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たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記
ロリン・マゼール ニューヨーク・フィルハーモニック
★★★★☆
インターネットでダウンロードした音源です。マゼールに対しては正直あまり良い印象はありません。作為的過ぎる感じを持っているのですが、今回の演奏はどうでしょう。
一楽章、軽い感じの第一主題。木管の旋律の裏でホルンが激しく唸ります。第二主題もあっさりとした表現です。展開部に現れる第二主題はゆったりと演奏されます。クラリネットのソロやホルンは美しい音でゾクッとさせられます。金管が気持ちよく鳴り響きます。フルートソロもヴァイオリンのソロも極上の音を聴かせてくれます。再現部の直前はものすごくテンポを落として克明に刻みました。
フレーズの終わりでritをかけたりして表情豊かに演奏されて行きます。弦のメロディーもかなりテンポをおとしてたっぷりと表現しました。ハープがリズムを刻んでホルンが旋律を演奏する部分は早めのテンポで演奏されています。テンポを落としてしっかりと旋律を聞かせる部分もありました。
二楽章、速めのテンポで演奏されます。透明感のある弦と存在感のある管楽器が美しい演奏を繰り広げます。金管は強く入ってきますので、振幅の広い演奏になっています。音色的に鋭いので、包み込まれるような癒し感はあまり感じられない演奏です。
三楽章、ホールに響き渡るティンパニの一撃!続く木管の表情もとても豊かです。アーティキュレーションにも忠実に演奏しているのか、強弱の変化のとても多い演奏です。それにしてもライヴだとは思えないくらい完成度の高い演奏です。一時期低迷したニューヨーク・フィルですが、かなり力を取り戻してきているのを実感させられます。
四楽章、明るい響きのコラール。太い声の独唱。訴えかけるように幅広い表現の独唱です。
五楽章、冒頭の炸裂も明るい響きで重さがありません。とても鋭く軽い響きです。適度な距離感のバンダ。見事な祈りのコラール。すばらしい!展開部の直前は非常にテンポが遅くなりました。マゼールの面目躍如というところか。その後は普通のテンポに戻ります。打楽器のクレッシェンドももの凄く時間をかけて行いました。
トランペットなどのバンダも適度な距離感です。合唱が入る前はとても神秘的でした。合唱から浮かび上がる独唱。メゾ・ソプラノは表現力抜群でした。独唱が始まると他のパートがスーッと音量を落とすあたりの配慮もすばらしい。波が押し寄せるように次から次へと合唱のパートが変わって歌い続けます。輝かしい頂点です。大太鼓とティンパニのクレッシェンドはとても効果的でした。透明感のある弦楽器と木管のソノリティ、そして鋭く明るく安定感抜群のブラスセクション。マゼールが時に大見得を切る場面もありますが、作品から距離を置いて冷めた表現の部分とマゼール自身が音楽にどっぷりとのめり込み音の洪水の中を泳ぎ回るような部分が混ざった演奏でした。マゼールが表現し切ったすばらしい演奏だったと思います。
ダウンロードした音源でしたが録音も良くお勧めです。
ワレリー・ゲルギエフ ロンドン交響楽団
★★★★☆
一楽章、ゆったりとした弦のトレモロに続く深々とした第一主題。ゆっくりとした足取りで刻まれて行きます。ゲシュトップしたホルンが厳しさを演出します。強烈なティンパニのクレッシェンド。劇的な表現が続きます。すごく積極的な表現で音楽の振幅もすごく広い演奏で圧倒されます。展開部はすごくゆっくりとしたテンポで第二主題が演奏されます。激しさと穏やかさの対比がすごいです。オケの集中力も高く、音が集まってきます。テンポも動きますが不自然さはありません。次第に演奏に引き込まれて行きます。
二楽章、一楽章から一転して穏やかな開始です。激しい表現からふくよかな表現までロンドンsoの実力を思い知らされます。ライブでありながらアンサンブルの乱れも無く、集中力の高い演奏が続いています。
