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ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界から」

ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」は、彼がアメリカ滞在中に書き上げた作品で、チェコ出身の彼が「新しい世界」で感じた多様な感情が詰まった名曲です。アメリカの文化と故郷ボヘミアへの郷愁が織り交ぜられ、民族音楽的な要素と心に響くメロディが特徴です。以下、各楽章について解説します。

1. 第1楽章:Adagio – Allegro molto

緩やかで神秘的な序奏から始まり、その後、主部に移って力強く勇壮なテーマが現れます。アメリカへの新しい旅立ちや未知の冒険を象徴するようなエネルギッシュな展開が特徴で、冒険心と希望が感じられます。また、ネイティブ・アメリカンの音楽やアメリカ民謡から着想を得たとされるメロディが組み込まれ、異国情緒が漂います。

2. 第2楽章:Largo

この楽章は、交響曲全体の中でも特に有名で、美しいイングリッシュホルンのソロによる「遠き山に日は落ちて」に似た旋律が流れます。この旋律は、広大な大地や夕暮れ時の静けさを連想させ、ドヴォルザークの故郷への郷愁が滲み出ているようです。非常に静かで平和な雰囲気を醸し出しながら、同時に深い哀愁も感じられる楽章です。

3. 第3楽章:Scherzo. Molto vivace

活気に満ちたリズムが特徴的なこのスケルツォ楽章は、アメリカで見たダンスや民族音楽の要素が反映されていると言われています。速いテンポで軽快に進む中で、故郷ボヘミアの踊りを思わせるリズムも感じられます。異国情緒と懐かしさが交錯する、躍動感あふれる楽章です。

4. 第4楽章:Allegro con fuoco

フィナーレはまさに圧巻のクライマックスです。力強いメロディが堂々と響き渡り、交響曲全体を締めくくる情熱的な楽章です。第1楽章からのテーマが再び登場し、物語の結末を示すような統一感が感じられます。この楽章ではドヴォルザークがアメリカで得た体験や印象が集約され、最後は壮大な音楽の渦となって終わります。

全体の印象

交響曲第9番「新世界より」は、異国への冒険と故郷への郷愁が交錯する作品であり、アメリカとヨーロッパ双方の影響が見事に融合しています。美しくも力強いメロディの数々は聴き手の心を捉え、また、彼の故郷ボヘミアへの愛情や新天地への好奇心が、音楽全体に豊かに表れています。

4o

たいこ叩きのドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界から」名盤試聴記

ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、70年代のチェコpoは金管楽器のレベルがかなり落ちた時期がありましたが、この演奏では音離れの良い音がしています。
ノイマン/チェコpoにしてみれば手馴れたお国ものと言うことになるのですが、お国ものが必ずしも良いとは限らない場合もあります。
この演奏はどうでしょうか。
ドヴォルザークがアメリカから故郷を思って書いた作品に込められた、郷愁が自然と表現されていてボヘミアの香りを十分感じさせてくれます。
ノイマンの指揮もオーソドックスと言うか、楽譜の指定に忠実に演奏しているようです。

二楽章、木管や弦楽器は美しい音色です。特に弦の柔らかい響きは良いです。
旋律に大きく表情を付けることはしていませんが、郷愁漂う雰囲気はすばらしいです。

三楽章、素材になっている民謡の節回しなどが自然に音楽となるので、違和感なく聴けるのが良いです。

四楽章、この曲唯一のシンバルはサスペンドシンバルでした。田舎くさい音色のオーケストラで、洗練されているとはいえないのですが、「新世界から」には、このような田舎くさい響きが最適なのかもしれません。
この曲のスタンダードとして聴くにはとても良い演奏だと思います。

ノイマンが強烈な主張をしているわけではないので、いろんな演奏を聴いている人には不満があるかも知れませんが、外れには成り得ない演奏であるのは間違いないと思います。

小沢征爾/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、音が集まってくる演奏で、オケの集中力の高さを感じます。テンポの動きも自然でなかなかの好演です。
表情も穏やかで、ウィーンpoのまろやかな響きと相まって効果的な演奏です。

