ベートーヴェン 交響曲第7番

ベートーヴェンの交響曲第7番は、1811年から1812年にかけて作曲され、1813年に初演されました。ベートーヴェン自身が「最高の作品」と評したことでも知られ、この交響曲はエネルギッシュで躍動感に満ち、特に「リズムの交響曲」としての特徴が強調されます。全楽章を通して高揚感とリズムの多彩な展開があり、明るく生命力にあふれた音楽が聴き手に強い印象を残します。

目次

曲の特徴

  1. リズムの多様性とダイナミズム
    第7番はリズムが主役となる交響曲です。軽快な2拍子や3拍子のリズムが支配的で、各楽章で独特なリズムパターンが展開されます。特に第2楽章は、統一されたリズムが続く美しさで有名で、このリズムの反復が幻想的で瞑想的な効果を生み出しています。
  2. 喜びと高揚感に満ちたエネルギー
    この交響曲は全体的に明るく、生命力あふれる表現が目立ちます。祝祭的な雰囲気を感じさせる場面も多く、聴き手を躍動感の中に引き込む魅力があります。このエネルギーと喜びは、クラシック音楽の中でも屈指の高揚感をもたらします。
  3. 絶妙なオーケストレーション
    ベートーヴェンは第7番で、各楽器の特徴を生かした絶妙なオーケストレーションを展開しています。特に金管や木管の効果的な使用により、曲に彩りと立体感が与えられ、リズムに加えて音色の豊かさも堪能できます。

各楽章の概要

  • 第1楽章:Poco sostenuto – Vivace
    荘厳でゆったりとした序奏で始まり、突如として生き生きとしたリズムが現れる軽快な楽章です。跳ねるようなリズムが特徴的で、スピード感とエネルギーに満ちた展開が魅力的です。
  • 第2楽章:Allegretto
    静かで重厚なリズムが特徴の楽章で、静かに進行する反復のリズムが印象的です。この楽章は特に人気があり、切なくも荘厳な雰囲気を持っています。シンプルなテーマが展開されながら、深い感情を表現しており、神秘的で幻想的な美しさが感じられます。
  • 第3楽章:Presto
    スケルツォにあたるこの楽章は、明るく快活なリズムが特徴です。エネルギッシュでユーモラスな要素も含まれており、聴き手に活力を与えるような躍動感があります。中間部のトリオではやや落ち着いた雰囲気になりますが、再び活気に満ちた主部に戻ります。
  • 第4楽章:Allegro con brio
    フィナーレは圧倒的なスピード感と力強さで、まるで舞踏のように勢いよく展開します。勢いを持って進行するリズムが続き、最後まで力強く駆け抜けるようなエンディングが特徴です。このフィナーレはまさに「リズムの交響曲」と呼ばれるにふさわしい、圧巻の高揚感を持っています。

総評

交響曲第7番は、ベートーヴェンのリズムとエネルギーの表現が凝縮された作品であり、喜びや高揚感をリズムを通じて伝える斬新な構成が特徴です。特に第2楽章の幻想的な美しさや、第4楽章の爆発的なエネルギーは、多くの人に愛される理由の一つです。クラシック音楽における「リズムの交響曲」として、ベートーヴェンの革新性と独創性が光る名作として評価されています。

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第7番名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★★
1978年のライブ録音。

一楽章、まず分厚い響きに圧倒されます。すごいスピード感とクレッシェンド。カラヤンのスタジオ録音からは想像がつかないほど激しい演奏です。
激しい演奏でも、音が荒れないところは、さすがにベルリンpo。鍛えられています。
弓から松脂が飛び散るような、弾くというより叩きつけているような激しさです。カラヤンのライブがこんなに熱っぽいものだとは知りませんでした。

一楽章だけでも、かなり聴き応えがあって、すごく満足です。

二楽章、速めのテンポで畳み掛けるように思いのたけをぶつけてくるように感情の振幅の激しい演奏です。弦楽器の弓をいっぱいいっぱいに使って、すごく豊かな表現をしている感じがします。すばらしいライブです。

三楽章、カラヤンの音楽が、こんなに生き生きしていたとは驚きです。この当時はカラヤンの音楽が一番充実していた時期なのでしょう。
カラヤンがこれだけのライブをしていたのなら、もっとライブをCDにするべきだったと思います。
カラヤンらしく響きが分厚くグラマラスなベートーベンですが、これだけやられると納得の演奏です。

四楽章、凄い!怒涛のフィナーレ。カラヤンがベルリンpoを煽る。超高級スポーツカー(フェラーリ)にでも乗っているかのような豪華さが猛スピードで駆け抜けていくような爽快さ。

スタジオ録音で聴くような厚化粧のカラヤンとは別人です。彫りも深いし文句の付け所が無い名盤を発見した思いです。
こんなに燃えたカラヤンの演奏は初めてです。こんなに凄いとは!!!!!

