カテゴリー: チャイコフスキー:交響曲第4番名盤試聴記

チャイコフスキー:交響曲第4番の名盤は、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニーsoの、物凄い集中力で、有無を言わせぬ圧倒的な名盤です。信じ難いほどの完璧な演奏です。ショルティ/シカゴsoは、凄い技術で、これでもかと言わんばかりの演奏を展開します。すばらしい技術です。人間業とは思えないような凄い演奏でした。曲芸をみて感動したような妙な感じです。でもやはりオケの凄さは並大抵ではありません。チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニーoは、遅いテンポで一貫していた演奏がコーダからアッチェレランドをかけて聴衆を興奮に巻き込む演奏は、しっかりと設計されたものだと思います。テンポの遅い演奏でこれだけ見事な演奏は初めてです。

チャイコフスキー 交響曲第4番

チャイコフスキーの交響曲第4番は、1877年に完成した作品で、彼の人生や内面的な苦悩が色濃く反映された劇的な交響曲です。この交響曲は、当時の彼のパトロンであったナデジダ・フォン・メック夫人への献呈として書かれ、チャイコフスキー自身が「運命」と「宿命」のテーマについて強く意識していたことがうかがえます。そのため、全体に「運命」との葛藤が音楽として表現されており、ドラマチックで情感豊かな構成が特徴です。

構成と特徴

交響曲第4番は、全4楽章からなり、各楽章で異なる感情や状況が表現されています。

  1. 第1楽章 (アンダンテ・ソステヌート – モデラート・コン・アニマ)
    この楽章は、力強い「運命のファンファーレ」として金管楽器が重々しく響く部分から始まります。このファンファーレは、宿命的な不安や絶望を表現しており、何度も繰り返されることで避けられない「運命」が描かれています。続く部分では、弦楽器が哀愁を帯びたメロディを奏で、チャイコフスキー特有の感傷的な旋律が展開されます。抑圧と激情が交互に現れ、激しい感情の波が押し寄せるような構成になっており、内面の葛藤がドラマチックに描かれています。
  2. 第2楽章 (アンダンテ・イン・モード・ディ・カンツォーネ)
    第2楽章は、憂いを帯びた哀愁のメロディで始まり、寂しさや孤独感が色濃く表現されています。オーボエがリードするメロディは、心の奥底にある切なさや懐かしさを感じさせる、どこかノスタルジックな旋律です。この楽章では、チャイコフスキーの持つ繊細で抒情的な面が表れており、内省的な雰囲気が続きます。悲しみと安らぎが交錯し、内面的な世界が静かに広がっていきます。
  3. 第3楽章 (スケルツォ:ピッツィカート・オスタナート – アレグロ)
    第3楽章は、全ての弦楽器がピッツィカート(弦をはじく奏法)で演奏する独特の楽章です。このピッツィカートが軽やかで遊び心のあるリズムを生み出し、幻想的で夢のような雰囲気を醸し出しています。木管楽器が加わり、次第にリズムが変化していくのも特徴で、陰影に富んだ面白い構成になっています。前後の楽章の重さとは対照的に、軽快で少しユーモラスな雰囲気が感じられる楽章です。
  4. 第4楽章 (アレグロ・コン・フォーコ)
    最終楽章は、民謡風の明るいメロディで始まり、エネルギッシュで生命力にあふれています。ロシア民謡の影響を感じさせるメロディが力強く展開され、まるで人生の困難を克服しようとするかのような高揚感が感じられます。しかし、突然第1楽章の「運命のファンファーレ」が再び現れ、不安がよぎる場面もあります。終盤には再び明るく勢いのあるリズムが戻り、力強く堂々としたクライマックスで幕を閉じます。劇的な結末が印象的で、苦悩を乗り越えた歓びと勝利感が伝わってくるようなフィナーレです。

音楽的意義と評価

交響曲第4番は、チャイコフスキーの交響曲の中でも特に感情の起伏が激しく、ロシアの作曲家としての彼の個性が強く表れた作品です。この交響曲で表現されている「運命」や「宿命」のテーマは、ベートーヴェンの交響曲第5番の影響があるとも言われ、チャイコフスキーが苦悩と向き合い、内面の葛藤を乗り越えようとする姿勢が反映されています。

また、ロシア民謡の要素が取り入れられている点でも、この交響曲はチャイコフスキーがロシアの作曲家としてのアイデンティティを意識していたことがうかがえます。そのため、激しい情熱とロシア的な哀愁が見事に融合したこの作品は、ロシア音楽の中でも特に愛される存在となっています。

チャイコフスキーの交響曲第4番は、感情の爆発的な表現と、運命との対峙、そしてそれを乗り越えようとする人間の強さが描かれた作品として、聴衆を魅了し続ける名作です。

4o

たいこ叩きのチャイコフスキー 交響曲第4番名盤試聴記

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団

icon★★★★★
この演奏は、この曲の決定版だと思うのですが、その演奏の厳しさから、なかなか聴く事ができません。聴くときにはかなりの覚悟が必要です。

一楽章、冒頭から強烈な金管の突き刺さるような音色で開始します。これに続く弦や木管のメロディもロシアの凍てつく大地を連想させるような、引き締まった厳しい響きです。
1960年の録音ですが、全く古さを感じさせません。
ぎゅっと凝縮された集中力の凄さが音に現れているような凄みのある演奏が続きます。
恐ろしいくらいのアンサンブルの精度の高さ。空気を切り裂くようなトランペット。欧米のオーケストラでは聞くことができない音楽が展開されています。

