カテゴリー: チャイコフスキー:交響曲第5番名盤試聴記

チャイコフスキー:交響曲第5番の名盤は、ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウoの全く力みの無い自然な演奏でコンセルトヘボウの最も美しい響きを捉えた名盤です。ロジェストヴェンスキー/ロンドンsoは、ハイティンクしは正反対に遠慮なく吹きまくる金管でロジェストヴェンスキーらしい演奏ですが、楽譜に書かれていることに忠実なのはこちらの演奏かも知れません。チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニーoは、とても透明感の高い響きで、表現も押し付けがましくなく、ゆったりと穏やかな表現をベースにしていますが、いつの間にか音楽に身をゆだねているような演奏で、自然に引き込まれる名盤でした。

チャイコフスキー 交響曲第5番

チャイコフスキーの交響曲第5番は、彼の円熟した作風を感じさせる大変ドラマチックで情熱的な作品です。ロシアの作曲家としての個性が強く出ており、聴き手に深い印象を与える構成が特徴です。以下、各楽章について簡単にご説明します。

1. 第1楽章:Andante – Allegro con anima

冒頭の「運命の動機」とも呼ばれる、厳かなクラリネットの旋律が印象的です。これが楽章全体の基調をつくり、運命や苦悩、希望が交錯するような展開を見せます。その後、活気あるアレグロの部分に移行し、メロディが力強くなっていきます。

2. 第2楽章:Andante cantabile, con alcuna licenza

美しいホルンのソロで始まるこの楽章は、ロマンチックで優雅なメロディが特徴です。中でもホルンのソロはとても有名で、しっとりとした情緒と繊細な表現が際立ちます。愛と苦悩が入り混じったような感情が漂い、心に深く響くような雰囲気です。

3. 第3楽章:Valse: Allegro moderato

この楽章はワルツのリズムが基調となり、軽やかでリズミカルです。甘美でやわらかい旋律が繰り返され、チャイコフスキーらしい「ロシアのロマンチシズム」が感じられる一方で、やや不安定な要素も含んでおり、単なる美しいワルツに留まらない深みが感じられます。

4. 第4楽章:Finale: Andante maestoso – Allegro vivace

最後の楽章は荘厳で、勇ましい「勝利のテーマ」が力強く奏でられます。運命に打ち勝つかのような威厳に満ちた雰囲気が広がり、壮大なクライマックスへと導かれます。特に最後の部分は圧巻で、聞く者に高揚感と感動を与えるエンディングです。

全体の印象

この交響曲第5番は「運命」と「勝利」のテーマが貫かれており、チャイコフスキーの複雑な感情が音楽に反映されています。感情の深み、激しさ、そして優雅さが融合し、聴き手を壮大な音楽の旅へと誘います。

たいこ叩きのチャイコフスキー 交響曲第5番名盤試聴記

ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク★★★★★
一楽章、陰鬱感がとてもよくてでいるクラリネットです。表現が大げさではないところがかえってロシアの大地の厳しさを伝えてくるようで、良い感じです。
ホールの響きを伴って、すごく美しい響きを聞かせてくれます。短い音符と音符の間に残響がホールに広がっていくところがとても心地よい。
強弱の振幅が狭く、そのことがかえって演奏上の効果を生んでいるような不思議な演奏で、ロシア物と言うと、爆演が連想されがちですが、この演奏は、そのような演奏スタイルを真っ向から否定しているような演奏で、非常に美しいです。
爆演ではありませんが、オケは過不足無く、気持ちいい音で鳴っています。

二楽章、アンサンブルの精度が非常に高く、オケがこの演奏に集中しているのも感じ取れます。
ホルンのふくよかで豊かなソロ。ロシアのオケのような筋肉質のホルンではありません。とても格調高いソロです。
また、カラヤンの演奏のように編成を大きくしていないので、響きに透明感があります。
作為的なところが全くないので、最初に聴いたときには拍子抜けするかもしれませんが、これはすごい名演です。
ティンパニのクレッシェンドもオケを煽るような極端なクレッシェンドはしません。しかし、見事です。
愛情が満ち溢れた演奏で、音楽にどっぷりと浸ることができます。

三楽章、とても清廉な演奏で、グラマラスな部分もありませんが、作品に対する真摯な表現に心打たれます。

四楽章、本当に美しい音色のオケであることを再認識させてくれます。
ここでも、ティンパニはほとんどクレッシェンドしていないと言って良いほどです。まったく力まない金管。それでも自然に音楽は高揚して行きます。人工的な演出なしで、これだけ作品にのめり込める演奏は、そうあるものではありません。

巷では、このCDのことが話題にのぼることはありませんが、私はこれがベストです。

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、クラリネットのソロを支える弦が柔らかく厚みのある響きで美しい。
予想通り遠慮なく吹きまくる金管。さすが爆演の巨匠!
爆演とは言うものの、弱音部は美しいし、響きの透明感もあるし、なかなか良い演奏です。
聴いていて嬉しくなるほど、吹きまくる金管。弱音部でも十分歌うので、コテコテの印象は拭えないですが、でもロジェヴェンがやりたいことは、みんなやってみたいことなんだと思いますよ。
普通の人は理性がブレーキを掛けるので、ここまでしないだけで。
この演奏も生で聴けたら熱狂の嵐でしょう。
演奏は力ずくと言う感じはあります。もっと自然な流れで金管が入れば良いのですが、こちらが予想する以上の大きさで遠慮なく入ってくる金管には、下品さを感じる人もいるでしょう。

二楽章、ホルンのソロもふくよかな音色でとても美しいです。
金管は限界近い音量で吹かされているのではないだろうか?凄いです。

三楽章、他の演奏では聞こえなかったところで金管が入っていることを分からせてくれます。

四楽章、朗々と歌う弦。音楽の振幅が尋常でなく広い。でも、この演奏共感できるなぁ。
ハイティンクの演奏が禁欲的とも思えるほど無駄に力むことなくすばらしい音楽を作り上げましたが、俗人には、ロジェヴェンの演奏に流れ勝ちだと思います。
でも、そこにブレーキをかけずに、思ったままをやってしまうのが凄い。
チャイコフスキーの楽譜ってpが4つも5つもあるし、fだって5つも6つもあるわけだから、楽譜に従えばハイティンクの演奏にはならないはずで、この演奏の方が正論なのかもしれません。

説得力十分なすばらしい名演でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、遅いテンポで暗闇に包まれたようなクラリネットの旋律。第一主題もすごく遅いテンポで、一歩一歩確かめながら歩くような、ともすればダレるぎりぎりのテンポです。嵐のような金管の強奏。遅いテンポで朗々と歌う弦。第一主題の再現はとても美しい。柔らかくしなやかで美しい弱音と、力強く鳴り響く金管の強奏が見事に対比されていて、すばらしい演奏です。コーダでテンポをかなり速めました。

