カテゴリー: ベートーヴェン:交響曲第8番名盤試聴記

ベートーヴェン:交響曲第8番の名盤は、パーヴォ・ヤルヴィ/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニーo、編成の小さいオケですが、色んな工夫を凝らした演奏で、優しい表情を見せる部分と激しい部分との対比がはっきりとして、四楽章などは豪快ささえも感じる名盤です。スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレは、この曲のスタンダードとも言えるような自然体の名盤です。チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニーoは、ゆったりとしたテンポで、弱音の静寂感と巨大なスケールのトゥッティの対比が凄くて圧倒されます。作品からすると巨大過ぎるかもしれませんが、圧倒的な名盤です。

ベートーヴェン 交響曲第8番

ベートーヴェンの交響曲第8番は、1812年に作曲され、彼の交響曲の中でも小規模で明るい作品です。第7番の壮大なリズムの高揚感や、第9番のスケールの大きさとは対照的に、第8番は軽快でユーモアに富んだ要素が強調されています。この作品は、ベートーヴェンが持つ陽気で楽観的な一面を表現しており、彼の交響曲の中でも親しみやすく、遊び心が感じられる作品です。

曲の特徴

  1. ユーモアと遊び心
    第8番にはベートーヴェン独特のユーモアが随所に見られます。リズムやメロディーの突然の変化や、予期せぬ強弱のコントラストなど、聴き手を驚かせる要素が満載です。特に第2楽章では、メトロノームの音を模したリズムが登場し、彼が敬愛していた友人でメトロノームの発明者であるメルツェルに捧げられたユーモアとされています。
  2. コンパクトな構成
    第8番は、ベートーヴェンの他の後期交響曲に比べて短く、全体的にシンプルでコンパクトな構成です。楽章数や各楽章の長さも比較的短く、古典派の形式美が感じられる一方で、ベートーヴェンの個性が光る工夫が凝らされています。
  3. 古典派への回帰と独自性
    ハイドンやモーツァルトの伝統的な交響曲の様式を受け継ぎながらも、ベートーヴェンらしい革新的な要素が取り入れられています。古典的なシンプルさと彼のユーモラスなひねりが加わり、親しみやすさと新鮮さが同居しています。

各楽章の概要

  • 第1楽章:Allegro vivace e con brio
    活気に満ちた軽快な楽章で、力強く陽気な主題が展開されます。シンプルながらもエネルギーに溢れており、ユーモラスな要素も含まれています。聴き手を楽しませる工夫が随所に施されています。
  • 第2楽章:Allegretto scherzando
    メトロノームの音を模した軽やかなリズムが特徴の楽章で、独特のリズム感が印象的です。繰り返される音型が、まるで機械のように精密に動く様子を連想させ、親しみやすく愛嬌のある雰囲気が漂います。
  • 第3楽章:Tempo di Menuetto
    メヌエット形式で、優雅で穏やかな旋律が流れる古典的な楽章です。ベートーヴェンの交響曲には珍しいメヌエット楽章で、舞踏的な美しさが感じられ、聴く人に落ち着きを与えるような趣があります。
  • 第4楽章:Allegro vivace
    生き生きとしたフィナーレで、急速なテンポとリズミカルな展開が続きます。ときおり現れる予期せぬ音の跳躍や強弱の変化がユーモアを感じさせ、最後まで勢いよく駆け抜けるような楽章です。

総評

交響曲第8番は、ベートーヴェンの交響曲の中で異彩を放つ、軽快で遊び心にあふれた作品です。前作の第7番と次作の第9番に比べると、控えめで小規模な印象ですが、その分、彼のユーモアや伝統への敬意が表れています。複雑なドラマティックな展開よりも、シンプルさの中にある表現力が際立ち、ベートーヴェンの多彩な才能を感じさせる交響曲です。

4o

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第8番名盤試聴記

パーヴォ・ヤルヴィ/ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団

ヤルヴィ★★★★★
一楽章、速いテンポで音も短めでコンパクトな演奏です。余分な贅肉を削ぎ落としたような締った響きです。優しい表情を見せる部分と激しい部分との対比がはっきりとしています。ティンパニが楽譜に無いクレッシェンドをよくしますが、これは音楽の熱気を煽るのにはとても良いです。

