カテゴリー: ドヴォルザーク:交響曲第8番名盤試聴記

ドヴォルザーク 交響曲第8番

ドヴォルザークの交響曲第8番は、明るく牧歌的な雰囲気と、故郷ボヘミア(現在のチェコ)への愛情が込められた親しみやすい作品です。彼の代表作である「新世界より」と並び、非常に人気が高く、豊かなメロディーと民族的な要素が特徴です。以下、各楽章について解説します。

1. 第1楽章:Allegro con brio

チェロによる穏やかなテーマで始まり、自然の美しさや田園風景を想起させます。その後、ホルンが壮大なメロディを奏で、明るく力強い雰囲気が広がります。軽快で陽気なメロディと共に、田舎ののどかな風景が音楽の中に描かれており、生命力あふれる印象を受けます。

2. 第2楽章:Adagio

この楽章は静かで叙情的な雰囲気が漂います。時折、鳥のさえずりを思わせるメロディが現れ、自然の中での穏やかなひとときや、夕暮れ時の静寂を感じさせます。温かみのある旋律がゆったりと流れ、聴き手に深い安らぎと美しさを届けます。

3. 第3楽章:Allegretto grazioso

ワルツ風の軽やかなリズムで始まり、優雅で遊び心のあるメロディが特徴です。どこか懐かしさを感じるこのメロディは、チェコの伝統的な音楽に由来し、聴き手に微笑みを誘います。途中で速いテンポの部分に変わり、明るくはつらつとした雰囲気を加えることで、多様な表情を生み出しています。

4. 第4楽章:Allegro ma non troppo

最終楽章はファンファーレのようなトランペットの導入で始まり、壮大なフィナーレに向かう流れが印象的です。明るく活気に満ちたメロディが繰り返され、リズミカルで喜びに満ちた展開が続きます。チェコの民族舞曲風のリズムが豊かに組み込まれており、全体を通してエネルギッシュで楽しさあふれるクライマックスを迎えます。

全体の印象

交響曲第8番はドヴォルザークの作品の中でも特に「自然」と「民族色」が豊かに表れています。複雑な構成よりもメロディの美しさが際立ち、聴き手に親しみやすさを感じさせる曲です。彼の故郷に対する愛情と、自然の中で生まれる喜びや穏やかさが凝縮されており、心温まる魅力がいっぱいの作品です。

たいこ叩きのドヴォルザーク 交響曲第8番名盤試聴記

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

icon★★★★★
一楽章、冒頭からアゴーギクを利かせて歌い込まれた演奏です。表情が豊かで伸びやかな演奏です。
オケが渾身の力を振り絞って演奏しているような力強く情感に満ちた演奏です。

二楽章、木管も美しい!テュッティも生き生きとしていて聴いていて気持ちが良いです。

三楽章、

四楽章、明るい音色のトランペットのファンファーレでした。オケの積極的な表現がとても好印象です。

すばらしい演奏でした。

ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、とても整った弦のアンサンブルです。ゆったりと心のこもったフルートのソロでした。テュッティでも混濁することなく見通しの良い演奏はセルの特徴です。
表情もとても豊かです。どの楽器も引き締まった響きで、スリムな印象です。
セルのコントロールが細部まで行き届いている感じで制御が利いています。表情もセルの意図が克明に表現されているようです。
すばらしい演奏です。

二楽章、とても表情豊かな木管です。弦と木管の絡みもとても美しいです。セルが鍛え上げたクリーブランド管弦楽団のアンサンブルの精度は見事!

三楽章、歌があって、演奏に酔うことができます。

四楽章、張りのあるトランペットのファンファーレでした。常にシャープで見通しの良い演奏の中に豊かな歌があって気持ちが洗われるような感覚になります。

見事でした。すばらしい!