二楽章、この楽章も遅いテンポで、序奏でも幅広い強弱の変化です。ホルンのソロも強弱の変化を付けて歌います。オーボエ、クラリネット、ファゴットと色彩の変化も鮮明です。弦の主要主題も柔らかく美しい。中間部に入る前はテンポが動きました。中間部に入ってからテンポを速めました。主要主題が戻るとまたテンポが遅くなりました。チェリダッケの演奏って、テンポが遅くなった分、音楽の密度も少し薄まっているように感じることがあります。これはオケの響きの透明感がそう感じさせる原因かも知れませんが・・・・・。

三楽章、とても穏やかなワルツです。中間部は生き生きとした表現の幅の広い演奏です。主部の主題が戻って、強い表現ではありませんが、節度のある表現です。最後も柔らかくゆったりと終りました。

四楽章、テンポが遅いのですが、アゴーギクを効かせたりして、濃厚な表現をしたりはしませんので、もたれるような演奏にはなりません。第一主題はガツガツと刻むようにしっかりと深い切り込みでした。木管の第二主題も透明感の高い音でとても滑らかでした。金管の「運命の動機」がデクレッシェンドします。再現部はテンポを速めました。全休符の前は緩急の変化が大きいです。コーダはトランペットが高らかに歌い上げます。

とても透明感の高い響きで、表現も押し付けがましくなく、ゆったりと穏やかな表現をベースにしていますが、いつの間にか音楽に身をゆだねているような演奏で、自然に引き込まれていました。

ヴァレリー・ゲルギエフ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2008年ライヴ

ゲルギエフ★★★★★
一楽章、陰鬱な運命の動機。背景で動く弦の表現がとても大きく感情がこもっているようです。感情が込められて生き生きとした第一主題。刻み付けるように強い弦。第二主題も大きく歌います。ウィーンpoの濃厚な色彩を存分に生かした演奏です。金管も遠慮なく咆哮します。テンポも劇的に変化します。とても濃厚に音楽を聞かせてくれます。

二楽章、太くふくよかなホンルの第一主題。とても若々しく元気のある表現です。迫って来るように強く歌う弦の第一主題。中間部に入るとクラリネット、ファゴット、弦と波打つようにうねりながら次第に音楽が盛り上がります。運命の動機では強烈なトロンボーンの咆哮です。原色で彩られた強い色彩。テンポも動いて大きな表現の演奏です。長く尾を引くクラリネット。

三楽章、少しテンポは速いですが、ウィンナ・ワルツらように優雅に舞うような演奏です。中間部の弦の細かい刻みもキリッと立っています。この細かい弦の刻みに乗る主要主題ですが、刻みの表現がとても積極的です。

四楽章、テンポは速いですが、全身を包み込むように迫ってくる序奏。音楽の起伏がとても大きいです。第一主題は少しテンポが遅くなり、一音一音刻み付けるように強い演奏でした。いろんな音が豊かに聞こえてきます。バストロンボーンが豪快です。ウィーンpoは元々色彩感のあるオケですが、それでもこれだけ濃厚な原色の色彩を聞かせることはあまり無いと思います。コーダはとても力強い弦で始まりました。豪快に終わりました。

濃厚な表現と、原色の強い色彩感で彩られた強烈な演奏でした。元々色彩感のあるウィーンpoですが、これだけ濃厚で強烈な原色の色彩を引き出したゲルギエフも凄いと思いました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年ライヴ

カラヤン★★★★★
一楽章、大きなうねりを持って歌う運命の動機。深みがあり分厚い響きです。少し距離のあるところから響くような第一主題。とても美しく歌います。トランペットとトロンボーンは近く、ホルンはかなり奥まっていて、そこからの強奏が壮大なスケール感を生み出します。第二主題の前で大きくテンポを落としました。第二主題も美しく歌います。表現の限りを尽くして歌うような演奏です。ゆったりと優雅に歌う再現部の第一主題。滑らかで美しい演奏でした。

二楽章、厚みのある響きが押しては引いて行きます。ウィンナ・ホルンらしい柔らかい第一主題です。弱く始まって次第に伸びやかに盛り上がります。第二主題も細く美しい演奏です。ゆっくりと美しく歌う弦の第一主題、周りを彩るホルンやオーボエもとても美しいです。第二主題の盛り上がりも凄い厚みとエネルギーあります。中間部のクラリネットもウィーンのクラリネットらしい深みのある響きで大きく歌いました。盛り上がったところでの運命の動機はあまり力を入れずに軽めの演奏でした。続くピィツィカートはとてもゆっくり始まりました。粘っこい表現の部分もありました。

三楽章、生き生きと表情豊かな主要主題。色彩感も濃厚で色鮮やかです。中間部の表現もとても豊かです。堂に入る表現でとても整然としていて、自信に溢れています。テンポの動きも何となく納得させられます。

四楽章、熱く訴えてくる序奏。トランペットは控えめですが、背景のピィツィカートは積極的に鋭く刻み込んで来ます。猛烈に激しい第一主題。激しい演奏ですが、その激しさはロシアのものとは違いとても洗練されています。情熱的で熱い演奏です。スタジオ録音とは全く違うカラヤンの人間らしい演奏に感動します。僅かにテンポを速めて終わりました。

スタジオ録音とは違い、豊かに美しい歌に溢れた演奏で、人間らしい感情もこもった生き生きとした演奏で、激しさもありましたが、とても洗練された表現で非常に美しかったです。
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ハンナ・チャン/カタール・フィルハーモニー管弦楽団 2014年プロムスライヴ

チャン★★★★★
一楽章、ゆっくりとしたテンポで染み入るような運命の動機。速いテンポで演奏される第一主題。一体感があって力強い響きのトゥッティです。訴えかけるような表現もなかなか良いです。ストレートに大きく歌い、感情の起伏の激しい演奏です。スピード感もります。中東の聞いたことの無いオケですが、かなり技術レベルは高いようです。感情のこもった強い表現と大きく大胆なテンポの動き。

二楽章、ゆったりと静かな序奏。柔らかく美しいホルンの第一主題。かなり強烈な運命の動機。強く感情をぶつけてくるような演奏です。凄く大きな振幅で、優しい弱音と強靭なトゥッティとの対比も見事です。

三楽章、繊細で美しい弦。テンポの動きも自然です。最後は大きくritしました。

四楽章、起伏のある運命の動機。物凄く速い第一主題。展開部も猛烈なスピードのまま進みます。聞きすすむうちにこのテンポはこれで良いのではないかと思うようになります。コーダはオケが一体になった強い盛り上がりでした。

かなり自由にテンポが動いて表現も自由で新鮮な演奏でした。聞いたことの無いオケでしたがなかなか充実した演奏と技量でした。
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レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