二楽章、イングリッシュホルンのソロも抑揚があって美しい演奏でした。まろやかな響きでアンサンブルもすごく良い!
朗々と歌うフレーズの長い歌もすばらしい。

三楽章、ティパニの強打も気持ち良い。ウィンナホルンのビービー言う音もとても合っています。
音の角が立ったこないので、とてもマイルドな「新世界」です。

四楽章、どのパートにも歌があって積極的な表現です。

これだけマイルドでしなやかな演奏ははじめて聴きました。小沢のCDはなかなか良い演奏に巡り合うことが無かったのですが、この演奏はすばらしい。

ロヴロ・フォン・マタチッチ/NHK交響楽団

icon★★★★★
一楽章、非常に哀愁に満ちた響きで開始しました。音楽の振幅も大きくスケールの大きな音楽です。
表現も積極的で、マタチッチの指揮にオケが共感しているのが伺われます。

二楽章、細部まで行き届いた演奏です。オケの集中力も高いです。この時代のN響とすれば出色の演奏だと思います。
ドヴォルザークがアメリカから故郷へ思いをはせた哀愁をいっぱいにたたえたすばらしい雰囲気を持っています。

三楽章、

四楽章、テンポが激しく動きます。起伏も激しく劇的な演奏です。これだけの演奏を統率しきったマタチッチの指揮にも感服しました。すばらしい!

クラウス・テンシュテット/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、とても弱く、そっと演奏される序奏。ホルンの動機は大きく入りました。激しく歌う第一主題。激しく感情の表出が凄いです。第二主題も良く歌い起伏に富んでいます。繰り返しは無しです。強奏へ向けてテンポを煽るように駆り立てます。息つく暇も与えないようにどんどん音楽が押し寄せてきます。これまで、この曲のイメージとして持っていたアメリカから故郷のボヘミアを思う郷愁に満ちた音楽のイメージとは違う面を聴かせてくれました。

二楽章、冒頭もかなり大きくダイナミックの変化がありました。イングリッシュホルンのソロも歌います。主題が弦に引き継がれる前のトランペットも強烈でした。テンポも大きく動きます。中間部もよく歌われます。テンシュテットの内面から湧き上がる音楽を包み隠すことなくストレートに表現しているようです。トゥッティでは思いっきり良くブラスセクションが吹き鳴らされます。

三楽章、ダイナミックで登場する楽器が一つ一つ浮き立っているようなコントラストの鮮明な演奏です。一音一音に魂が込められたような音に力が感じられます。一つ目のトリオの手前はテンポを大きく動かしてダイナミックの変化も大きく付けて積極的な表現です。

四楽章、凄く強いアタックで開始されました。そしてテンポを煽り第一主題の前にティンパニが大きくクレッシェンドします。トランペットがかなり強く演奏しています。凄く激しい演奏です。mfの指定があるシンバルはほとんど聞こえませんでした。少し穏やかになった第二主題もヴァイオリンが入るあたりからかなり動きのある演奏になります。展開部に入っても起伏の大きな演奏は続きます。第一主題の再現も激しい。第二主題の再現も始めのうちだけ穏やかですが、すぐに激しい表現になります。テンシュテットは何かにとり付かれたような、そんな感じさえもする異様な演奏です。最後の盛り上がりもトランペットが強烈に演奏します。

テンシュテットの感情が強烈に表出された、もの凄い演奏でした。この曲の王道を行く演奏ではないかも知れませんが、テンシュテットの気迫に圧倒される演奏でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★★
一楽章、静かで柔らかくとても滑らかな序奏。とても雰囲気のある第一主題。第二主題もとても滑らかです。カラヤンについてよく言われる「表面を磨き上げた」と言う表現がぴったりな実に美しい演奏です。テンポの変化はありますが、大きく歌うことは無く、ディテールを崩すようなことはありません。

