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マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」

マーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」は、彼の交響曲の中でも最も壮大で、スケールの大きい作品です。特に、千人以上の演奏者が必要とされるほどの大編成であるため「千人の交響曲」とも呼ばれます。マーラー自身もこの作品を「交響曲の世界」と称し、すべての音楽要素を結集した究極の作品として位置づけました。

1. 構成と特徴

交響曲第8番は、マーラーの他の交響曲と異なり、2つの部分(楽章)から成り立っています。それぞれが独立したテーマを持ちますが、全体を通じて「神聖なる愛」と「人間の救済」が一貫したテーマとして表現されています。

第1部:賛歌「来たれ、創造主なる聖霊」(Veni Creator Spiritus)

  • 第1部は、中世のラテン語賛歌「来たれ、創造主なる聖霊」に基づき、キリスト教の神聖なる霊に呼びかける祈りのような音楽です。
  • 圧倒的な合唱とオーケストラが一体となって、壮麗な響きを生み出します。この部分は力強く荘厳で、聴く者に深い感動を与えるスケールの大きい音楽です。
  • いくつかの旋律や動機が繰り返され、次第にクライマックスに向かっていく様子は、まるで「神の降臨」を音楽で表現しているかのようです。

第2部:ゲーテ『ファウスト』第2部からの場面

  • 第2部は、ゲーテの『ファウスト』の最終場面に基づき、ファウストの魂が神の愛に救われる過程を描いています。この部分では、登場人物がオーケストラや合唱に加わり、オペラ的な要素も取り入れられています。
  • 第2部は瞑想的で幻想的な雰囲気が漂い、第1部とは対照的に内面的な探求が進められます。さまざまな声部が入り混じりながら、ファウストが神に導かれる様子がドラマティックに展開されます。
  • 最後は「永遠の女性的なもの」によって魂が救われ、壮大なクライマックスで幕を閉じます。このフィナーレは圧巻で、合唱が天に向かって昇るような響きを奏でることで、霊的な高揚感を聴衆に与えます。

2. 「千人の交響曲」とは?

  • 「千人の交響曲」という名前は、1910年の初演時にマーラーの指揮で実際に千人を超える演奏者が参加したことに由来します。一般的に、オーケストラ、独唱者8人、二重合唱、児童合唱が求められ、その規模の大きさが「千人の交響曲」として名を残すことになりました。
  • しかし、必ずしも千人が必要なわけではなく、あくまで「壮大さ」を象徴する名称として広く使われています。

3. 音楽的特徴

  • 第8番は、マーラーの他の交響曲に比べて、明るく肯定的な響きを持っています。これまでのマーラーが描いた「苦悩」や「孤独」といったテーマが影をひそめ、代わりに「救済」や「愛」という普遍的なテーマが前面に押し出されています。
  • 旋律は複雑でありながらも、親しみやすく、マーラーの特色である劇的なクライマックスが随所に登場します。
  • また、全体を通して一貫した調性(変ホ長調)で統一され、音楽の進行が非常に緻密でスムーズに進むのもこの作品の特徴です。

4. 歌詞とテーマ

  • 歌詞には、ラテン語の聖歌とドイツ語のゲーテの詩が使われ、宗教的テーマと文学的テーマが融合しています。第1部は神聖な霊の降臨を、第2部は人間の救済と神の愛を描いています。
  • 特に第2部では、ファウストの物語を通して、人間の過ちや救済が表現され、聴衆に深い哲学的・宗教的な問いかけを行っています。マーラーはこの作品を通して、人間が愛と神の導きによって「永遠の救済」に到達できるという信念を表現しています。

5. まとめ

マーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」は、彼の作品の中でも最もスケールが大きく、宗教的な崇高さと哲学的な深さを備えた作品です。合唱とオーケストラが一体となり、圧倒的な力強さと美しさで神聖な世界を描き出し、聴く者に壮大な感動を与えます。この交響曲は、マーラーの生涯における「救済と愛の賛歌」とも言える作品であり、マーラーが到達した「音楽による宇宙観」を示す傑作です。

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たいこ叩きのマーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

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第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」強力な合唱。金管はセッション録音と同じようにスタッカート気味に演奏しました。最後はテンポを落としました。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」テンポが良く動いて、音楽の起伏も激しく濃厚です。オケも強力にドライブします。
「われらが肉体の脆き弱さに」情報量の多い音楽。緊張感が伝わってくる静寂感。独唱のバランスやアンサンブルも良いです。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」すごいエネルギーの合唱。オケもすごい咆哮です。熱気に溢れた集中力の高い演奏です。鳥肌が立つようなすごい演奏です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」すごく強烈で壮大です。テンシュテットの癌の手術移行の演奏会はまさに真剣勝負だったのでしょう。オケもこれが最後かもしれないと言う緊張感からか、すばらしい力演を演じています。合唱もものすごいエネルギーの放出です。
「父なる主に栄光あれ」テンポを落としてソプラノ独唱でした。壮絶なクライマックス!すばらしい演奏でした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」強いアクセントで入った弦のトレモロ。弦のヒッィカート一つ一つにも力があり、木管の音も立っています。音楽の振幅が大きく、激しい部分は壮絶です。広がりのある合唱。
「永遠の愉悦の炎」明瞭で声が立つバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」金管はそんなに強くは入りませんでした。バリトンに比べると少し沈みぎみのバス。
「霊の世界の気高い人間がひとり」オケはビンビン鳴ります。抑えた女声合唱は美しい響きです。ダイナミックな表現のオケは見事に鳴ります。
「地上の残り滓を運ぶのは」枯れた響きのヴァイオリン独奏。強い声のアルト独唱。合唱と拮抗するテノール独唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」芯のしっかりとした実在感のあるテノール独唱は表現の幅も広いです。奥行き感のある合唱。テンポも動いて穏やかにゆったりとしたテンポになります。すごく感情のこもった女声合唱。すごく濃厚です。ソプラノ独唱もテンシュテットの指揮に合わせて表現の幅が広いです。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」デッドで実在感のあるソプラノとアルト独唱。地面が割れて湧き出すような金管。表現が統一されていて一体感のある重唱。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」明るいソプラノ独唱。途中でテンポを落として、濃厚に克明に表現します。遠くから柔らかく響く聖母。
「悔い改むる優しき方がたよ」感情の込められたテノール独唱。テンポを落として強い彫琢を刻みます。ティンパニの強烈なクレッシェンドがあったり、凄い表現です。
「移ろい行くものは なべて」ゆっくりとすごく抑えた消え入るような合唱です。合唱が全開になるクライマックス。ホルンも全開です。最後は壮絶な響きでした。

