チャイコフスキー 交響曲第5番
チャイコフスキーの交響曲第5番は、彼の円熟した作風を感じさせる大変ドラマチックで情熱的な作品です。ロシアの作曲家としての個性が強く出ており、聴き手に深い印象を与える構成が特徴です。以下、各楽章について簡単にご説明します。
1. 第1楽章:Andante – Allegro con anima
冒頭の「運命の動機」とも呼ばれる、厳かなクラリネットの旋律が印象的です。これが楽章全体の基調をつくり、運命や苦悩、希望が交錯するような展開を見せます。その後、活気あるアレグロの部分に移行し、メロディが力強くなっていきます。
2. 第2楽章:Andante cantabile, con alcuna licenza
美しいホルンのソロで始まるこの楽章は、ロマンチックで優雅なメロディが特徴です。中でもホルンのソロはとても有名で、しっとりとした情緒と繊細な表現が際立ちます。愛と苦悩が入り混じったような感情が漂い、心に深く響くような雰囲気です。
3. 第3楽章:Valse: Allegro moderato
この楽章はワルツのリズムが基調となり、軽やかでリズミカルです。甘美でやわらかい旋律が繰り返され、チャイコフスキーらしい「ロシアのロマンチシズム」が感じられる一方で、やや不安定な要素も含んでおり、単なる美しいワルツに留まらない深みが感じられます。
4. 第4楽章:Finale: Andante maestoso – Allegro vivace
最後の楽章は荘厳で、勇ましい「勝利のテーマ」が力強く奏でられます。運命に打ち勝つかのような威厳に満ちた雰囲気が広がり、壮大なクライマックスへと導かれます。特に最後の部分は圧巻で、聞く者に高揚感と感動を与えるエンディングです。
全体の印象
この交響曲第5番は「運命」と「勝利」のテーマが貫かれており、チャイコフスキーの複雑な感情が音楽に反映されています。感情の深み、激しさ、そして優雅さが融合し、聴き手を壮大な音楽の旅へと誘います。
たいこ叩きのチャイコフスキー 交響曲第5番名盤試聴記
ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
★★★★★
一楽章、陰鬱感がとてもよくてでいるクラリネットです。表現が大げさではないところがかえってロシアの大地の厳しさを伝えてくるようで、良い感じです。
ホールの響きを伴って、すごく美しい響きを聞かせてくれます。短い音符と音符の間に残響がホールに広がっていくところがとても心地よい。
強弱の振幅が狭く、そのことがかえって演奏上の効果を生んでいるような不思議な演奏で、ロシア物と言うと、爆演が連想されがちですが、この演奏は、そのような演奏スタイルを真っ向から否定しているような演奏で、非常に美しいです。
爆演ではありませんが、オケは過不足無く、気持ちいい音で鳴っています。
二楽章、アンサンブルの精度が非常に高く、オケがこの演奏に集中しているのも感じ取れます。
ホルンのふくよかで豊かなソロ。ロシアのオケのような筋肉質のホルンではありません。とても格調高いソロです。
また、カラヤンの演奏のように編成を大きくしていないので、響きに透明感があります。
作為的なところが全くないので、最初に聴いたときには拍子抜けするかもしれませんが、これはすごい名演です。
ティンパニのクレッシェンドもオケを煽るような極端なクレッシェンドはしません。しかし、見事です。
愛情が満ち溢れた演奏で、音楽にどっぷりと浸ることができます。
三楽章、とても清廉な演奏で、グラマラスな部分もありませんが、作品に対する真摯な表現に心打たれます。
四楽章、本当に美しい音色のオケであることを再認識させてくれます。
ここでも、ティンパニはほとんどクレッシェンドしていないと言って良いほどです。まったく力まない金管。それでも自然に音楽は高揚して行きます。人工的な演出なしで、これだけ作品にのめり込める演奏は、そうあるものではありません。
巷では、このCDのことが話題にのぼることはありませんが、私はこれがベストです。
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ロンドン交響楽団
★★★★★
一楽章、クラリネットのソロを支える弦が柔らかく厚みのある響きで美しい。
予想通り遠慮なく吹きまくる金管。さすが爆演の巨匠!
