ブラームス 交響曲第4番2

たいこ叩きのブラームス 交響曲第4番名盤試聴記

朝比奈/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★★★☆
一楽章、録音レベルが高いのかかなりの情報量のように感じます。大阪フェスティバルホールでの1995年のライヴ録音ですが、残響成分の少ないドライな音です。晩年のベートーヴェンの全集と同様に自然体の演奏スタイルです。とくに何かを主張するでもなく、楽譜に語らせるような演奏で、力みもなく安定感のあるスケールの大きな演奏になっています。

二楽章、大阪psoの自発的な音楽が聴かれます。豊かに音楽が奏でられていて嬉しくなります。なかなかの好演です。

三楽章、大編成のオケが「よっこらしょ」と動き出したような冒頭。ちょっと重い感じはありましたが、音楽が進むにつれて一体化して行きました。

四楽章、頂点が三楽章にあったのか微妙な感じがしました。この演奏は頂点が四楽章にあると思います。

オトマール・スイトナー/シターツカペレ・ベルリン

icon★★★★☆
一楽章、美しく哀愁に満ちた主題を歌います。孤高の寂しさを感じさせる中間部。良くコントロールされたオケが美しい音楽を紡ぎだします。

二楽章、深い響きのホルン。伝統に支えられた奥ゆかしく端正な演奏が心に染み入ります。どのパートも美しく、どこか陰影を持ったこの作品を美しく彩ります。第二主題も伸びやかで美しい。

三楽章、生き生きとして豪快な第一主題。豪快に一気に演奏されました。

四楽章、金管の強奏も抑制が効いていて暴走することなく大変美しい。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、ゆったりしたテンポでロマンティックな雰囲気で歌う第一主題。シルキーで艶やかなヴァイオリンはこの曲でも健在です。弱音が空間に溶けていくような静寂感が独特な美しさです。この演奏も弱音を主体に作られているような穏やかで静かな演奏です。

二楽章、美しいホルンとそれに続く木管。ヴァイオリンの繊細で艶やかな響きがとても美しい。静かに演奏される第二主題。第二主題に絡むヴァイオリンが涼しげでとても清涼感があります。第二主題の再現はとても穏やかで重厚でした。この楽章も静かな演奏でした。

三楽章、遅めのテンポで、快活さはあまり感じられず、穏やかな大人の雰囲気です。トライアングルも控え目でとても良いバランスです。速いパッセージも滑らかです。チェリビダッケは特に弱音の繊細さに気を使っているようで、とても美しく引き込まれるような弱音です。

四楽章、せわしなく激しいアタックが聞かれます。太い音のフルート・ソロ。ゆったりと語りかけるように掛け合う木管。ここまで抑えられていたトランペットが一時吼えますがすぐに静まり、最後も金管を強く演奏させることもなく終りました。

とても静かで穏やか。優雅なブラームスでした。こんな演奏も良かったと思いました。

クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

アバド★★★★☆
一楽章、揺れ動くような第一主題。次から次へと音が湧き上ってくるような積極的な演奏です。表情も豊かです。激しい表現もあり、振幅の大きな演奏になっています。かなり激しい表現で勢いもあります。

二楽章、しっかりと芯のあるホルン。陰影を感じさせる第一主題。美しく歌う第二主題。温度感は少し高めです。分厚く流れる第二主題の再現。

三楽章、鮮度が高く生き生きとした動きのある第一主題。積極的な表現です。スピード感もありなかなかの演奏です。キリッとしたホルンもとても良いです。トランペットも若々しくはつらつとした響きです。

四楽章、豊かに歌いますが、静寂感や透明感はあまりありません。動きのある部分はとても活動的で活発に動きます。

生き生きとした表情で良く歌う演奏でした。若々しくはつらつとした表現もとても好感の持てるもので、ベルリンpoの芸術監督に就任間もないアバドの意気込みを感じさせる演奏でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1984年ライヴ