二楽章、弾けるような木管の刻み。強弱の変化に敏感に反応するオケ。テンポを大きく落とす部分もありました。

三楽章、アタッカで入りました。速いテンポです。トランペットは独特の表現で音を短めに演奏していました。

四楽章、この楽章も非常に速いです。このテンポにオケが必死で喰らいついて行きます。小さい編成のオケですが、とてもまとまりがあります。ティンパニはとてもよくクレッシェンドします。

テンポの動きやティンパニのクレッシェンド。短めに演奏するなどいろんな工夫がありました。そして、四楽章は凄い熱演でした。編成の小さいオケでしたが、豪快ささえも感じるような演奏でした。
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朝比奈 隆/新日本フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、この曲でもゆったりとしたテンポで、低域の厚い、それでいて優しい音がします。伸びやかで、癒されるベートーベンです。
ベートーベンの交響曲は指揮者によって、全くと言って良いほど表情を変える。解釈の幅が広いということは、作品としての懐が深いと言うのか、奥深さがあるのでしょう。
このゆったりとしたテンポでも音楽が弛緩することなく、細部まで行き届いています。このあたりは日本人の几帳面さがとても良い方向に働いていると思います。
ゆったりしていながら、繊細です。

二楽章、朝比奈自身は自らのことを凡人だと言っていましたが、これは凡人がなせる業ではありません。
この自然なたたずまいの音楽は何かを極めた確たる自信や信念が無ければできないことだと思います。
全く、誇張することなく、自然体で、それが感動を生む音楽になると言うすばらしさ。まだ二曲目ですが、きっとこの全集はすばらしいものになっているでしょう。

三楽章、とにかくスケールが大きくて、とこか部分部分を取り上げてどうのこうの言うことは全くの駄弁になってしまうでしょう。それほどすばらしい演奏です。

四楽章、こんなに優しいベートーベンは聴いたことがありません。この演奏が日本人によってなしえたことに対して驚きを隠しません。

演奏が終わっても聴衆の拍手も熱狂するような拍手ではありません。それで良いと思います。
むしろ拍手をせずに、ずっと余韻を味わっていたいような、とにかくすばらしい演奏でした。

オトマール・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ

icon★★★★★
一楽章、音が出た瞬間にホッとするような、本来収まるべきところに、きちんと収まっている安心感や安定感のある演奏です。派手さはありませんが、いぶし銀のような輝きがちりばめられたような魅力のある演奏です。
スウィトナーの指揮もハッタリのような小細工もありませんし、テンポを動かしてオケを引きずり回すようなことも一切ない、堂々とした指揮です。
指揮者とオーケストラ双方が何をするべきか十分に知り尽くしていて、阿吽の呼吸で音楽が生まれてくるような自然さが本当に魅力的です。
ベルリンpoのような分厚い響きではありませんが、とても繊細な美しい響きをもったオケです。

二楽章、小気味良いテンポです。これと言った特徴もないのですが、この力みのない自然な演奏が優しい。

三楽章、スピーカーの周辺が古い時代のドイツになったような、空気まで音楽と一緒に運んできてくれたようです。やはり良い演奏は空気を変えてくれます。

四楽章、スウィトナーの演奏について、多くを書くことができないのですが、これは演奏がドイツ音楽のど真ん中を行っているようで、完成度もすばらしいレベルに達していると思うのです。

どこがどうのとか言うような演奏ではなく、どこを取っても誇張することなく自然体でベートーベンがにじみ出ているようで、すばらしいとしか言いようが無い。

ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団

icon★★★★★
一楽章、「英雄」よりもこちらの方が勢いがあります。リズムも弾むしテンポ感もとても良い。音楽が前へ前へと進もうとするエネルギーがあってとても良いです。
元気な演奏で、作品にふさわしいと思います。

二楽章、この楽章もリズムが弾んで聞く側も一緒に弾みながら聞けます。

三楽章、とても明るい演奏で、この作品が持っている人生の希望や祝福がとてもゆく表現されていると思います。

四楽章、賑やかで元気です。聞く側にエネルギーを与えてくれるような、すごく良い演奏でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポで始まりました。くっきりと浮かび上がるクラリネット。スフォルツァンドもはっきりと表現されています。弱音の静寂感と巨大なスケールのトゥッティの対比が凄くて圧倒されます。ヴァイオリンにffの指定のあるところを極端に音量を落として、聞いていてハッとさせられました。テンポは遅いのですが、演奏には勢いと熱気があって、あまり遅さを感じさせません。

