カテゴリー: マーラー:交響曲第10番

マーラー交響曲第10番(全曲)

マーラーの交響曲第10番は、彼の最晩年に書かれた未完の作品で、彼が病に倒れる直前の1910年から1911年にかけて作曲されました。この交響曲は、マーラーの内面の苦悩や深い精神的葛藤が色濃く反映されているとされています。全5楽章の構成が構想されており、スケッチとして残されているものの、マーラー自身による完全なオーケストレーションはされていません。

マーラーの死後、この作品は長らく未完成のままでしたが、20世紀後半に音楽学者や作曲家によって補筆が行われ、現在では「全曲版」として演奏されることが増えました。特にデリック・クックやジョー・ウィーラー、クラーク・ローズ・ドイルなどの音楽学者がスコアの補筆に携わり、今日に至るまでさまざまな版が存在します。

交響曲第10番の構成と各楽章の特徴

マーラーはこの作品を全5楽章とし、劇的かつ内省的な音楽世界を展開する構想を抱いていました。以下は、一般的な「全曲版」に基づいた各楽章の特徴です。

  1. 第1楽章:アダージョ
    第1楽章は、マーラーの最も有名なアダージョの一つで、深い悲しみと切なさが表現されています。この楽章では、しばしば不安定な響きや不協和音が登場し、内面的な葛藤が反映されています。豊かで緩やかな旋律が展開され、途中で劇的なクライマックスに達するものの、再び静かに収束することで、聴く者に深い印象を与えます。
  2. 第2楽章:スケルツォ
    第2楽章は活気のあるスケルツォで、テンポが速く、エネルギッシュな音楽が続きます。この楽章にはどこか皮肉やユーモアが感じられる一方で、急激な転調や不安定なリズムが加わり、不穏な雰囲気が漂います。マーラーの内面的な葛藤や苦悩が、リズミカルで緊張感のある旋律の中に現れています。
  3. 第3楽章:プルガトリオ(煉獄)
    第3楽章は「煉獄」と題され、短く不安定な音楽が展開されます。この楽章は、まるでマーラーが浄化や悔悟を求めるかのように感じられ、短いながらも劇的で強烈な印象を残します。内面的な苦悩や救済への希求が、この楽章に凝縮されています。
  4. 第4楽章:スケルツォ
    第4楽章のスケルツォは、再び激しく複雑なリズムを持つ楽章です。エネルギーに満ちた音楽が展開される中で、次第に緊張感が高まり、マーラーの内面の混乱や苦悩が表現されています。このスケルツォは、皮肉や絶望の表現があり、マーラーの精神的な葛藤が感じられます。
  5. 第5楽章:フィナーレ
    最終楽章のフィナーレは、全体を総括する壮大で荘厳なアダージョで、マーラーの深い感情が込められています。この楽章では、悲哀と崇高さが織り交ぜられ、まるで人生の終わりに立ち向かうような音楽が展開されます。最終的に、希望と絶望の両方を感じさせる和音が鳴り響き、聴く者に強い余韻を残しながら静かに終わります。

全体の印象と位置づけ

マーラーの交響曲第10番は、彼が最後に残した内面的で悲劇的な作品です。この交響曲には、妻アルマへの愛や裏切り、人生の終焉を前にした葛藤など、マーラーの感情の深層が反映されているとされています。また、この作品はマーラーの死により未完となりましたが、その中には20世紀音楽への影響を予感させる革新的な音楽語法も含まれています。

交響曲第10番は、彼の全作品の中で最も内省的で、悲劇的な性格を持つものとして評価されており、後世の作曲家や聴衆に強い影響を与えました。

4o

エリアフ・インバル/東京都交響楽団

★★★★★

一楽章、整然としている序奏主題。良く歌い、広がりのある第一主題。華やかな第二主題。とても良い響きで録音されています。都響はとても伸びやかで、上手い。丁寧で表情も豊かです。トランペットも輝かしく突き抜けて来ます。

二楽章、とてもゆったりとしたテンポです。アンサンブルの精度も高く、色彩感も濃厚です。しなやかで揺れ動く表現の中間部。最後は少しアッチェレランドしました。

三楽章、豊かに表現される主要主題。

四楽章、緩いスネアが入りました。とても色彩感が濃厚で、その上、音が空間にスーッと広がる雰囲気はとても良いです。フランクフルト放送soとの録音よりも表情が豊かです。インバルの円熟によるものか、その分、鋭利な刃物のような鋭さは無くなっています。ペタンと浅い響きの大太鼓。

五楽章、柔らかいチューバ。深い響きで美しく歌うフルート。胸に迫るものがあります。頂点で大太鼓が入った後のチューバは、テヌート気味に演奏する盤が多かったですが、マルカート気味でした。シンバルも素晴らしい響きでした。インバルの唸り声は何度か聞こえましたが、掛け声のようにはっきりとした声も聞こえます。1970年代には考えられない程安定したトランペットのロングトーン。次第に黄昏る寂しさがとても良く表現されてまいす。凄く寂しい。グリッサンドはバラバラで異様な雰囲気を表現しました。遠くの天使の梯子を昇って行きました。
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レイフ・セーゲルスタム/スウェーデン放送交響楽団

