カテゴリー: ショスタコーヴィチ

ショスタコーヴィチ交響曲第9番

ショスタコーヴィチの交響曲第9番は、1945年に作曲された作品で、彼の交響曲の中では比較的軽快でユーモアに満ちたものです。彼の前作である第7番「レニングラード」や第8番が戦争の影響を色濃く反映しており、重々しくドラマチックな内容だったのに対し、第9番はまるで聴く人の期待を裏切るかのように、短く軽妙で、風刺的な要素が感じられます。

この交響曲は、5つの楽章で構成されていますが、通常の交響曲のように大規模な展開はなく、むしろ古典的な構成に回帰した感じがします。当時のソビエト連邦では、戦争勝利を記念する荘厳な作品が求められていたため、ショスタコーヴィチが第9番で軽妙な曲を作ったことは当局から批判されました。それでも、彼はこの作品にユーモアと皮肉を込め、聴衆を驚かせました。

第9番は、以下のような特徴的な要素を持っています:

  1. 軽快なテンポと明るい旋律 – 第1楽章は明るいマーチのようなリズムで始まり、軽やかで楽しい雰囲気が漂っています。
  2. 風刺的でコミカルな要素 – 随所にショスタコーヴィチらしいユーモラスな表現があり、特に第3楽章の変則的なリズムや、第4楽章の皮肉を込めた短いテーマは独特です。
  3. ユニークな構成と短い楽章 – 全体として短めの楽章が並んでおり、壮大なフィナーレというよりも、軽妙なエンディングが印象的です。

ショスタコーヴィチの交響曲第9番は、戦後の沈鬱な気分から少し解放されるかのように、聴く人に軽い息抜きを与える作品といえるでしょう。その風刺的な内容と明るさが、聴衆や批評家の間で物議を醸し、ショスタコーヴィチの多面的な音楽性を象徴するものとして評価されています。

キリル・コンドラシン/ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー

★★★★★

一楽章、速いテンポの導入部。鬼気迫る表現です。明るいトロンボーン。引き締まった緊張感が素晴らしい。

二楽章、独特の暗い雰囲気の木管。絶望的な弦。

三楽章、集中力が高く、強いエネルギーを感じる演奏です。

四楽章、重量感のあるチューバ。悲痛なファゴット。

五楽章、ゆっくり目のファゴット。オーボエが入っても落ち着いたテンポです。次第にテンポが速まって緊張感が高まります。コーダの直前で少しテンポが落ちました。

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ワシリー・ペトレンコ/ロイヤル・リバプールフィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

一楽章、快速で明快な導入部。伸びやかで明るいトロンボーン。筋肉質で弾力のある表現で、精度も高いです。

二楽章、感情が込められてゆっくりとしたテンポのクラリネット。ゆっくりと吐き出すような弦。暗く絶望感を感じさせるような演奏です。

三楽章、精緻で見通しの良い演奏。鋭く響くトランペット。

四楽章、控えめなトロンボーンとチューバ。暗いながらも暖かみを感じるファゴット。

五楽章、ゆっくり目です。オーボエが入るとスピード感のある演奏へと一変します。精緻で爽快感のある演奏はとても心地良いものです。終盤の金管あたりからの加速も見事でした。

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アレクサンドル・ラビノヴィチ=バラコフスキー/シンフォニア・ヴァルソヴィア

★★★★★

一楽章、ソフトなタッチの導入部。生命観のある演奏です。柔らかいトロンボーン。かなり積極的な表現です。

二楽章、感情がこもって豊かな表現のクラリネット。弦もテンポが動いて豊かな表現です。

三楽章、速めのテンポでここでも積極的な表現です。スネアは緩めです。

四楽章、余裕があって美しいトロンボーンとチューバ。感情豊かなファゴット。

五楽章、弦が入ってからかなり速いテンポになります。粒だって生き生きとした演奏です。駆け抜けて爽快に終わりました。

コンスタンティノス・カリディス/WDR交響楽団

★★★★★

一楽章、かなり早めのテンポで荒々しい導入部。ソフトなトロンボーン。終始激しい演奏です。

二楽章、陰影のある豊かな表現のクラリネット。表現の幅が広い演奏です。ゆったりと歌うフルートも良い表現です。

三楽章、この楽章も速めでとても活発な表現です。ティンパニもかなり存在感があります。

四楽章、グイグイと進むトロンボーンとチャーバ。ファゴットもこれ以上出来ない程の広い表現です。

五楽章、この楽章はゆったりとしたテンポですが、やはり表現はとても豊かです。一転してオーボエから速いテンポです。駆け抜けて終わりました。

この作品を表現し尽くしたような演奏でした。

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ユッカ=ペッカ・サラステ/WDR交響楽団

★★★★★

一楽章、豊かな残響で、生き生きとした導入部。フワッとした柔らかいトロンボーン。ゆったりとしていて、伸びやかで広々とした演奏です。

二楽章、ギュッと内側に込められた密度の高いクラリネット。不安が迫ってく来るような表現の、柔らかい弦。

三楽章、テンポも速く、活発な表現です。濃密で、一音一音がガリガリと迫って来ます。

四楽章、弱めですが、豊かな表現のトロンボーンとチューバ。豊かな表現のファゴット。

五楽章、ゆっくり目のファゴット。オーボエからテンポが速くなります。コーダで加速して爽快に終わりました。

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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立交響楽団


★★★★★

一楽章、せわしなく速いテンポの導入部。笑うようなトロンボーン。ピッコロも活発な動きです。吠える金管。怒涛のように突き進む演奏です。

二楽章、深く歌うクラリネット。ざわざわとする弦。実に味わい深い楽章でした。

三楽章、ゆっくり目で抜けの良いクラリネット。力強いトランペットが炸裂します。

四楽章、この演奏の中では控えめなトロンボーンとチューバ。ファゴットも切々と歌います。

五楽章、ゆったりとしたファゴット。大きなテンポの変化が無く進みますが再現部の前で急加速。再現部の直前でまたテンポを落とし、その後また加速と目まぐるしく変化します。スヴェトラーノフらしい痛快な演奏でした。

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ケンナジー・ロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省交響楽団

★★★★★

一楽章、とても静かに始まります。とても積極的で大きな表現です。バリバリと響くトロンボーン。ロジェヴェンらしい下品な演奏。考えられることやり尽くすような演奏です。脂ぎった濃厚な曲に生まれ変わっています。

二楽章、とても陰鬱なクラリネット。感情を込めて表現します。フルートも暗く密度が高いです。暗いですが、消え入るような弱音と、力のある強い音の振幅が大きい。

三楽章、速いテンポで勢いのある木管。鋭く遠慮の無い金管。

四楽章、バリバリととても下品に響くトロンボーンとチューバ。濃厚に表現するファゴット。とても引き込まれる演奏です。

五楽章、軽い表現になったファゴット。木管の高音は鋭く突き刺さって来ます。表現の幅が広く力強い演奏でした。

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ウラディミール・スピヴァコフ/ロシア・ナショナルフィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

左のジャケット写真とは違う演奏です。2014年の録音。

一楽章、大きな表現の導入部。引き締まって緊張感のある演奏です。伸びやかなトロンボーン。緩く抜けの良いスネアが鋭く切り込んで来ます。

二楽章、憂鬱なクラリネット。緻密で生き生きとした演奏。押し寄せて来るような4拍子。

三楽章、とても濃厚な色彩感。

四楽章、かなり弱く入って次第に強くなったトロンボーンとチューバ。かなり強いシンバル。

五楽章、ゆっくりとしたテンポで始まります。かなり情報量が多い。快速のコーダ。

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ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団

★★★★☆

一楽章、丁寧な表現で明快な導入部。立ち上がりの鈍いトロンボーン。タロールのようなピッチの高いスネア。艶やかで美しいヴァイオリンのソロ。

二楽章、くっきりとした輪郭のクラリネット。不安を感じさせる弦。とても美しい響きです。

三楽章、ゆっくり目ですが、ここでもくっきりと明快なクラリネット。少し奥まったトランペット。

四楽章、割と軽めのトロンボーンとチューバ。美しいですが、あまり大きな表現はしないファゴット。

五楽章、とてもゆっくりとした冒頭。オーボエが入って少しテンポが速くなりますが、それでも遅めです。混沌として再現部で一変して明快になります。

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ニコラス・コロン/hr交響楽団

★★★★☆

一楽章、落ち着いて、深みのある導入。明るいトロンボーン。強いピッコロ。とてもクッキリとした明快な演奏です。

二楽章、陰影を伴い広い表現のクラリネット。諦めのような弦。

三楽章、色彩感の濃厚な演奏です。鋭く響くトランペット。

四楽章、控えめなトロンボーンとチューバ。明るく浅いファゴット。

五楽章、ゆっくり目ですが、若干短めに演奏されるファゴット。その後は流れるように続きます。混沌として来て再現部。駆け抜けて明快に終わりました。

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セルジュ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団

★★★★

一楽章、ゆっくりとした導入部。柔らかいトロンボーン。とても精緻で、重量感があります。

二楽章、消え入るような弱音。密度が濃く厚い響き。遅い演奏ですが、緊張感は保たれています。

三楽章、かなり遅い演奏です。力強いトランペット。

四楽章、荒ぶるトロンボーンとチューバ。クラッシュシンバルが入りました。暖かいファゴット。

五楽章、この楽章はかなり遅いテンポです。この作品の演奏としては、全く別世界です。オーボエが入ると一般的なテンポになりました。第一主題になるとまた少し遅くなります。チェリビダッケらしい重厚な演奏です。再現部はとても賑やかです。これまでとは一転して快速にコーダ。

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マリス・ヤンソンス/オスロ・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、編成が小さいように感じる軽やかな導入部。大きく響くトロンボーン。筋肉質で動きの明快な演奏です。

二楽章、かなり陰影のあるクラリネット。引き締まっていて、敏感な反応のある演奏です。

三楽章、控えめに響くクラリネット。細い響きのトランペット。

四楽章、力の抜けたトロンボーンとチューバ。ファゴットもクラリネット同様少し離れたところから美しく響いています。

五楽章、ゆっくりとした第一主題。オーボエが出るあたりからテンポが速くなります。スネアは締まってはいませんが抜けの良い響きで心地良いです。再現部はゆったりと大きく広い演奏で、その後テンポが一気に速まります。爽快におわりました。

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ルドルフ・バルシャイ/ケルン放送交響楽団

★★★★

一楽章、速めで軽快な導入部。明るいトロンボーン。ウェットなスネア。バルシャイの演奏にしてはメリハリがあります。艶やかで美しい響きです。

二楽章、少し離れた所からニュートラルな響きのクラリネット。とても暗い演奏です。この楽章はほの暗い雰囲気です。

三楽章、くっきりとした色彩感です。暗く伸びの無いトランペット。

四楽章、トロンボーンとチューバも暗い響きです。暗闇から浮かぶようで、一音一音丁寧なファゴット。

五楽章、ゆっくりと演奏されるファゴット。大きくテンポが上がらずとても落ち着いた演奏。コーダは緊迫感がありますが、最後は肩透かしで終わる。

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ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン/香港フィルハーモニー管弦楽団

★★★☆

一楽章、速めのテンポで生き生きとした表現です。間接音を含んだトロンボーンとピッコロ。緩いスネア。

二楽章、高音域だけ飛び抜けるクラリネット。不吉な予感を感じる弦。

三楽章、ゆったりとしたテンポです。積極的に表現しています。

四楽章、かなり余裕のあるトロンボーンとチューバ。

五楽章、あまり強い個性を感じさせる演奏ではありませんでした。

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ウラジーミル・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

★★★☆

一楽章、あっさりと淡白な導入部。明るいトロンボーン。緩いスネア。色彩感もあまり無く、演奏全体も締まりが無く、緩い感じです。

二楽章、伸びやかさが無く、押し込められたような録音。弦も暗く苦しい感じがします。この重苦しさが狙いなのか?

三楽章、この楽章も暗い演奏です。トランペットは奥まったところから鋭く響きますがやはり暗い。

四楽章、控えめなトロンボーンとチューバ。ファゴットもほの暗い雰囲気です。

五楽章、ゆっくりとしたファゴット。ここも色彩感が無く暗い。弦が入ってから少しずつテンポが速くなります。コーダに入ると一転してお祭り騒ぎのようになりました。

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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★

一楽章、ねっとりと尾を引くような演奏です。鋭く立ち上がるトロンボーン。独墺の作品なら潤いのある演奏になるのだと思いますが、ちょっと趣を異にする演奏です。

二楽章、とても静かに始まるクラリネット。ねちっこくテンポが動きます。フルートが入る頃にはかなり遅くなっています。4拍子はさらに遅く完全にバーンスタインの世界です。かなりねちっこい演奏です。

三楽章、この楽章もかなり遅い。

四楽章、重厚なトロンボーンとチューバ。暖かいファゴットはかなり濃厚な表現です。

五楽章、クレンペラーも遅い演奏でしたが、それに濃厚でしっとりした音色と濃厚な表現が加わった演奏でかなり重たいですが情報量はかなり多い演奏です。
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セルジュ・チェリビダッケ/スウェーデン放送交響楽団

★★

一楽章、チェリダッケにしては快速の導入部。明るいトロンボーン。ウェットなスネア。炸裂せずに抑え気味な金管。

二楽章、この楽章も普通のテンポです。1964年の録音らしいので、晩年のような遅いテンポで独特の味わいのある演奏ではありません。消え入るような弦が美しい。

三楽章、かなりゆっくりとしたテンポで始まります。ここでもトランペットは詰まったような響きです。

四楽章、控えめなトロンボーンとチューバ。細く、少し首を絞められたように窮屈な響きのファゴット。

五楽章、遅いテンポが消化し切れていないような、たどたどしいファゴット。伸びの無いトランペットがかなり気になります。

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オットー・クレンペラー/RAI国立交響楽団

一楽章、凄く遅い導入部。かなり古い録音です。テンポの動きはありますが基本的には遅く、泰然自若で全く動じない演奏で、サービス精神など微塵もありません。

二楽章、この楽章もゆっくりとした演奏です。私にとってはクレンペラーはとても苦手な指揮者です。表現らしい表現も無く流れて行くので緩い演奏に感じてしまいます。

三楽章、かなり奥まったトランペット。

四楽章、素っ気ないトロンボーンとチューバ。ファゴットも雑に聞こえてしまいます。

五楽章、この楽章も遅めのテンポです。最後にテンポが遅くなって終わりました。私には理解不能です。

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ショスタコーヴィチ交響曲第8番

ショスタコーヴィチの交響曲第8番は、1943年に作曲された重厚で暗い雰囲気の作品で、彼の交響曲の中でも特に悲劇的な内容が込められています。第7番「レニングラード」がナチス・ドイツによる包囲戦への抵抗をテーマにした明るい勝利の音楽であるのに対し、第8番は戦争の苦しみや悲劇を深く描いたもので、聴く者に強烈な印象を残します。

この交響曲は5つの楽章で構成され、シリアスでドラマチックな展開が特徴です。特に以下のような要素が見どころです。

  1. 第1楽章:深い悲しみと不安感
    第1楽章は長大で重々しく、哀しみと恐怖が感じられる音楽です。弦楽器のうねりが暗い雰囲気を強調し、金管楽器が不安なムードを煽ります。戦争の恐怖と人々の苦悩を描いたような楽章です。
  2. 第2・第3楽章:緊張と狂気
    第2楽章と第3楽章は短く、緊張感に満ちたスケルツォ的な性格を持ちます。特に第3楽章は機械的で激しいリズムが支配的で、狂気や戦争の破壊性が反映されています。
  3. 第4楽章:内面の静けさ
    第4楽章はスローで、全体として内省的な雰囲気があります。この楽章では、戦争の悲劇に対する静かな祈りや、喪失の痛みが感じられ、全体的に沈黙の中に包まれるような印象を与えます。
  4. 第5楽章:かすかな希望の光
    最終楽章では穏やかな旋律が流れ、どこか希望を取り戻すような音楽が展開されますが、明確な勝利や救いというよりも、痛みを抱えながらも未来を見据えようとするような終わり方です。

ショスタコーヴィチの交響曲第8番は、戦争の破壊や苦しみに対する深い洞察が表現されており、悲壮感と強烈な内面の叫びが特徴です。このため、戦争の「勝利」だけでなく、その裏にある犠牲と痛みを忘れてはいけないというメッセージが込められているとされています。

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1982年ライヴ

★★★★★

一楽章、一音一音に深みのある序奏。密度が高く厳しい第一主題。淡々と冷たい第二主題。とても寂しい演奏です。もの悲しい第三主題。ティンパニは控えめです。トランペットの第二主題は安定感があって強いです。鍛え抜かれたレニングラードpoの演奏は素晴らしい。感情が込められて悲痛なイングリッシュ・ホルン。

