カテゴリー: ブラームス:交響曲第1番名盤試聴記

ブラームス:交響曲第1番の名盤は、ベーム/ウィーン・フィルハーモニーoの共感と自身に溢れた名盤。スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレは、適度な緊張感を伴って起伏の激しい演奏で金管も激しい演奏でスウィトナーの指揮に応えた名盤です。モントゥー/アムステルダム・コンセルトヘボウoは、まさに魂が乗り移ったような火の出るような感情の起伏に富んだすばらしい名盤でした。朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団は、堂々たるテンポ設定で晩年の朝比奈の芸風が如実に現れています。スケールの大きな名盤です。カラヤン/ベルリン・フィルハーモニーo1998年ロンドンライブは、カラヤンが何かに取り付かれたかのように指揮に没頭している様子が目に浮かぶようです。すばらしい緊張感を維持し続けた名盤です。

ブラームス 交響曲第1番

ブラームスの交響曲第1番は、彼が20年以上にわたる試行錯誤の末に完成させた交響曲で、1876年に発表されました。この作品は、ブラームスが交響曲作曲においてベートーヴェンを意識し、交響曲というジャンルに対する重責と期待を深く受け止めていたため、完成までに長い年月を要しました。その結果、ブラームスの個性と技術が詰まった重厚で力強い作品が生まれ、「ベートーヴェンの後継者」としての評価を確立しました。

構成と特徴

交響曲第1番は、全4楽章から構成され、それぞれが力強く荘厳なテーマを展開し、ロマン派的な情熱と古典的な構成美が融合しています。

  1. 第1楽章 (ウン・ポコ・ソステヌート – アレグロ)
    この楽章は、重々しい序奏から始まり、ブラームスの決意が表れたような荘厳で緊張感あふれる音楽が展開されます。序奏の後、アレグロ部分に入ると、力強く揺るぎないリズムと、対位法を用いた豊かな響きが特徴です。ブラームス独特の和声と、しっかりとした構成力が印象的で、人生の苦悩や葛藤が音楽に表現されているかのようです。
  2. 第2楽章 (アンダンテ・ソステヌート)
    第2楽章は、温かく抒情的な雰囲気に満ちています。穏やかな旋律が繊細なオーケストレーションで奏でられ、平和で落ち着いた感情が感じられます。木管楽器と弦楽器の対話が美しく、特にオーボエやヴァイオリンのソロが優雅に響く場面が印象的です。この楽章は、ブラームスの詩的で内省的な側面が現れており、深い感動を与えます。
  3. 第3楽章 (ウン・ポコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ)
    軽やかで穏やかなスケルツォ風の楽章で、ブラームスのユーモアと遊び心が表現されています。親しみやすい旋律とリズムの変化が心地よく、緊張感のある前後の楽章との対比としても効果的です。この楽章にはブラームスの暖かみや、音楽を楽しむ余裕が感じられ、全体の雰囲気を和らげています。
  4. 第4楽章 (アダージョ – ピウ・アンダンテ – アレグロ・ノン・トロッポ)
    最終楽章は、静かなアダージョの導入から始まり、次第に明るく壮大なフィナーレへと展開されます。序盤には「アルプホルンの呼びかけ」とも呼ばれるホルンの旋律が登場し、印象的なメロディが徐々に展開されていきます。やがて、ベートーヴェンの「歓喜の歌」を思わせる力強い主題が登場し、歓びと希望に満ちたクライマックスを迎えます。ブラームスはこの楽章でベートーヴェンに敬意を表しており、伝統を継承しつつも自らの新しい音楽の世界を築き上げたことが感じられます。

音楽的意義と評価

ブラームスの交響曲第1番は、「ベートーヴェンの第10交響曲」とも称されるほど、その構成の完璧さと壮大さが評価されています。この作品を完成させるにあたり、ブラームスはベートーヴェンの交響曲の精神を受け継ぎつつも、独自の音楽性を確立しようと努めました。そのため、全体を通してベートーヴェンへの深い敬意が感じられる一方で、ブラームスの繊細で重厚なスタイルが随所に現れています。

また、この作品はブラームスがクラシックとロマン派の要素を統合し、古典的な交響曲の形式を維持しながらも、より個人的で内面的な感情表現を可能にした作品でもあります。そのため、交響曲第1番は、ブラームスの作曲家としての成熟を示す作品であり、後世の作曲家にも大きな影響を与えました。

ブラームスの交響曲第1番は、苦悩から解放への道のりを描くかのような音楽であり、最後には勝利感と希望が感じられるフィナーレへと導かれます。その力強いメッセージと緻密な構成力から、今も多くの演奏家と聴衆に愛される名作です。

4o

たいこ叩きのブラームス 交響曲第1番名盤試聴記

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、冒頭から分厚い響きで圧倒されます。美しい木管のソロ。終始分厚い響きの中で音楽が展開されて行きます。作品に対する共感と自信に溢れた演奏ですばらしいです。

二楽章、甘美なオーボエのソロ。自然な音楽の抑揚。ベームの演奏なので、極端にテンポが動いたり表現の強調などはありませんが、自然体の音楽が堂々としていて、「ブラームスはこうあるべき」と言う自信と信念が表出された見事な演奏です。バイオリンのソロもとても美しかった。

三楽章、ウィーンpoらしい音が開かないクラリネットのソロも非常に美しい!

