カテゴリー: ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」名盤試聴記

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」の名盤は、テンシュテット/ロンドンpoの1991年ライヴ、感情を叩き付けるような起伏の激しい火を吹くような名盤です。パーヴォ・ヤルヴィ/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニーoは、ベーレンライター版の速いテンポで力強さとしなやかさを兼ね備えた名盤です。朝比奈 隆/新日本フィルハーモニーoは、楽譜に書かれていることを忠実に再現しようとした演奏で、誇張は無く自然体の名盤です。ヴァント/北ドイツ放送soは、非常に密度の濃い充実した演奏で、大きな表現はありませんが、内面からにじみ出るような音楽が次から次へと湧き上がってくる様が素晴らしい名盤です

ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」

ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」は、音楽史において極めて重要な作品であり、交響曲としては異例の「合唱」を取り入れたことで有名です。1824年に完成したこの作品は、彼の最後の交響曲であり、特に第4楽章で合唱が加わることで、スケールの大きさと力強いメッセージ性が際立っています。

構成と特徴

  1. 第1楽章 (アレグロ・マ・ノン・トロッポ)
    荘厳で重厚な雰囲気で始まるこの楽章は、壮大で緊張感に満ちたメロディが展開されます。力強いリズムと対位法的な要素が織り交ぜられ、ベートーヴェンらしいダイナミックな表現が際立ちます。この楽章はまさに「運命」を感じさせるような劇的な展開が魅力です。
  2. 第2楽章 (モルト・ヴィヴァーチェ)
    スケルツォ形式で書かれており、リズミカルで躍動感にあふれる楽章です。ティンパニの響きが効果的に使われて、力強いリズムが際立ちます。軽快なテンポと巧みなリズム変化が魅力で、まるで生き生きと踊り出すようなエネルギーが感じられます。
  3. 第3楽章 (アダージョ・モルト・エ・カンタービレ)
    静かで美しいメロディが流れる緩徐楽章で、穏やかさと内省的な雰囲気が漂います。ベートーヴェンが得意とした情感豊かな旋律が続き、深い感動を呼び起こします。全体としては落ち着きがあり、精神性の高い楽章です。
  4. 第4楽章 (プレスト)
    最も有名な楽章であり、ここで合唱が加わります。「歓喜の歌(An die Freude)」として知られるフリードリヒ・シラーの詩に基づく歌詞が歌われ、全人類の「平和」「兄弟愛」「喜び」をテーマにした壮大なメッセージが込められています。管弦楽と合唱、そしてソリストが一体となって、力強く美しいハーモニーを作り出し、聴衆に感動を与える場面が続きます。特に「歓喜の歌」の部分は、明るい希望に満ちた旋律が繰り返され、音楽史に残る名場面のひとつとなっています。

9番「合唱付き」の意義

この交響曲が特別なのは、合唱を用いて人間の声で直接メッセージを伝えた点です。これはそれまでの交響曲にはなかった斬新な試みで、当時の音楽界に衝撃を与えました。また、ベートーヴェンはこの作品を作曲した頃にはほとんど聴覚を失っていましたが、それでも壮大で緻密な音楽世界を描き出したことで、「人間の可能性」や「精神力」の象徴として称賛されています。

現代における意義

ベートーヴェンの交響曲第9番は、音楽を超えて「人類愛」や「平和の象徴」としても認識されています。現在も世界中で演奏され、特に年末や新年の節目には多くの国で愛されています。また、欧州連合(EU)の公式アンセムとして「歓喜の歌」が採用されるなど、歴史的な影響を持つ作品です。

この「合唱付き」交響曲第9番は、音楽史においても一つの頂点を成し、人々に希望と勇気を与える作品として永遠に愛され続けています。

4o

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

テンシュテット/1991★★★★★
一楽章、1985年のライブよりも激しい演奏を予感させる冒頭です。表現もこちらの演奏の方が積極的で大胆です。
金管の咆哮もあり。他の楽器の表情も豊か。ティンパニのロールのクレッシェンドも、他の楽器とともにうねるようにすごい起伏をともなって迫ってきます。こんなに大暴れの第九の一楽章は初めてです。
テンポも動きますが、演奏全体を支配しているスピード感が凄い演奏です。正直、1985年のライブはテンシュテットの普段の演奏からすると大人しいと思っていたんですよ。
この演奏は火を噴くようなテンシュテットの面目躍如の豪快な演奏です。

二楽章、弦も激しい!音楽を叩きつけてくるような猛烈な演奏です。音楽の盛り上がりに伴ってテンポを煽ってくるので、とにかく強烈な第九です。ちょっとこの曲に対するイメージを変えさせられました。
それほど激しい!とくにクレッシェンドを躊躇無くするので、惹きつけられます。

三楽章、わりと速めのテンポで進んで行きます。かなり速いです。この楽章にはあまり重点を置いていないのだろうか?金管はファンファーレのように見事です。
この楽章は指揮者の解釈によってすごく変わります。また指揮者の特徴も出やすい楽章なのかもしれません。

四楽章、うわぁ!もの凄く激しい。テンシュテットは癌から一時復帰して何かあったのだろうか。
この凄さは尋常ではありません。でもLpoも必死に喰らい付いています。とても美しい部分も聴かせてくれます。歓喜の歌のメロディをトランペットが高らかに歌い上げます。
ティンパニも1985年のライブよりもかなり硬いマレットで叩きつけます。独唱が入る前も猛烈でした。
独唱も堂々としていてすばらしい!合唱も含めて、すばらしい集中力で一体になって音楽が押し寄せてきます。
高らかに歌い上げる「歓喜の歌!」感動して涙が出そうになります。いや、CDを聴いて涙を流したのは初めてです。
これだけ心を揺さぶられる演奏は初めてです。
猛烈なクライマックスでした。聴衆の狂乱ぶりも納得の演奏です。

この曲のすばらしさも初めて分かったような気がします。

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、1991年のライブでは角が立ったような出だしでしたが、ゆったり風格さえ感じられるような演奏です。やはりテンポは動きます。
この録音も綺麗な音で録れています。ティンパニが積極的なクレッシェンドをします。
この頃になるとロンドンpoもテンシュテットと音楽が出来ることを心から喜んでいたのでしょう。
オケが献身的とさえ思える積極的な演奏をしています。木管の旋律の裏にいる金管もしっかり聞こえます。1991年のライブほど攻撃的な感じはありませんが、それでもすごくオケを鳴らしています。
ティンパニのクレッシェンドと金管の咆哮も凄い!テンシュテットの面目躍如という演奏です。
これだけ激しい演奏をしていながら、アンサンブルが乱れないロンドンpoも凄いと思います。
ホルンの咆哮が凄いです。こんなにホルンのパートに音が書かれているのかと感嘆してしまいました。やはりすごく攻撃的で強烈な演奏です。激しい本当に激しい!

二楽章、1991年のライブでは、つんのめった感じがあったティンパニが良い感じで決まります。起伏が激しいのはいつものことですが、それでもそのときそのときのコンディションでいろんな演奏が生まれてくることにクラシック音楽の良さがありますね。
この録音は押しの一手だった1991年盤よりも、穏やかな部分は音楽に浸らせてくれます。

三楽章、非常に遅いテンポではじまりました。この一年で何があったのでしょう。癌の放射線治療を受けながらの演奏活動だったので、内面ではいろんな感情が渦巻いていたことでしょう。
それが、こんなにゆったりと味わい深い音楽をさせることになったのでしょうか。ホルンのソロが独特の表現でした。この楽章でも金管の咆哮、何よりもティンパニの強打が強烈です。
それでも1991年のライブとは何かが違う。咆哮や強打があっても、また穏やかな表情を見せてくれます。

四楽章、ティンパニはこの演奏は特別です。トランペットが高らかに歓喜の歌を歌い上げます。
力強い独唱。合唱も入っての歓喜の歌の前に大きくテンポを落としてから歌に入りました。合いの手に入るトランペットも高らかです。
とにかくティンパニが音楽を積極的に引っ張ります。狂気と言う点では1991年盤の方が上かもしれませんが、激しさと穏やかさの両面を持っているのはこのCDです。
どちらも甲乙付けがたい名盤です。
私は元々テンシュテット・ファンですが、聞き込むほどにその気持ちが増してきました。

本当にすばらしい。もう少し長生きして欲しかった。

朝比奈 隆/新日本フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
1988年12月~1989年5月サントリーホールでのライブ録音

一楽章、ゆったりと、堂々とした足取りで、自信に満ち溢れている演奏。
しっかり地に足が着いた堅実な演奏で、落ち着いて聴くことができる風格さえも感じます。
ティパニは楽譜が書かれている音符の数を正確に叩いているようで、ロールをしている感じではありません。
非常に丁寧に演奏されていて好感が持てる演奏ですし、何よりも優しさが溢れている。

二楽章、ここも他の指揮者で聴く演奏より遅めです。ライブ収録なので、繊細な音は聴けませんが、分厚い響きでもないので、すっきり見通しの良い演奏です。
ティンパニは控えめで、音楽全体も控えめな印象でむやみやたらとffを爆発させるような演奏にはなっていません。とても紳士的で品を感じます。華美にならないところがとても良いです。
田舎の頑固親父が誠実に音楽をしているようで、とても嬉しくなります。

三楽章、この楽章もゆったりとした足取りで、冒頭から豊かさを感じます。とても自然な音楽の流れに身をゆだねるようで、心地よい演奏です。朝比奈の音楽に対する愛情が満ち溢れています。これだけ音楽に真摯な態度で接し続けた音楽家も数少ないでしょう。そういう意味では、朝比奈は日本のクラシック音楽界の宝でしたね。
そして、朝比奈と一緒に音楽を作り上げていく新日本フィルの演奏も世界のどこへ出しても恥ずかしくない演奏水準です。本当にすばらしい音楽を聴かせてくれて同じ日本人としても嬉しいです。
ずっと、この美しい音楽の揺り篭に揺られていたい気分になります。

四楽章、決して分厚く豪快に激しく鳴らすような演奏ではありません。ここでも、比較的遅めのテンポを取ります。肥大化してグラマラスな演奏は、もしかしたらベートーベン本来の姿では無いのかもしれません。
そう思わせるくらい一本筋が通っている演奏です。
ティンパニがポンポンと言う音で、時に演奏から浮いて聞こえることがあるのですが、打楽器は特に生で聞こえる音と、録音では違うので、生で聴いた人には、全く違和感は無かったのでしょう。
独唱は適度な距離感がありライブ感があります。
本当に堂々とした足取りで、何も誇張することなく、ベートーベンが書いたスコアを信じきって、楽譜に語らせている演奏です。
プレスティシモからも猛烈なテンポにはなりません、最後にわずかにアッチェレランドでした。

独唱、合唱も含めて、日本人だけの演奏でこれだけの録音を残せたことは、本当にすばらしいことです。また、朝比奈の音楽に対する献身的とも言えるような姿勢には、ただただ脱帽です。

パーヴォ・ヤルヴィ/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団

ヤルヴィ★★★★★
一楽章、テンポも速く、音の動きを強調するような表現で、とても明快な動きです。硬質なティンパニが思い切りよく入って来ます。リズムは短く跳ねます。柔らかく歌う部分と攻撃的に弾む部分の対比が見事です。表現は明確でとても力強い演奏です。ティンパニのクレッシェンドも強烈です。表現の振幅がとても大きく激しい部分はとことん激しいですが、柔らかい部分はとても穏やかです。クレッシェンドがとても効果的です。