二楽章、速めのテンポで柔らかいイングリッシュホルン。弦の弱音はとても美しいです。中間部は作品の持っている寂しさをとても良く表現しています。クライマックスでは屈託無く鳴り響く伸びやかな金管が気持ち良いです。

三楽章、濃厚で密度の濃い色彩。刻み付けるようなザクザクとした演奏です。一回目のトリオは少しテンポを落とした伸びやかに歌います。二つ目のトリオもゆったりとして奥ゆかしい表現です。

四楽章、艶やかな第一主題。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。この部分は他のパートがpやppなのに対してシンバルだけがmfなので楽譜通りならばもっと強くても良いのではないかと思います。起伏の大きな表現です。金管はかなり明快に鳴ります。

濃厚な色彩と質感で滑らかで美しい演奏でした。かなり洗練されていて田舎っぽい哀愁はあまり感じさせませんが、非常になめらかで美しい演奏は抗し難い魅力がありました。
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リッカルド・シャイー/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

シャイー★★★★★
一楽章、とても哀愁を感じさせる序奏。ホルンはゆっくりと演奏しました。木管も静寂感があって美しいです。途中にアクセントがある独特の表現の第二主題。金管は激しく咆哮しますが、とてもスマートな演奏です。

二楽章、間接音を含んで柔らかいイングリッシュホルンの主題。寂しさが溢れる中間部。とても雰囲気のある演奏で、哀愁がにじみ出てきます。クライマックスは速いテンポになりましたが、溢れ出すような金管がとても豊かでした。そこからテンポを次第に落として主題につながる変化もとても良かったです。

三楽章、とてもリズム感が良く弾む主要主題。2つ目のトリオはとても楽しげです。

四楽章、かなり余裕のある第一主題。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。第二主題の後は生き生きとした表現です。フレーズの切れ目が無く、次から次から被さってくるように音楽がつながって行きます。ゆっくりと粘りのあるコーダ。

哀愁を感じさせる表現とフレーズが途切れない息の長い音楽。三楽章ではシャイーのリズム感の良さも感じさせました。なかなか良い演奏だったと思います。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 1991年ライヴ

チェリビダッケ★★★★★
一楽章、ゆっくり静かな序奏ですが、テンポはかなり動いています。とても冷静で清涼感のある涼しい演奏です。ゆっくりな分、緻密で見通せるような透明感の高い演奏です。

二楽章、大きく強弱を繰り返す序奏。主題もゆっくりとした演奏ですが、あまり哀愁を感じさせるような感情を込めた演奏ではありません。中間部はさらに遅くなり、表現も大きくなりますが、感情にまかせての表現では無く、計算し尽くされたような感じの演奏です。見事なバランスでとても充実した響きはとても魅力的です。

三楽章、とても正確にきっちりと刻まれる主要主題。強打されるティンパニ。一つ目のトリオも感情を込めるような表現では無くとても整った演奏です。二つ目のトリオはゆっくりと優雅に舞うように演奏します。チェリビダッケの演奏はいつもそうですが、響きの透明感が高いせいか、響きの厚みはあまり無くスッキリとした響きです。

四楽章、見事なバランスで響き渡る第一主題。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。mfの指定にしては弱いものです。ライヴでも混濁しない精緻で美しい響きは厳しいリハーサルを繰り返した成果でさすがです。二楽章の序奏が回想される部分では少しテンポを落として重い演奏です。コーダは一音一音が止まっているような演奏からトロンボーンがはいってから活発な動きになって感動的に終わりました。

ゆっくりとしたテンポで精緻で見事なバランスで、とても透明感の高い演奏でした。感情を込めた濃厚な表現はありませんが、計算し尽くされたカチッとはまる演奏はとても素晴らしいものでした。
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マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ヤンソンス★★★★★
一楽章、序奏から深く歌います。轟き渡るティンパニ。表現力豊かな弦。リズムの切れも良く、強弱の変化にもとても敏感に反応します。ここまでの演奏を聞くとヤンソンスが並みの指揮者ではないことが分かります。ボヘミアの田舎っぽい感じはあまり無く、洗練された演奏です。

