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マーラー 交響曲第2番「復活」6

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

山田 和樹/日本フィルハーモニー交響楽団

山田 和樹★★★★☆
一楽章、薄いですがきめ細かい弦のトレモロ。第一主題ひコントラバスがあまり存在感を主張しません。金管は咆哮することなく、落ち着いた精緻な演奏をしています。第二主題も粘ったり感情移入するような濃厚な表現では無く、あっさりと演奏します。展開部冒頭は特に美しさは感じません。速めのテンポを基本にして感情の没入は無く、淡々と作品そのものを表現しています。第一主題が出た後のティンパニはかなり強打しました。コル・レーニョもリアルです。決して暴走しない安定感はあります。

二楽章、ここでも速めのテンポが基調ですが、テンポの動きや間は大きいです。オケも地に足が着いた安定感のある演奏で、とても良いです。一楽章とは対照的にテンポが動きます。

三楽章、重いティンパニ、ゆっくりと丁寧な主題。木管も滑らかです。とても穏やかに進みます。中間部の主題を演奏するトランペットも軽く暴走することなど全く無く、完全に制御されています。録音もこれ見よがしに強調する部分も無くとても自然です。

四楽章、まろやかな金管のコラール。あまり感情を前面に出さず、作品そのものを忠実に演奏しています。

五楽章、打楽器も加わって厚みのある響きですが、オケは全開にはならず、余裕を残して冷静です。あまり残響を伴わず距離感もあまりないバンダのホルン。第二主題も淡々と演奏されます。テヌートで演奏される美しい金管のコラール。展開部に入る前に大きくテンポを落としました。展開部も余裕を持ったバランスの良い演奏です。打楽器のクレッシェンドは長く大きく演奏されました。打楽器はダイナミックですが、それに比べると他の弦や管は大人しいです。打楽器が入ると一気に音量が増します。再現部冒頭も金管は突き抜けては来ず、打楽器が入ると一気に音量が増します。遠いバンダのトランペット。バンダのティンパニは響き渡ります。極端に音量を落としていない合唱はかなり力強いです。独唱の後の合唱は音量を上げてさらに力強くなります。クラテマックスでも美しい合唱。オケが全開になっても荒れた響きにはなりません。

かなり冷静に作品を最後まで運びました。オケや合唱は完璧に制御されていて、美しい響きを保ちました。感情の深い表現はありませんでしたが、作品そのものを忠実に表現した演奏だったと思います。オケの上手さもなかなかのものでしたが、クライマックスでの開放感はあまりありませんでした。

サー・ゲオルグ・ショルティ ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、ほかのショルティの演奏同様、強いアタックで弦のトレモロから開始、克明な表現で強弱の変化も激しい演奏です。
冒頭部分はシカゴsoとの演奏とほとんど差はありません。
シカゴsoとの録音ほどマルチモノが強調されていないので、ショルティの音楽を聴くのであれば、こちらの演奏の方が抵抗は少ないでしょう。
同じオケながら、キャプランの時の音とも、違う。ショルティの音です。
キャプランの時には、散漫に聞こえたロンドンsoが、別のオケのように音が集中して届いてきます。
ウィーンpoもメータとブーレーズでは違うオケのような音がしていました。
この演奏では、ショルティの持つ、独特の突進力のような男性的で力強い面が表現されています。
ショルティはリズムの刻みをはっきりアクセントぎみに演奏するので、細部の動きが聞き取りやすいのでしょう。
この刻みの処理が音楽全体を聞こうとするときに、すこし邪魔に感じる人もいるかもしれません。
キャプランの時はがっかりさせられましたが、ここで聞くロンドンsoはさすがに上手い。これがいつものロンドンsoだ!
1966年の時点で、ショルティはすでに、この曲の解釈を確立していたのでしょう。1981年のシカゴsoと同じ演奏です。
オケが変わっただけです。ただ、大きい方のドラがほとんど聞こえない。

二楽章、ここでも粒立ちのはっきりしたショルティ独特の表現です。指揮も弦もよく歌っているのですが、メロディーよりも刻みの方が強調されているような感じがして、なんだか落ち着かない。どっぷりと音楽に酔いしれることはできない演奏です。
やはり、シカゴsoの時より程度は少しマシですが、オンマイクが気になります。
バイオリンがキーキーうるさい。もう少しホールの響きが含まれていれば良いのに。

三楽章、ここもシカゴsoとの演奏と同じで、オケが変わっただけです。
がっちりとした構成力はさすが。安定感抜群で、分厚い響きを作り出すことにかけては天才的だと思います。
シカゴsoの録音よりも木管が近くて金管が遠い感じかな?
強弱の変化もはっきり付けています。Tpのヴィブラートがちょっと不自然な感じがします。
それにしても、突然のffの思い切りの良さには感服します。
メータのような一筆書きのような豪快さとは違って、細部の表現にもこだわっているのですが、ffを何の躊躇もなく思いっきり突進してくるのは、ショルティならではの醍醐味です。

四楽章、ちょっと速めのテンポ設定です。木管も美しいし、テンポの動きも良い感じですが、天国的とは程遠く現実的で天国に召されることはない。

五楽章、この録音から15年も経ったシカゴsoとの演奏がほとんど同じと言うことは、ショルティ自身が、この「復活」解釈に、この時点でものすごく自信を持っていたと言うことなんだろう。そして、ショルティの音もすでに確立していたということか。
ショルティはウィーンpoを指揮しても、シカコsoのようなシャープな響きを作ってしまいますからね。
その昔、あるウィーンpoのメンバーが「ショルティの首を絞めてやりたい」と言ったという逸話が残っているらしいのですが、ショルティは昔から伝統的に守ってきたウィーンpoの響きをある意味否定してしまったわけですから、オケのメンバーとっては屈辱的なこともあったのかもしれませんね。
それでも自分の音楽や自分の響きを作り出そうとする、妥協のない姿勢は一人の人間としてもすばらしいことだと思います。
今は、オケにゴマを摺りながら、オケの機嫌を損ねないようにしながら、妥協の連続のようで、個性の強烈な表出がほとんどない。つまらない時代になってしまったものだ。
この演奏は好き嫌いは別にしても、ショルティの強烈な主張がある。
これは、巨匠としての重要な要件だと思います。
あれ、この演奏もティンパニが一拍遅れて入っているところが・・・・・。
表現力も十分、ブラスセクションも実に気持ちよく鳴り響く。吹きまくりと言った方が良いか。
弱音部やバンダもシカゴsoの演奏とほとんど同じです。
合唱の入りも・・・・・。しかし、ホールの残響成分をほとんど取り込んでいない録音は、デッカとショルティの組み合わせでは定番になっているようです。
弦の旋律もよく歌っているのですが、残響をともなったふくよかな響きではないので、音楽的に聞こえないのが残念なところです。
ソプラノ独唱はシカゴsoとの録音より、こちらの方が良く歌っています。
終結部へ向けて若干テンポが速くなっているか。
終結部の圧倒的なパワーはシカゴsoには若干劣るかもしれませんが、そんなに遜色はありません。

録音もリマスターされていて、古さを感じさせませんし、なかなか良い演奏でした。
シカゴso、ロンドンsoどちらか一つはもっていても良いと思います。

クリストフ・エッシェンバッハ/フィラデルフィア管弦楽団

icon★★★★
一楽章、エッシェンバッハの強烈なキャラクターが取りざたされていますが、そんなに特異な演奏とは感じません。むしろ淡々と音楽は流れて行きます。
隅々まで見通せるような精緻な音楽作りがなされているような感じがあります。オケをよくコントロールしているようで、ライブでありながら、極めて統制の取れた演奏です。

二楽章、ふくよかな響き。テンポが動くことは一楽章でもあったのですが、ライブの即興感はなく、事前に設計された音楽を設計通りに再現しているようなところを感じます。

三楽章、どの楽器も美しい音を奏でているのですが、なぜか音楽に引き込まれない。
構築物としての完成度は極めて高いと思うのですが、音楽の高揚感は全くと言っていいほどありません。
これがエッシェンバッハのスタイルなのか?
エッシェンバッハが薫陶を受けたカラヤンがもしも「復活」を指揮していたら、こんな演奏だったかも知れない・・・・・・。

四楽章、金管のコラールも非常に美しかった。

五楽章、冒頭の金管の咆哮もさすがフィラデルフィアo、トロンボーンのコラールも美しい。ガリガリすることなくクールでカッコ良い「復活」です。
この作品をここまでクールに演奏できるものだろうか?
あの、ショルティでさえベルリンpoとのライブでは内面から燃え上がるような演奏をしていたというのに・・・・・・。
精緻で磨き抜かれた音楽で、内面的な部分はほとんど感じられませんが、これも一つの芸術のあり方でしょう。中途半端な演奏を聴かされるより、スパッと割り切れていて気持ちが良いです。
消え入るような合唱。流麗な音楽。これだけ高揚感なくクールに、しかも音響的には見事に完璧な構造物を見せ付けられると、エッシェンバッハって異次元の生き物なのかと思ってしまいます。
カラヤンよりも徹底しているかもしれません。バーンスタインやテンシュテットとは対極にある演奏です。ただ、それが徹底されていることをすばらしいと判断するか、内面性を伴わない音楽なんて音楽じゃないと言うか・・・・・・。とても悩むところです。

それでも、この演奏の存在価値はあると思います。

デヴィッド・ジンマン チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

icon★★★★
一楽章、低音域に暖かみのある良い音色です。ベートーヴェンの全集では賛否両論渦巻いているようですが、この演奏は今のところノーマルな演奏ですし、とても美しいです。
少しヴェールを被ったような奥ゆかしい美しさで、ギョッとするような生音は聞こえてきません。
フルートのソロもホールトーンを伴った美しい響きがします。ただ、感情がこみ上げてこるような演奏ではなく、作品を遠くらか見ているような冷静な演奏のようです。
一楽章が終わってCDを入れ替えるのは良いですね。

二楽章、とても響きが軽やかで暖かみのある音色はとても良いです。アゴーギクなどもほとんどなく表情は多少ありますが、無表情に近いです。
ただ、音色に暖かみがあるので、エッシェンバッハの演奏ほど冷徹な感じは受けません。

三楽章、オケの高い技術力もすばらしい。この技術集団を統率して音楽を組み上げるジンマンの手腕もすごいと思います。思いますが、感動が伴わないのか、近年の新譜には多いような気がしてなりません。

四楽章、太い声の独唱で、存在感があります。

五楽章、金管も良く鳴っていて、十分響いていますが、余裕を十分残した鳴りです。バンダも良い距離感があって美しいです。
ホールの響きが豊かなので、心地よい音が流れて行きます。どこをとっても申し分ない響きがしています。弱音部分のバンダとの絡みも美しい演奏でしたし、合唱も整ったアンサンブルです。
合唱や金管のffでも独唱の声はちゃんと聞こえる録音です。(ちょっと不自然かも)
この演奏も基本的にはエッシェンバッハと同じ部類に入るような気がします。
構築物としての美しさは完璧です。文句の付けようがありません。エッシェンバッハのクールな演奏を取るか、ジンマンの少し暖かみのある音色を取るかです。
しかし、このようなタイプの演奏に感動があるのかは疑問です。楽譜を完璧に音として再現するという行為を一つの芸術として評価はすべきでしょう。

いろんな演奏があるから楽しめるのですが、聴いた後の感慨と言うのか、心に残るものはあまりありません。

大野和士楽団/ベルギー王立歌劇場管弦楽団

icon★★★★
一楽章、低域がふくよかな録音です。ホールの響きを伴っているからか、トゲトゲしさのない演奏です。控え目なブラスセクションと弦楽器のバランスが取れています。
展開部二度目の第二主題を演奏したフルートはとても豊かな歌でした。再び現れる第一主題ではテンポがすごく動き、遅くなりました。その後も遅いままです。テンポは自在に動いています。
再現部の表現も少し音を切るような表現で独特でした。金管が突出して来ないのですが、ティンパニを含む打楽器はかなり存在感があります。終始抑制の効いた演奏で、爆演にはなりえません。

二楽章、テンポも自然な動きで、作品からも適度に距離を置いた品の良い演奏になっています。オケも超一流とは言えませんが良い演奏をしています。

三楽章、控え目なティンパニ。細かな表情付けもされていますが、録音会場のせいかあまり克明には聞き取れません。金管の咆哮などもなく大人しい演奏で、少し淡白に感じます。

四楽章、美しい独唱。ソロ・ヴァイオリンにはもう少し艶やかさが欲しいところです。

五楽章、打楽器は爆発しますが、控え目なブラスセクションです。速めのテンポで進みます。展開部の前は音を短めに演奏してテンポを上げました。行進曲調の部分で輝かしいトランペットを聴くことができました。
バンダのホルンはあまり豊かな響きではありません。バンダのトランペットは良いバランスでした。
合唱は極端なppではありません。少し速めのテンポで淡々と進みます。合唱の人数もそんなに多くないようです。最後のトゥッティはフルパワーの演奏でした。

作品にのめり込むこともなく、ディテールの美しい演奏でしたが、他の巨匠の演奏に比べると一回りスケールの小さい演奏だったように思います。

マーラー 交響曲第2番「復活」7

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

リッカルド・シャイー ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★
一楽章、コンセルトヘボウの深みのある響きを伴って開始されました。金管の咆哮も美しく響きます。シャイーの指揮はアゴーギクを効かせてたっぷりと情感を込めた演奏です。展開部で演奏される弦の第二主題はとても繊細な表現でした。適度なテンポの動きもあって、美しい音楽に浸りながら聞くことができる良い演奏です。

二楽章、ふくよかな弦の響きが美しい。羽毛で肌を撫でられるような繊細な弦の響きはたまらない魅力です。ここでもアゴーギクを効かせて表情豊かな演奏をしています。

三楽章、ホールの長い残響を伴ったティンパニです。コンセルトヘボウの豊かな残響を改めて感じさせてくれます。とても豊かで生き生きした表情が魅力的な演奏です。オケのアーティキュレーションに対する反応も機敏で気持ちが良いです。終盤の2ndティンパニの強打もバッチリ決まります。

四楽章、静かな歌いだし、続くコラールもとても抑えた演奏です。やさしく語りかけるような歌唱、それに応えるように控え目なブラスのコラール。とても美しい独唱でした。

五楽章、爆発を期待しましたが、アンサンブルが整っているせいかとてもコンパクトに聞こえた冒頭でした。バンダのホルンは遠くにいます。テンポも動きます。場面場面を彫琢深く刻み込んで行きます。金管のコラールもホールの残響を伴ってとても美しい。展開部はとてもゆったりとしたテンポで広大な大地を感じさせるような演奏でした。トランペットのバンダも遠くです。合唱に溶け込んだ独唱。トライアングルも絶妙な音色です。独唱、合唱、トランペットがすばらしいバランス!とてもゆったりとしたテンポで演奏が進みます。男声合唱が出たあたりからテンポが速くなりました。合唱が力強く壮大なクライマックスを作り上げました。オケも合唱と同等に力強いクライマックスを作ってくれれば文句なしだったのですが・・・・・。

小澤征爾 サイトウ・キネン・オーケストラ

icon★★★★
一楽章、勢いの良い弦のトレモロから開始です。強弱の変化など積極的な表現です。細部まで表現が徹底されていてすごい統率力を感じる演奏で、オケ全体が殺気立っているような凄い緊張感があります。美しい展開部です。展開部の途中から速めのテンポです。

二楽章、絶妙なバランスで凄いアンサンブル能力を聴かせてくれます。さすがにスーパーオケ。あまりタメがなく表現が淡白に感じます。

三楽章、ここでも細部の表現まで徹底された演奏が続きます。細部まで徹底されている分、金管の咆哮など一種のブチ切れるような表現がなく、制御が行き届きすぎて、とても醒めた演奏のように感じます。

四楽章、独唱とバランスの取れた金管のコラールです。とても存在感のある艶やかな独唱です。

五楽章、冒頭も荒れることなく美しい演奏でした。良い距離のホルンのバンダと美しい木管のソロが続きます。金管のコラールも抑制の利いた美しい演奏でした。展開部でも金管の強奏がありますが、とても美しい。どれだけ激しい部分でも小澤の指揮は冷静なようです。感情に任せて激情するようなことは全く無く、常に細部にも神経を行き届かせているような演奏です。とても静かに始まった合唱。合唱から淡く浮かび上がる独唱。一瞬速いテンポになった男声合唱。あまり高揚感もなく終ってしまいました。日本人の演奏らしく細部まで細やかな神経が行き届いた演奏でしたが、爆発するようなエネルギーや感情表現が無かったのが残念でした。

ヤンソンス ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★
一楽章、ライブ録音のせいか、少しデッドで奥行き感に乏しい感じがします。第二主題の入りもテンポをほとんど落とさずにあっさりと切り替わりましたが第二主題の中ではテンポの動きもありました。展開部の第二主題はゆっくりと祈るような演奏でした。とてもゆっくりとたっぷりと聞かせます。次第にテンポを上げて強奏部分へ、しかし金管が突き抜けてくるようなことはありません。録音のせいか、色彩感に乏しく、モノトーンのような感覚です。再現部の直前もテンポを落とさずにあっさりとしています。ヤンソンスの主張らしいものも感じられない演奏でした。

二楽章、一楽章から一転して表情豊かな演奏です。細部の僅かな強弱の変化も再現しようと神経の行き届いた演奏になっています。それにしても、残響成分の乏しいデッドな録音が演奏への集中を妨げます。

三楽章、尻上がりに表情が豊かになって来ました。オケの集中力も高くなってきているようです。細部の表現までこだわり抜いたヤンソンスの姿勢が伺えます。

四楽章、静かに歌い始める独唱に寄り添う弦。さらに遠くから聞こえるような金管のコラール。潤いのあるクラリネット。次第にテンポを落として天国へ。

五楽章、全体に響き渡るブラス。最初は音を短めに演奏しました。遠くにいるホルンのバンダ。続くオーボエは音を長めに演奏しました。「復活」の動機に続くホルンはとても豊かな響きでした。トロンボーンとテューバのコラールは見事な演奏でした。豊麗な響きの展開部。打楽器のクレッシェンドは頂点に達する前に切られたようで、まだ余力を残していました。ホルンのバンダに対して近いトランペットのバンダ。ゆったりと静かに歌い始めるとても神聖な雰囲気の合唱。合唱と絶妙のバランスで浮かび上がる独唱。少しずつ少しずつ音楽が高揚して行きます。ずっと遅いテンポを維持してきましたが、二重唱からテンポが速くなりました。最後までオケと合唱をコントロールし切ったヤンソンスの指揮でした。楽章が進むにつれて積極的な演奏になっただけに、一楽章の無表情さが残念でした。
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ウラディミール・ユロフスキー ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、気合の入った凄味のある第一主題。速めのテンポでキビキビと進んで行きます。色彩感が濃厚です。第二主題へ向けて少しずつテンポを落として行きました。色彩は濃厚ですが、表現はあっさりとしています。第二主題はゆっくりとしたテンポで始まりました。展開部のフルートの第二主題が伸び伸びと響く。展開部の第一主題が現れた後のコントラバスもガリガリと重量感のあるおとで存在感を示します。テンポも動き、再現部の前にテンポをグッと落として濃厚な表現もありその後徐々にテンポを上げて再現部へ入りました。音色の関係か、とても密度の高い演奏に感じます。コーダの黄昏て行く雰囲気もなかなか良いです。

二楽章、ゆったりと丁寧に演奏される主題。静寂感があって、緊張感と集中力の高さを伺わせます。テンポは動きますが、オケが一体になった動きは見事です。一楽章でも感じたことですが、色彩感はとても濃厚で、この演奏の特徴の一つです。

三楽章、潰れたような音のティンパニ。ヴァイオリンの主題とそれに続く木管の主題もとても表情が豊かです。楽譜の版が違うのか、チェロの旋律などで尻切れトンボになる場面もありました。

四楽章、銅鑼の響きが残った中から独唱が始まりました。とても静かな歌いだしです。続く金管のコラールもおごそかな雰囲気です。少しハスキーと言ったら言い過ぎですが、独特の歌声です。最後は丁寧にテンポを落として天国へ。