二楽章、気持ちよく決まるティンパニ。ガツガツと力強く刻まれるリズム。アクセントがはっきりと付いていてビート感があります。思いっきり叩き付けるティンパニ。締った強靭な響きで、一体感のある見事な演奏です。

三楽章、速いテンポですが、深く湧き出るような音楽です。ホルンのソロに間があったり豊かな表現です。ホルンが朗々と吹きます。テンポも動いて良く歌います。

四楽章、トランペットやティンパニが激しい冒頭。レチタティーヴォは軽く演奏します。集中力が高くアンサンブルもとても良いです。歓喜の主題が大きくなるにしたがってテンポも速くなります。非常に感情のこもったバリトン独唱。フェルマーターは壮大な響きでした。ティンパニはデクレッシェンドしませんでした。行進曲はとても速いテンポです。全てのメンバーが一体になって音楽をぶつけてくるような迫力に圧倒されます。歓喜の合唱も合唱、オケ共に大きな盛り上がりです。合唱も優秀です。大胆なテンポの動きもあり、オケ、独唱、合唱が全力で音楽を作り上げている感じが素晴らしいです。Prestissimoも猛烈なテンポをさらに加速して終わりました。

魂が一体になった渾身の演奏でした。とても力強く時にしなやかで表現力豊かな演奏はとても素晴らしいものでした。
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ラファエル・クーベリック/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

クーベリック★★★★★
一楽章、うねるような冒頭から激しい第一主題。深く刻み付けるような弦。テンポも動いて感情の起伏の大きな演奏です。シルキーで美しい弦。くっきりと浮かび上がる木管。ここぞと言うところで吼えるホルン。ティンパニは音符の数を正確に叩いているようであまり激しいクレッシェンドもしませんでした。

二楽章、意外とサラッとした冒頭。ティンパニも必要以上の強打はしません。積極的な歌はありませんが、音符一つ一つにとても力があり音が立っています。中間部は歌います。

三楽章、非常に感情を込めた冒頭。作品を慈しむように大切に演奏します。波が押し寄せるようにひたひたと訴えてきます。内側に向かって凝縮するような音楽。とても密度が濃い演奏です。とても美しいホルン。シルキーな弦もとても美しい。華やかなトランペット。色彩感もとても濃厚です。コーダはゆっくりとしたテンポです。

四楽章、トランペットが明るく響く冒頭。ホルンも影で吼えています。レチタティーヴォはあまり厚い響きではありません。生き生きとした木管。歓喜の主題はチェロとコントラバスがバランス良く演奏します。トランペットが入ると華やいだ雰囲気になります。力強く壮大な合唱。フェルマーターでティンパニはデクレッシェンドしませんでした。歓喜の合唱も力強いです。合いの手に入るトランペットも華やかで美しいです。Prestissimoも力強く勢いがありますがテンポは落ち着いています。

濃厚な色彩と表現。音に力があって、生き生きとした音楽でした。力強く壮大な合唱も見事でライヴのクーベリッマクの凄さを見せ付けられた感じがしました。素晴らしい演奏でした。
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ルネ・レイボヴィツ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

レイボヴィツ★★★★★
一楽章、速いテンポでシャープな演奏です。レイボヴィツの演奏は余分なものを削ぎ落としたようなシャープさが持ち味だと思います。アクセントなどもカチッと決まりとてもスッキリとした気持ちの良い演奏です。速いテンポで澱むこともありません。サラサラと滑らかな弦が美しいです。ティンパニのクレッシェンドではホルンも長い音を吹いていますが、その音も含めて厚みのある響きでした。コーダでは弦の動きよりも木管の方が強調されています。

二楽章、詰まったような音のティンパニ。ホルンが吼えます。コブラのテンポ・ジュストのノロノロ運転の後に聞いたので胸がすくような気分です。この速いテンポで音楽が生き生きとしているように感じます。疾走するようなスピード感。強弱の変化にも敏感でとてもダイナミックです。

三楽章、速いテンポで清々しい演奏です。感情が込められた演奏ではありませんが、適度な歌や表現があります。引き締まった表情の楽器が重なり合ってとても多彩です。

四楽章、トランペットが華やかな冒頭。かなり速いテンポでガリガリと独特の表現のレチタティーヴォ。歓喜の主題ではいろんな楽器が重なり合う部分でのそれぞれの楽器の動きがとてもはっきりと聞き取れます。少しこもった感じのバリトン独唱。合唱はかなり人数が多い感じです。フェルマーターでティンパニはデクレッシェンドしました。颯爽と進む行進曲。左右いっぱいに広がる歓喜の合唱はとても壮大です。Prestissimoはすごい勢いがあって、かなりの疾走感です。

速いテンポで明晰な演奏でした。速いテンポでありながらキチッと整ったアンサンブル。適度な表現。聴き終わった後の爽快感と充実感はとても良かったです。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団

icon★★★★★
一楽章、長く尾を引く第一主題の断片。活発な動きの第一主題。次から次から音楽が湧き出すような豊かさです。テンパニのクレッシェンドは荒れ狂うような激しさはありません。速めのテンポもあって、隙間なくぎっしりと音が詰まっているような密度の濃さです。深い感情移入はありませんが、作品から濃厚なスープを引き出すような演奏です。

二楽章、力感にあふれる冒頭。力が湧き上がるようなクレッシェンド。とにかく音の密度が高い。これだけ密度の高い演奏を聴くのは初めてかもしれません。音に力があって、とても力強い演奏です。

三楽章、次々と花が開花して行くような冒頭。さりげなく美しい歌です。この楽章も速めのテンポですが、湧き上がるような豊かな音楽です。美しいホルンのソロ。

四楽章、トランペットが激しい冒頭。レチタティーヴォはあまり厚みがありません。歓喜の主題のテンポも速めです。少し遠いバスの独唱。合唱も少し遠いです。この楽章でも全く途切れることなく次々と湧き上がる音楽がすばらしいです。フェルマーターではティンパニはデクレッシェンドしました。行進曲のトライアングルの音が硬いです。テノール独唱は遠くはありません。壮大な歓喜の合唱。合いの手のトランペットがすごく力強いです。内面から放出される歓喜の表現も素晴らしいです。Prestissimoもオケの圧倒的なエネルギーで終わりました。

非常に密度の濃い充実した演奏でした。大きな表現はありませんでしたが、内面からにじみ出るような音楽が次から次へと湧き上がってくる様は素晴らしいものがありました。
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ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」2

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、凄い弱音からffまで冒頭から凄い振幅を聴かせます。オケが気持ちよく鳴っています。テンシュテットのライブ録音で美しい音がしていると感じることはほとんど無いのですが、この録音は美しいです。
マーラーの演奏では、ものすごくテンポを動かすテンシュテットですが、このベートーベンではマーラーの時ほどではないような感じがします。
木管の旋律の受け渡しが美しい、弦楽器も美しい。ホルンも美しい!そして、ティンパニの激しいクレッシェンドもあります。でもここのティンパニはスウィトナーのベルリン・シュターツカペレの方が硬質のマレットを使っているので、激しく聞こえます。
演奏が進むにつれてボルテージも上がってきたようです。かなり熱っぽい終わり方でした。

二楽章、中庸なテンポ、テンシュテットらしく熱気を感じる演奏ですが、マーラーの時に見せる狂気のような姿ではなく、十分紳士的な範囲で、ベートーベンを演奏しています。

三楽章、すごく感情がこもった演奏です。表情が豊かで振幅が大きい!テンポも大きく動きます。朝比奈の演奏のような天国的な雰囲気とは違うのですが、切々と訴えてくるような演奏です。
マタチッチのぐいぐい押してくる演奏とも違う。音の密度が非常に濃い演奏、これはテンシュテットの特徴ですね。

四楽章、アタッカで入るこの楽章は一転して激しい演奏です。いわゆる歓びの歌のメロディを繰り返しながら少しずつテンポが速くなりますが、ここもマタチッチやフルトヴェングラーほど速くはならず、適度な感じでした。独唱が入る前のffも強烈でした。
独唱は適度な位置にいます。堂々とした演奏です。壮大な頂点を築き上げます。このあたりはさすがです。スケールの大きい演奏という観点からすると最右翼の演奏ではないかと思います。
プレスティシモはかなり速いです。さらに若干のアッチェレランド。終わってみれば見事な演奏でした。

終演後のすごい拍手も納得の演奏です。テンシュテットはこの後癌を患って演奏回数が激減してしまい。もう二度と生の演奏を聴くことはできなくなりました。
まだまだ円熟と言うには早過ぎる時期にこの世を去ってしまったことは本当に悔やまれます。もっともっとすばらしい演奏を残して欲しかった。

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
ベームが脳卒中で倒れた後の録音で、身体も思うように動かない状態での演奏です。

一楽章、ゆっくりとしたテンポですが、音楽の振幅は十分にあります。美しい演奏です。
おそらく、ベームとのステージが今後多くはないことを感じ取っている、ウィーンpoのメンバーがベームをサポートしながら音楽を作り上げようとしているような、集中力を感じます。
音楽の足取りはしっかりしていて、力強いです。晩年、弛緩した演奏をかなり残してしまったベームですが、この演奏にはウィーンpoのメンバーの思い入れがひしひしと伝わってきます。
木管のソロの美しさや弦楽器の音の勢いなど、さすがです。

二楽章、この楽章もテンポは遅めです。ホールに響く残響がとても美しいです。ティンパニの音色も厳選されていますね。このテンポとこの雰囲気だと、この音色は良いです。
表情は引き締まっていて、朝比奈の自然体のすばらしさとはまた違ったすばらしさを聴くことができます。

三楽章、ヴィブラートをかけた弦が非常に美しいです。ウィーンpoの良さを存分に聞かせてくれます。朝比奈の演奏よりも、速めのテンポを取っており、ここまではベームの不自由さは全く感じさせません。
とても艶やかな弦や深い響きの木管、ホルンも含めて十分に歌っています。
不自由でも作品に込められた意志を表現しようとしています。

四楽章、表情豊かで雄弁です。歓喜の歌が連続する部分では、もう少しテンポを煽って欲しい気もしましたが、ベームの意志なのでしょう。
超一線級のソリストの独唱は圧巻です。
マーチの前のフェルマーターのティンパニは楽譜通りでした。
マーチはかなり遅いテンポで、独唱を十分聞かせます。壮大な合唱。ベームの巨大さ!感動です。
テンシュテットの狂気のような第九とはまた別の名演だと思います。
また、朝比奈の自然体とも違います。テンポ設定は近いところはありますが、ベームには朝比奈とは違う強い意志が働いています。朝比奈の自然体を貫き通す強い意志もすばらしかったし、ベームの音楽を通してメッセージを伝えようとする強い意志にも大変感銘を受けます。

ベルナルド・ハイティンク/ヨーロッパ室内管弦楽団

ハイティンク★★★★☆
一楽章、冒頭から丁寧で繊細な弦。深みのある第一主題。ハイティンクのことですから、当然大仕掛けはありませんが、重なり合う楽器が手に取るように分かるような細部まで、生き生きとして透明感の高い演奏です。ティンパニのロールの前で音飛びがありました。ティンパニのクレッシェンドはそんなに激しくはありません。このあたりもハイティンクらしいです。

二楽章、落ち着いたテンポです。響きが引き締まってとても密度が濃いです。一つ一つのフレーズにしっかりとした表情があって、とても豊かな表現の演奏です。レガートで演奏されるホルンがとても美しいです。一音一音がキリッと立っていて音に力があります。

