カテゴリー: 交響曲

ショスタコーヴィチ交響曲第9番

ショスタコーヴィチの交響曲第9番は、1945年に作曲された作品で、彼の交響曲の中では比較的軽快でユーモアに満ちたものです。彼の前作である第7番「レニングラード」や第8番が戦争の影響を色濃く反映しており、重々しくドラマチックな内容だったのに対し、第9番はまるで聴く人の期待を裏切るかのように、短く軽妙で、風刺的な要素が感じられます。

この交響曲は、5つの楽章で構成されていますが、通常の交響曲のように大規模な展開はなく、むしろ古典的な構成に回帰した感じがします。当時のソビエト連邦では、戦争勝利を記念する荘厳な作品が求められていたため、ショスタコーヴィチが第9番で軽妙な曲を作ったことは当局から批判されました。それでも、彼はこの作品にユーモアと皮肉を込め、聴衆を驚かせました。

第9番は、以下のような特徴的な要素を持っています:

  1. 軽快なテンポと明るい旋律 – 第1楽章は明るいマーチのようなリズムで始まり、軽やかで楽しい雰囲気が漂っています。
  2. 風刺的でコミカルな要素 – 随所にショスタコーヴィチらしいユーモラスな表現があり、特に第3楽章の変則的なリズムや、第4楽章の皮肉を込めた短いテーマは独特です。
  3. ユニークな構成と短い楽章 – 全体として短めの楽章が並んでおり、壮大なフィナーレというよりも、軽妙なエンディングが印象的です。

ショスタコーヴィチの交響曲第9番は、戦後の沈鬱な気分から少し解放されるかのように、聴く人に軽い息抜きを与える作品といえるでしょう。その風刺的な内容と明るさが、聴衆や批評家の間で物議を醸し、ショスタコーヴィチの多面的な音楽性を象徴するものとして評価されています。

キリル・コンドラシン/ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー

★★★★★

一楽章、速いテンポの導入部。鬼気迫る表現です。明るいトロンボーン。引き締まった緊張感が素晴らしい。

二楽章、独特の暗い雰囲気の木管。絶望的な弦。

三楽章、集中力が高く、強いエネルギーを感じる演奏です。

四楽章、重量感のあるチューバ。悲痛なファゴット。

五楽章、ゆっくり目のファゴット。オーボエが入っても落ち着いたテンポです。次第にテンポが速まって緊張感が高まります。コーダの直前で少しテンポが落ちました。

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ワシリー・ペトレンコ/ロイヤル・リバプールフィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

一楽章、快速で明快な導入部。伸びやかで明るいトロンボーン。筋肉質で弾力のある表現で、精度も高いです。

二楽章、感情が込められてゆっくりとしたテンポのクラリネット。ゆっくりと吐き出すような弦。暗く絶望感を感じさせるような演奏です。

三楽章、精緻で見通しの良い演奏。鋭く響くトランペット。

四楽章、控えめなトロンボーンとチューバ。暗いながらも暖かみを感じるファゴット。

五楽章、ゆっくり目です。オーボエが入るとスピード感のある演奏へと一変します。精緻で爽快感のある演奏はとても心地良いものです。終盤の金管あたりからの加速も見事でした。

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アレクサンドル・ラビノヴィチ=バラコフスキー/シンフォニア・ヴァルソヴィア

★★★★★

一楽章、ソフトなタッチの導入部。生命観のある演奏です。柔らかいトロンボーン。かなり積極的な表現です。

二楽章、感情がこもって豊かな表現のクラリネット。弦もテンポが動いて豊かな表現です。

三楽章、速めのテンポでここでも積極的な表現です。スネアは緩めです。

四楽章、余裕があって美しいトロンボーンとチューバ。感情豊かなファゴット。

五楽章、弦が入ってからかなり速いテンポになります。粒だって生き生きとした演奏です。駆け抜けて爽快に終わりました。

コンスタンティノス・カリディス/WDR交響楽団

★★★★★

一楽章、かなり早めのテンポで荒々しい導入部。ソフトなトロンボーン。終始激しい演奏です。

二楽章、陰影のある豊かな表現のクラリネット。表現の幅が広い演奏です。ゆったりと歌うフルートも良い表現です。

三楽章、この楽章も速めでとても活発な表現です。ティンパニもかなり存在感があります。

四楽章、グイグイと進むトロンボーンとチャーバ。ファゴットもこれ以上出来ない程の広い表現です。

五楽章、この楽章はゆったりとしたテンポですが、やはり表現はとても豊かです。一転してオーボエから速いテンポです。駆け抜けて終わりました。

この作品を表現し尽くしたような演奏でした。

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ユッカ=ペッカ・サラステ/WDR交響楽団

★★★★★

一楽章、豊かな残響で、生き生きとした導入部。フワッとした柔らかいトロンボーン。ゆったりとしていて、伸びやかで広々とした演奏です。

二楽章、ギュッと内側に込められた密度の高いクラリネット。不安が迫ってく来るような表現の、柔らかい弦。

三楽章、テンポも速く、活発な表現です。濃密で、一音一音がガリガリと迫って来ます。

四楽章、弱めですが、豊かな表現のトロンボーンとチューバ。豊かな表現のファゴット。

五楽章、ゆっくり目のファゴット。オーボエからテンポが速くなります。コーダで加速して爽快に終わりました。

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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立交響楽団


★★★★★

一楽章、せわしなく速いテンポの導入部。笑うようなトロンボーン。ピッコロも活発な動きです。吠える金管。怒涛のように突き進む演奏です。

二楽章、深く歌うクラリネット。ざわざわとする弦。実に味わい深い楽章でした。

三楽章、ゆっくり目で抜けの良いクラリネット。力強いトランペットが炸裂します。

四楽章、この演奏の中では控えめなトロンボーンとチューバ。ファゴットも切々と歌います。

五楽章、ゆったりとしたファゴット。大きなテンポの変化が無く進みますが再現部の前で急加速。再現部の直前でまたテンポを落とし、その後また加速と目まぐるしく変化します。スヴェトラーノフらしい痛快な演奏でした。

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ケンナジー・ロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省交響楽団

★★★★★

一楽章、とても静かに始まります。とても積極的で大きな表現です。バリバリと響くトロンボーン。ロジェヴェンらしい下品な演奏。考えられることやり尽くすような演奏です。脂ぎった濃厚な曲に生まれ変わっています。

二楽章、とても陰鬱なクラリネット。感情を込めて表現します。フルートも暗く密度が高いです。暗いですが、消え入るような弱音と、力のある強い音の振幅が大きい。

三楽章、速いテンポで勢いのある木管。鋭く遠慮の無い金管。

四楽章、バリバリととても下品に響くトロンボーンとチューバ。濃厚に表現するファゴット。とても引き込まれる演奏です。

五楽章、軽い表現になったファゴット。木管の高音は鋭く突き刺さって来ます。表現の幅が広く力強い演奏でした。

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ウラディミール・スピヴァコフ/ロシア・ナショナルフィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

左のジャケット写真とは違う演奏です。2014年の録音。

一楽章、大きな表現の導入部。引き締まって緊張感のある演奏です。伸びやかなトロンボーン。緩く抜けの良いスネアが鋭く切り込んで来ます。

二楽章、憂鬱なクラリネット。緻密で生き生きとした演奏。押し寄せて来るような4拍子。

三楽章、とても濃厚な色彩感。

四楽章、かなり弱く入って次第に強くなったトロンボーンとチューバ。かなり強いシンバル。

五楽章、ゆっくりとしたテンポで始まります。かなり情報量が多い。快速のコーダ。

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ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団

★★★★☆

一楽章、丁寧な表現で明快な導入部。立ち上がりの鈍いトロンボーン。タロールのようなピッチの高いスネア。艶やかで美しいヴァイオリンのソロ。

二楽章、くっきりとした輪郭のクラリネット。不安を感じさせる弦。とても美しい響きです。

三楽章、ゆっくり目ですが、ここでもくっきりと明快なクラリネット。少し奥まったトランペット。

四楽章、割と軽めのトロンボーンとチューバ。美しいですが、あまり大きな表現はしないファゴット。

五楽章、とてもゆっくりとした冒頭。オーボエが入って少しテンポが速くなりますが、それでも遅めです。混沌として再現部で一変して明快になります。

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ニコラス・コロン/hr交響楽団

★★★★☆

一楽章、落ち着いて、深みのある導入。明るいトロンボーン。強いピッコロ。とてもクッキリとした明快な演奏です。

二楽章、陰影を伴い広い表現のクラリネット。諦めのような弦。

三楽章、色彩感の濃厚な演奏です。鋭く響くトランペット。

四楽章、控えめなトロンボーンとチューバ。明るく浅いファゴット。

五楽章、ゆっくり目ですが、若干短めに演奏されるファゴット。その後は流れるように続きます。混沌として来て再現部。駆け抜けて明快に終わりました。

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セルジュ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団

★★★★

一楽章、ゆっくりとした導入部。柔らかいトロンボーン。とても精緻で、重量感があります。

二楽章、消え入るような弱音。密度が濃く厚い響き。遅い演奏ですが、緊張感は保たれています。

三楽章、かなり遅い演奏です。力強いトランペット。

四楽章、荒ぶるトロンボーンとチューバ。クラッシュシンバルが入りました。暖かいファゴット。

五楽章、この楽章はかなり遅いテンポです。この作品の演奏としては、全く別世界です。オーボエが入ると一般的なテンポになりました。第一主題になるとまた少し遅くなります。チェリビダッケらしい重厚な演奏です。再現部はとても賑やかです。これまでとは一転して快速にコーダ。

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マリス・ヤンソンス/オスロ・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、編成が小さいように感じる軽やかな導入部。大きく響くトロンボーン。筋肉質で動きの明快な演奏です。

二楽章、かなり陰影のあるクラリネット。引き締まっていて、敏感な反応のある演奏です。

三楽章、控えめに響くクラリネット。細い響きのトランペット。

四楽章、力の抜けたトロンボーンとチューバ。ファゴットもクラリネット同様少し離れたところから美しく響いています。

五楽章、ゆっくりとした第一主題。オーボエが出るあたりからテンポが速くなります。スネアは締まってはいませんが抜けの良い響きで心地良いです。再現部はゆったりと大きく広い演奏で、その後テンポが一気に速まります。爽快におわりました。

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ルドルフ・バルシャイ/ケルン放送交響楽団

★★★★

一楽章、速めで軽快な導入部。明るいトロンボーン。ウェットなスネア。バルシャイの演奏にしてはメリハリがあります。艶やかで美しい響きです。

二楽章、少し離れた所からニュートラルな響きのクラリネット。とても暗い演奏です。この楽章はほの暗い雰囲気です。

三楽章、くっきりとした色彩感です。暗く伸びの無いトランペット。

四楽章、トロンボーンとチューバも暗い響きです。暗闇から浮かぶようで、一音一音丁寧なファゴット。

五楽章、ゆっくりと演奏されるファゴット。大きくテンポが上がらずとても落ち着いた演奏。コーダは緊迫感がありますが、最後は肩透かしで終わる。

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ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン/香港フィルハーモニー管弦楽団

★★★☆

一楽章、速めのテンポで生き生きとした表現です。間接音を含んだトロンボーンとピッコロ。緩いスネア。

二楽章、高音域だけ飛び抜けるクラリネット。不吉な予感を感じる弦。

三楽章、ゆったりとしたテンポです。積極的に表現しています。

四楽章、かなり余裕のあるトロンボーンとチューバ。

五楽章、あまり強い個性を感じさせる演奏ではありませんでした。

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ウラジーミル・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

★★★☆

一楽章、あっさりと淡白な導入部。明るいトロンボーン。緩いスネア。色彩感もあまり無く、演奏全体も締まりが無く、緩い感じです。

二楽章、伸びやかさが無く、押し込められたような録音。弦も暗く苦しい感じがします。この重苦しさが狙いなのか?

三楽章、この楽章も暗い演奏です。トランペットは奥まったところから鋭く響きますがやはり暗い。

四楽章、控えめなトロンボーンとチューバ。ファゴットもほの暗い雰囲気です。

五楽章、ゆっくりとしたファゴット。ここも色彩感が無く暗い。弦が入ってから少しずつテンポが速くなります。コーダに入ると一転してお祭り騒ぎのようになりました。

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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★

一楽章、ねっとりと尾を引くような演奏です。鋭く立ち上がるトロンボーン。独墺の作品なら潤いのある演奏になるのだと思いますが、ちょっと趣を異にする演奏です。

二楽章、とても静かに始まるクラリネット。ねちっこくテンポが動きます。フルートが入る頃にはかなり遅くなっています。4拍子はさらに遅く完全にバーンスタインの世界です。かなりねちっこい演奏です。

三楽章、この楽章もかなり遅い。

四楽章、重厚なトロンボーンとチューバ。暖かいファゴットはかなり濃厚な表現です。

五楽章、クレンペラーも遅い演奏でしたが、それに濃厚でしっとりした音色と濃厚な表現が加わった演奏でかなり重たいですが情報量はかなり多い演奏です。
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セルジュ・チェリビダッケ/スウェーデン放送交響楽団

★★

一楽章、チェリダッケにしては快速の導入部。明るいトロンボーン。ウェットなスネア。炸裂せずに抑え気味な金管。

二楽章、この楽章も普通のテンポです。1964年の録音らしいので、晩年のような遅いテンポで独特の味わいのある演奏ではありません。消え入るような弦が美しい。

三楽章、かなりゆっくりとしたテンポで始まります。ここでもトランペットは詰まったような響きです。

四楽章、控えめなトロンボーンとチューバ。細く、少し首を絞められたように窮屈な響きのファゴット。

五楽章、遅いテンポが消化し切れていないような、たどたどしいファゴット。伸びの無いトランペットがかなり気になります。

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オットー・クレンペラー/RAI国立交響楽団

一楽章、凄く遅い導入部。かなり古い録音です。テンポの動きはありますが基本的には遅く、泰然自若で全く動じない演奏で、サービス精神など微塵もありません。

二楽章、この楽章もゆっくりとした演奏です。私にとってはクレンペラーはとても苦手な指揮者です。表現らしい表現も無く流れて行くので緩い演奏に感じてしまいます。

三楽章、かなり奥まったトランペット。

四楽章、素っ気ないトロンボーンとチューバ。ファゴットも雑に聞こえてしまいます。

五楽章、この楽章も遅めのテンポです。最後にテンポが遅くなって終わりました。私には理解不能です。

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ショスタコーヴィチ交響曲第8番

ショスタコーヴィチの交響曲第8番は、1943年に作曲された重厚で暗い雰囲気の作品で、彼の交響曲の中でも特に悲劇的な内容が込められています。第7番「レニングラード」がナチス・ドイツによる包囲戦への抵抗をテーマにした明るい勝利の音楽であるのに対し、第8番は戦争の苦しみや悲劇を深く描いたもので、聴く者に強烈な印象を残します。

この交響曲は5つの楽章で構成され、シリアスでドラマチックな展開が特徴です。特に以下のような要素が見どころです。

  1. 第1楽章:深い悲しみと不安感
    第1楽章は長大で重々しく、哀しみと恐怖が感じられる音楽です。弦楽器のうねりが暗い雰囲気を強調し、金管楽器が不安なムードを煽ります。戦争の恐怖と人々の苦悩を描いたような楽章です。
  2. 第2・第3楽章:緊張と狂気
    第2楽章と第3楽章は短く、緊張感に満ちたスケルツォ的な性格を持ちます。特に第3楽章は機械的で激しいリズムが支配的で、狂気や戦争の破壊性が反映されています。
  3. 第4楽章:内面の静けさ
    第4楽章はスローで、全体として内省的な雰囲気があります。この楽章では、戦争の悲劇に対する静かな祈りや、喪失の痛みが感じられ、全体的に沈黙の中に包まれるような印象を与えます。
  4. 第5楽章:かすかな希望の光
    最終楽章では穏やかな旋律が流れ、どこか希望を取り戻すような音楽が展開されますが、明確な勝利や救いというよりも、痛みを抱えながらも未来を見据えようとするような終わり方です。

ショスタコーヴィチの交響曲第8番は、戦争の破壊や苦しみに対する深い洞察が表現されており、悲壮感と強烈な内面の叫びが特徴です。このため、戦争の「勝利」だけでなく、その裏にある犠牲と痛みを忘れてはいけないというメッセージが込められているとされています。

エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1982年ライヴ

★★★★★

一楽章、一音一音に深みのある序奏。密度が高く厳しい第一主題。淡々と冷たい第二主題。とても寂しい演奏です。もの悲しい第三主題。ティンパニは控えめです。トランペットの第二主題は安定感があって強いです。鍛え抜かれたレニングラードpoの演奏は素晴らしい。感情が込められて悲痛なイングリッシュ・ホルン。

二楽章、音が溢れてきて圧倒されます。色彩感もとても濃厚です。

三楽章、高い集中力が感じられる均整の取れた演奏。力強いトランペット。

四楽章、薄いドラば盛大に鳴ります。早めに静まって、かなり抑えられた葬送の音楽。コントラバスの上を漂うヴァイオリン。鋭く響くピッコロ。陰影のあるクラリネット。かなり暗い雰囲気の演奏です。

五楽章、少しずつ雰囲気を変えるファゴット。高い緊張感を保ち続ける見事な演奏です。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1983年3月15日

★★★★★

一楽章、少し遠目で柔らかい序奏。冷たい第一主題。第二主題も冷徹に厳格に進みます。鬱々として暗い第三主題。ティンパニは控えめです。トランペットは少し奥まっていますが、安定感があります。行進曲風の部分もどっしりとした安定感です。整然としていて、統制が取れています。淡々としたイングリッシュ・ホルン。

二楽章、見事な集中力。軽々と演奏しているように聞こえますが、鍛え抜かれたレニングラードpoの集中力は素晴らしい。

三楽章、深みのある弦の刻み。ムラヴィンスキーが完璧にコントロールしていて、全く乱れることはありません。素晴らしいトランペットのソロ。

四楽章、割と早めに静まります。とても静かで凝縮された葬送の音楽。コントラバスの上をヒラヒラと舞うようなヴァイオリン。僅かにビブラートが掛かったホルン。最初は少しかすれたように響くピッコロ。高音が突き抜けて、次第に舞い降りて来ます。密度の高いクラリネット。

五楽章、雲の中から日が差すようなファゴット。集中力が高く歌うチェロ。鋭く冷たいオーボエ。切れ味鋭い刃物のような金管。

キリル・コンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

一楽章、重量感のある序奏。消え入るように弱く演奏される第一主題。少し速めですが、第二主題も静かですが豊かに歌います。第三主題は弱々しい。スネアきかなり近い。ミキシングのミスだと思います。全体に速めのテンポでグイグイと進みます。トランペットも力強いです。アレグロはかなり速いです。激しい打楽器のクレッシェンド。哀愁を感じさせるイングリッシュ・ホルンは細身で少し遠いです。

二楽章、この楽章も速めのテンポでかなり荒々しい。速いテンポが緊迫感を生んでいます。超絶技巧のような演奏。

三楽章、少しアンサンブルが緩い弦の刻み。この楽章も速いテンポでくっきりと描き分けられて行きます。強烈なティンパニ。

四楽章、尋常では無い強奏。葬送の音楽も速いテンポで、とても静かです。とても振幅の激しい演奏で、魂をぶつけて来るような感じです。

五楽章、前の楽章とは対照的にゆっくりと、日が差すようなファゴット。とても積極的に表現されて、激しく叩き付けるような演奏です。ティンパニの強打は凄い!どの演奏とも違う独特の世界です。

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ベルナルト・ハイテンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2000年

★★★★★

一楽章、勢いのある序奏。かなり激しく反応しているオケ。第一主題は極端に音量を落とすことはありません。大きなうねりのある演奏です。第二主題も豊かな表現です。弦を中心に盛り上がるエネルギー感も凄いです。悲しみが伝わって来るイングリッシュ・ホルン。