五楽章、盛大に鳴る銅鑼。音の洪水の中から僅かに顔を覗かせる第一主題。かなり遠いホルンのバンダ。速めのテンポでキビキビ進む第二主題。ねばったりアゴーギクを効かせるようなことはありません。金管のコラールはとても重厚な響きですばらしかったです。展開部の前でテンポを速めました。展開部からの色彩のパレットを広げた充実した響きも素晴らしかった。テンポの変化も変幻自在でとても濃厚な表現です。トランペットや打楽器のバンダも非常に遠くにいます。ソプラノ独唱の後ろで同じ旋律を吹くフルートがとても強調されていました。二重唱の後少しずつテンポを上げかなりせっかちなくらいになりました。オルガンも加わるところからは一般的なテンポで壮大なクライマックスです。

基本的には速めのテンポの演奏でした。濃厚な色彩感と濃厚な表現。それに一体感のある演奏はなかなかのものでした。これからの円熟を期待したいと思います。

アンドルー・リットン/ダラス交響楽団

icon★★★★
一楽章、控え目な第一主題。清涼感のある弦の涼しげな響きをベースにした演奏です。金管も整って行儀の良い演奏です。第二主題の前でテンポを落としました。第二主題の中でちょっとした間をとったりテンポを動かしたりしてとても魅力的な歌でした。展開部の前で大きくテンポを落としました。展開部の第二主題が終るところでもテンポを落としました。金管の強奏もとても美しいです。第一主題の後のコントラバスの部分もすごく遅いテンポで演奏しました。ホルンにコラール風の旋律が現れるあたりから加速しました。トゥッティでも非常に軽い響きでガツンと迫って来ません。その分とても美しい演奏ではあります。再現部の第二主題もゆったりとしていてこの世のものとは思えないようなとても美しい演奏です。リットンの感情移入もありますが、美しさを追求しているようで、グロテスクなものは全く聞こえて来ません。

二楽章、速めのテンポですが、途中で間を取ったりしてテンポが大きく動きます。この楽章も清涼感のある美しい演奏です。テンポの動きとともに感情が込められて行きますが、美しく歌うことに専念しているような表現です。テンポの動く歌にはこちらも身をゆだねて酔いたい気分にさせられます。とても美しいです。

三楽章、控え目なティンパニ。くっきりと浮かぶ細身のクラリネット。弦もガリガリと弾くことはなく、金管も余力をたっぷりと残し美しい響きを聴かせてくれます。あまりに強奏しないので、あまりスケール感を感じません。箱庭のようなミニチュアの音楽を聴いているような錯覚に陥ります。

四楽章、独唱よりも抑えられた金管のコラール。淡白なヴァイオリン・ソロでした。この楽章でもテンポは動きます。

五楽章、ここでも軽い金管の第一主題。比較的近いホルン。ホルンの動機から続く部分は速めのテンポで動きます。第二主題も速めのテンポであっさりと進みます。細身のトロンボーン。金管のコラールで少しテンポを落としました。展開部もホルンはかなり強く吹きますが、トランペットやトロンボーンは控え目で美しいです。打楽器のクレッシェンドの後もとても軽く吹く金管。再現部に入って、バンダのトランペットが輝かしく美しい。人数が少ないような感じがする合唱。一楽章や二楽章で見られたテンポの動きや間を取ることはなく、淡々と進みます。途中で合唱の音量を極端に落としました。ソプラノの独唱が終ったあたりからテンポが動くようになりました。合唱の出だしでは人数が少ないように感じましたが、かなりの音量がありました。オケを圧倒するような合唱です。ホルン以外の金管は最後まで余力を残していたように感じました。

これだけ、美しさに徹した演奏も良いものでした。
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ラファエル・クーベリック/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1960年ライヴ

クーベリック★★★★
一楽章、長めのトレモロから第一主題が始まりました。過不足なく盛り上がりますが、第二主題への入りはテンポをほとんど落とさず、第二主題も速いテンポです。展開部は抑えた音量から次第に大きくなり、ホルンとの絡みも美しい演奏でした。テンポが動いたりすることはほとんどありませんが、どっしりと地に足の着いた確実な足取りです。テンポは速めに進みますが、感情を込めるところではしっかりと主張しています。

二楽章、一楽章の速めのテンポと緊張感から解放されるような、穏やかでゆったりとしたテンポです。ただ、テンポを動かしたり、ねばったりするようなことは無く、比較的あっさりと進んで行きます。オケには一体感があり、流動的なところが無く、がっちりとした構成感です。

三楽章、この楽章はゆったりと流れるような主題。1960年のライヴだとは思えない音の良さです。強奏部分でもオケには余裕をもって演奏させています。ちょっと押したり、僅かにテンポが動いたりして歌っています。

四楽章、抑え気味の独唱。録音のせいか、細い声に聞こえます。

五楽章、強烈なトランペットの第一主題。金管の第一主題の後、ホルンが出るまでの間はゆっくりと、ほろ酔い気分のようなヨタヨタとした良い感じでした。遠いバンダのホルン。美しいトロンボーンの第二主題。非常に静寂感があります。淡々とした金管のコラール。展開部も絶叫はしません。とても堅実で安定感のある音楽です。打楽器のクレッシェンドもことさら効果を狙ったような演奏はしません。遠くて残響をあまり伴わないバンダのトランペット。再現部冒頭もクーベリックはしっかりとオケを統率していて、暴走は全くありません。静寂の中に響くバンダのホルン。比較的大きめの声で歌い始める合唱ですが、しっかりと実在感があり力があります。男声合唱はあまり編成が大きくないように感じますが澄んだ美しい響きです。ソプラノ、アルトの二重唱の後からの盛り上がりでテンポを上げました。圧倒的なパワー感ではありませんが、感動的なクライマックスでした。

奇をてらうようなことは全くなく、堅実で竹を割ったような爽快感のある演奏でした。質実剛健とはこのような演奏のことを言うのでしょう。
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小澤 征爾/ボストン交響楽団 1989年 大阪フェスティバルホールライヴ

小澤 征爾★★★★
一楽章、激しく重量感のある第一主題。ゆったりとしたテンポで濃厚な表現で進みます。あっさりと爽やかに演奏される第二主題。緊張感の高まる部分と力を抜くところの対比があって、かなり気合の入った演奏です。展開部の第二主題は遠くから響いてくるような美しい演奏でした。引き締まったなかなか良い演奏です。86年のスタジオ録音の素っ気無い演奏とは全く違います。

二楽章、弦が一体になった分厚い響きで優雅な舞曲を演奏します。緊張感のある中間部の弦の刻み。優雅な部分と激しい部分の表情が一変します。

三楽章、強弱の変化をはっきりと付けた主題。大きな表現はありませんが、過不足無く表情を付けた演奏で、とても引き締まっています。トランペットがかなり強いです。

四楽章、柔らかい独唱。感情を込めて歌うオーボエ。

五楽章、鋭く伸びやかな金管の強奏を聞かせる第一主題。程よい距離感ですが、残響はあまり含まないバンダのホルン。僅かな強弱の変化で淡々と演奏される第二主題。ゆっくりと演奏される金管のコラールですが、若干のミスもありました。展開部ではかなり強く金管が演奏します。ボストンsoの金管のパワーに圧倒されます。バンダのトランペットもやはりあまり残響を含んでいません。すごく音量を落として静かに始まる合唱。ソプラノ独唱も伸びやかな歌声です。力強い金管とそれに対抗する合唱で、最後は大きなクライマックスを築きますが、感情が伴わないせいか、何故かあまり感動はありませんでした。

気合の入った引き締まった演奏でした。強力な金管のパワーを見せ付けるようなトゥッティ。大きな表現はありませんが、過不足無く表情を付けた演奏でしたが、最後は大きなクライマックスを築きますが、感情が伴わないせいか、何故かあまり感動はありませんでした。
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マーラー 交響曲第2番「復活」8

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

ハロルド・ファーバーマン/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ファーバーマン★★★★
一楽章、柔らかく重量感のある第一主題。ゆっくりと堂々とした歩みです。色彩感も濃厚です。静かに祈るような第二主題。大きな表現はありませんが、ゆっくりとしたテンポで、淡々と作品を正面から捉えた演奏をしています。速くなる部分もありますが、遅いところは凄く遅いです。展開部の第二主題はあまり大きな音色の変化はありませんでした。第二主題がフルートに現れる前は一転して速くなりました。コントラバスに乗ってイングリッシュホルンが現れる所はとても遅いです。大きな表現はありませんが、演奏は血が通っている感じで、生きています。限界近くまで激しく咆哮することもありません。美しい演奏です。再現部もゆっくりで、弦の動きもとても鮮明に分かる演奏です。

二楽章、奥ゆかしい主題。この楽章は遅くありません。ゆったりと伸びやかで安らいだ音楽です。二度目の中間部でもホルンは音を割ることはありません。最後の主部のピッコロは控え目です。

三楽章、軽く叩くティンパニ。滑らかで美しいクラリネット。中間部のトランペットは軽く演奏しています。最後の中間部の主題で盛り上がる部分も軽く、その後のティンパニも弱い程でした。

四楽章、あまり奥行きが無く単純な歌いだしの独唱。軽く爽やかな程の金管のコラール。テンポも速めです。独唱は本当にストレートで単純です。あまりにもあっけらかんとしています。

五楽章、グリグリと突き上げてくるような低音。かなりのエネルギーの第一主題。少なめの残響のバンダのホルン。第二主題も感情を込めて歌うことはありませんが、自然で美しい響きです。元気で明るいバンタ゜のホルン。フルートとイングリッシュホルンの不安げな動機はゆっくりでした。静かで控えめですが、バランスノ良い金管のコラール。展開部の最初は浅いですが、トロンボーンが加わると深みのある響きになりました。金管は咆哮することなく抑制の効いた演奏を続けています。この演奏全体に言えることですが、アンサンブルの精度はあまり高くありません。再現部でも咆哮はありません。あまり落ち着きの無いバンダのトランペット。合唱も独唱も静かです。最後はゆっくりと高らかに歌い上げますが、やはり絶叫にはなりません。美しく制御した演奏です。

ゆっくりとしたテンポを基調にした美しい演奏で、トゥッティでも決して絶叫はありませんでした。テンポは遅いですが、深く感情移入することは無くすっきりと整った演奏でしたが、四楽章の独唱があまりにも単純でストレートだったのが唯一残念でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

ロリン・マゼール/フィルハーモニア管弦楽団

マゼール★★★★
一楽章、コントラバスも強めですが、ソフトな響きの第一主題。マゼールらしい大きなテンポの動きもあります。ゆっくりとしたテンポで金管もかなり余裕の演奏です。とても静かな第二主題。オケを無理にドライブすることなく刺激の無い自然な演奏です、テンシュテットの演奏のような緩急も激しく、強烈に訴えて来るような演奏ではありません。

二楽章、若い頃のマゼールの演奏でよくあった、作為的な表現は無く、とても自然で余裕さえ感じさせる演奏です。くつろいでいる雰囲気がとても良い演奏です。

三楽章、整然としていて余裕タップリなオケ。過剰な表現も無く、何もひっかかるところが無い演奏で、いつの間にか時間が過ぎて行きます。作品に身をゆだねているような自然体はマゼールの晩年の境地なのか。

四楽章、柔らかい金管のコラール。独唱の表現も控え目です。

五楽章、これまでの演奏に比べるとかなり力のこもった第一主題ですが、それでも全開ではありません。適切な距離と残響を伴ったバンダのホルン。素朴なフルートによる第二主題。柔らかく美しいコラール。展開部でもホルンが全開にはなりません。打楽器のクレッシェンドの直後の金管の部分はとても遅く演奏しました。再現部冒頭はかなり力が入っていました。これは、オーケストラの持ち味なのかも知れませんが、色彩感に乏しく、モノトーンのような響きが続きます。合唱も含めてとても響きが淡白です。クライマックスは合唱も含めて全開になりますが、テンポも速くなります。

1989年のテンシュテットのライヴ録音とほぼ同じ演奏時間の演奏なので、改めて聞き比べてみましたが、強弱の振幅の大きさ、緩急の変化、色彩感の豊かさ、積極的な表現、さらにクライマックスでの堂々としたテンポ設定など、テンシュテットのライヴ盤の素晴しさを改めて感じ入る結果になりました。

オットー・クレンペラー(指揮) フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、演奏前の拍手から録音されている。なんとも弱弱しい弦のトレモロ。低弦の旋律も力強さとは遠い演奏。金管の強奏も実にあっさり、淡白です。
録音年代からしても、弱音部がとりわけ美しいわけも無く、それでいて淡白な演奏だと、何を聴いていいのか。
控えめなセンスのよさのような感じは受けるが・・・・・。
あまりにも、強弱の振幅の幅が狭いので、拍子抜けしてしまう。来るぞ来るぞと期待するところをことごとく外される感じが、予想外で面白い。
ドカーンと来ることは一度もないままに一楽章は終わりました。

二楽章、この楽章も特別な思い入れも感じられないまま淡々と進んで行きます。テンポの揺れも最小限にとどめて音楽を作って行きます。何を意図しているんだろう?

三楽章、BGMにしてもいいくらいに、刺激のない振幅の少ない演奏は一楽章から一貫しています。この、作品を大掴みにして自分の掌中で音楽を再構築するところが、クレンペラーたる所以なのでしょうか。
好き嫌いは別にして、この微動だにしない意志には感服せざるを得ません。

四楽章、遠いところから聞こえる独唱。余計な感傷に浸るような余地は全く与えてくれません。

五楽章、全体にoffマイクな感じの録音のせいか、ライブでありながら、熱っぽさが全く伝わってこないのは、不思議な感じがします。
それにしても、この作品がこんなに柔和な音楽だったのかと初めて気づかされました。
何もしていないかのような演奏を聴き進むにしたがって、音楽のもつ深みが感じられてとても不思議な感覚です。
これがクレンペラーの大きさなのか・・・・・。
終結部へ向けてテンポが次第に速くなる。しかし、そんなに高揚感はない。
録音も歪みが混在して聞き苦しい。
部分部分を抜き出して聞くと、傑出しているところは何もないような演奏なのですが、全曲聴きとおすと、何か一つの世界を聞かされた満足感がある。本当に不思議な演奏でした。

群雄割拠の巨匠の時代を生き抜いたクレンペラーには、やはりすごい芸術が内包されているのだろう。

ヨーエル・レヴィ アトランタ交響楽団

icon★★★☆
一楽章、速めのテンポで開始しました。第二主題もあっさりと演奏します。展開部もこれまでと同様にあっさりと進んで行きます。ffでも余裕を残して作品から距離を置いた演奏のようです。展開部の直前もあっさりと演奏しました。弱奏部分は総じて美しいです。タメなどもほとんどなく、レヴィの作品に対する共感などはあまり感じられません。

二楽章、この楽章も速めのテンポ設定です。余計な感情移入がなく整然と演奏されるのが、次第に心地よく感じられるようになって来ました。

三楽章、一転して表情豊かな楽章です。表情豊かと言っても自然な範囲内で、決して作品にのめり込んでドロドロになることはありません。とても爽やかな演奏です。色彩感も油絵のような濃厚なものではなく、水彩画のような淡い色彩感です。

四楽章、金管のコラールはとても美しい演奏でした。独唱は指揮者のレヴィの意図に合わせて、必要以上の感情移入は避けているようです。

五楽章、爆発も混濁することなく美しい冒頭。良い距離感のバンダ。第二主題もおどろおどろしくなく爽やかです。打楽器のクレッシェンドも余力を残しています。再現部冒頭でも余力を残しています。トランペットのバンダはちょっと遠くにいます。極端なppではない合唱の導入でした。合唱の音量が上がってくるあたりからテンポをさらに速めました。全力を出し切ったと言う事はなく、押し付けがましいこともなく、とても爽やかな演奏でした。マーラの「復活」を聞き流すような聴き方をする人には良い演奏だと思います。ただ、「復活」をBGMのように聞く人がどの程度いるかは疑問ですが・・・・・・。

金聖響 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、弦のトレモロにはアクセントなしでおもむろな開始でした。控え目な第一主題です。余分な力が抜けた力みのない演奏です。第二主題もあっさりとしています。オケの編成が小さいのか、それともオケの音量が不足しているのか、響きに厚みがありません。展開部の第二主題は少しテンポを落としてたっぷりと演奏しました。打楽器はガツンと来るのですが、他のパートが負けているような感じで、展開部に現れる第一主題の打楽器も強烈です。金の指揮は必要以上に感情移入せずにオケの美しい音色の範囲で作品を描こうとしているのか。厚みはありませんが、オケの音色は美しいです。そのままのテンポで終りました。

二楽章、中庸なテンポで始まりました。弦のアクセントなども強調せずに自然な流れです。テンポの動きもほんの僅かです。強調はしていませんが、なぜか色彩感は豊かです。

三楽章、ホールに響き渡るティンパニ。美しくしなやかな弦。やはり他のパートに比べて打楽器が強いです。金管が荒れ狂って汚い音を出すことは絶対にありません、きっちりとコントロールされていて暴走することはないです。ひっかかるところが無くとても流れが良い演奏です。大太鼓の径が小さいのか、トンと言っています。

四楽章、ビブラートの多い独唱です。バックで支えるオケの弱音も美しい。

五楽章、やっぱり大太鼓はトンと言っています。金管はアタックの音は聞こえますが、その後に続く音に息があまり入っていないような響きの薄さです。間接音を多く含んだバンダのホルンはなかなか良い雰囲気を醸し出します。第二主題を引き継ぐトロンボーン、トランペットは美しかった。ステージ上の木管とバンダのホルンの距離感がとても良いです。金管が強く入ってきてもとても静かです。金管のコラールも美しい演奏でした。展開部も打楽器以外は静かです。かなり大きめの音量から入る合唱には緊張感がありません。合唱から浮かび上がる独唱。合唱の絶叫にあわせるようにオケもフルパワーです。壮大なクライマックスに照準を合わせて、そこに至るまで、厚みには欠けますが透明感の非常に高い美しい音色でオケをコントロールした手腕は見事なものでした。オケの技量は発展途上なのだと思いますが、これからが期待できる演奏でした。

クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

アバド★★★☆
一楽章、残響を含んで柔らかい第一主題。後ろで動く弦の刻みの表現が積極的です。あっさりとした第二主題。オケに一体感があって、ヘビがうねるような生き物のような音楽です。展開部はゆっくりとしていて、ホルンが美しい。アバドの演奏にしては、明確な表情が付けられている部分があり、かなり主張しています。展開部で現れる第一主題のティンパニはとてもリアルでした。コーダは特に陰鬱な感じはありませんでしたが、暗い雰囲気は表現されています。

二楽章、落ち着いた演奏ですが、表情が付けられています。ホルンは強く吹きますが咆哮すると言うほどではなく、抑制されています。美しい弦が明るく開放的に歌います。

三楽章、ソフトな打撃のティンパニ。歌ってはいますが、奥ゆかしい表現です。羊皮のティンパニ独特のバネのある響き。巨大な編成をあまり感じさせない、こじんまりとした響きです。

四楽章、柔らかく美しい金管のコラール。巻き舌を多用する独唱。

五楽章、エネルギー感はありますが、決して絶叫しない金管。弱く遠いバンダのホルン。分厚い響きはありません。デッドな金管のコラール。展開部の伸びやかなホルン。ウィーンpoにしては美しいシンバルです。行進曲調の部分は穏やかに進んで行きます。オケを限界近くまで吹かせることは無く、美しい響きが続いて行きます。トランペットのバンダも遠くですがファンファーレは美しい演奏でした。極端な弱音ではない合唱。独唱は残響が乗って艶やかです。合唱もそんなに編成は大きくないようです。二重唱の後は速めのテンポでぐいぐい進みます。クライマックス手前のティンパニが入るあたりでテンポを元に戻しましたが、クライマックスでトランペットの高音が突き抜けてきますが、あっさりとしています。

マーラーのスコアをそのまま手を加えずに音楽に変換したような、ストレートな演奏でした。響きが薄く、編成が小さいように感じられたのが、少し残念です。
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ミラン・ホルヴァート/スロベニア・フィルハーモニー管弦楽団