四楽章、弦のピチカートにも緊張感があって良いです。フルートのソロも美しい!ホルンのメロディもウィーンpoらしい質感がたまりません。テンポの変化も自然です。終結部のトゥッテイも輝かしい響きで圧巻で、すばらしい演奏でした。

オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ

icon★★★★★
一楽章、音楽の勢いを感じさせる冒頭です。テンポは自然な流れの中で動きます。適度な緊張感を伴って起伏の激しい演奏です。

二楽章、コントラバスの厚い響きが印象的です。オーボエのソロも美しい!バイオリンのソロも艶やかで非常に美しいです。

三楽章、速めのテンポで緊張感はずーっと維持されています。テンポはよく動きますが不自然さはありません。

四楽章、激しいティンパニのクレッシェンド。弦のピチカートにも緊張感があります。スウィトナーと言うと端正な演奏のイメージでしたが、こんなに激しい演奏をしていたとは驚きです。金管も激しい演奏でスウィトナーの指揮に応えています。まさにブラヴォーな演奏でした。

ピエール・モントゥー/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

★★★★★
一楽章、地面から湧き上がってくるような不思議な生命観を持った音楽です。若々しく生き生きとしています。モントゥーの作品に対する共感がすごく伝わってきます。テンポも途中でガクんと遅くなったり変化に富んでいます。生気に溢れていて激しい演奏です。

二楽章、モントゥーの作品への深い共感をオケにストレートにぶつけて、オケもそれに必死に応えているような演奏です。ヴァイオリンのソロも美しかった。ヴァイオリンに絡むホルンも美しい響きでした。

三楽章、コンセルトヘボウらしく瑞々しい響きのクラリネットでした。

四楽章、微妙な表情付けがいたるところになされています。モントゥーの作品へのこだわりがすごく感じられます。火の出るような演奏とは、このような演奏のことを言うのでしょう。まさに魂が乗り移ったような感情の起伏に富んだすばらしい演奏でした。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★★★★
一楽章、堂々たるテンポ設定で晩年の朝比奈の芸風が如実に現れています。スケールの大きな演奏です。しかも音楽が弛緩することは全くありません。木管のソロも瑞々しく美しいです。音楽が次々と泉のようにこんこんと湧き出てくるような豊かな演奏で集中力が途切れません。

二楽章、見事なアンサンブルでせつなさを表現しています。美しいヴァイオリンのソロでした。

三楽章、遅いテンポにもしっかりオケが付いていきます。

四楽章、ティパニのトレモロは控え目なクレッシェンドでした。ティンパニ続くホルン、フルートも伸びやかで美しい演奏でした。硬質なティンパニが見事に決まります。コーダでテンポの変化は以外な驚きでした。すばらしい演奏でした。ベートーヴェンの全集でも感じましたが朝比奈と大フィルがこんなにすばらしい演奏を残していたとは本当に驚きです。後世に残る名演だと思います。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団1998年ロンドンライブ

icon★★★★★
一楽章、強烈なティンパニの打撃音から凄い緊張感が伝わってきます。感情の起伏も激しい演奏になっています。非常に厳しい表情の音楽です。カラヤンも速めのテンポでオケをグイグイと引っ張ります。強奏部分では、それぞれのパートが自己主張をして戦闘状態のように空中分解しているようにも感じますが、決め所ではきっちりと整ったアンサンブルを聴かせます。さすがにベルリンpoです。

二楽章、コントラバスを土台にしっかりしたバランスの弦合奏です。オーボエも美しいソロを聞かせます。どのパートも存在感を誇示するかのように主張します。

三楽章、楽しそうに歌うクラリネット。録音の特性なのかも知れませんが、どのパートも強い音がします。

四楽章、カラヤンの音楽にしてはとても激しい演奏です。フルートのソロも強い存在感がありました。表現も積極的で攻撃的な演奏に感じます。これだけ厳しい表情のブラームスは初めてです。カラヤンも何かに取り付かれたかのように指揮に没頭している様子が目に浮かぶようです。すばらしい緊張感を維持し続けた演奏でした。

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、前進しようとする力強さのある冒頭です。ダイナミックで力感溢れる演奏です。音符一つ一つに意味を持たせたような生気に満ちた演奏です。表情豊かで強弱の変化など俊敏な反応です。金管も十分に前に出てきます。緊張の糸がピーンと張り詰めたような独特の雰囲気があります。

二楽章、作品を慈しむような丁寧で慎重な冒頭でした。とても表情豊かなオーボエソロでした。バーンスタインは作品と一体になっているかのような自在な表現です。天国的な終り方でした。

