ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界から」
たいこ叩きのドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界から」名盤試聴記
ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、70年代のチェコpoは金管楽器のレベルがかなり落ちた時期がありましたが、この演奏では音離れの良い音がしています。
ノイマン/チェコpoにしてみれば手馴れたお国ものと言うことになるのですが、お国ものが必ずしも良いとは限らない場合もあります。
この演奏はどうでしょうか。
ドヴォルザークがアメリカから故郷を思って書いた作品に込められた、郷愁が自然と表現されていてボヘミアの香りを十分感じさせてくれます。
ノイマンの指揮もオーソドックスと言うか、楽譜の指定に忠実に演奏しているようです。
二楽章、木管や弦楽器は美しい音色です。特に弦の柔らかい響きは良いです。
旋律に大きく表情を付けることはしていませんが、郷愁漂う雰囲気はすばらしいです。
三楽章、素材になっている民謡の節回しなどが自然に音楽となるので、違和感なく聴けるのが良いです。
四楽章、この曲唯一のシンバルはサスペンドシンバルでした。田舎くさい音色のオーケストラで、洗練されているとはいえないのですが、「新世界から」には、このような田舎くさい響きが最適なのかもしれません。
この曲のスタンダードとして聴くにはとても良い演奏だと思います。
ノイマンが強烈な主張をしているわけではないので、いろんな演奏を聴いている人には不満があるかも知れませんが、外れには成り得ない演奏であるのは間違いないと思います。
小沢征爾/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、音が集まってくる演奏で、オケの集中力の高さを感じます。テンポの動きも自然でなかなかの好演です。
表情も穏やかで、ウィーンpoのまろやかな響きと相まって効果的な演奏です。
二楽章、イングリッシュホルンのソロも抑揚があって美しい演奏でした。まろやかな響きでアンサンブルもすごく良い!
朗々と歌うフレーズの長い歌もすばらしい。
三楽章、ティパニの強打も気持ち良い。ウィンナホルンのビービー言う音もとても合っています。
音の角が立ったこないので、とてもマイルドな「新世界」です。
四楽章、どのパートにも歌があって積極的な表現です。
これだけマイルドでしなやかな演奏ははじめて聴きました。小沢のCDはなかなか良い演奏に巡り合うことが無かったのですが、この演奏はすばらしい。
ロヴロ・フォン・マタチッチ/NHK交響楽団
★★★★★
一楽章、非常に哀愁に満ちた響きで開始しました。音楽の振幅も大きくスケールの大きな音楽です。
表現も積極的で、マタチッチの指揮にオケが共感しているのが伺われます。
二楽章、細部まで行き届いた演奏です。オケの集中力も高いです。この時代のN響とすれば出色の演奏だと思います。
ドヴォルザークがアメリカから故郷へ思いをはせた哀愁をいっぱいにたたえたすばらしい雰囲気を持っています。
三楽章、
四楽章、テンポが激しく動きます。起伏も激しく劇的な演奏です。これだけの演奏を統率しきったマタチッチの指揮にも感服しました。すばらしい!