インバル★★★★★

一楽章、はっきりと表れる序奏主題。ゆっくりと感情を込めて演奏される第一主題。作品に入って行ける演奏です。第二主題もゆっくりととても感情の籠った演奏です。とても静寂感のある録音で、残響がホールに広がって行きます。中低音の暖かく柔らかい響きです。楽譜に忠実になり過ぎて冷徹な演奏になるよりも、感情のままに豊かに表現される演奏がとても良いです。壮絶な雰囲気の中からトランペットのロングトーンが響きます。オーディエンスのノイズが聞こえるので、ライヴ録音のようですが、録音状態はとても良いように感じます。

二楽章、この楽章もゆったりとしたテンポで豊かに歌います。木管が生き生きとした演奏をします。とても楽し気です。中間部に入る前の金管で少しテンポを速めましたが、中間部はまたゆったりとしたテンポです。

三楽章、控えめですが、表現があります。

四楽章、胴の深いスネアが入りました。テンポの動きもあり、振幅も大きい演奏です。不気味な雰囲気になって、パチーンと強烈な大太鼓が響きます。

五楽章、たっぷりと歌うチューバ。大太鼓は強烈です。感情が籠っていて引き付けられるフルート。続く繊細な表現のヴァイオリン。素晴らしい響きで盛り上がり強烈な大太鼓。壮絶な響きの中からトランペットのロングトーンが響きますが若干音が合わない。アウフタクトの4分音符をかなり長く演奏して、グリッサンドはしましたがかなり揃っていました。最後は天使の梯子を昇って行きました。

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エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団

ブロムシュテット★★★★★

一楽章、割と明快な序奏主題。クッキリとした第一主題。第二主題も鮮明。オケがとても機能的です。軽々と鳴り響く金管の充実した響き。ミュートを付けたトランペットは鋭い響きです。録音も相まって精緻な響きは素晴らしい。鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた響き。湧き上がるようなトゥッティから突き抜ける鋭いトランペットのロングトーン。一転してとても穏やかなコーダ。

二楽章、とても俊敏に反応するオケ。鋭い切れ味です。淡々と演奏される中間部。活発で反応の良いオケが見事です。伸びやかで音離れの良い金管がホールに拡散して行きます。

三楽章、シルキーなヴァイオリンの主要主題。シャープで奥行き感のある音場。あまり雰囲気の変わらない中間部。

四楽章、スネアがはっきり聞こえる冒頭。シロフォンも奥行き感があります。トランペットが鋭く奥から突き抜けて来ます。とても洗練された響きで楽譜に忠実に演奏している感じがします。フラッターも良く聞こえます。かなり硬い響きの大太鼓。

五楽章、控えめなチューバ。バチーンとかなり強烈な大太鼓です。かなり暗い雰囲気の中で、異質な大太鼓。細身のフルートが寂しく印象的です。とても美しいヴァイオリン。頂点に達して痛みを感じる程硬く強い大太鼓。次第に静まって行きますが、惜別の寂しさが滲み出て来ます。孤独に死んで行く悲しみ。最後のグリッサンドが揃わないところが独特な効果を生んでいます。最後は天使の梯子を昇って行きます。

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ダニエル・ハーディング/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ハーディング★★★★★

一楽章、非常に弱くしなやかな序奏主題。緊張感から解放されるようなゆったりと柔らかい第一主題。さらりと流れる第二主題。とても緻密な表情が付けられていて絶対に大味にはなりません。ウィーンpoのしなやかな響きと相まってとても良い演奏です。柔らかいトゥッティ。不協和音も壮絶な響きにはならず、柔らかい。広がりのあるトランペットのロングトーン。全体にゆっくりとしたテンポで丁寧に描いて行きます。弱音も消え入るような静けさで強弱の振幅もとても大きいです。

二楽章、遠くから響くホルン。豊かな表現の主部。優雅な雰囲気の中間部。普通に美しく鳴るシンバルが入りました。昔のような割れてヒビの入ったシンバルはもう使っていないのか?

三楽章、速めのテンポです。とても表情豊かな主要主題。

四楽章、スネアは入りませんでした。濃厚で密度の濃い響きです。油絵のように濃厚で色彩感もとても豊かです。奥まって柔らかい大太鼓。あまり強打していません。

五楽章、柔らかいチューバ。弱い大太鼓は何を意図しているのでしょう。透き通って美しいフルート。とても感情を込めて迫って来る演奏です。続く弦もとても柔らかく美しい。次第に楽器が重なっても美しい盛り上がりです。テヌート気味のチューバ。トランペットのロングトーンも奥まって柔らかい。とても美しく穏やかになって行きます。グリッサンドはほぼ揃っていました。