三楽章、積極的な表現の演奏です。バーンスタインはスコアに書かれているものから最大限のものを引き出そうとしているようです。最後はテンポも動きます。

四楽章、劇的な表現です。強弱の幅もすごく広くとっています。少し篭りぎみのホルンでした。中庸のテンポの第一主題、ここからテンポをかなり煽る。金管も加わってかなり激しい演奏です。即興的にテンポが動いているようです。最後は歓喜に溢れる輝かしい見事な演奏でした。

カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで堂々とした冒頭。広大な感じです。続く部分は繊細で優しい感じ、歌に溢れています。ゆったりと確実な足取りです。とても優雅で美しい演奏で、その分前に進むような力強さはありません。ウィーンpoのメンバーも伸び伸びと演奏しているような感じがします。

二楽章、冒頭から歌に引き込まれます。繊細なガラス細工のような透明感とキラキラと光がちりばめられたソロ。音楽にどっぷりと浸かっていられるような安心感。ホルンとヴァイオリンソロの絡みも見事です。こんなに穏やかなブラ1も珍しいでしょう。

三楽章、優雅なクラリネットソロ!刺激的な部分もなく安心して音楽に身をゆだねることが出来ます。

四楽章、ティンパニのクレッシェンドも控え目でした。この楽章も遅めのテンポで確実な足取りです。朗々としたホルン。続くコラールも神聖な雰囲気がありました。ゆっくり目な第一主題が安定感を感じさせてくれます。歓喜に沸き立つような派手な終り方ではありませんでしたが、渋くこの演奏の最後にはピッタリな演奏で締めくくりました。ブラ1の演奏としては異質な存在かも知れませんが、これはこれで素晴らしい演奏だったと思います。

スタニラフ・スクロヴァチェフスキ/hr交響楽団

スクロヴァチェフスキ★★★★★
一楽章、躍動感があって、大蛇がうねるような冒頭。とても透明感が高く美しい演奏です。オケもメリハリがあってクッキリとした響きです。波がうねるように複雑に浮き沈みするオケ。まるで生きているような感覚があります。

二楽章、木管のソロではとても微妙な表現ですが、弦全体の演奏などでは力があって、グッと押したり、スッと引いたりする絶妙な表現です。ヴァイオリンのソロもとても美しいものでした。

三楽章、滑らかに柔らかく歌うクラリネット。ブラームス独特のずんぐりとした響きではなく鮮明でどちらかと言うと鋭い響きで鋭利な刃物のようです。

四楽章、オケ全体が動く時の動きはとても俊敏です。アルペンホルン風の旋律は少し遠くから響くようでとても気持ちの良い響きでした。コラールもとても美しいものでした。速いテンポで颯爽と進む第一主題。この辺のテンポ設定もシャープな演奏を印象付けるものです。これだけシャープで明晰な演奏はこの作品としては出色のものだと思います。コーダも爆発すること無く抑制の効いたバランスの良い演奏です。コラールも弦が鮮明に聞こえます。

感情に流されること無く、終始明晰な演奏でした。ブラームスの作品がこれだけ鮮明に鳴り響くとは思いませんでした。とても新鮮な驚きです。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1988年東京ライヴ

カラヤン★★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで柔らかく控え目な序奏。あまり悲痛な表現は無く、とちらかと言うと穏やかです。ロンドンライヴの物凄いスピード感とは全く違う演奏のような感じがします。美しい木管のソロ。柔らかい弦。ブレンドされた美しい響きです。カラヤンとベルリンpoの絶頂期は過ぎていますが、それでも微妙な表現にも反応するオケはさすがです。濃厚で強い表現はありませんが、機能的に動くオケやトゥッティの深みや厚みなどは素晴らしいです。

二楽章、消え入るような弱音で繊細なソロや弦です。小さく定位するヴァイオリンのソロも優しいです。甘く優しい音楽です。

三楽章、甘くとろけるようなクラリネット。優しく包容力のある演奏はこれでなかなか良いものです。とても繊細な表現の演奏です。

四楽章、刺激的な音は一切出さずマイルドです。アルペンホルン風の旋律の前の凄いティンパニのロール。あまり深くはあのませかしマットなホルンはゆったりと伸びやかです。第一主題もゆったりと柔らかく伸びやかで美しく歌います。この第一主題は次第にテンポを速めて行き次第に激しくなります。アルペンホルンの旋律が回帰する前の部分で大きくテンポを落とし濃厚な表現をしました。コーダの前の波が押し寄せるような表現。重量感があって堂々としたコーダ。輝かしいコラール。最後は少しテンポを落として非常に大きなスケール感で終わりました。

柔らかくマイルドな響きで、ゆったりと堂々とした表現でした。繊細な最弱音から厚みのあるトゥッティまで幅広い表現で、圧倒的な空間を表現しました。
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カール・ベーム/バイエルン放送交響楽団 1969年ライヴ

ベーム★★★★★
一楽章、最初の一打目と二打目の間隔が少し開いた冒頭。震えるような悲痛な表現の序奏です。きびきびとしたテンポで豊かな表現の主部です。リズムにも躍動感があってとても生き生きとした演奏です。バネのような強い弾力です。ベームの絶頂期にはこのような腰の強い音楽だったんですね。オケも全力で体当たりしてくるような凄味があります。

