カテゴリー: シベリウス

シベリウス 交響曲第6番

シベリウスの交響曲第6番は、彼が1923年に作曲した作品で、交響曲第5番の劇的な性格とは対照的に、清らかで内省的な美しさを湛えた曲です。シベリウス自身はこの曲を「清水のように純粋な作品」と表現しており、音楽はどこか冷たくも清々しい空気感を持っています。彼の交響曲の中ではあまり華やかさはありませんが、フィンランドの静かな自然や繊細な色彩が見事に描かれており、その詩的な響きが魅力です。

各楽章の特徴

シベリウスの第6交響曲は全4楽章から成り立っています。主に古典的な4楽章形式に沿っているものの、音楽は独特の抑制されたエネルギーと、慎ましい美しさに満ちています。

  1. 第1楽章Allegro molto moderato
    穏やかな導入部から始まり、抑制された旋律が淡々と流れるように進んでいきます。この楽章では、フリギア旋法(民族的な響きが特徴の音階)が使われ、シベリウスの作品に特有の神秘的で古風な雰囲気を生み出しています。弦楽器や木管楽器の柔らかな響きが重なり合い、静謐な世界が広がります。
  2. 第2楽章Allegretto moderato
    この楽章は叙情的でありながらも控えめで、シベリウスらしい繊細な表現が特徴です。淡々とした旋律が続く中で、木管楽器や弦楽器が互いに絡み合い、柔らかな音楽が進行します。シベリウス特有の淡い色彩が漂い、短いながらも心に残る美しい楽章です。
  3. 第3楽章Poco vivace
    ここでは、弦楽器の軽やかなリズムが印象的で、少し速めのテンポで進みます。前の2楽章とは少し異なり、生命力が増した感じで進行し、管楽器の力強い響きが際立ちます。牧歌的で少し踊るようなリズムも含まれ、北欧の静かな自然が目の前に広がるような開放感を感じさせます。
  4. 第4楽章Allegro molto
    最終楽章は、落ち着いた旋律が繰り返される一方で、次第に力強さを増していきます。曲全体を通じて抑えられていた感情が少しずつ開放され、フィナーレでは小さな頂点を迎えますが、大きな劇的展開には至らず、静かな余韻の中で終わります。この構成は、シベリウスの自然観や人生観が反映されたものともいわれ、日常の中に潜む穏やかな美しさを讃えています。

音楽的な特徴と評価

シベリウスの交響曲第6番は、派手な効果音や大規模な盛り上がりを避け、純粋で自然体の美しさが追求された作品です。フリギア旋法や全体的な透明感は、聴く者に静寂と内省の空気を感じさせ、どこか神秘的な世界観に包まれています。この交響曲は、シベリウスの音楽の中でも特に詩的で控えめな美しさが際立っており、「北欧の冬」を連想させるような静かな情景が広がります。

他のシベリウスの交響曲に比べて大規模なドラマ性はありませんが、フィンランドの静寂や自然の美しさ、そして彼の精神的な深みが凝縮されており、聴く者の心を穏やかに浄化してくれる作品です。そのため、シベリウスの交響曲第6番は、内面の静寂や自然の神秘を愛する人々にとって特別な意味を持つ曲として評価されています。

4o

たいこ叩きのシベリウス交響曲第6番名盤試聴記

パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、凛とした冷たさをもった序奏主題。第一主題も素朴で華美なところはありません。舞うような第二主題。音楽の振幅も自然でゆっくりと波が押し寄せるような感覚です。金管が突き抜けてくることも無く柔らかい美しい響きです。

二楽章、静寂感のある第一主題。どの楽器も生き生きとしていて、有機的です。

三楽章、活発に動きますが、それをさらりと演奏します。初めて金管が突き抜けて来ましたが気持よく鳴り響きました。

四楽章、パステル画のような淡い色彩なのですが、ここぞと言うところでは濃く強いカラーを出します。中間部でのティンパニの一撃も見事な音色と絶妙な強さです。美しく消えて行きました。

柔らかく美しい響きですが、いざと言う時には、強く濃厚な色彩に変化します。とても有機的な音楽がすばらしかったです。

コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、ゆっくりと波が押し寄せるように次から次からと変化し、柔らかく祈るような序奏主題。鮮やかな色彩の第一主題。第二主題も生き生きとして色彩感の豊かな演奏です。第一主題の再現も輪郭がくっきりとしています。軽快に動いて濃厚な色彩はとても素晴らしいです。