二楽章、強いティンパニの一撃、弦も生き生きとした表現です。

三楽章、弦の刻みの間に入るコントラバスも濃厚で、鮮明な色彩感です。柔らかいトロンボーンの刻み。ベルリンpoらしい引き締まったスネアも良い。

四楽章、冒頭はあまり強いエネルギー感ではありません。静まってからの表現も意欲的です。どの楽器も良く表現しています。

五楽章、のどかで穏やかなファゴット。打楽器のロールの後のトロンボーンでテンポを落としました。音楽に命が宿っているような生き生きとした演奏です。

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クリストフ・エッシェンバッハ/エーテボリ交響楽団

★★★★★

一楽章、ゆったりとしたテンポで、チェロのジーと言う響きが強い序奏。独特のバランスです。ゆっくりと凝縮した第一主題。第二主題もゆっくりです。第三主題もゆっくりですが、音が拡散せず、ギュっと締まって強い音です。一つ一つの音に力がこもっています。金管も炸裂してかなり激しいです。まるでマーラーを聞いているような激しさです。引き締まって細身のイングリッシュ・ホルンですが、感情を込めて訴えて来ます。

二楽章、ゆっくりと粘りのある表現。大きくテンポを動かす部分もあります。録音にもよるのかも知れませんが、音が前に出て来るので、とても激しい演奏に感じます。

三楽章、乾いた響きでリズムが刻まれれます。柔らかくリズムを刻むトロンボーン。激しいクライマックス。

四楽章、力を込めたまま静まって行きます。暗い葬送の音楽。絶望的に暗い演奏です。

五楽章、よく歌うファゴット。続くチェロは硬く陰影があります。明確で強い表現です。暗闇の中から響くようなバスクラもとても豊かな表現です。続くファゴットもテンポも動いて表現します。

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ワシリー・ペトレンコ/ロイヤル・リバプール管弦楽団

★★★★★

一楽章、厚みがあって柔らかい序奏。とても抑えられた第一主題。第二主題も内に秘めた静かな演奏です。暖かみのある第三主題。若干緩めですが、スネアが良く鳴っています。金管は抑えられていて前には出て来ません。ペトレンゴはとても良くオーケストラをコントロールしています。良く整ったバランスの録音です。

二楽章、重量感は無く、軽く美しい演奏です。

三楽章、ガリガリと乾いた響きでリズムを刻みます。とても良く響きますが、悲痛では無い木管。キリッとしたトランペットのソロ。ティンパニも軽い響きです。

四楽章、大太鼓が硬い撥で鋭く強打しています。葬送の音楽も静かですが、それ程暗いものではありません。ホルンも細身で美しい。ピッコロもピンポイントで美しい。とても録音は良いです。

五楽章、柔らかく歌うファゴット。抑制された端正でとても美しい演奏です。

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マリス・ヤンソンス/ピッツバーグ交響楽団

★★★★★

一楽章、コントラバスの厚みは無く、エッジの効いた序奏です。とても静かで消え入るような第一主題。層が重なって拡がります。第二主題も線が細くロシアの音楽のイメージとはかなり違う演奏です。かなり寂しい雰囲気の第三主題。スネアはかなり遠くから響きます。トランペットは奥から強く響きますが、荒れ狂うような感じは全くありません。イングリッシュ・ホルンも細身ですが、美しい。全体にとても静かで、全く波が無く静まった湖面のような演奏でした。

二楽章、重い演奏です。とても静かで、金管が入っても整然としていて、全く波立つことがありません。

三楽章、木管も悲痛な感じは全く無く、美しく響きます。トロンボーンが刻むリズムはとてもソフトです。この作品の演奏としては、かなり異色です。

四楽章、消え入るような弱音に焦点が当てられ、聞き耳を立てるような演奏ですが、その弱音が美しい。陰鬱な雰囲気はとても良く表現しています。

五楽章、ゆっくりと演奏されるファゴットが残響を含んでとても美しい。恐らくこの作品の演奏としては、賛否の分かれるものだと思いますが、私にはとても良い演奏でした。

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ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団

★★★★☆

一楽章、柔らかくアンサンブルも緩い序奏。あまり静まらず緊張感の無い第一主題。微妙に揺れる第二主題。大きく歌う表現豊かな第三主題。とても良く歌い感情のこもった演奏です。テンポの変化も大きく、次第に表現がキリッとして来ました。

二楽章、柔らかい弦と、キリットした響きの木管が対比されます。くっきりと浮かび上がるピッコロとEbクラ。

三楽章、一音一音が離れている弦の刻み。木管は強いですが、悲痛ではありません。トロンボーンは弦とは違って緩めの刻みです。ハイピッチなスネア。あまり強い盛り上がりを感じさせません。

四楽章、大きく引いて行く感じはありません。暗い葬送の音楽を演奏する低弦の上をさまようような高弦。ライヴ録音ですが、とても鮮明です。

五楽章、とても良く歌うファゴット。色んな楽器が生き生きと表現しています。

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テオドール・クルレンツィス/SWR交響楽団

★★★★☆

一楽章、重量感のある序奏。ウェットで濃厚な色彩感。とても緊張感のある第一主題。ゆっくりと丁寧に演奏して行きます。第二主題も消え入るような静寂感です。第二主題もゆっくりとしています。弦の中に埋もれて響く金管。色彩感はとても濃厚で密度も高い。重苦しい雰囲気もあります。

二楽章、柔らかく始まりました。ピンポイントに浮かぶ表情豊かな木管。

三楽章、ガリガリと刻まれる弦。あまり悲痛な響きでは無い木管。残響を伴って柔らかいトランペットのソロ。

四楽章、重々しい音楽が次第に静まって行きます。葬送の音楽もとても静かです。美しいホルン。暗い雰囲気はとても良く表現されています。

五楽章、柔らかくこもった響きのファゴット。打楽器も入って盛り上がる部分でもそんなに強いエネルギー感はありません。テヌート気味のバスクラ。次第に脱力して行くような表現がとても良い。

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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団

★★★★☆

一楽章、激しい序奏。埃っぽくでザラザラした第一主題。第二主題もザラザラしていますが、ムラヴィンスキー独特の緊張感が伝わって来ます。ウェットなスネア。金管もかなり激しい演奏です。生々しいイングリッシュ・ホルン。トランペットはかなり強く、振幅の大きな演奏です。

二楽章、かなり激しい表現です。ピッコロの演奏も厳しい。

三楽章、乾いた響きの弦。悲痛な響きの木管。濃厚な色彩感もこのコンビの特徴です。

四楽章、良く歌うファゴット。ムラヴィンスキーらしい厳しい表現です。

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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロンドン交響楽団


★★★★

一楽章、ちょっとレンジが狭い感じの録音です。歪っぽくてザラザラした第一主題。第二主題もヴァイオリンの弱音は埃っぽい。第三主題は憂鬱で寂しい演奏です。展開部はかなり遅いです。スヴェトラーノフの演奏なので、もっとガツンと来るかなと思っていましたが、あまり強烈な演奏ではありません。イングリッシュ・ホルンは淡白です。トランペットはかなり強烈に響きました。

二楽章、かなり粘っこい表現です。一楽章よりもコントラストや表現が出て来ますが、それでもスヴェトラーノフの本調子では無いように感じます。

三楽章、かなり乾いた刻み。かなり演奏が生き生きとして来ました。ピリッとしたトランペットのソロはとても良い。緩いスネア。それぞれの楽器が立ってきました。

四楽章、あまり暗くは無く、歌う葬送の音楽。ピッコロは抑えられていて静かです。

五楽章、明るい雰囲気に一変するファゴットがとても良い表現です。秘めたようなチェロ。最初は寝ぼけているような演奏でしたが、完全に生き返って、深く抉った見事な演奏になって来ました。自在な表現で完全にコントロールされています。尻上がりに良くなりましたが、前半が悪すぎました。

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ベルナルト・ハイティンク/バイエルン放送交響楽団 2006年

★★★★

一楽章、コントラバスの上に乗る弦もバランス良く聞こえる序奏。悲痛な感じはあまり無く、暖かい第一主題。柔らかい第二主題。伸びやかな表現です。金管や打楽器も制御されていて、荒れ狂うような演奏ではありません。イングリッシュ・ホルンも暖かく歌い、安らかです。

二楽章、とてもマイルドな響きで、強い表現はありません。

三楽章、落ち着いた弦の刻み。木管も悲痛な響きでは無く、控えめに響きます。トロンボーンも整然と演奏します。トランペットはレガート気味に演奏します。スネアも程よく締まっています。

四楽章、ゆっくり目のテンポで丁寧に演奏しながら弱まって行きます。ここでも暖かみのある葬送の音楽。ムラヴィンスキーのような冷徹な演奏ではありませんが、こんな演奏もありかなと感じます。

五楽章、のどかで安らかなファゴット。クライマックスでもそんなに大きな振幅は無く、少し平板な感じもありますが一つ一つの響きはとても美しく魅力的です。

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セミヨン・ビシュコフ/WRD交響楽団

★★★★

一楽章、鮮明な響きです。密度の高い第一主題。第二主題も静かに切々と演奏されます。物悲しい第三主題。展開部の打楽器やトランペットは良いバランスで、落ち着いています。

二楽章、少し遅めのテンポで克明に表現します。痛みを感じさせる演奏です。

三楽章、枯れた響きの弦に悲鳴のように響く木管。スネアも引き締まっていて良い音です。

四楽章、前の楽章の悲痛な響きから、諦めにも似たような響きになり、悲し気な演奏になります。重苦しい雰囲気はとても良く表現しています。

五楽章、どこか陰のある音楽です。オケも上手く過不足なく表現されています。

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ルドルフ・バルシャイ/ケルン放送交響楽団

★★★

一楽章、豊かな残響で美しいですが、少し薄い響きの序奏。極端に音量を落とすことなく演奏される第一主題。ゆっくりと丁寧で美しい演奏です。深く刻まれるリズムに乗って柔らかく響く第二主題。かなり憂鬱な第三主題。展開部に入ってもテンポは遅く、ちょっと鈍重な感じを受けます。金管はバランス良く、突出して来ることはありません。録音はとても良いです。とても良く歌うイングリッシュ・ホルン。全体に静かで美しい演奏です。暗い雰囲気はとても良く表現しています。

二楽章、引きずるように重い表現です。この重さが鈍さにも繋がるように感じてしまいます。とても丁寧なのですが、その分勢いが無い。

三楽章、落ち着いた弦の刻み。木管も美しく、悲痛な響きではありません。トロンボーンの刻みも柔らかい。余裕を感じるトランペット。

四楽章、淡々と演奏される葬送の音楽。

五楽章、控えめなファゴット。丁寧で落ち着いていて、安定感がありますが、表現はあまり積極的ではありません。

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クルト・ザンデルリンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1997年

★★★

一楽章、あまり重量感が無く、密度も薄い序奏。ゆっくりと注意深く演奏される第一主題。穏やかな第三主題ですが、やはり密度は薄い。金管や打楽器は制御されていて、落ち着いています。ロシア音楽特有の凶暴さは感じません。哀愁に満ちた再現部。密度は濃くありませんが、注意深く丁寧な演奏が印象に残ります。

二楽章、ゆっくり目で、粘りのある表現です。金管は常に控えめで突き抜けて来ることはありません。

三楽章、ビオラがマットです。強い主張は無く、作品をありのままに演奏している感じですが、色彩感もあまり濃くはありません。引き締まったスネアはベルリンpoらしい。

四楽章、葬送の音楽ですが、そんなに暗く悲痛なものではありません。暗い音楽ですが、とても穏やかで、波がうねるように音楽が交錯するような演奏ではありません。

五楽章、とてもゆっくりとしたテンポで、穏やかです。チェロも淡々とした演奏です。盛り上がった場面では、ここぞと言う所で、粘っこく濃厚な表現もあります。テンポを少しずつ落として行くところもとても穏やかです。最後もそんなに暗くはなりませんでした。

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ケンナジー・ロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省交響楽団

★★★

一楽章、豊かな残響と高音域を少し強調した響き。冒頭から熱量の高い序奏です。落ち着いた始まりから振幅の大きな第一主題。内に秘めたような第二主題。憂鬱ですが、表現は大きい第三主題。展開部に入って、打楽器と金管が強烈です。シャリシャリとしたスネア。トランペットも熱を帯びて凄い演奏です。この作品でこれ程まで荒れ狂う演奏は初めです。ロジェストヴェンスキーらしい爆演です。艶めかしいイングリッシュ・ホルン。突然強く立ち上がるトランペット。

二楽章、速めのテンポで活動的です。とても生々しい演奏です。とにかくトランペットが強烈です。

三楽章、潤いのある弦の刻み。絶叫する木管。ヤンソンスの演奏とは対極の演奏です。ビリビリと鳴るトランペット。ジャリジャリとウェットなスネア。

四楽章、ビリビリと下品な響きが静まって行きます。騒々しい葬送の音楽。ビブラートの掛かったホルンも下品に感じます。潤いのあるクラリネット。

五楽章、速めのテンポであまり味わいの無いファゴット。伸びやかなチェロ。高音域が強調されていて、木目が粗く、ちょっと痛い響きです。バリバリと響くティンパニ。ギョッとするように飛び出すトロンボーン。サービス精神旺盛な演奏なのですが、そんな作品なのか?と感じるところもあります。

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マクシム・ショスタコーヴィチ/ロンドン交響楽団

★★☆

一楽章、シルキーで滑らかな序奏。ゆっくりと注意深く演奏される第一主題。これでもかと言うくらい濃密ですが、かなり遅く少し間延びしているように感じます。第二主題もかなり遅いですが、オケの集中力は高いです。陰鬱な第三主題。展開部に入ってかなり凶暴になります。打楽器のロールも盛大です。ストレートであまり歌わないイングリッシュ・ホルン。かなり力のこもった演奏ですが、少し凡長な感じがあります。

二楽章、この楽章もかなりの力感です。力が入っていて、激しい演奏で悪くは無いのですが、直球勝負のようで単調です。

三楽章、かなりの力演です。強弱の振幅も大きく、ロンドンsoも上手く、マクシムの本気度の高さも感じるのですが、あまりにもストレート過ぎて魅力が乏しいのがとても残念です。

四楽章、凄いパワーから少しずつ穏やかになります。かなり抑えられた葬送の音楽ですが、あまり悲しさや暗さはありません。

五楽章、静かに始まり動きが加わるファゴット。チェロも静かに流れて行きます。力のこもった振幅の大きな演奏でしたが、あまりにも浅い演奏に感じました。

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ベルナルト・ハイティンク/シュターツカペレ・ドレスデン 2004年

★★

一楽章、ゆっくりと柔らかく丁寧な序奏。少し埃っぽい第一主題。乾いていて潤いの無い第二主題。細い響きの第三主題。緩いスネア。金管もザラザラしていて、あまり美しい響きではありません。トランペットの強奏も汚い。

二楽章、ゆったりとしたテンポで堂々とした演奏です。

三楽章、乾いた響きの弦の刻み。木管は強くはありませんが悲痛な響きです。トランペットが歪んでいるのか、そんなに強い訳では無いのに、とにかく汚い。

四楽章、大太鼓のインパクトは硬い撥で、とても良い音です。葬送の音楽はあまり暗くはありません。あまり悲痛な感じはありません。

五楽章、柔らかくのどかな雰囲気のファゴット。録音の影響なのか色彩感もあまり感じません。トロンボーンは重量感があります。

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ウラディーミル・ユロフスキ/オーケストラ不明

一楽章、くっきりとした低弦と、密度薄く上に乗る弦。かなり音量を落とした第一主題。第二主題も静かで集中力の高い演奏です。緩いスネア。金管は奥に引っ込んでいて、音圧の変化が無く平板に聞こえます。淡々としているイングリッシュ・ホルン。

二楽章、録音のせいか、色彩も淡白で、密度の薄い演奏に感じます。

三楽章、ユロフスキの経歴からすれば、2000年代の録音のはずですが、どうしてこれほどまでに密度の薄い響きなのか。

四楽章、オフ気味で重量感も無く、演奏を楽しめませんでした。

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ショスタコーヴィチ交響曲第6番

ショスタコーヴィチの交響曲第6番は、1939年に作曲され、彼の交響曲の中でも特にユニークな構成と性格を持つ作品です。この交響曲は、彼の5番の成功後に作曲されたものであり、当時のソビエト連邦の政治的な影響を受けつつも、彼の独自の表現が色濃く現れています。

交響曲第6番は、伝統的な4楽章構成を取らず、3楽章構成になっている点が特徴です。また、楽章の性格が大きく異なり、対照的な面が描かれています。

各楽章の特徴

  1. 第1楽章:重厚で沈鬱なアダージョ
    第1楽章は長く、重々しく暗い雰囲気が漂います。弦楽器による深い表現が印象的で、内面の葛藤や不安を感じさせます。この楽章は、ショスタコーヴィチ特有の沈痛さと緊張感があり、まるで静かに苦しみを抱え込んでいるような音楽です。
  2. 第2楽章:活気あるアレグロ
    第2楽章は一転して、明るく軽快なアレグロです。このスケルツォ的な楽章はユーモアに満ちており、ウィットに富んだ軽やかな旋律が特徴です。皮肉や風刺が感じられ、聴く者に意外性を与える楽章になっています。
  3. 第3楽章:陽気で賑やかなプレスト
    最終楽章はさらにテンポが速くなり、陽気で勢いのある音楽が展開されます。行進曲風のリズムと遊び心のあるメロディが織り交ざり、祝祭的な雰囲気さえ感じさせます。しかし、そこにはどこか皮肉や軽妙な風刺が含まれており、単純な明るさだけではない独特の雰囲気を持っています。

全体の印象と背景

第6番は、特に第1楽章の重さと第2、3楽章の明るさという対比が際立っています。第1楽章では厳粛さと悲哀が表現されているのに対し、後半の2つの楽章でその重さが解消され、むしろ皮肉やユーモアが前面に出てくるという流れです。

ショスタコーヴィチがこの交響曲で表現したかったのは、単なる悲壮感や勝利の明るさではなく、ソビエト社会における複雑な感情の混在だったとも言われています。当時の政府からの期待を裏切るかのように、壮大な勝利のテーマはありませんが、それがむしろショスタコーヴィチらしい作品のユニークさとして評価されています。

このように、第6番は一見矛盾する感情の混在が感じられる作品で、彼の内面や当時の社会状況が色濃く反映された作品として知られています。

キリル・コンドラシン/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

★★★★★

一楽章、コンセルトヘボウの演奏ですが、厳しい響きです。テンポも速めで、切迫感があります。速いテンポで追い込まれて行くような感じがします。大きな苦悩や悲しみも表現されています。他の演奏とは一線を画すような壮絶な演奏です。

二楽章、勢いのあるトランペット。かなり凄みのある演奏です。まさにコンドラシンとオケの真剣勝負のような感じです。

三楽章、速めのテンポで若干乗り遅れている奏者もいるような感じの冒頭でした。空気感が他の演奏と全く違う。バランス良く爽快に鳴り響いて終わりました。
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パーヴォ・ヤルヴィ/エストニア・フェスティバル管弦楽団

★★★★★

一楽章、一体感のあるまとまった冒頭。伸びやかで美しい響きです。一つ一つの楽器がくっきりとしています。伸び伸びと響く金管がとても気持ちいい。静寂感もありますが、冷たく厳しい響きではありません。

二楽章、キュルキュルと明るいEbクラ。メリハリのある表現。突き抜けるトランペット。凄いエネルギーです。テンポが動いて粘る部分もなかなかです。

三楽章、かなり速いテンポです。かなり積極的な表現で聞きごたえがあります。ライブならではのミスはありますが、惹きつけられます。ノリノリで爽快に弾けて終わりました。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

★★★★★

一楽章、分厚く色んな音が聞こえて、速めのテンポで激しい冒頭。とても良く歌う演奏です。急き立てる様に前へ前へと進みます。鋭い響きのトランペット。ティンパニもトロンボーンも激しい。レニングラードpoとの演奏からはかなり年数も経っていて、まるで別人のような演奏です。とても積極的で豊かな表現です。

二楽章、鬼気迫るような表現です。当時の手兵を思う通りに動かしているように感じられる自在な表現です。

三楽章、この楽章も速いテンポでとても表現の幅が広い演奏です。次から次へと溢れ出て来る音楽が凄まじいです。ヤンソンスの演奏にはこれまで、さほど魅力を感じることがありませんでしたが、この演奏は凄い!