三楽章、密度の高い美しい音が受け継がれて行きます。速めのテンポでサラサラと流れているようですが、濃厚でとても美しいです。

四楽章、軽く始まった冒頭。レガートぎみに演奏されるレチタティーヴォ。低弦による歓喜の主題の後のビオラとファゴットの美しいこと。ホールに響き渡るバリトン独唱。この独唱もとても表情豊かです。行進曲で長く響きを残すシンバル。歓喜の合唱もレガートぎみに演奏されているのか、響きが後ろに引っ張られます。音楽は澱みなく進み飽きさせることはありません。最後も落ち着いたテンポで終わりました。

美しく、生き生きとして表情豊かで密度の濃い音楽でした。ただ、ハイティンクの場合、熱狂すると言う事は無いので、最後もとても落ち着いていました。
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小澤 征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ

小澤★★★★☆
一楽章、一音一音粒が立っています。とてもバランスが良いしアンサンブルも良いです。引っかかるところは無くサラサラと流れます。ティンパニのクレッシェンドも抑えぎみであまり大きな起伏はありません。

二楽章、この楽章も引っかかるところは無くあっさりと過ぎて行きます。強く表現したりする部分もありません。それにしてもこの透明感の高い響きは素晴らしいです。このどこにも引っかかるところのない演奏で小澤は何を伝えようとしているのでしょうか。

三楽章、この無色透明な演奏が心に沁みます。とても客観的で作品そのものを純粋に聞かせてくれているような演奏です。色彩も日本画のような淡い色彩ですがとても美しいです。

四楽章、この楽章も力みの無いすがすがしい演奏です。まるでそよ風に吹かれるような爽やかさです。語りかけるようなバリトン独唱。合唱は人数が少ないですが、芯のしっかりとした声です。フェルマーターでティンパニは楽譜通りデクレッシェンドしました。行進曲の最後でテンポを速めました。歓喜の合唱も合唱がとても優秀で発音もはっきりと聞き取れます。

終始無色透明で、大きな感情移入など無い演奏でした。しかし、これだけ虚飾を排して作品の美しさを表現した演奏も珍しいのではないかと思います。
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シュミット・イッセルシュテット/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

イッセルシュテット★★★★☆
一楽章、柔らかく艶やかな弦が静かに演奏する冒頭。第一主題は思い切りよく豪快にそして華やかに鳴り響きます。湧き上がるように力強い第一主題です。美しく歌う第二主題。スピード感もあってなかなかオケも積極的です。コーダでも豪快に鳴ります。

二楽章、良い音で決まるティンパニ。楔を打ち込むように鋭く刻む弦と木管。ホルンの咆哮。弦の積極的な表現。豊かな歌です。

三楽章、自然で美しい歌です。安らかで穏やかなBの主題。サラサラと流れるような演奏も美しい。少し速めのテンポで進みます。強い個性は感じませんが、ウィーンpoの伝統に寄り添った演奏です。

四楽章、バランスの良い冒頭。分厚い響きのレチタティーヴォが情熱的です。1965年の録音とは思えない美しい音です。豊かに広がる合唱。フェルマーターでティンパニはデクレッシェンドしました。堂々と壮大な歓喜の合唱はとても充実しています。Prestissimoも落ち着いたテンポで堂々と終わりました。

ウィーンpoの伝統に根ざした演奏でとても安定感のある演奏で、堂々と落ち着いた表現で強い個性は感じませんでしたが、充実した内容はとても聞きごたえがありました。
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アルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団

トスカニーニ★★★★☆
一楽章、非常にはっきりとした第一主題の断片的な動機。第一主題は残響が少なく、最後の音がすぐに消えます。当時としては非常に速いテンポだったのではないかと思います。即物的と言われるトスカニーニですが、音楽には力があり、とても生き生きとしています。ティンパニのクレッシェンドも激しく、感情的な要素を一切排した演奏では無いと思います。テンポも変化します。コーダは速いテンポで行進曲のような感じですが最後はとても激しくなりました。

二楽章、質実剛健で凛とした演奏です。この力強さはどこから出て来るのでしょうか。音の力は凄いです。フルトヴェングラーのような即興的に動くテンポでは無く、最初から設計されたテンポの動きがあります。躍動感があって前へ進もうとします。

三楽章、歌う弦。速めのテンポで淡々と進みますがテンポの動きを伴った歌もあります。トランペットが出るところではすごくテンポが速くなりましたが、すぐに元のテンポに戻りました。

四楽章、厚みはありませんが、激しさを感じるレチタティーヴォ。このレチタティーヴォの中でもテンポは変化します。4分音符がとても短いです。速めのテンポで颯爽と進むバスの歓喜の主題。合唱は残響があまり無いので、浅く響きます。フェルマーターでティンパニはデクレッシェンドしませんでした。優しい行進曲。歓喜の合唱は力強い歌でした。これだけ古い録音でありながら生命感を感じさせる演奏には感服します。Prestissimoは落ち着いたテンポで最後僅かにアッチェレランドした程度でした。

とても力強く、生き生きとした音楽でした。即物的と言われるトスカニーニですが、いやいやそんなことは無くむしろ人間臭い演奏だと感じました。人間らしい生きる力がにじみ出るような演奏でした。
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ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」3

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」名盤試聴記

オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ

icon★★★★
一楽章、正統派同士の組み合わせで聞く「第九」繊細で美しい演奏です。流れが停滞することなく音楽が泉のようにわきあがってくるような自然さで、音楽に身をゆだねることができる、すばらしい演奏です。
ティンパニのロールはもの凄く激しい。端整な演奏の中に時折見せる激しさも音楽の流れを壊すようなことは決してありません。激しさも美しい音楽の流れの中にあります。
どっしり構えたテンポで堂々と音楽が進みます。自信にあふれた足取りです。

二楽章、いぶし銀のような渋い輝きを放つオケ、軽快なリズムのスケルツオでも華美にはならず、抑制の効いた演奏。音楽にどっぷりと浸かることができます。

三楽章、宝物を大切に大切に扱うかのように、音楽に込められた愛情が溢れてくるようです。本当にすばらしい。音楽で癒されると言うのは、こういう演奏を聴いた時ですね。

四楽章、弦の音がとても伸びやかで美しい。自然な流れで心地よい。合唱のバスがちょっと弱いような感じがしますが、ffで終わった後の残響も美しい。

まさに伝統に法った、正統派の演奏の極みだと思います。疲れた心に染み渡る。
ベートーベンって良いなあ、やっぱり。

ズービン・メータ/ニューユーク・フィルハーモニック

icon★★★★
そもそも、メータのベートーベンというもの自体があまり想像できないのですが、スタンディングオベーションが10分間も続いたと言われている、伝説のライブです。

一楽章、かなりダイナミックな演奏を予感させる冒頭部分です。アンサンブルも整っているし美しい音だし、ホールに響く残響も綺麗です。
オケの集中力も高いようです。音の密度も高いし、音が集まってきています。
テンポの動きもあるし、ティンパニのロールも激しい。かなり劇的な演奏をしようとしているように感じます。

二楽章、少しテンポに乗り遅れるパートが・・・・・・。ホルンの響きも豊かな残響を伴って美しいです。
リズム感もいいですし、表現もシャープな感じでなかなか良い演奏だと思います。

三楽章、息の長いフレーズ感で歌われています。ただ、内面から湧き上がるような深々とした音楽が感じられないところが、少し残念なところでしょうか。
ホールの豊かな響きが、夢見心地のような感覚にさせてくれます。

四楽章、コントラバスも含めた弦合奏の厚みと木管のアンサンブルの軽快さのコントラストが良いです。
弦合奏がコントラバスの存在感が大きく厚み十分です。
1983年の録音ですから、メータはまだ中堅どころの年齢だと思いますが、かなり重心の低い堂々とした演奏です。
マーチに入る前のフェルマーターにはティンパニにのみデクレッシェンドが書かれているのですが、この演奏は楽譜通りティンパニのみデクレッシェンドしました。

劇的な爆発はなかったけれど、かなり完成度の高いコンサートだったのではないかと思います。

カルロ・マリア・ジュリーニ/シュトゥットガルト放送交響楽団

ジュリーニ★★★★
一楽章、ノイズが散見される録音ですが、音は生々しく捉えられています。
ミラノ・スカラ座poとの録音は音楽が停滞しているかのような遅さを感じたのですが、この演奏は力に満ち溢れていてすばらしいです。ただ、ノイズと音飛びが・・・・・・(T T)
木管のアンサンブルも生き生きして歌も十分です。
ジュリーニの表現も劇的ですごい気迫で迫ってきます。

二楽章、硬質な音のティンパニ!強烈に決まります。客席で録音しているようなので、マイクポジションの制限もあったのだと思いますが、木管楽器が特に鮮明に録られていて、表情が生き生きしていてとても良いです。

三楽章、表情豊かな音楽です。息の長いフレーズ感と歌はさすがジュリーニです。すばらしい歌です。
ジュリーニの演奏にしては、テンポは速いです。この楽章ではもっとたっぷりとした歌が聴けるかとおもいましたが、速めのテンポでも荒々しくならない歌です。

四楽章、かなり激しい演奏で、これまでのジュリーニのイメージとは異にするような演奏です。
独唱が入るあたりから、独特の雰囲気になってきました。そして合唱が入ると宗教曲のような高い世界が再現されます。

最後は雪崩れ込むように激しく終わりました。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、消え入るような弱音から始まり、第一主題が姿を現す頃にはかなりの音量になっています。シルキーで艶やかな弦の響きが美しい。とても滑らかに磨かれています。第二主題もとても滑らかに演奏されます。ティンパニの美しいロールのクレッシェンド。クレッシェンドに続いて32分音符でA.Dとなるのだが、Aの直前の音符は2つ無しになっています。しかし、楽譜の記譜は32分音符が1小節に16個書いてあるので、ロールをしている段階で楽譜と違うのですが・・・・・。

二楽章、凄く遅いテンポです。一楽章は遅いと言っても多少程度だったのですが、この楽章は極端に遅い。あまりの遅さでティンパニのソロが間延びしたような感じがします。微妙な強弱の描き分けが徹底されています。中間部はかなりテンポを速めて一般的なテンポになりました。この楽章でもシルキーな弦がとても美しい。この美しさは音程がぴったり合っているからなのだろうか?この遅いテンポでも一糸乱れぬ見事なアンサンブル。

三楽章、俗世界からは隔絶されたような幽玄の世界へ導かれます。チェリビダッケの揺り篭に揺られてこのまま眠りに付きたくなるような穏やかな音楽です。遠くから響くような美しいホルンソロ。静寂を破るトランペットと強打するティンパニが曲の雰囲気を一変させますが、また、何も無かったかののうに穏やかな音楽が続きます。

四楽章、冒頭のアウフタクトの次の小節の頭をティンパニが強く叩きました。ティンパニが次々と強打します。ひらひらと舞う蝶のようなフルート。さらっと滑らかな歓喜の主題。マーチからのトライアングルはとても良い音です。全合唱での歓喜の主題はかなり抑えられたもので、喜びを爆発させるような演奏ではありませんでした。続く男声合唱も探りながらのような表現で、オケとのバランスからもかなり抑えられています。この抑えられた合唱が逆に音楽の深みを感じさせるような感じもあります。プレスティシモも雪崩れ込むようなことはなく、落ち着いたテンポの演奏でした。

歓喜の爆発と言うよりも、静寂感の中からジワジワと喜びを感じるような演奏でした。

クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ティーレマン★★★★
一楽章、消え入るような弱音で始まりました。あまり力瘤の無い第一主題。とても軽く優しい演奏です。いつものようにテンポはよく動きます。テンポの動きには強引なところは無く、自然で納得できるものです。ティンパニのクレッシェンドは強烈でした。次第に音楽が濃厚になってきて、ねっとりとした表現になって来ました。コーダでは止まりそうになったりして、とても自由にテンポが動きます。

