ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」ベスト盤アンケート
たいこ叩きのブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」名盤試聴記
カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、同じウィーンpoの演奏でもハイティンクの演奏に比べると、輪郭のはっきりとした演奏です。
フィリップスの録音が弦を中心に録られているとすると、このデッカの録音は管を中心に録られている感じがします。
この演奏で、ベームはウィーンpoに主導権は渡してしまって、要所要所だけ指示を出している程度に留めているような感じがします。
ただ、弱音部の緊張感や集中力はハイティンクよりもベームの方が高いように思います。
音色感がもたらすものなのか「ウィーンの森」を連想させてくれるとても良い雰囲気を持っている演奏です。
二楽章、分厚い低音に支えられた非常にガッチリした作りなのですが、その骨格を覆っている音楽がしなやかで、素朴でなにか懐かしい香りがするような音楽で、とても心地よく聴く事ができます。
三楽章、ここでも「ウィーンの森」に木漏れ日が差し込むような、穏やかな演奏です。金管のffも森の妖精が戯れているような、そんな気配さえ感じさせてくれる、自然(宇宙)と一体になった見事な演奏です。
最近あまり話題に上らなくなった、ベームの音楽ですが、私はこれほど見事に自然を表現してみせた演奏は他に知りません。
四楽章、音楽の流れは全楽章通してとてもスムーズでひっかかるところはありません。
この楽章などは、少し力みたくなるような場面でも、ベームは決して力みません。
これだけ見事な演奏を聴かされると、ベームが再評価される日が必ず来ると思いたくなります。これだけ素朴で自然な演奏で何の仕掛けもなく、感動させられることはめったにありません。
こんな演奏ができる指揮者を忘れ去ってはいけないと思いました。
コラールからコーダへの盛り上がりも素晴らしいものがありました。まるでこのコラールからコーダのための前座として、ここまでの演奏があったかのような素晴らしく感動的なクライマックスを作り上げました。素晴らしかった!
ギュンター・ヴァント/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、豊かな響きです。旋律のホルンをサポートするように弦のトレモロも強弱の変化を付けます。テンポは速めに進みます。金管楽器が絶妙のバランスで響いています。木管のソロも極めて美しい!金管も朗々と歌います。
大きな川の流れのように音楽が滾々と湧き出してくるような感覚です。とても豊かな音楽を聴いている充実感があります。同じベルリンpoでもカラヤンの演奏のような磨き上げた絢爛豪華な響きとは違います。ブルックナーらしい素朴な響きがあります。そして人間の躍動感に溢れたすばらしい演奏です。
二楽章、厚みがあり深い響きがとても魅力的です。演奏には作為的なところは無く自然です。ハッタリのない自然体の演奏にどうしてこんなに惹きつけられるのでしょうか。聴き手の期待を裏切らない範囲の歌があって、それが作為的で大げさにならないところがすばらしいバランス感覚で惹きつけられるのでしょうか。
三楽章、ベルリンpoにしては都会的ではなく素朴で枯れた響きを再現しています。とうとうと流れる音楽に心置きなく身をゆだねることができる演奏です。
四楽章、冒頭ホルンの対旋律の弦が強調されていました。ブラスセクションのエネルギー感もすばらしい!ヴァントの音楽は一つ一つのフレーズよりも音楽を大きく捉えて全体の流れのなかでうねりを作っていくような音楽作りなので音楽のたたずまいに巨大なスケール感があります。 コラールから終結部へ至る音の洪水も怒涛の勢いでした。
ヘルベルト・ブロムシュテット/シュターツカペレ・ドレスデン
★★★★★
一楽章、 ゆったりと美しいホルンです。オケ全体がとても素朴で美しい音色で鳴り響きます。作品にぴったりな音色で演奏されています。構成もがっちりしていて安定感抜群です。ブロムシュテットの指揮も奇を衒うようなことが一切なく正面から作品と向き合っています。とにかく美しい!音が立っていて録音もすごく良いです。
二楽章、歌が途切れることなく受けつがけて行き、とても流れの良い演奏です。こんなに美しい「ロマンティック」の演奏は初めてです。テュッティでも塊になってぶち当たってくることはなく、全体に広がって包み込まれるような響きが展開します。すばらしいブルックナーです。
三楽章、羽毛で肌を撫でられるような繊細な弦の響き、ルカ教会の残響も美しく適度な長さです。音楽の流れが決してせき止められることはなく、とてもよく流れて行きます。
四楽章、テンポの動きもわずかにありますが、流れを止めるようなことはありません。すごくテンポを速くした部分もありましたが、またテンポは戻ってゆったりと進みます。すばらしく感動的なコーダでした。トレスデン・シュターツカペレの透明感の高い音色と作品がぴったりとマッチした名演でした。
セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、微妙なニュアンスを伝えて来る冒頭のホルンの第一主題。音楽が呼吸しているように押しては返す振幅が何とも言えない良い雰囲気を作ります。チェリビダッケの演奏としては少し遅い程度で、他の演奏のような異様な遅さではありません。楽器が次から次へと有機的に繋がっていく。祈るようにしかも輝かしいコラール。ゆっくりとゆっくりと次第に力を増していくクレッシェンドはすばらしい。テンポも動いて、すごく遅くなったり、急加速があったり、すごい感情移入です。
二楽章、音楽に生命が宿っているように押しては返す音楽が自然と一体になっていてすばらしい。ここぞというところでぐっとテンポを落として雄大な自然を表現しているようです。
三楽章、極めて小さい弦のトレモロの上にホルンが鳴ります。チェリビダッケにしては速いテンポ設定で、一般的な演奏とそう変わりはありません。のんびりとゆったりしたトリオです。この演奏を聴いていると生命の脈動とでも言うのか、自然のうねりが聞こえます。
四楽章、自然で微妙な強弱の変化があります。第二主題からはテンポを落としますが極端に遅いわけではありません。トゥッティでも余力を残した美しい演奏です。第三主題が現れてから徐々にテンポが遅くなります。展開部の手前はかなりテンポが遅くなりました。展開部からは元のテンポです。テンポの変化や強弱の変化がとても自然で、気が付くとこの自然な流れに引き込まれています。しっかりとした弦の刻みの上にトロンボーンのコラールからそれに続くホルン、壮大な終結でした。
見事にチェリビダッケの意図を貫いた演奏には、生命の脈動が感じられるすばらしいものでした。
ベルナルド・ハイティンク/ロンドン交響楽団
★★★★★
一楽章、豊かな響きを伴ったホルンの主題。力みはありませんが、トゥッティは分厚く巨大です。誇張が無く自然な第二主題。自然に奥底から湧き出すよ うなトゥッティ。ベーム/ウィーンpoの演奏に比べると僅かに都会的かも知れませんが、それでも森を感じさせる良い演奏です。伸び伸びと鳴り響く金管が有 機的に結びついています。コラールもとても美しいです。奥ゆかしい歌がしみじみと心に伝わります。遅めのテンポでじっくりと歌いあげる演奏はとても心地よ いものです。
二楽章、素朴な雰囲気の主要主題。副主題も素朴で美しい。深みがあって分厚い低音の上にピラミッド型に乗る響きは暖かく心を穏 やかにさせてくれます。ロンドン交響楽団って、都会的で機能的なオケのイメージがありますが、このオケからこれだけ素朴な響きを引き出しているところも凄 いです。控え目で決して爆発しないクライマックス。
三楽章、枯れた響きで一体になったオケの響き。大きく歌うことはありませんが、さりげなく美しい歌を聞かせます。分厚い響きは見事としか言いようが無いです。トリオでも美しく歌います
四楽章、分厚い低音に支えられた柔らかい第一主題。細部まで自然な第二主題。ここまでの雰囲気を一変させる第三主題。穏やかで 安らかな小結尾。展開部も分厚い響きで充実しています。第一主題の再現も厚みがあって深い響きです。コラールから続くホルンは空から降りそそぐような神の 声のようです。壮大なスケールのコーダでした。見事です。
力みの全く感じさせない演奏でしたが、自然に湧き出すような歌と低域の分厚い響きに乗るオケの素朴な響きも素晴らしかった。四楽章コーダの壮大なスケール感も見事でした。
クリスティアン・ティーレマン/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
一楽章、柔らかいけれどもしっかりと力のあるホルンが朗々と歌います。第二主題はしっとりとしていますが、くっきりと浮かびあがります。テンポの微妙な変化がいたるところであります。金管は奥まったところから分厚い低音に支えられて響いて来ます。とても表現が濃厚で惹きつけられます。一つ一つの音に魂がこもっているような演奏で、音楽が生きています。テンポは遅めですが、一つ一つの表現がとても良いので、遅さを感じません。輝かしいコラールは森の中で風にざわめく枝の音の後ろの遠くから響いてくるようでした。弱音の繊細さも見事です。テンポの変化も大きく、遅くなるところは凄く遅くなります。表現し尽くされていると言っても良い程表現が豊かで、無表情になることは全くありません。全身全霊の猛烈なコーダ。
二楽章、深みのある主要主題に続く木管はゆっくりとしたテンポで深く美しく歌います。副主題も表情豊かです。瑞々しい弦がとても美しいです。遅いテンポで刻み付けるような深い表現。弦のビツィカートも一つ一つに意味があるように存在を主張します。一つ一つの旋律が心に訴えかけてくるようで心が揺さぶられます。テンポの動きも絶妙です。最後もクラリネットのたっぷりとした歌がありました。
三楽章、冒頭のホルンも柔らかく芳醇です。トゥッティへ向けてテンポを速めました。テンポはとても良く動きますがとても自然な動きです。トリオの前の充実した響きも素晴らしいものでした。トリオもテンポを動かしながらたっぷりと歌います。