二楽章、ほの暗い雰囲気の音楽です。この曲の大部分を支配している鉛色の空のような雰囲気を見事に表現しています。
ヴァイオリンの響きも胴が鳴ったふくよかな音ではなく、主に弦の鋭い音の方が強い音色なので、とても厳しい表現に感じられます。

三楽章、ムラヴィンスキーは木管楽器にも最大限の表現を求めているようです。木管でも強弱の変化が大きく集中力がとても高いのには驚かされます。
全く隙のない見事な演奏です。

四楽章、猛スピードのフィナーレ。私がこれまでに聴いたCDの中では最速です。しかもこのテンポでアンサンブルが乱れない。
とにかく、鳴る音全てにすごい力があって、聴くものを圧倒します。こんなに凄い演奏が実現した事自体が大変な驚きです。
有無を言わせぬ圧倒的な名演です。
今後、この演奏を越えるCDが出てくるのだろうか?

この演奏はソビエト連邦と言う監視国家だからこそ実現した演奏であって、今の世界の政治体制でこのような演奏が実現できるか疑問です。
政治的な背景はどうあれ、信じ難いほどの完璧な演奏です。

サー・ゲオルク・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★★
一楽章、冒頭から全開で鳴り渡る金管!ショルティが指揮する時のシカゴsoの音にはあまり温度感がないので、この曲のように凍てつく大地をイメージさせる曲には向いています。
あまり表現を積極的にしていなくても、響き自体が冷たいので、寒々とした雰囲気がよく出ています。
木管はあまり強調されていないような感じがします。音量としては十分なのですが、表情がほとんどないので、印象に残りません。
オケはもの凄く上手いのですが、表現力に乏しいので、聞き手を熱くするようなことはありません。

二楽章、冒頭のオーボエももう少し何とかならないのか?と思うほど無表情です。テンポの動きはありますし、弦などはそれなりに歌っているのですが、木管の無表情が気になります。
チャイコフスキーの場合は、ムリに歌わなくても作品自体に陰鬱感や哀愁がありますので、あまりくどくどと歌いすぎると、もたれてしまう可能性もありますので、スッキリ演奏してしまうのも選択肢としてはあるのでしょうね。
アラ探しをしなければ、オケは超絶的に上手いので不満はありません。
作品にのめり込みたい人には物足りない演奏かもしれません。

三楽章、ここでは楽譜に書いてあるアーティキュレーションの表現はしっかりしています。
速いパッセージも完璧です。

四楽章、ムラヴィンスキーとほとんど変わらない速いテンポです。
打楽器も良い音で鳴っています。また、ショルティのいつものワンパターンのティンパニの音も、この楽章ではバッチリ決まっています。
トロンボーンなどはまだ余裕を残しているようです。ムラヴィンスキーの強烈なと言うかオケも必死と言うような緊迫感はあまり伝わってきません。
オケの技術が高すぎて、この程度なら何ともないのか?

凄い技術で、これでもかと言わんばかりの演奏を展開します。すばらしい技術です。人間業とは思えないような凄い演奏でした。曲芸をみて感動したような妙な感じです。でもやはりオケの凄さは並大抵ではありません。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、以外に普通のテンポの冒頭でした。第一主題で、非常に遅くなりました。とても滑らかでしなやかな表現です。シルキーで美しい弦。すごく音量を落とした第二主題。よくもこれだけ遅いテンポで演奏したものだと思います。途中でタメがあったりして、遅いテンポをさらに濃密に演奏して行きます。展開部に入る前からテンポを上げました。まるで生き物のように押したり引いたりを繰り返しながら再現部に入りました。第二主題が演奏され、ティンパニが入るところから凄く音量を落として少しずつ音量を上げて行きます。鋭い音のトランペットと金属的な響きですが伸びやかなホルンのファンファーレ。最後はテンポを上げて終りました。

二楽章、ニュートラルな響きのオーボエ。柔らかい弦の副旋律。ここでも波が押し寄せて引いて行く様な強弱の変化があり、有機的な音楽です。中間部の前でテンポを落として、中間部からテンポを戻しました。中間部でも押したり引いたりの音楽の息づかいやテンポの動きなど、とても心地良い演奏です。遅いテンポですが、チェリビダッケの世界にどっぷりと浸ることができます。主部が弦に戻ると、とても繊細な表現です。ファゴットの主要主題はテンポが揺れて凄く音楽的です。生命を感じさせる音楽です。

三楽章、この楽章も遅いテンポで強弱の変化も大きく克明に刻んで行きます。穏やかな中間部。トランペットの行進曲も静かです。自然に主部へ移行しました。一音一音確かめるように着実に進む音楽。とても丁寧な演奏です。終盤に少しテンポが速くなりました。

四楽章、遅いです。この楽章は基本的には、ムラヴィンスキーやショルティのような速いテンポの演奏が好きなのですが、中途半端な遅さよりも、これだけ遅いと割り切って聴けます。冒頭でも叩きつけるような強奏ではなく、オケにも余裕を持たせて柔らかい響きで演奏されます。嬉々とした雰囲気はとても良く表現されています。オーボエの旋律が現れる部分ではさらにテンポが遅くなったような感じがします。その後に登場するトロンボーンも静かでした。二度目のAが元のテンポで演奏されて、Cに入るとさらにテンポが遅くなります。ファンファーレの前のトロンボーンとトランペットの掛け合いはテンポが元に戻り、かなり強く演奏されました。コーダに入ってアッチェレランドをかけているようです。元のテンポが遅かっただけに、このアッチェレランドは凄く効果的で、きいていてこちらも興奮しました。