二楽章、この楽章も遅いテンポです。微妙な表情付けもきちんと揃っていて、徹底したリハーサルの厳しさを感じさせます。

三楽章、暖かみがあって美しいファゴット。柔らかいトランペット。トリオからのホルンもとても柔らかく美しい。安らぎを感じる音楽です。細部に渡る表現も徹底していて見事です。

四楽章、冒頭の弱音とそれに続く巨大なトゥッティの対比が圧倒的です。幸福感に溢れた雰囲気がとても良いです。

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、とても美しい響きで開始しました。テンポもよく動いています。この小規模な交響曲に合うような爆発しないコンパクトなトゥッティ。スフォルツアンドの指示にもとても敏感です。

二楽章、速めのテンポで、この曲を誇大には表現しようとしていないようです。とても良く歌います。作品と一体になって表現が積極的です。

三楽章、伸びやかに歌う弦。弱音部分では大切な物を扱うような丁寧な演奏でした。トリオのホルンもとても美しかった。作品に入り込んでいるような充実した表現はとてもすばらしい。

四楽章、この楽章も速めのテンポです。このテンポだと終盤のティンパニが大変そうです。速いテンポで生き生きとした表情がとても良いです。終盤のティンパニも難なくこなし見事にまとめました。

コンパクトに颯爽とした演奏でした。作品を完全に自分達のものにしてにじみ出るような表現も見事でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1966年東京文化会館ライヴ

カラヤン★★★★★
笛吹のクラシック音楽ライヴ と オーディオの記事の笛吹さんから音源を送っていただきました。ありがとうございます。

一楽章、速いテンポにティンパニが遅れます。豪華で華やかな第一主題。流れるような第二主題。途切れること無く次から次へと音楽が湧き上がるような豊かさがあります。また、この作品の密度の高さをさらに凝縮したような濃い表現はなかなかです。

二楽章、表情豊かに歌う主題。厚みのある響きでとても豊かです。

三楽章、何とも言えない揺れと歌があります。トリオでは美しいハーモニーのホルンと伸びやかなクラリネットです。

四楽章、この楽章は凄く速いテンポで活気に溢れて生き生きとしています。オケも乗っていて勢いがあります。ティンパニがこのテンポでオクタープ跳躍の八分音符をよく演奏するもんだと関心します。華やかに終わりました。

豪華で華やか、そして活気に溢れて生き生きとした演奏でした。この当時これだけ速いテンポの演奏をしていたのにも驚きです。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ベートーヴェン:交響曲第8番の名盤を試聴したレビュー

ベートーヴェン 交響曲第8番2

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第8番名盤試聴記

デヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

icon★★★★☆
一楽章、表現が徹底しています。ジンマンの棒に敏感に反応かるオケの演奏が気持ちいい!
一つのフレーズの中にも多くの強弱の変化があって、長い間聞きなれた演奏とは全く違う演奏で、楽しいです。

二楽章、アクセントを極端に強く演奏するので、そのほかの音との対比が面白い。この楽章も速い。

三楽章、テンポが速い、ベートーヴェンの交響曲は1900年代に入ってから演奏様式を改変されたのか、作品本来の姿よりも重い演奏が定着してしまったのだろうか・・・・・。
ここで演奏されているのが、本来の姿だとすると、今まで聞いていた演奏は何だったまかと思えてくる。

四楽章、この楽章ももちろんテンポが速い。テンポが速いだけで素っ気無い演奏だと魅力もないのですが、この演奏は表現が濃密なので、聴いていて飽きません。

このテンポによく収めたと思えるほど濃い表現が詰まっています。

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ベーム★★★★☆
一楽章、張りのある美しい響きです。深い彫琢です。スタジオ録音ですが、次第に熱気を帯びて来て熱くなって来ます。

