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ベートーヴェン 交響曲第2番名盤試聴記
クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★☆
一楽章、堂々と力強く深みのあるトゥッティから愛らしい木管まで、表情が豊かです。潤いのある弦。とても表現が積極的です。最近のピリオド奏法の演奏は全く意に介さず、ベートーベンはこうあるべきと言うウィーンpoの自信に満ちた演奏です。オケも豪快に鳴らしています。
二楽章、静かに歌われる第一主題。美しい第二主題。僅かにテンポが動いて深みのある演奏になっています。
三楽章、弱音の繊細さとティンパニも入るトゥッティのドカーンと来る部分の対比が良いコントラストです。テンポは速めです。
四楽章、軽快な第一主題。重量級の演奏ですが、その分腰も重い感じがします。鋭角的な強弱の変化はありませんでした。
ウィーンpoが自信に満ちた演奏をしています。重量級の演奏でしたが、鋭角的な強弱の変化が無いのが少し残念でした。
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ハンス・シュミット・イッセルシュテット/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★☆
一楽章、とても良く歌う木管。柔らかいトゥッティ。シルキーな美しい響きです。堅実な足取りで、非常に豊かな表情の第一主題。非常に美しく丁寧な演奏なのですが、スタジオ録音なので、とても冷静でよそ行きのような、激しい表現が少ないような感じがします。
二楽章、夢見るような美しい第一主題。美しい音楽がサラサラと流れて行きます。伸びやかに歌う弦。くっきりと浮かび上がる美しい木管。どこを取ってもとにかく美しいです。
三楽章、一転してエネルギー感の強い演奏です。キリッと立ったオーボエが美しい。
四楽章、イッセルシュテットの強い主張は無く、ひたすら美しい音楽を追求しているようです。鋭角的な強弱の変化もありません。なだらかに流れる音楽です。コーダに入っても猛烈な演奏にはならず、落ち着いた表現です。
非常に美しい演奏でした。しかし、美しい演奏に終始して、激しい表現や、鋭角的な強弱の変化などはありませんでした。ただ、この作品の今まで聞いたことのない美しさを聞かせてくれたことは大いに評価したいと思います。
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朝比奈 隆/新日本フィルハーモニー管弦楽団
★★★★
一楽章、この全集の中では、かなり激しい演奏です。重量感もあり、他の曲で感じた雄大さとは違うところを表現しようとしているのでしょうか。
二楽章、朝比奈は2番と3番の間に存在する大きな進化を描き分けているようです。この2番までをハイドンやモーツアルトの影響下にある作品として、音楽にしています。
スウィトナーの演奏では、2番と3番の間の違いをほとんど感じさせなかったのですが、この演奏では見事に表出しています。
三楽章、編成は小さくしていないらしいのですが、小さく聞こえるところが不思議です。
四楽章、めずらしく最後は、かなり爆発しました。
オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ
★★★★
一楽章、精緻なアンサンブルと美しい弦楽器の響きをベースに自然な流れの音楽を作っています。
大げさな表現や、オケを強引に引きずり回すようなテンポの動きなども一切なく、ドイツの伝統に根ざした演奏をしている感じで、スウィトナーもオケも阿吽の呼吸で、当然の業務をこなしているような、安定感と自信に満ち溢れています。
二楽章、空間に広がっていく響きがとも美しいです。
三楽章、この全集はベートーヴェンの交響曲に正面から向き合った堂々とした演奏だし、ドイツの伝統にも根ざしたもので、はじめてベートーヴェンを聞く方にも推薦できます。
全く力んだところがないので、さらりと音楽が流れて行きます。
四楽章、設計がしっかりしていて、終結部へ向けての運びも見事でした。
オイゲン・ヨッフム/ロンドン交響楽団
★★★★
一楽章、堂々としたたたずまいの風格ある演奏です。重厚な響きが印象的です。
オケの反応も良いです。ダイナミックで表情もメリハリがあって良いです。
若々しい演奏でした。
二楽章、この全集は曲によって演奏にばらつきがあるような感じがしていますが、この曲はなかなか良いと思います。
三楽章、
四楽章、全体に速めのテンポで快活な演奏になっています。
デヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
★★★★
一楽章、元気です。若々しい表情が良いです。アーティキレーションの指示に対して極端なくらいに敏感に反応している感じの演奏で、表情がすごく豊かです。
ミュートしたホルンが強く演奏されますが、こんなのは今まで聴いたことがありません。こんなのが楽譜に書かれていたのか?
すばらしく美しい響きで、道化師のようなちょっと滑稽な音楽が奏でられているようなミスマッチは感じるのですが、これが無条件に楽しいのです。ベートーヴェンの音楽って、これだけいじられても鑑賞に堪える音楽だというのもすごいことですね。
二楽章、この演奏を聴いていると、当時のベートーヴェンが現在で言えばロック・ミュージシャンのような存在だったんだなあと思わされます。
革新的な音楽を追及していて、当時の人間や政治のあり方にも疑問を持ち、それを音楽にぶつけるような時代と戦う青年のエネルギーを感じ取ることができるような、そんな演奏はこれまでなかったので、とても新鮮です。
これまでの演奏はベートーヴェンをあまりにも神格化し過ぎていたのではないかと思えてくるくらい、この演奏には説得力があります。もちろん聴く人によって賛否は分かれると思いますが、革新的な演奏であることは疑う余地は無いと思います。
三楽章、
四楽章、伸びやかな木管の響きもとても気持ち良いです。トーンハレってこんなに上手いとは知りませんでした。
ヨゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団
★★★★
一楽章、軽い響きで、BGMのような感じがします。
表現もマイルドで耳あたりが良い演奏です。
二楽章、ナローレンジでバランスの良い録音で、美しい演奏を聴かせます。
三楽章、刺激のない落ち着いた響きで安心して聞けます。
四楽章、大袈裟な表現は一切なく、誰にでもお勧めできる良い演奏です。
しかも全集で1,050円は安過ぎる!
エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団
★★★★
一楽章、密度の薄い音ですが美しい響きです。かなり力強い第一主題。第二主題は僅かに穏やかになりますが、それでも元気のある演奏です。かなり思いっきりオケを鳴らした演奏で豪華絢爛な雰囲気です。
二楽章、サラッとした美しさがある演奏です。とても華やかでキラキラと輝くような響きがあります。
三楽章、強奏部分でちょっとあわてるような感じがあります。この華やいだ雰囲気はこの作品にとても良く合います。
四楽章、重くもたつくような第一主題。コーダに入ってトランペットなどがクレッシェンドする場面もありました。
全体を通して華やかで美しい演奏でしたが、音の密度が薄いのと、あわてたり、もたついたりしたところが残念でした。
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