クラウス・テンシュテット/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、とても弱く、そっと演奏される序奏。ホルンの動機は大きく入りました。激しく歌う第一主題。激しく感情の表出が凄いです。第二主題も良く歌い起伏に富んでいます。繰り返しは無しです。強奏へ向けてテンポを煽るように駆り立てます。息つく暇も与えないようにどんどん音楽が押し寄せてきます。これまで、この曲のイメージとして持っていたアメリカから故郷のボヘミアを思う郷愁に満ちた音楽のイメージとは違う面を聴かせてくれました。
二楽章、冒頭もかなり大きくダイナミックの変化がありました。イングリッシュホルンのソロも歌います。主題が弦に引き継がれる前のトランペットも強烈でした。テンポも大きく動きます。中間部もよく歌われます。テンシュテットの内面から湧き上がる音楽を包み隠すことなくストレートに表現しているようです。トゥッティでは思いっきり良くブラスセクションが吹き鳴らされます。
三楽章、ダイナミックで登場する楽器が一つ一つ浮き立っているようなコントラストの鮮明な演奏です。一音一音に魂が込められたような音に力が感じられます。一つ目のトリオの手前はテンポを大きく動かしてダイナミックの変化も大きく付けて積極的な表現です。
四楽章、凄く強いアタックで開始されました。そしてテンポを煽り第一主題の前にティンパニが大きくクレッシェンドします。トランペットがかなり強く演奏しています。凄く激しい演奏です。mfの指定があるシンバルはほとんど聞こえませんでした。少し穏やかになった第二主題もヴァイオリンが入るあたりからかなり動きのある演奏になります。展開部に入っても起伏の大きな演奏は続きます。第一主題の再現も激しい。第二主題の再現も始めのうちだけ穏やかですが、すぐに激しい表現になります。テンシュテットは何かにとり付かれたような、そんな感じさえもする異様な演奏です。最後の盛り上がりもトランペットが強烈に演奏します。
テンシュテットの感情が強烈に表出された、もの凄い演奏でした。この曲の王道を行く演奏ではないかも知れませんが、テンシュテットの気迫に圧倒される演奏でした。
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、静かで柔らかくとても滑らかな序奏。とても雰囲気のある第一主題。第二主題もとても滑らかです。カラヤンについてよく言われる「表面を磨き上げた」と言う表現がぴったりな実に美しい演奏です。テンポの変化はありますが、大きく歌うことは無く、ディテールを崩すようなことはありません。
二楽章、速めのテンポで柔らかいイングリッシュホルン。弦の弱音はとても美しいです。中間部は作品の持っている寂しさをとても良く表現しています。クライマックスでは屈託無く鳴り響く伸びやかな金管が気持ち良いです。
三楽章、濃厚で密度の濃い色彩。刻み付けるようなザクザクとした演奏です。一回目のトリオは少しテンポを落とした伸びやかに歌います。二つ目のトリオもゆったりとして奥ゆかしい表現です。
四楽章、艶やかな第一主題。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。この部分は他のパートがpやppなのに対してシンバルだけがmfなので楽譜通りならばもっと強くても良いのではないかと思います。起伏の大きな表現です。金管はかなり明快に鳴ります。
濃厚な色彩と質感で滑らかで美しい演奏でした。かなり洗練されていて田舎っぽい哀愁はあまり感じさせませんが、非常になめらかで美しい演奏は抗し難い魅力がありました。
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リッカルド・シャイー/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
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一楽章、とても哀愁を感じさせる序奏。ホルンはゆっくりと演奏しました。木管も静寂感があって美しいです。途中にアクセントがある独特の表現の第二主題。金管は激しく咆哮しますが、とてもスマートな演奏です。
二楽章、間接音を含んで柔らかいイングリッシュホルンの主題。寂しさが溢れる中間部。とても雰囲気のある演奏で、哀愁がにじみ出てきます。クライマックスは速いテンポになりましたが、溢れ出すような金管がとても豊かでした。そこからテンポを次第に落として主題につながる変化もとても良かったです。
三楽章、とてもリズム感が良く弾む主要主題。2つ目のトリオはとても楽しげです。
四楽章、かなり余裕のある第一主題。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。第二主題の後は生き生きとした表現です。フレーズの切れ目が無く、次から次から被さってくるように音楽がつながって行きます。ゆっくりと粘りのあるコーダ。
哀愁を感じさせる表現とフレーズが途切れない息の長い音楽。三楽章ではシャイーのリズム感の良さも感じさせました。なかなか良い演奏だったと思います。
セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 1991年ライヴ
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一楽章、ゆっくり静かな序奏ですが、テンポはかなり動いています。とても冷静で清涼感のある涼しい演奏です。ゆっくりな分、緻密で見通せるような透明感の高い演奏です。