二楽章、音が溢れてきて圧倒されます。色彩感もとても濃厚です。

三楽章、高い集中力が感じられる均整の取れた演奏。力強いトランペット。

四楽章、薄いドラば盛大に鳴ります。早めに静まって、かなり抑えられた葬送の音楽。コントラバスの上を漂うヴァイオリン。鋭く響くピッコロ。陰影のあるクラリネット。かなり暗い雰囲気の演奏です。

五楽章、少しずつ雰囲気を変えるファゴット。高い緊張感を保ち続ける見事な演奏です。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1983年3月15日

★★★★★

一楽章、少し遠目で柔らかい序奏。冷たい第一主題。第二主題も冷徹に厳格に進みます。鬱々として暗い第三主題。ティンパニは控えめです。トランペットは少し奥まっていますが、安定感があります。行進曲風の部分もどっしりとした安定感です。整然としていて、統制が取れています。淡々としたイングリッシュ・ホルン。

二楽章、見事な集中力。軽々と演奏しているように聞こえますが、鍛え抜かれたレニングラードpoの集中力は素晴らしい。

三楽章、深みのある弦の刻み。ムラヴィンスキーが完璧にコントロールしていて、全く乱れることはありません。素晴らしいトランペットのソロ。

四楽章、割と早めに静まります。とても静かで凝縮された葬送の音楽。コントラバスの上をヒラヒラと舞うようなヴァイオリン。僅かにビブラートが掛かったホルン。最初は少しかすれたように響くピッコロ。高音が突き抜けて、次第に舞い降りて来ます。密度の高いクラリネット。

五楽章、雲の中から日が差すようなファゴット。集中力が高く歌うチェロ。鋭く冷たいオーボエ。切れ味鋭い刃物のような金管。

キリル・コンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

一楽章、重量感のある序奏。消え入るように弱く演奏される第一主題。少し速めですが、第二主題も静かですが豊かに歌います。第三主題は弱々しい。スネアきかなり近い。ミキシングのミスだと思います。全体に速めのテンポでグイグイと進みます。トランペットも力強いです。アレグロはかなり速いです。激しい打楽器のクレッシェンド。哀愁を感じさせるイングリッシュ・ホルンは細身で少し遠いです。

二楽章、この楽章も速めのテンポでかなり荒々しい。速いテンポが緊迫感を生んでいます。超絶技巧のような演奏。

三楽章、少しアンサンブルが緩い弦の刻み。この楽章も速いテンポでくっきりと描き分けられて行きます。強烈なティンパニ。

四楽章、尋常では無い強奏。葬送の音楽も速いテンポで、とても静かです。とても振幅の激しい演奏で、魂をぶつけて来るような感じです。

五楽章、前の楽章とは対照的にゆっくりと、日が差すようなファゴット。とても積極的に表現されて、激しく叩き付けるような演奏です。ティンパニの強打は凄い!どの演奏とも違う独特の世界です。

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ベルナルト・ハイテンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2000年

★★★★★

一楽章、勢いのある序奏。かなり激しく反応しているオケ。第一主題は極端に音量を落とすことはありません。大きなうねりのある演奏です。第二主題も豊かな表現です。弦を中心に盛り上がるエネルギー感も凄いです。悲しみが伝わって来るイングリッシュ・ホルン。

二楽章、強いティンパニの一撃、弦も生き生きとした表現です。

三楽章、弦の刻みの間に入るコントラバスも濃厚で、鮮明な色彩感です。柔らかいトロンボーンの刻み。ベルリンpoらしい引き締まったスネアも良い。

四楽章、冒頭はあまり強いエネルギー感ではありません。静まってからの表現も意欲的です。どの楽器も良く表現しています。

五楽章、のどかで穏やかなファゴット。打楽器のロールの後のトロンボーンでテンポを落としました。音楽に命が宿っているような生き生きとした演奏です。

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クリストフ・エッシェンバッハ/エーテボリ交響楽団

★★★★★

一楽章、ゆったりとしたテンポで、チェロのジーと言う響きが強い序奏。独特のバランスです。ゆっくりと凝縮した第一主題。第二主題もゆっくりです。第三主題もゆっくりですが、音が拡散せず、ギュっと締まって強い音です。一つ一つの音に力がこもっています。金管も炸裂してかなり激しいです。まるでマーラーを聞いているような激しさです。引き締まって細身のイングリッシュ・ホルンですが、感情を込めて訴えて来ます。

二楽章、ゆっくりと粘りのある表現。大きくテンポを動かす部分もあります。録音にもよるのかも知れませんが、音が前に出て来るので、とても激しい演奏に感じます。

三楽章、乾いた響きでリズムが刻まれれます。柔らかくリズムを刻むトロンボーン。激しいクライマックス。

四楽章、力を込めたまま静まって行きます。暗い葬送の音楽。絶望的に暗い演奏です。

五楽章、よく歌うファゴット。続くチェロは硬く陰影があります。明確で強い表現です。暗闇の中から響くようなバスクラもとても豊かな表現です。続くファゴットもテンポも動いて表現します。

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ワシリー・ペトレンコ/ロイヤル・リバプール管弦楽団

★★★★★

一楽章、厚みがあって柔らかい序奏。とても抑えられた第一主題。第二主題も内に秘めた静かな演奏です。暖かみのある第三主題。若干緩めですが、スネアが良く鳴っています。金管は抑えられていて前には出て来ません。ペトレンゴはとても良くオーケストラをコントロールしています。良く整ったバランスの録音です。

二楽章、重量感は無く、軽く美しい演奏です。

三楽章、ガリガリと乾いた響きでリズムを刻みます。とても良く響きますが、悲痛では無い木管。キリッとしたトランペットのソロ。ティンパニも軽い響きです。

四楽章、大太鼓が硬い撥で鋭く強打しています。葬送の音楽も静かですが、それ程暗いものではありません。ホルンも細身で美しい。ピッコロもピンポイントで美しい。とても録音は良いです。

五楽章、柔らかく歌うファゴット。抑制された端正でとても美しい演奏です。

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マリス・ヤンソンス/ピッツバーグ交響楽団

★★★★★

一楽章、コントラバスの厚みは無く、エッジの効いた序奏です。とても静かで消え入るような第一主題。層が重なって拡がります。第二主題も線が細くロシアの音楽のイメージとはかなり違う演奏です。かなり寂しい雰囲気の第三主題。スネアはかなり遠くから響きます。トランペットは奥から強く響きますが、荒れ狂うような感じは全くありません。イングリッシュ・ホルンも細身ですが、美しい。全体にとても静かで、全く波が無く静まった湖面のような演奏でした。

二楽章、重い演奏です。とても静かで、金管が入っても整然としていて、全く波立つことがありません。

三楽章、木管も悲痛な感じは全く無く、美しく響きます。トロンボーンが刻むリズムはとてもソフトです。この作品の演奏としては、かなり異色です。

四楽章、消え入るような弱音に焦点が当てられ、聞き耳を立てるような演奏ですが、その弱音が美しい。陰鬱な雰囲気はとても良く表現しています。

五楽章、ゆっくりと演奏されるファゴットが残響を含んでとても美しい。恐らくこの作品の演奏としては、賛否の分かれるものだと思いますが、私にはとても良い演奏でした。

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ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団

★★★★☆

一楽章、柔らかくアンサンブルも緩い序奏。あまり静まらず緊張感の無い第一主題。微妙に揺れる第二主題。大きく歌う表現豊かな第三主題。とても良く歌い感情のこもった演奏です。テンポの変化も大きく、次第に表現がキリッとして来ました。

二楽章、柔らかい弦と、キリットした響きの木管が対比されます。くっきりと浮かび上がるピッコロとEbクラ。

三楽章、一音一音が離れている弦の刻み。木管は強いですが、悲痛ではありません。トロンボーンは弦とは違って緩めの刻みです。ハイピッチなスネア。あまり強い盛り上がりを感じさせません。

四楽章、大きく引いて行く感じはありません。暗い葬送の音楽を演奏する低弦の上をさまようような高弦。ライヴ録音ですが、とても鮮明です。

五楽章、とても良く歌うファゴット。色んな楽器が生き生きと表現しています。

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テオドール・クルレンツィス/SWR交響楽団

★★★★☆

一楽章、重量感のある序奏。ウェットで濃厚な色彩感。とても緊張感のある第一主題。ゆっくりと丁寧に演奏して行きます。第二主題も消え入るような静寂感です。第二主題もゆっくりとしています。弦の中に埋もれて響く金管。色彩感はとても濃厚で密度も高い。重苦しい雰囲気もあります。

二楽章、柔らかく始まりました。ピンポイントに浮かぶ表情豊かな木管。

三楽章、ガリガリと刻まれる弦。あまり悲痛な響きでは無い木管。残響を伴って柔らかいトランペットのソロ。

四楽章、重々しい音楽が次第に静まって行きます。葬送の音楽もとても静かです。美しいホルン。暗い雰囲気はとても良く表現されています。

五楽章、柔らかくこもった響きのファゴット。打楽器も入って盛り上がる部分でもそんなに強いエネルギー感はありません。テヌート気味のバスクラ。次第に脱力して行くような表現がとても良い。

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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団

★★★★☆

一楽章、激しい序奏。埃っぽくでザラザラした第一主題。第二主題もザラザラしていますが、ムラヴィンスキー独特の緊張感が伝わって来ます。ウェットなスネア。金管もかなり激しい演奏です。生々しいイングリッシュ・ホルン。トランペットはかなり強く、振幅の大きな演奏です。

二楽章、かなり激しい表現です。ピッコロの演奏も厳しい。

三楽章、乾いた響きの弦。悲痛な響きの木管。濃厚な色彩感もこのコンビの特徴です。

四楽章、良く歌うファゴット。ムラヴィンスキーらしい厳しい表現です。

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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロンドン交響楽団


★★★★

一楽章、ちょっとレンジが狭い感じの録音です。歪っぽくてザラザラした第一主題。第二主題もヴァイオリンの弱音は埃っぽい。第三主題は憂鬱で寂しい演奏です。展開部はかなり遅いです。スヴェトラーノフの演奏なので、もっとガツンと来るかなと思っていましたが、あまり強烈な演奏ではありません。イングリッシュ・ホルンは淡白です。トランペットはかなり強烈に響きました。

二楽章、かなり粘っこい表現です。一楽章よりもコントラストや表現が出て来ますが、それでもスヴェトラーノフの本調子では無いように感じます。

三楽章、かなり乾いた刻み。かなり演奏が生き生きとして来ました。ピリッとしたトランペットのソロはとても良い。緩いスネア。それぞれの楽器が立ってきました。

四楽章、あまり暗くは無く、歌う葬送の音楽。ピッコロは抑えられていて静かです。

五楽章、明るい雰囲気に一変するファゴットがとても良い表現です。秘めたようなチェロ。最初は寝ぼけているような演奏でしたが、完全に生き返って、深く抉った見事な演奏になって来ました。自在な表現で完全にコントロールされています。尻上がりに良くなりましたが、前半が悪すぎました。

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ベルナルト・ハイティンク/バイエルン放送交響楽団 2006年

★★★★

一楽章、コントラバスの上に乗る弦もバランス良く聞こえる序奏。悲痛な感じはあまり無く、暖かい第一主題。柔らかい第二主題。伸びやかな表現です。金管や打楽器も制御されていて、荒れ狂うような演奏ではありません。イングリッシュ・ホルンも暖かく歌い、安らかです。

二楽章、とてもマイルドな響きで、強い表現はありません。

三楽章、落ち着いた弦の刻み。木管も悲痛な響きでは無く、控えめに響きます。トロンボーンも整然と演奏します。トランペットはレガート気味に演奏します。スネアも程よく締まっています。

四楽章、ゆっくり目のテンポで丁寧に演奏しながら弱まって行きます。ここでも暖かみのある葬送の音楽。ムラヴィンスキーのような冷徹な演奏ではありませんが、こんな演奏もありかなと感じます。

五楽章、のどかで安らかなファゴット。クライマックスでもそんなに大きな振幅は無く、少し平板な感じもありますが一つ一つの響きはとても美しく魅力的です。

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セミヨン・ビシュコフ/WRD交響楽団

★★★★

一楽章、鮮明な響きです。密度の高い第一主題。第二主題も静かに切々と演奏されます。物悲しい第三主題。展開部の打楽器やトランペットは良いバランスで、落ち着いています。

二楽章、少し遅めのテンポで克明に表現します。痛みを感じさせる演奏です。

三楽章、枯れた響きの弦に悲鳴のように響く木管。スネアも引き締まっていて良い音です。

四楽章、前の楽章の悲痛な響きから、諦めにも似たような響きになり、悲し気な演奏になります。重苦しい雰囲気はとても良く表現しています。

五楽章、どこか陰のある音楽です。オケも上手く過不足なく表現されています。

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ルドルフ・バルシャイ/ケルン放送交響楽団

★★★

一楽章、豊かな残響で美しいですが、少し薄い響きの序奏。極端に音量を落とすことなく演奏される第一主題。ゆっくりと丁寧で美しい演奏です。深く刻まれるリズムに乗って柔らかく響く第二主題。かなり憂鬱な第三主題。展開部に入ってもテンポは遅く、ちょっと鈍重な感じを受けます。金管はバランス良く、突出して来ることはありません。録音はとても良いです。とても良く歌うイングリッシュ・ホルン。全体に静かで美しい演奏です。暗い雰囲気はとても良く表現しています。

二楽章、引きずるように重い表現です。この重さが鈍さにも繋がるように感じてしまいます。とても丁寧なのですが、その分勢いが無い。

三楽章、落ち着いた弦の刻み。木管も美しく、悲痛な響きではありません。トロンボーンの刻みも柔らかい。余裕を感じるトランペット。

四楽章、淡々と演奏される葬送の音楽。

五楽章、控えめなファゴット。丁寧で落ち着いていて、安定感がありますが、表現はあまり積極的ではありません。

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クルト・ザンデルリンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1997年

★★★

一楽章、あまり重量感が無く、密度も薄い序奏。ゆっくりと注意深く演奏される第一主題。穏やかな第三主題ですが、やはり密度は薄い。金管や打楽器は制御されていて、落ち着いています。ロシア音楽特有の凶暴さは感じません。哀愁に満ちた再現部。密度は濃くありませんが、注意深く丁寧な演奏が印象に残ります。

二楽章、ゆっくり目で、粘りのある表現です。金管は常に控えめで突き抜けて来ることはありません。

三楽章、ビオラがマットです。強い主張は無く、作品をありのままに演奏している感じですが、色彩感もあまり濃くはありません。引き締まったスネアはベルリンpoらしい。

四楽章、葬送の音楽ですが、そんなに暗く悲痛なものではありません。暗い音楽ですが、とても穏やかで、波がうねるように音楽が交錯するような演奏ではありません。

五楽章、とてもゆっくりとしたテンポで、穏やかです。チェロも淡々とした演奏です。盛り上がった場面では、ここぞと言う所で、粘っこく濃厚な表現もあります。テンポを少しずつ落として行くところもとても穏やかです。最後もそんなに暗くはなりませんでした。

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ケンナジー・ロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省交響楽団

★★★

一楽章、豊かな残響と高音域を少し強調した響き。冒頭から熱量の高い序奏です。落ち着いた始まりから振幅の大きな第一主題。内に秘めたような第二主題。憂鬱ですが、表現は大きい第三主題。展開部に入って、打楽器と金管が強烈です。シャリシャリとしたスネア。トランペットも熱を帯びて凄い演奏です。この作品でこれ程まで荒れ狂う演奏は初めです。ロジェストヴェンスキーらしい爆演です。艶めかしいイングリッシュ・ホルン。突然強く立ち上がるトランペット。

二楽章、速めのテンポで活動的です。とても生々しい演奏です。とにかくトランペットが強烈です。

三楽章、潤いのある弦の刻み。絶叫する木管。ヤンソンスの演奏とは対極の演奏です。ビリビリと鳴るトランペット。ジャリジャリとウェットなスネア。

四楽章、ビリビリと下品な響きが静まって行きます。騒々しい葬送の音楽。ビブラートの掛かったホルンも下品に感じます。潤いのあるクラリネット。

五楽章、速めのテンポであまり味わいの無いファゴット。伸びやかなチェロ。高音域が強調されていて、木目が粗く、ちょっと痛い響きです。バリバリと響くティンパニ。ギョッとするように飛び出すトロンボーン。サービス精神旺盛な演奏なのですが、そんな作品なのか?と感じるところもあります。

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マクシム・ショスタコーヴィチ/ロンドン交響楽団

★★☆

一楽章、シルキーで滑らかな序奏。ゆっくりと注意深く演奏される第一主題。これでもかと言うくらい濃密ですが、かなり遅く少し間延びしているように感じます。第二主題もかなり遅いですが、オケの集中力は高いです。陰鬱な第三主題。展開部に入ってかなり凶暴になります。打楽器のロールも盛大です。ストレートであまり歌わないイングリッシュ・ホルン。かなり力のこもった演奏ですが、少し凡長な感じがあります。