遅いテンポで一貫していた演奏がコーダからアッチェレランドをかけて聴衆を興奮に巻き込む演奏は、しっかりと設計されたものだと思います。テンポの遅い演奏でこれだけ見事な演奏は初めてです。

ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団

ゲルギエフ★★★★★
一楽章、シャープなホルン。良く鳴る金管のファンファーレ。深みのある弦。とても静かに始まる第一主題。鋭い響きの弦がこの曲にピッタリです。静かに染み込んでくるような第二主題。揺れ動いて感情が込められています。テンポを速めてクライマックスになりますが、あまり大きな振幅ではありません。展開部の突き刺さるようなトランペットのファンファーレやトロンボーンは激しいですが、コントラバスがあまり聞こえないので、響きに厚みがありません。コーダの前とコーダに入ってからテンポを速めましたがまた一度遅くなり最後はまた速めて終わりました。

二楽章、テンポの動きがあって切々と語りかけるように歌います。ゆっくりと深い歌は心を揺さぶります。トリオの嵐のような弦の凄さもなかなかです。主部が戻ってどこか寂しげな主要主題。ファゴットの主要主題はアゴーギクを効かせてとてもゆっくりとした演奏です。ふくよかで柔らかいホルン。

三楽章、アクセントをあまり強調せずに流れの良い演奏です。トリオに入っても大きく歌わないのですが、なぜか音楽が生き生きとしていて動きを感じます。

四楽章、炸裂するシンバルが強烈です。一体感のある動きが見事です。ムラヴィンスキーやショルティのような猛烈なテンポではありませんが、スピード感は十分に感じます。副主題の再現はとてもゆっくりとしたテンポで始まって加速して第二副主題に入りました。コーダは猛烈なアッチェレランドでしたがオケの見事なアンサンブルで危なげなく終わりました。

自在なテンポの変化や聞き手を引き込むような弱音など、聞かせどころの多い演奏でした。一体になって動くオケの表現力も見事でした。ゲルギエフの思いきりの良い表現が良い方に出た演奏だったと思います。
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レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック 1989年ライヴ

バーンスタイン★★★★★
一楽章、短い音をスタッカートぎみに演奏するホルン。トロンボーンが加わってテンポが遅くなります。トランペットも最後はテンポが遅くなります。遅いテンポで感情のこもった第一主題。晩年のマーラー同様の重量感のある演奏です。バーンスタインの感情のままに大きな表現の第二主題。喜々とした二度目のクライマックスのトランペット。オケがとても敏感に反応していて、とても表現が豊かです。たっぷりとアゴーギクを効かせるフルート。テンポも大胆に動きます。ファンファーレの前でねばっこく歌う弦。ファンファーレでテンポが速くなります。第二主題が戻るとまたゆっくりとしたテンポになります。行進曲は一転して凄く速いテンポです。行進曲が終わると急ブレーキです。最後は少しテンポを速めて終わりました。

二楽章、感情を込めて深く歌うオーボエの主要主題。続く弦の主要主題は必要以上に感情表現せずに淡々と進みますがその後はまた、テンポも動いて起伏の大きな演奏になります。中間部はテンポを速めていますが、濃厚な表現が続きます。すぐにテンポが遅くなって深く感情を込めた表現になります。主部が戻ってクラリネットのソロの前でまたテンポが遅くなりました。オケの反応はとても良く、バーンスタインの大きく動くテンポにも良く付いて行っています。ファゴットの主要主題は何とも言えない哀愁を感じさせる見事な演奏です。

三楽章、この楽章でも幅広い表現のスケルツォ主題。テンポはそんなに遅くはありません。中間部はたっぷりと歌うオーボエの主題。一音一音丁寧な演奏です。行進曲で速くなります。速いテンポで大きな盛り上がりがあって終わりました。

四楽章、堂々としたテンポで圧倒的なエネルギー感と華やかなロンド主題。ファンファーレの前の第二副主題は悲しげでした。鋭い響きのトランペットのファンファーレは一楽章冒頭と同じようにテンポを最後に落とします。弱音で登場するホルンの前はかなりゆっくりと濃厚な表現です。最後のロンド主題は冒頭よりもかなり速いテンポです。圧倒的で畳み掛けるようなテンポでエネルギーの爆発で終わりました。

晩年のバーンスタイン独特の濃厚な表現で、テンポも感情に任せて自在に動く演奏でした。強く感情が込められた演奏はチャイコフスキーよりもバーンスタインの個性が強く表現された演奏で、分厚い響きと共に圧倒的でした。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

スヴェトラーノフ★★★★★
一楽章、豊かな残響を伴って輝かしく響くファンファーレ。録音はモノラルのようです。ステージ上での演奏ですが、オーディエンスノイズはありません。速いテンポで動きのある第一主題。お風呂の中で聞いているようなモヤーッとした感じの残響です。第二主題はあまり歌わずにあっさりと進みます。コデッタに入ると突然音量を落とす場面もありました。クライマックスでも鋭く輝かしいトランペット。ホルンも伸びやかです。コーダの前でテンポを少し速めました。行進曲からファンファーレが出るあたりはかなりテンポが速くなりました。

