カテゴリー: 交響曲

ブルックナー交響曲第3番

ブルックナーの交響曲第3番は「ワーグナー交響曲」とも呼ばれることがあり、彼の音楽に大きな影響を与えたリヒャルト・ワーグナーに捧げられています。ブルックナーの交響曲の中でも特に劇的で深い精神性を持ち、ワーグナー風のオーケストレーションと構成が特徴です。

曲の特徴

  1. ワーグナーへのオマージュ
    この交響曲はブルックナーがワーグナーに直接捧げたもので、特に和声の色彩やオーケストレーションの手法に、ワーグナーの影響が見られます。実際、初期の草稿にはワーグナーのオペラからの引用も含まれていましたが、後の改訂でこれらは削除されました。それでも、全体の雰囲気や壮大さにはワーグナー的な影響が色濃く感じられます。
  2. 重厚で深遠な構成
    第3番は、ブルックナーの交響曲の中でも特に長大で、壮大な構成を持っています。緩やかに始まり、各楽章が次第に高まっていくスケールの大きな展開が特徴です。また、モチーフが繰り返し使われ、楽章間の統一感が高い点も魅力です。
  3. 繰り返しの多用
    ブルックナーはこの交響曲で、モチーフの反復や展開を通じて、荘厳な雰囲気を生み出しています。同じ主題やリズムパターンが様々な形で現れ、全体に統一感が生まれる一方で、音楽の厚みと深みも感じられます。

各楽章の概要

  • 第1楽章: 静かな序奏から始まり、次第に劇的なクライマックスへと向かう。モチーフの反復やオーケストラの厚みが印象的。
  • 第2楽章: 美しく深いアダージョで、哀愁と荘厳さが漂う。特に弦楽器の柔らかい響きが聴きどころ。
  • 第3楽章: 力強く活気に満ちたスケルツォで、リズミカルな要素が際立つ。コントラストのあるトリオ部分も特徴的。
  • 第4楽章: 壮大なフィナーレで、全体のテーマを統合しながら劇的に終わる。堂々とした終結が印象的。

総評

交響曲第3番は、ブルックナーの作風が大きく成熟した作品で、彼の精神的な探求や宗教的な信仰が色濃く表れています。初演時は理解されず不評でしたが、現在ではブルックナーの重要な作品のひとつとして評価されています。

ゲオルク・ティントナー/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

★★★★★

一楽章、第一稿による演奏です。遠くからおぼろげに聞こえるトランペットの第一主題。とてもゆっくりとした演奏で丁寧です。ふくよかで穏やかな第二主題。第三稿とはかなり違うところもあり、これはこれで良い稿だと感じます。広大なトゥッティもなかなか良い響きです。艶やかな木管も美しい。暴力的な響きのトゥッティがあったり、一点して穏やかになったり、なかなか面白いです。ウィーンpoのような凝縮された濃厚な色彩感ではありませんが、開放的で美しい色彩感です。オルガンの響きのように聞こえる部分もあります。

二楽章、この楽章もとても遅い演奏ですが、味わいがありとても良いです。弱音部はとても優しい表現で、音楽に浸ることが出来ます。

三楽章、モヤのなかに隠れている主題。充実したトゥッティ。木目細かなヴァイオリなどの弦。どの楽器も美しい。

四楽章、色んな音が混在して三稿では旋律になる音が陰に隠れたりします。トロンボーンの和音も素晴らしい響きでした。コーダも充実した素晴らしい響きでした。

力で押すようなことが無く、伸びやかでとても美しい演奏でした。

パーヴォ・ヤルヴィ/hr交響楽団

★★★★★

一楽章、とても雰囲気のある演奏です。長く尾を引く残響も作品に合っていて良いです。トゥッティの響きも涼やかですがとても強いエネルギー感です。第二主題も優しく揺られます。とても豊かで情報量が多く色んな音が聞こえて来ます。ティンパニも凄い!少し速めのテンポでグイグイ進む力強さ。

二楽章、穏やかな第一主題。とてもソフトで控えめに入って来る第二主題。この楽章も速めのテンポで引き締まった演奏です。強弱の振幅はとても大きく、金管もとても安定感があり力強い。

三楽章、速いテンポで畳みかけます。凄いスピード感。トリオはリズミカルなワルツです。とても豊かな表現です。

四楽章、ブルックナーのオーケストレーションを克明に描き出します。楽しそうに歌う弦。ヤルヴィはティンパニを本当に効果的に使う指揮者です。この演奏でも随所にティンパニが活躍します。コーダでのクレッシェンドも気持ちよく決まって最高でした。
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朝比奈 隆/新日本フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

一楽章、遠くからかすかに響くトランペット。色んな楽器が鮮明に聞こえる良い録音です。ゆったりとしたテンポでスケールの大きな演奏です。ストレートな第二主題。充実した響きです。柔らかく繊細な弦の刻み。透明感のある木管。伸びやかで柔らかい弦。トゥッティでも力みの無い美しい響きです。

二楽章、内面から湧き上がるような表現です。第二主題は割と速めに進みますがテンポの動きもあって感情のこもった表現です。前に進もうとする推進力もあります。コーダも祈るように美しい。

三楽章、繊細で美しいヴァイオリン。戯れるような木管。新日本psoは安定していてとても上手いです。

四楽章、ここぞと言う所ではテンポを落として表現します。余裕たっぷりの広大なスケールのコーダでした。

素晴らしい演奏でした。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

★★★★★

一楽章、柔らかい弦。豊かな響きの金管。トゥッティはあまり強くありません。とても美しい響きです。第二主題も美しい。この頃の大フィルは色んなことをやらかすようなことは無く、とても安定していて良い演奏です。しっとりとした潤いのある弦と重厚に響くトゥッテイがなかなか良いです。霧の中から響く再現部の第一主題。日本人らしい端正な演奏で、決して力任せになりません。多少アンサンブルの乱れはありますが、大きな問題ではありません。

二楽章、この世のものとは思えないような、とても美しい第一主題。切々と演奏される第二主題。とても安定感のあるしっかりとした足取り。広大なトゥッティ。響きも柔らかく奥行き感があります。

三楽章、とても静かに始まるヴァイオリン。とてもゆったりとしたテンポです。軽やかな中間部。

四楽章、決して荒ぶらない金管。速いテンポの部分と遅いテンポの部分の対比も明確です。自然で伸びやかに響く金管。コーダも雄大な演奏でした。

新日本フィルの演奏と甲乙付け難い良い演奏でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

一楽章、ゆっくりとしたテンポで豊かな残響で幻想的な開始です。遅い中に微妙な動きもあります。ウィーンpoのような濃厚な色彩感はありませんが、充実した響きです。第二主題もゆっくりと揺られます。トランペットが力強く抜けて来ます。展開部に入ってさらに遅くなります。トゥッティはかなり力強い響きです。墨絵のような淡白な色彩ですが、表現の幅は広く緻密な演奏です。エコーのようにこだまする表現もとても良いです。強弱の振幅はとても大きい演奏です。

二楽章、とても美しい演奏が押し寄せて来ます。渋い響きですが、弱音部の静寂感もある統制の取れた演奏です。テンポが遅いので、少し腰が重い感じもありますが広大な演奏です。

三楽章、一体感のある見事な主題。テンポは遅いですが、生き生きと生命観を感じます。戯れるような中間部も良い表現です。音楽に揺られていることが出来ます。ミュンヘンpoはとても上手いです。

四楽章、冒頭部分は力強い。演奏に慣れて来たのか、あまり遅さを感じなくなって来ました。トゥッティの充実した響きはさすがに素晴らしいです。ゆっくりとスケールの大きなコーダも素晴らしかった。

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

一楽章、遠くから響くトランペットの第一主題。かなりシャープな響きに聞こえますが奥行きと深みがあります。音楽の振幅が大きく、弱音部は消え入るようです。伸びやかで柔らかい第二主題。潤いがあって滑らかで美しい演奏です。ホルンの素晴らしい響きです。トゥッティではウィーンpoらしい濃厚な色彩の響きです。弦の深みのある響きもさすがです。トランペットも輝かしい響きです。

二楽章、ふくよかで柔らかい第一主題。第二主題も柔らかく清々しい。がっちりとしていて力強い響きと、柔らかく優しい表現のーとの対比も見事です。トゥッティの強固な塊の中にキラキラと輝くような響きです。

三楽章、オケに一体感があって、リズムに乗って、暴走せずカチッと決まります。中間部は楽しく歌います。

四楽章、かなり激しく金管が演奏しますが、しっかりと整っています。濃厚な響きは素晴らしいです。分厚く広大なスケールで曲を閉じました。

ベームの手堅い指揮と、ウィーンpoの伸びやかで濃厚な響きが素晴らしい演奏でした。

ベルナルト・ハイティンク/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

一楽章、かなり遠くから響くトランペットの第一主題。ホルンも奥行き感があります。あまり揺られずカチッとした第二主題。輪郭がクッキリしていて色彩感も濃厚でエネルギー感も強いです。かなり凶暴な響きになる部分もありました。

二楽章、しみじみと感情を込めて歌う第一主題。第二主題もゆったりと慈しむような演奏です。しっかりと感情の入った良い演奏です。黄昏るようなコーダ。

三楽章、歯切れの良いリズムでスピード感があります。トリオは軽やかです。

四楽章、明快に響きますが、腰高にはならずブルックナーらしい響きです。充実したコーダ。美しい演奏でした。

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ユッカ=ペッカ・サラステ/WDR交響楽団

★★★★★

一楽章、ボヤーッとした中から響くトランペットの第一主題。ホルンや木管の頭の音を強めに演奏します。強くはっきりとした第二主題。第三主題のあたりはテンポが速めです。鮮明で色彩感も豊かです。軽々と良く鳴るオケです。ティンパニはロールに入ってからクレッシェンドがとても多いのが特徴です。

二楽章、最初は弱く入る第二主題。とても鮮明な演奏です。明快に鳴り響くオーケストラはとても魅力的です。

三楽章、あまりスピード感が無く堅実で力強い主部。とても豊かで確実に刻むトリオ。

四楽章、速めのテンポで軽快に進みます。滑らかで美しいホルン。圧倒的な金管の響き。ゆったりと堂々としたコーダ。見事な演奏でした。
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ワレリー・ゲルギエフ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、フワーッとしたトランペットの第一主題。ゆったりとしたテンポで大聖堂に広がる残響が美しいです。美しいですがあまり揺れない第二主題。とても柔らかく伸びやかです。

二楽章、豊かな響きで切々と歌う第二主題。残響が豊かなので、弱音部の静寂感はありませんが、豊かな響きには惹かれます。コーダは天に昇るようでした。

三楽章、これだけ長い残響でも整ったアンサンブルはさすがです。トリオもあまり揺れません。

四楽章、微妙にアゴーギクを効かせる部分もあります。ゆったりとしたテンポですが、少し重く感じる部分もあります。とてもゆっくりとしたコーダです。
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カール・シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

シューリヒト★★★★☆

一楽章、かなり静かで遠いトランペットの第一主題から次第に大きくなります。かなり広いダイナミックレンジ。普段のウィーンpoの凝縮した濃厚さよりも広がりがあります。あまり揺られず地に足の着いた第二主題。明るく色彩感豊で伸びやかで力強い演奏です。

二楽章、夢見るような第二主題。再び演奏される第二主題も美しい。天に昇るようなコーダ。

三楽章、ゆっくりとしたテンポです。

四楽章、広大に広がる響きは魅力的です。細部までとても丁寧に表現しています。コーダからテンポを落として輝かしい演奏でした。
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ハンス・クナッパーツブッシュ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、遠くからぼんやりと聞こえるトランペットの第一主題。ホルンも落ち着いた響きです。トッゥティも強固な響きです。かなり力の強い音です。少し揺られる第二主題。第三主題も力強い演奏です。コーダの前は速いテンポでした。コーダも畳みかけるような演奏です。

二楽章、録音は古いですが、柔らかく切々と歌う美しい演奏です。

三楽章、一楽章の強い響きからかなり柔らかい響きになって来たように感じます。中間部はとてもリズミカルで、美しいワルツです。

四楽章、かなりゆっくりとしたテンポです。ここまでのキリッとした演奏が、一転して、雪崩を打ったような演奏になりました。弱音部分は精緻で美しいです。ゆっくりとしたテンポですが、たっぷりと歌う感じでは無く、割と淡々と進みます。コーダの直前で加速しました。

オイゲン・ヨッフム/シュターツカペレ・ドレスデン

★★★★☆

一楽章、とても静かな中にも比較的明瞭に響くトランペットの第一主題。堂々としたトゥッティ。流れるような第二主題。強弱の振幅はとても大きいです。トゥッティが少し埃っぽい。ヨッフムの演奏はブルックナーでもテンポが動きます。コーダの前の加速は凄かった。

二楽章、とてもゆったりと伸びやかで安らかな第一主題。第二主題もとても優しい演奏です。音源がアナログレコードのようで、独特の埃っぽさが気になります。

三楽章、スピード感はあまり無く、落ち着いた演奏です。トリオの前でティンパニが大きくクレッシェンドしました。トリオもあまり揺れる感じでは無く、静です。

四楽章、激しく壮絶な響きのトゥッティ。テンポは速めで、前へ前へと進みます。力強く朗々と演奏されるコーダ。
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ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団

★★★☆

一楽章、モヤの中から響くようなトランペットの第一主題。重厚でまろやかな柔らかい響きで暖かいです。あまり音量を落とさずカチッとした第二主題。バランスは良いですが、トゥッティのエネルギー感はあまりありません。

第二楽章、美しく穏やかな第一主題。切々と訴えかけて来る第二主題。コーダは天に昇るような感覚にさせてくれました。

三楽章、普通のテンポで特に激しいことも無く中庸ですがとてもリズミカルです。

四楽章、とても線の太い演奏です。金管が突き抜けて来るように強いエネルギーを感じさせてくれないのが少し残念です。直球勝負のような演奏でした。
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ロヴロ・フォン・マタチッチ/ウィーン交響楽団

★★★

一楽章、残響を伴った弦の中からとても雰囲気のある第一主題。ホルンも柔らかく豊かな響きです。大きく揺られない第二主題。金管も強く演奏しますが、整然と整っています。全体は割と速めのテンポで進みますが、遅くなるところはぐっとテンポを落とします。

二楽章、ゆったりと優しい第一主題。薄いヴェールの向こうから演奏されるように柔らかい第二主題。

三楽章、丁寧に落ち着いたテンポで少し重いです。トリオはあまりワルツの雰囲気は無く、堅実です。主題は引きずるように重いです。

四楽章、トランペットが少し濁ったような響きであまり美しくありません。この楽章も速めのテンポでどんどん進みます。ブルックナーだからあまり色彩感とかはどうでも良いのですが、色彩感はとても薄く、ほとんど墨絵のようです。コーダのスケールもあまり大きく無かったように感じました。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★

一楽章、テヌートで演奏されるトランペットの第一主題。かなり鋭角で腰高な響きのトゥッティ。あまり揺れない第二主題。とても洗練された都会的な響きの演奏です。第三主題でも明るく明晰な響きです。朗々と響くトランペット。豊麗で見事な響きなのですが、とても手際よく仕事を片付けてく優秀な社員のようなイメージで、ブルックナーの野暮ったさとは一線を画す演奏です。

二楽章、あまり感情が伝わって来ない第一主題。静かに始まる第二主題。ゆったりと輝かしくスケールの大きなトゥッティ。コーダもあまり感情は伝わって来ません。

三楽章、やはりとても正確で手際よく仕事をこなしている印象です。トリオもあまり揺れず次々と消化されて行きます。

四楽章、とても輝かしい響きです。第二主題も整然としています。再現部もテキパキと仕事をこなして行きます。コーダも見事な響きでした。

素晴らしい響きでしたが、ベルトコンベアで流れていく作業をこなすような事務的な演奏でした。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/バイエルン放送交響楽団

★★★

一楽章、かなりはっきりとしたトランペットの第一主題。かなり明快になるトゥッティ。カラヤン/ベルリンpoほど豊麗で輝かしい響きではありませんが、腰高でショルティの響きです。第二主題もほとんど揺れませんが演奏の精度はかなり高いです。

二楽章、心のこもった十分な歌がある第一主題。はっきりと強い第二主題。とても滑らかに音楽が流れいて行きます。コーダはとても現実的でした。

三楽章、テンポの速い演奏です。トリオもカチッとしてして揺れや遊びは全くありません。主部のスピード感は凄いです。

四楽章、トランペットがビリビリと良く鳴ります。全体にかなりテンポが速く、グイグイと前へ進む演奏です。トランペットが終始強烈で、ブルックナーの重厚な響きでは無いように感じます。コーダの前でかなりテンポを落として、やはりトランペットが強いコーダでした。
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オットマール・スゥイトナー/NHK交響楽団

★★★

一楽章、遠くから響くトランペット。トゥッティのエネルギー感はあまりありません。この当時のN響の実力からすればこんなものか。第二主題はあっさりとしていて、あまり揺られるような表現ではありません。テンポも速めであまり味わいのある演奏ではありません。