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カルロス・ミゲル・プリエト/hr交響楽団


★★★★★

一楽章、柔らかく優しい表現です。大きい表現ではありませんが、切々と歌っています。とてもバランスの良い録音で、響きも伸びやかです。

二楽章、ゆったりとしたテンポで優雅な演奏です。輝かしいトランペット。伸びやかで良く鳴るオーケストラです。

三楽章、常に余力を残して伸びやかで柔らかい響きはとても魅力的です。楽しくなってくるほど打楽器も上手い!爽快な演奏でした。
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クルト・ザンデルリンク/ベルリン交響楽団

★★★★★

一楽章、とてもゆっくりと感情が籠った冒頭です。柔らかく豊かに響くホルン。伸びやかで透明感があり、繊細です。繊細に歌う弱音と広大に響くトゥッティ。

二楽章、とても克明で色彩感も豊かです。伸びやかなトランペット。落ち着いたテンポですが、楽器の動きはとても激しいです。

三楽章、躍動感があって活発な表現です。目の前に鮮明に広がる演奏が素晴らしい。
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セミヨン・ビシュコフ/WRD交響楽団

★★★★★

一楽章、あまり思い入れの無いあっさりとした冒頭。鮮烈な高音域と暖かい中音域が特徴です。強打されるティンパニ。フルートはとても表情豊かです。強い表現や主張はありませんが、集中力の高い演奏で、聞き応えがあります。

二楽章、少し遠くから響くEbクラ。強烈なティンパニの後に響くシンバル。トランペットは控えめです。

三楽章、かなり濃厚な表現になって来ました。テンポも動きながら克明に描かれい行きます。ティンパニが際立っています。
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レオポルド・ストコフスキー/シカゴ交響楽団

★★★★★

一楽章、一体感があって厚みのある冒頭。黄金期を迎えつつあったシカゴsoの充実した響きはとても良いです。ティンパニはかなり控えめです。豊かで暖かみのある演奏ですが、とても落ち着いていて安定感があります。切々と歌う弦。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで細身のEbクラ。突き抜けては来ませんが整然と整ったトランペット

三楽章、この楽章もゆったりとしたテンポです。尖ったところは全く無く、泰然自若で堂々とした演奏です。最後も堂々と爽快に金管が鳴り響いて終わりました。

アンドリル・ネルソンス/ボストン交響楽団

★★★★☆

一楽章、ゆったりとしていますが、あまり厚みを感じない冒頭。僅かにくすんだ響きです。テンポも動いて大きな表現のトランペット。ティンパニ、トロンボーンと濃厚な表現です。フルートのソロも丁寧な表現です。

二楽章、柔らかく表情豊かなEbクラ。ビリビリと良く鳴っているトランペット。引き締まったスネアも良い。どの楽器も明瞭に聞こえる良い録音です。

三楽章、速めのテンポです。拍の刻みが強くて推進力があります。小物打楽器も良く聞こえます。爽快感がある終結でした。
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キリル・コンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、多くの人で弾いている感じが伝わる冒頭。この遅い楽章がかなりの疾走感!ぐいぐいと前へ進んで行きます。吠える金管。弱音部も抉り出すような表現。細身でビブラートが掛かったホルン。

二楽章、キュルキュルトしたEbクラ。宙を舞うようなフルート。厳しく強い表現もあれば、柔らかくサラリと流れるところもあります。

三楽章、かなり速めのテンポです。厳しく大きな表現。強烈なティンパニで終わりました。

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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1972年

★★★★☆

一楽章、エッジの立った深い彫琢の演奏です。ムラヴィンスキーらしい緊張感と集中力の高い演奏です。明確に音を分けて演奏するトランペット。弱音の凄い緊張感。

二楽章、とても真面目な表現で楽しさはありません。整然としていて制御された金管。ティパニはデッドであまり強打しません。

三楽章、快速に飛ばしますが一糸乱れぬ弦と木管。金管は録音のせいか、控えめです。
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ウラディーミル・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

★★★★☆

一楽章、豊かに表現される冒頭。強い主張があるわけではありませんが、とても深い演奏で、鬼気迫るものがあります。静寂感があって、ほの暗い空気感が良いです。

二楽章、明るい響きのEbクラ。若干奥まっているトランペットですが、トゥッティのバランスも良い。エネルギー感もあります。目まぐるしく楽器が受け継がれて行きます。

三楽章、とても落ち着いたテンポです。少し遅い感じはありますが、聞き進むうちに慣れて来ます。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

★★★★

一楽章、モノラルでザラザラとした弦の響きです。ゆっくりと濃厚な金管。これでもかと言うような濃厚な表現が続きます。ビブラートを掛けて暗い響きのホルン。独特な陰影と濃厚な表現がこの楽章の演奏としてはなかなかの説得力です。

二楽章、キュルキュルとしたEbクラ。この楽章も克明な表現です。金管が奥まってしまいます。リミッターが掛かっているようです。強烈なティンパニ。一楽章とは違って硬質な響きです。

三楽章、強い表現で克明に塗分けられて行きます。金管と打楽器が入るとかなり混濁します。盛大に叩くティンパニで終わりました。
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ケンナジー・ロジェストヴェンスキー/BBC交響楽団

★★★★

一楽章、とても暗い冒頭の表現。かなり重苦しい演奏です。強めのトランペットとホルン。暗く絶望的な雰囲気がとても良く表現されています。

二楽章、明るく開いた響きのEbクラ。テンポは落ち着いています。少しリミッターが掛かったようなトランペット。ロジェストヴェンスキーらしい大きな粘りもありますが、リミッターが掛かった録音が少し残念です。

三楽章、サービス精神旺盛な積極的な表現です。最後はほとんどディンパニだけが聞こえました。
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オスモ・ヴァンスカ/ロンドン交響楽団

★★★★

一楽章、とてもゆったりと歌う冒頭の表現。伸びやかなホルン。トロンボーンは若干奥に居て、前には出て来ません。木管は立っていて強い表現です。全体的には柔らかく伸びやかで、サラッと流れて行く演奏です。

二楽章、速いテンポで表情豊かなEbクラ。トランペットがかなり奥まっていて、強くリミッターが掛かっているような感じです。最初に設定されている録音レベルが高すぎるのではないかと思いますが・・・。克明な木管の動き。

三楽章、この楽章もかなり快速です。表現の振幅も大きい。とても良い演奏だったのですが、最後で録音レベルが下がったり不自然な録音がとても残念でした。
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レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、とても遅く粘着質な表現です。一音一音噛みしめるようで弛緩はしていません。ウィーンpoも良くこの遅さに付いて行ったなぁと感心させられます。羊皮のティンパニが独特の響きですが、個人的にはあまり好きでは無い。音楽を慈しむような演奏は、晩年のバーンスタインらしいです。

二楽章、この楽章も非常に遅い演奏です。まるで違う曲を聴いているかのようです。遅いテンポに濃厚な表現でもたれそうです。

三楽章、この楽章のテンポは常識的な範囲です。中間部はまた遅くなりました。物凄く遅いテンポでじらされて、その後快速になって、最後弾ける解放感はありました。
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ルドルフ・バルシャイ/ケルン放送交響楽団

★★★☆

一楽章、とてもゆっくりとしたテンポで始まります。伸びやかで美しい響きです。刻み付けるように克明なホルン。透明感があり涼やかな美しい響きで、あまり大きな表現は無く、作品をストレートに演奏しています。

二楽章、遠目で滑らかに響くEbクラ。力の抜けた軽い金管。ティンパニも叩き付けるようなことは無く、とても軽いタッチです。

三楽章、落ち着いたテンポで正確に音にしている感じです。感情を排して作品そのものを知るには良い演奏ですが、あまり楽しいとは言えません。最後も軽く終わりました。
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マリス・ヤンソンス/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

★★★☆

一楽章、少し離れてモワッとした録音です。音像も中心付近に集まっていてモノラルのようです。スラーのように演奏するトランペット。トロンボーンも音は長めです。ムラヴィンスキーのような冷たい響きでは無く、暖かい響きです。あまり強い主張は無く淡々と演奏されています。

二楽章、とても滑らかなEbクラ。さすがにオーケストラは鍛えられていて上手いです。

三楽章、とても静かに始まります。生き生きとした動きです。Dレンジはかなり広く、かなり大きく爆発しました。最後はティンパニだけが聞こえる言っても良い程でした。
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ユーリ・テミルカーノフ/サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団

★★★

一楽章、とてもあっさりとした冒頭の表現。アゴーギクなども無い素っ気ない演奏です。作品をストレートに伝えようとしているような演奏です。ムラヴィンスキーのような冷たい響きではありません。感情を込めることは無く、淡々と演奏されます。

二楽章、サラリと流れて行くEbクラ。とても整然としています。金管が入っても粘ることが全く無いので肩透かしを食らいます。

三楽章、とても音量を落として、速めのテンポです。テンポの動きもあり、演奏自体は精度の高い見事なものですが、面白みはありません。

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ヘルベルト・ケーゲル/MDR交響楽団(ライヴ)

★★★

一楽章、速めであっさりと始まります。ケーゲルの演奏にしてはフワッした感じです。かなり強打されるティンパニ。次第に一音一音に力のあるケーゲルらしい演奏になって来ます。不穏な雰囲気がとても強い演奏です。

二楽章、楽しい感じは全くありません。とても不穏な感じです。金管も整っていて、良く制御されています。

三楽章、とても勢いのある演奏です。かなり強くガリガリと弾く弦。どの楽器も一音一音がとても強いです。最後はサラリと演奏して終わりました。
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サー・エイドリアン・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★

一楽章、ゆっくりと刻み付けるような冒頭。クレッシェンドしているようなヴァイオリン。一音一音に力が感じられる演奏です。一音一音力が込められた演奏から、流れの良い演奏に変わります。静寂感はあるものの、少し温度感は高い感じです。

二楽章、とても楽しそうなクラリネット。枯れた響きのトランペット。活発な動きのある演奏です。

三楽章、積極的な表現で動きがあります。抑え気味のトロンボーン。最後も大きく盛り上がることはありませんでした。
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マリス・ヤンソンス/オスロ・フィルハーモニー管弦楽団

★★

一楽章、あっさりとした冒頭。奥行き感のあるホルン。速めのテンポで少し表面的に感じてしまいます。バイエルン放送soとの演奏のような濃厚な表現はありません。同じ指揮者なのに何故と思う程よそよそしく、浅い表現です。

二楽章、キュルキュルと響くEbクラ。トランペットも軽く浅い。技術の高いオケには何の不満もありませんが、この演奏を聴くべき何かが感じられません。

三楽章、とても軽くサラリと演奏されて「どうだ!」と言われているような感じで、技術の高さだけが印象に残るような感じで、ヤンソンスの表現や主張が感じられないのがとても残念です。
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ウラディミール・アシュケナージ/デンマーク国立交響楽団


★★

一楽章、たっぷりとした表現でゆっくりと演奏されます。とても感情の籠った表現です。暖かい響きですが、明晰で豊かな表現です。

二楽章、この楽章でも積極的な表現です。トランペットはかなり奥から響きます。弦や木管の生き生きとした表現に比べるとティンパニやトランペットがかなり抑えられていて、かなり不自然です。

三楽章、この楽章も快活です。明らかにティンパニやトランペットがミキシングで抑えられています。最後もかなり抑えられていて、せっかくの演奏を録音が台無しにしているように感じました。
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ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団

一楽章、あまり深みの無い響きです。強い表現も無く淡々と進みます。弱音の緊張感なども感じられますが、標準的、模範的な演奏の域を出ません。

二楽章、爽快に鳴り響くトランペット。オーケストラも上手いのですが、何故か惹かれない。どうも表面的な演奏に感じてしまう。

三楽章、難なく演奏されているのですが、魅力が感じられない。
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ショスタコーヴィチ交響曲第4番

ショスタコーヴィチの交響曲第4番は、彼の作品の中でも特に野心的で、ドラマチックな内容を持つ交響曲です。1935年から1936年にかけて作曲されたこの作品は、当時のソビエト連邦の政治的な緊張が影響しており、ショスタコーヴィチが自らの芸術表現を大胆に追求した作品として知られています。しかし、この交響曲は発表直前に政治的圧力によりお蔵入りとなり、初演されたのは彼が亡くなるまで約25年も後の1961年でした。

交響曲第4番の構成と特徴

この交響曲は、3つの楽章で構成されていますが、特にスケールの大きい音楽が展開されるのが特徴です。演奏時間も1時間を超えるため、聴く者に強いインパクトを与えます。また、マーラーの影響が顕著で、彼の音楽に通じる壮大さや劇的な展開が見られます。

  1. 第1楽章:アレグロ・ポコ・レント
    第1楽章は長大で、様々なテーマが劇的に変化しながら展開されます。重厚なオーケストレーションと急激な音楽の変化が続き、ショスタコーヴィチ特有の緊張感と迫力が感じられます。彼の苦悩や不安が表現され、まるで荒れ狂う嵐のような音楽です。
  2. 第2楽章:モデラート・コン・モート
    中間の楽章である第2楽章は、陰鬱で内省的な雰囲気を持ち、静かで不安定なムードが漂います。落ち着いたテンポながらも、どこか不穏な気配が漂い、物悲しさや孤独感が感じられる音楽です。ショスタコーヴィチの内面的な葛藤や、ソビエト社会での抑圧された心情が反映されているとも言われます。
  3. 第3楽章:ラルゴ – アレグロ
    最終楽章はラルゴの重々しい序奏から始まり、途中でアレグロに転じて一気に盛り上がりを見せます。急速で激しいリズムが続き、オーケストラ全体が圧倒的なエネルギーで爆発するような音楽が展開されます。劇的で壮絶なクライマックスに達しながら、最後は静かに終わり、聴く者に強烈な余韻を残します。

背景と音楽的意図

第4番は、ショスタコーヴィチが純粋に自分の芸術性を表現しようとした作品です。しかし、スターリンの批判を受けた直後のタイミングで完成したため、発表は大きなリスクを伴いました。この交響曲が政治的なメッセージを含むものと解釈されることを恐れたため、彼はやむを得ず初演を取りやめました。そのため、この作品は長らく封印され、彼の「幻の交響曲」として語り継がれました。

交響曲第4番は、ショスタコーヴィチの壮大で実験的な作風を反映し、同時に彼の内面的な葛藤や不安を表現したものです。初演が遅れたことで、当時の聴衆が彼の本来の音楽的な声を聞く機会を失いましたが、現在では彼の最も重要な作品のひとつとして評価されています。

ベルナルト・ハイティンク/シカゴ交響楽団

★★★★★

一楽章、細く左右一杯に定位するオーケストラ。マットな響きの金管。テヌート気味のトロンボーン。とてもスッキリとしていたコンパクトにまとまっている感じを受けます。ゆっくりとしたテンポで丁寧に描いて行きます。複雑な作品ですがとても整然としています。ティンパニもマットな響きです。凄まじい音の大洪水もあり、静寂な弱音との振幅もとても大きいです。全体にマットな録音ですが、弦などはいぶし銀のように煌めく響きです。ハイティンクらしい細部まで行き届いた生命感のある演奏です。ゆったりとしたテンポですが、細部を抉り出すような演奏では無く、何も強調せずに全てを聞かせるような演奏です。落ち着いたプレスト。全く騒々しさは感じません。

二楽章、とても静かで流れの良い冒頭です。一楽章とは違って釜の響きがするティンパニ。ずっと夜の雰囲気です。かなりくっきりと響く打楽器。

三楽章、とても弱いファゴットですが、さりげなく歌う歌は美しい。とても遅いテンポですが、弛緩することは無く、ティンパニのクレッシェンドと共に盛り上がる金管の凄い響きはさすがシカゴso。続く弦の静寂感の対比も素晴らしい。遅いテンポでもピーンと張りつめた緊張感はハイティンクの面目躍如です。ゴロゴロと鳴るチューバ。伸びやかなトロンボーンのソロ。ティンパニの後の金管は、美しく伸びやかに炸裂します。堂々と力強く鳴り響くトロンボーン。クライマックスは凄まじい演奏でした。消え入るように静かになります。ゆっくりと美しいチェレスタ。
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キリル・コンドラシン/シュターツカペレ・ドレスデン

コンドラシン★★★★★

一楽章、モノラル録音です。マイルドな響きですが、熱気を感じる金管。荒れ狂うように交錯する金管。平板にはならず表現が豊かです。金管が限界近くの咆哮を聞かせます。強い疾走感きありませんが、嵐のように激しいプレスト。

二楽章、とても良く歌い、豊かな表現です。木管のウネウネする独特の雰囲気。

三楽章、ゆっくり目のファゴット。感情の入った演奏で、とても強い共感を感じます。遠慮なく切れ込んで来る凄みはなかなかです。限界近くで吠えるトロンボーン。モノラル録音ですが、色彩感はくっきりとしていて鮮明です。お風呂のような残響の中に響くトロンボーンのソロは軽く演奏されます。ティンパニの後の金管は、激しく不協和音がぶつかり合い、壮絶な響きです。限界ギリギリの非常に温度感の高い響きは出色です。暖かいチェレスタ。

アンドレ・プレヴィン/シカゴ交響楽団

★★★★★

一楽章、シカゴsoらしい明快に鳴る金管が印象的な演奏です。録音も良くとても見通しが良いです。ダイナミックレンジも広く、金管がグッと前に出て来ます。激しい部分では金管が盛大に鳴り響いて大迫力ですが、静寂感も素晴らしいです。冷たい響きではありませんが、この演奏なら納得です。とても伸びやかで柔らかい響きは、ロシアや東欧のオケとは一線を画すものですが、この演奏は良いです。比較的落ち着いたプレスト。猛烈に突進して来るような金管。強烈な主張はしませんが、作品の緻密さなどが確実に伝わって来ます。

二楽章、とても滑らかに流れて行きます。これだけの難曲を軽々と演奏するシカゴsoはさすがです。この作品は硬く冷たい響きが当たり前と思っていましたが、この伸びやかで柔らかい響きでも実に素晴らしい。

三楽章、正確無比で作品に書いてある全ての音が表現されているような演奏です。これだけの曲を難なく演奏するシカゴsoと、それを完璧に統率しているプレヴィンにも頭が下がります。楽しんでいるかのようなトロンボーンのソロ。ティンパニの後の金管は、壮絶な響きではありませんが、パワー全開の充実した響きです。最後のチェレスタも暖かい。

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キリル・コンドラシン/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

★★★★★

一楽章、少し離れた所から硬く強い響きです。推進力のある速めのテンポで、細部にはこだわらない演奏です。かなり激しく咆哮する金管。快速にどんどん進みます。下品なトランペット。遠慮なく打ち込まれるティンパニ。生き生きとした演奏です。プレストもかなりの疾走感です。打楽器も派手に入ります。この曲の音響的効果を最大限に狙ったような演奏です。とにかく物凄い勢いで走り抜けています。ビービーとなりミュートしたトランペット。最近の整理されて落ち着いた演奏とはかなり様相が違います。棘がいっぱい出ていて襲い掛かって来るような感じがします。

二楽章、この楽章も速めのテンポでとても表情豊かです。夜に静かに鳴り渡る打楽器。

三楽章、良く歌うファゴット。ビリビリと強烈なトランペット。粘りがあって、濃厚な色彩と叩き付けるような表現で強烈です。テンポも速めでスピード感があります。明快に鳴るトロンボーンのソロ。空気を引き裂くような表現の幅が広いソロです。ティンパニの後の金管は、壮絶に音がぶつかって鳴り響きます。憂いのうるチェレスタ。
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ケンナジー・ロジェストヴェンスキー/ボリショイ劇場管弦楽団

★★★★★

一楽章、ゆったりとしたテンポで強い響きです。トロンボーンも強烈です。明快に金管を鳴らすとてもメリハリの効いた演奏です。暴力的に叩きつけるティンパニ。弱音の表現も豊かで、ロジェストヴェンスキーらしいサービス精神旺盛な演奏です。疾走感のあるプレスト。特に強調する訳ではありませんが、さりげなくユーモアのある表現などなかなか良い演奏です。

二楽章、暖かく静かに始まります。とても静かなトリオ。とても静かな弱音とティンパニの強打との振幅もとても広い。

三楽章、とても遅いテンポで始まります。一音一音に力を込めるような演奏ではありませんが、流れの中で良く表現されています。突き刺さるようなトランペット。トロンボーンのソロもとても豊かな(下品な?)表現です。ティンパニに後の金管は、強烈に突き抜けては来ませんが、壮絶な響きはとても良く感じられます。かなりゆっくりと叩きつけて来ます。静まってからは消え入るような弦です。一転して淡々と演奏されるチェレスタ。
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キリル・コンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、金属的な響きのトランペット。トロンボーンも激しく咆哮します。力の漲るような演奏です。スタジオ録音ですが、凄まじい熱気です。木管や弦も生き生きとしています。コンドラシンの作品への共感と愛が感じられます。弱音部分では夜のような暗さも感じられます。録音の古さからか少しうるさい感じも無くはありませんが、それを上回る熱気です。表現もとても豊かです。テンポは終始速めで進みます。プレストも疾走感があります。嵐のように荒れ狂う演奏。