三楽章、速いテンポです。表情豊かな演奏です。シンバルが少し遠いような感じがします。テンポは速いですが、生き生きとした表現でとても良い演奏です。
四楽章、弱めに丁寧に歌い始める独唱。とても感情のこもった歌です。この歌とは対照的に無表情の金管のコラール。
五楽章、全開!容赦なく叩きつけるティンパニ。少し遠いバンダ。ゲルギエフは速目のテンポでグイグイ引っ張って行きます。展開部ではホルン全開ですさまじい響きです。テュッティ全開のパワー感はすごいです。速目のテンポですが、すごく凝縮された濃厚な音楽を聴いている充実感があります。表情豊かな独唱。どのパートも表情豊かです。音楽の抑揚に合わせてテンポも動きます。輝かしいクライマックス!充実した演奏でした。
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ジェイムズ・レヴァイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★☆
一楽章、少し遠目の音場感です。長めのトレモロに続いて第一主題はコントラバスの響きがあまり捉えられていないので、軽い感じがします。第二主題の前は一旦テンポを速めて徐々に遅くなって、第二主題になりました。ブラスセクションの強奏も美しい。小さく定位する美しいヴァイオリン・ソロ。テンポを極端に動かすこともなく、淡々と音楽が流れて行きますが一つ一つの音には細心の注意が払われているようです。作品と誠実に向き合ったような演奏で好感が持てます。
二楽章、速めのテンポであっさりとした開始です。羽毛のように繊細で美しいヴァイオリン。表現は控え目でとても奥ゆかしいです。レヴァインの演奏と言うと、暑苦しいイメージがあったのですが、表現もあっさりとしていて、この演奏はとても涼やかで爽やかです。
三楽章、控え目でマットな響きのティンパニ。続くヴァイオリンや木管も控え目でとても美しい。ひっかかる部分がなく、とても滑らかに音楽が流れて行きます。
四楽章、静かな歌い出し。続く金管のコラールも静かに歌われます。独唱も爽やかで美しい。中間部は少しテンポを上げました。
五楽章、軽い銅鑼の響き。金管も奥まったところから響いてきます。適度な距離で間接音もたっぷりのホルン。続くオーボエはテヌートぎみに演奏しました。第二主題も清楚な感じです。金管のコラールも静かに祈るような美しいものでした。展開部の金管の強奏も、強くは演奏されているのです(ホルンなどはビンビン鳴っています)が、静か?な感じです。展開部の後半あたりから音量感も上がってきました。バンダのトランペットも間接音を伴ってとても美しい響きです。すごく静かに歌い始める合唱。合唱から浮かび上がるソプラノもメゾ・ソプラノも控え目で柔らかい声質でとても美しい。引き込まれるような美しい弱音です。最後は圧倒的な音量感で感動的に曲を閉じました。
弱音の美しさと静かな運び、最後の圧倒的な盛り上がり。レヴァインの見事な統率の名演でした。
小澤征爾/新日本フィルハーモニー交響楽団
★★★★☆
一楽章、勢いのある弦のトレモロ。ゆっくりと確かめるような第一主題。ゆっくれとしたテンポですが、表現は厳しいです。ほとんどテンポを落とさずに第二主題に入りました。展開部に入っても、必要以上に自己主張することは避け、作品のありのままの美しさを表出しようとしているような演奏です。フルートが第二主題を出す前ではかなりテンポを速めて激しい表現でした。再現部の前もかなりテンポを上げて激しい表現をしました。再現部の第二主題は夢見るようなとても美しい演奏でした。強く演奏する音にはかなりのエネルギーを注入するように演奏しています。最後はとても遅いテンポになって終わりました。