四楽章、この楽章は速めのテンポで始まりました。力強いけれども柔らかい第一主題。全く緩むことなく旺盛な表現意欲です。湧き上がるような表現の第二主題。木管が登場するあたりでテンポがゆっくりになりました。テンポは遅いですが、緻密な表情付で全く弛緩することはありません。マグマがぐつぐつと煮えたぎるような第三主題。展開部へ向けてとても穏やかな表現です。再現部の第一主題は強烈です。オケもヒートアップしているようです。ゆっくりとしたテンポが大河の流れのよう絶え間なく豊かに流れて行きます。コーダのコラールもゆっくりと丹精込めた演奏です。最後はさらにテンポを落としてとても感動的な終結でした。
徹底的に表現し尽くした演奏でした。感情のこもったテンポの動き、オケの一つ一つの表現も見事でした。デビュー当時はフルトヴェングラーのコピーだと言われたりしましたが、今では完全に自分自身の表現へと昇華していて、とても素晴らしい表現の演奏でした。感動的なコーダも最高でした。
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スタニラフ・スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン放送交響楽団
★★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで締まったホルンの第一主題。トゥッティではトロンボーンが強く響きます。第二主題でも大きな表現やテンポの動きはありませんが、遅いテンポでじっくりと作品の良さを訴えて来ます。弱音が消え入るような音量です。この弱音部分ではウィーンの森を感じさせてくれます。コラールの最後に大きく盛り上がって次第に遠ざかって行きました。コーダはホルンが奥まっていてトランペットが近くにいる感じのバランスでした。
二楽章、寂しげな主要主題。ホルンもポツンと一人で孤独な感じです。僅かに薄日が差すような副主題。作品を正面から捉えたけれん味の無い演奏です。クライマックスはやはりトロンボーンが少し強いですが、咆哮することは無く極めて冷静です。
三楽章、軽い冒頭のホルン。やはりこの楽章でもトロンボーンが気持ちよく鳴り響きます。ブルックナーにしてはシャープな響きです。主部が若干速めだったのに比べるととてもゆっくりのトリオです。ゆっくりとしたテンポでたっぷりと歌います。主部が戻って、金管の演奏する部分で他の演奏ではほとんど聞こえないチューバが底辺でしっかりと鳴っています。
四楽章、ゆっくりとしたテンポで堂々と鳴る第一主題。第一楽章の第一主題が再現する前にシンバルが入りました。感情が込められて内面から湧き上がるような第二主題。第三主題は以外にも大人しい演奏で六連符が終わってからのトランペットから強く演奏しました。展開部に入って序奏が回帰した後のコラールが多層的に組み合わさる響きがとてもよく分かります。ホルンが遠くにいて、強奏の響きがとても心地良いです。やはりトロンボーンが強い第一主題の再現。第二主題の再現は流れるようです。天をゆっくりと舞うようなコーダのホルン。その後もゆっくりとしたテンポが続きます。一楽章の第一主題の登場とともに大きく盛り上がって終わりました。
ゆっくりとしたテンポで細部まで聞き取れるバランス重視の演奏でしたが、トロンボーンだけ補助マイクのレベルが高かったのか、常に強かったです。ただ、このゆっくりとしたテンポとても心地良く音楽に浸ることができてとても魅力的な演奏でした。
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ロジャー・ノリントン/エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団
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一楽章、柔らかく伸びやかなホルンの第一主題。巨大なトゥッティ。第二主題はかなり速いテンポです。突然始まる第三主題も豪快に鳴ります。コラールは弾むような演奏でした。第一稿と第二稿では、素材だけ生かして一から作曲し直すほどの作業だったのではないかと思うほど違います。金管はかなり激しく咆哮します。
二楽章、第二稿とはアーティキュレーションが違うのか、とても表情豊かな主要主題。テンポは速めでサラサラと進みます。弦は古楽器らしく鋭い響きです。いろんな楽器がはっきりと分離して美しく響いています。感情を込めるような表現は無く、作品そものもを聞かせる演奏です。クライマックスは最初ドカーンと来ますが次第に潮が引いて行くように穏やかになって行きました。
三楽章、暗い雰囲気の音楽です。ホルンが美しく咆哮します。重厚なトゥッティから細身で繊細な木管のソロまではっきりとしたコントラストを描いた演奏です。
四楽章、充実したトゥッティ。この演奏を聴いているとこの第一稿がこれで完成された作品のように聞こえてきます。迷いの無い真摯な演奏です。コーダ近くでティンパニのクレッシェンドが効果的に使われます。
未整理な作品として評価されがちな第一稿ですが、この演奏を聴くと、これはこれで完成された作品だと感じさせられます。美しい響きで、自信に満ちたテンポや表現、バランスなど素晴らしいものでした。
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