二楽章、この楽章もかなりの力感です。力が入っていて、激しい演奏で悪くは無いのですが、直球勝負のようで単調です。

三楽章、かなりの力演です。強弱の振幅も大きく、ロンドンsoも上手く、マクシムの本気度の高さも感じるのですが、あまりにもストレート過ぎて魅力が乏しいのがとても残念です。

四楽章、凄いパワーから少しずつ穏やかになります。かなり抑えられた葬送の音楽ですが、あまり悲しさや暗さはありません。

五楽章、静かに始まり動きが加わるファゴット。チェロも静かに流れて行きます。力のこもった振幅の大きな演奏でしたが、あまりにも浅い演奏に感じました。

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ベルナルト・ハイティンク/シュターツカペレ・ドレスデン 2004年

★★

一楽章、ゆっくりと柔らかく丁寧な序奏。少し埃っぽい第一主題。乾いていて潤いの無い第二主題。細い響きの第三主題。緩いスネア。金管もザラザラしていて、あまり美しい響きではありません。トランペットの強奏も汚い。

二楽章、ゆったりとしたテンポで堂々とした演奏です。

三楽章、乾いた響きの弦の刻み。木管は強くはありませんが悲痛な響きです。トランペットが歪んでいるのか、そんなに強い訳では無いのに、とにかく汚い。

四楽章、大太鼓のインパクトは硬い撥で、とても良い音です。葬送の音楽はあまり暗くはありません。あまり悲痛な感じはありません。

五楽章、柔らかくのどかな雰囲気のファゴット。録音の影響なのか色彩感もあまり感じません。トロンボーンは重量感があります。

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ウラディーミル・ユロフスキ/オーケストラ不明

一楽章、くっきりとした低弦と、密度薄く上に乗る弦。かなり音量を落とした第一主題。第二主題も静かで集中力の高い演奏です。緩いスネア。金管は奥に引っ込んでいて、音圧の変化が無く平板に聞こえます。淡々としているイングリッシュ・ホルン。

二楽章、録音のせいか、色彩も淡白で、密度の薄い演奏に感じます。

三楽章、ユロフスキの経歴からすれば、2000年代の録音のはずですが、どうしてこれほどまでに密度の薄い響きなのか。

四楽章、オフ気味で重量感も無く、演奏を楽しめませんでした。

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ショスタコーヴィチ交響曲第6番

ショスタコーヴィチの交響曲第6番は、1939年に作曲され、彼の交響曲の中でも特にユニークな構成と性格を持つ作品です。この交響曲は、彼の5番の成功後に作曲されたものであり、当時のソビエト連邦の政治的な影響を受けつつも、彼の独自の表現が色濃く現れています。

交響曲第6番は、伝統的な4楽章構成を取らず、3楽章構成になっている点が特徴です。また、楽章の性格が大きく異なり、対照的な面が描かれています。

各楽章の特徴

  1. 第1楽章:重厚で沈鬱なアダージョ
    第1楽章は長く、重々しく暗い雰囲気が漂います。弦楽器による深い表現が印象的で、内面の葛藤や不安を感じさせます。この楽章は、ショスタコーヴィチ特有の沈痛さと緊張感があり、まるで静かに苦しみを抱え込んでいるような音楽です。
  2. 第2楽章:活気あるアレグロ
    第2楽章は一転して、明るく軽快なアレグロです。このスケルツォ的な楽章はユーモアに満ちており、ウィットに富んだ軽やかな旋律が特徴です。皮肉や風刺が感じられ、聴く者に意外性を与える楽章になっています。
  3. 第3楽章:陽気で賑やかなプレスト
    最終楽章はさらにテンポが速くなり、陽気で勢いのある音楽が展開されます。行進曲風のリズムと遊び心のあるメロディが織り交ざり、祝祭的な雰囲気さえ感じさせます。しかし、そこにはどこか皮肉や軽妙な風刺が含まれており、単純な明るさだけではない独特の雰囲気を持っています。

全体の印象と背景

第6番は、特に第1楽章の重さと第2、3楽章の明るさという対比が際立っています。第1楽章では厳粛さと悲哀が表現されているのに対し、後半の2つの楽章でその重さが解消され、むしろ皮肉やユーモアが前面に出てくるという流れです。

ショスタコーヴィチがこの交響曲で表現したかったのは、単なる悲壮感や勝利の明るさではなく、ソビエト社会における複雑な感情の混在だったとも言われています。当時の政府からの期待を裏切るかのように、壮大な勝利のテーマはありませんが、それがむしろショスタコーヴィチらしい作品のユニークさとして評価されています。

このように、第6番は一見矛盾する感情の混在が感じられる作品で、彼の内面や当時の社会状況が色濃く反映された作品として知られています。

キリル・コンドラシン/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

★★★★★

一楽章、コンセルトヘボウの演奏ですが、厳しい響きです。テンポも速めで、切迫感があります。速いテンポで追い込まれて行くような感じがします。大きな苦悩や悲しみも表現されています。他の演奏とは一線を画すような壮絶な演奏です。

二楽章、勢いのあるトランペット。かなり凄みのある演奏です。まさにコンドラシンとオケの真剣勝負のような感じです。

三楽章、速めのテンポで若干乗り遅れている奏者もいるような感じの冒頭でした。空気感が他の演奏と全く違う。バランス良く爽快に鳴り響いて終わりました。
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パーヴォ・ヤルヴィ/エストニア・フェスティバル管弦楽団

★★★★★

一楽章、一体感のあるまとまった冒頭。伸びやかで美しい響きです。一つ一つの楽器がくっきりとしています。伸び伸びと響く金管がとても気持ちいい。静寂感もありますが、冷たく厳しい響きではありません。

二楽章、キュルキュルと明るいEbクラ。メリハリのある表現。突き抜けるトランペット。凄いエネルギーです。テンポが動いて粘る部分もなかなかです。

三楽章、かなり速いテンポです。かなり積極的な表現で聞きごたえがあります。ライブならではのミスはありますが、惹きつけられます。ノリノリで爽快に弾けて終わりました。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

★★★★★

一楽章、分厚く色んな音が聞こえて、速めのテンポで激しい冒頭。とても良く歌う演奏です。急き立てる様に前へ前へと進みます。鋭い響きのトランペット。ティンパニもトロンボーンも激しい。レニングラードpoとの演奏からはかなり年数も経っていて、まるで別人のような演奏です。とても積極的で豊かな表現です。

二楽章、鬼気迫るような表現です。当時の手兵を思う通りに動かしているように感じられる自在な表現です。

三楽章、この楽章も速いテンポでとても表現の幅が広い演奏です。次から次へと溢れ出て来る音楽が凄まじいです。ヤンソンスの演奏にはこれまで、さほど魅力を感じることがありませんでしたが、この演奏は凄い!

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カルロス・ミゲル・プリエト/hr交響楽団


★★★★★

一楽章、柔らかく優しい表現です。大きい表現ではありませんが、切々と歌っています。とてもバランスの良い録音で、響きも伸びやかです。

二楽章、ゆったりとしたテンポで優雅な演奏です。輝かしいトランペット。伸びやかで良く鳴るオーケストラです。

三楽章、常に余力を残して伸びやかで柔らかい響きはとても魅力的です。楽しくなってくるほど打楽器も上手い!爽快な演奏でした。
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クルト・ザンデルリンク/ベルリン交響楽団

★★★★★

一楽章、とてもゆっくりと感情が籠った冒頭です。柔らかく豊かに響くホルン。伸びやかで透明感があり、繊細です。繊細に歌う弱音と広大に響くトゥッティ。

二楽章、とても克明で色彩感も豊かです。伸びやかなトランペット。落ち着いたテンポですが、楽器の動きはとても激しいです。

三楽章、躍動感があって活発な表現です。目の前に鮮明に広がる演奏が素晴らしい。
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セミヨン・ビシュコフ/WRD交響楽団

★★★★★

一楽章、あまり思い入れの無いあっさりとした冒頭。鮮烈な高音域と暖かい中音域が特徴です。強打されるティンパニ。フルートはとても表情豊かです。強い表現や主張はありませんが、集中力の高い演奏で、聞き応えがあります。

二楽章、少し遠くから響くEbクラ。強烈なティンパニの後に響くシンバル。トランペットは控えめです。

三楽章、かなり濃厚な表現になって来ました。テンポも動きながら克明に描かれい行きます。ティンパニが際立っています。
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レオポルド・ストコフスキー/シカゴ交響楽団

★★★★★

一楽章、一体感があって厚みのある冒頭。黄金期を迎えつつあったシカゴsoの充実した響きはとても良いです。ティンパニはかなり控えめです。豊かで暖かみのある演奏ですが、とても落ち着いていて安定感があります。切々と歌う弦。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで細身のEbクラ。突き抜けては来ませんが整然と整ったトランペット

三楽章、この楽章もゆったりとしたテンポです。尖ったところは全く無く、泰然自若で堂々とした演奏です。最後も堂々と爽快に金管が鳴り響いて終わりました。

アンドリル・ネルソンス/ボストン交響楽団

★★★★☆

一楽章、ゆったりとしていますが、あまり厚みを感じない冒頭。僅かにくすんだ響きです。テンポも動いて大きな表現のトランペット。ティンパニ、トロンボーンと濃厚な表現です。フルートのソロも丁寧な表現です。

二楽章、柔らかく表情豊かなEbクラ。ビリビリと良く鳴っているトランペット。引き締まったスネアも良い。どの楽器も明瞭に聞こえる良い録音です。

三楽章、速めのテンポです。拍の刻みが強くて推進力があります。小物打楽器も良く聞こえます。爽快感がある終結でした。
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キリル・コンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、多くの人で弾いている感じが伝わる冒頭。この遅い楽章がかなりの疾走感!ぐいぐいと前へ進んで行きます。吠える金管。弱音部も抉り出すような表現。細身でビブラートが掛かったホルン。

二楽章、キュルキュルトしたEbクラ。宙を舞うようなフルート。厳しく強い表現もあれば、柔らかくサラリと流れるところもあります。

三楽章、かなり速めのテンポです。厳しく大きな表現。強烈なティンパニで終わりました。

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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1972年

★★★★☆

一楽章、エッジの立った深い彫琢の演奏です。ムラヴィンスキーらしい緊張感と集中力の高い演奏です。明確に音を分けて演奏するトランペット。弱音の凄い緊張感。

二楽章、とても真面目な表現で楽しさはありません。整然としていて制御された金管。ティパニはデッドであまり強打しません。

三楽章、快速に飛ばしますが一糸乱れぬ弦と木管。金管は録音のせいか、控えめです。
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ウラディーミル・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

★★★★☆

一楽章、豊かに表現される冒頭。強い主張があるわけではありませんが、とても深い演奏で、鬼気迫るものがあります。静寂感があって、ほの暗い空気感が良いです。

二楽章、明るい響きのEbクラ。若干奥まっているトランペットですが、トゥッティのバランスも良い。エネルギー感もあります。目まぐるしく楽器が受け継がれて行きます。

三楽章、とても落ち着いたテンポです。少し遅い感じはありますが、聞き進むうちに慣れて来ます。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

★★★★

一楽章、モノラルでザラザラとした弦の響きです。ゆっくりと濃厚な金管。これでもかと言うような濃厚な表現が続きます。ビブラートを掛けて暗い響きのホルン。独特な陰影と濃厚な表現がこの楽章の演奏としてはなかなかの説得力です。

二楽章、キュルキュルとしたEbクラ。この楽章も克明な表現です。金管が奥まってしまいます。リミッターが掛かっているようです。強烈なティンパニ。一楽章とは違って硬質な響きです。

三楽章、強い表現で克明に塗分けられて行きます。金管と打楽器が入るとかなり混濁します。盛大に叩くティンパニで終わりました。
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ケンナジー・ロジェストヴェンスキー/BBC交響楽団

★★★★

一楽章、とても暗い冒頭の表現。かなり重苦しい演奏です。強めのトランペットとホルン。暗く絶望的な雰囲気がとても良く表現されています。

二楽章、明るく開いた響きのEbクラ。テンポは落ち着いています。少しリミッターが掛かったようなトランペット。ロジェストヴェンスキーらしい大きな粘りもありますが、リミッターが掛かった録音が少し残念です。

三楽章、サービス精神旺盛な積極的な表現です。最後はほとんどディンパニだけが聞こえました。
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オスモ・ヴァンスカ/ロンドン交響楽団

★★★★

一楽章、とてもゆったりと歌う冒頭の表現。伸びやかなホルン。トロンボーンは若干奥に居て、前には出て来ません。木管は立っていて強い表現です。全体的には柔らかく伸びやかで、サラッと流れて行く演奏です。

二楽章、速いテンポで表情豊かなEbクラ。トランペットがかなり奥まっていて、強くリミッターが掛かっているような感じです。最初に設定されている録音レベルが高すぎるのではないかと思いますが・・・。克明な木管の動き。

三楽章、この楽章もかなり快速です。表現の振幅も大きい。とても良い演奏だったのですが、最後で録音レベルが下がったり不自然な録音がとても残念でした。
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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、とても遅く粘着質な表現です。一音一音噛みしめるようで弛緩はしていません。ウィーンpoも良くこの遅さに付いて行ったなぁと感心させられます。羊皮のティンパニが独特の響きですが、個人的にはあまり好きでは無い。音楽を慈しむような演奏は、晩年のバーンスタインらしいです。

二楽章、この楽章も非常に遅い演奏です。まるで違う曲を聴いているかのようです。遅いテンポに濃厚な表現でもたれそうです。

三楽章、この楽章のテンポは常識的な範囲です。中間部はまた遅くなりました。物凄く遅いテンポでじらされて、その後快速になって、最後弾ける解放感はありました。
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ルドルフ・バルシャイ/ケルン放送交響楽団

★★★☆

一楽章、とてもゆっくりとしたテンポで始まります。伸びやかで美しい響きです。刻み付けるように克明なホルン。透明感があり涼やかな美しい響きで、あまり大きな表現は無く、作品をストレートに演奏しています。

二楽章、遠目で滑らかに響くEbクラ。力の抜けた軽い金管。ティンパニも叩き付けるようなことは無く、とても軽いタッチです。

三楽章、落ち着いたテンポで正確に音にしている感じです。感情を排して作品そのものを知るには良い演奏ですが、あまり楽しいとは言えません。最後も軽く終わりました。
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マリス・ヤンソンス/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

★★★☆

一楽章、少し離れてモワッとした録音です。音像も中心付近に集まっていてモノラルのようです。スラーのように演奏するトランペット。トロンボーンも音は長めです。ムラヴィンスキーのような冷たい響きでは無く、暖かい響きです。あまり強い主張は無く淡々と演奏されています。

二楽章、とても滑らかなEbクラ。さすがにオーケストラは鍛えられていて上手いです。

三楽章、とても静かに始まります。生き生きとした動きです。Dレンジはかなり広く、かなり大きく爆発しました。最後はティンパニだけが聞こえる言っても良い程でした。
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ユーリ・テミルカーノフ/サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団

★★★

一楽章、とてもあっさりとした冒頭の表現。アゴーギクなども無い素っ気ない演奏です。作品をストレートに伝えようとしているような演奏です。ムラヴィンスキーのような冷たい響きではありません。感情を込めることは無く、淡々と演奏されます。

二楽章、サラリと流れて行くEbクラ。とても整然としています。金管が入っても粘ることが全く無いので肩透かしを食らいます。

三楽章、とても音量を落として、速めのテンポです。テンポの動きもあり、演奏自体は精度の高い見事なものですが、面白みはありません。

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ヘルベルト・ケーゲル/MDR交響楽団(ライヴ)

★★★

一楽章、速めであっさりと始まります。ケーゲルの演奏にしてはフワッした感じです。かなり強打されるティンパニ。次第に一音一音に力のあるケーゲルらしい演奏になって来ます。不穏な雰囲気がとても強い演奏です。

二楽章、楽しい感じは全くありません。とても不穏な感じです。金管も整っていて、良く制御されています。

三楽章、とても勢いのある演奏です。かなり強くガリガリと弾く弦。どの楽器も一音一音がとても強いです。最後はサラリと演奏して終わりました。
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サー・エイドリアン・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★

一楽章、ゆっくりと刻み付けるような冒頭。クレッシェンドしているようなヴァイオリン。一音一音に力が感じられる演奏です。一音一音力が込められた演奏から、流れの良い演奏に変わります。静寂感はあるものの、少し温度感は高い感じです。

二楽章、とても楽しそうなクラリネット。枯れた響きのトランペット。活発な動きのある演奏です。

三楽章、積極的な表現で動きがあります。抑え気味のトロンボーン。最後も大きく盛り上がることはありませんでした。
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マリス・ヤンソンス/オスロ・フィルハーモニー管弦楽団

★★

一楽章、あっさりとした冒頭。奥行き感のあるホルン。速めのテンポで少し表面的に感じてしまいます。バイエルン放送soとの演奏のような濃厚な表現はありません。同じ指揮者なのに何故と思う程よそよそしく、浅い表現です。

