目次
- 1 ベートーヴェン 交響曲第1番名盤試聴記
- 1.1 オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ
- 1.2 ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.3 クラウス・テンシュテット/メックレンブルク・シュターツカペレ
- 1.4 ヨゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団
- 1.5 宇野功芳/新星日本交響楽団
- 1.6 エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団
- 1.7 ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1966ライヴ
- 1.8 朝比奈 隆/NHK交響楽団
- 1.9 クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.10 グスタフ・クーン/ボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団
- 1.11 エーリッヒ・ベルゲル/ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.12 エーリッヒ・ベルゲル/ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.13 バリー・ワーズワース/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.14 ダニエル・バレンボイム/ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団 2012Proms
- 1.15 オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
ベートーヴェン 交響曲第1番名盤試聴記
オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ
★★★★☆
一楽章、冒頭からすごく美しい音色で、魅了されます。音色が瑞々しいし音楽が生き生きとしています。音楽が柔軟で伸びやかで、とても気持ちがいい。
二楽章、大げさな表現はありません。むしろ淡々と音楽が進んで行く感じですが、節度があって安心感があります。
三楽章、アーティキュレーションに対する反応もすごく良く、演奏がキビキビしていて良いです。
ただ、この全集全体について言えることなのですが、録音が低域をあまり厚く録っていないので、響きの厚みがなく、少し薄く響いてしますのが難点です。
響きは透明感があり、大変美しいし、低域のもやもやしたものも付きまとうことがないし、良いのですが、もう少し低域の厚みが・・・・・・。と言う点が唯一のマイナス点です。
四楽章、
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★☆
一楽章、他の曲で感じた、異常と思えるほどのテンポの速さはないようです。また、この曲では編成が小さいのか、ポッテリしたような肥満体のような響きもなく、聴きやすい演奏です。
テンポが速いとか言っても、元々楽譜の表記であれば、猛スピードになるのですから、何が正解かも分かりませんが、ただ、カラヤンと言う人がそのような学術的な時代考証などから演奏スタイルを変えたりする人だとは考えにくいので、3番以降の作品のテンポの速さは、カラヤンの考えだったのでしょう。
美しい演奏で、聴きやすかった。響きの透明感はないけど・・・・・・。
二楽章、何事も無く美しい音楽が過ぎて行きます。
三楽章、この全集を聴いてみてカラヤンがベートーベンの内面を表現しようとはしていないと感じました。
私は、作品によってはカラヤンの演奏が好きなこともあるので、決してアンチ・カラヤンではないのですが、やはりベートーベンをクラシック音楽の中心に据えるとしたら、クラシック音楽の歴史の中で最初に音楽に強いメッセージを込めたベートーベンの作品に内在するものを表現しない指揮者を「帝王」と呼ぶのはどうかと思いました。
クラシック音楽を一般の人たちにも広めたカラヤン功績は高く評価するべきだと思いますが、入門編の指揮者だったのか?
このあと、ライブCDも届く予定なので、それがどんな演奏なのか楽しみです。
四楽章、かなり積極的な音楽です。この一番は良い演奏でした。
クラウス・テンシュテット/メックレンブルク・シュターツカペレ
★★★★
一楽章、東ドイツ時代の録音です。以外に伸びやかな音で瑞々しい演奏です。
二楽章、この頃のテンシュテットはまだ大人しかったのだろうか。いつからタガが外れたんだろう。もっともこの曲で大暴れすると言うのもどうかとは思うが・・・・・・。極めて常識的な演奏です。
三楽章、楽しい演奏でした。
四楽章、動きのある楽章では、テンシュテットらしい振幅の大きい音楽が聴けます。畳み掛けるような音楽の運びは天性のものなのでしょうか。
聞く側を引き込むものを持っています。表情が生き生きしていて、知らず知らずのうちにこちらも音楽にのってからだが動いていました。
ヨゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団
★★★★
一楽章、丁寧な演奏のような印象を受けます。表情もあり元気で若々しい感じがあります。
二楽章、比較的速めのテンポで進みます。何と言っても、暖かみのある音色とエッジの立っていないまろやかな演奏が特徴で、とても聴きやすいです。
三楽章、優しい雰囲気がとても良いです。ベートーヴェンの若いエネルギーが発散されるような元気な演奏も良いですが、この演奏のような優しいのもとても良いです。
四楽章、暖かみがあって、爽やかな雰囲気も持ち合わせた演奏でした。
宇野功芳/新星日本交響楽団
★★★★
一楽章、注意深い出だし、柔らかい表情の演奏です。予想外のところでテンポが落ちたりします。オケの表現はとても上品で好感がもてるものです。全体に遅めのテンポですが、所々でさらにテンポを落とします。
二楽章、この楽章も遅めのテンポで丁寧に上品に描かれて行きます。
三楽章、良い感じのテンポで始まりましたが、すぐにテンポが落ちて遅くなってしまいました。ここでも丁寧で品の良い演奏を聴かせてくれますが、ベートーベンの若い勢いのようなものが感じられないのが少し残念です。
四楽章、控え目で上品な表現には好感が持てる演奏でした。
エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団
★★★★
一楽章、シルキーで柔らかい響きの序奏。第一主題からは良く歌いますが、推進力はありません。ゴリゴリと力強い強弱表現ではありませんが、柔らかく美しい表現です。
二楽章、録音された年代にもよるのだと思いますが、潤いの無いちょっと乾いた響きです。デリケートな表現もしているようですが、伝わっては来ません。
三楽章、反応の良いオケ。この楽章は潤いのある瑞々しい響きです。
四楽章、ベートーベンの最初の交響曲であっても完成度の高い作品であることを如実に示すような、緻密な演奏です。若さと活気に溢れる演奏でした。
活気に溢れた若々しい演奏でしたが、二楽章の平板な表現が少し残念でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1966ライヴ
★★★★
一楽章、最初の伸ばす音の終わり方が独特です。落ち着いたテンポの第一主題。ちょっとザラついた弦の音です。流麗な演奏で、知らず知らずのうちに音楽が流れて行っています。
二楽章、今では、そんなに速いテンポだとは言えませんが、当時としてはかなり速いテンポだったのではないでしょうか。一楽章同様、ひっかかるところは一切なく、自然に音楽は流れて行きます。
三楽章、一転して、かなり強弱の幅を大きく取ってダイナミックな演奏です。
四楽章、かなり速い第一主題。猛烈な勢いで突き進みます。楽章が進むにつれて音楽に生気が宿って来て、この楽章はすごく生き生きとした畳み掛けるような演奏です。
二楽章までは眠っているような演奏でしたが、三楽章から目が覚めて、急に音楽に勢いを増しました。四楽章などは凄い疾走感ではつらつとした演奏でした。
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朝比奈 隆/NHK交響楽団
一楽章、まだ若い朝比奈の情熱が溢れ出る演奏。後の全集での自然体の演奏よりも劇的な表現です。
二楽章、録音された年代を考えるとオケもかなり健闘しています。
三楽章、ティンパニが強めのバランスで演奏に力強さを与えています。
四楽章、この演奏を聴くと、この当時すでにN響は欧米のオケと遜色ない技術水準まで鍛え上げられていたんだと驚きます。
力強い演奏でした。
クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★
一楽章、かなり盛大なヒスノイズ。流れるような第一主題。優雅で伸びやかな演奏です。
二楽章、ノイズがかなり耳障りです。横に流れる音楽です。縦方向にがっちりと爪痕を残すような演奏ではなく、さらっと流れる演奏です。テンポも度々動いています。
三楽章、縦方向に強弱を強く意識した演奏ではなく、メロディの流れを重視した演奏のようです。
四楽章、軽快な第一主題。前へ進む力を感じさせる演奏です。
アバドらしい流れの良い演奏でしたが、私にはこの演奏がベートーベンらしい演奏とは思えませんでした。もっと縦にガツガツと叩くような演奏がベートーベンの音楽だと思うからです。あと、盛大なノイズもいただけません。
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グスタフ・クーン/ボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団
★★★
一楽章、ブレンドされた響きで柔らかい序奏。強弱の変化はありますが、大きな変化ではありません。とても流れの良い演奏です。
二楽章、少し硬質で緻密なアンサンブルが緊張感を生み出しています。特に仕掛けなどは無く正面から作品と対峙しているようです。
三楽章、とても真面目な演奏です。
四楽章、すごい弱音で始まった第一主題。柔らかいトランペット。テンポは速めですが、疾走感はありません。上のパートは強弱の変化があるのですが、それに伴ったコントラバスの変化が感じられませんので、ダイナミックには聞こえません。