二楽章、ゆったりとしていますが、一音一音丁寧な演奏です。木管の弱音が消え入るようで美しいです。

三楽章、血が通っている感じで生命感を感じさせます。ウィーンpoがベームのために一生懸命演奏しているように感じます。トリオのホルンはふくよかでとても美しいです。

四楽章、カチッと決まるところはしっかりと決まる感じで締りのある演奏です。

ウィーンpoの献身的な演奏で、締りもあるけれど、熱気も感じさせる演奏でなかなか良かったです。
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朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー管弦楽団

朝比奈/大阪フィル★★★★
一楽章、優しい音です。少し腰が重い感じで、リズムの切れが今ひとつと感じるところもあります。
その分、音符の扱いが丁寧です。カラヤンの演奏のようにスパッと切れる感覚とはかなり違います。

二楽章、内声部を強く演奏しないので、響きの厚みはありませんが、響きの透明感があります。穏やかな演奏です。

三楽章、中庸なテンポで流れの良い演奏で、この全集の中では特別な印象です。

四楽章、ゆっくり幸福感いっぱいです。

ヨゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団

icon★★★★
一楽章、すごく優雅な冒頭でした。こんな優雅な八番は初めて聞きました。
流れるようなスムーズな演奏です。角のない滑らかな演奏で安心感があります。
BGMとしても聴けるような、押し付けがましいところがありません。

二楽章、自然な流れの音楽です。

三楽章、こんなに穏やかな八番は初めてです。

四楽章、幸福に満ちた演奏でした。

オイゲン・ヨッフム/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ヨッフム★★★★
一楽章、1969年の録音です。かなり高域が強調された録音です。録音のせいもあり華やかな冒頭です。テンポはそんなに速くは無いのですが、スピード感を感じさせる演奏で勢いがあります。強弱の振幅も大きく、編成も大きいように感じます。

二楽章、自然なテンポの動きもあります。

三楽章、最初少しゆっくりですぐに僅かにテンポを速めます。この楽章でも加速減速があります。自由にテンポが動いて楽しそうです。

四楽章、この楽章も一楽章同様、凄く速いテンポではありませんが、スピード感があります。この楽章も楽しそうでした。

スピード感があって、しかも楽しそうな演奏でした。ただ、高域が強調された録音が耳に付きました。
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オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★★
一楽章、ゆったりと優雅な演奏です。今となっては珍しい遅いテンポで弦や木管が舞うような雰囲気があります。テンポも結構動きます。他の曲では緩く感じることもありますが、この曲ではおおらかさになってとても良い雰囲気を作り出しています。

二楽章、この楽章も遅いテンポです。クレンペラーの指揮なので、感情を込めて歌うようなことはありませんが、作品のチャーミングなところや優しさが感じられます。

三楽章、トリオはふくよかなホルンがゆったりと演奏します。

四楽章、この楽章も凄く遅いテンポで、最近では聞いた事が無いほどの遅さです。同じリズムパターンの受け渡しがとても良く分かります。トゥッティでは巨大な響きも再現されます。

弱音の優雅さとトゥッティの巨大さが同居する演奏で、今となっては珍しい遅いテンポの演奏でしたが、これはこれで捨てがたいものがありました。
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コチシュ・ゾルターン/ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団

ゾルターン★★★★
一楽章、ふくよかで柔らかい響きで、とても速いテンポです。あまりに速いテンポでオケの側にも表現する余裕が無いような感じで、表面をサラッと撫でているだけのように感じます。

二楽章、この楽章もかなり速いですが、ここでは表現する余裕があるのか、強弱や歌がありますし、テンポの動きもあります。

三楽章、の楽章も変わらず速いテンポです。トリオではチェロがガツガツと引っ掛けるような音で演奏しています。

四楽章、もの凄い速さです。このテンポでティンパニは演奏できるのでしょうか?一楽章ののっぺりとした表現に比べるとかなり表現は濃厚になって来ました。このテンポにオケも乗って活発な演奏になっています。ティンパニも見事に演奏しました。

もの凄いスピードで一気に演奏しました。これだけ速いテンポで演奏されると一種の爽快感があります。
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ズービン・メータ/イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