二楽章、キュルキュルと響くEbクラ。トランペットも軽く浅い。技術の高いオケには何の不満もありませんが、この演奏を聴くべき何かが感じられません。

三楽章、とても軽くサラリと演奏されて「どうだ!」と言われているような感じで、技術の高さだけが印象に残るような感じで、ヤンソンスの表現や主張が感じられないのがとても残念です。
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ウラディミール・アシュケナージ/デンマーク国立交響楽団


★★

一楽章、たっぷりとした表現でゆっくりと演奏されます。とても感情の籠った表現です。暖かい響きですが、明晰で豊かな表現です。

二楽章、この楽章でも積極的な表現です。トランペットはかなり奥から響きます。弦や木管の生き生きとした表現に比べるとティンパニやトランペットがかなり抑えられていて、かなり不自然です。

三楽章、この楽章も快活です。明らかにティンパニやトランペットがミキシングで抑えられています。最後もかなり抑えられていて、せっかくの演奏を録音が台無しにしているように感じました。
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ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団

一楽章、あまり深みの無い響きです。強い表現も無く淡々と進みます。弱音の緊張感なども感じられますが、標準的、模範的な演奏の域を出ません。

二楽章、爽快に鳴り響くトランペット。オーケストラも上手いのですが、何故か惹かれない。どうも表面的な演奏に感じてしまう。

三楽章、難なく演奏されているのですが、魅力が感じられない。
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ショスタコーヴィチ交響曲第4番

ショスタコーヴィチの交響曲第4番は、彼の作品の中でも特に野心的で、ドラマチックな内容を持つ交響曲です。1935年から1936年にかけて作曲されたこの作品は、当時のソビエト連邦の政治的な緊張が影響しており、ショスタコーヴィチが自らの芸術表現を大胆に追求した作品として知られています。しかし、この交響曲は発表直前に政治的圧力によりお蔵入りとなり、初演されたのは彼が亡くなるまで約25年も後の1961年でした。

交響曲第4番の構成と特徴

この交響曲は、3つの楽章で構成されていますが、特にスケールの大きい音楽が展開されるのが特徴です。演奏時間も1時間を超えるため、聴く者に強いインパクトを与えます。また、マーラーの影響が顕著で、彼の音楽に通じる壮大さや劇的な展開が見られます。

  1. 第1楽章:アレグロ・ポコ・レント
    第1楽章は長大で、様々なテーマが劇的に変化しながら展開されます。重厚なオーケストレーションと急激な音楽の変化が続き、ショスタコーヴィチ特有の緊張感と迫力が感じられます。彼の苦悩や不安が表現され、まるで荒れ狂う嵐のような音楽です。
  2. 第2楽章:モデラート・コン・モート
    中間の楽章である第2楽章は、陰鬱で内省的な雰囲気を持ち、静かで不安定なムードが漂います。落ち着いたテンポながらも、どこか不穏な気配が漂い、物悲しさや孤独感が感じられる音楽です。ショスタコーヴィチの内面的な葛藤や、ソビエト社会での抑圧された心情が反映されているとも言われます。
  3. 第3楽章:ラルゴ – アレグロ
    最終楽章はラルゴの重々しい序奏から始まり、途中でアレグロに転じて一気に盛り上がりを見せます。急速で激しいリズムが続き、オーケストラ全体が圧倒的なエネルギーで爆発するような音楽が展開されます。劇的で壮絶なクライマックスに達しながら、最後は静かに終わり、聴く者に強烈な余韻を残します。

背景と音楽的意図

第4番は、ショスタコーヴィチが純粋に自分の芸術性を表現しようとした作品です。しかし、スターリンの批判を受けた直後のタイミングで完成したため、発表は大きなリスクを伴いました。この交響曲が政治的なメッセージを含むものと解釈されることを恐れたため、彼はやむを得ず初演を取りやめました。そのため、この作品は長らく封印され、彼の「幻の交響曲」として語り継がれました。

交響曲第4番は、ショスタコーヴィチの壮大で実験的な作風を反映し、同時に彼の内面的な葛藤や不安を表現したものです。初演が遅れたことで、当時の聴衆が彼の本来の音楽的な声を聞く機会を失いましたが、現在では彼の最も重要な作品のひとつとして評価されています。

ベルナルト・ハイティンク/シカゴ交響楽団

★★★★★

一楽章、細く左右一杯に定位するオーケストラ。マットな響きの金管。テヌート気味のトロンボーン。とてもスッキリとしていたコンパクトにまとまっている感じを受けます。ゆっくりとしたテンポで丁寧に描いて行きます。複雑な作品ですがとても整然としています。ティンパニもマットな響きです。凄まじい音の大洪水もあり、静寂な弱音との振幅もとても大きいです。全体にマットな録音ですが、弦などはいぶし銀のように煌めく響きです。ハイティンクらしい細部まで行き届いた生命感のある演奏です。ゆったりとしたテンポですが、細部を抉り出すような演奏では無く、何も強調せずに全てを聞かせるような演奏です。落ち着いたプレスト。全く騒々しさは感じません。

二楽章、とても静かで流れの良い冒頭です。一楽章とは違って釜の響きがするティンパニ。ずっと夜の雰囲気です。かなりくっきりと響く打楽器。

三楽章、とても弱いファゴットですが、さりげなく歌う歌は美しい。とても遅いテンポですが、弛緩することは無く、ティンパニのクレッシェンドと共に盛り上がる金管の凄い響きはさすがシカゴso。続く弦の静寂感の対比も素晴らしい。遅いテンポでもピーンと張りつめた緊張感はハイティンクの面目躍如です。ゴロゴロと鳴るチューバ。伸びやかなトロンボーンのソロ。ティンパニの後の金管は、美しく伸びやかに炸裂します。堂々と力強く鳴り響くトロンボーン。クライマックスは凄まじい演奏でした。消え入るように静かになります。ゆっくりと美しいチェレスタ。
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キリル・コンドラシン/シュターツカペレ・ドレスデン

コンドラシン★★★★★

一楽章、モノラル録音です。マイルドな響きですが、熱気を感じる金管。荒れ狂うように交錯する金管。平板にはならず表現が豊かです。金管が限界近くの咆哮を聞かせます。強い疾走感きありませんが、嵐のように激しいプレスト。

二楽章、とても良く歌い、豊かな表現です。木管のウネウネする独特の雰囲気。

三楽章、ゆっくり目のファゴット。感情の入った演奏で、とても強い共感を感じます。遠慮なく切れ込んで来る凄みはなかなかです。限界近くで吠えるトロンボーン。モノラル録音ですが、色彩感はくっきりとしていて鮮明です。お風呂のような残響の中に響くトロンボーンのソロは軽く演奏されます。ティンパニの後の金管は、激しく不協和音がぶつかり合い、壮絶な響きです。限界ギリギリの非常に温度感の高い響きは出色です。暖かいチェレスタ。

アンドレ・プレヴィン/シカゴ交響楽団

★★★★★

一楽章、シカゴsoらしい明快に鳴る金管が印象的な演奏です。録音も良くとても見通しが良いです。ダイナミックレンジも広く、金管がグッと前に出て来ます。激しい部分では金管が盛大に鳴り響いて大迫力ですが、静寂感も素晴らしいです。冷たい響きではありませんが、この演奏なら納得です。とても伸びやかで柔らかい響きは、ロシアや東欧のオケとは一線を画すものですが、この演奏は良いです。比較的落ち着いたプレスト。猛烈に突進して来るような金管。強烈な主張はしませんが、作品の緻密さなどが確実に伝わって来ます。

二楽章、とても滑らかに流れて行きます。これだけの難曲を軽々と演奏するシカゴsoはさすがです。この作品は硬く冷たい響きが当たり前と思っていましたが、この伸びやかで柔らかい響きでも実に素晴らしい。

三楽章、正確無比で作品に書いてある全ての音が表現されているような演奏です。これだけの曲を難なく演奏するシカゴsoと、それを完璧に統率しているプレヴィンにも頭が下がります。楽しんでいるかのようなトロンボーンのソロ。ティンパニの後の金管は、壮絶な響きではありませんが、パワー全開の充実した響きです。最後のチェレスタも暖かい。

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キリル・コンドラシン/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

★★★★★

一楽章、少し離れた所から硬く強い響きです。推進力のある速めのテンポで、細部にはこだわらない演奏です。かなり激しく咆哮する金管。快速にどんどん進みます。下品なトランペット。遠慮なく打ち込まれるティンパニ。生き生きとした演奏です。プレストもかなりの疾走感です。打楽器も派手に入ります。この曲の音響的効果を最大限に狙ったような演奏です。とにかく物凄い勢いで走り抜けています。ビービーとなりミュートしたトランペット。最近の整理されて落ち着いた演奏とはかなり様相が違います。棘がいっぱい出ていて襲い掛かって来るような感じがします。

二楽章、この楽章も速めのテンポでとても表情豊かです。夜に静かに鳴り渡る打楽器。

三楽章、良く歌うファゴット。ビリビリと強烈なトランペット。粘りがあって、濃厚な色彩と叩き付けるような表現で強烈です。テンポも速めでスピード感があります。明快に鳴るトロンボーンのソロ。空気を引き裂くような表現の幅が広いソロです。ティンパニの後の金管は、壮絶に音がぶつかって鳴り響きます。憂いのうるチェレスタ。
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ケンナジー・ロジェストヴェンスキー/ボリショイ劇場管弦楽団

★★★★★

一楽章、ゆったりとしたテンポで強い響きです。トロンボーンも強烈です。明快に金管を鳴らすとてもメリハリの効いた演奏です。暴力的に叩きつけるティンパニ。弱音の表現も豊かで、ロジェストヴェンスキーらしいサービス精神旺盛な演奏です。疾走感のあるプレスト。特に強調する訳ではありませんが、さりげなくユーモアのある表現などなかなか良い演奏です。

二楽章、暖かく静かに始まります。とても静かなトリオ。とても静かな弱音とティンパニの強打との振幅もとても広い。

三楽章、とても遅いテンポで始まります。一音一音に力を込めるような演奏ではありませんが、流れの中で良く表現されています。突き刺さるようなトランペット。トロンボーンのソロもとても豊かな(下品な?)表現です。ティンパニに後の金管は、強烈に突き抜けては来ませんが、壮絶な響きはとても良く感じられます。かなりゆっくりと叩きつけて来ます。静まってからは消え入るような弦です。一転して淡々と演奏されるチェレスタ。
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キリル・コンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、金属的な響きのトランペット。トロンボーンも激しく咆哮します。力の漲るような演奏です。スタジオ録音ですが、凄まじい熱気です。木管や弦も生き生きとしています。コンドラシンの作品への共感と愛が感じられます。弱音部分では夜のような暗さも感じられます。録音の古さからか少しうるさい感じも無くはありませんが、それを上回る熱気です。表現もとても豊かです。テンポは終始速めで進みます。プレストも疾走感があります。嵐のように荒れ狂う演奏。

二楽章、この楽章も速めのテンポで明確に演奏されます。奥行き感を感じさせるシロフォン。金管はかなり前に出て来ます。闇夜に響くような打楽器。

三楽章、ゆっくり目のファゴット。ガリガリと切り込んで来る弦。最近の流れの良い演奏とは一線を画す棘がたくさんある演奏です。ビブラートを掛けて柔らかく歌うトロンボーンのソロ。速めのテンポのティンパニ。あまり音がぶつかり合わず壮絶な響きでは無い金管。あまり静まらず強い木管。うつろなチェレスタ。

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クシシュトフ・ウルバンスキ/NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、クリアで明晰な演奏です。スネアの装飾音符もはっきりと聞こえます。作品をストレートに表現するような演奏です。とても良くコントロールされていて規律正しいオケが整然と演奏しています。一時代前の混沌とした響きとは一線を画すとても見通しの良い演奏です。プレストはかなり激しく躍動感のある演奏です。スネアは締まった良い音で鳴っています。

二楽章、落ち着いたテンポで丁寧に演奏されます。ライヴ録音でありながらこれだけの透明感のある演奏は素晴らしいです。

三楽章、とてもゆっくりとしたテンポの序奏。実に精緻な演奏です。オケも粘り気の少ない爽やかな響きで、疾風怒濤のように駆け抜ける部分でも、軽々とこなして明晰な演奏を支えています。ファゴットもトロンボーンのソロもとても上手い。ティンパニに後の金管は、とても柔らかい響きで壮絶な雰囲気はありません。冷たく悲しい終盤。物悲しいチェレスタ。

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セミヨン・ビシュコフ/WRD交響楽団

★★★★☆

一楽章、一音一音に力が込められています。少し奥まった金管。強い色彩感と引き締まったアンサンブルです。とても統率が取れていて、雑味が全くありません。ゆったりとしたテンポでとてもクリアです。遅めのテンポですが、疾走感のあるプレスト。シャープに響くスネア。

二楽章、一音一音がとても丁寧で精度の高い演奏です。無駄なものを削ぎ落したようなクリアさ。静かな中から僅かに聞こえる打楽器。

三楽章、感情を込めて歌うファゴット。金管は控えめで咆哮とは遠い、極めて整然とした響きで、ロシアのオーケストラの演奏とは一線を画すものです。トロンボーンのソロも控えめです。ティンパニの後の金管は、あまり音がぶつかり合わずにスッキリとした響きです。ティパニに刻むリズムが強く響きます。壮絶な雰囲気よりも輝かしい感じがします。フワッとした響きのチェレスタ。

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アンドリル・ネルソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

★★★★☆

一楽章、鋭い響きで濃厚な色彩の演奏です。豊かな残響を伴った木管が美しい。金管が激しく咆哮することは無く、柔らかい響きで一貫しています。プレストは少し前へ行こうとする勢いがあります。強く刻み付けるような表現も無く、自然に流れて行きます。濃厚な色彩で強い響きのピッコロ。

二楽章、伸びやかで美しい弦。濃厚な色彩で美しく演奏されます。これだけ豊かな色彩感で描き分けられている演奏はなかなか無く、とても貴重な演奏です。

三楽章、ゆっくりと演奏されるファゴットがとても豊かに歌います。爆演を期待していると肩透かしを食います。とても洗練された美しさです。力が抜けて軽い金管。伸びやかに歌うトロンボーン。とてもゆっくりなティンパニの後の伸びやかで余裕さえも感じる金管。深く沈み込み消え入るような弱音。ゆっくりと物悲しいチェレスタ。
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ヘルベルト・ケーゲル/MDR交響楽団

★★★★☆

一楽章、モノラル録音のようです。引き締まった表現の第一主題。金管が咆哮するようなことはありませんが深い彫琢の演奏です。温度感が低く静寂感があります。トランペットが悲痛な表現の演奏をしますが、少し奥まっています。一音一音が立っていてとても力があります。

二楽章、硬く冷たく強い演奏です。とても集中力が高く細部まで張りつめています。浮遊する木管。

三楽章、かなり強烈に響くトランペット。深く彫られた痛烈な表現が素晴らしい。叩きつけて来るような強い弦。どの楽器も凄く力があって、一音一音に込められたエネルギーが凄い。最後の金管は、壮絶な響きには聞こえますがあまり音は前に出て来ません。静まってからも弦のピィチィカートがとても強い。最後は淡々と終わりました。

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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/フィルハーモニア管弦楽団

★★★★

一楽章、ロジェストヴェンスキーらしい粘っこい表現。ロシアのオーケストラとの演奏のような冷たい響きでは無く、温度感があります。表現は積極的で、熱気さえも感じる演奏です。フィルハーモニアoもロジェストヴェンスキーに応えてかなり咆哮します。ケーゲルの演奏程ではありませんが、一音一音に力があります。嵐のような凄いスピード感のプレスト。

二楽章、若干ザラつく弦。生き生きとした豊かな表現です。ピッコロなどもかなり前に出て来ます。

三楽章、とてもゆっくりと演奏されるファゴット。熱気を帯びたトランペットの咆哮。時折顔を出すユーモアのある旋律はとても楽しい。トロンボーンのソロは真面目に演奏されました。テンパニの後の金管は、鋭い響きです。かなり冷たい弦。あまり余韻の残らないチェレスタ。
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ルドルフ・バルシャイ/ケルン放送交響楽団

★★★★

一楽章、整然として整った演奏です。金管は控えめです。静寂感もあって流れの良い刺激の少ない演奏でもあります。強い緊張感や冷たさは無く、少し緩い空気感もあります。ティンパニはとても良い音で鳴っています。余裕を持って鳴らしながらとても精緻で、完成度の高い演奏です。凄い疾走感のあるプレストですが、咆哮することはありません。