二楽章、ブライトコプフ版によるゆったりとしたテンポの演奏です。この楽章でもテンポを大きく落としたりします。これでもか!とばかりに濃厚で粘るテンポと表現です。中間部へ入る前はテンポをグッと上げました。ウィンナ・ホルンの柔らかい響きがとても心地良い。大きなテンポの動きなのですが、ちょっとやり過ぎかなと思うことが無いわけではありませんが、これだけはっきりと主張してくれる方が聞いていて爽快です。

三楽章、ビブラートをかけて美しい弦。最近のピリオド奏法とは一線を画す演奏です。ホルンの独奏もアゴーギクを効かせたもので、かなり表現を工夫しています。

四楽章、あまり激しくない冒頭。レチタティーヴォもゴリゴリと奥底から湧き上がるような強さはありません。歓喜の主題に入る前に大きく間を空けました。とても静かに演奏される歓喜の主題。トランペットが入って一気に華やぎます。少し奥まったところから響くバリトン独唱。響きに幅を持たせる合唱。トランペットが空気を突き破って響いて来ます。とても表情豊かな行進曲のピッコロ。行進曲の最後をアッチェレランドしました。壮大に歓喜の合唱。やはりトランペットが突き抜けます。Prestissimoの最後を僅かにテンポを速めました。

とても表現の幅の広い演奏で、テンポも自在に動かして表現しました。ただ、表面的な部分にのみ意識が集中してしまい、音楽の深みがあまり感じられなかったのが、残念でした。
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ヘルベルト・ブロムシュテット/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

ブロムシュテット★★★★
一楽章、振り子が振れるように振幅する音楽。ブロムシュテットらしく強い主張は無く自然体に徹した演奏です。この演奏でもティンパニのクレッシェンドは非常に激しいです。自然体の演奏ではありますが、ただ演奏しているだけではなく非常に高い集中力でアクセントなどのアーティキュレーションに対しても非常に敏感に反応する演奏です。

二楽章、現在では遅めのテンポになる感じのテンポで始まりました。ちょっと詰まった感じであまり釜が鳴っていないようなティンパニ。いろんな楽器が有機的に結びついているような生き生きとした演奏です。

三楽章、この楽章は速めのテンポで始まりました。深いところから湧き出してくるような歌です。揺れるような呼吸がある音楽です。

四楽章、あまり激しくない冒頭。レチタティーヴォもあっさりと軽く演奏されます。バリトン独唱の後の合唱はとても抑えた音量でした。フェルマーターでティンパニはデクレッシェンドしませんでした。行進曲は速めです。合唱は絶対的な声量が不足しているような感じがします。祝典的な雰囲気がとても良く出ています。Prestissimoも暴走することなく適度に速いテンポで終わりました。

自然体ですが、有機的に結びついた音楽でした。振り子が振れるように振幅して、呼吸感もありました。ただ、合唱の人数が少ないのか、音量が少し不足ぎみに感じました。
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ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」4

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」名盤試聴記

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー管弦楽団

朝比奈/大フィル★★★☆
一楽章、朝比奈のベートーヴェンに共通する、どっしりと構えた安定感のあるテンポで音楽が進みます。
新日本poとのライブに比べると残響成分が少ないので、各パートの動きが克明で、微妙な表情も伝わってきます。
朝比奈も晩年の演奏ではありますが、音楽が弛緩しないところがすばらしい。
音楽自体は淡々と進んで行きます。自然体はここでも貫かれていて、仕掛けなどは一切ありません。

二楽章、ゆっくりめのテンポですが、違和感はありません。ティンパニの強打もありません。もう少しメリハリがあっても、と思うほどです。
とても優しい音楽の運びです。

三楽章、新日本poとの録音では、残響成分が多かったせいか、それとも大阪poの持ち味なのか、新日本poとの録音に比べると、ちょっと泥臭いような印象です。
これが「英雄」ではプラスに働いて、自然体ながらも力強い演奏になっていたのですが、この楽章では、天国的な心を洗い流してくれるような美しさではありません。

四楽章、とても端正な演奏です。ただ「英雄」のような豪快さはなく、新日本poとの「合唱付き」のような天国的な自然体でもなく、ちょっと中途半端な感じがします。
会場と録音の問題なのかもしれませんが、オケと合唱の一体感にも乏しいです。合唱の人数も少ないのか、響きが薄いです。

新日本poとの録音よりも、せっかちな感じがして、わずかですが落ち着きが無いような感じがします。
新日本poとの演奏がすばらしかっただけに期待したのですが、オケやホールとの相性やその日のコンディションなど様々な要因が絡んでの結果ですから、多少の出来不出来は仕方がありませんね。

オイゲン・ヨッフム/ロンドン交響楽団

icon★★★☆
一楽章、音が凝縮されていて緊張感の高い演奏です。テンポは中庸。指揮に対する反応がとても良いです。
この反応の良さが、古いドイツのイメージよりもかなり近代的な感じを連想させます。ティパニのロールも激しくクレッシェンドをしますが、それでも演奏全体の印象としては、非常に整った安定感のある印象です。

二楽章、私には、あまり強い主張が感じられないけれど、楽譜に忠実に演奏するスタイルなのであろう。

三楽章、非常に美しい冒頭の弦のアンサンブルでした。しかし、楽章全体は淡々と進んだ感じがします。
堂々と正面突破の演奏で、美しいしオケも積極的ですし、この曲のスタンダードとして十分存在価値があるのではないかと思います。

四楽章、丁寧な開始でした。ロンドンsoからかなり良い響きを引き出しています。ただ、同じように正面突破だったスゥイトナーと比べるとシターツカペレ・ベルリンの古風で透明感のある響きが演奏の価値をすごく高める役割を果たしたと思うのですが、ロンドンsoはその点では極めて現代的で高性能なオーケストラなので、ヨッフムの良さを伝えきれないところがあります。
オケと合唱のズレが若干ありました。二楽章にも少しアンサンブルの乱れはありました。
マーチのファゴットの音が異常に短い。ブルックナー指揮者としても高名なヨッフムですが、この演奏には、スケールの大きさはあまり感じられません。

波のように押しては返しのような音楽表現が随所に見られます。独特の表現で一体になって揺れることができて心地よい音楽作りです。
最後の追い込みも極端にはしませんでしたが、良かったです。

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団1972

icon★★★☆
一楽章、シルキーで滑らかな演奏で、美しいのですが、音楽の勢いのようなものは乏しい感じで、BGM的に流れてしまいそうな冒頭部分です。
同時期のスタジオ録音でも「英雄」はもう少し前へ行く力強さがあったのですが、この演奏は音楽がその場にとどまっています。
それでも、ベームとウィーンpoの組み合わせですから、模範演奏のような安定感は抜群です。奇抜なことが起こることは有り得ません。あくまでも王道を行く演奏なので、初めてCDを買うのには良いかもしれません。

二楽章、軽いティンパニでした。ここでもあまり音楽が前に進もうとはしません。とても美しい音が流れて行くのですが、主張や個性のようなものが感じられないのが、少し残念です。

三楽章、美しいです。ただ、音楽は淡々と進むだけで、感情の表出や天国的な安らぎなどは感じられません。あまりにも素っ気無い演奏で、ちょっとがっかりしました。
もっと味わい深い演奏を期待したのですが・・・・・・。

四楽章、王道と言えば、まさにそのような演奏なのですが、何も起こらないので・・・・・・。
少しテンポを落とした壮大な合唱です。
最後の追い込みもなかなか良かったですが、十分リハーサルしたアッチェレランドで、即興性がないので、聞く側を引き込むような演奏にはなりません。

全体の構成はとても良いと思うのですが、全員の全力投球のような凄みが感じられたら名演奏になったと思います。
スタジオ録音と言うことで、慎重になりすぎた結果なのかと思います。

カルロ・マリア・ジュリーニ/RAI国立交響楽団

ジュリーニ★★★☆
一楽章、アクセントを付けて音と音の間を詰めて演奏する冒頭。とても柔らかい第一主題。美しく歌う木管。柔らかいマレットでクレッシェンドするティンパニはあまり激しさは感じさせません。offな録音なのかレンジが狭いのかヴァイオリンの艶やかさなどはほとんどありません。テンポはあまり動かず深い感情移入はありません。

二楽章、かなりゆっくりとしたテンポです。とても良く歌います。この楽章でも柔らかいティンパニ。録音によるものかも知れませんが、オケの響きにまとまりがあります。ただ、分厚い響きはありません。とてもシンプルな響きです。

三楽章、感情を込めた冒頭部分ですが、続く部分は速めのテンポであっさりと進みます。繊細な表現の弦。かなり強く吹いているようですが、奥まって響くトランペット。柔らかい表現です。

四楽章、柔らかく全く激しさの無い冒頭。レチタティーヴォも穏やかで柔らかいです。歓喜の主題は良く歌って美しいです。バリトン独唱も柔らかい。合唱も柔らかく拡がります。フェルマーターのティンパニはデクレッシェンドなしでした。広々と雄大な歓喜の合唱。ジュリーニらしいゆったりとしたテンポでしっかりとした足取りで進みます。テンポも少し動いています。Prestissimoは今では珍しいくらいゆっくりとした演奏ですがさいごはアッチェレランドして終わりました。

ジュリーニらしい、ゆったりとしたテンポを基調にした演奏で、程よく歌もあったのですが、録音の問題か、音がとても柔らかく激しい表現が全く感じられませんでした。
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ジョージ・セル/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

セル★★★☆
一楽章、集中力の高い冒頭。第一主題は力強く前へ進みます。整然と整ったアンサンブルです。ティパニは大きくクレッシェンドしているようですが、歪んでいるのであまりよく分かりません。テンポは全く動きません。カチッとした枠にしっかりと収まった感じの演奏で、突飛なことは絶対に起こらない安心感があります。

二楽章、サラッとした冒頭。淡々と進む弦。非常に締まった木管のアンサンブル。ティンパニは強烈で激しく歪ます。引き締まってスピード感もあって豊かに歌います。最後のティンパニの一撃も強烈でした。

三楽章、速めのテンポで以外に元気な?演奏です。内面からこみあげるような表現ではなく、外へ向かって発散するような表現です。深く感情を込めることはなく、淡々と進んで行きます。ホルンのソロはたっぷりと歌いました。この楽章ではテンポも動いて情動的です。最後はとてもゆっくりとしたテンポになってたっぷりと歌います。

四楽章、ティンパニやトランペットが激しい冒頭。レチタティーヴォはあまり厚みがありません。この楽章もテンポの動きがあります。すごく抑えた歓喜の主題。合唱がはいるとかなり歪ます。長く伸ばしたフェルマーター。ティンパニはデクレッシェンドしませんでした。速めのテンポで力強い歓喜の合唱。Prestissimoは猛烈なテンポで終わりました。

セルにしてはかなりテンポの振幅の大きな演奏で、情動的な面を見せてくれたと思います。なかなか演奏が良かっただけに録音の悪さが悔やまれます。
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ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」5

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」名盤試聴記

ロヴロ・フォン・マタチッチ/NHK交響楽団

icon★★★
一楽章、想像していたよりも速いテンポで、振幅の激しい演奏のようです。骨格のしっかりした、男性的なベートーベンです。
朝比奈やスウィトナーのような繊細で端整な演奏とは明らかに違います。クレッシェンドとともにわずかにアッチェレランドもあるような凄みがあります。微妙なテンポの動きと音楽の振幅が一致していて、ぐいぐい引き込まれます。