メータ★★★★
一楽章、鮮度が高くなまめかしい弦の響き。トゥッティではむしろ力を抜くような感じで、あまり強弱の変化を付けていないような感じです。

二楽章、特に誇張することなく自然な表現で、自然体で美しいベートーベンを演奏しています。テンポの動きもとても自然です。

三楽章、美しい響きで良く歌います。

四楽章、テンポはゆっくり目です。強弱の変化が控えめだったのは最初だけで、後からははっきりと強弱の変化を付けています。僅かに停滞するような感じもありましたが、そつなく終わりました。

強い主張はありませんでしたが、美しい響きで、自然体のバランスの良い演奏でした。
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エマニュエル・クリヴィヌ/ラ・シャンブル・フィルハーモニク

クリヴィヌ★★★★
一楽章、速いテンポでコンパクトにまとまっています。あまり極端に弱音を弱めません。木管が構造的にあまり弱音が演奏できないのか、割と大き目の音で演奏されています。ガット弦の鋭い響き。トランペットも鋭く抜けますがティンパニのクレッシェンドなども含めて盛り上がりはなかなかです。まて、アーティキュレーションにも厳密なようで、鋭く反応しています。

二楽章、この楽章も速めのテンポです。クリヴィヌの指揮はあまり間をとったりアゴーギクを効かせることは無く、ほとんどインテンポで進んでいます。

三楽章、この楽章はかなり速いです。強弱の変化にはかなり注意を払っているようです。ナチュラルホルンだと出しにくい音があるのでしょうか?ちょっと不安定になるところがあります。

四楽章、速いテンポです。ファゴットのオクターヴの跳躍がかなり目立ちます。弦の強弱の表現が厳格で、演奏に締りをもたらしています。あまり溶け合わない響きがかえって演奏を楽しい雰囲気にしています。最後は一旦音量を落としてクレッシェンドして終わりました。

弦が強弱の変化にかなり気を使った演奏のように感じました。それに対して木管はあまり強弱の変化を付けられないようで、表現の差が出来てしまいました。また、あまり溶け合わない響きが上品さを演出せず、むしろ楽しい雰囲気にさせていました。
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アルトゥーロ・トスカニーニ/ニューヨーク・フィルハーモニック

トスカニーニ★★★★
一楽章、すごいスクラッチノイズに紛れて遠目から響く音楽。ノイズに隠れてあまり細部までは分かりませんが、トスカニーニはしっかりとオケを掌握しているようで、アンサンブルも整っていますし、演奏も引き締まっています。

二楽章、ナローレンジでワウ・フラッターもありますが、音が大きく歪むことが無いので、聞きやすいです。音飛びもありました。切々と音楽を追い詰めるように盛り上がる部分などなかなか聞かせます。

三楽章、テンポは以外に動きます。テンポを僅かに落としてねちっこい表現もとても良いです。即物的と言われるトスカニーニですが、テンポの動きなどかなり表現主義のような部分も感じさせます。

四楽章、この当時としてはかなり速いテンポなのではないでしょうか。オケはしっかりとしたアンサンブルです。力強く前進する音楽でした。

録音状態はかなり悪かったですが、整ったアンサンブルと、テンポを少し動かして表現される音楽は時に切迫感であったり、深みに落ちるような表現であったりと多用でなかなか聞きごたえがありました。
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ベルナルド・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1977年東京ライヴ

ハイティンク★★★★
一楽章、伸びはありませんが、艶やかな響きです。東京文化会館での演奏らしいですが、かなりデッドで、残響をほとんど感じません。響きが浅く奥行き感はほとんどありません。演奏はいたって真面目で誠実です。いつものことですが、集中度の高さには感心させられます。

二楽章、アーティキュレーションの変化にもとても敏感に反応するオケ。地に足の着いた着実な歌と表現です。

三楽章、トリオのホルンは柔らかく美しい。

四楽章、目立った表現はありませんが、オケを完全に掌握した見事なコントロールを効かせるハイティンクです。

いつもながらの中庸の表現。ガッチリとオケを掌握して細部まで抜群のコントロールでした。ハイティンクは目立った表現をしないので、響きの美しいホールで最良の録音で聞かないと良さはなかなか分かりませんね。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ベートーヴェン:交響曲第8番の名盤を試聴したレビュー

ベートーヴェン 交響曲第8番3

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第8番名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ボストン交響楽団