二楽章、速めのテンポですが、とても豊かに感情のこもった歌の主題。中間部の始めで大きくテンポが動きました。その後はあまり暗転せずにくっきりとした息の長い演奏が続きます。金管は咆哮せず、とても穏やかです。

三楽章、速いテンポで慌ただしいですが、力のある主要主題。少しテンポを落として表現力豊かに歌う一つ目のトリオ。とても躍動感があって生き生きとした二つ目のトリオ。

四楽章、とても力強い序奏。あまり力みの無い第一主題ですが、一つ一つの音にはとても力があります。シンバルはサスペンド・シンバルでした。とても大胆に表現する第二主題のチェロ。

表現力豊かで積極的な表現の演奏でした。ボヘミアの田舎っぽさは無く、洗練された演奏でしたが、一つ一つの音に力のある演奏はなかなか良かったです。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ホーレンシュタイン★★★★★
一楽章、ゆっくりと哀愁がにじみ出るような序奏。物凄いエネルギーで押し寄せてくる低弦とティンパニ。金管も激しく入ってきます。表現も大きく積極的です。どっしりとした足取りでがっちりとした演奏です。

二楽章、自然な表現で旋律の美しさを出す主要主題。あまり暗転しない中間部。音の力がとても強いです。

三楽章、速いテンポで勢いのある主要主題。やはりとても力のある音です。躊躇無く強弱の変化を表現します。優雅に踊るような二つ目のトリオ。

四楽章、ゆったりとした序奏に続いて、かなり余裕を残した第一主題。シンバルはサスペンド・シンバルでした。くっきりと浮かび上がる第二主題。トゥッティの咆哮はかなり強烈で、弱音の濃厚な表現と合わせて演奏を強く印象付けます。

凄いエネルギーで押し寄せてくる強いトゥッティの咆哮と濃厚な表現。この演奏の力強さはとても説得力がありました。
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クリストフ・エッシェンバッハ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2008年ライヴ

エッシェンバッハ★★★★★
一楽章、ゆったりと丁寧な序奏ですが、あまり哀愁は感じられません。大きく歌う木管。唸りを上げる低弦とティンパニ。かなり起伏の激しい演奏です。第一主題の前にティンパニで大きくテンポを落としました。テンポは大きく動きます。提示部の反復がありました。動きがあって生き生きとした表現の演奏です。

二楽章、ここでも起伏の大きな序奏です。テンポも強弱も変化する主要主題。ゆったりとしたテンポで強弱の変化も駆使して表現する中間部。テンポの動きは自然で作為的では無く、音楽に浸ることができます。

三楽章、厚みがあって勢いもある主要主題。優雅な一つ目のトリオ。二つ目のトリオもゆったりと優雅です。

四楽章、かなり強めな第一主題。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。ウィーンpoらしい締まったクラリネットの陰影に満ちた弱音を駆使した第二主題。この楽章でもテンポの動きが何度もあります。

自然なテンポの動きと生き生きとした表現。哀愁はあまり感じませんでしたが、ウィーンpoの美しい響きの演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・トヴォルザーク:交響曲第9番「新世界から」の名盤を試聴したレビュー

ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界から」2

たいこ叩きのドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界から」名盤試聴記

ルドルフ・ケンペ/チユーリッヒ・トーンハレ管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、即興的なテンポの動きがあるようで、音楽的な演奏です。歌も心がこもったもので、聴きながら一緒に音楽ができるような良さを感じます。
金管が突出してこないので、とてもマイルドな響きで聴きやすい録音です。
ケンペとオケの一体感がすごく感じられる良い演奏です。

二楽章、暖かみのある音楽で、心が穏やかになります。強弱の変化や音楽の揺れに身を任せているのが心地よい演奏です。
決して攻撃的な部分がないので、どっぷりとケンペの音楽に浸っていられる安心感があります。

三楽章、録り方もあるのだと思いますが、厚い中低域の中に旋律がある感じがとても心地よい響きを作り出しています。ただ、ティンパニの音域ぐらいのところが膨らみすぎていて、かぶってくることがあるのが、唯一の難点です。