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー管弦楽団

朝比奈/大阪フィル★★★★★
一楽章、深々とした響きに魅了されます。朝比奈の演奏を聴いていると、この遅めのテンポ設定が正しいと思えてきます。味わい深い演奏です。
新日本poとの演奏では残響が多く、この曲のリズムがあまり明瞭ではなかったのですが、この録音は比較的デッドなので、細部まで見通せるので、いろんな楽器の動きが分かりやすいです。
それにしても、綺麗な音で鳴っています。ヨーロッパのオケだと言われても誰も疑わないでしょう。
自然な表現で、特に誇張することもないのですが、その自然体がオケに徹底されていて、全員が同じ方向へ向かって演奏しています。すばらしく統率がとれています。

二楽章、スピード感はないけれど、一音一音確かめるように一歩一歩着実に進んで行く音楽にこちらも同期化できます。
まるで、老人と一緒に自然の中を散歩しながら自然の動植物の説明を聞いているような、ほのぼのとした、優しさがあります。
そして、この老人といつかは永遠の別れが来るんだなぁと言う惜別の思いがこみ上げて来る。

三楽章、広々としたスケールの大きな音楽。楽譜に忠実にがモットーの朝比奈の演奏ですが、単に楽譜に書いてあることを音楽にしたら、これだけ楽章によって多彩な表情の変化も描き出せるのでしょうか。
これは、楽譜に書いてあることに対する朝比奈の深い理解があるからこそ実現した音楽だろうと思います。

四楽章、ここでも、ゆっくり目のテンポをとっていますが、このような速いテンポの楽章であっても、音楽が凶暴化しないところも朝比奈の趣味の良さです。
重戦車が樹木をなぎ倒して進軍するような演奏も可能な楽章ですが、そのようなことは微塵も感じさせません。
これまで、何種類かの演奏を聴いてきましたが、これだけ格調高いベートーヴェンは朝比奈の演奏が最たるものでないかと思います。

テンポが遅いだけに若干弛緩したかなと思われる部分もあったような気もしましたが、そんなことは些細なことで、全体を通してすばらしい演奏でした。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

フルトヴェングラー★★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで開始しました。開始1分ぐらいから急激にテンポを速め木管の主題からまたテンポを落としました。クレッシェンドに伴ってテンポを速めるのはフルトヴェングラーのいつものことですが、これが不自然でないところがフルヴェンのフルヴェンたるところですね。このテンポの動きを伴った音楽に次第に引き込まれて行きます。ここまで自由にテンポが動くと原型がどんなんだったか確かめてみたくなります。

二楽章、かなり遅いテンポで始まりました。ずっと遅いテンポのままで、悲嘆に暮れるような演奏です。

三楽章、ティンパニがかぶってきて全体を消してしまうことがあります。テンポはよく動きます。感情がストレートに表現されていて、起伏の激しい音楽です。

四楽章、遅いテンポで始まりました。主題の部分からは通常のテンポになりました。その後さらに加速したとおもったらまたテンポダウン。目まぐるしいテンポの変化です。終結部に向かってどんどんテンポを追い立てて行きます。凄い!圧巻でした!

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、ゆったりと尾の長いトゥッティの響きに比べると後にに続くオーボエやクラリネット、ホルンがとても小さい音量のような感じです。伸びやかで巨大な響きのトゥッティ。ギュッと締まった美しいオーボエ。ゆったりと舞うようなフルートの第一主題。かなり遅いテンポで重量級の演奏です。

二楽章、静かにそして暗闇に沈みこむように演奏される弦の第一主題。リハーサル時間を長くとっていたチェリビダッケらしいとても緻密な変奏。とても静寂感のある弱音。

三楽章、テンポは遅いですが、重くはありません。オーボエの旋律などもとても軽いです。弱音と激しい部分の対比がすごく克明で、激しい部分はかなり強烈です。

四楽章、重戦車が走るような遅いテンポとすごいエネルギーの冒頭です。トゥッティは全開のもの凄いエネルギー感です。最後まで巨大なスケール感のどっしりとした演奏でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年ライヴ