二楽章、あまり大きな表現の無いオーボエの主要主題。続く弦も割と淡々としています。中間部に入るとテンポを動かして大きな表現です。

三楽章、速めのテンポで、起伏のあるスケルツォ主題。軽々と速いパッセージを演奏するピッコロ。速いテンポでも正確なオケ。

四楽章、猛烈なテンポで始まりました。金管や打楽器が豪快に鳴り響きます。第二副主題のトロンボーンも豪快です。ファンファーレでテンポは一旦落ち着きますが、ファンファーレの手前で速いテンポをさらに加速しました。コーダで金管の咆哮とさらに猛烈な加速です。物凄く速いテンポになりますが、オケも必死で喰らいついて行きます。

輝かしい金管。テンポの動きと連動した歌。起伏の大きいスケルツォ主題。四楽章の猛烈なテンポの中での咆哮。そしてコーダからのさらなる加速。この曲で期待されることを全てやってくれたような演奏でした。
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小澤 征爾/ロンドン交響楽団 1975年ザルツブルクライヴ

小澤★★★★★
一楽章、探りながら始まるホルンのファンファーレ。速めのテンポのトランペット。第一主題が始まる前に長い間がありました。静かで寒さを感じさせる第一主題。コントラストがはっきりとしていて、動きも手に取るように分かります。表情豊かで動きのある第二主題。僅かに浅いトランペット、雄大なホルンによるクライマックス。いろんな楽器の動きに強い力があります。音楽の起伏も大きく空気が良く変わります。最後の加速も力がありました。

二楽章、悲しげに歌うオーボエの主要主題。僅かに弾む弦。濃厚に歌うことは避けているようで、あっさりと速めのテンポで進みます。二部に入っても力強い弦と速いテンポは変わりません。

三楽章、この楽章は遅めのテンポで確実な足取りです。金管の行進曲は奥深いところから響くようでとても良い雰囲気です。オケのアンサンブル能力は非常に高く安心して聞くことができます。

四楽章、物凄いエネルギーの放出です。炸裂するシンバル。唸りを上げる弦。第二副主題のトロンボーンとチューバも力強いです。オケの発散するエネルギーが並大抵では無く、物凄い集中力のある演奏です。ファンファーレへ向かっていく弦や金管の迫力は凄いです。コーダに入っても強烈なエネルギーで突き進む演奏には凄みすら感じます。

全体に力の漲る演奏で、物凄いエネルギーの放出でした。特にロンドンsoの弦の力強さには驚かされました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー

チャイコフスキー 交響曲第4番2

たいこ叩きのチャイコフスキー 交響曲第4番試聴記

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★★★☆
一楽章、ふくよかなホルンとそれに続く金管の豊かな響きがとても良い。いつものように力みのない自然体に好感が持てます。
ムラヴィンスキーのような凍てつくロシアの大地を連想させるような厳しさはありません。
むしろ暖かみさえ感じる音楽です。少し響きが薄いように感じられるのが軽微な欠点でしょうか。
ただ、ムラヴィンスキーの気高く、いい加減な気持ちで聴く人間を寄せ付けないような強い個性のある演奏ではありませんが、その分庶民的で暖かいチャイコフスキーです。

二楽章、この楽章でも優しい音楽で、この曲の新しい魅力を発見したような気がします。
素朴で田舎くさい音楽の魅力を伝えてくれて良い雰囲気です。

三楽章、音楽の振幅が広いこともありませんし、極端な表情もありませんが、にじみ出るような暖かさはとても心地よい音楽に仕上がっています。

四楽章、テンポは中庸。強烈に前へ進むような推進力はありません。しかし、この暖かみは全楽章を通して持っています。

これまで、思っていたチャイコフスキーの四番のイメージを完全に覆されました。
こんな音楽だったのかと・・・・・。
音楽の深さを改めて感じさせられました。

マヌエル・ロペス・ゴメス/シモン・ボリバル交響楽団

ゴメス★★★★☆
一楽章、豊かに鳴るホルンやトロンボーン。柔らかく美しい弦の第一主題。豊かに歌うクラリネット。第二主題も美しいです。第二主題の後はテンポが遅くなり、クライマックスへ向けてテンポが速くなります。テンポの動きもあり、起伏も激しい音楽のようです。コーダのファンファーレもとても良く鳴り響きます。コーダへ入ってからもアッチェレランドや独特な強弱の変化がありました。

二楽章、美しく歌うオーボエの主要主題。続く弦も南米のオケらしく暖かみのある美しい響きです。歌はありますが、内面から湧き上がるような表現では無く、浅い感じがあります。中間部も良く歌います。ファゴットの主要主題はあまり深味がありません。

三楽章、速いテンポで動くような豊かな表現です。トリオも速いテンポで軽妙なオーボエその他の木管の表現です。ピッコロが入る部分だけテンポが遅くなり、行進曲でまたテンポが速くなりました。主部が戻るとまた一体感のある動きのある表現がなかなか良いです。フルートとピッコロもとても動きのある大きな表現でした。

四楽章、豪快で速いテンポのロンド主題。副主題の表現も豊かです。オケが一体になって動く表現はとても良いです。第二副主題は少しテンポを落として演奏します。三度目のロンド主題の前でテンポを戻しました。若干アンサンブルが緩い感じもありますがなかなかの熱延です。二回目の第二副主題は速いテンポのままです。ファンファーレの後はまたテンポを落として歌います。最後はオケとティンパニの猛烈なクレッシェンドで熱狂的に終わりました。