テンシュテット★★★☆
一楽章、作品が持っている穏やかさよりも、不穏な空気の方を感じる開始でした。さすがのテンシュテットもベートーベンの8番だと、暴れようがないのでしょうか。
ボストン交響楽団とどんな演奏をするのかと思って聞き始めましたが、さすがに歴史のある名門オケです。反応が良いです。
この曲でもくるところはバンバン来ます。

二楽章、かなり速いテンポを取っています。

三楽章、音楽の盛り上がりとテンポの動きはやはり天性のものでしょうか。この楽章で畳み掛けるようなテンポの動きがあるとは予想もしませんでした。ホルンがとても明るい音色です。

四楽章、テンシュテットにしたら大人しい演奏だったような印象です。

ジェイムズ・ロックハート/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★☆
一楽章、穏やかな響きではじまりました。音符を丁寧に扱っていますし、オケも指揮者の意志に従って落ち着いた響きの演奏をしていて、なかなか良いです。
コンパクトにまとまっていて、スケールの大きさは望めませんが、美しい演奏です。
9.7.8と聴いてきました。この指揮者が一番良いです。しっかりコントロールされています。

二楽章、バランスも良いです。

三楽章、速いテンポで軽快な演奏です。音楽の流れにしたがって自然な抑揚もあります。
この演奏は音楽に身を任せることが出来ます。
同じオケなのに指揮者が変わると、これほどまでに響きや集中度が変わることを確認するには良い全集です。

四楽章、遅すぎず良いテンポだと思います。響きが薄いのですが、バランスが良いので、カラヤンの演奏のような肥満ぎみでボッテリした響きにならず好感が持てます。

優しい表現ですが、リズムはピシッと決まっています。7番、9番と同じオーケストラだとは思えないような良い演奏でした。

ルネ・レイボヴィツ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

レイボヴィツ★★★☆
一楽章、細身ざ爽やかな響きです。速めのテンポでとても軽快です。コンパクトで余分なものがありません。わき目も振らずに一心不乱に突き進みます。とてもストレートな表現です。

二楽章、この楽章は速いです。大切な物を扱うようなそっと音を出す感じの演奏です。

三楽章、速いままトリオに入りました。虚飾を排してひたすら楽譜に書いてあることに忠実に演奏している感じです。

四楽章、この楽章も速いです。トゥッティでもあまり音が前に出てこないので、ダイナミックさは感じません。

楽譜に忠実にストレートに突き進む演奏でした。録音によるものなのか、ダイナミックの変化に乏しく小じんまりとまとまってしまったのが残念なところです。
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ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク

icon★★★
一楽章、かなり速い、音の扱いが全体に短めです。細身の響きは7番と同じです。
7番の時にも感じたのですが、例えばfが続いてpになるときにfの最後まできちんとfで演奏されずに、何か中途半端に変わってしまうような感じを受けたのですが、ここでもそうです。
これは時代考証の結果なのだろうか?

二楽章、とくに何も無く終わった感じです。

三楽章、ここも速い。当時のメトロノームは今より速かったとか、いろんな説があるのでしょうけれど、私にはあまり関係ないですね。
ほとんどリードの音しかしていないファゴット、細い音のホルン。高い音が耳障りなクラリネット。

四楽章、この楽章も速い、ティンパニが大変だ!ティンパニ凄い!このテンポで完璧でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、豪華な響きではじまりました。カラヤンの全集はすべて超近代的と言うか、都会的な響きで、ベートーベンの時代を連想させたり、田舎を感じさせたりすることは一切ありません。
でも、すばらしい響きには惹かれます。
音の構築物としての完成度を楽しむのであれば、最高の演奏だと思います。

二楽章、

三楽章、この全集を通して感想は同じです。こうして、いろんなベートーベンの演奏を聴いてみると、ベルリンpoの音は意外と透明感がないことにも驚かされました。

響きが分厚い分、濁りもあるのでしょうか。

四楽章、

ハンス・クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

クナッパーツブッシュ★★★
一楽章、ゆったりとしたテンポと豊かなホールトーンで聴き手を包み込むような演奏です。録音の古さから音の木目が粗いのが気になります。

二楽章、この楽章もゆったりとしたテンポです。音楽が進むにつれてテンポが動いて、少し速くなったりします。

三楽章、伸びやかさに欠けるホルンと対照的に艶やかなクラリネット。

四楽章、この楽章もかなり遅いテンポです。一音一音確かめるように丁寧な演奏です。テンポの動きも自然です。

クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ティーレマン★★★
一楽章、艶やかでなまめかしい響き。早速テンポが動きます。昔ながらの遅めのテンポの演奏も落ち着いていてなかなか良いものです。トゥッティでも大きなエネルギーの発散はありません。