バーンスタイン★★★★★
一楽章、冒頭から遅く引きずるように重い運命の動機。とても濃厚な歌です。第一主題は普通のテンポです。サクサクと舞うように動く音楽。強弱の振幅も大きくとてもダイナミックです。金管もなかなか強烈です。テンポの動きもとても大きいです。普通のテンポと極端に遅い部分があります。再現部の第二主題もとても遅く深く感情のこもった濃厚な歌です。オケが一体になって迫ってくるような凄い迫力です。バーンスタインの気迫が乗り移っているような感じです。色彩もとても濃厚です。コーダに入り加速したと思ったら急にテンポが落ちて止まりそうになって終わりました。

二楽章、暗闇の中から迫って来てまた遠ざかりまた近づいてきてホルンのソロになります。ゆっくりと感情のままに自由に歌うホルン。マーラーと同じように完全にバーンスタインの世界です。第二主題もとても濃厚に歌います。物凄く遅いです。弦の第一主題も遅く、伸びやかに歌います。弦の第二主題もとても遅くこってりとこれでもかと言うほどに濃いです。中間部のクラリネットから少しテンポが速くなります。運命の動機に向かって速くなりますが、運命の動機でまた遅くなって一音一音刻み付けるような演奏です。テンポは感情の赴くままにとても良く動きます。二度目の運命の動機の強奏は速めのテンポでとても激しいものでした。コーダはまた止りそうな遅さです。

三楽章、少し遅い程度のテンポの主要主題です。 ファゴットが豊かに歌います。中間部の弦の細かい動きは静かな中にも背景にエネルギーを蓄えているような演奏です。コーダはまた止りそうなくらい遅いテンポで感情をこめた演奏になりました。

四楽章、強い感情のこもった運命の動機。トランペットが入ってから一時凄くテンポが遅くなりました。第一主題の前もとても遅いです。第一主題は逆に速いテンポでとても活発な動きの演奏です。テンポが頻繁に変わります。金管は激しく咆哮します。ゆっくりと踏みしめるようなコーダ。物凄い高揚感です。最後の四つの音もゆっくりと叩きつけるように演奏しました。

バーンスタインの感情の赴くままに大きくテンポが動く演奏でした。特に遅い部分の遅さは尋常ではありません。これだけ濃厚な演奏はロシアの指揮者とオケでもできないと思います。この演奏に付いていけない人もいると思いますが、好きな人にはたまらない演奏だと思います。
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ユーリ・テミルカーノフ/サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団

テミルカーノフ★★★★★
一楽章、クラリネットに合わせて強弱の変化がある弦は溶け合って厚みのある響きです。奥まったところからキラキラと輝くようなトランペット。ムラヴィンスキー時代の強い響きとは違い柔らかくしなやかな響きです。第二主題はゆっくりと波打つような演奏でした。テンポの大きな動きもありますが、流れの良い演奏です。コーダでトランペットが突き抜けて演奏します。

二楽章、大きく豊かに歌うホルンが美しいです。第一主題が弦に移っても豊かな歌です。運命の動機に向けた木管はかなり速いテンポになります。運命の動機は少し落ち着いたテンポになりますが、荒れ狂うような金管の咆哮ではなく、とても抑制の効いた演奏です。波が押しては返すような自然な揺れと歌です。

三楽章、湧き上るように揺れる主要主題。とても豊かな音楽です。木管に主要主題が引き継がれるとテンポは速くなります。繊細で伸びやかな中間部の弦。深く克明に刻み付けるような演奏です。活発な動きの演奏でした。

四楽章、とても力強い運命の動機。大きなテンポの動きとともに演奏されるトランペット。速いテンポで刻み込まれる第一主題。とても大きく強い表現です。トランペットも伸びやかに美しく響いて来ます。怒涛のようなトッティ。ガリガリと力強いコーダ。トランペットが高らかに鳴り響きます。大きな勝利の歓喜を演出した演奏でした。

ムラヴィンスキー時代の凄みのあるアンサンブルの精度などは陰を潜めて、その分伸びやかで流れの良い演奏でした。豊かな歌と、刻み込むような深みのうる演奏。そしてコーダの勝利に溢れた演奏と、とても良い演奏でした。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団 東京ライヴ

スヴェトラーノフ★★★★★
一楽章、ゆっくりと感情のこもった運命の動機。響きも柔らかくまろやかです。たっぷりと間をとったり大きくふくらんだりします。速いテンポで弦の刻みが立っています。第一主題はとても敏感な反応の表現です。ダイナミックに鳴り響く金管のパワーはさすがです。色彩感もとても濃厚です。優しさと強さを併せ持つような第二主題。オケのエネルギーが突進してくるような迫力。畳み掛けるように次々と押し寄せてくる音楽。速めのテンポで有無を言わせずに突き進む演奏です。第二主題の再現は最初柔らかく穏やかですが、次第に力が増してきて強大な表現になります。物凄い気迫の演奏です。

二楽章、ゆっくりと静かですが、非常に深い序奏。ビブラートのかかったホルンのソロ。少し伸びやかさには欠けますが、ふくよかで美しいです。オーボエの第二主題は第一主題のホルンのふくよかさとは全く対局にあるような鋭利な響きで、色彩感の濃厚さを印象付けます。弦にーよる第二主題はゆっくりととても柔らかい演奏でした。このゆっくりとした時間の流れがとても心地良いです。大きく吠えるトランペットの運命の動機。優しい弦の第一主題。金管が吠えた後のこの柔らかさにも惹きつけられます。その後も激しい音楽の起伏があります。二度目の運命の動機はとても遅く、トロンボーンもトランペットもかなり激しく轟き渡るように吠えます。静かに大きく歌うクラリネットで終わりました。

三楽章、速いテンポですが、柔らかくサラッとした主要主題。ゲシュトップしたホルンが強く響きます。豊かに歌う演奏です。中間部も速いテンポで敏感に強弱の変化を付けています。とても活発に動いて生き生きとしています。

四楽章、伸び伸びと演奏される弦の運命の動機。最初は穏やかですが、次第に強烈になってくるトランペット。第一主題は凄く速いテンポでかなり激しい演奏です。嵐のような猛烈な金管や弦の演奏です。金管の咆哮は凄いです。コーダは少しテンポが落ちますが、金管の咆哮は続きます。勝利に溢れた高揚でした。

ゆっくりと感情のこもった表現から、強烈な金管の咆哮まで、物凄く振幅の大きな演奏でした。テンポの変化も手慣れたもので、まさに自家薬篭中といった感じでした。生で聞いた人はさぞかし感動したことでしょう。すさまじい演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:交響曲第5番の名盤を試聴したレビュー

