カテゴリー: シベリウス

シベリウス 交響曲第1番

シベリウスの交響曲第1番は、フィンランドの自然や北欧の厳しさ、そして深い情緒が込められた作品で、彼の作曲家としてのスタイルが確立された重要な曲です。この交響曲には、彼が持つ独特の旋律美とドラマチックな展開が織り交ぜられており、フィンランドの民族的アイデンティティが色濃く表現されています。

1. 第1楽章:Andante, ma non troppo – Allegro energico

静かなクラリネットのソロで始まる序奏が印象的です。冷たい風が吹き抜けるような孤独感が漂い、北欧の厳しい自然を思わせます。やがて、力強い主部に入ると、悲劇的で感情豊かなテーマが現れ、全体にわたってエネルギッシュな展開が続きます。ここにはシベリウスのロマンティックな一面と、ドラマティックな表現が交錯し、初めての交響曲ながらも強い個性が光ります。

2. 第2楽章:Andante (ma non troppo lento)

この楽章はゆったりとしたテンポで、フィンランドの美しい自然や静かな湖畔の風景を連想させるような叙情的なメロディが特徴です。どこか悲しげで深い情感が漂い、柔らかな響きの中に温かさと寂しさが入り混じっています。この楽章は特にシベリウス特有の自然描写が感じられ、内面的で心に染み入るような美しさが魅力です。

3. 第3楽章:Scherzo. Allegro

力強いリズムとエネルギッシュなテーマが特徴のスケルツォ楽章です。荒々しい北の自然を描写するかのような、スリリングで活気に満ちた音楽が展開します。シベリウスらしい鋭いリズムや切れ味の良いメロディが、北欧らしい厳しさや自然の力強さを表現しており、この楽章には彼の躍動感とリズムの巧みさが感じられます。

4. 第4楽章:Finale (Quasi una fantasia). Andante – Allegro molto

最終楽章は、序奏での悲しげなテーマが再び現れ、フィンランドへの郷愁や、シベリウスの内なる葛藤が表現されています。やがて激しくドラマチックな展開に入り、楽曲全体が感情的なクライマックスへと進んでいきます。シベリウスが抱く民族的な誇りや決意が表れ、最後には静かに音が消えていくように終わる印象的な締めくくりです。

全体の印象

シベリウスの交響曲第1番は、フィンランドの厳しい自然や民族的な精神が込められ、若々しい情熱と叙情性があふれた作品です。ロマンティックな要素とシベリウス独自の音楽語法がうまく融合しており、彼が後に確立していく北欧独特の音楽スタイルの出発点ともいえる作品です。

4o

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第1番名盤試聴記

パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、空間に広がる不穏な雰囲気。活動的な第一主題。しっとりとした第二主題。空気を切り裂くような金管。すごく細くで美しいヴァイオリン。

二楽章、漂うように幻想的な第一主題。金管の音には伸びがあって、色彩感もとても豊かで美しいです。編成が小さいことはほとんど感じない演奏です。

三楽章、活発で躍動的な主題。鮮明な色彩感。トリオでは締りのあるホルンと伸びやかなフルートが印象的です。目の前に迫ってくる弦の刻み。

四楽章、作品への共感が伝わる、感情が込められた序奏はとてもよく歌います。主部のテンポは速いです。室内オケが無理をしている感じは全くありません。トゥッティでは音が迫って来るほどです。

作品への共感を基にした表現。色彩感溢れる美しい響き。聞いていて惚れぼれするような演奏でした。

コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、美しく空間に広がるクラリネット。控え目で美しい弦の第一主題。贅肉を削ぎ落としたような透明感があるけれどいぶし銀のように渋い金管。集中力が高く一体化したオケの動きが見事です。

二楽章、静寂の中に静かに穏やかに演奏される第一主題。第二主題も静寂感があり、冷たい空気感もあります。広大な平原を連想させる中間部のホルン。主部が戻る前の金管の動きもとてもまとまったキッチリとしたアンサンブルで非常に上手いです。

三楽章、小さく弾む木管。色んな動きがあるけれど、とてもバランスが良く一体になったオケの響きの充実ぶりは素晴らしい。

四楽章、悲しみをこらえるような序奏から、夢見心地のフルート。伸びやかで美しい第二主題。第一主題でもそうでしたが、木管のアンサンブルのバランスが絶妙です。原色のような派手な色彩感では無く、渋いくすんだ色彩ですが、一体感のある充実した響きです。また、絶叫することも無く、とても上品な表現で切々と訴えかけてきます。

充実した渋い響きに一体感があって、非常にバランスの良い演奏でした。その上上品な表現で切々と訴えてくる演奏は感動的でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★★
一楽章、暗闇に浮かびあがるような孤独感のあるクラリネットの序奏主題。広大で豊かな第一主題。金管のエネルギーやティンパニのパワーも凄いです。ピンポイントのヴァイオリンのソロ。強弱の振幅は物凄く幅広いです。美しく豪華絢爛な響きで、シベリウス独特の空気感はあまり感じません。コーダの物凄いエネルギー感にも圧倒されました。

二楽章、穏やかですが、暖かい第一主題。第二主題も寒さはあまり感じません。オケは完璧でとても美しいです。中間部後半の荒々しい盛り上がりから一転して、第一主題が戻るととても穏やかになります。

三楽章、活発な運動量の演奏です。この録音ではティンパニのバランスが少し強いように感じます。

四楽章、僅かに寒さを感じさせる序奏主題。スピート感のある第一主題。第二主題も表現は控えめで自然に流れて行きます。再現部の第二主題の弦楽合奏は厚みがあってとても豊かでした。コーダも豪華絢爛でした。

シベリウス的なものを期待すると完全に裏切られますが、美しく豪華絢爛な響きにはこの作品にこんな表現もあったのかと納得させられました。見事な演奏でした。

コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、弱いティンパニに乗ってくっきりと浮かぶクラリネットが訴えてきます。最後は消え入るような小さい音にな暗闇にポツンと浮かぶロウソクの炎のようでした。弱音で始まって次第に大きくなる第一主題。雄大な金管の第一主題。鮮明な色彩と整ったアンサンブル。すがすがしい響きのヴァイオリン。シベリウスらしい清廉な響き。トゥッティでも見通しの良い演奏で、端正で整った演奏です。

二楽章、とても静かに演奏される第一主題。羽毛で撫でられるような安らかさです。第二主題から活発な動きになり、トランペットやホルンが気持ちよく鳴り響きます。生き生きとした木管、目の覚めるような金管とシルキーな弦が絡んでとても良い演奏を繰り広げています。

三楽章、歯切れの良い弦の主題。屈託無く鳴り響くホルン。木管のキリッと引き締まった抜群のアンサンブル。壮絶な響きで終りました。

四楽章、第一主題の後はスピード感のある演奏でした。穏やかな第二主題。チャーミングな木管の弱音と豪快に鳴る金管のエネルギー感が凄いです。充実した響きで終りました。

消え入るような弱音から豪快なトゥッティまでダイナミックな演奏でした。ただ、感情表現はせずに、作品に忠実な演奏で端正で美しい演奏から作品の良さがにじみ出てくるようで充実した演奏でした。

レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

バーンスタイン★★★★★
一楽章、静寂感の中にクラリネットの序奏主題が響きます。ゆったりと伸びやかな第一主題。トゥッティはかなり強いですが、他の演奏に比べると大人しい方です。ねっとりと感情を込めた演奏で、晩年のバーンスタインの演奏スタイルです。二度目の第一主題のトゥッティはかなり強烈な咆哮でした。

二楽章、この世のものとは思えないような美しさの第一主題。ゆっくりとしていますが、フワフワと漂うような幻想的な表現です。第二主題は一つ一つ確実に踏みしめるような表現です。中間部では潤いがあって泉から湧き出すような木管。シベリウスらしい冷たい空気感はあまりありませんが、濃厚で美しい演奏はとても良いです。

三楽章、パチーンと強いインパクトのティンパニ。油絵のような濃厚な色彩で、表情豊かに動き回る木管。金管も切れ味鋭く生き生きとしています。

四楽章、第一主題も生き生きとした表現でテンポも自在に動きます。抑えた表現ですが、感動的な第二主題。極端にテンポを落とす部分もあります。

晩年のバーンスタインらしい濃厚な表現でしたが、作品の原型は維持していて、大きな違和感はありませんでした。濃厚で生き生きとした美しい演奏は素晴らしいものでした。
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パーヴォ・ヤルヴィ指揮 パリ管弦楽団

ヤルヴィ★★★★★
一楽章、陰影をたたえて豊かに歌う序奏主題。深みのある表現の第一主題。金管は絶叫しませんが、ティンパニがとても大きくクレッシェンドします。ハープに乗ったフルートの副主題もとても豊かな表情です。生命感のある生き生きとした表現はヤルヴィらしくとても良いです。大きく波打つような起伏のある演奏もとても良いです。コーダでテンポを速めたり、ティンパニの激しいクレッシェンドも凄かったです。

二楽章、一楽章とは打って変わってとても穏やかでゆったりとした第一主題。テンポの動きもありますが、何より表情の豊かさには惹きつけられます。とても瑞々しく美しい演奏です。

三楽章、荒れることは無く、美しさと躍動感を併せ持った演奏です。パリoがこれだけの一体感を聞かせるのは珍しいのでは無いかと思います。とてもまとまりのある充実した演奏です。

四楽章、深みのある序奏。第一主題が出て打楽器が入るまでの部分はかなりテンポを速めて演奏しました。速いテンポで駆け抜ける部分と、ゆったりとたっぷり感情を込めて歌う部分の対比もなかなかです。最後は刻み込むような弦と目の覚めるような強烈なティンパニのロールで終わりました。

とても豊かな表現で、どこを取っても歌があるような演奏でした。テンポの動きによる多彩な表現や、強烈なティンパニなど聞き所も多い演奏で最後まで惹きつけられる演奏でした。
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オッコ・カム指揮 ヘルシンキ放送交響楽団

カム★★★★★
一楽章、暗闇から浮かび上がるようなクラリネットですが、あまり密度は高くありません。伸びやかで美しい第一主題。突き刺さるようなトランペット。とても振幅が大きく激しい演奏です。オケが良く鳴っていて壮麗な響きです。

二楽章、レースのカーテン越しに聞くようなマイルドでとても穏やかな第一主題。ほの暗い第二主題。少し寒さを感じます。水彩画のような爽やかな色彩感の美しい演奏で、明快な金管の明るい響きと、弦や木管の僅かに暗い表現の対比が見事に描かれています。

三楽章、柔らかいティンパニ。伸びやかで透明感の高い美しい響きはとても魅力的です。

四楽章、感情を込めて歌う感じはありませんが、繊細で美しい弦がとても印象に残ります。敏感な反応の第一主題。大きなクライマックスではありませんでしたが、美しくとても良く鳴り響く演奏でした。

伸びやかで壮麗な響きのとても美しい演奏でした。大きな感情表現はありませんでしたが、水彩画のような爽やかな色彩の演奏はとても魅力的でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第1番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第1番2

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第1番名盤試聴記

レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、静寂の中に深みのあるクラリネットの序奏主題。ゆったりとしたテンポの第一主題。雄大なトゥッティ。金管に第一主題が移るところはかなり荒々しい表現です。ティンパニの強打はかなり強烈です。シベリウスの音楽にしては熱い演奏です。金管の咆哮やティンパニの強打など、今まで聞いてきたシベリウスのイメージとは違う演奏です。

二楽章、フワッとした柔らかい第一主題。ロマンティックな雰囲気に満ちています。第二主題は静寂感がありますが、やはり温度感は高いです。中間部で動き回るチャーミングな木管。巨大なチューバの響き。かなり激しい金管。弱音部分の美しい歌もなかなか聴かせてくれます。