二楽章、あまり起伏の無い穏やかな演奏です。

三楽章、アクセントを強調いる導入部。トリオはさらにゆったりと歌います。ホルンは関節音を含んで柔らかく美しいです。

四楽章、Allegro vivaceにしては、少し腰の重い演奏です。さらに重くねばる部分もありました。

重い演奏で、華やかさが感じられませんでした。
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ダニエル・バレンボイム/ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団

バレンボイム★★★
一楽章、華やかな響きと豊かな歌。情熱が溢れるような演奏です。かなり振幅が激しくトゥッティはかなりのエネルギーです。

二楽章、この楽章でも起伏の激しい演奏が続きます。力のこもった演奏です。

三楽章、大きなタメがあったりして積極的な表現です。トリオにはゆっくりと入りました。ここでもたっぷりと積極的に歌います。

四楽章、速いテンポで生き生きとしています。この楽章でも起伏の激しい演奏は続いています。テンポの動きもあります。

積極的な歌や起伏の激しい表現で、今までとは違ったアプローチの演奏でしたが、作品の新たな魅力が提示されたかと言うとちょっと疑問でした。
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マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ヤンソンス★★★
一楽章、程よく低域も伴った豊かな響きです。積極的に歌います。弾むリズムアクセントも強く表現しています。ストレートな歌が心地良い演奏です。

二楽章、アクセントをしっかりと演奏するのでメリハリがあります。

三楽章、少し速めのテンポで、ここでも強弱の変化と歌のある演奏が続きます。トリオのホルンは僅かに細身ですが、美しいです。

四楽章、テンポは特に速くはありません。

弾むようなリズムと歌のある演奏でしたが、特に強い主張は感じられませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ベートーヴェン:交響曲第8番の名盤を試聴したレビュー

ベートーヴェン 交響曲第8番4

たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第8番名盤試聴記

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ブルトヴェングラー★★☆
一楽章、堂々とした始まり、ちょっと引っかかるようなところがありました。

二楽章、落ち着いたテンポで丁寧な演奏です。

三楽章、ホルンとクラリネットの掛け合いは呼吸感があってとても良かった。

四楽章、この曲も終わりへ向けてテンポが次第に速くなって行きます。

アンドレ・クリュイタンス/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

クリュイタンス★★☆
一楽章、ゆったりとした運びです。流麗な音楽の流れです。激しい部分もこの演奏に見合った激しさで、暴走はありません。

二楽章、速めのテンポです。あまり歌い込むことはありません。

三楽章、この楽章も速めです。

四楽章、オケも上手いし不満のある演奏ではありませんが、模範演奏を聴いているような・・・・・。心が躍るようなところがありません。

ブルーノ・ワルター/コロンビア交響楽団

icon★★
一楽章、軽快なテンポです。付点にアクセントがありすぎて、つづく短い音がほとんど聞こえません。ティンパニが楽譜にはないクレッシェンドをしたり表情をつけていますが、押し付けがましいところがありません。

二楽章、

三楽章、三番でも感じたことなのですが、全体に音が短めに演奏されています。特にトランペットが短めに入ってくるので、全体としては、しっとりした演奏をしているのに、トランペットだけが元気いっぱいな感じで違和感があります。

四楽章、ゆったりしたテンポです。一音一音確かめながら進むような堅実さ。最晩年の録音ということもあって、枯れた味わいなのかもしれないが、もう少し生き生きした演奏を求めたい感じがしました。

オイゲン・ヨッフム/ロンドン交響楽団

icon★★
一楽章、元気な演奏です。ただ、静寂感や緊張感はあまり感じません。
この全集のところどころでアンサンブルの乱れもあります。アインザッツをあわせようとする張りつめた空気感があまりないのです。

