カテゴリー: マーラー:交響曲第4番名盤試聴記

マーラー 交響曲第4番

マーラーの交響曲第4番は、彼の交響曲の中でも比較的軽快で明るい雰囲気を持つ作品で、特に終楽章で歌われる「天上の生活」という楽曲が特徴です。この交響曲は、複雑で重厚な他の交響曲とは異なり、親しみやすく、牧歌的な美しさが魅力です。以下、各楽章について説明します。

1. 第1楽章:Bedächtig, nicht eilen (ゆっくりと、急がずに)

この楽章は、まるで優雅な舞曲のように軽快で、清々しい響きが特徴です。冒頭の鈴の音が、聴衆を童話の世界に招くように響きます。牧歌的なメロディが流れ、どこか自然の中を散歩しているような雰囲気が漂います。しかし、マーラー特有の皮肉やユーモアが散りばめられており、単純な明るさだけではない深みも感じられます。

2. 第2楽章:In gemächlicher Bewegung, ohne Hast (穏やかな動きで、急がずに)

この楽章は、少し異質な雰囲気を持つスケルツォ楽章で、ヴァイオリンが不気味な音色を出し、少し幻想的でミステリアスな空気を作り出します。この音色は「死神が奏でる音楽」とも言われ、天国への入り口を象徴しているとも解釈されます。どこか不安を煽るような響きがありながらも、コミカルで人間味あふれるマーラーらしいユーモアが込められています。

3. 第3楽章:Ruhevoll, poco adagio (穏やかに、少し遅く)

このアダージョ楽章は、マーラーの最も美しい楽章のひとつとされています。穏やかで敬虔なメロディが流れ、深い精神性と崇高さが感じられます。心に染み入るような静けさがあり、楽章が進むにつれて美しく荘厳なクライマックスへと向かっていきます。死や天上への憧れを表現するかのように、非常に心に響く内容です。

4. 第4楽章:Sehr behaglich (とても快適に)

最終楽章はソプラノ独唱による「天上の生活」で、天国での無邪気で幸せな日常が歌われます。詩の内容は、天国で美味しい料理を楽しみ、子供たちが遊び、聖人たちが楽しく過ごす様子を描写しており、牧歌的で素朴な幸福感があふれています。音楽はシンプルで、天国での無垢な楽しみや純粋な喜びが表現されています。交響曲全体を通しての緊張がここで解放され、天上の平和が感じられる楽章です。

全体の印象

交響曲第4番は、他のマーラーの作品に比べて小編成で、シンプルかつ透明感のある響きが特徴です。死後の天国での生活を、軽やかで牧歌的に描写する一方、マーラー特有の皮肉やユーモアも垣間見られます。複雑な感情表現や壮大さではなく、穏やかで優しい雰囲気の中に深い精神性を感じさせるこの作品は、マーラーの交響曲の中でも独特な位置づけにあると言えるでしょう。

たいこ叩きのマーラー 交響曲第4番名盤試聴記

クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで始まりました。ウィーンpoの柔らかい音がとても心地良いです。次第にテンポが速くなって、第二主題になりました。アバドもウィーンpoの音色を生かして優しい音楽を作っているようです。テンポの動きはわずかにあるだけです。艶やかなヴァイオリンソロ。5番の1楽章のトランペットの動機の直前はかなり強い音でした。その後に続く音楽は生き生きとした表情で朗々と歌います。とにかく美しい。

二楽章、ウィーンpoらしい甘美な音色がとても魅力的です。アーティキュレーションに対する反応もとても良くて演奏を引き締めています。弾むリズムでタメがあって特徴的です。

三楽章、とてもゆったりとした夢見心地のような美しい演奏です。柔らかいウィーンpoの響きを存分に味わうことができます。大げさではありませんが、しっかりと歌い表現しています。一時的に暗雲が立ち込めるような雰囲気もなかなか良いです。弦楽器の滑らかな美しさは筆舌に尽くしがたいほどです。この美しさを聴くと、この曲が何と美しい曲なのかと再認識させられます。最後の盛り上がりも抑制の効いた上品な表現でした。

四楽章、ウィーンpoらしい艶やかなクラリネット。フレーズの中で強弱の変化もはっきりしていて気持ちが良い。シュターデの独唱はとても明瞭に捉えられていて、微妙なニュアンスも聞き取れるような感じです。とても美しい演奏でした。

アバドはこの頃が一番良かったのではないかと思います。勢いもあったし、主張もありました。

ジュゼッペ・シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、速目のテンポで始まりました。がっちりとした構成を感じさせます。ゆったりとした第二主題。一音一音をとても大切にしているように感じます。天国で鳴っている音楽と思わせるようなとても安堵感のある演奏です。展開部の前から大きくテンポが動きました。ティンパニがクレッシェンド、デクレッシェンドしました。油絵のように克明に描かれて行きます。各楽器の音が立っていて輪郭がはっきりしています。この楽章では二箇所はっきりと間を空けました。とても強固な構造物をみているような安定感が独特です。

二楽章、すごく表情のはっきりした強弱の変化が明確な演奏です。ウィーンpoのような甘美な音色ではありませんが、近代的な美しさを持った演奏です。ヴァイオリンのソロでも強弱の変化をすごく強調します。マーラーの音楽がとても鮮明に再現されています。

