ブラームス 交響曲第4番

ブラームスの交響曲第4番は、1884年から1885年にかけて作曲され、1885年にウィーンで初演されました。この作品は、彼の最後の交響曲であり、全体にわたって深い情感と高い音楽的表現が特徴です。特に、彼の特有の構築的なスタイルと、重厚なオーケストレーションが見事に融合した作品となっています。

目次

構成と特徴

交響曲第4番は、全4楽章からなり、各楽章が明確に異なる表情を持ちながらも、全体として強い統一感を持っています。

  1. 第1楽章 (アレグロ・非常に速く)
    力強い弦楽器の主題で始まり、その後木管楽器や金管楽器が続きます。この楽章は非常にドラマチックで、緊張感が高く、感情の起伏が激しいものとなっています。特に、ハ短調の重々しい雰囲気が感じられ、荘厳な音楽の流れが印象的です。主題の再現や展開が巧みに行われ、全体を通しての音楽的な緊張感が持続します。
  2. 第2楽章 (アダージョ)
    この楽章は、非常に美しく、抒情的な旋律が特徴的です。特に、フルートとホルンによるメロディが感動的で、聴く者の心に深い感情を呼び起こします。この楽章は、静けさと内面的な深さを持ちながら、ブラームスの音楽における繊細さと情熱が見事に表現されています。
  3. 第3楽章 (ペレアスとメリザンド – アレグロ)
    この楽章は、軽快なスケルツォの形式を持ち、明るく楽しい雰囲気があります。舞曲的なリズムが感じられ、軽やかなメロディが印象的です。ブラームス独特のリズム感やユーモアが感じられ、全体のバランスを保つ重要な役割を果たしています。
  4. 第4楽章 (アレグロ・エピローグ)
    最後の楽章は、非常に力強く、同時に内面的な深さも持ち合わせています。この楽章では、ブラームスの「パッサカリア」が用いられ、特に印象的なテーマが展開されます。この主題は、古典的な形式を取り入れながらも、彼自身の個性的な音楽語法で描かれ、力強いフィナーレへと進みます。楽章全体にわたって、ブルックナーの宗教的なテーマが感じられ、壮大なエンディングが印象的です。

音楽的意義と評価

交響曲第4番は、ブラームスの作品の中でも特に重要な位置を占めており、彼の音楽の成熟を示す作品とされています。特に、この交響曲における構成の巧妙さや、音楽的な対比の豊かさが、彼の作曲家としての特異性を際立たせています。

また、この作品はブラームスが自身の作曲スタイルを確立し、古典音楽の伝統を引き継ぎながらも、新たな表現を追求した結果生まれたものです。深い情感と強い構造を持つこの交響曲は、聴衆に深い感動を与え、今日でも多くのオーケストラによって演奏され続けています。

ブラームスの交響曲第4番は、彼の音楽における人間の感情や思索を豊かに表現した名作として、長い間、多くの人々に愛されている作品です。

4o mini

たいこ叩きのブラームス 交響曲第4番名盤試聴記

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、豊かな響きをともなって、なんとも柔らかい弦の響き、その合間を縫うように艶やかな木管。この演奏でも骨格の非常にガッチリとした堂々とした風格が漂います。美しい演奏にどっぷりと身を任せることができます。奇を衒うようなことは無く、正々堂々と正面から作品に向き合っている演奏です。ウィーンpoの深みのある響きも魅力的です。

二楽章、ゆったりとしたテンポで音楽を噛み締めるように進みます。誇張することもなく自然な歌で時の流れを忘れてしまいそうです。深みがあって美しい!

三楽章、いぶし銀のように渋い響き。ソロもこの音でなければと思わせる統一感のある美しさです。トゥッティは重量感溢れる一体感です。

四楽章、トゥッティでもがっちりした骨格に乗っている安定感!すばらしい名演でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、充実した響きの第一主題。弦に絡む木管も克明です。抑揚もあり音楽が生き生きとしています。オケの一体感はすばらしく、完璧なアンサンブルで音楽が押し寄せてきます。絶頂期のカラヤンとベルリンpoの凄さを如実に示す演奏だと思います。

二楽章、非常に美しい第二主題。厚みのある弦楽器、寸分の狂いもない見事なアンサンブル。第二主題の再現は感動的です。

三楽章、スピード感のある演奏です。音楽が生き物のように機敏に動きます。マッシヴなパワー感もすばらしく、カラヤンの残した作品の中でも貴重な記録なのではないかと思います。

