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ブラームス 交響曲第1番

ブラームスの交響曲第1番は、彼が20年以上にわたる試行錯誤の末に完成させた交響曲で、1876年に発表されました。この作品は、ブラームスが交響曲作曲においてベートーヴェンを意識し、交響曲というジャンルに対する重責と期待を深く受け止めていたため、完成までに長い年月を要しました。その結果、ブラームスの個性と技術が詰まった重厚で力強い作品が生まれ、「ベートーヴェンの後継者」としての評価を確立しました。

構成と特徴

交響曲第1番は、全4楽章から構成され、それぞれが力強く荘厳なテーマを展開し、ロマン派的な情熱と古典的な構成美が融合しています。

  1. 第1楽章 (ウン・ポコ・ソステヌート – アレグロ)
    この楽章は、重々しい序奏から始まり、ブラームスの決意が表れたような荘厳で緊張感あふれる音楽が展開されます。序奏の後、アレグロ部分に入ると、力強く揺るぎないリズムと、対位法を用いた豊かな響きが特徴です。ブラームス独特の和声と、しっかりとした構成力が印象的で、人生の苦悩や葛藤が音楽に表現されているかのようです。
  2. 第2楽章 (アンダンテ・ソステヌート)
    第2楽章は、温かく抒情的な雰囲気に満ちています。穏やかな旋律が繊細なオーケストレーションで奏でられ、平和で落ち着いた感情が感じられます。木管楽器と弦楽器の対話が美しく、特にオーボエやヴァイオリンのソロが優雅に響く場面が印象的です。この楽章は、ブラームスの詩的で内省的な側面が現れており、深い感動を与えます。
  3. 第3楽章 (ウン・ポコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ)
    軽やかで穏やかなスケルツォ風の楽章で、ブラームスのユーモアと遊び心が表現されています。親しみやすい旋律とリズムの変化が心地よく、緊張感のある前後の楽章との対比としても効果的です。この楽章にはブラームスの暖かみや、音楽を楽しむ余裕が感じられ、全体の雰囲気を和らげています。
  4. 第4楽章 (アダージョ – ピウ・アンダンテ – アレグロ・ノン・トロッポ)
    最終楽章は、静かなアダージョの導入から始まり、次第に明るく壮大なフィナーレへと展開されます。序盤には「アルプホルンの呼びかけ」とも呼ばれるホルンの旋律が登場し、印象的なメロディが徐々に展開されていきます。やがて、ベートーヴェンの「歓喜の歌」を思わせる力強い主題が登場し、歓びと希望に満ちたクライマックスを迎えます。ブラームスはこの楽章でベートーヴェンに敬意を表しており、伝統を継承しつつも自らの新しい音楽の世界を築き上げたことが感じられます。

音楽的意義と評価

ブラームスの交響曲第1番は、「ベートーヴェンの第10交響曲」とも称されるほど、その構成の完璧さと壮大さが評価されています。この作品を完成させるにあたり、ブラームスはベートーヴェンの交響曲の精神を受け継ぎつつも、独自の音楽性を確立しようと努めました。そのため、全体を通してベートーヴェンへの深い敬意が感じられる一方で、ブラームスの繊細で重厚なスタイルが随所に現れています。

また、この作品はブラームスがクラシックとロマン派の要素を統合し、古典的な交響曲の形式を維持しながらも、より個人的で内面的な感情表現を可能にした作品でもあります。そのため、交響曲第1番は、ブラームスの作曲家としての成熟を示す作品であり、後世の作曲家にも大きな影響を与えました。

ブラームスの交響曲第1番は、苦悩から解放への道のりを描くかのような音楽であり、最後には勝利感と希望が感じられるフィナーレへと導かれます。その力強いメッセージと緻密な構成力から、今も多くの演奏家と聴衆に愛される名作です。

4o

たいこ叩きのブラームス 交響曲第1番名盤試聴記

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、冒頭から分厚い響きで圧倒されます。美しい木管のソロ。終始分厚い響きの中で音楽が展開されて行きます。作品に対する共感と自信に溢れた演奏ですばらしいです。

二楽章、甘美なオーボエのソロ。自然な音楽の抑揚。ベームの演奏なので、極端にテンポが動いたり表現の強調などはありませんが、自然体の音楽が堂々としていて、「ブラームスはこうあるべき」と言う自信と信念が表出された見事な演奏です。バイオリンのソロもとても美しかった。

三楽章、ウィーンpoらしい音が開かないクラリネットのソロも非常に美しい!

四楽章、弦のピチカートにも緊張感があって良いです。フルートのソロも美しい!ホルンのメロディもウィーンpoらしい質感がたまりません。テンポの変化も自然です。終結部のトゥッテイも輝かしい響きで圧巻で、すばらしい演奏でした。

オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ

icon★★★★★
一楽章、音楽の勢いを感じさせる冒頭です。テンポは自然な流れの中で動きます。適度な緊張感を伴って起伏の激しい演奏です。

二楽章、コントラバスの厚い響きが印象的です。オーボエのソロも美しい!バイオリンのソロも艶やかで非常に美しいです。

三楽章、速めのテンポで緊張感はずーっと維持されています。テンポはよく動きますが不自然さはありません。

四楽章、激しいティンパニのクレッシェンド。弦のピチカートにも緊張感があります。スウィトナーと言うと端正な演奏のイメージでしたが、こんなに激しい演奏をしていたとは驚きです。金管も激しい演奏でスウィトナーの指揮に応えています。まさにブラヴォーな演奏でした。

ピエール・モントゥー/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

★★★★★
一楽章、地面から湧き上がってくるような不思議な生命観を持った音楽です。若々しく生き生きとしています。モントゥーの作品に対する共感がすごく伝わってきます。テンポも途中でガクんと遅くなったり変化に富んでいます。生気に溢れていて激しい演奏です。

二楽章、モントゥーの作品への深い共感をオケにストレートにぶつけて、オケもそれに必死に応えているような演奏です。ヴァイオリンのソロも美しかった。ヴァイオリンに絡むホルンも美しい響きでした。

三楽章、コンセルトヘボウらしく瑞々しい響きのクラリネットでした。

四楽章、微妙な表情付けがいたるところになされています。モントゥーの作品へのこだわりがすごく感じられます。火の出るような演奏とは、このような演奏のことを言うのでしょう。まさに魂が乗り移ったような感情の起伏に富んだすばらしい演奏でした。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★★★★
一楽章、堂々たるテンポ設定で晩年の朝比奈の芸風が如実に現れています。スケールの大きな演奏です。しかも音楽が弛緩することは全くありません。木管のソロも瑞々しく美しいです。音楽が次々と泉のようにこんこんと湧き出てくるような豊かな演奏で集中力が途切れません。

二楽章、見事なアンサンブルでせつなさを表現しています。美しいヴァイオリンのソロでした。

三楽章、遅いテンポにもしっかりオケが付いていきます。

四楽章、ティパニのトレモロは控え目なクレッシェンドでした。ティンパニ続くホルン、フルートも伸びやかで美しい演奏でした。硬質なティンパニが見事に決まります。コーダでテンポの変化は以外な驚きでした。すばらしい演奏でした。ベートーヴェンの全集でも感じましたが朝比奈と大フィルがこんなにすばらしい演奏を残していたとは本当に驚きです。後世に残る名演だと思います。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団1998年ロンドンライブ

icon★★★★★
一楽章、強烈なティンパニの打撃音から凄い緊張感が伝わってきます。感情の起伏も激しい演奏になっています。非常に厳しい表情の音楽です。カラヤンも速めのテンポでオケをグイグイと引っ張ります。強奏部分では、それぞれのパートが自己主張をして戦闘状態のように空中分解しているようにも感じますが、決め所ではきっちりと整ったアンサンブルを聴かせます。さすがにベルリンpoです。

二楽章、コントラバスを土台にしっかりしたバランスの弦合奏です。オーボエも美しいソロを聞かせます。どのパートも存在感を誇示するかのように主張します。

三楽章、楽しそうに歌うクラリネット。録音の特性なのかも知れませんが、どのパートも強い音がします。

四楽章、カラヤンの音楽にしてはとても激しい演奏です。フルートのソロも強い存在感がありました。表現も積極的で攻撃的な演奏に感じます。これだけ厳しい表情のブラームスは初めてです。カラヤンも何かに取り付かれたかのように指揮に没頭している様子が目に浮かぶようです。すばらしい緊張感を維持し続けた演奏でした。

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、前進しようとする力強さのある冒頭です。ダイナミックで力感溢れる演奏です。音符一つ一つに意味を持たせたような生気に満ちた演奏です。表情豊かで強弱の変化など俊敏な反応です。金管も十分に前に出てきます。緊張の糸がピーンと張り詰めたような独特の雰囲気があります。

二楽章、作品を慈しむような丁寧で慎重な冒頭でした。とても表情豊かなオーボエソロでした。バーンスタインは作品と一体になっているかのような自在な表現です。天国的な終り方でした。

三楽章、積極的な表現の演奏です。バーンスタインはスコアに書かれているものから最大限のものを引き出そうとしているようです。最後はテンポも動きます。

四楽章、劇的な表現です。強弱の幅もすごく広くとっています。少し篭りぎみのホルンでした。中庸のテンポの第一主題、ここからテンポをかなり煽る。金管も加わってかなり激しい演奏です。即興的にテンポが動いているようです。最後は歓喜に溢れる輝かしい見事な演奏でした。

カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで堂々とした冒頭。広大な感じです。続く部分は繊細で優しい感じ、歌に溢れています。ゆったりと確実な足取りです。とても優雅で美しい演奏で、その分前に進むような力強さはありません。ウィーンpoのメンバーも伸び伸びと演奏しているような感じがします。

二楽章、冒頭から歌に引き込まれます。繊細なガラス細工のような透明感とキラキラと光がちりばめられたソロ。音楽にどっぷりと浸かっていられるような安心感。ホルンとヴァイオリンソロの絡みも見事です。こんなに穏やかなブラ1も珍しいでしょう。

三楽章、優雅なクラリネットソロ!刺激的な部分もなく安心して音楽に身をゆだねることが出来ます。

四楽章、ティンパニのクレッシェンドも控え目でした。この楽章も遅めのテンポで確実な足取りです。朗々としたホルン。続くコラールも神聖な雰囲気がありました。ゆっくり目な第一主題が安定感を感じさせてくれます。歓喜に沸き立つような派手な終り方ではありませんでしたが、渋くこの演奏の最後にはピッタリな演奏で締めくくりました。ブラ1の演奏としては異質な存在かも知れませんが、これはこれで素晴らしい演奏だったと思います。

スタニラフ・スクロヴァチェフスキ/hr交響楽団

スクロヴァチェフスキ★★★★★
一楽章、躍動感があって、大蛇がうねるような冒頭。とても透明感が高く美しい演奏です。オケもメリハリがあってクッキリとした響きです。波がうねるように複雑に浮き沈みするオケ。まるで生きているような感覚があります。

二楽章、木管のソロではとても微妙な表現ですが、弦全体の演奏などでは力があって、グッと押したり、スッと引いたりする絶妙な表現です。ヴァイオリンのソロもとても美しいものでした。

三楽章、滑らかに柔らかく歌うクラリネット。ブラームス独特のずんぐりとした響きではなく鮮明でどちらかと言うと鋭い響きで鋭利な刃物のようです。

四楽章、オケ全体が動く時の動きはとても俊敏です。アルペンホルン風の旋律は少し遠くから響くようでとても気持ちの良い響きでした。コラールもとても美しいものでした。速いテンポで颯爽と進む第一主題。この辺のテンポ設定もシャープな演奏を印象付けるものです。これだけシャープで明晰な演奏はこの作品としては出色のものだと思います。コーダも爆発すること無く抑制の効いたバランスの良い演奏です。コラールも弦が鮮明に聞こえます。

感情に流されること無く、終始明晰な演奏でした。ブラームスの作品がこれだけ鮮明に鳴り響くとは思いませんでした。とても新鮮な驚きです。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1988年東京ライヴ

カラヤン★★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで柔らかく控え目な序奏。あまり悲痛な表現は無く、とちらかと言うと穏やかです。ロンドンライヴの物凄いスピード感とは全く違う演奏のような感じがします。美しい木管のソロ。柔らかい弦。ブレンドされた美しい響きです。カラヤンとベルリンpoの絶頂期は過ぎていますが、それでも微妙な表現にも反応するオケはさすがです。濃厚で強い表現はありませんが、機能的に動くオケやトゥッティの深みや厚みなどは素晴らしいです。

二楽章、消え入るような弱音で繊細なソロや弦です。小さく定位するヴァイオリンのソロも優しいです。甘く優しい音楽です。

三楽章、甘くとろけるようなクラリネット。優しく包容力のある演奏はこれでなかなか良いものです。とても繊細な表現の演奏です。

四楽章、刺激的な音は一切出さずマイルドです。アルペンホルン風の旋律の前の凄いティンパニのロール。あまり深くはあのませかしマットなホルンはゆったりと伸びやかです。第一主題もゆったりと柔らかく伸びやかで美しく歌います。この第一主題は次第にテンポを速めて行き次第に激しくなります。アルペンホルンの旋律が回帰する前の部分で大きくテンポを落とし濃厚な表現をしました。コーダの前の波が押し寄せるような表現。重量感があって堂々としたコーダ。輝かしいコラール。最後は少しテンポを落として非常に大きなスケール感で終わりました。

柔らかくマイルドな響きで、ゆったりと堂々とした表現でした。繊細な最弱音から厚みのあるトゥッティまで幅広い表現で、圧倒的な空間を表現しました。
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カール・ベーム/バイエルン放送交響楽団 1969年ライヴ

ベーム★★★★★
一楽章、最初の一打目と二打目の間隔が少し開いた冒頭。震えるような悲痛な表現の序奏です。きびきびとしたテンポで豊かな表現の主部です。リズムにも躍動感があってとても生き生きとした演奏です。バネのような強い弾力です。ベームの絶頂期にはこのような腰の強い音楽だったんですね。オケも全力で体当たりしてくるような凄味があります。

二楽章、一楽章の弾む音楽から横に揺れる音楽になりました。戯れるような木管。枯れたヴァイオリンのソロ。

三楽章、すごく積極的に歌うクラリネット。続く弦も豊かに歌います。この楽章でもリズムが弾んで俊敏な反応です。トリオも積極的な表現で迫って来ます。トリオの終わりでテンポを落としました。

四楽章、激しいティンパニのクレッシェンド。確実なテンポで演奏されるピィツイカート。アルペンホルン風の旋律の前は。追い立てるようなテンポと激しいティンパニ。アルペンホルンは広い空間に響き渡るようで壮大です。フルートもピーンと張った響きが美しいです。速いテンポの第一主題。追い込むような激しいテンポとダイナミックの変化です。晩年の落ち着いた演奏とは全く違う燃えるベームです。凄い迫力で迫って来ます。コーダへ向けてテンポを速めてそのままコーダへ突入しました。凄い高揚感です。

ラジオ放送用のライヴだったのかと思いますが、さすが絶頂期のベームのライヴですね。悲痛な表現の序奏から、凄い熱気とダイナミックの変化と追い立てるようなテンポの変化。コーダへ向けてのアッチェレランドとコーダの凄い高揚感。どこをとっても素晴らしい演奏でした。
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カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1975年東京ライヴ

ベーム★★★★★
一楽章、悲痛な叫びではありませんが、深みのある響きの序奏です。ゆったりとしたテンポをさらに遅めたりテンポが動きます。味わい深いオーボエ。温かみのあるチェロ。主部もゆったりとしたテンポで69年のライヴとはかなり違う演奏です。テンポを落とす部分では凝縮された濃厚で重い表現です。

二楽章、音量を抑えてデリケートな表現です。探りながらすすむようなテンポの動きに合わせるように大きく豊かに歌うオーボエ。ライヴならではの大きなテンポの動きで、ベームも作品に身をゆだねているような自然な動きです。ねっとりと艶やかなヴァイオリンのソロも豊かに歌います。