チャイコフスキー 交響曲第5番2

たいこ叩きのチャイコフスキー 交響曲第5番名盤試聴記

小林 研一郎/日本フィルハーモニー交響楽団

小林★★★★☆
一楽章、非常にゆっくりと噛みしめるように丁寧な冒頭。かなり思い入れのある演奏のように感じます。
テンポの動きも大きいですが、わざとらしいところがなく自然に受け入れることができる音楽で、好感が持てます。日フィルも反応の良い演奏で応えています。これはすばらしい演奏になるような予感があります。

二楽章、僅かなビブラートをかけたホルンのソロも美しい。この楽章もテンポの動きが大きくて、劇的な表現で聴き手を圧倒します。

三楽章、集中力も高く、聴いていて飽きが来ない。

四楽章、音楽の高揚感がすばらしい。コバケンの熱い指揮が伝わる演奏です。
表現も積極的でオケと指揮者の一体感もありとても良い演奏だと思います。
この録音以後のCDも出ているので聴いて見たいと思いました。
小林研一郎がこんなに熱い音楽を演奏しているとはおもいませんでした。このホームページを作ったおかげで、いろんな演奏を聴くようになって、日本の演奏家の水準の高さに驚かされることが多く嬉しいことです。
これまで、欧米の演奏には及ばないと思っていた、私の認識は間違いだったことを思い知らされる演奏です。これが1995年の演奏なのですから、この録音から約15年経過している最新の演奏はどんなだろうと思いをめぐらせると、もっと日本の演奏家のCDをたくさん聴いて見たい衝動に駆られます。

すばらしい演奏でした。大満足!

エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

スヴェトラーノフ★★★★☆
一楽章、非常にゆっくりと演奏される運命の動機。引きずるように重い演奏で、冒頭からスヴェトラーノフの世界です。波のように強弱を繰り返す第一主題。炸裂する金管。濃厚に歌う弦。第二主題も抑揚を繰り返します。凝縮されたような密度の高い音楽。再現部でも第一、第二主題ともとても豊かに歌います。ビリビリと遠慮なく響くトランペットがロシアのオケらしいです。

二楽章、ビブラートを掛けて歌うホルンの第一主題。弦による第一主題も豊かに歌います。弦の第二主題ではテンポを速めたり遅くなったりします。独特の強い響きのクラリネット。ロシアのオケらしい強力な運命の動機。激しい起伏のある演奏です。二度目の運命の動機の強奏は一回目よりもさらに強力でした。

三楽章、速いテンポで敏感な反応の演奏です。追い立てるようなテンポですが、表現は豊かです。もっと穏やかな音楽だと思っていましたが、かなり攻撃的です。

四楽章、とてもゆっくりと感情を込めて歌う運命の動機。かにり強く感情を吐露している感じです。遠くから響く鋭いホルンが独特の空気を生み出します。第一主題からは一転して猛烈な速さになります。嵐のような弦に荒れ狂うような金管。めまぐるしいテンポの変化と圧倒的な音量で迫ってくる演奏。力強いコーダ。コーダも物凄いテンポで駆け抜けます。

ゆっくりとする部分はとてもゆっくりで、テンポを速める部分は猛烈な速さになる、メリハリのある演奏でした。ロシアらしく、スヴェトラーノフらしい強烈で圧倒的な音量で迫ってくるトゥッティも凄かったです。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団 2009年ライヴ

ヤンソンス★★★★☆
一楽章、歯切れの良いクラリネットの運命の動機。後ろで動く弦の振幅がとても大きいです。第一主題も振幅の大きな歌です。弦の盛り上がりに比べると金管は突出しません。とても濃密に歌う弦や木管が印象的ですが、金管のリズムを刻みながらのクレッシェンドなど、作為的な感じがする部分もあります。

二楽章、伸びやかに美しく歌うホルンの第一主題。オーボエの第二主題もとても豊かに歌います。弦に引き継がれる第一主題も大きく歌います。作品を余すところ無く表現している演奏です。クラリネットで演奏される新たな旋律も艶やかで伸びやかです。盛り上がる運命の動機は軽く演奏されます。ずっと一方的に攻め立てられているような感じで、穏やかに安らぐ部分がありません。最後のクラリネットも豊かに歌いました。

三楽章、まさにワルツで、踊るように動く音楽です。中間部へ向けてテンポが速くなります。速いテンポで活発な表現です。とても力強い演奏です。

四楽章、分厚く豪快に演奏される運命の動機。強弱の変化も大きくとても積極的な表現です。第一主題も攻撃的なくらい積極的に迫って来ます。金管も豪快に鳴り響きます。この演奏を聞くと、ヤンソンスがロシアで音楽を学んだことが思い出されます。細かい表情付けもありますが、とにかく豪快に金管が鳴り響きます。力強く勢いのあるコーダ。突然音量を落としてクレッシェンドする部分もありました。

ロシア出身の指揮者らしく豪快に金管を鳴らしたとても力強い演奏でした。また、表情もとても豊かで表現し尽くしたような演奏でもありましたが、作為的な音量の変化もあり少し違和感を感じる部分もありました。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

ホーレンシュタイン★★★★☆
一楽章、暗く尾を引くような運命の動機。金管の爆発は物凄いです。タメの後に強いアクセントで演奏する弦の表現がありました。奥深いところから湧き上るような強いエネルギーの放出を感じさせるような強烈な演奏です。遅いテンポで一音一音深く刻み込むように強い響き。さしてトロンボーンの咆哮。オケが一体になって表現してくる迫力も凄いです。コーダの盛り上がりも少しテンポを落として濃厚な表現です。

二楽章、何か吐き出すように歌う序奏。遠くから鳴るようなホルンの第一主題。締め付けられるようなオーボエの第二主題。少しザラつきはありますが、伸びやかに歌う弦の第一主題。まるでカデンツァのようにゆっくりと自由に歌うクラリネット。運命の動機ではトロンボーンがかなり強烈です。激しい弦第二主題、合間に響く金管も強いです。再び現れる運命の動機はやはりトロンボーンが物凄い咆哮です。最後のクラリネットもゆっくりとたっぷりとした歌でした。

三楽章、ザラツキ感のある弦ですが、訴えかけてくるように迫って来ます。集中力があって音に力があります。

四楽章、大きく強く訴えてくる序奏。ゆったりと大きな第一主題。ここでも金管はかなり強めです。木管も弦もとても良く歌いますが、緊張感があります。とても濃い表現と強烈な強弱の振幅です。コーダで高らかに演奏されるトランペットですが、華やかさは無く、厳しい緊張感があります。最後は一旦ゆっくりになって豪快に演奏されたトランペットとホルンの後は加速して終わりました。

物凄く激しい爆発と深みのある歌のある振幅の大きな演奏でした。演奏には緊張感や厳しさが漂っていて、華やかに勝利を手放しで喜ぶようなコーダではありませんでしたが、迫りくるような力強い演奏には説得力がありました。
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リッカルド・ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団