二楽章、強い音への反応は良いのですが、弱音の緊張感がないのが残念です。

三楽章、決して悪い演奏ではないのですが、何かが足りないような・・・・・・・。

オケがダレている訳ではないのですが、何となく音楽が流れて行くようで、

四楽章、バランスが高音に寄っているので聴き疲れします。

ヘルマン・シェルヘン/ルガノ放送管弦楽団

シェルヘン★★
一楽章、すごく速いです。かなりせっかちな音楽に感じます。ルバートすることもありますが、すぐに速いテンポになります。この曲はもっと優雅な曲だと思っているのですが、そのイメージとは全く違います。

二楽章、この時代のライヴ録音の限界か?かなり雑に聞こえてしまいます。

三楽章、また、かなり速いです。テンポが速いためにトランペットの演奏が唐突で雑に聞こえます。ホルンは極端なほどの表情付けがありました。

四楽章、この楽章も速いです。オケがこの速いテンポを楽しんでいるかのように生き生きしています。 この演奏でもシェルヘンがオケを掌握しているような印象ではなく、統率が取れているとは言えない演奏でした。

シュミット・イッセルシュテット/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

イッセルシュテット★★
一楽章、艶やかで美しい響きですがヴァイオリンが強調されているようにも感じます。演奏は極めて自然体で、ウィーンpoにかなり任せているような感じがします。高域が強くてトゥッティの厚みがありません。特にこれと言った表現は無く、中庸の演奏です。

二楽章、ウィーンpoの伝統に根差した演奏と言ってしまえば、それまでなのですが、没個性と感じてしまうのは私だけでしょうか?その分安心して聞くことができます。

三楽章、トリオのホルンはふくよかで美しいです。

四楽章、やはりこれと言った表現は無く淡々と進んで行きます。テンポは昔ながらの遅めのテンポで確実に進みます。

落ち着いたテンポで、別段変わった表現も無く、淡々と過ぎて行きました。高域に少し寄った録音でしたが、美しい響きは魅力的でしたが、ただ演奏しただけと言う感じがしてしまいました。
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エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団

アンセルメ
一楽章、ビックリするようなハイ上がり、とてもメタリックな響きの弦です。ほとんど低音を伴っていない感じです。録音の影響か、曲の持っている優しさはあまり感じることが出来ず、かなり荒れて激しい演奏に聞こえます。

二楽章、歌われているのですが、それが痛く響いて来てしまいます。

三楽章、トリオのホルンはふくよかで美しいです。テンポも動いています。

四楽章、聞き進むにつれて録音には慣れて来ましたが、それでもささくれ立ったようなザラザラした響きには抵抗があります。テンポの動きや積極的な表現もありましたが、やはり録音が問題です。
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ユージン・オーマンディ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

オーマンディ
一楽章、かなり古い録画でモノクロです。残響成分も少ない録音です。速めのテンポで開始されます。いつもの豊麗なフィラデルフィア・サウンドのイメージからするとかなりギスギスした響きで、表現も取り立てて目立ったものもないので、何を聴いて良いのか分かりません。

二楽章、

三楽章、この楽章は速めのテンポです。

四楽章、何の変哲もないオーソドックスな演奏です。

極めてオーソドックスな演奏でした。録音が新しければ美しさなども伝わったと思いますが・・・・・。
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ジョージ・セル/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団


一楽章、僅かに遠く、少しザラザラとして雑に響く演奏です。強奏で音が割れます。同じニュー・フィルハーモニアoでもクレンペラーの緩い雰囲気とはかなり違い、キリッと締った雰囲気があります。バネのように弾むリズムなど聴きどころもありますが、歪がひどくて聞くのが辛いです。

二楽章、非常に締った演奏で、内側に凝縮するような集中力を感じます。最後の追い込みも集中力があって力強いものでした。

三楽章、弱音部分は良いのですが、ティンパニが入ると音が歪んでしまうので、音が暴れているように聞こえてしまい、弱音の部分と真逆になってしまいます。トリオのホルンはあまり伸びはありませんが、美しいです。クラリネットに強弱の変化を付けています。

四楽章、弱音の内側に凝縮するような演奏と、録音による強奏の暴れるような音のギャップに戸惑います。

弱音の凝縮するような集中度からすると、録音状態が良ければかなり良い演奏だったのではないかと想像できますが、この録音ではいかんともしがたい。
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