三楽章、活発に激しく動きます。トロンボーンもティンパニも激しい演奏です。北欧の春を感じさせる中間部。これまでのシベリウスのイメージを変えさせるような演奏です。

四楽章、感情のこもった序奏主題。木管もとてもよく歌います。積極的な表現の第一主題。憂いを感じさせる第二主題。強弱の振幅がすごく大きく、強奏部分の激しさはまるでマーラーを聴くような感覚です。第二主題の再現はとても美しいものでした。

これまでシベリウスは静寂感と冷たい感じをイメージしていましたが、この演奏はそんなイメージを覆すような演奏でしたが、この激しさもシベリウスの一面なんだと思い知らされました。

オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★☆
一楽章、ウェットで陰のある序奏主題。第一主題は遠くから響く感じでとても雰囲気があります。第一主題のトゥッティはテンポを速めて激しく演奏します。全体に速めのテンポでぐいぐいと前へ進みます。

二楽章、深い霧の中から響いて来るような、ゆったりとしていてとても静かで穏やかな第一主題。潤いがあって美しいトリオのホルン。この潤い感はオケ全体にあって、とても美しい演奏です。

三楽章、再び速めのテンポで躍動感に満ちた演奏になります。強い表現はありませんが、作品の良さがにじみ出るような演奏です。最後は激しいティンパニと共にテンポをさらに速めて終わりました。

四楽章、しみじみと歌う第二主題。オケが全く混濁せずに美しい響きを聞かせます。シベリウスらしい自然の美しさを感じさせる演奏です。ただ、響きは暖かいので、北欧の冷たさは感じません。

大きな表現はありませんでしたが、にじみ出るような作品の美しさが印象的でした。自然を感じさせる演奏ではありましたが、冷たい空気感はありませんでした。
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ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★★★☆
一楽章、くっきりと浮かび上がりますが、少し乾いた響きの序奏主題。感情のこもった第一主題ですが、録音の古さか木目が粗いです。絶叫せずにコンパクトにまとまった第一主題のトゥッティ。オーマンディらしくon、offのはっきりとした明快な演奏です。

二楽章、間があったりして感情が込められていますが、淡々とあっさりと感じる第一主題。第二主題もあっさりと流れて行きます。無駄なものを取り去ったようにシンプルに聞えます。主部が戻るとたっぷりと歌う、哀愁に満ちた第一主題になります。

三楽章、生き生きとした躍動感のある積極的な演奏ですが、木目の粗い弦が気になります。この当時のCBSの録音の特徴だった乾いた響きも感じます。

四楽章、深く感情が込められた序奏。鋭く切り込む第一主題。たっぷりと歌われる第二主題。オーマンディの作品への共感が良く表れた演奏です。豊かに歌う演奏はとても感動的です。

オーマンディの作品に対する共感がとても良く表れた演奏で、感動的な表現も多くなかなか良い演奏でした。ただ、当時のCBSの録音の乾いたザラザラとした響きは少し残念でした。
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ウラディーミル・アシュケナージ指揮 フィルハーモニア管弦楽団

アシュケナージ★★★★
一楽章、細身で濃いクラリネットの序奏主題。とても静寂感があります。鋭く濃厚な色彩の第一主題。トゥッティは全開にはならず余裕があります。シベリウス独特の冷たい空気感はありませんが、涼しげで爽やかな響きです。

二楽章、穏やかで美しい第一主題。清涼感があって、キチッと整ったアンサアブルですが、強い個性は感じません。

三楽章、強烈なティンパニと躍動感のある弦と木管。トリオのホルンも控えめで締まった響きで美しいです。

四楽章、歯切れの良い第一主題。速めのテンポでどんどん進みます。第二主題は広々とした雰囲気は無くむしろ狭い空間を感じさせます。フィルハーモニアoにしては濃厚な色彩です。強い個性が無く清涼感のある爽やかな響きがとても印象的です。

強い個性は無く、極めて自然体の演奏でした。清涼感のある美しい響きが印象的でしたが、シベリウスらしい冷たい空気管は感じられませんでした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団

icon★★★
一楽章、長く尾を引くティンパニの上にくっきりと浮かぶクラリネット。感情のこもった第一主題。続くホルンは少し歪みぎみでした。金管が演奏する第一主題は期待通りの粘着質の熱い咆哮でした。トランペットに続くホルンは異様な響きです。北欧の厳しい寒さを感じる演奏とはほど遠く温度感はかなり高いです。トゥッティでは音が交錯して見通しが悪くなります。かなり荒々しい演奏です。

二楽章、深みはありませんが、穏やかで美しい第一主題。中間部のホルンは独特の響きです。力のこもった演奏なのですが、木目が粗く少し乱暴な感じがします。容赦なく吹く金管。

三楽章、積極的な表現の主題。ここでも容赦なく吹きまくる金管が下品です。トリオのホルンは細い音でビブラートを掛けています。

四楽章、朗々と演奏される序奏主題。第一主題も温度感は高く、寒さは感じません。第二主題も朗々と歌います。第二主題の再現では絶叫するようなトランペット。

正に爆演と言うにふさわしい、強烈な演奏でした。シベリウスの寒さを感じさせる演奏ではなく、むしろ暑苦しいほどのとにかく強烈な演奏でしたが、かなり雑に感じました。

イーゴリ・マルケヴィチ指揮 イタリア放送トリノ交響楽団

マルケヴィチ★★
一楽章、乾いた響きであまり陰影のない序奏主題。一転して伸びやかで柔らかい第一主題。軽く演奏される第一主題のトゥッティ。音楽が熱気を帯びることは無くとても冷静に進みます。

二楽章、静かで優しい第一主題。中間部のホルンもとても穏やかで安らぎを感じさせます。強い感情移入はありませんが、淡々と美しい演奏が続きます。第一主題が戻る前に大きくテンポを落としました。

三楽章、マットで詰まった感じのティンパニ。自然な歌のホルン。畳み掛けて終わりました。

四楽章、活発に動く第一主題。全く誇張の無い第二主題。展開部に入ってもホルンはそれなりに激しいですが、トランペットは控えめです。大きなクライマックスを築き上げることなくちょっと肩透かしで終わりました。

全体に控えめで大きな振幅が無く、あっけなく終わりました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第1番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第2番

シベリウスの交響曲第2番は、フィンランドの民族性と自然の美しさ、さらには独立への情熱が象徴的に表現された作品です。彼の最も人気のある作品の一つで、特にフィンランドでは「独立の象徴」として愛されています。以下、この交響曲の特徴を紹介します。

1. 楽章構成と内容

この交響曲は全4楽章で構成され、それぞれが異なる特徴と情緒を持っています。

  • 第1楽章 (Allegretto): 軽快で希望に満ちた雰囲気から始まり、フィンランドの自然の風景を感じさせるような明るい音色が続きます。弦楽器がメインのテーマを奏でる中、少しずつ緊張感が加わっていきます。
  • 第2楽章 (Tempo Andante, ma rubato): この楽章は暗く、不安や苦悩を表すような重々しい雰囲気を持っています。低音の弦楽器による動機が響き、人生の苦しみや葛藤を表現しているとも言われます。
  • 第3楽章 (Vivacissimo): 力強く、緊迫感のあるスケルツォです。冒頭から激しいリズムとテンポが続きますが、途中で柔らかく美しい旋律(トリオ部分)が現れます。これは次の楽章に続く重要な橋渡しの役割も担っています。
  • 第4楽章 (Finale: Allegro moderato): この楽章は高揚感と解放感に満ちており、フィンランドの自然や民族の力強さ、そして自由への憧れを象徴していると解釈されることが多いです。壮大なメロディが響き渡り、フィナーレに向けて熱を帯びていく様子が感動的です。

2. フィンランドの「国民的シンフォニー」

シベリウスは、フィンランドがロシア帝国の支配下にあった時代にこの交響曲を作曲しました。そのため、この作品はフィンランド人にとって「独立と自由の象徴」としての意味を持つようになりました。特に第4楽章は、聴衆に希望と誇りを与えるような力強さが感じられます。

3. 自然と民族的なアイデンティティ

シベリウスの音楽にはフィンランドの自然や季節の移り変わりが反映されており、交響曲第2番も例外ではありません。彼は音楽で自然の静寂や荒々しさ、そしてそこに生きる人々の強さを表現しており、リスナーがフィンランドの景色や精神性を想像できるように作られています。

4. 音楽的な特徴

シベリウスの音楽は、細かい動機の繰り返しと発展を特徴としています。交響曲第2番では、シンプルなフレーズや動機が楽章を通して変化しながら使われ、最終的に大きなクライマックスへと向かいます。特に弦楽器の豊かな響きとホルンやトランペットの力強さが印象的です。

5. まとめ

シベリウスの交響曲第2番は、フィンランドの美しい自然、民族の精神、そして独立への熱望が込められた作品です。その雄大で感動的なフィナーレは、シベリウスの音楽が持つ象徴性と詩情を見事に表現しており、フィンランドのシンボルとして今も愛され続けています。

4o

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第2番名盤試聴記

サー・コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、豊かな残響に包まれて、自然体の演奏です。旧録音のボストンsoとの録音と同じく、大きな表現などは無く、楽譜に書かれていることを誇張せずに自然に演奏していますが、僅かにテンポが遅くなって、少し表現を踏み込んでいる感じがします。オケを良くコントロールしていて、端正な演奏です。木管が浮き上がって、生き生きとしています。

二楽章、静寂の中に拡散していく、低弦のピィツィカート。静かで北欧の雰囲気を感じさせるファゴットの第一主題。第二主題の前に金管がコラール風の演奏をする部分の最後あたり、ホルンの強奏の部分でティンパニが大きくクレッシェンドしました。これはボストンsoの録音では無かった表現です。静かで幻想的なヴァイオリンの第二主題に絡む木管も有機的です。大きな火山の噴火口から噴煙を上げるようなチューバ。ボストンsoとの録音で感じた若干スケールが小さいようなことも、この演奏ではありません。

三楽章、繊細ですが、動きのある弦です。トリオの前で十分な間を空けました。上品に歌うトリオのオーボエがとてものどかです。主部が戻るところでチューバが炸裂します。

四楽章、ゆったりと深みのある弦のモチーフ。朗々と鳴り響くホルン。大きな表現はありませんが、自然体のどっしりと落ち着いた演奏に貫録すら感じます。とてもゆったりと懐の深い展開部の第一主題。第一主題の再現部のトランペットは輝かしい響きでした。第二主題の再現のクライマックスでは金管がかなりのパワーです。コーダでは圧倒的な金管が感動的です。素晴らしい演奏でした。

端正で、大きな表現はありませんでしたが、自然体の演奏に深みがあって、とても美しい響きでした。大きな表現は無いものの、内に込めたような表現は上品で、この作品を格調高いものにしています。また、コーダの圧倒的な金管のパワーも感動的で素晴らしい演奏でした。
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パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、速めのテンポでとても良く歌う第一主題。木管は躍動的で、ホルンもとても良く歌います。オケの編成が小さい利点を生かし意敏感な反応で、強弱の変化も明確です。展開部に入っても速めのテンポで躍動感があります。訴えかけてくるような深い表現。

二楽章、速いテンポで演奏されるピツィカート。北欧の広大な雪原を連想させるようなファゴットの第一主題。奥ゆかしく穏やかな第二主題。室内管弦楽団の演奏ですが、編成の小ささは感じさせません。厚みのある響きです。とても動きがあって活発な音楽です。輝かしいトランペット。コーダのトランペットの悲痛な響きも印象的でした。

三楽章、主部冒頭の力強い弦。強弱の変化にも敏感に反応するオケ。滑らかに豊かに歌うトリオのオーボエはテンポも微妙に動いて、とてものどかです。四楽章へ向けて緊張感が高まって行きます。