オトマール・スイトナー/シュターツカペレ・ベルリン

icon★★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで陰影に満ちた哀愁漂う冒頭の表現です。軽いタッチで強奏部分でも重くなりません。少し金管が遠い感じの録音です。きらびやかではありませんが、渋いいぶし銀のような美しい演奏です。

二楽章、静寂感の中からフルートが浮かび上がります。艶やかなヴァイオリンのソロ。若干遠目の金管のおかげで、テュッティもすばらしいバランスで見事な響きです。

三楽章、作品に極度にのめり込むこともなく、適度な距離感で端正な演奏がとても好感がもてます。

四楽章、ちょっと細目の響きのファンファーレ。とても穏やかなチェロの主題です。テュッティでも爆発することなく抑制の効いた見事な演奏です。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★★
とても柔らかく美しい序奏。あまりに整っているので、人工的に加工されているのではないかとさえ思えてくるほどです。カラヤンの演奏で良く言われる磨きぬかれた美しさと言う表現がピッタリな滑らかで響きも融合した分厚いものです。どのパートも見事に整っていて、非の打ち所の無い演奏です。

二楽章、とても豊かに鳴る弦。フルートもクラリネットもとてもバランスが良く美しいです。トランペットが爽快に鳴り響く様も非常に美しいですし滑らかです。

三楽章、なまめかしく艶やかで美しい主要主題。木管も響きを伴って非常に美しいです。響きも溶け合ってとてもバランスが良いです。このひたすら美しい演奏に身を任せて酔いしれていれば良いと言う気持ちになります。

四楽章、強く輝かしいトランペットのファンファーレ。チェロの主題もとろけるような柔らかさです。豪快に鳴り響く金管も輝かしく非常に美しいです。しみじみと歌う弦。圧巻のコーダ。最後に叩き付けるティンパニが見事に決まりました。

このひたすら美しい演奏を何と言って表現すれば良いのでしょう。溶け合ってバランスの良い演奏が最後まで続きました。そして圧巻のコーダも見事でした。
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カルロ・マリア・ジュリーニ/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ジュリーニ★★★★★
一楽章、ゆっくりと何とも言えない呼吸で、揺れながらしみじみと歌う序奏。美しいフルート。雄大であまり大きく盛り上がらないトゥッティ。第二主題もとても豊かな歌です。音楽が横に揺れている感じで、とても優雅です。ドタバタしません。色彩は濃厚ではありません。水彩画のような淡い色彩で、粘り気も無くサラッとした肌触りです。トランペットに序奏が現れる部分も奥まったところからの響きで音圧はあまり感じません。

二楽章、しなやかで美しい歌です。静かなたたずまいで、広大な空間に音楽が広がっていくようです。中間部も穏やかで落ち着いています。細く艶やかなヴァイオリンのソロ。コーダの中間部の回想もとても美しいです。

三楽章、さぐるようにゆっくりと入って豊かに歌う主要主題。テンポが動いて揺れ動くようにしなやかな表現です。中間部に入っても大騒ぎするように舞い上がることなく、とても落ち着いて上品です。テンポも遅くゆったりとしています。ジュリーニの体から自然に出てくるようなテンポの動き。とても伸びやかで豊かな歌です。

四楽章、ゆっくりと響き渡るトランペットのファンファーレ。とてもゆっくりとした足取りの主題。その後の加速はあまり大きくしません。他の演奏に比べるとかなり遅いです。マイルドで豊かな響きです。ファンファーレが戻るとトランペットや他の金管も強奏しますが、決して荒々しくはなりません。コーダはあまり大きなテンポの変化は無く堂々と重厚な演奏で終わりました。

ゆっくりとしたテンポで優雅に横に揺れる演奏で、決して荒々しくなることは無く、夢の様に淡い演奏でした。作品の持っている力強さなどはあまり表現されなかったとは思いますが、この美しさには抗しがたいものがありました。
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ニコラウス・アーノンクール/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

アーノンクール★★★★★
一楽章、とても濃厚に歌うこともありますが、音の処理がぶっきらぼうなところもあり第一印象は少し戸惑いました。かなり思い切ったテンポの動きがあります。鋭いトランペット。第二主題も弾むように歌います。展開部で序奏が現れる部分は豊かな歌で美しい表現でした。クライマックスの激しいホルンの咆哮。トランペットに現れる序奏はやはり鋭いです。続く木管はとてもゆっくりと演奏されました。

二楽章、深い息遣いの主要主題。フルートは凄く速く演奏して、クラリネットはゆっくりです。古楽の指揮者の演奏と言うと研究成果発表のように無機的でキワモノ演奏が多いですが、この演奏はとても感情の表出があって抵抗がありません。楽しげな中間部。少し詰まったようなトランペットの三連音。