テンシュテットがまだ元気だった頃のすばらしい演奏の記録です。すごい表現力と振幅の大きな音楽は見事でした。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

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第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」はち切れんばかりに軽々と鳴り響きます。もの凄いエネルギーの放出!
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」ソプラノ独唱もオンマイクで鮮明に録られています。バックで静かに歌う合唱も実在感があります。重唱も克明です。ビンビン鳴りまくるトロンボーン。鐘の音もリアルです。
「われらが肉体の脆き弱さに」艶やかなヴァイオリン独奏。これだけ大きな編成にもかかわらず、非常に鮮明に録音されていて、いろんなパートの動きが手に取るように分かります。とても引き締まった筋肉質の演奏です。余分な響きを伴わないシャープな響き。ただ、録音された時代の技術的な限界か、最弱音のレベルを高めに設定していて、実際のダイナミックレンジはそれほど広くはありません。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」この時代にこれだけ鮮明な録音が実現していたことに驚きます。寸分の狂いもない完璧なオケと朗々と歌う独唱陣。この鳴り渡るオケに負けない豊かな声量の合唱。どれをとってもとにかく素晴らしい。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」輝かしい第一主題の再現。独唱はオケに比べて大きめの音量でミキシングされています。とにかく気持ちよく鳴り響くオケです。
「父なる主に栄光あれ」児童合唱に続いて、声量豊かなソプラノ独唱。暗闇に光り輝く神が現れて一面を眩く照らすような神々しい雰囲気がありました。「大宇宙が響き始める様子」を見事に再現し一気呵成に第一部を聴かせてくれました。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り」鋭い弦のトレモロ、空気を震わすコントラバスのピチカート。くっきりと浮かび上がる木管。筋肉質のホルン。美しいシンバルの弱音。音楽の輪郭をくっきりと描き出し、曖昧さの一切無い明快な音楽です。竹を割ったようなすっきりと割り切れた音楽が、この作品のように「生」を肯定的に表現した音楽にはぴったりです。
「永遠の愉悦の炎」表情の幅が広いバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」輝かしいトランペット。バスの独唱の後ろでも遠慮なく演奏されるオケ。独唱のバランスを録音で上げているので問題ないですが、実演では完全に独唱をかき消していると思います。
「霊の世界の気高い人間がひとり」トランペットが児童合唱に遠慮なくクレッシェンドします。児童合唱は天使と言うよりはもっと現実的な歌声です。児童合唱をかすめ通るブラスセクションの上手さには舌を巻きます。とにかくすばらしい。
「地上の残り滓を運ぶのは」艶やかなヴァイオリン独奏。豊かなアルトと児童合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」伸びやかなテノール独唱。テノールとホルンのアンサンブルもぴったり。すばらしいテノールの歌唱力。とにかく良く鳴るトランペット。ハープに乗る弦もとても現実的です。波が押し寄せるような合唱に続いてオケに溶け込むソプラノ独唱。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」くっきりと浮かび上がるソプラノ独唱。突然立ち上がる金管。ヴァイオリンと独唱の美しい絡み。独唱の間でもオケの動きははっきりと聞き取れます。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」やはりすごく現実的な児童合唱。厚く深みのあるコントラバス。
「悔い改むる優しき方がたよ」地面から湧き上がるような合唱とオケのテュッティ。強力なテノール独唱。次から次からパートが変わって押し寄せる合唱。そしてブラスの強烈な絶叫。
「移ろい行くものはなべて」一体感のある合唱。空気を突き破って届くブラスの咆哮。宇宙が鳴り響くような見事なブラスの響き。壮大なクライマックス!

現実的すぎる部分も若干ありましたが、オケのパワーを如何なく発揮したすばらしい演奏でした。

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

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第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」豊かな残響の中伸びやかな合唱が響きます。スタッカートぎみのトランペット。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」距離感のある独唱。ステージ上にいる独唱を客席の少し後ろで聞くような良い音場感です。とても美しい合唱の弱音部。表現も豊かです。ティンパニの打撃に間があります。沈み込むようなホルンの咆哮。
「われらず肉体の脆き弱さに」マットなヴァイオリン独奏。どのパートも豊かな表情です。テンポも動きます。テンシュテットの作品への共感が伺われます。とても柔らかい表情の独唱。同じようにソフトにサポートするオケ。とても良い演奏です。
「そが光にてわれらが感ずる心を高めたまえ」テュッティで合唱が豊かに広がり、ブラスが突き抜けてきます。重量感のあるパイプオルガンが存在を主張します。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」包み込むような豊かな合唱がとても心地よい雰囲気です。
「父なる主に栄光あれ」テンポが動いてとても強い感情が込められているようです。最後はritして終えました。パイプオルガンのペダルの音に乗る輝かしいブラスセクション。「大宇宙が響き始める」音楽でした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」繊細な弦のトレモロ。憂鬱な雰囲気を醸し出す木管。静寂の中から次第に音楽が盛り上がり、また波が引いて行くように静まります。表現力豊かなホルンの強奏。小さくピンポイントで定位するチャーミングな表情のフルート。聴き手を引き付ける合唱の弱音。とても神秘的な雰囲気がピーンと張り詰めていて見事です。
「永遠の愉悦の炎」とても自然なバランスのバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」バスの独唱とバックのオケの絶妙のアンサンブル。とても美しいオケの響き。
「霊の世界の気高い人間がひとり」児童合唱もとても整然として整っていて非常に上手いです。
「地上の残りの滓を運ぶのは」ここでも天空から降りそそぐような児童合唱がとても良いです。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」豊かな声量で訴えかけてくるテノール独唱はすごい表現力です。天国を感じさせるハープとオケの演奏。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」アルト独唱も表現の幅が広い。この演奏では木管楽器がとても魅力的な音を聴かせてくれます。
「傾けさせたまえ、世の類いない聖母さま」児童合唱がとても優秀です。場面によってガラッと声質を変えます。ソプラノも遠近感があるような歌唱が見事です。
「悔い改むる優しき方がたよ」地面から湧き上がるような合唱。空を舞うような児童合唱。とても色彩豊かなオケ。
「移ろい行くものはなべて」神秘的な女声合唱が独唱と相まって複雑なハーモニーを奏でます。パイプオルガンに乗っかる合唱が生への賛歌を歌い上げます。最後は大きくクレッシェンドして壮大なクライマックスでした。