二楽章、この楽章も速めのテンポで明確に演奏されます。奥行き感を感じさせるシロフォン。金管はかなり前に出て来ます。闇夜に響くような打楽器。

三楽章、ゆっくり目のファゴット。ガリガリと切り込んで来る弦。最近の流れの良い演奏とは一線を画す棘がたくさんある演奏です。ビブラートを掛けて柔らかく歌うトロンボーンのソロ。速めのテンポのティンパニ。あまり音がぶつかり合わず壮絶な響きでは無い金管。あまり静まらず強い木管。うつろなチェレスタ。

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クシシュトフ・ウルバンスキ/NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、クリアで明晰な演奏です。スネアの装飾音符もはっきりと聞こえます。作品をストレートに表現するような演奏です。とても良くコントロールされていて規律正しいオケが整然と演奏しています。一時代前の混沌とした響きとは一線を画すとても見通しの良い演奏です。プレストはかなり激しく躍動感のある演奏です。スネアは締まった良い音で鳴っています。

二楽章、落ち着いたテンポで丁寧に演奏されます。ライヴ録音でありながらこれだけの透明感のある演奏は素晴らしいです。

三楽章、とてもゆっくりとしたテンポの序奏。実に精緻な演奏です。オケも粘り気の少ない爽やかな響きで、疾風怒濤のように駆け抜ける部分でも、軽々とこなして明晰な演奏を支えています。ファゴットもトロンボーンのソロもとても上手い。ティンパニに後の金管は、とても柔らかい響きで壮絶な雰囲気はありません。冷たく悲しい終盤。物悲しいチェレスタ。

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セミヨン・ビシュコフ/WRD交響楽団

★★★★☆

一楽章、一音一音に力が込められています。少し奥まった金管。強い色彩感と引き締まったアンサンブルです。とても統率が取れていて、雑味が全くありません。ゆったりとしたテンポでとてもクリアです。遅めのテンポですが、疾走感のあるプレスト。シャープに響くスネア。

二楽章、一音一音がとても丁寧で精度の高い演奏です。無駄なものを削ぎ落したようなクリアさ。静かな中から僅かに聞こえる打楽器。

三楽章、感情を込めて歌うファゴット。金管は控えめで咆哮とは遠い、極めて整然とした響きで、ロシアのオーケストラの演奏とは一線を画すものです。トロンボーンのソロも控えめです。ティンパニの後の金管は、あまり音がぶつかり合わずにスッキリとした響きです。ティパニに刻むリズムが強く響きます。壮絶な雰囲気よりも輝かしい感じがします。フワッとした響きのチェレスタ。

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アンドリル・ネルソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

★★★★☆

一楽章、鋭い響きで濃厚な色彩の演奏です。豊かな残響を伴った木管が美しい。金管が激しく咆哮することは無く、柔らかい響きで一貫しています。プレストは少し前へ行こうとする勢いがあります。強く刻み付けるような表現も無く、自然に流れて行きます。濃厚な色彩で強い響きのピッコロ。

二楽章、伸びやかで美しい弦。濃厚な色彩で美しく演奏されます。これだけ豊かな色彩感で描き分けられている演奏はなかなか無く、とても貴重な演奏です。

三楽章、ゆっくりと演奏されるファゴットがとても豊かに歌います。爆演を期待していると肩透かしを食います。とても洗練された美しさです。力が抜けて軽い金管。伸びやかに歌うトロンボーン。とてもゆっくりなティンパニの後の伸びやかで余裕さえも感じる金管。深く沈み込み消え入るような弱音。ゆっくりと物悲しいチェレスタ。
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ヘルベルト・ケーゲル/MDR交響楽団

★★★★☆

一楽章、モノラル録音のようです。引き締まった表現の第一主題。金管が咆哮するようなことはありませんが深い彫琢の演奏です。温度感が低く静寂感があります。トランペットが悲痛な表現の演奏をしますが、少し奥まっています。一音一音が立っていてとても力があります。

二楽章、硬く冷たく強い演奏です。とても集中力が高く細部まで張りつめています。浮遊する木管。

三楽章、かなり強烈に響くトランペット。深く彫られた痛烈な表現が素晴らしい。叩きつけて来るような強い弦。どの楽器も凄く力があって、一音一音に込められたエネルギーが凄い。最後の金管は、壮絶な響きには聞こえますがあまり音は前に出て来ません。静まってからも弦のピィチィカートがとても強い。最後は淡々と終わりました。

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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/フィルハーモニア管弦楽団

★★★★

一楽章、ロジェストヴェンスキーらしい粘っこい表現。ロシアのオーケストラとの演奏のような冷たい響きでは無く、温度感があります。表現は積極的で、熱気さえも感じる演奏です。フィルハーモニアoもロジェストヴェンスキーに応えてかなり咆哮します。ケーゲルの演奏程ではありませんが、一音一音に力があります。嵐のような凄いスピード感のプレスト。

二楽章、若干ザラつく弦。生き生きとした豊かな表現です。ピッコロなどもかなり前に出て来ます。

三楽章、とてもゆっくりと演奏されるファゴット。熱気を帯びたトランペットの咆哮。時折顔を出すユーモアのある旋律はとても楽しい。トロンボーンのソロは真面目に演奏されました。テンパニの後の金管は、鋭い響きです。かなり冷たい弦。あまり余韻の残らないチェレスタ。
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ルドルフ・バルシャイ/ケルン放送交響楽団

★★★★

一楽章、整然として整った演奏です。金管は控えめです。静寂感もあって流れの良い刺激の少ない演奏でもあります。強い緊張感や冷たさは無く、少し緩い空気感もあります。ティンパニはとても良い音で鳴っています。余裕を持って鳴らしながらとても精緻で、完成度の高い演奏です。凄い疾走感のあるプレストですが、咆哮することはありません。

二楽章、柔らかく伸びやかで暖かい。見通しが良く色彩感も豊かです。大きな表現をすることも無く、作品を忠実に再現しようとしているようです。

三楽章、強く感情を込めることの無いファゴット。目の覚めるようなトランペット。精緻で伸びやかな演奏はとても気持ちが良い。トロンボーンのソロも大きな表現はせず、作品に任せている感じです。硬質なティンパニのクレッシェンドの後の金管はテンポが速く、ティンパニがはっきりと聞こえて、壮絶な響きではありません。柔らかいチェレスタ。
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ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー歌劇場管弦楽団

★★★★

一楽章、響きを伴って若干モヤッとした響きです。スネアの装飾音符がハッキリと別れて聞こえました。金管は咆哮することなく、落ち着いています。とても柔らかい演奏で、とげとげしいところはありません。録音のせいか、ティンパニの強打も前には出て来ず、奥で音が広がる感じです。この尖った作品を完全に過去のものとして、マイルドに聞かせています。プレストも滑らかで落ち着いています。嵐のような激しさは全くありません。打楽器が入っても急に音量が上がることはありません。不思議なくらい穏やかな演奏です。ゆっくりなテンポでスタッカート気味では無いファゴットの演奏など、これまで聞いて来た演奏とはかなり趣きが違います。

二楽章、暖かく滑らかな弦。ガリガリと引っ掛かるようなことは全くありません。粒立ちの良い打楽器。

三楽章、どこまでも美しく柔らかく自然に流れて行く演奏。この曲のイメージとは全く違う演奏です。トロンボーンのソロもとてもの伸びやかで柔らかく美しい。とても速いテンポに加速するティンパニの後、そのままのテンポで金管になだれ込みます。金管はあまり激しく音がぶつかり合うことは無く、整った響きです。確実な足取りで正確に演奏されるチェレスタ。
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ケンナジー・ロジェストヴェンスキー/サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団

★★★★

一楽章、モノラル録音のようで何とももっさりとした音です。聞き進むと録音にも慣れて来ます。打楽器の強打はリミッターが掛かっているようです。ロジェストヴェンスキーらしい粘っとりとした表現です。プレストはそんなに速くは無く、尾を引くように表現して行きます。

二楽章、この楽章冒頭もゆっくりとしたテンポです。かなり濃厚な演奏です。それぞれの楽器の音色にも粘りが感じられるようでかなりハイカロリーです。

三楽章、とてもゆっくりとしたテンポの序奏。トランペットはかなり奥まっています。ゆっくりと濃厚で表現も豊かな演奏ですが、金管が全体に奥まっていて、伸びて来ないのが少し残念です。トロンボーンのソロもこれでもかと言うような表現です。ティンパニの後の金管もゆっくりと壮大な演奏なのですが、強く感じるだけで実際に音は前には出て来ません。サービス精神旺盛で聞かせどころ満載の演奏ですが、録音が悪いのがとても残念でした。最後のチェレスタも思いにふけるような表現でした。
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ネーメ・ヤルヴィ/スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

★★★☆

一楽章、叩きつける打楽器。少し奥まって響く金管はかなり激しく鳴らされます。かなりくっきりと浮かび上がる楽器。ゆっくりとしたテンポで良く歌うファゴット。静寂から炸裂までの振幅はかなり大きい演奏です。整然としていて鋭角に響く金管はとても心地良いものです。あまり疾走感の無いプレスト。弦は少し詰まった感じで伸びやかさには欠けます。スネアが緩く、ドタドタとした打楽器。静かな部分は消え入るような弱さなので、かなりダイナミックレンジは広いです。

二楽章、柔らかい響きの冒頭。残響を伴って柔らかく暖かい響きの演奏です。打楽器はあまり際立って聞こえません。

三楽章、鋭いトランペットやティンパニの強烈なクレッシェンドがあったり所々にギョッとさせられるような表現が散りばめられています。速い部分は快速です。ティンパニのクレッシェンドはかなり急いだ感じでした。続く金管きかなり鋭い響きで壮絶ですが、何故そんなに急ぐと言う感じもします。チェレスタもテンポが速く、少し事務的に感じました。
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サイモン・ラトル/バーミンガム市交響楽団

★★★☆

一楽章、録音レベルが低く、少し遠目に定位するオーケストラ。軽い響きの演奏です。金管も激しく前に出て来ることは無く、奥で鳴り響きます。激しく咆哮してもアンサンブルが乱れることは無く整然としています。あまり強い主張はせずに作品をストレートに演奏している感じです。疾走するプレスト。アンサンブルが整っているのか、大人数で演奏しているようには聞こえません。

二楽章、とても滑らかで尖ったところはありません。軽々とサラッと流れて行きます。あまりに軽く、滑らかに流れて行くのでBGMのような感覚になってしまいます。打楽器も耳を澄まさないと聞こえません。

三楽章、あまりに静かなので、ボリュームを少し上げた。ゆっくりと演奏されるファゴット。それでも引っかかるところはあまり無く、流れの良い演奏です。スコアをほぼ完璧に再現したような演奏ですが、一方でお行儀の良い演奏で、あまり面白くないかも知れません。トロンボーンのソロも軽いです。ティンパニの後の金管は、壮絶な不協和音ですが、ブレンドされた柔らかい響きです。柔らかく寂しげなチェレスタ。
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ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★☆

一楽章、一音一音丁寧に演奏されます。金管は咆哮しませんが、ブレンドされたバランスの良い響きです。おそらく放送用の録音で、細部までは分かりませんし、色彩感もあまり鮮明ではありませんが、とても統率の取れた演奏だと言うことは分かります。温度感も冷たくは無く、暖かいです。ハイティンクの演奏では常に感じることですが、細部まで厳格に統制された緻密な演奏です。プレストはゆったりとしたテンポで疾走感は全くありません。プレスト以外はそんなに遅いとは感じませんでしたが、一楽章だけで30分もかかっていた。

二楽章、ゆっくりと丁寧に演奏します。ケーゲルのような一音一音が強固な感じではありませんが、この演奏も、一音一音に非常に神経が込められています。豊かな響きを伴った打楽器。

三楽章、非常にゆっくりと演奏されるファゴット。金管が突出することは無く面で押してくるような感じです。表情豊かなトロンボーンのソロ。ティンパニに後の金管はかなりくすんだ響きで壮絶さは感じません。少しためらいながら演奏されるチェレスタ。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省交響楽団(ライヴ)

★★★

一楽章、シャリシャリと響くシンバル。サスペンドシンバルも確実にかぶってくる。かなり五月蠅い金管。危なっかしいオーボエ。吐き捨てるように下品な金管。かなり長い残響です。強烈なティンパニ。あまり疾走感の無いプレスト。シンバルの径が小さく刺激のある音です。アンサンブルはかなり乱れ、崩壊寸前です。ロジェストヴェンスキーらしい濃厚な表現のファゴット。

二楽章、ゆっくりと丁寧に演奏されます。ウネウネとした木管。かなりはっきりとした打楽器。

三楽章、とてもゆっくりとしたテンポのファゴット。かなり濃厚に歌います。強烈に突き刺さるトランペット。サービス精神旺盛で良く歌います。色々ありますが、楽しい演奏です。トロンボーンも楽しそうです。ゆっくりとしたティンパニの後の金管は、あまり音がぶつかり合わず思ったほど前には出て来ません。たどたどしい足取りのチェレスタ。

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ユッカ=ペッカ・サラステ/シュターツカペレ・ドレスデン

★★★

一楽章、流れの良い演奏です。とても整然としていて、壮絶な感じはありません。柔らかくて伸びやかな響きが美しいです。プレストも整然としていて、強烈な感じは無く、サラリと流れて行きます。一音一音に力を込めるよりも流れを優先しているような演奏です。

二楽章、折り重なる弦が美しい。クラリネットも滑らかで美しい。打楽器が左右に分かれていて面白い。

三楽章、ユックリトしたテンポでとても豊かに歌うファゴット。最初の頂点も控えめで広がりのある響きです。全体にゆったりとしたテンポでガリガリと刻み付けるような演奏では無く、とても軽いタッチで描かれています。ティテンパニの後の金管はかなり奥にトランペットがいて、他の楽器が周りを囲んでいるようなフワッとした響きで壮絶な響きではありません。最後もどこか暖かい。

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ヴァシリー・ペトレンコ/ロイヤル・リバプール・フィルハーモニー管弦楽団

★★★

一楽章、鋭い響きの冒頭。その後も歯切れの良い演奏です。金管は奥まっていて、木管が若干強い録音です。クリアで明快な演奏ですが、その分粘りや壮絶さは感じません。強い疾走感は無いプレスト。かなり割り切れた演奏のように感じます。

二楽章、大きな表現はせず、淡々と作品を音に変えて行きます。とても透明感の高い演奏が特徴ですが金管は咆哮せす、少し大人しい演奏です。打楽器はとても弱くあまり聞こえません。

三楽章、とても弱くゆっくりと始まります。表情豊かなファゴット。淡々と演奏が進んで行きます。作品を遠目から見ている洗練された演奏ではありますが、少し物足りない感じはあります。トロンボーンのそろも真面目です。ティンパニの後の金管も炸裂すると言う程の咆哮では無く、安定した響きで壮絶さはありません。粒立ちのはっきりとしたチェレスタ。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

★★★

一楽章、少し遠目に位置するオーケストラ。スリムでスッキリとした響きです。静寂な部分はとても美しいですが、金管が入ると少しマットな響きになります。強い表現はありませんが、丁寧には演奏されています。金管も咆哮することは無く、節度を保った演奏です。あまり疾走感は無く、落ち着いたプレスト。

二楽章、弱音部分では空間を感じさせる録音です。Ebクラが美しい。作品をストレートに音にしている感じで、ヤンソンスの主張はほとんど感じられません。打楽器も強調されません。

三楽章、とてもゆっくりと演奏されるファゴット。とても抑制されていて、金管が炸裂するようなことはありませんが、その分、弱音は消え入るように弱く演奏されます。弱音部分の色彩感や豊かな響きが美しい演奏です。控えめで柔らかいトロンボーン。ティンパニの後の金管も抑え気味で壮絶な雰囲気ではありません。淡々と演奏されるチェレスタ。
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ユージン・オーマンディー/フィラデルフィア管弦楽団

★★

一楽章、音像が大きい録音です。スピーカー一杯に音が広がります。セッション録音なので、とても丁寧に演奏されています。硬さや冷たさは感じません。全ての音が前に出てきて奥行き感はあまりありません。プレストはあまり疾走感が無く、落ち着いています。

二楽章、ゆっくりとしたテンポで大きめに始まります。安全運転で緩い感じがします。

三楽章、とてもゆっくりとしたテンポで始まります。確実な足取りで、さらに安全運転感が高まります。余裕綽綽で脱力した演奏が魅力になる場合もありますが、この作品では、プラスには働いていないように感じます。トロンボーンのソロは目の前で鳴ります。ティンパニの後の金管もとても淡白です。最後も速めのテンポであっさりとしています。
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ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(ライヴ)

一楽章、この頃のライヴ独特のモヤーッとした響きと、デッドで音が短い金管。とても静かな第二主題。ステレオ録音ではありますが、奥行き感も無く、ホルンがデッドに鳴ります。緊張感のあるプレストのフガートはなかなか良いですが、やはり金管が入るとデッド過ぎて雰囲気が悪くなります。この当時のライブ録音としてはかなり良い状態だと思いますが、この作品の複雑さや起伏の激しさを聞くには不十分です。弱音もヒスノイズに隠れて細かなところまでは聞けません。

二楽章、淡々と演奏される主題。木管楽器はどれも引き締まっていて良い響きです。

三楽章、序奏のファゴットも淡々としています。トロンボーンも非常に音が短い。ティンパニに後の金管も壮絶な響きでは無く、とてもデッドで、浅い響きです。深い闇に落ちて行くような演奏。チェレスタは速めのテンポで淡々と演奏されます。

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ブルックナー交響曲第1番

ブルックナーの交響曲第1番は、彼が本格的に作曲家としての活動を始めた時期に完成した、エネルギーに満ちた作品です。この交響曲は1866年に初演され、その後も改訂が重ねられたため、複数の版(リンツ稿やウィーン稿など)が存在します。ブルックナーにとって、この交響曲第1番は、独自の交響曲スタイルを模索する重要なステップであり、後の大規模な交響曲への道を開くものでした。

交響曲第1番の特徴と楽章構成

この交響曲は4つの楽章から構成され、ブルックナー特有の荘厳さや力強さ、緊張感が感じられる一方で、彼が当時の伝統的な交響曲の形式に影響を受けながらも、自身の個性を出そうとしている意欲が見て取れます。

  1. 第1楽章:モデラート
    第1楽章は、ブルックナー特有の荘厳で堂々とした序奏で始まります。この楽章では、ブルックナーの特徴的なオスティナート(繰り返しのリズム)が使われ、旋律の発展や転調が続きます。緊張感が高まりつつ、時折柔らかな音色が現れることで、構成の中に変化が生まれています。
  2. 第2楽章:アンダンテ
    第2楽章は、静かで抒情的な性格を持ち、ブルックナーの深い信仰心や精神的な側面が表れているともいわれます。緩やかで美しい旋律が展開され、安らぎと憂いを感じさせます。ブルックナーが得意とする、繊細で純粋な表現が感じられる楽章です。
  3. 第3楽章:スケルツォ(急速)
    第3楽章は、力強くダイナミックなスケルツォで、ブルックナーのエネルギッシュな一面が際立ちます。ここでは舞曲的なリズムが特徴的で、強いアクセントと急速なテンポが印象的です。トリオ部分では、リズムが一転して穏やかになり、明るい対照が生まれます。
  4. 第4楽章:フィナーレ(ベーヴェグト)
    最終楽章は、壮大で力強いフィナーレです。ここでは緊張感と劇的な展開が続き、ブルックナー特有の荘厳さが感じられます。主題が発展していく中で、さまざまな感情が絡み合い、最後には堂々とした終結に至ります。

全体の印象と位置づけ

ブルックナーの交響曲第1番は、彼が後に発展させていく独自の交響曲スタイルの萌芽が見られる作品です。後の交響曲に比べて規模や構成はやや控えめですが、ブルックナー特有の音楽的な要素、たとえば重厚な響きや宗教的な荘厳さ、豊かなハーモニーが随所に感じられます。

当時の音楽界で独自の位置を築こうとするブルックナーの試みが、この交響曲第1番には込められており、後に続く彼の「交響曲の道」を開く重要な役割を果たした作品です。そのため、後の大規模な交響曲群とともに、この第1番もまた彼の成長を知るうえで欠かせない作品となっています。