三楽章、速めのテンポでとても動きと豊かな表情のある演奏です。追い立てるようにテンポを速めたり遅くなったりとてもよく変化します。トリオも活発な表現で生き生きとしています。

四楽章、大きなクレッシェンドのティンパニ。ピィツイカートも凄く動きがありました。その後の弦の表現も積極的で、オケもできる限りの表現をしているような感じです。速めのテンポでグイグイと進む第一主題は次第にテンポを速めます。アルペンホルンが回帰する前のクライマックスはテンポも動き、容赦なく音を割るホルンなど物凄く激しい盛り上がりでした。この激しさと一瞬見せる穏やかさの対比も見事です。コーダも凄く力強い歓喜に沸きかえるような盛り上がりでした。

最初は深みがあり味わい深い演奏でしたが、次第にベームの気合いがオケに乗り移ったようなすさまじい迫力の演奏になりました。テンポの動きと豊かな表現。最後は力を振り絞るような歓喜に沸きかえるようなコーダ。見事でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第1番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第1番2

たいこ叩きのブラームス 交響曲第1番試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、奥行き感と深みのある響きがとても良いです。ただ、ライブの時のような異様な緊張感はありません。充実した美しい響きで、わずかに速目のテンポで見事にまとめ上げています。アンサンブルも完璧で非の打ち所が無いほどにすばらしい演奏です。

二楽章、美しいオーボエのソロ。静寂感もあり、オケの集中度も高いようです。ピンポイントで定位するヴァイオリンソロ。孤独感や寂しさも伝わってくる演奏でした。

三楽章、優雅に。と言う指定に対しては、テンポが速過ぎるように感じます。せせこましい感じで落ち着きがありません。

四楽章、ホルンの朗々とした旋律は素朴な雰囲気ではなく、近代的でした。第一主題はとてもテンポが速いです。どんどん追い立てるようにテンポを煽って行きます。最後は歓喜に満ちた輝かしい演奏でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、ゆったりとしたテンポ。生き物のように一体感があって、しかも木目の細かいシルクのような美しい響きです。抉り取るような厳しい表現。美しいオーボエ・ソロ。表現が統一されていて見事なアンサンブルで生き生きとした生命感に溢れ揺れ動くような演奏です。トランペットだけが突出する場面もあります。指揮に敏感に反応するオケ。厳しいトレーニングもオケが自分のものにして、チェリビダッケの僅かな動きにもしっかりと反応するようになったのだと思います。

二楽章、穏やかさの中に、孤独感や陰影を映すような演奏です。長調で書かれていながら秋の寂しさを感じさせるような音楽です。哀愁に満ちたオーボエ・ソロ。弦楽合奏の分厚い響きとppの繊細さが共存しています。艶やかで哀愁に溢れたヴァイオリン独奏の後ろで張りのある明るいホルン。それにしてもライヴでありながら一糸乱れぬアンサンブルはさすがにすばらしいです。

三楽章、息の長い歌のクラリネット。隅から隅まで行き届いた見事な表現。滑らかに磨き上げられた美しい音色がとても魅力的です。

四楽章、静寂感のなかに小さな音で演奏されるピチカート。明るい音色で歌うホルンに続くフルートも伸びやかです。力強く歌われる第一主題。第二主題みすごく力強い演奏です。トゥッティでは分厚い響きは聴かれませんでしたが、堂々と終えました。

「暗」から「明」への明がもう少し開放的なら良かったのではないかと思いました。

イーゴリ・マルケヴィチ/シンフォニー・オブ・ジ・エアー

マルケヴィチ★★★★☆
一楽章、最初の音が歪みますが、心に打ち込んでくるようなティンパニ。悲痛な雰囲気に溢れた序奏です。寂しげな木管や弦の弱奏。大きな表現は無いのですが、音色がそうなのか、とても切迫感があって、切実な音楽です。また、起伏も激しい演奏です。押したり引いたりの波があって、音楽が生き生きとしています。

二楽章、スクロヴァチェフスキの演奏にも共通するような鮮明で鋭い演奏です。艶やかですが、力もあるヴァイオリンのソロ。ホルンは遠くから響くようです。

三楽章、間接音を伴って距離感を感じさせる美しいクラリネット。

四楽章、深みがあって力強い演奏です。トランペットもパリッと響きます。アルペンホルン風の旋律では少しテンポを落として雄大に歌います。引き締まったコラール。ウォームなサウンドになりがちなブラームスの作品ですが、この演奏ではとてもクールな響きです。第一主題もクールでした。トランペットがピーンと突き抜けてくるので演奏が鋭角的に感じます。アルペンホルン風の旋律が回帰する前の畳み掛けるようなスピード感もなかなかです。スピード感があって華やかなコーダ。コラールも華やかでした。

スピード感があって、起伏の激しい演奏でした。ブラームスにしては鮮明で鋭角的です。華やかなコーダもブラームスとしては異色のものだと思いました。
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マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2005年ライヴ

ヤンソンス★★★★☆
一楽章、すごく深刻なわけでも無く、かと言って穏やかでも無い序奏。主部に入っても極めて常識的な演奏ですが、鮮度の高い音楽です。

二楽章、たっぷりとアゴーギクを効かせて歌うオーボエ。テンポの動きもあります。すごく音量を落としたところから美しく歌うクラリネット。弱音をぐっと落とすことでダイナミックの幅を大きく取っているようです。艶やかで美しく歌うヴァイオリンのソロ。

三楽章、滑らかでたっぷりと歌うクラリネット。生き生きとした動きがあって楽しそうです。トリオでも激しく動きます。とても良く歌います。

四楽章、消え入るような弱音で始まった弦のピィッイカート。とても鮮明な響きです。アルペンホルン風の旋律はふくよかで太い響きでした。ピーンと張ったフルートが美しいです。柔らかいコラール。深みのある第一主題は控えめで柔らかく穏やかです。盛り上がりとともにテンポも速まって行きます。第一主題の再現の前はかなり激しい演奏になっていました。一音一音をとても大切にしているようで、音が立っています。嵐のような怒涛のクライマックス。重量級の蒸気機関車がばく進するような勢いのあるコーダ。

初めはごく普通の演奏のように感じましたが、楽章が進むにつれて生き生きとした表現や熱気が感じられるようになりました。怒涛のクライマックスや物凄い勢いのコーダなどは見事でした。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★★☆
一楽章、ゆったりと堂々としたテンポで、上から降り注ぐような序奏です。しっとりとしたウェットな響きです。いつものクレンペラー同様、テンポの動きなどは全くありませんが感情の起伏は演奏に表れています。クレンペラーにしては激しい表現もあり、普段の泰然自若とした演奏とは少し趣が違います。

二楽章、しっとりとしていて美しいです。録音年代の古さはあまり感じません。この楽章は表情豊かでした。

三楽章、いかにもイギリスのオケと言うようなクラリネット。晩年の無表情で即物的な演奏とは違い表現の幅があります。

四楽章、弦のピィッイカートはあまり強弱を大きく付けませんでした。アルペンホルン風の旋律は雄大です。締まったコラール。サラッとして爽やかな第一主題。次第にテンポを速めますが、テンポの動きは僅かです。オケは引き締まってキビキビと動きます。感情が込み上げるような熱気を感じます。コーダへ向けての盛り上がりもとても良かったです。速いテンポで盛大なコラール。

私にとっては正直、クレンペラーは苦手な指揮者です。どうしても緩さを感じてしまうからです。でもこの演奏は締まりがあって、表情も豊かで、熱気も感じさせる良い演奏でした。
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小澤 征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ

小澤★★★★☆
一楽章、小澤にしては感情のこもった悲痛な序奏です。あっさりとしていますが、美しいオーボエ。基本は速めのテンポです。「運命」のモットーは少しテンポを落として印象強く演奏しました。

二楽章、ゆったりとしていますが、大きく歌うことは無く、自然な流れの演奏です。哀愁を感じさせるオーボエ。クラリネットも透明感があって美しいです。自然体で力みが無く美しい演奏です。ピンポイントで余分な響きを伴わないヴァイオリンのソロ。残照のようなホルン。

三楽章、深みがあって滑らかで美しいクラリネット。トリオの少し前で激しくなりますが、とてもアンサンブルが整っていて、落ち着いています。トリオでも激しくなる部分がありますが、熱気を伴うものではありません。

四楽章、ニュートラルで透明感のある美しい演奏です。あまり間接音を含まないアルペンホルンの旋律。多層的で柔らかい第一主題はとてもまろやかで心地良い響きです。次第にテンポを速めます。伸びやかで柔らかい響きはとても美しいです。アルペンホルンが回帰する前のクライマックスはかなり激しいものでした。コーダも十分な盛り上がりです。コラールも強烈です。

さすがに世界から一流の奏者を集めたオケです。柔らかく美しい響きはさすがでした。演奏は自然体のものですが、振幅は大きく十分な説得力のあるものでした。
一楽章、小澤にしては感情のこもった悲痛な序奏です。あっさりとしていますが、美しいオーボエ。基本は速めのテンポです。「運命」のモットーは少しテンポを落として印象強く演奏しました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第1番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第1番3

たいこ叩きのブラームス 交響曲第1番名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、ティパニの一撃一撃が強く訴えかけてくる深刻な悲壮感が漂う序奏。ダイナミックの表現の幅がとても広いです。表現がキビキビしていて、とても反応が良く、オケの集中力の高さを感じさせます。作品の中から何かを抉り出そうとするような感じで一音一音が強く、コントラストがはっきりしています。

二楽章、穏やかでとても良く歌います。オーボエも美しい。イギリスのオケらしいクラリネットの音。穏やかなのですが、音が強いので音楽にどっぷりと浸って酔いしれることはできません。ヴァイオリンのソロも強い音です。

三楽章、伸びやかなクラリネット。録音によるところもあるのかも知れませんが、全体を支配している強い音が時には、キツい音に感じたり硬さになったりするのが残念なところです。

四楽章、テンポの動きにも俊敏反応するオケ。朗々と歌うまろやかなホルン。続くフルートも伸びやかで美しい。速めのテンポで演奏される第一主題。時に作品にのめり込んだような激しさも聞かせます。二回目に現れる第一主題は幾分テンポを落としてたっぷりと歌われます。テンポもよく動きます。華やかな終結部は少し地味な雰囲気で閉じました。

感情の込められた演奏でしたが、時に音の硬さが感じられたのが残念でした。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、堂々とした遅いテンポで開始しました。テンポも動き劇的な表現の演奏です。

二楽章、唸りを上げるコントラバス。予想外に無表情なオーボエのソロでした。

三楽章、積極的な表現とテンポの動きです。

四楽章、抑制の効いたティンパニのクレッシェンドでした。フルトヴェングラーならではのテンポの煽り。

ジョルジュ・プレートル/シュトゥットガルト放送交響楽団

プレートル★★★
一楽章、ゆっくりめで堂々とした深みのある序奏。リズミカルで弾むような主部。緩急の変化が大きく、音楽の振幅も大きいです。

二楽章、まろやかで柔らかい演奏ですが、一つ一つの音符を膨らますような独特の表現もあります。清涼感のあるヴァイオリンの弱音。豊かな表情のオーボエ。潤いのあるクラリネット。どれも美しいです。細部に渡って表現のこだわりを感じます。

三楽章、とろけるような柔らかさで上品に歌うオケ。上手く表現できませんが、独特の表現があります。最後はゆっくりになって終わりました。

四楽章、落ち着いて整然とした序奏。遠くから響くようなアルペンホルン風の旋律。ピーンと響くフルート。柔らかいけれどきびきびと動くコラール。第一主題の前の盛り上がりは凄く力強いものでした。第一主題も独特の歌で、力が入ったり抜けたりします。テンポを次第に速めます。再現部の前のクライマックスも整然としていました。アルペンホルン風の旋律が回帰する前のクライマックスでは突然音量を落とす部分もありました。ここでもゆったりとしたテンポで整然とした演奏でした。コーダもとても冷静で落ち着いて整った演奏でした。

とても客観的で、冷静で整然とした演奏でした。表現も独特で、クライマックスで突然音量を落とす部分など、かなり個性的でもありました。
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ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団

セル★★★
一楽章、力強く前へ進もうとする序奏。テンポも速めです。かなり激しい振幅のある音楽です。主部の冒頭のティンパニは容赦ない強打でした。主部に入っても激しく強い表現で非常に彫りも深いです。とても気合いの入った演奏で、セルの意気込みが感じられます。

二楽章、とてもゆったりとしていて情感に溢れる演奏です。感情のままにテンポも揺れ動き歌も美しいです。繊細に丁寧に一つ一つの音符を扱うような演奏。テンポの揺れと言い歌と言いとても普段聞くセルのイメージとはかけ離れています。

三楽章、一転して速いテンポであっさりとどんどん進んで行きます。ヴァイオリンやトランペットの音が少し硬い感じで録られています。

四楽章、ティンパニはあまり大きなクレッシェンドをしませんでした。ゆっくりとしたテンポのピィツイカートは僅かにテンポを速めました。あまり間接音を含まずマットなアルペンホルン風の旋律。静かなコラール。薄い響きで爽やかな第一主題。テンポを速めながら激しくなります。コーダへ向けてすさまじいアッチェレランドでした。トランペットやトロンボーンが突き抜けてきますが意外に大人しいコーダでした。

二楽章までは感情のこもった起伏の激しい演奏でしたが、三楽章以降は感情を抑えたあっさりとした表現になりました。前半の演奏をそのまま最後まで続けて欲しかったと個人的には思いました。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/NHK交響楽団 1987年ライヴ

サヴァリッシュ★★
一楽章、悲痛な序奏。美しい木管のソロ。アレグロの主部に入りは遅いテンポですが、次第にテンポが速くなります。とてもバランスが良く純粋な演奏です。強弱の振幅はN響の限界なのか、あまり大きくはありません。

二楽章、サヴァリッシュが個性を表出するようなことはありませんが、滲み出るような美しさはさすがです。艶やかなヴァイオリンのソロはとても豊かな表現です。

三楽章、滑らかで美しいクラリネット。テンポを落として優しく終わりました。

四楽章、ティンパニの激しいクレッシェンド。嵐の前触れのようにザワザワとする弦。間接音が少なくマットで浅い響きのアルペンホルン風の旋律のホルン。フルートは伸びやかです。厚みのないコラール。薄い響きでサラッとした第一主題。ブラームスらしい分厚い響きが無く、とても淡白です。コーダもコラールもとても爽やかです。

サヴァリッシュらしく強い感情の吐露などはありませんでしたが、爽やかな美しい演奏でした。ただ、ブラームスが爽やかで良いのか?と言う疑問も感じました。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団 1983年

ヴァント★★
一楽章、非常に速いテンポの序奏。主部の方が僅かにテンポが遅くなります。特に目立ったことは何もしていませんがコントラストは鮮明です。ブラームス独特のちょっとボッテリしたような厚みは無く、スッキリとした演奏です。

二楽章、穏やかで安らぎ感のある冒頭。色彩感はとても鮮明です。

三楽章、この楽章も速めのテンポで前へ前へと進みます。ヴェールに包まれたようなマイルドなトリオ。

四楽章、ティンパニはあまり大きなクレッシェンドはせず、続く弦もとても控え目です。響きが薄い分、動きはシャープです。コラールもすごく控え目な表現です。控え目で奥ゆかしい歌の第一主題。第一主題が終わると突然テンポが速くなります。常にヴェールに覆われているような感じで刺激的な音は一切ありません。むしろ弱々しい感じさえするほどです。コーダでもエネルギーを開放するような感じは無く、終始抑制された感じでした。

ヴァントの演奏らしく大きく目立った表現はありませんでしたが、普通ではあまり無いテンポの変化があったり、ブラームスらしい厚みが無かったりと少し疑問を感じる演奏でした。
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リッカルド・ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団

