目次
- 1 たいこ叩きのブラームス 交響曲第2番試聴記
- 1.1 ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.2 ハンス・クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.3 オトマール・スイトナー/シュターツカペレ・ベルリン
- 1.4 セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団
- 1.5 クリストフ・フォン・ドホナーニ/北ドイツ放送交響楽団
- 1.6 ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
- 1.7 ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.8 イシュトヴァン・ケルテス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.9 オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団
- 1.10 マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2008年ライヴ
- 1.11 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団
たいこ叩きのブラームス 交響曲第2番試聴記
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★☆
一楽章、美しい第一主題。磨きぬかれた音色と緻密なアンサンブル。牧歌的と言うより、都会的な雰囲気さえも感じさせる先鋭な演奏です。音楽にも起伏があり、金管の咆哮もありますが、整然としています。見事なくらいです。トゥッティの一体感もすばらしいものです。
二楽章、レコーディングした時期もカラヤンとベルリンpoの絶頂期のもので、ベルリンpoの機能美を如実に表すとても美しいものです。表現も豊かです。少し陰影に乏しいかも知れません。
三楽章、オーボエのとても愛らしい主題。とても美しい木管楽器の絡みでした。テンポが速くなってからのベルリンpoのアンサンブル能力の高さには感心するしかありません。
四楽章、速目のテンポの開始です。ダイナミックレンジの広さもすごいです。すばらしく輝かしい終結でした。見事なアンサンブル能力を見せ付けた演奏だったと思います。
ハンス・クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★☆
一楽章、少し遠くにオケがいます。遅めのテンポで濃い表情付けをして行きます。巨大で堂々とした風格の演奏です。非常に濃厚です。賛否は分かれるかも知れませんが、私はこの演奏は好きです。
二楽章、
三楽章、アゴーギクを効かせて濃厚な表現です。テンポも予想外のところで動いてハッとさせられます。
四楽章、この楽章でも濃厚な表現の演奏があちこちで見られます。コーダでガクッとテンポを落としてそこからアッチェレランドして終るところは圧巻でした。
オトマール・スイトナー/シュターツカペレ・ベルリン
★★★★☆
一楽章、美しさにうっとりするような冒頭です。ドイツの伝統的な良さを残した美しい響きに魅了されます。深く艶のある弦の響きと宝石をちりばめたような木管のソロ!再現部手前のクライマックスでは少しテンポを落として刻み付けるように演奏しました。スイトナーらしい端正で美しいすばらしい演奏です。
二楽章、この世のものとは思えないような美しい演奏にずっと浸っていたい気分です。
三楽章、オーボエの魅力的な珠玉のような主題。テンポが速まる部分の切れ味もとても良い。
四楽章、第二主題もねばることなく美しい演奏。コーダではテンポを上げて激しい表現でしたが、オケは荒れることもなく美しい演奏でした。
セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団
★★★★☆
一楽章、明るく美しいホルンの第一主題。キリッとした木管。繊細な響きのヴァイオリン。控え目なチェロの第二主題。ワックスがかかった高級車を見ているような滑らかで贅沢な美しさです。コーダの優しい弦の合奏。チャーミングな木管。
二楽章、憂鬱な雰囲気にさせるチェロの第一主題。明るいホルンにもう少し深みが欲しいところです。美しく旋律を受け継いで行くのですが、ブラームスらしい分厚い響きはあまり感じません。それでもこの美しさには酔いしれることができます。
三楽章、優しく歌うオーボエ。クラリネットもとても良く歌います。テンポの揺れや間もとても良いです。テンポが速くなってからは弦の敏感なリズムとアクセント。穏やかに終りました。
四楽章、歓喜に溢れるトゥッティ。美しく鳴り響く金管。コントラバスをあまり捉えていない録音のせいなのか、響きに厚みがないのが気になります。コーダへ向けてテンポを上げて歓喜を強く印象付ける演出でした。
すばらしい演奏でしたが、響きに分厚さが無かったのが少しだけ残念でした。
クリストフ・フォン・ドホナーニ/北ドイツ放送交響楽団
★★★★☆
一楽章、冒頭からとてもよく歌います。澄んだヴァイオリンの経過句。感情の込められた第二主題。あまり強弱の振幅は大きくなく、比較的穏やかな演奏です。テンポの動きや間を空けることもあり刻みつけるような表現です。
二楽章、物悲しい第一主題ですが、動きは活発で明快です。寂しさはありますが、強い孤独感は感じません。第二主題もはっきりとした動きです。
三楽章、表情豊かに歌うオーボエの主題。Bも活発でとても生き生きとした良い動きです。
四楽章、速いテンポで演奏される第一主題。やはり強弱の振幅はあまり大きく無くなだらかです。暖かみのある第二主題。輝かしく見事なコーダでした。
振幅はあまり大きくありませんでしたが、美しく歌う演奏でした。克明に刻みつけるような表現や活発で生き生きとした表現など多彩な表現もありなかなか聞きごたえがありました。
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ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
★★★★☆
一楽章、コンセルトヘボウらしい色彩感の豊かな演奏です。弱音のビロードのような美しさ。良く歌う第二主題。堂々と王道を行くような安定感抜群の演奏です。トゥッティは熱っぽい高揚感があります。澄んだ弱音がとても綺麗です。
二楽章、繊細な第一主題。暗闇を連想させる寂しげなホルン。第二主題はレガートぎみに演奏しますがとても伸びやかで美しいです。強弱の振幅はあまり大きくありません。
三楽章、美しく上品に歌うオーボエ。Bに入っても大きくテンポは速くならず、荒々しくもなりません。
四楽章、少し速めのテンポです。トゥッティが荒れ狂うようなことにはならず、とても穏やかです。コーダもどっしりと落ち着いた表現でした。
堂々と落ち着いた表現で、オケの美しい音色もとても魅力的でした。
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ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★
一楽章、盛大なヒスノイズの中から美しいホルンの響きが聞こえます。踊るようなオーボエとフルートのメロディ!たっぷりとした歌に溢れた演奏です。トゥッティでは中庸な表現でことさらに金管を強奏させることもなく奥ゆかしい演奏です。
二楽章、強い個性が無いだけに聴いていてのけぞるようなことも無いし、癒されるような音楽になっています。
三楽章、どっぷりと音楽に浸れる安心感があります。
四楽章、終結部のアッチェレランドは凄かった!