カラヤン★★★★★
笛吹のクラシック音楽ライヴ と オーディオの記事の笛吹さんから音源を送っていただきました。ありがとうございます。
一楽章、余韻を長く残すようなトゥッティの4分音符。この演奏も1978年のライヴほどでは無いにしてもスピード感があります。次から次から波が押し寄せるような上昇音階。楽しげに踊るような第一主題。ダイナミックレンジが広くトゥッティは巨大な響きです。この時期はちょうどザビーネ・マイヤーの問題が勃発してカラヤンとベルリンpoがぎくしゃくしている頃ですが、この演奏からはそのような雰囲気は全く感じられません。速いテンポは荒さにはならず激しさとなって表現されます。

二楽章、この楽章も速いテンポですが、一転して物悲しさを感じさせる演奏です。引きずるような第一主題。主題が繰り返されると豊かに歌ったり、消え入るような弱音になったりして変化に富んでいます。トリオではソロが美しく絡みます。フルスイングするような弦がとてもダイナミックです。深く染み入るような弦。ライヴでも集中力が高く丁寧な演奏です。

三楽章、ダイナミックな冒頭でした。締まりがあって美しいオーボエ。トリオに入っても穏やかにはならず、動きのある演奏です。弱音は消え入るようで、トゥッティとの振幅の差がとても大きいです。

四楽章、この楽章は物凄い勢いで始まり、さらにテンポを加速します。猛スピードで突進するような凄い演奏ですがクライバーのように頻繁にテンポが変わらないので、安心して聞ける部分はあります。

ベーレンライター版を先取りしたような速いテンポ。それに付いて行くベルリンpoの集中力の凄さ。カラヤンのベト7ライヴはどれも凄い!
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小澤征爾/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1982年ライヴ

小澤征爾★★★★★
一楽章、少し戸惑いながらの冒頭の4分音符で若干アンサンブルが揃わない感じがありました。カラヤンのライヴのようなスピード感はありません。際立った表現はありませんが、悠然としたたたずまいの演奏で俗世界のベートーベンの演奏評などには動ぜず自信にあふれた演奏です。コーダではテンポを速めました。

二楽章、第一主題は切々と歌いますが、憂いに満ちた響きが深く訴えかけて来ます。

三楽章、かなり積極的な表現になって来ました。オケの音も鮮度が高くなったような、熱気でしょうか?オケの色彩感も濃厚で見事です。音楽の起伏も大きくなって来ました。

四楽章、この楽章は重く大きい編成のオケをグイグイ引っ張って速いテンポの演奏をしていますが粘った表現もあります。音楽が次第に加速するようなエネルギーがあります。終盤に向けてもの凄いエネルギーの噴火です。コーダの盛り上がりも凄いものがありました。

悠然としたたたずまいの第一楽章から次第に熱気をはらんだ第四楽章の猛烈な爆発は物凄いものがありました。正にライヴの小澤の面目躍如と言った演奏でした。
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ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1950年ライヴ

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一楽章、一音一音探るようにゆっくりと進みます。序奏部分でもかなりテンポが動きます。提示部に入ってもあまりテンポは速くありません。ところどころで感情の込められた歌があります。

二楽章、冒頭から憂いを秘めた響きです。引きずるように重く沈み込むような演奏。テンポの動きに悲痛な表現が加味されて凄く深刻な表現に感じます。

三楽章、二楽章の重い雰囲気から一転して明るく元気な表現です。音色もパッと花やいだ雰囲気になります。トリオは重厚な表現で変化があります。この楽章でもテンポは大きく動いています。

四楽章、ゆったりと泳ぐようなテンポで始まりましたが、次第に加速して凄く激しい演奏になったかと思うと、またテンポを落としてゆったりとした演奏になったりしてめまぐるしいテンポの変化です。最後まで手綱を緩めることなく怒涛のコーダでした。

最近の演奏に比べると、テンポも遅く重い演奏でしたが、自在なテンポの変化や叩き付けるような表現。そして圧巻のコーダのすばらしい演奏でした。
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カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

>icon★★★★★
一楽章、「運命」で感じた猛烈なスピード感は影を潜めて、しっとりとした表情です。
繊細な音の扱い。ウィーンpoがとても透明感の高い締まった音を出しています。
テンポも音楽に合わせて自由に動きますが、作為的な感じはありません。ウィーンpoがクライバーの指揮に献身的な演奏をしているのが伝わってきます。相思相愛だったんでしょう。

