リヒャルト・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は、ドイツの民間伝承に登場するいたずら好きの道化師、ティルの愉快な冒険を音楽で描いた交響詩です。
目次
- 1 たいこ叩きのR・シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」名盤試聴記
- 1.1 ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.2 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団
- 1.3 ワシリー・シナイスキー/読売日本交響楽団
- 1.4 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団
- 1.5 ルドルフ・ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデン
- 1.6 ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.7 佐渡 裕/RAI国立交響楽団
- 1.8 クリストフ・エッシェンバッハ/シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭管弦楽団
- 1.9 ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団
- 1.10 トーマス・ダウスゴー/DR放送交響楽団
- 1.11 ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ロシア国立交響楽団
- 1.12 ベルナルド・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
- 1.13 カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 1.14 デヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
- 1.15 オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団
- 1.16 エーリッヒ・ラインスドルフ/ボストン交響楽団
- 1.17 ヨーゼフ・カイルベルト/バンベルク交響楽団
- 1.18 ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック
- 1.19 ダリル・ワン/ヴィクトリア交響楽団
曲の魅力と特徴
- ユーモラスで活き活きとした音楽: ティルのいたずらや逃走劇が、音楽のいたるところに現れ、聴いていると自然と笑顔がこぼれてしまいます。
- 物語性: 各楽器がティルや周囲の人々、出来事を表現しており、音楽を聴くだけで物語が頭に浮かぶような構成になっています。
- 変化に富んだ音楽: ティルの性格や状況に合わせて、音楽の雰囲気が大きく変化します。穏やかなメロディーから激しい追跡劇まで、様々な表情を見せるのが特徴です。
- オーケストラの高度な技巧: ティルの様々な表情や行動を表現するために、オーケストラの楽器が高度な技巧を駆使しています。
曲の構成と聴きどころ
- ホルンによるティルの登場: 作品の冒頭、ホルンが軽快な旋律を奏で、ティルが登場します。
- 様々なエピソード: ティルが市場で騒ぎを起こしたり、僧侶に扮して説教をしたり、恋に落ちたりと、様々なエピソードが音楽で描かれます。
- 追跡と逃走: ティルが人々に追いかけられ、様々な手段を使って逃げる様子がスリリングに描かれます。
- 最後は捕まる?: 最後はティルが捕まってしまうのか、それともまた新たな冒険へと旅立つのか、聴く人それぞれの解釈が楽しめます。
たいこ叩きのR・シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」名盤試聴記
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
速目のテンポでの開始です。控え目なホルンのテーマ。トゥッティのすさまじい響きは見事です。ダイナミックの変化が大きく、語り口の上手さを感じさせます。艶やかで存在感抜群のヴァイオリン・ソロ。ソロの前の金管の表情もとても豊かでした。整然としていながらも、凄い咆哮が聞かれます。裁判から絞首台の金切り声の描写なども見事でした。大編成のオケの機能美を見事に発揮したすばらしい演奏でした。
サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団
★★★★★
筋肉質のホルン。締りのある響き。とても機能的で敏感に反応するオケです。静寂感もあり集中力の高い演奏です。ティルの悪戯の様子が高機能なオケによって見事に表現されます。オケは屈託なく気持ちよく鳴り響きます。特に抜群のアンサンブルで切れの良い金管の響きは見事です。
筋肉質でしかも抜群のアンサンブルで鳴り響く高機能なオケを使って見事な描写でした。すばらしい演奏でした。
ワシリー・シナイスキー/読売日本交響楽団
★★★★★
速めのテンポで豊かな表情です。ホールに響く残響も豊かで、静寂感も感じます。とても厚みのあるトゥッティ。活発で反応の良いオケの演奏で、ティルのいたずらが目に浮かぶようです。金管も見事に鳴り響き、読響もとても上手いです。軽快で決して重くならない演奏が作品にピッタリです。
