
アンサンブルは乱れます。くっきりと浮かび上がるトロンボーン。それでも抑制的な表現で、作品そのものに語らせるような演奏です。次第に感情がこもってきて熱気を帯びて集中力も高まってきます。このあたりはライブらしい良さですね。最後に表れるトロンボーンの主題にかぶるトランペットが物凄く強烈でした。
前半は抑制的な演奏でしたが、後半は熱気のこもった演奏でした。どんな演奏でも作品が凝縮されたものなので、悪くは感じません。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団
★★★
一楽章、暗闇から湧き上がるような冒頭、とても表現意欲が旺盛です。木管の響きに雑味が混じっているような感じで透明感がありません。ビブラートをかけて明るいトロンボーンの主題。積極的で良く歌うのはこの全集で共通しているところです。生き生きとした表現でやりとりされる木管と弦。この曲では、他の曲ほどの爆演ではありせんがそれでもトランペットがかなり強く入って来たりします。花火が打ち上がるように眩いトランペットとトロンボーン。終結部で再現されるトロンボーンは少し下品でした。
表現意欲が旺盛で、積極的で良く歌う演奏でした。ただ、雑味があったり、表現意欲の旺盛さから下品な表現になったりしたのが、シベリウスの音楽とは異質なものを感じるのでした。
サー・エイドリアン・ボールト指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
★★★
大きくクレッシェンドする弦。かなり積極的で起伏が大きく劇的な表現です。シベリウスの演奏にしてはかなり感情が込められた演奏です。こけだけ激しく積極的な演奏は初めてです。豊かな表情の木管。現実的で神の降臨のようなイメージではないトロンボーンでした。エルダーの演奏のような後からかぶるトランペットが強烈ではありませんでした。
とても積極的な表現で、神を感じさせるよりもとても人間的な演奏でした。
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クリストバル・アルフテル指揮 北ドイツ放送交響楽団
★★☆
エッジの立った低弦。太い響きのフルート。凄く元気の良いトロンボーン。演奏自体は丁寧なのですが、どこかトゲがあるような感じがします。オケはかなり余裕のある演奏をしています。筋肉隆々の神のようなトロンボーンです。バランスも良い演奏ですが、冷たい空気感は無く暖かい演奏でした。
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