四楽章、トゥッティの輝かしい響き。すばらしい演奏でした。

ブルーノ・ワルター/コロンビア交響楽団

icon★★★★★
一楽章、ヒスのイズの中からメタリックな第一主題が聞こえます。とても良く歌い流れの良い演奏です。とても滑らかな第二主題。静寂感もあり、とても良い演奏です。硬質なティンパニが少しメタリックな響きの演奏にピッタリです。木管楽器が立っていて美しいです。一音一音丁寧に心のこもった演奏です。

二楽章、控え目で奥ゆかしい木管の第一主題。力のある三連音の動機。穏やかなチェロの第二主題。第二主題の再現はとても美しい。

三楽章、間を空ける部分もあります。とても生き生きとして快活な演奏ですがとても落ち着いた足取りの確かな演奏です。オケがワルターと演奏できることに嬉々としているような様子がにじみ出るような、とても楽しげで豊かな表現です。

四楽章、力みの無い穏やかな冒頭。歌う木管。弦も自然な歌で好感が持てます。必要以上に金管を強奏させることはなく、表面を飾ることもなく、自然ににじみ出る渋さがすばらしい演奏でした。

レオポルド・ストコフスキー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、強弱を大きく変化させて歌う第一主題。チェロホルンの旋律の後からホルンをかなり強く吹かせました。ホルンを中心に金管はかなり強く演奏してダイナミックです。かなり激しい演奏で畳み掛けるように押し寄せてきます。

二楽章、この楽章でもかなり強めに吹かれたホルンの動機。落ち着いた第一主題。美しいヴァイオリンの変奏。対位法的に絡むパートも上手く表現されて美しい第二主題。再現部も非常に美しい。第二主題の再現も重厚で暖かみのある響きで音楽に引き込まれます。ストコフスキーは小手先の表面的な効果ばかり追いかけていた人かと思っていましたが、こんなに美しい内面から湧き上がる音楽を演奏していたのかと改めて見直しました。

三楽章、元気良く始まりました。第二主題で僅かにテンポを落として穏やかな音楽です。展開部からは生き生きとした生命感溢れる音楽です。テンポを落としてホルンの主題の変奏。再現部で元のテンポに戻り、再び元気な演奏です。華やかなコーダ。

四楽章、強弱の変化は絶妙です。ホルンの強奏が効果的です。

ブラームスの音楽と言うととかく渋いと思いがちですが、この演奏は華やかで色彩感豊かな演奏でした。ブラームスを違った角度から聴かせてくれた名演です。

カルロ・マリア・ジュリーニ/シュターツカペレ・ベルリン 1996年ライヴ

ジュリーニ★★★★★
一楽章、ゆったりと優しい第一主題。自然な歌の第二主題。オケは少し遠くにありますが、豊かな残響を伴って奥行き感のある美しい響きです。静寂感もあり、緊張感も伝わって来ます。ゆっくりゆっくり音楽が進みます。どっしりとして堂々たるコーダでした。

二楽章、響きを伴って豊かなホルン。ヴァイオリンの第一主題の変奏はは夢見心地のような美しさです。朗々と歌う第二主題。第二主題の再現はとても美しいです。最後は深みのあるホルンで締めくくられました。

三楽章、物凄くゆっくりで丁寧な第一主題。豊かな残響で巨大な響きになります。ジュリーニの最晩年の芸風に如実に示している演奏です。

四楽章、細かな動きも決して荒くはならずとても丁寧です。金管も木管も奥まったところから響いてくるので、金管が強奏してもバランスが崩れません。滑らかな歌が美しいです。とても遅いテンポですが、弛緩しません。

凄く遅いテンポで美しい歌と奥行き感のある美しい響きで、夢見心地のような表現や巨大な響きも併せ持つ良い演奏でした。晩年の遅いテンポで音楽の密度自体が薄まったような演奏もありましたが、この演奏は終始密度を保っていました。
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カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1978年ザルツブルグライヴ

ベーム★★★★★
一楽章、冒頭から硬派の演奏を感じさせるカチッとした表現。僅かな揺れのある第二主題ですが、非常に手堅い演奏はここでも続きます。厳格でほとんど遊びが無く切々と訴えて来ます。