三楽章、速めのテンポで動きのある主要主題。中間部は穏やかです。透明感があって美しい弦。コーダはトランペットが鳴り響き、とても力強いです。

四楽章、速いテンポで鋭いトランペットのファンファーレ。強奏部分では唸りを上げる金管。屈託無く鳴り響く金管がとても気持ち良いです。コーダの最初は大きな加速はありませんでしたが、その後急激に遅くなってさらに加速して終わりました。

音の処理などに独特の考えを反映させた部分もありましたが、豊かに歌い、振幅の大きな演奏で特に、屈託なく鳴り響く金管が爽快でした。
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クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

テンシュテット★★★★★
一楽章、ゆっくりとしたテンポでテンシュテットらしいねっとりと感情のこもった序奏です。フルートもゆっくりと感情がこめられています。第一主題もテンポも動いてかなりの感情移入です。再び序奏が戻るとまた濃厚な歌です。すさまじい咆哮を聞かせるホルン。猛烈なクレッシェンドをするティンパニ。ロンドンpoも指揮にしっかりと付いて行ってとても熱い演奏をしています。

二楽章、アゴーギクを効かせて豊かに歌う主要主題。ゆっくりと物凄く濃厚に歌います。盛り上がりも抑えることなく巨大です。粘りっ気があって濃厚なホルンの咆哮。深い悲しみに落ちて行くように最後でした。

三楽章、速いテンポですが、生き生きと舞うようにテンポが揺れ動きます。強弱の変化にはとても敏感に反応します。テンポはとても大きく感情のままに動きます。活発に動くコーダ。テンシュテットによって命が吹き込まれたようです。

四楽章、この楽章も速めのテンポですが、感情が込められてとても良く歌うチェロの主題。展開部の終わりでは、激しく、色んなパートが動き回ります。猛烈なコーダでした。

感情のこもった歌と、激しい金管の咆哮。テンシュテットによって命が吹き込まれたように生き生きとした表現の音楽。オケも共感して大きな振幅の音楽はとても聞き応えがありました。
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ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス/デトロイト交響楽団

ブルゴス★★★★★
一楽章、少しテンポが動いて瑞々しい序奏。ゆっくりと進む第一主題。一歩一歩確実に進みます。遅いテンポで作品を解剖するように細部も描いて行きます。トランペットの序奏は奥まったところから響いて来ます。序奏の最後にグッとテンポを落としました。テンポはとても良く動きます。

二楽章、サラッとしていてとても爽やかな響きです。ゆっくりとしたテンポで丁寧に描いて行きます。

三楽章、大きな起伏が無く整然とした演奏です。爽やかなブルー系の響きで清々しい感じです。コーダも力強い感じは無く、とても落ち着いています。

四楽章、トランペットのファンファーレも力の抜けた軽い演奏でした。チェロの主題も落ち着いていて大きな起伏はありません。ホルンのトリルの部分もあまり大きくテンポを速めることはありませんでした。トランペットのファンファーレが戻る部分はかなり高揚感がありました。コーダも大きなアッチェレランドは無く、あまり強い高揚感は無く整然としていました。

とても理性的な演奏で、感情の赴くままの演奏とは一線を画しているものでした。ブルー系の清々しい響きと細部まで見通せるアンサンブルも見事でした。
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ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

ノイマン★★★★★
一楽章、速いテンポですが、感情を込めて歌う序奏。充実した響きのトゥッティ。艶やかで滑らかな弦。色彩感もとても豊かです。トランペットに序奏が戻る部分は、渋みのある響きと分厚い響きでした。オケは伸びやかでとても美しい響きです。いろんなパートがしっかりと主張していて、存在感があります。

二楽章、途中で膨らんでスーッと引いて消えて行く主要主題。中間部はゆったりと穏やかな演奏です。トランペットの三連音はゆっくりでした。音と音の間に静寂感も感じます。

三楽章、艶やかでしっとりとした弦がゆっくりと奏でる主要主題。脱力して堕ちて行くような木管。中間部もゆっくりで、けだるい感じの演奏で、独特の雰囲気を醸し出しています。主部が戻る前でテンポを落としました。コーダはトランペットがスーット抜け出て気持ちのいい響きです。でも元気ではつらつとした演奏ではありません。