爆演とは言うものの、弱音部は美しいし、響きの透明感もあるし、なかなか良い演奏です。
聴いていて嬉しくなるほど、吹きまくる金管。弱音部でも十分歌うので、コテコテの印象は拭えないですが、でもロジェヴェンがやりたいことは、みんなやってみたいことなんだと思いますよ。
普通の人は理性がブレーキを掛けるので、ここまでしないだけで。
この演奏も生で聴けたら熱狂の嵐でしょう。
演奏は力ずくと言う感じはあります。もっと自然な流れで金管が入れば良いのですが、こちらが予想する以上の大きさで遠慮なく入ってくる金管には、下品さを感じる人もいるでしょう。
二楽章、ホルンのソロもふくよかな音色でとても美しいです。
金管は限界近い音量で吹かされているのではないだろうか?凄いです。
三楽章、他の演奏では聞こえなかったところで金管が入っていることを分からせてくれます。
四楽章、朗々と歌う弦。音楽の振幅が尋常でなく広い。でも、この演奏共感できるなぁ。
ハイティンクの演奏が禁欲的とも思えるほど無駄に力むことなくすばらしい音楽を作り上げましたが、俗人には、ロジェヴェンの演奏に流れ勝ちだと思います。
でも、そこにブレーキをかけずに、思ったままをやってしまうのが凄い。
チャイコフスキーの楽譜ってpが4つも5つもあるし、fだって5つも6つもあるわけだから、楽譜に従えばハイティンクの演奏にはならないはずで、この演奏の方が正論なのかもしれません。
説得力十分なすばらしい名演でした。
セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、遅いテンポで暗闇に包まれたようなクラリネットの旋律。第一主題もすごく遅いテンポで、一歩一歩確かめながら歩くような、ともすればダレるぎりぎりのテンポです。嵐のような金管の強奏。遅いテンポで朗々と歌う弦。第一主題の再現はとても美しい。柔らかくしなやかで美しい弱音と、力強く鳴り響く金管の強奏が見事に対比されていて、すばらしい演奏です。コーダでテンポをかなり速めました。
二楽章、この楽章も遅いテンポで、序奏でも幅広い強弱の変化です。ホルンのソロも強弱の変化を付けて歌います。オーボエ、クラリネット、ファゴットと色彩の変化も鮮明です。弦の主要主題も柔らかく美しい。中間部に入る前はテンポが動きました。中間部に入ってからテンポを速めました。主要主題が戻るとまたテンポが遅くなりました。チェリダッケの演奏って、テンポが遅くなった分、音楽の密度も少し薄まっているように感じることがあります。これはオケの響きの透明感がそう感じさせる原因かも知れませんが・・・・・。
三楽章、とても穏やかなワルツです。中間部は生き生きとした表現の幅の広い演奏です。主部の主題が戻って、強い表現ではありませんが、節度のある表現です。最後も柔らかくゆったりと終りました。
四楽章、テンポが遅いのですが、アゴーギクを効かせたりして、濃厚な表現をしたりはしませんので、もたれるような演奏にはなりません。第一主題はガツガツと刻むようにしっかりと深い切り込みでした。木管の第二主題も透明感の高い音でとても滑らかでした。金管の「運命の動機」がデクレッシェンドします。再現部はテンポを速めました。全休符の前は緩急の変化が大きいです。コーダはトランペットが高らかに歌い上げます。
とても透明感の高い響きで、表現も押し付けがましくなく、ゆったりと穏やかな表現をベースにしていますが、いつの間にか音楽に身をゆだねているような演奏で、自然に引き込まれていました。
ヴァレリー・ゲルギエフ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2008年ライヴ
★★★★★
一楽章、陰鬱な運命の動機。背景で動く弦の表現がとても大きく感情がこもっているようです。感情が込められて生き生きとした第一主題。刻み付けるように強い弦。第二主題も大きく歌います。ウィーンpoの濃厚な色彩を存分に生かした演奏です。金管も遠慮なく咆哮します。テンポも劇的に変化します。とても濃厚に音楽を聞かせてくれます。