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ヤニック・ネゼ=セガン/ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、少し離れたところからフワッと届くような序奏主題。広がりのある第一主題。とても美しいです。第二主題もゆったりとしていて美しいです。トロンボーンの重厚な響きもブレンドされてとても良い響きです。コンセルトヘボウでのコンサートなので、トゥッティもよくブレンドされた美しい響きです。トランペットはあまり強く突き抜けては来ません。素晴らしい静寂感の中に消えて行きました。

二楽章、一体感があって、生き物のように動く演奏です。中間部も豊かな表情です。ホールによる効果か、当日のコンディションが良かったのか、とても充実した響きです。

三楽章、とても繊細で淡い主要主題。全体の色彩感が濃厚でとても美しいです。

四楽章、スネアは入らず柔らかい冒頭でした。大きな表現や主張は無く、自然に流れて行く演奏で、「別れ」を特に意識している演奏でも無い感じです。硬い響きですが、あまり強烈では無い大太鼓。

五楽章、不気味なチューバ。淡々と演奏されるフルート。感動的な盛り上がりです。ゆっくりとしたテンポで演奏されるチューバ。ここでもトランペットのロングトーンは控えめです。会場がコンセルトヘボウだからか、とても色彩感の濃厚で深みのある響きが魅力的です。次第に寂しく、物悲しい雰囲気になって来ました。グリッサンドは僅かにズレがある程度でした。
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ジャン・マルティノン/ハーグ・レジデンティ管弦楽団

★★★★☆

一楽章、硬い響きで明瞭な序奏主題。倍音成分があまり含まれていないような第一主題。テンポは速めです。淡々と演奏される第二主題。ザラザラとした弦が気になります。速めのテンポでこねくり回すようなことの無いストレートな演奏です。トゥッティでも録音の古さは否めません。かなり奥まって響くトランペットのロングトーン。

二楽章、一楽章とは打って変わって、ヴェールに覆われているような奥ゆかしい響きでメルヘンチックな主部。中間部は良く歌います。テンポの動きや表現も豊かになって来て次第に乗って来ている感じがします。

三楽章、あまり歌わない主要主題。この楽章のテンポは遅めです。

四楽章、スネアがはっきりと聞こえます。トランペットが突き抜けるようになって来て、演奏が生き生きとして来ました。推進力があって力強い演奏です。金管の咆哮もあるようになりかなり力のこもった演奏になって来ました。テンポは速めに進みます。あまり強烈には響かなかった大太鼓。

五楽章、ゴロゴロとした響きのチューバ。線が細く澄んだフルートが美しい旋律を奏でます。頂点に達して大太鼓が打たれる部分の盛り上がりは今一つでした。続くチューバはテヌート気味に演奏しました。テンポは大きく変わらず自然に流れて行きます。かなり強いトランペットのロングトーン。次第に惜別の物悲しさがとても良く表現されます。黄昏てとても悲しい。グリッサンドはしなかったようです。

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トーマス・ダウスゴー/シアトル交響楽団

★★★★

一楽章、割とはっきりとした序奏主題。豊かに歌う第一主題。第二主題もとても豊かな表現です。金管は突き抜けては来ず、奥まってブレンドされた響きです。ライヴ録音らしいブレンドされた柔らかい響きですがヴァイオリンなどは響きが少なく、摩擦音のような感じです。トランベットのロングトーンも突き抜けては来ません。穏やかで柔らかいコーダ。

二楽章、少しゆったりとしたテンポの主部。感情的にのめり込むような演奏ではありませんが、良く歌う演奏です。中間部もゆったりとした歌です。トゥッティでは混然一体となります。トランペットもくすんだ響きで、全体にマイルドです。

三楽章、強弱の変化の大きい主題。ゆったりとした中間部。

四楽章、浅く筋肉質なホルン。インバルの超鮮明なセッション・レコーディングに比べると、録音の制限を感じてしまいます。とても淡々と演奏が進みます。トランペットがマイルドで伸びて来ないので、あまりダイナミックには感じません。大太鼓は響きからかなり強烈に叩かれているようですが、音圧としてはあまり強く感じません。

五楽章、大砲のような響きの大太鼓。チューバはかなり抑えています。かなり暗く不気味な雰囲気です。細身で澄んだフルートがなかなか良いです。とても清らかに上昇して行きます。頂点がリミッターがかかったように伸びて来ないのが残念。トランペットのロングトーンの部分も後ろではパイプオルガンのような響きです。ホルンも間接音を伴わない浅い響き。死へ向けて脱力して行くところはとても良いです。

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サイモン・ラトル/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、モヤーッとした暗闇から響く序奏主題。かなりの弱音で温度感も低いです。ゆっくりと演奏される第一主題。第二主題もゆっくり目です。非常に丁寧で、生き生きとしています。不協和音からトランペットが突き抜けて来ます。弱音は消え入るように弱く演奏されます。

二楽章、冒頭部分もかなり弱い演奏でしたが、強弱の振幅はとても大きい演奏です。活発に動く弦。

三楽章、悲し気に繊細に表現される主要主題。活発に動く木管と、ゆったりと流れる弦の対比も見事です。

四楽章、スネアは入りませんでした。クリアで見通しの良い演奏です。弱音はしなやかでシルクのような肌触りです。ティンパニの強烈なクレッシェンドなど、振幅もとても大きいです。シンバルは効果的に入っています。大太鼓はあまり強くありません。