二楽章、強い主張はありませんが、色彩感豊かな演奏で作品のありまののを描くことで、作品の美しさを伝えて来る演奏です。細かな動くもとても克明です。

三楽章、第一主題の動きもとても俊敏な動きで活発で生き生きとしています。ハープがとてもはっきりと聞こえます。金管も思い切って入って来ます。

四楽章、ここでも生命感に満ちた主要主題。中間部に入るとさらに生き生きと活動的な動きです。金管やティンパニが遠慮なく気持ちよくズバッと入って来ます。振幅の非常に大きな演奏です。最後は静寂の中に消えて行きました。

すごく振幅が大きく、色彩感も濃厚で切れ味の鋭い演奏でした。自然体の表現の中から作品の美しさを十分に伝える演奏は素晴らしいものでした。

オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★★
一楽章、あまり冷たさはありませんが、生き生きとした豊かな表情が魅力的です。柔らかい第二主題。とても美しいです。最初はかなり抑えた音量で始まりましたが、金管やティンパニなどはとてもダイナミックな演奏です。

二楽章、もの思いにふけるような深い主要主題。この楽章でも自然で豊かな表現です。そして、ダイナミックな金管。

三楽章、生き生きと弾むリズム。美しいですが、強烈な金管。

四楽章、どこを取っても生き生きとした動きがあります。中間部もとても豊かな表情です。最後は静かに人生を閉じるように終わりました。

この作品をこれだけ表情豊かに表現した演奏は初めてです。生き生きとした演奏は素晴らしいものでした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

シベリウス:交響曲第6番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第6番-2

シベリウス:交響曲第6番ベスト盤アンケート

たいこ叩きのシベリウス交響曲第6番名盤試聴記

レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、清涼感がありますが内面から熱いものが込み上げてくるような序奏主題。感情が込められて、しみじみとした第一主題。アーティキュレーションに敏感に反応する活発な動きの第二主題。再現部のチェロも歌います。とても表情豊かな演奏で積極的に語りかけて来ます。最後はトランペットが大きくクレッシェンドしました。

二楽章、静かに歌う冒頭主題。主要主題も静かに始まります。まとまりのある充実した響きです。

三楽章、くっきりと浮かび上がるほどではありませんが、適度な色彩感を持った第一主題。第二主題のフルートもマットですが、良く歌います。その後も滑らかに活発に動きます。目の覚めるような金管で終わりました。

四楽章、柔らかく美しい主要主題。中間部で、大きな表現で活発な演奏になります。クライマックスでも咆哮することは無く、抑制が効いています。静かに消えて行きました。

美しく良く歌い、充実した響きでまとまりの良い演奏でした。程よい色彩感で内面から湧き出すような表現はとても良かったです。

エサ=ペッカ・サロネン指揮 スウェーデン放送交響楽団

サロネン★★★★☆
一楽章、涼やかな序奏主題。色んな楽器の絡みが見事に表現されています。第二主題は躍動的では無く、とても落ち着いた大人の雰囲気です。常に張り詰めた冷たい空気感があってシベリウスらしい演奏です。

二楽章、静寂感のある主題。サロネンは大きな表現はせずに、作品を忠実に演奏しているようです。

三楽章、少し演奏に熱気を帯びてきた感じで温度感が少し上がった気がします。荒々しく金管が演奏します。

四楽章、深みのある響きや、静寂な部分と強烈に迫って来る部分の変化がとても大きく聞き応えがあります。

冷たい空気感のある前半から、次第に熱気を帯びて荒々しく強烈に迫って来る金管などなかなか聞き応えがありました。
このリンクをクリックすると動画再生できます。

サー・サイモン・ラトル指揮 バーミンガム市交響楽団

ラトル★★★★☆
一楽章、とても厳しい寒さを感じさせる序奏主題。アンサンブルの精度も高く静寂感も感じます。第一主題で僅かに温度が上がります。それでもとても厳しい静寂感です。とても上品な第二主題。精緻な演奏です。