ホルヴァート★★★☆
一楽章、メタリックで低域まで録音されていないような響きです。速いテンポで激しい第一主題。金属的な響きのするオーボエ。速いテンポの第二主題。容赦ない打楽器の炸裂。ガツガツと前へ進みます。テンポを落として展開部の第二主題ですが、表現は淡泊です。金管は良く鳴らされていますがテンポが速く、なぜそんなに急ぐ?太いトライアングルの響きが曲に合っていません。第一主題に登場する銅鑼も容赦なく強打されています。再現部の第二主題は美しい歌でした。

二楽章、ザクザクと刻まれる弦。ヴァイオリンのメロディの下を支えるパートがヴァイオリンと対等以上に主張します。テンポを揺らしてたっぷりと歌っています。一楽章に比べると自由な表現が出て来て、明らかに乗って来ています。

三楽章、バチーンと響くティンパニの一撃。ヴァイオリンの主題とそれに続くクラリネットもすごく表情が豊かでした。流れの中を自由に泳ぐ魚のように生き生きとしています。中間部の低弦の刻みはやはり低い音が収録されていないようで、深みがありません。続く金管は咆哮することはなく、よく制御されています。かなり強く鳴る安物のトライアングルが気になります。弦の表現などは緩くはなく、とても締まった良い動きでとても統制されています。それに比べると遠慮なく叩きまくる打楽器には笑ってしまいます。

四楽章、音が短めで不安定な金管のコラール。最後はかなり前から少しずつテンポを落として濃厚に歌いましたが、最後の音は短かったです。

ご楽章、バスドラがドカンと鳴って、その後から銅鑼が響きます。金管はビリビリと下品に強烈に鳴ります。独特の残響感のあるバンダのホルン。この楽章も速いテンポでグイグイ進みます。ホルンのバンダの最高音の部分はトランペットに変えて演奏しました。展開部に入らず、打楽器のクレッシェンドになってしまいました。再現部でトランペットのバンダはステージ裏ではなくステージ上にいるような間接音がなく、直接的な響きです。元気の良いバンダのホルン。あまり広がりの無い、奥行き感も無く編成が小さいように感じる合唱。テンポは速めでグイグイ進んで行きます。クライマックスでテンポを落として、金管が鳴り響きます。なかなか感動的でした。合唱の最後も壮絶です。

メタリックな響きの録音や五楽章のカットなど、がっかりさせられる部分もありましたが、楽章が進むにつれてオケと合唱が一体になって感動的なクライマックスを築き上げるところはすばらしいと感じました。
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ギンタラス・リンキャヴィチウス/リトアニア国立交響楽団

icon★★★☆
悲劇的のライヴ録音はかなりの爆演だったのですが、果たしてこの復活はどうでしょう。

一楽章、かなりデッドで弦が近いです。強いアクセントで入ったトレモロが急激に弱まって第一主題になりました。第一主題もとても乾いた響きで、音像が大きいです。金管もブリブリと響きます。第二主題はあまり思い入れを感じさせないあっさりとした表現です。一音一音切るように演奏される展開部の第二主題。デッドな録音のために各パートの動きが手に取るように分かるのですが、その分音楽に浸ることはできません。あまりにも生音がストレートに届き過ぎます。

二楽章、最初の音を短く、その後は小節の頭の音を押すように強く演奏する、とても大きな表現です。テンポは速めでサクサクと進みます。中間部は速いテンポもあってかなり激しいです。金管があまり遠慮せずに入って来ます。この楽章の演奏としてはこんなに激しいのは初めてかも知れません。速いテンポでとても元気の良い演奏です。マーラーの「きわめてくつろいで」と言う指定とはかなり違う演奏のようです。

三楽章、最初のティンパニの二つの音は繋がって団子のようになっていました。音を止めるところも速すぎて十分に釜が鳴る前に音を止めてしまうところもありました。ヴァイオリンの主題もそれに続くクラリネットもとても豊かな表現でした。弦に独特の表現があります。刻みつけるような濃厚な表現もあります。ただ、マルチマイク録音でとてもマイク位置が近い感じで、響きがブレンドされることがありません。

四楽章、とても耳に近い位置で歌い始める独唱。金管のコラールはとても浅い響きで、テンポも速く深味がありません。独唱は明るい声で良い歌唱です。

五楽章、長く尾を引くドラ。金管が炸裂します。第一主題の後半でテンポを落とします。少し弱まって弦の細かな動きが出る前に間がありました。間接音をほとんど含まず貧弱でかなり音程も悪いバンダのホルン。第二主題は速めのテンポであっさりとしています。トロンボーンもトランペットもとても近いです。金管のコラールも響きが浅くブレンドされた響きにはなりません。展開部で炸裂するシンバル。トロンボーンも突然ブーンと響いて来ます。トランペットのハイトーンも音程が悪いです。打楽器のクレッシェンドはかなり時間をかけました。金管が入る部分にドラの響きが残っています。再現部冒頭のトロンボーンはかなり激しいです。ドラも強烈に打ち鳴らされます。やはり間接音を含まず貧弱なバンダのホルン。バンダのトランペットも貧弱で怪しいです。フルートやピッコロはかなり大きな音で鳴っています。合唱が入るまで長い間がありました。合唱はとてもゆっくりです。湧き上がるように次第に力を増していく合唱はなかなか良いです。独唱もオンマイクでくっきりと浮かび上がります。独唱のあたりではテンポは普通になっています。男声合唱は強唱部でも絶叫せず美しい響きです。二重唱はかなりの音量で激しく聞こえました。次第にテンポが速くなります。合唱の中から独唱が浮いて聞こえます。クライマックスの金管は凄く強烈です。パイプオルガンもはっきりと聞こえます。

独特の表現が随所に見られる演奏でした。合唱は美しく、最後の金管の強烈さはさすがリンキャヴィチウスと思わせるものでした。マルチマイクの録音で、クライマックスで合唱の中から独唱か゜浮き上がるのはちょっと不自然でした。また、音程の悪い金管も気になりました。

James Gaffigan/フランス国立管弦楽団

James Gaffigan★★★☆
一楽章、気合の入ったトレモロ。厳しい表情の第一主題。ここまでかなり細部まで表情があったのが、第二主題はとてもあっさりと演奏されます。浮遊感があって美しい展開部の第二主題。第一主題のリズムには特徴がありますが、色彩感や密度はあまり高くありません。演奏自体には大きな特徴は無く、極めて標準的な感じがします。

二楽章、柔らかい主題。この柔らかい弦が演奏の特徴です。その分、金管の激しさはあまり伝わって来ません。

三楽章、かなり強烈なティンパニ。滑らかに流れる主題。流れを優先する感じで角が立つような強いアクセントは表現されていません。中間部のトランペットは飛びぬけては来ません。バランスが良いと言えばそうなのですが、面白みには欠けます。この楽章では弦のガツガツとした演奏もあります。最後の盛り上がった部分のティンパニが間違っています。独唱者はこの楽章の途中で入って来たようです。

四楽章、積極的で大きな振幅の歌唱を聞かせる独唱。

五楽章、ドラがあまり聞えませんでした。金管が全開になっていないのか、録音のバランスがそうなのか、金管が突き抜けて来ません。豊かな間接音を含んだバンダのホルンはかなり音量が大きいです。バンダとステージ上のズレもありました。展開部はかなり熱気のある演奏になって来ました。行進曲調になる部分はかなりテンポが速くなりました。展開部あたりからはかなりの熱気で、全体が一体になった凄い演奏になって来ました。合唱の出だしが揃いませんでした。あまり音量を抑えていない合唱。合唱も含めて壮大なクライマックスです。

前半の特徴の無い演奏は何だったのかと思わせるような、五楽章展開部からの熱演。オケ、合唱が一体になった壮大なクライマックスは見事でした。
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マーラー 交響曲第2番「復活」9

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

クラウディオ・アバド ルツェルン祝祭管弦楽団

マーラー復活 アバド★★★
基本的に、何もしない人が自ら集めたスーパー・オケとの共演!

一楽章、冒頭おもむろな開始。特別な思い入れや、「これから何かが起こるゾ」と言う期待感も涌かない、自然体の開始です。名手揃いのスーパー・オケだが、緊張感や集中力などは感じられない。むしろ、めったに共演できない人たちが集まって音楽をする喜びの方が大きいのか、楽しそうだ。
さすがに、名手揃いなので、ffでもとても美しい音が響く。それにしても、淡々と時間が過ぎていく。あれよあれよと言う間に一楽章は終わってしまった。この演奏だったら二楽章の間の休憩は全く必要ない。

二楽章、とても、テンポが速いスタート。この楽章も聞かせどころもなく過ぎていくのか?とても美しい音楽がBGMのように流れていく。

三楽章、なんともソフトなティンパニからはじまる。ここまで、聞いてきて音楽の振幅の巾の狭さがとても不満になってくる。最後には解消されるのだろうか?とても小じんまりとまとまっていて、スケールが小さい。ベルリンで毒を抜かれて腑抜けになったか?シカゴとの旧盤のほうが、エネルギーの爆発もあったし、力強かった。三楽章も、何の感慨もなく終わってしまった・・・・・。

四楽章、ここでも美しい音が流れて行く。イタリア人指揮者でありながら、これほど歌わない人もめずらしいのでは。

五楽章、バンダはすごく遠い。ffでもオケは余裕たっぷり、テンポもわりと早い設定で進む。間の取り方は独特のものがある。とても明るい雰囲気の復活、マーラーを聞いているのではなく、スーパー・オケの模範演奏を聴いているようだ。過不足無く、突出もなく本当にBGMとして聞けるんじゃないか?
最後も見事な輝かしい音色で締めくくられるが・・・・・・・。

この演奏は、マーラーの「復活」ではなく、アバドの全快祝いを世界中の友人たちを集めて祝った「復活」で、スーパー・オケの上手さを聞くには良いでしょう。
マーラーの書いた楽譜を何もせずに音にしたら、「こんなんになりました!」と言うような演奏です。
巨匠の時代は終わったんだなぁとつくずく感じさせられる演奏でした。
オケは上手いので、悪いCDだとは言いません。最初に聞くんだったら、バーンスタインやテンシュテットはお勧めできないので、「復活って、こんな曲なんだ」ということを知ってもらうには良いでしょう。

ピエール・ブーレーズ ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
ブーレーズと言えばニューヨークpoの音楽監督に就任した当時、バルトークやストラヴィンスキー、バレーズなどの演奏で前任のバーンスタイン時代に荒れ果てたアンサンブルを見事に立て直して整然とした録音を数多く残した、分析型の指揮者のはしりだったブーレーズ。近年の円熟ぶりがどのような演奏を生み出すか?

一楽章、冒頭どっしりと構えた出だし、ムジークフェラインの豊かな残響もあり、ふくよかな開始。オケがウィーンpoということもあるのか、シャープな演奏ではない。また、昔のブーレーズのイメージともかなり違う演奏だ。昔は切れ味鋭く、難解な曲もバッサバッサと切り捨てたブーレーズも円熟して丸くなったのか、なんとなく、ズングリムックリな感じがしてしまう。
クラッシュシンバルは例の一部が欠けているのを使っているようだが、なぜあのシンバルを使い続けているのか私には理解できない。曲が盛り上がったところであれがゴツンと言う音で鳴ると、盛り上がった心に冷や水をぶっ掛けられるような感じで、どうもなじめない。
弦は柔らかく美しい。テンポも揺れるし、弦は歌うし心地よい。

二楽章、この楽章はウィーンpoとの相性もよく、ふくよかで美しい。ウィーンpo独特のふくよかさは、最近の近代的でシャープな音のオケで聞いているマーラーに慣れていると、ものすごく古めかしいものに聞こえてくる。もともとウィーンにはゆかりが深いマーラーなのだから、この音で聞いているのが、本来のマーラーの姿なのかもしれないが・・・・・・。

三楽章、非常に堅いマレットで演奏されるティンパニだがムジークフェラインの豊かな響きを伴って心地よい。つづく木管もしっとりと美しい。金管も含んだテュッティの何とも、モッタリした鈍重な響きが、これまでの私の持っているマーラー像を崩しにかかる。

四楽章、控えめながら、気持ちがこもって美しい独唱、それに続くコラールも非常に美しい。ブーレーズの昔のイメージは完全に払拭される。すごく歌いこまれていて、作品への共感が伺える楽章です。

五楽章、金管の咆哮にもウィーンpoならではのふくよかさがある。弱音部は非常に美しい。バンダは最初は割りと近めに配置されているが後半ではかなり遠くなる。金管のコラールはあっさり通り過ぎるが、そのあとのクレッシェンドからはグッとテンポを落としてねばる。ffの後に休符があると、ホールに広がってゆく残響が他のCDでは聴けない美しさで魅了される。
ブーレーズの抑制なのか、ウィーンpoに絶叫させずに音楽を運ぶあたりは、やはり昔と変わらず冷静にスコアを読んでいるのか。ウィーンpoらしいぬくもりのある音色の範囲で音楽を作っていくブーレーズはさすがと言いたい。普通なら五楽章にもなれば、多少力んでも絶叫したくなるのが普通だと思うが、この冷静さには別の感激がある。合唱と合唱の合間に入る弦合奏も大河の流れのようにとうとうと歌う感じではなく、むしろ室内楽的なまとまりと抑制がある。独唱の扱いも他の指揮者とは違う。非常にあっさりとストレートだ。
合唱が入って以降は、さらにあっさり。暴走などは間違ってもあり得ない。そして、テンポも速くなる。
抑制の効いたまま最後まで行ってしまった。好みは分かれる演奏でしょう。

ウィーンpoと復活を融合させるために、しっかりとした設計のもとにウィーンpoの最も美しい音が出せる範囲内でコントロールして音楽を貫徹させるブーレーズの自信と信念が生み出した、演奏です。
感動したか?と言われると、もろ手を挙げてとは言えないが、十分唸らせられた演奏であることは間違いない。これまで聴いてきたなかで、一番予想外だったのも、この演奏でした。

ワレリー・ゲルギエフ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

ゲルギエフ★★★
一楽章、柔らかいトレモロとコントラバスが弱い第一主題でかなりあっさりしていて、YouTubeで聞いたライヴの演奏とはかなり違う印象です。あっさりとした第二主題。爽やかで繊細な展開部の第二主題。YouTubeの音源よりオケが遠くなって角が取れた感じであまりにも聞きやすくなり過ぎている感じの録音で、かなり不満です。金管もとてもお行儀良く枠から飛び出すようなことは全くありません。濃厚で凄みのあった表現も全く感じない演奏になってしまっています。

二楽章、この演奏は本当にライヴ当日の演奏なのだろうか?ライヴ前のゲネプロを主にした音源なのでは無いかと言う気がしてきました。この感情の入っていない演奏には本番の緊張感や高揚感が伝わって来ません。あまりにも無難な演奏で、YouTubeの生き物のような動きのある演奏とはまるで違うのです。

三楽章、ヴァイオリンの主題とそれに続くクラリネットには少し表現がありました。トランペットもファンファーレのように突き抜けて来ることは無く、とにかく無難です。私には、白熱したライヴ感のあるYouTubeの演奏の方が断然良かったと思います。

四楽章、整然として美しい金管のコラール。

五楽章、弦と金管のバランスも良く、整っています。程よく残響を伴ったバンダのホルン。淡々とした第二主題。金管のコラールはトロンボーンに表現意欲がありました。展開部に入っても金管の咆哮はありません。持てる力をフルに使って表現しようと言うモチベーションが感じられません。とにかく安全運転です。遠くから響くバンダのトランペット。二重唱はかなり伸びやかな絶叫でした。二重唱の後かなりテンポを速めました。パワー全開の頂点も感じることなく終わってしまいました。

YouTubeの動画がとても良かったので、期待して聞いたCDでしたが、完全に期待を裏切られました。整った演奏ではありましたが、強く訴えてくる表現も無く肩透かしの連続でした。

山田一雄 京都市交響楽団

★★★
1980年頃の日本のオーケストラはかなり下手だった記憶が強い。
N響ですら、欧米のオケに比べるとかなり見劣りしていたと思う。特に管楽器に関しては体格の問題も奏法の問題もあり、でした。
これが京都市交響楽団となると、オケの技量に関してはほとんど期待はできないと思うのですが、果たして演奏はどんなものでしょうか?

一楽章、長い弦のトレモロのあと低弦が入ってくる。なかなかの力演ですが、付点の甘さがちょっと気になります。
オケは予想していたより、遥かに上手いです。集中力も高く、緊張感も十分に伝わってきます。
ティンパニの付点もやはり甘いです。日本人の特徴ですね。
かなり劇的な音楽の運びで、なかなかの演奏です。ただ、時折旋律を見失ってしまうことがあります。
ffの時に金管が突き抜けてくるようなパワーはさすがにありません。この辺は、指揮者の山田が要求しても無理な部分なのでしょう。
かなり劇的な音楽を作っていっているのですが、金管のパワー不足による振幅の狭さはとても残念なところです。

二楽章、山田自身が積極的に音楽をしようとしているところが、とても好感がもてます。歌もあり起伏もあり、オケが全てを受け止めることができれば、すばらしい名演奏になっていたかもしれません。
テンポの動きや「ハッ」と思わせるような間があったり、さすが老獪です。

三楽章、思いっきりのティンパニからスタート。すごく表情豊かな楽章です。細部にわたる表情や楽器の受け渡しなど、なかなか訓練されています。
小さなミスはありますが、アンサンブルは良いので、崩壊しそうになったりはしません。
これも、この当時の金管の弱みだったと思うのですが、タンギングの直後の音は出ているのですが、その後の息が弱いような感じがあって、トゥッティのエネルギー感を削いでいるように思います。
トロンボーンのミスはちょっとかっこ悪いです(^ ^;
表情豊かな音楽はとても魅力的です。

四楽章、独唱がだんだん遠くなったり近くなったりするのは、なんで?歌う方向を変えるとかしたのかなぁ。いろんな演奏を聴いてきたので、やはり日本人の発音では、ちょっと違うような気がします。
もう少し幻想的、天国的な雰囲気が欲しいところでした。ちょっと現実的でした。

五楽章、冒頭は大爆発です。爆発が自然に収束して、バンダへと引き継がれます。もう少し遠くでも良いような・・・・・。収束を引き継いでそのままの音量かさらに収束へ向かうくらいの音量を期待しました。
ステージ上の木管よりもホルンのバンダの存在感が大きいのはちょっと不自然すぎます。
やはりトゥッティになると金管群が打楽器群に負けてしまいます。肉食って育った人たちじゃないからなぁ。
トランペットのバンダは小さすぎで太鼓に消されています。細部のバランスまでは時間をかけられなかったのだろうか。
かなりの好演なのだが、ちょっと残念なところです。
何かの間違いではないか?と思うほどホルンのバンダだけが異常に大きい。
合唱の技量や発音などいろいろ言い出せばきりが無いのですが、十分感動的な終結部を作り上げ、見事なコンサートだったと思います。

1980年当時に純日本の演奏家たちで、これだけの演奏をしたことは、すばらしく十分に評価されて良いと思います。ただ、当時の日本の場合は西洋音楽に対しては発展途上国であって、この演奏も歴史の中の通過点の記念碑だと思います。
山田が表現したかった音楽やスケール感などは、本人のイメージよりも二周りぐらい小さくなってしまっているのではないかと思いますが、当時としては本当にベストを尽くした演奏だったのだろうと思います。
良い意味で期待を裏切ってくれました。
これからさらにすばらしく世界に誇れる演奏が多く生まれることを期待します。

アントン・ナヌート リュブリャナ放送交響楽団

icon★★★
一楽章、特に力んだ感じも無く爆演と言われている割には平凡な出だしだ。録音状態は良さそうで、ティンパニのヘッドの質感も伝わってきます。ただ、響きが薄い。これはオーケストラの力量の問題でしょうか。
ライブ録音らしく、細かなミスも散見されるが、オケの集中力は高そうで、好感が持てる演奏です。
高音域の繊細な音に対して、低音が薄い感じで、ちょっとバランスが悪いのが気になります。
金管は遠くに定位していて、控えめなので、爆演という評判とは結びつかない感じを受けます。予想に反して、かなり整然としたスタイリッシュな一楽章。毒々しさもなく自然体の演奏。
ライブで、これだけ整然とした演奏ができるオケの技量もなかなかのものだと思います。