二楽章、一楽章の弾む音楽から横に揺れる音楽になりました。戯れるような木管。枯れたヴァイオリンのソロ。

三楽章、すごく積極的に歌うクラリネット。続く弦も豊かに歌います。この楽章でもリズムが弾んで俊敏な反応です。トリオも積極的な表現で迫って来ます。トリオの終わりでテンポを落としました。

四楽章、激しいティンパニのクレッシェンド。確実なテンポで演奏されるピィツイカート。アルペンホルン風の旋律の前は。追い立てるようなテンポと激しいティンパニ。アルペンホルンは広い空間に響き渡るようで壮大です。フルートもピーンと張った響きが美しいです。速いテンポの第一主題。追い込むような激しいテンポとダイナミックの変化です。晩年の落ち着いた演奏とは全く違う燃えるベームです。凄い迫力で迫って来ます。コーダへ向けてテンポを速めてそのままコーダへ突入しました。凄い高揚感です。

ラジオ放送用のライヴだったのかと思いますが、さすが絶頂期のベームのライヴですね。悲痛な表現の序奏から、凄い熱気とダイナミックの変化と追い立てるようなテンポの変化。コーダへ向けてのアッチェレランドとコーダの凄い高揚感。どこをとっても素晴らしい演奏でした。
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カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1975年東京ライヴ

ベーム★★★★★
一楽章、悲痛な叫びではありませんが、深みのある響きの序奏です。ゆったりとしたテンポをさらに遅めたりテンポが動きます。味わい深いオーボエ。温かみのあるチェロ。主部もゆったりとしたテンポで69年のライヴとはかなり違う演奏です。テンポを落とす部分では凝縮された濃厚で重い表現です。

二楽章、音量を抑えてデリケートな表現です。探りながらすすむようなテンポの動きに合わせるように大きく豊かに歌うオーボエ。ライヴならではの大きなテンポの動きで、ベームも作品に身をゆだねているような自然な動きです。ねっとりと艶やかなヴァイオリンのソロも豊かに歌います。

三楽章、速めのテンポでとても動きと豊かな表情のある演奏です。追い立てるようにテンポを速めたり遅くなったりとてもよく変化します。トリオも活発な表現で生き生きとしています。

四楽章、大きなクレッシェンドのティンパニ。ピィツイカートも凄く動きがありました。その後の弦の表現も積極的で、オケもできる限りの表現をしているような感じです。速めのテンポでグイグイと進む第一主題は次第にテンポを速めます。アルペンホルンが回帰する前のクライマックスはテンポも動き、容赦なく音を割るホルンなど物凄く激しい盛り上がりでした。この激しさと一瞬見せる穏やかさの対比も見事です。コーダも凄く力強い歓喜に沸きかえるような盛り上がりでした。

最初は深みがあり味わい深い演奏でしたが、次第にベームの気合いがオケに乗り移ったようなすさまじい迫力の演奏になりました。テンポの動きと豊かな表現。最後は力を振り絞るような歓喜に沸きかえるようなコーダ。見事でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第1番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第1番2

たいこ叩きのブラームス 交響曲第1番試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、奥行き感と深みのある響きがとても良いです。ただ、ライブの時のような異様な緊張感はありません。充実した美しい響きで、わずかに速目のテンポで見事にまとめ上げています。アンサンブルも完璧で非の打ち所が無いほどにすばらしい演奏です。

二楽章、美しいオーボエのソロ。静寂感もあり、オケの集中度も高いようです。ピンポイントで定位するヴァイオリンソロ。孤独感や寂しさも伝わってくる演奏でした。

三楽章、優雅に。と言う指定に対しては、テンポが速過ぎるように感じます。せせこましい感じで落ち着きがありません。

四楽章、ホルンの朗々とした旋律は素朴な雰囲気ではなく、近代的でした。第一主題はとてもテンポが速いです。どんどん追い立てるようにテンポを煽って行きます。最後は歓喜に満ちた輝かしい演奏でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、ゆったりとしたテンポ。生き物のように一体感があって、しかも木目の細かいシルクのような美しい響きです。抉り取るような厳しい表現。美しいオーボエ・ソロ。表現が統一されていて見事なアンサンブルで生き生きとした生命感に溢れ揺れ動くような演奏です。トランペットだけが突出する場面もあります。指揮に敏感に反応するオケ。厳しいトレーニングもオケが自分のものにして、チェリビダッケの僅かな動きにもしっかりと反応するようになったのだと思います。

二楽章、穏やかさの中に、孤独感や陰影を映すような演奏です。長調で書かれていながら秋の寂しさを感じさせるような音楽です。哀愁に満ちたオーボエ・ソロ。弦楽合奏の分厚い響きとppの繊細さが共存しています。艶やかで哀愁に溢れたヴァイオリン独奏の後ろで張りのある明るいホルン。それにしてもライヴでありながら一糸乱れぬアンサンブルはさすがにすばらしいです。