二楽章、ゆっくりと薄暗いホルンの動機。続く木管も静かでインテンポで微動だにしません。第一主題はとても静かです。ヴァイオリンの第一主題の変奏から少し華やかになりますが、基本はとても芯の強い音楽です。第二主題は静かなチェロの周りをヴァイオリンが彩ってとても美しくあまりチェロは強調されていません。第二主題の再現は重厚ですが、とても穏やかです。アバド/ベルリンpoの演奏が「動」だとすると、この演奏は「静」です。

三楽章、堂々とした第一主題。テンポの揺れなどは全く無く、がっちりとしています。柔らかく美しいホルン。再現部の第一主題も巨大な響きです。

四楽章、どっしりとした中にも豊かな表現があって、金管もビリビリと鳴ります。とても重厚で、巨匠の風格の演奏です。自信に溢れていて最後も実に堂々としていました。

遅めのテンポで、テンポの揺れなどは無くどっしりと構えた演奏で、がっちりとしていました。でも大人しい演奏では無く、金管が鳴るところではビリビリと鳴るし、二楽章第二主題のチェロの周りを彩ったヴァイオリンとのバランスなども素晴らしいものでした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年ザルツブルクライヴ

カラヤン★★★★★
一楽章、弱い音からスーッと入る第一主題。ライヴでの一体感のある分厚い響きにはいつもながら関心します。重厚な響きはブラームスらしいです。第二主題は大きな表現はありませんが、全体の構成の中にきっちりと収まっている感じがします。展開部の第一主題は弱々しいとさえ感じるくらい優しい演奏です。ベルリンpoのライヴでのこの合奏力には舌を巻くしかありません。堂々とした風格の横綱相撲です。

二楽章、ホルンの後に木管と弦のピツィカートだけになった部分の静寂感はとても良いです。ヴァイオリンの第一主題の変奏もとても美しいです。第二主題は静かですが、とても心に訴えてくる表現で素晴らしいです。第一主題の再現も柔らかく心に染み入るようです。ゆったりと暖かく厚みのある第二主題の再現。最後のホルンは力強い演奏でした。

三楽章、オケが一体になってスピード感のある第一主題です。活発に歌う第二主題。展開部の第一主題はティンパニを含めた分厚い響きが印象的です。ティンパニの存在感はとても大きいです。

四楽章、ソロや旋律を演奏する楽器を伴奏するパートが常に包み込むようなバランスで、とても良く溶け合っています。充実した響きの中で演奏される音楽も作品を正面から捉えた堂々としたもので、素晴らしいです。

分厚い響きで一体感のある演奏で、とても見事でした。弱々しく優しい表現から、凄く厚みのある強靭な響きまでブラームスをしっかりと聞かせてくれました。素晴らしい演奏でした。
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ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団 1995年ライヴ

マゼール★★★★★
一楽章、ゆったりとたっぷり歌う第一主題。チェロとホルンの旋律も豊かです。さらにゆっくりとなった第二主題。響きはすっきりしていますが、テンポを落として濃厚な表現もあります。とても粘着質で濃密です。テンポの変化も多いです。

二楽章、とても静かに演奏される第一主題。ヴァイオリンの第一主題の変奏は夢見るような美しいものでした。テンポはゆっくりです。とても感情が込められて美しい第二主題。遅いテンポですが、のめりこんでドロドロになることは無く、聞くのに負担はあまり感じません。最後のホルンの主題はすごく遅いテンポです。

三楽章、ゆったりと堂々とした第一主題。タメがあったりします。再現部の第一主題は一音一音切り分けるような表現です。マゼールらしい自由奔放な演奏です。強力な金管。コーダでもテンポが遅くなりました。

四楽章、シャコンヌ主題を大きくクレッシェンドしました。ゆったりと始まりましたが、途中でテンポが速くなります。本当に自由にテンポが動きます。太く暖かいフルート。強弱の変化も大きくとても積極的な表現です。交響曲第二番の回想部分はゆっくりと一音一音刻み付けるような演奏でした。最後のトロンボーンはとてもゆっくりでした。そのままゆっくりのテンポで終わりました。

マゼールの思いのままに自由にテンポが動く演奏でした。若いころはわざとらしい表現も見受けられましたが、この演奏では自然なテンポの動きと表現で、それがもたれることが無く最後まですっきりと聞けました。
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カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

クライバー★★★★★
一楽章、ゆっくりと哀愁に満ちた表現で豊かに歌います。表現の限りを尽くしたような第一主題。滑らかに歌う第二主題。エネルギーに溢れて若々しい表現です。ガツガツと動く弦など、とても活動的です。スピード感や激しさもあります。