カラヤン★★★★☆
一楽章、遠くから響いてくるような、静かな第一主題。第二主題は粘るように歌います。冷たい朝露にぬれているような展開部の第一主題。滑らかなクラリネット。いつものような分厚い弦の響きはあまり感じられません。

二楽章、芯のしっかりとしたホルンの動機。うつろな木管の第一主題。解き放たれたように広がるヴァイオリンの第一主題の変奏。暖かくほのぼのと歌う第二主題。マイヤー事件の後とは思えない整ったアンサンブルです。第二主題の再現は暖かく重厚です。

三楽章、83年のライヴのようなスピード感はありません。あまり先へ進もうとするエネルギーは無く、その場にとどまっています。コントラバスをあまり拾っていない感じで、分厚い響きはありませんが、一体感はさすがに素晴らしいです。

四楽章、弱音の微妙な表現と静寂感はなかなか聞かせます。木管のソロも美しいです。コントラバスがフワーッとした響きで録音されているので分厚さを感じませんが、それでも普通のオケよりも格段に厚い響きです。ソロの小さい響きとトゥッティの大きな響きの差がとても大きいので、コーダなどはとても巨大な演奏を聴いている感覚になります。

弱音から巨大なトゥッティまでとても振幅の大きな演奏でしたが、83年のライヴのようなスピード感や分厚く強靭な響きが無かった点が僅かに残念な点でした。
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クリストフ・フォン・ドホナーニ/クリーブランド管弦楽団

ドホナーニ★★★★☆
一楽章、盛大なヒスノイズの中から聞こえて来ます。フレーズを大きく捉えて歌います。大きな波が押し寄せて来るような感じです。僅かにテンポの揺れがある第二主題。ティンパニも思い切り良く入って来ます。きっちりとしていて引き締まった演奏です。とても激しいコーダです。

二楽章、静かに穏やかに歌う第一主題。美しく歌う第二主題、チェロの周りを彩るヴァイオリンなどのバランスもとても良いです。録音のせいか、すこしざらつく第二主題の再現。余分な厚みが無くすっきりとした響きです。

三楽章、録音にもよるのか華やかな第一主題。トゥッティでも肥大した分厚さでは無く引き締まって硬質な厚みの響きです。ホルンは柔らかく美しい音で豊かに歌いました。深みがあって勢いもあるコーダです。

四楽章、活発に動いて生き生きとそして勢いのある演奏が続きます。エネルギーに溢れて若々しい演奏です。

若々しいエネルギーでとても良く歌う演奏でした。肥大化せずにカチッと引き締まった響きもとても良かったです。
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ギュンター・ヘルビッヒ/ベルリン交響楽団

ヘルビッヒ★★★★☆
一楽章、羽毛の肌触りのように繊細で優しい第一主題。極めて誠実で大きな表現は極力避けているような演奏です。清涼感のある響きで温度感は低いのでとても冷静な演奏に感じます。トゥッティでも荒げることは無く穏やかな演奏です。

二楽章、とても静かな第一主題。ヴァイオリンの第一主題の変奏もとても美しいです。静かに歌う第二主題。紳士的で折り目正しい演奏で、緩いところが無くカチッとしています。とにかく安らかで穏やかです。第二主題の再現でも厚みはあまり感じません。清涼感のある響きなので、分厚い低音などはあまり感じません。凄く美しい演奏なのですが、箱庭のようなこじんまりとした感じがあります。

三楽章、低域が薄く爽やかな響きの第一主題。控えめで穏やかな第二主題。激しさは全く無く整然としていてとても落ち着いています。再現部の第一主題のトゥッティでもいきなり音が立ち上がる感じでは無く、なだらかに音量が上がって行く感じで荒々しさとは全く縁の無い演奏です。

四楽章、テヌートぎみに演奏されるシャコンヌ主題。とても端正で美しい演奏で、これはこれで良いような感じもしますが・・・・・・。うつろなフルート。コーダのトロンボーンさえも美しい。インテンポで終わりました。

激しさや荒々しさとは無縁の、これだけ美しい演奏を聞かされると、抗し難いものはありました。こんなブラームスもあるのかと言うのが正直な感想です。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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