ムーティ★★
一楽章、ソフトフォーカスな録音です。あまり細部は分かりません。したがって悲痛な雰囲気もあまり伝わっては来ません。提示部の反復がありました。テンポを落として濃厚に強く描く部分がとても印象的です。

二楽章、微妙なテンポの動きに合わせた歌。

三楽章、

四楽章、ムーティの指揮姿は激しいのですが、あまり強弱の変化が聞き取れない録音です。ピーンと突き抜ける美しいフルート。ゆったりと穏やかなコラール。速いテンポで颯爽と進む第一主題。アルペンホルンの旋律が回帰する前のクライマックスではテンポの変化もありタメがあったりして、激しい表現でした。オケが一体になった迫力のコーダです。コラールのたっぷりと濃厚でかなり強いです。堂々とした終結でした。

四楽章の後半からはかなり熱気と感情移入を感じさせる熱演でしたが、それまでは録音の問題もあって何をしているのかあまり分かりませんでした。
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ベルナルト・ハイティンク/シカゴ交響楽団

ハイティンク★★
一楽章、柔らかく深味のある響きですが、とても穏やかで動きはあまりありません。主部に入ってもあまり大きな振幅も無く比較的穏やかな演奏が続きます。ショルティ時代のシカゴsoとは違う柔らかい響きには感心します。

二楽章、優しく慈愛に満ちた美しい演奏です。フワッとしていて重量感はありません。芯のしっかりとしたヴァイオリンのソロ。

三楽章、控えめに始まってクレッシェンドするクラリネット。優しくおっとりとしていてあまり活発な動きはありません。

四楽章、急き立てるような緊張感は無いピィツイカート。アルペンホルン風の旋律はゆったりとしたテンポで広い空間をイメージさせてくれます。第一主題は一転して少し速めで颯爽と進みます。再現部の前のクライマックスは色彩感豊かで華やかでした。コーダへ向けてクレッシェンドしながらテンポを落としました。コーダも非常にゆったりとしたテンポでちょっと間が持たない感じがします。コラールは絶叫のようでした。最後は落ち着いて穏やかな終結です。

ハイティンクの演奏にしては緊張感や一貫性が無かった感じで、あまり良い印象の演奏ではありませんでした。表現が行き当たりばったりでとても散漫な感じを受けました。
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ダリル・ワン/ヴィクトリア交響楽団

ワン★☆
一楽章、あっさりとした響きのオケです。序奏の途中で一旦音量を落としました。響きは整理されているのかとてもシンプルに響きます。テンポの動きにオケが付いて行けない部分もありました。テンポは感情のままに動きます。残念ながら響きに深みはありません。

二楽章、ゆっくりとした冒頭。一流オケのような味わいはありません。ヴァイオリンのソロも少し雑な感じがします。ホルンにもふくよかさがありません。

三楽章、今ひとつ鳴り切っていないような木管。安っぽい弦。鳴り切った柔らかさがありません。

四楽章、音程が不安定なアルペンホルン風の旋律。暗く沈んだコラール。管楽器のブレスのたびにアインザッツがズレます。胴があまり鳴っていないようなザラザラとした弦が気になります。クライマックスでも厚みがありません。コーダへ向けてアッチェレランドとともにクレッシェンドしました。コラールも鳴らない楽器を無理に吹いているような感じがして痛々しいです。最後はゆっくりとしたテンポになって終わりました。

独特のテンポの動きや不意打ちのような強弱の変化など工夫を凝らした演奏でしたが、鳴りの悪いオケの響きはとても貧相で、アンサンブルの悪さもとても気になりました。数々の名演があるこの曲で、このオケの演奏はかなり厳しいものがありました。
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ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

ケンペ
一楽章、物凄く軽い冒頭。一瞬調が違うのか?と思いました。たっぷりと歌うオーボエ。古めかしい音です。引っかかるようなテンポの動きがあったりします。

二楽章、ふくよかで柔らかい響き。テンポも動いて感情のこもった歌です。少し枯れたヴァイオリンのソロ。残照のようなホルン。ただ、低域があまり聞こえず響きが薄いのが気になります。

三楽章、薄っぺらいクラリネット。ドイツのクラリネットとは思えないようなビービーと鳴る音には違和感を感じます。

四楽章、ほとんどクレッシェンドの無いティンパニ。腰高で甲高い響きでブラームスらしい厚みは全くありません。第一主題もザラザラとした響きでとても薄いです。テンポの動きもあって激しい表現もありますが、やはり厚みの無い響きはブラームスらしくありません。かなり速いテンポのコーダ。

物凄く軽い序奏から、薄っぺらいクラリネット。厚みの全く無い響き。とてもブラームスとは思えない演奏でした。ただ、これはCD本来の音では無いと思います。ダビングした機材の特性によるものだと思います。
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カルロ・マリア・ジュリーニ/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

ジュリーニ
一楽章、歪っぽく途切れ途切れのような音です。大きく動くテンポ。ゆったりとたっぷりとした歌です。主部に入ってもゆっくりとしたテンポは変わりません。トゥッティは混濁してよく分かりませんが咆哮するような感じは無く、激しさはあるものの優雅な感じがあります。テンポも思い切って遅くなる部分もあります。

二楽章、ザラザラとした弦。

三楽章、歪みがひどくて細部がどうなっているかさっぱり分かりません。

四楽章、ティンパニがクレッシェンドすると激しく歪みます。1930年代の録音を聞いているような感じがします。ゆっくりとしたテンポで丁寧な演奏をしているようには感じますが、録音が悪くて分かりません。第一主題の再現の前のクライマックスではゆっくりとしたテンポをさらに遅めてスケールの大きな演奏をしているようでした。

歪みがひどくて、想像力を働かせて聞かないと何をやっているのか分からない演奏でした。ジュリーニのブラームスなので期待したのですが、録音の悪さはとても残念でした。
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イシュトヴァン・ケルテス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ケルテス
一楽章、甲高い音で速いテンポでせきたてるような序奏。いかにも古い録音と思わせる響きです。大きく歌うことは無く、速いテンポでどんどん進みます。ワウ・フラッターのような音程の変化もあります。甲高く潤いも無く乾いた響きで聞く気を削がれます。

二楽章、強い表現をすることは無く、自然体で力みも無い演奏ですが、この録音の悪さには閉口します。

三楽章、穏やかなクラリネット。ワウ・フラッターがひどくて音程が変化します。

四楽章、アルペンホルン風の旋律でも音程が変化して酔いそうです。第一主題でも胴があまり鳴っていないような貧しい響きでした。勢いのあるコーダです。

録音がひどくて、演奏がどうのこうのと言う以前の問題のように感じました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第1番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第2番

ブラームスの交響曲第2番は、交響曲第1番とは対照的に、穏やかで牧歌的な雰囲気が特徴です。1877年にわずか数ヶ月で完成し、翌年にウィーンで初演されました。この交響曲は、ブラームスが休暇を過ごしていたオーストリアの美しい湖畔で作曲され、自然に囲まれた環境が影響したといわれています。そのため、「田園交響曲」とも呼ばれることがあります。全体的に温かみがあり、明るくのびやかなメロディが特徴の作品です。

構成と特徴

交響曲第2番は全4楽章で構成され、自然の情景や穏やかな心の内面を表現した楽章が続きます。

  1. 第1楽章 (アレグロ・ノン・トロッポ)
    この楽章は、チェロが穏やかで優しいテーマを提示し、そこからのびのびとした雰囲気が広がります。木管楽器や弦楽器が牧歌的な旋律を奏で、田園風景のような穏やかさと明るさが感じられます。時折、不安げな和音が登場しますが、全体的には安心感や開放感に包まれているのが特徴です。ブラームスの自然への愛情が伝わる、落ち着いた始まりです。
  2. 第2楽章 (アダージョ・ノン・トロッポ – ラルゴ)
    第2楽章は、より内省的で深い抒情が表れます。低弦の重々しい響きに支えられながら、悲しげで静謐な旋律が展開され、自然の美しさに対する感謝や敬意が感じられます。この楽章では、ブラームスの豊かな和声感と感情の深さが表れており、心にしみわたるような美しさがあります。暗く静かな中に、どこか温かみも感じられる、情感豊かな楽章です。
  3. 第3楽章 (アレグレット・グラツィオーソ)
    明るく快活なスケルツォ風の楽章です。木管楽器が軽やかなメロディを奏で、弦楽器がそれに応答するように絡み合います。リズミカルで軽やかな部分と、ゆったりとした部分が交互に現れるこの楽章は、楽しさとリラックス感が融合しており、田園の静かな午後や、穏やかな自然の風景を連想させます。
  4. 第4楽章 (アレグロ・コン・スピリト)
    フィナーレは、冒頭からエネルギッシュで明るいテーマが奏でられ、歓びと解放感があふれています。管弦楽全体が一体となって、勢いよく堂々としたクライマックスに向かって進み、最終的には輝かしい結末を迎えます。この楽章は、ブラームスが交響曲第1番で見せた重厚さとは異なり、楽しく幸福感に満ちたフィナーレであり、ブラームスの明るい側面が感じられます。

音楽的意義と評価

ブラームスの交響曲第2番は、ブラームスの交響曲の中でも特に親しみやすく、柔和で温かな印象を持つ作品です。その一方で、構成の緻密さやメロディの豊かさも顕著であり、ブラームスの成熟した作曲技術が感じられます。交響曲第1番の「苦悩と克服」に対して、第2番は「平和と自然への憧れ」を表現しているようで、ブラームスの様々な側面を垣間見ることができる作品です。

この交響曲は、初演以来すぐに人気を博し、ブラームスの成功を確固たるものとしました。第1番とは異なり、聴衆にすぐに受け入れられたのは、穏やかで心地よい響きと、親しみやすい旋律が多いことが理由の一つです。また、ブラームスの愛した自然や牧歌的な情景が感じられるため、聴く者にとっても心の安らぎや幸福感を与える作品です。

ブラームスの交響曲第2番は、その親しみやすさと自然な美しさから、今も多くの人に愛され続ける名作であり、交響曲のレパートリーにおいて欠かせない存在となっています。

たいこ叩きのブラームス 交響曲第2番試聴記

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、美しいホルンの歌です。呼応する木管も非常に美しい。そして繊細な弦。弱音時の締まった音とテュッティの広々と広がるような変化がとても心地よい演奏です。ベームの指揮は確信に満ちたテンポ設定で堂々とした演奏を展開します。ことさらに表現を誇張することもなく、安定感抜群の演奏です。

二楽章、それぞれの楽器が紡いでいく音楽がとても美しい!ここでもテンポが動いたりすることはなく、がっちりと下支えしていてとても安定感があり心地よい演奏です。何よりもウィーンpoの音色がすばらしく美しい!

三楽章、弱音時の静寂感が演奏の緊張感を伝えています。すごい集中力で演奏されたことが伝わります。

四楽章、冒頭のデリケートな弦の表現。トゥッティの地の底から湧き上がるようなオケが一体になった力強いffもすばらしい。最後の追い込みも見事でした。

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、伸びやかで豊かな響きです。柔らかな弦の響きが魅力的です。ライヴならではの思い切った表現もあり聴き応えがあります。テンポの動きもライヴならではです。

二楽章、どっしり構えた安定感があります。

三楽章、弦楽器の見事なアンサンブル。オーボエの甘美なメロディ。ウィーンpoならではの魅力を存分に聴かせてくれます。

四楽章、ベームとウィーンpoの自信に溢れた演奏でした。見事な歓呼の表出でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年ザルツブルク音楽祭ライヴ

カラヤン★★★★★
一楽章、明るいホルンの第一主題。ビロードのようにとても柔らかく遠くから響くようなヴァイオリンの経過句。とても流れ良く第二主題に入りました。激しい部分でもオケの一体感があり荒れた感じは全くありません。とても滑らかで美しいです。チューバがしっかりと主張するので、とても響きが分厚く感じます。第二主題の再現は伸びやかでゆったりと多層的でした。コーダはまさに沈みゆく太陽を表現しました。

二楽章、ロ長調ですが、寂しく孤独な感じです。寂しさが溢れ出すようなヴァイオリン。激しさが一楽章の時より増してきているようです。

三楽章、上品な歌い回しで美しいオーボエの主題。Bに入っても急激なテンポの変化は無く自然に移行しました。最後のAはとても豊かに歌い美しかったです。

四楽章、細かく動く第一主題にも表情がありました。突然訪れるトゥッティは巨大な響きで圧倒されます。第二主題は少しテンポを煽って興奮を高めるようでした。テンポの動きがあって締まりのある演奏です。追い立てるように切迫するコーダ。輝かしく見事な終結でした。

表情があり、滑らかで美しい弱音。圧倒的で巨大なトゥッテイ。テンポの動きもあり作品への共感が感じられました。素晴らしい演奏だったと思います。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★★★
一楽章、間があってゆったりとした第一主題。穏やかですが、とても繊細な表現です。ヴァイオリンの経過句もヴェールで覆われたような奥ゆかしい響きです。トゥッティの起伏はあまり大きくありませんが、表現はとても積極的です。第二主題もとても奥ゆかしく穏やかです。クライマックスでも大きな盛り上がりはありませんが、とてもゆったりとスケールの大きな響きです。コーダのホルンもとても良く歌いました。落ち着いた安定感のある演奏でした。

二楽章、第一主題もたっぷりと豊かに歌います。暖かくあまり孤独感を感じないホルン。第二主題も滑らかで美しいです。常にヴェールに包まれたような上品な響きで、決して生音が聞こえてくることはありません。

三楽章、奥ゆかしく歌うオーボエの主題。Bに入ってもヴェールに包まれたような響きは同様で、とても上品です。表現はしっかりと付けられているのですが、ブレンドされた柔らかい響きでとても穏やかに聞こえます。

四楽章、しっかりと歌われている第一主題。トゥッティはブレンドされた柔らかく美しい響きです。第二主題もよく歌っています。表情は締りがあって明快ですが、柔らかい響きに中和されているような感じです。コーダは僅かにテンポを速めて高揚感のある見事なものでした。

ヴェールに包まれたようなブレンドされた柔らかく上品な響きで、ブラームスにぴったりでした。とても良く歌い表現もしっかりと付けられた演奏で、繊細な表現もありましたし、コーダの高揚感も見事でした。
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グスターボ・ドゥダメル/北ドイツ放送交響楽団

ドゥダメル★★★★★
一楽章、ゆっくりと一音一音心を込めるような第一主題。ヴァイオリンもとても繊細な表現です。テンポの動きもありますし、表現もしっかりとしています。押しては引くような第二主題の表現。独奏で登場する楽器がどれも美しいです。強弱の振幅は大きく激しいですが、低域の厚みがあまり無く、ブラームスらしい分厚い響きではありません。コーダは夕日をイメージさせてくれました。

二楽章、凄く感情を込めた第一主題です。とても豊かに歌います。振幅がとても大きく、激しいところでは暴力的なくらい力があります。ただ、少し響きが硬い感じも受けます。

三楽章、楽しそうに歌うオーボエの主題。クラリネットも良く歌います。Bも活発な運動量の演奏です。

四楽章、弱音ですが、しっかりと表情のある第一主題。やはり低域の分厚さはありませんが、シルクのような肌ざわりで美しいトゥッティ。細部に渡ってしっかりと表現が行き届いています。ブラームス的ではないかもしれませんが、生き生きとした表情の演奏は魅力的です。最後は僅かにテンポを上げて喜びに沸きかえる雰囲気を演出しました。

ブラームス的では無いかも知れませんが、シルクのような肌ざわりの美しい響きと、繊細で生き生きした表情の演奏はなかなか魅力的でした。
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クルト・ザンデルリング/シュターツカペレ・ドレスデン