とても真面目に作品と対峙した演奏でしたが、その分面白みも無く、ダイナミックさもありませんでした。作品そのものを聴く分には良い演奏だと思いますが、あまり楽しめないと思いました。
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エーリッヒ・ベルゲル/ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団
★★★
一楽章、瑞々しい序奏です。あまりテンポを速めない第一主題。強奏部分がフワッとしていて柔らかいです。強弱の変化はあまり大きくなく、小さくまとまった印象ですが、端正な演奏です。
二楽章、冒頭でアンサンブルの乱れがありました。淡白な表現で淡々と進みます。
三楽章、ベルゲルの指揮に比べてオケの反応が鈍いようで、あまり強弱の変化は大きくありません。
四楽章、序奏から一転して活発な第一主題。とても品良く演奏されていて、若さや活発なエネルギーの発散はありません。
端正で、品の良い演奏でしたが、その分、活発なエネルギーの発散は無く、模範演奏のような大人しい演奏に終始してしまったのが残念でした。
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エーリッヒ・ベルゲル/ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団
★★★
一楽章、瑞々しい序奏です。あまりテンポを速めない第一主題。強奏部分がフワッとしていて柔らかいです。強弱の変化はあまり大きくなく、小さくまとまった印象ですが、端正な演奏です。
二楽章、冒頭でアンサンブルの乱れがありました。淡白な表現で淡々と進みます。
三楽章、ベルゲルの指揮に比べてオケの反応が鈍いようで、あまり強弱の変化は大きくありません。
四楽章、序奏から一転して活発な第一主題。とても品良く演奏されていて、若さや活発なエネルギーの発散はありません。
端正で、品の良い演奏でしたが、その分、活発なエネルギーの発散は無く、模範演奏のような大人しい演奏に終始してしまったのが残念でした。
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バリー・ワーズワース/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
★★
一楽章、穏やかな始まりです。表情のメリハリもあって、積極的な演奏です。はつらつとした若々しさや生命感に溢れる演奏で、なかなか良いです。
二楽章、録音のせいで音が少しザラザラするのが残念です。あと、音の密度が薄いのも、この全集の特徴です。
音の密度やスピード感、音が集まってくるかなどは、オケの技量や集中度を計りやすい要素なので、指揮者とオーケストラとの関係も想像できます。
三楽章、表現はしているのですが、やはり音の密度の薄さから、こちらに伝わる度合いが低いようで、残念です。
四楽章、音が集まってこないので、演奏が散漫に聞こえてしまいます。
ダニエル・バレンボイム/ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団 2012Proms
★★
一楽章、ゆったりと泳ぐような序奏。編成は小さいですが、テンポは速いと言うほどではありません。強弱の変化はあるのですが、ガツンと来るような強く一瞬のうちに変化するものでは無く、僅かになだらかに変化するような感じです。ゴツゴツした感じは無く流れて行くような音楽です。
二楽章、極端な弱音でもなく、あまり緊張感の無い冒頭でした。何となく緩い空気感です。
三楽章、何故かピーンと張った緊張感がありません。表現の幅もオケの能力からすれば程々の範囲で、オケの力をフルに発揮するような要求はされていないような演奏です。
四楽章、それなりに表現はしているのだけれど、この緩い空気はなぜでしょう。やはり程々の表現にとどまっているせいでしょうか。ベートーベン独特の鋭い強弱の変化がほとんど表現されていないので、違和感があります。
オケは過不足なく上手かったのですが、ベートーベン独特の鋭い強弱の変化が無く、緩い雰囲気の演奏には違和感を感じました。
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オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
★★
一楽章、ゆったりと優雅な序奏。第一主題は縦にしっかりと刻むような表現です。最近のベーレンライター版の演奏に耳が慣れて来ると、ブライトコプフ版の演奏は非常に遅く感じます。
二楽章、この楽章もゆったりとしたテンポです。音が外へ拡散していくようで、ぶっきらぼうな感じです。少し間延びした感じでオケもこのテンポに付いて行けてないような感じがします。
三楽章、大きな抑揚を付けた演奏です。テンポはやはりかなり遅いです。やはり緩さを感じてしまいました。
四楽章、この楽章も遅いテンポで、鋭く強弱が変化することもなく、緩やかに流れて行きました。
とてもゆったりとしたテンポで、あまり緊張感も無く、漫然と流れてしまったような感じがしました。
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