三楽章、柔らかく包み込むような美しい弦。転調したオーボエのソロには歌がありました。突然強烈なホルンが誇らしげに存在をアピールします、そのあともかなり激しい表現ですが、これまでの静かな音楽とは見事なコントラストを見せます。ティンパニもかなり激しく入って来ます。かなり激しいのですが、ショルティのようにストレートに外へ向かう激しさとは違い、内面へ向かう激しさです。終盤の盛り上がりも凄く激しいものでした。続く静寂が動と静の対比のようにすばらしい表現です。

四楽章、豊かな表情で歌う冒頭。続く独唱も演奏にマッチした声です。まさに天国の楽しさを歌っています。激しく鈴が打ち鳴らされたり、のどかな天国を思わせる静寂の対比もテンポの動きと合わせてとても良い感じです。だんだん遅くなって終りました。

激しさと静寂を見事に対比させたすばらしい演奏でした。

ブルーノ・ワルター/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ワルター マーラー交響曲第4番★★★★★
一楽章、冒頭からテンポが動いて積極的な表現です。作品のディテールを壊すことのない範囲での演奏で、とても節度があります。展開部のフルートは見事に揃っています。オケの集中力も高く、見事に整った演奏をしています。ワルターのテンポ設定も堂に入ったもので堂々としています。

二楽章、少し速めのテンポです。これは一楽章でも見られたことですが、ところどころにちょっとした間があったりするのが独特ですが自然な感じです。優しく穏やかな音楽は、ウィーンpo独特のものなのか、とても安らかな気持ちになってきます。

三楽章、ゆったりとしたテンポで夢見心地です。弦楽合奏が終って続くオーボエはとても良く歌いました。その後の暗転もとても見事です。1955年当時でもウィーンpoの技術はすばらしく録音は古いですが、音色もとても美しいと感じます。ホルンの咆哮も気持ちよく鳴りきります。ワルターの音楽は作為的な部分は全く無く、自然に進んで行きます。終盤に盛り上がる部分のエネルギー感もテンポの動きもすばらしかった。

四楽章、表情豊かなクラリネット。独唱を迎える部分のテンポの動きもとても良かった。柔らかい声の独唱。この柔らかい歌声が音楽に浸らせてくれます。天国ののどかさを伝えてくれる音楽です。

この時代にこれだけの完成度の音楽を演奏していたことに驚きます。すばらしい演奏でした。

マイケル・ティルソン・トーマス/サンフランシスコ交響楽団

icon★★★★★
一楽章、とてもクリアで明晰な序奏。一旦テンポを落としてゆっくりと思い入れたっぷりに始まる第一主題が次第に加速して軽快な表現になります。テンポの動きも大きく、何があるのか楽しみにさせてくれます。ティルソン・トーマスのマーラーに共通しているすごく美しく透明感の高い響きが印象的です。細部まで見通せるような明晰で美しい響き。全体的にゆったりとした歩みで広大な雰囲気です。

二楽章、この楽章もゆったり目のテンポでたっぷりと積極的に歌います。シルキーなヴァイオリン。しっかりとしたリズムのクラリネット。音が戯れているような雰囲気がとても良いです。

三楽章、深い所から湧き上がるような主題。ゆったりと踏みしめるように確実な歩み。深い呼吸が感じられる美しい演奏です。オーボエも遅いテンポで深く歌います。ガラス細工のように繊細で緻密でしかも透明感が高い。トゥッティでは筋肉質で分厚い響きを聴かせます。川の流れのような滑らかな音楽も表現します。ティルソン・トーマスとサンフランシスコsoの持てる表現を最大限に発揮した演奏はすばらしいです。終盤の盛り上がりもとてもゆっくりと豪快で堂々としています。

四楽章、美しく表情の豊かなクラリネット。独唱が入る前にテンポを落としました。軽い歌声で天使の歌声にぴったりの独唱です。テンポが落ちて弦楽合奏も非常に美しい。全く力みの無い独唱がとても心地よく響きます。正に天国です。

終始ゆったりとしたテンポで繊細な弱音でたっぷりと歌い。トゥッティでは分厚い響き。そして、美しい天使の歌声。すばらしい演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

ベルナルド・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2002年

ハイティンク★★★★★
一楽章、古めかしい鈴の音色で始まり、ゆったりと美しい第一主題。強弱の変化も非常に大きい演奏です。すごく引き締まった表現で、細部の表現まで徹底されています。深い歌を聞かせる第二主題。ハイティンクの指揮に俊敏に反応するオケの高いアンサンブル能力に感嘆します。静寂感の中にピーンと張った緊張感が素晴らしいです。次から次へと溢れ出す歌に酔いしれることができます。最後のアッチェレランドも堂々とした重量感に溢れるものでした。

二楽章、冒頭のホルンの表情もしっかりとしていました。ヴァイオリンの独奏も表情豊かです。ハイティンクの演奏は大きくテンポを動かしたりすることはありませんが、その分細かな表現などは徹底してオケに高いアンサンブル精度を求めるものです。この演奏でも細部に渡る表現は徹底されていて、大編成のオケが身軽に細部の表現をして行きます。