四楽章、金管の細かいパッセージが吹ききれていないところもあります。
この曲で一発だけのシンバルはクラッシュシンバルで演奏されました。この部分は楽譜にはシンバルとしか書いてなくて、クラッシュなのかサスペンドなのかは、指揮者や奏者の考えに頼ることになります。しかも強弱の指定がmfになっていて、周囲の雰囲気からするとmpの間違いじゃないのか?と思うぐらいのところです。
この演奏のシンバルは曲の雰囲気を壊さずに、しかも存在感もあるすばらしい一発でした。

私の尊敬する打楽器の先生も「あそこはクラッシュに決まっているでしょう!」と言っておられましたが、私はクラッシュで叩く勇気はありませんでした(^ ^;
終盤の畳み掛けるようなテンポもすばらしい。直後のクラリネットのソロはゆったりとして、そのあとも少しテンポが動いて、すごく音楽的で人間的な暖かみのある演奏でした。

ロリン・マゼール/ニューヨーク・フィルハーモニック

マゼール★★★★☆
一楽章、マイルドに溶け合った美しい序奏。音の最後をあまりしぼめずとても大きく恰幅の良い演奏です。テンポの動きもあり、ちょっと引っかかるような動きもありました。テンポを動かす表現は少し作為的な感じもあります。

二楽章、音を繋げた序奏。速めのテンポですが、たっぷりと歌う主題。中間部は息の長いクラリネット。弦も独特の表現です。かなりテンポを速めて個性的な表現です。それにしてもブレンドされた滑らかな響きの美しさ何とも言えないほどです。

三楽章、速めのテンポですが哀愁を感じさせる主要主題。ティンパニが深い響きでしかもバチンと決まります。一つ目のトリオを少し慌ただしい感じで落ち着きがありませんでした。二つ目のトリオはレガートで演奏されて滑らかな演奏です。

四楽章、アタッカで入り慌ただしい冒頭です。少し雑な感じがした第一主題。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。強いアタックはせず、レガートぎみの演奏で、カラヤンを髣髴とさせるような表現です。コーダでも大暴れすることは無く、充実したアンサンブルで終わりました。

ニューヨークpoと言うとギラギラとした原色の響きを連想しますが、とてもマイルドで充実した響きでした。マゼールの個性的な表現がちょっと作為的な感じもありましたが、良い演奏だったと思います。
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パーヴォ・ヤルヴィ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ヤルヴィ★★★★☆
一楽章、とてもゆっくりと感情を込めて演奏される序奏。強烈なティンパニ。明晰でとても力強い演奏です。提示部の反復がありました。明るい響きで田舎臭さや哀愁はあまり感じさせません。明るく伸び伸びと鳴り響くトゥッティ。

二楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポの序奏です。暖かく息の長い主要主題。とても安らかでこころが開放されるようです。清涼感のある響きですが、色彩感も豊かです。大きく暗転はしませんが、薄暗く少し温度が下がる中間部。オーボエが入る前にはテンポが止まりそうになりましたがクライマックスは一気に聞かせそして次第にテンポを落として再び主要主題とつながって行きます。このテンポの動きはとても自然で音楽にどっぷりと浸ることができます。

三楽章、生々しく生き生きとした主要主題。ザクザクと刻み付けるように鮮烈な演奏です。一つ目のトリオもとても動きが活発で、色んな楽器が活動的に動きます。楽しげに舞うような二つ目のトリオ。硬いマレットでバチーンと決まるティンパニ。とても爽快です。

四楽章、抑え気味で軽い第一主題。そのあと僅かにテンポが遅くなりました。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。最初、この部分のシンバルはサスペンド・シンバルじゃないと雰囲気を壊すと思っていましたが、こうやっていろんな演奏を聞くとクラッシュ・シンバルがとても良いと思うようになって来ました。コーダの盛り上がりは物凄く速いテンポでした。