三楽章、息の長い歌のクラリネット。隅から隅まで行き届いた見事な表現。滑らかに磨き上げられた美しい音色がとても魅力的です。

四楽章、静寂感のなかに小さな音で演奏されるピチカート。明るい音色で歌うホルンに続くフルートも伸びやかです。力強く歌われる第一主題。第二主題みすごく力強い演奏です。トゥッティでは分厚い響きは聴かれませんでしたが、堂々と終えました。

「暗」から「明」への明がもう少し開放的なら良かったのではないかと思いました。

イーゴリ・マルケヴィチ/シンフォニー・オブ・ジ・エアー

マルケヴィチ★★★★☆
一楽章、最初の音が歪みますが、心に打ち込んでくるようなティンパニ。悲痛な雰囲気に溢れた序奏です。寂しげな木管や弦の弱奏。大きな表現は無いのですが、音色がそうなのか、とても切迫感があって、切実な音楽です。また、起伏も激しい演奏です。押したり引いたりの波があって、音楽が生き生きとしています。

二楽章、スクロヴァチェフスキの演奏にも共通するような鮮明で鋭い演奏です。艶やかですが、力もあるヴァイオリンのソロ。ホルンは遠くから響くようです。

三楽章、間接音を伴って距離感を感じさせる美しいクラリネット。

四楽章、深みがあって力強い演奏です。トランペットもパリッと響きます。アルペンホルン風の旋律では少しテンポを落として雄大に歌います。引き締まったコラール。ウォームなサウンドになりがちなブラームスの作品ですが、この演奏ではとてもクールな響きです。第一主題もクールでした。トランペットがピーンと突き抜けてくるので演奏が鋭角的に感じます。アルペンホルン風の旋律が回帰する前の畳み掛けるようなスピード感もなかなかです。スピード感があって華やかなコーダ。コラールも華やかでした。

スピード感があって、起伏の激しい演奏でした。ブラームスにしては鮮明で鋭角的です。華やかなコーダもブラームスとしては異色のものだと思いました。
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マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2005年ライヴ

ヤンソンス★★★★☆
一楽章、すごく深刻なわけでも無く、かと言って穏やかでも無い序奏。主部に入っても極めて常識的な演奏ですが、鮮度の高い音楽です。

二楽章、たっぷりとアゴーギクを効かせて歌うオーボエ。テンポの動きもあります。すごく音量を落としたところから美しく歌うクラリネット。弱音をぐっと落とすことでダイナミックの幅を大きく取っているようです。艶やかで美しく歌うヴァイオリンのソロ。

三楽章、滑らかでたっぷりと歌うクラリネット。生き生きとした動きがあって楽しそうです。トリオでも激しく動きます。とても良く歌います。

四楽章、消え入るような弱音で始まった弦のピィッイカート。とても鮮明な響きです。アルペンホルン風の旋律はふくよかで太い響きでした。ピーンと張ったフルートが美しいです。柔らかいコラール。深みのある第一主題は控えめで柔らかく穏やかです。盛り上がりとともにテンポも速まって行きます。第一主題の再現の前はかなり激しい演奏になっていました。一音一音をとても大切にしているようで、音が立っています。嵐のような怒涛のクライマックス。重量級の蒸気機関車がばく進するような勢いのあるコーダ。

初めはごく普通の演奏のように感じましたが、楽章が進むにつれて生き生きとした表現や熱気が感じられるようになりました。怒涛のクライマックスや物凄い勢いのコーダなどは見事でした。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★★☆
一楽章、ゆったりと堂々としたテンポで、上から降り注ぐような序奏です。しっとりとしたウェットな響きです。いつものクレンペラー同様、テンポの動きなどは全くありませんが感情の起伏は演奏に表れています。クレンペラーにしては激しい表現もあり、普段の泰然自若とした演奏とは少し趣が違います。

二楽章、しっとりとしていて美しいです。録音年代の古さはあまり感じません。この楽章は表情豊かでした。

三楽章、いかにもイギリスのオケと言うようなクラリネット。晩年の無表情で即物的な演奏とは違い表現の幅があります。

四楽章、弦のピィッイカートはあまり強弱を大きく付けませんでした。アルペンホルン風の旋律は雄大です。締まったコラール。サラッとして爽やかな第一主題。次第にテンポを速めますが、テンポの動きは僅かです。オケは引き締まってキビキビと動きます。感情が込み上げるような熱気を感じます。コーダへ向けての盛り上がりもとても良かったです。速いテンポで盛大なコラール。

私にとっては正直、クレンペラーは苦手な指揮者です。どうしても緩さを感じてしまうからです。でもこの演奏は締まりがあって、表情も豊かで、熱気も感じさせる良い演奏でした。
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小澤 征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ

小澤★★★★☆
一楽章、小澤にしては感情のこもった悲痛な序奏です。あっさりとしていますが、美しいオーボエ。基本は速めのテンポです。「運命」のモットーは少しテンポを落として印象強く演奏しました。