三楽章、夢見るように美しく歌う主題。トゥッティでは泉から水が湧き出すような豊かさです。シルクのように滑らかで美しい響きと自然な歌に身をゆだねているととても心地よい気分です。終盤の盛り上がりもゆったりと、ティンパニも巨人の歩みのようにゆっくりと刻みました。波が引いてゆくように静まってこの楽章を閉じました。

四楽章、控え目で美しいクラリネット。独唱の前はとても活発な動きがありました。独唱の前にテンポを落としました。天使の歌声らしく清潔感のある独唱です。独唱の合い間に入るオケの演奏は極端に荒ぶることは無く、独唱とのつながりや流れを重視しているようです。後半はのどかな天国の様子を表すようにゆったりと穏やかな音楽は心に染み入るようです。

細部まで表現を徹底した非常に美しい演奏は見事でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

マリス・ヤンソンス/バイエルン・放送交響楽団

ヤンソンス★★★★★
一楽章、良い意味で脱力している第一主題。抜くところと力の入るところがしっかりと区別されていて、とても躍動感のある演奏です。テンポも動いて濃厚な音楽を刻みつけます。穏やかな部分と激しい部分の対比も見事でコントラストのはっきりした演奏です。音も立っていて登場する楽器が皆くっきりとしています。弦の響きも深いところに刻まれるように内へと向かっています。シーンと静まり返る静寂感。最後の加速も適度な範囲で落ち着いて堂々としていました。

二楽章、狂ったようなヴァイオリン独奏。パチーンと硬い音で決まるティンパニが爽快です。メリハリがはっきりしています。

三楽章、ぐっと感情が込められたかと思うとスーッと抜いて脱力して行く感じがとても心地よい演奏です。感情を込めて歌うオーボエ。暗転する部分では複数の楽器が絡み合ってそれぞれに歌いました。思いっきり良く吹き鳴らされるホルン。穏やかな部分と激しい部分のコントラストがはっきりしていて、ダイナミックです。終盤の盛り上がりはスケールの大きな壮大な表現でした。ティンパニはとても良く鳴っていました。冷たく美しい終結でした。

四楽章、美しい木管。独唱の前に僅かにテンポを落としました。天使の歌声にふさわしい爽やかで躍動感のある独唱です。独唱の合い間に入るオケは荒れ狂うような激しさではなく、抑えぎみで節度のあるものです。独唱も表現の幅が広く引き込まれます。

美しく、それでいてダイナミックな演奏でした。独唱も曲にマッチしたとても良い演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

ヘルムート・ヘンヒェン/ネーデルラント・ フィルハーモニー管弦楽団

ヘンヒェン★★★★★
一楽章、速いテンポの序奏。よく歌う第一主題。音楽は前へ行こうとする推進力があります。第二主題も心地よく歌います。よく歌いますが、粘着質ではなくサラッとした風合いの演奏です。響きは少し温度感が低く、透明感の高い音楽です。涼しげで美しい演奏です。

二楽章、弱音がとても美しく、精緻で見通しの良い演奏です。テンポはほとんど動かずにどんどん進んで行きます。

三楽章、弱音主体で、丁寧で美しい演奏が続きます。オーボエが美しく歌います。弦がとても柔らかく美しいです。オケを絶叫させることも無く、紳士的で折り目正しい演奏が続きます。終盤の盛り上がりも抑制の効いたもので、ティンパニは強打しますし、金管もそこそこ吹きますが、決して暴走するようなことは無く、常に冷静に音楽は運ばれています。

四楽章、少し太い声のソプラノ独唱。オケの表情はとても豊かです。ヴァイオリンがシルクのような滑らかな美しさです。

とてもよく歌い、美しい演奏でした。歌っていても感情的に没入することは無く、冷静に音楽を運びました。これだけ冷静で美しい演奏も良いなと思いました。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

リボル・ペシェク/チェコ・ナショナル交響楽団

icon★★★★★
一楽章、速いテンポの序奏。僅かにテンポを落とした程度で速いテンポの第一主題。良く歌い締まった表情に変化もあります。第二主題もたっぷりと歌います。これまで、ペシェクの演奏で感じたどこか緩くてピントがボケたような演奏から一変して、とても締まったスッキリとした演奏で、とても豊かな表現です。速めのテンポで快活で生命感に溢れた演奏を聞かせます。再現部の前あたりからゆっくり目のテンポを取っています。

二楽章、細部まで表情が付けられていて、それが徹底していて、とても心地よい音楽になっています。ホルンの響きが、ふくよかなのですが、音に伸びが無く極上の響きでは無いような感じがします。前に聴いたヘンヒェンの演奏がとても静的な演奏だったのと対照的にペシェクの演奏は動的です。

三楽章、とても深く歌う弦の主題。コントラバスがしっかりと支える分厚い響き。この楽章も速めのテンポですが、演奏はとても情熱的です。音に力があって、音楽が前へ進もうとします。激しい部分と安らかな部分の対比も見事です。硬質なティンパの強打は質感がとても良かったです。ハープも弦の弾ける瞬間をとても良く捉えています。