豊かな表現と強弱の変化やテンポの動きなどもあり、四楽章最後の熱狂的な終結部も圧巻でした。二楽章も浅い表現が僅かな欠点だったように思います。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1971年ライヴ

ロジェストヴェンスキー★★★★☆
一楽章、低いホルンが強く野太い響きのホルン。そしてビブラートをかけて鋭い響きのトランペット。潤いがあって柔らかく美しい弦。滑らかな第二主題。トゥッティはオケの響きが良くブレンドされて豊かでスケールの大きな響きです。ムラヴィンスキーの凍りつくような冷たい響きとは違って温度感の高い演奏で、熱気を感じます。トロンボーンの叫びもかなり強烈でした。弱音もかなり抑えていて、強弱の振幅は相当大きいと思います。コーダは途中で少しテンポを落としましたが、かなり速いテンポで追い立てました。

二楽章、弦に主要主題が移るとクラリネットが主題を消すくらいの大きさで演奏します。ストレートな表現です。中間部は速めのテンポでとても活発な動きの演奏です。暖かく哀愁を感じさせるファゴットの主要主題。

三楽章、コントラバスが分厚いスケルツォ主題です。トリオは速めのテンポで色んな楽器の受け渡しが明瞭で、はっきりとした動きがあります。

四楽章、物凄いエネルギーが爆発するロンド主題。第二副主題に入ってもホルンが早い段階からかなり大きく演奏します。そしてトロンボーンの咆哮はすさまじいものです。シンバルも凄い音量です。ファンファーレへ向けて少しアッチェレランドしました。ファンファーレの間もトロンボーンが凄く強く入って来ます。コーダに入って少しテンポを速めますが、最後でシンバルの強烈なクレッシェンドがありました。最後の音が鳴り終わる前に拍手と歓声が上がります。生でこの演奏を聴いていた人たちはまさに熱狂したことでしょう。

テンポの動きや大きな歌などはありませんでしたが、極限まで抑えた弱音から金管の強烈な咆哮。そしてシンバルの大音量。聴衆を熱狂させる要素を十分に備えた演奏でした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、冒頭から強烈な金管の吹きまくり!続く木管の旋律はあっさりしていて、この曲独特の陰影はあまり感じません。
金管の切れ味鋭い音が魅力的です。木管も美しい響きですが、明るい音色なので、チャイコフスキーの暗さや寒さはあまり伝わってきません。
ホルンの強烈な咆哮が印象に残ります。

二楽章、あっさりしています。金管には限界かと思うほどの音量を要求していますので、静かな部分でも歌いすぎるとコテコテになるので、意識的に歌うことを避けているのでしょうか。
500gのステーキのあとにサラダがでてきたような感じで、ちょうど良いといえば、良いのですが・・・・・・。
あまり表情はありませんが、オケは上手いので、とても美しい演奏です。

三楽章、この楽章は速めのテンポで、さらにあっさり。オケの名人芸を聞かせてくれます。

四楽章、ムラヴィンスキーやショルティのような猛スピードではありませんが、鳴り物も豪快に鳴るので、なかなか良いです。

期待したほどの爆演ではありませんでしたが、堂々とした良い演奏でした。

ウラディミール・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

フェドセーエフ★★★★
一楽章、意外と細い響きのホルン。鋭い響きのトランペット。あまり歌うことなく淡々と進む第一主題。あまり表現やテンポの動きなどは無く、ちょっと 一本調子な感じがします。金管の咆哮もありません。とても抑制の効いた演奏です。トランペットに比べるとホルンが明らかに弱いです。コーダに入るとテンポ が速くなります。

二楽章、豊かな残響を伴って美しく響くオーボエの主要主題。この楽章でも感情を込めるような表現はありません。中間部の後半ではテンポを落としてたっぷりとした表現をしました。初めて感情を込めた表現をした部分のように感じました。

三楽章、フレーズの中ではアクセントなどは強く無く、自然な流れですがポイントポイントではかなり強くアクセントを演奏しています。最初はテヌート気味に演奏されるトリオの主題。クライマックスはかなり活発でした。

四楽章、かなり速めのテンポで勢いのある演奏です。ムラヴィンスキーのテンポより僅かに遅い程度です。金管が咆哮することはやはり無く、ロシアのオケのパワーが炸裂するような演奏を期待すると裏切られます。トランペットのアーファンファーレの最後で遅くなりました。ホルンの前まではかなりテンポを落として濃厚な表現でした。ホルンからは元のテンポに戻りそのまま最後まで走りました。

録音の問題なのかも知れませんが、ロシアのオケのパワー炸裂の演奏ではありませんでした。あまり大きな表現も無く淡々とした演奏でしたが、四楽章の勢いはさすがでした。
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クルト・ザンデルリング/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ザンデルリング★★★★
一楽章、穏やかなホルンに続いて鋭く突き抜けて来るトランペットのファンファーレ。ザンデルリングらしくゆっくりと柔らかく歌う第一主題。優雅に舞うような演奏です。第二主題も非常にゆっくりとしています。展開部の前のクライマックスはとても雄大です。展開部も遅いですが、あまり遅さを感じさせません。再現部の前のトロンボーンが吠える前にティンパニが激しくクレッシェンドしました。美しい第二主題の再現。コーダに入って行進曲調になってからアッチェレランドしました。