五楽章、比較的穏やかな冒頭部分。大太鼓はかなり軽く叩いている感じで、個人的にはもっと強烈に叩いて欲しいと感じます。フルートは遠くから響きます。胸を抉られるような演奏です。壮絶な不協和音の中からトランペットが抜けて来ます。グリッサンドは見事に揃っていましたので、異様な雰囲気は全くありませんでした。天使の梯子を昇って行くような雰囲気もありませんでした。

ハンヌ・リントゥ/マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、ボヤーッとした中から響く序奏主題が次第にハッキリとして来ます。静かにゆっくりと演奏される第一主題。第二主題もゆっくり目です。ゆったりとしたテンポですが、緊張感があって引き締まっています。反復された第一主題の強弱とテンポの動きの表現は独特です。豊かで柔らかい響きが美しい。トゥッティも充実した響きです。トランペットのロングトーンは強さは感じましたが突き抜けては来ませんでした。

二楽章、明快な主題。とても機能的に動きます。あまり伸びやかでは無い中間部。色彩感はとても濃厚です。

三楽章、細かく表情を付けられた主要主題。原色のような強い色彩がこのオーケストラなのか演奏の特徴です。東南アジアのオーケストラですが、予想以上に上手い。

四楽章、スネアは入りませんでした。トランペットがかなり強いバランスで録られているようにも感じます。ライヴゆえのキズもあります。あまり熱気をはらんで来るような演奏には感じません。遠くで鳴るような大砲のような大太鼓。

五楽章、とても良く歌うチューバ。オフ気味で細かなニュアンスが伝わらないフルート。頂点の大太鼓がリミッターが掛かったように弱くなりました。続くチューバが途中り音をスタッカートに演奏して不自然に感じました。トランペットのロングトーンの部分は壮絶な響きです。4拍目を長く伸ばしてグリッサンドしました。

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リッカルド・シャイー/ベルリン放送交響楽団

シャイー★★★☆

一楽章、モヤ~ッとした空気感に響く序奏主題。たっぷりと歌う第一主題。第二主題もゆったりとしたテンポで歌います。かなり積極的に表現する演奏です。ヴァイオリンのソロも美しい響きを伴ってとても心地よい演奏です。トゥッティは混然一体となっていて、まとまった響きです。トラッペットのロングトーンも突き抜けては来ません。シャイーの若い頃の録音ですが、響きは枯れて充実しています。

二楽章、この楽章もゆったりとしたテンポで落ち着いた演奏ですが、弦の主題は荒々しい表現です。モノトーンのような淡い色彩感ですが、とても落ち着きのある安定感を感じます。

三楽章、艶やかで歌う主要主題。随所にシャイーらしい歌が聞かれます。オーケストラはドイツのオーケストラらしい重量感のある響きで、いきなりのトゥッティでも瞬時に立ち上がらず、少し遅れてフルパワーになるような感じがあります。

四楽章、スネアが入りました。響きは鋭角的では無く、マイルドで少しくすんだ重厚な響きです。寂しげな雰囲気はとても良く表現されています。豊かな残響を伴って奥から響く大太鼓。あまり硬い響きではありません。

五楽章、ゴロゴロと響くチューバ。良く歌いますが響きが浅いフルート。とても繊細で夢見心地のヴァイオリン。あまり大きな盛り上がりにならずに頂点の大太鼓が入りました。トランペットのロングトーンが詰まったような響きで残念です。トゥッティのエネルギー感ももう一つといった感じです。グリッサンドはすこしバラツキました。天使の梯子を昇るような雰囲気は感じませんでした。

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ユージン・オーマンディー/フィラデルフィア管弦楽団

スクロヴァチェフスキ★★★☆

一楽章、とても現実的な序奏主題。豊かに歌う第一主題。第二主題もとても良く歌っています。豊麗なフィラデルフィアサウンドです。クック版第二稿唯一の録音ですがが、かなり均整の取れた演奏です。極端な表現をせずに作品をそのまま表現しようとしています。トランペットのロングトーン部分のトゥッティも豊麗な響きです。録音の古さはあまり感じさせません。安らかに終わります。

二楽章、ゆったりとしたテンポでふくよかなホルンに続いて控えめにオーボエ、続いてヴァイオリンの主題と続きます。中間部は、ゆったりしたテンポなのに慌てるような感じがあって、あまり伸びやかではありませんが、そつ無くまとめています。

三楽章、微妙な表情が付けられた主要主題。良く鳴る木管。この楽章もゆったりとしたテンポです。

四楽章、スネアがはっきりと聞こえます。少しテンポが動く所もありました。あまり奥行き感は無く、眼前に全ての楽器が広がるような音場感です。金管はとても良く鳴りますが、咆哮するほどのことはありません。感情的にのめり込むような演奏では無く、淡々と楽譜を音にしている感じです。トゥッティでもかなり余力を残している感じて、もう少し感情移入して欲しい気持ちになります。こちらの感情が盛り上がっても、スッとかわされるようなもどかしさがあります。大太鼓はあまり強烈ではありません。