見事にこの作品を描き切りました。すばらしい演奏でした。

エド・デ・ワールト/オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団

ワールト★★★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」豊かな響きを伴って壮大に響きます。凄く大きい編成のような感じがします。金管の響きも輝かしい。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」太い声のソプラノが感情を込めて歌います。独唱に合わせて抑揚のある合唱。金管の輝かしい響きはすばらしい。ゴツい響きの鐘。
「われらが肉体の脆き弱さに」一つ一つの音の動きがとても鮮明です。盛り上がる部分もしっかりとした音量で盛り上げました。細かく動く部分は残響が多いのもあってか、あまり緊張感はありません。金管はとにかく良く吹きます。太い声のバス。奥から突き抜けて来る金管。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」豊かに広がる合唱。バランス良く響き渡る金管。独唱も柔らかく溶け込んでいます。とにかく壮大です。ホールいっぱいに響き渡るスケール感は見事です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」充実した分厚い響き。まさに大宇宙が響き始める様子です。
「父なる主に栄光あれ」感情の込められた独唱。合唱が入ると一気に空間が広がります。すばらしい演奏でした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」緩やかな導入。ゆったりとしたテンポで伸びやかに歌う木管。さらにテンポを落として濃厚に刻み付けて行きます。オケを大きく鳴らして振幅の大きな表現。ピーンと通るフルート。
「永遠の愉悦の炎」柔らかいバリトン独唱。起伏の大きな歌唱です。終盤にオケも大きく盛り上がります。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」盛り上がりを引き継いだトランペット。バスの独唱も柔らかい。合い間のオケも十分な存在感です。
「霊の世界の気高い人間がひとり」潤いがあって豊かな響き。天使の歌声のような女声合唱。見事に気持ちよく鳴るオケ。
「地上の残り滓を運ぶのは」美しいヴァイオリン独奏の後ろで揺れ動く女声合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」柔らかく語り掛けるようなテノール独唱。透き通るようなオケの響きが美しい。女声独唱も伸びやかで柔らかく美しい。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」ゆったりと非常に伸びやかで瑞々しいソプラノ独唱です。オケの響きもとても美しい。轟き渡るトランペット。立体感のある音場空間。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」残響を伴って美しいソプラノ独唱。マンドリンもキラキラとした響きで美しい。高音域も伸びやかで豊かな声量のソプラノ独唱でした。さらに遠くから豊かな残響をともなった聖母。
「悔い改むる優しき方がたよ」柔らかく太いテノール独唱。スケール大きく盛り上がるオケ。美しい弦。壮大な合唱。音の洪水のように次々と湧き上がる音楽。ビンビン鳴るトロンボーン。
「移ろい行くものは なべて」ゆっくりとしたテンポで厳かな雰囲気の合唱。突出するソプラノ独唱。揺れのある音楽。力強い合唱。鳴り渡る金管。この曲を結ぶにふさわしい壮大な終結でした。

残響豊かなホールで、とてもスケールの大きな演奏は、まさに大宇宙が響き始める様子でした。すばらしい演奏だったと思います。
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ベルナルド・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1988年

ハイティンク★★★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」すごく編成が大きいような壮大で深い響きです。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」とても良く響く独唱陣。オケも気持ちよく鳴り響きます。
「われらが肉体の脆き弱さに」遠くから響くような合唱。細く美しいヴァイオリン独奏。全体の響きに溶け込む独唱。奥行き感のある鐘。表現が締まっていて、とても俊敏に反応するオケ。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」緊張感のある心地よい響きです。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」すごいエネルギー感。輝かしいブラスの響きもすばらしい。深い合唱の弱音。
「父なる主に栄光あれ」すごく声が伸びるソプラノ独唱。合唱に奥行き感があって立体的な空間演出です。最後は圧倒的なすばらしい響きでした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」すごく抑えた弦のトレモロ。続く部分も抑えた音量で、和音も見事に響きます。テンポも動いて、ゆったりと濃厚な表現もします。一つ一つの音に力があって、とても深い音楽です。弱音は消え入るように注意深く演奏されます。
「永遠の愉悦の炎」豊かな歌声のバリトン。揺れがあってとても音楽的です。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」しっかり金管が出てきて色彩がくっきりしています。朗々と感情を込めて歌うバスの後ろで動くオケも攻撃的に出入りしていて、すごくメリハリの効いた音楽です。
「霊の世界の気高い人間がひとり」ホールの響きを伴って豊かな女性合唱。オケが色彩豊かに響きます。気持ちよく鳴り響くブラスセクション。
「地上の残り滓を運ぶのは」細身で静かなヴァイオリン独奏。柔らかいアルト独唱。美しい女性合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」伸びやかなテノール独唱。オケも色とりどりの色彩で独唱を支えます。登場する楽器がきりっと立っています。細身で艶やかなヴァイオリン独奏。優しく穏やかなソプラノ独唱。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」響きを伴って伸びやかなソプラノ独唱。オケの色彩も深く濃厚です。金管も奥深くから響くような感じです。表現力豊かな重唱。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」奥行き感を感じさせ豊かな児童合唱。振幅の大きいソプラノ独唱。天からかすかに聞こえるような聖母の歌声。
「悔い改むる優しき方がたよ」湧き上がるようなオケと合唱の響き。表現の幅が広いテノール独唱。クライマックスへ向けて次第に熱気が込み上げてきます。オケが軽々とすごいパワーを見せつけます。
「移ろい行くものは なべて」神秘的で深い合唱。ゆっくりとこの曲の最後を味わうような弱音部。鳥肌が立つような凄いエネルギーで壮大なクライマックスです。

すばらしい統率力でこの大曲をまとめ上げたハイティンクの手腕は凄いものです。オケも独唱、合唱も上質で極上のものですばらしい演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」の名盤を試聴したレビュー

マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」2

たいこ叩きのマーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」名盤試聴記

クリストフ・エッシェンバッハ/パリ管弦楽団

エッシェンバッハ★★★★☆
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」ゴツンと重い響きのパイプオルガン。合唱の響きに比べると控え目に感じる金管。速めのテンポできびきびと進みます。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」深い感情移入は無い独唱。広がりのある合唱の弱音。奥まっている金管。鐘が入る部分の弦の揺れはなかなか良かったです。
「われらが肉体の脆き弱さに」カデンツァのように少し遊びのあるヴァイオリン独奏。盛り上がった後の、細かい動きはかなり音量を落として緊張感のあるものでした。ほとんど歌わないフルート。柔らかい声質のバス。遠くで響く金管。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」テンポを速めて、歓喜の表現です。次第に感情が高ぶってきたのか壮大なスケールです。渾然一体となった物凄い音響。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」圧倒的な合唱のエネルギー感。くっきりと浮かび上がる独唱。
「父なる主に栄光あれ」やはり合唱のパワーに比べると、オケは少し押されているような感じがしますが競い合うように歌い上げる圧倒的な熱演です。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り」鋭いアクセントで入った弦のトレモロ。緊張感のある冷たい空気感。寂しげな雰囲気を上手く表しています。和音の響きも深く充実した響きです。深みのある余韻を伴って響く合唱。
「永遠の愉悦の炎」芯のしっかりした声質のバリトン。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」軽く演奏するトランペット。情感豊かな独唱。オケの動きも克明に表現しています。
「霊の世界の気高い人間がひとり」ゆったりとして、奥行き感を感じる合唱。オケだけになる部分でテンポを速めました。テンポはよく動いていますが、オケも合唱もよく付いて行っています。
「地上の残り滓を運ぶのは」ここでもカデンツァのように比較的自由に弾くヴァイオリン独奏。穏やかな女声合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」感情が込められて硬質で実在感のあるテノール独唱。訴えかけてくるようなヴァイオリン。落ち着いた足取りの指揮です。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」若々しいソプラノ独唱。独唱の強弱にあわせるオケ。ゆっくりとしたテンポで進みます。控え目な金管。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」僅かに遅いテンポでマンドリンに入りました。現世的な児童合唱。
「悔い改むる優しき方がたよ」ゆったりとしたテンポで、たっぷりと歌うテノール独唱。バックのオケや合唱も克明です。起伏の大きな合唱。
「移ろい行くものは なべて」非常に厳かな雰囲気の合唱。控え目なソプラノ独唱。クレッシェンドして一旦止めて、女性合唱だけ残して、再び演奏を始めました。最後はゆっくりと、バンダも含めて壮大なクライマックスでした。

ライヴでありながら、静寂感と壮大なクライマックスのスケール感は見事でした。
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レナードバーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」柔らかいパイプオルガン。遠い合唱。輝かしい金管ですが、あまり響きに厚みが感じられません。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」あまり大きな感情移入をしていないような独唱。弱音の合唱は美しい。次第にテンポを速めます。奥まったところで響く感じの金管。鐘は強調されています。
「われらが肉体の脆き弱さに」合唱もヴァイオリン独奏も控え目で抑えた表現です。一旦盛り上がって、急激に静かになった後は、躍動感のある、めまぐるしい動きです。感情のこもったフルート。また、落ち着いたどっしりとした響きになります。やはり奥まった金管。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」歓喜に溢れた表現です。追い立てるようにテンポを上げたり、テンポの変化が頻繁で、劇的な感情表現です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」あまり絶叫しない合唱。輝かしい金管。ホルンの咆哮もすさまじい。途中でテンポを落としてこってりとした表現もありました。
「父なる主に栄光あれ」テンポを速めて切迫した表現もありました。オケと合唱が渾然一体となった演奏はなかなか充実しています。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」フワッとした弦のトレモロの入りでした。深みのある音楽。テンポが動いて強い感情移入です。強い意志と振幅の大きな表現。すごく抑えた集中力の高い合唱。ピーンと張った緊張感がすばらしい。
「永遠の愉悦の炎」感情を込めて朗々と歌うバリトン。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」声質が統一感のあるバスが引き継ぎます。バスの後ろで動くオケの緊張感も維持しています。
「霊の世界の気高い人間がひとり」一つ一つの音に力があって、集中力の高さが感じられます。輝かしくビンビン響く金管。
「地上の残り滓を運ぶのは」憂鬱な雰囲気のヴァイオリン独奏。次第に盛り上がる女声合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」透明感が高く優しいテノール独唱。後ろで支えるオケも繊細な表現です。優しく染み入るような繊細な弦の合奏。ゆっくりと波が押し寄せるように次から次から歌う合唱。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」張りのあるソプラノ独唱。僅かに沈むアルト独唱。ピンと立ち上がる輝かしい金管。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」ゆっくりとしたテンポでマンドリンが演奏します。楽しげなソプラノ独唱。微妙なテンポの変化で感情移入を伝えようとするバーンスタイン。すごく感情のこもったソプラノの絶叫。
「悔い改むる優しき方がたよ」力の感じられるテノール独唱。合唱もオケも力がこもって熱気に溢れてきます。
「移ろい行くものは なべて」荘厳な合唱。最後の合唱の部分で大きくテンポを落としてたっぷりとした表現です。轟き渡るトランペット。

演奏が進むにつれて熱気が溢れてきました。ただ、響きに厚みがなく壮大なスケール感が無かったのが残念です。
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リッカルド・シャイー/ライブツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