二楽章、比較的速めのテンポで推進力を重視しているような演奏です。推進力がある分、深みを感じることができません。

三楽章、推進力があるので、スポーツカーのような俊敏さはありますが、スケールの大きな演奏にはなりえません。しかし、推進力や躍動感は凄いものを持っています。

四楽章、とても精緻な音楽で、ちょっと触れば壊れてしまいそうなガラスアートのような透明感と繊細さを併せ持った貴重な記録だと思います。

この曲のスタンダードとして位置づけるような演奏ではありませんが、クライバーの芸術性の高貴さが表出された名演奏だと思います。

クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ティーレマン★★★★★
一楽章、コンパクトな響きですが、ティーレマンらしくテンポを頻繁に動かして旺盛な表現です。大胆にテンポは動きますが不自然さはありません。テンポを落とす部分ではたっぷりと歌います。

二楽章、艶やかな弦が美しく歌います。ゆったりとしたテンポで深みのある演奏です。

三楽章、動きのある演奏です。一楽章の冒頭のコンパクトな響きから次第に大きな響きになって来ました。強弱の反応もとても良いです。

四楽章、この楽章では三楽章で聞かれた巨大な響きではなく、軽快に進む音楽ですがテンポの変化は大きくかなり大胆です。コーダの追い込みは見事でした。

大胆に動くテンポと濃厚な表現。ウィーンpoの艶やかな美しい響きと相まってとても良い演奏でした。
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パーヴォ・ヤルヴィ/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団

ヤルヴィ★★★★★
一楽章、大切な物を扱うように丁寧な弱音部。第一主題は速いテンポで鋭角的ですが、軽快な表現です。編成は小さいですが、とても力強い演奏です。

二楽章、アタッカで入りました。主題の音をあまり続けずに僅かに短めに演奏しています。全体に短めの音で演奏されるので、楽器がくっきりと際立ちます。

三楽章、この楽章にもアタッカで入りました。音が空間に飛び散って行くようにエネルギーを放出します。とても力強く明快です。鋭いナチュラルトランペットが突き抜けて来ます。引き締まった筋肉質の演奏で動きが克明で音楽が生き物のように活発です。

四楽章、同じリズムを繰り返す部分で音量を落としてクレッシェンドしたり一つのフレーズでも音量の変化があったりといろんなこだわりがあります。いろんなリズムが絡み合っているのも良く分かります。コーダへ向かって行くエネルギーは凄いものがありました。ティンパニの存在感もとても大きく、クレッシェンドがとても効果的に決まっていました。

いろんな楽器の動きが手に取るように分かる演奏でした。作品の面白さを存分に伝えてくれて演奏です。
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シュミット・イッセルシュテット/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

イッセルシュテット★★★★★
一楽章、甲高い4分音符。ゆったりとしていますが歯切れのいい序奏。艶やかで美しい響きです。あまりアクセントなどを強くは演奏しないので、なだらかで穏やかな演奏に感じます。第一主題の前で僅かにテンポを落としましたが自然な範囲です。力みの無い自然体の演奏は安心して聞くことができます。華やかで色彩感豊かな演奏です。

二楽章、非常にゆっくりと刻み込まれるような第一主題。奥行き感があって、ホールに響く残響がとても美しいです。豊かな歌と熱気のこもった演奏。

三楽章、この楽章もゆったりとしていますが、繊細さもあります。トリオはさらにゆったりとしていてしっとりとしています。

四楽章、艶やかなヴァイオリンが美しい。トゥッティでも荒れることなく、なまめかしい程の美しさです。コーダは熱っぽく圧巻のアッチェレランドでした。

イッセルシュテットのベートーベンは優等生的で主張の無い演奏が多かったのですが、この演奏はゆったりとしたテンポに艶やかで美しい響きやコーダの圧巻のアッチェレランドなど聞かせどころいっぱいの演奏でした。
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ファンホ・メナ/BBCフィルハーモニック

ファンホ・メナ★★★★★
一楽章、短めの4分音符。暖かく柔らかい弦。引き締まった表現。生き生きと躍動感のある第一主題。聞いた事のない名前の指揮者ですが、オケが一体になった躍動感はすばらしいものがありました。