とても大きくテンポが動いて聞き手の感情に寄り添うような演奏でしたが最後のコーダの盛り上がりはちょっと速すぎる感じがしました。明晰な響きと力強い演奏もとても良かったです。
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イシュトヴァン・ケルテス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、ふくよかで暖かい響きです。表情が生き生きしていてはつらつとした演奏です。
音楽に躍動感があって良い演奏です。

二楽章、とても繊細な表現です。細部まで神経が行き届いた演奏です。

三楽章、

四楽章、丁寧な演奏と適度な緊張感を伴った演奏でした。

オトマール・スイトナー/シュターツカペレ・ベルリン

icon★★★★
一楽章、祈りにも似た静かで丁寧な冒頭。清涼感があって爽やかな響きが印象的です。強弱の変化も音楽の流れに合わせてとても自然です。このシリーズ全体に共通するところですが、金管の位置が少し遠く、音色的には強くなっているのですが、実際の音量としては少し届いて来ない感じがあります。最後少しテンポを上げて終りました。

二楽章、羽毛で肌を撫でられるような繊細な表情の弦。積極的な表現で郷愁を感じさせる演奏です。

三楽章、かなり速いテンポです。西欧風の主題の音符の扱いが独特です。テヌートを多様した表現です。

四楽章、この楽章もかなり速いテンポです。ホルンとトランペットの第一主題に続く弦がテヌートぎみに演奏しました。シンバルはクラッシュシンバルです。続くクラリネットのソロや合いの手に入る弦の表情もとても豊かです。最後はすごくテンポを上げました。金管を咆哮させることもなくあっさりと水彩画のような演奏でした。

イシュトヴァン・ケルテス/ロンドン交響楽団

ケルテス★★★☆
一楽章、速めのテンポですが、寂しげで哀愁を感じさせる序奏。やはり速めのテンポですがふくよかなホルンによる第一主題。提示部の反復があります。

二楽章、速めのテンポであっさりと進む主題。中間部もあまり暗転しません。とてもあっさりとした表現で、大きな表現はありませんが作品の持っている美しい旋律をさりげなく伝えてくれます。

三楽章、この楽章も速めのテンポですが、ほの暗い感じはとても良く表現されています。一つ目のトリオは舞踊風で良く歌います。二つ目のトリオは音を繋げるような演奏で流れが良いです。

四楽章、咆哮は無く落ち着いた第一主題。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。美しく歌う第二主題。二楽章の序奏が回想される部分でも金管はかなり余裕を残しています。コーダも余裕のある演奏でした。

作品に深くのめり込まず、作品の持っている美しさを自然に表現した演奏でした。はじめの三つの楽章のテンポが速めであまり落ち着きが無かった感じでした。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★
一楽章、予想外のテンポの動きや木管が裸になるような生々しさ。ボヘミアの哀愁などは全く感じさせません。

二楽章、何の思い入れも無いような演奏ですが、大きく捉えた設計があるのでしょうか?

三楽章、ゆったりとしたテンポで細部まで描き出そうとしているような演奏です。

他の演奏では、あまり聴けないパートの音も聞こえます。

四楽章、この楽章もゆったりしたテンポの演奏です。控え目な金管。木管や弦が強調されています。

力みの全くない演奏でした。

準・メルクル/NHK交響楽団

icon★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで細身の響きがします。ffでも控え目で爆発するようなことはありません。
寒色系の響きが印象的です。

二楽章、ボヘミアの雰囲気を伝えるような演奏ではなく、純粋に楽譜を音に替える仕事をしているような演奏です。
純粋に音楽をしているようで誠実さがひしひしと伝わってきます。

三楽章、純粋に音楽が進んで行きますが、あまりにも何も起こらないので、ちょっと不満にもなってきます。

四楽章、アゴーギクもほとんどなく、ねばっこい表現もないのであっさりとしていてBGM的に聴くには良い演奏だと思いますが聴き込むには、もっと音楽を深く理解しないとムリなようです。
ffでも濁ることなく美しい響きがすばらしい。