二楽章、太くふくよかなホンルの第一主題。とても若々しく元気のある表現です。迫って来るように強く歌う弦の第一主題。中間部に入るとクラリネット、ファゴット、弦と波打つようにうねりながら次第に音楽が盛り上がります。運命の動機では強烈なトロンボーンの咆哮です。原色で彩られた強い色彩。テンポも動いて大きな表現の演奏です。長く尾を引くクラリネット。
三楽章、少しテンポは速いですが、ウィンナ・ワルツらように優雅に舞うような演奏です。中間部の弦の細かい刻みもキリッと立っています。この細かい弦の刻みに乗る主要主題ですが、刻みの表現がとても積極的です。
四楽章、テンポは速いですが、全身を包み込むように迫ってくる序奏。音楽の起伏がとても大きいです。第一主題は少しテンポが遅くなり、一音一音刻み付けるように強い演奏でした。いろんな音が豊かに聞こえてきます。バストロンボーンが豪快です。ウィーンpoは元々色彩感のあるオケですが、それでもこれだけ濃厚な原色の色彩を聞かせることはあまり無いと思います。コーダはとても力強い弦で始まりました。豪快に終わりました。
濃厚な表現と、原色の強い色彩感で彩られた強烈な演奏でした。元々色彩感のあるウィーンpoですが、これだけ濃厚で強烈な原色の色彩を引き出したゲルギエフも凄いと思いました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年ライヴ
★★★★★
一楽章、大きなうねりを持って歌う運命の動機。深みがあり分厚い響きです。少し距離のあるところから響くような第一主題。とても美しく歌います。トランペットとトロンボーンは近く、ホルンはかなり奥まっていて、そこからの強奏が壮大なスケール感を生み出します。第二主題の前で大きくテンポを落としました。第二主題も美しく歌います。表現の限りを尽くして歌うような演奏です。ゆったりと優雅に歌う再現部の第一主題。滑らかで美しい演奏でした。
二楽章、厚みのある響きが押しては引いて行きます。ウィンナ・ホルンらしい柔らかい第一主題です。弱く始まって次第に伸びやかに盛り上がります。第二主題も細く美しい演奏です。ゆっくりと美しく歌う弦の第一主題、周りを彩るホルンやオーボエもとても美しいです。第二主題の盛り上がりも凄い厚みとエネルギーあります。中間部のクラリネットもウィーンのクラリネットらしい深みのある響きで大きく歌いました。盛り上がったところでの運命の動機はあまり力を入れずに軽めの演奏でした。続くピィツィカートはとてもゆっくり始まりました。粘っこい表現の部分もありました。
三楽章、生き生きと表情豊かな主要主題。色彩感も濃厚で色鮮やかです。中間部の表現もとても豊かです。堂に入る表現でとても整然としていて、自信に溢れています。テンポの動きも何となく納得させられます。
四楽章、熱く訴えてくる序奏。トランペットは控えめですが、背景のピィツィカートは積極的に鋭く刻み込んで来ます。猛烈に激しい第一主題。激しい演奏ですが、その激しさはロシアのものとは違いとても洗練されています。情熱的で熱い演奏です。スタジオ録音とは全く違うカラヤンの人間らしい演奏に感動します。僅かにテンポを速めて終わりました。
スタジオ録音とは違い、豊かに美しい歌に溢れた演奏で、人間らしい感情もこもった生き生きとした演奏で、激しさもありましたが、とても洗練された表現で非常に美しかったです。
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ハンナ・チャン/カタール・フィルハーモニー管弦楽団 2014年プロムスライヴ
★★★★★