二楽章、音が短めで弾むようなホルンの動機。静かに内に秘めるような第一主題。ヴァイオリンの第一主題の変奏はとても美しいです。湧き上がるように美しい第二主題。分厚く流れる第二主題の再現。コーダはとても壮麗でした。

三楽章、独特の間がある第一主題。展開部のホルンもウィーンpoならではの柔らかいものです。若々しく元気な演奏です。テンポの微妙な変化などとても練られています。

四楽章、シャコンヌ主題の後に絡み合う木管がとても生き生きと動き回りました。テンポは速く快活です。陰影を感じさせるフルートのソロ。シャコンヌ主題が再現してから激しく活発に動くようになります。最後はテンポを速めて緊張感が高まって終わりました。

とてもこだわった独特の表現があり、とても練られた演奏でした。若々しく元気な演奏は作品に合っているかは分かりませんが、クライバーのこだわりは十分に伝わって来ました。
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ダニエル・バレンボイム/ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団

バレンボイム★★★★★
一楽章、深い呼吸で最初の音を長めに演奏してたっぷりと歌う第一主題。そよそよとそよく風のような雰囲気から次第に加速して激しくなって、ホルンとチェロの旋律になります。この旋律も良く歌います。音の鮮度が高く生き生きとした若々しい躍動感があります。波が押し寄せるように押したり引いたりする展開部の第一主題。コーダに入ると演奏は激しくなりますが、演奏は整然としていて、熱気はあまり感じません。

二楽章、活発な動きのある第一主題ですが、感情は抑えているような感じがします。枯渇することなく絶え間なく湧き上がる泉のような豊かな音楽です。第二主題は豊かに歌います。とても反応が良くストレートに表現するオケ。再現部の第一主題はかなり激しい演奏です。第二主題はとても厚みのある演奏です。

三楽章、はつらつと元気の良い第一主題。ガツガツと深く切れ込んでくる弦。ブラームスにしては色彩感も豊かです。

四楽章、最初強く入って次第に弱くなったシャコンヌ主題。暖かいフルートのソロ。シャコンヌ主題が再現されてからは激しい演奏です。コーダは若いオケのエネルギーがはじけるような爆発でした。

若いエネルギーが作品を掘り起こすような演奏でした。若々しくはつらつとした演奏はこの作品の本来の姿では無いかも知れませんが、演奏自体はとても魅力的なものでした。
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ベルナルト・ハイティンク/ヨーロッパ室内管弦楽団

ハイティンク★★★★★
一楽章、何の変哲も無い手堅い第一主題。表現を荒げることも無く穏やかな表現です。途中で押すような第二主題。展開部の第一主題は提示部よりも穏やかで力みの全く無い演奏です。強い爪あとを残して訴えてくる表現はハイティンクならではです。

二楽章、静寂の中に響く第一主題。木管の合間に入るホルンはとても静かな演奏でした。ヴァイオリンの変奏はとても美しいものです。すがすがしい雰囲気の第二主題。第二主題の再現はとても安らかで安堵感のあるこの上ない演奏です。ハイティンクに向かってオケがとても高い集中力を示しているところはさすがです。

三楽章、速いテンポですが、しゃかりきになることは無く、ここでも穏やかです。

四楽章、テヌートぎみのシャコンヌ主題。室内オケですが、深みのある響きは素晴らしいです。コーダの最初はテンポを落としてここでも力みのない演奏でした。

いつもながらの力みの無い演奏でしたが、ハイティンクらしい深みのある響きとオケの高い集中力が生み出す一体感のある表現は素晴らしいものでした。
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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1988年ルツェルンライヴ

バーンスタイン★★★★★
一楽章、豊かな響きで感情のこもった第一主題。冒頭から非常に感情の起伏の激しい演奏です。まるで生き物のようにダイナミックにうねる音楽です。ゆっくりとしたテンポで歌う第二主題。分厚い響きで強く感情をぶつけてくる演奏です。凄いはげしさです。堂々としたコーダでした。

二楽章、しっとりとして美しく歌う第一主題。すごくゆっくりとしたテンポで深く歌う第二主題。そよぐ風のようでとても美しい演奏です。ウィーンpoもバーンスタインに共感するような深みのある演奏で応えています。この楽章でも感情の起伏は大きいです。第二主題の再現も非常に遅いテンポで、今度は厚みのある響きで豊かに歌います。