四楽章、ゆっくりと輝かしく歯切れの良いトランペットのファンファーレ。さすがにお国ものと言う感じで堂に入っているチェロの主題。ホルンのトリルが現れる部分もあまりテンホは速くならずどっしりと落ち着いています。金管が鳴る部分はしっかりと鳴らしていてとても色彩が濃厚です。トランペットのファンファーレが再度現れる部分は感動的な程見事な盛り上がりです。コーダもゆったりとしたテンポから長い時間をかけてアッチェレランドしました。トロンボーンなども気持ちよく鳴り響き爽快に終わりました。

チェコpoのお国もので、とても安定感のある充実した響きで、色彩感も濃厚でしたし、金管がここぞと言う所で気持ち良く鳴り響く演奏で、聞いていてとても満足感がありました。三楽章の独特の表現も、「こんな演奏もありなんだー」と感じました。
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ジョナサン・ノット/バンベルク交響楽団

ノット★★★★★
一楽章、独特の歌いまわしの序奏。速いテンポで勢いのある第一主題。弱音とトゥッティの振幅がとても大きく、トゥッティはかなり強く吠えます。とても明朗快活な演奏です。積極的に強弱の変化があり意欲的な表現です。爆演系の演奏のような感じもします。かなり豪快に金管を鳴らしています。

二楽章、ゆったりと深く歌う主要主題。清涼感があって美しい弦。森の木々がざわめくような中間部。その中で戯れるような木管。妖精のようなヴァイオリンのソロ。

三楽章、ここでも独特の表現で歌う主要主題。爽やかなコーダ。

四楽章、音を短めに淡白なトランペットのファンファーレ。ホルンのトリルが現れる部分は切れ味の良い金管が気持ちの良い演奏です。コーダは猛烈な追い込みのまま終わりました。

振幅の大きな演奏で、吠える金管。美しい弦。独特の歌いまわしなど、個性的でしたが、聞き応えのある演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ドヴォルザーク:交響曲第8番の名盤を試聴したレビュー

ドヴォルザーク 交響曲第8番2

たいこ叩きのドヴォルザーク 交響曲第8番名盤試聴記

オトマール・スウィトナー/シュターツカペレ・ベルリン

icon★★★★☆
一楽章、しっとりとした弦の響きです。表情は控え目な印象ですがテンポは動きます。このテンポの動きで高揚感を生み出しています。

二楽章、豊かな響きが心地良い演奏です。表情は控え目ですが、とても品の良い演奏です。木管の短い音がホールの残響を伴って心地よく響きます。音楽にどっぷりと浸かることができる良い演奏です。

三楽章、音楽の自然な流れに身を任せるような演奏がとても良いです。誇張したような表現など一切ありません。

四楽章、ドイツ的な少し陰影を感じさせるトランペットのファンファーレでした。確実な足取りで音楽が進みます。自然体の音楽作りがスウィトナーの音楽に対する確固たる自信を裏付けるようなそんな演奏です。

ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、ゆったりしたテンポで歌い込まれます。筋肉質で贅肉を切り落とした演奏はセルの特徴です。色彩の変化も見事に描き分けされます。
音色が明るいので、哀愁の表現は今ひとつか?

二楽章、とてもチャーミングな表現で魅了されます。

三楽章、鮮明に録音されているのですが、残響が少なく、弦の響きに豊かさがありません。表情は豊かです。

四楽章、勇壮に轟くトランペットのファンファーレ!表情が生き生きしていて豊かなのがこの演奏の特徴です。

最後のアッチェレランドは見事でした。

ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団 1975年大阪ライヴ

クーベリック★★★★☆
一楽章、ゆっくりと感情のこもった序奏。活動的で生き生きとした第一主題。ただ、残響が少ないのか、響きが浅く奥行き感や厚みがあまり感じられません。思い切ったタメがあったりします。第二主題も生き生きとしています。アンサンブルの精度の高く、オケが一つになったような見事なアンサンブルです。とても表現の豊かな演奏でした。