四楽章、とても表現力のある木管。天使の歌声らしい可愛らしい歌声のソプラノ独唱は躍動感があって生き生きとしています。

速めのテンポでグイグイ進みますが、豊かな表情と、コントラト。躍動感と生命感に溢れた演奏はすばらしかったです。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー

マーラー 交響曲第4番2

たいこ叩きのマーラー 交響曲第4番名盤試聴記

ジェイムズ・レヴァイン/シカゴ交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、美しく歌われる第一主題。動きがあってとても活発な印象です。第二主題部でも積極的に歌い、動きます。とても良く歌い、色彩感も豊かで、くっきりとした輪郭の演奏です。オケの技術がとても安定していて、がっちりとした演奏になっています。

二楽章、とてもクローズアップされたヴァイオリン独奏が他の楽器と比べてアンバランスです。牧歌的なホルン。ヴァイオリンのアクセントがキツくカチーンと来ます。ピチカートなどもすごく強調されていて、録音のバランスが悪いような感じがします。

三楽章、穏やかで美しい弦の主題。二つ目の主題も美しく歌われます。穏やかな部分と激しい部分のコントラストも上手く表現されています。温度感は低くないので、ピーンと張り詰めたような緊張感はありませんが、静寂感はあります。陰影を感じさせるオーボエ。強力なホルンの強奏。すごいオケの能力を感じさせます。終盤の盛り上がりはすごいパワーでした。ハープに導かれて夢見るように終りました。

四楽章、可愛く魅力的なソプラノ独唱。天国の楽しさを歌うにふさわしい歌声です。テンポも動いて、とても音楽的です。ゆったりとした部分では、時間が止まったようにのどかな天国を上手く表現しています。終盤はゆったりとしたテンポのまま終りました。

とても良い演奏でしたが、二楽章のバランスの悪さが惜しまれます。

レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★★★☆
一楽章、明確な表現と色彩感の第一主題。テンポの変化も大きく強弱の変化も敏感で作品への共感が感じられます。展開部からはせかされるようなテンポです。交響曲第5番冒頭のファンファーレが現れる手前ではかなりテンポが速くなりました。聴き手にはかなり緊張を迫る演奏だと思います。再現部はまたテンポが遅くなりました。間接音があまり収録されていないため、少しキツい感じの音で、この後も安らぐような音楽にはならないような予感がします。最後もゆったりとしたテンポからアッチェレランドして終わりました。

二楽章、冒頭のホルンも独特の表現です。乾いた音のヴァイオリン・ソロです。テンポもよく動いてとても音楽的です。バーンスタインはこの頃すでにマーラーの音楽を自分のものにしていたのですね。とてもはっきりと表情付けされています。

三楽章、静かに夢見るような浮遊感のある冒頭の表現はすばらしい。色彩の変化もくっきりと描いて行きます。弦の弱音は何とも言えない魅力的な音がします。ただ、デッドな録音なので、強奏部分はキツい音です。終盤に盛り上がる部分では、トランペットが強烈で、突き刺さってきます。

四楽章、フワッとしたクラリネット。とても明瞭で可愛い声の独唱。いかにもマイクの前で歌っています。と言う感じがします。

バーンスタインの主張がはっきりとした、色彩も鮮明な演奏でした。

オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、細身で繊細なヴァイオリンの第一主題。録音の古さからか少しメタリックな響きです。必要以上に感情移入することなく、とても流れの良い雄大な音楽です。

二楽章、表情豊かなホルン。に続く楽器も皆表情豊かです。色彩感が濃厚で輪郭もはっきりした演奏です。積極的な表現が一楽章とは対照的です。

三楽章、あまり思い入れもなくあっさりと演奏される弦の主題です。木管楽器には独特の表情付けがあります。後半の強奏はとても盛大です。高らかに演奏されるトランペット、炸裂するシンバル。そしてホルンの絶叫!。

四楽章、柔らかいクラリネット。天使を迎いいれる穏やかな雰囲気です。シュヴァルツコップの歌唱は少し幼い天使の可愛さを残した魅力的なものです。

とても整った良い演奏でしたが、この演奏でなければと言う強い魅力も無かったのが残念でした。

ワレリー・ゲルギエフ/ワールド・オーケストラ・フォー・ピース

icon★★★★☆
一楽章、くっきりと明瞭な序奏。重厚で一体感のあるオケの響き。歌に溢れた第一主題。動きがあって生き生きとした音楽です。第二主題も歌います。色彩感豊かで深い所から湧き上がってくるような音楽がすばらしい。オケが有機的に結びついてとても強固な音楽を作り出しています。最後はゆったりとしたテンポから急加速して終わりました。

二楽章、暗く沈んだホルン。飛び跳ねるように動きのあるヴァイオリンのソロ。中間部もオケが積極的で表情が豊かです。

三楽章、速めのテンポで現実的な主題。濃厚な表現のオーボエ。オケの強奏も激しいです。ずっと音楽に動きがあって、生き生きとした演奏です。終盤の盛り上がりは一体感のあるバランスの良い演奏でした。