軽快なテンポと豊かな色彩でティルのいたずらを楽しげに表現したとても良い演奏でした。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団
★★★★★
活発な動きがあって筋肉質な響きです。金管も明快に鳴り響きます。色彩感もとても濃厚でR・シュトラウスのオーケストレーションがとても良く分かります。はじけ飛ぶような猛烈なエネルギーの放出です。オケの見事な機能を見せ付けられるような完璧なアンサンブルと輝かしい響き。濃厚な表現はありませんが、これだけ明快に鳴り響くオケの名人芸には脱帽です。
もう、こんなに見事に鳴り響くオケは出現しないのではないかと思わせるほど見事な演奏でした。濃厚な表現はありませんが、これだけ明快に鳴り響くオケの名人芸には脱帽です。
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ルドルフ・ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデン
★★★★★
速いテンポでくっきりとした演奏です。深みのある美しい響きです。ティルのいたずらで大騒ぎになる雰囲気はありますが、とても整然としていて落ち着いた穏やかな演奏ですが、ここぞと言うところでは思い切って金管を強奏させます。テンポの動きもあります。最初は速めのテンポでしたが、途中からはゆったりとしたテンポで音楽に浸ることができます。
ショルティの豪快な筋肉質の演奏とは違いますが、穏やかでどっぷりと音楽に浸ることができる演奏はなかなか良かったです。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
軽快なティルのテーマ。濃厚な色彩で場面場面を描いて行きます。羊の皮独特の響きのティンパニが締まった響きで切り込みます。ウィーンpoが持っている濃厚な色彩を十分に生かした演奏です。後年のベルリンpoとの録音にも通じる引き締まった表現がとても良いです。厚みのある響きではありませんが、とても切れの良い演奏で金管が気持ちよく鳴り響きます。
ウィーンpoらしい濃厚な色彩で描かれた演奏で、とても表現は豊かでありながら整然と整った演奏は見事でした。
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佐渡 裕/RAI国立交響楽団
★★★★★
ゆったりとしたテンポで豊かな表情です。テンポの動きもあり、振幅も大きな演奏です。かなり作品の描写を意識した演奏で、ティルの愉快ないたずらが表現されて、場面場面の表現が変化します。オケも豪快に鳴らされて爽快です。
作品の描写を意識した演奏で、豊かな表現でした、オケも豪快に鳴らされて振幅の大きな演奏でした。
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クリストフ・エッシェンバッハ/シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭管弦楽団
★★★★★
柔らかく伸びやかな冒頭。ティルのテーマは激しく活発です。その後は起伏の激しい演奏です。激しいホルンで市場の大騒ぎが表現されます。見事に鳴り響く伸びやかな金管が見事です。物凄くダイナミックな演奏でかなり聞き応えがあります。柔らかく繊細な弱音から、豪快に鳴り響く金管まで、とても表現も豊かな演奏です。テンポの動きも自然でとても良いです。
凄く振幅の大きな演奏で、柔らかく繊細な弱音から、豪快に鳴り響く金管まで、とても表現も豊でした。ライヴでありながらとても完成度の高い演奏でした。
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ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団
★★★★☆
穏やかな冒頭。音を短めに弾むようなホルンのティルのテーマ。ゆっくりとのっそのっそと歩くような表現です。とても大きく構えた大人の演奏です。金管がし突出することも無くどっしりとしています。その分、ティルのいたずらで大騒ぎするような雰囲気はありません。マゼールらしくテンポの大きな動きもあります。一体感のある充実した響きは素晴らしいです。死刑の場面ではEbクラの金切り声をゆっくり粘っこく表現したり、トゥッティで音量を抑えてクレッシェンドしたりこの辺はマゼールらしいです。冒頭の「むかしむかし」の弦のとても穏やかな表現もとても良いです。
ゆったりとしたテンポで大きく構えた演奏でしたが、所々でマゼールらしい大見得を切るような表現もあり、このような作品にはとても合っていました。オケの一体感のある響きも充実していてなかなか良かったです。
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トーマス・ダウスゴー/DR放送交響楽団
★★★★☆
静寂感の中から静かに始まりました。ホルンのティルのテーマは音を短めに演奏します。ホールに響く残響が美しいです。色彩感は濃厚です。咆哮するホルン。僧侶に変奏した場面では弦が音を短めに演奏します。テンポが遅い部分では少し停滞する感じもありますが、大きくテンポを速める部分もあり変化があります。音圧としては感じませんが金管はかなり強く演奏しています。テンポの動きもありなかなか表現が豊かです。
色彩感も豊かでしたし、強弱の振幅も大きくなかなか良い演奏でしたが、テンポの遅い部分で少し停滞した感じがあったのが残念でした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ロシア国立交響楽団