イシュトヴァン・ケルテス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★
一楽章、強いヒスノイズがあります。美しいホルンの第一主題。勇壮に進む第二主題。充実したトゥッティ。再現部の愛らしいオーボエ。どの楽器も極上の響きで登場します。怒涛のように激しく押し寄せてくる強烈なトゥッティ。とても積極的な表現の演奏です。
二楽章、少しザラつくチェロの第一主題。少しメタリックな響きですが、盛り上がるところでは突進してくるような凄みがあります。
三楽章、しっかりと地に足が付いた主題。Bに入ってテンポが速くなってもがっちりとした演奏です。
四楽章、第一主題のトゥッティもかなりのエネルギー感です。第二主題も大きく歌うことはありませんが、とても熱気があります。コーダは興奮を煽るように少しテンポを上げます。かなり劇的な歓呼で終わりました。
録音はザラつきぎみでしたが、かなり情熱的な演奏でした。厚く燃え上がる演奏は惹きつけられるものがありました。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団
★★★★
一楽章、落ち着いて柔らかく美しいホルンの第一主題。ヴァイオリンの経過句も明るく美しいです。第二主題はさらにゆっくりとしたテンポで歌います。とても美しいですし、強弱の動きにも敏感に反応していて締りのある演奏です。ブレインの演奏か、ホルンはとても美しいです。締まりがあって迫力のあるクライマックスです。コーダの木管も愛らしい表現です。クレンペラーの晩年は完全に脱力した演奏になりますが、この頃の演奏には力があります。
二楽章、テンポの動きなども少しはありますが、感情を込めた大きな起伏はありませんがその分、盛り上がる部分は雄大な広がりがあります。
三楽章、表情があって、可愛いオーボエの主題。Bでテンポは速くなりますが、すごく速いテンポではありません。
四楽章、弱音で演奏される第一主題にも表情があります。穏やかで安らぎ感のある第二主題。激しいところはかなり激しく振幅の大きな演奏ですが、アンサンブルは整っていてキチッとしています。とても爽やかに終わりました。
愛らしい木管から激しいトゥッティまで、振幅の大きな演奏でした。最晩年の脱力した演奏とは別人のような演奏でした。
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マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2008年ライヴ
★★★★
一楽章、柔らかく歌うホルンの第一主題。フルートも豊かに歌います。透き通るような弱音のヴァイオリンの経過句。とてもしっかりと表情が付けられています。楽しそうで穏やかな演奏です。クライマックスでは大きくテンポを落として刻み付けるような演奏でした。透明感があって繊細な弱音が特徴です。盛り上がって頂点に入る前に少し間を空けることがよくあります。コーダのホルンが残照のように響きます。木管は活発に動きます。
二楽章、少し弱く始まって探りながら進むような第一主題。寂しげなホルンと木管。引き締まって美しい第二主題。美しく良く歌いますが、強弱の振幅はあまり大きくありません。
三楽章、夢見心地のようなオーボエ。どの楽器も豊かに歌います。Bに入るとシャープに敏感に動く弦。
四楽章、ゆったりと進む第一主題。第二主題に入ると僅かにテンポを落としました。コーダ強く湧き上がるような歓喜では無く制御された落ち着いたものでした。
よく歌う演奏で、繊細な弱音が魅力的な演奏でした。反面ffもの爆発は無く制御された感じで、もう少し解放されても良かったんじゃないかと感じました。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団
★★★★
一楽章、柔らかく揺れるような第一主題。粘っこく歌う第二主題。テンポの大きな動きは無く、カチッとしたテンポの中で音楽が進んで行きます。金管はいつものようにビンビンと鳴ります。滑らかな弦がとても美しいです。
二楽章、ゆっくりとしていますが、あまり憂いを感じるような表現ではない第一主題。暖かく孤独感もあまり感じさせないホルン。滑らかな木管の第二主題。短い音符で強く入ってくる金管の思い切りの良さはこのコンビの特徴です。
三楽章、豊かに歌う木管の主題。Bに入ってもテンポはほとんど速くなりませんが、早いパッセージを軽々と演奏するオケの能力の高さはさすがです。
四楽章、淡々とサラッと演奏される第一主題。トゥッティと第一主題の対比はとても大きな振幅でこれもオケのパワーを見せつけるような表現でした。ジワジワと力が湧き上がるような第二主題。コーダへ向けて少しずつ力がこみあげるような盛り上げはなかなか見事でした。コーダは少しアッチェレランドして輝かしい終結でした。
良く歌っていて、オケの能力も非常に高く完璧な演奏でしたが、なぜか強く共感できる演奏ではありませんでした。
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