二楽章、楽譜に書かれていることを忠実に再現しようとするようなアプローチです。

三楽章、オーケストラはとても上手いです。金管の最後はかなり荒々しく鳴りますがそれでも美しく余裕があります。

四楽章、シベリウスにしては色彩感が濃厚です。この作品の演奏としてはかなり振幅も激しいです。最後もとても冷たい響きで終わります。

イギリスのオケの演奏にしてはかなりシベリウスらしい寒さは伝わりました。振幅の大きな演奏でしたが、楽譜に忠実な演奏で、精緻で美しい演奏でなかなか良いものでした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★★
一楽章、雪原の寒さを感じさせる序奏主題。豊かな表情の第一主題。サラッとした美しい響きです。

二楽章、静寂感の中に繊細な弱音が響きます。弱音の美しさが際立っています。

三楽章、しっかりとした強弱の変化のある締まった第一主題。再現部でも表情豊かな弦。

四楽章、中間部へ移行する部分の木管の動きも活発で生き生きとしていました。クライマックスの盛り上がりは控え目でした。

美しく、豊かな表情と活発な演奏でした、ただ、四楽章のクライマックスの盛り上がりがあまりにも控え目だったのが唯一残念な部分でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★
一楽章、祈りのようで感情が込められて美しい序奏主題。神聖な雰囲気の第一主題。動きも表情もある第二主題。分厚い響きはこの曲でも変わりません。充実した響きのコーダでした。

二楽章、もっと冷たい雰囲気があっても良いと思うのですが、響きは暖かいです。一体感のある木管のアンサンブルは素晴らしいです。

三楽章、あまり表情の無い第一主題。第二主題もあまり表情がありません。ただ、オケのフルパワーには圧倒されます。

四楽章、感情が込められた感じは無く、あまり大きくは歌わない主要主題。中間部は活発な表現です。咆哮するホルンや激しいティンパニ。分厚いオケの響きと倍管にした金管の圧倒的なパワーはさすがですが、シベリウスにしてはボッテリとし過ぎなのではないかと思います。

美しい演奏ではありましたが、あまり表現が無く、オケの豪華な響きに頼ったような演奏でした。分厚いオケの響きと倍管にした金管の圧倒的なパワーはさすがですが、シベリウスの音楽はもっと冷たく引き締まったものでは無いかと思います。

サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団

バルビローリ★★★
一楽章、とても涼やかな序奏主題ですが、録音の古さか繊細さはありません。第一主題も静けさの中にあります。第二主題も清らかで澄んだ雰囲気の演奏です。弦のアンサンブルには緩さも感じます。

二楽章、作品をいつくしむような暖かみが魅力的ですが、オケのたどたどしさは少しマイナス点です。

三楽章、マイルドで暖かい金管。シベリウス独特の冷たい厳しさは感じません。

四楽章、中間部は落ち着いたテンポで切迫感はありません。私には少し重く感じます。この暖かさはバルビローリの暖かさなのか、オケの緩さなのか私には分かりません。

暖かみのあるシベリウスでした。この暖かみを評価する人もいるようですが、私にはバルビローリの暖かさなのか、オケの緩さなのか分かりませんでした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

ウラディーミル・アシュケナージ指揮 フィルハーモニア管弦楽団

アシュケナージ★★★
一楽章、室内楽のように小さい音場の序奏主題。強い寒さを感じさせることはありません。第一主題も自然に表れます。第二主題も控えめで上品です。

二楽章、ピーンと張り詰めたような空気感は無く、暖かく緩い感じです。

三楽章、動きがあって表現意欲を感じさせる演奏です。金管は空間を突き破るように入って来ます。かなり激しい演奏でした。

四楽章、振幅も大きく、歌も積極的に歌います。しつこくうるさい感じの演奏です。

積極的に表現する演奏で、振幅も大きい演奏でした。こんな演奏もありかな?とは思いますが、でもこの作品にはあまり合っていないような感じがしました。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

トーマス・ダウスゴー指揮 フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

ダウスゴー★★★
一楽章、会場のノイズは多いですが、神聖な感じのある序奏です。第二主題から少し団子状になってモヤーッとします。録音によるものだと思いますが、騒々しくて、冷たい静寂感はありません。

二楽章、主要主題などはかなり聞かせる演奏でしたが、雑な感じで滑らかさがありません。

三楽章、とても活発に動いて躍動感があって、ダイナミックです。ただ、精緻な感じは無く、大雑把です。かなり激しくなって終わりました。

四楽章、中間部は強弱を明快に付けた独特の表現。ティンパニもかなり強めに入ります。この作品にしては珍しく荒々しい演奏です。強烈な金管!