一楽章、ゆっくりとしたテンポで染み入るような運命の動機。速いテンポで演奏される第一主題。一体感があって力強い響きのトゥッティです。訴えかけるような表現もなかなか良いです。ストレートに大きく歌い、感情の起伏の激しい演奏です。スピード感もります。中東の聞いたことの無いオケですが、かなり技術レベルは高いようです。感情のこもった強い表現と大きく大胆なテンポの動き。
二楽章、ゆったりと静かな序奏。柔らかく美しいホルンの第一主題。かなり強烈な運命の動機。強く感情をぶつけてくるような演奏です。凄く大きな振幅で、優しい弱音と強靭なトゥッティとの対比も見事です。
三楽章、繊細で美しい弦。テンポの動きも自然です。最後は大きくritしました。
四楽章、起伏のある運命の動機。物凄く速い第一主題。展開部も猛烈なスピードのまま進みます。聞きすすむうちにこのテンポはこれで良いのではないかと思うようになります。コーダはオケが一体になった強い盛り上がりでした。
かなり自由にテンポが動いて表現も自由で新鮮な演奏でした。聞いたことの無いオケでしたがなかなか充実した演奏と技量でした。
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レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック
★★★★★
一楽章、冒頭から遅く引きずるように重い運命の動機。とても濃厚な歌です。第一主題は普通のテンポです。サクサクと舞うように動く音楽。強弱の振幅も大きくとてもダイナミックです。金管もなかなか強烈です。テンポの動きもとても大きいです。普通のテンポと極端に遅い部分があります。再現部の第二主題もとても遅く深く感情のこもった濃厚な歌です。オケが一体になって迫ってくるような凄い迫力です。バーンスタインの気迫が乗り移っているような感じです。色彩もとても濃厚です。コーダに入り加速したと思ったら急にテンポが落ちて止まりそうになって終わりました。
二楽章、暗闇の中から迫って来てまた遠ざかりまた近づいてきてホルンのソロになります。ゆっくりと感情のままに自由に歌うホルン。マーラーと同じように完全にバーンスタインの世界です。第二主題もとても濃厚に歌います。物凄く遅いです。弦の第一主題も遅く、伸びやかに歌います。弦の第二主題もとても遅くこってりとこれでもかと言うほどに濃いです。中間部のクラリネットから少しテンポが速くなります。運命の動機に向かって速くなりますが、運命の動機でまた遅くなって一音一音刻み付けるような演奏です。テンポは感情の赴くままにとても良く動きます。二度目の運命の動機の強奏は速めのテンポでとても激しいものでした。コーダはまた止りそうな遅さです。
三楽章、少し遅い程度のテンポの主要主題です。 ファゴットが豊かに歌います。中間部の弦の細かい動きは静かな中にも背景にエネルギーを蓄えているような演奏です。コーダはまた止りそうなくらい遅いテンポで感情をこめた演奏になりました。
四楽章、強い感情のこもった運命の動機。トランペットが入ってから一時凄くテンポが遅くなりました。第一主題の前もとても遅いです。第一主題は逆に速いテンポでとても活発な動きの演奏です。テンポが頻繁に変わります。金管は激しく咆哮します。ゆっくりと踏みしめるようなコーダ。物凄い高揚感です。最後の四つの音もゆっくりと叩きつけるように演奏しました。
バーンスタインの感情の赴くままに大きくテンポが動く演奏でした。特に遅い部分の遅さは尋常ではありません。これだけ濃厚な演奏はロシアの指揮者とオケでもできないと思います。この演奏に付いていけない人もいると思いますが、好きな人にはたまらない演奏だと思います。
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ユーリ・テミルカーノフ/サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、クラリネットに合わせて強弱の変化がある弦は溶け合って厚みのある響きです。奥まったところからキラキラと輝くようなトランペット。ムラヴィンスキー時代の強い響きとは違い柔らかくしなやかな響きです。第二主題はゆっくりと波打つような演奏でした。テンポの大きな動きもありますが、流れの良い演奏です。コーダでトランペットが突き抜けて演奏します。
