シベリウス 交響曲第4番
たいこ叩きのシベリウス 交響曲第4番名盤試聴記
パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、冒頭から重苦しい低弦。音量を落として、内に秘めたような表現のチェロの主題。色彩のコントラストがとても鮮明です。粘りがあって自然の厳しさも伝わってきます。
二楽章、伸びやかで美しい演奏です。大きな表現ではありませんが、生命観のある生き生きとした音楽です。
三楽章、暗闇に浮かび上がるようなフルート。寂しさを強く感じさせる美しい金管。繊細さと深みのある演奏でとても美しいです。
四楽章、生き生きと動き回る弦。強いグロッケンシュピール。強弱の振幅がとても大きくダイナミックですが陰影もあります。かなり激しい金管。後のヨーロッパ室内oとの演奏よりも金管は強烈です。
ヨーロッパ室内oとの録音に比べるとかなりダイナミックで積極的な表現でした。オケもとても美しく伸びやかで魅力的な演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。
コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団
★★★★★
一楽章、遠くから響いてきて、暗闇にどんどん沈んで行くような第一主題。何かを暗示するかのような金管の第二主題。羽毛のような心地良い肌触りの弦。密度が濃く、しかし消え入るような弱音。暗く重い雲に覆われているような雰囲気です。ホルンが一筋の光明を見出すような感じです。
二楽章、一楽章の暗さから僅かに雲が薄くなったような雰囲気ですが、不穏な空気はそのままです。曇天の中でもしっかりとした色彩を放つ木管。
三楽章、近代の作品であることを象徴するような断片的で浮遊感のある音楽。暗闇の中で色とりどりの明かりが交錯するような雰囲気です。一つ一つの音に力があって、しっかりと立っています。暗闇の中に僅かな明かりが差し込むような表現もあります。充実した響きのトロンボーン。
四楽章、グロッケンシュピールとチューブラベルを使い分けています。このあたりの使い分けはとても効果的な使い方でした。精緻でしかも濃厚な色彩。真摯に作品と向き合って、作品の姿を描き出す姿勢には心が動かされました。
暗闇の中で不穏な空気や色とりどりの光の交錯など、作品の持っているものを純粋な姿勢で描き出した演奏でした。
パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団
★★★★★
一楽章、深く厚みのある冒頭。しっかり地に足のついた第一主題も深みがあって奥行き感があります。金管も柔らかく美しいバランスです。不安感も良く表現しています。
二楽章、表現の幅が広いオーボエの主題。決して突出するようなバランスにはなりませんが、とても良く表現しています。室内オケとは思えない厚みのある響き。
三楽章、暗闇の中で不安なフルート。静寂の中に響く楽器の数々。よく歌い切々と訴えて来ます。作品への深い共感があるのだ思います。そうでなければこれだけ有機的に結びついた演奏は出来ないでしょう。
四楽章、表情豊かで滑らかに動く木管。チューブラベルは重ねずグロッケンシュピールのみです。室内オケとは思えないような凄いパワー感。無表情に演奏することが無いと言えるほど、細部まで表現しています。
作品への深い共感から生み出される細部にわたる表現。室内オケとは思えない深みと厚みとエネルギー。すばらしい演奏でした。
コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団
★★★★★
一楽章、焦点が定まらず浮遊感がありうつろなチェロの第一主題。ザワザワとした不安感が覆い尽くすとても不安定な状態をとても良く表現しています。
二楽章、自然体で美しい演奏で特に何かを強調することはありません。
三楽章、ゆったりとしたテンポで、神秘的なクラリネット。混沌とした中に断片的に浮かぶ旋律。大きな抑揚のあるチェロの主題。静寂感の中に次々と浮かぶ木管が美しい。濃厚な色彩ではありませんが、確かな色を発するオケ。重厚なトゥッティ。
四楽章、グロッケンシュピールとチューブラベルを併用しています。複雑に動き不安感は表現していますが、演奏自体はとても安定していて落ち着いた演奏です。
落ち着いた安定した演奏で、不安感を良く表現しました。少しくすんだ響きも作品にピッタリでした。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団
★★★★★
一楽章、表面が滑らかで、寒い空気感のある演奏です。カラヤンらしくキチッと整理されてとても聞きやすい演奏になっています。凝縮された密度の高さも感じます。
二楽章、モノラルですが、スタジオ録音なので、音質はそんなに悪くはありません。
三楽章、フルートのソロはベルリンpoとの65年の録音のように前へ出てきてピーンと張り詰めたような響きでは無く、少し奥まっています。全体がブレンドされた自然さはこちらの方があります。切々と訴えてくる弦もなかなかです。
四楽章、後のベルリンpoとの録音よりも響きが薄いので、シベリウスにはこちらの方が合っているような気がします。金管とグロッケンが強調されていますが、演奏全体の凄みはかなりのものです。
少し寒い空気感や少し薄い響きなど、シベリウスには合っていました。四楽章の凄みのある演奏もとても良かったと思います。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。
オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団
★★★★★
一楽章、ゴロゴロと岩が地底から湧き上るような冒頭。柔らかく暗闇で瞑想するようなチェロの主題。とても静かです。突出しては来ない第二主題。展開部に入っても素晴らしい静寂感です。金管は軽く美しく演奏しています。
二楽章、奥ゆかしく柔らかいオーボエの主題。中間部の弦も静寂感があります。
三楽章、弱音の集中力の高い美しさは素晴らしいです。主題も緻密なアンサンブルで美しく神秘的です。雑みが無く純粋で、無駄なものを削ぎ落としたような演奏です。金管は控えめで決して突き抜けて来ません。
四楽章、大きな表現では無く奥ゆかしい第一主題。グロッケンシュピールを使っています。温度感は冷たくも暑くもない常温です。ここでは初めてトランペットが突き抜けて来ました。トランペットが突き抜けてもオケは完全にコントロールされていて整然としています。
弱音に重点を置いた静寂感のある美しい演奏でした。深い感情表現などはありませんでしたが、完全にコントロールされたオケの純粋な響きも魅力的でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。
エサ=ペッカ・サロネン指揮 スウェーデン放送交響楽団
★★★★★
一楽章、ガリガリと硬質なコントラバス。ふくよかですが暗闇に響くようなチェロの主題。ダイナミックで激しい金管の第二主題。しっかりと地に足の着いた濃厚な演奏です。ティンパニも強烈です。
二楽章、舞うように歌うオーボエの主題。終結部に現れる主題はどれも生き生きとしています。強弱の変化が明快でタイナミックです。力感に溢れる演奏です。
三楽章、暗闇に浮かぶようなフルートとクラリネット。大きく歌うホルン。ずっと暗闇をさまようような演奏でした。
四楽章、速めのテンポで活発に動く第一主題。グロッケンシュピールを使っています。シャキッとしたアンサンブルの弦。明快で生き生きと動くオケ。強弱の振幅はかなり大きいです。
暗い部分と生き生きとした表現とのコントラストや強弱の大きな振幅など、表現の幅の大きな演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。