二楽章、滲み出るような優しさが感じられません。第二主題も淡白です。あまり高い集中力も感じられず、なんとなく流れて行く感じです。

三楽章、ティンパニが激しくクレッシェンドします。一つ一つの音を丁寧に扱っている感じでは無く、消化試合のような散漫さを感じてしまいます。

四楽章、ヴァイオリンの旋律で若干テンポが動くところもあります。速めのテンポで前へ前へと進む推進力はあります。

当時のN響の実力からすれば頑張った演奏だとは思いますが、並み居る名演の中ではどうしても評価は低くなります。

ジョージセル/クリーブランド管弦楽団

★★

一楽章、割と明瞭なトランペットの第一主題。かなりデッドな録音です。デッドな分、明瞭と言えば明瞭です。揺られること無くカチッとした第二主題。さすがセル/クリブランドoと思わせる正確さですが、テンポも速めで感情の入り込む余地が無い感じがして味気ない演奏です。

二楽章、明瞭で元気のある演奏です。

三楽章、この楽章も明瞭で元気の良い演奏です。

四楽章、やはり速めのテンポで明瞭で快活な演奏です。ブルックナーの音楽って、もっと重心が低くてどっしりとしていると思うのですが・・・。テンポが落ちて行くところはとても良い演奏なのに。コーダはゆったりとしたテンポなのですが、シャープでいかにもアメリカ的な演奏です。
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ロベルト・パーテルノストロ/ロイトリンゲン・ヴュルッテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団

★★

一楽章、豊かな残響の中からトランペットの第一主題。ふくよかなホルン。空間に長く尾を引いて広がる残響が美しい。この豊かな残響がこの全集の大きな魅力です。優しく揺られる第二主題。豊かで暖かい響きです。豊かな響きの中で伸びやかに演奏しています。

二楽章、美しい響きの演奏ですが、積極的に表現するような感じはありません。伸びやかではありますが、高い集中力は感じません。

三楽章、かなり広い空間で演奏されている感じで、トゥッティでも音が飽和することはありません。中間部は美しい演奏です。オケはかなり余裕を残している感じで、フルパワーの力強さはありません。

四楽章、普通に演奏した感じで、あまり作品に対する共感も無く、豊かな残響だけを聞く演奏だと言う印象でした。

ロブロ・フォン・マタチッチ/ブタペスト交響楽団

一楽章、モヤの中から遠くに響くトランペット。エアチェックなのか、盛り上がりに伴ってノイズも増えます。トゥッティは若干リミッターがかかったように抑えられます。堅固な第二主題。デッドであまり豊かな響きには感じません。デッドなのにモヤッとした響きであまり細部が分かりません。

二楽章、慈しむようにゆっくりと優しい第一主題。

三楽章、確実な足取りです。堅実なテンポで細部まで描いているようなのですが、残念ながら細部までは聞き取れません。

四楽章、音楽が横に流れるよりも縦に動いている感じがします。モヤッとした録音のせいで、どうも演奏に入って行けません。

ベートーヴェン 交響曲第1番

ベートーヴェンの交響曲第1番は、1799年から1800年にかけて作曲され、1800年にウィーンで初演されました。この曲は、ベートーヴェンが交響曲というジャンルでの新たな挑戦を始めた記念すべき作品で、ハイドンやモーツァルトの影響を受けつつも、随所にベートーヴェンらしい独創性が感じられる作品です。

曲の特徴

  1. 古典派の伝統を継承しつつも革新的
    ベートーヴェンは、当時の交響曲の形式を守りつつも、斬新なアイディアを加えています。たとえば、序奏部分に不協和音を含ませるなど、従来の慣例を破る瞬間があり、聴衆に新鮮な驚きを与えました。
  2. 明るく軽やかな雰囲気
    第1番全体として、非常に明るく、軽やかでユーモラスな雰囲気が漂っています。この明るさや親しみやすさが、聴きやすい交響曲として人気を集めています。また、弦楽器の活躍が目立ち、オーケストラ全体で生き生きとした響きが感じられます。
  3. ベートーヴェンのユーモアと個性
    ベートーヴェンらしいユーモアが随所に見られるのも特徴です。特に第4楽章の序奏部分では、わざとじらすような和音の進行が使われ、聴衆を驚かせます。これは当時としては斬新で、ベートーヴェンの個性が表れた部分です。

各楽章の概要

  • 第1楽章:Adagio molto – Allegro con brio
    ゆったりとした序奏に続き、明るく元気な主題が登場する。ベートーヴェンらしいリズムとエネルギーが特徴的。
  • 第2楽章:Andante cantabile con moto
    ゆったりとしたテンポで、歌うような美しい旋律が展開される。穏やかで心地よい雰囲気が漂う。
  • 第3楽章:Menuetto: Allegro molto e vivace
    伝統的なメヌエット形式ですが、ベートーヴェンはそれを速いテンポで演奏させ、ほぼスケルツォのように躍動感のある楽章に仕上げている。軽快で遊び心のある楽章。
  • 第4楽章:Adagio – Allegro molto e vivace
    序奏で少しじらしたあと、元気な主題が軽快に展開される。明るく華やかな終結が印象的で、聴き終わると爽やかな気分になる。

総評

ベートーヴェンの交響曲第1番は、彼が古典派の形式を尊重しながらも、新しい時代を予感させる要素を盛り込んだ意欲作です。まだ「ベートーヴェンらしい」大胆さや劇的さは控えめですが、音楽のエネルギーと遊び心があり、次に続く交響曲の発展を感じさせる作品といえるでしょう。

ベートーヴェン 交響曲第1番名盤試聴記

朝比奈 隆/新日本フィルハーモニー管弦楽団:ベートーヴェン交響曲第1番

icon★★★★★
一楽章、かなり遅めのテンポをとっています。とても確実な足取りで進みます。意表を突くようなテンポの動きや表現はありません。あくまでも楽譜に忠実に演奏されています。

二楽章、ゆりかごに揺られるような心地よさ。

三楽章、ここでも遅めのテンポです。

四楽章、力まない自然体を貫き通しています。自然体と言うのは、簡単ですが実際に演奏として結実させるのは至難の業だと思います。
単に、音を出すという行為一つとっても、「自然に」というのは極めて難しいことなのです。
そして、それができた時には、すごく良い音が出るのですが、それが出来る人たちが集まって、音楽をする時にも力まずに音楽として作り上げる精神力はすごいものだと思います。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー管弦楽団

朝比奈/大阪フィル★★★★★
一楽章、打点を探るようなアインザッツの緊張感があります。ハイドンの影響を強く残しているとしわれている一番ですが、朝比奈はあまり意識していないようで、この曲でもスケールの大きな演奏です。
力強いトランペットでした。

二楽章、とても優しい音楽です。朝比奈の演奏では、このようなテンポの遅い楽章の穏やかさは際立っています。懐の深さと言うか、音楽にどっぷりと浸ることができる演奏は、本当にすばらしいです。

三楽章、この楽章も堂々とした歩みでした。

四楽章、かなり思い切った入り方をするティンパニが気持ち良い。音楽に推進力もあるし生命感を感じさせる演奏です。

それを実現した朝比奈と新日本poに惜しみない拍手を送りたいと思います。

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、かなりゆっくり目の導入です。これは7番の録音から20年も経過しているので、綺麗な音で録音されています。
ムラヴィンスキーの精緻な音楽作りがよく分かります。また、オケの指揮に対する反応の敏感さもすごいものがあります。

二楽章、きちっと決まるアンサンブル。厳格な音楽。すばらしいのですが、少し遊びがほしいような気もします。

三楽章、ダイナミックの変化が大きく激しいですが、乱れはありません。すばらしい統率力です。

四楽章、すごいエネルギー感です。レニングラードpoはこの曲でも本気度100%です。

すごい気合の入った演奏です。これだけ気合の入った一番は初めてです。

オイゲン・ヨッフム/ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、音の終わりに余韻を残すような音符の扱いで、丁寧な演奏です。
コントラバスもしっかり下を支えています。オケの反応も敏感でヨッフムの意図を反映しています。
木管楽器の表情が豊かです。強弱の表現などアーティキュレーションにたいする表現がとても積極的で、活発な動きのある音楽で、生き生きした演奏です。

二楽章、積極的な表現が印象的です。

三楽章、はつらつとしていて、とても気持ちの良い演奏です。希望のようなものが感じられる演奏です。

四楽章、ベートーヴェンの演奏としては反応が良すぎて、軽快すぎるかもしれませんが、一番なのでこれでも良いのかもしれません。それにしても、聴いていてこちらが元気になるような活気溢れる良い演奏です。

デヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、表情が豊かです。ベーレンライター版の演奏ですが、冒頭部分はそんなに速いテンポではありませんでした。
強弱の変化が極端と言うか、アクセントがとくに突出するように表現されるので、奇異な感じもしますが聴いていて面白いです。
オケもジンマンの指揮に機敏に反応するので気持ち良い。表現はダイナミックと言うか思いきりが良いと言うか、変に聴き手に媚びるようなことがない。
悪く言えばやりたい放題!ベートーヴェンを冒涜しているのかとさえ思えるくらい、これまでの演奏とは違う。
しかし、ここまで徹底して自分の音楽をすることには賛辞を贈りたいと思います。
私は、この演奏のような個性的な演奏をすること自体すごい勇気のいることだと思うので、それをしてしまう指揮者が好きです。評論家の評価なんて二の次というような演奏をする人が良いですね。

二楽章、編成も小さいのでしょうか、重厚な響きはありませんが、精緻で見通しの良い音楽です。
ここでもバロックティンパニが大活躍です。

三楽章、元気が良くて、少し重心が高いような身軽さが持ち味で、俊敏な表現がとても良いです。
ただ、この演奏を面白いと思えるのは、いくつかの過去の名演奏と言われるCDを聴いているからで、はじめてベートーヴェンを聴く人はこのCDは買わないようにしてください。この先、このような演奏が主流になるのかも知れませんが、まだどうなるかは分かりません。
また、この演奏が評価されても過去の名演が色あせるわけではありません。

四楽章、勢いがあって、楽しい演奏です。とにかく反応の良いオケです。ティンパニもすごく良い!

表情がすごく豊かで、初演当時革新的な意欲作だったことを思わせてくれる貴重な演奏だと思います。

ブルーノ・ワルター/コロンビア交響楽団

ワルター★★★★★
一楽章、豊かで優しい響きで堂々としています。

二楽章、優しさが溢れるような演奏です。ワルターの音楽に対する愛情が感じられる丁寧な演奏です。

三楽章、強弱の変化にオケが機敏に反応します。

四楽章、積極的な音楽作りが感じられます。オケの自発的な音楽表現があるように感じます。とても生き生きとした音楽が聴けます。

なかなかの名演だったと思います。

パーヴォ・ヤルヴィ/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団

ヤルヴィ★★★★★
一楽章、非常に注意深い序奏。縦にガツンと来ます。速いテンポの第一主題。強弱の変化がとても克明です。静寂感と緊張感もあります。とても良く歌い表現力豊かです。トランペットも鋭く突き抜けて来て、色彩感も豊かです。ダイナミックで生命感に溢れた演奏です。最後にティンパニの強烈な一撃がありました。

二楽章、この楽章もとても速いテンポです。踊るように軽快です。強弱の変化はとても厳格に付けられています。

三楽章、強弱の変化が凄くダイナミックです。強い部分はかなり思い切って演奏していて躍動感があります。

四楽章、弱音も消え入るような静かさです。快速の第一主題。ティンパニも強打しますがとても気持ちいい一撃です。凄い勢いと集中力です。小さい編成を生かした機敏な反応。最後もティンパニの強烈な演奏でした。

凄い躍動感とダイナミックな演奏で、聞いていてとても気持ちの良い演奏でした。
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クリスティアン・ティレマン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ティーレマン★★★★★
一楽章、重厚な序奏です。とてもゆったりとしたテンポの演奏です。遅めのテンポで演奏される第一主題。最近のベーレンライター版のテンポ指定とは明らかに違う。古いスタイルの演奏です。速いテンポでも遅いテンポでもどちらでも十分に鑑賞に堪える音楽であることはベートーベンの交響曲の完成度の高さを示すものでしょう。ウィーンpoの充実した美しい響き。自分たちのベートーベンを演奏すると言う自信に満ちた堂々とした演奏です。

二楽章、消え入るような弱音から始まりました。優しくテンポが動きます。ティーレマンが微妙な表情付けをしています。この楽章ではテンポが良く動きます。とても繊細で美しい音楽です。

三楽章、この楽章は速いテンポです。テンポもフルトヴェングラーのように動きます。

四楽章、ゆっくりと注意深い序奏。一転して快速な第一主題。ウィーンpoが嬉々として演奏しているように感じます。ある程度オケに任せているのでしょうか。決して荒くなることは無く、美しい演奏でした。

ウィーンpoの伝統に根ざした演奏をティーレマンがしました。ティーレマンは最近のベーレンライター版には興味が無いのでしょうか。でも、ウィーンpoの自信に満ちた非常に美しい演奏はなかなかのものでした。
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ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク

ガーディナー★★★★★
一楽章、豊かな響きの序奏。やはりピリオド演奏らしく、速いテンポの第一主題。力強いと言うほどではありませんが、推進力はあります。また、強弱の変化も俊敏ででとても反応の良いオケ。とても締まった演奏で、静寂感や緊張感もあります。

二楽章、この楽章も速いテンポで、ぐいぐいと進みます。速いテンポですが、微妙な表情はしっかりと演奏されています。非常に積極的に表現しています。

三楽章、この楽章でも強弱の変化が鋭角的に付けられています。音楽はどんどん前へ進もうとします。強奏部分では激しい音楽です。

四楽章、この楽章の第一主題もかなり速いですが力強く表情が付けられています。

速いテンポでしたが、鋭角的で俊敏な強弱の変化。豊かな表情と力強い演奏はとても良かったです。
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ラファエル・クーベリック/ロンドン交響楽団

クーベリック★★★★★
一楽章、力みが無く自然に消えて行く序奏。第一主題に向けても強引にテンポを上げることは無く、とても自然な音楽です。歌も誇張することなくとても自然です。鋭い強弱の変化はありませんが、この自然で脱力した音楽もなかなか良いものです。

二楽章、とにかく優しい表情の演奏です。作品を慈しむような丁寧で愛情のこもった音楽です。

三楽章、ゆったりとしたテンポで舞うような演奏ですがとても穏やかで伸びやかです。

四楽章、この楽章でも泰一主題に入るのに強引なテンポは取りませんでした。とても自然に動いています。

全く力みの無い自然な音楽はとても優しく、作品を慈しむような丁寧な演奏でした。鋭い強弱の変化はありませんでしたが、自然体で大らかな演奏はとても魅力的でした。
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サー・ゲオルク・ショルティ/シカゴ交響楽団

ショルティ★★★★★
一楽章、めりはりがあって元気な演奏です。とても表情のはっきりとした第一主題。かなり激しくダイナミックです。強弱の変化も克明です。若さや活気に溢れた演奏です。

二楽章、オケを明快に鳴らして、色彩感もとても豊かです。これまで聴いてきたどの演奏よりもダイナミックレンジが広いような感じがします。

三楽章、元気で明るく、良く歌います。音楽にも前へ進むエネルギーがあります。

四楽章、ゆったりとした序奏から、活発な第一主題への変化も素晴らしい表現でした。すごいエネルギー感です。猛烈な勢いで前へ進む音楽。

素晴らしいエネルギーで活気に溢れて、元気いっぱいの演奏は、この作品にピッタリの演奏でした。
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エマニュエル・クリヴィヌ/ラ・シャンブル・フィルハーモニク

クリヴィヌ★★★★★
一楽章、繊細と言うべきか、細い響きの序奏。鋭敏な響きでスピード感のある演奏です。非常に積極的で動きがあります

二楽章、非常に速いテンポです。緩徐楽章ですが、とても躍動感があって、颯爽と進んで行きます。古楽器の個性の強い色彩感がとても豊かです。

三楽章、ガリガリと食付くような弦。強弱の変化にもとても敏感です。

四楽章、快速な第一主題。とてもリズム感が良くて、ぐいぐい進む流れをどの楽器も邪魔しません。古楽器の特性もあるのか、凄いスピード感と必死に演奏している感じが伝わって来ます。

この作品にオケが全力でぶつかったような演奏でした。ガリガリと刻み込まれる弦の凄みはなかなかのものでした。また、それぞれの楽器の個性的な響きによる豊かな色彩感もとても良かったです。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

サバリッシュ★★★★★
一楽章、いろんな音が聞こえる序奏。とても豊かに歌います。ヴェールに覆われたような美しい弦。トランペットが良く聞こえます。重心の低いどっしりとした演奏です。

二楽章、穏やかで美しい演奏です。この作品の若々しさや溢れるエネルギーよりも作品としての完成度の高さを示しているような演奏です。作品を正面からとらえた誠実な演奏です。

三楽章、この楽章もとても落ち着いています。

四楽章、軽快な第一主題ですが、背景には深みのある響きがあります。決して大騒ぎすることは無く、とても大人の演奏と言う感じがします。

奇をてらうことなど、全く無く作品を正面から向き合った演奏でした。とても穏やかで大人の演奏は、この作品の違う面を見せてくれたと思います。
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セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

チェリビダッケ★★★★★
一楽章、チェリビダッケ独特の非常に遅いテンポで丁寧に演奏されています。第一主題もすごく遅いですが、シルキーな美しい響きです。テンポは遅いですが、巨大ではなく、精密機械のような繊細さです。普段聞く演奏だと、元気はつらつとした音楽だと思っていましたが、これだけ遅いテンポだととても穏やかで優雅な音楽に聞こえます。

二楽章、この楽章も遅いですが、極端に遅いと言う程ではありません。微妙な強弱の変化がフレーズの中にもあり、とても集中力と緊張感の高い演奏になっています。ガラス細工のような美しく繊細な演奏は素晴らしいです。