二楽章、大きく豊かに歌うホルンが美しいです。第一主題が弦に移っても豊かな歌です。運命の動機に向けた木管はかなり速いテンポになります。運命の動機は少し落ち着いたテンポになりますが、荒れ狂うような金管の咆哮ではなく、とても抑制の効いた演奏です。波が押しては返すような自然な揺れと歌です。
三楽章、湧き上るように揺れる主要主題。とても豊かな音楽です。木管に主要主題が引き継がれるとテンポは速くなります。繊細で伸びやかな中間部の弦。深く克明に刻み付けるような演奏です。活発な動きの演奏でした。
四楽章、とても力強い運命の動機。大きなテンポの動きとともに演奏されるトランペット。速いテンポで刻み込まれる第一主題。とても大きく強い表現です。トランペットも伸びやかに美しく響いて来ます。怒涛のようなトッティ。ガリガリと力強いコーダ。トランペットが高らかに鳴り響きます。大きな勝利の歓喜を演出した演奏でした。
ムラヴィンスキー時代の凄みのあるアンサンブルの精度などは陰を潜めて、その分伸びやかで流れの良い演奏でした。豊かな歌と、刻み込むような深みのうる演奏。そしてコーダの勝利に溢れた演奏と、とても良い演奏でした。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団 東京ライヴ
★★★★★
一楽章、ゆっくりと感情のこもった運命の動機。響きも柔らかくまろやかです。たっぷりと間をとったり大きくふくらんだりします。速いテンポで弦の刻みが立っています。第一主題はとても敏感な反応の表現です。ダイナミックに鳴り響く金管のパワーはさすがです。色彩感もとても濃厚です。優しさと強さを併せ持つような第二主題。オケのエネルギーが突進してくるような迫力。畳み掛けるように次々と押し寄せてくる音楽。速めのテンポで有無を言わせずに突き進む演奏です。第二主題の再現は最初柔らかく穏やかですが、次第に力が増してきて強大な表現になります。物凄い気迫の演奏です。
二楽章、ゆっくりと静かですが、非常に深い序奏。ビブラートのかかったホルンのソロ。少し伸びやかさには欠けますが、ふくよかで美しいです。オーボエの第二主題は第一主題のホルンのふくよかさとは全く対局にあるような鋭利な響きで、色彩感の濃厚さを印象付けます。弦にーよる第二主題はゆっくりととても柔らかい演奏でした。このゆっくりとした時間の流れがとても心地良いです。大きく吠えるトランペットの運命の動機。優しい弦の第一主題。金管が吠えた後のこの柔らかさにも惹きつけられます。その後も激しい音楽の起伏があります。二度目の運命の動機はとても遅く、トロンボーンもトランペットもかなり激しく轟き渡るように吠えます。静かに大きく歌うクラリネットで終わりました。
三楽章、速いテンポですが、柔らかくサラッとした主要主題。ゲシュトップしたホルンが強く響きます。豊かに歌う演奏です。中間部も速いテンポで敏感に強弱の変化を付けています。とても活発に動いて生き生きとしています。
四楽章、伸び伸びと演奏される弦の運命の動機。最初は穏やかですが、次第に強烈になってくるトランペット。第一主題は凄く速いテンポでかなり激しい演奏です。嵐のような猛烈な金管や弦の演奏です。金管の咆哮は凄いです。コーダは少しテンポが落ちますが、金管の咆哮は続きます。勝利に溢れた高揚でした。
ゆっくりと感情のこもった表現から、強烈な金管の咆哮まで、物凄く振幅の大きな演奏でした。テンポの変化も手慣れたもので、まさに自家薬篭中といった感じでした。生で聞いた人はさぞかし感動したことでしょう。すさまじい演奏でした。
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