目次
- 1 たいこ叩きのシベリウス交響曲第6番名盤試聴記
- 1.1 レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団
- 1.2 エサ=ペッカ・サロネン指揮 スウェーデン放送交響楽団
- 1.3 サー・サイモン・ラトル指揮 バーミンガム市交響楽団
- 1.4 コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団
- 1.5 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.6 サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団
- 1.7 ウラディーミル・アシュケナージ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
- 1.8 トーマス・ダウスゴー指揮 フランス放送フィルハーモニー管弦楽団
- 1.9 ネーメ・ヤルヴィ指揮 エーテボリ交響楽団
- 1.10 ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団
たいこ叩きのシベリウス交響曲第6番名盤試聴記
レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団
★★★★☆
一楽章、清涼感がありますが内面から熱いものが込み上げてくるような序奏主題。感情が込められて、しみじみとした第一主題。アーティキュレーションに敏感に反応する活発な動きの第二主題。再現部のチェロも歌います。とても表情豊かな演奏で積極的に語りかけて来ます。最後はトランペットが大きくクレッシェンドしました。
二楽章、静かに歌う冒頭主題。主要主題も静かに始まります。まとまりのある充実した響きです。
三楽章、くっきりと浮かび上がるほどではありませんが、適度な色彩感を持った第一主題。第二主題のフルートもマットですが、良く歌います。その後も滑らかに活発に動きます。目の覚めるような金管で終わりました。
四楽章、柔らかく美しい主要主題。中間部で、大きな表現で活発な演奏になります。クライマックスでも咆哮することは無く、抑制が効いています。静かに消えて行きました。
美しく良く歌い、充実した響きでまとまりの良い演奏でした。程よい色彩感で内面から湧き出すような表現はとても良かったです。
エサ=ペッカ・サロネン指揮 スウェーデン放送交響楽団
★★★★☆
一楽章、涼やかな序奏主題。色んな楽器の絡みが見事に表現されています。第二主題は躍動的では無く、とても落ち着いた大人の雰囲気です。常に張り詰めた冷たい空気感があってシベリウスらしい演奏です。
二楽章、静寂感のある主題。サロネンは大きな表現はせずに、作品を忠実に演奏しているようです。
三楽章、少し演奏に熱気を帯びてきた感じで温度感が少し上がった気がします。荒々しく金管が演奏します。
四楽章、深みのある響きや、静寂な部分と強烈に迫って来る部分の変化がとても大きく聞き応えがあります。
冷たい空気感のある前半から、次第に熱気を帯びて荒々しく強烈に迫って来る金管などなかなか聞き応えがありました。
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サー・サイモン・ラトル指揮 バーミンガム市交響楽団
★★★★☆
一楽章、とても厳しい寒さを感じさせる序奏主題。アンサンブルの精度も高く静寂感も感じます。第一主題で僅かに温度が上がります。それでもとても厳しい静寂感です。とても上品な第二主題。精緻な演奏です。
二楽章、楽譜に書かれていることを忠実に再現しようとするようなアプローチです。
三楽章、オーケストラはとても上手いです。金管の最後はかなり荒々しく鳴りますがそれでも美しく余裕があります。
四楽章、シベリウスにしては色彩感が濃厚です。この作品の演奏としてはかなり振幅も激しいです。最後もとても冷たい響きで終わります。
イギリスのオケの演奏にしてはかなりシベリウスらしい寒さは伝わりました。振幅の大きな演奏でしたが、楽譜に忠実な演奏で、精緻で美しい演奏でなかなか良いものでした。
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コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団
★★★★
一楽章、雪原の寒さを感じさせる序奏主題。豊かな表情の第一主題。サラッとした美しい響きです。
二楽章、静寂感の中に繊細な弱音が響きます。弱音の美しさが際立っています。
三楽章、しっかりとした強弱の変化のある締まった第一主題。再現部でも表情豊かな弦。
四楽章、中間部へ移行する部分の木管の動きも活発で生き生きとしていました。クライマックスの盛り上がりは控え目でした。
美しく、豊かな表情と活発な演奏でした、ただ、四楽章のクライマックスの盛り上がりがあまりにも控え目だったのが唯一残念な部分でした。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★
一楽章、祈りのようで感情が込められて美しい序奏主題。神聖な雰囲気の第一主題。動きも表情もある第二主題。分厚い響きはこの曲でも変わりません。充実した響きのコーダでした。