レオポルド・ストコフスキー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★
一楽章、とても雰囲気のある序奏。強く音を割ったホルン。足もとが定まらず流されているような強奏部。第二主題のオーボエとフルートは歌が合わないので、オーボエが強くなったり弱くなったりします。リピートはなし。コーダでは、トランペットとホルンにトリルが入りました。

二楽章、とてもゆったりと歌われるイングリッシュホルンの主題。望郷の歌を感情を込めて見事に演奏しました。テンポも動いて望郷の表現はすばらしいです。トロンボーンは軽く吹いている感じでかなり余裕のあるトゥッティです。ゆったりとたっぷりとした表現の演奏はすばらしいものがありました。

三楽章、二回目のトリオは速めのテンポであまり表情もなくそっけない感じです。

四楽章、ゆっくりと始まりさらに第一主題の前で大きくritしました。シンバルはサスペンドシンバルでした。抑えた音量の中で歌うクラリネットの第二主題。第二楽章の主題が回想される前でも大きくritしました。その後テンポを速め、第一主題の再現の前でまた大きくritしました。テンポは自由に動いています。ただ、テンポの動きほど表現は大きく付けておらず、心に刻まれるような音楽にはなっていないように感じます。最後は急速にテンポを上げて終りました。

二楽章は感動的でしたが、一楽章コーダのトランペットやホルンのトリルや四楽章のテンポの大きな動きなど、ストコ節が聞かれましたが、表現として深く掘り下げた演奏には感じませんでした。

ズデニェク・コシュラー/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1976年大阪ライヴ

コシュラー★★★
一楽章、序奏から哀愁が漂います。ビブラートを掛けたホルン。かなりデッドな録音でオケが近いです。作品自体が美しい旋律を多く持っていることもありあまり大きな表現はありませんがテンポを速める部分が何度かあります。コーダもかなり速いテンポになりました。

二楽章、速いテンポであっさりと演奏されるイングリッシュホルンの主題。中間部も速めのテンポであまり暗転しませんが哀愁は感じさせます。さすがにお国物ということもあってツボはしっかりと押さえています。

三楽章、力強い主要主題。一つ目のトリオは木管が強すぎるようなきつい響きになります。音楽の起伏はかなり大きいです。

四楽章、第一主題はテンポが速く少しアンサンブルが雑な感じがします。シンバルはサスペンド・シンバルでした。第二主題に現れるチェロは柔らかく豊かです。かなり金管が激しく演奏します。

基本的には少し速めのテンポですが、正統な演奏でした。ただ、デッドな録音であまり美しい響きを聞くことができなかったのは残念です。
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カルロス・パイタ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

パイタ★★★
一楽章、ゆっくりと非常に濃厚に歌う序奏。ホルンが長い余韻を残して演奏します。続く木管もとても良く歌います。リアルで強烈なティンパニ。一転して速めのテンポの第一主題。第二主題にはアクセントがあります。パイタのいつもの演奏のように金管が青筋たててしゃかりきに吹きまくるような演奏ではありません。テンポはかなり自由に動きます。

二楽章、とてもゆっくりと始まります。主題もゆっくり目で、感情が込められた歌です。アゴーギクもたっぷりと効かせて濃厚な歌です。弱音はとても静かです。中間部はあまり暗くなりませんが、ここでも大きな歌で訴えかけてきます。クライマックスもいつものパイタの演奏のような限界ギリギリの演奏では無く余裕のある美しい演奏です。感情のままに大きく動くテンポもこれはこれでなかなか良いです。

三楽章、かなり速いテンポです。一つ目のトリオも速いテンポで素っ気無い演奏で、落ち着きがありません。二つ目のトリオはまた豊かな歌になります。主部が戻ると少し滑っているような感じもします。

四楽章、パイタが改心したかのように余裕のある第一主題。その後は速いテンポです。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。かなり速いテンポでせわしない演奏です。再現部も速いテンポです。コーダは大きくテンポを落としてトゥッティに入ってその後大きく加速減速して終わりました。