二楽章、この楽章も躊躇無く速めのテンポで突き進んで行く感じです。この時代のホルンはN響でも現在のレベルからすると明らかに劣ります。マタチッチの音楽の勢いにN響が少し押されているのか、もの凄い緊張感を保ちきれなくなるような部分も僅かにありますが、当時のN響きの演奏水準からすれば、大健闘ものです。終わりで僅かなritがありました。

三楽章、野太いと言っても良いかもしれません。この楽章でも豪快に音楽を進めて行きます。ちょっと素っ気無い感じもします。音の輪郭がハッキリしていて、この楽章をゆったりと音楽浸ることを許してはくれません。むしろ四楽章へ向けてせき立てているかのようでもあります。朝比奈の穏やかな演奏とは対極あるような演奏になっています。

四楽章、激しい演奏です。弦は美しいです。金管とティンパニのアンサンブルが少し崩れているように感じる部分もあります。
テンポはよく動きます。これ以上速くなったら滑稽に聞こえそうな一歩手前のような部分さえあります。
独唱はかなり近い位置にいます。独唱も朝比奈の1988年のソリストから比べると70年代前半は発音なども含めて厳しいところがあります。
合唱も朝比奈の晋友会合唱団に比べると国立音大では厳しいです。あまり伸びのない合唱には遠慮なくトランペットが突撃してきます。これはかえって気持ちが良いです。

録音も歪みぎみなところも・・・・・・。
プレスティシモは途中でアッチレランドしましたが、そのまま突っ走りつづけませんでした。アンサンブルが崩れても突き進んで欲しかったです。

ブルーノ・ワルター/コロンビア交響楽団

icon★★★
一楽章、速い出だし、ゴリゴリしたタイプではありません。振幅が大きいこともありません。
録音年代の録音技術の問題もあるのでしょうが、響きの厚さはあまりありません。
音の輪郭がクッキリしている演奏ではない分、暖かみを感じる演奏です。穏やかな雰囲気を持っています。
ティンパニのロールは極端なクレッシェンドをすることなく、節度ある演奏です。

二楽章、模範演奏を聴いているような安定感。突出することがないので安心です。
ただ、このまま最後まで行ってしまうと、不満が残りそうです。
でも、余分な力が抜けた良い演奏であることは間違いないです。フルトヴェングラーの破天荒な演奏とは違った癒される音楽です。

三楽章、ゆったりとした足取りで進みます。とても安心感があるのは、ワルターの特徴なのでしょうか。
癒しの演奏としては朝比奈/新日フィルの天国的な美しさには及びません。

四楽章、ここまでの演奏に比べると激しい、ホルンの咆哮も気持ちが良い!ただ、ここまでの演奏に比べると、と言うことであって、テンシュテットの1991年ライブの激しさから見れば、紳士的な演奏です。
ワルターの演奏は、安定感があり、王道を行くような演奏で、録音された当時にすれば、名演奏だったのだと思うのですが、これだけ多くの演奏を聴く事ができる今となっては、少し影が薄くなっていることは否めないと思います。
奇をてらうようなことは一切ない、作品に正対した真摯な演奏は十分評価すべきでしょう。
ゴツンと来るところはなく流麗な音楽です。
合唱は美しいです。録音は若干歪みっぽいところもあります。

ゆったりとしたテンポで演奏される部分は伸びやかで、晴れ晴れとした気分にさせてくれます。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、1970年代の録音です。カラヤンは1980年代になると、マイヤー問題や自身の衰えなどあまり良い演奏を残していないように思います。
はつらつとした演奏で、生命感に溢れた演奏です。
厚化粧のカラヤン臭さのようなものはあまり感じませんが、むしろあっさりしていて、ベートーヴェンの内面に切り込むようなところがありません。
カラヤンはベートーヴェンの作品にはあまり共感していなかったのでしょうか。

二楽章、とてもコンパクトに作られています。制御が利いていると言えば、そうなんですが、ミニチュアを見ているような、不思議な音楽です。
あまりのスケールの小ささに驚きました。もっと雄弁な指揮者だと思っていたのですが・・・・・。

三楽章、淡々と思い入れもないように音楽が流れて行きます。あまりにも音楽が淡白すぎて何も感情に訴えてくるものがありません。

四楽章、スタジオ録音だからでしょうか。お行儀が良い演奏で、聴いていてワクワクするような期待感が全くありません。綺麗な音が通り過ぎて行くだけです。
合唱の人数も少ないのだろうか?

とにかく、小さくまとまった演奏です。ただ、楽譜を音にしただけという印象でした。

ジョルジュ・プレートル/ウィーン交響楽団

icon★★★
一楽章、速めのテンポで、ちょっとせっかちな印象さえ受けます。普通ならritするようなところもほとんどテンポを変えずに先へ行ってしまいます。
ティンパニは激しいクレッシェンドをしましたが、音楽の運びはあっさりしています。

二楽章、ティンパニのソロがデクレッシェンドする。

三楽章、冒頭の木管が重なって行くところは非常に美しかった。とても静かで繊細な音楽です。息の長いフレーズが特徴です。
音楽が繊細で、内側にギューっと凝縮されていくようで、、今まで聞いてきた三楽章のイメージとはかなり違います。すごく禁欲的な演奏で、天国的な癒しはりません。

四楽章、この楽章もかなり抑制されています。長いフレーズ感が音楽の流れを作ってとても良いです。
静かで流れの良い演奏は、これまでの「合唱」の演奏としては異色の存在です。
テンポはよく動きますがプレートル終始冷静な感じがします。

私にはこの演奏の良さがあまり分からなかったなあ。

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、独特の間があります。ライブならではの呼吸感でしょうか。
最晩年の演奏では、作曲家よりもバーンスタインの個性の方が前面に出た、ある意味ではアクの強い演奏をしましたが、この時代の演奏は、まだまだ大人しいです。
何事無く進んでいたかと思うと、ティンパニのロールの部分からトランペットの吹き伸ばしが強く入って、ティンパニのクレッシェンドも激しいものでした。
その後はまた何も無かったかのように、平静を保っています。

二楽章、ここまで、あまりバーンスタインの個性を感じるような演奏とは思えません。ウィーンpoの常識的な演奏の範囲に思えます。
ウィーンpoが最低限保証してくれる演奏をしているだけで、バーンスタインはただ棒を振っているだけなのではないかと思うほど、個性や主張を感じない演奏です。
ウィーンpoの場合、ベートーベンなどのウィーンpoとゆかりの深い作曲家の作品の場合は、誰が振っても、ある程度はウィーンpoの音楽になってしまう部分はあるとは思いますが、この演奏はまさにそんな感じです。

三楽章、この楽章は一転して、ものすごくテンポを落としての演奏です。
表現を意図的に平板にしているような感じがします。晩年はこれに歌いまわしまで濃厚になってコテコテになって行きましたが、この演奏は良いところで踏みとどまっていると思います。
表現を平板にすることによって、かえって音楽の持つ優しさを上手く引き出しています。
押し付けがましいところがなくて良いです。そして、いつのまにか中庸のテンポになっていました。
トランペットのファンファーレはほとんど聞こえませんでした。それと独特の節回しもありました。どういう意味や効果があるのかは分かりません。

四楽章、弦楽器の胴が豊かに鳴っています。トランペットの扱いがとても変わっていて、すごく抑えて演奏したり、四分音符を短く演奏したり。バーンスタインの意図するところが理解できません。スコアの深いところを読み解いているのかもしれませんが、私のような素人にはさっぱり分かりません。
独唱は残響を伴って美しい歌唱です。合唱は非常に人数が少ないような印象を受けました。
これから聴き進めばそれなりの音量を出すのか?
マーチの前のフェルマーターは長かった。ティンパニがデクレッシェンドするのに対して合唱をクレッシェンドさせました。これは良い効果です。
明らかに男声合唱の人数が不足していると思います。この男声合唱の声に合わせて、オケの音量も抑えているような、何か解放感に乏しい演奏のように感じます。
女声合唱は歪みっぽい録音になっています。

レコード・アカデミー賞からの分売と書いてあったけど・・・・・・・。この演奏と録音が?

デヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

icon★★★
一楽章、速いテンポで音を短めに演奏します。スタッカートを強調するような演奏で、音楽が弾みます。
従来のイメージかせする重厚な演奏とは程遠い軽快な演奏です。リズムの最初を強く、後へ行くに従って力を抜いていく奏法も特徴的です。
ジンマンの指揮に敏感に反応するオケも素晴らしいです。表情がとても豊かな演奏です。

二楽章、この楽章はそんなに速いとは思いません。小編成の整ったアンサンブルが印象的です。
バロックティンパニが独特の存在感を示します。緩部のテンポはやはり速いです。木管の細かいパッセージが完璧で気持ちが良いです。

三楽章、速い演奏に慣らされてしまったのか、普通に聴ける演奏です。
ただ、リズムの処理は相変わらず独特です。アクセントを付けて短めに演奏される音が多いです。
美しい演奏ですが、天国的とは違う感覚です。とても現実的な音楽のように感じます。
せせこましくいろんな楽器が動き回る感じの演奏で、せわしない音楽です。

四楽章、軽い冒頭でした。独唱は編成に合わせてムリをせずに適度な音量で聴きやすいです。
合唱もすごく人数が少ないようです。
マーチはすごく速いです。しかもシンバルの音が変です。
合唱が入る、歓喜の歌も速い!また、盛り上がりもありません。単なる通過点のようでした。

プレスティッシモからのシンバルは普通でした。熱狂することもなく冷静に終わりました。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1979年普門館ライヴ

カラヤン★★★
一楽章、繊細に静かに始まりました。トゥッティではかなり歪ます。音楽は力強く流れて行きます。テンポも追い込むように動きます。ティンパニのロールがかなり激しく聞こえます。スタジオ録音のように小さくまとまった演奏では無く、前へ前へと進もうとする強い推進力を感じさせる演奏です。

二楽章、この楽章も前へ進む力の強い演奏です。木管がくっきりと浮かび上がります。トリオでは前進する力が無くなり少し穏やかになります。

三楽章、速めに進みますが、感情のこもった第一主題。繊細な弱音が美しいように感じます。歌いますがさらっとしている第二主題。自然な歌が心に沁みます。ホルンのソロもテヌートぎみで美しかったです。カラヤンが速めのテンポでぐいぐいと引っ張ります。トゥッティではやはり歪みますので、聞き辛いところはあります。終結に向けて次第にテンポを落として黄昏て行く感じはなかなか良かったです。

四楽章、冒頭の荒々しい表現。自然に流れて行くようですが、細かな表現が細部にわたって付けられていて、さすがにカラヤンとの絶頂期を迎えたベルリンpoの演奏は凄いと感じさせます。この楽章も速めのテンポで進みます。独唱も伸びやかです。歓喜の合唱も速いテンポで一気に歌い上げられますが合唱が入ると歪がひどくて何をしているのか分からなくなります。Allegro ma non tantoはこの曲の中ではゆっくりとしたテンポの演奏でした。Prestissimoは歪を伴うので、猛烈な印象になります。

細部に渡って細かく表情が付けられたカラヤンらしい演奏でした。ただ、録音の歪がひどく合唱の部分ではほとんど何をしているのか分からないほどだったのがとても残念です。録音状態が良ければかなりの名演だったのではないかと思います。
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チョン・ミョンフン/ソウル・フィルハーモニー管弦楽団