★★★★☆
速めのテンポで躍動感があって生き生きとした表情の演奏です。濃厚な色彩と豊かな歌で作品を描写します。ロシアのオケ独特の強く重い響きがあり、フワッとした柔らかさはほとんどありません。ロジェストヴェンスキーらしい濃厚でねっとりとした尾を引くような表現です。
かなり濃厚でねっとりとした表現で、フワッとした柔らかさはほとんどありませんでしたが、これはこれで良かったです。
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ベルナルド・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
★★★★
美しい響きを伴った演奏です。登場してくる楽器の表情もとても豊かです。シンバルやラチェットなども鮮明です。控え目なヴァイオリン独奏。奥行き感があって、美しい響きです。ただ、演奏が純音楽的で、描写性には若干欠けるように感じます。
カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★
速めのテンポで始まります。テーマは一般的なテンポです。表情は豊かですが、カラヤンが指揮するベルリンpoの豪華絢爛な響きとは違い少しマットなくすんだ響きがします。ベルリンpoにしては珍しいカチンと硬い響きのシンバル。牛馬を解き放し、市場は大騒ぎになる場面でもおもちゃ箱をひっくり返したような色彩感溢れる音の洪水にはならず、整然としています。ヴァイオリ・ソロの最後をritしました。オケの響きが溶け合って一体感のある演奏ですが、その分R・シュトラウスのオーケストレーションが少し削がれているように感じます。
デヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
★★★
微妙なテンポの動きがあります。トロンボーンは全開になりません。いたずらをたくらむティルの怪しい行動を表現するような演奏です。金管は常に余裕を残した美しい響きですが、ティルのいたずらで大騒ぎになるような雰囲気は表現されません。
かなり金管を抑えた演奏で、あまりエネルギーを放出するようなことはありませんでした。ティルのいたずらを描写するような演奏ではありませんでした。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団
★★★
生々しく鮮度が高い音です。遠くから次第に近づいてくるティルのテーマ。私は相性が悪いのだと思いますが、クレンペラーの演奏は雄大と言えばその通りなのですが、凝縮された濃密さがあまり感じられません。テンポも頑として動きませんが、他の演奏では聞えないいろんな音が聞こえて来ます。作品の描写などはほとんどありませんが、新しい発見もさせてくれる演奏でした。
頑として動かないテンポ。作品の描写は無く、淡白な表現で、作品そのものを忠実に演奏したものでした。クレンペラーの演奏は何故か密度が薄く感じてしまいます。
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エーリッヒ・ラインスドルフ/ボストン交響楽団
★★★
ライヴ録音でデッドな響きですが、生き生きとして活発な演奏です。敏感に反応するオケがとても良いです。僧侶に変奏した場面はあっさりと淡白な表現です。デッドな分濃厚で引き締まった響きになっています。金管が強い音を長く吹き伸ばさず、すぐに音量を落とす部分が多く、ちょっと気になります。
速めのテンポで活発表現と濃厚な響きの演奏でしたが、金管が強い音を長く吹き伸ばさずすぐに音量を落とす表現が気になりました。
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ヨーゼフ・カイルベルト/バンベルク交響楽団
★★
あまり起伏が大きく無く穏やかな演奏です。打楽器が強調されています。オケの特性かあまり色彩感は濃厚ではありません。ティルのいたずらで大騒ぎなるような雰囲気はあまり表現されません。アンサンブルの緩い部分もあります。作品に対してはとても真面目なアプローチの演奏です。
とても真面目なアプローチで、作品の描写を積極的に表現した演奏ではありませんでした。
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ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック
★★
とても近いホルンのティルのテーマ。全体の響きはブレンドされて柔らかいです。ティパニが遅れたりするアンサンブルの乱れもあります。テンポの動きもありますが、録音にもよるのか、色彩感や表現はあまり伝わって来ません。「むかしむかし」のテーマが回帰すると、ゆったりとしたテンポで音量の変化も大きくたっぷりとした表現になります。
offぎみの録音だったのか、あまり色彩感が無く、トゥッティでは団子状態になるような響きでした。表現などもあまり伝わって来ない演奏で、あまり楽しい演奏には感じませんでした。
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ダリル・ワン/ヴィクトリア交響楽団
★
豊かな残響で、フワーっとした響きです。カメラワークが全く定まらないので、かなり変な映像です。アンサンブルの乱れは所々で見受けられます。色彩感や表現は豊かですが、雑然としていてキリッと締まった感じがありません。
雑然とした感じで締まりの無い演奏でした。
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