シベリウス 交響曲第6番

シベリウスの交響曲第6番は、彼が1923年に作曲した作品で、交響曲第5番の劇的な性格とは対照的に、清らかで内省的な美しさを湛えた曲です。シベリウス自身はこの曲を「清水のように純粋な作品」と表現しており、音楽はどこか冷たくも清々しい空気感を持っています。彼の交響曲の中ではあまり華やかさはありませんが、フィンランドの静かな自然や繊細な色彩が見事に描かれており、その詩的な響きが魅力です。

各楽章の特徴

シベリウスの第6交響曲は全4楽章から成り立っています。主に古典的な4楽章形式に沿っているものの、音楽は独特の抑制されたエネルギーと、慎ましい美しさに満ちています。

  1. 第1楽章Allegro molto moderato
    穏やかな導入部から始まり、抑制された旋律が淡々と流れるように進んでいきます。この楽章では、フリギア旋法(民族的な響きが特徴の音階)が使われ、シベリウスの作品に特有の神秘的で古風な雰囲気を生み出しています。弦楽器や木管楽器の柔らかな響きが重なり合い、静謐な世界が広がります。
  2. 第2楽章Allegretto moderato
    この楽章は叙情的でありながらも控えめで、シベリウスらしい繊細な表現が特徴です。淡々とした旋律が続く中で、木管楽器や弦楽器が互いに絡み合い、柔らかな音楽が進行します。シベリウス特有の淡い色彩が漂い、短いながらも心に残る美しい楽章です。
  3. 第3楽章Poco vivace
    ここでは、弦楽器の軽やかなリズムが印象的で、少し速めのテンポで進みます。前の2楽章とは少し異なり、生命力が増した感じで進行し、管楽器の力強い響きが際立ちます。牧歌的で少し踊るようなリズムも含まれ、北欧の静かな自然が目の前に広がるような開放感を感じさせます。
  4. 第4楽章Allegro molto
    最終楽章は、落ち着いた旋律が繰り返される一方で、次第に力強さを増していきます。曲全体を通じて抑えられていた感情が少しずつ開放され、フィナーレでは小さな頂点を迎えますが、大きな劇的展開には至らず、静かな余韻の中で終わります。この構成は、シベリウスの自然観や人生観が反映されたものともいわれ、日常の中に潜む穏やかな美しさを讃えています。

音楽的な特徴と評価

シベリウスの交響曲第6番は、派手な効果音や大規模な盛り上がりを避け、純粋で自然体の美しさが追求された作品です。フリギア旋法や全体的な透明感は、聴く者に静寂と内省の空気を感じさせ、どこか神秘的な世界観に包まれています。この交響曲は、シベリウスの音楽の中でも特に詩的で控えめな美しさが際立っており、「北欧の冬」を連想させるような静かな情景が広がります。

他のシベリウスの交響曲に比べて大規模なドラマ性はありませんが、フィンランドの静寂や自然の美しさ、そして彼の精神的な深みが凝縮されており、聴く者の心を穏やかに浄化してくれる作品です。そのため、シベリウスの交響曲第6番は、内面の静寂や自然の神秘を愛する人々にとって特別な意味を持つ曲として評価されています。

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たいこ叩きのシベリウス交響曲第6番名盤試聴記

パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、凛とした冷たさをもった序奏主題。第一主題も素朴で華美なところはありません。舞うような第二主題。音楽の振幅も自然でゆっくりと波が押し寄せるような感覚です。金管が突き抜けてくることも無く柔らかい美しい響きです。

二楽章、静寂感のある第一主題。どの楽器も生き生きとしていて、有機的です。

三楽章、活発に動きますが、それをさらりと演奏します。初めて金管が突き抜けて来ましたが気持よく鳴り響きました。

四楽章、パステル画のような淡い色彩なのですが、ここぞと言うところでは濃く強いカラーを出します。中間部でのティンパニの一撃も見事な音色と絶妙な強さです。美しく消えて行きました。

柔らかく美しい響きですが、いざと言う時には、強く濃厚な色彩に変化します。とても有機的な音楽がすばらしかったです。

コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、ゆっくりと波が押し寄せるように次から次からと変化し、柔らかく祈るような序奏主題。鮮やかな色彩の第一主題。第二主題も生き生きとして色彩感の豊かな演奏です。第一主題の再現も輪郭がくっきりとしています。軽快に動いて濃厚な色彩はとても素晴らしいです。

二楽章、強い主張はありませんが、色彩感豊かな演奏で作品のありまののを描くことで、作品の美しさを伝えて来る演奏です。細かな動くもとても克明です。

三楽章、第一主題の動きもとても俊敏な動きで活発で生き生きとしています。ハープがとてもはっきりと聞こえます。金管も思い切って入って来ます。

四楽章、ここでも生命感に満ちた主要主題。中間部に入るとさらに生き生きと活動的な動きです。金管やティンパニが遠慮なく気持ちよくズバッと入って来ます。振幅の非常に大きな演奏です。最後は静寂の中に消えて行きました。

すごく振幅が大きく、色彩感も濃厚で切れ味の鋭い演奏でした。自然体の表現の中から作品の美しさを十分に伝える演奏は素晴らしいものでした。

オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★★
一楽章、あまり冷たさはありませんが、生き生きとした豊かな表情が魅力的です。柔らかい第二主題。とても美しいです。最初はかなり抑えた音量で始まりましたが、金管やティンパニなどはとてもダイナミックな演奏です。

二楽章、もの思いにふけるような深い主要主題。この楽章でも自然で豊かな表現です。そして、ダイナミックな金管。

三楽章、生き生きと弾むリズム。美しいですが、強烈な金管。

四楽章、どこを取っても生き生きとした動きがあります。中間部もとても豊かな表情です。最後は静かに人生を閉じるように終わりました。

この作品をこれだけ表情豊かに表現した演奏は初めてです。生き生きとした演奏は素晴らしいものでした。
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シベリウス:交響曲第6番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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