三楽章、この楽章も遅いテンポですが、許容範囲です。極端な強奏をすることは無く、透明感の高い美しい音色の範囲で演奏しています。

四楽章、非常に透明感の高い第一主題。力強さはありませんが、優雅な美しさは際立っています。

ガラス細工のような透明感の高い繊細な演奏は素晴らしかったです。これだけテンポが遅いと、穏やかで優雅な演奏になると言うのが新しい発見でした。
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ベートーヴェン 交響曲第1番2

ベートーヴェン 交響曲第1番名盤試聴記

オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ

icon★★★★☆
一楽章、冒頭からすごく美しい音色で、魅了されます。音色が瑞々しいし音楽が生き生きとしています。音楽が柔軟で伸びやかで、とても気持ちがいい。

二楽章、大げさな表現はありません。むしろ淡々と音楽が進んで行く感じですが、節度があって安心感があります。

三楽章、アーティキュレーションに対する反応もすごく良く、演奏がキビキビしていて良いです。

ただ、この全集全体について言えることなのですが、録音が低域をあまり厚く録っていないので、響きの厚みがなく、少し薄く響いてしますのが難点です。

響きは透明感があり、大変美しいし、低域のもやもやしたものも付きまとうことがないし、良いのですが、もう少し低域の厚みが・・・・・・。と言う点が唯一のマイナス点です。

四楽章、

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、他の曲で感じた、異常と思えるほどのテンポの速さはないようです。また、この曲では編成が小さいのか、ポッテリしたような肥満体のような響きもなく、聴きやすい演奏です。
テンポが速いとか言っても、元々楽譜の表記であれば、猛スピードになるのですから、何が正解かも分かりませんが、ただ、カラヤンと言う人がそのような学術的な時代考証などから演奏スタイルを変えたりする人だとは考えにくいので、3番以降の作品のテンポの速さは、カラヤンの考えだったのでしょう。
美しい演奏で、聴きやすかった。響きの透明感はないけど・・・・・・。

二楽章、何事も無く美しい音楽が過ぎて行きます。

三楽章、この全集を聴いてみてカラヤンがベートーベンの内面を表現しようとはしていないと感じました。
私は、作品によってはカラヤンの演奏が好きなこともあるので、決してアンチ・カラヤンではないのですが、やはりベートーベンをクラシック音楽の中心に据えるとしたら、クラシック音楽の歴史の中で最初に音楽に強いメッセージを込めたベートーベンの作品に内在するものを表現しない指揮者を「帝王」と呼ぶのはどうかと思いました。
クラシック音楽を一般の人たちにも広めたカラヤン功績は高く評価するべきだと思いますが、入門編の指揮者だったのか?
このあと、ライブCDも届く予定なので、それがどんな演奏なのか楽しみです。

四楽章、かなり積極的な音楽です。この一番は良い演奏でした。

クラウス・テンシュテット/メックレンブルク・シュターツカペレ

テンシュテット/ライブ★★★★
一楽章、東ドイツ時代の録音です。以外に伸びやかな音で瑞々しい演奏です。

二楽章、この頃のテンシュテットはまだ大人しかったのだろうか。いつからタガが外れたんだろう。もっともこの曲で大暴れすると言うのもどうかとは思うが・・・・・・。極めて常識的な演奏です。

三楽章、楽しい演奏でした。

四楽章、動きのある楽章では、テンシュテットらしい振幅の大きい音楽が聴けます。畳み掛けるような音楽の運びは天性のものなのでしょうか。

聞く側を引き込むものを持っています。表情が生き生きしていて、知らず知らずのうちにこちらも音楽にのってからだが動いていました。

ヨゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、丁寧な演奏のような印象を受けます。表情もあり元気で若々しい感じがあります。

二楽章、比較的速めのテンポで進みます。何と言っても、暖かみのある音色とエッジの立っていないまろやかな演奏が特徴で、とても聴きやすいです。

三楽章、優しい雰囲気がとても良いです。ベートーヴェンの若いエネルギーが発散されるような元気な演奏も良いですが、この演奏のような優しいのもとても良いです。

四楽章、暖かみがあって、爽やかな雰囲気も持ち合わせた演奏でした。

宇野功芳/新星日本交響楽団

宇野功芳★★★★
一楽章、注意深い出だし、柔らかい表情の演奏です。予想外のところでテンポが落ちたりします。オケの表現はとても上品で好感がもてるものです。全体に遅めのテンポですが、所々でさらにテンポを落とします。

二楽章、この楽章も遅めのテンポで丁寧に上品に描かれて行きます。

三楽章、良い感じのテンポで始まりましたが、すぐにテンポが落ちて遅くなってしまいました。ここでも丁寧で品の良い演奏を聴かせてくれますが、ベートーベンの若い勢いのようなものが感じられないのが少し残念です。

四楽章、控え目で上品な表現には好感が持てる演奏でした。

エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団

icon★★★★
一楽章、シルキーで柔らかい響きの序奏。第一主題からは良く歌いますが、推進力はありません。ゴリゴリと力強い強弱表現ではありませんが、柔らかく美しい表現です。

二楽章、録音された年代にもよるのだと思いますが、潤いの無いちょっと乾いた響きです。デリケートな表現もしているようですが、伝わっては来ません。

三楽章、反応の良いオケ。この楽章は潤いのある瑞々しい響きです。

四楽章、ベートーベンの最初の交響曲であっても完成度の高い作品であることを如実に示すような、緻密な演奏です。若さと活気に溢れる演奏でした。

活気に溢れた若々しい演奏でしたが、二楽章の平板な表現が少し残念でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1966ライヴ

カラヤン★★★★
一楽章、最初の伸ばす音の終わり方が独特です。落ち着いたテンポの第一主題。ちょっとザラついた弦の音です。流麗な演奏で、知らず知らずのうちに音楽が流れて行っています。

二楽章、今では、そんなに速いテンポだとは言えませんが、当時としてはかなり速いテンポだったのではないでしょうか。一楽章同様、ひっかかるところは一切なく、自然に音楽は流れて行きます。

三楽章、一転して、かなり強弱の幅を大きく取ってダイナミックな演奏です。

四楽章、かなり速い第一主題。猛烈な勢いで突き進みます。楽章が進むにつれて音楽に生気が宿って来て、この楽章はすごく生き生きとした畳み掛けるような演奏です。

二楽章までは眠っているような演奏でしたが、三楽章から目が覚めて、急に音楽に勢いを増しました。四楽章などは凄い疾走感ではつらつとした演奏でした。
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朝比奈 隆/NHK交響楽団

icon★★★☆
1967年の録音です。

一楽章、まだ若い朝比奈の情熱が溢れ出る演奏。後の全集での自然体の演奏よりも劇的な表現です。

二楽章、録音された年代を考えるとオケもかなり健闘しています。

三楽章、ティンパニが強めのバランスで演奏に力強さを与えています。

四楽章、この演奏を聴くと、この当時すでにN響は欧米のオケと遜色ない技術水準まで鍛え上げられていたんだと驚きます。

力強い演奏でした。

クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

アバド★★★
一楽章、かなり盛大なヒスノイズ。流れるような第一主題。優雅で伸びやかな演奏です。

二楽章、ノイズがかなり耳障りです。横に流れる音楽です。縦方向にがっちりと爪痕を残すような演奏ではなく、さらっと流れる演奏です。テンポも度々動いています。

三楽章、縦方向に強弱を強く意識した演奏ではなく、メロディの流れを重視した演奏のようです。

四楽章、軽快な第一主題。前へ進む力を感じさせる演奏です。

アバドらしい流れの良い演奏でしたが、私にはこの演奏がベートーベンらしい演奏とは思えませんでした。もっと縦にガツガツと叩くような演奏がベートーベンの音楽だと思うからです。あと、盛大なノイズもいただけません。
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グスタフ・クーン/ボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団

クーン★★★
一楽章、ブレンドされた響きで柔らかい序奏。強弱の変化はありますが、大きな変化ではありません。とても流れの良い演奏です。

二楽章、少し硬質で緻密なアンサンブルが緊張感を生み出しています。特に仕掛けなどは無く正面から作品と対峙しているようです。

三楽章、とても真面目な演奏です。

四楽章、すごい弱音で始まった第一主題。柔らかいトランペット。テンポは速めですが、疾走感はありません。上のパートは強弱の変化があるのですが、それに伴ったコントラバスの変化が感じられませんので、ダイナミックには聞こえません。

とても真面目に作品と対峙した演奏でしたが、その分面白みも無く、ダイナミックさもありませんでした。作品そのものを聴く分には良い演奏だと思いますが、あまり楽しめないと思いました。
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エーリッヒ・ベルゲル/ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団

ベルゲル★★★
一楽章、瑞々しい序奏です。あまりテンポを速めない第一主題。強奏部分がフワッとしていて柔らかいです。強弱の変化はあまり大きくなく、小さくまとまった印象ですが、端正な演奏です。

二楽章、冒頭でアンサンブルの乱れがありました。淡白な表現で淡々と進みます。

三楽章、ベルゲルの指揮に比べてオケの反応が鈍いようで、あまり強弱の変化は大きくありません。

四楽章、序奏から一転して活発な第一主題。とても品良く演奏されていて、若さや活発なエネルギーの発散はありません。

端正で、品の良い演奏でしたが、その分、活発なエネルギーの発散は無く、模範演奏のような大人しい演奏に終始してしまったのが残念でした。
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エーリッヒ・ベルゲル/ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団

ベルゲル★★★
一楽章、瑞々しい序奏です。あまりテンポを速めない第一主題。強奏部分がフワッとしていて柔らかいです。強弱の変化はあまり大きくなく、小さくまとまった印象ですが、端正な演奏です。

二楽章、冒頭でアンサンブルの乱れがありました。淡白な表現で淡々と進みます。

三楽章、ベルゲルの指揮に比べてオケの反応が鈍いようで、あまり強弱の変化は大きくありません。

四楽章、序奏から一転して活発な第一主題。とても品良く演奏されていて、若さや活発なエネルギーの発散はありません。

端正で、品の良い演奏でしたが、その分、活発なエネルギーの発散は無く、模範演奏のような大人しい演奏に終始してしまったのが残念でした。
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バリー・ワーズワース/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★
一楽章、穏やかな始まりです。表情のメリハリもあって、積極的な演奏です。はつらつとした若々しさや生命感に溢れる演奏で、なかなか良いです。

二楽章、録音のせいで音が少しザラザラするのが残念です。あと、音の密度が薄いのも、この全集の特徴です。

音の密度やスピード感、音が集まってくるかなどは、オケの技量や集中度を計りやすい要素なので、指揮者とオーケストラとの関係も想像できます。

三楽章、表現はしているのですが、やはり音の密度の薄さから、こちらに伝わる度合いが低いようで、残念です。

四楽章、音が集まってこないので、演奏が散漫に聞こえてしまいます。

ダニエル・バレンボイム/ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団 2012Proms

バレンボイム★★
一楽章、ゆったりと泳ぐような序奏。編成は小さいですが、テンポは速いと言うほどではありません。強弱の変化はあるのですが、ガツンと来るような強く一瞬のうちに変化するものでは無く、僅かになだらかに変化するような感じです。ゴツゴツした感じは無く流れて行くような音楽です。

二楽章、極端な弱音でもなく、あまり緊張感の無い冒頭でした。何となく緩い空気感です。

三楽章、何故かピーンと張った緊張感がありません。表現の幅もオケの能力からすれば程々の範囲で、オケの力をフルに発揮するような要求はされていないような演奏です。

四楽章、それなりに表現はしているのだけれど、この緩い空気はなぜでしょう。やはり程々の表現にとどまっているせいでしょうか。ベートーベン独特の鋭い強弱の変化がほとんど表現されていないので、違和感があります。

オケは過不足なく上手かったのですが、ベートーベン独特の鋭い強弱の変化が無く、緩い雰囲気の演奏には違和感を感じました。
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オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★
一楽章、ゆったりと優雅な序奏。第一主題は縦にしっかりと刻むような表現です。最近のベーレンライター版の演奏に耳が慣れて来ると、ブライトコプフ版の演奏は非常に遅く感じます。

二楽章、この楽章もゆったりとしたテンポです。音が外へ拡散していくようで、ぶっきらぼうな感じです。少し間延びした感じでオケもこのテンポに付いて行けてないような感じがします。

三楽章、大きな抑揚を付けた演奏です。テンポはやはりかなり遅いです。やはり緩さを感じてしまいました。

四楽章、この楽章も遅いテンポで、鋭く強弱が変化することもなく、緩やかに流れて行きました。

とてもゆったりとしたテンポで、あまり緊張感も無く、漫然と流れてしまったような感じがしました。
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ベートーヴェン 交響曲第2番

ベートーヴェンの交響曲第2番は、1801年から1802年にかけて作曲され、1803年に初演されました。交響曲第1番に続き、古典派の形式を保ちながらも、さらに独自性が増し、エネルギーに満ちた作品です。この交響曲は、ベートーヴェンが聴覚障害に苦しみ始める中で作曲されましたが、全体に明るさと力強さが溢れています。

曲の特徴

  1. 力強いエネルギーと楽観性
    第2番は、ベートーヴェンの交響曲の中でも特に明るく、楽観的な性格を持つ作品です。ベートーヴェンが聴覚の悪化に苦しみ、絶望的な心境にあったとは思えないほど、前向きなエネルギーが感じられます。特に、第1楽章と第4楽章ではそのパワフルな表現が顕著です。
  2. 長大な序奏と斬新な構成
    この作品は比較的長い序奏を持つことでも特徴的です。第1楽章の序奏部分は壮大で劇的な雰囲気があり、その後、快活な主部が現れる構成です。また、従来の交響曲の形式を基盤としながらも、構成や展開において、ベートーヴェン独自の大胆な工夫が見られます。
  3. ユーモアと遊び心
    ベートーヴェンのユーモアや遊び心が随所に現れています。例えば、第3楽章のスケルツォは、速くリズミカルな動きが特徴で、躍動感に満ちた楽しげな雰囲気を感じさせます。また、第4楽章でもいたずらっぽい要素が見られ、聴衆を驚かせるような瞬間があります。

各楽章の概要

  • 第1楽章:Adagio molto – Allegro con brio
    長く堂々とした序奏に続き、快活で力強い主題が登場します。生命力に満ちた音楽が展開され、ベートーヴェンの情熱が感じられます。
  • 第2楽章:Larghetto
    穏やかで優美な雰囲気が漂う楽章で、柔らかく美しい旋律が特徴的です。聴いていると、温かさと平穏を感じることができます。
  • 第3楽章:Scherzo: Allegro
    スケルツォのスタイルで、リズミカルで活気にあふれた音楽が繰り広げられます。テンポも速く、いたずらっぽいニュアンスがあり、楽器同士の掛け合いが楽しい楽章です。
  • 第4楽章:Allegro molto
    エネルギッシュで開放的なフィナーレ。明るく爽快な音楽が、駆け抜けるような勢いで展開されます。終始前向きなエネルギーに満ち、聴き終わると爽快感が残る締めくくりです。

総評

ベートーヴェンの交響曲第2番は、彼が古典的な交響曲の枠を超えて、自身の個性をさらに発揮し始めた作品です。聴覚障害の影響が出始めた時期にもかかわらず、全体に明るく力強いエネルギーが満ちており、彼の内なる情熱と希望が感じられます。

4o

ベートーヴェン 交響曲第2番名盤試聴記

カール・ベーム/バイエルン放送交響楽団

icon★★★★★
一楽章、勢いのある音です。一発の音に込められたエネルギーの大きさが伝わってきます。
冒頭から気迫みなぎる演奏です。表情も厳しいく徹底されているようです。
ベームのスタジオ録音は優しさが伝わってくる演奏が多くて、その分厳しさやエネルギー感に乏しいことが多いですが、さすがにライブになると凄いです。
最初から音楽の顔つきが違います。

二楽章、一つ一つの表現も行き届いていますし、オケのメンバーもベームの要求に応えようとして、高い緊張感が生まれています。
甘美な演奏ではありませんが、非常に高い緊張感が生み出す空気感や引き締まった表現がすばらしいです。

三楽章、バイエルン放送交響楽団の方が、ウィーン・フィルよりベームの要求に素直に対応してくれるのではないかと思えるほど、オケの真摯な演奏にも感心します。

四楽章、楽譜をめくる音までも克明に録音されています。ラジオ放送用の音源だとのことですが、録音状態もすごく良いです。

終結へ向かう熱気と盛り上がりはさすがです。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー管弦楽団

朝比奈/大阪フィル★★★★★
一楽章、ここでも、堂々したたたずまいが一貫している。作品のはつらつとした若々しさが伝わってくるような生き生きした演奏です。
左右方向に広々とした音場を形成するので、音楽のスケールの大きさをさらに強調するような録音です。
カラヤンの70年代のスタジオ録音が左右方向にはあまり広がりがなかったので、とても窮屈に感じました。その上、中低域に厚みがあるので、音がダンゴ状になってしまって、さらにテンポが速いときているので、辛いところがありました。

二楽章、深みがあって音楽に身をゆだねることが出来ます。

三楽章、歌も自然だし、乱暴なところがない。最後の全集も聞いてみたくなりました。

四楽章、それにしても、ライブ録音でこれだけ完成度の高い演奏を、それも9曲ムラなく実現したことに感服します。

ブルーノ・ワルター/コロンビア交響楽団

ワルター★★★★★
一楽章、ゆったりとした落ち着きと温かみのある演奏です。穏やかに音楽が流れて行きます。音楽に尖ったところが全くなく、マイルドで豊かな演奏です。

二楽章、ことさら強調することもなく、自然に音楽が流れて行きます。

三楽章、温かみのある音楽がとても心地良いです。

四楽章、自然な豊かさはすばらしかった。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ベートーヴェン:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