チョン★★★
一楽章、休符で力をためて、とてもリズムが弾む冒頭です。第一主題はテヌートぎみに演奏します。ホールに響く残響がとても長いです。楽器の動きが克明で音楽が生き生きとしています。木管の色彩感豊かな響きが演奏に彩りを与えています。ティンパニのクレッシェンドは激しいですが、テンポは僅かに速くなってあまりしつこい表現はしません。浅い響きのホルン。コーダの前はとてもゆっくりとしたテンポになりそのままコーダへ入りました。何か深刻なものを表現するようなコーダでした。

二楽章、鮮明に提示される音楽。木管がとてもクローズアップされた録音です。きりっと引き締まった表現。歌に溢れて生き生きとした木管。

三楽章、ゆっくりと染み入るような音楽です。いろんな楽器の動きがとても良く分かる演奏です。ただ、この残響は後から人工的に付加したもののように感じます。

四楽章、あまり激しくは無い冒頭。とても表情のあるレチタティーヴォ。分厚い低弦の響きで演奏される歓喜の主題。次第にテンポを煽ります。いかにもマイクの前で歌うようなバリトン独唱。フェルマーターでティンパニはデクレッシェンドしませんでした。色んな楽器が重なって華やかな行進曲。合唱はかなり奥まっていて、音量が不足しているように感じます。テンポが急激に変化したりします。最後は猛烈なテンポにもならず、落ち着いたテンポで終わりました。

くっきりと克明な表情で描かれた演奏でした。テンポの動きも独特のものがあり個性的でしたが、劇的な盛り上がりや感情の起伏はあまり無くどちらかと言うと淡々とした演奏だったように感じました。
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朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

icon★★★
一楽章、消え入るような弱音で開始します。まとまりの良い響きの第一主題。あまり残響を伴っていなくて、小じんまりとした響きでちょっと寂しい感じがします。大きな表現は無く、繊細で穏やかな表現です。ティンパニのクレッシェンドはあまりしません。また、楽譜には音符の数が書かれているのですが、その通りに演奏しています。強弱の変化はあまり大きくなく、小さくまとまった感じがあります。たっぷりこってりとしたコーダです。

二楽章、力強さは感じない冒頭。トゥッティでホルンがほとんど聞こえません。大勢で演奏している感じがあまりしません。もっといろんな音が聞こえて良いように感じるのですが、とてもシンプルで旋律以外の響きがあまりしないので演奏が小さく感じます。ゆったりとしたテンポで淡々と優しい音楽が進みます。

三楽章、日本人らしい繊細で丁寧な表現です。僅かに波立つ水面のような穏やかさです。作品への愛情を感じることができます。室内楽を聞いているようなシンプルな響きです。ダイナミックの変化はあまりありません。

四楽章、あまり騒ぎ立てることの無い冒頭。響きの薄いレチタティーヴォ。残響が少ないので、4分音符が短く感じます。速めのテンポの歓喜の主題。かなり遠い独唱。トゥッティのエネルギー感は明らかに不足しています。フェルマーターではすぐにティンパニはデクレッシェンドしました。合唱のエネルギー感も無く歓喜の盛り上がりや熱気はあまりありません。Prestissimoも落ち着いたテンポで最後に僅かにアッチェレランドしたようにも感じました。

落ち着いたテンポで楽譜に忠実な演奏でした。三楽章では作品への愛情がにじみ出るような演奏でした。ただ、録音が遠く細部を聞き取ることや熱気を帯びたトゥッティを聞くことができませんでした。
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マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ヤンソンス★★★
一楽章、よく弾む第一主題の断片的な動機。とても良くリズムが弾む演奏です。コンセルトヘボウらしい艶やかさと色彩感。ティンパニのクレッシェンドはかなり余力を残したものでした。テンポの動きもほとんど無く、コーダでもあまりテンポを落としません。あまり感情的に没入するような演奏では無いようです。

二楽章、弦楽器のユニゾンの一回目と二回目の間に間を空けました。ティンパニは硬く締まった良い音です。特に目立った表現も無く、自然な感じで過ぎて行きます。

三楽章、暖かいファゴットの響き。静寂感をたたえる弦。残響を伴って美しいホルン。大きな表現や誇張は全く無く淡々と進んで行きます。全くひっかかるところが無くサラサラと流れて行きます。

四楽章、コントラバスの存在を感じさせるレチタティーヴォ。ティンパニはこの楽章でも締まった良い音です。沸き立つような木管。極端な弱音にはならない歓喜の主題。テンポの動きはありませんが、滑らかで流れの良い演奏です。行進曲のトランペットがステージから少しはなれた階段から演奏しました。極端な弱音が無く、あまり大きな強弱の波は感じません。とても滑らかでサラサラと音楽が流れて行きます。いろんな音が重なり合うのがとても良く分かります。最後も熱狂するような雰囲気は無く落ち着いて終りました。

あまり激しさや大きな変化の無い演奏でしたが、流れの良いバランスも良い演奏で精緻で細部まで聞こえる演奏だったと思いますが、感動はありませんでした。
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クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、第一主題へ向けて次第に加速します。凄い音量で迫ってくる第一主題。ダイナミックの変化もテンポの動きが多く、表情も豊かに歌います。かなり速いテンポで歯切れの良いリズムです。緊張感もスピード感もそこそこあります。ティンパニのクレッシェンドは最大限のクレッシェンドではありませんが、激しさはありました。コーダの中でもテンポが動きました。

二楽章、力を貯めて強いアクセントがある冒頭ではありませんでした。木管に独特の表現があります。木管の音が立っています。

三楽章、大切なものをそっと扱うような丁寧で繊細な冒頭です。サラサラと流れる音楽。流れの速い川を下っていくような速い流れ。ちょっと上滑りしているようにも感じます。

四楽章、この楽章も速いテンポです。一楽章であったダイナミックさは影をひそめて小さくまとまっています。鋭いトランペットの歓喜の主題。行進曲もとても速いです。独唱もかなりあわてている感じの歌唱です。力強い歓喜の合唱。トランペットも突き抜けて来ます。Prestissimoは物凄い勢いで盛大に盛り上がります。この最後にぶつけてくるエネルギーはさすがに凄いものがありました。

この速いテンポの演奏をアバド自身が完全に自分のものにして演奏したのか少し疑問に感じました。それは私自身が往年のベルリンpoの重厚に演奏が頭にあるからかも知れません。しかし、どこか上滑りしていて、チグハグな印象を受けてしまいました。
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ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」6

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」名盤試聴記

サー・ゲオルク・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★☆
ショルティとシカゴsoとの演奏となると、ジャケットと同じようなキンキラキンな演奏を想像してしまうのですが、はたしてどうでしょう。

一楽章、やはり鋭いトランペットがショルティらしいです。ショルティの録音に共通する高音域を少し強調する録り方なので、ベートーベンのイメージからすると腰高なイメージに感じます。
また、音楽に陶酔するような、情緒的なことは一切ない指揮者なので、切れ味鋭くスッキリ、バッサリです。

二楽章、締まった音のティンパニもいつも通り。と言うかショルティのCDではティンパニはこの音しかないです。ベートーベンであろうが、マーラーであろうが、ストラヴィンスキーであろうが、全く同じ音です。
カラヤンの演奏にも味わいがなかったですが、この演奏も全く味わいはありません。
ただ、オケの完璧さと言う点ではカラヤンと共通するところがあります。

三楽章、ゆったりとしたテンポで良い感じのはじまりです。響きの透明度はカラヤンの演奏よりこちらの方が良いです。
ただ、美しい音が並んでいるだけで、音楽の深みや慈愛に満ちた音楽とは程遠い演奏です。

四楽章、音響の構築物としては完璧なのですが、音楽としての深みを感じられないのがとても残念です。

完璧な演奏の爽快感はあります。

グスタフ・クーン/ボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団

クーン★★☆
一楽章、淡い色彩で密度も薄い響き。ポンポンと響くティンパニ。高域があまり含まれていない録音なので、淡く聞こえるようです。音の鮮度があまり高くないように感じてしまいます。あまりこの演奏の特徴が伝わってきません。演奏に表情やニュアンスが感じられません。

二楽章、一つのフレーズの中での強弱の変化などがあまり無く、締まった表現が感じられないのです。ティンパニの音色も曲に合っていなように感じます。他の曲でも感じたのと同じで、緩い感じがどうしてもしてしまいます。

三楽章、静かな演奏です。ソフトタッチで柔らかいです。表現が締っていないので、このようなゆったりとした楽章では穏やかな雰囲気になってとても良いです。さらさらと滑らかに流れて行きます。

四楽章、あまり激しさが無く響きも薄い冒頭。また、レチタティーヴォも軽い感じでした。とても柔らかく優しい歓喜の主題。独唱も柔らかい声です。合唱はあまり響きを伴わず、浅い響きです。歓喜の合唱は合唱にあまり残響を伴わないので力強いですが、その分生の声がブレンドされないので、バラバラに聞こえます。最後は少しアッチェレランドして終わりました。

四楽章の合唱は力強かったですが、そのほかは終始柔らかい表現で、あまり強い主張は感じられない演奏でした。
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シャルル・ミュンシュ/ボストン交響楽団

ミュンシュ★★☆
一楽章、結構激しい第一主題。速めのテンポで推進力が強い演奏です。ティンパニのクレッシェンドの前でテンポが速くなりました。追い立てるようなテンポで先へ先へと進みます。もの凄い勢いと激しさです。ミュンシュの感情に任せたテンポの動きはパリoの発足ライヴの幻想で思い知らされましたが、この演奏でもそのままです。

二楽章、この楽章も前のめりで勢いのある演奏です。詰まったようなティンパニの響き。躍動感もあり歌もあります。勢いは凄いのですが、アンサンブルの乱れがあったり、若干雑な印象もあります。

三楽章、一転して浮遊感のある幻想的な表現です。精緻な演奏ではなく、だいたい合っていれば良しと言うような感覚の演奏です。アクセントも強く少し荒い感じもあります。

四楽章、トランペットが強烈な冒頭。レチタティーヴォもそこだけクローズアップされたように大きく鳴り響きます。歓喜の主題もあまり音量を落とさずに普通に演奏します。トランペットが加わるあたりでは、歓喜が溢れ出すような感情に満ちた表現です。細身のバリトン独唱。歯切れの良い合唱。予想外に大人しい行進曲。トライアングルがあまり良い音ではありません。歓喜の合唱は盛大で音を短めに歌う合唱。合いの手のトランペットも音は短めです。合唱は混濁します。Prestissimoは意外と落ち着いたテンポで終わりました。

感情の動きの大きさをそのまま演奏に表現したような演奏でした。盛大な歓喜の合唱などストレートな表現の多い演奏でしたが、感情に傾く分、アンサンブルの乱れや雑なところがあったのと、歓喜の合唱などで音を短く演奏したのが、不思議でした。
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ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/バイロイト祝祭管弦楽団

icon★★
一楽章、遅いのか、テンポがかなり変わっているのか、たどたどしいような感じさえ受けてしまう冒頭です。途中から落ち着いてきたようです。
冒頭部分はフルトヴェングラーが意図したテンポの動きだったのか?「振ると面食らう」と言われるほど、分かりにくい指揮で有名だったフルトヴェングラー。もしかしたらオケのメンバーが面食らってあんなたどたどしい冒頭になったのではと思うのは私だけです。
やはりテンポは動きます。

二楽章、遅めのテンポで始まりましたが、タメがあって力強い冒頭でした。すぐに一般的に聴くくらいのテンポ設定になります。パートによって付点が甘いところもあります。
こんなにテンポが動いて良いのかと思うくらい自在なテンポ。スケルツォの速いテンポのイメージよりもゆったりとした部分の旋律を歌っているのが印象的です。