4o

マルクス・ポシュナー/リンツ・ブルックナー管弦楽団

★★★★★

一楽章、鮮明で、左右一杯に広がるオーケストラ。生き生きと歌う木管。第二主題も豊かに歌います。第三主題は少しリミッターがかかったように控えめでした。展開部ではテンポを落として濃密な表現の部分もありました。あまり書か慣れない音が聞こえたり中々個性的な演奏です。コーダも非常にゆっくりとしたフルートとチェロの後に加速して終わりました。

二楽章、重量感のある主要主題。静寂感があって、その中に伸びやかに響く楽器がとても良いです。第二主題も柔らかく美しい。

三楽章、スピード感のある主部。とても鮮明な中間部。テンポの動きもあってとても良い演奏です。

四楽章、速めのテンポの第一主題。第三主題の前はまさに「火のように」でした。穏やかな部分と激しい部分の振幅がとても大きいです。混然一体となったコーダ。
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パーヴォ・ヤルヴィ/hr交響楽団

★★★★★

一楽章、遠くから柔らかく響く第一主題。清々しい第二主題。N響との演奏よりも落ち着いています。速めのテンポで快活な第三主題。木管が豊かな表現をしています。トゥッティはとても充実した響きで素晴らしいです。

二楽章、筋骨隆々な主要主題。潤いがあって色彩感も濃厚です。ピンポイントで美しいフルート。表情豊かな副主題。中間部もとても丁寧です。

三楽章、非常に速いテンポですが整然としていて荒々しさはありません。精緻で美しい演奏です。速いテンポでもしっかりと表情が付けられています。少し浅いトリオのホルン。とてもスピード感のある演奏でした。

四楽章、深みのある第一主題。優しく語り掛ける第三主題。テンポが大きく遅くなったり表現の幅が大きいです。金管は気持ちよく鳴り響きます。最後はティンパニの猛烈なクレッシェンドがありました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

一楽章、深みのある第一主題。洗練されたトゥッティ。滑らかで美しい第二主題。混沌とした第三主題。豊麗に鳴り響く金管はとても美しく整然としています。ゆったりとして堂々としたコーダ。

二楽章、とても弱くホルンに隠れるような第一主題。洗練された美しい響きはとても魅力的です。副主題もとても美しいです。コーダの力感溢れる響きも素晴らしい。

三楽章、速めのテンポですが、全く荒さが無く完璧に演奏される主部。豊かに歌うトリオ。主部が戻っても素晴らしい金管。

四楽章、堂々とした第一主題。流れるような第二主題。豊麗な金管の響きはこの作品にはとても良い。少し遅めのテンポで素晴らしい響きの金管の描き出すコーダは見事としか言いようがありません。
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パーヴォ・ヤルヴィ/NHK交響楽団

★★★★★

一楽章、快速で飛ばす第一主題。一転して涼やかでゆったりとした第二主題。速めのテンポで颯爽と進む第三主題。展開部でも良く鳴り色彩感も濃厚です。再現部でも速いテンポの第一主題で勢いがあります。ティンパニや金管が重なって激しい響きのクライマックス。

二楽章、輪郭のクッキリとした主要主題。サラサラとしていて美しい副主題。高い精度の演奏は素晴らしいです。

三楽章、この楽章もかなり速いテンポです。テンポは速いですが、演奏は全く荒れないのはさすがです。トリオは揺れるリズムです。

四楽章、この楽章も速いテンポで勢いがあります。涼やかで美しい第二主題。トゥッティの充実した響きも素晴らしい。力強く若々しさのある演奏でした。
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ミヒャエル・ギーレン/SWR交響楽団

★★★★★

一楽章、非常にゆっくりと厳格にはっきりと演奏される第一主題。伸びやかで広々とした音場感。第二主題も美しい。スケール大きな第三主題。ゆっくりとしたテンポで美しく歌う演奏です。

二楽章、深みのある主要主題。すっきりと切り分けられたように表現が変わります。とても柔らかい副主題。

三楽章、とても明晰な主題。少し縮こまったような中間部のホルン。

四楽章、活動的な第一主題。とても良く鳴るオケで気持ちの良い演奏です。コーダもゆっくりとしたテンポで壮大な演奏でした。

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朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団(ハース版)

★★★★★

一楽章、速めのテンポでサクサク進む第一主題。爽やかに響くヴァイオリン。しっとりとした第二主題。トランペットも力強くメリハリのある演奏です。柔らかく伸びやかな第三主題。潤いのあるクラリネット。

二楽章、柔らかい主要主題。強い主張は無く自然体で作品に語らせるような演奏です。抑えた表現の副主題。控えめで奥ゆかしい中間部。ファゴットも柔らかくて美しい。

三楽章、どっしりと落ち着いた主部。激しさや荒々しさはありません。牧歌的なトリオのホルン。どの楽器も美しく捉えられている良い録音です。

四楽章、どっしりと重量感のある第一主題。サラッと撫でるような第二主題。第三主題も下の響きがとても柔らかい。ティンパニは釜の鳴った良い音がします。作品そのものを聴くには良い演奏です。
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小泉 和宏/九州交響楽団

★★★★☆

一楽章、柔らかくそっと響く第一主題。堅実な足取り出す。涼やかで美しい第二主題。とても良く鳴る第三主題。再現部もメリハリの効いた鳴りっぷりの良い演奏です。伸びやかで色彩感も豊かなクライマックス。

二楽章、柔らかい主要主題。副主題も繊細で伸びやかです。小泉の堂々とした音楽の運びとオーケストラの充実した響きが素晴らしい。

三楽章、あまり荒々しさは感じない丁寧な主部です。

四楽章、この第一主題もあまり荒々しさは無く、とても美しい演奏です。純粋に作品に忠実な演奏だったと思います。
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オイゲン・ヨッフム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、輪郭のくっきりとした第一主題。自然体で美しい第二主題。テンポも微妙に動きます。活力のある若々しい演奏です。エネルギーが噴出する第三主題。展開部でもかなり金管が咆哮します。かなり追い込んで終わりました。

二楽章、ゴリゴリとした主要主題。静寂感の中に響くフルート。サラッとして涼やかな副主題。録音年代からすれば仕方のないことですが、ヴァイオリンなどが若干ザラついています。コーダではほとんど金管が聞こえませんでした。

三楽章、とても良く表現されていますが、荒々しさは感じない主部。スタッカートを多用したトリオのホルン。

四楽章、とても流れが良くあまり強い主張がありません。金管はとても力強いです。内側から祈るような第三主題。見事な金管の鳴りはさすがベルリンpoです。コーダではテンポも大きく動きます。
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クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、良く弾む第一主題。ウィーンpoらしく密度が濃く色彩かも豊かです。第二主題は良く歌われて美しいです。覇気があってとても力強い演奏です。アバドの覇気と作品の若々しさがマッチしていてとても良い演奏です。

二楽章、落ち着いた表現ですが、感情も乗っている主要主題。副主題も豊かな歌です。

三楽章、スピード感があって力強い主題。動きがあって生き生きとしたトリオ。

四楽章、速めのテンポで活発な第一主題。穏やかですが、生命観を感じる第二主題。金管の豊麗な響きも素晴らしい。羊皮独得の響きのティンパニはこの作品には合っていないような気がします。
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ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

★★★★☆

一楽章、力が抜けて自然体な第一主題。リズムは良く弾みます。自然ですがさりげなく歌う第二主題。良く鳴って力強い第三主題。この頃のコンセルトヘボウらしくとても色彩感が濃厚です。弱音の静寂感も良いですし、コーダの豊麗な響きも良いです。

二楽章、あくまでも自然体で緻密な演奏が続いて行きます。美しく歌う副主題。ファゴットもとても哀愁のある響きで美しいです。

三楽章、細身で丁寧なので、あまり粗野な感じはありません。トリオは緻密で濃厚です。主部が戻るとハイティンクの丁寧さが仇になる感じがします。

四楽章、速めのテンポの第一主題。暴走することなく抑制された演奏です。繊細な第二主題。展開部でも豊麗な響きが素晴らしい。ハイティンクは作為的な部分が無いので安心して聞くことが出来ます。

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スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン放送交響曲楽団

★★★★

一楽章、奥まったところから柔らかい第一主題。スピーカーの中央にオケが集まっているような感じであまり広い音場感ではありません。ゆったりとした第二主題。作品に身を任せるようなテンポの動き。控えめな第三主題。展開部のトロンボーンも力が抜けています。再現部の第二主題は涼やかで美しい。コーダはテンポの動きも大きい演奏でした。

二楽章、弱音に集中力があって聞かせる演奏です。副主題はサラッとしていて美しい。弱音の繊細な動きは他の演奏とは一線を画すものです。

三楽章、嵐の様な荒々しさは無く、むしろ主題は抑えられていて大人しい印象です。トリオは細部まで拘った良い演奏です。

四楽章、独特な表現の第一主題。大きく構えた演奏では無く、少し小さくまとまっているような感じを受けます。凝縮されたような集中力を感じさせる第二主題。金管を大きく鳴らすことがあまり無く、抑制された演奏です。最後は大きくテンポを落としましたが、最後まで抑制的でした。

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オイゲン・ヨッフム/シュターツカペレ・ドレスデン

★★★★

一楽章、柔らかい弦の刻みに続いてやはり柔らかい第一主題。艶やかで鮮明なヴァイオリン。素朴な響きの第二主題。第三主題も伸びやかで柔らかい。純朴な響きがとても魅力的です。ベルリンpoとの旧版のような激しい咆哮は無く、どっしりと構えた落ち着いた演奏です。最後は速くなりましたが、ベルリンpoとの演奏よりも落ち着いています。

二楽章、まろやかな主要主題。探るように注意深い演奏です。木管が小さく定位して静寂感の中に美しく響きます。柔らかい肌触りの布のような副主題。シュターツカペレ・ドレスデンの響きは洗練された響きでは無く、暖かくて柔らかく古めかしいので、ブルックナーにはとても合っています。コーダでほとんど金管が聞こえないのはベルリンpoとの演奏と同じです。

三楽章、ゆっくりとしたテンポでとても丁寧な主部。

四楽章、控えめな第一主題。第三主題まで抑制的でした。トランペットが全体的に抑えられていて、開放されません。かなり抑えられた演奏に欲求不満になりそうです。最後の最後は強く演奏されました。

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ロベルト・パーテルノストロ/ヴュルッテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団

★★★

一楽章、豊かな残響を伴って柔らかい第一主題。感情を込めて歌われる第二主題。第三主題はトロンボーンが奥まっていて力強さは感じません。残響は豊かなのですが、オーケストラの響きそものもはあまり艶やかでは無く、あまり魅力的な響きではありません。

二楽章、豊かな残響に少しカサついた主要主題。繊細に表現される副主題。中間部もカサカサした響きであまり美しくありません。コーダの金管はかなりゆっくりと演奏されました。

三楽章、あまり荒々しさを感じない主部。表現の幅が狭く一本調子な感じがします。せっかく豊かな残響の大聖堂で演奏しているのだから、濃厚で水の滴り落ちるような艶やかな演奏をして欲しかったと思います。トリオも特徴のある表現も無く、淡々と流れて行きます。

四楽章、あまり激しさを感じない第一主題。やはり第三主題もシルキーでは無くカサカサとしていますし、テンポは動きますが、表現らしい表現も無く、何も訴えて来ません。ティンパニが時折激しいクレッシェンドをするのは全体を通じてとても印象的です。力を振り絞ったコーダはとても良かったです。

サー・ゲオルク・ショルティ/シカゴ交響楽団

★★

一楽章、ゆっくり目で粘りのある第一主題。涼やかな第二主題。速めのテンポで颯爽と演奏される第三主題。ショルティとシカゴ響の演奏なので金管が吹きまくるのかと思っていましたが、節度のある演奏でブルックナーらしさはあります。再現部の第二主題も清涼感があります。ショルティ/シカゴの演奏にしてはかなり抑制的でした。

二楽章、とても精度の高い主要主題。柔らかく美しい副主題。中間部は少し硬い感じ。

三楽章、速めのテンポでセカセカしていて落ち着かない主題。トリオはゆったりとしていのすが、ホルンが委縮したような演奏で、今一つです。

四楽章、いつもりショルティ/シカゴの演奏とは違い、吹っ切れたような豪快さが無く、中途半端な演奏です。いつものショルティの演奏をすれば良いのにと思いますが、何を迷ったのか。少し硬さのある第二主題。ショルティなら豪快に鳴らし切ってくれると期待しましたが、大きく期待が裏切られた演奏でした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/

ソビウト国立文化省交響楽団

★☆

一楽章、遠くて細い第一主題。クラリネットが大きく聞こえます。トランペットもオンマイクで残響を伴わずマットに響きます。フルートもとても強く、とても変なバランスです。第二主題もザラザラとしています。第一主題の時とは一転して豊かな響きで鋭いトランペット。第三主題はロジェストヴェンスキーらしい咆哮です。ドンシャリ的な録音と、これでもかとねちっこく、激しい金管の咆哮が特徴的な演奏です。

二楽章、ビリビリと奥から響いて来る金管。副主題もザラザラと木目の粗い響きです。稿によるものなのか、木管のスタッカートが気になります。金管がねっとりと下品に演奏するのはロジェストヴェンスキーらしいのですが、ブルックナーの演奏には下品過ぎると思います。

三楽章、音も短く強烈な金管。ちょっと辟易として来ます。トリオのホルンも独特な表現です。

四楽章、盛大な第一主題。続く木管も近い。「火のように」と言う指定からすればその通りなのですが、強烈です。対照的に優しい第二主題。展開部の第二主題はゆったりとしたテンポで感情が込められています。コーダで金管が入るとテンポが遅くなってかなりハイカロリーな演奏です。
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フォルクマール・アンドレーエ/ウィーン交響楽団

一楽章、マットで近い第一主題。盛り上がりに伴ってテンポが速くなのります。潤いが無くカサカサとした印象の第二主題。第三主題のトロンボーンも近く、残響をほとんど伴っていないような感じです。1953年の録音ですが、あまり良い録音ではありません。テンポはかなり動く情熱的な演奏です。

二楽章、主要主題も少しザラつく感じです。聞き進めれば録音の古さにも慣れて来ますが、やはり硬い感じは付きまとい、音楽に浸ることは出来ません。

三楽章、テンポも速く、粗野で嵐のような感じはとても良く表現されていますが、この楽章ではオケが奥に引っ込んだ感じかします。トリオでもヴァイオリンが活発に動きます。

四楽章、三楽章から一転してオケが近くになりりました。カサカサに乾燥しているような第二主題。金管の音が短い。テンポはかなり激しく動きます。
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ブルックナー交響曲第2番

ブルックナーの交響曲第2番は、彼が独自の交響曲スタイルをさらに深めていく中で作曲された、力強さと抒情性が巧みに融合した作品です。1872年に完成し、彼の交響曲の中で最初に「ブルックナーらしい」要素が明確に見られる作品とされています。この交響曲は、特にブルックナーの宗教的・精神的な側面が表れており、壮大なスケールと厳粛な響きが特徴です。

交響曲第2番の特徴と楽章構成

ブルックナーの交響曲第2番は、4つの楽章から成り、後の作品にも見られる特徴的なブルックナー節(強いコントラスト、長い休符、自然的で荘厳な雰囲気)が既に感じられます。また、「休符の交響曲」とも呼ばれるように、独特の静寂や間(ま)が多用され、ドラマチックな展開を生み出しています。

  1. 第1楽章:モデラート
    第1楽章は、ブルックナー特有の壮大な主題で始まります。重厚でゆったりとしたテンポの中に、劇的な要素と厳粛さが入り混じり、自然の壮大さや神秘を感じさせます。静かなパッセージの後に力強いクライマックスが訪れる構成で、彼の後期の交響曲に通じる手法が見られます。
  2. 第2楽章:アンダンテ
    第2楽章は、静かで抒情的なアンダンテです。ブルックナーらしい、深く穏やかな旋律が印象的で、信仰心や精神的な安らぎが表現されています。この楽章には、ブルックナーの穏やかな宗教的世界観が投影されており、内省的で癒しの要素が感じられます。
  3. 第3楽章:スケルツォ(モデラート)
    第3楽章は、エネルギッシュなスケルツォで、ブルックナーの作品の中でも特にリズミカルで力強い楽章です。ここでは舞曲のようなリズムが使われており、力強いアクセントと素朴な美しさが織り交ざっています。中間部(トリオ)では一転して穏やかで美しい旋律が奏でられ、楽章全体に対比が生まれています。
  4. 第4楽章:フィナーレ(ズュステナント)
    最終楽章は、壮大なフィナーレで、ブルックナーらしい力強いクライマックスが特徴です。激しい情熱と静寂が交互に現れる構成で、壮大さと緊張感が増していきます。多層的な主題が絡み合い、最後には力強く荘厳な結末を迎えます。

全体の印象と位置づけ

ブルックナーの交響曲第2番は、彼の個性が顕著に表れた初期の大作であり、後の大規模な交響曲群の礎を築いた作品です。この作品には、自然や神への畏敬が込められており、聴衆に対して深い感銘を与える壮大な音楽が展開されています。また、休符を多用した構成により、独特の間の取り方や静寂の美しさが強調され、ブルックナーの独特な音楽的世界が示されています。

第2番は、交響曲第1番に比べて彼らしい特徴が明確に表れ、ブルックナーのスタイルが確立され始めた作品といえるでしょう。そのため、この交響曲第2番は、後のブルックナーの交響曲群の予兆を示し、彼の作曲家としての成長を知るために重要な位置を占めています。

4o

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団(ハース版)

★★★★★

一楽章、サラットした響きで、ゆったりとしたテンポの第一主題。録音は良くどの楽器もくっくりと浮かび上がります。第二主題も爽やかです。第三主題も落ち着いたテンポで力みの無い自然な演奏です。自然で奇をてらうようなようなところが全く無いので安心して音楽に身をゆだねることが出来ます。金管も伸びやかに良く鳴ります。ゆっくりとした足取りでとても安定感のある演奏です。

二楽章、この楽章も遅めのテンポでしみじみと歌うA。ふくよかなホルン。作品の良さをじっくりと味わえる演奏です。力みが無く伸びやかなクライマックス。ベネディクトゥスも大きな表現ではありませんが自然な歌です。

三楽章、とてもゆっくりとしたスケルツォ主題。テンポが遅いの荒々しくは感じません。洗練された木管の美しい響き。あまり揺れず堅実なトリオ。

四楽章、この楽章もゆっくりとしていて確実に進みます。重量感のある第一主題。ゆらゆらと涼やかで穏やかな第二主題。集中力のある弱音。トロンボーンも統制が取れていて美しです。堂々としたコーダ。最後のティンパニのクレッシェンドも素晴らしかった。
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パーヴォ・ヤルヴィ/NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団

(1877年版)

★★★★★

一楽章、少し速めのテンポで明確に表現する第一主題。第二主題も他の指揮者とは違う明快な表現です。第三主題も明快で、スパッと歯切れよく前へ進む力があります。小結尾主題は少しテンポを落として滑らかな演奏です。一つ一つの楽器が立っていて色彩感も濃厚です。豊かな表現なのに、クリアーで見通しの良い響きが印象的です。オーケストラ全体を良く鳴らしています。

二楽章、しっとりとした響きでたおやかな歌です。途中で音を短めに演奏する部分もありました。とても活き活きとしていて良い演奏です。ゆっくり目で芯のしっかりとしたホルン。木管も切々と訴えかけて来ます。余力を残したクライマックスでした。ベネディクトゥスの引用もくっきりとしています。コーダの消え入るような弱音も美しい。

三楽章、速めで活発な表現の主部。テンポが動きます。トリオはとてもゆっくりとしたテンポで表現豊かな演奏でヤルヴィの表現に引き込まれます。

四楽章、ゆっくり目で表情もあり、一音一音丁寧に演奏します。第一主題は少しスピード感のある演奏で、強弱の変化もあります。さっそうと活発な第二主題。展開部でも勢いのある第一主題です。ヤルヴィならではの表現が随所にあって、最近の指揮者に共通するような楽譜に忠実で没個性な演奏とは一線を画す表現は素晴らしいです。コーダの前でもほとんどテンポを落としませんでした。と言うより若干速くなった。明るく輝かしいコーダでした。

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エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団(1877年稿)

★★★★☆

一楽章、少し遠目で温度感の低い響きです。金管も遠くから鋭く響きます。トゥッティは豊麗な響きです。静かで淡々としている第二主題。ブルックナーにしてはトランペットが鋭すぎるような感じがします。あまりに洗練されて都会的です。ゆったりとした小結尾主題。全体に積極的に歌ったり表現したれはせずに作品に任せている感じです。