ハンス・クナッパーツブッシュ/ブレーメン・フィルハーモニー管弦楽団

クナッパーツブッシュ★★★★★
一楽章、勢いをつけてドカーンと来た冒頭でした。積極的に歌います。アクセントを強めにはっきりと付けて演奏しています。テンポも大胆に動きます。音楽にはつらつとした若々しいエネルギーが溢れています。

二楽章、咳払いの中から蝋燭の炎の立ち上るように始まりました。抑揚の幅を大きくとって豊かな歌を聞かせます。繊細な表現があったかと思うと、コントラバスが唸りを上げたり幅の広い表現です。

三楽章、この楽章でも強弱の振幅が幅広くメリハリの利いた演奏です。

四楽章、かなり遅いテンポです。遅かったのは冒頭部分だけで、すぐにアッチェレランドして一般的なテンポになりました。とても色彩感豊かな演奏です。アッチェレランドして怒涛の終演でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、遅いテンポの演奏です。探りながら進むような序奏。第一主題あたりから一般的なテンポになりました。ミュンヘンpoの機敏な反応が強靭な演奏の土台となっています。聞く前には、遅いテンポでベートーヴェンらしい力強さは表現されないのではないかと思っていましたが、十分に力強い。

二楽章、弦も木管も美しい第一主題。フレーズごとにアゴーギクを効かせるようなことはありませんが、曲を大きく捉えて大きな波が押し寄せるような抑揚があって、とてもすばらしいです。

三楽章、この楽章も遅めのテンポです。遅いテンポでもオケは全く乱れることはなく、高い集中力を聞かせます。作為的なことは一切なく真摯に作品と向き合っています。強弱の変化にはとても機敏に反応します。

四楽章、とても生き生きとした表現の演奏です。生命観が湧き上がるような、聴き手を力づけるようなすばらしい演奏でした。

ルネ・レイボヴィッツ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

レイボヴィッツ★★★★★
一楽章、静寂感の中に響く序奏。力強い第一主題。畳み掛けるように前へ進む音楽。展開部に入っても音楽は前に前に進みます。とても活発でダイナミックです。

二楽章、穏やかな第一主題。第二主題もゆったりと穏やかです。一体になったオケの見事なアンサンブルと響きが美しい。音が散漫にならずに、集まってきているようです。

三楽章、軽快に踊るようなスケルツォ。見事な一体感です。

四楽章、活発な動きの第一主題。音楽が前に進むエネルギーはとても強いです。強弱の変化にも敏感に反応して、消え入るような弱音からトゥッティの厚い響きまで幅広い表現です。

穏やかな表現の二楽章から、力強く推進力のある四楽章まで、幅広い表現の演奏でした。オケの一体感も見事でとてもまとまりのある良い演奏でした。
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パーヴォ・ヤルヴィ/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団

ヤルヴィ★★★★★
一楽章、凝縮された力強い響き。活発に動く第一主題。ベートーベンらしい鋭角的な強弱の変化もあります。ザクザクと抉るように音楽が流れて行きます。凄いエネルギーと集中力です。

二楽章、穏やかな中にも活発な動きがあります。弓をいっぱいに使って全力で演奏するような凄みがあります。

三楽章、速いテンポですが、躍動感があり、音楽が常に動いています。

四楽章、この楽章も速いテンポです。凄い勢いで突き進むような疾走感です。緻密に動くいろんな楽器が克明です。

緻密で、しかも躍動感があり、活発な音楽でした。全力で音楽をするような迫力に満ちた演奏は素晴らしかったです。
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クラウディオ・アバド/マーラー室内管弦楽団

アバド★★★★★
一楽章、良く歌います。厳しく精悍な演奏で、颯爽としています。色んな音が重なり合って、情報量が多いように感じます。コーダではかなりの強奏です。

二楽章、速めのテンポでくっきりとした輪郭の演奏です。押したかと思うとスッと引く引き際の良さがとても良い演奏です。優しさよりも力強さのある演奏です。

三楽章、速めのテンポです。極端に強弱の変化を付けることは無く、自然な流れですが、表情は豊かです。

四楽章、速いテンポです。生き生きとした表情です。室内オケですが、強弱の振幅はすごく大きいです。

颯爽とした精悍な演奏でした。表現も緻密でとても良く歌い、いろんな音も聞こえて来る演奏はなかなかでした。
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ロジャー・ノリントン/ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ

ノリントン★★★★★
一楽章、鋭い響きの冒頭。どの楽器も鋭い響きなので、響きが溶け合わず、その分くっきりと浮かび上がります。速いテンポで躍動感のある第一、第二主題。表情も締って生き生きとしています。強弱の変化にも敏感です。

二楽章、良く歌う第一主題。速めのテンポでザクザク進みます。弾むようなリズムで活力を感じます。

三楽章、快速です。強弱の変化も鋭いです。表情に締りがあって、緊張感のある演奏です。トリオに入っても良く歌います。

四楽章、スピード感のある第一主題。シャープな切れ味の演奏でした。

ピリオド楽器の鋭い響きとマッチするような、鋭角的な演奏で、引き締まった表情やスピード感はなかなか良かったです。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

サヴァリッシュ★★★★★
一楽章、力強い二打、続く木管は可憐な表情です。非常に落ち着いた序奏。トゥッティの巨大な響きと弱音の可憐さの対比がとても良いです。力強い第一主題。とても豊かに歌っていて、聞いていて心地良い演奏です。響きも深みがあり美しいです。活発に色んな楽器が動いていて、とても情報量が多いです。豪華絢爛なコーダです。

二楽章、美しい歌です。

三楽章、強弱の変化があって躍動感のある演奏です。スピード感もあります。トリオのオーボエも良く歌います。トゥッティも思い切りが良く気持ちいい演奏です。

四楽章、思い切りが良いので、響きが豊かでとても豪華に響きます。

豪華絢爛な演奏でした。この作品がこれほど豪華に聞こえたことはありません。歌も十分あり、作品への共感を感じさせる演奏でした。
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ヨス・ファン・インマゼール/アニマ・エテルナ

インマゼール★★★★★
一楽章、バロックティンパニの強い二打。鋭い響きのヴァイオリン。ダイナミックの幅が広い演奏です。静かに弱く演奏される第一主題が次第に力を増して行きます。かなり思い切って入る金管。コーダでは輝かしいトランペットの響きが印象的です。

二楽章、割と速めのテンポでサクサク進みます。涼しげな響きで爽やかな演奏です。大きく歌うことは無く、淡々と音楽は進みます。

三楽章、速めのテンポですが、強弱のコントラストは鮮明です。トリオのオーボエは歌いました。

四楽章、この楽章も速めのテンポです。鋭角的な表現ではありませんが、強弱の変化は大きいです。ティンパニはとても思い切りが良いです。力強く心地よい演奏です。

鋭い弦の響きがザクザクと刻まれて、思い切りの良いティンパニがドンと入る演奏はとても心地良いものでした。大きな歌はありませんでしたが、強弱の変化も大きく聞き応えがありました。
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ベートーヴェン 交響曲第2番2

ベートーヴェン 交響曲第2番名盤試聴記

クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ティーレマン★★★★☆
一楽章、堂々と力強く深みのあるトゥッティから愛らしい木管まで、表情が豊かです。潤いのある弦。とても表現が積極的です。最近のピリオド奏法の演奏は全く意に介さず、ベートーベンはこうあるべきと言うウィーンpoの自信に満ちた演奏です。オケも豪快に鳴らしています。

二楽章、静かに歌われる第一主題。美しい第二主題。僅かにテンポが動いて深みのある演奏になっています。

三楽章、弱音の繊細さとティンパニも入るトゥッティのドカーンと来る部分の対比が良いコントラストです。テンポは速めです。

四楽章、軽快な第一主題。重量級の演奏ですが、その分腰も重い感じがします。鋭角的な強弱の変化はありませんでした。

ウィーンpoが自信に満ちた演奏をしています。重量級の演奏でしたが、鋭角的な強弱の変化が無いのが少し残念でした。
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ハンス・シュミット・イッセルシュテット/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

イッセルシュテット★★★★☆
一楽章、とても良く歌う木管。柔らかいトゥッティ。シルキーな美しい響きです。堅実な足取りで、非常に豊かな表情の第一主題。非常に美しく丁寧な演奏なのですが、スタジオ録音なので、とても冷静でよそ行きのような、激しい表現が少ないような感じがします。

二楽章、夢見るような美しい第一主題。美しい音楽がサラサラと流れて行きます。伸びやかに歌う弦。くっきりと浮かび上がる美しい木管。どこを取ってもとにかく美しいです。

三楽章、一転してエネルギー感の強い演奏です。キリッと立ったオーボエが美しい。

四楽章、イッセルシュテットの強い主張は無く、ひたすら美しい音楽を追求しているようです。鋭角的な強弱の変化もありません。なだらかに流れる音楽です。コーダに入っても猛烈な演奏にはならず、落ち着いた表現です。

非常に美しい演奏でした。しかし、美しい演奏に終始して、激しい表現や、鋭角的な強弱の変化などはありませんでした。ただ、この作品の今まで聞いたことのない美しさを聞かせてくれたことは大いに評価したいと思います。
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朝比奈 隆/新日本フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、この全集の中では、かなり激しい演奏です。重量感もあり、他の曲で感じた雄大さとは違うところを表現しようとしているのでしょうか。

二楽章、朝比奈は2番と3番の間に存在する大きな進化を描き分けているようです。この2番までをハイドンやモーツアルトの影響下にある作品として、音楽にしています。

スウィトナーの演奏では、2番と3番の間の違いをほとんど感じさせなかったのですが、この演奏では見事に表出しています。

三楽章、編成は小さくしていないらしいのですが、小さく聞こえるところが不思議です。

四楽章、めずらしく最後は、かなり爆発しました。

オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ

icon★★★★
一楽章、精緻なアンサンブルと美しい弦楽器の響きをベースに自然な流れの音楽を作っています。
大げさな表現や、オケを強引に引きずり回すようなテンポの動きなども一切なく、ドイツの伝統に根ざした演奏をしている感じで、スウィトナーもオケも阿吽の呼吸で、当然の業務をこなしているような、安定感と自信に満ち溢れています。

二楽章、空間に広がっていく響きがとも美しいです。

三楽章、この全集はベートーヴェンの交響曲に正面から向き合った堂々とした演奏だし、ドイツの伝統にも根ざしたもので、はじめてベートーヴェンを聞く方にも推薦できます。
全く力んだところがないので、さらりと音楽が流れて行きます。

四楽章、設計がしっかりしていて、終結部へ向けての運びも見事でした。

オイゲン・ヨッフム/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、堂々としたたたずまいの風格ある演奏です。重厚な響きが印象的です。
オケの反応も良いです。ダイナミックで表情もメリハリがあって良いです。
若々しい演奏でした。

二楽章、この全集は曲によって演奏にばらつきがあるような感じがしていますが、この曲はなかなか良いと思います。

三楽章、

四楽章、全体に速めのテンポで快活な演奏になっています。

デヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

icon★★★★
一楽章、元気です。若々しい表情が良いです。アーティキレーションの指示に対して極端なくらいに敏感に反応している感じの演奏で、表情がすごく豊かです。
ミュートしたホルンが強く演奏されますが、こんなのは今まで聴いたことがありません。こんなのが楽譜に書かれていたのか?
すばらしく美しい響きで、道化師のようなちょっと滑稽な音楽が奏でられているようなミスマッチは感じるのですが、これが無条件に楽しいのです。ベートーヴェンの音楽って、これだけいじられても鑑賞に堪える音楽だというのもすごいことですね。

二楽章、この演奏を聴いていると、当時のベートーヴェンが現在で言えばロック・ミュージシャンのような存在だったんだなあと思わされます。
革新的な音楽を追及していて、当時の人間や政治のあり方にも疑問を持ち、それを音楽にぶつけるような時代と戦う青年のエネルギーを感じ取ることができるような、そんな演奏はこれまでなかったので、とても新鮮です。
これまでの演奏はベートーヴェンをあまりにも神格化し過ぎていたのではないかと思えてくるくらい、この演奏には説得力があります。もちろん聴く人によって賛否は分かれると思いますが、革新的な演奏であることは疑う余地は無いと思います。

三楽章、

四楽章、伸びやかな木管の響きもとても気持ち良いです。トーンハレってこんなに上手いとは知りませんでした。

ヨゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、軽い響きで、BGMのような感じがします。
表現もマイルドで耳あたりが良い演奏です。

二楽章、ナローレンジでバランスの良い録音で、美しい演奏を聴かせます。

三楽章、刺激のない落ち着いた響きで安心して聞けます。

四楽章、大袈裟な表現は一切なく、誰にでもお勧めできる良い演奏です。

しかも全集で1,050円は安過ぎる!

エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団

icon★★★★
一楽章、密度の薄い音ですが美しい響きです。かなり力強い第一主題。第二主題は僅かに穏やかになりますが、それでも元気のある演奏です。かなり思いっきりオケを鳴らした演奏で豪華絢爛な雰囲気です。

二楽章、サラッとした美しさがある演奏です。とても華やかでキラキラと輝くような響きがあります。

三楽章、強奏部分でちょっとあわてるような感じがあります。この華やいだ雰囲気はこの作品にとても良く合います。

四楽章、重くもたつくような第一主題。コーダに入ってトランペットなどがクレッシェンドする場面もありました。

全体を通して華やかで美しい演奏でしたが、音の密度が薄いのと、あわてたり、もたついたりしたところが残念でした。
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ベートーヴェン 交響曲第2番3

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第2番名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ボストン交響楽団

テンシュテット/ライブ★★★☆
一楽章、この全集の中では、ボストン交響楽団との共演のものは、比較的端正な出来だと思います。
他のオケとのような大暴れは少ないような気がします。
響きも欧州の一般的なオケのようなマイルドな響きで、血が飛び散るような強烈な音ではありません。いつものテンシュテットのように大きくテンポを動かすこともなく今のところは進んでいます。

二楽章、とても穏やかな音楽です。テンシュテットは音楽の振幅がもの凄く激しい指揮者ですが、激しい方向への振れは大きいですが、穏やかな方向へはあまり深く振れない傾向のように私は思っていますが、この演奏はとても穏やかな面を聴かせてくれています。
それでも、切々と語りかけてくる部分はさすがに迫るものがあります。

三楽章、

四楽章、動きのある曲の表情はとても豊かです。ボストンsoとの演奏は、テンシュテット持ち前の凶暴さは抑えられるかわりに、節度ある紳士的な演奏になるところは、意外な魅力です。

朝比奈 隆/北ドイツ放送交響楽団

朝比奈★★★☆
一楽章、古めかしい音ですが演奏には凄みが感じられます。低弦が唸りを上げています。若い頃の朝比奈の意気込みが感じられる演奏です。激しい演奏でした。

二楽章、強弱の変化など晩年の演奏にはない積極的な表現です。

三楽章、この楽章も積極的な音楽運びが印象的です。

四楽章、息つく暇も与えずに一気に演奏した感じでした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、ベートーベンでも、この頃の作品だったら、もっと響きが薄い方が合っているような気がするのですが、カラヤンの世界では、分厚い響きです。
この全集はどの曲も速いようです。まるで、現代の最高水準だと、これだけの演奏が出来るんだ!と見せびらかすような感覚さえ覚えてしまうのは、私の性格の悪さでしょうか。
幻想交響曲では、むしろ遅めのテンポでオケを完璧にドライブした名演だったと思うのですが、ベートーベンがなぜにこんなに速くなくてはいけないのか?
それでも、このテンポと音楽にオケがピッタリ付いてきているのは、さすがにカラヤンです。アーティキュレーションにもオケ全体が反応して、ひとつの音楽をしているのはすばらしいことです。

二楽章、現代の都会へ行けば行くほど水が濁るように、ベルリンpoの音は濁っていて底まで見通すことができません。
表面で鳴っている音は綺麗なのですが・・・・・。
この時代の作品であれば、編成を小さくしても、響きの透明度を求めるべきではないかと、個人的には思います。
この全集で感じるのは、編成を大きくして響きが分厚くなっているのに、演奏のスケールが小さいことがとても気になります。
カラヤンのブルックナーはまだ聞いたことがないのですが、こんなにスケールの小さい演奏でブルックナーをやられたらたまりませんね。

三楽章、表現は控えめで節度があります。

四楽章、一糸乱れぬ見事な演奏でした。

ロブロ・フォン・マタチッチ/NHK交響楽団

icon★★★
一楽章、あまり飾りっけがないけれども、骨組みのしっかりした演奏です。
N響の深い響きも魅力的です。1970年代の第九に比べると格段の進歩が伺えます。

二楽章、同じN響でもデュトワが指揮するときとは、響きの重さがかなり違います。もちろん取り上げる作品も違うので、響きが違うのは当然ですが、マタチッチの響きは重量感があります。
反面、色彩感や華やかさには乏しい感じはあります。この演奏では響きがマットな感じです。