二楽章、柔らかく伸びやかで暖かい。見通しが良く色彩感も豊かです。大きな表現をすることも無く、作品を忠実に再現しようとしているようです。

三楽章、強く感情を込めることの無いファゴット。目の覚めるようなトランペット。精緻で伸びやかな演奏はとても気持ちが良い。トロンボーンのソロも大きな表現はせず、作品に任せている感じです。硬質なティンパニのクレッシェンドの後の金管はテンポが速く、ティンパニがはっきりと聞こえて、壮絶な響きではありません。柔らかいチェレスタ。
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ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー歌劇場管弦楽団

★★★★

一楽章、響きを伴って若干モヤッとした響きです。スネアの装飾音符がハッキリと別れて聞こえました。金管は咆哮することなく、落ち着いています。とても柔らかい演奏で、とげとげしいところはありません。録音のせいか、ティンパニの強打も前には出て来ず、奥で音が広がる感じです。この尖った作品を完全に過去のものとして、マイルドに聞かせています。プレストも滑らかで落ち着いています。嵐のような激しさは全くありません。打楽器が入っても急に音量が上がることはありません。不思議なくらい穏やかな演奏です。ゆっくりなテンポでスタッカート気味では無いファゴットの演奏など、これまで聞いて来た演奏とはかなり趣きが違います。

二楽章、暖かく滑らかな弦。ガリガリと引っ掛かるようなことは全くありません。粒立ちの良い打楽器。

三楽章、どこまでも美しく柔らかく自然に流れて行く演奏。この曲のイメージとは全く違う演奏です。トロンボーンのソロもとてもの伸びやかで柔らかく美しい。とても速いテンポに加速するティンパニの後、そのままのテンポで金管になだれ込みます。金管はあまり激しく音がぶつかり合うことは無く、整った響きです。確実な足取りで正確に演奏されるチェレスタ。
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ケンナジー・ロジェストヴェンスキー/サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団

★★★★

一楽章、モノラル録音のようで何とももっさりとした音です。聞き進むと録音にも慣れて来ます。打楽器の強打はリミッターが掛かっているようです。ロジェストヴェンスキーらしい粘っとりとした表現です。プレストはそんなに速くは無く、尾を引くように表現して行きます。

二楽章、この楽章冒頭もゆっくりとしたテンポです。かなり濃厚な演奏です。それぞれの楽器の音色にも粘りが感じられるようでかなりハイカロリーです。

三楽章、とてもゆっくりとしたテンポの序奏。トランペットはかなり奥まっています。ゆっくりと濃厚で表現も豊かな演奏ですが、金管が全体に奥まっていて、伸びて来ないのが少し残念です。トロンボーンのソロもこれでもかと言うような表現です。ティンパニの後の金管もゆっくりと壮大な演奏なのですが、強く感じるだけで実際に音は前には出て来ません。サービス精神旺盛で聞かせどころ満載の演奏ですが、録音が悪いのがとても残念でした。最後のチェレスタも思いにふけるような表現でした。
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ネーメ・ヤルヴィ/スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

★★★☆

一楽章、叩きつける打楽器。少し奥まって響く金管はかなり激しく鳴らされます。かなりくっきりと浮かび上がる楽器。ゆっくりとしたテンポで良く歌うファゴット。静寂から炸裂までの振幅はかなり大きい演奏です。整然としていて鋭角に響く金管はとても心地良いものです。あまり疾走感の無いプレスト。弦は少し詰まった感じで伸びやかさには欠けます。スネアが緩く、ドタドタとした打楽器。静かな部分は消え入るような弱さなので、かなりダイナミックレンジは広いです。

二楽章、柔らかい響きの冒頭。残響を伴って柔らかく暖かい響きの演奏です。打楽器はあまり際立って聞こえません。

三楽章、鋭いトランペットやティンパニの強烈なクレッシェンドがあったり所々にギョッとさせられるような表現が散りばめられています。速い部分は快速です。ティンパニのクレッシェンドはかなり急いだ感じでした。続く金管きかなり鋭い響きで壮絶ですが、何故そんなに急ぐと言う感じもします。チェレスタもテンポが速く、少し事務的に感じました。
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サイモン・ラトル/バーミンガム市交響楽団

★★★☆

一楽章、録音レベルが低く、少し遠目に定位するオーケストラ。軽い響きの演奏です。金管も激しく前に出て来ることは無く、奥で鳴り響きます。激しく咆哮してもアンサンブルが乱れることは無く整然としています。あまり強い主張はせずに作品をストレートに演奏している感じです。疾走するプレスト。アンサンブルが整っているのか、大人数で演奏しているようには聞こえません。

二楽章、とても滑らかで尖ったところはありません。軽々とサラッと流れて行きます。あまりに軽く、滑らかに流れて行くのでBGMのような感覚になってしまいます。打楽器も耳を澄まさないと聞こえません。

三楽章、あまりに静かなので、ボリュームを少し上げた。ゆっくりと演奏されるファゴット。それでも引っかかるところはあまり無く、流れの良い演奏です。スコアをほぼ完璧に再現したような演奏ですが、一方でお行儀の良い演奏で、あまり面白くないかも知れません。トロンボーンのソロも軽いです。ティンパニの後の金管は、壮絶な不協和音ですが、ブレンドされた柔らかい響きです。柔らかく寂しげなチェレスタ。
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ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★☆

一楽章、一音一音丁寧に演奏されます。金管は咆哮しませんが、ブレンドされたバランスの良い響きです。おそらく放送用の録音で、細部までは分かりませんし、色彩感もあまり鮮明ではありませんが、とても統率の取れた演奏だと言うことは分かります。温度感も冷たくは無く、暖かいです。ハイティンクの演奏では常に感じることですが、細部まで厳格に統制された緻密な演奏です。プレストはゆったりとしたテンポで疾走感は全くありません。プレスト以外はそんなに遅いとは感じませんでしたが、一楽章だけで30分もかかっていた。

二楽章、ゆっくりと丁寧に演奏します。ケーゲルのような一音一音が強固な感じではありませんが、この演奏も、一音一音に非常に神経が込められています。豊かな響きを伴った打楽器。

三楽章、非常にゆっくりと演奏されるファゴット。金管が突出することは無く面で押してくるような感じです。表情豊かなトロンボーンのソロ。ティンパニに後の金管はかなりくすんだ響きで壮絶さは感じません。少しためらいながら演奏されるチェレスタ。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省交響楽団(ライヴ)

★★★

一楽章、シャリシャリと響くシンバル。サスペンドシンバルも確実にかぶってくる。かなり五月蠅い金管。危なっかしいオーボエ。吐き捨てるように下品な金管。かなり長い残響です。強烈なティンパニ。あまり疾走感の無いプレスト。シンバルの径が小さく刺激のある音です。アンサンブルはかなり乱れ、崩壊寸前です。ロジェストヴェンスキーらしい濃厚な表現のファゴット。

二楽章、ゆっくりと丁寧に演奏されます。ウネウネとした木管。かなりはっきりとした打楽器。

三楽章、とてもゆっくりとしたテンポのファゴット。かなり濃厚に歌います。強烈に突き刺さるトランペット。サービス精神旺盛で良く歌います。色々ありますが、楽しい演奏です。トロンボーンも楽しそうです。ゆっくりとしたティンパニの後の金管は、あまり音がぶつかり合わず思ったほど前には出て来ません。たどたどしい足取りのチェレスタ。

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ユッカ=ペッカ・サラステ/シュターツカペレ・ドレスデン

★★★

一楽章、流れの良い演奏です。とても整然としていて、壮絶な感じはありません。柔らかくて伸びやかな響きが美しいです。プレストも整然としていて、強烈な感じは無く、サラリと流れて行きます。一音一音に力を込めるよりも流れを優先しているような演奏です。

二楽章、折り重なる弦が美しい。クラリネットも滑らかで美しい。打楽器が左右に分かれていて面白い。

三楽章、ユックリトしたテンポでとても豊かに歌うファゴット。最初の頂点も控えめで広がりのある響きです。全体にゆったりとしたテンポでガリガリと刻み付けるような演奏では無く、とても軽いタッチで描かれています。ティテンパニの後の金管はかなり奥にトランペットがいて、他の楽器が周りを囲んでいるようなフワッとした響きで壮絶な響きではありません。最後もどこか暖かい。

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ヴァシリー・ペトレンコ/ロイヤル・リバプール・フィルハーモニー管弦楽団

★★★

一楽章、鋭い響きの冒頭。その後も歯切れの良い演奏です。金管は奥まっていて、木管が若干強い録音です。クリアで明快な演奏ですが、その分粘りや壮絶さは感じません。強い疾走感は無いプレスト。かなり割り切れた演奏のように感じます。

二楽章、大きな表現はせず、淡々と作品を音に変えて行きます。とても透明感の高い演奏が特徴ですが金管は咆哮せす、少し大人しい演奏です。打楽器はとても弱くあまり聞こえません。

三楽章、とても弱くゆっくりと始まります。表情豊かなファゴット。淡々と演奏が進んで行きます。作品を遠目から見ている洗練された演奏ではありますが、少し物足りない感じはあります。トロンボーンのそろも真面目です。ティンパニの後の金管も炸裂すると言う程の咆哮では無く、安定した響きで壮絶さはありません。粒立ちのはっきりとしたチェレスタ。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

★★★

一楽章、少し遠目に位置するオーケストラ。スリムでスッキリとした響きです。静寂な部分はとても美しいですが、金管が入ると少しマットな響きになります。強い表現はありませんが、丁寧には演奏されています。金管も咆哮することは無く、節度を保った演奏です。あまり疾走感は無く、落ち着いたプレスト。

二楽章、弱音部分では空間を感じさせる録音です。Ebクラが美しい。作品をストレートに音にしている感じで、ヤンソンスの主張はほとんど感じられません。打楽器も強調されません。

三楽章、とてもゆっくりと演奏されるファゴット。とても抑制されていて、金管が炸裂するようなことはありませんが、その分、弱音は消え入るように弱く演奏されます。弱音部分の色彩感や豊かな響きが美しい演奏です。控えめで柔らかいトロンボーン。ティンパニの後の金管も抑え気味で壮絶な雰囲気ではありません。淡々と演奏されるチェレスタ。
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ユージン・オーマンディー/フィラデルフィア管弦楽団

★★

一楽章、音像が大きい録音です。スピーカー一杯に音が広がります。セッション録音なので、とても丁寧に演奏されています。硬さや冷たさは感じません。全ての音が前に出てきて奥行き感はあまりありません。プレストはあまり疾走感が無く、落ち着いています。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで大きめに始まります。安全運転で緩い感じがします。

三楽章、とてもゆっくりとしたテンポで始まります。確実な足取りで、さらに安全運転感が高まります。余裕綽綽で脱力した演奏が魅力になる場合もありますが、この作品では、プラスには働いていないように感じます。トロンボーンのソロは目の前で鳴ります。ティンパニの後の金管もとても淡白です。最後も速めのテンポであっさりとしています。
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ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(ライヴ)

一楽章、この頃のライヴ独特のモヤーッとした響きと、デッドで音が短い金管。とても静かな第二主題。ステレオ録音ではありますが、奥行き感も無く、ホルンがデッドに鳴ります。緊張感のあるプレストのフガートはなかなか良いですが、やはり金管が入るとデッド過ぎて雰囲気が悪くなります。この当時のライブ録音としてはかなり良い状態だと思いますが、この作品の複雑さや起伏の激しさを聞くには不十分です。弱音もヒスノイズに隠れて細かなところまでは聞けません。

二楽章、淡々と演奏される主題。木管楽器はどれも引き締まっていて良い響きです。

三楽章、序奏のファゴットも淡々としています。トロンボーンも非常に音が短い。ティンパニに後の金管も壮絶な響きでは無く、とてもデッドで、浅い響きです。深い闇に落ちて行くような演奏。チェレスタは速めのテンポで淡々と演奏されます。

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ショスタコーヴィチ 交響曲第5番

ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、1937年に完成した彼の代表作で、ソビエト連邦時代における複雑な政治的背景が色濃く影響を与えた作品です。正式には「社会主義リアリズムの要請に応える音楽」とされており、当時の政治的圧力を受けて作曲されたものの、その内容は多義的で、様々な解釈を呼ぶ作品として知られています。

この交響曲は4楽章構成で、劇的で深みのある音楽が展開されます。

各楽章の特徴

  1. 第1楽章:Moderato – Allegro non troppo
    静かな導入部から始まり、次第に緊迫感が高まる壮大な楽章です。重々しく始まるチェロとコントラバスの旋律が、次第にオーケストラ全体に広がり、不安と葛藤が渦巻くような展開を見せます。暗い情緒と激しさが交錯し、圧力を感じさせるような雰囲気が漂っています。
  2. 第2楽章:Allegretto
    皮肉とユーモアが込められたスケルツォで、軽快ながらもどこか風刺的な音楽が特徴です。ワルツ風のリズムや奇妙な旋律が、風刺的な「笑い」を表現していると解釈されています。ショスタコーヴィチ特有のアイロニーが感じられ、喜劇的な中にも暗い影が差し込むような独特のムードを作り出します。
  3. 第3楽章:Largo
    哀愁を帯びた美しい楽章で、弦楽器の深い響きが悲痛な心情を表現しています。重苦しくも内省的なこの楽章は、祈りのような雰囲気を持ち、ソビエト時代の厳しい状況や抑圧に対する個人の苦悩を感じさせるとされています。ゆっくりと沈み込むような音楽が、痛みや悲しみを鮮烈に伝えます。
  4. 第4楽章:Allegro non troppo
    力強く始まるフィナーレで、勝利を祝うような大音量でのテーマが展開されますが、その解釈は賛否が分かれるところです。外面的には明るく勝利を讃えているように聞こえますが、演奏が進むにつれ、反抗的で皮肉めいた響きも現れます。この「勝利」は強制的で不自然なものであり、歓喜の裏に苦しみを感じさせる、とも言われます。

作品の背景と意義

ショスタコーヴィチの第5交響曲は、当時のソビエト連邦のスターリン政権下で厳しい検閲を受けていました。彼の前作(オペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』)は「混乱の音楽」として批判され、作曲家としての存続が危うい状況に置かれました。そのため、この第5交響曲は、政権側に「社会主義リアリズムに沿った作品」として評価されることを意識して書かれましたが、作品には多層的なメッセージが込められているとされています。

その結果、表向きは「苦悩からの勝利」を描く壮大な交響曲として歓迎されましたが、裏にはショスタコーヴィチの個人的な葛藤、抑圧に対する静かな抵抗が込められていると解釈されています。その音楽の多義性や深い感情表現によって、聴く人に様々な思索を促す作品です。

たいこ叩きのショスタコーヴィチ 交響曲第5番名盤試聴記

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1973年東京ライブ

ムラヴィンスキー

★★★★★
一楽章、少し距離があって柔らか目の主題。緊張感があって静かなヴァイオリン。細く引き締まったオーボエ。統制の取れた第二主題。静寂感や緊張感はなかなかです。暗闇から浮かぶようなフルート。重いピアノ、少し控えめなホルンとトランペット。行進曲風の部分も軽めです。再現部でも咆哮はしません。伸びやかな第二主題の再現。幽玄の世界のようなコーダ。

二楽章、活発に動く木管。ヴァイオリンのソロもとても上手いです。ここでもトランペットは軽く演奏しています。

三楽章、消え入るような弦の弱音が素晴らしい。鋭いオーボエの第三主題も作品にピッタリな感じです。弱音の集中度は凄いです。寂しげなハープ。

四楽章、力強い主題。スピード感のある弦。強い推進力です。トランペットのソロはやはり途中で音量を落として、クレッシェンドします。ビブラートのかかったホルンのソロがソビエトのオケだと感じさせます。弱音部分でも強弱の変化があります。この楽章ではトロンボーンもかなり強烈です。コーダは弱めに入ります。トランペットのハイトーンから大きくクレッシェンドしてかなり感動的です。

ライブとは思えない完成度の高い、集中力も高い見事な演奏でした。
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パーヴォ・ヤルヴィ/パリ管弦楽団

ヤルヴィ

★★★★★
一楽章、艶やかで柔らかい第一主題。ゆったりと揺られるような弦に続いてとても静寂感のあるヴァイオリン。ピアノが入ってからのホルンやトランペットもかなり強めで、表現も自由で大胆です。

二楽章、深く豪快なコントラバス。続く木管もとても豊かな表現です。テンポもとても自由に動きます。こんなに豊かな表現のショスタコーヴィチの5番は初めてです。テンポの変化も素晴しい演奏です。

三楽章、大きくアゴーギクを効かせて一音一音大切に演奏します。この作品を聞いていて色彩感を感じることはほとんど無かったのですが、この演奏では色彩感も感じます。振幅も非常に大きくダイナミックな演奏です。とても感情のこもった演奏ですが、ムラヴィンスキーのような痛いほどの悲痛さは無く、激しいのですが、むしろ暖かく柔らかいです。

四楽章、ゆったりとした第一主題ですが、急激に加速します。とても豊かに音が溢れ出ます。非常に堂々としたコーダでした。

ムラヴィンスキーのような削ぎ落とされた厳しさとは対極にあるような、伸び伸びとした豊かな表現の演奏で、ショスタコーヴィチの演奏の枠を打ち破る素晴しい演奏だったと思いました。
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エフゲニー・ムラヴインスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