四楽章、控え目でゆっくりとしたテンポで演奏されるクラリネット。しっかりとした存在感のソプラノ独唱。夢見るような弦楽合奏。

色彩感も濃厚で、静と動の対比も見事な演奏でした。
このリンクをクリックすると動画再生できます。

ベルナルド・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1982年

ハイティンク★★★★☆
一楽章、序奏から一旦テンポをおとして、すごくゆっくり開始した第一主題。音楽の抑揚に合わせてテンポも動きます。安心感があり、穏やかな第二主題。一つ一つの音を刻み付けて行くような、彫りの深い演奏です。登場する楽器もしっかりと浮かび上がり色彩感も多彩です。トゥッティの響きも厚みがあります。テンポも良く動き、手馴れたものと言う印象です。ハイティンクの演奏らしく、大きな表現はありませんが、自然なテンポの動きと、美しい響きと整ったアンサンブルでとても安定感のある演奏です。最後の加速も堂々としていました。

二楽章、この楽章でも、色彩感が豊かで、美しくくっきりとした演奏です。オケの集中力も高く音がハイティンクのところに集まって来ているような感じです。

三楽章、波がゆっくりと押し寄せては返すような息遣いを感じる冒頭の演奏です。ハイティンクは大見得を切るような表現をすることはありませんが、細部にこだわった表現が魅力です。また、常に平均以上の演奏を聴かせてくれる安心感があります。そして、出来不出来の差がほとんど無いのも大きいです。一時暗転する部分でも、何とも言えないような憂鬱な雰囲気でした。ゆったりと流れる音楽が急激に力を増して分厚い頂点を作ります。終盤の盛り上がりのティンパニは巨人の歩みのようにゆったりとしていますが、強い打撃でした。

四楽章、この楽章もゆったりとしたテンポです。独唱の手前で大きくテンポを落としました。近い位置にいる独唱ですが、抑えぎみの歌唱が可愛い雰囲気を出しています。合いの手に入るオケも激しく、独唱と対比します。天国ののどかな雰囲気を見事に表現しています。
このリンクをクリックすると動画再生できます。

サー・ジョン・バルビローリ/BBC交響楽団

バルビローリ★★★★☆
一楽章、硬い鈴の音です、たっぷりと歌われる第一主題。情感豊かな第二主題。バルビローリの作品への思い入れが現れた演奏です。感情に合わせてテンポも動いています。爆発する怒涛のトゥッティ!トランペットが凄く近い録音です。この感情を込めた演奏には共感できます。聴いていてとても心地良い演奏です。テンポの動きが絶妙です。最後の第一主題はすごくゆっくり開始してアッチェレランドして終わりました。

二楽章、ゆっくり目のテンポで始まりました。ヴァイオリンのソロも極端にしゃしゃり出ることは無く、控え目でバルビローリの趣味の良さが伺えます。トランペットに、ちょっと繊細さに欠け、雑な部分もありました。

三楽章、すごく感情を込めて歌う主題。バルビローリの唸り声が良く聞こえます。感情は込められていますが、節度を保った演奏で踏み外すことはありません。終盤の盛り上がりもおもちゃ箱をひっくり返したような賑やかさで、ティンパニの部分はとてもゆっくりと刻みました。

四楽章、独唱は熟した声で、天使の歌声にしては老けているように感じますが、伸びやかで心地良い歌声です。最後のテンポを落とした部分は天国ののどかな雰囲気を十分に伝える演奏で、独唱も含めて演奏に酔えるものです。

感情の込められた、しかも品良く雰囲気もとてもある演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

サー・サイモン・ラトル/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ラトル★★★★☆
一楽章、歩くようにゆっくりとした開始ですが、第一主題は一転して速いテンポですごくスピード感があります。第二主題でゆったりとなりました。展開部でも第一主題は速いテンポから次第にテンポを落として雰囲気の良い演奏です。第一主題の再現はゆったりとしていましたが、またテンポを上げました。テンポ設定は通常の演奏とは違う感じがしますが、色彩感は濃厚で輪郭のくっきりとした演奏です。テンポは良く動いていますが、何か作為的な不自然さも感じます。最後のアッチェレランドはそんなに急激なものではなくゆったりとしていました。

二楽章、柔らかいホルン。太い響きのヴァイオリン独奏。チャーミングな表情が付けられています。中間部はテンポを動かして柔らかい表現です。この楽章でもテンポは大きく動きますが、ここでは不自然さは感じません。

三楽章、遠くから漂ってくるような天国的で非常に美しい主題。ゆっくりと切々と語りかけてくる演奏に心打たれます。すばらしい表現です。オーボエが旋律を出す部分からも弦楽器の表現がすばらしく美しいです。自然な感情に合わせたテンポの動きです。終盤の盛り上がりの前の弦の繊細な表現もとても美しいものでした。終盤の盛り上がりはすごくゆっくりとしたテンポで雄大でした。美しく遠ざかりながら終りました。

四楽章、柔らかく美しいクラリネット。独唱の前にテンポを落としてゆったりりと独唱に引継ぎました。シンプルな歌声の独唱はこの曲にマッチしています。次第にテンポを落として終りました。

一楽章のテンポ設定はちょっと納得できませんでしたが、二楽章以降はウィーンpoの美しさを存分に発揮したすばらしい演奏でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー

マーラー 交響曲第4番3

たいこ叩きのマーラー 交響曲第4番名盤試聴記

オトマール・スイトナー/NHK交響楽団

icon★★★★
一楽章、少し遠目に定位するオケ。静かでひっかかるところの無い滑らかな演奏です。詰まったようなクラリネット。激しい強弱の変化も無く、とても穏やかで自然な音楽です。音楽を慈しむように丁寧に表現して行きます。金管には力強さが無く、テュッティで大きく盛り上がることは無く、当時の日本のオケの状態を感じます。とても淡い表現で強い表現はありません。ひたすら穏やかです。

二楽章、この楽章は動きがありますが、それでも音楽は穏やかです。表現は奥ゆかしく、オブラートにくるまれたような音楽で、刺激的な音は一切出しません。

三楽章、穏やかで安らぎに満ちた音楽です。強い表現は一切しません。自然な音楽の流れをとても大切にしているようです。ヴァイオリンのポルタメントが印象的です。強奏部分はそれなりに強く演奏されますが、全体の流れを崩すほどではありません。ホルンだけマイクが近く、しかも間接音が少ないので、とても浅い響きになるのが気になります。終盤に盛り上がる場面でも、ティンパニだけが大きくなって、他の楽器はそれほど大きくはなりませんでした。この当時はテュッティのエネルギー感が不足していたのかも知れません。

四楽章、発音が聞き取りにくい独唱。この楽章は強弱の対比がはっきりしています。後半はまた穏やかな音楽になりました。

この曲がこんなに穏やかな曲だと初めて感じさせられました。オケの技術がもっと高ければすばらしい演奏になっていたでしょう。

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★
一楽章、明快な演奏です。コントラバスが唸りを上げる。ヴァイオリンのシャープな音。どのパートもとてもリアルで、夢見心地には程遠い感じです。展開部のフルートは見事に揃っています。強いところではトランペットが突き抜けてきます。ショルティはシカゴsoの機能美を見せ付けるような演奏をしています。テンポの動きはありますが、歌や間などはほとんど感じません。

二楽章、模範演奏を聴いているような正確無比な感じがします。楽譜に書かれていることを正確に音にしていて、それ以上でもそれ以下でもない演奏です。ある意味すごい名人芸なのかも知れません。

三楽章、現実です。シャープな音色が現実世界から離れることを許しません。とてもダイナミックで躊躇無く強弱の変化があります。明快に吹き鳴らされるホルン。この楽章のほとんどは静かな曲だと思っていたまですが、こんなに荒れ狂う嵐のような曲だったとは思いませんでした。終盤の盛り上がりは凄い勢いでした。

四楽章、潤いのあるクラリネット。ここまでのオケの演奏とは対照的な柔らかく表情豊かなキリ・テ・カナワの独唱。オケの方は相変わらず起伏の激しい演奏です。この思いっきりの良い演奏はショルティの特徴でもあります。

この曲の優しい面ではなく激しい面を強調して、違う側面を聞かせた演奏にはそれなりの価値はあると思います。それにしても、思いっきりオケを鳴らすショルティの指揮はどの曲でも変わりません。

エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団

icon★★★☆
一楽章、ゆっくりとした序奏。クリアで細部まで見通せるような録音です。ニュートラルな温度感で盛り上がる部分では熱気をはらんできます。音の粒立ちが非常に良く、一つ一つの楽器が明快に定位します。ダイナミックレンジが非常に広く、強奏部分は豪快で分厚い響きを聴かせます。インバルの指揮は極端な表現は避け、作品の自然な美しさを追求したような演奏です。

二楽章、自然で美しい演奏。表現はしますが、踏み外すようなことは無く、とても安定感があります。ピツィカートも音がピンと立っています。

三楽章、現実的な雰囲気の主題で、大きく歌うことは無く淡々と進みます。速めのテンポですが、途中でさらにテンポを速めました。そして今度はゆっくりと終盤の演奏です。ホルンやトランペットが鮮明で強烈です。終盤の盛り上がりは物凄いエネルギー感で迫って来ました。こんなにダイナミックな4番の演奏は初めてです。

四楽章、のどかな雰囲気のクラリネット。発音を凄く意識しているような独唱。発音を意識するあまり、実在感があり過ぎて天使の歌声とは違うような感じがします。

美しい録音とダイナミックな演奏でしたが、あまりにも現実的過ぎるように感じました。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

チョン・ミョンフン/ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団

チョン・ミョンフン★★★☆
一楽章、優しい響きで開始して、僅かにテンポを落としてこれも優しい表情の第一主題に入りました。表情が多彩で楽しげです。ホールの残響も適度に入っていて美しい演奏です。深く歌う第二主題。展開部の手前で一時テンポを凄く速めました。再び優しい第一主題。天国への憧れを歌っているような音楽です。ライヴ録音ですが、とても鮮明に録られていて、コントラバスの動きも克明です。テンポもよく動いていて、作品への思いが込められているようです。最後に現れる第一主題は凄くゆっくりでその後テンポを速めて終わりました。