ムーティ★★★★☆
一楽章、ゆっくりと、とても感情のを込めて大きく歌う運命の動機。第一主題もとても良く歌います。楽しそうな程の表現です。第二主題も豊かなカンタービレです。とても積極的な表現で、オケが前のめりになっているかと言うほどの演奏です。色彩感はあまり濃厚ではありませんが、豊かで伸びやかな響きです。テンポを大きく動かして意欲的な演奏です。

二楽章、大きく広がる序奏。ふくよかで柔らかいホルンのソロ。くっきりと浮かぶ第二主題。泉から水が湧き出るように豊かな弦の第一主題。中間部のクラリネットはアゴーギクを聞かせて歌います。スケールの大きい運命の動機。次の第一主題は速めのテンポで盛り上がりも大きいです。第二主題も大河の流れのようです。二回目の運命の動機はゆっくりとさらに大きなスケールの演奏でした。

三楽章、ふくよかで優雅なワルツの主要主題。スタジオ録音と言うこともあってとても柔らかく豊かな響きです。ファゴットの最初をゆっくりそのあと少しテンポを速めました。ゆっくり確実な中間部。テンポの動きも多く、なかなか積極的な演奏です。

四楽章、控えめな音量ですが、厚みのある運命の動機。フィラデルフィアoらしい余裕のあるトランペット。スピード感のある第一主題。活発に動く第二主題。高揚感のあるコーダの運命の動機。高らかに鳴らされるトランペット。

感情が込められて豊かなカンタービレの演奏でした。テンポの動きもあり大きなスケールで良い演奏でした。
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ルドルフ・ケンペ/バイエルン放送交響楽団 1975年ライヴ

ケンペ★★★★
一楽章、とても遅いテンポで物思いにふけるような運命の動機。マイルドな響きですが、感情のこもった第一主題。色彩は墨絵のようなモノトーンです。振幅の大きな演奏で、表現も積極的です。第一主題の再現もとても感情の込められた歌です。金管も激しく鳴らされるし、弦も木管も大きな表現です。

二楽章、序奏から感情のこもった大きな表現の演奏です。ちょっと詰まった感じのホルンの第一主題。豊かに伸び伸びと演奏される弦の第一主題。運命の動機の強奏はかなりテンポが速く軽く演奏されます。感情のこもった演奏が続いてきたのに、この運命の動機が軽くあっさりと演奏されたのはちょっと肩透かしの感じがします。コーダも豊かに歌います。

三楽章、柔らかく伸びやかに歌う主要主題。テンポの動きもありアゴーギクも効かせて豊かな表現の演奏です。

四楽章、ケンペの強い感情移入を感じさせる序奏。金管の枯れたモノトーンの響き。生き生きと活動的な第一主題。テンポが良く動き次第に熱気を帯びてきています。最後もテンポをかなり速めて終わりました。

深い感情移入で、テンポもとても良く動く演奏で、演奏も次第に熱気を帯びてなかなかの熱演でした。ただ、弱音部分では濃厚に歌う演奏が、強奏部分で凄くテンポが速くあっさりとなってしまうのが肩透かしと感じる部分もありました。
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フランツ・ウェルザー=メスト/グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団

ウェルザー=メスト★★★★
一楽章、陰鬱な運命の動機、引きずるような弦。ロシアの冬を連想させるようなとても暗い序奏です。速いテンポの第一主題ですが、ここでも重く暗い雰囲気が支配しています。室内楽のような第二主題。展開部の第一主題は大きい表現で、木管が音を短めに演奏します。盛り上がりは激しくなりますが、アンサンブルはとても良い精度です。

二楽章、抑揚はありますが、淡々とした序奏。少し浅いですが、美しいホルンのソロ。盛り上がった運命の動機はテンポが速くあっさりと演奏されます。ピィツィカートの後の弦の第一主題は伸びやかで美しい演奏でした。

三楽章、速いテンポで少し落ち着きの無い主要主題。オケのメンバーが若いのもあるのかも知れませんが、深みや一体感のある動きは感じません。中間部の弦の細かい動きは見事ですが、かなり速いテンポで慌ただしいです。

四楽章、速いテンポですが、細かく表情を付けられた序奏。激しく刻む第一主題。さらにテンポを速めながらかなり強いトゥッティです。感情を込めてエネルギーを発散します。ここまで抑えていたものを一気に放出するような物凄いパワー全開の演奏になりました。コーダの最後もアッチェレランドして一気に終わりました。

明らかに四楽章にピークを持ってきた演奏で、四楽章の猛烈なテンポとエネルギーの発散は凄いものがありました。ただ、そこまでの三つの楽章の密度が少し薄い感じがしました。
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Yuval・ゾーン/エルサレム交響楽団

ゾーン★★★★
一楽章、独特のタメのある運命の動機。力強くキレの良い金管。割と明るくて見通しの良い演奏です。ねばっこく旋律を歌うことも無く、サラッとした表現です。編成は小さいですが、金管とティンパニが思い切り良く演奏するので、ダイナミックですが少し乱暴な感じがする部分もあります。速いテンポを基調にした明るい演奏でした。

二楽章、とても明るいのですが、深みの無いホルンのソロ。かなり大きな極端な表現もします。弦の第二主題は透明感があって美しいです。豪快に鳴り響くトランペットの運命の動機。

三楽章、速めのテンポで軽い主要主題。爽やかに刻まれる中間部の弦。この演奏にはロシアの重く暗い空気感はありません。とても軽やかで澄んだ演奏です。

四楽章、はっきりと明快な運命の動機。弦に比べるとかなり強い金管とティンパニ。明るいホルンがちょっと異様です。やはり軽い第一主題。ぐいぐいと速いテンポで、爽やかに力強く鳴り響く金管。コーダも爽やかで涼しげです。

金管は強く鳴り響きますが、全体の印象としては、速めのテンポでさらりと明るく爽やかな演奏と感じました。ロシアの重く暗い空気感は全く無く、聞いていてスッキリする演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:交響曲第5番の名盤を試聴したレビュー

チャイコフスキー 交響曲第5番3

たいこ叩きのチャイコフスキー 交響曲第5番名盤試聴記

ウラディーミル・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団 1991年フランクフルトライヴ

フェドセーエフ★★★☆
一楽章、クラリネットの後ろの弦が大きな抑揚で伴奏しています。クラリネットの運命の動機はそれほど暗くありません。少し速めのテンポの第一主題は感情を込めて歌います。弦のエネルギーがとても強いです。展開部の第一主題はゆっくりとしたテンポでさらにテンポも動いて豊かに歌います。遅いテンポを基調に、ロシアのオケの特徴の力で押し切るような演奏では無く、しなやかで洗練された演奏です。