二楽章、ゆっくりな出だしに歌があって、ひきつけられる。弦の刻みなどには若干の乱れはあるものの、それより増して表情が豊か、一楽章よりも熱を帯びてきた、いかにもライブらしい演奏です。

三楽章、竹ヒゴ(ルーテ)が若干後ろ乗り気味なのが気になりますが、弦も木管も美しいです。打楽器は盛大に鳴らしまくります。それに比べると金管がおとなしいです。

四楽章、金管のコラールもチューバがいないんじゃないかと思うほど低音が薄いです。
独唱はホールの響きも伴って豊かな歌声。最後の音をもう少し伸ばして欲しかった。

五楽章、冒頭、ドラよりもバスドラのドカンがすごい。バンダのホルンは洞窟の中ででも演奏しているかのような独特の音響効果です。
それにしても、低音域のゴリゴリしたパッセージがほとんど聞こえてこないのは、ちょっと残念です。
バンダのホルンの最高音の部分はトランペットに吹かせています。
ここぞというところでの打楽器は本当に遠慮なく気持ち良いくらいぶっ叩いてきます。
バーンスタインと同じように、終結部でぐっとテンポを落としました。爆演と言うほどでもないような感じでしたが・・・・・。

多分、オケの音量が一流オケに比べると小さいので、ティンパニのクレッシェンドなどがすごく効果的になるので、爆演と評価されるのかも知れませんね。

シモーネ・ヤング/ ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、ソフトなトレモロ。低弦の第一主題も荒れ狂うようなことはなく、穏やかでテンポは速めであっさりと流れて行きます。第二主題の手前で少しテンポを落としましたが、第二主題もそのままの流れでひっかかるところはありません。テンポはわずかに動きますが、自然な流れの範囲です。展開部の第二主題はたっぷりと美しい演奏でした。弱音部分の木管やホルンはとても美しい。打楽器はかなり強打されますが、金管は抑制気味で突き抜けては来ません。再現部の前もテンポは落とさずにそのまま進みました。再現部もかなりテンポが速くどんどん前へ進みます。第二主題はたっぷりと濃厚な表現でした。これと言った特徴のない第一楽章でした。

二楽章、この楽章も速めのテンポで滑らかで美しい弦の主題。中間部の弦の三連符の刻みにははっきりとした表情が付けられています。

三楽章、抑えぎみのティンパニ。控え目で滑らかな主題。クラリネットがフレーズの最初をゆっくりと演奏して入りました(2回ありました)。中間部の低弦の刻みも控え目です。盛り上がるところもかなり余裕を残しています。最後の盛り上がるところはオケが一体になってかなり強く演奏しました。

四楽章、この楽章も速いテンポで入りました。金管のコラールはすごく音量を落として遠くから響きました。テンポが動いて感情が込められています。独唱も美しい音量の範囲で歌っているようです。

五楽章、オケが炸裂!怒涛の冒頭でした。テンポはやはり速いです。遠い距離で響くバンダのホルン。第二主題も速めであまり表情は付けられていません。美しい金管のコラール。展開部でも打楽器は強打されてすごい存在感ですが、オケは響きが薄くあまり印象に残りません。打楽器のクレッシェンドも普通にテンポを落としてねばることはなく過ぎました。続く金管が強奏する部分も音の洪水のような圧倒的な感覚はなく、散発的に登場するパートの響きだけで、少し寂しい感じです。再現部に入って、トランペットのバンダはかなり遠くにいます。舞台上のフルートとはすごく距離が離れて対比されるバンダ。静かに歌い始める合唱には感情が込められていて、自然に少しずつ音量が上がって行きます。合唱は透明感があって美しいです。独唱も合唱に溶け込んで美しい。クライマックスも速いテンポであっさりしています。

透明感の高い美しい合唱は出色でしたが、演奏全体は速いテンポで淡白な演奏でした。たまにテンポを動かす部分もありましたが、シモーネ・ヤングの個性はあまり感じませんでした。また、オケの響きにもマスの一体感が無く、寂しい感じが残りました。

ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団

icon★★★
一楽章、モコモコとこもったようなコントラバスの第一主題。速めのテンポであっさりと演奏される第二主題。展開部まで速いテンポでした。展開部で演奏される第二主題も特に美しいことはありません。ホルンに小さなミスがあります。打楽器もあまり強打することは無く、この曲の演奏としては大人しい方です。マーラーがまだ世間に認知されていない時代のスタジオ録音と言うことで、クーベリックも大事に行こうとし過ぎているような感じで、とても無難な演奏になっています。

二楽章、主部の弦の主題には艶やかさが無く、暖かみはありますが、潤いはありません。大きな表現は無く、淡々と進んで行きます。クーベリックにはマーラーの作品を世に知らしめようと言う意図があったのか、自己主張よりも作品のありのままを聞かせようとしているようにも感じます。

三楽章、硬めのティンパニ。ヴァイオリンの主題はやはり艶やかさがありません。金管が爆発したりするような起伏の大きな演奏では無く、滑らかになだらかに流れて行きます。マットな響きで色彩感はあまりありません。現代のマーラー演奏に比べるとかなり地味です。

四楽章、少し遠くに定位する独唱。金管のコラールも遠いです。独唱には感情が込められています。中間部の独奏ヴァイオリンはやはりマットで艶がありません。アゴーギクを効かせる独唱。

五楽章、切れ味鋭い金管の第一主題。バンダのホルンはあまり遠く感じません。音量も大きいです。第二主題の木管のコラールもマットです。バンダのホルンの最高音にはトランペットの補強がありました。金管のコラールもあっさりしています。展開部に入っても金管が絶叫することは無く、余裕を残しています。打楽器のクレッシェンドもあまり時間をかけずに過ぎて行きました。続く部分のテンポも速いです。空間に窓が開いて顔を出すようなトランペットのバンダ。バンダのファンファーレは壮麗な響きでした。合唱も音量を抑えたものでは無く、緊張感はあまり感じません。二重唱の後も速いテンポになります。クライマックスも絶叫することは無く、制御されています。

刺激を避けてマイルドな表現の演奏で、強弱の振幅も大きくは無く、感情をぶつけてくるような演奏でもありませんでした。録音された当時としては、作品そのものを伝える意図があったのか、極めて標準的な演奏となっていました。

マーラー 交響曲第2番「復活」10

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

ヴラディーミル・フェドセーエフ モスクワ放送チャイコフスキー交響楽団

icon★★☆
ロシアの指揮者と言えば、ムラヴィンスキーの高貴さは別格として、そのほかには鬼才、奇才の宝庫のような国だ!
スヴェトラーノフの「復活」も是非聞いてみたいと思っています。重戦車のようなばく進力と繊細さを併せ持つ巨匠の演奏はどんなものなのか、CDが再販されたら、真っ先に買おうと思います。
そして、もう一人忘れてはいけないのは、ロジェストヴェンスキー!!!!!最近の活躍をあまり耳にしないようになっているのが寂しいですが、彼のコテコテのマーラーを是非録音して欲しい。
今回のフェドセーエフですが、私の印象としては、スヴェトラーノフほど重くはなく、ロジェヴェンほどコテコテでもなく、比較的洗練された指揮者だと思っているのですが、果たして、この「復活」はどんな演奏でしょう。

一楽章、非常に軽い出だしでテンポも、今まで聞いたことがない速さだ、今までとは別の曲を聴いているような違和感。低弦の刻みの跳ね方がとても不思議な感じがします。
弦は美しいが、とにかく速い。最初の主題が終わってから、一般的なテンポになった。陰鬱感はとてもよく出ている。チャイコフスキーを聴いているような・・・・・。
アンサンブルは悪い!これまで聴いてきた中でも一二を争う悪さだ。弱音部は割りと良いのだがffになるとシグナルグランプリでも始まったかのようで、バラバラになったりする。ホルンはロシアのオケ独特の締りのある音で、弱音部分では、ポコポコ言っている。
金管がいろんなところで、ペッと言うような意識して乱暴なタンギングをするのだが、なぜだろう。ていねにいテヌートするところもあるのだが・・・・・。
何で、こんなにテンポが速い?何もそこまで・・・・と言いたくなるくらい速いし、速いところが乱暴に感じる。どうでも良いというような扱いをしているような。
金管は適度に距離感があるので、金管がかぶってくることもないし、爆演にはなりえない。

二楽章、この楽章も割りと早めです。こんなにあっさり行ってしまって良いのか?と思ったら予想外のところでテンポが落ちた。ティンパニはたびたび遅れるよ。
何か楽しい演奏で、マーラーの持っている世界観や宗教観のようなものとは無縁の演奏です。淡々と演奏が進む。

三楽章、この楽章は遅めです。でも、一つ一つの音を紡いで行くような綿密さはなくて、かといって散漫な演奏でもない。
シンバル、トライアングルがものすごく遠くにいるので、色彩感も乏しく感じます。でも、どうして聴いていて楽しいんだろう。これまで、聴いてきた、ヨーロッパやアメリカのオケやその文化の中で育った指揮者や演奏家ではない人たちにとっては、常識にとらわれることなく、自分たちが感じたままを音にして行くんですね。

四楽章、とても良かった。聞き惚れました。

五楽章、冒頭はティンパニしか聞こえません(^ ^;金管も聞こえてはくるのですが、バランスは異常です。バンダのホルンがミュートをしているような音に聞こえる箇所もあります。
フェドセーエフ恐るべし、こんな演奏もあるのか!この楽章、ある意味白眉です。共産主義には神は存在しないので、「復活」などありえないことなのだ!
バンダのTpも今まで聴いたことがない音だ、フリューゲルホルンでも使ったのか?
突然、聴いたことのないパートが活躍したり、面白い。
ロシア万歳!と歌っているかのようだ、テンポも動いてなかなか聴かせる。
オケよりも合唱が力強い。最後はやっぱりティンパニだけが聞こえました(^ ^;
いやぁ「復活」ってこんなに面白かったんですね。

ロシアは民主化したとはいえ、やはり共産党が支配しているし、あまり宗教色の強い演奏をすると、当局の検閲が入って、地位を脅かされるのだろうか。
映画音楽のような「復活」でした!

オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1971年ライヴ

クレンペラー★★☆
復活の最も遅い演奏として有名な録音です。

一楽章、全く力みの無い弦のトレモロ。特に表情の無い第一主題。第二主題も感情が込められると言う事は無く、淡々と進みます。確かにテンポは遅いのですが、バーンスタインやテンシュテットのようなアゴーギクなどが無いので、音楽と共に体が引き伸ばされたりする感覚も無く、一つ一つの旋律をじっくりと聞く感じが無いので、演奏時間ほどの遅さは感じません。展開部の第二主題も取り立てて美しいと言うような表現では無く、ひたすら淡々と進んでいる感じです。フルートとヴァイオリン・ソロに第二主題が表れる前からかなりテンポが遅くなりました。再現部の第一主題もサラッとしています。コーダの前はとても広大でした。マーラーの複雑なスコアをとてもシンプルにして見せてもらっているような感じがします。コーダはとても遅い演奏でした。

二楽章、ゆったりと落ち着いた安堵感のある演奏です。中間部はとても遅いです。巨大な川が非常にゆっくりと流れて行くようなスケールの大きさを感じさせます。演奏には全く力みが無く自然体のおおらかな演奏です。さらにテンポを落として終わりました。

三楽章、この演奏を象徴するような穏やかでゆっくりなティンパニ。硬くゴツゴツとした音のルーテ。音楽の起伏はあまり大きく無く、どこまでも広がる草原のようです。ただ、テンポが遅い分、音楽の密度も薄まっているようにも感じます。

四楽章、かなり遠くから響く独唱。トリオのヴァイオリンのソロは音が短めでとても淡泊でした。クレンペラーの指揮に比べると感情表現のある独唱。

五楽章、盛大に鳴る銅鑼。打楽器の音の洪水から僅かに顔をのぞかせる金管。タメが無くダラダラっと音楽が流れて行きます。ホルンの動機が出るまでの間はすごくゆっくりとしたテンポです。ホルンの動機以降はよろけるようにテンポが揺れます。第二主題の「復活の動機」も非常にゆっくりとしていますが、あまり緊張感はありません。バンダのホルンとステージ上の木管のテンポの取り方が違うのか、ズレがあります。展開部の前でも、これでもかと言うくらいにテンポが遅くなります。打楽器のクレッシェンドの後も凄く遅いです。練習をしているような雰囲気さえあります。これだけテンポが遅いのに、アンサンブルの乱れも度々あります。再現部冒頭もものすごく遅いですが、音楽はとてもシンプルに聞こえます。作品をこねくり回すことをせずに、そのまま音にするとこんなにシンプルなんだとクレンペラーが言っているように感じます。デッドで近いバンダ。ステージ上の楽器とあまり変わらないので、遠近感などはありません。弱音に力が込められることの無い合唱。シンバルが完全に落ちてしまっています。合唱の音量に比べてオケの音の密度が薄いので、圧倒的なクライマックスとはなりませんでした。

もの凄く遅いテンポの演奏でしたが、深い感情移入などは無く、淡々とした演奏で、巨大な物を聴いたと言う感じはありませんでした。テンポが遅い分、音楽の密度も薄い感じがあって、重量感などもありませんでした。アゴーギクなどの動きが無いので、間延びした感じもあって、ちょっと残念でした。
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渡辺暁雄/日本フィルハーモニー交響楽団

icon★★☆
一楽章、弱めの弦のトレモロの後にホールの響きを伴って力強い低弦の第一主題。響きを伴って分離の悪い低音域と、響きが乗らずに痩せたヴァイオリンなどの高音域。付点が甘いのは山田の演奏と同じでこの頃の日本のオケの特徴でしょう。速めのテンポでグイグイとオケを引っ張ります。 テンポも動いて渡邉の作品への思いが伝わってくる演奏です。テヌートせずに独特の表情付けのあった第二主題。ホルンが弱いので音楽のつながりを欠く場面もあります。ただ、当時の日本のオケの技量からすればいたしかたないとは思います。激しいテンポの動きもあり劇的な演奏です。終結部のテンポの絶妙な動きなども作品への共感が伺い知れます。

二楽章、速めのテンポで開始されました。音楽の動きに合わせてテンポの動きやタメがあって音楽に引き込まれます。アンサンブルの問題は散見されます。

三楽章、表現は抑制ぎみの演奏です。この楽章では端正な表現が聞かれます。ブラスセクションがパワー不足で突き抜けてくることがありません。

四楽章、遠くから語りかけてくる独唱は表情豊かです。テンポも遅めにとってたっぷりとした表現で天国へいざなってくれました。

五楽章、全開ですが、空気を突き破って来るようなパワーはありません。かなり強めに演奏されるホルンのバンダ。ミスは若干ありますが、集中度は極めて高いです。音楽が一点へ向かって進んでいるような一体感があります。バンダのティンパニは思いっきり良くすばらしかった。わりと大きめの音量で始まる合唱は女声の方がバランス的に勝っています。合唱から完全に浮き上がる独唱。合唱が入ってからは遅めのテンポを取ってゆったりと感情込めた演奏になっています。最後はパワー全開でトランペットも突き抜けて来ました。日本の演奏史を知る上で貴重な音源だと思います。

モーリス・アブラヴァネル/ユタ交響楽団

icon★★☆
一楽章、第一主題の頭の音に強いアタックがあってデクレッシェンドします。速いテンポで弾むように進みます。引っかかるところもなくすんなりと進んで行きます。第二主題もあっさりとしています。展開部の第二主題は美しいですが、ここでもあっさりとした演奏です。金管が咆哮することも無く、あっさりと爽やかな演奏です。明るく開放的な響きによるものなのか、とても軽い雰囲気で深刻さなどは微塵もありません。再現部も速いテンポでどんどん進みます。表現に粘り気は無く、あっさりとしています。コーダの葬送行進曲も軽く明るい雰囲気で重い響きはありません。

二楽章、この楽章も爽やかにあっさりとした演奏です。テンポの動きやタメなどもあまりありません。二回目の主部はチェロの対旋律がかなり強調されています。

三楽章、マットなティンパニはあまり強打しません。表現はあるのですが、遠回しに言うようなとても奥ゆかしい表現です。オケが爆発することも無く、かなり情報が整理されているようで、余計な音はあまり聞こえてきません。響きも浅いような感じがします。

四楽章、控えめでこもったような金管のコラール。独唱も残響が少ないのか、生の声のようで深みがありません。

五楽章、伸ばす音をデクレッシェンドするトロンボーン。やはりここでもオケは全開ではありません。残響を伴ったバンダのホルンはなかなか雰囲気が良いです。やはり軽い演奏です。第二主題もテンポが速く素っ気無い感じです。音は短めに演奏されることが良くあり、合いの手で入る楽器が弱く、マーラーのオーケストレーションを再現しているとは思えません。打楽器のクレッシェンドの後もテンポの速い演奏であまり落ち着きの無い感じでした。再現部のバンダはどちらも響きを伴って良い距離感です。合唱も暗く重い雰囲気は無く軽く明るい歌唱です。幕の内側で歌っているような合唱が突き抜けてきません。最後まで全開になることは無く、軽く明るく演奏されました。

マーラーの演奏に何を求めるかによって評価が分かれる演奏だと思います。とても軽く明るい演奏で、マーラーのドロドロしたものは表現されませんでした。
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ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★☆
一楽章、軽く密度の薄い感じの第一主題。金管も軽く鳴ります。第二主題もとてもあっさりとした表現で粘りません。展開部の第二主題はやはりあっさりとしていますが、朝もやの中から響いて来るような神秘的で美しいものでした。テンポを遅める部分もありますが、基本的には速めのテンポで、あまりタメたりアゴーギクを効かせたりすることは無く淡々と進みます。金管も咆哮するようなことは無くかなり余裕を持って整然としたアンサンブルです。

二楽章、舞曲風で優雅です。テンポは速めですが、録音にもよるのか、ゴリゴリとした感じは無くフワッとした柔らかい肌触りです。テンポが揺れることも無く感情移入するような感じは全く無く作品そのものを聞かせています。

三楽章、この楽章も速めのテンポですが、シルキーで美しい弦と滑らかな木管。弦には少し大きく強弱の変化が付けられています。中間部のトランペットも軽いです。最後に中間部の主題が現れて盛り上がる部分で大きく歪みます。

四楽章、けがれの無い神聖な響きの金管。この演奏で初めてたっぷりと歌ったオーボエ。

五楽章、かなりのエネルギーを放出しているような第一主題ですが、音があまり前に出て来ません。適度な距離感はありますが、残響が少ないバンダのホルン。それに続く部分から第二主題にかけてはテンポが速いです。力強い金管のコラール。展開部冒頭はホルンもトランペットもとても軽く演奏します。余分な音は削ぎ落とされているような感じで、マーラーの複雑なオーケストレーションを聞くことはできません。このように分かりやすく聞かせるところはオーマンディの特徴なのかも知れませんが・・・・・。歪みが激しくなって来ました。かなり静かに入る合唱ですが、ここも淡々としています。二重唱で一旦テンポを落としてそのまま壮大なクライマックスかと思いきや、また少しテンポを上げてのクライマックスです。クライマックスはずっと歪んでいます。

感情移入はせず、無駄な音は削ぎ落として、かなり単純化して聞かせた演奏のように感じました。オケもほとんどの部分で余裕を残した演奏でした。トゥッティで歪むところも残念でした。
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マーラー 交響曲第2番「復活」11

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

オットー・クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団&合唱団

icon★★
翌年のライブで独特の境地を聞かせてくれたクレンペラー。
前年のスタジオ録音ではどんな演奏をするのでしょうか。

一楽章、ライブの時には拍子抜けさせられた冒頭部分だが、この録音では普通に緊張感と力を伴った演奏です。
あのライブとは全く別人のようなシャキッとした演奏に聞こえるのは、録音の違いなのか?
テンポの運びや誇張のない演奏はやはり、基本的な解釈は同じなのか?
金管の鳴らしっぷりなどはメリハリがあるけれど、基本的には翌年のライブと同一解釈のようです。
でも、ライブとは違うダイナミックさが魅力的な演奏になっています。

二楽章、以外に粘っこい。テンポを落とすところも遅くなるし、ffの部分でもかなり強めな感じで、この楽章の違う一面を見せられたようです。

三楽章、ここまでティンパニにはあまり強打させません。金管にはかなり吹かせているのですが、ティンパニの強打は、嫌いなのか?
やはり、ライブの演奏よりかなり粘っこい演奏です。あのライブはいったい何だったんだ?