荒々しい部分の激しさはこの曲の演奏としては珍しいものでしたが、これはこれで良かったのですが、弱音部分の精緻さが無く雑な感じになってしまったのが残念でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

ネーメ・ヤルヴィ指揮 エーテボリ交響楽団

ヤルヴィ★★
一楽章、涼やかな序奏主題。ゆったりと深みのある第一主題。快速で軽快な第二主題。パパヤルヴィの演奏はいちも固さと中央に小じんまりと集まる感じがあるのですが、この演奏でも同じように感じます。

二楽章、ピーンと張り詰めた静寂感も無く、やはり固く伸びやかさや広がりがありません。

三楽章、ベターッとしてあまりリズムが弾みません。

四楽章、中間部のティンパニの一撃もとても軽いです。

パパヤルヴィ独特の固さがあって伸びやかさの無い響きがどうしても好きになれません。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団

icon
一楽章、蒸し暑い夜を連想させるようなヴァイオリンの序奏主題。シベリウスの冷たい空気感とはかなり隔たりがあります。この全集に共通する大きな歌の第一主題。第二主題もとても表情豊かです。

二楽章、この楽章も積極的で振幅の大きな音楽です。木管は生き生きとして生命感とぬくもりがあります。

三楽章、とても激しく突進してくる音楽。いつものように予想以上の大きさで入ってくる金管。

四楽章、主要主題もとても良く歌います。ビェーと響き、容赦なく汚い金管。

よく歌う積極的な演奏でしたが、金管の容赦ない下品な響きはシベリウスとは相いれないものだと思います。また、響きの温度が高いのもシベリウスの作品には合っていません。

シベリウス:交響曲第6番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第7番

シベリウスの交響曲第7番は、彼が1924年に完成した最後の交響曲で、わずか1楽章のみで構成されている非常に独特な作品です。シベリウスは、従来の4楽章構成の交響曲形式から離れ、この曲を交響詩のように「シンフォニア・ファンタジア」と名付けようとしましたが、最終的には「交響曲第7番」として発表しました。この作品は、シベリウスの創造的な円熟期を象徴しており、短いながらも深遠で荘厳な雰囲気が漂っています。

曲の構成と特徴

この交響曲は、1楽章構成でありながら、まるで複数の楽章が1つに凝縮されたような独自の形式を持っています。音楽は変化に富み、様々なテンポや雰囲気が移り変わるため、シベリウスの交響曲の集大成ともいえる充実感があります。

  1. 冒頭 – Adagio
    静かに始まる序奏部分では、弦楽器の豊かな響きが広がり、瞑想的で神秘的な雰囲気が漂います。ゆったりとしたテンポで始まり、低音部の穏やかな流れに乗って、徐々に厚みを増していきます。この冒頭の音楽は、静寂と壮大さが同居するような特別な美しさがあります。
  2. トロンボーンの主題
    曲の中盤に現れるトロンボーンの荘厳な主題は、この交響曲の象徴的な部分であり、シベリウスが用いたユニークな特徴のひとつです。この主題が登場することで、音楽は一層の重厚感を増し、神秘的で荘厳な空気が漂います。トロンボーンの堂々とした響きが楽曲全体の軸となり、ある種の宗教的な感覚をも呼び起こします。
  3. 音楽の流れとテンポの変化
    この交響曲は、シームレスにテンポが変わり、AdagioからAllegro、そして再びAdagioへと展開されます。その流れの中で、まるで一つの生命体のように音楽が自然に発展し、緩急のバランスが取れた構造を形成しています。この形式は、シベリウスならではの自然への深い愛情やフィンランドの風景のような、ゆったりとした変化が感じられます。
  4. 終結 – 静けさへの収束
    終盤に向けて、音楽は静けさを取り戻し、穏やかに終わりを迎えます。トロンボーンの主題が再び現れ、神秘的な空気を残しながら音楽は次第に収束していきます。大きなフィナーレを迎えるのではなく、まるで霧の中へと消えていくような形で終結し、聴き手に深い余韻を残します。

