モーツァルト クラリネット協奏曲

7月 30, 2022 モーツァルト, 協奏曲

モーツァルトのクラリネット協奏曲イ長調 K.622は、彼が晩年に書いた優雅で叙情的な作品で、クラリネットの美しい音色を存分に引き出す名曲です。この協奏曲は、モーツァルトの友人であり当時の名クラリネット奏者だったアントン・シュタードラーのために作曲され、1791年10月頃に完成したとされています。モーツァルトの最後の協奏曲作品であり、彼の死の数か月前に書かれたこともあって、楽曲には深い感情と成熟した美しさが感じられます。

目次

クラリネット協奏曲の構成と各楽章の特徴

この協奏曲は、典型的な3楽章構成(速–遅–速)で書かれており、各楽章に異なる魅力が詰まっています。

  1. 第1楽章:アレグロ
    明るく優雅なイ長調で始まる第1楽章は、クラリネットの柔らかな音色とモーツァルトらしい流麗なメロディーが印象的です。オーケストラが提示する軽やかな主題がクラリネットに引き継がれ、装飾的で華麗なパッセージが展開されます。クラリネットの広い音域が活かされ、低音から高音まで自由に駆け巡る様子が美しく、全体に幸福感が漂う楽章です。
  2. 第2楽章:アダージョ
    第2楽章は、モーツァルトの作品の中でも特に有名で、静かで穏やかな旋律が胸に迫る美しい楽章です。このアダージョは、聴く人に深い感動を与え、まるで時間が静止したかのような静謐さが広がります。クラリネットが奏でる柔らかく温かみのある旋律は、純粋さと癒しの力を持っており、後世にわたって多くの人に愛されています。特にこの楽章は、モーツァルトの音楽が持つ「簡素であるが故の美しさ」の典型と言えるでしょう。
  3. 第3楽章:ロンド(アレグロ)
    最終楽章は明るく軽快なロンド形式で書かれています。クラリネットが活発にテーマを奏で、楽しげな旋律が繰り返されます。この楽章では、モーツァルト特有のウィットと遊び心が感じられ、オーケストラとクラリネットが交互に掛け合いを行いながら、楽曲が展開していきます。華やかで楽観的なムードが溢れ、全体を締めくくるにふさわしい終わり方をします。

全体の印象と特徴

モーツァルトのクラリネット協奏曲は、クラリネットの持つ温かく親しみやすい音色を最大限に活かした作品で、演奏されると多くの人に感動を与えます。楽曲全体には、クラリネットの優雅で豊かな表現力が示されており、楽器そのものの魅力が存分に引き出されています。また、モーツァルトの成熟した作曲技法が発揮されており、調和の取れたオーケストレーションと完璧な構成が感じられます。

この協奏曲は、クラリネット協奏曲の中で最も重要な作品とされ、クラリネット奏者にとっては必ず演奏したい名曲のひとつです。

4o

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 アルフレート・プリンツ

★★★★★

一楽章、とてもゆったりとしたテンポでサラッとした美しい響きです。ゆっくり目のテンポで細部まで丁寧です。ウラッハ程ではありませんが、ウィーンのクラリネットらしい密度の濃い美しい響きです。夢見心地の世界へと連れて行かれます。高音域も滑らかで美しいです。プリンツのソロをしっかりとサポートするベームとウィーンpo。

二楽章、この楽章もゆっくりです。晴れやかに澄んだ少し冷たい空です。モーツァルト自身がこの澄んだ空へ召されることを意識しながら書いた作品なのでしょうか?とても心のこもったプリンツの独奏。優しくひたすら美しい。

三楽章、戯れるような楽しい冒頭の表現ですが、テンポは落ち着いていて安定感があります。この世との別れを寂しく感じているような雰囲気も良く表現されています。

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ハンス・フォンク/シュターツカペレ・ドレスデン ザビーネ・マイヤー