ザンデルリング★★★★★
一楽章、凄くゆっくりとしたテンポでのどかで穏やかな第一主題です。おもむろに歌い始める第二主題。とても落ち着いていて安心感があります。展開部のホルンもとても美しいです。クライマックスでは金管がかなり強く吹いているようですが、とても広大な空間に拡がるような感じで塊になってぶつかって来ません。再現部の第二主題はとても繊細です。コーダのホルンはビブラートを掛けて訴えかけて来ます。

二楽章、物悲しい第一主題ですが、深刻にはなりません。とても優しく語りかけるような演奏です。この楽章もゆっくりとしたテンポで流れる音楽に身をゆだねているのがとても心地良い演奏です。第二主題はシターツカペレ・ドレスデンならではの美しい木管の響きでした。激しい部分でも決してうるさくはなりません。堂々としてどっしりと落ち着いた演奏です。

三楽章、愛らしく可愛いオーボエの主題。とても良く歌います。オーボエと絡むクラリネットやフルートもとても良く歌います。Bは強弱の反応の良い活発な演奏です。最後のAも伸びやかに豊かに歌います。とても安堵感があって落ち着きます。

四楽章、力みの無いトゥッティ。第二主題は大きな川の流れのようにゆっくりととうとうと流れて行きます。第一主題の再現は静かで穏やかです。コーダも力で押すようなことは無く、自然体でとても豊かでした。

ゆっくりとしたテンポで穏やかでどっしりとした演奏で、とてもスケールが大きかったと感じました。流れる音楽にどっぷりと浸って身をゆだねることができる数少ない演奏の一つだと思います。素晴らしい演奏でした。
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カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1988年ライヴ

クライバー★★★★★
一楽章、とても積極的で豊かな表現の第一主題。ヴァイオリンの経過句はとても美しい演奏でした。活力があって色彩感もすごく豊かです。第二主題も生き生きとした生命感のある表現です。登場する全ての楽器に豊かな表情が付けられていて動きの活発演奏です。クライマックスは少しテンポを落として濃厚で低域の厚みのある響きでした。赤く染まった夕日を連想させるコーダ。

二楽章、あまり悲しさはかんじませんが、くっきりと動きのはっきりとした第一主題。第二主題も動きが克明で後ろで動く楽器もはっきりと聞き取れます。トゥッティでも混濁することは無く、とてもキチッとしたアンサンブルです。

三楽章、愛らしく歌うオーボエ。Bに入るとダイナミックに強弱の変化を付けてスピード感のある演奏になります。テンポも動き活発な表現の演奏です。

四楽章、この楽章でも明快な表現の第一主題。トゥッティも筋肉質で躍動感がある表現です。暖かい第二主題が次第に熱くなります。少し速めのテンポで前へ進もうとする推進力があります。コーダの前もテンポが良く変わります。テンポを上げて怒涛のコーダ。凄い高揚感でした。

とても積極的な歌で、楽器の動きも克明でした。表現も多彩でテンポの動きもあり変化に富んだ演奏で飽きることのない演奏でした。テンポを上げて凄い高揚感のコーダも見事でした。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団 1984年

ヴァント★★★★★
一楽章、誇張が無く自然体の第一主題。経過句もとても美しいです。自然に染み出るような歌の第二主題。強弱の変化も必要以上に強奏せずに、オケの自然な盛り上がりに任せているようです。集中力が高く、聞いているうちにこちらが引き込まれるような感じがします。コーダでは朗々と歌うホルンがとても美しいです。

二楽章、自然な表現ですが、とても感情が込められた第一主題。少し寂しげなホルン。第二主題はゆっくりとしていますが、感情が溢れ出るような表現でした。静かですが音に力がある第二主題。

三楽章、オーボエの主題も自然体なのですが、集中力の高さか、周りの空気感が他の演奏とはちがいます。Bに入ってもあまりテンポは変わりません、また、強弱の変化もあまり大きくはありません。

四楽章、ここでも極めて自然な第一主題。ゆったりとした第二主題ですが、自然と湧き上がる感情が表現されています。雄大なトゥッティ。自然な演奏ではありますが、細部まで神経が行き届いています。コーダではアッチェレランドして、湧き立つような歓喜の表現でした。

自然体ですが、過不足なく歌い滲み出るような表現の演奏でした。細部まで神経が行き届いていて、集中力も高く。四楽章のコーダではそこまで抑えていた感情が爆発するような歓喜の表現。全体の設計も素晴らしく見事な演奏でした。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

ムラヴィンスキー★★★★★
一楽章、細身で締まったホルンの第一主題。澄んだ空気感のフルート。冷たい響きで独特の歌がある経過句。ゆっくりとしたテンポで締まった表現の第二主題。金管は盛大に鳴ります。ホルンのビブラートがロシアのオケらしいです。トロンボーンが物凄く突出して来てビックリします。巨大な音楽の振幅でとてもロマンティックです。リス゜ムの刻みが少し甘いような感じもします。

二楽章、一息で演奏するような第一主題。一音一音丁寧に演奏して浮遊感のある第二主題。精度が高く美しい演奏で、一般的なロシアのオケのイメージとは違います。

三楽章、遠くから響くようなオーボエの主題は追い込むように歌います。Bに入ると少しテンポを速めます。豊かな残響で深みのある響きです。

四楽章、レニングラーpoらしい冷たい響きで、こんな響きでブラームスを聴くのも趣きがあります。地鳴りのするようなコントラバスに金管の咆哮。とても強烈です。コーダ期待通りの金管の大爆発で輝かしい響きで終結しました。

冷たい響きで精度が高く、振幅が大きくロマンティックな演奏でした。金管の咆哮が強烈で、ブラームスの暖かくまろやかな響きのイメージとは全く違う異色の演奏でした。
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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1982年ライヴ

バーンスタイン★★★★★
一楽章、豊かな表情で感情の込められた第一主題。あっさりとした第二主題。晩年のドロドロに感情移入したような演奏とは違いとてもオーソドックスな演奏ですが、表現は積極的で美しく生き生きとしています。振幅も大きく、ストレートに感情をぶつけてくるような重量感があります。コーダは地平線に沈む太陽で次第に周囲が暗くなっていく状態をイメージさせてくれるものでした。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで、凄く感情をこめた表現でテンポの動きもある第一主題。静寂の中に響く孤独なホルン。第二主題ではさらにテンポが遅くなって、バーンスタインの感情の赴くままの表現です。強く感情を吐露する演奏で濃厚です。

三楽章、とても積極的に感情を込めて歌う主題。Bはきっちりとアクセントを付けて弾むような演奏です。すごく表現が大きいです。

四楽章、第一主題もとても豊かな表情です。トゥッティのエネルギーも大きくダイナミックです。第二主題は意外とあっさりしています。第二主題の再現はテンポを落として濃厚に表現します。コーダの手前で一旦音量が落ちる部分でもテンポを落としました。コーダは少しテンポを速めていますが、咆哮するほどではありませんでしたが、バランスの良いコーダでした。

豊かな表情で深く濃厚な表現の演奏で、最晩年の強烈な感情移入の片鱗を見せるような演奏でした。でも作品の原型はしっかりと残したバランスの良い演奏でなかなか見事でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第2番2

たいこ叩きのブラームス 交響曲第2番試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、美しい第一主題。磨きぬかれた音色と緻密なアンサンブル。牧歌的と言うより、都会的な雰囲気さえも感じさせる先鋭な演奏です。音楽にも起伏があり、金管の咆哮もありますが、整然としています。見事なくらいです。トゥッティの一体感もすばらしいものです。

二楽章、レコーディングした時期もカラヤンとベルリンpoの絶頂期のもので、ベルリンpoの機能美を如実に表すとても美しいものです。表現も豊かです。少し陰影に乏しいかも知れません。

三楽章、オーボエのとても愛らしい主題。とても美しい木管楽器の絡みでした。テンポが速くなってからのベルリンpoのアンサンブル能力の高さには感心するしかありません。

四楽章、速目のテンポの開始です。ダイナミックレンジの広さもすごいです。すばらしく輝かしい終結でした。見事なアンサンブル能力を見せ付けた演奏だったと思います。

ハンス・クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

クナッパーツブッシュ★★★★☆
一楽章、少し遠くにオケがいます。遅めのテンポで濃い表情付けをして行きます。巨大で堂々とした風格の演奏です。非常に濃厚です。賛否は分かれるかも知れませんが、私はこの演奏は好きです。

二楽章、

三楽章、アゴーギクを効かせて濃厚な表現です。テンポも予想外のところで動いてハッとさせられます。

四楽章、この楽章でも濃厚な表現の演奏があちこちで見られます。コーダでガクッとテンポを落としてそこからアッチェレランドして終るところは圧巻でした。

オトマール・スイトナー/シュターツカペレ・ベルリン

icon★★★★☆
一楽章、美しさにうっとりするような冒頭です。ドイツの伝統的な良さを残した美しい響きに魅了されます。深く艶のある弦の響きと宝石をちりばめたような木管のソロ!再現部手前のクライマックスでは少しテンポを落として刻み付けるように演奏しました。スイトナーらしい端正で美しいすばらしい演奏です。

二楽章、この世のものとは思えないような美しい演奏にずっと浸っていたい気分です。

三楽章、オーボエの魅力的な珠玉のような主題。テンポが速まる部分の切れ味もとても良い。

四楽章、第二主題もねばることなく美しい演奏。コーダではテンポを上げて激しい表現でしたが、オケは荒れることもなく美しい演奏でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団

icon★★★★☆
一楽章、明るく美しいホルンの第一主題。キリッとした木管。繊細な響きのヴァイオリン。控え目なチェロの第二主題。ワックスがかかった高級車を見ているような滑らかで贅沢な美しさです。コーダの優しい弦の合奏。チャーミングな木管。

二楽章、憂鬱な雰囲気にさせるチェロの第一主題。明るいホルンにもう少し深みが欲しいところです。美しく旋律を受け継いで行くのですが、ブラームスらしい分厚い響きはあまり感じません。それでもこの美しさには酔いしれることができます。

三楽章、優しく歌うオーボエ。クラリネットもとても良く歌います。テンポの揺れや間もとても良いです。テンポが速くなってからは弦の敏感なリズムとアクセント。穏やかに終りました。

四楽章、歓喜に溢れるトゥッティ。美しく鳴り響く金管。コントラバスをあまり捉えていない録音のせいなのか、響きに厚みがないのが気になります。コーダへ向けてテンポを上げて歓喜を強く印象付ける演出でした。

すばらしい演奏でしたが、響きに分厚さが無かったのが少しだけ残念でした。

クリストフ・フォン・ドホナーニ/北ドイツ放送交響楽団

ドホナーニ★★★★☆
一楽章、冒頭からとてもよく歌います。澄んだヴァイオリンの経過句。感情の込められた第二主題。あまり強弱の振幅は大きくなく、比較的穏やかな演奏です。テンポの動きや間を空けることもあり刻みつけるような表現です。

二楽章、物悲しい第一主題ですが、動きは活発で明快です。寂しさはありますが、強い孤独感は感じません。第二主題もはっきりとした動きです。

三楽章、表情豊かに歌うオーボエの主題。Bも活発でとても生き生きとした良い動きです。

四楽章、速いテンポで演奏される第一主題。やはり強弱の振幅はあまり大きく無くなだらかです。暖かみのある第二主題。輝かしく見事なコーダでした。

振幅はあまり大きくありませんでしたが、美しく歌う演奏でした。克明に刻みつけるような表現や活発で生き生きとした表現など多彩な表現もありなかなか聞きごたえがありました。
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ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク★★★★☆
一楽章、コンセルトヘボウらしい色彩感の豊かな演奏です。弱音のビロードのような美しさ。良く歌う第二主題。堂々と王道を行くような安定感抜群の演奏です。トゥッティは熱っぽい高揚感があります。澄んだ弱音がとても綺麗です。

二楽章、繊細な第一主題。暗闇を連想させる寂しげなホルン。第二主題はレガートぎみに演奏しますがとても伸びやかで美しいです。強弱の振幅はあまり大きくありません。

三楽章、美しく上品に歌うオーボエ。Bに入っても大きくテンポは速くならず、荒々しくもなりません。

四楽章、少し速めのテンポです。トゥッティが荒れ狂うようなことにはならず、とても穏やかです。コーダもどっしりと落ち着いた表現でした。

堂々と落ち着いた表現で、オケの美しい音色もとても魅力的でした。
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ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、盛大なヒスノイズの中から美しいホルンの響きが聞こえます。踊るようなオーボエとフルートのメロディ!たっぷりとした歌に溢れた演奏です。トゥッティでは中庸な表現でことさらに金管を強奏させることもなく奥ゆかしい演奏です。

二楽章、強い個性が無いだけに聴いていてのけぞるようなことも無いし、癒されるような音楽になっています。

三楽章、どっぷりと音楽に浸れる安心感があります。

四楽章、終結部のアッチェレランドは凄かった!

イシュトヴァン・ケルテス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ケルテス★★★★
一楽章、強いヒスノイズがあります。美しいホルンの第一主題。勇壮に進む第二主題。充実したトゥッティ。再現部の愛らしいオーボエ。どの楽器も極上の響きで登場します。怒涛のように激しく押し寄せてくる強烈なトゥッティ。とても積極的な表現の演奏です。

二楽章、少しザラつくチェロの第一主題。少しメタリックな響きですが、盛り上がるところでは突進してくるような凄みがあります。

三楽章、しっかりと地に足が付いた主題。Bに入ってテンポが速くなってもがっちりとした演奏です。

四楽章、第一主題のトゥッティもかなりのエネルギー感です。第二主題も大きく歌うことはありませんが、とても熱気があります。コーダは興奮を煽るように少しテンポを上げます。かなり劇的な歓呼で終わりました。

録音はザラつきぎみでしたが、かなり情熱的な演奏でした。厚く燃え上がる演奏は惹きつけられるものがありました。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★★
一楽章、落ち着いて柔らかく美しいホルンの第一主題。ヴァイオリンの経過句も明るく美しいです。第二主題はさらにゆっくりとしたテンポで歌います。とても美しいですし、強弱の動きにも敏感に反応していて締りのある演奏です。ブレインの演奏か、ホルンはとても美しいです。締まりがあって迫力のあるクライマックスです。コーダの木管も愛らしい表現です。クレンペラーの晩年は完全に脱力した演奏になりますが、この頃の演奏には力があります。

二楽章、テンポの動きなども少しはありますが、感情を込めた大きな起伏はありませんがその分、盛り上がる部分は雄大な広がりがあります。

三楽章、表情があって、可愛いオーボエの主題。Bでテンポは速くなりますが、すごく速いテンポではありません。

四楽章、弱音で演奏される第一主題にも表情があります。穏やかで安らぎ感のある第二主題。激しいところはかなり激しく振幅の大きな演奏ですが、アンサンブルは整っていてキチッとしています。とても爽やかに終わりました。

愛らしい木管から激しいトゥッティまで、振幅の大きな演奏でした。最晩年の脱力した演奏とは別人のような演奏でした。
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マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2008年ライヴ

ヤンソンス★★★★
一楽章、柔らかく歌うホルンの第一主題。フルートも豊かに歌います。透き通るような弱音のヴァイオリンの経過句。とてもしっかりと表情が付けられています。楽しそうで穏やかな演奏です。クライマックスでは大きくテンポを落として刻み付けるような演奏でした。透明感があって繊細な弱音が特徴です。盛り上がって頂点に入る前に少し間を空けることがよくあります。コーダのホルンが残照のように響きます。木管は活発に動きます。

二楽章、少し弱く始まって探りながら進むような第一主題。寂しげなホルンと木管。引き締まって美しい第二主題。美しく良く歌いますが、強弱の振幅はあまり大きくありません。