五楽章、抑え目で柔らかいチューバ。独特な響きのフルート。大きな頂点ではありませんでしたが、頂点で大太鼓が鳴って、続くチューバはマルティノンの演奏程ではありませんが、テヌート気味でした。テンポはとても確実です。この楽章のトランペットのロングトーンの部分のトゥッティも全開では無いようです。あまり別れの寂しさは伝わって来ません。クリッサンドで演奏しませんでした。

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ルドルフ・バルシャイ/ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー

メナ★★★

一楽章うつろな序奏主題。とても豊かに伸びやかに歌う第一主題。ゆっくりとした第二主題。バルシャイ版での演奏ですが、独自の版を出すくらいなので、作品に対する思い入れも強いのでしょう。表現の幅はかなり広いです。木管が間接音を含んで奥行き感があります。輝かしい金管の響き。壮絶な響きからトランペットのロングトーンが響きます。

二楽章、ゆっくりとしたテンポです。かなり強めではっきりと演奏される主部。トライアングルが入ります。ホルツクラッパーのような音も聞こえます。シンバルも入って盛大です。中間部でも大太鼓のロールやシンバルが入ってちょっと違和感を感じます。コロコロと響くのはマリンバか?。とにかく色んな打楽器が登場します。演奏は積極的で元気です。

三楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポです。この演奏では消え入るような弱音は無く、かなり演奏しやすい音量で演奏している感じがします。シロフォンも登場しました。

四楽章、色んな打楽器が入ります。スネアもリズムを刻んでいます。ゆっくりと濃厚な表現もありますが、とにかく打楽器が頻繁に出て来ます。タンバリンまで登場します。大太鼓は強くミュートされた感じは無く柔らかく長い響きでした。

五楽章、ミュートは僅かに感じる大太鼓。大太鼓は遠くから響く感じで強烈な打撃ではありません。ゴロゴロとした響きのチューバ。美しいフルートですが、あまり感情は込められていないように感じました。それぞれの楽器がくっきりとしていて濃厚な色彩です。あまり盛り上がらず大太鼓が入りました。豊かな響きの中にテヌート気味にチューバが独特の響きです。トランペットのロングトーンも弱いです。僅かに揃わないグリッサンドでした。この部分は大きくズレがあった方が異様な雰囲気になって良いと思うのですが・・・・。あまり天に昇って行く感じもありませんでした。

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クルト・ザンデルリング/ベルリン交響楽団

★★

一楽章、静かな空間に音が広がり、かなりはっきりと演奏される序奏主題。速めのテンポで伸びやかで柔らかく歌う第一主題。ホルンも伸びやかです。。ゆったり目の第二主題。中低音も柔らかく伸びやかです。展開部に入っても速めのテンポです。再現部で金管の硬直した響き。トランペットのロングトーンはあまり鋭い音ではありません。最後はとても穏やかな雰囲気になりました。

二楽章、かなりゆっくりとした演奏ですがかなりエネルギッシュで振幅の大きい演奏です。中間部もゆっくりとたっぷりとした表現で歌います。一般的なこの楽章の演奏に比べるとかなり活発な表現です。テンポの動きもあります。

三楽章、一転して速めのテンポです。あまり表情を付けずに淡々と進みます。

四楽章、胴の浅いスネアが響きます。この楽章でもテンポの動きがあります。音像が大きくオンマイク気味で金管も前に出てきて奥行き感はあまり無い録音です。この楽章も速めのテンポでどんどん進みます。作品には不釣り合いな径の小さいシンバル。硬く強烈な大太鼓がホールに響き渡ります。

五楽章、弱めのチューバ。弱くビブラートを掛けているホルン。澄んだ響きのフルート。続くヴァイオリンが静かで美しい。トランペットのロングトーンはあまり強くありません。速めのテンポで淡々と演奏されるせいか、そんなに悪い演奏ではありませんが、何故か作品に入って行けません。最後も惜別に感じはほとんど感じませんでした。
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マーラー10番~アダージョ

マーラーの交響曲第10番の第1楽章「アダージョ」は、彼の最後の作品として知られ、その中でも特に深い悲しみと内面的な葛藤が感じられる楽章です。この楽章はマーラーが完全にオーケストレーションした唯一の部分であり、彼の最後の作品となった交響曲全体の核心をなす重要な楽章です。作曲の背景には、マーラーが抱えていた健康の悪化や妻アルマとの関係における危機など、さまざまな個人的な苦悩が影響していると考えられます。そのため、音楽には非常に切実な感情と人生の重みが込められています。