三楽章、テンポはそんなに遅くはありませんが、とても重量感のある第一主題。伸びやかな第二主題。展開部のホルンも美しく豊かに歌います。

四楽章、ゆっくりと演奏されるシャコンヌ主題。豊かに歌う木管。オケに溶け込んで響いてくるフルート。それまで静寂感に包まれていましたが、シャコンヌ主題の再現から激しくなります。ティンパニの激しい強打。金管の強奏。

晩年のバーンスタインらしい、躊躇無く感情を吐露する演奏でした。思い切って遅いテンポを取る部分など、個性的な演奏でした。賛否は分かれる演奏だと思いますが、私はこんな感情をストレートに表現した演奏は大好きです。
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カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1989年ライヴ

ジュリーニ★★★★★
一楽章、細い線で美しい第一主題。遅いテンポで木管などの細かな動きも手に取るように分かります。第二主題もさりげない歌です。展開部の第一主題も静かでとても繊細な演奏です。バランスが高域寄りで少し腰高な感じの響きです。

二楽章、この楽章も遅いテンポです。内面へ向かうように静かなクラリネットの第一主題とは対照的に解放されたように歌うホルン。ゆっくりですが、豊かに歌う第二主題。とても静かな演奏です。この世のものとは思えないような美しさです。ゆったりと流れる第二主題の再現も凄く美しいです。これだけ美しい演奏ができるのはジュリーニだけだと思えるような優雅な美しさです。

三楽章、とてもゆっくりで勢いは感じません。自然な歌の第二主題。このテンポは弛緩するかどうかのギリギリのところのような感じがします。ホルンの主題の変奏も豊かな歌です。

四楽章、穏やかなシャコンヌ主題。変奏に入ってもとても豊かに歌います。これだけ豊かな歌はジュリーニならではすも知れません。陰影のあるフルートのソロ。シャコンヌ主題の再現の後も金管はあまり吠えません。この演奏には合っていると思います。コーダもとても遅いです。いろんな楽器の動きがとても良く分かります。

これだけ遅いテンポで豊かに歌い、非常に美しい演奏を聞かせてくれました。この演奏の遅さはギリギリの遅さと言う感じで、絶妙でもありました。こんなに美しいブラームスは初めてかも知れません。
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クルト・ザンデルリング/ベルリン交響楽団

ザンデルリング★★★★★
一楽章、ゆっくりと感情を込めて歌う第一主題。ゆっくり流れる音楽がとても心地良いです。第二主題も歌います。鮮度の高いヴァイオリンと暖かみのある中音域が特徴的な響きです。弱音は柔らかく優しいです。大きな表現はありませんが、自然体でテンポが遅いので、作品の美しさをゆっくりと味わうことができます。

二楽章、遅めのホルンの動機。静かに演奏される第一主題ですが、凄く音量を落としていると言うほどではありません。テンポが遅いので、一つ一つの楽器がとても伸びやかに歌います。とても穏やかで安らぎを感じさせる第二主題。ゆったりとした自然なたたずまいがとても良いです。非常にゆっくりと流れる大河のような第二主題の再現。自然体で堂々とした演奏の安定感は抜群です。

三楽章、この楽章もどっしりと落ち着いたテンポで演奏される第一主題。第二主題も伸びやかに歌います。展開部のホルンによる変奏もゆっくりとしたテンポで柔らかく美しく豊かな歌を聞かせます。コーダは広大なスケールでした。

四楽章、シャコンヌ主題に続く木管が豊かに歌います。暗闇に響くようなフルートのソロ。シャコンヌ主題の再現はとても柔らかい響きです。柔らかくしなやかな響きはとても美しいです。次第に盛り上がってゆっくりとしたテンポで登場するトロンボーン。

ゆっくりとしたテンポで、柔らかく美しい響きで、とても良く歌う演奏でした。ゆっくりとしたテンポで作品の美しさも伝わって来ますし、トゥッティの大きなスケール感も見事でした。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団

ヴァント★★★★★
一楽章、速いテンポであっさりと演奏される第一主題。第二主題は少し遅めで豊かに歌います。とても引き締まっていてカチッとしています。金管も力強く演奏しています。速いテンポで畳み掛けるような演奏で、強弱の振幅も大きくとても力強く生命力を感じさせる演奏です。