二楽章、ゆったりとしていますが、大きく歌うことは無く、自然な流れの演奏です。哀愁を感じさせるオーボエ。クラリネットも透明感があって美しいです。自然体で力みが無く美しい演奏です。ピンポイントで余分な響きを伴わないヴァイオリンのソロ。残照のようなホルン。

三楽章、深みがあって滑らかで美しいクラリネット。トリオの少し前で激しくなりますが、とてもアンサンブルが整っていて、落ち着いています。トリオでも激しくなる部分がありますが、熱気を伴うものではありません。

四楽章、ニュートラルで透明感のある美しい演奏です。あまり間接音を含まないアルペンホルンの旋律。多層的で柔らかい第一主題はとてもまろやかで心地良い響きです。次第にテンポを速めます。伸びやかで柔らかい響きはとても美しいです。アルペンホルンが回帰する前のクライマックスはかなり激しいものでした。コーダも十分な盛り上がりです。コラールも強烈です。

さすがに世界から一流の奏者を集めたオケです。柔らかく美しい響きはさすがでした。演奏は自然体のものですが、振幅は大きく十分な説得力のあるものでした。
一楽章、小澤にしては感情のこもった悲痛な序奏です。あっさりとしていますが、美しいオーボエ。基本は速めのテンポです。「運命」のモットーは少しテンポを落として印象強く演奏しました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第1番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第1番3

たいこ叩きのブラームス 交響曲第1番名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、ティパニの一撃一撃が強く訴えかけてくる深刻な悲壮感が漂う序奏。ダイナミックの表現の幅がとても広いです。表現がキビキビしていて、とても反応が良く、オケの集中力の高さを感じさせます。作品の中から何かを抉り出そうとするような感じで一音一音が強く、コントラストがはっきりしています。

二楽章、穏やかでとても良く歌います。オーボエも美しい。イギリスのオケらしいクラリネットの音。穏やかなのですが、音が強いので音楽にどっぷりと浸って酔いしれることはできません。ヴァイオリンのソロも強い音です。

三楽章、伸びやかなクラリネット。録音によるところもあるのかも知れませんが、全体を支配している強い音が時には、キツい音に感じたり硬さになったりするのが残念なところです。

四楽章、テンポの動きにも俊敏反応するオケ。朗々と歌うまろやかなホルン。続くフルートも伸びやかで美しい。速めのテンポで演奏される第一主題。時に作品にのめり込んだような激しさも聞かせます。二回目に現れる第一主題は幾分テンポを落としてたっぷりと歌われます。テンポもよく動きます。華やかな終結部は少し地味な雰囲気で閉じました。

感情の込められた演奏でしたが、時に音の硬さが感じられたのが残念でした。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、堂々とした遅いテンポで開始しました。テンポも動き劇的な表現の演奏です。

二楽章、唸りを上げるコントラバス。予想外に無表情なオーボエのソロでした。

三楽章、積極的な表現とテンポの動きです。

四楽章、抑制の効いたティンパニのクレッシェンドでした。フルトヴェングラーならではのテンポの煽り。

ジョルジュ・プレートル/シュトゥットガルト放送交響楽団

プレートル★★★
一楽章、ゆっくりめで堂々とした深みのある序奏。リズミカルで弾むような主部。緩急の変化が大きく、音楽の振幅も大きいです。

二楽章、まろやかで柔らかい演奏ですが、一つ一つの音符を膨らますような独特の表現もあります。清涼感のあるヴァイオリンの弱音。豊かな表情のオーボエ。潤いのあるクラリネット。どれも美しいです。細部に渡って表現のこだわりを感じます。

三楽章、とろけるような柔らかさで上品に歌うオケ。上手く表現できませんが、独特の表現があります。最後はゆっくりになって終わりました。

四楽章、落ち着いて整然とした序奏。遠くから響くようなアルペンホルン風の旋律。ピーンと響くフルート。柔らかいけれどきびきびと動くコラール。第一主題の前の盛り上がりは凄く力強いものでした。第一主題も独特の歌で、力が入ったり抜けたりします。テンポを次第に速めます。再現部の前のクライマックスも整然としていました。アルペンホルン風の旋律が回帰する前のクライマックスでは突然音量を落とす部分もありました。ここでもゆったりとしたテンポで整然とした演奏でした。コーダもとても冷静で落ち着いて整った演奏でした。

とても客観的で、冷静で整然とした演奏でした。表現も独特で、クライマックスで突然音量を落とす部分など、かなり個性的でもありました。
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ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団

セル★★★
一楽章、力強く前へ進もうとする序奏。テンポも速めです。かなり激しい振幅のある音楽です。主部の冒頭のティンパニは容赦ない強打でした。主部に入っても激しく強い表現で非常に彫りも深いです。とても気合いの入った演奏で、セルの意気込みが感じられます。

二楽章、とてもゆったりとしていて情感に溢れる演奏です。感情のままにテンポも揺れ動き歌も美しいです。繊細に丁寧に一つ一つの音符を扱うような演奏。テンポの揺れと言い歌と言いとても普段聞くセルのイメージとはかけ離れています。