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第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」重いパイプオルガン。ゆったりとしたテンポで壮大なスケール感です。マイルドな響きで、落ち着きがあります。金管の響きもとてもマイルドです。途中でテンポが動きました。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」淡々と歌われる独唱、合唱の弱音は非常に抑えられたものでした。オケも細心の注意を払って演奏する弱音部。金管も全体の響きに溶け込んでいるような感じです。
「われらが肉体の脆き弱さに」控え目でクローズアップされないヴァイオリン独奏。盛り上がりも急激ではなく、なだらかです。その後の細かな動きもどっしりとしています。大きく歌うフルート。大河の流れのようにゆったりと音楽が流れて行きます。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」ここでもゆったりとしたテンポでブレンドされたマイルドな響きです。巨大な物がゆっくり動くような重量感です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」柔らかい響きのトゥッティ。ゆったりと確実な歩みです。
「父なる主に栄光あれ」良くブレンドされて突出するパートはありません。とてもマイルドで豊かな響きです。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」シンバルが先に鳴ってから弦のトレモロが始まりました。穏やかな雰囲気です。安らぎさえも感じるような穏やかさです。音量が一段上がって、悲壮感を感じるような響きです。弱音の合唱もあまり緊張感はありませんがくつろげる響きです。
「永遠の愉悦の炎」オフマイクぎみで柔らかいバリトン。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」軽い金管。必要以上の感情移入はしていない、バスの独唱。後ろで動くオケはあまり克明に捉えられていません。
「霊の世界の気高い人間がひとり」間接音を含んで、この世のものとは思えないような柔らかい響きの合唱。金管も非常に柔らかい。
「地上の残り滓を運ぶのは」細身のヴァイオリン独奏。アルト独唱も豊かな響きにブレンドされて柔らかい。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」テノール独唱の後ろで、柔らかく控え目で神経の行き届いたオケ。オケの強奏も柔らかい。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」オケに溶け込むようなソプラノ独唱。フワーッと広がりのある金管の強奏。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」ソフトな響き。サラッとした児童合唱が美しい。ソプラノ独唱のクライマックスでテンポを落としました。聖母が遠くから響いてきます。
「悔い改むる優しき方がたよ」太く柔らかテノール独唱はあまり感情移入していないように感じます。ソフトな金管。
「移ろい行くものは なべて」静かに荘厳に歌い始める合唱。バンダも含めてマイルドな金管。圧倒的なエネルギー感はありませんでした。

ソフトな響きで圧倒的なエネルギー感はありませんでした。ライヴ収録では難しいのか。

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マルクス・シュテンツ/ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

icon★★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」分厚い響きのパイプオルガン。深みのある響きの合唱。速いテンポでグイグイと引っ張って行きます。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」クローズアップされ、感情の込められた独唱。広がりのある合唱の弱音。独唱の絡みがとても有機的です。独唱に比べると金管は奥まっています。鐘は拍を間違えているようです。
「われらが肉体の脆き弱さに」くっきりと浮かび上がるヴァイオリン独奏。合唱にも厚みがあります。突然動き出す音楽。バスの独唱が入る前の揺れは良かったです。飛びぬけては来ない金管。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」速いテンポで進みます。金管はあまり強調されません。独唱陣だけになる部分で一旦テンポを落としました。次の「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」へ向けて、すごくテンポを落としてねばっこくたっぷりとした表現です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」凄く速いテンポであっさりとした冒頭です。合唱の弱音は余韻が残るようで美しかったです。次々と浮き上がる独唱。
「父なる主に栄光あれ」速めのテンポで祝祭的な雰囲気満点です。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」大きめに入ってデクレッシェンドした弦のトレモロ。割と大きめの音量で緊張感の無い演奏です。ピッィカートが終ってアルコの部分から少しテンポが一旦速くなりましたがすぐにテンポは落ち着きました。美しい合唱。
「永遠の愉悦の炎」伸びやかで明瞭なバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」軽く音を短めに演奏したトランペット。バリトンに比べると若干硬いバス。独唱と対等のバランスで演奏するオケ。
「霊の世界の気高い人間がひとり」速めのテンポです。どのパートも明瞭に響かせています。合唱の表現もはっきりくっきりしています。
「地上の残り滓を運ぶのは」あまり強弱の変化が無かった女声合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」芯のしっかりしたかなり大きな存在感のテノール独唱。後ろのオケもかなりしっかりと音を出します。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」豊かな表現のソプラノ独唱。あまり大きな起伏は作りませんでした。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」すごく感情をこめたソプラノ独唱。爽やかな児童合唱。ソプラノの高音にあまり伸びが無かったように感じました。
「悔い改むる優しき方がたよ」テノール独唱と合唱のコントラストがすばらしい。感情は抑えぎみでした。マンドリンのトレモロも聞こえます。軽いトランペット。力強いトロンボーン。
「移ろい行くものは なべて」ハーモニーが美しい合唱。天から響くようなクライマックスの合唱。柔らかいトゥッティの響きで終わりました。

速めのテンポできびきび進む音楽で、祝典的な盛り上がり満点の演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」の名盤を試聴したレビュー

マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」3

たいこ叩きのマーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」名盤試聴記

ジュゼッペ・シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」力強い合唱。オケも強力です。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」少しゆったりとしたテンポで歌われます。合唱の弱音も引き込まれるように魅力的です。
「われらが肉体の脆き弱さに」ホルンの咆哮。柔らかい鐘の響き。艶やかで表情豊かなヴァイオリン独奏。ミュートを付けたトランペットの鋭い音。オケの響きに溶け込むような柔らかい独唱。
「そが光にてわれわれが感ずる心を高めたまえ」合唱の圧倒的な響きにオケが押されぎみで、ブラスセクションの輝かしい響きが聞かれません。ちょっとモノトーンに近いような色彩感です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」圧倒的な合唱。独唱も溶け合っていて、強く主張してはきません。
「父なる主に栄光あれ」合唱を中心に音楽が作られているようで、マーラーが言う「大宇宙が響き始める様子」とは違うような感じがしました。

第二部、 「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」奥行き感のある弦のピチカートにホールトーンが乗った木管が次々と現れますが、ここも色彩感に乏しい。編成の大きい曲の録音なので、全体を捉えることに重きを置いていて、一つ一つが楽器の色彩感は犠牲になっているようです。合唱は響きを伴ってとても奥行き感があります。
「永遠の愉悦の炎」柔らかいバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」バスの独唱も柔らかい響きです。独唱の後ろで動くオケはモノトーンのような感じです。
「霊の世界の気高い人間がひとり」後半、少し輝かしいブラスの響きが聞かれました。
「地上の残り滓を運ぶのは」ヴァイオリン独奏はとても艶やかです。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」高音がちょっとキツそうなテノール独唱。流れるようなハープと弦の演奏。抑制の効いた演奏で、爆発は決してしません。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」少年合唱の音程の怪しいところがありました。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」ソプラノ独唱も突き抜けてはきません。
「悔い改むる優しき方がたよ」テノール独唱に呼応する合唱が広大な空間を再現します。ここでも非常に抑制されたブラスセクション。
「移ろい行くものはなべて」とても整って美しい合唱の弱音。合唱からわずかに浮かび上がるソプラノ独唱。次第に盛り上がりますが、金管が突き抜けてくることはありません。深いドラの響きです。全体の響きの中から僅かに浮かび上がる金管の旋律で終えました。