四楽章、二楽章の粘っこさとは対照的に、あっさりした演奏。テンポも速い。クレンペラーはこの楽章にはあまり価値を見出していないのか?
独唱にもあまり感情移入させないように指示したような、欲求不満になりそうな演奏でした。

五楽章、この楽章はテンポがかなり動きます。クレンペラー自身、マーラーの交響曲の中でも好き嫌いがかなりあったようですが、この復活でも、楽章によって思いいれがかなりバラツキがあるのではいかと思えてくるのですが・・・・・・。
それぼど、作品に対する指揮者の立場が強かった時代の演奏ですね。デフォルメいっぱい、あまり気の乗らない楽章は、その気持ちをストレートに演奏に出してしまう。
サービス精神なんて、全くない。だからこそ、強い個性の主張があるのでしょう。
最近では、少なくなったタイプの演奏です。
最後は、ちょっとせっかちな終わり方で、ん~・・・・・・。

基本的に、タメがほとんどないので、素っ気無い演奏に聞こえてしまいました。

エリアフ・インバル フランクフルト放送交響楽団

icon★★
一楽章、予想していたよりもデッドな録音。それでもブラスセクションの伸びのある響きはさすが。美しい音で録られています。堅実な足取りで音楽は進んでいく。しかし、音の密度と集中力は凄いものを感じます。
細部まで克明に録られていますが、それを強調することなく、自然に!聴こうと思えば細部も聴けるというように、押し付けてくるようなことは決してありません。音楽の運びとしては、自然体な感じですが、作品の本質を描き出そうとするような、細部にわたって細心の注意を払って演奏しているようです。オケにも余裕があり、決して暴走するような危うさは全くありません。極めて均整の取れた演奏だと思います。

二楽章、わりとゆっくりめの演奏です。でも、ほとんどねばることなく、あっさり。今まで聞いてきた中でいちばんあっさりとした演奏でした。

三楽章、抑制のきいた演奏で、弦楽器を中心に音楽が作られていて、金管がかぶってくることがありません。バランスやアンサンブルにもすごく配慮した異色の存在かもしれません。

四楽章、オケの音色や録音の良さにも影響されているのかもしれないが、清廉潔白で毒々しいところなど一切ない。

五楽章、冒頭も十分にオケは鳴っているのだが、余裕も十分。こんなに余分な力が抜けている復活も初めてだ!淡々と進んでいるんだが、何か不思議な力が働いているような何とも言えない特別な感覚。バンダはかなり近め。テンポも速め。ところどころで、インバルの唸り声も収録されている。
インバルは、この作品から距離をおいて、これまでの名演奏にもとらわれることなく、極めて冷静に「復活」を再構築したのだ。これまで聴いてきた演奏とは明らかに一線を画している。

聞き手の予想を見事に裏切るテンポ設定。オケのパワーは凄く、最後には、盛り上がるのだが、手に汗握るような高揚感ではない。
この大曲をクールにシャープにやってのけたインバル。復活の演奏史に一石を投じたことは間違いないだろう。

ユージン・オーマンディ クリーブランド管弦楽団

★★
セルが鍛え上げたクリーブランド管弦楽団をオーマンディが指揮した貴重なライブ録音。
セルがベルリンpoに客演したときのエピソードとして残っているのが、当時ベルリンpoの主席ホルン奏者のゲルト・ザイフェルトに対して「君の音はダレている」と言ったという。
あの豊かな響きのザイフェルトの音をけなしたセル。
そして、オーマンディと言えば、あの有名なフィラデルフィアサウンドと言われた豊麗なサウンド。セルが好んだ引き締まった音とは正反対の、ちょっとグラマーなサウンドを好んだオーマンディがクリーブランドとどんな演奏を繰り広げるか楽しみな一枚です。ただ、オーマンディにはメッセージ性の強い作品はあまり得意ではないような固定観念を私が持っているので、そのあたりもどうなるのか楽しみです。
チューニング音から開始します。そしてオーマンディが入場して拍手も録音されています。

一楽章、これはクリーブランドの音だ!室内楽のような小さい編成で演奏しているかのような錯覚さえしてしまうほど、デッドで締まった音です。速めのテンポで音楽は進んでいます。録音のせいかffで若干混濁するような音です。すごく古めかしい音をきいているような感じがします。
オーマンディの指揮はほとんどの部分で速めのテンポをとります。やはり、水と油なのでしょうか。どうもしっくりこないようで、オーマンディ好みのサウンドが作れていないので、オーマンディ自身の作品に対する集中力も散漫なような感じがします。

二楽章、淡々と音楽は進んで行くのですが、音符に対する執着があまりないような、少し雑な演奏です。表現も淡白、音も雑で聴いていて楽しめません。消化試合をしているかのような・・・・・・・。

三楽章、この楽章もテンポは速めです。あまり乗れていないです。空気が緩い。張り詰めたような緊張感とは程遠い空気です。録音のせいなのでしょうか。

四楽章、ここでも淡白な音楽が流れて行きます、この直前に聞いたのがアバド、シカゴsoの演奏だったので、細部まで磨き上げた演奏とはあまりに落差が大きいです。この独唱も聞かせどころもなく、天国的にもならずに終ってしまいました。

五楽章、間やタメも私の感覚にはなじまない。
最後は盛大に盛り上がった。

オーマンディはこのコンサートで何をしたかったのだろうか。残念ながら私には共感できる部分はほとんどありませんでした。

レオポルド・ストコフスキー ロンドン交響楽団

★★
ストコフスキーといえば、有名なチャイコフスキーの5番の終楽章の全休符をカットしてしまうなど、強烈なキャラクターの持ち主というイメージなのだが、この復活ではどんな演奏をするのでしょうか。楽しみです。

一楽章、フワッとした弦のトレモロと自然体の低弦からの開始。かなりゆっくりとした足取りです。ホルンのゲシュトップが長めに演奏されている。
予想していたより、ねばることもなく、極めて自然な音楽の流れです。しかし、これまで聴いてきたCDでは聞こえてこなかった音がたくさん聞こえてきます。
少しオフぎみに録られてる録音がかえってギスギスすることなく、スケール大きく感じさせてくれます。全体がまとまって、美しい演奏です。
終始、ゆっくりした足取りと思っていたら、急激なaccelがあって、また何も無かったかのように元のテンポに戻るあたりはさすがストコと唸らせてくれます。
同じロンドンsoのバーンスタインの演奏も非常にテンポの遅い演奏でしたしすばらしい演奏でしたが、このストコの演奏は老獪さが加わって、力みが無い分、オケのまとまりが良くて美しい。アンサンブルは時折乱れるのですが・・・・・。

二楽章、この楽章は中庸のテンポでの開始です。アンサンブルはよく乱れます。
最晩年のストコフスキーの指揮は分かりにくかったのでしょうか。

三楽章、冒頭からaccel、この楽章は少し速いテンポです。ここでもアンサンブルは乱れまくります。しかし、不思議な求心力がある演奏で、聴いている方は散漫にはなりません。チューバがかなり存在感を発揮しています。
何か「間」の取り方に独特なところがあるようで、その部分でアンサンブルが乱れるようです。

四楽章、この楽章も速いです。もう少しゆっくりと音楽を味わいたいと思うのですが・・・・・。
どんな意図があって、このテンポを採ったのか、ちょっと理解できませんでした。ファスベンダーも歌いにくそうにしていたように感じたのですが・・・・・・。

五楽章、ん?バンダがもしかしてステージ上に居るのでは・・・・・・・?ついにストコ節か?
それにしても乱れる。
金管のコラールも速い。もっと味わいたいのに、なんでこんなに?
どうなっているのかと思うほど、すごいアンサンブルの乱れです。通常のロンドンsoでは考えられない。
やはり、バンダはステージ上だと思う。こんなにリアルなバンダは初めて聴いた。

やってくれましたストコ先生!ステージ上のパートよりもバンダの音がでかいなんて、ありえない!!!!。こんなことを大真面目にやれるのは、あなたをおいて他にはいません。
なんか、いろいろやらかしているようだ、今度スコアを見ながら聴いてみよう(^ ^)

ヴァーツラフ・ノイマン チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★
一楽章、速いテンポの冒頭。第二主題も速目のテンポであっさりとした表現です。展開部から一般的なテンポに落ち着きました。それでも少し速目か?ここまで、特にねばることもなく淡々と音楽が進んで行きます。金管の咆哮もなくただ淡々と流れて行きます。展開部の後半はパウゼをしっかり取ったり、テンポも遅くなりました。再現部からはまた速いテンポの演奏です。あまりにもあっけらかんとしていて拍子抜けします。

二楽章、この楽章も速目のテンポで行進曲のようにさえ感じます。アゴーギクもほとんどありません。

三楽章、ルーテの音が強調されています。クラリネットの滑らかなソロ。余裕を持って演奏されるトランペット。ダイナミックレンジが狭く平板な演奏が次第に不満になってくる。

四楽章、美しいコラール。音楽に合わせて、少しタメがあったり少し急いだりするようなことはほとんどありません。あくまでもインテンポ。独唱もあっさりと演奏されました。

五楽章、めずらしく遅めのテンポの冒頭。金管のトランペット以外が録音のせいか、奥まっていて突き抜けてこないので、演奏のダイナミックさが伝わってこないのか・・・・。とても近いバンダのホルン。この曲は消え入るような静寂と爆発するような最強音の対比が一つの聞き物だと思うのですが、バンダがこれだけ近いと、消え入るような静寂感は期待できません。また、テュッティの一体感が無く、怒涛のようなマッシブなパワーが伝わってきません。打楽器のクレッシェンドもテンポが速くあっと言う間に終ってしまいました。合唱の出だしもほどほどの音量で始まりました。こちらがぐっと身を乗り出して聞き入るような緊張感が感じられません。合唱が入ってからはたっぷりと演奏されましたが、何か集中力が無く散漫な感じがしました。

スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団

icon★★
一楽章、速いテンポの第一主題。第二主題の前ではテンポが遅くなりました。アゴーギクを効かせて表情豊かな演奏です。ティンパニのクレッシェンドも強烈!テンポもすごく動きます。かなり劇的な表現です。弱音部分は独特の雰囲気があってなかなかロマンチックです。強奏部分で突き抜けてくるトランペット!再現部の直前で大きくrit。強烈に吹きまくるブラスセクション。音楽の振幅も広くなかなか面白い演奏です。最後はこねくり回すように遅いテンポの演奏でした。

二楽章、主題のところどころにアクセントがつけられていて、ちょっと落ち着きの無い演奏です。終始何かに追われているかのようにせかせかとした感じでした。

三楽章、速いテンポですが表情はとても豊かです。

四楽章、今まで聞いたことのないような明るい声質のメゾ・ソプラノ。発音もおかしい、ロシア訛りか?歌い回しも何かしっくりこない。

五楽章、やはり突き抜けて来るトランペット。他のパートはバランスが取れていますが、トランペットだけが浮いてしまう位強く演奏されます。バンダのホルンが異様に近い。ファゴット、クラリネット、フルートと引き継がれる旋律の陰でバンダのホルンが演奏する部分はすごくテンポが落ちて、バンダのホルンはほとんど聞こえないくらいでした。金管のコラールはバランスの良い演奏でした。展開部からは金管、打楽器大活躍です。打楽器のクレッシェンドの直後のトロンボーンも下品に吹きまくる。バンダのトランペットはミュートをしているようだ。極端に音量を落とすことなく歌い始める合唱。安っぽい音のトライアングル。突然合唱が音量を上げて、音を短めに演奏しました。普段聞き慣れている復活の演奏とはかなり違います。緊張感の無い合唱ですかなりアンサンブルが乱れます。二重唱がかなり強調されて浮き上がっていました。テンポもかなり遅いです。オケと合唱のアンサンブルも乱れます。最後もトランペットが強調されていました。全体に緊張感と統一感に欠けた演奏だったように思います。悪く言うと、支離滅裂!

ヘルベルト・ケーゲル ライプツィヒ放送交響楽団

icon★★
一楽章、第一主題にもちょっとした動きがあります。第二主題もテンポが動きました。テンポはすごく速くなったりすごく遅くなったり急展開します。展開部の第二主題は平板な印象でした。ふくよかさは無く細身のホルン。フルートの第二主題はちょっと変わった歌いまわしでした。展開部の終わりにかけてはかなりテンポが速くなりました。ティンパニの強打で他のパートが聞こえないくらいになります。再現部の第二主題はとても美しかった。テンポはすごく動いて積極的な表現をしようとしているようなのですが、何を意図しているのかちょっと分からない。

二楽章、とても落ち着いた雰囲気です。フルートのミス。これまでミスは散見されました。ライヴなのである程度はいたしかたないでしょう。途中アッチェレランドしたのですが、パートが変わるごとに急に早くなるような統一感のないアッチェレランドでした。速くなるところが速すぎて落ち着かない。ケーゲルは即興的にテンポを動かしているのか、オケのアンサンブルが崩れる場面もあります。

三楽章、硬く余韻のないティンパニ。ヴァイオリンも木管も歌います。金管の音量が不足しているのか、トランペットなども届いて来ません。ティンパニに完全に負けています。金管が詰まったように前に出てこないので、音楽の起伏に乏しく、平板な印象になります。

四楽章、とてもマイクに近い独唱。アルトらしい太い声です。最後まですごい存在感でした。

五楽章、硬いティンパニの上に初めて全開のトランペットが響きました。すごくナローレンジで古いラジオのようなバンダのホルン。良く歌う木管の第二主題。トロンボーンはビブラートを効かせていたが途中で音が途切れてしまいました。トロンボーンの一番だけが浮き上がるコラール。展開部ではかなり熱くなってきたような雰囲気が感じ取れます。ただ、ミスは頻発します。再現部もティンパニが威勢よく、トロンボーンが隠れ気味でした。静まってからのバンダが出てからは凄く速いテンポです。オケのマスの響きが硬く、編成が小さいように感じてしまい、スケール感に乏しい演奏になってしまっています。比較的大きめで入った合唱。そもそもこの演奏には消え入るような弱音の緊張感はありません。速いテンポでどんどん進んで行きます。最後は大絶叫でしたが、せっかちで集中力もあまり高くなく散漫な演奏だったように感じました。

ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★
一楽章、とてもシンプルな第一主題。ホルンのゲシュトップなども聞こえずとてもすっきりと整理された演奏に感じます。第二主題にもすんなりと入り、しかもテンポが速くあまり思いいれを感じさせません。テンポは動きますが基本的には速めのテンポで複雑に絡み合う要素もバッサリと切り捨てて演奏しているような感じがします。展開部の第二主題も速いテンポです。径の小さいシンバルがこの曲に不釣合いです。オケも熱くなることはなく、冷静に音楽が運ばれて行きます。ドラがほとんど聞こえない。聞こえてもとても軽い音であまり効果がありません。

二楽章、穏やかで伸びやかな旋律が幾重にも重なって広がって行きます。中間部も刺激的な事はなく、暖かく穏やかです。中間部の再現でもアクセントなども丸く角を落としたような演奏で極力刺激を避けているようです。

三楽章、ソフトなティンパニ。二楽章とは打って変わってとても表情の豊かな演奏で、木管や弦のアクセントの表現も厳しいです。でも全体にはソフトで暖かい演奏です。金管も限界近い強奏はしません。かなり余裕のある音量の範囲で柔らかさを保っています。編成の大きさの割りに小さいシンバルを使っているのがとても不自然で気になります。ルーテもほとんど聞こえませんでした。

四楽章、金管の間奏はテンポを速めました。独唱は太く柔らかい声です。中間部もテンポを速めてタメなどもなくあっさりと進みます。独唱は最後少し苦しそうでした。

五楽章、絶叫する第一主題。これまでの楽章とは様相が違うようです。距離はあるけれどあまり間接音を伴わないバンダのホルン。第二主題は非常に抑えた音量で静かに演奏されます。バンダのホルンの高音部分はトランペットで代用しました。金管のコラールは美しく歌いました。展開部もオケはかなり頑張っています。打楽器のクレッシェンドはすごく短くあっと言う間でちょっとあっけない感じでした。行進曲調になったところでトランペットがかなり強奏しますが、明らかに二人で演奏しているのが分かるようなアンサンブルです。バンダのトランペットはステージ裏にいます。「巨人」ではミュートで代用したのはなぜだったのでしょう。再現部でもかなりの絶叫です。舞台裏のトランペットも間接音が少ない録音で、奥行き感があまり感じられません。テンポが速めで間を取ることもほとんど無いので、表現がとても淡白に感じます。すごく抑えた合唱が次第に音量を上げて行き、独唱が入ります。合唱の合間に入るオケがとても太く存在感の大きい演奏です。合唱の部分でアッチェレランドをかける場面もありました。バランス的にはトランペットが強調されていて、トランペットが登場すると他のパートとのバランスが崩れてしまいます。

マーラーの複雑なオーケストレーションの細部をバッサリと切り落としてしまって、表現も淡白で、ワルターがこの作品に共感していたのか疑問に感じました。

アラン・ギルバート/ ニューヨーク・フィルハーモニック

アラン・ギルバート★★
一楽章、ドゥダメルの演奏に比べるとすごく人数が少ないようなコンパクトな響きの演奏です。きっちりと整ったアンサンブルですが、音楽が前に進むような力強さはありません。第二主題に入る前に少しテンポを落としましたが淡々と演奏される第二主題。展開部の第二主題はさらにテンポを落として演奏されましたが、音は短めに演奏されていて、メロディのイメージとは合わない表現でした。陰鬱な雰囲気が全体を支配しています。フルートの第二主題はとても良く歌いました。浅い響きのホルン。展開部が終って拍手が起こります。ギルバートの指揮は、特に作品への共感を表すような演奏でも無く。かと言って作品の構造をあからさまにするような演奏でも無く、中途半端な印象を受けました。

二楽章、速めのテンポであっさりと演奏される主題。テンポも大きく動くことはありません。中間部でも他のパートとは違い朗々と歌うフルート。トランペットやトロンボーンに比べると極端に奥行き感の乏しいホルンが異質に聞こえます。二楽章が終って拍手です。

三楽章、あまり強打しないティンパニ。強弱の変化などの表現は控え目です。鋭いトランペットの強奏。強奏部分ではニューヨークpoのパワーが炸裂しますが、弱奏部分の表現が乏しく緩い演奏に感じます。

四楽章、穏やかな歌い始め。この演奏同様、あまり感情が込められていない独唱。最後まで控え目でした。

五楽章、軽く演奏された第一主題。打楽器のクレッシェンドも控え目でした。残響をあまり含まないバンダのホルン。木管の第二主題は僅かにスタッカート気味です。良く歌う金管のコラール。展開部の手前で少しテンポを落としました。テンポの動きもあまり無く、起伏も大きくはありません。表現の濃厚さもありませんし、響きも浅く音楽が少し平板な感じがします。ゆっくりとしたテンポの再現部。比較的大きめの音量で歌い始める合唱。最初のソプラノ独唱が入る部分では合唱を抑えて浮き上がらせましたが、合唱とのハーモニーが聞き取れませんでした。合唱の合い間に入るオケの演奏に流れが無く音楽が停滞しているようです。クライマックスでは充実した響きを聴かせてくれました。

感情移入もあまり感じられず、音楽の起伏にも乏しい演奏で、ちょっと残念な演奏でした。
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オトマール・スゥイトナー シュターツカペレ・ベルリン