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1984年4月4日、ステレオ録音
レニングラード・フィルハーモニー大ホール(ライヴ)
★★★★★
一楽章、強いアクセントで演奏される弦の主題。とても大切なものを扱うかのようなヴァイオリン。微妙な表情付けが随所になされています。第二主題ではテンポも動き豊かに歌われました。フルート・ソロ、クラリネット・ソロもたっぷり息を使って歌いました。展開部の重いピアノ。野太いホルンのペダルトーン。トランペットがリズムを刻むとしっかりと音が立っています。再現部は抑えぎみでした。微妙にテンポが動いてムラヴィンスキーのこだわりが感じ取れます。コーダの艶やかなヴァイオリン・ソロも見事です。

二楽章、強弱の変化が大きく豊かな表情です。ホルンは欧米のオケに比べると締まった音で独特です。

三楽章、大勢で演奏しているのだろうけれど、とても静かな弱音から開始しました。そして波のうねりのように入り組みながら音楽が変化していきます。ティンパニのクレッシェンドとともに激しく感情を吐露します。クラリネットがとても憂鬱な雰囲気を演出します。とても激しい演奏で、弦が指板に当たっているような音がします。

四楽章、とても勢いのある演奏でスピード感と高い集中力があります。トランペットの音に力があります。この演奏でも1978年のウィーンでのライヴと同様にトランペットのソロの終わりごろに一旦音量を落としてクレッシェンドしました。感情が込められ切々と語りかけてきます。最後はトランペットがバテバテのような感じもありましたが、見事な演奏でした。

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1982年ライヴ

ムラヴィンスキー

★★★★★
一楽章、アタックの強い主題。極端な弱音では無いヴァイオリン。ムラヴィンスキーの演奏としては、静寂感や緊張感は薄い感じがします。第二主題も極度の緊張感や静寂感は無く、少し緩い感じがしますず、その分、伸びやかではあります。展開部では、少し抑え目なホルン。その後は、ビービーと鳴るホルンやバリッと切り込んでくるトランペットが印象的です。行進曲風の部分でもトランペットが気持ちよく鳴ります。トロンボーンもかなり咆哮します。再現部の前のテンポの動きも大きかったように感じます。再現部も伸びやかです。コーダの艶やかなヴァイオリン。

二楽章、この楽章でも積極的な表現です。かなり自由に演奏させているような感じがします。トランペットのファンファーレも盛大です。

三楽章、伸びやかな分、悲痛な雰囲気は薄いですが、ティパニのクレッシェンドを伴う部分は感情が溢れ出るような表現でした。クラリネットも伸び伸びと演奏しています。

四楽章、速めのテンポでテヌートぎみの主題。その後も速いテンポで突き進みます。トランペット、トロンボーンも遠慮なく吹きます。朗々と歌うトランペットのソロ。少しビブラートのかかったホルン。大太鼓が落ちた。コーダのテンポも大きく動きました。

ムラヴィンスキーの演奏にしては、かなり劇的な表現で、意外でしたが、かなり興味深い演奏で、楽しめました。
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サー・チャールズ・マッケラス/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

マッケラス

★★★★★
一楽章、ゆったりとして揺られるような第一主題。続くヴァイオリンも美しく柔らかい響きです。金管も自然な音場感です。第二主題もゆったりとして伸びやかです。とても柔らかくロシアのオケのような厳しい響きとは全く違います。少しテンポを速めて動きのある展開部。金管がとても切れ良く鳴り響きます。ロイヤル・フィルってこんなに上手かったっけ?と思うほど良い演奏です。

二楽章、速めのテンポでメリハリのある演奏です。ホルンの鳴りっぷりは見事です。ショスタコーヴィチが持っている政治的な陰の部分など関係ない伸び伸びとした演奏はこれでとても気持ちよく聞けます。

三楽章、柔らかく美しい響きで切々と訴えて来ます。ピーンと張り詰めた緊張感はありませんが、フワッとした柔らかい空気感がとても心地良い雰囲気です。とにかく美しいです。

四楽章、とても良く鳴る金管の第一主題。切れ味鋭い金管は見事です。特に強い主張のある演奏ではありませんが、オケの美しい響きと伸びやかで堂々とした演奏が素晴しいです。
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キリル・コンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

コンドラシン

★★★★★
一楽章、少し柔らかい第一主題。静かに祈るようなヴァイオリン。ちょっときついヴァイオリンの高音。とても情感のこもった木管。明るいホルン。感情が込められた第二主題。重いピアノ。下品なトランペット。凄みのあるトロンボーン。振幅が大きくかなり迫ってくる演奏です。

二楽章、とても表情の豊かな演奏です。強弱の変化が明快です。ロシアのオケらしく金管の全開は遠慮がありません。

三楽章、冒頭から悲痛な表情で何かありそうな雰囲気を伝えて来ます。深みのあるハープ。悲嘆にくれるような表現は素晴しいです。初演で会場からすすり泣きが聞こえたと言うのが分かる演奏です。

四楽章、ゆっくり目で堂々とした主題。二度目の主題から少しずつテンポが速くなって行きます。このテンポの動きにも凄みがあります。トランペットのソロのスピート感も凄いです。最後もゆっくりと堂々とした演奏で輝かしい勝利です。

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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

スヴェトラーノフ

★★★★★
一楽章、ゆったりと粘りのある主題。ゆっくりと演奏されるヴァイオリンですが、歌があって、遅さをあまり感じさせません。ロシアのオケらしい細いホルン。第二主題も歌がありましたた。暗い雰囲気の展開部。行進曲風になる前からトランペットの独特のクレッシェンドが特徴的です。ゆっくりとした再現部。

二楽章、深みのある残響をともなった低弦。とても歌に溢れた表現豊かな演奏です。歯切れの良いトランペット。

三楽章、嵐のように振幅の大きい表現で良く歌います。

四楽章、かなり余裕を持った主題の後一段テンポを上げて徐々に加速します。ティンパニはかなり思い切って入ります。鋭いトランペットのソロ。ビブラートがかなり強いホルンのソロ。克明な木管の動き。コーダの前にスネアのロールが凄い強打で入りました。コーダに入って少しテンポが落ちました。最後はマキシマムフォルテシモでした。かなり強烈なコーダでした。

歌に溢れて、コントラストもあり、強烈なフォルテシモもありの演奏で面白かったです。
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レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック 1979年東京ライヴ

バーンスタイン

★★★★★
一楽章、以外に軽いですが、何かを暗示するような主題。続くヴァイオリンはゆっくり静かに演奏されます。テンポはても良く動いています。展開部のホルンは抑え気味です。行進曲はゆっくりで濃厚な表現です。コーダのはかない雰囲気はなかなか良いです。

二楽章、ホールの特性なのかホルンは控えめです。バーンスタイン時代のニューヨークpoのアンサンブルはとても荒れていた印象なのですが、この演奏はそんなに荒く感じません。

三楽章、この楽章でもテンポの動きがあり、クライマックスでは叩き付けるような悲痛さを表現しました。感情のままに動くテンポがとても心地良いです。

四楽章、速いテンポの主題。スネアのリズムに乗って主題が回想される部分からすごく速いテンポです。いつもは、コーダの速いテンポにとても違和感を感じていたのですが、この演奏はとても自然に聞くことができました。
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アンドリル・ネルソンス/ボストン交響楽団

ネルソンス

★★★★★一楽章、エッジが効いてかなり荒々しい主題。かなり抑えられたヴァイオリン。かなり思い入れのある演奏で、表情が豊かです。一音一音刻む展開部に控えめなホルンとトランペット。とても丁寧で正確です。行進曲調の部分は歯切れの良い演奏で、スネアも引き締まっています。ゆっくり目の再現部。柔らかい弦の刻み。伸びやかに歌うフルート。続くクラリネットも魅力的です。コーダのソロも色彩感が際立っていて美しいです。

二楽章、勢いのある低弦。続く木管の表情も豊かです。一つ一つの楽器が際立っていてとても美しいです。

三楽章、一体感のある弦の厚い響きが素晴らしいです。深みのあるコントラバスと潤いのあるクラリネットがとても良いです。振幅も大きく、終盤の消え入るような弱音の表現も見事です。

四楽章、ゆったりと堂々とした主題。その後の加速も緊張感があります。テヌート気味のトランペトのソロ。コーダもテヌート気味です。トランペットのハイトーンはあまり抜けて来ませんでした。
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ダーヴィト・アフカム/HR交響楽団

アフカム

★★★★★一楽章、まろやかで一体感のある主題。静寂感のあるヴァイオリン。ファゴットも深みがあります。柔らかい弦の刻みに乗って、静かな第二主題。展開部では、軽々と良く鳴るホルンとトランペット。アランギ交響楽団やヴィクトリア交響楽団とは格の違いを感じます。凄い安定感と見事なアンサンブルと表現力です。コーダのヴァイオリンのソロも艶やかで美しい。

二楽章、活発に動く感じではありませんが、とても安定感のある演奏ですが、表情は豊かです。ホルンの最初の音を僅かに長く演奏しました。

三楽章、自然なテンポの動きや、木管の深い響き。

四楽章、力強い主題。僅かに加速。オケの安定感は抜群です。朗々と歌うホルン。コーダの前は大きくrit。気持ちよく鳴るティンパニ。柔らかく入ったコーダの金管。奥からハイトーンが突き抜けて来ます。

とてもバランスの良い演奏でした。
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ユーリ・テミルカーノフ/サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団

テミルカーノフ

★★★★☆
一楽章、柔らかく伸びやかで美しい主題。ゆっくりととても抑えたヴァイオリンですが、あまり緊張感あはりません。柔らかい刻みに乗って第二主題が演奏されますが、ムラヴィンスキーのような引き締まった緊張感はありません。展開部はかなり抑え気味で柔らかいホルン。オケの名前を聞かなければ西欧のオケだと思うような演奏です。再現部も咆哮するようなことは無く、とても良くコントロールされています。コーダも特に何かを訴えて来るような演奏では無く、淡々としています。

二楽章、軽妙に動き回る木管。弦も活発に動きます。木管の表情はとても積極的で、一楽章と対照的です。

三楽章、冒頭で動きがあって、感情を込めたような表現でした。その後は感情の起伏は無く、楽譜を淡々と音に変えているような感じです。ただ、音色はムラヴィンスキー時代の硬質な感じでは無く、とても柔らかく伸びやかです。

四楽章、輝かしく美しい主題。アッッチェレランドは緩やかです。トランペットのソロも輝かしいですが、ムラヴィンスキーの時のような途中で音量を落としてクレッシェンドすることはありませんでした。ホルンのソロもビブラートは無く、ロシアのオケも国際化が進んだんだなと感じさせます。コーダは抑え気味に入りました。トランペットのハイトーンからクレッシェンドはムラヴィンスキー時代と同じです。トランペットはバテたような感じは無く、ハイトーンも伸びやかで力強いです。堂々としたコーダは見事でした。

当然ムラヴィンスキー時代とは違う演奏でしたが、この曲の模範的な演奏でした。
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マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1997年ライヴ

ヤンソンス

★★★★☆
一楽章、柔らかい主題。とても音量を落としたヴァイオリン。録音のせいか響きが痩せていてロシアのオケのような厳しい響きです。第二主題も切れ込むような厳しい演奏です。展開部の重いピアノ、下品なくらい激しいホルンに対してとても軽いトランペット。トランペットによって行進曲風に変奏される主題の表現はとても豊かでした。再現部では陰影を伴ったクラリネットが美しいです。テンポの振幅はとても大きいです。

二楽章、速めのテンポで推進力があります。気持ちよく鳴るホルン。チャーミングなヴァイオリンのソロ。羊皮の独特な響きのティンパニ。

三楽章、とても丁寧で滑らかで、感情を込めた演奏です。弦が幾重にも波のように押し寄せて来ます。暗闇の中で響くような木管。遅めのテンポでたっぷりと聞かせる演奏はなかなか良かったです。

四楽章、ゆっくり目の主題から一転してテンポが速くなりました。トランペットのソロはムラヴィンスキーの演奏のように最後音量を落としてクレッシェンドしました。最後もムラヴィンスキーの演奏のようなクレッシェンドがありました。
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サー・ゲオルク・ショルティ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1993年ライヴ

ショルティ

★★★★☆
一楽章、ショルティらしくエッジがくっきりとした主題。揺れるような弦の伴奏に乗って、静かで動きの無いヴァイオリン。引き締まった厳しい響きです。第二主題も冷たい響きで、ロシアのオケのような感じです。展開部から活発な動きと表現になります。

二楽章、豪快に鳴るコントラバス。木管もとても豊かな表現です。ヴァイオリンのソロもとてもチャーミングです。

三楽章、ショルティのスタジオ録音の押し一辺倒の演奏とは違い、感情がとても込められた演奏です。他のヨーロッパの指揮者では聞けないようなロシアの冷たい冬を連想させるような厳しい演奏でもあります。

四楽章、ショルティらしく金管を明快に鳴らした主題。テンポも激しく動きスピード感があります。金管の鳴りは素晴しいです。最後はバーンスタインとほぼ同じのかなり速いテンポでした。
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ルドルフ・バルシャイ指揮/ケルン放送交響楽団

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1995年7月3&8日、1996年4月デジタル録音
★★★★☆
一楽章、豊かなホールの響きを伴って伸びやかな弦の主題。美しいオーボエ、暖かみのあるファゴット、明るいホルン。重いピアノに乗ってホルンのペダルトーンも暴れることなく抑制された表現です。ロシアのオケの演奏のような爆演にはならず、統制の取れた美しい演奏です。それでも、ここぞと言うところでは思いっきりオケを鳴らしていますが、そこはドイツのオケらしい重厚さがあります。終盤のヴァイオリンソロは繊細でとても美しい演奏でした。

二楽章、豪快な低弦の旋律から始まりました。余力を残したホルンの強奏。ここでもヴァイオリンのソロは美しい。ティンパニの音が高い音が短く、低い音が長く響いてちょっとチグハグでした。

三楽章、壮絶な雰囲気の響きが凄いです。弦のトレモロの上に木管のソロが鮮明に浮かび上がります。悲痛な感じよりは少し暖色系の響きがこの楽章の雰囲気にはちょっと合わない感じがします。

四楽章、ゆったりとしたテンポで主題が演奏されました。ここのティンパニも高い音が短くて変でした。弱音部に入る手前でトランペットがかなり下品な音を出しました。終結部にかけてはトランペットがかなり強く演奏しました。個人的には、この曲のイメージより暖かみのある演奏で、強奏部分ではかなり金管も鳴らすのですが、厳しい雰囲気は乏しかったように感じました。

レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

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録音時期:1959年8月16日
録音場所:ザルツブルク、旧祝祭劇場
録音方式:モノラル(ライヴ)
★★★★☆
一楽章、低域が薄い録音です。ゆっくりと丁寧なヴァイオリンの主題。作品から何かを抉り出そうとするような強い表現。テンポの動きも大きくバーンスタインが作品に深く共感しているのが伺えます。神経の行き届いた弱音。展開部へ入る前でも一旦テンポを落としました。トランペットが強調されて録音されていますが、この演奏にはピッタリです。テンポが遅い部分では、たっぷりと歌います。コーダもゆっくりとたっぷりと歌います。

二楽章、ゆっくりからはじまって、クラリネットが走ってテンポが速くなりました。ホルンの強奏がスタッカートぎみで面白い表現です。ヴァイオリンのソロも自由にテンポが動きました。強弱やテンポの変化が自在でバーンスタインの主張がストレートに表現されています。

三楽章、強弱の振幅は凄い。強烈な表現です。暖色系の響きなので、悲痛感はさほど感じません。

四楽章、速いテンポで元気の良いトランペット。テンポの激しい動きにオケのアンサンブルも乱れます。すごく感情のこもった歌です。後半は速いテンポで演奏されます。コーダはあっけない終り方でした。

エフゲニー・ムラヴインスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

ムラヴィンスキー

ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ録音(1978年)
★★★★☆
一楽章、モワーっとした残響の中、強いアクセントの主題が演奏されます。抑えぎみの金管。第二主題の後ろで刻む弦の抑揚が激しかったです。ホールの響きのせいか、ファゴットやフルートがとても太い音に聞こえます。展開部のホルンも軽く吹いているようです。弦楽器の表情はとても厳しく俊敏です。再現部に入るとトロンボーンなどはかなり強く演奏しています。コーダの手前からは微妙なテンポの動きもあってとても音楽的です。

二楽章、すごく表現力豊かで、初演者の自信のようなものが感じられます。風呂の中で聴いているような響きで色彩感はあまり感じられません。客席の中に無指向性のマイクでも立てて録音したのではないかと思わせるほど音が篭っています。