★★★★★

一楽章、伸びやかで軽快な冒頭。明るく滑らかなクラリネット。陰影があって美しく表現の幅も広い演奏です。幅の広い音量で美しい響きを聞かせます。滑らかな高音と低音域で若干ガラガラとした響きが混じりますがクラリネットらしい音で、ウィーンのクラリネットとフランスのクラリネットの中間のようなニュートラルな音です。

二楽章、澄んだ空をイメージさせるような美しい響き。天上界で奏でられるような、すでにモーツアルトが死後の世界を感じていたような音楽です。

三楽章、とても軽快な演奏です。さりけなぐ演奏されますが、かなり高い技術を感じさせます。

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オルフェウス室内管弦楽団 チャールズ・ナイディック

★★★★★

一楽章、柔らかい響きで柔和な表現です。指揮者はいないですが、とても積極的な表現です。とても古めかしいですが、美しいバセット・クラリネットです。テンポも強弱も大きく動いて豊かな表現です。テクニックをひけらかす訳でもなく、楽しく音楽をしているような感じです。楽譜に無い短いカデンツァのような独自のソロも入ります。

二楽章、陰影のあるクラリネット。朗々と歌うと言うより、作品を慈しむようにしみじみと演奏しています。消え入るような弱音に引き込まれます。独自に旋律を変えて演奏しています。

三楽章、憂いの陰を感じさせる冒頭部分。作品の陰の部分はとても良く表現しています。もうすぐこの世と別れることを悟っているモーツアルトの寂しさをとても良く表現していると思います。

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コリン・デイヴィス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 エルネスト・オッテンザマー

★★★★★

一楽章、とても優しい響きで始まりますが表現はとても広く色んな表情を見せてくれます。割と密度の濃いクラリネットですが低音域は若干密度が薄くなります。テンポは大きく動いて存分に表現します。高音域はあまり滑らかではありません。テンポの動きはとても心地良く感じます。オッテンザマーもテンポの動きに乗って濃厚に表現しています。

二楽章、澄んだ空です。ここでも感情を込めてテンポも動く表現です。音量を抑えた深みのある表現は素晴らしいです。

三楽章、速めのテンポで軽快です。ウィーンpoも濃厚な色彩でサポートしています。この楽章では音量の幅を大きく取って表現します。

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マンフレート・ホーネック/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 シャロン・カム

★★★★★

一楽章、まろやかで穏やかな響きの伴奏。残響を伴っていて柔らかいクラリネット。陰影もあります。弦とクラリネットのコントラストにもハッとさせられます。消え入る程の弱音はありませんが、滑らかさのある美しい音です。

二楽章、晴れ渡った空です。とても表現力のある演奏で聞きごたえがあります。

三楽章、速めのテンポで活発です。どことなく寂しさを感じさせる演奏も良いです。

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アンドレイ・ボレイコ/NHK交響楽団 横川晴児

★★★★★

一楽章、まろなかで柔らかい響きの伴奏。とても整った演奏です。少し細身ですが、力強いクラリネット。陰影も感じさせる演奏でなかなか良いです。NHKsoの柔らかい響きは気持ちを安らかにさせてくれます。

二楽章、澄んだ爽やかな空です。クラリネットが朗々と歌います。伴奏の表現力も素晴らしいです。

三楽章、落ち着いたテンポで確実に進みます。僅かに引っかかるところはありましたが、日本のオーケストラの水準の高さを感じさせてくれる良い演奏でした。

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アルトゥール・ロジンスキ/ウィーン国立歌劇場管弦楽団 レオポルト・ウラッハ

★★★★☆

一楽章、録音が古くシャリシャリとした冒頭のヴァイオリン。ウィーンのクラリネットらしい密度の濃い響きで引き締まっていて美しいです。テンポも動いてたっぷりと聞かせます。滑らかで美しいクラリネットは素晴らしいです。

二楽章、開く弦と閉じるクラリネットのような対比です。内に秘めたような表現ですが、とても丁寧で作品をとても大切にしているのが感じられます。

三楽章、とても落ち着いていますが、表現は豊かです。奥ゆかしいクラリネットが演奏を通して一貫しています。軽やかな演奏の中にふと、この世との別れを寂しがる表現を感じます。