二楽章、テンポが遅いこともあってあまり大きく歌いません。続く弦は暗く静かに切々と歌います。トリオは少しデンポも速まって軽くなります。主部が戻るとまた、弦が切々と歌い木管のオブリガートが滑らかです。

三楽章、柔らかく穏やかなスケルツォ主題。アクセントも強く無く滑らかに流れて行きます。トリオは縦の線をきっちりと合わせるように意識しているような演奏です。

四楽章、ザンデルリングのイメージはもっと遅い演奏をイメージしていましたが、思ったほど遅くはありません。オケが荒れ狂うような演奏では無く、とても丁寧に美しく演奏されます。ホルンのファンファーレの合間に登場する弦の穏やかな響き。最後までテンポを速めること無く堂々とした足取りの演奏でした。

この演奏は、ロシアの力みなぎる演奏ではありません。明らかにヨーロッパの洗練された音楽です。終始力みの無い美しい響きで通しました。表現も大きな表現は避けて上品な演奏を実現しました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★☆
一楽章、豪快に鳴り響くファンファーレ。内面から湧き上がるような歌を聞かせる第一主題。表面にワックスがかかっているような滑らかな演奏です。天上の音楽のような美しさの第二主題。クライマックスではティンパニが強いいバランスで響きます。ファンファーレやトロンボーンの叫びはかなり強烈ですが、その他の弦が主体の部分はあまり強くありません。コーダへ向けてアッチェレランドしました。最後もテンポを速めて終わりました。

二楽章、弦に移った主要主題は透明感があってとても美しいです。トリオでも表面にワックスがかかったような滑らかさは変わりません。主要主題が戻ってもあまり大きな表現は無く、ひたすら美しい演奏に徹しているような感じがします。

三楽章、軽い演奏ですが、集中力は高いです。トリオは柔らかく緊張感が緩み穏やかになります。行進曲も柔らかいトランペットです。ピッコロはとても活発に動きます。終結に向けてテンポを速めて切迫します。

四楽章、ベルリンpoとのスタジオ録音よりテンポは速いです。トランペットのエネルギー感はやはり強いです。金管やティンパニが弦にかぶってくるような感じで、弦の大人しさと金管やティンパニの強さがアンバランスです。ファンファーレの後静かにホルンが出てから僅かにテンポを速めましたが、追い立てるようにテンポを煽るような演奏では無く、比較的落ち着いた演奏でした。

滑らかで美しい弦と木管に対して、強烈で力強い金管とティンパニがアンバランスでした。感情を込めて歌うような表現も無く、ひたすら美しく演奏することに徹したような感じがしました。
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クラウディオ・アバド/シカゴ交響楽団

アバド★★★☆
一楽章、少し距離があって伸びやかなホルン。強いですが柔らかいトランペット。消え入るような弱音で演奏される第一主題。どの楽器も伸びやかで美しいです。純度が高く清潔感のある演奏です。第二主題もとても抑えた音量です。弱音の繊細さをとても重視した演奏のようです。二度目の大きなトゥッティはゆっくりとしたテンポでトランペットなどはあまり強奏はしませんでした。ホルンはかなり強く演奏しましたが。静かでロシアの冬の寂しさを感じさせるような表現です。トロンボーンの叫びはあっさりとしていました。深い感情移入はありませんが、実に整った美しい演奏です。コーダも興奮を煽るような加速はしませんでした。

二楽章、オーボエの主要主題もとても音量を落としています。主要主題が弦に移ってからは奥ゆかしい歌ですがとても豊かな響きが印象的です。ドロドロになるようなことは皆無でとてもスマートに演奏が進んで行きます。

三楽章、アクセントをあまり強く演奏せずに流れの良い演奏です。トリオのオーボエはとても良く歌いました。スケルツォ主題が戻ると緊張感が高まったような感じがします。

四楽章、ゆっくり目のロンド主題。オケのエネルギーが発散されるような爆発はありません。とても紳士的でスマートです。ファンファーレの前のトロンボーンとトランペットは余裕綽々です。コーダに入ってもテンポはそのままで金管はテヌートぎみの表現です。最後で僅かにテンポが速くなって終わりましたが、興奮を煽るような熱気を感じるような演奏ではありませんでした。

弱音の繊細さに重点を置いたような真面目で純粋で、清潔感に溢れる演奏でした。その分狂気のような熱狂とは対極にあるような演奏で、これだけ冷静な演奏も珍しいと思います。あまりにも真面目過ぎて面白みはありませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー

チャイコフスキー 交響曲第4番3

たいこ叩きのチャイコフスキー 交響曲第4番名盤試聴記

ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク★★★
一楽章、ホールトーンを伴って伸びやかになる金管。ハイティンクのチャイコフスキーは、ロシア物の概念とは違う演奏で、力で押すような部分は全くありません。
むしろ脱力系の演奏で、強弱の振幅も比較的緩やかで、楽譜に書かれている音符を丁寧に音楽にしているようです。
積極的な表現はないのですが、オケの一体感があるのが、アバドとの大きな違いです。
微妙な表現しかしていないようですが、その微妙な表現が徹底されているのが響きの美しさにも現れていて、聴いていて心地よい演奏になっています。