二楽章、暗闇から静かに響いて来るような序奏。あまり大きな抑揚は無く静かです。ロシアのオケらしくビブラートをかけたホルン。そのビブラートも大きくは無く自然で美しいです。第二主題も自然で大きくは歌いません。ゆったりと穏やかな弦の第一主題。第二主題も静かで穏やかに始まります。運命の動機へ向かって急加速します。かなり大きなエネルギーです。第一主題の再現もとても美しいです。分厚い弦を突き抜けるように強く響く金管。

三楽章、速いテンポですが、優雅な主要主題。中間部の弦の細かい動きの精度も高いです。

四楽章、速めのテンポで最初はちょっと雑かな?と感じましたが、しっかりと身のある演奏になって行きます。強く刻み込まれる第一主題。第二主題は感情を込めて歌います。速いテンポでかなり高揚感のある演奏です。どんどんテンポを煽って激しさが増して行くと思ったら遅くなったりもします。コーダに入るとやはりトランペットが強烈に突き抜けて来ます。最後は猛烈なアッチェレランドで盛り上がって終わりました。

四楽章のコーダまではとても良い演奏でした。しなやかで洗練されていて、穏やかな表現もあるロシアらしさはあまり感じさせない演奏でしたが、四楽章のコーダから強烈に突き抜けるトランペットと猛烈なアッチェレランド。このアッチェレランドが曲の流れを壊したような感じがしました。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、レニングラードpoはドイツ・オーストリアのオーケストラとは全く違う音色を持っています。
冒頭のクラリネットの陰鬱感の表現などレニングラードpoならではです。
また、ムラヴィンスキーの指揮はもう少し若い世代のロシアの指揮者の多くが爆演型なのに対してムラヴィンスキーの音楽は紳士的で格調が高いです。
この演奏では、少し速めのテンポで、あまり濃い表情付けはしていない感じもしますが、金管が入る部分ではクレッシェンドを多用します。

二楽章、この楽章にはもう少し安らぎのような安堵感を求めたいと私は思うのですが、ここでも厳しい雰囲気が続きます。
また、ホルンのソロも締まった音質でふくよかさには欠けます。クラリネットの低音域などもコ゜ムホースにマウスピースを付けて吹いているような音色で、どう考えても高級な楽器は使っていないような感じがします。
それでもこれだけ集中力の高い演奏をするのには驚かされます。

三楽章、この楽章も速めのテンポを取っています。快速です。もう少しゆったりと味わいがあっても良いような気がしますが・・・・・・。

四楽章、決して爆演ではありませんが、剛の演奏です。激しい。
チャイコフスキーの後期の交響曲のうち、この5番が一番優しい音楽だと思うのですが、ムラヴィンスキーの手にかかると、鬼の形相に変化してしまうと言ったら言い過ぎでしょうか。

豪快な演奏でした。

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 1983年3月19日(ステレオ)

icon★★★
一楽章、レニングラードpo独特の音色です。ガラガラと鳴るクラリネット、鋭いバイオリン、細く筋肉質のホルン。
速めのテンポであまり表情もなく音楽が進みます。表情の変化はあまりありませんが、終始厳しい表情のままと言った方が適当でしょう。
楽譜に指定のないクレッシェンド、それも一旦音量を落としてからのクレッシェンドがいくつかありました。

二楽章、ビブラートをかけて、ちょっと詰まったような音色のホルンです。もっと伸び伸びとした音色を求めたいところですが、これもレニングラードpoの伝統であり、代々受け継いでいってもらいたい個性です。

三楽章、

四楽章、この楽章も一楽章と同様に速いテンポです。
また、音楽のスピード感と言うか疾走感もムラヴィンスキーの演奏の特徴でもあると思いますし、魅力でもあると思います。

コーダへ向けての音楽の高揚感はすばらしいものがあります。

ロヴロ・フォン・マタチッチ/NHK交響楽団

マタチッチ★★★
一楽章、暗闇から響いてくるような運命の主題。きびきびとした動きで強弱の変化に敏感な第一主題。トゥッティの響きは少し薄い感じがします。揺れ動くように歌う第二主題。力強く前へ進む展開部の第一主題。コーダで一旦テンポが速まって、鋭いトランペットが響きます。

二楽章、伸びやかさが無く委縮したような響きのホルン。弦の第一主題はテンポも強弱も変化がありました。中間部に入るとテンポが速く激しい波が押し寄せて来ます。大きく盛り上がって、運命の主題は切れのある演奏でした。タメが無くどっしりとした演奏ではありません。

三楽章、柔らかく繊細な弦の主要主題。この楽章も速めのテンポで流れるような音楽です。くっきりと浮かび上がる弦と木管。

四楽章、小さくまとまった弦の序奏。トランペットはすっきりと鳴り響きます。第一主題も弦が弓をいっぱいに使ったわうな豪快さはありません。木管の第二主題はあまり表情がありませんでしたが、弦に主題が移るととても豊かな表情になりました。マタチッチらしい雄大なコーダ。

四楽章の中間あたりからはマタチッチらしい豪快で雄大な演奏でしたが、二楽章のホルンや四楽章の序奏の弦など、萎縮したような小さい演奏になっていたのが、不自然な感じがしました。
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リッカルド・シャイー/ベルリン放送交響楽団 1983年ライヴ

シャイー★★★
一楽章、豊かな残響を伴っていますが、ドイツのクラリネットの響きとは少し違う感じがします。速めのテンポで明るい第一主題。割と色彩ははっきりとしています。自然に歌う第二主題。展開部に入ると推進力のある演奏になります。

二楽章、暗雲が立ち込めるような序奏。細く芯のあるホルンですが、伸びやかに歌います。弦による第一主題はホルンと違ってあっさりとしています。弦に現れる第二主題は速めのテンポであっさりと演奏されます。中間部のクラリネットも速いテンポです。その後も速いテンポを維持して、盛り上がった運命の動機は少しテンポを落としますが、かなり余裕のある響きです。続く弦の第一主題はゆっくりと歌いますが、次第にテンポが速くなります。コーダの前のクライマックスでは波がうねるように複雑に絡み合う楽器の動きがとても良かったです。

三楽章、テンポが速く流れるような主要主題。テンポの動きが少しありますが、基本的にはあっさりとした表現でとても爽やかに進んで行きます。

四楽章、ゆっくりと柔らかく穏やかな序奏。金管が入ってもテヌートぎみでなだらかな盛り上がりです。急に活発に動き出す第一主題。強奏部分でも荒げることは無く、とても美しい響きです。コーダも速いテンポですが、奥まったところから響くトランペットが大きな盛り上がりを妨げているように感じます。