四楽章、おおらかな弦のモチーフ。高らかに鳴り響く鋭いトランペット。速めのテンポで生き生きとした第二主題がぐいぐいと進みます。展開部は柔らかく優しい表現です。再現部では金管がかなり強く吹きます。歌に溢れていてとても豊かな表情の音楽です。豊かに朗々と響くクライマックス。力で押すようなことは無く、美しい響きで曲を閉じました。

速めのテンポで、歌に溢れ、躍動感に満ちた音楽でした。室内オケですが、ダイナミックの変化も大きく力強い演奏でした。

レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、ゆったりとしてたっぷりと歌う第一主題。ホルンもアゴーギクを効かせて豊かに歌います。包み込むような柔らかい響きで、すごく感情の込められた演奏です。晩年のマーラーの録音を聴くような自由なテンポの動きと歌です。奥まったところで響くトランペット。

二楽章、すごく遅いピィツイカート。感情のこもったファゴットの第一主題。非常に遅いテンポで濃厚な表現はまさに晩年のバーンスタインの演奏スタイルです。もう、シベリウスの作品と言うよりも、バーンスタインの音楽です。ただ、これだけ自分の音楽として昇華できるだけの能力は凄いと思います。

三楽章、この楽章はそんなに遅くはありません。豪快に鳴らされるティンパニ。後方から突き抜けるトランペット。トリオに入る前に長い間がありました。アゴーギクを効かせて自由に歌うオーボエ。非常にゆったりとしたトリオです。トリオの再現でも非常に人間的で、バーンスタインの感情の赴くままにテンポも動き深く歌われます。

四楽章、うねるような第一主題。展開部の前のピィツイカートもも非常に遅いです。続く展開部もすごく遅いです。この遅いテンポで一音一音に意味を込めるような非常に重い演奏です。スケールの大きな再現部。朗々と歌う弦。オケが一体になって凄いエネルギーが押し寄せて来ます。コーダのトランペットの壮絶な咆哮!

バーンスタインの強烈な個性が表出された物凄い演奏でした。好き嫌いは分かれると思いますが、私はこのような濃厚な表現の演奏は大好きです。
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オッコ・カム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、とても良く歌う第一主題。きりっと立ったオーボエ。ホルンも豊かに歌います。密度は濃くないですが、美しい弦。第二主題も生き生きとしています。深みがあって重厚な演奏です。

二楽章、静寂の中に響く低弦のピィツィカート。哀愁を感じさせるファゴットの第一主題。トゥッティでも絶叫することなく、落ち着いた大人の演奏です。祈るような第二主題が心を打ちます。トゥッティでも深い響きが印象的です。深々と、しみじみと聞かせる音楽は素晴らしいです。ライヴ録音であるとこを感じさせない精度の高い演奏です。

三楽章、流れるような冒頭の弦。感情を込めて歌うトリオのオーボエ。緊張感のある主部。

四楽章、柔らかい第一主題の弦。展開部の前は少しテンポが速くなりましたが、展開部はゆったりとした落ち着いた表現です。くっきりと浮かび上がる木管。テンポの動きも絶妙で、感動的です。輝かしいコーダ。

本場物と言う事もあって、奇抜な表現などは全く無く、正面から対峙した演奏でした。内側からしみ出すような感情表現が感動的でした。
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レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、柔らかくふくよかな響きで歌う冒頭の第一主題。呼応するホルンも歌います。柔らかい弦がとても心地良いです。提示部の最後はかなりゆっくりになって終わりました。展開部に入っても積極的な表現です。展開部の最後もゆったりとしたテンポで柔らかいクライマックスでした。

二楽章、ゆったりとしたテンポのコントラバス、チェロのピツィカート。郷愁に満ちて、北欧の寒さを感じさせるファゴットの第一主題。一旦テンポが速まりますが金管のコラール風のメロディではまたゆっくりとしたテンポになります。大切なものを扱うように丁寧で穏やかな第二主題。トランペットとフルートで再現される第一主題も寒い雪原をイメージさせるものです。1番のような荒々しい演奏ではありません。とても抑制されています。第二主題の再現以降も良く歌います。ピラミッド型で分厚く響くトゥッティ。弦も中低音の厚みがあって暖かく柔らかい響きです。

三楽章、分厚いコントラバス。ゆったりとしみじみとアゴーギクを効かせて歌うトリオのオーボエがとても美しい。ホルンの強奏もありますが、少しくすんだ響きで、鮮明な色彩感ではありません。

四楽章、非常に柔らかい第一主題。第二主題の前の低弦の動きも抑揚があってとても積極的な表現です。第二主題も何とも言えない哀愁を感じさせるものです。ゆったりとしたフルート。続く同じ旋律もゆったりと安らかな雰囲気です。再現部の第二主題は感情を込めた迫ってくるような表現でした。コーダは湧き上がるようなエネルギーを次第に全開にする感動的なものでした。

テンポを落としてたっぷりと歌う部分がとても美しい演奏でした。また、分厚いコントラバスに支えられた柔らかい響きもとても魅力的でした。そして、湧き上がるエネルギーを次第に全開にする感動的なコーダも圧巻でした。

サー・コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、厚みのある響きで、奥ゆかしく美しい演奏です。とても静寂感があります。音が生で突出して来ることは無く、とても品の良い演奏ですが、その分ダイナミックさは削がれているかも知れません。特別強調するような表現は無く、自然体で、作品のありのままを表現しているようです。何も強調しない演奏から、作品の良さがにじみ出るような感じです。

二楽章、哀愁に満ちて非常に美しいファゴットの第一主題。オフ気味に録られた録音は水彩画のような淡い色彩感です。穏やかで安らぎを感じさせる第二主題。トランペットとフルートによる第一主題の再現は北欧の白夜を連想させるような、物寂しさを感じさせます。この楽章でも際立った表現はありませんが、オケにはピーンと張った緊張感があり、とても精度の高い演奏をしています。

三楽章、軽い主部の導入。ゆったりと歌うトリオ。マットな音色で、淡い色彩はここでも同じです。オケを荒々しく演奏させるようなことは全くなく、非常に丁寧で端正な演奏です。

四楽章、ゆったりと流れる川のような弦のモチーフ。あまりにもまとまりが良いので、若干スケールが小さいようにも感じてしまいます。深く染み入るような展開部冒頭。ボストンsoがドイツのオケのような渋い音色で上品な演奏をしています。コーダは輝かしく力強い金管が美しい演奏でしたが、絶叫することは無く、大人の演奏でした。

大きな表現は無く、落ち着いた端正な演奏でした。若干スケールが小さい感じもありましたが、楽譜に忠実な整った演奏は魅力的でした。

ネーメ・ヤルヴィ指揮 エーテボリ交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、1983年の録音です。速いテンポの第一主題。良く歌うホルン。第二主題も速いテンポで躍動感と生命感があります。色彩のコントラストも明確で、エッジのくっきりとした演奏です。

二楽章、静かな中に抑揚のある低弦のピィツイカート。ゆったりとしたテンポも物寂しげなファゴットの第一主題。にじみ出るような哀愁。意外と明瞭に提示される第二主題。テンポも緩急の変化が大きく、かなり起伏の激しい演奏です。

三楽章、テンポはそんなに速くは無いのですが、スピード感はあります。トリオに入る前にかなり長い間を取りました。トリオに入っても大きくテンポを落とすことはありません。感情を込めた演奏では無いようですが、オケを明快に鳴らして、作品の力強さを表現しようとしているようです。

四楽章、湧き上がるように力強い第一主題。展開部に入っても湧き上がるような第一主題の表現は同じです。第一主題の再現部は速いテンポになりました。とても活発で生き生きとしています。もともとシベリウスは色彩感豊かな作曲家ではありませんが、この演奏は個々の楽器が明快に鳴らされるので、色彩感はとても豊かです。コーダの金管は最初レガートに演奏して次第に盛り上がるにつれてレガートしなくなりました。

基本的には速めのテンポで力強く活力に溢れた演奏でした。個々の楽器も明快に鳴らして色彩感も豊かな演奏は魅力的でした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団

icon★★★★☆

一楽章、豊かな響きでゆったりと歌いとても積極的です。爆演を連想させるにぎやかで色彩感豊かな演奏です。突然ビャーッと突き出てくる金管。ソ連のオケらしくホルンがビブラートをかけます。積極的で雄弁な金管が気持よく響き渡ります。

二楽章、ピーンと締まった寒さを感じさせるファゴットの第一主題。ゆったりとしたテンポですが、常にオケのいろんなパートが鳴っていてとても分厚い響きです。金管はかなりねちっこく強烈です。

三楽章、一音一音明確に演奏される弦。トリオでたっぷと歌う木管。合間に入る金管はやはり強烈で一瞬にして空気を変えてしまいます。

四楽章、豊かな響きの第一主題にやはり強烈なトランペットが登場します。第二主題は暖かく柔らかいですが、ここでも金管が空気を突き破って登場します。楽器の出入りがとても良く分かりこの作品のオーケストレーションの巧みさも分かります。シベリウス独特の低音の動きもしっかりと届いてきます。コーダもトランペットがここぞとばかりに吹きますが、はっきりとブレスで音が途切れるのが残念でした。

分厚い響きに強烈な金管。豊かに歌う木管。なかなか聞かせどころの多い演奏でした。これまで思っていたシベリウスの細身のイメージを覆すような恰幅の良い演奏でした。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第2番2

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第2番名盤試聴記

マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★★
一楽章、包み込むような柔らかい響きです。とても良く歌います。第二主題に向けてテンポを煽り緊張感を高めます。テンポが良く動きますが、速い部分はかなりスピード感があります。金管が奥まっていてあまり大きなクライマックスにはなりません。

二楽章、ゆっくりとした足取りの低弦のピィツィカート。控え目に始まって次第に大きくなるファゴットの第一主題。トランペットが特に奥まっていて抜けてきません。非常に柔らかい第二主題。テンポはとてもよく動きます。

三楽章、さらりと歌うトリオ。主部が戻って深みのある低弦。ホルンはしっかりと出てくるのですが、トランペットは奥まっています。

四楽章、ホルンはかなり強く吼えますが、弦のモチーフは穏やかでのどかな雰囲気のある第一主題。深く歌う第二主題。再現部に入る前はかなり加速減速しました。第二主題の再現の低弦のうごめくような音型に入る部分はなだれ込むような感じでした。切々と歌われる第二主題の再現。コーダのトランペットはやはり遠過ぎます。

いろんなことをした演奏で、聴き所も多いものでした。ただトランペットが奥まった録音はとても残念でした。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 フランス国立放送管弦楽団 1956年ライヴ

ホーレンシュタイン★★★★
一楽章、遠くから近づいてくるような第一主題。フランスのオケらしくホルンがビブラートをかけています。劇的で振幅の大きな音楽です。激しい表現でぐいぐいと進みます。

二楽章、ゆったりとした低弦のピィツィカート。一歩一歩確かめるような確実な足取りです。柔らかいファゴットの第一主題。とても彫が深い濃厚な音楽です。動きがあって生き生きとした第二主題。第一主題の再現でもトランペットが濃厚です。ただ事では無いような深いところから音楽が湧き出してきて、かなり感情をぶつけてくるような演奏です。

三楽章、テンポはそんなに速くはありませんが、スピード感があります。とにかく激しいです。ギョッとするような生々しさ。トリオは速めのテンポですが、表現の振幅は非常に大きく、訴えかけて来ます。

四楽章、三楽章の混沌とした中から、ゆったりとしたテンポで伸びやかに勇壮に第一主題が演奏されますが、次第にテンポが速くなって、非常に力のこもった演奏になります。第二主題の木管の音にも力があります。テンポは良く動いています。第一主題の再現部ではかなりテンポが速くなります。第二主題の再現のクライマックスではまるで演歌を聴くような濃厚ベタベタな演奏になります。なかなか個性的です。コーダはもう絶叫です。