二楽章、とても静かで静寂感がかります。豊かに歌います。柔らかく優しい中間部の冒頭から次第に力強くなります。

三楽章、デッドな録音なので、弦が少しキツイ響きでザラザラしています。ワルツの揺れは心地良く感じます。中間部はとても活発で華やかです。

四楽章、強く芯のあるトランペットのファンファーレ。感情のこもったチェロの主題。録音がデッドな分、トゥッティの力強さはなかなかのものです。コーダは感情の高まりをストレートに表現した激しい表現でした。

クーベリックの感情をストレートに表現した素晴らしい演奏でした。オケもとても精度の高いアンサンブルで応えていました。録音がデッドで弦の響きがキツイ感じだったのが唯一残念な部分でした。
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クリストフ・フォン・ドホナーニ/クリーブランド管弦楽団

ドホナーニ★★★★☆
一楽章、とても整ったアンサンブルで引いたりふくらんだりして豊かに歌います。ティンパニがコーンと強く響きます。引き締まって俊敏な反応のオケ。第二主題も生き生きとしていて豊かな表情です。アメリカのオケらしく明快な反応の演奏です。

二楽章、豊かに感情のこもった表現の主要主題。凍りつくようなヴァイオリンでしたが、ティンパニが入ってから暖かくなりました。中間部は戯れるような楽しげな表現です。ヴァイオリンのソロが美しいです。スケールの大きなトゥッティにトランペットが強く突き抜けます。

三楽章、哀愁をたたえた主要主題。機能的で精緻な演奏で透明感があります。

四楽章、硬質で強いトランペットのファンファーレ。あまり歌わずカチッとしたチェロの主題。コーダで明快に鳴り響く金管が爽快です。

引き締まった響きと豊かな歌。機能的で精緻なオケの見事なアンサンブルも聞応えがありました。
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マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ヤンソンス★★★★☆
一楽章、ゆっくりとしたテンポで深い息遣いで歌う序奏。躍動感のある第一主題。テンポの動きもあって、深みのある演奏です。第二主題も豊かな表現です。引きずるように重いコントラバス。歌に溢れた豊かな演奏です。劇的なコーダでした。

二楽章、この楽章でも深い歌でテンポも大きく動きます。フルートは速いテンポでクラリネットはゆっくりと演奏されます。中間部はのどかな雰囲気です。ヴァイオリンのソロもテンポが動きました。

三楽章、ゆっくりと始まり少しテンポを上げた主要主題。とても感情のこもった表現です。中間部もゆっくりと最初は抑えた表現でした。コーダは力強いものでした。

四楽章、速いテンポで少しせっかちなトランペットのファンファーレ。静かですが、感情を込めて歌うチェロの主題はゆっくりとした足取りです。その後の盛り上がりでは一気にテンポを速めて華やかな演奏になります。展開部から再現部にかけての強奏はオケが一体になって攻め込むような気迫に満ちた迫力でした。コーダも力感に溢れて追い込みも興奮を高めるものでした。

とてもよく歌い、表現の振幅も大きく、特に強奏部分の一体感のある迫力はなかなかのものでした。
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小林 研一郎/ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団

小林 研一郎★★★★☆
一楽章、きりっと立ったフルート。力強く躍動感のある第一主題。華やかで豪華に鳴り響くトゥッティ。第二主題とその後ろで動く弦の表情もとても豊かです。小林の唸り声が聞こえます。トランペットに現れる序奏も伸びやかで力強いです。とてもオケを豪快に鳴らしていろんな音が豊かに響く演奏です。

二楽章、ゆっくりとたっぷり歌う主要主題。中間部は春の訪れのような暖かく楽しげな雰囲気です。艶やかで美しいヴァイオリンのソロ。小林の唸り声はかなり頻繁に聞こえます。トゥッティはオケを存分に鳴らします。色彩感も濃厚でとても豊かに歌います。

三楽章、最初ゆっくりと始まる艶やかで粘りのある主要主題。ゆっくりとしたテンポで一音一音確かめるような歩みです。中間部は揺れ動くように舞う演奏です。

四楽章、伸びやかで滑らかなトランペットのファンファーレ。力があって活気を感じるチェロの主題。遅めのテンポで濃厚に描かれて行きます。金管が屈託無く伸びやかに鳴り響きます。コーダは圧倒的と言うほどではありませんでしたが、過不足無く鳴り響きました。

基本的に遅めのテンポで丁寧に描いた演奏でした。金管がとても良く鳴り、豪快な面の魅力の演奏でした。
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カルロス・パイタ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