三楽章、太い筆で描かれていくような豪快さで、優雅さとは隔絶しています。

四楽章、野太い音楽です。表面の美しさを求める演奏ではありません。

ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団

セル★★★
一楽章、勢いのある打撃でした。研ぎ澄まされた刃物のような鋭く輝く響き。大きな歌などは無く、淡々と流れて行きます。

二楽章、淡々としていますが、切々と迫って来ます。

三楽章、緻密な弦のアンサンブルですが、禁欲的と言うか、ほとんど歌わないので、精密機械のようです。

四楽章、音楽に躍動感が無く、表面だけが動いているような感じがします。コーダから加速して凄い勢いです。

コーダの凄い勢いを印象付けるために、その前を淡々と無表情に演奏したかのようでした。四楽章のコーダまではほとんど印象に残らない演奏でした。
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フランス・ブリュッヘン/オランダ放送室内管弦楽団

ブリュッヘン★★
一楽章、ゆったりと厚みのある響きです。そんなに速くはない第一、第二主題。現代楽器のオケの柔らかい響きで弦もビブラートを掛けている中でティンパニだけが、バロックティンパニで使うような木のマレットで硬い音で叩いているのに違和感があります。あまり歌うことも無く、強弱の変化にも敏感に反応しないですし、淡々とした平板な印象の演奏です。

二楽章、あまり音量を落とさない第一主題。演奏しやすい音量で演奏しているようで、緊張感はありませんが厚みのある暖かい響きは美しいです。表面が強い強弱の変化が無くなだらかに均されたような、サラサラと流れるような音楽です。

三楽章、この楽章もあまり速いテンポではありません。どうしても緩い感じが付きまといます。

四楽章、腰が重い感じで、反応が鈍い印象です。最後の音が異常に小さかった。オケが出るのを躊躇したような最後でした。

厚みのある美しい響きでしたが、強弱の反応が敏感では無く、腰の重い、鈍い演奏でした。ベートーベンの音楽を聴いている感じはありませんでした。
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ジェイムズ・ロックハート/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

icon
ミスもないし、ケチをつける必要もないとは思うのですが、私の聴き方には合わない演奏だったと思います。

集中力が音になって現れてこないと、こちらも聴く気持ちが薄らいできます。残念ですが、私はこの全集を再度聴くことはないだろうと思います。

グスタフ・クーン/ボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団

クーン
一楽章、確実な足取りの序奏。そのまま大きくテンポを速めずに進む第一主題。この指揮者の演奏はどれもそうなのですが、スピード感やダイナミックな強弱の変化が無く起伏に乏しい音楽で、聞きようによっては、緩い演奏に聞こえてしまいます。

二楽章、静かに淡々と進みます。ほとんど起伏の無いのっぺりとした演奏です。特別なことは何もしない演奏は、楽譜に忠実だともいえますし、誠実な演奏だとも言えますが、私にとっては退屈な演奏です。

三楽章、速めのテンポで始まり、トリオでテンポを落としました。ほとんど表情が無く、緩いです。

四楽章、常識的な範囲を決して逸脱しない演奏には安心感もありますが、ワクワクするような期待感も無い演奏には魅力を感じることはできませんでした。

個性を感じることはできませんでした。緩い演奏です。
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リッカルド・ムーティ/ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団

ムーティ
一楽章、ゆっくりとした二打。落ち着いて、しっかりとした足取りです。テヌートぎみに演奏した第二主題。時折すごく古めかしい音がします。強弱の変化にはあまり敏感な反応は無く、ベートーベン独特のバネのような強靭な音楽ではありません。

二楽章、ねばったり、深く歌ったりすることは無く、あっさりと進みます。

三楽章、速めのテンポなのですが、残響成分が少ないのか、響きに豊かさがありません。

四楽章、デッドな録音のためか、音が近く、溶け合いません。強弱の変化も控えめで、響きも薄くあまり魅力を感じる演奏ではありません。

響きが薄く、デッドで、音が近く溶け合わない響きは聞いていてちょっと辛かったです。演奏も、強弱の変化などに対しても敏感に反応することは無く、ベートーベンらしいバネのような音楽は聞けませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ベートーヴェン:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」

ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」は、彼の交響曲の中でも特に革新的で、クラシック音楽の歴史において重要な作品です。1803年に完成し、1805年にウィーンで初演されました。この曲は当初、ナポレオン・ボナパルトに捧げる予定でしたが、ナポレオンが皇帝となったことを知ったベートーヴェンはその野心に失望し、献呈を取り下げたという逸話が残っています。「英雄」というタイトルは、自由と理想に生きる個人の精神を讃える意味で付けられました。

曲の特徴

  1. 規模の大きな構成と革新性
    「英雄」は、それまでの交響曲の概念を大きく変え、長大で複雑な構成を取り入れています。特に第1楽章と第4楽章のボリュームと、緻密なモチーフ展開が革新的であり、クラシック音楽の進化に大きな影響を与えました。この交響曲を機に、ベートーヴェンは作曲家としてより自由で大規模な表現を追求するようになりました。
  2. 強烈な感情表現と英雄的なテーマ
    「英雄」というタイトルにふさわしく、曲全体に力強く、ドラマチックな表現が散りばめられています。特に第1楽章と第4楽章では、勇敢さや挑戦といった英雄的なテーマが前面に出ています。また、第2楽章の葬送行進曲は、悲しみと威厳に満ちており、理想や犠牲に生きる英雄の人生の陰影が描かれています。
  3. リズムとモチーフの巧みな展開
    ベートーヴェンは第3番で特にリズムの展開に重点を置き、モチーフを反復しながら曲を構成する手法を取り入れています。第1楽章の強いリズムパターンや、葬送行進曲での重厚なリズムなど、各楽章で印象的なリズムが聴き手を引き込み、統一感を生み出しています。

各楽章の概要

  • 第1楽章:Allegro con brio
    勇壮で力強い主題が特徴の楽章で、英雄的なモチーフが繰り返され、壮大な展開が繰り広げられます。この楽章だけで20分を超える長さがあり、当時としては非常に長大でした。
  • 第2楽章:Marcia funebre: Adagio assai
    「葬送行進曲」と題されたこの楽章は、深い悲しみと荘厳さを兼ね備えています。英雄の死を悼むような重厚で感動的な旋律が展開され、最も感情的で陰影に富んだ部分です。
  • 第3楽章:Scherzo: Allegro vivace
    リズミカルで活気に満ちたスケルツォで、軽快でありながらも力強いエネルギーが感じられます。トリオ部分ではホルンが目立ち、英雄的な雰囲気が一層強まります。
  • 第4楽章:Finale: Allegro molto
    変奏曲形式で構成され、全体を総括する壮大なフィナーレ。各モチーフが変奏されながら展開され、劇的かつ力強いエンディングに向かって突き進みます。この楽章にはユーモラスな要素もあり、ベートーヴェンの個性が感じられます。

総評

ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」は、交響曲の形式や内容を一新し、音楽史に大きな転機をもたらした作品です。その長大さやドラマティックな展開、深い感情表現が、多くの作曲家に影響を与え、ロマン派音楽の道を切り開くきっかけとなりました。ベートーヴェンの強い精神性と理想が込められた傑作として、今もなお多くの人々に愛されています。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

テンシュテット★★★★★
テンシュテットは唯一回ザルツブルク音楽祭で、マーラーの交響曲第10番からアダージョと、ベートーヴェンの「英雄」を指揮した。このあくの強い両者はリハーサルで完全に対立し、以降の共演も予定されていたレコード録音も全て中止となった。
という、テンシュテットとウィーン・フィルとの唯一の共演の記録です。どのような演奏になっているのでしょうか。

一楽章、ウィーン・フィルの伝統と正面衝突したんでしょう。冒頭から起伏の激しい演奏です。普通の演奏では聞こえないホルンのビーンと言う音が随所に聞こえるのが、特徴的です。
完全に対立した結果としても、見事なアンサンブルを聞かせるウィーンpo。たまに突出してくるトランペットはテンシュテットへの抵抗か?やけくそのように聞こえるのはかんぐりすぎでしょうか。

二楽章、リハーサルで対立したまま本番を迎えて、これだけの演奏ができるものなのか、よく歌われていて美しい。テンポを遅めて濃厚な表現。トランペットの白玉が突き抜けてきます。
強弱の振幅も広いので、特に金管の奏者にしてみれば、厄介な指揮者だったのでしょう。まさに咆哮!
この凶暴な指揮者が円熟していたとしたら、どんな音楽をうみだしたのだろう。せめてあと7~8年長く指揮活動を続けていてくれたらと悔やまれてなりません。

三楽章、テュッティの厚みはさすがにウィーンpoです。テンシュテットのこの全集はオーケストラがいろいろですが、やはりベートーベンを演奏するとウィーンpoは堂に入るという感じがします。
ボストンsoでは、どうもしっくりこなかった。

四楽章、雄大です。それは広々とした原野ではなく、厳冬の単独峰のような孤高の雄大さです。
ウィーンpoにしてみれば、一度言い出したら聞かないやんちゃ坊主のようなものと対決したのかもしれません。しかし、一度言い出したら聞かない子供はいても、そういう大人でいることは大変な精神力なはずです。

天下のウィーンpoを相手に対立したまま本番をこなし、二度と共演しなかったと言うのが凄いことです。
テンシュテット自身が自分をいかに承認していたかの現れでもあるわけで、幼児期から愛情を受けて育ったのでしょう。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
この演奏は、私の中学時代に自分のお小遣いで初めて買った、クラシックのLPレコードでした。
当時は、フルトヴェングラーが何者かも知らず。単にウィーンpoの演奏だったからです。擬似ステレオの意味も分からずに聴いていました。

一楽章、モノラルなので脳天をティンパニのマレットでスコーンと二発叩かれたような快感(^ ^;
音楽の高揚にともなってテンポが凄く加速するのはさすがに興奮させられます。
スタジオ録音なのに、このテンションの高さは何だ!
人生最初に買ったLPがこれだったことは、不幸なことにフルトヴェングラーのテンポの動きの特徴が分からないまま聴いていたということで、今回、多分20年ぶりぐらいに聴きなおしてはじめて凄さを理解できました。
モノラルであることを除けば、音質は最近の録音と比べても大きく落ちてはいません。多少のザラつきはありますが、そんなことよりも音楽の凄さに圧倒されます。
やはりテンポの動きは尋常ではありません。アッチェレランドが強烈に音楽のテンションを高めます。もの凄い音楽を聴いています。これはただ事ではない!

二楽章、悲しみの深淵に落ちていくような表現もすばらしい。第九はあまりの録音の悪さに途中で萎えてしまいましたが、この録音ならば全く問題なく聴けます。
音楽への没入度合いも並外れています。いろんな「英雄」を聞いてそれぞれの良さがあり、その中にもすばらしい名演にも巡り合いました。しかし、この演奏は別格です。次元が違います。

三楽章、重量級

四楽章、この楽章のテンポ設定も凄い。

また、すばらしい演奏を聴く事ができました。

ホルスト・シュタイン/ベルリン・ドイツ交響楽団

icon★★★★★
一楽章、音楽がぎゅーっと詰まっている感じがして、一音一音に重みがあります。アクセントもバーンと来る感じではなく、ズーンとくる感じでドイツ音楽らしいです。
音楽の重心が低くて風格を感じさせる演奏です。
オケの響きもマットで渋い響きで、この演奏に非常によく合っています。艶っぽいクラリネットのソロが魅力的でした。
オケの響きが渋い分、ffでは轟音のような凄みがあります。これはすごい「英雄」に出会ったという歓びの気持ちでいっぱいです。
彫りの深い男性的なしかも大人の「英雄」の最右翼の演奏だと思います。

二楽章、冒頭は引きずるような重さです。ホルスト・シュタインはこの楽章に自分自身を重ねているのだろうか。かみ締めるようにじっくりと、味わい深い音楽が時間が止まったかのようにゆっくりゆっくり流れて行きます。
自分自身の生涯を思い返しながらの演奏のように感じられてなりません。葬送行進曲でありながら、慈しむような優しさが溢れています。
これだけテンポが遅くても音楽が弛緩しません。むしろこのテンポが緊張感を高めているのかもしれません。
非常に味わい深い演奏でした。

三楽章、質実剛健、カラヤンのような豪華絢爛な演奏とは対照的です。カラヤンの演奏に比較すると、モノトーンのような色彩感覚の乏しい演奏かもしれませんが、その分脇目も振らずに音楽そのものに没入している演奏です。

四楽章、芯は太くごついですが、旋律の歌わせ方などは、しなやかな表現が随所に聞かれます。
テンポは微妙に揺れていますがとても自然です。ホルンの咆哮もありません。派手な演出を期待したらことごとく裏切られます。聴衆にこびるようなことは全くしません。

実に潔い演奏で、気持ちが良い。
静かに、拍手がはじまって、フェードアウトするときにブラボーが聞こえてきました。
まさにそんな演奏でした。演奏が終わってもすぐに拍手するよりも、余韻を楽しみたい演奏でした。
また、すばらしい「英雄」に出会いました。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー管弦楽団

朝比奈/大阪フィル★★★★★
一楽章、新日本poとのライブより数年後の録音です。
適度にホールトーンを含んだ美しい音で録られています。新日本poとの録音よりも残響成分が少ないようで、楽器それぞれの音がよく聞こえます。
新日本poとの演奏で感じた自然体の雄大さよりも艶やかで艶めかしい演奏のように感じます。歳は重ねていますが、生気に満ち溢れています。
それでいて、巨匠の風格も兼ね備えた堂々と正攻法の「英雄」の演奏になっています。
友人が朝比奈の大ファンなので、一連の朝比奈のCDは友人から借りて聞いているのですが、朝比奈がこんなにすばらしいベートーヴェンを演奏していたとは想像もしていませんでしたので、大変嬉しい驚きでした。
木管楽器の生き生きとして瑞々しい表情なども、とても魅力的です。
激しく凶暴な演奏ではないけれど、どっしり構えた王者の風格さえ感じられる、すばらしい演奏です。
十分な熱気もあり音楽が高揚します。金管の咆哮もなかなかのものです。音楽の彫りの深さは、旧盤よりも、こちらの方が上です。

二楽章、非常に重々しい葬送行進曲です。歌にも溢れています。重々しい出だしから頂点への高揚感もすばらしい。これだけ作品への思いを込めた演奏にめぐり合えるのもなかなかないのではないだろうか。
すばらしい。とにかくすばらしい。まだ演奏途中ですが、このCDは絶対お勧めです。
大阪poがこんなに上手いというのも初めて知りました。

三楽章、音楽が生き物のように有機的に絡み合って進行していく。これだけ深い「英雄」の演奏ははじめて経験するかもしれない。
私は、数多いベートーヴェンのCDの一部しかまだ聞いていませんが、今のところ。思いのたけをぶつけてくるテンシュテットと堂々として雄大な朝比奈が双璧のように思います。

四楽章、遅めのテンポで堂々と演奏されるフィナーレは圧巻。最高でした。

聴衆の感動の嵐も納得の大熱演!

カール・ベーム/バイエルン放送交響楽団

icon★★★★★
一楽章、オケが一体になって音楽を作っている感覚がとても良いです。オケのメンバーがベームを向いて演奏しています。音楽が生き生きしています。
ベームのスタジオ録音からは聴く事ができない空気感や一体感や緊張感がすばらしい。
すごく歌う木管。それを支える骨格がガチッと決まっていて安定感も抜群です。
ベームの演奏なので、ライブと言えども大きくテンポが動くことはありませんが、音楽の高揚に合わせてテンポが速くなったりもします。また、音自体にもスピート感もあり、この点でもスタジオ録音では聴けない演奏を聴くことが出来ます。
ウィーンpoとのライブ以上に熱い演奏だと思います。ベームがこれほどまで熱い演奏をしているとは知りませんでした。

二楽章、一つ一つの表現にもベームの徹底ぶりは凄いものがあります。音楽の振幅も大きいです。ただ、悲嘆にくれるような悲しみの深淵へ落ちていくような演奏ではないような気がします。

三楽章、ホルンがとても美しい。ベームと言うとウィーンpoの印象が強いですが、このバイエルン放送soとの演奏はすばらしいです。

四楽章、豊かな残響を伴って、美しい音楽が進んで行きます。それにしても、骨格のがっちりした演奏です。ベームの構成力の凄さも初めて聴いたかもしれません。

それほど、スタジオ録音しか聴く機会がなかったので、このCDはとても貴重です。
骨格はしっかりしていますが、その上に乗っかっているメロディなどはとてもしなやかで美しいです。
堂々としたすばらしい演奏でした。また、名演奏が一つ加わりました!