「アダージョ」の構成と音楽の特徴

「アダージョ」は、緩やかなテンポと深い感情が漂う、荘厳で崇高な音楽が特徴です。以下は、この楽章の主な構成と印象的な特徴です。

  1. 静かな開始と哀愁漂う旋律
    楽章は低弦の不安定で重厚な和音から静かに始まり、その後にヴィオラが主要主題を奏でます。この主題は哀愁を帯びた美しい旋律で、広がりと深い叙情性を持っており、聴く者の心に深く響きます。この旋律は、マーラーが人生の終わりを見据えながら抱いていた複雑な感情を表しているかのようです。
  2. 和声と不協和音による緊張感の増大
    途中で楽曲は徐々に劇的な展開を見せ、複雑な和声と不協和音が加わることで緊張感が増します。この不協和音には、マーラーの内面の混乱や絶望が反映されているとも考えられており、楽章全体に深い苦悩が滲んでいます。また、時折出現する静寂の「間」がさらに音楽の緊張感を引き立て、聴衆に強い印象を与えます。
  3. クライマックスの劇的な響き
    楽章の中盤から後半にかけて、感情が爆発するような劇的なクライマックスが訪れます。ここでは、トロンボーンやトランペットが強烈に鳴り響き、苦悩や絶望の頂点に達する場面です。この箇所は、マーラーが抱えていた絶望や苦しみが極まった瞬間とも捉えられ、彼の全交響曲の中でも最も激しいクライマックスの一つとされています。
  4. 静かな終結と余韻
    クライマックスの後、楽章は静かに収束し、再び穏やかな旋律が戻ってきます。最終的に音楽は静かにフェードアウトし、悲しげでありながらもどこか救いを感じさせるような響きで終わります。マーラーの人生の終焉を暗示するかのように、儚くも美しい結末が聴く者に深い余韻を残します。

全体の印象と音楽的意義

「アダージョ」はマーラーが最晩年に到達した精神的・音楽的な深みを象徴する楽章であり、彼のすべての苦悩と向き合うような音楽が描かれています。マーラーの音楽は常に感情表現に富んでいますが、このアダージョには特に彼の「人生の終わり」を見つめる厳粛さと、自己の内面と対話するような静謐さが感じられます。後世の作曲家にとっても、この楽章は20世紀の音楽に向けた新たな道を切り開いたものとして、高く評価されています。

4o

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

とても静かでも艶のある序奏主題。一気に伸びやかになりますが、しっとりと慈しむような第一主題。かなりゆっくりとした第二主題。ホルンが入る第一主題は吠えるような大きな表現でした。最晩年程強烈ではありませんが、感情をぶつけて来ます。作品と一体になっているバーンスタインにウィーンpoも応えています。遠くから美しい木管のトリル。ヴァイオリンのソロも艶やかで美しい。大きなうねりの後にアダージョ主題。全く波の無い水面のように静まり帰った静寂感。静寂を打ち破る強烈な絶叫。巨大な不協和音。強く突き抜けて、最後に強く押すトランペットのロングトーン。大きな意味を込められているようで、鳥肌が立ちました。とても寂しいコーダ。最後の最後で少し安堵したような穏やかさを感じました。

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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

★★★★★

とても静かに演奏される序奏主題ですが、緊張感はあまり感じません。序奏主題の雰囲気を引き継いで、とてもゆっくりと演奏される第一主題。第二主題そさらに遅い演奏です。テンポは遅いのですが、あまり表現をしている感じではありません。反復で表現が豊かになったような感じがします。暗い中から響く展開部の序奏主題。とても遅いので、木管は普段聞き慣れている感じとはかなり違います。アダージョ主題は控えめです。再現部に入ってもテンポは異常なくらい遅いままです。テンポが遅い中での静寂はとても神秘的です。金管の絶叫はさすがロシア国立soです。柔らかい不協和音の中から強烈なトランペットのロングトーンが響きます。音楽の振幅はとても大きい演奏です。コーダに入るとゆっくりとしたテンポでとても穏やかで安らぐ雰囲気が良いです。異常に遅いテンポでこの作品の違う面を見せてくれたような演奏でした。

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クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

とても暗く温度感の低い序奏主題。とても豊かに歌う第一主題。楽器の入れ替わりも克明に描かれていて色彩感も濃厚で、切々と歌います。第二主題もとても豊かな表現です。反復してホルンが入る第一主題は荒々しく勢いがあります。かなり振幅が大きく感情を吐露するような演奏です。展開部に入って鮮やかに浮かび上がる木管。アダージョの演奏としてはかなり激しく荒れ狂うような演奏です。静寂も動きがあります。マグマの噴出のような絶叫。柔らかく明るいトランペットのロングトーン。コーダに入っても歌うアダージョ主題。ようやく少し安堵の雰囲気が訪れます。

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クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

ほの暗い序奏主題。一気に伸びやかになる第一主題。ゆったりと怪しい雰囲気の第二主題。とても克明に描かれて行きます。深々としたコントラバスに乗ってバランスの良い響きです。チェロの第二主題もねっとりと濃厚な表現でした。展開部に入って鮮明な木管。アダージョ主題は引き締まって細身の表現。再現部に入ると極端な弱音にはなりません。金管は最後で絶叫しました。広大な不協和音。強烈なトランペットのロングトーン。テンシュテットの棒にとても良く反応するオケ。和らいで穏やかになりました。