パイタ★★★★
一楽章、速めのテンポで淡々とした序奏。力強い第一主題。ホルンが激しく咆哮します。金管はやはり強烈です。気持ちよく鳴り響きます。ティンパニも強烈です。

二楽章、主部は静寂感があって美しいです。ここでも金管がかなり思い切って鳴らされます。大きな表現は無いものの中間部も美しいです。

三楽章、自然な表現の主部です。キワモノと言われるような奇抜な表現はあまり無く、とても自然です。コーダは活発で元気な演奏です。

四楽章、明るいトランペットのファンファーレ。大きくは歌いませんが自然なチェロの主題。金管は強いですが、パイタの演奏で良くある、絶叫にのような限界に近い咆哮ではありません。目が覚めるようなトロンボーンの強奏。コーダはさすがに強烈な金管でした。

パイタの演奏らしく金管が強い演奏でしたが、いつもの限界近い咆哮は無く、意外と自然な演奏でした。
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ズデニェク・コシュラー/スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

コシュラー★★★★
一楽章、一つに聞こえる序奏。速めのテンポで演奏される第一主題。爽やかで美しいオケの響き。あまり大きく歌ったりはしません。金管は激しく咆哮します。トランペットに現れる序奏は速めのテンポでやはりあっさりとした表現です。

二楽章、お国物ですが、あまり深みのある表現はありません。作品への共感よりも、距離を置いて作品に書かれていることを忠実に再現しているようです。中間部もあまり活発にはならず穏やかです。主部が戻った部分は落ち着いた良い演奏です。

三楽章、速めのテンポで深みのある歌です。心地良く揺れます。中間部は活発さはありませんが、柔らかい表現です。コーダは大きい響きでした。

四楽章、自然な響きのトランペットのファンファーレ。チェロの主題はかなり速いテンポでどんどん進んで行きます。ホルンのトリルが現れる部分は少しだけ速くなって、ホルンが強調されています。トロンボーンも気持ちよく鳴り響きます。金管は積極的に表現します。コーダは金管が見事に鳴り響いて輝かしいものでした。

金管が豪快に鳴り響く演奏でその部分は爽快でした。ただ、表現は抑え目であまり大きな歌や表現はありませんでした。
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アレキサンダー・ラハバリ/ブリュッセル・フィルハーモニック

ラハバリ★★★
一楽章、伸びやかに美しく歌う序奏。活気があって力感に溢れる第一主題。音の鮮度も高くとても瑞々しい演奏です。マーラーでも感じたのですが、音楽が小さくまとまってしまうようなところはこの演奏でも感じられます。トランペットに現れる序奏はかなり強く演奏されます。

二楽章、木管の弱音がとても透明感があって美しいです。ヴァイオリンのソロも美しいですが、その後ろの木管が豊かに残響を伴ってとても美しい演奏でした。

三楽章、ねっとりと尾を引くような演奏では無く、キビキビと動く明朗な主要主題。感情のこもった大きな表現はありませんが、美しい演奏です。

四楽章、チェロの主題も三楽章の主要主題と同様に明朗な演奏です。ホルンのトリルはあまりはっきり聞こえません。トランペットのファンファーレが戻る部分は速いテンポもあってとても勢いがあって大きな波が押し寄せてくるような迫力がありました。コーダはあまり急加速はありませんでした。トランペットは芯のしっかりとした響きですが、トロンボーンやホルンは響きの中に埋もれてしまってはっきりと響きませんでした。

感情を込めた表現はありませんでしたが、キビキビとした明朗な演奏でした。ただ、大きなスケール感が無く、小さくまとまってしまうような感じがしました。
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カレル・アンチェル/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1960年ライヴ

アンチェル★★★
一楽章、速めのテンポで太い線で描かれる序奏。速いテンポではつらつとした第一主題。大きく歌うわけではありませんが、とても力強い音楽です。積極的な演奏で金管も吠えます。

二楽章、テンポが動いたり大きく歌うわけではありませんが、とても生き生きと動きのある演奏です。ティンパニのクレッシェンドも激しいです。短い音は特に短く演奏して音を際立たせています。