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1973年ザルツブルクライヴ

ベーム★★★★★
一楽章、一体感のある良い演奏です。冒頭の二つの音は、出るタイミングを探りながら出した音で、微妙なズレが面白かった。オケの音色の統一感もすばらしい。華やかな音ではありませんが、渋い音で統一されています。ウィーンpoは他のオケとは楽器そのものが違うので、独特の響きがとても良いです。ウィンナ・ホルンもベートーベンにはピッタリです。演奏は疾走感はあまり無く、しっかりと地に足が着いています。再現部の前あたりから、音楽が熱気を帯びてきて金管の激しい響きが聞かれます。フレーズの歌いまわしも控えめながらも、しっかり統一されていて、ベームの統率力が感じられます。やはり、ベームのスタジオ録音では聴く事ができない熱気があります。ベームの演奏ですから、爆演には絶対になりませんが、内に秘めたマグマのような熱さがジワーッと迫ってきます。

二楽章、一楽章とは対照的に遅いテンポでグッと沈み込むような深い音楽です。微妙に動くテンポもライブならではです。これだけ悲嘆にくれるような悲しみを表現した演奏もはじめてかもしれません。非常に心のこもった美しい木管。リタルダンドがとても効果的で金管などはとても濃厚です。クライマックスでのホルンのエネルギーも凄いです。やはり、このようなテンポの動きなどはライブならではの良さです。ベームの本当の音楽が聴けるのはすごく嬉しいです。

三楽章、集中力の高い弦のアンサンブル。爆発するトゥッティ。トリオのホルンも美しい。全体の響きにも透明感があります。

四楽章、強いエネルギーが発散される冒頭。テンポの動きも阿吽の呼吸があるように聞こえます。一つ一つの表現も徹底されているようで、演奏が厳しく美しい。激しい金管の咆哮!スタジオ録音では絶対に聞けない燃えるベームです。がっちりとした堅牢な骨格の上にメロディが乗る安定感も、この時代の指揮者の中ではベームが突出していたのではないかと思います。雄大なコーダ、すばらしい燃焼度でした。聴いているこちらも熱くなってくる「英雄」でした。

最近、あまり名前を聞かなくなってしまったベームですが、このような燃焼度の高いライブ録音を正規音源として発売して欲しいです。スタジオ録音ではベームの良さは分かりません。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー管弦楽団2000年

icon★★★★★
大阪ライブ

一楽章、いつものゆったりしたテンポです。華美にはなりませんが、艶やかな弦が美しい。
ゆったりしたテンポでも音楽は弛緩することなく前進しています。ただ、音楽の力強さは1996~7年の全集の盤の方が上回っているように思います。
響きはすっきりしていて清涼感があります。ねちっこい歌いまわしもありませんので、テンポは遅いですが、しつこさはなく聴きやすい演奏です。

二楽章、この楽章もテンポは遅めですが、ねばることもなく、比較的あっさりとしています。悲しみを演出するようなこともなく、作品自体に語らせるような自然な演奏です。
自然体で自然に盛り上がって、こちらも次第に熱くなる演奏かできるのは凄い。
朝比奈のキャラクターが濃くないので、作品に身を任せることができるので、このような演奏はとても好きです。
やるのなら、テンシュテットのようにオケを引きずり回すくらいに主張して欲しいし、自然体ならばそれで徹底して欲しいです。
中途半端な演奏が一番理解しにくいし、共感もできなくなるように思っています。

三楽章、オケも二楽章の後半あたりから目が覚めたように生き生きとしてきました。

四楽章、弦楽器や木管の旋律がとても表情豊かで生き生きとしています。雄大です。

この広々とした雄大さは朝比奈ならではのすばらしさだと思います。

東京ライブ

一楽章、ホールの響きが豊かです。音のスピード感は大阪の演奏よりもこちらの方があるような感じです。
音楽の振幅もこちらの方が大きいです。トランペットの咆哮などは大阪のライブでは聴かれなかった面です。
テンポも朝比奈の即興でしょうか、微妙に動くところも大阪のライブではあまり無かったと思います。
また、音楽が前へ前へと行こうとするところも目立ちます。前へ行こうとし過ぎて、ちょっと詰まった感じになる部分も若干ありますが、前進するエネルギーを評価しましょう。

二楽章、ここでもテンポの動きがあります。このテンポの動きも自然に出てきたもののようで、不自然さは全くありません。
情感に満ちた演奏です。トランペットの強奏はすごいです。大阪の演奏とこんなにも違うとは思いませんでした。大阪poのメンバーもおのぼりさんか?
ホルンもすばらしい音で鳴っています。すごい燃焼度です。
テンポは遅いけれど、次々に波が押し寄せるような息付く暇を与えないエネルギーです。

三楽章、大阪のライブでは何となく通り過ぎた箇所にも思い入れたっぷりで、自然に演奏に集中しています。
ホールの響きも豊かなので、ホルンのトリオもなかなか良いです。
やはり推進力が大阪ライブとは格段に違います。

四楽章、新日本poとのライブは全くの自然体で力みのない演奏でしたが、この演奏は激しささえも感じる凄さがあります。

こうやって、二つのライブを続けて聴いてみると、気合の入り方が全然違います。このライブは凄い!

デヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、すごく豊かで暖かい響きです。テンポは予想通り速いです。ベーレンライター版によるものなのか、ジンマンの解釈によるものか、聴きなれた音の扱いとはかなり違います。
アクセントやアクセントの後の音を小さく演奏するなど、とても変わっています。ティンパニはバロックティンパニを使っているのか、硬い撥で叩いているようで、この音が小気味よい感じで演奏を締めています。
反復ありで15:37はやはり速いですね。これまでの「英雄」に対するイメージを覆されるような演奏で、面白いです。
突然ティンパニに強打が連続したり・・・・・。何度も聴く気になるかは分かりませんが、初回はとても楽しいです。次に何が起こるかワクワクしてきます。
こんな演奏をしているジンマンは不謹慎か?

二楽章、オーボエの旋律に今まで聞いたことの無い音が付加されているようで、ちょっと滑稽な旋律になっています。
スタッカートやアクセントが多い演奏で、葬送行進曲のテーヌートのイメージには遠いです。
マーラーの「復活」でもこのオケは上手いと思いましたが、この演奏もすごいです。
昨今では、世界中のオケの水準が上がっているので、超一流と言われるオケとその次に来るようなオケとの差が確実に詰まっていると思います。
以前、アフリカかどこかの部族がすごく賑やかな葬式をしている場面が放送されたのを見たことがありますが、それとダブるような感じさえする演奏です。ティンパニの強打もそれをさらに印象付けるような感じさえします。

三楽章、この楽章ももちろん速いですが、スピード感も伴っていて結構良いです。
面白い!
世に流通している演奏を規範とすれば、この演奏はとんでもない異端児だろうと思いますが、これだけ好き放題の演奏をされると、楽しいです。私は、この演奏は存在するに値すると思います。何も主張をしない演奏よりも、時として滑稽な部分があっても、全く違ったヘートーヴェン像を作ろうとする姿には賛辞を贈りたいと思います。

四楽章、室内楽のように弦のパートを減らして演奏する部分があって、ここもこれまでに聴いたどの演奏にもない部分で、興味深いものでした。とても楽しめます。

これまでの重厚なベートーヴェンとは全く違います。最初に聴く方にはお勧めできませんが、名演奏と言われるCDをいくつか聴いた後に、是非聴いて見てください。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」2

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」名盤試聴記

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、ゆったりとして、とてもシルキーで滑らかな演奏です。清潔感があってすがすがしい響きです。機敏に反応するオケもチェリビダッケに相当鍛えられたのだろう。この演奏では音の扱いがとても丁寧で優しいので、ゴツゴツした「英雄」ではありません。格調高く上品な「英雄」です。微妙な表現も細部まで徹底されています。終盤にトランペットの第一主題の後ろのティンパニのトレモロをクレッシェンドしました。

二楽章、冒頭は悲しみにくれるような葬送行進曲です。続く部分は自然な歌で、作為的なところはありません。ライヴとは思えない美しい音と見事なバランス。ffではかなり強く演奏しているのですが、決して荒々しくは響きません。とてもマイルドで美しい響きです。

三楽章、極めて小さい音からクレッシェンドして入りました。室内楽のような精密でしかも生命観のある演奏。トゥッティの一体感もすばらしい。トリオのホルンは非常に明るい音色で大空に広がって行くようなスケールの大きさで魅了されます。鏡面仕上げのように磨き上げられた美しく滑らかな演奏はすばらしいの一言です。

四楽章、繊細な響きの弦の冒頭。ライヴとは思えない静寂感。精密部品で組みあがっているような精度の高い音楽です。途中からかなりテンポを落として一音一音丁寧に描くように演奏して行きます。ホルンが主題を演奏するクライマックスは凄く強弱に変化を付けて最後はマックスのパワーで壮大な演奏でした。最後は巨人の歩みのように堂々と終えました。

磨きぬかれた美しい音色と、幅広いダイナミックレンジ。すばらしいスケール感の英雄でした。

カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、スピード感のある2和音。独特の華やいだ雰囲気があります。ジュリーニは動物を操るように音楽を自在に操って行きます。反復があります。歌に合わせてテンポも動きます。強弱の変化も激しく、とても積極的に音楽を作っています。同じようにテンポの遅い演奏でもチェリビダッケの静に対して、ジュリーニは動です。ミラノ・スカラ座フィルとの演奏の時に感じた響きの薄さもさすがにウィーンpoでは感じません。逆に凄い音の厚みです。強いインパクトで深い彫琢を刻み込んで行きます。ジュリーニの気迫がウィーンpoにも乗り移ったような凄い迫力で迫ってきます。

二楽章、悲しみにくれるような冒頭です。弱音の悲しみを内に秘めて必死にこらえているような表現から、トゥッティではこらえきれずに溢れ出すような壮絶な感じです。繊細な弱音と奥ゆかしい歌を見事に表現するウィーンpo。ティンパニもトゥッティの壮絶感をすばらしい音で演出します。

三楽章、一転して生命感に溢れた生き生きした音楽です。トリオのホルンはウィンナ・ホルンらしい柔らかい響きです。ジューリーニの指揮に敏感に反応するオケ。ジュリーニが作品に生命を吹き込んだような生き生きした演奏でした。

四楽章、この楽章も動的で生き生きしています。美しい木管。分厚い弦の響き。とても色彩感の濃厚な演奏です。テンポは遅いですが、一音一音に凄い力があって、音楽を克明に刻み込んで行くような凄味があります。クライマックスのホルンも強い音での咆哮でした。最後もティンパニの強烈な三連符で盛り上げました。

重量級の演奏でしたが、生命の宿った生き生きとしたすばらしい名演でした。

フィリップ・ヘレヴェッヘ/オランダ放送室内管弦楽団

ヘレヴェッヘ★★★★★
一楽章、速めのテンポで音を短めに演奏する部分があります。小さい編成を生かした機敏で軽快感のある演奏です。提示部の反復がありました。響きに透明感があり、よく歌い、躍動感もあります。ジンマン程の超高速演奏ではありませんが、とても軽快で重苦しくない気持ちの良い演奏です。バロックティンパニの硬質な響きが気持ち良いです。

二楽章、この楽章も速いテンポですがとても良く歌い表情豊かです。テンポが速めなので、葬送行進曲の感じはあまりありませんが、鮮度が高く清々しい響きが印象的です。金管も軽く重量級の演奏とは一線を画しています。

三楽章、この楽章は速くも遅くもないテンポです。トリオのホルンも良く歌いました。指揮にとても良く反応するオケ。

四楽章、この楽章も速めのテンポです。良く歌う演奏は聞いていてとても心地良いものです。金管も全く吠えるようなことは無く、整然としています。最後ティンパニの三連符が強烈でした。

小さい編成を生かした軽快で美しく、しかも良く歌う演奏は、これまで聞いてきた英雄の演奏とはまた違った一面を聞かせてくれました。重量級の演奏も良いけど、こういう演奏もまた良いものです。
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ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1952.12.8

icon★★★★★
一楽章、同じ年のウィーンpoとのスタジオ録音に比べると少し音は悪いですがフルトヴェングラー独特の弱音から強音に向かっての加速はさすがです。刻み付けるような低速部分と凄い勢いを付けて加速する部分の対比が見事です。重いところは物凄く重い演奏で、かなりの重量感です。たっぷりと歌うクラリネット。最近のベーレンライター版の演奏とは全く違う重戦車のような重々しさです。再現部では、フワッと湧き上がるような柔らかい響きでした。ホルンも美しい演奏です。テンポはライヴのためかかなり即興的に突然動きます。

二楽章、すごく遅いテンポで始まりました。悲しみを込めるような悲痛な演奏です。深淵に落ちていくようなどこまでも深い音楽です。Bに入っても遅いテンポはそのままです。こけおどしのような表現は全く無く、堂々と作品に対峙しています。普通の指揮者がこのテンポで演奏したら、音楽が弛緩してしまいそうですが、この演奏は緊張感がピーンと張りつめています。ただでさえ遅いデンポなのに、遅いところではさらに遅くなります。間を空けたりテンポが動いたり自在な変化があります。テンポを落とすところではたっぷりとした豊かな表現です。

三楽章、どっしりと構えたテンポです。この楽章でもテンポの動きが絶妙です。トリオのホルンも表情豊かです。感情に任せたテンポの揺れは自然でとても心地良いものです。力みも無く自然体で伸びやかな音楽です。

四楽章、ゆったりとしたテンポで間があります。テンポを落とすところはすごく遅いです。歌も自然です。この当時のライヴ録音としてはかなり音質は良いと思います。十分に美しいと思える響きです。かなり吠えるトランペットが当日の熱気を物語ります。堂々としたコーダでした。

ウィーンpoとのスタジオ録音よりも感情の起伏の大きな演奏でした。ライヴの録音の制約を考慮してもこの音質であれば十分です。二楽章のテンポを落とした表現や四楽章の力強い金管など、テンポの動きや表現の幅広さなど、どこを取っても最高の演奏でした。
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ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1944年

icon★★★★★
一楽章、ゆったりとした主和音。第一主題もゆったりとしたテンポで確かめるようです。基本的にはゆったりとしたテンポでスケールの大きな演奏ですが、所々でアッチェレランドがあって緊迫します。木管が良く歌います。再現部のホルンの第一主題の後に猛烈なアッチェレランドがありました。序盤のゆったりしたテンポから畳み掛けるような激しい演奏。激しくテンポが動きます。この演奏の感情の起伏は物凄いものがあります。フルトヴェングラーの数ある「英雄」の中でもこの1944年盤がウラニアのエロイカと言われて、録音は古いけれども貴重な盤として存在してきたのは、この表現の幅広さがあったからなのですね。

二楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポで感情を吐露します。Bに入る前に大きくテンポを落としました。Cに入るとかなり劇的なテンポの動きで興奮を煽ります。凄い感情移入でオケもそれに応えて一体になった見事な演奏を展開します。

三楽章、表情豊かで美しいトリオのホルン。トリオの終わり付近での大きなリタルダンドも凄く効果的ですが、これも自然に出てきた表現なのでしょう。すばらしいです。

四楽章、怒涛のようになだれ込む序奏。弦のビッィカートが出るところから凄くテンポを落として演奏します。自在なテンポの動きに惹きつけられます。徐々にテンポを上げる迫力のコーダ。

感情の起伏の激しさをそのまま演奏にしたような凄い演奏でした。録音は古いけれど、一聴の価値はあります。
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グスターボ・ドゥダメル/ベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団

ドゥダメル★★★★★
一楽章、予想していたよりゆったりとしたテンポで伸び伸びと生き生きとした演奏です。若いエネルギーがこちらへ向かってきます。テンポの動きもあり緊張感を増したり、フッと緩んだりします。非常に積極的に歌い、躍動する音楽です。凄いエネルギー感です。若さが持つパワーは本当に凄いなぁと思います。こんなに生き生きとした音楽は久しぶりに聴くような気がします。これでもかと言うくらい積極的に歌い表現しています。巨大な編成を生かしたダイナミックな表現です。

二楽章、この楽章でもたっぷりと歌い、哀しみを表現しています。Bへ入っても豊かに歌う木管。潤いのある瑞々しい響きが美しい。Cに入って伸び伸びと鳴り響くホルン。奥深いところから湧き上がるような音楽。ドゥダメルも自然なテンポの動きで、豊かな音楽を奏でています。

三楽章、速めのテンポでとても躍動感のある演奏です。猛スピードで駆け抜けて行くようなスピード感です。トリオのホルンも元気いっぱいで躍動感が凄いです。

四楽章、この楽章も猛スピードの序奏でした。変奏に入っても速いテンポです。若いメンバーが自分達の音楽を精一杯表現している様子がとても心地良いです。若さが音の力にもなっているかのような力強さです。南米のベネズエラにこれほど才能溢れる若者達が大勢いることにも感激します。すばらしいオケです。クライマックスも壮大なスケールで見事でした。湧き上がるようなコーダも素晴らしかった。

若いオケの躍動感に溢れた生き生きとした音楽は素晴らしかったです。歌に溢れて、しかもスケールの大きなクライマックスも見事でした。
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ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2005

ハイティンク★★★★★
一楽章、速いテンポですっきりとした透明感のある響きの演奏です。いつもながらですが、引き締まった表現で細部まで行き届いています。提示部の反復がありました。水も漏らさないような緻密なアンサンブルで、絶え間なく湧き上がるような豊かな音楽です。テンポが大きく動くことはありませんが、美しい歌です。また、音楽に推進力もあります。旋律の歌に合わせて伴奏しているパートも同じように絶妙の抑揚を付けて演奏するあたりは、さすがハイティンクの隠れた技です。

二楽章、この楽章も速めのテンポです。深い悲しみがジワーッと沁み出してきます。会場の静寂感もすばらしいです。ピーンと張りつめた緊張感もなかなかです。泣き叫ぶようなティンパニ。がっちりとした構成感はありませんが、しなやかで美しい音楽です。

三楽章、遠くから自然に聞こえて来るような冒頭部分でした。控えめですが、バランスの良いトリオのホルン。

四楽章、この楽章も速いテンポですがあまり速さを感じさせない落ち着きがあり、ドタバタしません。とても上品で高貴な音楽です。金管が吠えることもありませんし、大きな表現もありませんが、心にジワーッと迫ってくる感動。何もしていないようで、細部まで細心の注意を払った演奏の美しさ。全く力みの無いトゥッティ。

全く誇張の無い、淡々とした演奏のように見えて、実は細部まで行き届いた引き締まった演奏。緻密なアンサンブルで、絶え間なく湧き上がるような豊かな音楽。とても上品ですばらしい演奏でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ベルリンフィル創立100周年記念公演(初日1982年4月)ライヴ