二楽章、伸びやかで美しいですが、大きな表現はありません。ダイナミックレンジもとても広く弱音でもとても伸びやかで美しいです。クライマックスのトランペットも壮絶で見事な響きです。

三楽章、軽快に美しく進み、粗野な感じはあまり無く、洗練されています。木管が瑞々しく美しいです。トリオも滑らかで美しいです。精密機械のように緻密に組み合わされている感じで、洗練の極みです。

四楽章、第一主題は華やかなくらいの輝かしい演奏です。第二主題はテンポの動きもあって柔らかい表現です。感情は排して作品の良さをそのまま伝えようとする演奏です。少し腰高な響きではありますが、力まずに伸び伸びとした響きは抗しがたい魅力があります。コーダは颯爽としたテンポで少し追い込むような感じで、輝かしく終わりました。
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カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン交響楽団(1877年版)

★★★★☆

一楽章、とても表現豊かな第一主題。一音一音魂が込められているような凄みがあります。トランペットは奥まったところから響きます。第二主題も美しい歌です。第三主題の強弱の振幅も大きく一音一音丁寧です。ふくよかですが、高揚すると激しいホルン。フレーズを一まとめにせず一音一音に神経が行き届いているのが凄いです。

二楽章、大きな表現ではありませんが、滲み出て来るような表現です。柔らかく美しいホルン。広々としたクライマックス。柔らかく始まって、トランペットのハイトーンが鋭く響きました。

三楽章、一音一音明確に弾き分けるスケルツォ主題。ブルックナーのスケルツォらしく金管が暴力的に入って来たり、強弱の変化があったりします。あまり揺れずにはっきりと演奏されるトリオ。

四楽章、第一主題にちょっと間があったり独特の表現です。少し速めですが、うねるように波打つ第二主題。微妙なテンポの動きもあります。再現部に入る前にも大きくテンポを落としました。速めのテンポであっさりとコーダが終わりました。

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オイゲン・ヨッフム/シュターツカペレ・ドレスデン

★★★★

一楽章、少し遠目から豊かな残響を伴った第一主題。くすんだトランペット。線が細く薄い響きのヴァイオリン。第二主題も自然な歌です。推進力のある第三主題。小結尾主題も余裕のある自然体です。展開部ではビブラートを掛けるホルンが印象的です。再現部へ入る前に少しテンポを落として行くところはとても良い雰囲気がありました。自然体で暖かい演奏です。

二楽章、ここでも暖かくまろやかな響きです。残響を伴って包み込まれるようなBですが、やはりホルンのビブラートが少し気になります。二度目のAは切々と訴えて来ます。控えめですが、広大なクライマックス。ベネディクトゥスの引用はクライマックスとは対照的にとても小さくまとめられています。

三楽章、ゆったりとしたテンポで一音一音確実に演奏しています。滑らかなクラリネット。トリオもゆったりとしていて、厚みのあるビオラです。

四楽章、冒頭の細かい動きで少し加速してように感じました。スピード感のある第一主題。第二主題も速めのテンポでもう少し味わいが欲しい気がします。展開部はかなり荒々しい演奏で、速めのテンポが生かされています。激しいトロンボーンも速いテンポが効果的です。コーダの前は少しだけテンポを落としました。コーダは猛烈なテンポで最後は凄い盛り上がりでした。

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ヘルベルト・ブロムシュテット/ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(初稿)

★★★★

一楽章、感情を込めて歌われる第一主題。テンポは速めです。柔らかく表情のある第二主題。第三主題もサクサクと進みます。小結尾主題も伸びやかです。展開部はかなり速く感じます。オーケストラは伸びやかで美しいです。展開部の第二主題はゆっくりとしたテンポでさらにテンポの動きもあり深い表現です。再現部の第一主題はかなり激しい演奏です。トロンボーンは奥まっていてトランペットとは音量差があります。表現も豊かで色彩感もある良い演奏です。

二楽章、スケルツォが二楽章に来ます。サラッとしたホールに拡散します。テンポの動きもあって作品への共感も感じます。割とカチッとしたトリオ。

三楽章、暖かみのある響きで、強い表現ではありませんが、切々と訴えて来るような演奏です。Bはとても豊かな表現です。初稿ではクライマックスでトランペットが入らないのか?ベネディクトゥスの引用も良く歌われて良いです。克明で繊細な弱音。

四楽章、揺れるような表現から第一主題に入りました。淡々とした第二主題。展開部の第一主題はスピード感があります。弦のとても柔らかい響きからトランペットの鋭い響きまでとても大きな色彩と表現の幅があります。コーダはハース版とは全く違いました。
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フランツ・コンヴィチュニー/ベルリン放送交響楽団(ハース版)

★★★★

一楽章、ゆったりとしたテンポで豊かに歌う第一主題。トランペットはかなり遠い。第二主題も深みがあって穏やかです。同じ時代の録音ですが、アンドレーエの演奏とはかなり違います。第三主題も潤いを感じるものです。小結尾主題は淡々と進みます。展開部も低弦と木管の対比が良いです。遠くからですが、金管も力強い。再現部も丁寧な表現です。

二楽章、テンポが動いて伸びやかにしかも深い共感を持って歌います。微妙にテンポが動くB。金管が強く演奏しているのは響きで分かりますが、エネルギーとしては伝わって来ない。

三楽章、あまり荒々しくは無いスケルツォ主題。トリオは美しく歌うので、身をゆだねることが出来ます。

四楽章、この楽章もゆったりとしたテンポです。控えめな第一主題。録音の古さからヴァイオリンの木目は荒いですが、良く歌う第二主題。自然にテンポが動く演奏で、とても心地良いです。コーダの前で大きくテンポを落としました。録音が古いのが残念でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1877年版)

★★★☆

一楽章、速めのテンポで整然としてテキパキと進む感じの第一主題。元気が良く颯爽としています。第二主題もサラリと流れて行きます。インバルの録音に比べるとマットな響きです。小結尾主題も流れるような滑らかさです。展開部も再現部もとても整った演奏です。

二楽章、一体となって整った歌です。ゆったりとしたB。川の流れのように豊かな弦。弦の後ろで激しく咆哮するホルン。大きなクライマックスですが、マットな響きで輝きがありません。

三楽章、スピード感のある主部。トリオは厚みのあるビオラ。ティンパニは硬質で良い音で鳴っています。

四楽章、かなり軽い第一主題。小気味よく進みます。あっさりとして味わいの無い第二主題。整った演奏なのですが、強く惹き付けられるような演奏ではありません。とても整っているので、激しい表現は感じません。コーダの最後はトランペットが突き抜けて来ました。
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小澤 征爾/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1999年ウィーン芸術週間

★★★

一楽章、ほとんど表情の無い第一主題。第二主題もあっさりとしています。第三主題も無表情です。小結尾主題は少し速めで、ここも表情はありません。展開部に入って深い表現になりました。起伏は激しいです。再現部でも濃厚な色彩で、激しい表現です。コーダもかなり激しい演奏でした。

二楽章、控えめながらジワジワと迫って来る表現です。Bのビツィカートの強弱の変化も丁寧でした。クライマックスは肩透かしのように力が抜けています。

三楽章、速めのテンポであまり荒々しい感じはありません。主部が戻るとかなり荒々しい演奏になります。

四楽章、ゆったりとしたテンポです。第一主題はさらに遅くなります。無表情であっさりとした第二主題。小澤の演奏はいつも良く分からない。同じ民族だから特徴や良さが分からないのか、自分自身がクラシック音楽に西洋的なものを求めすぎるのか、演奏を聞き終えても何かモヤモヤしたものが残る。コーダの前の金管が大きく入った後から導入部が再現されるまではかなりテンポがゆっくりになりました。コーダも平板に終わりました。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ロシア国立シンフォニー・カペラ

★★★

一楽章、とても大きい表現の第一主題。速めのテンポで、豊かな残響ですが、かなりメタリックな録音で、ミュートしているようなチーチーと響くトランペット。第二主題も積極的に歌います。小結尾主題も豊かな表現です。展開部も速めのテンポですが、表現はとても大きいです。

二楽章、抑え気味のA。太く独特な響きのホルン。二度目のBでも浅い響きで強く演奏されるホルン。巨大なクライマックス。かなり暴力的で雑な感じです。

三楽章、主部では情緒的にテンポが動く部分もありました。トリオはゆったりとしたテンポになります。コーダで大きくテンポが落ちる部分がありました。

四楽章、スピード感のある第一主題。金管も荒々しく響きます。速めであっさりとしている第二主題。録音による影響もあると思いますが、金管はとても盛大に鳴り響きます。
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ロベルト・パーテルノストロ/ヴュルッテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団

★★★

一楽章、とても豊かな残響に響く第一主題。ゆったりとしたテンポですが特に歌うことはありません。第二主題も特に表現も無く進みます。ゆったりと穏やかな小結尾主題。残響が多いので響きは厚く感じます。残響が長い割に金管はあまり伸びやかに響きません。

二楽章、ここもあまり思い入れの無いあっさりとした表現です。Bのホルンは豊かな残響の中にとても美しい響きです。美しい弱音から盛り上がって、トランペットが奥で輝いて強く響くクライマックスは良い表現でした。ベネディクトゥスはちょっと硬い表現でした。

三楽章、落ち着いた表現の主部。あまり荒々しさはありません。もう少しスピード感があっても良いような気がします。トリオは速くなります。

四楽章、第一主題も第二主題もあっさりとした演奏ではっきりと爪痕を残すような演奏ではありません。作品そのものと、とても長い残響の大聖堂と一体になった響きを聞かせる演奏のようです。ライヴ録音なので、当日会場にいた人は豊かな響きがとても心地良かったと思いますが、2chのステレオではその残響に包まれるような体験は出来ないので、演奏の魅力はどうしても下がります。コーダの前は大きくテンポを落とすことは無く、コーダもゆっくりとした演奏で締めました。

オッコ・カム/フィンランド放送交響楽団

★★★

一楽章、たっぷりと歌う第一主題。あっさりとしていますが穏やかな第二主題。第三主題も目立った表現はありません。小結尾主題も流れの良い演奏で穏やかです。展開部に入っても爽やかです。粘り気の無いサラッとした演奏で、これはこれで良い演奏です。金管も突き抜けては来ず、マイルドにブレンドされています。コーダに入ってテンポの動きもありました。

二楽章、奥ゆかしい表現のA。Bはテンポの動きの中で歌います。クライマックスも大きくは無く、小さくまとまっています。ベネディクトゥスが静かに歌われます。コーダはとても静かで良い雰囲気です。

三楽章、この楽章の主部も丁寧で荒々しくはありません。テンポが大きく落ちたり神秘的な表現の部分もありました。この楽章はテンポが良く動きます。

四楽章、かなり速いテンポで入りました。ヴァイオリンの細かい動きにも表情が付けられています。速いテンポのままの第一主題。第二主題はテンポを落として優しい表現です。しなやかな弱音は美しいです。第一主題の再現へ向けての加速はなかなかでした。コーダは金管が鳴り切らず盛り上がりは今ひとつでした。
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ケース・バケルス/フランダース交響楽団

★★☆

一楽章、柔らかく伸びやかな第一主題。テンポは速めではつらつとしています。トランペットは控えめです。第二主題、第三主題とも速めのテンポです。小結尾主題も淡々と進みます。展開部に入りさらにテンポが速くなります。再現部に入っても特に主張も無く流れて行きます。割とせっかちに終わった感じです。

二楽章、感情を込めてたっぷりと歌う主要主題。音量の振幅も大きく一楽章とは一転して豊かな表現です。

三楽章、この楽章は速めで推進力があります。荒っぽさは無く滑らかで美しいです。揺れるようなトリオ。

四楽章、速めでガツガツと演奏される第一主題。第二主題も速めです。展開部も豪快に突き進む感じです。コーダもあなり大きな盛り上がりでは無く全体に平板な印象でした。
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スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン放送交響楽団

★★

一楽章、遠くから響く第一主題。トランペットは近めです。あまり表現らしい表現は無く、サラッと過ぎて行きます。録音のせいか、マットな響きで、あまり伸びやかではありません。小結尾主題もあっさりとスタスタと進んで行きます。展開部に入っても抑え気味です。金管の信号同期の付点を長めに演奏しているのが特徴です。とても禁欲的で、均整の取れた演奏です。コーダは勢いがありました。

二楽章、一楽章からは打って変わって、ゆったりとしたテンポで、とても深く歌うA。深みのある演奏はとても良いです。Bもゆったりとしたテンポでしみじみとした歌です。クライマックスは肩透かしのように抑制されています。

三楽章、一転して速いテンポの主部。金管の長い音はとても抑えられています。揺れるトリオ。主部に戻る前にかなりテンポを落としました。ティンパニの強打はとても激しいのに金管の長い音を極端に抑えるのが不自然に感じます。

四楽章、冒頭のヴァイオンリの細かい動きに変化を付けています。第一主題はサラッとしています。第二主題も速めです。金管の長い音が弱く、弦の細かな動きが強調されているように感じます。コーダでは強弱の変化もありましたが、金管の長い音を極端に抑える演奏は理解出来ませんでした。
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サー・ゲオルク・ショルティ/シュトゥットガルト放送交響楽団

★★

一楽章、速めのテンポですが、感情を込められた第一主題。かなり勢いのある演奏で、克明な色彩感です。第二主題も速めで、明晰です。第三主題も速いです。とても活発な動きを感じる演奏で、ブルックナーらしいどっしりとした深い響きは感じられません。落ち着かない演奏です。ショルティが指揮をすると、どんなオーケストラでも腰高な響きになってしまいます。最後はかなりゆっくり演奏しました。大聖堂に豊かな残響が響きます。

二楽章、一楽章とは打って変わってたっぷりと歌う演奏です。残響を伴って物悲しいBのホルン。かなり激しいホルンの強奏。クライマックスのトランペットも激しい。

三楽章、エッジが立っていて速めのテンポです。トリオの速めのテンポで味わいがありません。主部に戻る前にかなりテンポを落としました。

四楽章、この楽章もかなりせかせかとしたテンポです。第二主題もかなり速い印象で、全く音楽に浸ることが出来ません。とにかく速い。スピード感はあるのですが、個人的には、もう少しどっしりと構えた演奏が聴きたいです。コーダも速くとても賑やかです。
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フォルクマール・アンドレーエ/ウィーン交響楽団(ハース版)

一楽章、かなり速いテンポで落ち着かない第一主題。さらにアッチェレランドしてトランペットが入ります。第二主題は幾分落ち着いた演奏です。第三主題も速めで、ブルックナーらしいどっしりとした雰囲気はありません。デッドな録音のせいか、金管は総じて音が短く品がありません。展開部も速く、ぐいぐいと進みます。再現部もやはり落ち着かない。何故にそんなに急ぐ。

第二楽章、一転してゆったりとした演奏です。Bのホルンも柔らかく良い雰囲気です。トランペットが下品です。

三楽章、また落ち着きのない演奏です。かなり乱暴な演奏に感じます。トリオは少し落ち着いた感じがします。主部が戻るとトランペットやトロンボーンの短い音がとても気になります。テンポの動きもあり、良いところもありますが、録音の古さかなり影響している感じがします。

四楽章、第一主題もかなり速い。録音の古さからか第二主題も味わいが感じられません。とにかく金管の音の短さが本当に気になります。味わいの無い演奏でした。

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マーラー交響曲第10番(全曲)

マーラーの交響曲第10番は、彼の最晩年に書かれた未完の作品で、彼が病に倒れる直前の1910年から1911年にかけて作曲されました。この交響曲は、マーラーの内面の苦悩や深い精神的葛藤が色濃く反映されているとされています。全5楽章の構成が構想されており、スケッチとして残されているものの、マーラー自身による完全なオーケストレーションはされていません。

マーラーの死後、この作品は長らく未完成のままでしたが、20世紀後半に音楽学者や作曲家によって補筆が行われ、現在では「全曲版」として演奏されることが増えました。特にデリック・クックやジョー・ウィーラー、クラーク・ローズ・ドイルなどの音楽学者がスコアの補筆に携わり、今日に至るまでさまざまな版が存在します。

交響曲第10番の構成と各楽章の特徴

マーラーはこの作品を全5楽章とし、劇的かつ内省的な音楽世界を展開する構想を抱いていました。以下は、一般的な「全曲版」に基づいた各楽章の特徴です。

  1. 第1楽章:アダージョ
    第1楽章は、マーラーの最も有名なアダージョの一つで、深い悲しみと切なさが表現されています。この楽章では、しばしば不安定な響きや不協和音が登場し、内面的な葛藤が反映されています。豊かで緩やかな旋律が展開され、途中で劇的なクライマックスに達するものの、再び静かに収束することで、聴く者に深い印象を与えます。
  2. 第2楽章:スケルツォ
    第2楽章は活気のあるスケルツォで、テンポが速く、エネルギッシュな音楽が続きます。この楽章にはどこか皮肉やユーモアが感じられる一方で、急激な転調や不安定なリズムが加わり、不穏な雰囲気が漂います。マーラーの内面的な葛藤や苦悩が、リズミカルで緊張感のある旋律の中に現れています。
  3. 第3楽章:プルガトリオ(煉獄)
    第3楽章は「煉獄」と題され、短く不安定な音楽が展開されます。この楽章は、まるでマーラーが浄化や悔悟を求めるかのように感じられ、短いながらも劇的で強烈な印象を残します。内面的な苦悩や救済への希求が、この楽章に凝縮されています。
  4. 第4楽章:スケルツォ
    第4楽章のスケルツォは、再び激しく複雑なリズムを持つ楽章です。エネルギーに満ちた音楽が展開される中で、次第に緊張感が高まり、マーラーの内面の混乱や苦悩が表現されています。このスケルツォは、皮肉や絶望の表現があり、マーラーの精神的な葛藤が感じられます。
  5. 第5楽章:フィナーレ
    最終楽章のフィナーレは、全体を総括する壮大で荘厳なアダージョで、マーラーの深い感情が込められています。この楽章では、悲哀と崇高さが織り交ぜられ、まるで人生の終わりに立ち向かうような音楽が展開されます。最終的に、希望と絶望の両方を感じさせる和音が鳴り響き、聴く者に強い余韻を残しながら静かに終わります。

全体の印象と位置づけ

マーラーの交響曲第10番は、彼が最後に残した内面的で悲劇的な作品です。この交響曲には、妻アルマへの愛や裏切り、人生の終焉を前にした葛藤など、マーラーの感情の深層が反映されているとされています。また、この作品はマーラーの死により未完となりましたが、その中には20世紀音楽への影響を予感させる革新的な音楽語法も含まれています。

交響曲第10番は、彼の全作品の中で最も内省的で、悲劇的な性格を持つものとして評価されており、後世の作曲家や聴衆に強い影響を与えました。

4o

エリアフ・インバル/東京都交響楽団

★★★★★

一楽章、整然としている序奏主題。良く歌い、広がりのある第一主題。華やかな第二主題。とても良い響きで録音されています。都響はとても伸びやかで、上手い。丁寧で表情も豊かです。トランペットも輝かしく突き抜けて来ます。

二楽章、とてもゆったりとしたテンポです。アンサンブルの精度も高く、色彩感も濃厚です。しなやかで揺れ動く表現の中間部。最後は少しアッチェレランドしました。

三楽章、豊かに表現される主要主題。

四楽章、緩いスネアが入りました。とても色彩感が濃厚で、その上、音が空間にスーッと広がる雰囲気はとても良いです。フランクフルト放送soとの録音よりも表情が豊かです。インバルの円熟によるものか、その分、鋭利な刃物のような鋭さは無くなっています。ペタンと浅い響きの大太鼓。

五楽章、柔らかいチューバ。深い響きで美しく歌うフルート。胸に迫るものがあります。頂点で大太鼓が入った後のチューバは、テヌート気味に演奏する盤が多かったですが、マルカート気味でした。シンバルも素晴らしい響きでした。インバルの唸り声は何度か聞こえましたが、掛け声のようにはっきりとした声も聞こえます。1970年代には考えられない程安定したトランペットのロングトーン。次第に黄昏る寂しさがとても良く表現されてまいす。凄く寂しい。グリッサンドはバラバラで異様な雰囲気を表現しました。遠くの天使の梯子を昇って行きました。
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レイフ・セーゲルスタム/スウェーデン放送交響楽団