非常に濃厚で、ホーレンシュタイン独自の解釈で最後はかなりの粘着質な演奏になりました。すごく個性的で驚きのたくさんある演奏でした。
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グスターボ・ドゥダメル指揮 イェーテボリ交響楽団

ドゥダメル★★★★
一楽章、遅めのテンポで、アゴーギクを効かせてたっぷりと歌う第一主題。柔らかく控え目な木管。柔らかく美しい弦。ゆったりとレガートで演奏される部分と音を短く切る部分の対比がとても明確で雰囲気が一変します。金管もバランス良くブレンドされた響きで突出することはありません。

二楽章、あまり感情が込められていないような第一主題。この楽章でも金管は突き抜けることは無く控え目です。第二主題は穏やかで美しい演奏です。第一主題の再現では、北欧を感じさせてくれました。テンポのメリハリがはっきりしていて、動と静がはっきりしいます。とても良く歌う演奏で、テンポの動きも大きいです。

三楽章、軽い弦の動き。トリオではオーボエはもちろん、他の木管も弦もとても良く歌いますが響きに厚みが無いのと、金管のエネルギー感が無いのが残念です。

四楽章、柔らかい第一主題。控え目なトランペット。木管の第二主題の前の低弦もとても表情豊かでした。テンポを落としてゆったりとした表現は安らぎを感じさせるものです。クライマックスは淡々としています。コーダでも金管は強く吹いているようには感じますが、エネルギーとして伝わって来ません。

基本的にはゆったりとしたテンポでたっぷりと歌う演奏でした。特にテンポを落として安らかな表情はとても良い表現でした。ただ、トゥッティでのエネルギー感が無く、盛り上がりを感じられないのが残念でした。
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ジョージ・セル指揮 クリーブランド管弦楽団

セル★★★
一楽章、速めのテンポですが、良く歌う第一主題。ふくよかなホルン。精度の高いアンサンブルを聞かせる木管。かなり積極的な表現で激しい起伏があります。スタジオ録音だと精密機械のような精度の演奏をするセルもライヴだと、感情もこもって激しい表現の演奏になっています。それでもオケは一糸乱れぬアンサンブルです。ライヴならではのテンポの揺れ動きもあります。

二楽章、北欧を感じさせる幻想的なファゴットの第一主題。第二主題も活発で安らかさはあまりありません。トゥッティの響きがトランペットが突出して厚みがあまりありません。

三楽章、サラサラとした弦の響き。突き抜けて来るトランペットが豪快です。トリオに入る前に長い間がありました。アゴーギクを効かせて歌います。主部が戻るとかなり激しい演奏です。

四楽章、この楽章でもトランペットのエネルギー感がすごいです。静かで憂鬱な雰囲気の第二主題。再現部の盛り上がりではかなりテンポを速めてちょっと落ち着きのない演奏でした。テンポも良く動いています。コーダでは弱めに入ったトランペットが次第に力を増して終わりました。

ライヴらしい変化に富んだ演奏でしたが、常に動きのある演奏で、少し落ち着きの無い感じがありました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★
一楽章、速いテンポの第一主題。厚みのある弦が非常にダイナミックです。ピィツィカートも躍動感があって活発に動きます。第二主題は熱っぽいほどです。金管のファンファーレのアンサンブルの精度は見事です。

二楽章、雪原を感じさせるファゴットの第一主題。凄く広大なダイナミックレンジですが、シベリウスらしい寒さは感じられません。サラッとした肌ざわりの第二主題。雪原の夕暮れを感じさせるトランペットとフルートによる第一主題の再現。豪華絢爛に鳴り響く金管。とても豪華なのですが、感情が込められていたり、作品に対する共感などはあまり感じません。

三楽章、分厚いコントラバス。フワーッと響く金管。トリオの前は畳み掛けるような感じで弦のエネルギーは物凄いです。テンポも動いて深く歌うトリオ。弦の合奏は圧倒的でした。四楽章へ向けて次第にテンポを落として行きます。

四楽章、ゆっくりとしたテンポでトランペットが毅然としていなくて、軟弱でした。この楽章でも弦のエネルギー感は凄いです。展開部は暖かみがあって静かで穏やかです。あまりにテンポが遅くてそれでいて表現が淡白なので間が持たないところもあります。再現部に入る前のクレッシェンドは強烈でした。再現部の分厚く豪華な響きはさすがベルリンpoと感心させられます。コーダは倍管にした金管が圧倒的なパワーで朗々と凄いエネルギーで突き抜けて来ます。この響きは快感です。

倍管にした金管による四楽章のコーダは見事でしたし、弦のエネルギー感も素晴らしいものがありましたが、テンポ設定や表現に統一感が感じられず造形的な美しさが感じられませんでした。

John Storgards指揮 BBCフィルハーモニック

Storgards★★☆
一楽章、厚みのある第一主題。舞うように躍動する木管。彫が深く克明な演奏です。金管は奥まっていて、あまり強く出てきません。彫の深い演奏と思いましたが聴き進むにつれて、淡い感じがしてきました。柔らかくふんわりとした感じがします。

二楽章、ホールに響き渡るティンパニ。豊かな残響を伴った低弦のピィツィカート。大きく歌うファゴットの第一主題。ヴェールに覆われたような柔らかい弦。ティンパニが何度もクレッシェンドしています。第一主題の再現はうつろで不安な雰囲気があります。トランペットが奥まっているので、あまり強弱の変化は感じませんが、反面、ティンパニはかなり強調されていて、これがあまりアンサンブルが良くないのが気になります。コーダに入って弦が音を短く演奏する部分がありました。

三楽章、一音一音丁寧で落ち着いた弦。独特の歌いまわしのトリオのオーボエ。二度目のトリオの直前でもティンパニがクレッシェンドしました。

四楽章、穏やかな弦のモチーフにキリッと鳴るトランペットが対照的です。少し寂しげな第二主題。展開部はとても穏やかです。再現部ではやはり奥から芯のしっかりしたトランペットが響きます。やはりティンパニのアンサンブルの悪さが目立ちます。第二主題の再現部でも金管が前に出てこないので、大きな盛り上がりになりません。コーダも同様です。

金管が奥まっていて、トゥッティのエネルギー感が乏しく、盛り上がりを感じることはありませんでした。演奏にもあまり強い主張は無くあまり印象に残る演奏ではありせんでした。
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トーマス・シッパース指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック

シッパース★★
一楽章、速めのテンポですが、テンポも動いて歌っています。演奏は積極的で、活動的です。かなり自由にテンポが動いています。強弱の変化も独特の表現があります。

二楽章、美しいファゴットの第一主題。安堵感のある第二主題と華やかなフルートなどの木管。音を短く演奏する時があり、しっとりとしたこの作品には合わない表現があります。

三楽章、激しく雑に聞こえるトランペット。この楽章でも木管が音を短めに演奏する部分がありました。

四楽章、この楽章の冒頭でもトロンボーンが音を短く演奏しています。金管の響きが乾いていて硬いです。再現部のクライマックスはかなりテンポが速いです。コーダでもトランペットがフレーズの最後の音を短く演奏したりしました。

音を短く演奏することが度々あり、この作品のしっとりとした部分はあまり表現されませんでした。金管の硬い響きも作品とマッチしているとは言い難いものでした。
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エサ=ペッカ・サロネン指揮 スウェーデン放送交響楽団

サロネン★★
一楽章、速めのテンポで軽快に始まりました。第二主題の前はかなりテンポを上げました。展開部からはテンポを落として粘っこい演奏になりました。テンポは大きく動きますが、強弱の変化はさほど大きくありません。大きく歌うことも無く淡々と音楽は進みます。

二楽章、感傷にに浸るようなことも無く、淡々と演奏される第一主題。極めて静かに演奏された第二主題。サロネンの指揮をする姿からはかなり激しい演奏をしようとしているようなのですが、録音からはそのダイナミックな表現は伝わって来ません。ただ、ティンパニの凄い打撃だけは凄く印象に残ります。

三楽章、丁寧ですが、あまりスピード感の無い主部。テンポも微妙に動きしみじみと歌われるトリオ。

四楽章、速いテンポで流れるような第一主題。この楽章でもティンパニは強烈です。第二主題の前の低弦には動きがありましたが、第二主題はやはり淡々としています。展開部の第一主題は安堵感のある優しい演奏でした。第二主題は一転してすごく速いテンポです。歪っぽくザラついたコーダ。

とても客観的な演奏だったのですが、録音が歪っぽくて、美しさが伝わって来ませんでした。また、ほとんど片チャンネルのみ音が再生される状態で、演奏を捉えにくい状態でした。
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ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1957年

オーマンディ★★
一楽章、速めのテンポですが積極的に歌います。ふくよかなホルン。第二主題に入っても生き生きとした表情は変わりません。展開部の不穏な雰囲気も良く表現されています。録音された年代のせいなのか、トゥッティの厚みがあまりありませんでした。

二楽章、哀愁のあるファゴットの第一主題ですが、胸を打つと言うほど深いものではありません。トランペットは強力です。第二主題も現実的です。トランペットとフルートで再現される第一主題は雰囲気がありました。やはり低域があまりしっかりと捉えられていない録音のようです。

三楽章、活発な動きのスケルツォ。波が押し寄せるような音の洪水です。スタッカートぎみに演奏されるトリオのオーボエ。スケルツォ主部が戻ると再び嵐のような激しい流れです。

四楽章、サラサラと流れる弦に遠くから響くトランペットの第一主題。強奏部分で各楽器が有機的に結びついていないような散漫な印象を受けました。コーダのトランペットは最初は控えめに吹きはじめましたが、ティンパニのクレッシェントに合わせて全開になりました。

オーマンディの演奏にしては少し散漫な感じがしました。低域をあまり捉えていない録音にも問題があるような気がします。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第3番

シベリウスの交響曲第3番は、彼の作品の中でも特に独自のスタイルが確立された作品で、シンプルでありながら独特の構造と豊かな感情を持っています。交響曲第2番と第3番の間には大きな変化が見られ、より内省的で抑制の効いた作風が特徴です。この交響曲は、シベリウスがロマン主義から脱し、より簡素で力強い音楽表現に向かっていった過程を示す作品としても注目されています。

1. 楽章構成と内容

交響曲第3番は、全3楽章で構成されており、各楽章が異なる性格を持っています。

  • 第1楽章 (Allegro moderato): 明るく快活なムードで始まります。牧歌的な雰囲気が漂い、弦楽器と木管楽器が美しい調和を見せます。この楽章には、シベリウス独特の「流れるような音楽の動き」が感じられ、シンプルながらも洗練された旋律が印象的です。
  • 第2楽章 (Andantino con moto, quasi allegretto): 中間楽章として、ゆったりとしたテンポで穏やかな旋律が展開されます。シンプルで親しみやすいメロディが主体となり、シベリウスの「静かな抒情性」が感じられます。リズムも静かに流れていくようで、夢見るような雰囲気が漂います。
  • 第3楽章 (Moderato – Allegro ma non troppo): 終楽章で、序奏部から少しずつエネルギーが高まっていき、壮大なフィナーレへと導かれます。この楽章はフィンランドの民族的な響きが強調され、全体が明るい高揚感で包まれます。途中でテンポが上がり、弦楽器と管楽器が複雑に絡み合いながら力強いクライマックスを築きます。

2. シンプルさと抑制の美学

  • シベリウスの交響曲第3番は、前作の第2番と比べてかなり抑制の効いた作風です。派手な部分が少なく、音楽の進行も緩やかで内向的です。しかし、シンプルであるからこそ、各楽器の役割が際立ち、緻密なオーケストレーションとバランスが求められています。
  • シベリウスはこの交響曲で「内なる力」を表現し、表面的な華やかさよりも内的な感情の深さを追求しました。これは彼の音楽の新しい方向性を示す重要な作品です。