三楽章、夢見心地のようなオーボエ。どの楽器も豊かに歌います。Bに入るとシャープに敏感に動く弦。

四楽章、ゆったりと進む第一主題。第二主題に入ると僅かにテンポを落としました。コーダ強く湧き上がるような歓喜では無く制御された落ち着いたものでした。

よく歌う演奏で、繊細な弱音が魅力的な演奏でした。反面ffもの爆発は無く制御された感じで、もう少し解放されても良かったんじゃないかと感じました。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

ショルティ★★★★
一楽章、柔らかく揺れるような第一主題。粘っこく歌う第二主題。テンポの大きな動きは無く、カチッとしたテンポの中で音楽が進んで行きます。金管はいつものようにビンビンと鳴ります。滑らかな弦がとても美しいです。

二楽章、ゆっくりとしていますが、あまり憂いを感じるような表現ではない第一主題。暖かく孤独感もあまり感じさせないホルン。滑らかな木管の第二主題。短い音符で強く入ってくる金管の思い切りの良さはこのコンビの特徴です。

三楽章、豊かに歌う木管の主題。Bに入ってもテンポはほとんど速くなりませんが、早いパッセージを軽々と演奏するオケの能力の高さはさすがです。

四楽章、淡々とサラッと演奏される第一主題。トゥッティと第一主題の対比はとても大きな振幅でこれもオケのパワーを見せつけるような表現でした。ジワジワと力が湧き上がるような第二主題。コーダへ向けて少しずつ力がこみあげるような盛り上げはなかなか見事でした。コーダは少しアッチェレランドして輝かしい終結でした。

良く歌っていて、オケの能力も非常に高く完璧な演奏でしたが、なぜか強く共感できる演奏ではありませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第2番3

たいこ叩きのブラームス 交響曲第2番名盤試聴記

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★★☆
一楽章、豊かな響きです。朝比奈はムリな弱音を要求せずにオケが美しい音色を維持できる範囲で音楽を作っているようです。テンポの変わり目の移行部分では自然なテンポの動きがあります。ダイナミックレンジはそんなに広くはありません。意外と淡々と過ぎていったような・・・・・。

二楽章、

三楽章、冒頭の木管の絡みに弱音の締まった緊張感が感じられませんでした。緊張感は必要ない部分なのかも知れないけど・・・・・。

四楽章、速めのテンポです。テンポを落とす部分ではぐっと落とすので豊かな旋律を聴くことができます。終結部ではかなりテンポを速めました。これは効果的な盛り上がりを演出しています。

カルロ・マリア・ジュリーニ/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

ジュリーニ★★★☆
一楽章、とても豊かに美しく優雅に歌う第一主題。ゆっくりと感情を込めて演奏される第二主題。テンポの動きもあって、とにかく良く歌う演奏です。途中で何度も音が飛びます。クライマックスでテンポを落として深く刻み付けるような濃厚な表現もあります。波が押し寄せるような豊かなコーダの弦。

二楽章、ここでもゆっくりとしたテンポで感情のこもった第一主題です。第二ヴァイオリンの経過句もとても豊かな表現です。第二主題は涼やかな木管が美しいです。

三楽章、この楽章でも豊かに歌うオーボエの主題。主題を繰り返す前に感情の赴くままと言う感じで、大きくテンポを落としました。Bでははなり豪快に演奏する弦。

四楽章、第一主題もとても良く歌います。トゥッティは少し金属的な響きがします。生き生きと動く木管。音楽が有機的に結びついている感じがします。コーダは攻撃的なくらい激しい盛り上がりでした。

すごく良く歌う演奏で感情の振幅も大きくエネルギーもある演奏でしたが、何度も音が飛ぶのがとても気になりました。また、金属的な響きも作品にはあまり合っていないように感じました。
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ヤッシャ・ホーレンシュタイン/デンマーク放送交響楽団

ホーレンシュタイン★★★☆
一楽章、ふくよかで豊かなホルンの第一主題。奥ゆかしく歌う第二主題。突然トランペットが突き抜けて来ます。色彩感は淡く水彩画か墨絵を見ているような感じです。ここぞというところでトランペットが突き抜けてくるあたりはポイントをしっかりと押さえているようにも感じます。なかなか個性的な演奏です。

二楽章、悲しさを強く感じさせる演奏ではありません。ホルンも孤独感はあまりありませんでした。テンポはゆっくり目です。第二主題も遅いテンポで静寂感があります。

三楽章、独特の歌ですが良く歌うオーボエ。Bに入ると空気を切るような弦。テンポの動きもあってとても豊かに歌います。

四楽章、ゆったりとしたトゥッティ。テンポが遅い分穏やかに聞こえます。厳しい表現が無いのですが、その分おおらかで雄大に感じます。コーダでもトランペットが突き抜けてきます。

全体にゆったりとしたテンポでおおらかな表現で雄大な演奏でした。
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ジェームズ・ジャッド/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ジャッド★★★
一楽章、ゆったりとした冒頭。ふくよかなホルンの第一主題。清涼感のあるヴァイオリン。あまり音楽に抑揚が無い感じで、第二主題も平板でした。間をとったりして、次第に歌うようになりました。展開部のクライマックスも絶叫することなく落ち着いていますがテンポをゆっくりさせチューバの響きが印象的で厚みを感じさせるものでした。コーダもゆったりとした安らぎのある穏やかな表現です。

二楽章、薄い響きのチェロの第一主題。あまり深い表現はありませんが、美しい演奏です。第二主題も自然に流れて行きます。

三楽章、強い主張はしませんが、美しいオーボエの主題。Bは強弱の振幅が大きく激しさもありました。戯れるような弱音がとても美しいです。

四楽章、凄く抑えた弱音で演奏される第一主題。続くトゥッティはあまり力を入れずに軽く演奏します。第二主題も熱くならず穏やかです。コーダの最後だけ少し熱くなりました。

弱音の美しさを追い求めた演奏のような感じで、トゥッティでもほとんど力を抜いて穏やかな演奏でした。美しさを求めるあまり、表現の深みがあまり無かったのが残念でした。
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リッカルド・ムーティ/ニューヨーク・フィルハーモニック

ムーティ★★
一楽章、冒頭から音揺れとノイズです。画質音質ともあまり良くありません。感情のこもった第二主題。クライマックスはあまり激しさが伝わって来ません。コーダに入ってビブラートをかけるホルン。

二楽章、大きな抑揚を付けて歌う第一主題。

三楽章、速いテンポで歌うオーボエの主題。録音による問題か強弱の変化はあまり分かりません。テンポの動きや間があったりして大きく歌います。

四楽章、この楽章もテンポは速めです。次々に楽器がつながっていく部分のアンサンブルはなかなか良いです。第二主題はゆったりとして豊かな歌です。壮大なコーダでした。

感情の込められた豊かな表現と壮大なコーダなど聴きどころは多かったようには感じるのですが、録音が悪く全体像を把握するのは困難です。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラームス:交響曲第2番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第3番

ブラームスの交響曲第3番は、1883年に作曲された作品で、彼の交響曲の中でも特に抒情的で成熟した美しさが特徴です。この交響曲は、若いころからの友人であった作曲家ハンス・リヒターに捧げられ、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演されました。ブラームスの交響曲第1番と第2番の要素を受け継ぎながらも、新たな境地に達したこの作品は、明と暗、静と動といった対比が繊細に織り交ぜられており、ブラームスの成熟した音楽性が感じられます。

構成と特徴

交響曲第3番は全4楽章で構成され、各楽章が調和しながらも、それぞれ独自の情感を持っています。全体にわたって「F-A-F」のモチーフが繰り返し現れます。これは、ブラームスの「Frei aber froh(自由だが、幸福)」というモットーに基づくもので、彼の人生観が象徴的に表現されています。

  1. 第1楽章 (アレグロ・コン・ブリオ)
    明るくも厳かなファンファーレで始まり、力強い第1主題が提示されます。このテーマが「F-A-F」のモチーフを基にしており、ブラームスの自由でありながらも満ち足りた精神が感じられます。続いて登場する第2主題は穏やかで抒情的な雰囲気を持ち、対照的な美しさが印象的です。激しい感情の揺れがありながらも全体的に安定感があり、彼の深い内面と葛藤が感じられる楽章です。
  2. 第2楽章 (アンダンテ)
    ゆったりとした抒情的な楽章で、オーボエとクラリネットが温かく穏やかなメロディを奏でます。ここでは、静かな喜びや穏やかな心の安らぎが感じられ、牧歌的な風景を思い起こさせます。ブラームスの内面的なやさしさが表現されており、全体に温かみのある美しい調べが広がります。
  3. 第3楽章 (ポコ・アレグレット)
    第3楽章は、ブラームスの交響曲の中でも特に有名な部分で、哀愁を帯びたメロディが特徴的です。チェロが切なげでしみじみとした旋律を奏で、それに管楽器が応答するように重なります。この哀愁のこもった旋律は、ブラームスの内面の孤独や人間的な儚さを感じさせ、静かで抑制された感情が深く響きます。どこか懐かしさや憂いを帯びており、多くの人の心に響く美しさがあります。
  4. 第4楽章 (アレグロ – ウン・ポーコ・ソステヌート)
    力強く始まり、緊張感が高まるフィナーレです。ここでは、感情が一気に解放されるような勢いが感じられ、ブラームスのダイナミックな一面が表現されています。しかし、最後は大きなクライマックスを迎えることなく、穏やかに静まるように終わります。この終結は、明示的な勝利や歓喜ではなく、熟考や受容、内面の平和に落ち着くような余韻を残し、ブラームスの成熟した人生観が反映されています。

音楽的意義と評価

交響曲第3番は、ブラームスの人生観や内面的な思索が色濃く反映され、他の交響曲と比べても深い抒情性が特徴です。「Frei aber froh」という自由に対する彼の姿勢や、深い孤独感、成熟した平和への欲求がこの作品には表れています。また、交響曲第3番の抑制された表現と、派手さを抑えた静かな結末が、当時の他の交響曲にはない独自性を持っており、ブラームスの音楽の深みを象徴する作品とされています。

この交響曲は、ドイツ音楽の伝統を受け継ぎつつも、ブラームス独自の哲学と繊細な感情表現によって作られた名作として、今日でも高く評価されています。その抒情的で内省的な響きは、多くの聴衆の心に深い感動を与え続けています。

たいこ叩きのブラームス 交響曲第3番名盤試聴記

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、堂々としたブラスの響きと安定感のある演奏。木管の美しいソロ。どっしりと構えたテンポがすごい安定感を生み出しています。強烈なホルンの咆哮!熱いものを感じさせてくれます。

二楽章、潤いのあるクラリネットのソロです。美しい歌が続きます。すばらしい安定感です。どっぷりと音楽に浸ることができます。泉からこんこんと絶えることなく溢れ出るように音楽が次々に湧いてきます。

三楽章、奇をてらうようなことは一切ありません。正面から音楽を捉えている演奏です。

四楽章、充実した美しい響きと堂々としたテンポで自信に溢れたすばらしい演奏でした。

オトマール・スイトナー/シュターツカペレ・ベルリン

icon★★★★★
一楽章、柔らかい金管のモットーに続いて切り込み鋭いヴァイオリンの第一主題。控え目で美しいクラリネットの第二主題。所々で浮かび上がる木管の第二主題がとても美しい。

二楽章、伝統を受け継いだ古き良きドイツの響きがとても美しい。潤いのある瑞々しい響きとスイトナーの端正な表現がマッチして素晴らしい演奏です。

三楽章、控え目ながら十分な表現で、品良く保たれた演奏で格調高い仕上がりです。

四楽章、激しい部分でも暴走することはなく、抑制の効いた演奏です。渋い表現で統一された見事な演奏でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団

icon★★★★★
一楽章、ホールの響きを伴ってシルキーでとても美しいヴァイオリンの第一主題。ゆったりとしたテンポで控え目なクラリネットの第二主題。木管の絡みが子供が戯れるようでとても楽しげです。ホルンの響きに奥行き感が感じられないのが残念です。コーダでも見事に揃った弦が美しい音色を響かせます。

二楽章、安らいだ雰囲気のクラリネット。中間部は少し暗転するが、絶妙なアンサンブルと静寂感です。

三楽章、控え目なチェロの旋律が哀愁を誘います。ここまで全体に静かな演奏になっています。抑制された禁欲的な演奏とでも言えば良いのでしょうか。感情をストレートにぶつけるようなことはせずに、精神世界の音楽をしているような感じがします。

四楽章、一転して動きのある第一主題。激しくなる部分もテンポが若干遅いことも手伝ってどっしりと落ち着いた演奏になっています。動きのある部分ではオケの敏感な反応がすばらしい。

落ち着いた静かな演奏がすばらしかったです。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年ザルツブルクライヴ

カラヤン★★★★★
一楽章、豊かに鳴り響く金管。ティンパニに隠れるような第一主題は活発な動きです。テンポは速めです。弱音は消え入るように弱く演奏しています。第二主題も弱いですが、実に優雅で滑らかです。分厚い響きですが、スピード感もあります。

二楽章、のどかな田舎の情景を思い出させるような冒頭のクラリネット。柔らかく厚みのある弦が素晴らしい。大きく歌うことはありませんが、どっしりと構えた安定感は抜群です。

三楽章、内に秘めた感情が滲み出るようなチェロの主要主題。主要主題が木管に移ると表情は豊かになります。

四楽章、速めのテンポでサラッと演奏される第一主題。第二主題も大きい表現はありません。展開部の第一主題はビート感の強いものでした。金管で演奏されるコラール風の動機はかなり激しい表現でした。コーダの儚さもとても良かったです。

やはりカラヤンのライヴはスタジオ録音とは別物ですね。消え入るような弱音から激しいトゥッティまで幅広い演奏や滲み出るような表現もなかなかでした。
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スタニラフ・スクロヴァチェフスキ/読売日本交響楽団

スクロヴァチェフスキ★★★★★
一楽章、鋭角的で鋭く美しい第一主題。くっきりと浮かび上がる木管。クラリネットの第二主題はヨーロッパのオケのような滑らかさはありません。主題の途中で一旦音量を落としました。あまり激しく強奏する部分はありませんが瑞々しい表現が美しいです。テンポを落としながら次第に弱くなって終わる部分もなかなか良い表現でした。

二楽章、やはりここでも滑らかさは少し乏しいクラリネット。清涼感のある美しい弦。コントラバスもしっかりと存在を主張していて深みのある響きです。

三楽章、すごく感情のこもった弦の旋律。清涼感のある美しい響きはとても心地良いものですが、果たしてブラームスがこの響きで良いのかは疑問もあります。

四楽章、木管で演奏される第一主題が消え入るようでとても美しいです。トロンボーンの同音反復の後はとても激しい表現です。一気にここまで貯めてきたエネルギーを放出するような激しさです。第二主題はあまり歌いませんが響きが鮮烈なためとても心に突き刺さって来ます。生き生きとした活発な動きを見せています。展開部ではトロンボーンがビーンと激しく鳴ります。とにかく振幅の大きな演奏です。静かに美しく第一楽章第一主題を演奏して終わりました。

消え入るような美しい弱音から、一気にエネルギーを放出するトゥッティまで、表現の幅のとても広い演奏でした。滑らかさに乏しいクラリネットや鮮烈な響きがブラームスに合っているのかどうかはあっても、この入魂の演奏の素晴らしさを損なうものではありません。
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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

バーンスタイン★★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで柔らかい音色でテンポも動き積極的な表現です。第二主題もゆっくりとしたテンポで一音一音確かめるような演奏です。ブレンドされて一体感のある響きがブラームスにぴったりです。テンポの動きやかなり大胆なタメがあって強い感情移入を感じさせる演奏です。最後は大きく膨らんだ後、ゆっくり第一主題を演奏して終わりました。

二楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポの演奏です。内に秘めたような中間部のクラリネットとファゴットの旋律。

三楽章、深く感情を込めて歌われるチェロの旋律。テンポの動きもあり、次々と受け継がれる楽器も豊かに歌います。中間部は楽しそうにあっさりと進みます。主部が戻ってホルンの旋律もとても感情が込められています。

