シューベルトの交響曲第8番「未完成」は、ロマン派音楽の名作のひとつとして非常に有名です。シューベルトはこの曲を1822年に作曲しましたが、楽章が2つしか完成していないため「未完成交響曲」として知られています。通常、交響曲は4つの楽章で構成されることが多いですが、この作品は第1楽章と第2楽章のみが残されています。
構成と特徴
- 第1楽章 (アレグロ・モデラート)
最初の楽章は、陰影に富んだメロディーと豊かな感情表現で始まり、特に弦楽器が印象的に使われています。低音の弦楽器が奏でる重厚なメロディが、深い哀愁や孤独感を漂わせ、聴く人に強い印象を与えます。また、明るい旋律が時折現れますが、全体としては悲しげで静かな美しさを湛えた楽章です。 - 第2楽章 (アンダンテ・コン・モート)
第2楽章は第1楽章とは対照的に、穏やかでリリカルな雰囲気が漂います。美しく流れるような旋律が続き、特に木管楽器の柔らかい音色が特徴的です。この楽章は心の平穏や安らぎを感じさせる部分が多く、シューベルトの持つ豊かなメロディーセンスが発揮されています。
「未完成」の謎
シューベルトがこの交響曲を2楽章のみで終えた理由については、さまざまな推測がありますが、真相は不明です。彼が何かの理由で作曲を中断したのか、意図的に未完にしたのか、または第3楽章や第4楽章が失われたのかは解明されていません。
この曲の魅力
「未完成交響曲」は、深い情感や哀愁を含む旋律と美しいハーモニーが特徴で、短いながらも非常に完成度が高い作品とされています。シンプルでありながらも、心に残る豊かなメロディと繊細なアレンジが、聴く人を引き込む魅力があります。そのため、今もなお多くの人々に愛され、頻繁に演奏される名曲となっています。
シューベルトの音楽の魅力を存分に味わえる「未完成交響曲」は、ロマン派音楽の感動を体感するのにぴったりの作品です。
たいこ叩きのシューベルト 交響曲第8番「未完成」名盤試聴記
カルロ・マリア・ジュリーニ/シカゴ交響楽団
★★★★★
一楽章、低域が厚い冒頭、ゆったりとしたテンポで重量感溢れる演奏。ティンパニも深い響きです。
ショルティが指揮をするときとは全く違う響きです。メロディーには歌がありますが、奥ゆかしい表現で上品です。
重厚な響きで、これがあのシカゴsoかと思うほどです。ドイツ系のオーケストラだと言われても疑う人はいないと思います。重厚な響きではありますが、暖かい。
二楽章、美しいホルンのメロディです。この楽章もゆったりと堂々としたテンポでジュリーニの芸風の品のよさがにじみ出ています。
分厚い低音に支えられて、その上に美しいメロディーが乗るので、常に音楽が芳醇な香りに満ちています。
「未完成」が本当に美しい作品であることを十分に感じさせてくれる演奏です。
ショルティファンの方には是非この暖かい音楽を聴いてみて欲しいです。
ショルティ/シカゴsoも相性の良い曲の場合は、それこそ超絶と言える演奏をしますが、こんなに暖かく歌に満ちた音楽をシカゴsoがする。ジュリーニの音楽にも感動しますが、シカゴsoの懐の深さにも感激します。
曲が終わってからもしばらく静けさを楽しみたいようなそんな演奏でした。
すばらしかった。
エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、引き締まった響きと、引き締まった表現が作品の繊細さと美しさを強調するかのようで、とても良い雰囲気を持っています。
静かに上品な音楽。ムラブィンスキーの格調高くよどみの無い音楽が見事に再現されていてすばらしい演奏です。
二楽章、美しい。寒色系の響きが作品の持つ、高貴さをさらに強調しているようです。木管のソロも胸を打つ美しさと表現です。
曲のほとんどの部分が弦と木管で構成されているので、金管が暴れることもありませんので、チャイコフスキー化することもありません。
すばらしい名演でした。
エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、盛大なヒスノイズのなかから低弦の旋律が聞こえます。ムラヴィンスキー特有の緊張感が支配しています。音楽が迫りくる迫力も凄いものがあります。波が押し寄せてくるようなクレッシェンド。トロンボーンの咆哮!凄いです。本番一発にかける集中力の高さには驚かされます。
二楽章、木管が豊かに歌います。ffは思いっきり来るので、びっくりさせられます。全体に締まった音質がかえって音楽が凝縮されているような印象を与えてくれます。高い集中力で渾身の名演だと感じました。
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、コントラバスに重点を置いた重い序奏。豊かな響きを伴って美しく歌う木管の第一主題。ゆったりと伸びやかな第二主題。とても美しい音楽がすごくゆったりと流れて行きます。かなりダイナミックですが、ゆったりとしたテンポが音楽を雄大に聴かせます。カラヤンの音楽を表面だけ磨かれた音楽と言われることがありますが、この時期はカラヤンとベルリンpoの絶頂期で、ベルリンpoもカラヤンの楽器として最高に機能していた頃だと思います。この極限まで磨かれた美しい音楽をどうして否定できるでしょうか。この美しい作品をこれほどまで美しく演奏する指揮者とオケがあったでしょうか。この比類なき美しさは素晴らしいものです。