カラヤン★★★★★
一楽章、流れるような第一主題。レガート奏法がとても滑らかで美しいです。緩急の対比もしっかりと付いていて、急のスピード感も凄いです。良く歌い表情もすごく豊かです。表面がツルツルしているような感じの肌触りで、とても美しいです。このツルツル感はカラヤン独特のもので。他の指揮者の演奏では感じなかった特長です。再現部のホルンもマットでしたが、非常に美しく響きました。高性能のスポーツカーのような精密で繊細でしかも超高速でブッ飛ばすことが出来る高機能オケの見事な演奏です。

二楽章、この楽章もレガート奏法で独特の主要主題。非常に美しい弦。カラヤンが元気だった最後ごろのコンサートです。ガリガリと情熱的に刻まれる低弦。Bでもオーボエ、フルート、ファゴットと受け継がれるメロディが非常に美しい。Cに入ると繊細で木目細かな弦が肌を撫でるような心地良さ。ホルンやトランペット、ティンパニもかなり強奏しています。かなり熱気も感じる演奏です。悲しみの淵へ落ちて行くような表現ではありませんが、美しさと言う点では、最上の演奏だと思います。流れるような滑らかさは一貫しています。最後はテンポを落として終わりました。

三楽章、どの楽器も非常に美しいです。シルクのような滑らかさ。トリオのホルンは少し遠くから響くような感じでした。

四楽章、滑らかですが、熱気を感じる序奏。この楽章は速めのテンポでどんどん進みます。ライヴ録音でこれだけ美しい音が収録されていることにも驚きます。音楽が前へ前へと進む推進力があります。トゥッティの深い響きもすばらしい。最後までガッチリと固まった強固な造形美。本当に美しい演奏でした。

もしかしたら、作品の内面性などは表現していないかもしれませんが、これだけ美しい演奏には文句無く惹かれます。精密で繊細、しかも高性能なオケ。レガート奏法の滑らかで流れるような演奏も今となっては貴重な記録です。すばらしい演奏でした。
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クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ティーレマン★★★★★
一楽章、ウィーンpoらしい充実した響きの主和音。最近のピリオド演奏のような速いテンポではなく、伝統的なテンポです。ウィーンpoが自分達の伝統に沿った演奏を自信に満ち溢れた姿勢で演奏しています。提示部の反復がありました。テンポも要所要所で動きがあります。かなり積極的にテンポを動かして濃厚な表現をしています。クレッシェンドに従ってテンポを速めるあたりはフルトヴェングラーを意識しているのでしょうか。勿論ティーレマン独特のテンポの動きもありますが。コーダのトランペットは旋律通りに吹きました。ハッとさせるようなとても良いテンポの動きがあって、音楽がとても濃いです。

二楽章、最近では珍しい遅めのテンポでたっぷりとしています。テンポの動きはすごく自由な感じで、ガクッとテンポを落としたりして、重い葬送行進曲になっています。最近の楽譜至上主義の演奏とは対極をなすような演奏で、昔懐かしい演奏が蘇って来るようです。現代にこのような若手指揮者がいることに非常な喜びと期待を感じます。感じるままに大きく動くテンポ。この動きにウィーンpoも喜んで付いていっているようにも感じます。

三楽章、弾むような生気に溢れた演奏です。スピード感と躍動感があります。明るく明快なトリオのホルン。

四楽章、弱音で緊張感の高い第一変奏。伸び伸びと歌う木管。ダイナミックの幅も大きくかなりの熱演です。かなり間を取ったり、テンポの変化に伴った豊かな表現もあって、なかなか良い演奏です。咆哮するウィンナ・ホルン。堂々としたコーダ。

最近のピリオド奏法の演奏とは一線を画す重量急の演奏でした。ティーレマンは一時代前の演奏を引き継ぐ貴重な指揮者でしょう。テンポを動かしたり、間を取ったりした豊かな表現も良かったです。ウィーンpoもティーレマンに共感して演奏しているようでした。
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ロジャー・ノリントン/シュトゥットガルト放送交響楽団

ノリントン★★★★★
一楽章、主和音の後に豊かなホールの響きが残りました。第一主題が出たところではそんなに速くは感じませんでしたが、すぐに速いテンポになりました。ヴァイオリンがガット弦のような鋭い響きをしています。編成はかなり大きいです。提示部の反復がありました。鋭いトランペット。テンポや強弱の変化など独特の解釈です。凄く動きがあって躍動感に満ちた推進力のある演奏です。良く歌います。ゴツゴツとした男性的な「英雄」です。もの凄いスピード感と集中力です。勿論コーダのトランペットは楽譜通りです。

二楽章、速いテンポです。色彩感はとても鮮明です。トランペットが突き抜けてきます。テンポも動いていて、速いテンポ一辺倒のピリオド演奏とは違います。楽譜至上主義ではなく、ノリントンの主観的な解釈もかなり含まれた演奏です。出すところでは、その楽器をかなり強く演奏させるので、コントラストが明快で濃厚な色彩です。最後はゆったりとテンポを落として終りました。

三楽章、微妙に変化する強弱。生命感を感じる生き生きとした音楽。激しく咆哮するトリオのホルン。

四楽章、B♭B♭B♭とffで八分音符ず三つ並ぶところを最初の音を強くデクレッシェンドするように演奏するのが特徴的です。強弱の変化が明快で、生き生きとした表現はこの楽章でも健在です。とても積極的で激しいとも取れるような表現です。情熱的なホルンの咆哮。突き抜けて来るトランペットが気持ち良いです。

ピリオド奏法の演奏でしたが、ただそれだけにとどまらず、テンポの動きや豊かな表現。ダイナミックの変化も幅広く、躍動感や生命感のある演奏は素晴らしかったです。
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ルネ・レイボヴィツ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

レイボヴィッツ★★★★★
一楽章、速いテンポで清涼感のある響きの演奏です。凄いスピード感です。アンサンブルがきっちりとしていて、とても見通しの良い演奏です。美しい響きで繊細な感じがします。

二楽章、静かに演奏される主要主題。一楽章ほどの速さは無く、ブライトコプフ版の伝統的な演奏に比べて僅かに速い程度です。哀しみを強調するような演奏ではなく、楽譜に忠実に自然体で作品の美しさを表現しているようです。深く豊かな表現もありました。

三楽章、この楽章は速いです。躍動感があって生き生きとしています。オケの反応も良く瞬発力があって良く弾みます。トリオのホルンも豊かな表現で伸び伸びと歌います。

四楽章、三楽章の勢いそのままに四楽章に突入しました。清涼感のある響きがとても美しいです。静寂感もあり、オケの集中力の高さが感じられます。躍動感や生命感がある演奏でとても良いです。クライマックスで朗々と吹き鳴らされるホルン。トランペットは音が短めでした。コーダではさらに加速しているような勢いでした。

速いテンポの演奏でしたが、清涼感のある繊細で美しい演奏でした。生き生きとした躍動感も素晴らしい演奏でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1966年東京文化会館ライヴ

カラヤン★★★★★
笛吹のクラシック音楽ライヴ と オーディオの記事の笛吹さんから音源を送っていただきました。ありがとうございます。

一楽章、冒頭から分厚くグラマラスな響きです。テンポも速めですが、スピード感があって颯爽と進みます。蒸気機関車がもくもくと煙や水蒸気を吐きながらぐんぐんと進んで行くような力強さがあります。当時としては物凄く速いテンポの演奏だったのではないかと思います。息つく暇も与えないように畳み掛けるような演奏で、カラヤンについてよく言われる「表面を徹底的に磨き上げた」と言うような演奏とは違うように感じます。一発に賭ける集中力や意気込みを感じます。

二楽章、アゴーギクを効かせて動く主要主題。感情の振幅がとても大きいです。ガリガリと音楽を深く掘り進むような貪欲な演奏です。激しく強奏する金管。「表面を徹底的に磨き上げた」と言うのはスタジオ録音の演奏のことであってこのライヴでは、音楽の本質を追い求めるようなひたむきさを感じます。テンポを落として大きく歌う部分もあります。

三楽章、適度な温度感のある響きで始まります。トゥッティの分厚い響き。この当時から巨大な編成で演奏していたのだろうか。浅い響きのトリオのホルン。フルスイングするようなスピード感はカラヤンのライヴならではですが、響きの厚みが過ぎて飽和していているような感じがします。

四楽章、この楽章も速いテンポで勢いがあります。ライヴでベートーヴェンを演奏するカラヤンはスタジオ録音とは全く別人のようです。スタジオ録音ではこのようなスピード感は絶対に聞くことができません。前へ突き進むエネルギーは尋常ではありません。クライマックスのホルンも壮絶でした。

スタジオ録音とは全く別人のようなスピード感の演奏でした。この演奏を聴いてしまうと、スタジオ録音は置きに行っているような感じさえします。火のようなフルスイングの演奏を録音でも残していればカラヤンの評価も違ったものになっていたのではないかと思います。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」3

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」名盤試聴記

朝比奈 隆/新日本フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、この「英雄」でも自然体を貫いています。ゆったりとしたテンポでありながら、推進力を失うことはありません。
足取りが着実で踏みしめるような安定感と推進力が両立しています。
この全集はどの曲も出来が良く音楽としての完成度もきわめて高い。すばらしいライブです。

二楽章、まろやかで美しい響きで、誇張した表現はなく、楽譜をベートーヴェンを信じ切って演奏していることが伝わってきます。
端正で繊細な大人の「英雄」です。また、日本のオーケストラは弦が上手いことは以前から定評がありましたが、この時期になると管楽器も音が軽く力みなく出るようになっていて、伸びやかで美しい。
世界に誇れるベートーヴェンになっていると思います。

三楽章、クレッシェンドも強引なことは絶対しません。感情の盛り上がりにしたがって自然です。ホルンも伸びやかで美しい。

四楽章、淡々と音楽が進んでいるようにも聞こえますが、静かに語りかけるようにジワジワと音楽が伝わってくる、何か悟りの境地を開いた巨匠の演奏のように感じます。

この全集はどの曲にも共通した朝比奈のベートーヴェン観が見事に結実しています。すばらしかった!

オトマール・スウィトナー/シュターツカペレ・ベルリン

icon★★★★☆
一楽章、この「英雄」も美しい音で録音されているし、王道を行く安定感や安心感があります。
ホールに残る残響も美しい。
スウィトナーはこの全集一貫して、迷うことなく、ストレートど真ん中勝負できています。しつこく粘ったり、仕掛けが待ち受けていたということは全くありません。
低域が厚くないので、豪快な印象はありません。むしろ繊細で美しく品の良い女性的なベートーベンに仕上がっています。弦のボーイングも丁寧な感じで、一つ一つの旋律や主題を描いて行きます。それは、宝物を大切に扱うかのようで、とても穏やかな表情です。

二楽章、内面から湧き出るような表現で、大げさなハッタリなどは全くありません。クレッシェンドを伴って音楽が高揚してきても、節度ある高揚感で、音楽が暴走しません。
この演奏から熱狂を求めると期待を裏切られるでしょう。その分、端正でスタイリッシュな演奏です。その方向としての完成度は極めて高い全集だと思います。
初めて、ベートーベンの全集を買う方にもお勧めです。

三楽章、アンサンブルの精度もすごく高い。テンポの動きもありますし、それに伴った熱っぽさも次第に高まってきました。

四楽章、表現も奥ゆかしいですが、三楽章から四楽章へと音楽は確実に熱気を帯びてきています。
潮が満ちたり引いたりするかのように、音楽が高揚したかと思うと、また引いていったりしながら音楽が進んで行きます。

自然の摂理に逆らわないような音楽の自然さには感服します。

ジャン・フルネ/東京都交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、ゆったりとした冒頭の二つの音でした。そのあとも遅めのデンポです。
フルネらしく上品で格調高い「英雄」です。都響から気品に満ちた響きを引き出しています。強弱の振幅は十分ありますが、強引な演奏ではありません、中音域のふくよかな響きと透明感の高い響きが印象的です。
この響きの透明度の高さはフルネの演奏の特徴として特に優れている部分だと思います。
この透明度が演奏の純粋さや清潔感を生み出していると思います。最後の部分で一旦pに落としてクレッシェンドがありました。

二楽章、この楽章も遅いです。しかもすごく表現が濃い。深い悲しみへ落ちて行くようで、すばらしい表現です。この美しくしなやかで透明感に満ちた音色で、深い表現はすばらしい!
また、都響のレベルの高さも特筆すべき演奏だと思います。

三楽章、ゴリゴリするようなことは全くありません。力強さも持っていますが、透明感の高い美しい演奏が、心に残ります。

四楽章、表題的な面はあまり意識されずに、純粋に音楽としての美しさを追及した演奏のように思います。骨格ががっちりした演奏ではないけれど、とても繊細で美しい演奏でした。

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団記

icon★★★★☆
一楽章、テンポは中庸。ニューヨーク時代のバーンスタインはかなり荒削りだけど生命感のある演奏が多かったと記憶していますが、1978年の録音でも、多少面影を残しているように感じます。
また、ウィーンpoは誰が振っても、彼らの様式を大きく外れる演奏をすることはほとんどないとも思っています。
この時代のバーンスタインは、どこのオケを振っても音の密度が若干薄くなるように思うのですが、この演奏も、ウィーンpoにしては密度の薄いと思います。
その代わりに表現は生き生きとしていて、ウィーンpoにしては、普段の保守的な範囲を超えた演奏をしていると思います。
そういった面では、とても興味深い演奏だと思います。
バーンスタインが感情をストレートにぶつけた演奏でだと思います。

二楽章、悲しみの表現と言うよりも、音色に温度感があって、暖かい音楽です。音の密度が薄いので、胸が締め付けられるような悲しみの表現ではありません。
テンポが大胆に動いたりもします。劇的な表現です。音楽の振幅も激しい演奏です。

三楽章、とても生命感を感じる演奏です。バーンスタインらしい音楽です。

四楽章、心地よいテンポで音楽が進んで行きます。すごく自由な音楽です。自発的で伸び伸びしている音楽こそバーンスタインの特徴でしょう。
ベートーベンの音楽は内向きにぎゅっと凝縮された演奏が多い中にあって、これだけ開放的な雰囲気を持った「英雄」も魅力があります。

好き嫌いは分かれるかも知れませんが、明確な主張のある演奏には拍手を送りたいと思います。

マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団 Royal Albert Hall, 2009

ヤンソンス★★★★☆
一楽章、速い二つの主和音。その後の第一主題も速めのテンポです。音楽が締まっていて緊張感が伝わって来ます。豊かな響きですが、強弱の変化にも機敏に対応するオケの演奏が気持ち良いです。提示部の反復がありました。展開部に入ってもダイナミックな表現は変わりません。再現部の美しいホルン。艶やかなヴァイオリン。とても色彩感が豊かで、分厚い響きです。

二楽章、この楽章も少し速めのテンポですが、冒頭から暗い雰囲気です。深い悲しみにむせぶような演奏です。良く通るフルート。Cで朗々と歌うホルン。感情の起伏も激しい演奏です。

三楽章、湧き上がるような生き生きとした音楽。とても鮮明な色彩感。はつらつと歌うトリオのホルン。ダイナミックに躍動するこの楽章は出色です。

四楽章、美しく歌う弦。チャーミングな木管。壮大なトゥッティ。激しく動く部分とゆったりと穏やかな部分の対比が見事です。朗々と歌うホルン。とてもスケールが大きい音楽です。

色彩感豊かで湧き上がるような生命感。そして美しく歌う音楽。あとは推進力があれば完璧でした。
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フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ

ブリュッヘン★★★★☆
一楽章、鋭いトランペットが響く主和音。テンポはそんなに速くはありません。提示部の反復がありました。ヴァイオリンも鋭い響きです。とても清涼感のある爽やかな響きがします。盛り上がりにつれて僅かにテンポを速めています。モダン楽器には無い鋭い響きで厚みもありませんが、透明感の高い演奏です。歌う部分ではかなり濃厚な表現をします。当然トランペットは楽譜通りに演奏します。

二楽章、かなり速いテンポで、葬送行進曲のイメージではありません。Bに入るとさらに明るく爽快になります。トランペットの強奏はやはり鋭く、かなりダイナミックの幅も広いようです。

三楽章、この楽章も速いテンポですがあまり躍動感はありません。トリオのホルンはベルに手を入れたり出したりしていて演奏が難しそうでした。

四楽章、響きが薄い序奏。変奏に入ってからテンポは劇的に動いています。分厚い響きやまろやかな響きは無く、ストレートで透明感があって、爽やかな響きです。コーダでもトランペットが突き抜けてきました。

鋭く、透明感が高い、爽やかな演奏で、トランペットが鋭く突き抜けてきたりして、ダイナミックな面もありましたが、表現はあまり粘ることはなく、サラッとした表現でした。当時はこんな音で演奏されていたのかと思わされる演奏でした。
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エマニュエル・クリヴィヌ/ラ・シャンブル・フィルハーモニク

クリヴィヌ★★★★☆
一楽章、ガット弦独特の鋭い響き。速いテンポです。凄く勢いのある演奏です。提示部の反復がありました。強弱の変化にも敏感に反応するオケ。颯爽としていて、前へ進もうとする音楽に強いエネルギーを感じます。

二楽章、この楽章も速いテンポです。暖かい響きのファゴット。速いテンポなので、深い悲しみを表現するような演奏ではありません。一楽章でもそうでしたが、予想しないところでテンポが動きます。アンサンブルがたまに乱れます。