3. フィンランドの精神

  • シベリウスの交響曲第3番にはフィンランドの自然や精神性が背景にありますが、露骨に民族的な要素を取り入れることはせず、むしろ暗示的な形でフィンランドの雰囲気を表現しています。
  • 特に第3楽章のフィナーレは、フィンランドの美しい風景と、力強くしなやかな民族性を象徴していると言われています。

4. 音楽的特徴と影響

  • この交響曲は、当時のシンフォニー作品としては珍しく「短い」ものとしても注目されました。シベリウスはこの作品でシンプルで明瞭な構成を目指しており、聴衆に「音楽の本質」を感じさせようとしています。
  • シンプルな動機や短いフレーズが繰り返し登場し、それが複雑に絡み合うことで豊かな音響が生まれています。

5. まとめ

シベリウスの交響曲第3番は、彼の作風が新しい方向へと進化し始めた時期を象徴する作品です。簡素な美学の中に深い感情が込められており、シベリウスの音楽が持つ「内なる静けさ」を表現した名作です。フィンランドの自然と人々の精神が暗示的に描かれ、聴く者にシンプルで深い印象を与えます。

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第3番名盤試聴記

レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、柔らかく控え目の表現から始まった第一主題が次第に大きくなって積極的な表現になります。とても豊かな表情です。大らかなトゥッティの響きです。第二主題もよく歌います。作品への共感が表れた積極的な表現。渋く淡い色彩ですが、一体感のある響きです。

二楽章、淡くピツィカートと同化するフルートですが、ここでもよく歌います。暖かみのある心のこもった演奏です。

三楽章、前半はあまり活発な動きはなくむしろどっしりと落ち着いた表現です。充実したクライマックスの折り重なる響きが美しい。

渋く淡い響きですが、作品への共感を感じさせる歌に満ちた演奏でした。クライマックスの折り重なる響きがとても美しかったです。

コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、厚みがあって柔らかい第一主題は躍動的です。色彩感がとても濃厚で鮮明です。伸び伸びと鳴り響く金管から消え入るような弱音まで、幅広い振幅です。特別な表現はありませんが、作品そのものが持っている良さを十分に伝えて来ます。

二楽章、暗闇に明かりがともるようなフルートの動機。柔らかく穏やかな演奏が続きます。とても鮮明な色彩は見事です。素朴な旋律が切々と歌われます。

三楽章、生き生きとくっきりと浮かび上がる木管。泉からこんこんと湧き出るように次から次へと登場する金管が充実した響きでとても豊かです。精緻で整然と整った演奏は見事でした。

濃厚な色彩感と、消え入るような弱音から、くったく無く鳴り響く金管まで幅広い振幅の音楽ですが、自然体で作品そのものが語る演奏はとても見事なものでした。

コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、波が押し寄せるように間を置いて音が強くなる第一主題。伸びやかなホルン。厚みのある響き。少し寒さを感じさせる第二主題。少し離れたところからステージを眺めているような音場感。重厚なブラスの響きで終わりました。

二楽章、他の楽器に比べて静かなフルートの動機。あまり音を短く演奏しな木管が自然で美しいです。弦も音を長めに演奏するのが上品でとても良いです。ピィツィカートに乗って演奏される弦の変奏も北欧の寒さをイメージさせます。

三楽章、活発な動きですが、しっかりとコントロールされていて暴走は全くしません。次第にテンポを上げて盛り上がります。ティンパニのクレッシェンドも効果的でした。

とても上品で格調高い演奏でした。冷静でしっかりと設計された盛り上がりも見事でした。

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

ムラヴィンスキー★★★★★
一楽章、躍動感があって純粋な響きで熱気も感じさせる第一主題。いつものムラヴィンスキーの冷徹なまでの緊張感は無く、とても生き生きとした木管や弦の動きがとても良いです。

二楽章、太い響きで豊かに歌うフルート。統制のとれた見事なアンサンブルはさすがレニングラードpoです。

三楽章、感情に没入して行くことはありませんが、統制の取れた歌です。金管の咆哮もさすがにソ連のオケですが粗暴な演奏には全くならないところがムラヴィンスキーです。

極度の緊張感はありませんでしたが、統制の取れた見事なアンサンブルと豊かな歌。圧倒的な金管の咆哮も素晴らしい演奏でした。
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エサ=ペッカ・サロネン指揮 スウェーデン放送交響楽団

サロネン★★★★★
一楽章、控えめでリズミカルな第一主題が盛り上がり木管に引き継がれます。若干の寒さを感じさせる第二主題。弱音の静寂感はとても良いです。精緻でありながら振幅も大きな表現でグッと迫って来るものがあります。

二楽章、ゆったりとしたテンポで歌うフルートの動機。少し寂しく穏やかに揺られる主題もとても美しく作品に身をゆだねることができます。

三楽章、前半の激しい部分の強弱の表現も明快で、頂点でしっかりと爆発しました。フィナーレも激しいホルンの咆哮。深みがあって力強い演奏です。

精緻でありながらダイナミックな表現もありなかなか良い演奏でした。
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オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★★
一楽章、豊かな残響をともなってふくよかな第一主題。金管もブレンドされてとても美しいです。第二主題は暗く寒い雰囲気です。ここぞと言うところでのエネルギーの放出にも不足は無く、濃厚な色彩と表現は出色です。

二楽章、ゆったりとしたテンポで暗闇に浮かび上がるようなフルート。柔らかく美しい響きです。大きな表現ではありませんが、感情が込められた美しい歌もとても魅力的です。とても丁寧でブレンドされたバランスが見事です。ゆったりとしたテンポの歌は素晴らしい美しさです。

三楽章、この楽章でも克明で、表現の振幅の大きな演奏です。フィナーレ部に入っても深みのある表現でぐいぐいと詰めてきます。最後の充実した響きも見事でした。

北欧の寒さや暗さを持った演奏で、内面からにじみ出るような表現もブレンドされた美しい響きも見事でした。
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オッコ・カム指揮 ヘルシンキ放送交響楽団

カム★★★★★
一楽章、重量感のあるコントラバス。爽やかで清涼感のある響きです。一転して暗く沈みこむ第二主題。トゥッティでも伸びやかで柔らかい響きで大自然の雄大さを表現するにはピッタリです。

二楽章、ゆっくりしとたテンポで全く作為的な表現が無く自然な表現の演奏です。オケのナチュラルな響きもとても魅力的です。カムもオケに伸び伸びと演奏させているようで、硬さや力みなども全くありません。

三楽章、少し緊張感が高まりますが、それでも伸びやかなAllegro。フィナーレも力みは無く伸びやかですが、壮大なスケール感でとても良いバランスで締めました。

自然で伸びやかで美しい響きで、表現にも作為的な部分は無く爽やかで清涼感のある演奏は素晴らしいものでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第3番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第3番2

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第3番名盤試聴記

サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団

バルビローリ★★★★☆
一楽章、とてもゆっくりとした第一主題。よく歌う第二主題。寒さや暗い雰囲気はとても良く表現しています。咆哮するホルン。一音一音に深い感情がこもった演奏で、かなりの手ごたえがあります。

二楽章、アタッカで入りました。ここでも感情のこもったフルートの動機が演奏されます。69年のライヴにしては録音状態は良いです。

三楽章、前半のアレグロは物凄く振幅の激しく攻撃的な演奏です。コラールは速めのテンポでかなり躍動感があって、前のめりです。ここも大きな振幅があります。フィナーレはトロンボーンがかなり強く出てきます。大きな盛り上がりでした。

フィナーレはライヴ独特のバランスの悪さは感じましたが、感情の込められた振幅の大きな演奏はなかなか良かったです。
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Kalle Kuusava 指揮 ノルウェー放送交響楽団

Kuusava★★★★
一楽章、速いテンポで大きな表現の第一主題。とても活発に動く演奏です。第二主題は冷たく寒い雰囲気を良く表現しています。会場が小さいのでオケの編成も小さく弦は3プルトしかありません。その分とても機動的にくっきりとした輪郭の演奏になっています。編成が小さいので、金管をかなり抑えてバランスを取っています。

二楽章、良く歌う木管。ほの暗い陰影をとても良く表現しています。

三楽章、フィナーレのコラールからコーダへ向けてテンポを上げて切迫感のある表現もなかなか良いです。ホルンは思い切り咆哮しますが、トランペットやトロンボーンは控えめです。

豊かな表現と思い切りの良いテンポの動きなど、個性を十分に表出した演奏でなかなか良かったです。ただ、会場の問題で編成が小さかったのがとても残念です。もう一度大きな会場での演奏を聞きたいです。
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パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★
一楽章、豊かな残響を伴って生き生きとした第一主題。第二主題も動きのある活発な演奏です。とても精緻なアンサンブル。奥ゆかしい歌と、バランスの良い美しい響き。

二楽章、神秘的で深みのある木管の動機。

三楽章、楽器の動きが克明に描かれる序奏。切々と語りかける後半部。終結部でもオケを無理に強奏させることなく、非常にバランス良く響かせていました。

とても精緻で、美しい響きで奥ゆかしい表現の演奏でしたが、二楽章までほとんど金管の存在を感じないくらいのバランスだったのが不思議な感じでした。

ネーメ・ヤルヴィ指揮 イェーテボリ交響楽団

ヤルヴィ★★★★
一楽章、生き生きと動く第一主題。暗く寒さを感じさせる第二主題。金管は全開とまでは行かず、僅かに余力を残していて、少し小さくまとまっている感じがあります。

二楽章、ほの暗いフルートの動機。作品の雰囲気をとても良く伝える演奏です。作品をいたわるような穏やかな表現。強い個性を表出しないので、作品のありのままの良さがとても良く伝わって来ます。

三楽章、弱音に重点を置いているようで、前半のスケルツォの部分でも活発な動きや激しさはありません。コラールは速めのテンポであっさりとした表現です。最後も咆哮することは無く小さくまとまった演奏のまま終わりました。

強い個性の表出が無かったので、作品の良さはとても良く伝わって来ましたが、小さくまとまってしまってたいのがちょっと残念でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第3番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第4番

シベリウスの交響曲第4番は、彼の交響曲の中でも特に暗く、内省的で独特な雰囲気を持つ作品です。1911年に初演されましたが、当時の聴衆には難解だと感じられ、賛否が分かれました。この交響曲は、シベリウスの病気や心の葛藤、人生の不安感が色濃く反映されたもので、「苦悩の交響曲」とも呼ばれています。

1. 構成と特徴

交響曲第4番は、全4楽章からなり、各楽章が短めですが、非常に緊張感があり、どこか重苦しい響きが続きます。

第1楽章:Tempo molto moderato, quasi adagio

  • 静かで重厚な響きから始まり、低音の響きが不安感を漂わせます。冒頭からチェロが不穏な旋律を奏で、暗い陰影を感じさせます。調性は曖昧で、安定しない和声が続き、独特の緊張感が生まれます。
  • 和声や旋律の流れが予測できず、どこか彷徨っているような印象を与えます。この楽章全体が、どこか恐れや不安といった感情を象徴しているように聞こえます。

第2楽章:Allegro molto vivace

  • 第2楽章は、短いながらも動きのある楽章で、リズミカルなパターンが続きます。軽やかでありながらも、不協和音が混ざり合うため、明るいというよりも「皮肉めいた明るさ」を感じます。
  • 不安定なメロディや突発的なリズムが、まるで内心の葛藤や不安を表現しているかのようで、聴く者に奇妙な緊張感を与えます。

第3楽章:Il tempo largo

  • ゆっくりとした悲しげな楽章で、シベリウス特有の静かな美しさが際立ちます。低音が支配的で、シンプルな旋律が暗い響きの中で進みます。
  • この楽章では、無力感や絶望、孤独といった感情が表現されているとされ、どこか悲哀を帯びた音楽が心に染み渡ります。
  • シベリウスが直面していた病気や自身の人生への不安が、この楽章には色濃く反映されているとも言われます。