三楽章、むせび泣くような弱音で始まりました。波が寄せるように大きくなってはすっと引いていったりしながら音楽が進みます。弦楽器だけでも凄い音楽の振幅です。クラリネットのソロが悲痛な雰囲気を際立たせます。弱音の演奏に高い集中力を見せています。

四楽章、速いテンポで畳み掛けるように演奏する主題からそれに続く部分です。トランペットのソロの最後で一旦音量を落としてクレッシェンドしながら下降しました。ビブラートのかかったホルンのソロ。トランペットのソロ以外にも突然音量を落としたりします。作品を知り尽くしているムラヴィンスキーならではの表現です。大きくritしてクレッシェンドしてティンパニです。この部分の最初は音量を落としてバランスのとれたブラスセクションがパイプオルガンのような響きになります。その後トランペットがクレッシェンドして最後は全体でクレッシェンドして終りました。録音は悪いですが、なかなか感動的な演奏でした。

佐渡 裕/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

佐渡 裕

★★★★☆
一楽章、柔らかい第一主題。ゆっくりと静かに演奏されるヴァイオリン。終始遅いテンポです。第二主題も遅くとても静かです。展開部からは次第にテンポが速くなりました。トロンボーンはかなり強く演奏しています。コーダは再び遅めのテンポで伸びやかな演奏になります。ベルリンpoは安定した上手さです。

ニ楽章、躍動感のある演奏です。ヴァイオリンのソロはアゴーギクを効かせて美しい演奏です。フルートもフレーズ感が良いです。テンポの動きもあって豊かな表現です。

三楽章、暖かい響きです。フルートも暖かいです。作品の持っている悲痛さはあまり感じられません。穏やかで安らかな演奏です。

四楽章、良く鳴る金管。スピード感のある弦。トランペットのソロも見事に鳴り響きます。分厚い響きはさすがです。思い切り良く金管を鳴らす演奏はなかなか爽快感があります。スネアが入るところからはテンポが少し速いです。最後は分厚い響きで堂々とした演奏でした。

二楽章はとても豊かな表現でしたが、三楽章は暖かく悲痛な感じがありませんでしたが、オーケストラはさすがに安定感のある分厚い響きでした。

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山田 一雄/日本フィルハーモニー交響楽団 1965年ライヴ

山田 一雄

★★★★☆
一楽章、とても感情のこもった第一主題です。物凄く遅いです。続くヴァイオリンも今まで聞いたことのない遅さです。第二主題も遅いですが、緊張感は維持されています。録音年代からするととても良い音です。再現部は一般的なテンポですが、金管(特にホルン)が大人しいです。打楽器がカブッて来ます。コーダもかなり遅いですが、間延びした感じは無く自然に聞くことが出来ます。

二楽章、一転して少し速めのテンポの演奏です。生き生きとして積極的な演奏です。乗り乗りで楽しそうです。

三楽章、少し乾いた弦の響き。内面からこみ上げる感情を表現しています。強い表現ではありませんが、自然な感情の起伏を表出している感じで、作品への共感が自然に表れています。

四楽章、ロシアのオケのような凄みは感じない主題ですが、当時の金管のレベルからするとこんなものかも知れませんが、少し雑に聞こえます。それでも録音された年代を考えるとかなり凄い演奏です。コーダのトランペットのハイトーンは少し苦しそうでしたが、当時としては出色の演奏だったのではないかと思います。

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マリス・ヤンソンス/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 1986年サントリーホールライヴ

ヤンソンス

★★★★☆
一楽章、柔らかく滑らかな主題。静かに演奏されるヴァイオリンですが、ムラヴィンスキーのような厳しく統制された感じはありません。速めのテンポで感傷に浸る余裕は与えてくれません。第二主題もピリッとした緊張感はありません。展開部に入ってからは軽い演奏で、金管はあまり強くありません。濃厚さは無く、サラッとした演奏です。ロシアのオケにありがちなパワーで押し切るようなことは無く、美しい響きの演奏です。

二楽章、ほとんどテンポも動かず、インテンポです。レニングラードpoを聞いている感じではありません。西欧のオーケストラのような柔らかい響きです。

三楽章、柔らかく伸びやかな弦。優雅な感じで悲痛にはなりません。フルートも伸びやかで、とてもレニングラードpoを聞いている感じではありません。弱音から怒涛の弦の全合奏までとても振幅が大きく感情を吐露するような演奏です。突然音量を抑えるなどヤンソンスならではの演奏もあります。

四楽章、ゆったりとしたテンポで堂々とした主題ですが、直後にテンポを速めました。金管は軽いです。トランペットが強くても突き刺さって来るような厳しさはありません。ビブラートを掛けたホルンがロシアのオケらしいです。最後へ向けて力強いティンパニが印象的でした。

ムラヴィンスキー時代の厳しい響きでは無くなりましたが柔らかく伸びやかな演奏は、これはこれで良い演奏でした。

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アンドラス・ヴァス /パノン・フィルハーモニー管弦楽団

Vass

★★★★☆一楽章、普通にアタックの効いた主題。聞いたことの無いオーケストラですが、なかなかの演奏水準です。ハンガリーのオーケストラのようです。テンポも中庸のもので、強い個性はありませんが、安心して聞けます。展開部の力強いホルン。再現部でも良く鳴るトロンボーン。続くフルートのソロも美しいです。

二楽章、強い表現はありませんが、過不足なく標準的な演奏です。伸びやかに強調されたホルン。柔らかく歌うトランペット。最後のオーボエのソロではテンポを落としました。

三楽章、深みのあるコントラバスやティンパニと一体になった盛り上がりなど、なかなか訓練された良いオーケストラのように感じます。

四楽章、力強いティンパニに乗って、整った主題の後、テンポが上がります。トランペットのソロの前からかなりテンポが速くなりますが、とても心地よいテンポです。ホルンのソロでは一転してゆったりとした穏やかな表現です。コーダの前のritとコーダで一気にテンポを速める切り替えも見事でした。コーダのトランペットのハイトーンでのクレッシェンドはそれ程ではありませんでしたが、期待せずに聞いたのですが、なかなか良い演奏でした。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1983年ライヴ

ムラヴィンスキー

★★★★
一楽章、オフぎみで柔らかい主題。ゆっくりと演奏されるヴァイオリン。遠く抑えられたトランペット。冷たい第二主題。とても静かに淡々と進みます。重いピアノ。再現部に入って、アゴーギクを効かせるクラリネット。

二楽章、表情豊かな弦。オフぎみの録音ですが、色彩感は濃厚です。

三楽章、大きな振幅。響きが暖かいせいか、悲痛な感じはあまりありません。寂しげなハープ。

四楽章、主題の後に僅かにテンポを速めます。濃厚な色彩のブラスセクション。ビブラートのかかった強弱の変化も大きいトランペットのソロ。コーダを少し弱めに入るのはムラヴィンスキー独特の解釈です。ハイトーンから強くなって、中低音の和音が充実した響きです。

ムラヴィンスキーの演奏としては、表情もあまり緻密に付けられている演奏では無く、そんなに良いコンディションでは無かったように感じました。
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レナード・バーンスタイン/ロンドン交響楽団 1966年

バーンスタイン

★★★★
一楽章、古い録音らしく密度が薄くデッドな録音です。ゆっくりと演奏されるヴァイオリン。第二主題は割りと強めです。濃厚に歌うビオラとチェロ。展開部の前で大きくテンポを落として、展開部は速いテンポです。

二楽章、かなり乱暴な感じのコントラバス。速いテンポで活発な表現です。現在の演奏水準からすると少し劣るような感じがします。

三楽章、晩年の演奏のように深く感情が込められた演奏ではありませんが、抑揚の変化は大きいです。強奏部分は叩き付けてくるような激しさですが悲痛さはあまり感じません。

四楽章、かなり速いテンポで弦も凄い勢いです。途中は指定通り遅くなりましたが、スネアが入ったところからまた物凄く速いテンポです。最後も凄く速いテンポでしたが、これは本当の歓喜の表現なのか、証言を先取りした強制された喜びの表現なのか分かりません。とにかく馬鹿騒ぎのような終わり方です。

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朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈 ショスタコーヴィチ 交響曲第5番「革命」

1981年2月16日大阪フェスティバルホール(ライヴ)
★★★★
一楽章、暖かい温度感ではじまりました。テンポが動くことは無くインテンポを貫き通すので、ちょっと間延びする場面もあります。少しテンポを速めた展開部。展開部はテンポが動きます。金管は激しく咆哮することは無く、節度を保っています。コーダは静かに静かに演奏され終わりました。

二楽章、木管の音が合っていないようで、バラバラな感じがしました。歌に満ちた演奏で、抑揚や間があってとても良い感じです。

三楽章、暖色系の響きのために、この楽章の持っている厳しく凍て付く寒さのような雰囲気がありません。暖かい響きで悲痛な表現とはかなり違います。

四楽章、ゆったりとしたテンポです。主題の後にテンポを上げてスピード感が出てきました。輝かしく良く鳴ったトランペットのソロ。かなり熱気の感じられる演奏です。弱音部も整った演奏で聞かせます。終結へ向けて次第に力強くなる部分は感動的で、すばらしかったです。

小澤 征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ

小澤 征爾

★★★★
一楽章、滑らかで分厚い主題。弦に揺られて静かにゆっくり演奏されるヴァイオリン。ロシアのオケのような冷たく厳しい響きではありません。第二主題もゆっくりと味わうような演奏です。展開部は少し速くなりますが、ホルンやトランペットはとても抑えられていて、大きな振幅はありません。トランペットの行進曲もとても軽いです。コーダに入る前のとても伸びやかなフルートが美しいです。コーダのヴァイオリンのソロも繊細で美しいです。

二楽章、あまり躍動感が無く、ホルンの音も短めです。

三楽章、ゆっくりと感情が込められた演奏です。フルートのソロも伸びやかで豊かな表現です。振幅が大きく思い切った表現です。全体に柔らかく伸びやかな響きで美しいのですが、ロシアのオケのような厳しさはありません。

四楽章、ゆっくりとしたテンポでテヌートぎみに演奏される主題。その後テンポを速める部分がぎこちなかったです。テンポを落とす部分はかなり思い切ったテンポでゆっくり演奏されるのですが、ちょっと間延びした感じもあります。コーダの金管も抑えられていて、小澤独特の解釈の演奏でしたが、肩透かしの部分も多くありました。

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ディミトリー・ミトロプーロス/ニューヨーク・フィルハーモニック 1952年

ミトロプーロス

★★★★
一楽章、ホーレンシュタインの演奏よりも深みもある響きです。テンポの動きや豊かな歌がとても魅力的です。第二主題も豊かな歌がありました。展開部の不気味に抑えられたホルン。ホーレンシュタインと同じ年の録音ですが、音は断然こちらが良いです。金管はとても上手いです。

二楽章、ここでもテンポの動きや大きな表現があります。ただアンサンブルはかなりルーズです。

三楽章、冒頭から感情のままにテンポが動くような演奏ですが、激しく感情に流されることはありません。

四楽章、ゆったりとした第一主題。その後、少しずつテンポを速めて行きます。思いがけないところでテンポが速かったりもします。この楽章もとても表現意欲の強い演奏です。コーダも速めです。
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ムスティラフ・ロストロポーヴィチ/ワシントン・ナショナル交響楽団

ロストロポーヴィチ

★★★★
一楽章、ゆっくりと演奏されるヴァイオリン。とても丁寧な演奏で、作品への思い入れを感じさせます。第二主題もゆっくりと感情を込めた演奏です。フルートがロシアの寒さを感じさせます。展開部に入ると突然ホルンが目の前で鳴り始めます。スネアも目の前で演奏しているような不自然な音場感です。金管は激しく咆哮します。コーダのテンポを落としてアゴーギクを効かせた演奏はなかなかのものでした。

二楽章、ホルンは独特の表現です。テンポの動きはとても大きいです。

三楽章、前の二つの楽章で見せたテンポを動かして感情を込めた表現から、淡々と感情を抑えた演奏になっています。普通ならこの楽章で感情を吐露するのではないかと思いますが、かなり肩透かしです。ただ、強弱の振幅は大きいです。表現も雑な感じの部分もありました。

四楽章、遅めのテンポで演奏される主題。オケの技量からか、主題も荒い感じです。主題の後はかなり勢いのある演奏です。テンポの動きはかなり大きいです。演奏自体にムラがあって、感情を込めて濃厚な部分と、とても希薄でなんとなく演奏されている部分があります。それと遅い部分が遅すぎて間が持たない感じもあります。

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セルゲイ・クーゼヴィツキー/ボストン交響楽団

クーゼヴィツキー

★★★★
一楽章、かなり古臭い録音で、せせこましい第一主題でした。速めのテンポをさらに煽る感じで落ち着きません。第二主題になると一転して落ち着きました。展開部はまたとても速いテンポで、表現も積極的な印象で、テンポの動きも大きいです。

二楽章、この楽章も速いテンポです。表現は生き生きとしていて、とても積極的で聞いていて気持ちが良いです。

三楽章、とても感情の込められた表現です。起伏も大きく激しく感情を吐露するような演奏です。

四楽章、トロンボーンが控えめな第一主題。とにかく積極的な表現がこの演奏の魅力です。最後はアメリカのオケはこのテンポで演奏するのが決まりになっているかのような快速テンポでした。
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ウラディーミル・アシュケナージ/フィルハーモニア管弦楽団

アシュケナージ

★★★★
一楽章、とてもエッヂの効いた主題。続くヴァイオリンは極端に音量を落とすことは無く、緊張感もありません。第二主題は抑えた音量ですが、やはり緊張感はあまりありません。展開部に入ると、明快に鳴る金管ですが、ロストロポーヴィチの演奏のように咆哮することは無く美しい響きを保っています。伸びやかで美しいフルート。コーダに入ると一気に暗く重苦しい雰囲気になります。

二楽章、ヴァイオリンのソロは凄く歌います。録音はとても良く、それぞれの楽器が粒だっています。

三楽章、何とも言えない悲しい表現です。強い表現はありませんが、内面から染み出るような感情。アシュケナージがこの音楽に強い共感を感じていることが伝わってくる演奏です。孤独なクラリネット。

四楽章、最初テヌートで演奏される主題。その後もテヌートで演奏される部分が出てきます。

三楽章だけが飛び抜けて良かったです。

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フィリップ・ジョルダン/マーラー・ユーゲンド管弦楽団

ジョルダン

★★★★一楽章、耳当たりの良い柔らかく洗練された響きの主題。第二主題になっても表面の冷たさに内面の暖かさを感じます。柔らかく、決して荒々しくならない展開部。とてもバランスの良い響きで、爆演とは程遠い演奏です。コーダはとても美しいです。

二楽章、軽快な動きの中にも、とても洗練された美しさはなかなかです。

三楽章、寂しく憂鬱な雰囲気がありますが、身を切られるような冷たさや鋭さは無く、柔らかく暖かい響きです。

四楽章、ここでもバランス良く美しい主題です。とても軽く演奏する金管。コーダも力まず軽く美しい響きです。
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マクシム・ショスタコーヴィチ/ロンドン交響楽団

マクシム・ショスタコーヴィチ

★★★★
一楽章、ゆっくりと演奏される主題。続くヴァイオリンもかなり遅いです。第二主題も同様に遅いです。展開部からは普通のテンポです。とても軽く演奏される金管。かなり丁寧に演奏されています。再現部の前ではトランペットがかなり強くロングトーンをします。再現部はまたゆっくりのテンポですが、なぜかハイティンクの演奏のような耐えられないような遅さには感じませんでした。

二楽章、テンポは普通ですが、ここでも丁寧な演奏で、その分活発さはありません。

三楽章、ゆっくり目のテンポで、丁寧で柔らかく美しい演奏です。強い個性は感じませんが、作品に対する真摯な姿勢は感じます。消え入るような弱音もとても美しいです。

四楽章、力みの無い主題。あまりテンポは上げません。ホルンは強調されています。コーダのトランペットのハイトーンが突き抜けて来ました。コーダは素晴らしい効果のある演奏でした。

強い個性はありませんでしたが、美しい演奏でした。
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ミハイル・プレトニョフ/ロシア・ナショナル管弦楽団

プレトニョフ

★★★★一楽章、次々と折り重なるような主題。かなり抑えたヴァイオリン。ゆっくりとしたテンポですが、表情があるので十分聞けます。ロシアらしく浅い響きのホルン。ゆったりとしたテンポで随所で表情が付けられています。一転してテンポの速い展開部。ここぞと言うところでトランペットが突き抜けて来ます。行進曲調の部分はかなり速いデンポです。再現部でもビリビリと響くトロンボーン。