二楽章、もっと冷たい雰囲気があっても良いと思うのですが、響きは暖かいです。一体感のある木管のアンサンブルは素晴らしいです。
三楽章、あまり表情の無い第一主題。第二主題もあまり表情がありません。ただ、オケのフルパワーには圧倒されます。
四楽章、感情が込められた感じは無く、あまり大きくは歌わない主要主題。中間部は活発な表現です。咆哮するホルンや激しいティンパニ。分厚いオケの響きと倍管にした金管の圧倒的なパワーはさすがですが、シベリウスにしてはボッテリとし過ぎなのではないかと思います。
美しい演奏ではありましたが、あまり表現が無く、オケの豪華な響きに頼ったような演奏でした。分厚いオケの響きと倍管にした金管の圧倒的なパワーはさすがですが、シベリウスの音楽はもっと冷たく引き締まったものでは無いかと思います。
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団
★★★
一楽章、とても涼やかな序奏主題ですが、録音の古さか繊細さはありません。第一主題も静けさの中にあります。第二主題も清らかで澄んだ雰囲気の演奏です。弦のアンサンブルには緩さも感じます。
二楽章、作品をいつくしむような暖かみが魅力的ですが、オケのたどたどしさは少しマイナス点です。
三楽章、マイルドで暖かい金管。シベリウス独特の冷たい厳しさは感じません。
四楽章、中間部は落ち着いたテンポで切迫感はありません。私には少し重く感じます。この暖かさはバルビローリの暖かさなのか、オケの緩さなのか私には分かりません。
暖かみのあるシベリウスでした。この暖かみを評価する人もいるようですが、私にはバルビローリの暖かさなのか、オケの緩さなのか分かりませんでした。
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ウラディーミル・アシュケナージ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
★★★
一楽章、室内楽のように小さい音場の序奏主題。強い寒さを感じさせることはありません。第一主題も自然に表れます。第二主題も控えめで上品です。
二楽章、ピーンと張り詰めたような空気感は無く、暖かく緩い感じです。
三楽章、動きがあって表現意欲を感じさせる演奏です。金管は空間を突き破るように入って来ます。かなり激しい演奏でした。
四楽章、振幅も大きく、歌も積極的に歌います。しつこくうるさい感じの演奏です。
積極的に表現する演奏で、振幅も大きい演奏でした。こんな演奏もありかな?とは思いますが、でもこの作品にはあまり合っていないような感じがしました。
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トーマス・ダウスゴー指揮 フランス放送フィルハーモニー管弦楽団
★★★
一楽章、会場のノイズは多いですが、神聖な感じのある序奏です。第二主題から少し団子状になってモヤーッとします。録音によるものだと思いますが、騒々しくて、冷たい静寂感はありません。
二楽章、主要主題などはかなり聞かせる演奏でしたが、雑な感じで滑らかさがありません。
三楽章、とても活発に動いて躍動感があって、ダイナミックです。ただ、精緻な感じは無く、大雑把です。かなり激しくなって終わりました。
四楽章、中間部は強弱を明快に付けた独特の表現。ティンパニもかなり強めに入ります。この作品にしては珍しく荒々しい演奏です。強烈な金管!
荒々しい部分の激しさはこの曲の演奏としては珍しいものでしたが、これはこれで良かったのですが、弱音部分の精緻さが無く雑な感じになってしまったのが残念でした。
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ネーメ・ヤルヴィ指揮 エーテボリ交響楽団
★★
一楽章、涼やかな序奏主題。ゆったりと深みのある第一主題。快速で軽快な第二主題。パパヤルヴィの演奏はいちも固さと中央に小じんまりと集まる感じがあるのですが、この演奏でも同じように感じます。
二楽章、ピーンと張り詰めた静寂感も無く、やはり固く伸びやかさや広がりがありません。
三楽章、ベターッとしてあまりリズムが弾みません。
四楽章、中間部のティンパニの一撃もとても軽いです。
パパヤルヴィ独特の固さがあって伸びやかさの無い響きがどうしても好きになれません。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団
★
一楽章、蒸し暑い夜を連想させるようなヴァイオリンの序奏主題。シベリウスの冷たい空気感とはかなり隔たりがあります。この全集に共通する大きな歌の第一主題。第二主題もとても表情豊かです。
二楽章、この楽章も積極的で振幅の大きな音楽です。木管は生き生きとして生命感とぬくもりがあります。
三楽章、とても激しく突進してくる音楽。いつものように予想以上の大きさで入ってくる金管。
四楽章、主要主題もとても良く歌います。ビェーと響き、容赦なく汚い金管。
よく歌う積極的な演奏でしたが、金管の容赦ない下品な響きはシベリウスとは相いれないものだと思います。また、響きの温度が高いのもシベリウスの作品には合っていません。