第4楽章:Allegro

  • 最終楽章は、どこか不安を抱えたまま、激しさを伴いながら進んでいきます。力強い弦楽器の旋律と、ホルンやトロンボーンが重厚な響きを加え、圧倒的なエネルギーを感じさせますが、決して晴れやかな結末ではありません。
  • 終盤に向かっても、救いのような響きは現れず、むしろ突然途切れるように静かに終わります。これは、シベリウスが人生に対して感じていた不安や無常観が反映された終わり方とも解釈されています。

2. 音楽的特徴

  • 無調的な響き:第4番は従来の調性感が希薄で、半音階的な不協和音が多用されています。これによって、安定しない音楽の流れが生まれ、不安や緊張が強調されています。
  • オーケストレーション:シベリウスはこの交響曲で、少ない音や静けさを活かし、非常に抑制されたオーケストレーションを用いています。シンプルな構成ながらも深い響きを追求し、音の余韻や間が独特の効果を生み出しています。

3. 病気と内省

この交響曲が書かれた頃、シベリウスは自分の喉に腫瘍が見つかり、健康に対して大きな不安を抱えていました。彼は手術を受けたものの、人生に対する恐怖感や死の影が付きまとい、内向的で深い思索にふけるようになったとされています。この第4番は、そのような内面的な苦悩が音楽に色濃く反映され、シベリウスの最も個人的な交響曲の一つとされています。

4. 聴衆の反応とその後の評価

初演当時、この交響曲第4番は当時の聴衆にとって難解すぎると感じられ、あまり受け入れられませんでした。前作の交響曲第2番や第3番の明るさや力強さに比べ、第4番は暗く重い響きが中心であったため、マーケティング的にも難しい作品でした。しかし、時間が経つにつれて、第4番はシベリウスの革新性や深い洞察力が反映された傑作として再評価され、現代の聴衆にはシベリウスの孤独な美学を感じさせる作品として受け入れられています。

5. まとめ

シベリウスの交響曲第4番は、彼の内面的な葛藤や人生の不安が強く表れた作品であり、暗く神秘的な響きが特徴です。不安定で重厚な音楽が続くため、聴く者にとってもどこか心が揺さぶられるような体験をもたらします。シベリウスの他の交響曲に見られるような劇的な盛り上がりや明るさはありませんが、その分、孤独や無常観といった深いテーマがじっくりと表現されています。

4o

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第4番名盤試聴記

パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

ベルグルンド★★★★★
一楽章、冒頭から重苦しい低弦。音量を落として、内に秘めたような表現のチェロの主題。色彩のコントラストがとても鮮明です。粘りがあって自然の厳しさも伝わってきます。
二楽章、伸びやかで美しい演奏です。大きな表現ではありませんが、生命観のある生き生きとした音楽です。
三楽章、暗闇に浮かび上がるようなフルート。寂しさを強く感じさせる美しい金管。繊細さと深みのある演奏でとても美しいです。
四楽章、生き生きと動き回る弦。強いグロッケンシュピール。強弱の振幅がとても大きくダイナミックですが陰影もあります。かなり激しい金管。後のヨーロッパ室内oとの演奏よりも金管は強烈です。

ヨーロッパ室内oとの録音に比べるとかなりダイナミックで積極的な表現でした。オケもとても美しく伸びやかで魅力的な演奏でした。
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コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、遠くから響いてきて、暗闇にどんどん沈んで行くような第一主題。何かを暗示するかのような金管の第二主題。羽毛のような心地良い肌触りの弦。密度が濃く、しかし消え入るような弱音。暗く重い雲に覆われているような雰囲気です。ホルンが一筋の光明を見出すような感じです。
二楽章、一楽章の暗さから僅かに雲が薄くなったような雰囲気ですが、不穏な空気はそのままです。曇天の中でもしっかりとした色彩を放つ木管。
三楽章、近代の作品であることを象徴するような断片的で浮遊感のある音楽。暗闇の中で色とりどりの明かりが交錯するような雰囲気です。一つ一つの音に力があって、しっかりと立っています。暗闇の中に僅かな明かりが差し込むような表現もあります。充実した響きのトロンボーン。
四楽章、グロッケンシュピールとチューブラベルを使い分けています。このあたりの使い分けはとても効果的な使い方でした。精緻でしかも濃厚な色彩。真摯に作品と向き合って、作品の姿を描き出す姿勢には心が動かされました。

暗闇の中で不穏な空気や色とりどりの光の交錯など、作品の持っているものを純粋な姿勢で描き出した演奏でした。

パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、深く厚みのある冒頭。しっかり地に足のついた第一主題も深みがあって奥行き感があります。金管も柔らかく美しいバランスです。不安感も良く表現しています。
二楽章、表現の幅が広いオーボエの主題。決して突出するようなバランスにはなりませんが、とても良く表現しています。室内オケとは思えない厚みのある響き。
三楽章、暗闇の中で不安なフルート。静寂の中に響く楽器の数々。よく歌い切々と訴えて来ます。作品への深い共感があるのだ思います。そうでなければこれだけ有機的に結びついた演奏は出来ないでしょう。
四楽章、表情豊かで滑らかに動く木管。チューブラベルは重ねずグロッケンシュピールのみです。室内オケとは思えないような凄いパワー感。無表情に演奏することが無いと言えるほど、細部まで表現しています。

作品への深い共感から生み出される細部にわたる表現。室内オケとは思えない深みと厚みとエネルギー。すばらしい演奏でした。

コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、焦点が定まらず浮遊感がありうつろなチェロの第一主題。ザワザワとした不安感が覆い尽くすとても不安定な状態をとても良く表現しています。
二楽章、自然体で美しい演奏で特に何かを強調することはありません。
三楽章、ゆったりとしたテンポで、神秘的なクラリネット。混沌とした中に断片的に浮かぶ旋律。大きな抑揚のあるチェロの主題。静寂感の中に次々と浮かぶ木管が美しい。濃厚な色彩ではありませんが、確かな色を発するオケ。重厚なトゥッティ。
四楽章、グロッケンシュピールとチューブラベルを併用しています。複雑に動き不安感は表現していますが、演奏自体はとても安定していて落ち着いた演奏です。

落ち着いた安定した演奏で、不安感を良く表現しました。少しくすんだ響きも作品にピッタリでした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団

カラヤン/フィルハーモニア★★★★★
一楽章、表面が滑らかで、寒い空気感のある演奏です。カラヤンらしくキチッと整理されてとても聞きやすい演奏になっています。凝縮された密度の高さも感じます。
二楽章、モノラルですが、スタジオ録音なので、音質はそんなに悪くはありません。
三楽章、フルートのソロはベルリンpoとの65年の録音のように前へ出てきてピーンと張り詰めたような響きでは無く、少し奥まっています。全体がブレンドされた自然さはこちらの方があります。切々と訴えてくる弦もなかなかです。
四楽章、後のベルリンpoとの録音よりも響きが薄いので、シベリウスにはこちらの方が合っているような気がします。金管とグロッケンが強調されていますが、演奏全体の凄みはかなりのものです。

少し寒い空気感や少し薄い響きなど、シベリウスには合っていました。四楽章の凄みのある演奏もとても良かったと思います。
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オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★★
一楽章、ゴロゴロと岩が地底から湧き上るような冒頭。柔らかく暗闇で瞑想するようなチェロの主題。とても静かです。突出しては来ない第二主題。展開部に入っても素晴らしい静寂感です。金管は軽く美しく演奏しています。
二楽章、奥ゆかしく柔らかいオーボエの主題。中間部の弦も静寂感があります。
三楽章、弱音の集中力の高い美しさは素晴らしいです。主題も緻密なアンサンブルで美しく神秘的です。雑みが無く純粋で、無駄なものを削ぎ落としたような演奏です。金管は控えめで決して突き抜けて来ません。
四楽章、大きな表現では無く奥ゆかしい第一主題。グロッケンシュピールを使っています。温度感は冷たくも暑くもない常温です。ここでは初めてトランペットが突き抜けて来ました。トランペットが突き抜けてもオケは完全にコントロールされていて整然としています。

弱音に重点を置いた静寂感のある美しい演奏でした。深い感情表現などはありませんでしたが、完全にコントロールされたオケの純粋な響きも魅力的でした。
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エサ=ペッカ・サロネン指揮 スウェーデン放送交響楽団

サロネン★★★★★
一楽章、ガリガリと硬質なコントラバス。ふくよかですが暗闇に響くようなチェロの主題。ダイナミックで激しい金管の第二主題。しっかりと地に足の着いた濃厚な演奏です。ティンパニも強烈です。
二楽章、舞うように歌うオーボエの主題。終結部に現れる主題はどれも生き生きとしています。強弱の変化が明快でタイナミックです。力感に溢れる演奏です。
三楽章、暗闇に浮かぶようなフルートとクラリネット。大きく歌うホルン。ずっと暗闇をさまようような演奏でした。
四楽章、速めのテンポで活発に動く第一主題。グロッケンシュピールを使っています。シャキッとしたアンサンブルの弦。明快で生き生きと動くオケ。強弱の振幅はかなり大きいです。

暗い部分と生き生きとした表現とのコントラストや強弱の大きな振幅など、表現の幅の大きな演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第4番2

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第4番名盤試聴記

レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、かなり思い切りの良い音量で始まって次第に収束して行きます。暖かみのある響きでうつろな主題。陰鬱な雰囲気がもたれかかって来ます。くすんだ淡い色彩で響く金管の第二主題。静寂感のある展開部。
二楽章、活発な動きのある主題。表現が柔らかくふくよかで、暖かみがあります。
三楽章、地に足の付いた序奏。作品をそのままさらけ出さずにかなりこなれている感じで、マイルドで聴きやすい音楽になっています。ここは作曲者と同じフィンランド人による演奏のおかげか。共感に満ちて一体感のある演奏です。緻密に組み合わされた音楽がこんこんと湧き出るように流れて行きます。
四楽章、色彩感は渋くくすんでいます。金管も絶叫することは無く、コントラストも強くはありません。

渋くくすんだ響きで暗く沈んだ音楽を演奏しました。セーゲルスタムがかなりこの作品を聴きやすくしてくれているようでした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1965)

カラヤン(1965)★★★★☆
一楽章、静寂の中に響く沈鬱なチェロの主題。第二主題はこの頃のベルリンpoらしくゴージャスな響きですが、76年の録音のような暖かさは無く、シベリウスらしい寒さは感じます。
二楽章、分厚い響きで、反応の良いオケ。静寂感はとても良いです。
三楽章、伸びやかで澄んだフルートのソロなどはさすがです。ただ、ピーンと張り詰めたような緊張感は無く、響きの厚さの分僅かに緩い感じがあります。
四楽章、グロッケンシュピールが使われています。動きの激しさなども上手く表現されています。

76年の録音のような暖かい響きでは無く、寒さを感じさせる演奏でした。静寂感と激しさもとても良く表現されていましたが、僅かに緩い感じがあって、ピーンと張った緊張感はありませんでした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団

icon★★★★
一楽章、録音レベルが高いのか、冒頭から全開のような演奏です。チェロの主題が前面に出てきます。混沌としたうつろな雰囲気は無く、むしろ有機的です。とても活発で温度が高い熱気をはらんだ演奏です。
二楽章、強い音で歌うオーボエの主題。続く弦も強いです。不安感よりも力強さを感じる演奏で、作品の本来持っている性格とはかなり違う面を聞かせているようです。
三楽章、暗闇の中で響くような音楽。そして粘るように濃厚な演奏です。よく歌う弦。非常に熱い演奏で、シベリウスの冷たい空気感とはかなり違う演奏です。
四楽章、華やかな主題。チューブラベルを併用せずにグロッケンシュピールのみで演奏しています。金管はやはり強奏します。