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クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

暗いところから響いて来る序奏主題。一気に開放される第一主題。伸びやかに歌います。ゆったりとしたテンポで揺れながら歌う第二主題。とても良く歌い積極的に表現される演奏で、振幅も大きいです。展開部の木管は滑らかで突出しませんでした。濃厚なヴァイオリンのソロ。抑え気味に演奏されるアダージョ主題。再現部の第一主題は複雑に絡み合った感じです。直後の極端な静寂。壮絶な絶叫。奥まって響く不協和音。トランペットは少し遠くから響きます。安堵感のあるアダージョ主題。とても穏やかに曲を閉じました。

アバドの演奏なので期待せずに聞きましたが良い演奏でした。

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ジュゼッペ・シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団

★★★★★

非常に弱く、暗闇の中から響くような序奏主題。第一主題も弱く柔らかい演奏です。とてもゆっくりと揺れる第二主題。夢見心地で進みます。ホルンやトロンボーンを明快に鳴らし、強弱の対比も明確です。展開部に入っての木管もゆってりと柔らかい表現です。ヴァイオリンのソロの前でテンポが落ちるなどテンポの動きもあります。引き締まったアダージョ主題。再現部の繊細な弱音。静寂を突き破る絶叫。強烈なトランペットのロングトーン。コーダもとてもゆっくりとした演奏です。最後はゆっくりと天に昇って行きました。

サイモン・ラトル/ロンドン交響楽団

★★★★★

割とくっきりとスッキリした序奏主題。微妙な表現も付けられています。伸びやかで大きく歌う第一主題。流れるような第二主題。木管がくっきりとクリアに響きます。展開部に入って浮き立つ木管。とても動きがあって活発な演奏です。柔らかい再現部の第一主題。弱音はとても弱く、強弱の対比もとても大きいです。広がるトランペットのロングトーン。とても穏やかに天へ昇って行くようなコーダでした。

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ズービン・メータ/イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

モヤーッとした中から柔らかく響く序奏主題。第一主題も伸びやかで柔らかい。第二主題は少しゆったりとしていますが、ここでも柔らかい響きが特徴です。ファゴットも柔らかい。展開部に入っての木管も飛び抜けて来るような響きでは無く、ブレンドされて柔らかく溶け込んでいます。ヴァイオリンのソロも伸びやかで美しい。アダージョ主題は引き締まった演奏です。金管の絶叫も柔らかく、不協和音もマイルドです。トランペットはジーンと独特な響きのロングトーンです。うつろな雰囲気と少しの寂しさも感じるコーダです。次第に穏やかになって安らかに終わりました。

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ロリン・マゼール/ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

太い響きの序奏主題。あまり開放されない第一主題。ビブラートを掛けたホルン。ゆっくりと豊かに歌う第二主題。ヴァイオリンがかなり尖った響きに感じます。展開部に入って滑らかに演奏される木管。引き込まれるような静寂を突き破る金管の絶叫はかなり激しい。柔らかい不協和音から突き抜けるトランペット。コーダで弦と木管がかなり強く演奏しました。全体にゆったりとしたテンポでしたが、マゼールらしい仕掛けはあまり無く、抵抗なく受け入れることが出来る演奏でした。

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ロリン・マゼール/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

現実味のある序奏主題。あっさりとした第一主題。僅かに遅くなる第二主題。あまり表現らしい表現も無く淡々と進みます。反復してホルンを含む第一主題は広大なスケールの演奏でした。色んな楽器が折り重なる多層的な響きは素晴らしいです。展開部の木管は鮮明に浮き上がります。艶やかなヴァイオリンのソロ。アダージョ主題はとても引き締まっています。再現部に入っても極端な弱音にはなりません。壮絶な絶叫。バリバリと響き不協和音。渋い響きのトランペットのロングトーン。優しく穏やかなコーダ。

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クラウス・テンシュテット/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

独得のアゴーギクを効かせて不気味な序奏主題。抑制的な第一主題。サラッとした第二主題。刻み付けるようなピチィカート。反復でホルンが入る第一主題は引き締まっています。展開部の木管のトリルは他の楽器に埋もれるような感じでした。再現部の静寂な部分も動きがあり、艶やかです。かなり激しい絶叫。ゴロゴロと唸る不協和音。トランペットのロングトーンも激しく突き抜けます。テンポの大きな動きもあります。残念ながらバーンスタインの演奏程の感情の吐露も無く、音色も艶やかさや深みを感じることが出来ませんでした。

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ミヒャエル・ザンデルリング/南西ドイツ放送交響楽団

★★★★

豊かな残響を伴った序奏主題。慎重に丁寧に演奏される第一主題。速めのテンポであっさりと演奏される第二主題。強弱の変化は強調されています。展開部に入っての木管もくっきりと浮かび上がります。柔らかいヴァイオリンのソロ。アダージョ主題は締まった感じ。再現部に入って消え入るようなほとんど何をやっているのか聞こえないくらいの静寂。金管の絶叫はバランス良く強烈な響きではありませんでした。強めの不協和音。2本のトランペットの音が合わない。次第に穏やかになりました。穏やかに安らいでいく感じはとても良いです。