四楽章、第一主題もとても豊かな表現です。生き生きとした第二主題。トゥッティはあまり激しい響きでは無く、とてもバランスの良い響きでまろやかです。コーダはゆったりと濃厚な表現でした。

強い感情移入で深い表現の演奏でした。それでもトゥッティで感情移入が過ぎて爆発することは無く、バランスの良いマイルドな響きを維持しました。濃厚な表現の中にもマイルドなバランスを保った良い演奏でした。
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クルト・ザンデルリング/シュターツカペレ・ドレスデン

ザンデルリング★★★★★
一楽章、ゆっくりめのテンポで、柔らかく伸びやかで微妙な抑揚が心地良い第一主題。とても品の良いクラリネットの第二主題。透明感が高く、すがすがしく美しい響きです。伸びやかで窮屈さが全くありません。提示部の反復の前はテンポをかなり落として強く印象付けるような濃い表現でした。

二楽章、この楽章もゆっくりめのテンポでとても素朴なクラリネットの主要主題。爽やかで美しい響きがとても魅力的です。ザンデルリングの指揮も押し付けがましい表現は無く、自然体で奥ゆかしい表現で、音楽にどっぷりと浸ることができます。

三楽章、深く思いの込められた主要主題。とても哀愁を感じさせる演奏ですが、それが作為的な表現で演出されるのではなく、自然体の伸びやかな表現から生まれてくるのがとても良いです。ホルンの主要主題の再現は何とも言えない陰影をともなった非常に美しい演奏でした。

四楽章、自然体の第一主題ですが、とても奥行感のある伸びやかな演奏です。トゥッティでも透明感があってとても美しいです。ゆったりと堂々と構えたトゥッティ。儚いコーダも自然に表現されました。

自然体で伸びやかな表現と奥行き感のある美しい響きでした。誇張された表現は一切ありませんが、素朴な雰囲気や哀愁や儚さを見事に表現しました。特に三楽章の哀愁の表現は絶品でした。
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カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ジュリーニ★★★★★
一楽章、少しアンサンブルが乱れる第一主題。テンポを動かして濃く描きます。押すところと引くところがある第二主題はとても奥ゆかしい表現でした。とても優雅で舞うような演奏です。コーダに入ってかなり強奏しますが、それでもどこかおおらかでガツガツしません。

二楽章、ゆっくりとしたテンポですが、引っかかるところの無い流れるような主要主題です。とても遅いテンポで演奏されますが、強い表現ではないので、とても心地よく流れて行きます。

三楽章、非常にゆっくりと感情を込めて歌う主要主題。小節の頭を強く演奏することも無く、自然な歌でゆったりと流れます。ホルンに主要主題の再現があった後の弦の主要主題が揺れ動くようにとても優雅でした。

四楽章、アクセントを強く演奏する第一主題。第二主題もしっかりとした表現があります。強奏部分でも常に余裕を残していて、がむしゃらな演奏にならないので、ゆとりのある演奏で力みなどは全く感じさせません。

とても優雅な演奏で引っかかるところの無い流れの良い演奏でした。自然な歌や、揺れ動くような表現もとても美しく見事でした。強奏部分でも余裕を残した力みを感じさせないことも優雅な印象を強く感じさせてのだと思います。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団

ヴァント★★★★★
一楽章、モットーから一気に開放される、鋭いヴァイオリンの響きの第一主題。サラッとして控えめな第二主題。細部まで行き届いた演奏で、とても繊細です。トゥッティと弱音の振幅はそれほど大きくはありません。

二楽章、穏やかですが、強弱の変化を付けて歌うクラリネットの主要主題。中間部のコラール風の旋律は陰影を感じさせるものです。

三楽章、速いテンポでサクサクと進みますがとても良く歌う主要主題。速いテンポですが、たっぷりとした歌で充実感があります。

四楽章、強弱の振幅はあまり大きくありませんが、緻密に組み上げられた精度の高い音楽です。コーダの黄昏の雰囲気もとても良いです。第一楽章の第一主題の回想も夢見るような儚さでした。

強弱の振幅はあまり大きくありませんでしたが、細部まで行き届いた緻密な演奏でした。歌もたっぷりとあり充実した表現の良い演奏だったと思います。
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ダニエル・ハーディング/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団

ハーディング★★★★★
一楽章、音を切るモットー。第一主題も個性的です。ティンパニのクレッシェンドがあったり、主題の中での強弱の変化もありました。ヴェールに包まれているようなクラリネットの第二主題から鮮度の高いオーボエと工夫を凝らした表現が続きます。展開部ではかなりテンポを速めて快活な表現でした。再現部に入っても第一主題の表現は独特です。

二楽章、生き生きとした動きのある主要主題。夢見るような淡い表現で、生音をビンビンと響かせるような演奏はしません。

三楽章、この主要主題も独特の表現で、アゴーギクを効かせていると言えば良いのか、テンポの動きがあると言えば良いのか分からないような独特の表現です。中間部は淡い表現です。ホルンの主要主題の再現はとても美しいです。

四楽章、速いテンポで躍動感のある第一主題。第二主題も速いテンポで軽く演奏されますが、展開部の前はかなり激しくなります。再現部へ向けての盛り上がりは室内オケとは思えない見事なものでした。コーダのコラール風の動機は雨上がりの空のようなすがすがしさでした。最後の第一楽章の第一主題の回想は和音の中にかすかに聞こえる程度で、聞こうとしないと聞き取れないほどのかすかなものでした。

ハーディングの意欲溢れる演奏で、これまでのブラームス像とは一線を画すような感じがしました。とても個性的な表現で、こんな演奏もあるのかと関心させられました。
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コリン・デイヴィス/バイエルン放送交響楽団

デイヴィス★★★★★
一楽章、とても感情が込められて深い表現の第一主題。提示部反復のモットーが盛大に鳴ります。かなり熱い演奏です。表現も豊かでオケの反応もとても良いです。

二楽章、ゆっくりとしたテンポでたっぷりと感情を込めて歌う主要主題。中間部もとても良く歌います。湧き立つような美しい響きです。

三楽章、深みがあって豊かな歌を聞かせる主要主題。潤いのある響きがとても美しいです。中間部では小節の頭で少し押すような表現でした。主部がもどった部分のホルンはとても柔らかく美しい演奏でした。

四楽章、うごめくような第一主題。トロンボーンの大きなクレッシェンド。第二主題が終わって展開部に至るまでの間はがっちりとした低域に支えられた厚みのある響きでした。再現部の激しさもかなりのものです。ブラームスなので金管が咆哮するようなことはありませんが、ブラームスの演奏にしてはかなり激しい部類です。音楽に隙が無くぎっしりと詰まった濃厚な音楽です。コーダのコラールでも盛り上がりがありました。

熱く激しく濃厚な演奏でした。深みのある表現や積極的な歌、隙がなく緻密な音楽も見事でした。こんなに熱いブラームスは初めてですが、こんな熱い演奏もなかなか良いものです。
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クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

テンシュテット★★★★★
一楽章、内声部を含んで豊かに盛り上がるモットから第一主題に突入します。冒頭からかなり感情がむき出しのような感じがします。第二主題は優雅になりますが、クラリネットは極上の美しさとは行きません。かなり激しい感情の起伏を表現しています。大きく盛り上がって力の入る部分と、スーッと力が抜ける部分の対比が面白い。

二楽章、ゆっくり目のテンポで優しい主要主題。2度をゆらゆらと反復する木管が明るく美しいです。

三楽章、テンポは速めですが、とても深く感情を込めて歌う主要主題。ホルンで再現される主要主題も明るく美しいです。

四楽章、不穏な雰囲気の第一主題。かなりのスピード感があります。アクセントの反応もとても敏感です。咆哮する金管。とても激しい表現です。コーダの第一楽章第一主題はほとんど聞こえませんでした。

感情のこもったとても激しい演奏でした。響きも明るく、この激しい演奏にはとても合っていてこの演奏も良かったです。こうやっていろんな演奏を聞くとブラームスの音楽の受容度の広さを思い知らされます。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラース:交響曲第3番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第3番2

たいこ叩きのブラームス 交響曲第3番名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、一体感のある生き物のように動く音楽。美しいクラリネットの第二主題。精緻なアンサンブルが見事です。集中力の高いすばらしい演奏です。

二楽章、美しい木管のソロが続き、この楽章でも一体感のあるすばらしいアンサンブルを聴くことができます。

三楽章、速目のテンポで作品に深くのめり込むような陰影は感じません。ここでもこの当時のベルリンpoのアンサンブル能力の高さを如実に感じさせてくれます。

四楽章、トゥッティの怒涛の響きに圧倒されます。最後も美しく曲を閉じました。

ピエール・モントゥー/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

モントゥー★★★★☆

一楽章、録音年代の古さから木目の粗い音です。ライヴならではの感情移入による起伏の激しい表現はなかなか魅力的です。モントゥーの作品への共感がすごく伝わってくる演奏です。指揮台の上で「もっと!もっと!」とオケに要求しているのが目に映るような演奏です。

二楽章、とても豊かで生き生きとした表現です。

三楽章、

四楽章、トゥッティでのエネルギー感はすばらしい。モントゥーの作品への深い共感によって生まれた演奏だと思います。

ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団 1991年ライヴ

マゼール★★★★☆
一楽章、マットであまり艶の無い渋い第一主題。消え入るような第二主題。伸び伸びとした穏やかな演奏が続きます。コーダも荒れ狂うような表現では無く節度ある演奏でした。

二楽章、とても穏やかな主要主題。中間部も静かで穏やかです。これだけ静かな演奏も珍しいのではないかと思います。最後は涼やかな響きで終わりました。

三楽章、アゴーギクを効かせて大きく歌います。柔らかいですが、しっかりと地に足のついた中間部の木管。マットですが柔らかいホルン。

四楽章、動きのある第一主題。第二主題も豊かな表情です。展開部もとても表情が豊かです。オケの響きはブレンドされて一体感があり、トゥッティの激しさもありますが、とても整ったバランスです。ライヴとは思えない静寂感です。

四楽章では激しい表現もありましたが、しっかりとコントロールされたバランスの良いトゥッティでした。その他はとても穏やかな演奏でした。ブレンドされた一体感のある響きもライヴとは思えない美しさでした。
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ベルナルト・ハイティンク/ヨーロッパ室内管弦楽団 2011年ライヴ

ハイティンク★★★★☆
一楽章、マットな第一主題。控え目で奥ゆかしい表現の第二主題。ハイティンクらしく穏やかで大きな表現の無い演奏ですが緻密で見通しの良い演奏です。金管が咆哮したりすることは全くありません。

二楽章、ニュートラルな響きであっさりとした表現のクラリネット。反応の良い引き締まった表現が続きます。はっきりとした色彩とオケが一体になっての動きは見事です。

三楽章、チェロの旋律は最初のテンポから進むにつれて少し速くなりました。大きくはありませんが、過不足無い表現です。主部が戻ったホルンは柔らかく美しい演奏でした。

四楽章、弱音でうごめくような第一主題。相の手で入る弦の締まった表現。その後も引き締まった表現が続きます。トゥッティでも決して荒々しくはならず整然と落ち着いた表現です。コーダはテンポを落として静かで澄んだ演奏になりました。

大きな表現や金管の咆哮も無く、穏やかな演奏でしたが、引き締まった表現やはっきりとした色彩、コーダの澄んだ響きの演奏などなかなか聞かせどころの多い演奏でした。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

ショルティ★★★★☆
一楽章、いつもながらに明快で目の覚めるような第一主題。動きが手に取るように分かります。現実的で夢見るような雰囲気は無いクラリネットの第二主題。とても鮮やかで、全ての音が前面に出てくるような明晰さが特徴です。表現意欲が旺盛でエネルギーが放出されます。分厚く充実した響きも見事で怒涛のようなトゥッティです。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで潤いのあるクラリネットの主要主題。中間部のコラール風の旋律も独特の陰りを感じさせます。とても積極的な演奏です。

三楽章、とても大きな表現で歌う主要主題。しかもテンポが速めで次から次へと畳み掛けてくるような表現です。中間部も活発にどんどん前に進むエネルギーがあります。ホルンで再現される主要主題は哀愁を感じさせるものでした。

四楽章、トゥッティのがっちりとした構築感のある響きはさすがです。とても力強い演奏です。金管が明快に鳴り響きます。凄いエネルギーで前へ進もうとする推進力があります。

とても力強い演奏で、曖昧さの無い明快な表現でした。がっちりとした骨格の構築感のある分厚い響きと前へ進もうとする推進力のあるエネルギーの放出も凄いものでした。ザンデルリングとは対極にある表現のように感じました。
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ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン/オランダ・フィルハーモニー管弦楽団

ズヴェーデン★★★★☆
一楽章、僅かにoffぎみで距離のあるオケ。豊かな表現の第一主題。優雅に歌う第二主題。次第にテンポが速まり豪快な演奏になります。コントラファゴットがしっかりと存在を主張します。かなり勢いのある演奏で、スピート感があります。

二楽章、クラリネットにはもう少し潤いや艶やかさがあっても良いように思います。一楽章の豪快さとは打って変わってとても繊細な表現を聞かせます。

三楽章、豊かに歌うチェロ。とても積極的な表現の演奏です。中間部は速めのテンポで憂鬱な雰囲気があります。積極的な表現の分、僅かに雑な感じもあります。

四楽章、薄暗い雰囲気の第一主題。思い切りの良い豪快な演奏はここでも健在です。弓をいっぱいに使うような豪快さと弱音の繊細さを併せ持ったなかなか良い演奏です。

思い切り良く豪快な演奏と、弱音の繊細さ併せ持った演奏でしたが、時に僅かに雑になる部分がありました。
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ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、速めのテンポの冒頭です。続くクラリネットのソロは夢見心地のような魅力的な表現です。激しく演奏される部分でもワルターらしいチャーミングで暖かみのある演奏です。

二楽章、弱音部の緊張感を録音が伝えきらないところが残念です。フレーズ終わりの間の取り方などもとても良い感じです。

三楽章、この楽章も速めのテンポで進みます。

四楽章、トゥッティでも力むことなく自然に音楽が流れて行きますが音楽に秘められた熱気は十分に感じられる演奏です。

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

朝比奈★★★★
一楽章、まろやかな響きのブラスセクションでした。安定感のある演奏です。節度ある表現で好感が持てます。管楽器のソロは極上とは言えませんが美しい響きです。ホールの響きを伴って深みのあるテュッティです。中庸の良い演奏だと思います。

二楽章、少し滑らかさに欠けるクラリネットのソロでした。ここでも朝比奈は極端な主張をすることなく自然体で音楽を進めます。自信に溢れた堂々とした演奏です。

三楽章、第一主題のクレッシェンド、デクレッシェンドは大きく表現しました。

四楽章、決して力むことなく見事に頂点を作ります。弱音部の繊細な表現などは長年のコンビで息のあったところを聴かせてくれます。

クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

アバド★★★★
一楽章、速めのテンポで動きのある第一主題。奥ゆかしい響きのクラリネットの第二主題。その後に続く部分も優雅です。カチッとした弦のアンサンブル。とても活動的で生き生きとしています。コーダではテンポを少し速めて絡み合う楽器が激しくぶつかり合うような表現でした。

二楽章、ここでもクラリネットとファゴットの主要主題は控えめでとても奥ゆかしい表現です。曇天の中に僅かに光が差し込むような表現です。

三楽章、豊かに歌うチェロの主要主題。フルートが少し寂しげに歌います。ブラームスの音楽にしては少し温度感が低い感じがします。

四楽章、筋肉質で動きのある第一主題。振幅の大きい演奏で消え入るような弱音からトゥッティの激しい演奏の幅か広いです。

奥ゆかしい弱音から、爆発するようなエネルギーまで表現の振幅の大きな演奏でした。ただ、ブラムスにしては温度感の低い演奏に感じました。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★★
一楽章、冒頭から人を寄せ付けないような孤高の演奏です。第二主題もいつものようにほとんど歌いません。色んな声部がくっきりと克明です。最後に現れる第一主題もそっけないものでした。

二楽章、自然に滲み出る穏やかでのどかな主要主題。最晩年の無表情な音楽とは違い、自然で控え目な音楽があります。

三楽章、今にも雨が降りそうな曇天をイメージさせる主要主題。フワフワと浮遊感のあるような動きがあります。柔らかく穏やかな中間部。

四楽章、大きく歌うわけではありませんが、何とも言えない表情があります。第二主題の前はそんなに激しくはありません。最晩年の「無」の境地のような演奏とは違い活発な動きもあります。

大きな表現はありませんでしたが、内側でうごめくような表現のある演奏でした。全体的には穏やかで「静」の演奏で、最晩年の「無」の境地へ向かう片鱗を垣間見せるような演奏でもありました。
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ヘルベルト・ブロムシュテット/北ドイツ放送交響楽団

ブロムシュテット★★★★
一楽章、ゆったりと強弱の変化のあるモットーから一転してドカンと入って速めのテンポで歌う第一主題。こぶしが効いているような独特の歌い回しの第二主題。振幅は大きく強い音で克明に刻み付けるような表現です。第一主題が常に速いのはAllegro con brioを忠実に表現するためなのか?