三楽章、一転して速いテンポであっさりとどんどん進んで行きます。ヴァイオリンやトランペットの音が少し硬い感じで録られています。

四楽章、ティンパニはあまり大きなクレッシェンドをしませんでした。ゆっくりとしたテンポのピィツイカートは僅かにテンポを速めました。あまり間接音を含まずマットなアルペンホルン風の旋律。静かなコラール。薄い響きで爽やかな第一主題。テンポを速めながら激しくなります。コーダへ向けてすさまじいアッチェレランドでした。トランペットやトロンボーンが突き抜けてきますが意外に大人しいコーダでした。

二楽章までは感情のこもった起伏の激しい演奏でしたが、三楽章以降は感情を抑えたあっさりとした表現になりました。前半の演奏をそのまま最後まで続けて欲しかったと個人的には思いました。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/NHK交響楽団 1987年ライヴ

サヴァリッシュ★★
一楽章、悲痛な序奏。美しい木管のソロ。アレグロの主部に入りは遅いテンポですが、次第にテンポが速くなります。とてもバランスが良く純粋な演奏です。強弱の振幅はN響の限界なのか、あまり大きくはありません。

二楽章、サヴァリッシュが個性を表出するようなことはありませんが、滲み出るような美しさはさすがです。艶やかなヴァイオリンのソロはとても豊かな表現です。

三楽章、滑らかで美しいクラリネット。テンポを落として優しく終わりました。

四楽章、ティンパニの激しいクレッシェンド。嵐の前触れのようにザワザワとする弦。間接音が少なくマットで浅い響きのアルペンホルン風の旋律のホルン。フルートは伸びやかです。厚みのないコラール。薄い響きでサラッとした第一主題。ブラームスらしい分厚い響きが無く、とても淡白です。コーダもコラールもとても爽やかです。

サヴァリッシュらしく強い感情の吐露などはありませんでしたが、爽やかな美しい演奏でした。ただ、ブラームスが爽やかで良いのか?と言う疑問も感じました。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団 1983年

ヴァント★★
一楽章、非常に速いテンポの序奏。主部の方が僅かにテンポが遅くなります。特に目立ったことは何もしていませんがコントラストは鮮明です。ブラームス独特のちょっとボッテリしたような厚みは無く、スッキリとした演奏です。

二楽章、穏やかで安らぎ感のある冒頭。色彩感はとても鮮明です。

三楽章、この楽章も速めのテンポで前へ前へと進みます。ヴェールに包まれたようなマイルドなトリオ。

四楽章、ティンパニはあまり大きなクレッシェンドはせず、続く弦もとても控え目です。響きが薄い分、動きはシャープです。コラールもすごく控え目な表現です。控え目で奥ゆかしい歌の第一主題。第一主題が終わると突然テンポが速くなります。常にヴェールに覆われているような感じで刺激的な音は一切ありません。むしろ弱々しい感じさえするほどです。コーダでもエネルギーを開放するような感じは無く、終始抑制された感じでした。

ヴァントの演奏らしく大きく目立った表現はありませんでしたが、普通ではあまり無いテンポの変化があったり、ブラームスらしい厚みが無かったりと少し疑問を感じる演奏でした。
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リッカルド・ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団

ムーティ★★
一楽章、ソフトフォーカスな録音です。あまり細部は分かりません。したがって悲痛な雰囲気もあまり伝わっては来ません。提示部の反復がありました。テンポを落として濃厚に強く描く部分がとても印象的です。

二楽章、微妙なテンポの動きに合わせた歌。

三楽章、

四楽章、ムーティの指揮姿は激しいのですが、あまり強弱の変化が聞き取れない録音です。ピーンと突き抜ける美しいフルート。ゆったりと穏やかなコラール。速いテンポで颯爽と進む第一主題。アルペンホルンの旋律が回帰する前のクライマックスではテンポの変化もありタメがあったりして、激しい表現でした。オケが一体になった迫力のコーダです。コラールのたっぷりと濃厚でかなり強いです。堂々とした終結でした。

四楽章の後半からはかなり熱気と感情移入を感じさせる熱演でしたが、それまでは録音の問題もあって何をしているのかあまり分かりませんでした。
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ベルナルト・ハイティンク/シカゴ交響楽団

ハイティンク★★
一楽章、柔らかく深味のある響きですが、とても穏やかで動きはあまりありません。主部に入ってもあまり大きな振幅も無く比較的穏やかな演奏が続きます。ショルティ時代のシカゴsoとは違う柔らかい響きには感心します。