二楽章、とても繊細に歌う弦の主題。微妙なテンポの動きや表現など絶妙です。中間部の弦の三連符の刻みなどもとても神経が行き届いた繊細な演奏です。主部が戻ってもヴァイオリンも対旋律で寄り添うチェロもとても繊細です。繊細さのあまり、一楽章で感じられたエネルギー感は影をひそめていますが、表現は尽くしているような感じの演奏です。
三楽章、軽いティンパニ。自然な抑揚の表現です。中間部の金管は余裕をもって吹いています。ひっかかるところもなく自然な流れの演奏です。
四楽章、ゆったりとビブラートを効かせて歌う明るく明瞭な声のアルト独唱。振幅の大きな、感情のこもった独唱です。
五楽章、ここまで抑えてきたエネルギーを放出するようなオケの爆発。残響を伴っていますが、比較的音量の大きなバンダのホルン。大きく歌う第二主題。トロンボーンのトップが強めの金管のコラール。展開部へ入る前に十分テンポを落としました。ボストンsoとのスタジオ録音で感じた不自然なテンポ設定も無く、とてもしっくり来る演奏です。打楽器のクレッシェンドの後は、一旦急速なテンポで風雲急を告げるような演出でした。再現部までの行進曲も速めのテンポでグイグイと前へ進みます。緊張から解き放たれるようなゆったりとした再現部。豊かで広がりのある合唱。必要以上に音量を落とさずに、しっかり声が出る音量で歌われています。表現力のあるソプラノ独唱。二重唱の後はかなりテンポが速くなりました。最後は輝かしい金管と、絶叫する合唱によって壮大なクライマックスを築きました。
前半の繊細な表現と、後半はライブの熱気をはらんだ、とても良い演奏でした。最後のテンポが速くなったクライマックスもライブならではのもので、引き込まれました。
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パーヴォ・ヤルヴィ/HR交響楽団
★★★★☆
一楽章、重いアクセントで入った弦のトレモロ。粒立ちのはっきりした第一主題がホールの残響を伴って響きます。ゆっくりとしたテンポで進んでいます。シャープな響きの金管。かなりテンポが動いて濃厚な表現です。展開部へ入る前はかなりテンポを落として、そのままゆっくりとしたテンポで展開部の第二主題に入りました。濃厚な色彩で豊かに鳴るオケと良く歌う音楽と頻繁なテンポの動きで多彩な表現を繰り広げます。精緻で見通しの良い音楽ですが、作品に対する愛情も感じます。ゆっくりと演奏する部分ではとても良く歌い、テンポを上げて激しい部分では遠慮なくオケをドライブしています。コーダはすごく遅いテンポでしたがさいごは テンポを速めて崩れ落ちるように終りました。
二楽章、テンポが動いて良く歌います。生き物のように敏感に反応するオケ。とても美しい演奏です。
三楽章、ホールに響き渡るティンパニの強打。強弱が付けられたヴァイオリンの主題。深く感情移入している演奏ではありませんが、とても美しく歌う生き生きとした演奏には惹かれます。鋭く突き抜けるトランペット。緩急の変化が大きく、とても表現力豊かな演奏です。
四楽章、柔らかい歌声の独唱。充実した金管のコラール。ホールに響いて伸びやかな独唱。
五楽章、金管が突き抜けて、テンポも動く怒涛の第一主題。豊かな残響を伴ったバンダのホルン。トロンボーンの第二主題も美しい。美しく歌う金管のコラール。ゆったりと大きな響きの展開部。テンポを速めたりしながら勇壮に進む行進曲。再現部の分厚い響きもすばらしい。次第に静まって行く部分はゆっくりとしたテンポで濃厚に表現しました。バンダのトランペットはかなり強いです。人数は少ないようですが、厚みのある合唱。オケでけの部分ではまたテンポが動いて濃厚に歌いました。若干オケに負けている合唱。テンポも強弱の変化も多彩で聞かせどころが多くあります。
歌に溢れて、テンポの変化も多く、この作品の美しさを存分に伝えた演奏でしたが、バンダのトランペットや合唱のバランスなど少し難点があったところが残念でした。
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