二楽章、いつもながらの自然体の演奏です。陰影を感じさせる中間部の旋律。大きな表現は無く淡々と進んで行きます。

三楽章、伸ばす音でグーッと引っ張って戻すような主要主題の表現。とても現実的な中間部の木管。一転して弦は夢見るようで美しいです。ホルンに主要主題が再現されても最初の表現と同じで少し不自然な感じがします。

四楽章、弱音ですが、力のある第一主題。第二主題の前は深みのある美しいしかも激しい演奏でした。第二主題の後も力強い演奏です。コーダのコラールも美しいです。第一楽章の第一主題はほとんど聞き取れないくらいでした。

とても美しく充実した演奏でした。響きにも深みがあり激しい部分ではかなり思い切って金管に吹かせているようであま普段のブラームスでは聞けないような響きの演奏でした。ただ、いくつか不自然な表現があったのかとても引っかかりました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラース:交響曲第3番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第3番3

たいこ叩きのブラームス 交響曲第3番名盤試聴記

ジョルジュ・プレートル/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

プレートル★★★☆
一楽章、第一主題の途中で音量を落としたりテンポも落ちたりする独特の表現です。優雅に舞うような第二主題。あまり密度が高く無く、軽い感じがします。コーダの最初はいろんな楽器が絡み合いますが、ちょっと散漫な感じがしました。

二楽章、速めのテンポでグイグイと進む演奏です。2度をゆらゆらと反復する動機は華やかです。中間部は祈るような雰囲気です。間接音を含んだフワーッとした柔らかい響きですが、その分凝縮したような表現の強さはありません。フワーッとした響きがコーダのクラリネットでは夢見るような淡い表現でした。

三楽章、思いが詰まったようなチェロの旋律。続くヴァイオリンもとても感情のこもった表現でした。中間部は少し活発に動きます。

四楽章、柔らかい表現の第一主題。トロンボーンが大きくクレッシェンドしました。その後、第二主題まではそんなに激しくはありません。再現部に入ると金管が抜けて来ます。コーダの夢見るような儚い表現に惹かれます。

オケを強烈にドライヴするような表現は無く、夢見るような淡い表現が何度か聞かれました。全体にフワーッとした柔らかい響きで、ブラームスらしい厚みのある響きはあまりありませんでした。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1972年ライヴ

ムラヴィンスキー★★★
一楽章、ゆっくり演奏されるモットーに続いてちょっと暴力的で激しい第一主題。太い響きのクラリネットの第二主題。ビブラートを掛けたホルンがロシアのオケだと印象付けます。。金管も咆哮しますし、ロシアのオケの演奏らしい表現です。

二楽章、少し乾いた響きのクラリネット。あまり表情は無く、客観的な演奏ですが、響きがブレンドされずブラームス的なトローッとしたサウンドではありません。

三楽章、豊かに歌い、哀愁とともに寒さも感じさせる冒頭の旋律。中間部も僅かに冷たさを感じさせる響きです。主部が戻ったホルンはビブラートを掛けています。

四楽章、うごめくような第一主題。第二主題の前はかなり激しい演奏でした。第二主題は勢いを付けて滑るような表現でした。展開部の前はチャイコフスキーのような爆発でした。再現部の強奏も各々の楽器の音がブレンドされずマイルドな響きにはなりません。ただ、エネルギーの爆発はかなりのものがあります。

トゥッティのエネルギーの爆発はかなり強い演奏でしたが、弱音の繊細さはあまり感じられず、また響きがブレンドされず硬い響きになってしまっていました。ブラームスの音楽には響きが硬すぎると感じました。
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ハンス・クナッパーツブッシュ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

クナッパーツブッシュ★★
一楽章、歪みっぽい音です。遅めのテンポで一歩一歩確かめるような足取りの演奏です。ノイズのせいもあるのか、トゥッティでは嵐のような激しさを感じます。とても感情の起伏の激しい音楽でした。

二楽章、最初に示されるクラリネットの主題は古い時代の音を感じさせます。アゴーギクを効かせてたっぷりとした感情表現です。

三楽章、

四楽章、

イシュトヴァン・ケルテス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ケルテス
一楽章、ワウ・フラッターで音程が揺れています。細く薄い第一主題。控えめな第二主題の途中でクラリネットが音量を落とします。スクラッチノイズもありますので、LPレコードが音源だと思いますが、ワウ・フラッターはかなり酷いです。最後は振幅の大きな演奏のように感じました。

二楽章、感情を込めて歌う主要主題。

三楽章、小節の頭を強く演奏する主要主題。

四楽章、昔、ラジオから聞いた音楽のような音です。

録音が悪くてどんな演奏をしているのか分かりませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブラース:交響曲第3番の名盤を試聴したレビュー

ブラームス 交響曲第4番

ブラームスの交響曲第4番は、1884年から1885年にかけて作曲され、1885年にウィーンで初演されました。この作品は、彼の最後の交響曲であり、全体にわたって深い情感と高い音楽的表現が特徴です。特に、彼の特有の構築的なスタイルと、重厚なオーケストレーションが見事に融合した作品となっています。

構成と特徴

交響曲第4番は、全4楽章からなり、各楽章が明確に異なる表情を持ちながらも、全体として強い統一感を持っています。

  1. 第1楽章 (アレグロ・非常に速く)
    力強い弦楽器の主題で始まり、その後木管楽器や金管楽器が続きます。この楽章は非常にドラマチックで、緊張感が高く、感情の起伏が激しいものとなっています。特に、ハ短調の重々しい雰囲気が感じられ、荘厳な音楽の流れが印象的です。主題の再現や展開が巧みに行われ、全体を通しての音楽的な緊張感が持続します。
  2. 第2楽章 (アダージョ)
    この楽章は、非常に美しく、抒情的な旋律が特徴的です。特に、フルートとホルンによるメロディが感動的で、聴く者の心に深い感情を呼び起こします。この楽章は、静けさと内面的な深さを持ちながら、ブラームスの音楽における繊細さと情熱が見事に表現されています。
  3. 第3楽章 (ペレアスとメリザンド – アレグロ)
    この楽章は、軽快なスケルツォの形式を持ち、明るく楽しい雰囲気があります。舞曲的なリズムが感じられ、軽やかなメロディが印象的です。ブラームス独特のリズム感やユーモアが感じられ、全体のバランスを保つ重要な役割を果たしています。
  4. 第4楽章 (アレグロ・エピローグ)
    最後の楽章は、非常に力強く、同時に内面的な深さも持ち合わせています。この楽章では、ブラームスの「パッサカリア」が用いられ、特に印象的なテーマが展開されます。この主題は、古典的な形式を取り入れながらも、彼自身の個性的な音楽語法で描かれ、力強いフィナーレへと進みます。楽章全体にわたって、ブルックナーの宗教的なテーマが感じられ、壮大なエンディングが印象的です。

音楽的意義と評価

交響曲第4番は、ブラームスの作品の中でも特に重要な位置を占めており、彼の音楽の成熟を示す作品とされています。特に、この交響曲における構成の巧妙さや、音楽的な対比の豊かさが、彼の作曲家としての特異性を際立たせています。

また、この作品はブラームスが自身の作曲スタイルを確立し、古典音楽の伝統を引き継ぎながらも、新たな表現を追求した結果生まれたものです。深い情感と強い構造を持つこの交響曲は、聴衆に深い感動を与え、今日でも多くのオーケストラによって演奏され続けています。

ブラームスの交響曲第4番は、彼の音楽における人間の感情や思索を豊かに表現した名作として、長い間、多くの人々に愛されている作品です。

4o mini

たいこ叩きのブラームス 交響曲第4番名盤試聴記

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、豊かな響きをともなって、なんとも柔らかい弦の響き、その合間を縫うように艶やかな木管。この演奏でも骨格の非常にガッチリとした堂々とした風格が漂います。美しい演奏にどっぷりと身を任せることができます。奇を衒うようなことは無く、正々堂々と正面から作品に向き合っている演奏です。ウィーンpoの深みのある響きも魅力的です。

二楽章、ゆったりとしたテンポで音楽を噛み締めるように進みます。誇張することもなく自然な歌で時の流れを忘れてしまいそうです。深みがあって美しい!

三楽章、いぶし銀のように渋い響き。ソロもこの音でなければと思わせる統一感のある美しさです。トゥッティは重量感溢れる一体感です。

四楽章、トゥッティでもがっちりした骨格に乗っている安定感!すばらしい名演でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、充実した響きの第一主題。弦に絡む木管も克明です。抑揚もあり音楽が生き生きとしています。オケの一体感はすばらしく、完璧なアンサンブルで音楽が押し寄せてきます。絶頂期のカラヤンとベルリンpoの凄さを如実に示す演奏だと思います。

二楽章、非常に美しい第二主題。厚みのある弦楽器、寸分の狂いもない見事なアンサンブル。第二主題の再現は感動的です。

三楽章、スピード感のある演奏です。音楽が生き物のように機敏に動きます。マッシヴなパワー感もすばらしく、カラヤンの残した作品の中でも貴重な記録なのではないかと思います。

四楽章、トゥッティの輝かしい響き。すばらしい演奏でした。

ブルーノ・ワルター/コロンビア交響楽団

icon★★★★★
一楽章、ヒスのイズの中からメタリックな第一主題が聞こえます。とても良く歌い流れの良い演奏です。とても滑らかな第二主題。静寂感もあり、とても良い演奏です。硬質なティンパニが少しメタリックな響きの演奏にピッタリです。木管楽器が立っていて美しいです。一音一音丁寧に心のこもった演奏です。

二楽章、控え目で奥ゆかしい木管の第一主題。力のある三連音の動機。穏やかなチェロの第二主題。第二主題の再現はとても美しい。

三楽章、間を空ける部分もあります。とても生き生きとして快活な演奏ですがとても落ち着いた足取りの確かな演奏です。オケがワルターと演奏できることに嬉々としているような様子がにじみ出るような、とても楽しげで豊かな表現です。

四楽章、力みの無い穏やかな冒頭。歌う木管。弦も自然な歌で好感が持てます。必要以上に金管を強奏させることはなく、表面を飾ることもなく、自然ににじみ出る渋さがすばらしい演奏でした。

レオポルド・ストコフスキー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、強弱を大きく変化させて歌う第一主題。チェロホルンの旋律の後からホルンをかなり強く吹かせました。ホルンを中心に金管はかなり強く演奏してダイナミックです。かなり激しい演奏で畳み掛けるように押し寄せてきます。

二楽章、この楽章でもかなり強めに吹かれたホルンの動機。落ち着いた第一主題。美しいヴァイオリンの変奏。対位法的に絡むパートも上手く表現されて美しい第二主題。再現部も非常に美しい。第二主題の再現も重厚で暖かみのある響きで音楽に引き込まれます。ストコフスキーは小手先の表面的な効果ばかり追いかけていた人かと思っていましたが、こんなに美しい内面から湧き上がる音楽を演奏していたのかと改めて見直しました。

三楽章、元気良く始まりました。第二主題で僅かにテンポを落として穏やかな音楽です。展開部からは生き生きとした生命感溢れる音楽です。テンポを落としてホルンの主題の変奏。再現部で元のテンポに戻り、再び元気な演奏です。華やかなコーダ。

四楽章、強弱の変化は絶妙です。ホルンの強奏が効果的です。

ブラームスの音楽と言うととかく渋いと思いがちですが、この演奏は華やかで色彩感豊かな演奏でした。ブラームスを違った角度から聴かせてくれた名演です。

カルロ・マリア・ジュリーニ/シュターツカペレ・ベルリン 1996年ライヴ

ジュリーニ★★★★★
一楽章、ゆったりと優しい第一主題。自然な歌の第二主題。オケは少し遠くにありますが、豊かな残響を伴って奥行き感のある美しい響きです。静寂感もあり、緊張感も伝わって来ます。ゆっくりゆっくり音楽が進みます。どっしりとして堂々たるコーダでした。

二楽章、響きを伴って豊かなホルン。ヴァイオリンの第一主題の変奏はは夢見心地のような美しさです。朗々と歌う第二主題。第二主題の再現はとても美しいです。最後は深みのあるホルンで締めくくられました。

三楽章、物凄くゆっくりで丁寧な第一主題。豊かな残響で巨大な響きになります。ジュリーニの最晩年の芸風に如実に示している演奏です。

四楽章、細かな動きも決して荒くはならずとても丁寧です。金管も木管も奥まったところから響いてくるので、金管が強奏してもバランスが崩れません。滑らかな歌が美しいです。とても遅いテンポですが、弛緩しません。

凄く遅いテンポで美しい歌と奥行き感のある美しい響きで、夢見心地のような表現や巨大な響きも併せ持つ良い演奏でした。晩年の遅いテンポで音楽の密度自体が薄まったような演奏もありましたが、この演奏は終始密度を保っていました。
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カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1978年ザルツブルグライヴ

ベーム★★★★★
一楽章、冒頭から硬派の演奏を感じさせるカチッとした表現。僅かな揺れのある第二主題ですが、非常に手堅い演奏はここでも続きます。厳格でほとんど遊びが無く切々と訴えて来ます。

二楽章、ゆっくりと薄暗いホルンの動機。続く木管も静かでインテンポで微動だにしません。第一主題はとても静かです。ヴァイオリンの第一主題の変奏から少し華やかになりますが、基本はとても芯の強い音楽です。第二主題は静かなチェロの周りをヴァイオリンが彩ってとても美しくあまりチェロは強調されていません。第二主題の再現は重厚ですが、とても穏やかです。アバド/ベルリンpoの演奏が「動」だとすると、この演奏は「静」です。

三楽章、堂々とした第一主題。テンポの揺れなどは全く無く、がっちりとしています。柔らかく美しいホルン。再現部の第一主題も巨大な響きです。

四楽章、どっしりとした中にも豊かな表現があって、金管もビリビリと鳴ります。とても重厚で、巨匠の風格の演奏です。自信に溢れていて最後も実に堂々としていました。

遅めのテンポで、テンポの揺れなどは無くどっしりと構えた演奏で、がっちりとしていました。でも大人しい演奏では無く、金管が鳴るところではビリビリと鳴るし、二楽章第二主題のチェロの周りを彩ったヴァイオリンとのバランスなども素晴らしいものでした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年ザルツブルクライヴ