大きい編成の割りに突き抜けてくるパートがなく色彩感に乏しい演奏で、大宇宙が響くと言うような輝かしさはありませんでした。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈 マーラー「千人の交響曲」★★★
第一部、「来たれ、創造の主なる聖霊よ」すごく遅いテンポで雄大な冒頭です。テンポの遅さが少し鈍重な感じもあります。
「いとたかき恵みもてみたしたまえ」地声が強い独唱。少し間延びしたような音楽です。金管はビンビンとは鳴りません。ボーっと言う音です。
「われらが肉の弱きを」大阪フィルもこの時代の音色は今ひとつで、味わいがありません。仏教で使う大きい磬子のような鐘の音。どうしても歌声として鳴り切っていない独唱が気になります。
「光もて五感を高め」マーラーが「大宇宙が響き始める様子」と言った音楽にしては、響きが硬く伸びやかさがなく、色彩感にも乏しくマットな響きです。
「来たれ、創造の主なる聖霊よ」タンギングと音の出が合わないようなトロンボーン。硬い独唱。児童合唱がとても良い雰囲気を出しました。
「主なる父と、また」児童合唱はなかなか良いです。遅いテンポで雄大な音楽を作ろうとしているようですが、オケが鳴り切らないので豊麗な音楽にはならないところが残念です。

第二部、「森はこなたに揺らぎ」今ひとつ鳴りの悪い木管。しかし、音楽の流れは自然で、安心して音楽に身をゆだねていられます。オケの音色になれてしまえば、スケールの大きな音楽を作ろうとしているのが伝わってきます。作為的なところもなく作品に堂々とぶつかって行っている感じがします。響きに乏しい合唱もやはり気になります。
「永遠なる法悦の炎」声量不足か、オケから浮かび上がらない独唱。音程の怪しい木管。
「岩の断崖が、私の足もとで」当時の関西音楽界の総力を結集しての演奏なのだろうとは思いますが、やはり力量不足は否めないです。
「霊界の気高い人間が」児童合唱が時に透明感の高い歌声を聞かせることもありますが、やはり音程や響きの浅さがあります。
「地上の残り屑を運ぶことは」朝比奈の指揮は非常に落ち着いたテンポで堂々と進みます。
「世界を支配したまう最高の女王よ」艶やかな弦。細い声の独唱。テューバの存在感がとても大きいです。
「パリサイびとの嘲りにも関わらず」金管の強奏部分も絶叫することなく自然な流れです。
「世にも類もない御方よ」児童合唱がいかにも児童らしく可愛いのが良いです。
「なべて悔いを知る優しき者よ」力みのない自然な盛り上がり。
「すべて無常のものは」次から次から波が押し寄せるように音が押し寄せて来ます。ミキシングで不自然な部分もありましたが、堂々と終えました。この1972年に実際に1000人を擁して、「千人の交響曲」を演奏した偉業に対して敬意を表したいと思います。

技術的な問題はたくさんありますが、この時代にこの大曲を関西の音楽界挙げて取り組んだ記録として貴重なものだと思います。

マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」倍音を含んだ豊かな響きのパイプオルガン。高らかに歌われる合唱。僅かにマットな響きのブラスセクション。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」ゆったりと伸びやかに歌われる独唱。静寂感のある合唱の弱音。金管の強奏部分でもあまり音は迫って来ません。
「われらが肉体の脆き弱さに」キリッと浮かび上がるヴァイオリン独奏。後ろで合唱がゆっくりと流れます。細かな動きの部分もあまり雰囲気は変わらずに進みます。あまり表情の無いフルート。大きめに録られている独唱。全体の響きに埋もれる金管。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」残響成分をあまり含んでいないので、トゥッティのスケール感はあまり大きくありません。また、マットな響きのブラスセクションが色彩感を乏しく感じさせますが反面独唱は艶やかです。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」速いテンポで突入しました。くっきりとしている独唱陣。途中テンポを落とした部分もありましたが、基本的には速いテンポで進みました。
「父なる主に栄光あれ」マットな金管と残響成分の少なさから編成が小さく感じます。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」ふわっと始まった弦のトレモロ。しばらくの緊張の後、穏やかな演奏です。極めて少ない人数で歌っているような合唱。
「永遠の愉悦の炎」深い感情を込めるバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」鋭く突き抜けるトランペット。バリトンに続いて感情のこもったバスの独唱。合い間に入るオケの動きも鮮やかです。
「霊の世界の気高い人間がひとり」小さく定位するフルート。伸びやかさの無い合唱。
「地上の残り滓を運ぶのは」太いヴァイオリン独奏。平板な女声合唱でした。
「ああ、世界の統べたもう最高の女王よ」あまり伸びやかさが無いテノール独唱。グッと抑えられた合唱。穏やかなオケの弱音。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」優しい声質と表現のソプラノ独唱。奥まって響く金管。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」聖母は予想外の場所からの歌唱です。
「悔い改むる優しき方がたよ」細身のテノール独唱。大きな感情表現はせずに抑えた表現でした。抑えぎみで軽い金管。静寂感のある木管。
「移ろい行くものは なべて」内に込めるように静かに歌い始める合唱。最後は、圧倒的なエネルギー感はありませんでした。

残響成分を含まない録音で、編成が小さいように感じる演奏で、大宇宙が響き始める様子とは程遠いような感じでした。
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レイフ・セーゲルスタム/デンマーク国立放送交響楽団