三楽章、遅い!私は、ある程度録音が良くないと、音楽に浸ることができないタイプなので、この録音から美しさを感じ取ることができません。このテンポだと、朝比奈の演奏にはどっぷり浸ることができました。しかし、この録音に酔いしれることができないのです。
この楽章でも、テンポが大きく動いて、作品に没入しているフルトヴェングラーの凄さを垣間見ることはできるのですが、何度も聴きたいとは思わないです。

四楽章、この楽章もテンポは楽譜を無視しているかのように動きます。またトランペットが強く長めに吹く部分が印象的です。
独唱陣はN響の73年のメンバーより上手いです。
ただ、オケは低音が遅れたり、いろいろあります。
プレスティシモからは猛烈なアッチェレランドでその上録音も悪いので、オケが付いていけているのかシンバルにかき消されて分かりません。

ヨーゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団

icon★★
一楽章、全曲に共通したまろやかな響きの演奏です。
わずかにテンポを煽るようなスピード感もあります。爽やかに整った演奏です。
ひっかかる部分が無く滑らかに音楽が進みます。

二楽章、切れの良い軽快な演奏です。トランペットやティンパニにアンサンブルの乱れが若干あります。

三楽章、中庸です。取り立てて表現が際立っているということはありません。

四楽章、非常に大人しく控え目な出だしでした。すごく小さい編成で演奏しているような錯覚に陥ります。
合唱も控え目です。とても抑制の効いた演奏です。
リミッターがかかったようにffが抑えられるので、とても品の良い演奏に聞こえますが、欲求不満にもなりそうです。

モノトーンで彩られた感じで、原色のような鮮やかな色彩感はありません。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★
一楽章、アクセントの強い断片的な動機。少し高域に寄った録音です。極めてオーソドックスで奇をてらうような事は全くありません。ティンパニのクレッシェンドは激しいものでした。次第に演奏に激しさが加わって来ます。

二楽章、確実に拍を刻み厳格に進みます。木管が大きくはっきりと聞こえる割にティンパニが遠いです。豪快に唸りを上げる弦。

三楽章、二楽章の豪快さから一転して穏やかですが、速めのテンポであっさりと進みます。聞き進むうちにこのテンポの速さが気になります。どうしてこんなに速いのか?

四楽章、冒頭の金管も低弦のレチタティーヴォも激しいです。低弦の歓喜の主題もテンポは速めです。金管の歓喜の主題は響きが浅いです。合唱も奥行き感が無く浅い響きになっています。Alla marcia Allegro assai vivaceの前のフェルマーターのティンパニにデクレッシェンドが書かれていますが、大きいままでした。テンポが速く力強い歓喜の合唱ですが、深く踏み込んだ表現は無く、軽い印象の演奏です。Prestissimoは割と落ち着いています。最後はアッチェレランドして終わりました。

豪快に弦を鳴らした演奏でしたが、録音のせいか、響きが浅く、表現も踏み込んだ表現では無かったので、あまり印象に残る演奏ではありませんでした。
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イーゴリ・マルケヴィチ/ラムルー管弦楽団

マルケヴィチ★★
一楽章、編成が小さいように感じるまとまりの良さ。第一主題もティンパニ以外はほとんど力を入れずに演奏しているように感じます。あまり残響を含んでいないので、ヴァイオリンなどは少し枯れた音です。録音のレンジも狭いようで、コントラバスも軽い響きがします。ティンバニのロールはわずかなどクレッシェンド程度です。

二楽章、残響が少なく生々しい音のティンパニ。ザクザクと躍動感のある音楽が前進します。すっきりとした見通しの良いアンサンブル。フランスのオケらしい明るいホルン。以外に情緒的に動くテンポ。

三楽章、美しくすがすがしささえ感じさせます。深く感情移入するような演奏ではあませんが、過不足無く歌はりますがテンポは速めでどんどんあっさりと進みます。トランペットは奥まったところからあまり抜けてきません。

四楽章、弱めの冒頭です。レチタティーヴォもコントラバスが軽く量感がありません。トランペットの4分音符も短めで、とても軽い演奏です。静かで爽やかな歓喜の主題。バリトン独唱も粘りません。合唱はかなり人数が少ないのか、とても弱いです。行進曲の前のフェルマーターのティンパニは楽譜通りデクレッシェンドしました。テノールも明るく明快な歌唱です。それにしてもオケの響きには厚みがありません。合唱がオフマイクになっているのか、あまり明瞭ではありません。特に男声合唱が心もとない。Prestissimoも落ち着いたテンポです。

深い感情移入は無く、熱狂などはもちろんありません。それはそれで音楽の表現なので、良いのですが、合唱がオフぎみで聞き取りにくく、オケの響きもとても薄く浅い響きになってしまったのが残念です。
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ダニエル・バレンボイム/ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団

バレンボイム★★
一楽章、静かな音がこだまするような冒頭。少し間を空けて入った第一主題。濃厚な表情付けは行われず、あっさりとした表現です。第二主題もあっさりとしています。感情の起伏も大きくはなく、整然としています。ティンパニのロールは激しいクレッシェンドがありました。響きも爽やかで清涼感があります。

二楽章、吸い込まれそうになる弱音の美しさ。強奏部分でも力を込めることは無く、サラリと流れて行きます。中間部の最後はかなりテンポを落としました。

三楽章、静かに深く厳かに歌います。テンポが速まったり、遅くなったり自在に動きながらかなり速いテンポになります。

四楽章、荒れ狂うような冒頭では無く、とても落ち着いて整った演奏です。レチタティーヴォも重厚感は無く、サラッとしています。二楽章を回想する部分はとても表情豊かでした。テンポも大きく動きますが、極端に煽り過ぎているような感じがして不自然です。伸びやかなバリトン独唱。合唱も実在感があって美しく量感があります。行進曲の前のフェルマーターのティンパニは楽譜と違ってデクレッシェンドしませんでした。行進曲はとても速いテンポです。歓喜の合唱もかなり速いテンポです。その後もテンポは大きく動きますが、かなり強引なテンポの動きで不自然です。自然な感情の動きから出て来るテンポでは無く、最初からここはこのテンポと決めて、そこへ無理やり持って行くような感じがしてどうも好きになれません。

弱音部分がとても美しい演奏でしたが、テンポの動きが作為的で、私にはとても不自然に感じました。感情の動きと連動したテンポの動きなら良かったと思うのですが・・・・・。
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エマニュエル・クリヴィヌ/ラ・シャンブル・フィルハーモニク

クリヴィヌ★★
一楽章、第一主題の断片が詰まっているように速い演奏です。音をあまり伸ばさずに軽く演奏した第一主題。一部テヌートぎみに演奏するなど独特の表現です。速いテンポで強弱の変化などにも独特の表現がありますが、ちょっとぶっきらぼうな感じを受けます。乾いた響きのティンパニのクレッシェンド。速いテンポではつらつとしていますが、激しい表現です。コーダではクレッシェンド、デクレッシェンドを繰り返す独自の表現がありました。

二楽章、あまり凹凸なく比較的平板に流れています。ガット弦の鋭い響き。テンポがわずかに動いたり、テヌートで演奏したり色んな表現をしています。

三楽章、かなり速いテンポの演奏で、あまり味わいがありません。ナチュラルホルンでのソロはかなり大変そうでした。

四楽章、独唱陣がステージ奥の下手側に陣取っています。トランペットがあまり聞こえずフルートが聞こえる冒頭。レチタティーヴォはピリオド楽器独特の鋭く伸びのある音ですが、コントラバスはあまり聞こえず響きが薄いです。独特の歌い回しがあります。ヴァイオリンのすがすがしい歓喜の主題。トランペットがベルに手を当てて音程を調整しています。三楽章のホルンもそうですが、なんでこんなに難しい方法であえて演奏しないといけないのか分かりません。フェルマーターでティンパニはデクレッシェンドしませんでした。行進曲もとても速いです。歓喜の合唱は女声ばかり聞こえて男声合唱はあまり聞こえませんでした。Prestissimoは最後加速して急減速して終わりました。

クリヴィヌ自身が楽譜の研究をした成果だと思いますが、独特の表現が随所にありました。ただ、普段から聞きなれた演奏とは大きく違うので抵抗もありました。また、ピリオド楽器の扱いの難しさなどから木管の音程が不安定だったり、ホルンのソロの音が出たり引っ込んだりする部分もあり、なぜあえて難しい楽器で演奏しないといけないのか、私には理解できませんでした。
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ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」7

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」名盤試聴記

ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

ノイマン★☆
一楽章、強いニュアンスは付けられていない冒頭。力強さも感じない第一主題。あまり大きく歌うことのない第二主題。頑なにインテンポで、間が悪く感じる部分もあります。ティンパニのクレッシェンドもあまり激しくは無く、感情の起伏はあまり表現していないようです。強い表現は無く、緩やかな演奏で淡々としています。コーダの前でテンポが遅くなりました。

二楽章、刻みつけられるような深い彫りあまり無く、なだらかな変化で過ぎて行きます。

三楽章、深い表現が無い分、穏やかな安堵感があります。cantabileはほとんど感じません。無造作に演奏されている感じで、聞いていて引き込まれません。速めのテンポでどんどん進みます。この楽章では少しテンポが動いています。

四楽章、ティンパニは強打しますが、柔らかく激しさはあまり無い冒頭。レチタィーヴォも柔らかいです。低弦で提示される歓喜の主題はかなり存在感のある演奏でした。トランペットが出るあたりでは少しテンポが速くなっています。合唱が若干遅れて響きます。フェルマーターで楽譜通りティンパニはデクレッシェンドしました。オケと男声合唱のアンサンブルがたまに乱れます。テンポを大きく落とす部分もありましたが、表現が深まる感じはありません。Prestissimoもさほど速くは無く、アッチェレランドも無く終わりました。

あまり深い表現も無く、緩やかに穏やかに演奏されました。消え入るような弱音も無い代わりに爆発するようなトゥッティもありませんでした。主張の感じられない演奏は残念でした。
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リッカルド・ムーティ/ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団

ムーティ★☆
一楽章、ジーっと言うノイズがあります。あまり倍音を捉えていないような録音です。ムーティの大きい身振りの指揮に比べて音楽の振幅があまり大きくないような感じです。録音状態があまり良くないので、細部は分かりませんが、あまり大きな表現は無く、作品のありのままを表現しているようです。ティンパニのクレッシェンドの直前にテンポを落としました。

二楽章、柔らかいティンパニ。録音状態の問題なのか、特筆するような表現は感じません。音がブツブツと途切れたりすることもあります。

三楽章、この楽章でも特に目立った表現は無く淡々と進んで行きます。

四楽章、フィルターを介して聞いているようなマイルドな冒頭。二楽章の回想は生き生きとしていました。歌うオーボエ。歪っぽい合唱。行進曲のピッコロは控えめで少しさびしい感じでした。盛大な歓喜の合唱ですが、やはり歪っぽいです。Prestissimoは速いテンポをさらに追い込んで終わりました。

