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たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第5番「運命」名盤試聴記
クレール・ジボー/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
★★
一楽章、ホールが良く鳴っていて、心地よい響きです。あれっ?と思うような表現もあったりしますが、この演奏も屈託無く、伸び伸びとした演奏です。
二楽章、クラシック音楽初心者の人が、とりあえず聴いてみるという目的には良い全集でしょう。
9番はちょっと、いただけない演奏でしたが、その他は強いアクもなく、その分作品の内面を抉り出すようなこともありませんが、録音も悪くはないので、響きとして快適に聴くこともできるので、1,500円は安いです。
三楽章、全く遠慮なく吹きまくるホルン。
四楽章、ここでもホルン全開です。この全集はあまり考えずに、気持ちよく響いている音を楽しめば良いんだと納得しました。
宇野功芳/新星日本交響楽団
★★
一楽章、遅い出だしであまり緊張感も無かった。音楽に推進力が無く、停滞感が支配しています。緊張感が無く、テンポを落としたプローベのような感じさえします。途中でさらにテンポを落とす場面もありました。
二楽章、散漫な部分があるかと思うと、切々と音楽を訴えてくる部分もあり、宇野の音楽がオケに完全に伝わっていないように感じます。
三楽章、この楽章もテンポが遅く、音楽が弛緩しているようにさえ感じてしまいます。
四楽章、すごく遅い冒頭でオケもアンサンブルを合わせるのに苦労している様子が伺えます。聴いているこちらが、テンポの遅さに付いて行けませんでした。
小澤 征爾/シカゴ交響楽団
★★
一楽章、速いテンポで勢いのある第一主題。第二主題に入っても安らぐ感じは無く、せかされる印象であまり落ち着きがありません。若い頃の小澤のあふれんばかりのエネルギーを強く感じさせる勢いがあります。
二楽章、一転してゆったりとしたテンポで歌う第一主題。微妙なテンポの動きもあります。付点を強調した第二主題。
三楽章、一楽章の勢いは消え去り、あまり力強く無い主題です。トリオのチェロとコントラバスは浅い響きで重量感はありません。
四楽章、強い音ですが、表面的な第一主題。強弱の変化が俊敏ではなく、締った演奏ではありません。コーダでもトランペットが浮いているような感じがしました。最後はちょっとバタバタした感じもありました。
一楽章の勢いからかなりの名演を期待しましたが、最後はバラバラな感じになってしまいました。若さのエネルギーが空回りしたような印象です。
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マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
★★
一楽章、速いテンポの第一主題。控えめなホルン。淡々とした第二主題。あまり大きな表現は無く淡々としていますが、非常に精緻な演奏で、楽器の出入りなどオーケストレーションがとても良く分かります。
二楽章、自然に歌う第一主題。ここでも控えめなトランペットの第二主題。変奏も自然な流れです。
三楽章、主題を演奏するホルンはここでも控えめです。トリオも強調することは何も無く、あっさりと進みます。
四楽章、かなり解放されたトランペットの第一主題。引っかかるようなところは全く無く、テンポの動きもほとんど無く、極めてオーソドックスな表現です。金管を突出させること無くマイルドな響きで音楽を作っていますが、反面欲求不満になるような煮え切らない感じが残ります。軽くサラッと流した感じに聞こえてしまいました。
自然体であっさりとした演奏でした。全く力むことは無く燃え上がるような感情表現もありませんでした。精緻な演奏ではあったのですが、煮え切らないような感覚になってしまった演奏でした。
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ルドルフ・ケンペ/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
★
一楽章、バランスの良いマイルドな音色です。冒頭のフェルマーターは長かった。
落ち着いた堅実なテンポの音楽運びで、切迫感がなくゆとりさえ感じます。テンポの動きもありますが、情動的で自然発生的な動きのように感じます。
二楽章、低域が厚いピラミッド型のバランスが常に保たれているので、すごく音楽が穏やかです。録音特性自体もナローレンジなのだと思いますが、無理にワイドレンジに聞こえるようにした録音よりは自然だし、この程度のナローレンジであれば聴いているうちに慣れてきます。
三楽章、金管楽器も控えめです。
四楽章、トランペットがほとんど聞こえません。盛り上がりを期待したところで肩透かしを食わされます。
最後まで解放してもらえないような不満が残りそうです。