音楽的な特徴と評価

交響曲第7番は、シベリウスの晩年の音楽的な探求の集大成ともいえる作品で、緻密な構造と表現力が融合した独自の世界観を持っています。この曲の静かな美しさや内面的な深み、そして抑制されたエネルギーが、シベリウスの個性を象徴しています。彼はこの交響曲を「自然のリズム」とも表現しており、まるでフィンランドの静かな湖や広大な森のように、聴く者に自然と一体になる感覚をもたらします。

シベリウスの第7交響曲は、他の交響曲に比べて実験的でありながらも、音楽史に残る重要な作品とされています。特にこの曲は、20世紀の交響曲の可能性を広げ、音楽表現の新しい地平を切り開いたとして高く評価されています。

4o

たいこ叩きのシベリウス交響曲第7番名盤試聴記

パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

ベルグルンド★★★★★
柔らかく豊かな響きで、抑制的ですが、たっぷりと感情が込められた歌。神のお告げのようなトロンボーン。ゆったりとスケールの大きな演奏は、後のヨーロッパ室内oとの演奏では聞けなかったものです。ほの暗い雰囲気は独特のものです。絶妙なバランスで荒ぶることもありません。どっしりと落ち着いていて、テンポが速い感じは全く受けません。終結部の神々しさは素晴らしいものです。

柔らかく豊かな響きと、ほの暗い雰囲気。絶妙なバランスで荒ぶることの無い演奏でした。神々しい表現は素晴らしいものでした。

このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★★
深いところから次第に迫りくる何かを感じさせる冒頭。続いて静かで厳かな演奏です。ゆったりとして伸びあがるようなフルートのメロディ。霧が立ち込める中から響いてくるような幻想的な音楽。力みも無く柔らかく美しいトロンボーン。スケルツォ的な部分での緻密なアンサンブル。見事な精度です。シベリウス独特の寒い空気感もはっきりと存在しています。表現も細かく付けられていて無表情になることはありません。終結部で再現されるトロンボーンは神々しい雰囲気でした。ホルンは神の声のようです。最後の分厚い響きが沈んでいくのも素晴らしいものでした。

上品で格調高く、表現力も十分でした。終結部で再現されるトロンボーンとそれに絡むトランペットなどの神々しい響きは素晴らしいものでした。

レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★★
粒のはっきりしたティンパニ。次第に迫り来るように少しクレッシェンドした上昇音階。荘厳な雰囲気の中で戯れるようなフルート。大きく歌うフルートと他の木管。分厚い響きです。トロンボーンの第一主題にはあまり神々しさは感じられませんでした。楽器の動きがとても活発です。ティンパニのクレッシェンドも金管のクレッシェンドも激しいです。三度目のトロンボーンも神々しさはありませんでしたが、その後はとても激しい表現になりました。最後も分厚く充実した響きでした。

分厚く充実した響きで、激しい表現の演奏でした。神々しさはありませんでしたが、積極的に動く演奏は魅力がありました。

コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
ドロッとしたティンパニ。音階の上昇に従ってクレッシェンドします。歌のあるフルート。とても厳粛な雰囲気で曲が進みます。まるで神を導き入れる儀式のようです。天から響くようなトロンボーンの主題が神の降臨のようで、とても神秘的です。個々の楽器の色彩がとてもはっきりしていて、激しく盛り上がる部分では目が眩むようでさえあります。中間で現れるトロンボーンは少し荒れた雲間から神の光が照らされるようでした。スケルツォ的な部分でも落ち着いた表現でした。トゥッティのエネルギー感はとても凄く強弱の振幅もとても幅広いです。再びの神の降臨のようなトロンボーンにはホルンやトランペットも従えて壮大です。そしてホルンによって残照のような響きで彩られます。

神々しいトロンボーン。色彩感豊かで激しく盛り上がる部分では目が眩むほどでした。作品そものもに語らせる演奏でしたが、これだけ見事に作品の素晴らしさを伝える演奏はそう無いと思います。

レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

バーンスタイン★★★★★
冒頭から、晩年のバーンスタインらしい非常に感情のこもった表現です。とても豊かな表現。雄弁なトロンボーン。シベリウスらしい演奏ではありませんが、振幅も大きく個性豊かな演奏にはそれなりの説得力があります。作品の持つ神々しさよりも人間臭い演奏なのですが、バーンスタインの作品への愛情を随所に感じることが出来る演奏で、この演奏はこれで良いと感じます。これだけ激しい振幅のある演奏だとマーラーのようにも聞えますが、バーンスタインの内面ではこのような音楽が鳴り響いているのでしょう。これだけ強烈な個性を表出するのは、とても勇気のいることですし、これまでの既成概念に捉われない演奏を堂々と行う強い意志もすばらしいと思います。

このリンクをクリックすると動画再生できます。

ダニエル・ハーディング指揮 マーラー・チェンバーオーケストラ

ハーディング★★★★★
暗闇から湧き上るような弦。雑味が無く純粋です。大きなうねりの中からトロンボーンが出現します。北欧の澄んだ空気感があります。振幅も激しい演奏です。透明感が高く、ハーディングの指揮に機敏に反応するオケの見事なアンサンブルも素晴らしい。ティンパニの劇的にクレッシェンドも凄い!

激しい振幅でしたが、透明感が高く見事なアンサンブルの素晴らしい演奏でした。
このリンクをクリックすると動画再生できます。

オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★★

暗闇から次第にはっきりとした形を現す弦。暖かく穏やかな木管。力みが無く穏やかな自然体で伸びやかです。とても安らかな気持ちになる演奏です。大空に鳴り響く神の声のようなトロンボーン。どこを取っても余裕のある美しい響きです。激しい部分は激しいですが、それでも音が硬くなったりせず、とても自然です。

これだけ自然体で美しい演奏は素晴らしいです。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

シベリウス:交響曲第7番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第7番-2

シベリウス:交響曲第7番ベスト盤アンケート

たいこ叩きのシベリウス交響曲第7番名盤試聴記

タニア・ミラー指揮 ヴィクトリア交響楽団

ミラー★★★★
大きな表現はありませんが、静寂感があって、シベリウスらしい寒さもあります。ゆったりと雄大なトロンボーンの主題。作品自体が分厚い響きを要求しないので、このオケでも良い演奏です。最後のトロンボーンも強すぎずとても良いバランスでした。
このリンクをクリックすると動画再生できます。

ロリン・マゼール指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

マゼール★★★★
大きいクレッシェンドで始まる弦の冒頭。とても大きい表現です。ゆったりと柔らかいトロンボーンの第一主題。かなり激しい振幅があり、熱い演奏です。シベリウスの冷たい空気感はありません。次から次から大きな波が押し寄せてくるような豊かな表現です。

シベリウスらしくない熱い演奏で表現も積極的でした。これははこれで良かったと思います。

このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

サー・サイモン・ラトル指揮 デンマーク王立管弦楽団

ラトル★★★★
湧き上るような弦。とても良い雰囲気で始まりました。全体の響きに溶け込んだトロンボーン。アンサンブルの精度の高く静寂感があります。終結部のトロンボーンは黄昏を感じさせる演奏でした。壮絶な最後でした。

オーケストラも上手く、雰囲気のある演奏で、終結部のトロンボーンもとても良かったです。
このリンクをクリックすると動画再生できます。

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

ムラヴィンスキー★★★★
かなり速いテンポで表現力豊かです。フルートなどは静寂感があります。てとも強い表現意欲のある演奏で大きなうねりがあります。朗々と歌うトロンボーンですが、他の演奏に比べてかなり強いので、神々しさはありません。とても現実的です。かなり激しく感情の起伏があります。トランペットもトロンボーンもホルンも一般的な演奏に比べるとかなり強く、違う作品を聞いているような感覚になります。速いテンポでグイグイ進みますが、ガリガリと強いエッジの効いた個性的な演奏です。独特の世界観を作り出すムラヴィンスキーもやはり偉大な巨匠だったんだなーと感じさせる演奏です。最後も強烈でした。

バーンスタインとま全く違いますが、ムラヴィンスキーの強烈な個性が表出されたスピード感がありながら、起伏の大きな演奏で、作品のイメージを根底から覆すような演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団