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ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団

★★★

モヤーッとした中から響く序奏主題。不気味な雰囲気があります。とても柔らかく歌われる第一主題。ナローレンジですが、無理に高域を強調していないので、とてもマイルドで聞きやすい録音です。第二主題もゆったりと豊かに歌います。とても積極的に表現しています。展開部に入るとさらに活発に動く表現です。暴力的なトゥッティの不協和音。少し渋い響きのトランペットのロングトーン。コーダに入っても活発な表現です。とても活発なので、あまり穏やかな雰囲気にはなりませんでした。

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ズデニェク・マーカル/プラハ交響楽団

★★★

太い響きの序奏主題。あまり強い緊張感はありません。控えめであまり伸びやかでは無い第一主題。ホルンがビブラートを掛けています。ゆっくりと丁寧な第二主題。生き生きとした木管。金管の柔らかい響きに対して弦は引っ搔いている感じがします。展開部に入ってもも木管には生命力があります。ヴァイオリンのソロは美しい。再現部は厚みのある響きです。全体にゆっくりと丁寧に演奏しています。木管はとても良い響きです。柔らかい響きの中からあまり伸びやかでは無いトランペットのロングトーンが聞こえます。柔和なコーダで悲鳴を上げるようなEbクラ。

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ピエール・ブーレーズ/クリーブランド管弦楽団

★★★

速いテンポで明瞭な序奏主題。大きくテンポを落として歌う第一主題。波のように押しては返す第二主題。反復しても第一主題はとても豊かに歌います。第一主題以外は速めのテンポで素っ気ない演奏です。チェロのソロはエッジの効いた独特の表現でした。展開部に入って動きのあるも木管も浮き出ることは無く、自然な流れの中で演奏されました。アダージョ主題も朗々と歌うことは無く、かなり抑制的な演奏のように感じます。消え入るのような静寂からの絶叫は大きな振幅がありました。柔らかく暗い不協和音から、トランペットが明るい響きで突き抜けて来ます。弱音は極限まで弱く集中させられます。あまり最後は穏やかになりませんでした。

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ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★☆

柔らかく細身の序奏主題。ゆっくりとたっぷり歌う第一主題。第二主題もとたもゆっくりです。反復の第一主題のホルンがかなり強めでした。アダージョ次第もホルンが朗々と歌います。ハイティンク独特の細部まで行き届いたる演奏は健在です。再現部の緊張感のある静寂。絶叫もハイティンクらしく抑制的で美しい響きでした。深々とした不協和音。ちょっと渋めのトランペットのロングトーン。最後はあまり穏やかにならず緊張感を保った演奏でした。

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ウイン・モリス/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

★★

かなり太く、途中にスタッカートがあったり独特の表現の序奏主題。ゆっくりとしたテンポで歌う第一主題。感情が込められて豊かです。第二主題もゆったりとしていて、とても積極的に表現します。展開部の序奏主題も、抑えることは無く、開けっぴろげです。録音レベルの問題なのかも知れませんがかなり賑やかです。アダージョ主題も朗々と歌います。トゥッティはかなり騒々しいですがトランペットのロングトーンは渋い響きです。コーダに入っても何となく賑やかです。なかなか穏やかにはなりません。終始鋭利な響きで安らぐことは無い演奏でした。

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ヴァレリー・ゲルギエフ/ロンドン交響楽団

★★

非常に遠いモヤの中から響くような序奏主題。ゆっくりと丁寧に演奏される第一主題。録音レベル自体が低いようです。速いテンポでピリッとした第二主題。深みがあって柔らかい金管。第二主題はとても速いテンポでサラッと通り過ぎます。展開部に入ってくっきりと浮かび上がる木管。アダージョ主題は朗々と歌う感じでは無く引き締まった感じです。再現部に入ると強い緊張感を伴う静寂になり、その静寂を突き破る金管の絶叫ですが、それ程激しい絶叫ではありません。トランペットのロングトーンも突き抜けては来ません。コーダに入っても、極端な弱音による緊張感があり、穏やかな雰囲気は全くありません。

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ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団

非常に明快な序奏主題。非常に華々しく速めのテンポで演奏される第一主題。かなりテキパキと処理されて行く感じです。ゆったりと歌う第二主題ですが、少しトゲのあるような、僅かに滑らかさを欠いている印象です。エッジが効いていてガツガツと力強く前進します。展開部の序奏主題も静かではありません。木管はとても鮮やかに表現されます。ミュートしたトランペットも明快です。フワッとしたアダージョ主題。かなり強烈な絶叫。盛大に鳴る不協和音。トランペットも盛大に突き抜けます。金管は遠慮なく突出して来ます。コーダに入ってもあまり穏やかにはなりませんでした。

混沌とした複雑さや矛盾など無く、スッキリと割り切れた演奏には抵抗がありました。

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