二楽章、優しく慈愛に満ちた美しい演奏です。フワッとしていて重量感はありません。芯のしっかりとしたヴァイオリンのソロ。

三楽章、控えめに始まってクレッシェンドするクラリネット。優しくおっとりとしていてあまり活発な動きはありません。

四楽章、急き立てるような緊張感は無いピィツイカート。アルペンホルン風の旋律はゆったりとしたテンポで広い空間をイメージさせてくれます。第一主題は一転して少し速めで颯爽と進みます。再現部の前のクライマックスは色彩感豊かで華やかでした。コーダへ向けてクレッシェンドしながらテンポを落としました。コーダも非常にゆったりとしたテンポでちょっと間が持たない感じがします。コラールは絶叫のようでした。最後は落ち着いて穏やかな終結です。

ハイティンクの演奏にしては緊張感や一貫性が無かった感じで、あまり良い印象の演奏ではありませんでした。表現が行き当たりばったりでとても散漫な感じを受けました。
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ダリル・ワン/ヴィクトリア交響楽団

ワン★☆
一楽章、あっさりとした響きのオケです。序奏の途中で一旦音量を落としました。響きは整理されているのかとてもシンプルに響きます。テンポの動きにオケが付いて行けない部分もありました。テンポは感情のままに動きます。残念ながら響きに深みはありません。

二楽章、ゆっくりとした冒頭。一流オケのような味わいはありません。ヴァイオリンのソロも少し雑な感じがします。ホルンにもふくよかさがありません。

三楽章、今ひとつ鳴り切っていないような木管。安っぽい弦。鳴り切った柔らかさがありません。

四楽章、音程が不安定なアルペンホルン風の旋律。暗く沈んだコラール。管楽器のブレスのたびにアインザッツがズレます。胴があまり鳴っていないようなザラザラとした弦が気になります。クライマックスでも厚みがありません。コーダへ向けてアッチェレランドとともにクレッシェンドしました。コラールも鳴らない楽器を無理に吹いているような感じがして痛々しいです。最後はゆっくりとしたテンポになって終わりました。

独特のテンポの動きや不意打ちのような強弱の変化など工夫を凝らした演奏でしたが、鳴りの悪いオケの響きはとても貧相で、アンサンブルの悪さもとても気になりました。数々の名演があるこの曲で、このオケの演奏はかなり厳しいものがありました。
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ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

ケンペ
一楽章、物凄く軽い冒頭。一瞬調が違うのか?と思いました。たっぷりと歌うオーボエ。古めかしい音です。引っかかるようなテンポの動きがあったりします。

二楽章、ふくよかで柔らかい響き。テンポも動いて感情のこもった歌です。少し枯れたヴァイオリンのソロ。残照のようなホルン。ただ、低域があまり聞こえず響きが薄いのが気になります。

三楽章、薄っぺらいクラリネット。ドイツのクラリネットとは思えないようなビービーと鳴る音には違和感を感じます。

四楽章、ほとんどクレッシェンドの無いティンパニ。腰高で甲高い響きでブラームスらしい厚みは全くありません。第一主題もザラザラとした響きでとても薄いです。テンポの動きもあって激しい表現もありますが、やはり厚みの無い響きはブラームスらしくありません。かなり速いテンポのコーダ。

物凄く軽い序奏から、薄っぺらいクラリネット。厚みの全く無い響き。とてもブラームスとは思えない演奏でした。ただ、これはCD本来の音では無いと思います。ダビングした機材の特性によるものだと思います。
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カルロ・マリア・ジュリーニ/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

ジュリーニ
一楽章、歪っぽく途切れ途切れのような音です。大きく動くテンポ。ゆったりとたっぷりとした歌です。主部に入ってもゆっくりとしたテンポは変わりません。トゥッティは混濁してよく分かりませんが咆哮するような感じは無く、激しさはあるものの優雅な感じがあります。テンポも思い切って遅くなる部分もあります。

二楽章、ザラザラとした弦。

三楽章、歪みがひどくて細部がどうなっているかさっぱり分かりません。

四楽章、ティンパニがクレッシェンドすると激しく歪みます。1930年代の録音を聞いているような感じがします。ゆっくりとしたテンポで丁寧な演奏をしているようには感じますが、録音が悪くて分かりません。第一主題の再現の前のクライマックスではゆっくりとしたテンポをさらに遅めてスケールの大きな演奏をしているようでした。

歪みがひどくて、想像力を働かせて聞かないと何をやっているのか分からない演奏でした。ジュリーニのブラームスなので期待したのですが、録音の悪さはとても残念でした。
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イシュトヴァン・ケルテス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ケルテス
一楽章、甲高い音で速いテンポでせきたてるような序奏。いかにも古い録音と思わせる響きです。大きく歌うことは無く、速いテンポでどんどん進みます。ワウ・フラッターのような音程の変化もあります。甲高く潤いも無く乾いた響きで聞く気を削がれます。

二楽章、強い表現をすることは無く、自然体で力みも無い演奏ですが、この録音の悪さには閉口します。

三楽章、穏やかなクラリネット。ワウ・フラッターがひどくて音程が変化します。

四楽章、アルペンホルン風の旋律でも音程が変化して酔いそうです。第一主題でも胴があまり鳴っていないような貧しい響きでした。勢いのあるコーダです。

録音がひどくて、演奏がどうのこうのと言う以前の問題のように感じました。
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