二楽章、暗く沈み込むような主題。心がこもって、切々と歌い上げています。

三楽章、テンポは速めで、締った表情で躍動感があります。ティンパニが硬質ですが、釜が良く鳴って良い響きです。トリオはとても良く歌います。

四楽章、かなりの快速です。華やかに盛り上がる部分と静かに落ち着く部分の対比も見事です。生き生きとして凄い躍動感です。ティンパニの強打を伴った快演でした。

名前を聞いた事の無い指揮者でしたが、とても表現の幅が広く、常に全体のバランスよりも強めに入るティンパニの心地よさ。コーダへ向かう怒涛の勢い。作品の魅力を余すことなく表現した快演でした。
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コチシュ・ゾルターン/ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団 2000年ライヴ

ゾルターン★★★★★
一楽章、豊かに歌う木管。速いテンポの弦の刻み。第一主題も速いテンポですが、躍動感や生命感があって、生き生きとしています。緊張感があって、表情も引き締まっています。全力でぶつかってくるような凄みがあります。

二楽章、この楽章も速いテンポです。二小節に一度頭の音を強く演奏しています。この楽章も良く歌います。

三楽章、この楽章も速いテンポで生き生きとした演奏が続きます。凄いエネルギーの発散です。トリオは独特の歌い回しです。凄い勢いのある演奏ですが、若干雑になる感じもあります。ですが、これだけのエネルギーを発する演奏は珍しく貴重な演奏だと思います。

四楽章、一気呵成に突き進む猛烈な演奏です。オケも全力投球です。波打つようにうねる音楽。

もの凄い勢いの演奏でした。生き生きとした躍動感と刻み込まれるような音楽。これだけ強いエネルギーを発散する演奏も珍しいと思いました。
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ベルナルト・ハイティンク/シュターツカペレ・ドレスデン

ハイティンク★★★★★
一楽章、最初の4分音符が短めで低音が遅れて聞こえます。木管はたっぷりと歌います。続く弦の刻みはスピード感があります。美しく爽やかなヴァイオリン。優しい表情の第一主題、そしてサポートする弦も優しいです。トゥッティは堂々としたたたずまいでした。自信に満ちた落ち着いた歩み。深みと奥行きのある豊かな響き。

二楽章、静かで重い第一主題。目立った表現はしていませんが、悲しみがジワジワと込み上げてきます。力みも全く無く、オケを無理にドライブすることもありませんが、とても深い演奏です。

三楽章、解放された柔らかい響き。本当に力が抜けた自然体の演奏から凄い生命感を感じるのがとても不思議です。ビックリするような仕掛けなども無く、正に正攻法です。

四楽章、速めのテンポですが、オケの響きは伸び伸びとしていて余裕があります。ホルンが咆哮することもありません。常に余裕のある美しい音色で、最後は僅かにテンポを速めました。

全く力みの無い、美しく柔らかい響きで、大きな表現はありませんでしたが、自然と心に届く音楽はとても魅力的でした。
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カルロス・クライバー/バイエルン国立管弦楽団 1986年5月19日 昭和女子大人見記念講堂

クライバー★★★★★
笛吹のクラシック音楽ライヴ と オーディオの記事の笛吹さんから音源を送っていただきました。ありがとうございます。

一楽章、とまどうように弦のフライイングのある冒頭の4分音符。凄い勢いで加速して行きます。上昇音階の部分は常に加速している感じでクライバーの気合が感じられます。オケの特徴か木管の音が太く、可憐な感じはあまりありません。弦の表現はとても積極的です。ダイナミックで濃厚な表現です。テンポはかなり動いて嵐のような凄い勢いです。コーダも凄いスピード感です。この燃焼度の高さが最後まで持続するのか心配になります。

二楽章、枯れた響きで、暗く渋い第一主題の演奏です。速めのテンポですが、切々と訴える表現で美しく歌います。沈み込むような悲しみの表現はありません。トリオの最後のクレッシェンドは思い切り良く鮮烈です。

三楽章、ここでも積極的な表現の弦に疾走感があります。トリオも速めのテンポですが、表情はとても豊かです。トランペットがテヌートぎみに演奏します。凄い勢いですが、とても新鮮な音楽です。

四楽章、雪崩れ込むような冒頭。そしてここでもテンポを追い込みます。83年のコンセルトヘボウのライヴのようなガラス細工のような繊細さはありませんが、温度感が高く熱気に溢れています。まるで台風のさなかのような猛烈な嵐のようなスピード感です。コーダへ向けてさらにテンポを速めます。怒涛の終演です。演奏終了と共に上がるブラヴォーの声にも納得です。この会場にいた人は狂喜だったろうと思います。

積極的で新鮮な音楽。聞いていて血液が沸騰しそうになるようなアッチェレランド。物凄い熱気と怒涛のコーダでした。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ベートーヴェン:交響曲第7番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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