二楽章、少し弱めで寂しそうなホルンの動機。第一主題は消え入るような弱さです。第二主題も速めですが、とても豊かな歌で美しいです。うねるようにねばりのある第二主題の再現。

三楽章、金管がパリッとした響きでしっかりと主張する第一主題。さりげなく歌う第二主題。展開部では噴火口を覗き込むような深いコントラバスの響きでした。男性的なホルンの主題の変奏。とても引き締まって感肉質の演奏です。輝かしい程の金管の響きです。

四楽章、とても激しいシャコンヌ主題。続く木管は速いテンポで活発な動きです。その後もとても積極的な表現です。フルートのソロも速いテンポで暗闇に響くような感じはありません。シャコンヌ主題の再現もとても激しいです。今までブラームスの演奏では聞いたことが無いほどの激しさです。コーダのトロンボーンも強烈です。

速めのテンポで大きな振幅のある演奏で、生命感や躍動感を感じさせる演奏でした。キリッと引き締まって筋肉質でブルックナーのように金管が吼えました。
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ダニエル・ハーディング/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団

ハーディング★★★★★
一楽章、細く鋭い響きで揺れを感じさせる第一主題。編成が小さいこともあってか、機敏な動きです。トランペットが強く出て来ます。多層的な響きでいろんな音が聞こえてくる演奏です。ホルンとチェロの旋律の再現はマルカートになったりテヌートになったりと変化があります。

二楽章、静かに演奏される第一主題。爽やかで美しいヴァイオリン。秘めるように歌う第二主題。第二主題の再現は少し響きが薄いですが、とても良く歌っています。とても爽やかで清々しい演奏です。木管も透明感があります。

三楽章、涼しげで軽い第一主題。控えめの音量ですが、豊かに歌う第二主題。爽快な響きでとても新鮮です。ホルンの主題の変奏はとても柔らかく美しい歌でした。編成が小さいことを生かしてとても反応の良い演奏で、しかも細部まで聞き通せる演奏は貴重です。トゥッティの厚みも申し分ありません。

四楽章、だんだん弱くなるようなシャコンヌ主題。続く木管はとても豊かな表現でした。速めのテンポで進みますが、この爽やかな響きがとても心地良いです。暗闇の静寂の中に響くようなフルートのソロ。交響曲第二番の回想も歯切れの良い演奏でとても気持ちの良いものでした。コーダも見事に整ったアンサンブルでした。

速めのテンポで颯爽として若々しい演奏でした。小さい編成で、多層的な響きも見事に聞かせてくれました。爽やかな中にも豊かな歌もありとても良い演奏でした。
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チョン・ミョンフン/フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

チョン★★★★★
一楽章、最初の音を長めに演奏して、独特な波が押したり引いたりするような第一主題。テンポはゆっくりとしています。テンポの動きや細密な表現など、とても個性的です。強弱の変化もとてもダイナミックです。オケが一体になったエネルギーがこちらに押し寄せて来るような感じです。

二楽章、朗々と歌うホルンの動機。第一主題も豊かに歌います。ヴァイオリンの第一主題の変奏は爽やかで美しい演奏でした。伸び伸びと歌う第二主題。弦の刻みがガツガツととてもしっかりと刻み付ける演奏になっています。ゆっくりと絞り出すような濃厚な表現の第二主題の再現。コーダの前は自然にテンポが遅くなって訴えかけてくるような表現でした。

三楽章、力強く活発な動きのある第一主題。間を取る部分もありました。テンポは速いです。展開部の第一主題はテンポも動いてかなり積極的な表現です。ホルンの主題の変奏ではテンポも遅くなり、とても柔らかい響きでした。強弱の変化や間の取り方などかなり個性的で大胆です。金管も強いです。

四楽章、ここでも独特の強弱の変化があったシャコンヌ主題。短い音が楔を打ち込むようにグサッと突き刺さって来ます。嵐のように歌う弦。フルートのソロはテンポを落として濃厚な表現をします。シャコンヌ主題の再現は途中でテンポが伸びたり大きくクレッシェンドしたりとかなり大胆な表現です。この作品を色彩、表現ともに豊かに聞かせてくれます。コーダのトロンボーンはスタッカートぎみの演奏でした。

かなり自由に積極的な表現をした演奏でした。細密な表現から、大胆な間やテンポの動き。新たなブラームス像を打ち立てようとするような革新的な演奏で、とても良かったです。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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