リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」

リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」は、アラビアンナイトの世界を音楽で描いた、非常に華やかで幻想的な交響組曲です。

どんな曲?

  • アラビアンナイトの世界: 千夜一夜物語の語り手、シェヘラザードが王様のために紡ぐ物語を音楽で表現しています。
  • 4つの楽章で構成: 各楽章がそれぞれ異なる物語を表しており、まるでアラビアンナイトの冒険物語を聴いているような感覚になります。
  • 東洋的な雰囲気: 東洋の楽器の音色を取り入れたり、独特なリズムを用いたりすることで、神秘的な雰囲気を醸し出しています。
  • 海の描写が印象的: 第1楽章「海のシンドバッドの船」では、大海原を航海する様子が音楽で生き生きと描かれています。

たいこ叩きのリムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」名盤試聴記

キリル・コンドラシン/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

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一楽章、海とシンドバッドの舟、巨大な響きの冒頭。続く木管がすごく小さく対比が見事です。ヴァイオリンのソロも繊細な音を上手く捉えています。シルキーな弦の響きがとても美しい。力みが無く、広大な空間を感じさせるテュッティと繊細で表情豊かな弱音部で作り上げられる音楽に聞き惚れます。

二楽章、カレンダー王子の物語、奥ゆかしいヴァイオリン・ソロ。とても良く鳴るトロンボーン、トランペット。どの楽器も考えられる最高の音色で次々と登場してきます。コンドラシンの指揮はどっしりと構えてとてもスケールの大きな演奏をしています。コンセルトヘボウ独特の深みのある音色で色彩豊かに、濃厚に描かれて行きます。シンバルも素晴らしい音です。

三楽章、若い王子と王女、比較的あっさりと演奏された主題。スネアのリズムに乗ってチャーミングな木管のソロ。奥ゆかしく、耳障りな音は一切出さないヴァイオリンのソロ。

四楽章、バグダッドの祭り。海。舟は青銅の騎士のある岩で難破。終曲。とても丁寧なヴァイオリン・ソロ。ソロを担当しているヘルマン・クレバースの信念のようなものを感じさせるソロです。濃厚な表情付けによって、作品が生き生きとしています。伸び伸びと鳴り響くトロンボーンもとても心地良いです。最後まで奥ゆかしく繊細なソロも見事でした。

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

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一楽章、チューバが底辺をしっかりと支えた冒頭。ピンポイントで寂しい響きのフルート。細身で艶やかなヴァイオリン独奏。穏やかな海に揺られて海の主題、舟の主題が演奏されます。トゥッティでも音が荒れることは全く無く、とても美しい演奏です。トーンとしてはブルー系の涼しげで清潔感のある響きです。

二楽章、どことなく懐かしいファゴットのカレンダー王子の主題。とても繊細なガラス細工を見るような、触ると壊れてしまいそうですが、キラキラと輝いてとても美しいものを見ているような感覚です。トロンボーンの強奏も強く吹いているのは響きから分かるのですが、実際の音圧としての強さはあまり感じません。速いパッセージも難なくこなす凄い技術です。色彩感も豊かでリムスキー=コルサコフのオーケストレーションが見事に再現されていますが、水彩画のような色彩で濃厚と言う感じではなく、サラッとした色彩です。

三楽章、途中でちょっと間があったり、ゆったりと歌うヴァイオリン。滑らかで美しいクラリネット。聴いていてとてもリラックスさせてくれます。適度なチューニングのスネアドラム。小物打楽器もさりげなく上手い。ヴァイオリン独奏は線が細いのですが、音に力があってキリッと立っています。

四楽章、難しい演奏をいとも簡単にやってのける名人芸の連続に唖然とさせられます。トランペットの速いタンギングも見事です。頂点のトロンボーンも音色からは強奏しているのは分かるのですが、音圧として届いては来ません。艶やかなヴァイオリン独奏で曲を閉じました。

コンドラシンのスケールの大きな演奏とは対照的な繊細なガラス細工のような演奏で、この美しさはとても魅力的でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、非常にゆっくりと穏やかな冒頭。静寂に浮かび上がる木管。細身で美しいヴァイオリン・ソロ。海のうねりをあまり感じさせない主部。登場してくるソロがどれも瑞々しく美しい。強奏部分では、奥まったところでホルンが激しくビーンと鳴ります。トロンボーンもトランペットも突き抜けてきます。強弱の振幅が非常に激しい演奏です。激しい部分と穏やかな静けさの対比も見事です。