インバル★★★★★

一楽章、はっきりと表れる序奏主題。ゆっくりと感情を込めて演奏される第一主題。作品に入って行ける演奏です。第二主題もゆっくりととても感情の籠った演奏です。とても静寂感のある録音で、残響がホールに広がって行きます。中低音の暖かく柔らかい響きです。楽譜に忠実になり過ぎて冷徹な演奏になるよりも、感情のままに豊かに表現される演奏がとても良いです。壮絶な雰囲気の中からトランペットのロングトーンが響きます。オーディエンスのノイズが聞こえるので、ライヴ録音のようですが、録音状態はとても良いように感じます。

二楽章、この楽章もゆったりとしたテンポで豊かに歌います。木管が生き生きとした演奏をします。とても楽し気です。中間部に入る前の金管で少しテンポを速めましたが、中間部はまたゆったりとしたテンポです。

三楽章、控えめですが、表現があります。

四楽章、胴の深いスネアが入りました。テンポの動きもあり、振幅も大きい演奏です。不気味な雰囲気になって、パチーンと強烈な大太鼓が響きます。

五楽章、たっぷりと歌うチューバ。大太鼓は強烈です。感情が籠っていて引き付けられるフルート。続く繊細な表現のヴァイオリン。素晴らしい響きで盛り上がり強烈な大太鼓。壮絶な響きの中からトランペットのロングトーンが響きますが若干音が合わない。アウフタクトの4分音符をかなり長く演奏して、グリッサンドはしましたがかなり揃っていました。最後は天使の梯子を昇って行きました。

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エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団

ブロムシュテット★★★★★

一楽章、割と明快な序奏主題。クッキリとした第一主題。第二主題も鮮明。オケがとても機能的です。軽々と鳴り響く金管の充実した響き。ミュートを付けたトランペットは鋭い響きです。録音も相まって精緻な響きは素晴らしい。鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた響き。湧き上がるようなトゥッティから突き抜ける鋭いトランペットのロングトーン。一転してとても穏やかなコーダ。

二楽章、とても俊敏に反応するオケ。鋭い切れ味です。淡々と演奏される中間部。活発で反応の良いオケが見事です。伸びやかで音離れの良い金管がホールに拡散して行きます。

三楽章、シルキーなヴァイオリンの主要主題。シャープで奥行き感のある音場。あまり雰囲気の変わらない中間部。

四楽章、スネアがはっきり聞こえる冒頭。シロフォンも奥行き感があります。トランペットが鋭く奥から突き抜けて来ます。とても洗練された響きで楽譜に忠実に演奏している感じがします。フラッターも良く聞こえます。かなり硬い響きの大太鼓。

五楽章、控えめなチューバ。バチーンとかなり強烈な大太鼓です。かなり暗い雰囲気の中で、異質な大太鼓。細身のフルートが寂しく印象的です。とても美しいヴァイオリン。頂点に達して痛みを感じる程硬く強い大太鼓。次第に静まって行きますが、惜別の寂しさが滲み出て来ます。孤独に死んで行く悲しみ。最後のグリッサンドが揃わないところが独特な効果を生んでいます。最後は天使の梯子を昇って行きます。

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ダニエル・ハーディング/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ハーディング★★★★★

一楽章、非常に弱くしなやかな序奏主題。緊張感から解放されるようなゆったりと柔らかい第一主題。さらりと流れる第二主題。とても緻密な表情が付けられていて絶対に大味にはなりません。ウィーンpoのしなやかな響きと相まってとても良い演奏です。柔らかいトゥッティ。不協和音も壮絶な響きにはならず、柔らかい。広がりのあるトランペットのロングトーン。全体にゆっくりとしたテンポで丁寧に描いて行きます。弱音も消え入るような静けさで強弱の振幅もとても大きいです。

二楽章、遠くから響くホルン。豊かな表現の主部。優雅な雰囲気の中間部。普通に美しく鳴るシンバルが入りました。昔のような割れてヒビの入ったシンバルはもう使っていないのか?

三楽章、速めのテンポです。とても表情豊かな主要主題。

四楽章、スネアは入りませんでした。濃厚で密度の濃い響きです。油絵のように濃厚で色彩感もとても豊かです。奥まって柔らかい大太鼓。あまり強打していません。

五楽章、柔らかいチューバ。弱い大太鼓は何を意図しているのでしょう。透き通って美しいフルート。とても感情を込めて迫って来る演奏です。続く弦もとても柔らかく美しい。次第に楽器が重なっても美しい盛り上がりです。テヌート気味のチューバ。トランペットのロングトーンも奥まって柔らかい。とても美しく穏やかになって行きます。グリッサンドはほぼ揃っていました。

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ヤニック・ネゼ=セガン/ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

一楽章、少し離れたところからフワッと届くような序奏主題。広がりのある第一主題。とても美しいです。第二主題もゆったりとしていて美しいです。トロンボーンの重厚な響きもブレンドされてとても良い響きです。コンセルトヘボウでのコンサートなので、トゥッティもよくブレンドされた美しい響きです。トランペットはあまり強く突き抜けては来ません。素晴らしい静寂感の中に消えて行きました。

二楽章、一体感があって、生き物のように動く演奏です。中間部も豊かな表情です。ホールによる効果か、当日のコンディションが良かったのか、とても充実した響きです。

三楽章、とても繊細で淡い主要主題。全体の色彩感が濃厚でとても美しいです。

四楽章、スネアは入らず柔らかい冒頭でした。大きな表現や主張は無く、自然に流れて行く演奏で、「別れ」を特に意識している演奏でも無い感じです。硬い響きですが、あまり強烈では無い大太鼓。

五楽章、不気味なチューバ。淡々と演奏されるフルート。感動的な盛り上がりです。ゆっくりとしたテンポで演奏されるチューバ。ここでもトランペットのロングトーンは控えめです。会場がコンセルトヘボウだからか、とても色彩感の濃厚で深みのある響きが魅力的です。次第に寂しく、物悲しい雰囲気になって来ました。グリッサンドは僅かにズレがある程度でした。
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ジャン・マルティノン/ハーグ・レジデンティ管弦楽団

★★★★☆

一楽章、硬い響きで明瞭な序奏主題。倍音成分があまり含まれていないような第一主題。テンポは速めです。淡々と演奏される第二主題。ザラザラとした弦が気になります。速めのテンポでこねくり回すようなことの無いストレートな演奏です。トゥッティでも録音の古さは否めません。かなり奥まって響くトランペットのロングトーン。

二楽章、一楽章とは打って変わって、ヴェールに覆われているような奥ゆかしい響きでメルヘンチックな主部。中間部は良く歌います。テンポの動きや表現も豊かになって来て次第に乗って来ている感じがします。

三楽章、あまり歌わない主要主題。この楽章のテンポは遅めです。

四楽章、スネアがはっきりと聞こえます。トランペットが突き抜けるようになって来て、演奏が生き生きとして来ました。推進力があって力強い演奏です。金管の咆哮もあるようになりかなり力のこもった演奏になって来ました。テンポは速めに進みます。あまり強烈には響かなかった大太鼓。

五楽章、ゴロゴロとした響きのチューバ。線が細く澄んだフルートが美しい旋律を奏でます。頂点に達して大太鼓が打たれる部分の盛り上がりは今一つでした。続くチューバはテヌート気味に演奏しました。テンポは大きく変わらず自然に流れて行きます。かなり強いトランペットのロングトーン。次第に惜別の物悲しさがとても良く表現されます。黄昏てとても悲しい。グリッサンドはしなかったようです。

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トーマス・ダウスゴー/シアトル交響楽団

★★★★

一楽章、割とはっきりとした序奏主題。豊かに歌う第一主題。第二主題もとても豊かな表現です。金管は突き抜けては来ず、奥まってブレンドされた響きです。ライヴ録音らしいブレンドされた柔らかい響きですがヴァイオリンなどは響きが少なく、摩擦音のような感じです。トランベットのロングトーンも突き抜けては来ません。穏やかで柔らかいコーダ。

二楽章、少しゆったりとしたテンポの主部。感情的にのめり込むような演奏ではありませんが、良く歌う演奏です。中間部もゆったりとした歌です。トゥッティでは混然一体となります。トランペットもくすんだ響きで、全体にマイルドです。

三楽章、強弱の変化の大きい主題。ゆったりとした中間部。

四楽章、浅く筋肉質なホルン。インバルの超鮮明なセッション・レコーディングに比べると、録音の制限を感じてしまいます。とても淡々と演奏が進みます。トランペットがマイルドで伸びて来ないので、あまりダイナミックには感じません。大太鼓は響きからかなり強烈に叩かれているようですが、音圧としてはあまり強く感じません。

五楽章、大砲のような響きの大太鼓。チューバはかなり抑えています。かなり暗く不気味な雰囲気です。細身で澄んだフルートがなかなか良いです。とても清らかに上昇して行きます。頂点がリミッターがかかったように伸びて来ないのが残念。トランペットのロングトーンの部分も後ろではパイプオルガンのような響きです。ホルンも間接音を伴わない浅い響き。死へ向けて脱力して行くところはとても良いです。

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サイモン・ラトル/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、モヤーッとした暗闇から響く序奏主題。かなりの弱音で温度感も低いです。ゆっくりと演奏される第一主題。第二主題もゆっくり目です。非常に丁寧で、生き生きとしています。不協和音からトランペットが突き抜けて来ます。弱音は消え入るように弱く演奏されます。

二楽章、冒頭部分もかなり弱い演奏でしたが、強弱の振幅はとても大きい演奏です。活発に動く弦。

三楽章、悲し気に繊細に表現される主要主題。活発に動く木管と、ゆったりと流れる弦の対比も見事です。

四楽章、スネアは入りませんでした。クリアで見通しの良い演奏です。弱音はしなやかでシルクのような肌触りです。ティンパニの強烈なクレッシェンドなど、振幅もとても大きいです。シンバルは効果的に入っています。大太鼓はあまり強くありません。

五楽章、比較的穏やかな冒頭部分。大太鼓はかなり軽く叩いている感じで、個人的にはもっと強烈に叩いて欲しいと感じます。フルートは遠くから響きます。胸を抉られるような演奏です。壮絶な不協和音の中からトランペットが抜けて来ます。グリッサンドは見事に揃っていましたので、異様な雰囲気は全くありませんでした。天使の梯子を昇って行くような雰囲気もありませんでした。

ハンヌ・リントゥ/マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

一楽章、ボヤーッとした中から響く序奏主題が次第にハッキリとして来ます。静かにゆっくりと演奏される第一主題。第二主題もゆっくり目です。ゆったりとしたテンポですが、緊張感があって引き締まっています。反復された第一主題の強弱とテンポの動きの表現は独特です。豊かで柔らかい響きが美しい。トゥッティも充実した響きです。トランペットのロングトーンは強さは感じましたが突き抜けては来ませんでした。

二楽章、明快な主題。とても機能的に動きます。あまり伸びやかでは無い中間部。色彩感はとても濃厚です。

三楽章、細かく表情を付けられた主要主題。原色のような強い色彩がこのオーケストラなのか演奏の特徴です。東南アジアのオーケストラですが、予想以上に上手い。

四楽章、スネアは入りませんでした。トランペットがかなり強いバランスで録られているようにも感じます。ライヴゆえのキズもあります。あまり熱気をはらんで来るような演奏には感じません。遠くで鳴るような大砲のような大太鼓。

五楽章、とても良く歌うチューバ。オフ気味で細かなニュアンスが伝わらないフルート。頂点の大太鼓がリミッターが掛かったように弱くなりました。続くチューバが途中り音をスタッカートに演奏して不自然に感じました。トランペットのロングトーンの部分は壮絶な響きです。4拍目を長く伸ばしてグリッサンドしました。

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リッカルド・シャイー/ベルリン放送交響楽団

シャイー★★★☆

一楽章、モヤ~ッとした空気感に響く序奏主題。たっぷりと歌う第一主題。第二主題もゆったりとしたテンポで歌います。かなり積極的に表現する演奏です。ヴァイオリンのソロも美しい響きを伴ってとても心地よい演奏です。トゥッティは混然一体となっていて、まとまった響きです。トラッペットのロングトーンも突き抜けては来ません。シャイーの若い頃の録音ですが、響きは枯れて充実しています。

二楽章、この楽章もゆったりとしたテンポで落ち着いた演奏ですが、弦の主題は荒々しい表現です。モノトーンのような淡い色彩感ですが、とても落ち着きのある安定感を感じます。

三楽章、艶やかで歌う主要主題。随所にシャイーらしい歌が聞かれます。オーケストラはドイツのオーケストラらしい重量感のある響きで、いきなりのトゥッティでも瞬時に立ち上がらず、少し遅れてフルパワーになるような感じがあります。

四楽章、スネアが入りました。響きは鋭角的では無く、マイルドで少しくすんだ重厚な響きです。寂しげな雰囲気はとても良く表現されています。豊かな残響を伴って奥から響く大太鼓。あまり硬い響きではありません。

五楽章、ゴロゴロと響くチューバ。良く歌いますが響きが浅いフルート。とても繊細で夢見心地のヴァイオリン。あまり大きな盛り上がりにならずに頂点の大太鼓が入りました。トランペットのロングトーンが詰まったような響きで残念です。トゥッティのエネルギー感ももう一つといった感じです。グリッサンドはすこしバラツキました。天使の梯子を昇るような雰囲気は感じませんでした。

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ユージン・オーマンディー/フィラデルフィア管弦楽団

スクロヴァチェフスキ★★★☆

一楽章、とても現実的な序奏主題。豊かに歌う第一主題。第二主題もとても良く歌っています。豊麗なフィラデルフィアサウンドです。クック版第二稿唯一の録音ですがが、かなり均整の取れた演奏です。極端な表現をせずに作品をそのまま表現しようとしています。トランペットのロングトーン部分のトゥッティも豊麗な響きです。録音の古さはあまり感じさせません。安らかに終わります。

二楽章、ゆったりとしたテンポでふくよかなホルンに続いて控えめにオーボエ、続いてヴァイオリンの主題と続きます。中間部は、ゆったりしたテンポなのに慌てるような感じがあって、あまり伸びやかではありませんが、そつ無くまとめています。

三楽章、微妙な表情が付けられた主要主題。良く鳴る木管。この楽章もゆったりとしたテンポです。

四楽章、スネアがはっきりと聞こえます。少しテンポが動く所もありました。あまり奥行き感は無く、眼前に全ての楽器が広がるような音場感です。金管はとても良く鳴りますが、咆哮するほどのことはありません。感情的にのめり込むような演奏では無く、淡々と楽譜を音にしている感じです。トゥッティでもかなり余力を残している感じて、もう少し感情移入して欲しい気持ちになります。こちらの感情が盛り上がっても、スッとかわされるようなもどかしさがあります。大太鼓はあまり強烈ではありません。

五楽章、抑え目で柔らかいチューバ。独特な響きのフルート。大きな頂点ではありませんでしたが、頂点で大太鼓が鳴って、続くチューバはマルティノンの演奏程ではありませんが、テヌート気味でした。テンポはとても確実です。この楽章のトランペットのロングトーンの部分のトゥッティも全開では無いようです。あまり別れの寂しさは伝わって来ません。クリッサンドで演奏しませんでした。

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ルドルフ・バルシャイ/ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー

メナ★★★

一楽章うつろな序奏主題。とても豊かに伸びやかに歌う第一主題。ゆっくりとした第二主題。バルシャイ版での演奏ですが、独自の版を出すくらいなので、作品に対する思い入れも強いのでしょう。表現の幅はかなり広いです。木管が間接音を含んで奥行き感があります。輝かしい金管の響き。壮絶な響きからトランペットのロングトーンが響きます。

二楽章、ゆっくりとしたテンポです。かなり強めではっきりと演奏される主部。トライアングルが入ります。ホルツクラッパーのような音も聞こえます。シンバルも入って盛大です。中間部でも大太鼓のロールやシンバルが入ってちょっと違和感を感じます。コロコロと響くのはマリンバか?。とにかく色んな打楽器が登場します。演奏は積極的で元気です。

三楽章、この楽章もゆっくりとしたテンポです。この演奏では消え入るような弱音は無く、かなり演奏しやすい音量で演奏している感じがします。シロフォンも登場しました。

四楽章、色んな打楽器が入ります。スネアもリズムを刻んでいます。ゆっくりと濃厚な表現もありますが、とにかく打楽器が頻繁に出て来ます。タンバリンまで登場します。大太鼓は強くミュートされた感じは無く柔らかく長い響きでした。

五楽章、ミュートは僅かに感じる大太鼓。大太鼓は遠くから響く感じで強烈な打撃ではありません。ゴロゴロとした響きのチューバ。美しいフルートですが、あまり感情は込められていないように感じました。それぞれの楽器がくっきりとしていて濃厚な色彩です。あまり盛り上がらず大太鼓が入りました。豊かな響きの中にテヌート気味にチューバが独特の響きです。トランペットのロングトーンも弱いです。僅かに揃わないグリッサンドでした。この部分は大きくズレがあった方が異様な雰囲気になって良いと思うのですが・・・・。あまり天に昇って行く感じもありませんでした。

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クルト・ザンデルリング/ベルリン交響楽団

★★

一楽章、静かな空間に音が広がり、かなりはっきりと演奏される序奏主題。速めのテンポで伸びやかで柔らかく歌う第一主題。ホルンも伸びやかです。。ゆったり目の第二主題。中低音も柔らかく伸びやかです。展開部に入っても速めのテンポです。再現部で金管の硬直した響き。トランペットのロングトーンはあまり鋭い音ではありません。最後はとても穏やかな雰囲気になりました。

二楽章、かなりゆっくりとした演奏ですがかなりエネルギッシュで振幅の大きい演奏です。中間部もゆっくりとたっぷりとした表現で歌います。一般的なこの楽章の演奏に比べるとかなり活発な表現です。テンポの動きもあります。

三楽章、一転して速めのテンポです。あまり表情を付けずに淡々と進みます。

四楽章、胴の浅いスネアが響きます。この楽章でもテンポの動きがあります。音像が大きくオンマイク気味で金管も前に出てきて奥行き感はあまり無い録音です。この楽章も速めのテンポでどんどん進みます。作品には不釣り合いな径の小さいシンバル。硬く強烈な大太鼓がホールに響き渡ります。

五楽章、弱めのチューバ。弱くビブラートを掛けているホルン。澄んだ響きのフルート。続くヴァイオリンが静かで美しい。トランペットのロングトーンはあまり強くありません。速めのテンポで淡々と演奏されるせいか、そんなに悪い演奏ではありませんが、何故か作品に入って行けません。最後も惜別に感じはほとんど感じませんでした。
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マーラー10番~アダージョ

マーラーの交響曲第10番の第1楽章「アダージョ」は、彼の最後の作品として知られ、その中でも特に深い悲しみと内面的な葛藤が感じられる楽章です。この楽章はマーラーが完全にオーケストレーションした唯一の部分であり、彼の最後の作品となった交響曲全体の核心をなす重要な楽章です。作曲の背景には、マーラーが抱えていた健康の悪化や妻アルマとの関係における危機など、さまざまな個人的な苦悩が影響していると考えられます。そのため、音楽には非常に切実な感情と人生の重みが込められています。

「アダージョ」の構成と音楽の特徴

「アダージョ」は、緩やかなテンポと深い感情が漂う、荘厳で崇高な音楽が特徴です。以下は、この楽章の主な構成と印象的な特徴です。

  1. 静かな開始と哀愁漂う旋律
    楽章は低弦の不安定で重厚な和音から静かに始まり、その後にヴィオラが主要主題を奏でます。この主題は哀愁を帯びた美しい旋律で、広がりと深い叙情性を持っており、聴く者の心に深く響きます。この旋律は、マーラーが人生の終わりを見据えながら抱いていた複雑な感情を表しているかのようです。
  2. 和声と不協和音による緊張感の増大
    途中で楽曲は徐々に劇的な展開を見せ、複雑な和声と不協和音が加わることで緊張感が増します。この不協和音には、マーラーの内面の混乱や絶望が反映されているとも考えられており、楽章全体に深い苦悩が滲んでいます。また、時折出現する静寂の「間」がさらに音楽の緊張感を引き立て、聴衆に強い印象を与えます。
  3. クライマックスの劇的な響き
    楽章の中盤から後半にかけて、感情が爆発するような劇的なクライマックスが訪れます。ここでは、トロンボーンやトランペットが強烈に鳴り響き、苦悩や絶望の頂点に達する場面です。この箇所は、マーラーが抱えていた絶望や苦しみが極まった瞬間とも捉えられ、彼の全交響曲の中でも最も激しいクライマックスの一つとされています。
  4. 静かな終結と余韻
    クライマックスの後、楽章は静かに収束し、再び穏やかな旋律が戻ってきます。最終的に音楽は静かにフェードアウトし、悲しげでありながらもどこか救いを感じさせるような響きで終わります。マーラーの人生の終焉を暗示するかのように、儚くも美しい結末が聴く者に深い余韻を残します。