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Jurek Dybał /Sinfonietta Cracovia ダニエル・オッテンザマー

★★★★☆

エルネスト・オッテンザマーの息子でクラリネット一家です。

一楽章、まろやかで柔らかい響きです。ホルンがとても良く聞こえます。お父さんに似た、密度の濃い滑らかなクラリネットです。若い躍動感のある演奏です。伴奏も勢いのある生命感を感じる演奏です。

二楽章、あまり澄み渡って空はイメージ出来ませんでした。まだ円熟した柔らかい美しさはありませんが、内面から湧き出るような命の躍動があります。

三楽章、伴奏も含めて軽快と言うよりもとても力強い演奏です。息つく暇も与えない畳みかけるような演奏はオッテンザマーの若さゆえに出来ることのように感じます。この作品としては異色の演奏でしたが、とても可能性を感じさせる良い演奏でした。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 カール・ライスター

★★★★

一楽章、豊かな残響で伸びやかな響きです。ゆったりとしたテンポで滑らかに演奏されます。潤いのあるクラリネット。マイヤーより少しランスロ寄りの音色のような感じです。とても豊かに歌います。伴奏もこの世のものとは思えないような軟らかな響きでサポートしています。高音域がキーッと僅かに刺激的です。長年演奏を共にしてきた、カラヤンとベルリンpoなのでとても息が合っています。

二楽章、豊かな残響で、天国から響いて来るような心地よさがあります。澄んだ空を感じさせる部分もありますが、響きが豊かな分、雑味も感じます。ライスターはテンポもかなり自由に動かして表現しています。

三楽章、速めで軽快です。この楽章でもかなり自由に歌っています。

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ミュンヘン室内管弦楽団 カルロス・フェレイラ

★★★★

一楽章、古楽器による演奏のようで、少し線の細い響きです。積極的に表現しようとする意欲のある演奏です。明るく伸びやかで軽い響きのクラリネット。とても軽やかに流れて行きます。

二楽章、爽やかな秋空を感じることが出来ます。それにしてもこの明るい響きは独特です。なかなかの表現力も感じました。

三楽章、とても軽やかでサラッと流れて行きます。ミュンヘン室内oも要所要所を締めています。

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コルネリウス・マイスター/アイスランド交響楽団 Arngunnur Arnadottir

★★★★

一楽章、活発で生き生きした表情の伴奏。現代の均質化された楽器の音色からするとかなり独特な響きのクラリネットです。クラリネットにしてはかなり明るい響きです。

二楽章、少し速めのテンポで澄んだ空はイメージ出来ます。テンポを落としてじっくりと歌う部分もありました。

三楽章、明るい響きはこれはこれで良いのですが、やはり少し陰影を表現して欲しいと感じます。

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マルティン・サンドホフ/ムジカエテルナ Sergey Eletskiy

★★★☆

一楽章、とても伸びやかで柔らかい伴奏。テンポは速めです。録音が鮮明になったり曇ったりするような感じがします。高音域に透明感のあるクラリネットです。生き物のように表現が豊かです。ムジカエテルナもとても丁寧でメリハリのあるサポートをしています。

二楽章、あっさりとした表現で、澄んだ空はイメージ出来ませんでした。あまり深みのある心に届くような演奏ではありませんでした。

三楽章、とても軽快な演奏です。テンポの速い部分の表現はとても良いです。

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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ペーター・シュミードル

★★★

一楽章、柔らかく軽快にスタートします。とても優しい響きです。シュミードルの音は、歴代のウィーンの首席奏者よりもドイツ寄りで、僅かにガラガラとした響きが混じります。マイヤーのシュターツカペレ・ドレスデンとの演奏に比べると表現の幅は狭いです。高音域も少し苦しい響きに聞こえます。クラリネットの名手が聞かせるような滑らかさがあまり感じられません。