二楽章、弱音から始まり歌いながら次第に大きくなるヴァイオリン・ソロ。続くファゴットもオーボエもとても遅いテンポで歌います。メロディを担当する楽器を際立たせて、とても色彩感豊かな演奏になっています。中間部のトロンボーンは控え目でした。その後、トロンボーンとトランペットが掛け合う部分は強めに演奏しました。続くクラリネットのソロは強弱の幅を持った歌に溢れたソロでした。この遅いテンポでも集中力を維持し続けるオケの技量のすばらしいです。また、遅いテンポやチェリビダッケ独特の表現によって新しい発見もたくさんあって、とても興味深い演奏です。最後はアッチェレランドしました。

三楽章、遅いテンポで、ゆったりと弱音で広々とした雰囲気の弦の主題はとても心地良いものです。伸びやかなクラリネットやフルートの速いパッセージ。すごくテンポを落とし、音量もおとした中間部のスネアドラムと木管の旋律。同じ旋律を音を短く切って演奏するあたりから音量もテンポも上がりました。すごく繊細な弦の響きが美しい。細身のヴァイオリン・ソロもとても美しい。締まった音のホルンも美しい。夢心地の御伽噺の世界へと連れて行かれます。

四楽章、この楽章は通常の演奏より若干遅い程度です。三楽章のゆったりとした音楽から、とても動きのある音楽へ変化しました。動きもあり、色彩感もとても豊かです。音楽の表現も濃厚で、作品に込められた物語の場面を描いて行くようです。打楽器の活躍も見事です。広々とした大海原を想像させるような壮大で圧倒的なクライマックスです。消え入るような弱音で演奏されるヴァイオリン・ソロ。

非常に遅いテンポで、作品を描き切りました。濃厚でスケールの大きな見事な演奏でした。

ヴァレリー・ゲルギエフ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2005年ライヴ

ゲルギエフ★★★★★
一楽章、勢いのあるシャリアール王の主題。甘くとろけるようなヴァイオリンのソロ。とても濃厚な色彩で、それぞれの楽器がくっきりと浮かび上がりリムスキー=コルサコフのオーケストレーションの妙がとても良く表現されています。

二楽章、とても艶やかなヴァイオリンのソロです。哀愁に満ちたファゴットのカレンダー王の主題のソロ。ビーンと響くトロンボーン。どのソロも極上の響きで登場します。オケの響きにも深みがあって、一体になった表現も素晴らしいです。

三楽章、とても優美なヴァイオリンの主題。次第にテンポを速めますが、自然な歌で原色のような濃厚な色彩も魅力的です。スネアに乗って歌うクラリネットもとても表情豊かでした。一抹の寂しさを感じさせるようなヴァイオリンのソロと木管の掛け合い。

四楽章、畳み掛けるように演奏するヴァイオリンのソロ。リズムに締りがあってとても躍動感があります。速いテンポでめまぐるしく変化する音楽。名人芸のような演奏を展開するウィーンpo。クライマックスでの金管の炸裂!壮絶な演奏です。艶やかで際立った存在感を示すヴァイオリンのソロはとても美しく力もあります。

とても濃厚な色彩で、引き締まったリズム感の良い躍動感のある演奏で、音楽の振幅もとても大きな素晴らしい演奏でした。
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クラウス・ペーター・フロール/ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

フロール★★★★★
一楽章、フワッと柔らかい響きです。豊かな低音を含んだヴァイオリンのソロ。とてもゆっくりと波に揺られるような海の主題。とても穏やかな海です。残響が豊かでとても柔らかい響きが心地良い演奏なのですが、その分、濃厚な色彩感はありません。

二楽章、太い低音と繊細な高音を併せ持つヴァイオリンのソロ。哀愁を感じさせるファゴットのソロ。この楽章もゆっくりとしたテンポです。トロンボーンもゆっくりと伸びやかで柔らかい表現です。荒々しくなことは無く、雄大な演奏です。弱音の繊細さもなかなか惹きつけるものがあります。

三楽章、ここまでの演奏に比べると速めのテンポを取っていますが、タメがあったりしてとても豊かに歌います。スネアが入ったところのクラリネットは小さく入って少しふくらみました。締まった打楽器と柔らかく豊かな弦の対比もとても良いです。最後はぐっとテンポを落として柔らかい弦がささやきます。

四楽章、あまり力を入れずに柔らかい冒頭。あまり活発な動きや濃厚な色彩ではありませんが、柔らかく音楽に浸るような演奏はとても魅力的です。

リムスキー=コルサコフらしい濃厚な色彩感はありませんでしたが、とても柔らかく伸びやかな演奏は、これでとても魅力的なものでした。どっぷりと音楽に浸ることができる演奏でした。

エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

スヴェトラーノフ★★★★★
一楽章、冒頭から爆演の気配です。フルートは遅いテンポで穏やかでした。艶やかで粘っとしたヴァイオリンのシェエラザードの主題。ゆったりと揺られる海の主題。潤いのある木管のソロ。この楽章はそれほど爆発することなく過ぎて行くと思ったら、トランペットが朗々と鳴り響きます。濃厚な色彩ですが、金管は奥から響いてくるので、とても立体感があります。

二楽章、とても豊かに歌うヴァイオリンのシェエラザードの主題。哀愁があり、暖かいファゴット。オーボエは間接音を含んでとても美しいです。中間部のトロンボーンはビブラートを掛けて少し下品なくらい咆哮します。クラリネットのソロも美しく豊かな表情です。色彩はとても濃厚です。最後は加速して激しく終わりました。

三楽章、速めのテンポで弾むリズムをスタッカートぎみにしたり、タメを作ったりして歌います。クラリネットのソロもとても大きな表現でした。くっきりと鮮度の高い弦。スタッカートが多用される独特な表現です。

四楽章、ゆっくりと丁寧に演奏されるシェエラザードの主題。祭りの主題は次第にテンポが速くなります。クラリネットのソロはとても強く表現します。速いテンポで追い立てるように鬼気迫る演奏です。めまぐるしい木管の速いパッセージ。激しく咆哮する金管。最後もねっとりとしたヴァイオリンのソロでした。

非常に濃い演奏でした。ねっとりとしたヴァイオリンのソロから下品なくらいの咆哮を聞かせるトロンボーン。そして速いテンポで追い立てるような四楽章など、変化に富んでいて濃厚な演奏でとても聞き応えがありました。
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ユーリ・テミルカーノフ/サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団

テミルカーノフ★★★★☆
一楽章、意外に繊細で力で押すようなことの無いシャリアール王の主題。艶やかで生き生きとしたシェラザードの主題。穏やかに揺れる海の主題。霞がかかったような録音で、あまり色彩感や力感は伝わって来ません。弦ははっきりしていますが、特に金管があまり響いて来ません。

二楽章、速いテンポでサクサクと進みます。中間部のトロンボーンも柔らかく遠いです。クラリネットのソロは滑らかで表現も幅広いです。オケはムラヴィンスキー時代のゴリゴリとした力強さは無くなっていますが、しなやかで柔らかい響きになっています。

三楽章、最初の二つの音をゆっくりと演奏しました。大きな表現は無く淡々と進みます。中間部の木管は踊るように活発な表現です。ヴァイオリンのシェエラザードの主題はねっとりとした豊かな表現です。

四楽章、遅めのテンポで音を短めに演奏する冒頭部分。ヴァイオリンのシェエラザードの主題はここでもねっとりとしています。主部に入ると速めのテンポで活発な動きのある表現です。録音の問題か、金管のエネルギー感が伝わって来ません。難破の場面でも金管は奥まっていて遠くで鳴っているような感じです。最後のシェエラザードの主題も濃厚な表現です。

ねっとりと濃厚なシェエラザードの主題と、あまり大きな表現をせずに淡々と進む他の部分の対比が独特でした。ただ、録音の問題で金管が奥まっていてエネルギー感が無かったのは残念でしたが、なかなかセンスの良い演奏に感じました。
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ロリン・マゼール/クリーブランド管弦楽団

マゼール★★★★☆
一楽章、荒々しくトロンボーンが響くシャリアール王の主題。細く繊細なシェエラザードの主題。ゆったりと大きく揺れる海の主題。ピーンと張った生きのいい音楽。いろんな音が聞こえて来ます。表現力も豊かで色彩感も豊かです。

二楽章、とても繊細で艶やかなヴァイオリンのソロ。木管のソロがとても美しいです。中間部のトロンボーンの質感もとても良いです。精緻なアンサンブルでとても見通しが良いです。表現にも締りがあって、緩むことがありません。

三楽章、速いテンポでほとんど思い入れの無い主題。透明感が高く細部まで見通せるようなアンサンブルの精度は素晴らしいです。打楽器は控えめです。主部が戻るとまた速いテンポです。この速さはちょっと速過ぎるような感じがします。

四楽章、少し薄いですが、透明感の高い冒頭。静かで美しいヴァイオリンのソロ。弦は大きな表現ですが、金管は軽く控えめです。見事に整ったアンサンブルで絶妙なバランスの演奏です。難破の場面でも金管が吼えることは無くしっかりと制御されています。

精緻でバランスが良く透明感の高い美しい演奏でした。ただ、三楽章の主部の速いテンポが少し速過ぎたような感じで全体のバランスを崩しているような感じがしました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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