この温度感はロジェストヴェンスキーが持っているものではないかと思います。濃厚で熱い演奏で、シベリウスの違う面を聞かせてくれたとも言えるとは思いますが・・・・・

サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団

バルビローリ★★★★
一楽章、重苦しい冒頭。うつろなチェロの主題。シベリウスらしく内側に凝縮して行くような音楽。強烈なティンパニの一撃。暗闇の中を探りながら歩くような不安げなコーダでした。
二楽章、豊かに歌うオーボエの主題。凝縮された純音楽といった雰囲気があります。
三楽章、浮遊感のあるフルート。ピーンと張り詰めた寒さを感じさせます。オケは超一流の演奏とまでは行きませんが、献身的な演奏をしていると思います。
四楽章、グロッケン・シュピールが使われています。思い切りの良いホルン。クロッケンはかなり強調されています。咆哮する金管。強弱の振幅はかなり大きいです。

オケの密度はあまり高くは無く、超一流のオケとは言えない演奏でしたが、ピーンと張り詰めた寒さや思い切りの良い咆哮など、聞かせどころはありました。
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クルト・ザンデルリング指揮 ベルリン交響楽団

ザンデルリング★★★
一楽章、物々しい冒頭の低弦。視点が定まらないようなうつろなチェロの主題。録音にもよるのか、普段のザンデルリングのイメージとは違いかなり前のめりで積極的な演奏に聞えます。緊張感のある純度の高い演奏ですが、激しさもあるので、シベリウス独特の冷たい空気感はありません。
二楽章、ここでも積極的で生き生きとした表現です。情熱的で激しく熱気を感じる演奏になっています。
三楽章、太く暖かいフルート。クラリネットも大きい音像です。明快で混沌とするような感じは全くありません。
四楽章、この楽章も激しく積極的に動くオケ。かなり現実的で自然を連想させることもありません。

ザンデルリングにしては珍しく積極的で激しい演奏でしたが、その分シベリウスらしい冷たさや自然を感じさせることはありませんでした。
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ウラディーミル・アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団

アシュケナージ★★★
一楽章、少し軽いですが、暗い冒頭。暖かいチェロの主題。あまりピーンと張ったような寒さのような緊張感はありません。第二主題も暖かいです。展開部は暗いですが、やはり暖かいです。純音楽的な削ぎ落とされたような無駄の無さはあまり感じられません。かなりふくよかで情報が多い感じに聞こえます。
二楽章、少し楽しげなオーボエの主題。中間部は不穏な空気になります。
三楽章、暗闇に浮かび上がるような木管ですが、やはり暖かいです。柔らかく美しい金管。主題は少し温度が低いですが、木管が入るとまた、暖かくなります。
四楽章、楽しげな第一主題。グロッケンシュピールが使われています。金管はかなり豪快に演奏されていますが、大きな強弱の変化には感じません。

決して悪い演奏ではありませんが、終始暖かい響きで、シベリウスらしさは感じられませんでした。
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ロリン・マゼール指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

マゼール★★
一楽章、松脂が飛び散るような激しいコントラバス。独特な胴の鳴りのチェロの主題。凄く情報量が多い演奏です。第二主題も激しい表現です。積極的に訴えかけて来ます。
二楽章、濃厚に歌うオーボエの主題。凄く弾む中間部の弦。シベリウスらしい冷たさは全く感じられません。
三楽章、冒頭のフルートやクラリネットも暗闇に浮かぶような暗い雰囲気はありません。明快で混沌とした複雑な雰囲気もありません。
四楽章、この楽章も明快な表現です。グロッケンシュピールを使っています。竹を割ったような明快さで、激しく咆哮する金管。

とても力強く明快な表現の演奏で、シベリウスの複雑な音楽をとても簡潔にしてしまった感じで、味わいの無い演奏だったように感じます。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン
一楽章、物々しい冒頭。非常に陰鬱な第一主題。次第に澄んだ空気に変わって行きます。第二主題はこのコンビらしい厚みのある響きです。展開部でも分厚いコントラバス。強烈なティンパニ。温度感は高く、北欧の冷たい空気はほとんど感じません。
二楽章、オーボエは僅かな表現だけでしたが、続く弦はとても大きく豊かに歌いました。音が肥大化していて、シベリウスの清貧のような引き締まった雰囲気がありません。この演奏はシベリウスの音楽では無く、カラヤンの音楽になっているように感じます。
三楽章、美しいフルートなのですが、ピーンと張りつめたような緊張感がありません。浮遊感があって、瞑想するような雰囲気は良く表現されています。
四楽章、暖かく豪華に鳴り響く音楽がどうしてもシベリウスの音楽とは違う感じがします。

分厚い響きで暖かく豪華な演奏はシベリウスとは程遠い感じで、あまり納得できませんでした。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第5番

シベリウスの交響曲第5番は、フィンランドの作曲家ジャン・シベリウスによって1915年に作曲された作品で、彼の交響曲の中でも特に人気の高い楽曲です。この曲はシベリウスの故郷フィンランドの自然の美しさや、生命の神秘と壮大さを反映しており、聴く者に深い感動を与えます。全3楽章から成り、特に最後の楽章の「白鳥の飛翔」とも呼ばれるモチーフが有名です。

各楽章の特徴

  1. 第1楽章
    穏やかな朝の風景を想起させる静かな序奏で始まり、次第に壮大な響きへと発展します。この楽章は、シベリウスが自身の自然体験から着想を得たと言われており、フィンランドの広大な風景が音楽を通して描かれます。明るいファンファーレのようなホルンと、弦楽器の力強い響きが絡み合い、ドラマチックな展開が特徴です。
  2. 第2楽章
    穏やかで親しみやすい音楽が流れるこの楽章は、木管楽器と弦楽器によるリズミカルな変奏が特徴です。シンプルでメランコリックなテーマが静かに展開し、牧歌的な雰囲気が漂います。シベリウス特有の繊細なリズムと色彩感が生かされ、柔らかいながらも深い情感が表現されています。
  3. 第3楽章
    最も有名な楽章で、「白鳥の飛翔」として知られる荘厳なテーマが登場します。この楽章は、シベリウスが白鳥の群れが空を飛ぶ姿に感動した体験をもとにしており、ホルンの堂々としたモチーフが白鳥の飛翔を象徴しています。このテーマはシンプルながら力強く、壮大な自然と生きる歓びを表現しており、楽章全体にわたって何度も繰り返されます。終盤では劇的に音楽が高揚し、静寂の中に感動的に終わる独特のフィナーレが印象的です。

音楽的な特徴と評価

シベリウスの交響曲第5番は、彼の他の作品と同様にフィンランドの自然美を反映し、オーケストラを巧みに使った透明感ある音色が特徴です。リズムの変化や色彩感が豊かで、シンプルなモチーフが繰り返し使われながらも、少しずつ異なる響きに変化し、全体として自然な調和が感じられる構造になっています。

この交響曲は、シベリウスが「作曲の達成感と自然への感謝」を表現したとされ、シンプルでありながら深い精神性が評価されています。シベリウスは最初この曲を1915年に完成させましたが、その後さらに推敲を重ね、1921年に現在の最終版が完成しました。この改訂版によって作品はさらに洗練され、交響曲第5番はシベリウスの最高傑作の一つとして位置づけられるようになりました。

4o

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第5番名盤試聴記

コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、大自然の中、遠くから響いてくるようなホルン。木管も締まっていて美しいです。静寂感があって、とても上品なたたずまいです。トランペットも奥まったところから残響を伴って響いてきます。トゥッティでも奥から鋭く響いてきますが、響きに拡がりが無くスケールの大きな響きにはなりません。大きな表現はせず、作品を自然に演奏していますが、その自然さが作品の深みを表現しているような演奏です。
二楽章、静かに演奏されますが、主題がとても良く分かります。とても愛らしい歌です。最後にテンポを落とした歌はとても美しいものでした。
三楽章、控え目で決して出しゃばらないホルンの鐘の響き。自然ですが、表情のあるオーボエやフルート。ヴェールをまとっているような美しい弦。バランスの良いクライマックス。

何の誇張も無く自然体の演奏でしたが、作品の味をしみじみと感じさせてくれる演奏でした。美しい響きもとても魅力的でした。

パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、大自然を感じさせる非常に伸びやかなホルン。続く木管も生き物のように生き生きとしています。室内オケとは思えない巨大な拡がりのトゥッティ。内面から自然に湧き上がるような豊かな音楽。音が一音一音立っていてとても明快です。
二楽章、常に音楽が揺れて歌います。動きは活発ですが、とても繊細で細部まで神経が行き届いている感じです。
三楽章、とても積極的な表現で疾走感がある第一主題。テヌートぎみのホルンが壮大な鐘のモチーフを演奏をします。トランペットで演奏される鐘のモチーフもとても美しいです。決して力みませんが美しく壮大なクライマックス。

力みは全くありませんが、内面から湧き上がるような豊かな音楽。細部まで神経の行き届いた美しく整った演奏。穏やかですが、祝典的な雰囲気をとても良く表現した演奏でした。

コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、澄んで伸びやかなホルン。艶やかで締まりのある木管が静寂感の中にくっきりと浮かびます。第一主題もとても明瞭です。肌触りはあっさりしていますが、色彩感はとても濃厚です。とても静かで消え入るような展開部冒頭。スケルツォ主題とても可愛らしく演奏されます。終結部の最後はかなり激しい演奏でした。
二楽章、一転して穏やかで、素朴な歌です。必要以上の主観的な表現はしませんが、作品の美しさを余すところ無く表現しています。
三楽章、第一主題の細かい動きもとても明快に聞こえます。一体感のある動きで静寂感もあります。ホルンの鐘の響きのようなモチーフが盛り上がって広大な空間を表現します。とても表情豊かな第二主題。とても弱く演奏される弦のトレモロ。弱音が小さく、それでいてとても明瞭なので、ffとの対比が効果的です。感動的なクライマックスの充実した響きが見事でした。

肌触りはあっさりしていますが、濃厚な色彩で彩られた美しい演奏。明確でくっきりと浮かび上がる楽器。消え入るような集中力のある弱音から最後の感動的なクライマックスまで、とても充実した素晴らしい演奏でした。

レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

バーンスタイン★★★★★
一楽章、遠い山から響いて来るようなホルン。引き締まって美しく濃厚な色彩の木管。とてもゆっくりとしたテンポです。少し暗雲が立ち込める第二主題。重く粘っこい表現で、冷たさは全く感じません。
二楽章、静寂感があって繊細な弱音。最後は物凄く遅いテンポで濃厚に歌います。
三楽章、遅いテンポなので、第一主題に疾走感はありません。ホルンの鐘のモチーフは巨大で壮麗で圧倒されます。従来のシベリウスの音楽の枠を完全に超えています。感動的なコーダでした。

この作品をこれほど濃厚で感動的に演奏したのは他に記憶がありません。これまでのシベリウスの常識を完全に超えて(逸脱して)いますが、これは素晴らしい演奏でした。
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サイモン・ラトル指揮 バーミンガム市交響楽団

ラトル★★★★★
一楽章、爽やかな自然をイメージさせるホルン。第一主題は豊かな表情で歌います。第二主題は少しテンポを速めますが、弦も含めてとても積極的な表現です。金管は心地良く鳴り響きます。
二楽章、大きな表現ではありませんが、細部まで神経細やかな表現がされています。
三楽章、大きい物が駆け抜けるような感じの第一主題。ホルンの鐘のモチーフはフワフワとした音色で速めのテンポで演奏された後に力強い演奏になります。間を空けたりテンポを落としてたっぷりと歌う部分もあります。感動的に盛り上がって終わりました。

細部まで表現の行き届いた演奏で、テンポの動きもありました。シベリウスにしては表現が大きい感じはありましたが、なかなか聞かせる演奏でした。
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オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★☆
一楽章、細身ですが、遠くから迫って来るホルン。木管の第一主題は清涼感があります。金管はしっかりと鳴らします。墨絵と言うほどではありませんが、かなり淡い色彩です。ティンパニの強打には驚かされました。
二楽章、この楽章は木管がかなり濃厚な色彩を発します。
三楽章、かなり疾走する第一主題。ホルンの鐘のモチーフは控えめでアタックも強く無く始まりましたが、次第に強くなります。弱音で間を取ったりする表現もなかなか良いです。最後は絶叫することなく、余裕たっぷりでした。

強弱の振幅がはっきりとした演奏でしたが絶叫するような咆哮はありません。さりげない表現もなかなか良かったです。
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エサ=ペッカ・サロネン指揮 スウェーデン放送交響楽団

サロネン★★★★☆
一楽章、とても雄大なホルン。涼しげな第一主題。トランペットと共に入るティンパニの意表を突く強打にびっくりさせられます。トゥッティはとても雄大でスケールが大きいです。冷たくはありませんが涼しげです。ここ一発のエネルギーはなかなかです。
二楽章、トゥッティの雄大さとは対照的な木管の小さなソロ。
三楽章、激しい疾走感ではありませんが、前へ進む力のある第一主題。ここでもティンパニが意表を突く強打です。ホルンの鐘のモチーフはゆっくりめで控え目で始まり、その後さらに遅くなります。フィンランドの指揮者の演奏としてはかなり強いコーダでした。.