セーゲルスタム★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」セーゲルスタムにしては珍しく速めのテンポで、コンパクトな響きです。オケも控え目な感じがします。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」テンポを落としてゆったりと歌います。とても静寂感があります。独唱も絶叫することなく美しいです。金管も絶叫しません。テンポは良く動きます。
「われらが肉体の脆き弱さに」透明感のある合唱。艶やかなヴァイオリン独奏。とても感情の込められた独唱。テンポは良く動き、遅い部分ではテンポを落としたっぷりと表現します。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」豊かなホールの響きも伴って壮大な合唱。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」速めのテンポで大きな頂点ではありませんでした。その後の弱音部ではテンポを落として歌います。清涼感があって爽やかな合唱。オケとパイプオルガンになる部分の前からかなりテンポを落として濃厚な表現でした。
「父なる主に栄光あれ」強大なエネルギーの放出はありませんが、美しい演奏でした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」フワッとしたアクセントで入った弦のトレモロ。テンポを落として深く歌うオケ。音が強い力を持って、心に刻まれることは無く、サラッと流れて行きます。人数が少ないように感じる小さくまとまった合唱。
「永遠の愉悦の炎」離れたところから歌うバリトン。オケに埋もれてしまいそうです。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」そんなに強くは吹かなかった金管。バスも遠くから聞こえます。離れていて、独唱の表情が分かりづらいです。
「霊の世界の気高い人間がひとり」豊かでエネルギー感があって美しい女声合唱。金管はあまり強く吹かないので、色彩感は今ひとつです。
「地上の残り滓を運ぶのは」艶やかなヴァイオリン独奏。柔らく声量もあり表現力豊かなアルト独唱。合唱の中でも存在を保つテノール独唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」少し遠目で、生々しさは全く無い、テノール独唱。若干フワッとした響きで、締まった緊張感はあまり感じません。ゆったりと穏やかに音楽は流れて行きます。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」清潔感のある美しいソプラノ独唱。テンポはゆったりとしています。金管は抑え気味で、大きな振幅はありません。重唱は線が細くあまり強い印象は残りませんでした。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」ここも遅めのテンポです。浅い響きの児童合唱。スタジオ録音の折り目正しい、よそ行きのような表現が、切実な主張を弱めているようです。聖母は少し遠い場所から響いてきます。
「悔い改むる優しき方がたよ」美しいテノール独唱。合唱も含めて、少しこじんまりとまとまっている感じでスケール感を感じません。柔らかい金管。音像が小さく、ミニチュアのように小さいステージを遠くから眺めているような感じの響きです。
「移ろい行くものは なべて」とても抑えられた合唱。美しいですが、開放されたようなエネルギーの爆発はありません。

スタジオ録音と言うこともあり、即興的な盛り上がりなどはなく、几帳面で折り目正しい演奏で、抑制された表現が一貫していて、宇宙が鳴り響く有様を表現するような壮大な表現はありませんでした。
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クリスティアン・ティーレマン/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 2010年

ティーレマン★★
第一部「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」ゆったりとしたテンポです。合唱に比べると金管がしっかりと響いてきます。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」合唱の弱音は抑えられていますが、豊かです。抑揚がはっきりしていて、弱音部と強奏部の対比が見事です。
「われらが肉体の脆き弱さに」控え目ですが、存在感のあるヴァイオリン独奏。盛り上がった後の、細かい動きの部分では、そんなに音量は落とさずに骨太の表現です。弦の揺れの後、バスから始まる独唱は次々と波が押し寄せるように色彩が入れ替わり見事でした。金管がしっかりと響きます。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」ゆったりとしたテンポで豊かな響きです。テンポは遅いですが、スケール感はあまり感じません。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」速めのテンポで入りました。合唱の人数が少ないのか、大きな空間を感じさせる響きはありません。
「父なる主に栄光あれ」非常にコンパクトにまとまっている感じがして、非日常体験ができるような演奏ではありません。最後はゆったりとしたテンポで壮大に終わりました。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」グッと押すような弦のトレモロ。シャープな木管。探るように進む減のピッィカート。途中でオケをかなり鳴らして躍動的な表現です。かなり抑えられて神秘的な合唱。
「永遠の愉悦の炎」柔らかいですが、あまり感情移入しないバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」軽いトランペット。バスもあまり感情移入はしていないようです。バックのオケはしっかり鳴っています。
「霊の世界の気高い人間がひとり」躍動感のある演奏です。やはり合唱の規模はあまり大きくないような感じの演奏です。
「地上の残り滓を運ぶのは」細い響きのヴァイオリン独奏の後ろで抑揚のある女声合唱。独唱の後の女声合唱の部分はゆっくり始まって次第にテンポを速めました。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」あっさりとしたテノール独唱。オケは豊かに響きます。浅い響きの合唱。女声独唱も浅い響きであまり訴えかけて来ません。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」少し遠くて柔らかいソプラノ独唱。少しくすんだ響きの金管。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」感情を抑えたようなソプラノ独唱ですが、安らぎ感があります。最後は思いっきり吐露しました。奥行き感の無い児童合唱。間接音を豊かに含んだ聖母。
「悔い改むる優しき方がたよ」優しい声のテノール独唱。しっかりと響く金管。
「移ろい行くものは なべて」緩い雰囲気の合唱。あまり突出しないソプラノ独唱。テンポを上げてクレッシェンド。あまり壮大に響かないクライマックス。

非常にスケールの小さな演奏は、全く曲に合っていませんでした。
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ウィン・モリス/ロンドン交響楽団

モリス
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」ゴロゴロと言うような響きのパイプオルガン。ゆったりとしたテンポで空間への音の広がりを感じさせます。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」独唱とは呼応しない合唱。ここでもゆったりとしたテンポで、合唱、金管とも強奏部分をかなり強く演奏しています。
「われらが肉体の脆き弱さに」自由に揺れるヴァイオリン独奏。後ろの合唱も抑揚があります。盛り上がりの後の細かな動きの部分もテンポは遅く確実な歩みです。あまり表情の無いフルート。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」ここでもゆったりとしたテンポですが、力んでいるのか響きが若干硬いようです。次々に現れる楽器の色彩感は濃厚です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」ここでもゆったりと、そして豪快に金管を鳴らします。弱音部があまり無く、常に押して来る感じで、聴いていて疲れて来ます。
「父なる主に栄光あれ」オケと合唱の力比べのような競い合いのような雰囲気でした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」ここでも非常に遅いテンポです。間を持たせるのが大変そうな木管。音楽の振幅は大きいですが、あまりの遅さにこちらの集中力が持たなくなります。モリスには思い入れがあるのかも知れませんが、ねちっこい表現にも辟易としてきます。演奏している方も良く付き合っているなぁと思います。
「永遠の愉悦の炎」くっきりと浮かび上がるバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」しっかりと響くトランペット。はっきりオケとは分離するバス。
「霊の世界の気高い人間がひとり」とても激しい演奏です。合唱もオケもかなり強く演奏しています。フルートの部分からテンポはゆっくりになりました。
「地上の残り滓を運ぶのは」サラッとした肌触りで美しいヴァイオリン独奏。女声合唱は大きくクレッシェンドしました。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」ナチュラルなテノール独唱。豊かに広がる合唱。ハープが強調されています。全ての音が前に出てくるので、聴いていて疲れてきます。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」ここでもゆったりとしたテンポで太い声のソプラノ独唱です。表現の幅が広いアルト独唱。空間に大きく広がるトゥッティ。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」ここでもゆったりとしたテンポです。近くで歌われる児童合唱。シャープに定位するソプラノ独唱。近くて明瞭な聖母。ちょっと近すぎのような感じがします。
「悔い改むる優しき方がたよ」壮大なスケールの合唱の広がり。割と淡々としたテノール独唱。硬質なトロンボーン。
「移ろい行くものは なべて」遠くから柔らかく響く合唱はとても美しい。ただ、音楽の歩みはあまりに遅く、こちらが演奏に集中できなくなります。オケの金管とバンダが左右に分かれています。