基本的には速めのテンポで大きな表現や強弱の変化もあまり大きくない演奏で、あまり強い個性は感じませんでした。
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朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★☆
一楽章、いつものように遅めのテンポでじっくりと音楽が進んで行きます。スケールが大きく懐の深い音楽です。
ゆったりとしたテンポで朗々と歌われる音楽にも惹かれるものがあります。朝比奈が師事したメッテルもロシア人であり、指揮者として最初に演奏したのが、この曲です。
そういう意味では、朝比奈の十八番なのかもしれません。
しかし、この頃にはすでにブルッナー指揮者としての名声が確立しているし、ベートーヴェンの演奏でもすばらしいCDを残しています。
この演奏でも、チャイコフスキーの優雅さよりも、どっしりと構えた重厚な音楽になっています。

二楽章、ホルンの音色に深みがあまりなく、細い音なのが少し残念なところです。
朝比奈らしく無理やり金管を吹かせるようなこともなく、自然体で、音楽に身を任せることができる演奏です。

三楽章、

四楽章、伸びやかで豊かな響きが魅力的、ゆったりとしたテンポも豊かさを感じさせてくれるのだと思います。

ただ、自然体で作品に語らせるタイプの指揮者なので、他に語り口の上手い指揮者による演奏も多いだけに、この曲を面白く聴かせてくれるわけではないので、不満に感じる部分もあると思います。

アラン・ギルバート/ニューヨーク・フィルハーモニック

ギルバート★★☆
一楽章、あっさりとした運命の動機。さらりと歌う第一主題。交錯するような金管。第二主題も速いテンポであっさりとしています。金管はかなり強く咆哮します。奥まって響く弦とは対照的です。

二楽章、感情のこもった深い序奏。僅かにビブラートのかかった丁寧なホルンのソロ。生き生きとした表情の弦の第一主題。中間部のクラリネットはアゴーギクを効かせて歌います。ファゴットは少し遠いです。突然犬の鳴き声がします。野外コンサートのようです。運命の動機の強奏はゆったりとしていて、穏やかなトランペットとビリビリと響くトロンボーンが対照的です。運命の動機の後は速いテンポでどんどん進みます。二回目の運命の動機は速いテンポでした。

三楽章、野外コンサートでも集中力を保って良い演奏を続けています。中間部の弦の細かい動きはゲツゲツせずにソフトでした。繊細な表現の弦はなかなかです。微妙なテンポの動きもあります。

四楽章、サクッと歯切れの良い運命の動機。第一主題の前の金管はかなり強く演奏しました。穏やかで繊細な弦と奥まった木管、激しい金管とセクションによって性格の違う音楽を奏でているような感じです。コーダもマットで穏やかな弦に金管が襲い掛かるような激しさです。最後はテンポを速めて強烈な金管の演奏でした。

野外コンサートと言う事もあって、条件は悪かったのだと思いますが、それでも集中力を保った演奏でした。穏やかで繊細な弦と奥まった木管、激しい金管とセクションによって性格の違う音楽を奏でているような感じで、特に金管の激しさは少し違和感がありました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★
一楽章、流れるような演奏なのですが、ハイティンクの演奏のような透明感には乏しいです。
これは、ベートーヴェンのときにも感じたことなのですが、カラヤンの演奏には厚みはあるのですが、透明感がないです。僅かに濁った厚みのある響きの上に旋律が乗っかるのですが、その旋律にも深みが感じられません。
今では廃盤になってしまっているハイティンクの演奏がいかにすばらしいか改めて感じることができました。音楽の透明感と深みはハイティンクの演奏の方が遥かに上です。

二楽章、カラヤンのチャイコフスキー支持者はたくさんいらっしゃると思っていますが、私にはチャイコフスキーの5番はハイティンクが不動のベストなのです。
他の演奏が安っぽく聞こえてしまう。
低音を僅かに先に演奏させるカラヤンの考えに従ってのピチカートですが、全然揃いません。まるでハープのようです。
私たちは、市場にある膨大な数のCDを全て聴くことはできません。だから評論家の「推薦」の文字を信じて盲目的にCDを買ってしまうわけですが、実際には、すばらしい演奏の一部が闇に葬られて行っているのも事実なのではないかと思います。

三楽章、突然大きな音で短い音を吹くホルンが滑稽です。世界最高のオーケストラと言われるベルリンpoの音がどうしてこんなに透明感がないのでしょうか。

四楽章、激しいティンパニのクレッシェンド。この演奏を聴くとチャイコフスキーの音楽が低俗なものに聞こえてしまいます。仕掛けや演出がなくても、すばらしい曲なのに・・・・・・。

ロリン・マゼール/クリーブランド管弦楽団

マゼール★★
一楽章、あまり大きな表情の無い運命の動機。ただ、響きは分厚いです。ザラッとした弦の刻みに乗って豊かに歌う第一主題。マルチマイクなのか、トロンボーンのタンギングがはっきりと分かります。弦も金管も明快に反応するパリッとした表現で細部までスッキリと見通せる演奏です。

二楽章、抑揚のある序奏。ふくよかで美しいホルンのソロ。第二主題もくっきりとしています。弦で演奏される第一主題は速めのテンポになります。近接したマイクポジションのおかげで、目の覚めるような新鮮な音になっています。クラリネットの旋律の前からテンポが落ちて、クラリネット、ファゴットととてもゆっくりとした演奏です。明るくシャープな響きの運命の動機。響きは原色の濃厚な響きですが、表現は意外とあっさりしています。

三楽章、シャープで生き生きとした主要主題。中間部の弦の細かい動きにもアクセントが付けられています。終わり近くで突然音量を落とすことが二度ありました。

四楽章、後ろで動く弦が活発な序奏。ティンパニは僅かなクレッシェンドでした。落ち着いた第一主題。金管の運命の動機はゆっくりと穏やかに演奏されます。その後急にテンポが速くなります。めまぐるしいテンポの変化であまり落ち着きがありません。コーダの運命の動機もとても速く軽い表現で、大きな盛り上がりはありませんでした。

マルチマイクで、細部まで見通せる明晰な演奏でしたが、突然の音量の変化やテンポのめまぐるしい変化に付いて行けませんでした。最後の運命の動機の速いテンポでの軽い表現も肩透かしでちょっとがっかりな演奏でした。
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イーゴリ・マルケヴィチ/ロンドン交響楽団

マルケヴィチ★★
一楽章、速めのテンポであっさりと演奏するのかと思ったら、大きな間を取ったりもします。とても暗い響きです。第一主題は鋭いリズムのキレのある歌です。トロンボーンなどはかなり吹きますが意外と軽いトゥッティです。テンポは速く、金管がオンマイクでかなりデッドで奥行き感がありません。テンポが速い分、リズムの乗りはとても良くリズムに合わせて音楽が抑揚します。コーダもとても速いです。

二楽章、サラッと流れていくようですが、かなりの抑揚があります。太く柔らかいホルンのソロ。前へ進む力の強い第二主題。弦だけの盛り上がりもかなり大きいです。透明感の高い中間部のクラリネット。かなり強い運命の動機ですが、やはりオンマイクでデッドなので、金管の響きが浅く余韻がほとんどありません。積極的な表現のトランペット。二度目の運命の動機も強烈に響くトロンボーン。