合唱は人数も多く壮大な歌でしたが、録音が悪く細部の表現は判断できません。
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レイモンド・レッパード/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

icon
一楽章、注意深いで出しでした。作品への思いを伝えようとしているのが分かります。
カラヤンの演奏が、ただ音を並べただけのような演奏だっただけに、この演奏が何かをしようとしているのが、好感が持てます。
伸びやかな良い録音ですが、音の密度が薄い。何かを伝えようと指揮者はしていますが、オケを奮い立たせるまでには至っていないような感じがします。
やはり演奏がどことなく緩いです。
カラヤンが音を並べただけと書きましたが、音楽は一瞬たりとも弛緩しませんでしたし、オケを完璧にコントロールしていましたから、カラヤンの演奏に比べると、指揮者の格の違いが如実に出てしまいます。
最初は期待したのですが、やはり音楽が弛緩してしまっています。聞き手をグッと引き寄せる力がありません。

二楽章、かなりレベルの高いアマオケが練習しているような、タイミング合わせのような感じです。
この全集は指揮者もいろいろなので、統一感がないのは仕方がありませんが、「英雄」ではそんなに悪くは感じなかったのですが・・・・・・。
ティンパニがミュートしすぎたような音で、釜の音がしていません。枕でも叩いたような音です。

三楽章、奏者の気持ちが一点に集中していないので、音が寄ってきません。散漫な音がしています。
テンポも動くのですが、動かす必然性を感じないです。木管楽器のブレスも音楽を途切れさせても平気なような雑さが気になります。
テンポは速めにすすみます。これ以上遅くすると、収拾がつかなくなるのでしょう。

音符の扱いも楽譜に書いてないこともいろいろやっているようで、とても不自然です。

四楽章、・・・・・・・・・・・・・・・・。全集で1,500円もしなかったので、良いんですけど、生で聴いていたら腹が立ったでしょうね。

意味が無く音が通り過ぎて行くようで、いろんなことをしているのですが、それに一貫性がなくて、さっぱり分からない演奏でした。

エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団

アンセルメ
一楽章、この録音もザラザラとしたヴァイオリンが気になる響きです。タメを効かせて力強い第一主題です。オーボエがビービーと響きます。ティンパニのクレッシェンドが終わって第一主題が演奏される部分で大きくテンポを落としました。響きには厚みが無く甲高い印象です。コーダでもオーボエがとても目立って不気味な雰囲気よりも滑稽な感じさえします。

二楽章、ティンパニは上のFが強く、下のFは弱かったです。厚みが無く、小さい編成のような印象の演奏です。木管は華やかな感じでやはりドイツ音楽よりもフランス音楽が得意なオケだと感じます。トランペットもチーッと言う音で鳴ります。アンサンブルもそんなに良くは無く、時に乗り遅れる楽器もあります。

三楽章、大きく歌わずに自然な演奏がかえって心地良い感じです。ファゴットもビービーと鳴ります。ほとんど歌わずに速めのテンポでサラサラと流れて行きます。深みのある響きが無いせいか、音楽が浅く聞こえてしまいます。

四楽章、チーと鳴るトランペットが強烈です。レチタティーヴォも低域が浅く深みがありません。かなり特異な演奏です。歓喜の主題の対旋律を演奏するファゴットがあまりにもビービーと響くので、普段聞く演奏とはかなり違った印象になります。弦も薄いので爽やかな響きです。硬い音のトライアングル。歓喜の合唱の合い間に入るトランペットがチビッたような感じで変です。トロンボーンも薄っぺらい音です。録音の問題なのか、合唱も少し硬く伸びやかさが無く奥行き感もありません。Prestissimoはあまり速いテンポにはならず少し重い感じがありました。

アンセルメが手塩にかけて育てたスイス・ロマンドoの音色を前面に出して挑んだベートーベンでしたが、この演奏を聴くとこのオケの音色が他のオケとはかなり異質なものだと言う事が良く分かりました。あまり大きな表現をせずに自然体の表現で挑んだのが逆の結果になってしまったように感じました。
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ケント・ナガノ/ベルリン・ドイツ交響楽団

ナガノ
一楽章、割と大き目の音で速いテンポで入りました。腰高で速い第一主題。速いテンポがテンポの動きと一体感が無く、バラバラに感じます。オケもこのテンポに戸惑っているような感じを受けます。とにかく落ち着かない演奏です。

二楽章、この楽章も速いですが、元々速いテンポの楽章なので、そんなに違和感はありませんが、音楽が繋がらない感じがあって、どうもしっくりきません。音の処理やバランスなど独自のアプローチをしているのだと思うのですが、あまりにも奇抜で、付いて行けません。

三楽章、速めですが、瑞々しい演奏です。フレーズ感が独特です。これまでの伝統様式にはとらわれない独自の表現です。少し速めと言う程度から始まった演奏ですが、次第にテンポが速くなって、かなり急いだ演奏になりました。

四楽章、トランペットが強く響く冒頭。テンポが速いのレチタティーヴォも激しいです。流れるようにつながっていく歓喜の主題。バリトン独唱は豊かな残響を伴って伸びやかです。オケも合唱も音を短く切る部分があって、少し違和感があります。行進曲は物凄い速さです。歓喜の合唱も凄い勢いです。テンポを落としてところは落ち着きがあってなかなか良いのですが、速い部分があまりにも速すぎて、十分な表現が出来ていないような感じがします。歓喜の合唱以降はかなりテンポを落としてじっくりと演奏しています。Prestissimoは畳み掛けるように終わりました。

テンポ設定や音符の扱い、表現など独特のもので、今までの伝統様式とは大きく違った演奏で、かなり戸惑いました。音を短めに演奏する部分などはちょっと雑な印象も受けました。
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マクシミアンノ・コブラ(指)ヨーロッパ・フィルハーモニア・ブダペスト管& Cho

コブラ
一楽章、もの凄く遅く柔らかい第一主題。指揮棒の一往復を一拍とする」と言う「テンポ・ジュスト理論」に基づく演奏らしいのですが、この異様に遅いテンポで全曲聴くのは大変なことだと聴き始めて後悔しています。YouTubeの時間表示では、1:54:12となっています。ティンパニは楽譜通り音符の数を正確に叩いていますが、全くクレッシェンドも無く、あまりやる気が無いような叩き方です。この遅いテンポでも集中力を切らさずに演奏しているのは凄いことです。

二楽章、普段聞きなれた曲とは全く違う曲に聞こえます。当然のことながら全くスピード感が無く、テンポが遅くなった分、同じ音符でも使える弓の長さの限界があるので、強い音を出せないので、アクセントなどもあまり強くは表現されません。オケもこの異常なテンポに良く付き合っています。ダレることも無く美しい響きを維持しています。ただ、テンポを遅くしただけで特段の表現などはありません。

三楽章、二楽章などはものすごく遅く感じましたが、この楽章はさほど遅くは感じません。演奏に慣れてきたからでしょうか?。オケは美しい響きの演奏をしているのですが、表現らしい表現が無くて、ただ遅いテンポで演奏しているだけのような感じの演奏で、これだけ遅いんだからコテコテに濃厚な演奏でもしてくれたら評価も変わっていたと思うのですが、テンポが遅くなった分、密度も薄くなっているような感じで、このテンポ設定に対する説得力がありません。

四楽章、異様な遅さです。当時は現代よりは時間の流れもゆっくりだったのだろうとは思いますが、さすがにこのテンポでこの曲を聞かされると当時人でも退屈で寝てしまうか、途中で怒って帰ってしまうでしょう。メトロノームの開発当時作曲家のメトロノームのテンポ設定の理解がまちまちだったと言うのがこの理論の裏付けらしいですが、このテンポで演奏することは有り得ないと思います。音楽の角が立つような部分もなだらかに柔らかくなってしまっていて、音楽の変化もほとんど無く過ぎていきます。7番ではあまり異常な遅さは感じなかったのですが、さすがにこの演奏の遅さには辟易としてきます。

キワモノ演奏もここに極まったりと言う感想です。とんでもない理論を真に受けて演奏する指揮者も指揮者です。ただ、付き合わされたオケや合唱の人たちはよく耐えたなと思います。さすがにこの曲の演奏時間が1時間54分というのは有り得ないです。
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ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon
いかに名盤であろうとも、脳内アナログリマスターが出来ない私にとっては、このあたりの年代の録音を聞くのは、ある意味恐怖なのであります・・・・・・・・。
今回は友人が推薦するので仕方なく・・・・・・。脳内アナログリマスターがないのは、アルコールの分解酵素を持っていない人と同じで、訓練してもダメなんです。

一楽章、チリチリとノイズに混じって、遠くに音楽が聞こえる感じです。
テンポは冒頭からかなり動きます。オケが近付いたり遠のいたりするような変な感覚なのですが・・・・・・。
ティンパニのクレッシェンドはかなり激しくやっているようなのですが、私には雑音としか思えない。
テンポの動きはすごくあるので、現場にいた人にとっては、もの凄く劇的な演奏であったと想像はできるのですが、私自身があたかもそこにいたかのような体験は残念ながらできません。
ティンパニのffがあると、ほとんどティンパニしか聞こえないのです。私の耳には・・・・・・。

二楽章、遅い開始。ティンパニのタメが良い間です。

三楽章、ワウ・フラッターもあって、弦の音程がすごく変です。やはり、私には補正回路がないので、この楽章を聞くのは苦しいです。
まあ、何とか1950年代の録音なら聞けますが、さすがに40年代以前になると、相当な思い入れがないと聞けないと思いました。

残念ながら、ここでリタイアさせていただきますm(_ _)m

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ベーム
一楽章、録音が非常に悪いです。音が左右を行ったり来たりするので、音楽を聴くというような状態ではありません。
ライブ録音だし、録音年代からしても、非常に期待して聞いたのですが・・・・・・。

二楽章、かなり古めかしい音ですが、音が左右行ったり来たりは減ってきました。ブツッと言う何かのジャックを差し込むような音がしてから、音質が少し良くなった気がします。
あ、やっぱりダメだ!
木管の綺麗なタンギングが揃った音やティンパニの良い音もところどころ聴けますが、ほとんど霧の中です。
音が良くなったり悪くなったり・・・・・・・。

三楽章、わりと速めのテンポ設定で進みます。

四楽章、客席で録音したのだろうか。この楽章も速めです。トランペットの音もザラザラしていて、ウィーンpoの演奏だとは思えません。
最後は強烈なプレスティッシーヴォでした。

全体に速いテンポで押し通した演奏で、80年の録音とは全く違う演奏だったと思います。
後でナレーションが入ったので、FMのエアチェックだったのですね。
かなり電波の状態が悪かったのか・・・・・・。

クァク・スン/KBS交響楽団

スン
一楽章、かなりあからさまな冒頭。逆にトゥッテイはリミッターがかかったように奥に引っ込みます。この後は録音レベルを抑えたままで一定になります。テンポはあまり動きません。普通には演奏されて行きますがあまり表現らしいものがありません。

二楽章、少しリズムが甘くなったりします。極めて自然体の演奏なのですが、あまりにも平板でただ演奏しただけのような感じで、あまり心が動かされることはありません。力が湧き上がってくるような抑揚の変化がありません。

三楽章、弱音の緊張感もあまり感じません。グッと内に込められるエネルギーが無く、全部外へ発散されるような緩んだ音楽です。あからさまに開いてしまう音楽に何か違和感を感じます。柔らかさが無く強い音もこの楽章にはふさわしくはありません。速いテンポでサラサラと流れて行く音楽。

四楽章、意外と弱い冒頭。レチタティーヴォも厚みが無く薄い響きです。少し細身ですが良く響くバリトン。合唱は少し遠い感じがします。フェルマーターでティンパニはデクレッシェンドしました。賑やかな行進曲。合唱がオフぎみに響く歓喜の合唱。鈍重で間延びした感じがあります。最後はアッチェレランドして終わりました。

自然体の演奏でしたが、表現は平板で、間延びした部分も感じました。正直退屈な演奏でした。
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