二楽章、潤いよりも枯れた響きです。モーツァルトが自身の死後の世界をイメージしていたかのような、澄んだ空を感じさせる演奏です。とても丁寧に歌っています。

三楽章、とても快活で生命力のある演奏です。タンギングが若干強く感じます。ウィーンpoの壮麗な響きも美しく良いのですが、シュミードルの演奏は時代が変わったと感じさせるものでした。
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WDR交響楽団 ヨルグ・ヴィドマン

★★★

一楽章、豊かな残響と分厚い響きで、とても積極的な表現のWDRsoです。明るく抜けの良い爽やかなクラリネットも良く歌います。滑らかで密度の高いクラリネットではありませんが、開放感のある抜けの良い音色には抗しがたい魅力があります。伴奏のオケはグイグイと攻め込んで来ます。

二楽章、澄んだ空はイメージ出来ませんでした。一楽章は良かったのですが、明るい音色のために陰影が無いからか、この楽章は深みがありません。

三楽章、明るく開放的な演奏です。伴奏はベートーヴェンを聞いているような重量感です。

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Beethoven Sinfonietta タラス デムチシン

★★★

ウクライナ出身のクラリネット奏者兼指揮者で、九州交響楽団に所属。ロシアのウクライナ侵攻による総動員令により帰国。早く戦争が終わって無事再来日して欲しいものです。

一楽章、速めで軽快なテンポで柔らかい響きです。クラリネットがバランス的に大きい。低音域は密度が薄くガラガラと鳴ります。テンポも動いて自由に表現しますが、バセット・クラリネットの低音域を強調するような演奏です。Beethoven Sinfoniettaはとても柔らかく羽毛のような肌触りの優しい伴奏です。

二楽章、澄んで晴れ渡って空はイメージ出来ません。

三楽章、所々音を短く切るような独特の表現があり少し戸惑います。エッジも丸く、とても柔らかく優しい伴奏と、美しく控えめな高音域もありましたが、全体に力強いクラリネットがあまり合わない感じがしました。

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アロンドラ・デ・ラ・パーラ/フランクフルト放送交響楽団 Jochen Tschabrun

★★★

一楽章、柔らかく爽やかな響きのオーケストラ。コロナの影響で、間隔を広く取って配置されています。若干開き気味ですが、抜けの良いクラリネット。伸びやかで豊かに歌います。高音域は艶やかですが、滑らかではありません。

二楽章、澄んだ空をイメージ出来ました。あまり強弱の幅は大きくありません。消え入るような弱音の美しさもあまり感じません。

三楽章、落ち着いた演奏で、あまり弾みません。嵐のように勢いのあるオーケストラとは対照的なクラリネット。

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ジャン=フランソワ・パイヤール/パイヤール室内管弦楽団 ジャック・ランスロ

★★★

一楽章、朝のような爽やかで軽快な冒頭。艶やかで輝きのある響きで美しいです。フランスのクラリネットの特徴あるガラガラと鳴る音です。とても伸びやかで、屈託のない演奏です。高音部の速いパッセージのタンギングも滑らかで美しいです。素晴らしいテクニックでとても爽快で、聞き流すにはとても良い演奏だと思います。

二楽章、この楽章を表現するには、音色が硬すぎるように感じます。とても伸び伸びとした演奏なのですが、澄み渡った透明感が感じられません。

三楽章、かなり速めのテンポで軽快です。軽々と演奏するランスロの上手さはとても良く伝わるのですが、パイヤール室内oの華やかな響きと共に、高性能なスーパーカーが目の前を走り去って、「どうだ、凄いだろう!」とテクニックを見せつけられたような感じの演奏でした。

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クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ザビーネ・マイヤー

★★

一楽章、速めでテンポで開始しました。フォンク/シュターツカペレ・ドレスデンの演奏とはかなり違います。生き生きとした表現ですが、少し落ち着きが無い感じもします。フォンク/シュターツカペレ・ドレスデンとの演奏ほど滑らかな美しさはありません。マイヤーとアバドの相性があまり良くないのか、あまり気持ちも入っていないようで表現に丁寧さを感じません。アバドの速いテンポにオケも含めて納得していないような感じさえします。

