ブルックナー 交響曲第9番2

たいこ叩きのブルックナー 交響曲第9番名盤試聴記

カルロ・マリア・ジュリーニ/シカゴ交響楽団

ジュリーニ/シカゴ交響楽団★★★★☆

一楽章、暗闇感はあまり無い第一主題。筋肉質なホルン。続く弦は滑らかに歌います。ダイナミックレンジはかなり広い。軽々と鳴り響く金管。しっかりと刻まれる弦のピィチィカート。テンポの動きを伴って歌う第二主題。そのままの流れで第三主題へ。クライマックスでも余裕があります。再現部も滑らかに歌います。壮麗なクライマックス。コーダに入るとかなり力強い響きです。

二楽章、丁寧な足取り。金管が入っても統率の取れた美しい響きです。とても緻密に動いています。淡々とした中間部。

三楽章、静かに始まる第一主題。遠くから朝日が昇るようなトランペット。雄大な頂点を築きます。荘厳な響きのワーグナーチューバ。ゆったりと流れの良い第二主題。とても美しいホルン。トゥッティの響きは素晴らしいです。消え入るような弱音との対比も素晴らしいです。伸びやかな歌。クライマックスで少しトロンボーンが突き抜ける感じでした。もう少し塊のエネルギー感があれば良かった。静かに天に召されるコーダは素晴らしい演奏でした。

かなりの完成度の演奏でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、神々しい雰囲気がとても良い始動です。
鋭角的で伸びのあるブラスセクションも気持ちの良い響きです。響きも豊かで深みも感じる演奏で、想像していたより良いです。
ベルリンpoの分厚いサウンドがうねりのように押し寄せてくるところなども素晴らしいです。
カラヤンのブルックーなのど、豪華絢爛になるのはいたしかたありませんが、この豪華な響きには魅了されてしまいます。
ブルックナーの素朴さはありませんが、これは一つの美の極致としての良さは持っていると思います。

二楽章、この楽章でも、くったくなく伸び伸びと鳴り響く金管には惚れ惚れとしてます。
もちろん他の楽器も文句無く良い音で響いています。
この演奏は響きの美しさを追及した運送だと思いますし、その狙い通りの聞き方をすれば、文句なしの演奏です。
神に奉げる音楽としの内面性や清潔感のようなものを持ち合わせているのかは分かりませんが、あくまでも構築物と捉えるならば最高の演奏です。

三楽章、トゥッティの響きの充実はすばらしいです。
カラヤンとベルリンpoの絶頂期の演奏ですし、この演奏の良さは認めないといけないですね。マイヤー問題が勃発してからの演奏はカラヤンの意志が通りにくくなりましたからね。

教会のような豊かな響きも魅力的です。
素晴らしく美しい演奏でした。

ロベルト・パーテルノストロ/ロイトリンゲン・ヴュルッテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、すごく豊かな響きで神秘的な演奏です。大聖堂に残る残響がいったんふくらんでから減衰するような独特の雰囲気があります。残響の長さにあわせるかのようにテンポを少し遅めにして演奏している部分もあるようです。細かなミスも聞かれますがたいした問題ではありません。演奏は特に強調するようなこともなく中庸を保っています。楽譜と大聖堂の音響に語らせようとしているような演奏です。逆に言うと長い残響で細かな表現は響きに紛れてしまって細部まで聞き取れないのです。

二楽章、全休符の時に、減衰してゆく響きがとても心地よいです。

三楽章、金管のコラールは深みのある美しいものでした。コーダは黄昏を見事に表現しました。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

icon★★★★
一楽章、霧の中からボヤーッと浮かび上がるホルンの第一主題が次第にその巨大な姿を現す。強奏部分はN響との演奏ほどのスケール感はありません。第二主題は愛情に満ちて視界が開けるような雰囲気がありました。ゆっくりとしたテンポで作品を噛み締めるような演奏です。第三主題もゆっくりでした。トゥッティの分厚い低域が不足しているようで、響きに厚みが無いのが残念です。強奏部分でも、このゆったりとしたテンポに合わせるように、余裕たっふりの演奏です。

二楽章、深みのある木管の響きから始まりました。暴力的な主題も奥ゆかしい。トリオは美しい。大フィルも上手くなったものです。

三楽章、控え目な冒頭。ffも軽く演奏しているような感じです。展開部からは速めのテンポです。残響成分が少なくマットな響きも特徴です。最後のクライマックスも余裕を持った演奏でした。穏やかに幸福感に満ちて終わりました。