一楽章、二楽章はゆっくりとしたテンポを基調にして、感情のままに大きくテンポが動くロマンティックな演奏でしたが、三楽章と四楽章は速いテンポで、素っ気無くせわしない演奏になってしまいました。
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小林 研一郎/日本フィルハーモニー管弦楽団

小林★★★
一楽章、濃厚に歌う序奏。低弦とティンパニの炸裂。歌に溢れた第一主題。熱血漢らしい濃厚で熱い演奏です。第二主題は少し速いテンポであっさりと演奏されます。繊細で細部までしっかりと捉えられた録音でとても美しいです。

二楽章、速めのテンポの主要主題ですが、哀愁は感じます。感情を盛り上げるようにテンポが動きます。大きく暗転しない中間部。切れ目なく切々と豊かに歌います。

三楽章、速いテンポの上さらに前のめりで畳み掛けるような主要主題。輝くような美しさの一つ目のトリオ。

四楽章、第一主題の後テヌートぎみに演奏する弦。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。情報量が多く豊かな演奏です。

ライヴでありながら細部の動きまで分かるような録音でした。演奏も濃厚で熱いものでしたが、あまり惹きつけられるようなところはありませんでした。
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カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1978年ザルツブルクライヴ

ベーム★★
一楽章、ゆっくりと味わいのある序奏です。重厚な低弦。ティンパニは軽いです。第一主題も第二主題もあまり哀愁を感じさせません。コーダはかなりテンポを速めて勢いのある演奏でした。

二楽章、細身であまり歌わないイングリッシュホルン。色彩感は濃厚ですが、いつものウィーンpoのような一体感がありません。中間部の木管は歌いますが、なぜか一体感はありません。

三楽章、一つ目のトリオで強弱の変化を大きく付けました。

四楽章、力強い第一主題ですが、少し荒い感じがします。シンバルはサスペンド・シンバルでした。第二主題も音のキメが荒くあまり美しくはありません。ドイツ物だと抜群の相性を示す組み合わせですが、ボヘミアの雰囲気とはどこか違う感じがして、しっくりきません。コーダはかなり激しい演奏でした。

哀愁を感じさせる演奏では無く、かなり荒れた響きで勢いのある演奏でした。あまりしっくりこない演奏でした。
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朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団


一楽章、ふくよかな響きですが、少しアンサンブルの乱れがあります。テンポは遅めであまり動きません。

金管のffは力強いのですが、テンポが動かないので音楽の高揚感と金管のffが合わない感じがします。

二楽章、暖かい響きです。アンサンブルは悪いです。あまりにもケレン味のない演奏で、ストレートすぎるように感じます。

三楽章、どうしても安全運転に聞こえてしまいます。スリルや緊張感が伝わってこない。

四楽章、すごくゆっくりした出だしからアッチェレランドして主題に入りました。エチュードをやっているような、感情的な高揚感がありません。音楽に推進力も感じられません。

マンフレート・ホーネック/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

ホーネック
一楽章、静かで動きの無い序奏。速めのテンポの第一主題。あまり強弱の振幅は大きくありません。速いテンポを基調にしていて、ちょっとせわしない感じがあります。哀愁に浸るような余裕を与えてくれません。

二楽章、あっさりとした主要主題。中間部も速いテンポであっさりとしています。チェコpoの伝統的な哀愁に満ちた演奏とは縁遠い感じで、感傷的になることは全くありません。

三楽章、勢いのある主要主題。テンポも速いです。淡泊な一つ目のトリオ。テヌートで演奏される二つ目のトリオ。軽快に舞うような雰囲気が失われているような感じがします。

四楽章、第一主題もテヌートで演奏されるので、この曲の普通のイメージとは違います。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。テンポが速く収まりが悪い感じです。テンポが速いのにテヌートなのが原因のようです。なぜテヌートなのか理解できません。

速いテンポで哀愁や感傷に浸るような演奏ではありませんでした。表現はとてもあっさりとしていて、テヌートを多用するので、とても違和感がありました。
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