三楽章、速いテンポでセカセカした主要主題。ファゴットもとても速いです。中間部は凄いスピード感です。

四楽章、あまり厚みが無く軽い運命の動機。この楽章も速いテンポです。響きが浅く軽い演奏です。第一主題はやはり金管が激しいです。ティンパニも残響をあまり伴っていないので、トントンと軽く響きます。ゆっくりと噛みしめるようなコーダ。金管の短い音が凄く短く違和感があります。最後はテンポを速めて終わりました。

基本的に速いテンポでリズムの乗りの良い演奏でしたが、金管がかなりのオンマイクで余韻も無く軽く浅い響きに支配されていました。速いテンポも影響しているのかも知れませんが、深みの無い演奏であまり共感できませんでした。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★
一楽章、静かに始まった運命の動機ですが、急に強くなり音色も変化して行くクラリネット。ほとんど感情を込めずに演奏される第一主題。それでも金管はかなり激しく演奏します。第二主題も速いテンポで素っ気無い演奏です。トロンボーンなどはかなり激しく強奏して迫って来ます。引き締まって豊かな表情の部分もあります。私は、クレンペラーと言う人がよく分かりません。全く感情を込めずに脱力したような演奏があったかと思うと、凄く力感溢れる演奏があったり、何が実像なのかつかめないのです。

二楽章、箒で掃くようにさらっとした序奏。非常に豊かな表情のホルンのソロ。くっきりとしたオーボエの第二主題。芳醇な弦の第一主題。壮大な運命の動機。最後はたっぷりと歌う、クラリネットでした。

三楽章、生き生きと爽やかな主要主題。中間部はシャープに動く弦。

四楽章、かなり強めで堂々とした運命の動機。大きな表現の第一主題。ゆったりとしていて雄大です。テンポも遅く重い金管。頑として動かないテンポで音楽の間が持たない感じを受ける部分もあります。コーダに入った後に僅かにテンポが速くなりましたが、最後はまた元のテンポで重く終わりました。

楽章が進むにつれて音楽が重くなってきて、最後は勝利の喜びとは違う空気でした。
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ミハイル・プレトニョフ/ロシア・ナショナル管弦楽団

プレトニョフ★☆
一楽章、ニュートラルでストレートなクラリネットの運命の動機。あまり暗さはありません。適度な歌でテンポも中庸な第一主題。金管は凄く控えめです。金管が控えめだったのは最初だけで、その後は普通のバランスで適度に響いています。特に目立った表現も無く中庸の演奏です。

二楽章、控えめですが、残響を伴って緩やかなビブラートで美しいホルンのソロ。前面で演奏される弦の第一主題と奥まったところで響くホルンの対比が美しいです。運命の動機の強奏は速いテンポで金管が強く響きます。その後は速いテンポで進みます。ロシアのオケらしいドギツイ強烈さは無く、すっきりと爽やかな響きのオケです。

三楽章、テンポの動きはほとんどありません。中間部は繊細な弦の動きが美しいです。

四楽章、かなりたっぷりと演奏される運命の動機。徐々にクレッシェンドするトランペット。かなり速い第一主題は切り込むように鋭く食い込んで来ます。大きな仕掛けなどは無く、楽譜に忠実な演奏です。その分個性はありません。また、響きにも極上の美しさが無いので、ちょっと厳しい感じがします。朗々と歌うコーダのトランペット。

強い個性や主張は感じられない演奏でした。楽譜を忠実に音にする演奏だったと思います。響きに極上の美しさが感じられなかったので、この演奏に惹きつけられることはありませんでした。
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ネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団

ヤルヴィ
一楽章、黒い雲が空を覆い尽くすような暗い運命の動機。薄いカーテンの向こうから響いて来るような第一主題。金管はそれなりに鳴りますが、あまりスケールの大きな演奏ではありません。大きく音量を変化させて歌う第二主題。力みがあるのか、トゥッティは少し硬直した響きに感じます。ファゴットの第一主題は哀愁に満ちた美しいものでした。

二楽章、詰まったようなホルン。凄く小さく委縮したようなソロです。弦の第一主題も伸びやかさがあまりありません。中間部のクラリネットはゆっくりとしかも大きくアゴーギクを効かせて歌いました。運命の動機はテンポを落として大きな表現でした。どうも強奏で音が硬くなる感じがして伸びやかな響きになりません。

三楽章、何かぶっきらぼうな主要主題。しなやかさや柔らかさが感じられません。テンポの動きもありますが、浅い演奏に感じます。

四楽章、あまり鳴りが良くなく思い切りの悪い感じがする運命の動機。遠くから響いてくるようなトランペット。かなり速いテンポの第一主題。金管の鳴りもあまり良くない感じで響きが重いです。コーダも委縮しているように伸びやかさがありません。最後も勝利の歓びなどはあまり感じることが出来ない硬い演奏でした。

あまりに委縮した伸びやかさの無いスケールの小さい音楽でした。この演奏に関してはパパ・ヤルヴィどうしたんだろう?と言う演奏でした。
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Ilya Stupel/リヴィウフィルハーモニー管弦楽団

Stupel
ウクライナ最古のオーケストラの一つだそうです。

一楽章、重く暗い空気は無く、軽くサラッとした運命の動機。明るく俊敏な反応で歌う第一主題。金管は控えめで、ビリビリとは響きません。第二主題は、響きに透明感が無く、きつい響きになることがありますし音程が合わず響きが濁ることもあります。トランペットはほとんど聞こえて来ません。ほとんどインテンポで間延びした部分もありましたが、コーダで一時テンポを速めました。

二楽章、僅かな抑揚しか無い序奏。ビブラートのかかった細く締まったホルンのソロ。この楽章はテンポの動きもありますが、表現はあまり積極的ではありません。中間部のクラリネットはとても速いテンポです。運命の動機でも他の音にかき消されてしまうトランペット。続く第一主題はやはり抑制的で、あまり歌いません。最後のクラリネットもほとんど歌わずあっさりと終わりました。

三楽章、とても速いテンポで素っ気ない主要主題。中間部の弦の刻みは表情があって迫って来るようなエネルギーがありました。

四楽章、トランペットだけ反響板の後ろからでも演奏しているように音が出て来ません。激しいティンパニのクレッシェンドに合わせて激しく演奏される第一主題。テンポは動くのですが、テンポを落とした部分の間が悪い感じで間延びしてしまいます。トロンボーンは突出するような場面が多くあります。コーダはかなり速いテンポで演奏にムラがあるような感じがします。最後はトランペットもしっかりと出て来て荒々しく終わりました。

テンポの動きや表現が独特で、違う曲を聞いているような感覚になりました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:交響曲第5番の名盤を試聴したレビュー