三楽章、舞うようなオーボエとフルート。新鮮な響きの弦。湧き上がるような生命感。後ろの方でビービー鳴るホルンが印象的です。トリオのホルンはストップ奏法で音色が変わるのが良く分かります。聞かせどころを良く分かっているような感じです。

四楽章、勢いのある序奏。ガット弦のヴァイオリンがストレートに迫って来ます。スピード感と湧き上がるエネルギーは凄いです。コーダに入ってもビリビリと鳴るホルン。とてもリズミカルなコーダでした。

凄い勢いのある演奏で、ホルンのストップ奏法を効果的に使って聞かせどころを心得た演奏でした。これまで聞いた事の無い響きを随所に聴かせてくれました。ただ、アンサンブルの乱れは残念でした。
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カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1973年ベルリン芸術週間ライヴ

ベーム★★★★☆
笛吹のクラシック音楽ライヴ と オーディオの記事の笛吹さんから音源を送っていただきました。ありがとうございます。

一楽章、探るような最初の和音。静かに提示される第一主題。オフぎみのマイクポジションで涼しげな響きです。第二主題もあまり表情はありませんが音楽には強い推進力があります。豊かな残響を伴っていて熱気はさほど伝わって来ません。それでもがっちりとした安定感抜群の演奏は健在です。オケが一体になって歌う部分の合奏力は見事です。コーダのスピード感もなかなかでした。

二楽章、ウィーンpoとのライヴより僅かに速いテンポです。オーボエの主要主題は流れるようでした。ウィーンpoとのライヴのような悲しみに暮れるような表現では無く、淡々としています。ライヴらしいテンポの動きもあり、金管も激しく強奏しますがブルー系の響きなので、あまり熱気は伝わって来ません。

三楽章、オフマイクぎみで残響成分も多く含むのでとても演奏が滑らかに聞こえます。少し距離を感じるトリオのホルン。客席で聞こえる響きはこちらの演奏の方が近いと思いますが、1ヶ月前のウィーンpoとのライヴの方がオケの生音が聞こえて迫力があります。

四楽章、ウィーンpoとのライヴよりも速めのテンポで進みます。弱音の集中力の高さが印象的です。オケが遠く木管なども小さく定位します。トゥッティでも比較的冷静な演奏です。コーダは颯爽と進みます。

とても涼しげな響きで、強い推進力で颯爽としたスピード感の演奏でした。オフマイクぎみで細部の表情はあまり分かりませんでしたが、ブレンドされた響きと見事な合奏力はさすがでした。

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」4

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」名盤試聴記

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、レニングラードpo独特の鋭く突き刺さるような音が、ムラヴィンスキーの厳しい表現と合わさって強い緊張感を生み出しています。
ライブでも一糸乱れぬ完璧なアンサンブル。暴走するようなスピード感ではないのですが、キリッと引き締まったベートーヴェンです。
主題が楽器によって表現が違うのが不思議です。
これだけ引き締まった表情の「英雄」ははじめてです。細部の表現まで徹底されています。見事。

二楽章、オーボエが普段聞いている感覚よりも、かなり太い音でした。チャイコフスキーやショスタコーヴッチではあまり感じなかった欧米のオーケストラとの音色の違いがものすごく分かります。
鋭利な刃物のような鋭さです。聞きなれている「エロイカ」とはかなり違う。聞きなれない音が随所で聞かれます。チャイコフスキーのように木管が一つのユニットになって演奏するような感じがあったり、トランペットが朗々とメロディーを吹くなど、このあたりもベートーヴェンよりもチャイコフスキーをイメージさせます。

三楽章、フレーズの終わりがもう少し丁寧ならと思うのは、この演奏には言ってはいけないかな?

四楽章、ティンパニが全体に大きめなのですが、この楽章の冒頭部分は・・・・・。ちょっとやりすぎです。やはり、チャイコフスキーの演奏様式で「英雄」を演奏したら、こうなるんですね。

正統派のベートーヴェンではないけれど、これはこれで強い主張があって聞き応えがありました。

ブルーノ・ワルター/シンフォニー・オブ・ジ・エア(旧NBC交響楽団)

icon★★★★
一楽章、引き締まった演奏です。ライブならではのテンポの動きもあります。
ワルターのイメージはとにかく中庸で、あまり印象に残らない演奏が多いのですが、このライブは最初から違う雰囲気を持っています。
音楽が、前へ前へと行こうとする推進力もあって力強い。
テンポの動きはありますが、そこはさすがにワルターです。不自然だったり強引な動きではなく自然に受け入れることができる動きで、音楽の流れを止めません。
表現の振幅も大きいですし、なかなか良い演奏です。

二楽章、トスカニーニの追悼コンサートのライブなのですが、トスカニーニの死去に伴って解散させられたNBC交響楽団が、シンフォニー・オブ・ジ・エアーとして演奏しています。
そう思って聴くからかも知れませんが、オケのトスカニーニへの思いが込められているような、悲嘆にくれる音楽です。テンポの動きにこちらも引き込まれます。

三楽章、音楽が生き生きしています。スタジオ録音のワルターとは別人のような生き生きとした演奏で、これがワルター本来の姿なのだと思わされます。録音は良くないので、全体像を計り知ることはできませんが、ここで聴ける音楽はすばらしいです。
描写音楽の場合は、スタジオ録音で、出来る限り美しい音で録音されている方が良いですが、メッセージ性の高い音楽の場合、スタジオ録音では、指揮者もよそ行きの演奏をしている場合も多く、その指揮者の本質を伝えていないことが多いと思います。
その意味では、このライブを聴くことによって、ワルターの別の一面を聴くことができたことは幸せです。

四楽章、ここでも、不自然にならない程度でテンポが動いています。

表情も豊かです。音楽が進むにつれてどんどん高揚しています。かなり充実感のある演奏でした。

オイゲン・ヨッフム/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、余韻も作っているような、余韻にまで意識をめぐらせた音の出し方です。
テンポは速めの部類かもしれませんが、テンポが動くこともあるし、表現は豊かだし聞き応え十分な演奏です。
スピード感はありますが、決して乱暴なことはありません。ベートーベンの男性的ながっちりした骨組みをもっていながら、表現の柔軟さも併せ持つ名演だと思います。
トゥッティでドンと一つの音符があるとズシン~と響く。テンポは速いけど、重戦車のような、でも木管なんかは繊細な・・・・・・。不思議が両立している。ホルンも激しい!

二楽章、悲しみに沈みこむような表現は少し弱いようで、少し浅い音楽のように感じます。金管の音が開いてしまうので、この楽章も元気いっぱいに聞こえてしまうところが、ちょっと残念です。

三楽章、この楽章も軽快なテンポです。かなり激しい演奏でした。

四楽章、アタッカで入りました。ブレンドされた厚みのある響きは魅力的です。弱音部と強奏部の振幅がかなり広い演奏です。

ヨッフムのイメージはもっと重厚な音楽をイメージしていましたが、結構爆演型だったかも。
面白くは聞けました。

ヨゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、明るい響きが印象的です。
控えめなトランペット。1960年の録音ですが、あまり古さは感じません。薄いヴェールに包まれているような上品な響きで、しなやかな女性的なベートーヴェンのように感じます。
強いアクのある演奏ではないので、はじめてベートーヴェンの全集を買う人にはお勧めです。何て言ったって1,000円ですからね!
この値段でこの演奏だったら文句ありません。CP抜群です。
ふくよかで柔らかい音色で音楽が流れて行くので、安心して聴くことができます。

二楽章、比較的速めのテンポです。強い感情の吐露はありませんが、奥ゆかしい音楽は心地よいものがあります。
柔らかい表現ながら、悲嘆に暮れるような雰囲気も表現されています。なかなかの好演ではないでしょうか。音楽が散漫になることもなく、オケの集中力も維持しています。

三楽章、豊かなホルンの響きも良いです。とても暖かみがあって優しい音楽です。

四楽章、音楽の流れが良くて引っ掛かるところがありません。刺激的な表現に驚愕したり感動したりするような演奏ではありませんが、暖かみが感動となってジワーっとこみ上げて来るような演奏です。

ふわっとした暖かみは独特で、良い雰囲気があり、この演奏を親しみやすいものにしていると思います。良い演奏でした。

ヘルマン・シェルヘン/ウィーン国立歌劇場管弦楽団

シェルヘン★★★★
一楽章、乾いた細身の音です。かなり速いテンポの演奏です。畳み掛けるようなテンポで緊張感があります。
このテンポでもアンサンブルが乱れることもなく難なく演奏するオケもすばらしい。
カチッとした音質のティンパニが演奏を引き締めています。終盤にかけてさらに畳み掛ける演奏でした。

二楽章、この楽章も比較的速めのテンポです。重く沈んでゆくような演奏ではありません。
音楽が前に前に行こうとします。力強い「葬送行進曲」です。

三楽章、ここでも速いテンポです。

四楽章、かなり速い。エネルギーに溢れた演奏です。

強い推進力があります。緩部ではほどほどのテンポになります。終始緊張感の高い演奏でした。

ロリン・マゼール/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

マゼール★★★★
一楽章、軽快な第一主題です。トゥッティで演奏される第一主題はスラーがかかったような演奏でした。前進する力の強い音楽で冒頭の軽快さとは打って変わって豪快な演奏になっています。弓をいっぱいに使ってザクザクと刻む弦ですが、ベルリンpoの美しさはあまり出て来ません。

二楽章、柔らかいヴァイオリンの主要主題は強烈なアゴーギクでした。Bに入る前に大見得を切るように大きくテンポを落とし大きく演奏しました。悲痛な感じはあまり無く、ぬるい感じがします。Bに入っても転調して雰囲気がガラッと変わることはありませんでした。Cに入ってホルンが出る前に一旦大きくテンポを落としました。その後もテンポは大きく動きます。大げさなトランペットのクレッシェンド。この楽章では作為的な部分がかなり見受けられます。

三楽章、とても濃厚な表情付けがされています。弱音と強奏の対比が大きくダイナミックです。トリオのホルンははじけるように活発で明るいです。躍動感があって生き生きとしています。

四楽章、たっぷりと間を取ったり、テンポが揺れ動いたりする積極的な表現です。オケがマゼールとの演奏を楽しんでいるようです。旺盛な表現意欲が感じられる演奏で、とても積極的です。壮大な盛り上がりで、ここでもテンポが動きました。楽器が絡みつくように動く演奏はとても細部まで表現されている表れだと思います。

二楽章では作為的な大げさな表現がありましたが、四楽章に向かって次第に有機的に音楽を奏でるようになります。すごく積極的に表現される音楽はなかなか説得力がありました。
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ホセ・セレブリエール/シドニー交響楽団

セレブリエール★★★★
一楽章、少し遠いオケ。歌もあり、テンポも動く演奏です。提示部の反復がありました。弦は瑞々しく美しいです。正統的な演奏で特別な演出や奇策はありません。音楽は力強く、推進力があります。金管に強く吹かせるダイナミックな演奏です。心のこもった歌はなかなか良いです。

二楽章、淡々としていて、悲しみが込み上げるような演奏ではありません。音を短く切ることがあり、ちょっと不自然です。ホルンが雄大に演奏します。

三楽章、力強く前進する演奏。トリオの明るく躍動感のあるホルン。

四楽章、速いテンポです。思い切り良く強奏します。ザクザクと歯切れのいい演奏です。金管もかなり強奏するので、聞き方によっては乱暴に感じるかもしれません。一般的なベートーベンの演奏に比べると相当金管は強いです。最後もトランペットがクレッシェンドしたり、かなり金管が目立つ演奏でした。

躍動感があり、推進力もあって力強い演奏でした。金管がかなり強く吹くので、従来の作品のイメージとは違いますが、この力強さはこれで魅力がありました。
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パーヴォ・ヤルヴィ/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団

ヤルヴィ★★★★
一楽章、かなり速いテンポです。快速でスピード感のある演奏を聞かせたかと思うと、テンポを落としてまた凄い勢いで加速したり、動きもありますが、基本は速いです。提示部の反復をしました。速いテンポのためか、テヌートぎみに演奏されることはあまりなく、マルカートぎみで弾むような表現です。トランペットはバルブの無いものを使っています。再現部のホルンの第一主題は奥まったところで響きます。ここぞというところのティンパニが強烈に決まります。また、楽譜に無いクレッシェンドもしています。

二楽章、主要主題の中でテンポが動いているようです。この楽章も速いテンポです。グッと感情がのめり込むようなことは無く、作品を淡々と描いているようです。硬い音のティンパニがちょっと浮いているようにも感じます。

三楽章、生き生きと躍動感のある音楽です。編成は小さいですが、出るところは思い切ってグッと迫って来ます、特にティンパニの押しが強いです。

四楽章、ゆっくりと入って加速しました。間があってテンポが変化します。弦楽四重奏になる部分も静寂の中に躍動のある美しい演奏でした。ベーレンライター版を使用しているようで、音が短く切られる部分が多いです。

テンポを動かしたり、ティンパニのクレッシェンドがあったり、いろいろ工夫した演奏でしたが、強い個性を感じさせる演奏ではありませんでした。速めのテンポで颯爽とした演奏は新時代のベートーベン像を象徴しているような演奏でした。
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オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★★
一楽章、明るい音の主和音。非常にゆっくりとした足取りの演奏ですが録音が歪みっぽいです。テンポの動きは僅かで、頑なにテンポを固定したまま進みます。歌ったり、表面を飾ったりすることは一切無い無骨な演奏です。ダイナミックの変化はかなり幅広いようです。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで、かなり抑えた弱音で始まる主要主題。主題がオーボエに移ってさらにテンポが遅くなったようです。トゥッティは凄いエネルギーのようなのですが、いかんせん録音が歪んでいて、あまり伝わって来ません。特に悲しみを表現しようとか、感情移入するとか言う事は無く、淡々とひたすら楽譜に書かれていることを音にしているような演奏です。よく聞くと細部まで緻密に演奏されています。

三楽章、この楽章も遅いテンポですが、一音一音丁寧に演奏されています。抑えた音量のトリオのホルン。かなりの重量感で、スケルツォと言う感じではありません。

四楽章、テンポが変化して音量も変化した序奏。変奏に入ってからはまた遅いテンポです。この楽章はテンポがよく動きます。消え入るような木管からトゥッティまでの幅がすごく広いです。とても禁欲的で色気など微塵も感じさせない本当に無骨な演奏ですが、巨大な演奏を聴いたような不思議な充実感があります。

楽譜に書かれているものを淡々と音に変えていくような演奏は、禁欲的で色気など微塵も感じさせない無骨な演奏でしたが、緻密でしかも巨大な演奏を聴いたような不思議な充実感がありました。録音が悪かったのは少し残念でした。
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イーゴリ・マルケヴィチ/シンフォニー・オブ・ジ・エア

マルケヴィチ★★★★
一楽章、主和音の後に長い残響が響きました。ギラギラとした響きです。凄いスピード感が圧巻です。強烈な推進力。ザクザクと刻む弦。豊かに歌う木管。そして炸裂する金管。どこを取っても凄みのある演奏でとにかく強烈です。息つく暇も与えずに一気に聞かせました。

二楽章、壮絶な悲しみの表現です。ここでも豊かに歌う木管が美しいです。とうとうと流れる大河のように途切れることなく豊かに音楽が流れて行きます。Cに入ると少しテンポを上げて劇的な表現です。とにかく壮絶です。この演奏を最新の録音で聞いたらどんな感じなんでしょう。荒々しさは幾分和らぐような感じもしますが・・・・・。朗々と歌う木管。弦もすごく感情がこもっています。凄いエネルギー感です。

三楽章、速いテンポでかなりの推進力。豊かな残響を伴って豊かなトリオのホルン。

四楽章、明快な序奏。この楽章も速めです。ガリガリと刻む弦の推進力がこの楽章でも凄いです。畳み掛けるような凄い勢いの音楽。最初から一時も緩むことなく、ハイテンションを続けています。最後が切れました。残念。

凄いエネルギー感と強烈な推進力。全く緩むことの無いハイテンション。荒々しい推進力は録音によるものなのか、実際の演奏がそうだったのかは分かりませんが、凄い演奏だったことだけは間違いありません。最後で音が切れてしまった分減点。
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アルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団

トスカニーニ★★★★
一楽章、古めかしい録音です。当時としてはかなり速いテンポだったのではないでしょうか。今聞いても速めで疾走感があります。がっちりとした構成感の演奏です。虚飾を排して、作品に没頭するような凄みのあるもので、録音の古さを感じさせない演奏ですがテンポは意外と動いています。ひたすら突き進むスピード感。コーダのトランペットの第一主題はライナーの表現に近い(ライナーほど極端ではありませんでしたが)スラーとスタッカートでした。

二楽章、一楽章から見ると遅いテンポです。音を短めに演奏する部分がありました。トランペットが音の頭を強く吹くので、ちょっと乱暴な演奏に聞こえます。

三楽章、一気に突っ走るような勢いのある演奏です。重みのあるトリオのホルンです。速いパッセージも難なくこなす木管。

四楽章、この楽章でも勢いのある序奏。凄い疾走感があるかと思うと突然重く引きずるような弦の演奏があったり、ダイナミックの変化も大きく、速いテンポで一気に聞かせているようでいて、意外と変化に富んでいます。クライマックスでもテンポの変化がありました。コーダも豪快でした。

速いテンポで一気に進むようで、実際にはテンポも動いていて意外な演奏でした。ただ、基本は畳み掛けるような豪快な演奏で、時に乱暴に聞こえる部分もあったのが、少し残念です。
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