二楽章、真面目なハイティンクの不器用さがこの楽章では、目だってしまいます。
カラヤンのような聞かせ上手ではないので、音楽が平板になってしまうところが残念です。とても美しいのですが・・・・・・。

三楽章、この楽章は動きがあります。ただ、ムラヴィンスキーのような厳しさやカラヤンのような豪華絢爛な演奏には及びません。
中庸の安心感はありますし、音楽的にもかなりレベルの高い演奏ではあるのですが、残念ながら上がいるということでしょうか。

四楽章、ムラヴィンスキーやショルティのような、ブッ飛びの猛スピードではありませんが、ほどほどのスピード感はあります。
オケはアンサンブルも良いし、美しいし。

ハイティンクの演奏って、噛めば噛むほど味が出るような玄人好みの演奏が多く、初めて聴いたときには、良さがなかなか分からないことが多いです。
整った良い演奏でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、冒頭のファンファーレは速めのテンポでした。うねるようにオケ全体が歌っているような一体感。ムラヴィンスキーのような厳しい極寒の地を思い起こさせるような演奏ではなく、絢爛豪華な音楽絵巻のようです。
柔らかな木管と弦楽器。愛を語る優しさがあります。しかし、それをかき消す強烈な金管楽器。
金管楽器の咆哮はすばらしい響きで圧倒されます。また、弦楽器の暖かみのある響きはムラヴィンスキーの演奏とは対照的です。
ムラヴィンスキーの厳しい表現に比べるとカラヤンの演奏は甘美です。

二楽章、暖炉の前にいるような暖かみのある演奏で、この楽章もムラヴィンスキーとは対照的です。

三楽章、オーボエの旋律が哀愁に満ちていてすばらしい。やはり、木管楽器の豊かで柔らかい響きがものすごく魅力的です。

四楽章、遅いわけではないが、ムラヴィンスキーやショルティの狂ったような疾走に比べると緩い印象を受けてしまいます。
もう一つ、鳴り物入りと言われるこの楽章にするとシンバルの鳴りも今ひとつと言わざるを得ません。最後に備えて径の小さいシンバルを使っているのでしょうか。運命のテーマの後はテンポが速くなりました。

なるほど、こういう設計になっていたんですね。

マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ヤンソンス★★★
一楽章、比較的穏やかで大人しいファンファーレ。あまり表情が無く素っ気ない第一主題。この作品独特の荒々しさは無くビロードのような柔らかい肌触りです。第二主題は速めのテンポですがここでもあまり豊かな歌はありません。クライマックスもあまり強奏はせず何かミニチュアを見ているような感覚になります。再現部のクライマックスもとてもスケールの小さい演奏です。表情にもあまり締りが無く緩い感じがします。再現部のデリケートな弦。コーダへ向けて少しテンポを速めます。コーダも圧倒的な響きはありませんでした。

二楽章、強弱の振幅が大きく豊かに歌うオーボエの主要主題。弦で演奏される主要主題はあっさりとサラサラと流れて行きます。

三楽章、強弱の変化が大きくスピード感のある主題。トリオも良く歌います。金管の行進曲も豊かな表情です。

四楽章、速くも遅くもない中庸のテンポです。ロシアのオケのようなエネルギーの爆発は無く、端正でバランスの良い演奏です。意図的に音量を落とす部分があったりアゴーギクのようにテンポが動いたりします。ファンファーレも奥まっていて突き抜けて来ません。

エネルギーの爆発は無くかなり大人しい演奏のように感じました。あっさりとした部分と、豊かに歌う部分の描き分けがはっきりしていて、意図的に音量を落とすような表現もあり、工夫は随所にありましたが、やはりこの曲は爆発してほしいと思いました。
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カルロス・パイタ/モスクワ新ロシア管弦楽団

パイタ★★★
一楽章、ロシアのオケらしく鋭く力強いファンファーレ。第一主題が開始されるまでの部分はかなりゆっくりの演奏でした。第二主題は音量を落としてヴェールに包まれているような感じでした。金管を遠慮なく吹かせる演奏で、かなりダイナミックです。展開部のクライマックスは異様な程の強烈さでした。最後は物凄いアッチェレランドと金管の咆哮で終わりました。

二楽章、ほとんど歌わない主要主題。かなり雑な弦。美しく歌うよりも音量が大きくなることにひたすら集中するような演奏で、繊細さなどは全くありません。ファゴットの主要主題は哀愁があってとても良い演奏でした。

三楽章、速いテンポですが、表現はあまり締まっていません。どこか緩い感じがあります。行進曲はさらに速くなり、ピッコロなどは名人芸のような速さです。

四楽章、テンポはそんなに速くはありませんが、必死な演奏でスピード感があります。トロンボーンもシンバルも炸裂します。お祭り騒ぎのような賑やかさです。ファンファーレの後はゆっくりのテンポから加速して凄い勢いと咆哮で強烈な演奏です。

弱音部分にはほとんど意識は無く、金管の強烈な咆哮と猛烈なアッチェレランドが特徴的な演奏で、そこまでしなくてもと思いました。かなり荒っぽい印象でした。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

ホーレンシュタイン★★
一楽章、かなりのナローレンジです。冒頭のファンファーレでも何度かミスがありました。速いテンポで淡々と進む第一主題。ゆっくりと始まった第二主題はすぐに普通のテンポになります。録音が悪くてあまり細部は分かりませんが、ひたむきさや熱気は感じられます。