三楽章、一転してゆっくりと歌う主要主題。中間部は力強い感じの演奏です。一つ一つの音にとても力があります。

四楽章、たどたどしい感じのトランペットのファンファーレ。刻み付けるように強いチェロの主題。ホルンのトリルが現れる部分はあまり強く無く、軽い演奏でした。とてもデッドでオンマイクの録音なので、とても音が強く響いているのだと思います。コーダはかなりの追い込みと迫力でした。

積極的な歌はありませんでしたが、とても音に力があって力強い演奏でした。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ハレ管弦楽団

ホーレンシュタイン★★
一楽章、暗くテンポが感情のままに動く序奏。録音が古く倍音成分が少ないようで、響きが少し寂しいです。テンポは大胆に動きます。

二楽章、録音が古く鮮明な音は聞けません。AMラジオを聴いているような感じです。中間部は優雅な表現です。

三楽章、アウフタクトをゆっくりと演奏してその後は速めのテンポです。

四楽章、ゆっくりと朗々と歌うトランペットのファンファーレ。淡々としたチェロの主題。ホルンのトリルの部分でもあまり大きな盛り上がりはありません。またこの部分のテンポがあまり速くならず少し間が持たない感じがあります。コーダはテンポの大きな動きもあり圧倒的でした。

テンポの大きな動きのある演奏でしたが、表現の振幅はあまり大きく無く、淡々とした表現でした。録音が古くAMラジオを聴いているようなナローレンジの録音では細部や微妙な表現を聞くことはできませんでした。
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ビクトル・パブロ・ペレス/テネリフェ交響楽団

ペレス
一楽章、感情を込めて濃厚に歌う序奏。巨大な響きにはなりませんが、カチッと決まるアンサンブル。トランペットに序奏が戻る部分は強めのトランペットでしたが、他のトゥッティではあまり金管は強く無く、振幅はあまり大きくありません。独特の表現もたまにありました。

二楽章、編成が小さいのか、透明感があって、アンサンブルも割と整っていますが、厚みのある響きや強弱の変化はあまり大きくありません。ヴァイオリンのソロは細くひ弱な感じでした。

三楽章、細く寂しい主要主題。とても響きが薄いです。響きが薄い分、スッキリとしているとは言えますが・・・・・。コーダもコントラバスがあまり聞こえず薄い響きです。

四楽章、トランペットはあまり伸びやかでは無く、奥まっています。あまり大きな感情の起伏は感じないチェロの主題。テンポの動きもほとんど無く淡々と演奏されます。あまりにもテンポが動かないので、待ちきれなくなります。ホルンのトリルが現れる部分も大きな盛り上がりにはなりません。小さい編成のバランスを考えてか、トロンボーンもあまり強くは吹きません。コーダも興奮を高めるような圧倒的な迫力や追い込みはありませんでした。

編成が小さいのか、かなり薄い響きで、テンポもほとんど動かず、踏み込んだ表現もあまりありませんでした。振幅があまり大きくないので四楽章のコーダも高揚感無く終わりました。
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Tomas Netopil/パルマ国立歌劇場管弦楽団

Netopil
一楽章、普通に演奏されているのですが、何か表面だけが鳴っているような感じで上滑りしているような感じがします。トランペットに序奏が戻る部分でもトランペットは強く鳴っているのですが、他のパートが付いてこない感じで、一体感がありません。コントラバスもしっかりと鳴っているのですが、何故か全体の力が感じられないのは不思議です。

二楽章、柔らかい響きなのですが、力の無い弦。柔らかく穏やかと言えば、そうとも言えるのですが、寂しい感じがします。

三楽章、艶やかな主要主題。中間部は穏やかであまり活発な動きはありません。かなり響きが安定してきて深い響きになってきました。

四楽章、ねっとりとしたチェロの主題。ホルンのトリルが現れる部分はほとんど盛り上がりを感じられない程音圧が高まりませんでした。トランペットのファンファーレが戻る部分は強く響きました。コーダはトランペットやトロンボーンが突き抜けて来ますが、少し雑な演奏になってしまいました。

前半の表面だけ鳴っているような上滑りしているような響きで弱々しい演奏から、後半は少し力強くなりましたが、その分雑にもなってしまった演奏でちょっとがっかりでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ドヴォルザーク:交響曲第8番の名盤を試聴したレビュー