バルビローリ★★★★
表現力豊かで、暖かい演奏です。克明に語りかけて来ます。くっきりと浮かぶフルート。ムラヴィンスキーほどではありませんが、かなりはっきりと浮かび上がるトロンボーン。一つ一つの楽器を克明に浮かび上がらせて、鮮明な演奏です。また、激しい起伏もあります。普段聞く演奏よりもかなり激しいです。バルビローリの感情がとても良く表現された演奏です。

バルビローリの感情がとても良く表現された演奏で、起伏も激しい演奏でした。一つ一つの楽器もくっきりと浮かび上がる克明な演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★★★
ピンポイントで滑らかな木管。控えめで一抹の不安を感じさせる演奏です。遠くから響いて来る柔らかいトロンボーン。ゆったりとしていて、とても穏やかで荒々しい表現の無い演奏です。

穏やかで、荒々しい表現は無く、一抹の不安や寂しさを感じさせる演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★☆
一楽章、はっきりと克明な動きの冒頭。続いては動きが止まったように静かですが淡白で密度が薄いような感じがします。トロンボーンは他の楽器に埋もれるように遠くから響きます。スケルツォ的な部分では、活発に音は動きますがあまり大きく歌うことは無く、全体の骨格は静止しているようで、がっちりとした枠の中で音楽が作られているようです。オケが僅かですが遠く、俯瞰するような感じで、2番の時にも感じたスケールの小さい演奏のようにも感じます。終結部のトロンボーンも神々しい雰囲気は感じられませんでした。

大きな表現の無い演奏でした。がっちりとした枠組みの中で音楽が演奏されている感じで、オケを俯瞰するような少し遠い音場感で、訴えかけてくる感じがあまりありませんでした。

マーク・エルダー指揮 ハレ管弦楽団

エルダー★★★
アンサンブルは乱れます。くっきりと浮かび上がるトロンボーン。それでも抑制的な表現で、作品そのものに語らせるような演奏です。次第に感情がこもってきて熱気を帯びて集中力も高まってきます。このあたりはライブらしい良さですね。最後に表れるトロンボーンの主題にかぶるトランペットが物凄く強烈でした。

前半は抑制的な演奏でしたが、後半は熱気のこもった演奏でした。どんな演奏でも作品が凝縮されたものなので、悪くは感じません。
このリンクをクリックすると動画再生できます。

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団

icon★★★
一楽章、暗闇から湧き上がるような冒頭、とても表現意欲が旺盛です。木管の響きに雑味が混じっているような感じで透明感がありません。ビブラートをかけて明るいトロンボーンの主題。積極的で良く歌うのはこの全集で共通しているところです。生き生きとした表現でやりとりされる木管と弦。この曲では、他の曲ほどの爆演ではありせんがそれでもトランペットがかなり強く入って来たりします。花火が打ち上がるように眩いトランペットとトロンボーン。終結部で再現されるトロンボーンは少し下品でした。
表現意欲が旺盛で、積極的で良く歌う演奏でした。ただ、雑味があったり、表現意欲の旺盛さから下品な表現になったりしたのが、シベリウスの音楽とは異質なものを感じるのでした。

サー・エイドリアン・ボールト指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ボールト★★★
大きくクレッシェンドする弦。かなり積極的で起伏が大きく劇的な表現です。シベリウスの演奏にしてはかなり感情が込められた演奏です。こけだけ激しく積極的な演奏は初めてです。豊かな表情の木管。現実的で神の降臨のようなイメージではないトロンボーンでした。エルダーの演奏のような後からかぶるトランペットが強烈ではありませんでした。

とても積極的な表現で、神を感じさせるよりもとても人間的な演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

クリストバル・アルフテル指揮 北ドイツ放送交響楽団

アルフテル★★☆
エッジの立った低弦。太い響きのフルート。凄く元気の良いトロンボーン。演奏自体は丁寧なのですが、どこかトゲがあるような感じがします。オケはかなり余裕のある演奏をしています。筋肉隆々の神のようなトロンボーンです。バランスも良い演奏ですが、冷たい空気感は無く暖かい演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

 

シベリウス:交響曲第7番の名盤を試聴したレビュー