二楽章、とても良く歌い表現が豊かです。ヴァイオリン・ソロがオケからくっきりと浮き上がるように演奏します。女性的な柔らかな線と優しい表現の演奏です。

三楽章、夢見心地では無い現実的な主題ですが、美しさには魅せられます。切々と語られる音楽ですが、常に柔らかく優しいです。トゥッティでも荒れ狂うようなことは無く、それでも分厚い響きで整然として美しい演奏です。

四楽章、美しいクラリネット、それに続くフルートも美しい。必死にがなり立てるような独唱。天使の歌声とはかけ離れているような感じがします。これまでの柔らかくしなやかな音楽が全く違う方向に行ってしまったようです。

三楽章まではとても良い演奏でしたが、四楽章の独唱でそれまでの音楽がぶち壊されたような印象で残念でした。
このリンクをクリックすると動画再生できます。

アレキサンダー・ラハバリ/スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

ラハバリ★★★☆
一楽章、少し遠くから響く鈴。ゆったりと美しく演奏される第一主題。奥ゆかしく控え目な表現です。第二主題も控え目で美しいです。どの楽器も非常に美しい音を聴かせてくれます。この作品の美しさを改めて感じさせられますが、弓をいっぱいに使うようなダイナミックさは無く、ちょっとこじんまりと萎縮したような小ささも感じられます。目立った表現は無く、ひたすら繊細な美しさを追求しているような感じがします。

二楽章、細身で美しいヴァイオリン・ソロ。その後も非常に美しい演奏が続きます。踏み込んだ表現やテンポの動き、アゴーギクなどはありません。置きに行ったような勢いの無さが、美しいだけに残念です。

三楽章、静寂の中に美しく演奏される主題。弦の美しさは絶品です。暗転する部分のオーボエも、続く弦も美しいですが、やはり置きに行くような丁寧さとは違う、勢いの無さはここでもあります。ティンパニだけはドカンと入って来ます。終盤の盛り上がりでもティンパニは遠慮なく叩いていますが、トランペットは控え目でした。

四楽章、控え目で美しいクラリネット、ゆっくりとしたテンポです。ほととんどテンポを変えずに独唱になりました。独唱も抑え気味の歌唱です。これだけ抑え気味に聞こえるのは録音のせいなのでしょうか。後半のテンポを落としてからの演奏は独唱も含めて、すごく雰囲気があって良かったです。

非常に美しい演奏でしたが、ダイナミックな部分も聴かせて欲しかったと思います。これだけ美しい演奏ができるのですから、ダイナミックな部分も表現できるともっと注目される指揮者だと思います。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

クラウス・テンシュテット/ボストン交響楽団

テンシュテット★★★
一楽章、デッドな録音です。テンシュテットならではの間があります。アゴーギクもいたるところで見られます。展開部のフルートももう少しホールの響きが伴っていれば、と思います。積極的な表現で作品への共感を感じさせます。テンポもしょっちゅう動いています。

二楽章、テンポが頻繁に動いて、とても感情のこもった演奏です。繊細な弦の表現。動きがあって生き生きしています。

三楽章、落ち着いて美しい開始です。静かな音楽の中に切々と語りかけるような雰囲気を持っています。アゴーギクを効かせたイングリッシュホルン。祈りにも似たオーボエ。表情がどんどん変化して行きます。突き抜けてくるミュートしたトランペット。高揚する部分でもいつものテンシュテットの咆哮ではなく抑制の効いた表現でした。

四楽章、のどかな心地よい雰囲気。残響成分をほとんど含まない録音のせいかソプラノの声質が少し硬いです。独唱をピッタリとサポートするオケはさすがです。

テンシュテットはボストンsoとの組み合わせになると、MEMORIESのベートーベンの交響曲でもそうだったのですが、上品と言うかどことなくよそよそしい演奏になってしまいます。この曲の場合はいつものような突き抜けた爆演は似合わないとは思うのですが、今ひとつ相性が悪いように思います。

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、ゆっくり確実に演奏される序奏。一転して動きのある第一主題。第二主題の前でテンポを速めて、第二主題はゆったりとしたテンポで大きく歌います。ファゴットの伴奏に乗ってオーボエが旋律を歌うところではすごくテンポを落としました。展開部に入ってもテンポはバーンスタインの感情に合わせて自在に動いています。ただ、録音のせいか、奥行き感が無く、音楽が軽薄に響いているように感じてしまいます。

二楽章、美しいクラリネットやホルン。この楽章でもテンポは良く動きます。

三楽章、静かに感情を込めて美しく演奏される主題。別世界へ誘うようなオーボエ。細身で艶やかなヴァイオリンのソロ。心に染み入るような歌です。最後の盛り上がりの部分のティンパニは強烈でした。美しく静まって天上界を表現しているような演奏です。

四楽章、美しいクラリネットでゆったりとしたテンポで始まりました。起伏も激しい演奏です。独唱は天国の楽しさを歌うのに合った明るい歌声です。

一楽章はイマイチでしたが、尻上がりに良くなりました。ただ、バーンスタインの感情が深く表現されているかと言うと中途半端な印象は拭えません。
このリンクをクリックすると動画再生できます。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー

マーラー 交響曲第4番4

たいこ叩きのマーラー 交響曲第4番名盤試聴記

アントン・ナヌート/リュブリアナ放送交響楽団

icon★★
一楽章、少し浅い響きですが、とても良く歌う演奏です。テンポの変化もありとても積極的な表現です。オケの技量的には危なっかしいところもありますが、なかなか健闘していると思います。5番のトランペットの動機の前は抑制の効いた控え目な強奏でした。シンバルがやたらと強い!ウィーンpoなどの超一流オケに比べると聞き惚れるような美しさがないところは少し残念です。

二楽章、ヴァイオリンソロなどは少しメタリックな響きがあります。一楽章ではシンバルが異常に大きかったのですが、この楽章ではトライアングルも大きいです。積極的に歌うのはこの楽章でも続けられています。

三楽章、ゆったりとして伸びやかなくつろいだ雰囲気の演奏です。転調したオーボエの旋律でも極上の音色とは言えないところが残念なところです。少し速めのテンポであっさりした表現です。トランペットも突き抜けてはきません。最後に盛り上がる部分ではテンポを落としましたが爆発的な盛り上がりではなく抑制の効いたものでした。

四楽章、木管楽器はどれも音の密度が薄いように感じます。表現の幅が広い独唱です。ただ、あまり品が無いような感じで、あけっぴろげで元気な雰囲気で、天国の雰囲気ではありません。終始美しさとは遠い演奏だったのはとても残念でした。

ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★
一楽章、ゴロゴロとノイズの中から鈴とフルートの音が聞こえます。とても表情のあるヴァイオリンの第一主題。第二主題もテンポの動きがあって歌います。大きなテンポの動きもあってワルターの作品への愛着が感じられます。録音によるものなのか、トゥッティでの響きが薄いです。シンバルがかなり強烈に響きます。

二楽章、録音は古いですが、弦の繊細な表現は伝わります。この楽章でも細部に渡って表情が付けられています。

三楽章、穏やかに開始しますが、残響をほとんど含まない録音のため、時に弦の生音が聞こえて興ざめします。アゴーギクを効かせてよく歌うオーボエ。終盤の急激な盛り上がり部分はほとんど打楽器の音に支配されているような感じで、他のパートはあまりよく聞こえませんでした。

四楽章、ソプラノ独唱は少しオフに録られていて、離れたところにいるような感じです。天国の楽しさを歌っているようには感じませんでした。

録音の古さによるバランスの悪さなども含めて、あまり楽しめませんでした。

ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団

セル★★
一楽章、サーッと言うヒスノイズの中から音楽が始まりました。第一主題の入りはあまりテンポを落とさずに演奏しました。淡々と進みますが、第二主題でテンポを動かしたりもします。展開部のフルート4本で演奏される旋律はゆっくりとしたテンポでした。ハイ上がりの録音でトゥッティでトランペットやシンバル、トライアングルがカチーンと来ます。基本的に速めのテンポでねばっこい表現はなくあっさりとした演奏です。最後は凄い勢いのアッチェレランドでした。

二楽章、動きがあって快活な演奏です。音がブヨブヨと肥大化せずに締まっていて、シャープです。ただ、録音には奥行き感が無く、トランペットやホルンが近い位置にいますし、弦はザラザラとしています。

三楽章、音が塊になって広がりがありません。速めのテンポでかなりあっさりと淡白な演奏です。普通なら粘るような部分もすんなりと通り過ぎるので肩透かしを食らいます。終盤の盛り上がりも速いテンポであっさりと演奏しました。作品への思い入れが無いかのような淡白さです。

四楽章、この楽章もあっさりと速めのテンポです。独唱が入る前にテンポを落としました。独唱は天使の歌声らしく可愛い声です。三楽章までの演奏とは対照的に感情が込められて楽しそうな独唱です。

三楽章までのあまりにもそっけないあっさりとした演奏はちょっと・・・・・でした。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

クルト・ザンデルリング/BBCノーザン交響楽団

icon
一楽章、心地よいテンポで軽快に進む第一主題。あっさりとした第二主題。少しざらついた響きのヴァイオリン。表現はしていますが、録音による問題なのか、緊張感があまりなく、ちょっと緩んだ雰囲気があります。トゥッティでは混濁するような感じの飽和状態です。テンポは動きますが、基本的にはあっさりとした演奏です。

二楽章、マットなヴァイオリン・ソロ。録音の問題だと思いますが、音の密度が希薄で、音像が大きくスカスカな感じがします。なので、緩い感じがするのでしょう。表現していることもなかなか伝わって来ず、何となく音楽が流れて行きます。

三楽章、弦楽器の主題は静かに演奏されているのだと思いますが、ノイズなのか周りがザワザワしているような感じがして、演奏に集中できません。そんなに古い録音では無いのですが、BBCの放送音源なのでしょうか?テンポを落として注意深く歌うオーボエ。最初のトゥッティで歪みました。所々テンポを落としますが、基本的にはあっさりとした表現で、淡々と進んで行きます。最後の盛り上がりはティンパニが異様に強調されていました。

四楽章、チャーミングな表情のクラリネット。粘着質な独唱。ピッコロがキーンと強烈に向かってきます。

ずっと緩い感じで、ピーンと張った緊張感はありませんでした。録音が悪過ぎます。
このリンクをクリックすると音源の再生ができます。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第4番の名盤を試聴したレビュー