雄大で、振幅の大きな演奏で、涼しげな空気に支配されていました。意表を突くティンパニの強打には何度も驚かされました。
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レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★
一楽章、伸びやかで豊かな表情で感動的な冒頭のホルン。表現を意図的に抑えているような第一主題。弦のトレモロに埋もれるような第二主題。渋い響きで高揚しても濃厚な色彩にはなりません。スケルツォの荒々しさは程ほどでした。
二楽章、内面へ凝縮して行くような主題。動き回る旋律ですが、決して外へと発散することは無く、内側へと凝縮して行きます。華美にならず、純粋な作品愛が感じられる演奏です。とても安堵感があります。
三楽章、弦のトレモロにも力があって、力強い第一主題。少しテヌートぎみのホルンのモチーフは次第に力を増してきてマルカートになります。ホルンに提示されたモチーフがトランペットに表れても色彩感が乏しいので、鮮明な輝かしさはありません。

とても素朴な雰囲気の演奏でしたが、色彩感が乏しく祝典的な輝きはあまり感じませんでした。

サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団

バルビローリ★★★★
一楽章、大きく歌うホルン。木管の主題もとても豊かに歌います。第二主題も感情がこもった表現です。とても感情表現が大きく振幅の激しい演奏です。録音の古さからか、若干メタリックでザラザラとした弦。
二楽章、表情豊かで深みのある第一主題。感情が込められている分暖かい演奏になっています。表現やテンポの動きなど作品への共感を感じさせます。
三楽章、あまり疾走感の無い第一主題。強弱の変化はとても大きいです。感情のこもった大きな表現はなかなか良いです。ある意味絶叫と言っても良い程のかなり激しく盛り上がるコーダ。

かなり感情の込められた演奏で、表現やテンポの動きの大きなものでした。作品への共感をとても感じさせる演奏でしたが、美しさはありませんでした。
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ロリン・マゼール指揮 ピッツバーグ交響楽団

マゼール★★★★
一楽章、マゼールらしいこねくり回すようなホルン。ゆっくりとしたテンポで濃厚な第一主題。ピッツバーグsoはシルキーな響きでは無く、密度が薄く、表面がザラザラとした感じの響きです。
二楽章、かつての強引な表現は影を潜め自然な表現とゆったりとしたテンポで心地良く音楽が流れて行きます。最後はかなりゆっくりになりました。
三楽章、強弱の変化の大きい第一主題。ホルンの鐘のモチーフは最初は弱く演奏されますが、二度目にはテンポも落として強く演奏されます。強弱の変化はかなり意識して強く付けているようです。最後は大きな盛り上がりでしたが、テンポも速めてしまったので、感動的な感じはありませんでした。

ゆっくりとしたテンポを基調にして豊かな表現の演奏でした。テンポも遅くすることもあり、濃厚な表現もありました、ただ、最後にアッチェレランドしてしまうので、感動的にはならなかったのが残念でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第5番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第5番2

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第5番名盤試聴記

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団

icon★★★
一楽章、伸びやかに大きく歌うホルンですが、独特の響きは好き嫌いが分かれそうです。続く木管は涼しげです。やはりこの曲でもトランペットは強烈です。劇的で振幅の大きな表現。とても激しい音楽になっています。この曲がこんなに激しい曲だったか?と思わせるほど激しい演奏です。嵐のように強烈に吹き荒れる音。表現もすごく積極的です。ギンギンのコーダ。凄い演奏です。
二楽章、この楽章でも積極的な歌は変わりません。本当に良く歌います。振幅の大きな演奏も変わりありません。この曲はもっと穏やかな曲だと思っていましたが、この考えを根底から覆すような演奏です。
三楽章、激しく箒で掃くようなホルン。アクセントを付けて短めに演奏します。トランペットはホルンほど強いアクセントにはなっていませんが、ブレスがはっきりと分かる演奏は少し雑に感じます。まさに咆哮と言うにふさわしい絶叫です。

とにかく強烈な演奏でした。シベリウスも演奏によってこんな風にもなるんだ。と言う驚きに満ちた演奏でしたが、これはシベリウスの音楽ではないと思いました。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★
一楽章、大自然を感じさせる伸びやかなホルン。透明感があって生き生きと動く木管の第一主題。緊迫感のある第二主題。やはりこの曲でも豪華に鳴り響くトランペット。カラヤンのセッション録音では良くある演奏ですが、表面はとてもきれいなのですが、内面に深く切り込むような表現がありません。コーダは豪快に鳴り響きます。
二楽章、あまり表現は無く、淡々と朴訥とした主題。変奏もあまり深い表現も無く、美しく過ぎて行きます。
三楽章、疾走感のある第一主題。激しさも思い切った激しさではなく美しさを意識したものです。ホルンの鐘の響きはレガート奏法であまり鮮明ではありません。快活で動きのある木管。終結の金管の豪快な鳴りっぷりは見事でした。倍管にした狙いは見事に反映しています。

おおむね淡々とした表現で、深く切り込むような表現はありませんでした。ただ、終結の豪快な金管は見事でした。

ユッカ=ペッカ・サラステ指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団

サラステ★★★
一楽章、美しいホルン。北欧の澄み切った空気を連想させるような木管の第一主題。大きな表現や主張はせず、作品そのものを忠実に演奏することによって作品の美しさを表現しようとしているようです。波打つような金管。飛び跳ねるように躍動する木管。最後はかなり速いテンポになって終わりました。
二楽章、ライヴとは思えない、とても澄んでいて美しい演奏です。ただ、冷たさはほとんど感じません。ライヴを感じさせないほどの静寂感です。
三楽章、引き締まった第一主題。ホルンの鐘のモチーフからの盛り上がりも見事でした。淡々と演奏される第二主題。この楽章も最後は速くなりました。

冷たい空気感は感じない演奏でしたが、非常に美しい演奏でした。感動的に盛り上がるところでテンポを速めて行くので、感情があふれ出ることはありませんでした。
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ウラディーミル・アシュケナージ指揮 フィルハーモニア管弦楽団

アシュケナージ★★★
一楽章、遠くから近づいて来るようなホルン。氷のような冷たさを感じさせる木管の第一主題。シベリウスらしい冷たい空気が支配しています。スケルツォ主題は生き生きとした躍動感がありますが、響きは透明感があって美しいです。
二楽章、作品に真摯に向き合っているようで、とても真面目な演奏です。
三楽章、前へ進む力はあまり感じない第一主題。最後はあまり落ち着きの無いあっけらかんとした終わり方でした。

冷たい空気感と真摯に作品に向き合った演奏でしたが、最後の落ち着きの無いあっけらかんとした演奏で全体のバランスが保たれていない感じがしました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1965年)

カラヤン★★☆
一楽章、おそらくザイフェルトであろうホルンのふくよかな演奏。艶やかな木管の主題。冷たい空気感はありません。後のEMIとの録音のような豪華絢爛な感じは無く、作品には正直な演奏です。ただ、シベリウスにしては余分な贅肉が付き過ぎている感じで、ブヨブヨとした響きです。
二楽章、速めのテンポですが、色彩は濃厚です。余分なものを削ぎ落としたような純粋な感じはありません。
三楽章、疾走感のある第一主題ですが、やはり響きがふくよか過ぎます。第二主題も豊かな響きでふくよかです。コーダではテンポを速めました。

シベリウスらしい余分なものを削ぎ落としたような純粋さは無く、かなりふくよかな演奏でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団

カラヤン★★☆
一楽章、引き締まったホルン。少し冷たい木管の主題。第二主題も鋭い響きです。後のベルリンpoとの録音のようなふくよかさや豪華絢爛な演奏ではありません。大きな表現はありませんが、突き刺さってくるような鋭い響きが特徴的です。コーダは激しい演奏です。
二楽章、素朴な表現の主題。
三楽章、あまり前へ進もうとはしない第一主題。ホルンの鐘のモチーフは少しバリバリと演奏するので、荒く聞えます。少し寂しさを感じさせる第二主題。豪快に鳴り響くコーダですが、少し雑な感じもします。

引き締まって鋭い響きで、冷たい空気感もありましたが、荒く雑な感じもありました。
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ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 NHK交響楽団

ブロムシュテット★★
一楽章、デッドですが歌うホルン。潤いのある木管。デッドな録音でどの楽器も全て前に出てきます。ヒスノイズが盛大です。トランペットも輝かしく美しいです。
二楽章、一昔前に比べるとN響もとても良く鳴るようになりました。ライヴですが、伸びやかに鳴ります。ただ、寒さは感じません。
三楽章、積極的な表現ですが、前へ進む力はあまり無い第一主題。浅い響きのホルンの鐘のモチーフ。コーダでテンポを速めました。

かなりの熱演でしたが、デッドな録音で全ての楽器が前に出で来るので、奥行き感が無く浅い響きになりました。また、冷たさも感じさせませんでした。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 BBCフィルハーモニック

ホーレンシュタイン
一楽章、古いライヴならではのデッドで近接した音場感です。速めのテンポであまり感情を込めずに進みます。トランペットの汚い響きで、シベリウスらしい自然の清々しさを感じることが出来ません。
二楽章、温度感は高く、冷たい空気はありません。
三楽章、スピード感はありますが、かなり太い響きの第一主題。かなり活発に動く演奏で、積極的な表現です。最後は盛大に盛り上がりましたが、やはり雑な響きで、シベリウスらしい精錬さはありませんでした。

速めのテンポで力強く進む演奏でしたが、古いライヴ録音らしく、トゥッティでの雑に聞える響きがシベリウスらしさを削いでいました。
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ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ
一楽章、録音が古いせいか硬い響きのホルン。木管の第一主題も団子になるような塊に聞えます。騒々しいトゥッティでシベリウスらしい無駄なものを削ぎ落とした精錬さは感じません。コンベアに乗った流れ作業のように処理されて行く音楽。冷たさや自然を感じることもありません。むしろ都会的な雰囲気さえあります。
二楽章、慌ただしくやはり騒々しいです。
三楽章、豊かな表情と疾走感のある第一主題ですが、荒々しさがあります。ホルンの鐘のモチーフは痩せていて豊かな響きではありません。熱気さえ感じさせる演奏で、シベリウスの音楽のイメージとは遠い演奏でした。

録音の古さもあり、騒々しく暑い演奏でした。表面だけを取り繕ったような演奏であまり良い演奏とは思えませんでした。
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