スゥイトナー★★
一楽章、ためたエネルギーを放出するように勢いを付けて開始したトレモロ。エネルギー感のある第一主題。スゥイトナーの演奏らしく、透明感の高い、端正な演奏です。弦もとても美しい。とても堅実な足取りです。展開部の第二主題もあっさりと端正です。作為的な部分は全く無く、作品自体に語らせるような演奏スタイルです。細身で艶やかなヴァイオリン・ソロ。展開部の第一主題の後はかなりテンポを速めています。時折テンポを落とす場面もありますが、そこはスゥイトナー、決してドロドロにはならず品良く冷静な演奏をしています。再現部はゆったりとしたテンポで美しく歌います。まるで、この世の未練を表現しているような非常に美しい演奏です。コーダもゆっくりと進みます。最後は早くなって終わりました。

二楽章、速めのテンポであっさりと演奏しています。作品をこねくり回すようなことは一切しません。とてもストレートな表現の演奏です。繊細で美しい弦。

三楽章、軽いティンパニ。極端な強弱は付けずに、すんなりと流れていく主題。控え目で奥ゆかしい表現です。作品に対して構えることもなく、これ見よがしに金管を咆哮させることもなく、自然体でとても落ち着いた演奏を続けています。

四楽章、陰影を伴った独唱。遠くから響くような金管のコラール。

五楽章、整然とした第一主題。かなり近くて音量も大きいバンダのホルン。速めのテンポで演奏される第二主題。トロンボーンも遠く美しい。金管のコラールも遠くから響くような控え目な表現です。展開部でも絶叫することはなく、とてもバランスの良い演奏です。打楽器のクレッシェンドも短くあっさりとしていました。間接音を含んで豊かな響きのトランペットのバンダ。比較的大きめの音量で始まった合唱。合唱から浮かび上がる独唱も飛びぬけたバランスにはならず、合唱の響きから僅かに顔を出す程度でした。オケと若干ズレる男声合唱。最後のクライマックスも圧倒的な音量感は無く、バランスと美しさを重視した演奏のようです。

真面目、正直な演奏で、ちょっと退屈でした。
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ヴァシリス・クリストプロス/アテネ国立管弦楽団

★★
一楽章、低域が薄い第一主題。第二主題も速めのテンポであっさりと進みます。展開部の第二主題はテンポを落としましたが、感情を込めると言う表現ではありません。再現部の前も軽い感じでした。とてもあっさりと淡々と進む音楽です。

二楽章、この楽章も速いテンポで、どんどん進みます。速いテンポをさらに煽ります。こんなにテンポが速くあっさりした演奏は初めてです。

三楽章、この楽章は速くありません。表情は付けられていますが、強弱の変化も中途半端で、迫ってきません。アンサンブルの乱れもあります。また、細部の曖昧な部分もあります。表現はしていますが、音に力が無くとても淡白に聞こえます。

四楽章、この楽章も速めのテンポで、深く感情を込めることはありません。独唱の声質も浅いです。

五楽章、金管の第一主題が強く、他のパートはあまり聞こえません。打楽器のクレッシェンドも弱かったです。大きめの音量のバンダのホルン。あっさりとした第二主題。バンダのホルンの最高音はトランペットで補強されていました。壮大な展開部。打楽器のクレッシェンドの前のトランペットは不安定でした。再現部の前のバンダの部分も速かった。合唱の入りも思いいれの無いかのように速いテンポであっさりとしています。ちょっと癖のあるソプラノ独唱。クライマックスも速いテンポです。オケのパワーもそんなに無く、あまり感動もありませんでした。

とても淡々とした速いテンポで、思い入れも無い演奏で、オケの響きにも取り立てて美しいものも感じられない演奏で、あまり惹かれるところはありませんでした。
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ウィン・モリス/シンフォニア・オブ・ロンドン

モリス★★
一楽章、すっきりとしていてバネのある第一主題。鋭角な響きで第二主題も感情移入も無くストレートに音楽が進んで行きます。低弦の三連符は速いテンポで始まり次第にテンポを落として行きました。展開部の第二主題もあっさりとしていて特に美しい響きではありません。第二主題がフルートに出る前はゆっくりなテンポになりましたがやはり感情が込められた感じはありません。第一主題が出てから大きくテンポを落とし再現部まで続きます。モリスの演奏は8番と9番でも思ったのですが、必然性が無く遅い気がします。再現部からコーダにかけても遅いです。

二楽章、この楽章は遅くありません。自然なテンポで進みますが、やはり感情を込めた歌はありません。最後の主部の再現のピツィカートもゆっくり始まってその後少しテンポを上げました。大きな表現や仕掛けは無いのでサラッと聞き流すことはできますが、作品の性格からして、このような演奏で良いのか、ちょっと疑問になります。最後もすごく遅くなりました。

三楽章、ソフトなティンパニ。この楽章も遅めのテンポです。中間部のトランペットはスッキリとした爽やかな響きです。テンポが遅めな以外は作品をストレートに表現していて聞きやすい演奏ではあります。シンフォニア・オブ・ロンドンと言うオケの実態も分かりませんが、聞いている分にはなかなか上手いです。

四楽章、響きが薄い金管のコラール。

五楽章、ドラが鳴ってから間を置いて金管が入ります。この金管の主題もとても遅いです。距離はありますが、残響をほとんど含まないバンダのホルン。ここから少しテンポは速くなり普通のテンポになります。第二主題も普通のテンポですが、やはり感情移入のあるような表現はありません。展開部の直前のクレッシェンドでスネアのロールを一旦止めてまた入り直します。展開部もゆったりとしていて、絶叫もしません。極端に遅い部分はありますが、演奏自体は整っています。再現部冒頭もかなり余力を残した演奏です。比較的大きめに入る合唱。テンポはここまでの演奏に比べると速めです。最初の独唱が入ってしばらくするとホルンがマルカートぎみに強めに入ります。合唱は次第に音量を上げます。クライマックスはここまでたびたび遅いテンポを取ってきたのに、以外にあっさりとした速めのテンポです。

極端な遅いテンポを取る部分もあったりしましたが、特に大きな表現があったりはしませんでした。最後のクライマックスきその遅いテンポで濃密な演奏を期待しましたが、以外にも速めのテンポであっさりとした演奏で、何を表現したかったのか分かりませんでした。
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ジャン=クロード・カサドシュ/リール国立管弦楽団

カサドシュ★★
一楽章、ソフトな弦のトレモロ。第一主題も落ち着いた割と穏やかな演奏です。音楽はあまり大きな起伏が無く平板な感じです。第二主題もほとんど表情が無くあっさりとした演奏でした。展開部の第二主題は提示部よりも少し表情がありましたが、音色は大きな変化はありませんでした。フルートに第二主題が出る前のミュートをしたトランペットでかなりゆっくりになりました。それにしても厚みの無い響きです。再現部の前のリズムはとても軽い感じでした。最後はゆっくりでした。

二楽章、ゆっくり目ですが、やはりほとんど表情の無い主題。中間部もあまり大きな表現は無く淡々と流れて行きます。遅めのテンポで作品の美しさを聞かせようとしているようですが、オケがとても美しい演奏をしている訳ではないので、今ひとつ魅力を感じません。

三楽章、速めのテンポですが、滑らかな感じはありません。強弱の変化も緩く締まった感じもありません。アンサンブルも緩くバラバラになりそうなところもありますが、大きな主張が無い分サラッと聞き流すことはできます。この楽章はテンポの動きは結構あります。

四楽章、offぎみで少し痩せた声質の独唱。

五楽章、あまり印象に残らない第一主題。音量が大きめのバンダのホルン。第二主題は少し感情が込められていました。明るい音質のトロンボーン。暗い音質のトランペット。大きく歌う金管のコラール。展開部は僅かに抑えた感じで、シンバルが小節を間違っています。金管のブレスで音が途切れることもあります。再現部も全開ではありません。その後の弱音部分でもアンサンブルは怪しいです。こもった響きのバンダのトランペット。静かに歌い始める合唱。オケと合唱のバランスを保っているようでオケは絶対に全開にはなりません。

かなり軽い演奏でした。表現を押し付けることも無く、全開にもならない演奏で、イヤみはありませんでしたが、アンサンブルの乱れは結構ありました。
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マーラー 交響曲第2番「復活」12

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

ギルバート・キャプラン ロンドン交響楽団

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復活のエキスパート、と言うべきか。復活しか指揮しないキャプランによるデビューCDである。
ストコフスキーの復活のコンサートに衝撃を受けて、復活を指揮することを夢見、それを実現したすばらしいモチベーションの持ち主である。
一方で経営者としての才能もあり、このCDはベストセラーとなった。
アマチュアの弱みを「復活」に特化させることで、見事に補ってベストセラーを生み出すと言う、プロモーションとしても、さすが。
また、スコアとパート譜の矛盾点などについても徹底的に研究しているなど、まさにプロ裸足のところも持っている。
演奏の方は、ロンドンsoの上手さも手伝って、特に不満のある演奏ではないが、印象にも残らない。

一楽章から、淡々と進む、オケも力むような部分は皆無と言って良いほど楽に演奏しているようにきこえる。テンポも大きく揺れることもなく、これといった聴き所もない。
クラッシュシンバルが異常に近い、サスペンドシンバルは適度な位置にいるのに・・・・・。

二楽章も淡々と進む。オケの楽員もキャプランの解釈に共感していないのではないだろうか?もっと凝縮された緊張感があってもよさそうなものだけど・・・・・。

三楽章も速めのテンポで進む。表現の振幅があまりないので、演奏と向き合うような聞き方ではなく、BGM的にながれて行く。テンシュテットやバーンスタインのような強烈な演奏の場合は、聞く側にも、それなりの緊張感も要求されるが、キャプランの演奏の場合、なんとなく音楽が流れている感じなのだ。この楽章でも、オケは決してムリはしない。余裕の演奏。

四楽章、美しい独唱だ。

五楽章もオケはムリをしないし、音の密度も希薄に感じてしまう。どこをとっても、すでに他の演奏で聞いた範囲内に収まっているので、聞いていて「おっ!」とか「え?」とか、良い意味でこちらの予想を裏切ることがないのだ。終始安全運転が続く。キャプラン自身が百戦錬磨の指揮者ではないので、オケを引きずり回すような指揮を期待するのもムリではあるのだが、やはり、ちょっと物足りない。
そして、もっとも好きになれないのは、オケの音の密度が薄いからなのだ。これは、楽員たちがキャプランを尊敬していないからではないかと思う。散漫で集中力に欠ける演奏なのだ!
これが、彼の芸風だと言われればそれまでなのだが、ウィーンpoとの再録音も出てはいるが、買う気には到底なれない。
キャプランの作品への共感も分かるし、いろんな研究をしていることも分かる。
しかし、この共感は、マーラーと同等の立場(作曲者と演奏家)での共感ではなく、マーラーの奴隷になっているのではないかと感じてしまうのは、私の聞き方の問題だろうか。
作品への共感があり、指揮者の強い意思が、楽員に高度な要求をして、そのせめぎあいの中から名演奏が生まれてくるのではないだろうか。
マーラーの作曲意図を忠実に再現しようと言う気持ちが強すぎて、キャプラン自身の主張が感じられない。キャプラン自身が感性に従って演奏したのではなく、「楽譜上、こうしなければならない」というのに支配されていて、聞いていてこちらが感情的に盛り上がらないのだ。

これだったら、楽譜の指定を忠実にパソコンに打ち込んでコンピュータ演奏させれば良かったのではないかとさえ思う。その方が完成度は高かったであろう。
録音は、クラッシュ・シンバルが強調されていて、かなり強烈です。また、中低域が薄いために響きが渇き気味に聞こえてしまうのも惜しいところです。

ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

ケンペ★☆
一楽章、ゆっくりと穏やかな第一主題。金管が副付点を演奏するころにはテンポが速くなっていました。第二主題もあっさりとした表現です。角張った部分の無いとても滑らかな演奏ですが、何か物足りないような感じもします。展開部の第二主題は凄く抑えたヴァイオリンの第二主題から始まりました。金管も軽く演奏させていてとてもソフトです。フルートに第二主題が現れ、続くヴァイオリン・ソロはねばりがあり艶やかでした。一般的な荒れ狂いのた打ち回るような第一楽章のイメージとはかなり違います。静かで穏やかで屈折していません。

二楽章、この楽章でも穏やかな弦の主題です。この演奏は「動」と「静」で言うならば、まさに「静」です。動きや躍動感など、生命観はほとんど感じることはできません。

三楽章、軽いティンパニ。表情が付けられたヴァイオリンの主題。遠くにいるクラリネット。音楽にはそれ程起伏もなく、比較的一本調子で流れて行きます。金管も遠くに配置されており、中間部のテンポが遅くなる部分のトランペットはとても美しい演奏でした。最後はテンポを落としてたっぷりと演奏しました。

四楽章、とても心のこもった独唱です。

五楽章、インパクトの後すぐに音を消した銅鑼。録音のせいなのか、常に金管は控え目に響きます。そのために音楽に深い彫りが刻み込まれることが無いように感じます。遠くで広がるホルンとステージ上の木管の対比はなかなか良かったです。テンポもほとんど動かず、タメや間などが無いので、さらに平板に感じます。展開部のホルンは肩透かしでした。再現部の前あたりからトランペットがかなり強く吹くようになって来ました。チェリビダッケが首席指揮者に就任してからの、透明感の高く非常に精度の高い演奏とも違います。かなり大掴みな演奏で、細部にまで神経が行き届いた演奏ではありません。すごく抑えられた合唱です。合唱が入ってからはかなりたっぷりとした表現です。終盤で一気にテンポを速め次にritしましたが、最後で金管のふんばりが効きません。何か間の悪い演奏だった気がします。
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ウイリアム・スタインバーグ/ボストン交響楽団

スタインバーグ★☆
一楽章、低域が薄く、しかももぞもぞとした第一主題。速いテンポでタメも無く割と無造作に進みます。第二主題も思い入れの無いような速い演奏です。展開部は幾分テンポを落として演奏しますが、やはりあっさりとしています。速いテンポだと思ったら途中で急にテンポを落としたりするところは、一時代前の演奏だなと感じさせます。第一主題が出た後はゆっくりです。オケは咆哮するようなことはありませんが、ティンパニは激しく叩きます。再現部の前もかなり速かったです。コーダの前はねっとりとした表現で味わい深いものでした。

二楽章、ほとんど間を取ることなく、息の長い音楽を演奏しています。中間部も三連符の刻みが前へ前へ進もうとします。二回目の主部は速いですが、チェロの対旋律を十分に聞かせてくれます。中間部の再現もすごく速くあまり味わいなど感じません。

三楽章、少し表情のあるヴァイオリンの主題。中間部でも金管は咆哮することなく、淡々と前へ前へと進みます。オケの淡々とした表現とは対照的にティンパニは遠慮なく強打します。

四楽章、この楽章も速めのテンポで淡々と歌われます。

五楽章、前進する勢いのある第一主題。速いテンポのままバンダのホルンに入りました。ハープの演奏も慌ただしい。第二主題もかなり速いです。展開部の前は少し遅かったのですが、展開部に入るとまた、かなり速いテンポでどんどん前へ進みます。推進力はかなり強い演奏です。バンダのトランペット、ホルンはかなり遠くデッドです。再現部冒頭も落ち着いた演奏です。これまでのテンポとは違い穏やかな合唱の導入でしたが、オケだけになる部分でまたテンポを速めました。感情を込めたアルト独唱。ほとんどタメもなくクライマックスになります。

前へ前へと進む推進力はありましたが、かなり淡泊な演奏で、何かを表現しようとしていたとは思えませんでした。
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朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団 1995年大阪ライヴ

朝比奈★☆
一楽章、かなりの残響を含んでいてふくよかな低弦の第一主題。第二主題は大きな表現では無く、いつもの自然体です。特に表現と言うようなものは無く自然に流れて行きます。アップされている音源はかなり歪んでいて聞き取りづらいです。テンポの動きも無く、オケもストレートに演奏しています。ただテンポは遅めでどっしりとした歩みですが、あまり表現や主張が無く、なんとなく演奏しているような印象です。

二楽章、かなり力強く足を踏みしめて進む感じです。舞曲風と言うより行進曲のような感じさえします。ドタバタととても活発です。

三楽章、強烈に歪むティンパニ。豊かな表現で歌うクラリネット、弦も活発に動きます。オケが乗って来たのか、かなり豊かな表現の演奏になって来ましたが、アンサンブルはかなり悪いです。

四楽章、豊かな残響を伴った独唱はとても柔らかく心地良く響きますがかなり歪みます。

五楽章、ゆったりとした第一主題ですが、歪みっぽくてエネルギー感が伝わって来ません。色彩的な動きが無く平板に進みます。ホルンの動機からもストレートです。第二主題もあっさりとしています。展開部はスケールの大きな演奏のようですが、ここも歪みであまり良く分かりません。あまりの直球勝負で、作品によってはそれが魅力になりますが、この曲では少し退屈に感じます。演奏が崩壊しそうになる部分もありました。再現部の前後などはかなり間延びした感じでした。かなり大きな音量で入る合唱であまり緊張感はありません。二重唱の部分はかなり遅かったですが、クライマックスへ向けてテンポを速めました。それでも最後は感動的に曲を閉じました。

ストレートな表現で、ほとんど細工も無く作品への思い入れも感じられない演奏で、間延びした部分や崩壊しそうになってしまう場面もありましたが、最後は感動的に終わりました。
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ロリン・マゼール/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

マゼール★☆
一楽章、鋭くはいるトレモロ。ふくよかな低弦の第一主題。ゆっくりと進行します。シンバルが入る前に大きなタメがあったりします。細くちょっとギスギスした感じの第二主題。展開部の第二主題もフワッとした柔らかさが無く現実的です。展開部もゆっくりと進みます。ウィーンpo独特の羊皮のティンパニのベタッとした響き。音楽が前に進もうとする力がありません。再現部のホルンのトリルの部分でも大きなタメがありました。マゼールらしい仕掛けです。

二楽章、ゆっくりと美しく優しい主題。二回目の主部もチェロと絡んでうっとりするような美しさです。さすがにウィーンpoです。この楽章も前へ進む力が無く、音楽が停滞しているような感じがあります。終わりに向けてさらにテンポが遅くなって行きました。

三楽章、マレットがヘッドに触れる瞬間が際立っているティンパニ。遅いテンポで少し寂しい主題。強弱の変化はあまり大きく付けられていません。活発に動くイメージのある楽章ですが、とても静かで穏やかです。この楽章でも音楽は前に進もうとはしません。

四楽章、独唱はジェシー・ノーマンなのか、やはりソプラノにこの音域を歌わせるのは少し無理があるように感じます。声の質が細いと感じます。

五楽章、トランペットが長い音を強く演奏しますが、他のパートはそれ程大きなエネルギーを発散する感じではありません。良い距離感で残響も豊かなバンダのホルン。マゼールは時に大きな仕掛けをしますが、一つ一つのフレーズを大きく歌うことはありません。第二主題もほとんど表情はありませんでした。フルートとイングリッシュホルンの不安な動機と金管のコラールの間に出るティンパニが強烈でした。展開部の前でも大きくテンポを落としました。打楽器のロールのクレッシェンドの後の短い音もゆっくりでした。このような大きな仕掛けがある割りに、大きな歌は無く、作品への共感は無いのではないかと感じます。テンポの大きな動きも自然に出てくるものでは無く、作為的で計算高い感じがします。再現部も強いエネルギーは無く古風な音がしています。バンダのトランペットのファンファーレはお風呂の中で演奏しているような残響です。静かに歌い始める合唱。バーンスタインがテンポを落としたクライマックスを逆に速く演奏しました。トランペットだけが突き抜けて強いのですが、合唱も含めたほかのパートはあまり熱くなっていない感じです。

マゼールらしい仕掛けは随所にありましたが、作品への共感は感じられませんでした。オケの響きも薄く古風で、前へ進むエネルギーも希薄で、あまり魅力のある演奏ではありませんでした。
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マーラー 交響曲第2番「復活」13