カラヤン★★★★★
一楽章、弱い音からスーッと入る第一主題。ライヴでの一体感のある分厚い響きにはいつもながら関心します。重厚な響きはブラームスらしいです。第二主題は大きな表現はありませんが、全体の構成の中にきっちりと収まっている感じがします。展開部の第一主題は弱々しいとさえ感じるくらい優しい演奏です。ベルリンpoのライヴでのこの合奏力には舌を巻くしかありません。堂々とした風格の横綱相撲です。

二楽章、ホルンの後に木管と弦のピツィカートだけになった部分の静寂感はとても良いです。ヴァイオリンの第一主題の変奏もとても美しいです。第二主題は静かですが、とても心に訴えてくる表現で素晴らしいです。第一主題の再現も柔らかく心に染み入るようです。ゆったりと暖かく厚みのある第二主題の再現。最後のホルンは力強い演奏でした。

三楽章、オケが一体になってスピード感のある第一主題です。活発に歌う第二主題。展開部の第一主題はティンパニを含めた分厚い響きが印象的です。ティンパニの存在感はとても大きいです。

四楽章、ソロや旋律を演奏する楽器を伴奏するパートが常に包み込むようなバランスで、とても良く溶け合っています。充実した響きの中で演奏される音楽も作品を正面から捉えた堂々としたもので、素晴らしいです。

分厚い響きで一体感のある演奏で、とても見事でした。弱々しく優しい表現から、凄く厚みのある強靭な響きまでブラームスをしっかりと聞かせてくれました。素晴らしい演奏でした。
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ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団 1995年ライヴ

マゼール★★★★★
一楽章、ゆったりとたっぷり歌う第一主題。チェロとホルンの旋律も豊かです。さらにゆっくりとなった第二主題。響きはすっきりしていますが、テンポを落として濃厚な表現もあります。とても粘着質で濃密です。テンポの変化も多いです。

二楽章、とても静かに演奏される第一主題。ヴァイオリンの第一主題の変奏は夢見るような美しいものでした。テンポはゆっくりです。とても感情が込められて美しい第二主題。遅いテンポですが、のめりこんでドロドロになることは無く、聞くのに負担はあまり感じません。最後のホルンの主題はすごく遅いテンポです。

三楽章、ゆったりと堂々とした第一主題。タメがあったりします。再現部の第一主題は一音一音切り分けるような表現です。マゼールらしい自由奔放な演奏です。強力な金管。コーダでもテンポが遅くなりました。

四楽章、シャコンヌ主題を大きくクレッシェンドしました。ゆったりと始まりましたが、途中でテンポが速くなります。本当に自由にテンポが動きます。太く暖かいフルート。強弱の変化も大きくとても積極的な表現です。交響曲第二番の回想部分はゆっくりと一音一音刻み付けるような演奏でした。最後のトロンボーンはとてもゆっくりでした。そのままゆっくりのテンポで終わりました。

マゼールの思いのままに自由にテンポが動く演奏でした。若いころはわざとらしい表現も見受けられましたが、この演奏では自然なテンポの動きと表現で、それがもたれることが無く最後まですっきりと聞けました。
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カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

クライバー★★★★★
一楽章、ゆっくりと哀愁に満ちた表現で豊かに歌います。表現の限りを尽くしたような第一主題。滑らかに歌う第二主題。エネルギーに溢れて若々しい表現です。ガツガツと動く弦など、とても活動的です。スピード感や激しさもあります。

二楽章、音が短めで弾むようなホルンの動機。静かに内に秘めるような第一主題。ヴァイオリンの第一主題の変奏はとても美しいです。湧き上がるように美しい第二主題。分厚く流れる第二主題の再現。コーダはとても壮麗でした。

三楽章、独特の間がある第一主題。展開部のホルンもウィーンpoならではの柔らかいものです。若々しく元気な演奏です。テンポの微妙な変化などとても練られています。

四楽章、シャコンヌ主題の後に絡み合う木管がとても生き生きと動き回りました。テンポは速く快活です。陰影を感じさせるフルートのソロ。シャコンヌ主題が再現してから激しく活発に動くようになります。最後はテンポを速めて緊張感が高まって終わりました。

とてもこだわった独特の表現があり、とても練られた演奏でした。若々しく元気な演奏は作品に合っているかは分かりませんが、クライバーのこだわりは十分に伝わって来ました。
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ダニエル・バレンボイム/ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団

バレンボイム★★★★★
一楽章、深い呼吸で最初の音を長めに演奏してたっぷりと歌う第一主題。そよそよとそよく風のような雰囲気から次第に加速して激しくなって、ホルンとチェロの旋律になります。この旋律も良く歌います。音の鮮度が高く生き生きとした若々しい躍動感があります。波が押し寄せるように押したり引いたりする展開部の第一主題。コーダに入ると演奏は激しくなりますが、演奏は整然としていて、熱気はあまり感じません。

二楽章、活発な動きのある第一主題ですが、感情は抑えているような感じがします。枯渇することなく絶え間なく湧き上がる泉のような豊かな音楽です。第二主題は豊かに歌います。とても反応が良くストレートに表現するオケ。再現部の第一主題はかなり激しい演奏です。第二主題はとても厚みのある演奏です。

三楽章、はつらつと元気の良い第一主題。ガツガツと深く切れ込んでくる弦。ブラームスにしては色彩感も豊かです。

四楽章、最初強く入って次第に弱くなったシャコンヌ主題。暖かいフルートのソロ。シャコンヌ主題が再現されてからは激しい演奏です。コーダは若いオケのエネルギーがはじけるような爆発でした。

若いエネルギーが作品を掘り起こすような演奏でした。若々しくはつらつとした演奏はこの作品の本来の姿では無いかも知れませんが、演奏自体はとても魅力的なものでした。
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ベルナルト・ハイティンク/ヨーロッパ室内管弦楽団

ハイティンク★★★★★
一楽章、何の変哲も無い手堅い第一主題。表現を荒げることも無く穏やかな表現です。途中で押すような第二主題。展開部の第一主題は提示部よりも穏やかで力みの全く無い演奏です。強い爪あとを残して訴えてくる表現はハイティンクならではです。

二楽章、静寂の中に響く第一主題。木管の合間に入るホルンはとても静かな演奏でした。ヴァイオリンの変奏はとても美しいものです。すがすがしい雰囲気の第二主題。第二主題の再現はとても安らかで安堵感のあるこの上ない演奏です。ハイティンクに向かってオケがとても高い集中力を示しているところはさすがです。

三楽章、速いテンポですが、しゃかりきになることは無く、ここでも穏やかです。

四楽章、テヌートぎみのシャコンヌ主題。室内オケですが、深みのある響きは素晴らしいです。コーダの最初はテンポを落としてここでも力みのない演奏でした。

いつもながらの力みの無い演奏でしたが、ハイティンクらしい深みのある響きとオケの高い集中力が生み出す一体感のある表現は素晴らしいものでした。
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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1988年ルツェルンライヴ

バーンスタイン★★★★★
一楽章、豊かな響きで感情のこもった第一主題。冒頭から非常に感情の起伏の激しい演奏です。まるで生き物のようにダイナミックにうねる音楽です。ゆっくりとしたテンポで歌う第二主題。分厚い響きで強く感情をぶつけてくる演奏です。凄いはげしさです。堂々としたコーダでした。

二楽章、しっとりとして美しく歌う第一主題。すごくゆっくりとしたテンポで深く歌う第二主題。そよぐ風のようでとても美しい演奏です。ウィーンpoもバーンスタインに共感するような深みのある演奏で応えています。この楽章でも感情の起伏は大きいです。第二主題の再現も非常に遅いテンポで、今度は厚みのある響きで豊かに歌います。

三楽章、テンポはそんなに遅くはありませんが、とても重量感のある第一主題。伸びやかな第二主題。展開部のホルンも美しく豊かに歌います。

四楽章、ゆっくりと演奏されるシャコンヌ主題。豊かに歌う木管。オケに溶け込んで響いてくるフルート。それまで静寂感に包まれていましたが、シャコンヌ主題の再現から激しくなります。ティンパニの激しい強打。金管の強奏。

晩年のバーンスタインらしい、躊躇無く感情を吐露する演奏でした。思い切って遅いテンポを取る部分など、個性的な演奏でした。賛否は分かれる演奏だと思いますが、私はこんな感情をストレートに表現した演奏は大好きです。
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カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1989年ライヴ

ジュリーニ★★★★★
一楽章、細い線で美しい第一主題。遅いテンポで木管などの細かな動きも手に取るように分かります。第二主題もさりげない歌です。展開部の第一主題も静かでとても繊細な演奏です。バランスが高域寄りで少し腰高な感じの響きです。

二楽章、この楽章も遅いテンポです。内面へ向かうように静かなクラリネットの第一主題とは対照的に解放されたように歌うホルン。ゆっくりですが、豊かに歌う第二主題。とても静かな演奏です。この世のものとは思えないような美しさです。ゆったりと流れる第二主題の再現も凄く美しいです。これだけ美しい演奏ができるのはジュリーニだけだと思えるような優雅な美しさです。

三楽章、とてもゆっくりで勢いは感じません。自然な歌の第二主題。このテンポは弛緩するかどうかのギリギリのところのような感じがします。ホルンの主題の変奏も豊かな歌です。

四楽章、穏やかなシャコンヌ主題。変奏に入ってもとても豊かに歌います。これだけ豊かな歌はジュリーニならではすも知れません。陰影のあるフルートのソロ。シャコンヌ主題の再現の後も金管はあまり吠えません。この演奏には合っていると思います。コーダもとても遅いです。いろんな楽器の動きがとても良く分かります。

これだけ遅いテンポで豊かに歌い、非常に美しい演奏を聞かせてくれました。この演奏の遅さはギリギリの遅さと言う感じで、絶妙でもありました。こんなに美しいブラームスは初めてかも知れません。
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クルト・ザンデルリング/ベルリン交響楽団

ザンデルリング★★★★★
一楽章、ゆっくりと感情を込めて歌う第一主題。ゆっくり流れる音楽がとても心地良いです。第二主題も歌います。鮮度の高いヴァイオリンと暖かみのある中音域が特徴的な響きです。弱音は柔らかく優しいです。大きな表現はありませんが、自然体でテンポが遅いので、作品の美しさをゆっくりと味わうことができます。

二楽章、遅めのホルンの動機。静かに演奏される第一主題ですが、凄く音量を落としていると言うほどではありません。テンポが遅いので、一つ一つの楽器がとても伸びやかに歌います。とても穏やかで安らぎを感じさせる第二主題。ゆったりとした自然なたたずまいがとても良いです。非常にゆっくりと流れる大河のような第二主題の再現。自然体で堂々とした演奏の安定感は抜群です。

三楽章、この楽章もどっしりと落ち着いたテンポで演奏される第一主題。第二主題も伸びやかに歌います。展開部のホルンによる変奏もゆっくりとしたテンポで柔らかく美しく豊かな歌を聞かせます。コーダは広大なスケールでした。

四楽章、シャコンヌ主題に続く木管が豊かに歌います。暗闇に響くようなフルートのソロ。シャコンヌ主題の再現はとても柔らかい響きです。柔らかくしなやかな響きはとても美しいです。次第に盛り上がってゆっくりとしたテンポで登場するトロンボーン。

ゆっくりとしたテンポで、柔らかく美しい響きで、とても良く歌う演奏でした。ゆっくりとしたテンポで作品の美しさも伝わって来ますし、トゥッティの大きなスケール感も見事でした。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団

ヴァント★★★★★
一楽章、速いテンポであっさりと演奏される第一主題。第二主題は少し遅めで豊かに歌います。とても引き締まっていてカチッとしています。金管も力強く演奏しています。速いテンポで畳み掛けるような演奏で、強弱の振幅も大きくとても力強く生命力を感じさせる演奏です。

二楽章、少し弱めで寂しそうなホルンの動機。第一主題は消え入るような弱さです。第二主題も速めですが、とても豊かな歌で美しいです。うねるようにねばりのある第二主題の再現。

三楽章、金管がパリッとした響きでしっかりと主張する第一主題。さりげなく歌う第二主題。展開部では噴火口を覗き込むような深いコントラバスの響きでした。男性的なホルンの主題の変奏。とても引き締まって感肉質の演奏です。輝かしい程の金管の響きです。

四楽章、とても激しいシャコンヌ主題。続く木管は速いテンポで活発な動きです。その後もとても積極的な表現です。フルートのソロも速いテンポで暗闇に響くような感じはありません。シャコンヌ主題の再現もとても激しいです。今までブラームスの演奏では聞いたことが無いほどの激しさです。コーダのトロンボーンも強烈です。

速めのテンポで大きな振幅のある演奏で、生命感や躍動感を感じさせる演奏でした。キリッと引き締まって筋肉質でブルックナーのように金管が吼えました。
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ダニエル・ハーディング/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団

ハーディング★★★★★
一楽章、細く鋭い響きで揺れを感じさせる第一主題。編成が小さいこともあってか、機敏な動きです。トランペットが強く出て来ます。多層的な響きでいろんな音が聞こえてくる演奏です。ホルンとチェロの旋律の再現はマルカートになったりテヌートになったりと変化があります。

二楽章、静かに演奏される第一主題。爽やかで美しいヴァイオリン。秘めるように歌う第二主題。第二主題の再現は少し響きが薄いですが、とても良く歌っています。とても爽やかで清々しい演奏です。木管も透明感があります。

三楽章、涼しげで軽い第一主題。控えめの音量ですが、豊かに歌う第二主題。爽快な響きでとても新鮮です。ホルンの主題の変奏はとても柔らかく美しい歌でした。編成が小さいことを生かしてとても反応の良い演奏で、しかも細部まで聞き通せる演奏は貴重です。トゥッティの厚みも申し分ありません。

四楽章、だんだん弱くなるようなシャコンヌ主題。続く木管はとても豊かな表現でした。速めのテンポで進みますが、この爽やかな響きがとても心地良いです。暗闇の静寂の中に響くようなフルートのソロ。交響曲第二番の回想も歯切れの良い演奏でとても気持ちの良いものでした。コーダも見事に整ったアンサンブルでした。

速めのテンポで颯爽として若々しい演奏でした。小さい編成で、多層的な響きも見事に聞かせてくれました。爽やかな中にも豊かな歌もありとても良い演奏でした。
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チョン・ミョンフン/フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

チョン★★★★★
一楽章、最初の音を長めに演奏して、独特な波が押したり引いたりするような第一主題。テンポはゆっくりとしています。テンポの動きや細密な表現など、とても個性的です。強弱の変化もとてもダイナミックです。オケが一体になったエネルギーがこちらに押し寄せて来るような感じです。

二楽章、朗々と歌うホルンの動機。第一主題も豊かに歌います。ヴァイオリンの第一主題の変奏は爽やかで美しい演奏でした。伸び伸びと歌う第二主題。弦の刻みがガツガツととてもしっかりと刻み付ける演奏になっています。ゆっくりと絞り出すような濃厚な表現の第二主題の再現。コーダの前は自然にテンポが遅くなって訴えかけてくるような表現でした。

三楽章、力強く活発な動きのある第一主題。間を取る部分もありました。テンポは速いです。展開部の第一主題はテンポも動いてかなり積極的な表現です。ホルンの主題の変奏ではテンポも遅くなり、とても柔らかい響きでした。強弱の変化や間の取り方などかなり個性的で大胆です。金管も強いです。

四楽章、ここでも独特の強弱の変化があったシャコンヌ主題。短い音が楔を打ち込むようにグサッと突き刺さって来ます。嵐のように歌う弦。フルートのソロはテンポを落として濃厚な表現をします。シャコンヌ主題の再現は途中でテンポが伸びたり大きくクレッシェンドしたりとかなり大胆な表現です。この作品を色彩、表現ともに豊かに聞かせてくれます。コーダのトロンボーンはスタッカートぎみの演奏でした。

かなり自由に積極的な表現をした演奏でした。細密な表現から、大胆な間やテンポの動き。新たなブラームス像を打ち立てようとするような革新的な演奏で、とても良かったです。
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