二楽章、速めのテンポで活発な表現です。とても流れが良く、オケの一体感もあります。

三楽章、二楽章に比べると淡々とした演奏でスタートしましたが、次第に豊かな表現になります。切々と歌う表現もありました。

四楽章、このパウカーは高い方のティンパニの中央近くを叩いているような音がするんですが・・・。トランペットが強い主題。主題の最後あたりからテンポを上げます。トランペットはロシアのオケらしく強烈です。トランペットのソロの強く安定感抜群です。テンポは目まぐるしく変わります。コーダの前にスネアが強いアタックで入ったり色んな主張のある演奏です。ゆったりと堂々としたコーダ。元々強かったトランペットがハイトーンでさらに強くなります。

プレトニョフの主張ず随所に見られる演奏でした。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ウィーン・プロ・ムジカ管弦楽団 1952年

ホーレンシュタイン

★★★
一楽章、次々と押し寄せてくる第一主題。続くヴァイオリンはても良く歌います。第二主題はとても柔らかい表現になります。ただ、ヴァイオリンの高音域は録音の古さからかなりキツイ響きになります。ダイナミックレンジも狭くかなり平板に聞こえます。展開部も音圧はほとんど上がらず軽い感じです。

二楽章、響きの薄い低弦。テンポは颯爽とした速めのテンポです。軽く爽やかなトランペット。

三楽章、速めのテンポでほとんど感情が込められていないような軽薄な印象の演奏です。演奏もたどたどしい感じがします。最も悲痛になる部分ではテンポを落として濃厚な表現でした。

四楽章、弱いティンパニ。異様に近いトランペット。アンサンブルも怪しいところがあり、こなれていない感じがとてもします。スネアが入るところからはかなり速いテンポになります。コーダも速めのテンポで音を短く切る金管がとても不自然です。

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セルジュ・チェリビダッケ/RAI国立交響楽団 1955年ライヴ

チェリビダッケ

★★★
一楽章、物凄く古臭い録音です。遅い第一主題。続くヴァイオリンもとても遅いです。第二主題も遅いです。晩年の超スローテンポの演奏の片鱗のような演奏で、一音一音大切に演奏しています。展開部へ向けてさらにテンポが遅くなります。抑えられた金管。トランペットが終わるあたりからテンポが速くなりました。それでも普通の演奏に比べるとかなり遅いです。再現部に入ってフルートが入る部分になるとまた遅いテンポになります。脱力して祈るような演奏でした。

二楽章、この楽章も遅めのテンポです。冒頭部分で強弱の変化のある表現がありました。

三楽章、録音の古さの上にマイクセッティングの制限のあるライヴと言うこともあり、美しさが全く感じられないのが残念です。弱音はかなり音量を落としているようです。

四楽章、落ち着いたテンポで抑え気味の第一主題から少しずつ加速します。テヌート気味に演奏されるトランペットのソロ。コーダのトランペットが苦しそうです。
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クルト・ザンデルリング/ベルリン交響楽団

ザンデルリング

★★★一楽章、柔らかい低弦と艶やかな高弦が呼応する主題。ゆっくり演奏されるヴァイオリン。強い緊張感は無く、柔らかい響きです。第二主題の弦の刻みがとても柔らかいです。ゆっくりではありますが、極端な遅さでは無く普通に聞けます。展開部ではかなり抑えた金管でした。再現部でも抑制の効いた金管で、とてもバランスの良い演奏です。

二楽章、整然としていて、大人なスケルツォです。伸びやかで柔らかく美しいトランペット。

三楽章、この楽章でも、伸びやかで柔らかい弦が心地よい。深みのある演奏は素晴らしいです。

四楽章、猛烈なテンポでリズムも甘い主題です。その後はほとんどテンポを加速しません。わずかにビブラートをかけたホルンのソロ。終始抑制された金管。ゆったりとしたコーダ。最後はさらにテンポを落として終わりました。

伸びやかで柔らかく、抑制の効いた演奏は、ムラヴィンスキーの演奏とは対照的でした。
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ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク

★★★
一楽章、コンセルトヘボウらしい濃厚な色彩。ゆっくりとしたテンポで、丁寧なヴァイオリン。テンポが遅く、動きも無いので、少し間延びした感じがあります。第二主題もとても遅いです。柔らかく膨らみのあるファゴット。フルートはピンポイントで美しい。展開部からは一般的なテンポ感です。ムラヴィンスキーのライブのような金管のムラは無く、美しく整っています。再現部の第二主題の再現もとても遅いです。ちょっとこの遅さには付いて行けません。

二楽章、美しい残響と濃厚な色彩感はさすがです。

三楽章、この楽章も遅いテンポで丁寧な表現です。フルートのソロも遅いテンポですが、美しいです。この楽章の遅さはあまり抵抗がありません。感情を叩きつけるような悲痛さはありません。

四楽章、ゆっくりとした確実な足取りの主題。極端なアッチェレランドではありませんが、力強く前進します。艶やかで輝かしいトランペットのソロ。表現はハイティンクらしく、全く作為的な部分は無く、とても自然に流れます。コーダは少し速めのテンポですが、お祭り騒ぎのようにはなりません。

ケレン味の無い、純粋な表現の演奏でしたが、一楽章の遅さにはちょっとついて行けませんでした。
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チョン・ミョンフン/東京フィルハーモニー交響楽団

チョン・ミョンフン

★★★
一楽章、伸びやかな主題、豊かな表情が付いています。静かに演奏されるヴァイオリンですが、極端な静寂感や緊張感はありませんが、伸びやかに歌います。細身のホルン。第二主題も美しく伸びやかです。展開部の重量感りあるピアノ。ビリビリと響くホルン。行進曲風の部分は、短い音がスタッカート気味でシャキッとしています。再現部の前は凄くテンポが遅くなりました。再現部でも咆哮することは無く、抑制の効いた表現です。全体に遅めのテンポでゆったりとした演奏です。コーダのフルートは消え入るように弱く演奏されます。

二楽章、豪快に鳴り響く冒頭の低弦。一楽章とは対照的に活発に動きます。ヴァイオリンのソロも濃厚な表現です。

三楽章、柔らかく伸びのある弦はとても美しいですが、その分、悲痛な感じは受けません。かなり激しいティンパニにクレッシェンド。木管はそれぞれが上手く、引き込まれるようです。

四楽章、ゆっくりとした主題。アッチェレランドも緩やかです。トランペットのソロは遠くから響くようでした。ハープのソロが終わった後の木管の部分はとても遅いです。コーダの直前もかなりゆっくりになりました。コーダは中庸のテンポで、金管も爆発することも無く、抑制されていました。

細やかな表現や、テンポの大きな動きなどもありましたが、あまり強く印象に残る演奏ではありませんでした。
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イオン・マリン/NHK交響楽団

マリン

★★★一楽章、速めのテンポで生き生きと活気のある主題。一転して、静かなヴァイオリン。テンポや強弱の変化があります。柔らかい弦の刻みに乗るヴァイオリンの第二主題。早いテンポの展開部。割と強めのホルン。かなり強く金管が吠えますし、かなり生命観のある演奏です。再現部も速いですが、フルートのソロからは普通のテンポです。コーダも速めで、伸びやかな歌です。

二楽章、ヴァイオリンやフルートのソロは豊かに歌います。終盤のオーボエのソロはかなりゆっくり演奏しました。

三楽章、バランス良く、暖かく柔らかい響きです。木管のソロは豊かな表情です。柔らかい響きなので、悲痛な感じはあまり感じません。

四楽章、主題の直後からテンポをアップして加速します。N響も日本人のオケらしく細部まで丁寧です。弦に埋もれるようなトランペットのソロ。コーダの直前に大きなrit。速めのコーダですが、金管は大きなクレッシェンドも無く終わりました。このあたりは日本人の体力の無さなのか。

生き生きとした表現の演奏ではありましたが、曲本来の持っているものを表現したのかは疑問です。別の一面を示したと言えばそうかもしれませんが・・・・。
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陳佐湟/中国国立交響楽団

Chen

★★★一楽章、良い主題の入りでしたが、若干のアンサンブルの乱れがありました。そんなに落とさずに自然に演奏されるヴァイオリン。第二主題も伸びやかです。展開部の暖かいホルン。続くトランペットも激しさはありません。金管の柔らかい響きが印象的で、ロシアのオケのゴリゴリとした演奏とはかなり違います。再現部に入ってからテンポの動きや大きな表現がありました。

二楽章、木管のソロは活発な表現では無く、淡々としています。続く弦やホルンはかなり勢いのある演奏でした。トランペットはここでも柔らかいです。ホルンが入る最初の音は少し伸ばす独特の表現です。

三楽章、一転して静かな演奏です。この二楽章からの雰囲気の変化は見事です。フルートが入る前の淡いヴァイオリン。ヴァイオリンと変わって芯のしっかりとしたフルート。

四楽章、やはり柔らかい主題。アクセントがあるようなトランペットのソロ。スネアが入る部分からかなり速いテンポで、その後大きくritしてコーダも速めでした。

細かなミスはありましたが、なかなかの熱演でした。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団 2005年ライヴ

ヤンソンス

★★☆
一楽章、かなり大勢で演奏している感じのある主題。続くヴァイオリンは極端に音量を落とすことは無く、緩やかな表情です。第二主題は第一主題部よりも静かですが音量を落とすよりも表情の豊かさを優先しているようです。展開部では軽く演奏されるホルンとトランペット。行進曲風の部分はトランペットのクレッシェンドが特徴的でした。再現部も抑制の効いた演奏です。伸びやかなフルート。

二楽章、荒々しい低弦。木管の表情はとても豊かです。ホルンは空虚な感じがあります。柔らかく暖かいトランペット。

三楽章、冒頭から暖かい演奏で、悲痛な雰囲気は微塵もありません。伸びやかで暖かいフルート。表現の振幅は大きいです。シロフォンが入る部分の直後の音量を落としたり、独特の表現もあります。

四楽章、ゆったりとしたテンポの主題の後、急激にテンポを上げます。これはヤンソンスの他の演奏でも見られた表現です。奥まって響くトランペットのソロ。ゆったりとしたテンポで、マットなホルンのソロ。少し速めのコーダ。

どうしてもムラヴィンスキーの演奏が基準になってしまいますが、響きもテンポ設定も作品にしっくり来ませんでした。
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ウラディミール・ゴルシュマン/セントルイス交響楽団

ゴルシュマン

★★☆一楽章、少し古い録音のようです。速いテンポの第一主題。続くヴァイオリンも速めのテンポですし、あまり音量を抑えていません。一転して第二主題はゆっくりとしたテンポです。展開部からはまた速くなりました。全体的に金管は抑え気味で制御されていますが、再現部でも抑えた表現です。フルートとホルンが絡む部分はゆっくりになりました。コーダに入ってもあまり感情移入するような表現では無く、淡々と作品を演奏しています。

二楽章、一楽章からは一転して、活発に動く木管。スタッカート気味のホルン。トランペットもホルンに倣ってスタッカート気味でした。

三楽章、ここでもあまり音量を抑えず、伸びやかに演奏しています。温度感もあり、あまり悲痛な雰囲気はありません。ティンパニのクレッシェンドがある部分はかなりの振幅のある表現でした。クライマックスの手前で少しテンポを遅めました。

四楽章、この演奏では、全体的に金管の音は短めですが、この主題も少し短めでした。主題の後に少し加速しますが、弦のアンサンブルが少し乱れるような感じがありました。コーダも短めの音で演奏する金管。少し雑な感じがありました。
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Lim Hun-Joung/韓国交響楽団

Lim Hun-Joung

★★☆一楽章、比較的滑らかな主題。自然に抑えたヴァイオリン。力みの無い展開部。奥まった所から柔らかく響くトランペット。行進曲調の部分では、シャープな響きに変わったトランペット。スネアは二人で演奏しています。再現部もあまり力を入れずに軽く演奏しています。

三楽章、ティンパニが激しくクレッシェンドします。ちょっと違和感がありました。オーボエのソロの前の弱音はかなり抑えて演奏しました。弱音は全体に抑えていますが、ピーンと張りつめたような静寂感はありません。

四楽章、ビーンとなる金管の主題。あまり加速はしません。一体感のある弦の演奏に金管の強い色彩感がアクセントになります。コーダの前はあまりritしまませんでした。あっさりとしたコーダでした。
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タニア・ミラー指揮 ヴィクトリア交響楽団

★★☆一楽章、カナダのオーケストラです。響きは薄いですが、エッジの効いた主題。思ったよりも安定した演奏です。第二主題の後ろの弦の刻みも厚みがありません。展開部のホルンも浅い響きです。シロフォンとスネアが凄くオンマイクになっているような録音です。再現部では、強打するティンパニと抑え気味のトロンボーンが少しチグハグな感じがありました。

二楽章、あまり積極的な表現は無く、普通に演奏したと言う感じです。トランペットも奥行き感が無く浅い響きです。

三楽章、薄い響きがかえって涼感を感じさせる演奏になっています。厳しい冷たさではありませんが。クラリネットのソロで音が低かったような部分もありました。でも熱のこもった演奏でした。

四楽章、やはりティンパニの強打に比べると主題が弱い感じです。録音の問題か?ゆったりとした主題でした。あまり加速はしませんでした。スピード感や緊迫感はあまりありません。コーダの前はあまりritはせず、ゆっくりとしたコーダで、金管も抑え気味です。終始突き抜けることは無く終わりました。

オケの技量の問題か、金管が爆発するようなことも無く、淡々とした演奏でした。
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マチャヴァリアニ /トルコ国立イズミール交響楽団

Matchavariani

★★一楽章、くすんだコントラバスと瑞々しいヴァイオリンの主題。第二主題の前にホルンがかなり強く吠えました。ピアノがかなりオンマイクになっていて全体のバランスから飛び抜けている展開部。ここぞと言うところでは、金管が遠慮なく吠えます。再現部ではフルートが豊かに歌います。

二楽章、突出する部分も無く、うまくまとまっています。

三楽章、淡い表現で淡々と進みます。録音のせいなのか、あまり音楽の起伏が伝わって来ません。ピアノのトレモロが突然入って来てびっくりします。ピアノのミキシングのバランスが明らかなミスです。

四楽章、主題も主題の後も少しアンサンブルが乱れたような感じがありました。その後すぐにテンポを上げますが、加速はあまりせずに置きに行ったような安全運転です。トランペットのソロの前もかなり乱れがあります。コーダはわりと速めです。

オケの技術的な限界もあるのか、あまり積極的な表現も無く、とりあえず最後まで演奏したと言う感じの演奏でした。
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Sarah Bisley/アオランギ交響楽団

Bisley

一楽章、このオーケストラはニージーランドのオーケストラらしい。とても柔らかい主題。続くヴァイオリンはそんなに音量を落とすことはありませんでした。ゆったりとした第二主題。これまで聞いてきた指揮者の演奏とは一線を画す柔らかい表現です。展開部のホルンも柔らかい演奏ですが、少し遅れ気味です。アンサンブルはかなり怪しいです。行進曲風の部分はかなりゆっくりです。再現部の少し前に崩壊しそうになります。再現部も遅いです。コーダもフルートの息が持たないほどの遅さです。

二楽章、クラリネットのミスもありで、やはりオケの技量は今一つです。ヴァイオリンのソロはたっぷりと歌いました。トランペットもホルンも優しく柔らかいですが、思い切りが足りない感じもします。

三楽章、フレーズの終わりと次の間が繋がらず、隙間が出来てしまうようなところもあります。ソロでは、とても良い雰囲気のある部分もありますが、全体の演奏になると、アンサンブルの精度が低いのが気になります。指揮者のサインが明確で無いのか、思い切って、ドンと出ることがあまり無いような、オケがビビリながら演奏しているような感じがします。演奏自体は暖かく、悲痛な雰囲気はありません。

四楽章、この主題も力の抜けた柔らかいものです。弦のアンサンブルの乱れなど、オケの貧弱さをここでも露呈します。トランペットのソロの後も大きくアンサンブルが乱れシンバルがビビリながら小さく入ったのが印象的でした。シンバルがすごく弱いのにティンパニはすごく強いコーダ。トランペットはハイトーンからのクレッシェンドも無く、そのまま終わりました。

何とか最後まで演奏したと言う感じでした。
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サー・ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団

バルビローリ

一楽章、いかにも古い録音と感じさせる冒頭の主題。かなりゆっくりとしたヴァイオリン。歪っぽい音が続くので、古い録音が苦手な人には無理な演奏です。突然速いテンポで追い立てる展開部。再現部のトロンボーンはとても軽く演奏しました。続くフルートでは少しテンポを落としますが、あまり作品に思い入れがあるようには感じません。淡々と演奏されています。コーダも淡々としていました。

二楽章、速いテンポです。

三楽章、テンポの動きはありますが、あまり作品に没入する感じは無く、共感はあまり感じません。

四楽章、ちょっと短めの主題。その後の加速する部分の弦がやや雑な印象です。遠いトランペットのソロ。歪っぽいのも相まってかなり雑な演奏に聞こえます。コーダの前はかなり速いテンポでした。コーダも速めです。

かなり雑な演奏で、やっつけ仕事のように感じました。
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ショスタコーヴィチ:交響曲第5番「革命」の名盤を試聴したレビュー