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

小澤征爾 ボストン交響楽団


小澤征爾と私の相性が悪いのか、小澤のCDを聴いて感動したことがないのです。

日本を代表する巨匠であるのに・・・・・・・。

私にとっては、肩透かしの連続で、意外性を求める人には良いかもしれませんが、それが納得できるかは、個別の感性なので、何とも言えません。

小澤独特の感性があるのだと思うのですが、私にはどうもしっくりこないのです。

小澤には他の人にはない感性があって、それはもしかしたら日本的な歌いまわしや間の取り方だったりしているのかも知れません。

そして、それは日本人よりも欧米人にとって斬新な音楽に感じるのかも知れません。

独特の復活であることは間違いないので、感性が合う人には、すばらしい演奏なのではないかと思います。

ロリン・マゼール クリーブランド管弦楽団

マゼール
一楽章、客席で録られたものか、かなりoffな感じで客席のノイズがリアルです。
比較的遅めのテンポでしっくりと音楽が進んで行きます。ffの部分では強烈に歪みます。
音楽自体は淡々と進んでいる感じで、マゼールらしいアクの強い演奏は今のところ感じません。
ライブらしく、次第に音楽に熱気を感じるようになってきました。マゼールらしい大げさなritなどもあります。

二楽章、マゼールの演奏なので、コテコテの演奏を想像していたのですが、かなり洗練された音楽です。
ただ、録音が悪いので細かいニュアンスなどは分かりにくいし、音色も良いのか悪いのか判断できません。

三楽章、マイクはひざの上にでもあるのだろうか?
服がマイクに触れるような音や何かがマイクの前にあって音を遮断するような場面もありで、音楽に集中できない。
ffでは完全に歪んでいるので、5楽章が心配です。
音楽がどうのこうのと言えるような録音ではありません。

四楽章、速めのテンポ。独唱の思い入れのない出だしにはがっかりさせられます。

五楽章、打楽器の一撃に録音機材が負けています。冒頭からすごい歪みです。
この録音でマゼールの音楽を評価するのはマゼールに対して失礼だと思います。
レビューとして、このCDの購入を考えている人への判断材料として、★はつけますが、このCDに関しては、演奏よりも録音に対する評価だと思ってください。
音楽を判断できるような録音ではないです。
ただ、マゼールの指揮は大見栄を切るところもないし、大きな仕掛けもありません。とても純粋な音楽のように感じます。
金管も良い音みたいだし、合唱も壮大なクライマックスを築いているようなのですが、とにかく録音が良くなったり悪くなったりするので・・・・・・・。

最後はすごくクリアーな音になりました。なんで最初からこの音で録ってくれなかったのかと悔やまれます。

井上喜惟 シャパン・グスタフ・マーラー・オーケストラ

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一楽章、アマチュア・オケですが、なかなかの始まりです。アンサンブルの乱れは多少あります。個々の練習量の差なのか、テンポに付いていけないパートがあったりして、統一感に欠く演奏です。フルートやヴァイオリンのソロは上手かったです。展開部以降はすごくテンポを落として演奏しました。井上の指揮はテンポを大きく動かして劇的な表現をしようとしていますがアマチュアの限界か、ffで突き抜けてくるような金管の爆発がありません。

二楽章、ゆったりとしたテンポで始まりました。弦が揃わない。大勢で演奏しているのが如実に分かる演奏です。

三楽章、この楽章も遅めのテンポです。途中テンポが速くなったりもしますが、アンサンブルの乱れが気になり、音楽を聴いている感覚ではありません。テンポの動きからすると井上が表現したいことはたくさんあるのだと思いますが、オケが付いていけないのが残念なところです。

四楽章、すごく遅い開始です。すごく表情豊かな独唱ですが、合いの手に入る金管が無表情でバランスも悪く違和感があります。

五楽章、金管が弱いしアンサンブルの乱れも大きい。ホルンのバンダも複数で吹いているのが分かるし、表現も変でした。アマチュア・オケなので、練習時間にも制約があるのは当然ですが、この演奏は明らかに練習不足だと思います。バンダのトランペットは良かった。合唱は表情豊かです。合唱が入ってからの終盤はなかなか良かったですが、この演奏は出演したメンバーの内々で楽しむCDで、市販されるべきではないと思いました。

リボル・ペシェク/チェコ・ナショナル交響楽団

ペシェク
一楽章、あまりスピード感の無い第一主題。バランス良く控え目な金管。第二主題へもテンポを変えずすんなり入りました。低弦の三連符を含むリズムも速いテンポであっさりと進みます。展開部の第二主題はテンポを落として美しい響きでした。続く木管も美しい演奏です。深く感情移入することはなく、テンポもほとんど動きません。再現部の前も音を短めに演奏してあっさりと終りました。感情を吐露するわけでもなく、かといって明晰な演奏でも無い感じで、中途半端な印象でした。

二楽章、この楽章も速いテンポであっさりと進みます。アゴーギクを効かせて歌うこともありません。テンポはほとんどインテンポです。楽譜の指示があるところだけテンポが動きます。最後のAで少しテンポを落としましたが、これだけ無表情の演奏もめずらしい。基本的に楽譜に書いてある以上のことはしない指揮者としてはハイティンクなども同じ部類に入るのかもしれませんが、ハイティンクの場合は奥の深さやスケールの大きさがあります。しかし、このペシェクの場合、奥の深さやスケール感などは感じません。

三楽章、良い鳴りのティンパニ。この楽章も速いテンポで主題に入る前にさらにテンポを煽るように上げました。金管の強奏部分で音を短めに演奏するのが特徴といえば特徴です。全てが、これまでに聴いてきた演奏の範囲内で、想定外は起こりません。また、オケの音色もとりたてて美しいわけでも無いので、この演奏の魅力を探すのが難しいです。

四楽章、あっさりとそっけない独唱。金管のコラールはトランペットが浮き上がって颯爽としています。透明感の高い美しい独唱です。

五楽章、深いところから響くドラ。やはり音は短めの金管の第一主題。元気の良いバンダのホルン。節度のある演奏と言えば良いのか、決して踏み外さない安全運転です。第二主題のトロンボーン、トランペットはビブラートをかけた独特のものでした。切迫感のあるような踏み込んだ表現はありません。展開部の金管も音は短めです。ピーンと張るような緊張感もありません。生ぬるい空気が漂っているような感じがします。金管が咆哮することもありません。程ほどの吹きやすい音量で演奏しているような感じです。静かに始まった合唱。装飾音符があるような独特のソプラノ独唱でした。合唱はかなりの音量で歌いましたがオケはそこそこの音量で、限界近くの叫びではありませんでした。

ペシェクはこの演奏で何を表現したかったのか、私にはさっぱり分かりませんでした。
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ハンス・フォンク/ハーグ・レジデンティ管弦楽団

フォンク
一楽章、軽いタッチの弦のトレモロ。第一主題も軽い演奏で、編成があまり大きくないような印象を受けます。第二主題もあっさりとした表現です。展開部の第二主題は繊細で美しい演奏でした。高域方向のレンジが狭いのか、鋭い響きは無く、丸い響きです。あまり深い表現をすることは無く、そつなくまとめている感じの演奏です。

二楽章、サラッとして爽やかな主題です。深い歌も無く、テンポも変化することは無く、とてもあっさりとしています。

三楽章、クラリネットが生き生きとした表現をしました。中間部の金管の強奏部分も熱くなるようなことはありません。とてもさらりと過ぎて行きます。ソフトなティンパニ。演奏にピーン張った緊張感を感じません。

四楽章、細身で生の声に近い独唱。これまでの楽章と違って、とても感情のこもった注意深い歌唱です。

五楽章、やはりあまり編成が大きくないような感じがする第一主題。遠くて良い雰囲気のバンダのホルン。抑揚の無い第二主題。展開部は少し熱い演奏になってきました。再現部冒頭も速いテンポであっさりとしています。非常に遠くから響くトランペットのバンダはとても良い感じです。清涼感のある合唱。くっきりと浮き上がるソプラノ独唱。独唱と合唱の和音もきれいに決まります。力強い男声合唱。クライマックスは合唱の強力なエネルギー感で壮大でした。

ほとんど無表情で淡々と進む音楽に違和感を感じました。しかし、最後は合唱のエネルギーに引っ張られるように壮大なクライマックスを築きました。ただ、表現としては特筆することは無く、ただ演奏しただけと言う印象は拭えません。
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Frederic Chaslin/エルサレム交響楽団

Chaslin
一楽章、響きは薄く、ゲトゲトした第一主題。録音もデッドなのか、第二主題もフワッとした膨らみがありません。展開部の第二主題も伸びやかさがありません。展開部の第一主題が現れる前はかなりテンポが速くなりました。そしてアンサンブルが乱れる部分もありました。細かなミスはたくさんあります。大きな表現も無く、精緻な演奏でも無く、何を聞けば良いのか分かりません。

二楽章、とにかく響きが薄いです。弦楽器に胴が付いていないような・・・・。テンポの揺れも無く硬直した演奏に感じます。

三楽章、ただ演奏されているだけで、何も表現や主張の無い演奏で、正対して聞くのは大変です。中間部のトランペットでテンポを速めます。その後アンサンブルの乱れがあります。最後の中間部の主題で盛り上がる部分で物凄くテンポを速めました。

四楽章、独唱も響きを伴わないので、生声のような感じで深みがありません。

五楽章、コントラバスをあまり拾っていないのも薄い響きにしている一因のようです。バンダも距離はありますが、響きはほとんど伴っていません。展開部でも全開にはなりません。このオケの編成と技量でこの曲を演奏しなければならなかったのか?と疑問を感じます。再現部冒頭は打楽器が炸裂してかなり全開に近い響きになりました。バンダのトランペットはステージ上にいるようです。合唱が音量を上げた時の声の伸びがありません。クライマックスでは合唱はほとんど聞えず、オケと独唱だけでした。

会場の問題なのか、オケの問題なのか、響きに厚みが無く、表現らしい表現も無い演奏で、このオケの技量と編成でこの曲を演奏しなければいけなかったのか疑問に感じました。
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アンドルー・デイヴィス/BBC交響楽団

デイヴィス
一楽章、こもったようなフワッとした主題。あまり感情を込めずあっさりと演奏される第二主題。モノラル録音て゜かなりナローレンジです。展開部の第二主題もあっさりとした表現です。再現部もナローレンジなので、色彩感に乏しく密度が薄く軽く聞えます。

二楽章、柔らかく優しい舞曲です。ナローな録音で表現などはあまり分かりませんが、深く感情を込める演奏には思えません。

三楽章、滑らかに続く主題。中間部のトランペットもとても穏やかに聞えます。

四楽章、テンポは微妙に動いています。最後はとてもゆっくりになりました。

五楽章、打楽器は炸裂しますが、金管が遠いので、激しさは感じません。かなり音量の大きなバンダのホルン。オーボエが少しテヌートぎみに演奏するのが珍しいです。展開部でも激しさは伝わりません。表現なども特徴などは全く分かりません。トランペットのバンダは距離があって美しい残響を伴って響きます。合唱は豊かな響きを伴って美しい感じがします。最後はかなりの盛り上がりになったような感じですが、この録音からははっきりとは分かりません。

ナローレンジで金管が遠い録音で、表情や盛り上がりが感じられない演奏になってしまいました。もっと良い状態で聞ければもっと違った感想になったと思います。
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ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク
一楽章、速めのテンポでキリッと引き締まった第一主題。径の小さいシンバル。第二主題も速いテンポでちょっとぶっきらぼうな感じです。ハイティンクもまだ若く発展途上だったことをとても感じさせる演奏で、晩年のどっしりと重厚な雰囲気は微塵も感じられません。かなり腰高で、安定感がありません。展開部の第二主題も速くあまり美しさを感じませんでした。コンセルトヘボウらしい深みや美しさもあまり感じません。元々出来不出来の差が少ない指揮者ですが、この演奏はあまり良い出来では無い感じがします。表現が淡白で深みがありません。

二楽章、歯切れの良い主題。テンポの動きも僅かで、表現らしい表現はありません。作品のありのままを演奏するスタイルは現在と変わりませんが、深みや厳しさはありません。何かベクトルが揃っていないと言うか、散漫な感じがします。

三楽章、水面だけを波立たせているようなこの演奏から、どうやって現在のような深いところから大きな波がうねるような音楽ができるようになったのかとても興味深いです。この演奏を聞いているとハイティンクの経験によって積み重ねられたものの大きさを感じます。

四楽章、金管のコラールも薄っぺらい響きです。コントラルトの声質はちょっと変わっています。独唱の最後も神に召されるような神聖な歌唱ではありませんでした。

五楽章、ハイティンクの演奏にしては強く演奏する金管の第一主題。デッドで詰まった感じのバンダのホルン。第二主題は淡々としています。トロンボーンも素っ気無く味わいがありません。展開部はバラバラでオケの一体感は全くありません。とにかく演奏が軽い。この演奏を聞くと、コンセルトヘボウも良くハイティンクの成長を辛抱強く待ったものだと関心します。音量は大きめですが、爽やかな合唱。粘ることもなく淡々としたクライマックス。

現在のハイティンクの演奏の片鱗も見えない演奏で、とても退屈でした。
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ズービン・メータ イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

icon
メータ二度目の「復活」今回はイスラエルpoとの録音。
前回のウィーンpoとの録音が若さ溢れる好演だったので、期待も大きかったのですが、世間の評判はあまり芳しくないようです。
果たして、実際にはどうなんでしょう?

一楽章、前回同様、気合のトレモロからスタート、テンポは速めです。前回のような豪快さは影をひそめ、フレーズ内の強弱の変化もあり、そんなに悪い演奏には今のところ感じません。
ただ、集中力が高いとか、凝縮された表現と言うような、緊張感につつまれた演奏ではありません。緩んだ雰囲気とか大味な演奏と言われてしまうような、空気は確かに持っています。
これは、メータの演奏によるところなのか、テルデックの録音によるところなのか?モタ~っとした響きが全体を支配しているのが、なんとも・・・・・・。
特に聞かせどころもなく、なんとなく流れていったかな、猛スピードで終った、ウィーンpoとは対照的にritして終った。

二楽章、悪くはないんだけど・・・・・・。若いころの突進力がなくなった分、緩急自在に濃厚な表現力が出てくるとかすれば良いんでしょうが、そのあたりがまだ中途半端な過渡期なのでしょう。

三楽章、最初から気になっているんですが、このデッドなティンパニがどうも演奏に溶け込まない。何か意図があってこの音なのか・・・・・。他の管楽器(特に木管)も音が短めに演奏されています。その上、ホールの残響をあまり拾った録音ではないので、短さが変に気になります。
表現も徹底されてはいないようで、緩い感じ。メータはロスpo時代の妥協のない明晰さをニューヨークpoで捨て去ってしまったのではないかと思います。
一人の音楽家として、心の中でどんなにすばらしい音楽が鳴り響いていようとも、指揮者となれば。それを他人に演奏させなくてはいけません。巨匠が君臨していた時代は、楽員に嫌われようが、喧嘩別れしようが、自分の音楽に妥協をしなかったし、そういう人だけが世界にごくわずか用意されている、巨匠の椅子に座ることができたのだと思う。それは100人vs1人の戦いでもあるわけで、自分が信じる音楽をやり抜く決意や迫力がなければ、緊張感の高い、感動を生む演奏はできないのではないかと思います。
その意味ではメータはニューヨークpoに、アバドはベルリンpoに腑抜けにされてしまったと思っています。
ムラヴィンスキーのリハーサル風景のCDを聴いたことがありますが、それは紳士的で穏やかな口調ですが、要求はものすごく厳しい、同じところを何度も何度も、時には一人で演奏させることも。それを聴いている私には、前と何が変わったのか分からないほど微妙な表現を徹底して練習していました。あのレニングラードpoを相手にですよ!
それに比べるとこの演奏はメータ自身の姿勢が甘すぎると思います。

四楽章、何もありません。何も起こりません。

五楽章、ffではアンサンブルの乱れもあり、メータにしてこのような乱れが聞こえていないはずはない!
元々ロスpoでは楽員ととてもフレンドリーな関係の中から積極性を引き出し、名演を残してきましたが、その手法は、それまでの暴君的な巨匠時代と決別する画期的な人物の登場だったから、オケも献身的な演奏をしたのだと思います。
今は、オケにムリを言わない指揮者ばかりになりましたからね。そこで差別化を図る何かを会得できれば、メータは本当に復活すると思います。
特に、何の感慨もなく、この楽章も終って行きそうです。合唱の弱音はとても綺麗です。弦の優しい響きもこのオケの特徴か、下品な金管との釣り合いもとれないオケです。
ffでの終結部でもTpなどクレッシェンドを限界のギリギリまでしていないです。本来の頂点の手前でやめてしまうんです。それほど、オケのメンバーには厳しい要求をしていないし、オケのメンバーも献身的に音楽をしようとはしていない。

これでは感動などありえないですね。残念な演奏です。

ヤノフスキ モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団

ヤノフスキ
一楽章、軽い音で弦のトレモロが始まりました。その後も仰々しくならず、軽いタッチで演奏されています。金管や打楽器も奥まっていて、軽い演奏をさらに軽くしています。まるでサロン・オーケストラが復活を演奏しているような、BGMにでも使えそうな軽さです。テンポ設定などは普通なのですが・・・・・。
セレブたちはカッコ良くクールに復活を楽しみたいのか。バーンスタインやテンシュテットのようなコテコテの演奏を嫌うのでしょうか。どこを取っても美しい演奏ですが、これがマーラーか?とも思わせる演奏ではあります。
ミュートを付けたトランペットの音が大きく聞こえて、オープンでffを演奏するトランペットが遥かかなたにいる。何かミキシングで操作しているのか、変です。
ティンパニもffはデッドな音がして、pの時は残響を伴って長く尾を引く。
とにかく軽くて、耳障りが良くて、何も言うことはありません。セレブたちが好むマーラーはこんなんでしょう。作品と対峙するような感覚など全くありません。ものすごく遅くなって終わりました。

二楽章、ゆったりとしたテンポで暖かい演奏です。
モンテカルロでは、テンシュテットやバーンスタインなどは指揮台に上がってはいけないんだろうな。美女を隣にはべらせて、分かったような顔をしてクラシック音楽を聴く。そういうシチュエーションに合うような演奏じゃないと、この地では受け入れられないのでは?と疑いたくなるくらい、一般的なマーラー像からはかけ離れています。
ましてや、ロジェヴェンが指揮台に上がりでもしたら、演奏が始まったとたんに聴衆から総スカン、大ブーイングでしょう。
かの地では、濃厚な音楽をやってはいけないのです。多分!
どんな作曲家の作品であろうとも、BGMのように美しく。背景にあるものなど関係ない。

三楽章、予想通り柔らかいティンパニから始まった。ここではスチール缶をぶっ叩くような音ではダメなのだ。
とにかく、美しく聞こえることだけに腐心した演奏だとしか思えません。
その分、耳には優しいし、音楽と格闘することもないし、美しい音楽が流れて行くのに身を任せるようにするには、良い演奏です。
レヴァインの埃っぽい演奏を聴かされるよりずっと良いです。

四楽章、美しい独唱です。天国的な雰囲気は全体に漂っているので、この楽章は良い雰囲気です。

五楽章、リミッターでもかけているのでしょうか。金管の音は明らかに強く吹いているのですが、全く届いてきません。ですから、演奏全体のダイナミックレンジが極めて狭くなってしまっているのです。
バンダのホルンはすごく強く吹いていて、遠くにいるようで、なかなか良い効果があります。
ここまで、聴き進むと完全にBGMになっています。演奏については考えないで聞ける。バンダはとても効果的に配置されていて響きも気持ちいいです。
独唱もとてもゆっくりとしたテンポでムード音楽のようです。パイプオルガンが強めに響いて、豪華絢爛!