二楽章、大きく歌うことはありませんが、切々と語りかけてくるような深い音楽です。中間部は速いテンポで弾むような表現です。

三楽章、こ楽章はとても遅いテンポで始まりました。強弱の変化もあまりありません。淡々としています。最後は少しテンポを速めて終わりました。

四楽章、ゆっくりとしたテンポのロンド主題。シンバルのおもちゃのような音です。この楽章でも大きな表現は無く、淡々と進んで行きます。金管の咆哮もありません。コーダへ向けて少しテンポが速くなりますが、暴走するような速さにはなりません。

とても真面目に作品と向き合った演奏だったと思います。大きな表現は無く淡々と進んで行きますが、切々と語りかけるような深い音楽でした。ただ、録音が悪く細部を聞き取ることはできませんでした。
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ネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団

ヤルヴィ
一楽章、多声的で厚みのあるファンファーレ。第一主題が弦に移るとテンポが速くなります。奥まったところから遠慮がちに響く第二主題。突然音量を落とすことが何度かありました。表現はストレートであまり深味はありません。再現部の第二主題はとても軽い表現です。スケールも大きく無く、軽い演奏です。

二楽章、良く歌う主要主題ですが、特に美しい響きではありませんでした。コントラバスもちゃんと鳴っているのですが、なぜか軽く広がりの無い演奏です。

三楽章、ここまでの軽い演奏から一転して、物々しいスケルツォ主題ですが、どこか荒っぽい感じがします。トリオもとても積極的に歌っています。

四楽章、三楽章だけ録音レベルが高かったのでしょうか?この楽章ではオケが少し引っ込んでしまいました。ちびったようなシンバル。打楽器がドタバタした感じに響きます。録音がデッドなのか、ブレンドした豊かな響きを聞くことができません。豪快にオケが鳴ることもありませんでした。最後まで速くも遅くも無いテンポのまま終わりました。

浅く軽い演奏で、あまり深味が無く、ブレンドされた豊かな響きはありませんでした。ドタバタした打楽器も演奏を壊しているような感じがしました。
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イーゴリ・マルケヴィチ/ロンドン交響楽団

マルケヴィチ
一楽章、短い音をスタッカートぎみに演奏するホルンのファンファーレ。かなり短く不自然な印象の部分もあります。基本的には速いテンポでグイグイ進みます。ところどころで短い音をスタッカートぎみに演奏する独特の表現です。テンポも動いています。再現部の前のファンファーレはかなり強烈でした。ホルンのファンファーレのスタッカートがとてもひっかかります。

二楽章、良く歌うオーボエ。この楽章でもスタッカートで演奏される部分があって、私はとても違和感を感じます。テンポも動いて歌はあるのですが・・・・・。中間部は何か投げつけるような表現で、テンポも速いです。ファゴットの主要主題もテンポが動いて良く歌いますが、哀愁は感じません。

三楽章、速いテンポで勢いがあり迫ってくるような表現です。とても活発です。中間部へ入る直前のピィツィカートが凄く強かったです。主部に戻る前に急激にテンポを落として、また速い主部に入りました。音に力があって強い演奏です。

四楽章、径の小さいシンバルを使っているようで、豪快に鳴り響きません。副主題もスタッカートぎみに演奏します。この楽章でも突然テンポが遅くなったりする部分があります。音がゴリゴリしていてブレンドされた柔らかい響きはありません。ロンド主題の中でもテンポが動きます。ファンファーレの前の副主題は感情の赴くままに次第に非常にゆっくりとしたテンポの演奏になりました。第二副主題から急激にテンポを速めました。最後まで華やかな響きにはならず、地味で硬くゴリゴリとした響きでした。

マルケヴィチの演奏にしては情緒的で感情に任せてテンポが大きく動く演奏でしたが、普通の演奏では無いようなスタッカートがとても違和感がありました。また、ゴリゴリとした硬く地味な響きもあまりこの作品には合っていないように感じました。
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レオポルド・ストコフスキー/アメリカ交響楽団

ストコフスキー
一楽章、独特の表現。テンポも強弱の変化も冒頭からストコフスキー節炸裂です。第一主題も途中で止まるような表現があります。完全にストコフスキーワールドです。テンポは好き放題です。あまりにテンポや強弱の変化が多いので、とても戸惑います。これはストコフスキーの感情のままに自然に出てきた表現だとは思えません。意図的に仕掛けをして見せびらかすような演奏に感じます。ストコフスキーファンにとってはたまらない演奏なのではないかと思う程、やれることはとことんやっています。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで割りと正統な歌の主要主題。弾むように演奏する中間部

三楽章、アクセントをとても強調しています。行進曲でもトランペットが突然強く吹く場面があります。

四楽章、とても表現が大きいです。テンポもめまぐるしく激変します。突然弱音になったり、これでもかとテンポを落としたりやりたい放題です。ファンファーレの前で大きくテンポを落とします。トランペットのファンファーレもシンコペーションのリズムの部分で極端に音量を落としてクレッシェンドしました。ロンド主題の前で大きくアッチェレランドして、ロンド主題ではトランペットに合わせてティンパニも叩きます。とにかく目まぐるしいテンポの変化です。

表現し切ったと言えばその通りなのですが、ここまでコテコテの表現をする必然性が分かりません。チャイコフスキーの曲と言うより、ストコフスキーの曲のようでした。
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