二楽章、この楽章もゆったりと進みます。美しいヴァイオリン。遅いテンポでも見事に揃ったアンサンブル。テンポを動かしたり、大げさな表現はありません。ひたすら作品の美しさを徹底的に表現した演奏です。この演奏ではカラヤンの存在が消えています。最後は少しずつテンポを落として終わりました。
作品の美しさを追求した演奏は、本当に美しく素晴らしいものでした。
ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団
★★★★★
一楽章、かなりはっきりとした存在感の序奏。柔らかい第一主題。たっぷりと歌う第二主題。躍動感があって生き生きとした表現の演奏です。微妙なテンポの動き。輪郭のはっきりとした克明な表現。テンポを落としてたっぷりと歌う部分はなかなか美しいです。
二楽章、豊かな美しい歌です。テンポを落として濃厚に歌います。作品を慈しむような丁寧で非常に美しい表現です。感情がこもってテンポが自由に、しかも絶妙に動きます。最晩年のヴァントの芸術の高みを感じさせる見事な演奏です。最後は別れを惜しむようにゆっくりとしたテンポで終わりました。
ライヴでありながら、とても美しい演奏でした。また、ライヴならではのテンポの自由な動きも作品への共感が感じられる素晴らしいものでした。別れを惜しむような最後も見事でした。
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クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、とても弱い序奏。感情を込めて歌う第一主題。次第に熱気をはらんで来ます。粘っこい表現でとても濃密な演奏です。生命力を感じさせる生き生きとした表情、正に音に命が宿っているような凄さ。
二楽章、この楽章でも濃密な歌が聞かれます。この濃厚な歌がとても美しい音で演奏されています。ロンドンpoも頑張っています。とても感情がこもって迫りくるような歌です。一音一音に力があって、それぞれに意味がこめられているような、それくらい濃い演奏です。これだけ濃厚な「未完成」を聞いたことがありません。最後は止まりそうなるくらいテンポを落として終わりました。
とても濃厚で感情のこもった演奏でした。音に命が宿っているような生命力を感じさせる演奏は素晴らしいものでした。
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カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1975年東京ライヴ
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一楽章、硬く重い序奏。ゆっくりと潤いのある第一主題。テンポの動きもあります。第二主題もゆったりとしています。この遅いテンポでも弛緩することなく、一体感を保っているのは素晴らしいです。トロンボーンも強く出ます。トゥッティでのエネルギーの発散も凄いです。
二楽章、作為的な部分は全くなく、自然体の演奏ですが、とても美しいです。大きな表現もありませんが、自然に音楽が湧き上がるようなとても心地良い演奏です。天に昇るような最後でした。
とても自然で美しい演奏でした。内面から自然に湧き上がるような音楽はとても素晴らしいものでした。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/シュターツカペレ・ドレスデン
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一楽章、柔らかく大きめの序奏。非常に柔らかくうっとりするような第一主題。リズミカルに歌う第二主題。流れるように進む音楽です。弦のトレモロなど激しいところは激しいです。トロンボーンも気持ちよく吹き鳴らされます。シュターツカペレ・ドレスデンの美しい響きが良く生かされた演奏で、とても心地良い演奏です。
二楽章、ゆっくりとしたテンポのホルン。第一主題もとてもゆっくりです。一歩一歩噛みしめるような歩みです。中間部の木管もとても美しいです。個性の強い演奏ではありませんが、ドイツの伝統に根差した重みのある演奏だと思います。
ゆったりとしたテンポで柔らかく美しい響きの演奏でした。強い個性はありませんが、伝統の重みを感じさせる深い演奏だったと思います。
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トレヴァー・ピノック/ヨーロッパ室内管弦楽団
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一楽章、暗く重い序奏。一転して活動的で歌う第一主題。テンポも速く音も短めです。優雅に舞うような第二主題。トゥッティは重く沈みます。表現の浮き沈みが大きい演奏です。作品が持っている切迫した緊張感はとても良く表現しています。苦しみ悶えるような表現もあります。トランペットが鋭く強く入って来ます。
二楽章、速いテンポで進みます。とても良く歌う演奏です。鋭いトランペット。硬質なティンパニ。テンポも動いて起伏の激しい演奏で感情のこもった表現です。
切迫感や緊張感。苦しみ悶えるような表現もあり、なかなか踏み込んだ表現の演奏で、非常に起伏の激しいものでした。古楽器の指揮者にしては感情表現も十分にあり聞き応えのある演奏でした。
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