拍手もセレブらしく上品です。演奏からしても聴衆は熱狂するわけがありません。
まあ、こういった演奏もアリかなとは思えます。マーラーの精神性などは無視して、美しく聞かせることに徹してしまえば、いろんな効果を駆使している曲なので、割り切って聞けば不満はあまり感じません。中途半端な演奏より良いかも・・・・・。

ジュゼッペ・シノーポリ/RAI国立交響楽団

シノーポリ
一楽章、かなり荒削りな感じですが、凄みのある第一主題。速いテンポでグイグイと進みます。かなり速いテンポで金管も遠慮なく入って来ます。かなり荒っぽい第二主題。本当に遠慮の無い金管。展開部の第二主題もそれほど美しくはありません。速いテンポでかなり荒っぽい演奏で、叩き付けるような荒々しさです。後のフィルハーモニアとのスタジオ録音とはかなりイメージの違う演奏で、フィルハーモニアとの録音のような丁寧さはありません。なぜここまで速いテンポで煽り立てる必要があるのか理解できません。面白い演奏ではあるのですが、作品を真面目に正面から捉えた演奏とは思えません。コーダなどは落ち着いたテンポの演奏になるのですが・・・・・。

二楽章、テンポの動きの大きな主題ですが、なぜか野暮ったい演奏です。中間部はまた落ち着きの無い演奏になります。木管が独特な表現をします。テンポはとても良く動きますが、かなり強引な感じです。

三楽章、緩い感じのティンパニ。薄い弦の主題。ドタバタする大太鼓とルーテ。慌ただしい中間部。とにかく落ち着かない演奏です。最後の盛り上がりでティンパニが二打叩いた後が続きませんでした。

四楽章、中間部も速いテンポです。独唱も最後は絶叫するような投げやりな歌でした。

五楽章、強烈に絶叫する第一主題。離れたところから響くバンダのホルン。音が短く投げつけるような演奏です。金管のコラールも軽い演奏でした。展開部も音が短く丁寧な演奏には聞えません。打楽器のクレッシェンドの後も凄く速いテンポでした。とにかくテンポが速い。再現部もとても速いテンポでどっしりとしたところは全くありません。フィルハーモニアとの録音の時とは全く別人のような演奏です。再現部の後のフルートとホルン、トランペットが絡む部分はゆっくりでした。合唱が入ってからは普通に進みます。特に大きな盛り上がりも無く終わりました。

ひたすら速いテンポで投げつけるような荒削りな演奏で、全く落ち着きがありませんでした。その上クライマックスも聞かせ所は無く、全くと言って良い程良いところはありませんでした。フィルハーモニアとの録音とは全く別人のような演奏でした。
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ダニエーレ・ガッティ/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

シベリウス 交響曲第1番

シベリウスの交響曲第1番は、フィンランドの自然や北欧の厳しさ、そして深い情緒が込められた作品で、彼の作曲家としてのスタイルが確立された重要な曲です。この交響曲には、彼が持つ独特の旋律美とドラマチックな展開が織り交ぜられており、フィンランドの民族的アイデンティティが色濃く表現されています。

1. 第1楽章:Andante, ma non troppo – Allegro energico

静かなクラリネットのソロで始まる序奏が印象的です。冷たい風が吹き抜けるような孤独感が漂い、北欧の厳しい自然を思わせます。やがて、力強い主部に入ると、悲劇的で感情豊かなテーマが現れ、全体にわたってエネルギッシュな展開が続きます。ここにはシベリウスのロマンティックな一面と、ドラマティックな表現が交錯し、初めての交響曲ながらも強い個性が光ります。

2. 第2楽章:Andante (ma non troppo lento)

この楽章はゆったりとしたテンポで、フィンランドの美しい自然や静かな湖畔の風景を連想させるような叙情的なメロディが特徴です。どこか悲しげで深い情感が漂い、柔らかな響きの中に温かさと寂しさが入り混じっています。この楽章は特にシベリウス特有の自然描写が感じられ、内面的で心に染み入るような美しさが魅力です。

3. 第3楽章:Scherzo. Allegro

力強いリズムとエネルギッシュなテーマが特徴のスケルツォ楽章です。荒々しい北の自然を描写するかのような、スリリングで活気に満ちた音楽が展開します。シベリウスらしい鋭いリズムや切れ味の良いメロディが、北欧らしい厳しさや自然の力強さを表現しており、この楽章には彼の躍動感とリズムの巧みさが感じられます。

4. 第4楽章:Finale (Quasi una fantasia). Andante – Allegro molto

最終楽章は、序奏での悲しげなテーマが再び現れ、フィンランドへの郷愁や、シベリウスの内なる葛藤が表現されています。やがて激しくドラマチックな展開に入り、楽曲全体が感情的なクライマックスへと進んでいきます。シベリウスが抱く民族的な誇りや決意が表れ、最後には静かに音が消えていくように終わる印象的な締めくくりです。

全体の印象

シベリウスの交響曲第1番は、フィンランドの厳しい自然や民族的な精神が込められ、若々しい情熱と叙情性があふれた作品です。ロマンティックな要素とシベリウス独自の音楽語法がうまく融合しており、彼が後に確立していく北欧独特の音楽スタイルの出発点ともいえる作品です。

4o

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第1番名盤試聴記

パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、空間に広がる不穏な雰囲気。活動的な第一主題。しっとりとした第二主題。空気を切り裂くような金管。すごく細くで美しいヴァイオリン。

二楽章、漂うように幻想的な第一主題。金管の音には伸びがあって、色彩感もとても豊かで美しいです。編成が小さいことはほとんど感じない演奏です。

三楽章、活発で躍動的な主題。鮮明な色彩感。トリオでは締りのあるホルンと伸びやかなフルートが印象的です。目の前に迫ってくる弦の刻み。

四楽章、作品への共感が伝わる、感情が込められた序奏はとてもよく歌います。主部のテンポは速いです。室内オケが無理をしている感じは全くありません。トゥッティでは音が迫って来るほどです。

作品への共感を基にした表現。色彩感溢れる美しい響き。聞いていて惚れぼれするような演奏でした。

コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、美しく空間に広がるクラリネット。控え目で美しい弦の第一主題。贅肉を削ぎ落としたような透明感があるけれどいぶし銀のように渋い金管。集中力が高く一体化したオケの動きが見事です。

二楽章、静寂の中に静かに穏やかに演奏される第一主題。第二主題も静寂感があり、冷たい空気感もあります。広大な平原を連想させる中間部のホルン。主部が戻る前の金管の動きもとてもまとまったキッチリとしたアンサンブルで非常に上手いです。

三楽章、小さく弾む木管。色んな動きがあるけれど、とてもバランスが良く一体になったオケの響きの充実ぶりは素晴らしい。

四楽章、悲しみをこらえるような序奏から、夢見心地のフルート。伸びやかで美しい第二主題。第一主題でもそうでしたが、木管のアンサンブルのバランスが絶妙です。原色のような派手な色彩感では無く、渋いくすんだ色彩ですが、一体感のある充実した響きです。また、絶叫することも無く、とても上品な表現で切々と訴えかけてきます。

充実した渋い響きに一体感があって、非常にバランスの良い演奏でした。その上上品な表現で切々と訴えてくる演奏は感動的でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★★
一楽章、暗闇に浮かびあがるような孤独感のあるクラリネットの序奏主題。広大で豊かな第一主題。金管のエネルギーやティンパニのパワーも凄いです。ピンポイントのヴァイオリンのソロ。強弱の振幅は物凄く幅広いです。美しく豪華絢爛な響きで、シベリウス独特の空気感はあまり感じません。コーダの物凄いエネルギー感にも圧倒されました。

二楽章、穏やかですが、暖かい第一主題。第二主題も寒さはあまり感じません。オケは完璧でとても美しいです。中間部後半の荒々しい盛り上がりから一転して、第一主題が戻るととても穏やかになります。

三楽章、活発な運動量の演奏です。この録音ではティンパニのバランスが少し強いように感じます。

四楽章、僅かに寒さを感じさせる序奏主題。スピート感のある第一主題。第二主題も表現は控えめで自然に流れて行きます。再現部の第二主題の弦楽合奏は厚みがあってとても豊かでした。コーダも豪華絢爛でした。

シベリウス的なものを期待すると完全に裏切られますが、美しく豪華絢爛な響きにはこの作品にこんな表現もあったのかと納得させられました。見事な演奏でした。

コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
一楽章、弱いティンパニに乗ってくっきりと浮かぶクラリネットが訴えてきます。最後は消え入るような小さい音にな暗闇にポツンと浮かぶロウソクの炎のようでした。弱音で始まって次第に大きくなる第一主題。雄大な金管の第一主題。鮮明な色彩と整ったアンサンブル。すがすがしい響きのヴァイオリン。シベリウスらしい清廉な響き。トゥッティでも見通しの良い演奏で、端正で整った演奏です。

二楽章、とても静かに演奏される第一主題。羽毛で撫でられるような安らかさです。第二主題から活発な動きになり、トランペットやホルンが気持ちよく鳴り響きます。生き生きとした木管、目の覚めるような金管とシルキーな弦が絡んでとても良い演奏を繰り広げています。

三楽章、歯切れの良い弦の主題。屈託無く鳴り響くホルン。木管のキリッと引き締まった抜群のアンサンブル。壮絶な響きで終りました。

四楽章、第一主題の後はスピード感のある演奏でした。穏やかな第二主題。チャーミングな木管の弱音と豪快に鳴る金管のエネルギー感が凄いです。充実した響きで終りました。

消え入るような弱音から豪快なトゥッティまでダイナミックな演奏でした。ただ、感情表現はせずに、作品に忠実な演奏で端正で美しい演奏から作品の良さがにじみ出てくるようで充実した演奏でした。

レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

バーンスタイン★★★★★
一楽章、静寂感の中にクラリネットの序奏主題が響きます。ゆったりと伸びやかな第一主題。トゥッティはかなり強いですが、他の演奏に比べると大人しい方です。ねっとりと感情を込めた演奏で、晩年のバーンスタインの演奏スタイルです。二度目の第一主題のトゥッティはかなり強烈な咆哮でした。

二楽章、この世のものとは思えないような美しさの第一主題。ゆっくりとしていますが、フワフワと漂うような幻想的な表現です。第二主題は一つ一つ確実に踏みしめるような表現です。中間部では潤いがあって泉から湧き出すような木管。シベリウスらしい冷たい空気感はあまりありませんが、濃厚で美しい演奏はとても良いです。

三楽章、パチーンと強いインパクトのティンパニ。油絵のような濃厚な色彩で、表情豊かに動き回る木管。金管も切れ味鋭く生き生きとしています。

四楽章、第一主題も生き生きとした表現でテンポも自在に動きます。抑えた表現ですが、感動的な第二主題。極端にテンポを落とす部分もあります。

晩年のバーンスタインらしい濃厚な表現でしたが、作品の原型は維持していて、大きな違和感はありませんでした。濃厚で生き生きとした美しい演奏は素晴らしいものでした。
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パーヴォ・ヤルヴィ指揮 パリ管弦楽団

ヤルヴィ★★★★★
一楽章、陰影をたたえて豊かに歌う序奏主題。深みのある表現の第一主題。金管は絶叫しませんが、ティンパニがとても大きくクレッシェンドします。ハープに乗ったフルートの副主題もとても豊かな表情です。生命感のある生き生きとした表現はヤルヴィらしくとても良いです。大きく波打つような起伏のある演奏もとても良いです。コーダでテンポを速めたり、ティンパニの激しいクレッシェンドも凄かったです。

二楽章、一楽章とは打って変わってとても穏やかでゆったりとした第一主題。テンポの動きもありますが、何より表情の豊かさには惹きつけられます。とても瑞々しく美しい演奏です。

三楽章、荒れることは無く、美しさと躍動感を併せ持った演奏です。パリoがこれだけの一体感を聞かせるのは珍しいのでは無いかと思います。とてもまとまりのある充実した演奏です。

四楽章、深みのある序奏。第一主題が出て打楽器が入るまでの部分はかなりテンポを速めて演奏しました。速いテンポで駆け抜ける部分と、ゆったりとたっぷり感情を込めて歌う部分の対比もなかなかです。最後は刻み込むような弦と目の覚めるような強烈なティンパニのロールで終わりました。

とても豊かな表現で、どこを取っても歌があるような演奏でした。テンポの動きによる多彩な表現や、強烈なティンパニなど聞き所も多い演奏で最後まで惹きつけられる演奏でした。
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オッコ・カム指揮 ヘルシンキ放送交響楽団

カム★★★★★
一楽章、暗闇から浮かび上がるようなクラリネットですが、あまり密度は高くありません。伸びやかで美しい第一主題。突き刺さるようなトランペット。とても振幅が大きく激しい演奏です。オケが良く鳴っていて壮麗な響きです。

二楽章、レースのカーテン越しに聞くようなマイルドでとても穏やかな第一主題。ほの暗い第二主題。少し寒さを感じます。水彩画のような爽やかな色彩感の美しい演奏で、明快な金管の明るい響きと、弦や木管の僅かに暗い表現の対比が見事に描かれています。

三楽章、柔らかいティンパニ。伸びやかで透明感の高い美しい響きはとても魅力的です。

四楽章、感情を込めて歌う感じはありませんが、繊細で美しい弦がとても印象に残ります。敏感な反応の第一主題。大きなクライマックスではありませんでしたが、美しくとても良く鳴り響く演奏でした。

伸びやかで壮麗な響きのとても美しい演奏でした。大きな感情表現はありませんでしたが、水彩画のような爽やかな色彩の演奏はとても魅力的でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響曲第1番の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響曲第1番2

たいこ叩きのシベリウス 交響曲第1番名盤試聴記

レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、静寂の中に深みのあるクラリネットの序奏主題。ゆったりとしたテンポの第一主題。雄大なトゥッティ。金管に第一主題が移るところはかなり荒々しい表現です。ティンパニの強打はかなり強烈です。シベリウスの音楽にしては熱い演奏です。金管の咆哮やティンパニの強打など、今まで聞いてきたシベリウスのイメージとは違う演奏です。

二楽章、フワッとした柔らかい第一主題。ロマンティックな雰囲気に満ちています。第二主題は静寂感がありますが、やはり温度感は高いです。中間部で動き回るチャーミングな木管。巨大なチューバの響き。かなり激しい金管。弱音部分の美しい歌もなかなか聴かせてくれます。

三楽章、活発に激しく動きます。トロンボーンもティンパニも激しい演奏です。北欧の春を感じさせる中間部。これまでのシベリウスのイメージを変えさせるような演奏です。

四楽章、感情のこもった序奏主題。木管もとてもよく歌います。積極的な表現の第一主題。憂いを感じさせる第二主題。強弱の振幅がすごく大きく、強奏部分の激しさはまるでマーラーを聴くような感覚です。第二主題の再現はとても美しいものでした。

これまでシベリウスは静寂感と冷たい感じをイメージしていましたが、この演奏はそんなイメージを覆すような演奏でしたが、この激しさもシベリウスの一面なんだと思い知らされました。

オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★☆
一楽章、ウェットで陰のある序奏主題。第一主題は遠くから響く感じでとても雰囲気があります。第一主題のトゥッティはテンポを速めて激しく演奏します。全体に速めのテンポでぐいぐいと前へ進みます。

二楽章、深い霧の中から響いて来るような、ゆったりとしていてとても静かで穏やかな第一主題。潤いがあって美しいトリオのホルン。この潤い感はオケ全体にあって、とても美しい演奏です。

三楽章、再び速めのテンポで躍動感に満ちた演奏になります。強い表現はありませんが、作品の良さがにじみ出るような演奏です。最後は激しいティンパニと共にテンポをさらに速めて終わりました。

四楽章、しみじみと歌う第二主題。オケが全く混濁せずに美しい響きを聞かせます。シベリウスらしい自然の美しさを感じさせる演奏です。ただ、響きは暖かいので、北欧の冷たさは感じません。

大きな表現はありませんでしたが、にじみ出るような作品の美しさが印象的でした。自然を感じさせる演奏ではありましたが、冷たい空気感はありませんでした。
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ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★★★☆
一楽章、くっきりと浮かび上がりますが、少し乾いた響きの序奏主題。感情のこもった第一主題ですが、録音の古さか木目が粗いです。絶叫せずにコンパクトにまとまった第一主題のトゥッティ。オーマンディらしくon、offのはっきりとした明快な演奏です。

二楽章、間があったりして感情が込められていますが、淡々とあっさりと感じる第一主題。第二主題もあっさりと流れて行きます。無駄なものを取り去ったようにシンプルに聞えます。主部が戻るとたっぷりと歌う、哀愁に満ちた第一主題になります。

三楽章、生き生きとした躍動感のある積極的な演奏ですが、木目の粗い弦が気になります。この当時のCBSの録音の特徴だった乾いた響きも感じます。

四楽章、深く感情が込められた序奏。鋭く切り込む第一主題。たっぷりと歌われる第二主題。オーマンディの作品への共感が良く表れた演奏です。豊かに歌う演奏はとても感動的です。

オーマンディの作品に対する共感がとても良く表れた演奏で、感動的な表現も多くなかなか良い演奏でした。ただ、当時のCBSの録音の乾いたザラザラとした響きは少し残念でした。
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ウラディーミル・アシュケナージ指揮 フィルハーモニア管弦楽団

アシュケナージ★★★★
一楽章、細身で濃いクラリネットの序奏主題。とても静寂感があります。鋭く濃厚な色彩の第一主題。トゥッティは全開にはならず余裕があります。シベリウス独特の冷たい空気感はありませんが、涼しげで爽やかな響きです。

二楽章、穏やかで美しい第一主題。清涼感があって、キチッと整ったアンサアブルですが、強い個性は感じません。

三楽章、強烈なティンパニと躍動感のある弦と木管。トリオのホルンも控えめで締まった響きで美しいです。

四楽章、歯切れの良い第一主題。速めのテンポでどんどん進みます。第二主題は広々とした雰囲気は無くむしろ狭い空間を感じさせます。フィルハーモニアoにしては濃厚な色彩です。強い個性が無く清涼感のある爽やかな響きがとても印象的です。

強い個性は無く、極めて自然体の演奏でした。清涼感のある美しい響きが印象的でしたが、シベリウスらしい冷たい空気管は感じられませんでした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団

icon★★★
一楽章、長く尾を引くティンパニの上にくっきりと浮かぶクラリネット。感情のこもった第一主題。続くホルンは少し歪みぎみでした。金管が演奏する第一主題は期待通りの粘着質の熱い咆哮でした。トランペットに続くホルンは異様な響きです。北欧の厳しい寒さを感じる演奏とはほど遠く温度感はかなり高いです。トゥッティでは音が交錯して見通しが悪くなります。かなり荒々しい演奏です。

二楽章、深みはありませんが、穏やかで美しい第一主題。中間部のホルンは独特の響きです。力のこもった演奏なのですが、木目が粗く少し乱暴な感じがします。容赦なく吹く金管。

三楽章、積極的な表現の主題。ここでも容赦なく吹きまくる金管が下品です。トリオのホルンは細い音でビブラートを掛けています。

四楽章、朗々と演奏される序奏主題。第一主題も温度感は高く、寒さは感じません。第二主題も朗々と歌います。第二主題の再現では絶叫するようなトランペット。

正に爆演と言うにふさわしい、強烈な演奏でした。シベリウスの寒さを感じさせる演奏ではなく、むしろ暑苦しいほどのとにかく強烈な演奏でしたが、かなり雑に感じました。

イーゴリ・マルケヴィチ指揮 イタリア放送トリノ交響楽団

マルケヴィチ★★
一楽章、乾いた響きであまり陰影のない序奏主題。一転して伸びやかで柔らかい第一主題。軽く演奏される第一主題のトゥッティ。音楽が熱気を帯びることは無くとても冷静に進みます。

二楽章、静かで優しい第一主題。中間部のホルンもとても穏やかで安らぎを感じさせます。強い感情移入はありませんが、淡々と美しい演奏が続きます。第一主題が戻る前に大きくテンポを落としました。

三楽章、マットで詰まった感じのティンパニ。自然な歌のホルン。畳み掛けて終わりました。

四楽章、活発に動く第一主題。全く誇張の無い第二主題。展開部に入ってもホルンはそれなりに激しいですが、トランペットは控えめです。大きなクライマックスを築き上げることなくちょっと肩透かしで終わりました。

全体に控えめで大きな振幅が無く、あっけなく終わりました。
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