二楽章、この楽章も速めのテンポです。この作品にどっぷりと身をゆだねたいと思う気持ちを拒絶するかのような演奏。この世のものとは思えないような消え入る弱音の美しさもこの演奏では聞くことが出来ません。

三楽章、この楽章も速めのテンポで、何故そんなに急ぐ?と思わずにはいられません。

旧盤がとても良かったので期待したのですが、私にはとても残念な演奏でした。

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ジェラルド・シュワルツ/モーストリー・モーツァルト管 デイヴィッド・シフリン

★★

一楽章、少しモヤのかかったような残響と離れた音場感。シュワルツの指揮はとても積極的な表現です。少し密度の薄いクラリネット。バセット・クラリネットの低音域を意識したような演奏で、滑らかさなどは感じません。

二楽章、暖かい演奏で、澄んだ空の雰囲気はあまり感じられません。

三楽章、これは、それぞれの好みだと思いますが、私は、密度が濃く滑らかなクラリネットが好きなので、この演奏はあまり好きになれません。

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ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ マイケル・コリンズ


★★

一楽章、まろやかな響きですがヴァイオリンはサラッとしていて伸びやかです。軽い響きのクラリネット。ガラガラと鳴るクラリネットです。旋律を付加して演奏しています。あまり滑らかな演奏では無く、タンギングが多く入る感じです。

二楽章、すがすがしい秋の空は僅かに感じることが出来ましたが、あまり深みのある演奏には感じません。消え入るような弱音はとても美しい演奏でした。

三楽章、速めのテンポで軽快な演奏です。あまり大きな表現も無く、なんとなく流れて行った感じの演奏に思えました。

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サー・ジョン・バルビローリ/ニューヨーク・フィルハーモニック ベニー・グッドマン

★★

ジャズプレイヤーであるベニー・グッドマンをソリストにしたクラリネット協奏曲です。ジャズプレイヤーでは、ウイントン・マルサリスがトランペット協奏曲を録音したりもしています。

一楽章、モノラルでかなり古い録音と感じさせる冒頭部分。ビブラートもありますが、ジャズプレイヤーだからと言った違和感はありません。リードの選び方も違うのか、高音域が少し薄い感じはあります。テンポも速めで少し雑な感じもあります。クラリネットと言うよりもソプラノサックスに近い高音。グッドマンはかなり自由に歌っている感じです。

二楽章、ビブラートの効いたソプラノサックスでは、クラリネットのために書かれた作品の陰影は表現出来ないように感じます。テンポも速めで、作品をしみじみと味わうような趣きではありません。

三楽章、この楽章は落ち着いたテンポですが、やはりソプラノサックスっぽい高音が気になります。この世との別れの寂しさのような雰囲気は感じられません。

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チューリヒ歌劇場ラ・シンティッラ管弦楽団 Robert Pickup

★☆

一楽章、古楽器による演奏で独特の響きです。速めのテンポではつらつとした演奏です。クラリネットも古楽器で、独特の浅い響きで滑らかさはあまりありません。

二楽章、詰まった感じで伸びやかで晴れやかな空ではありません。

三楽章、快活な演奏ですが、どこか引っかかるような感じがして滑らかに音楽が流れて行きません。

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ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団 ロバート・マルセリウス

一楽章、この当時のCBSの録音の特徴のヒステリックで、少しザラザラとした感じのヴァイオリン。さっそうとしたテンポで進みます。少し硬質で、あまり響きに深みの無いクラリネット。

二楽章、淡々と演奏されます。滑らかさが無く、澄んだ美しさも感じられません。

三楽章、軽快で動きのある演奏です。録音の問題もあるのだと思いますが、極上の美しさは無く、高音のタンギングで引っかかるような感じがあり、ちょっといただけません。

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投稿者: koji shimizu

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