二楽章、大きく強弱を繰り返す序奏。主題もゆっくりとした演奏ですが、あまり哀愁を感じさせるような感情を込めた演奏ではありません。中間部はさらに遅くなり、表現も大きくなりますが、感情にまかせての表現では無く、計算し尽くされたような感じの演奏です。見事なバランスでとても充実した響きはとても魅力的です。
三楽章、とても正確にきっちりと刻まれる主要主題。強打されるティンパニ。一つ目のトリオも感情を込めるような表現では無くとても整った演奏です。二つ目のトリオはゆっくりと優雅に舞うように演奏します。チェリビダッケの演奏はいつもそうですが、響きの透明感が高いせいか、響きの厚みはあまり無くスッキリとした響きです。
四楽章、見事なバランスで響き渡る第一主題。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。mfの指定にしては弱いものです。ライヴでも混濁しない精緻で美しい響きは厳しいリハーサルを繰り返した成果でさすがです。二楽章の序奏が回想される部分では少しテンポを落として重い演奏です。コーダは一音一音が止まっているような演奏からトロンボーンがはいってから活発な動きになって感動的に終わりました。
ゆっくりとしたテンポで精緻で見事なバランスで、とても透明感の高い演奏でした。感情を込めた濃厚な表現はありませんが、計算し尽くされたカチッとはまる演奏はとても素晴らしいものでした。
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マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
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一楽章、序奏から深く歌います。轟き渡るティンパニ。表現力豊かな弦。リズムの切れも良く、強弱の変化にもとても敏感に反応します。ここまでの演奏を聞くとヤンソンスが並みの指揮者ではないことが分かります。ボヘミアの田舎っぽい感じはあまり無く、洗練された演奏です。
二楽章、速めのテンポですが、とても豊かに感情のこもった歌の主題。中間部の始めで大きくテンポが動きました。その後はあまり暗転せずにくっきりとした息の長い演奏が続きます。金管は咆哮せず、とても穏やかです。
三楽章、速いテンポで慌ただしいですが、力のある主要主題。少しテンポを落として表現力豊かに歌う一つ目のトリオ。とても躍動感があって生き生きとした二つ目のトリオ。
四楽章、とても力強い序奏。あまり力みの無い第一主題ですが、一つ一つの音にはとても力があります。シンバルはサスペンド・シンバルでした。とても大胆に表現する第二主題のチェロ。
表現力豊かで積極的な表現の演奏でした。ボヘミアの田舎っぽさは無く、洗練された演奏でしたが、一つ一つの音に力のある演奏はなかなか良かったです。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
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一楽章、ゆっくりと哀愁がにじみ出るような序奏。物凄いエネルギーで押し寄せてくる低弦とティンパニ。金管も激しく入ってきます。表現も大きく積極的です。どっしりとした足取りでがっちりとした演奏です。
二楽章、自然な表現で旋律の美しさを出す主要主題。あまり暗転しない中間部。音の力がとても強いです。
三楽章、速いテンポで勢いのある主要主題。やはりとても力のある音です。躊躇無く強弱の変化を表現します。優雅に踊るような二つ目のトリオ。
四楽章、ゆったりとした序奏に続いて、かなり余裕を残した第一主題。シンバルはサスペンド・シンバルでした。くっきりと浮かび上がる第二主題。トゥッティの咆哮はかなり強烈で、弱音の濃厚な表現と合わせて演奏を強く印象付けます。
凄いエネルギーで押し寄せてくる強いトゥッティの咆哮と濃厚な表現。この演奏の力強さはとても説得力がありました。
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クリストフ・エッシェンバッハ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2008年ライヴ
★★★★★
一楽章、ゆったりと丁寧な序奏ですが、あまり哀愁は感じられません。大きく歌う木管。唸りを上げる低弦とティンパニ。かなり起伏の激しい演奏です。第一主題の前にティンパニで大きくテンポを落としました。テンポは大きく動きます。提示部の反復がありました。動きがあって生き生きとした表現の演奏です。
二楽章、ここでも起伏の大きな序奏です。テンポも強弱も変化する主要主題。ゆったりとしたテンポで強弱の変化も駆使して表現する中間部。テンポの動きは自然で作為的では無く、音楽に浸ることができます。
三楽章、厚みがあって勢いもある主要主題。優雅な一つ目のトリオ。二つ目のトリオもゆったりと優雅です。
四楽章、かなり強めな第一主題。シンバルはクラッシュ・シンバルでした。ウィーンpoらしい締まったクラリネットの陰影に満ちた弱音を駆使した第二主題。この楽章でもテンポの動きが何度もあります。
自然なテンポの動きと生き生きとした表現。哀愁はあまり感じませんでしたが、ウィーンpoの美しい響きの演奏でした。
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