朝比奈の演奏らしく、作品のありのままを提示した演奏でしたが、公式ラストレコーディングと言うこともあって、体力の衰えからか、ピーンと張り詰めるような緊張感がなかったのが残念でした。

ベルナルト・ハイティンク/バイエルン放送交響楽団 2010年

ハイティンク★★★★
一楽章、暗闇の中から豊かな響きで神秘的な第一主題。充実したトゥッティ。美しく歌う第二主題。一つ一つの楽器がとてもバランス良く鳴っていて、有機的に絡み合います。たっぷりと濃厚に歌う第三主題。オケがとても豊かに鳴っていて、柔らかく弾力に富んだ響きです。展開部の頂点も見事な響きです。再現部に入っても、整然としてきっちりとしたアンサンブルを聞かせます。内声部の充実した分厚い響きがすばらしい演奏です。

二楽章、静寂感の中にピィッイカートが浮かび上がります。トゥッティは強烈ではありません。とても整然として充実した響きです。トリオのテンポは速いです。主部が戻ると、くっきりと立った音で緊張感の高い演奏になります。

三楽章、ティンパニが底辺をしっかりと支えたスケールの大きな頂点です。淡々と演奏されるワーグナーチューバ。第二主題部に入ると際立った木管が美しい。ハイティンクはいつものように、特にテンポを動かしたり、表現を強調したりはしませんが、集中力の高い演奏で惹きつけられます。展開部のクライマックスでも絶叫することは無く、十分にコントロールされた演奏です。コーダは天に昇るような表現でした。

自然体で、絶叫することなく作品の美しさを表現した演奏でした。個人的には、強烈なトゥッティを含めた振幅の大きな演奏を聴きたかったです。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団 2001年

ヴァント★★★★
一楽章、ゆっくりとしたテンポで、地面から湧き上がるような第一主題が次第にもりあがって、ビーンと言う響きになります。頂点でも余力を残していますが、テンポはかなり粘ります。愛情に溢れる第二主題。ここでもテンポが動いて感情のこもった演奏です。オケを積極的にドライブして濃厚な表現です。第三主題でテンポが遅くなりました。展開部に入ると頂点では壮絶な響きになってきます。テンポは頻繁に動いて非常に感情を込めた演奏をしています。コーダに入っても強力にオケをドライブして壮絶な響きでした。

二楽章、きりっと立った弦のピィッイカート。暴力的なトゥッティで僅かにテンポを落としました。気持ちよく鳴り響くブラスセクション。踊りだすようなトリオの躍動感。壮絶なトゥッティです。

三楽章、頂点での強烈なホルンです。他の響きに埋没してあまりくっきりと浮かび上がらないワーグナーチューバ。豊かで深い第二主題。展開部でもトランペットに呼応するホルンが強烈です。地獄からでも湧き上がってくるかのようなクライマックス。かなり現実的で実在感のあるコーダです。

二楽章までは素晴らしい演奏だったのですが、三楽章があまり心に迫って来ませんでした。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、地底から湧き上がるようなホルンの第一主題が次第に明確に姿を現します。続く弦はスタッカートぎみに演奏しました。そしてアッチェレランドしてトゥッティへ。かなり速めのテンポでグイグイ進んで行きます。第二主題から少しテンポを落としましたが、それでも速めのテンポ設定です。寂しげな第三主題。展開部の頂点ではトランペットが突き抜けて来ます。トゥッティはかなりのエネルギー感です。再現部もグイグイと進めて行きます。美しい弦、輝かしいトランペットが印象的です。

二楽章、この楽章も速めのテンポです。暴力的なトゥッティは文字通り凶暴でした。サヴァリッシュはもっと上品な指揮者だと思っていたのですが、かなり強力にオケをドライヴして力強い音楽を作っています。トリオも速めのテンポで、ちょっとせっかちな感じがします。テンポが速めなのは良いのだが、タメとか間が無くて音楽が滑ってしまうような感じがあります。暴力的なトゥッティはそれが良いほうに効いて、息つく暇も与えずに畳み掛けるように音楽が押し寄せて来るのはすばらしいです。

三楽章、一転してゆったりとしたテンポです。頂点ではトランペットに続くホルンが雄大な雰囲気を演出しました。生命感の宿るワーグナー・チューバ。オケの音色の美しさはさすがにウィーンpoです。強大なクライマックスは全開ではなく、少し余力を残していたようです。最後は穏やかに天に昇って行きました。

強い推進力のある力強い演奏でしたが、間やタメを感じられなかったのが残念でした。

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投稿者: koji shimizu

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