あまりに遅いテンポ設定で、聞きとおすにはかなりの覚悟が必要です。
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ハム・シンイク/KBS交響楽団

シンイク
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」柔らかい冒頭。トロンボーンなどはビンビンと響かず、ボーッと言う響きに近いです。合唱が弱い感じがします。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」爽やかな合唱の響きです。指揮者はとても若いです。独唱の声量も足りない感じがします。テンポもあまり動かず、音楽の起伏もあまり無く平板なイメージです。
「われらが肉体の脆き弱さに」穏やかな演奏で、表現に厳しさが無く、ちょっと鈍い感じがします。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」合唱のエネルギー感が明らかに不足しいます。金管のパワーも不足している感じがします。弱音と強奏の差があまり無く、ぐっと迫ってくるような音楽ではありません。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」圧倒的なパワーが不足しています。表現が緩く、ダラダラッと音楽が何となく流れて行っているようで残念です。
「父なる主に栄光あれ」児童合唱もオケに消されるような感じで弱いです。最後もパワーを感じることは無く、大きな盛り上がりはありませんでした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」響きに深みは無いものの、和音などはきっちりと響いています。録音のせいなのか、全ての音が前に出てきてしまって、奥行き感が非常に乏しい。作品に感情移入することはあまり無く、さらっと流れて行きます。
「永遠の愉悦の炎」まだ人間の声に近いバリトン独唱。最後は大きく歌いますが、声量が不足しているように感じます。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」金管が飛び抜けてこないので、色彩感に乏しく感じます。この部分ではバスの独唱もオケも厳しい表現でした。金管が思い切って吹かないので、色彩感の乏しい、緩い演奏になっているようです。
「霊の世界の気高い人間がひとり」ゆっくりとしたテンポで練習しているような雰囲気です。抑揚を付けて表現する女声合唱。オケのパワーが不足しているのか、金管の積極性が足りないのか、とても色彩が淡白です。
「地上の残り滓を運ぶのは」合唱に比べると大きいヴァイオリン独奏やフルート。女声合唱が生の声に近いです。テノールがオケに負けて埋もれてしまいます。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」やはり人間の声に近いテノール独唱。ヴァイオリンの太く、繊細さを感じさせません。ヴァイオリン独奏は艶やかでした。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」独唱もオケも表現が緩く締まった緊張感や俊敏な反応はありません。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」児童合唱にも深みや奥行き感がありません。聖母はoffぎみのマイクポジションで遠くから響く感じは上手く表現されています。
「悔い改むる優しき方がたよ」どうしても人間の声で、楽器になりきっていないテノール独唱が気になります。金管がボワーッと言うような響きで入ってきて、色彩感を淡白にしています。
「移ろい行くものは なべて」雰囲気をガラッと変える合唱。深みがあってとても良い響きです。クライマックスのパワーは確実に不足しています。宇宙が鳴り響く有様には程遠い、現実的な響きで、圧倒的な雰囲気はありませんでした。

オケも合唱もまだ、力不足の感は否めない演奏でした。表現も緩く、表現の振幅も狭く、この曲を演奏したことに意義を感じさせるコンサートだったのではないかと思います。
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レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

バーンスタイン
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」古い録音らしく、ラジオから聞こえるような音です。色彩感も乏しい録音です。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」すごく遠い独唱。遠すぎて、表情なども伝わってきません。速めのテンポでどんどん進みます。歪みっぽくて、色彩感などもほとんど感じません。
「われらが肉体の脆き弱さに」僅かに聞き取ることができるヴァイオリン独奏。テンポは速めです。残響成分をほとんど含んでいないような録音で、音が痩せて聞こえます。1950年代の録音でしょうか。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」テンポを速めて歓喜が湧き上がるような表現です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」力感は感じられますが、いかんせん歪みっぽくて十分に伝わって来ません。
「父なる主に栄光あれ」響きが浅く、これだけの大編成の曲を聴くには録音の古さは致命的です。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り」ノイズの中から聞こえる弦のトレモロ。遠い木管。響きが痩せていて、細かな表情が伝わって来ません。合唱も遠く木管にや弦に消されてほとんど聞こえてきません。
「永遠の愉悦の炎」遥か彼方から聞こえるバリトン独唱。あまりにも遠くて細かなニュアンスは分かりません。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」はっきりと登場するトランペット。オケの陰になってほとんど聞こえないバスの独唱。キンキンするヴァイオリン。
「霊の世界の気高い人間がひとり」遠いオケと合唱。歪みが酷くて聞き取り辛い。
「地上の残り滓を運ぶのは」艶の無いヴァイオリン独奏。独唱が遠くて、オケに隠れてあまり聞こえません。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」相変わらず遠くて細かな表情が聞き取れない独唱。オケの強奏が混濁します。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」やはり非常に遠いソプラノ独唱。ほとんどニュアンスは分かりません。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」非常にゆっくりとしたテンポです。児童合唱とオケが一緒になるとうるさい感じです。かなり遠くから聞こえる聖母。
「悔い改むる優しき方がたよ」幕の後ろで歌っているかのように聞き取りにくいテノール独唱。キツい音のヴァイオリン。速めのテンポで元気の良いトロンボーン。
「移ろい行くものは なべて」あまりに遠くてあまり動きが分からない合唱。強奏部分が歪んで聞き辛い。最後は速めのテンポですっきりと終わりました。

これだけ編成の大きな曲では、録音の古さは致命的でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」の名盤を試聴したレビュー