全体の印象と音楽的意義

「アダージョ」はマーラーが最晩年に到達した精神的・音楽的な深みを象徴する楽章であり、彼のすべての苦悩と向き合うような音楽が描かれています。マーラーの音楽は常に感情表現に富んでいますが、このアダージョには特に彼の「人生の終わり」を見つめる厳粛さと、自己の内面と対話するような静謐さが感じられます。後世の作曲家にとっても、この楽章は20世紀の音楽に向けた新たな道を切り開いたものとして、高く評価されています。

4o

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

とても静かでも艶のある序奏主題。一気に伸びやかになりますが、しっとりと慈しむような第一主題。かなりゆっくりとした第二主題。ホルンが入る第一主題は吠えるような大きな表現でした。最晩年程強烈ではありませんが、感情をぶつけて来ます。作品と一体になっているバーンスタインにウィーンpoも応えています。遠くから美しい木管のトリル。ヴァイオリンのソロも艶やかで美しい。大きなうねりの後にアダージョ主題。全く波の無い水面のように静まり帰った静寂感。静寂を打ち破る強烈な絶叫。巨大な不協和音。強く突き抜けて、最後に強く押すトランペットのロングトーン。大きな意味を込められているようで、鳥肌が立ちました。とても寂しいコーダ。最後の最後で少し安堵したような穏やかさを感じました。

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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

★★★★★

とても静かに演奏される序奏主題ですが、緊張感はあまり感じません。序奏主題の雰囲気を引き継いで、とてもゆっくりと演奏される第一主題。第二主題そさらに遅い演奏です。テンポは遅いのですが、あまり表現をしている感じではありません。反復で表現が豊かになったような感じがします。暗い中から響く展開部の序奏主題。とても遅いので、木管は普段聞き慣れている感じとはかなり違います。アダージョ主題は控えめです。再現部に入ってもテンポは異常なくらい遅いままです。テンポが遅い中での静寂はとても神秘的です。金管の絶叫はさすがロシア国立soです。柔らかい不協和音の中から強烈なトランペットのロングトーンが響きます。音楽の振幅はとても大きい演奏です。コーダに入るとゆっくりとしたテンポでとても穏やかで安らぐ雰囲気が良いです。異常に遅いテンポでこの作品の違う面を見せてくれたような演奏でした。

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クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

とても暗く温度感の低い序奏主題。とても豊かに歌う第一主題。楽器の入れ替わりも克明に描かれていて色彩感も濃厚で、切々と歌います。第二主題もとても豊かな表現です。反復してホルンが入る第一主題は荒々しく勢いがあります。かなり振幅が大きく感情を吐露するような演奏です。展開部に入って鮮やかに浮かび上がる木管。アダージョの演奏としてはかなり激しく荒れ狂うような演奏です。静寂も動きがあります。マグマの噴出のような絶叫。柔らかく明るいトランペットのロングトーン。コーダに入っても歌うアダージョ主題。ようやく少し安堵の雰囲気が訪れます。

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クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

ほの暗い序奏主題。一気に伸びやかになる第一主題。ゆったりと怪しい雰囲気の第二主題。とても克明に描かれて行きます。深々としたコントラバスに乗ってバランスの良い響きです。チェロの第二主題もねっとりと濃厚な表現でした。展開部に入って鮮明な木管。アダージョ主題は引き締まって細身の表現。再現部に入ると極端な弱音にはなりません。金管は最後で絶叫しました。広大な不協和音。強烈なトランペットのロングトーン。テンシュテットの棒にとても良く反応するオケ。和らいで穏やかになりました。

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クラウディオ・アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

暗いところから響いて来る序奏主題。一気に開放される第一主題。伸びやかに歌います。ゆったりとしたテンポで揺れながら歌う第二主題。とても良く歌い積極的に表現される演奏で、振幅も大きいです。展開部の木管は滑らかで突出しませんでした。濃厚なヴァイオリンのソロ。抑え気味に演奏されるアダージョ主題。再現部の第一主題は複雑に絡み合った感じです。直後の極端な静寂。壮絶な絶叫。奥まって響く不協和音。トランペットは少し遠くから響きます。安堵感のあるアダージョ主題。とても穏やかに曲を閉じました。

アバドの演奏なので期待せずに聞きましたが良い演奏でした。

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ジュゼッペ・シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団

★★★★★

非常に弱く、暗闇の中から響くような序奏主題。第一主題も弱く柔らかい演奏です。とてもゆっくりと揺れる第二主題。夢見心地で進みます。ホルンやトロンボーンを明快に鳴らし、強弱の対比も明確です。展開部に入っての木管もゆってりと柔らかい表現です。ヴァイオリンのソロの前でテンポが落ちるなどテンポの動きもあります。引き締まったアダージョ主題。再現部の繊細な弱音。静寂を突き破る絶叫。強烈なトランペットのロングトーン。コーダもとてもゆっくりとした演奏です。最後はゆっくりと天に昇って行きました。

サイモン・ラトル/ロンドン交響楽団

★★★★★

割とくっきりとスッキリした序奏主題。微妙な表現も付けられています。伸びやかで大きく歌う第一主題。流れるような第二主題。木管がくっきりとクリアに響きます。展開部に入って浮き立つ木管。とても動きがあって活発な演奏です。柔らかい再現部の第一主題。弱音はとても弱く、強弱の対比もとても大きいです。広がるトランペットのロングトーン。とても穏やかに天へ昇って行くようなコーダでした。

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ズービン・メータ/イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

モヤーッとした中から柔らかく響く序奏主題。第一主題も伸びやかで柔らかい。第二主題は少しゆったりとしていますが、ここでも柔らかい響きが特徴です。ファゴットも柔らかい。展開部に入っての木管も飛び抜けて来るような響きでは無く、ブレンドされて柔らかく溶け込んでいます。ヴァイオリンのソロも伸びやかで美しい。アダージョ主題は引き締まった演奏です。金管の絶叫も柔らかく、不協和音もマイルドです。トランペットはジーンと独特な響きのロングトーンです。うつろな雰囲気と少しの寂しさも感じるコーダです。次第に穏やかになって安らかに終わりました。

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ロリン・マゼール/ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★☆

太い響きの序奏主題。あまり開放されない第一主題。ビブラートを掛けたホルン。ゆっくりと豊かに歌う第二主題。ヴァイオリンがかなり尖った響きに感じます。展開部に入って滑らかに演奏される木管。引き込まれるような静寂を突き破る金管の絶叫はかなり激しい。柔らかい不協和音から突き抜けるトランペット。コーダで弦と木管がかなり強く演奏しました。全体にゆったりとしたテンポでしたが、マゼールらしい仕掛けはあまり無く、抵抗なく受け入れることが出来る演奏でした。

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ロリン・マゼール/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

現実味のある序奏主題。あっさりとした第一主題。僅かに遅くなる第二主題。あまり表現らしい表現も無く淡々と進みます。反復してホルンを含む第一主題は広大なスケールの演奏でした。色んな楽器が折り重なる多層的な響きは素晴らしいです。展開部の木管は鮮明に浮き上がります。艶やかなヴァイオリンのソロ。アダージョ主題はとても引き締まっています。再現部に入っても極端な弱音にはなりません。壮絶な絶叫。バリバリと響き不協和音。渋い響きのトランペットのロングトーン。優しく穏やかなコーダ。

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クラウス・テンシュテット/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★

独得のアゴーギクを効かせて不気味な序奏主題。抑制的な第一主題。サラッとした第二主題。刻み付けるようなピチィカート。反復でホルンが入る第一主題は引き締まっています。展開部の木管のトリルは他の楽器に埋もれるような感じでした。再現部の静寂な部分も動きがあり、艶やかです。かなり激しい絶叫。ゴロゴロと唸る不協和音。トランペットのロングトーンも激しく突き抜けます。テンポの大きな動きもあります。残念ながらバーンスタインの演奏程の感情の吐露も無く、音色も艶やかさや深みを感じることが出来ませんでした。

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ミヒャエル・ザンデルリング/南西ドイツ放送交響楽団

★★★★

豊かな残響を伴った序奏主題。慎重に丁寧に演奏される第一主題。速めのテンポであっさりと演奏される第二主題。強弱の変化は強調されています。展開部に入っての木管もくっきりと浮かび上がります。柔らかいヴァイオリンのソロ。アダージョ主題は締まった感じ。再現部に入って消え入るようなほとんど何をやっているのか聞こえないくらいの静寂。金管の絶叫はバランス良く強烈な響きではありませんでした。強めの不協和音。2本のトランペットの音が合わない。次第に穏やかになりました。穏やかに安らいでいく感じはとても良いです。

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ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団

★★★

モヤーッとした中から響く序奏主題。不気味な雰囲気があります。とても柔らかく歌われる第一主題。ナローレンジですが、無理に高域を強調していないので、とてもマイルドで聞きやすい録音です。第二主題もゆったりと豊かに歌います。とても積極的に表現しています。展開部に入るとさらに活発に動く表現です。暴力的なトゥッティの不協和音。少し渋い響きのトランペットのロングトーン。コーダに入っても活発な表現です。とても活発なので、あまり穏やかな雰囲気にはなりませんでした。

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ズデニェク・マーカル/プラハ交響楽団

★★★

太い響きの序奏主題。あまり強い緊張感はありません。控えめであまり伸びやかでは無い第一主題。ホルンがビブラートを掛けています。ゆっくりと丁寧な第二主題。生き生きとした木管。金管の柔らかい響きに対して弦は引っ搔いている感じがします。展開部に入ってもも木管には生命力があります。ヴァイオリンのソロは美しい。再現部は厚みのある響きです。全体にゆっくりと丁寧に演奏しています。木管はとても良い響きです。柔らかい響きの中からあまり伸びやかでは無いトランペットのロングトーンが聞こえます。柔和なコーダで悲鳴を上げるようなEbクラ。

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ピエール・ブーレーズ/クリーブランド管弦楽団

★★★

速いテンポで明瞭な序奏主題。大きくテンポを落として歌う第一主題。波のように押しては返す第二主題。反復しても第一主題はとても豊かに歌います。第一主題以外は速めのテンポで素っ気ない演奏です。チェロのソロはエッジの効いた独特の表現でした。展開部に入って動きのあるも木管も浮き出ることは無く、自然な流れの中で演奏されました。アダージョ主題も朗々と歌うことは無く、かなり抑制的な演奏のように感じます。消え入るのような静寂からの絶叫は大きな振幅がありました。柔らかく暗い不協和音から、トランペットが明るい響きで突き抜けて来ます。弱音は極限まで弱く集中させられます。あまり最後は穏やかになりませんでした。

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ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

★★☆

柔らかく細身の序奏主題。ゆっくりとたっぷり歌う第一主題。第二主題もとたもゆっくりです。反復の第一主題のホルンがかなり強めでした。アダージョ次第もホルンが朗々と歌います。ハイティンク独特の細部まで行き届いたる演奏は健在です。再現部の緊張感のある静寂。絶叫もハイティンクらしく抑制的で美しい響きでした。深々とした不協和音。ちょっと渋めのトランペットのロングトーン。最後はあまり穏やかにならず緊張感を保った演奏でした。

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ウイン・モリス/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

★★

かなり太く、途中にスタッカートがあったり独特の表現の序奏主題。ゆっくりとしたテンポで歌う第一主題。感情が込められて豊かです。第二主題もゆったりとしていて、とても積極的に表現します。展開部の序奏主題も、抑えることは無く、開けっぴろげです。録音レベルの問題なのかも知れませんがかなり賑やかです。アダージョ主題も朗々と歌います。トゥッティはかなり騒々しいですがトランペットのロングトーンは渋い響きです。コーダに入っても何となく賑やかです。なかなか穏やかにはなりません。終始鋭利な響きで安らぐことは無い演奏でした。

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ヴァレリー・ゲルギエフ/ロンドン交響楽団

★★

非常に遠いモヤの中から響くような序奏主題。ゆっくりと丁寧に演奏される第一主題。録音レベル自体が低いようです。速いテンポでピリッとした第二主題。深みがあって柔らかい金管。第二主題はとても速いテンポでサラッと通り過ぎます。展開部に入ってくっきりと浮かび上がる木管。アダージョ主題は朗々と歌う感じでは無く引き締まった感じです。再現部に入ると強い緊張感を伴う静寂になり、その静寂を突き破る金管の絶叫ですが、それ程激しい絶叫ではありません。トランペットのロングトーンも突き抜けては来ません。コーダに入っても、極端な弱音による緊張感があり、穏やかな雰囲気は全くありません。

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ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団

非常に明快な序奏主題。非常に華々しく速めのテンポで演奏される第一主題。かなりテキパキと処理されて行く感じです。ゆったりと歌う第二主題ですが、少しトゲのあるような、僅かに滑らかさを欠いている印象です。エッジが効いていてガツガツと力強く前進します。展開部の序奏主題も静かではありません。木管はとても鮮やかに表現されます。ミュートしたトランペットも明快です。フワッとしたアダージョ主題。かなり強烈な絶叫。盛大に鳴る不協和音。トランペットも盛大に突き抜けます。金管は遠慮なく突出して来ます。コーダに入ってもあまり穏やかにはなりませんでした。

混沌とした複雑さや矛盾など無く、スッキリと割り切れた演奏には抵抗がありました。

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ブルックナー交響曲第6番

ブルックナーの交響曲第6番は、彼の中でも独特な作品とされています。他の交響曲ほど頻繁に演奏されるわけではないものの、その独自の構成や力強い表現で、多くのファンを持つ作品です。

曲の特徴

  1. 力強いリズムと大胆なハーモニー
    第6番は、特に第一楽章のリズムが特徴的です。5拍目に強調が置かれたリズムパターンが繰り返され、曲全体に力強い動きを与えています。また、ブルックナー特有の厚みのあるハーモニーが各楽章で巧みに展開されています。
  2. 構造の複雑さ
    他の交響曲に比べて、より複雑で実験的な構成が見られます。特に、テンポの変化や和声の展開が非常に独創的で、ブルックナーの挑戦的な一面が感じられる作品です。特に展開部では、壮大なスケールでモチーフが展開され、聴衆を圧倒します。
  3. 他作品と異なるフィナーレ
    第4楽章はブルックナーにとって珍しく、比較的短く簡潔なフィナーレとなっています。他の交響曲では長大で重厚なフィナーレが多い中、第6番のフィナーレはさっぱりとしており、少し異質な印象を与えます。

各楽章の概要

  • 第1楽章: 力強いリズムと壮大な展開が印象的で、非常に力強い印象を与える。
  • 第2楽章: 穏やかで美しい旋律が特徴のアダージョで、感動的な雰囲気を持つ。
  • 第3楽章: スケルツォはユーモラスでリズミカルなパッセージが多く、躍動感がある。
  • 第4楽章: 比較的短く、明るく爽やかな締めくくり。

総評

ブルックナーの第6番は、彼の作品の中で異色でありながらも、ブルックナーらしい精神性や厚みが詰まった魅力的な交響曲です。

4o

クリスフ・エッシェンバッハ/hr交響楽団

★★★★★

一楽章、豊かな残響で深みのある第一主題。ホルンも美しい響きです。トゥッティも重厚で滑らかにブレンドされた美しい響きです。第二主題は華やかなくらいです。奥まったところから響くトロンボーンの第三主題。これも美しいです。ほとんどコンクリート打ちっ放しのような大聖堂で、とても豊かな残響です。ホルンもフルートも良く歌います。第一主題の再現も充実した響きで美しいです。途中にタメもありました。ティンパニも柔らかく良い響きです。コーダの途中で少しテンポを落としました。

二楽章、分厚い弦の響き。その中から浮き立つオーボエの第一主題。金管が入ってジワジワと盛り上がります。第二主題も美しいですが、深く祈るような演奏ではありませんでした。第三主題は、重く悲痛な表現です。

三楽章、速いテンポで、とても活発に動く第一主題。第二主題はとても伸びやかです。この演奏を生で聞いた人はこの響きに圧倒されただろうと想像します。

四楽章、とても不安げな弦。ホルンの第一主題もその他の金管のとても伸びやかです。第二主題の前で、極端にテンポを落として演奏する部分もありました。第二主題もテンポが動きます。このテンポの動きもとても良いです。穏やかな第二主題の再現。第三主題の再現はとてもスピード感があります。ゆったりと堂々としたコーダ。見事な演奏でした。

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ゲオルク・ティントナー/ニュージーランド交響楽団

ティントナー★★★★★

一楽章、重く唸るような第一主題。僅かに細身ですが、美しく響くホルン。とてもゆったりとしたテンポです。奥行き感もあり広々としたトゥッティ。繊細な響きで虚ろな雰囲気の第二主題。重厚な響きの第三主題。力強い第一主題の再現。コーダの前も丁寧にゆっくりとしたテンポで演奏します。コーダはゴムのようなティンパニの響きが気になりました。最後は大きくritしました。

二楽章、丁寧に演奏される弦。悲し気に歌うオーボエの第一主題。とても美しい第二主題。感情が込められて重く響く第三主題。金管の叫びも壮絶です。

三楽章、この楽章もゆったりとしたテンポでトロンボーンも伸びやかでした。中間部は少し速めのテンポです。奥行き感があってとても豊かな響きです。

四楽章、少し沈んだ弦。その後ホルンや金管が咆哮します。優しい第二主題。トゥッティの響きは広大でスケールが大きいです。第三主題はあまり推進力を感じません。コーダーもゆったりとしたテンポで伸びやかな鳴り響きました。

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ヨーゼフ・カイルベルト/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カイルベルト★★★★★

一楽章、芯の強いヴァイオリン。浅い第一主題。ヴァイオリンは強くなったり弱くなったりします。とても力強いトゥッティ。弦の表現はとても豊かです。ゆったりと夢見るような第二主題。堂々としてスケールの大きな第三主題。第一主題の再現はとても明るく力強い。湧き上がるような豊かさを感じる演奏です。第三主題の再現も非常に力強い。ティンパニが少し詰まり気味の音です。

二楽章、深く沈んでいくような弦。割としっかりしているオーボエの第一主題。金管はかなり強く吹きますが、この演奏には良く合っています。伸びやかな第二主題。暗く重く引きずるような第三主題。

三楽章、落ち着いた弦の刻み。とても良く鳴る金管。この頃のベルリンpoは最も状態が良かったのではないかと思います。中間部のホルンも表現力豊かです。軽々と良く鳴る金管が素晴らしい。

四楽章、憂鬱な弦。とても力強いホルンの第一主題。金管の鳴りっぷりは素晴らしいです。あまり揺れずにしっかりと地に足の付いた第二主題。あまり前には進まない第三主題。コーダの前はゆっくりからテンポを速めました。コーダはベルリンpoの底力を見せつけるような凄い響きでした。

素晴らしい演奏でした。

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朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団

★★★★★

一楽章、十分に重量感のある第一主題。ブレンドされた美しい響きです。柔らかく伸びやかな第二主題。弱音部も丁寧で手を抜くようなことはありません。第三主題は荒々しいことは無く丁寧です。トゥッティでのチューバが絶妙なバランスでとても充実した響きです。コーダのトランペットのハイトーンも奥から突き抜けて来ます。

二楽章、ほの暗い雰囲気の弦。細く悲し気に響くオーボエの第一主題。第二主題は流麗で美しい。感情を込めて切々と歌う部分は感動的です。重く引きずるような第三主題。この感情に訴えかける表現は素晴らしい。

三楽章、トロンボーンが充実した響きです。木管も弦も引き締まったアンサンブルです。中間部の前の金管も切れの良い響きです。優しい弦。

四楽章、不安げですが、意外と地に足が付いている弦。ホルンの第一主題に絡むトランペットもとても状態が良いのか、素晴らしい響きです。割と落ち着きのある第二主題。チューバの存在感がとても大きく、充実した響きを生み出しています。コーダのトロンボーンも見事に鳴っていて堂々とした演奏でした。

エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団

インバル★★★★★

一楽章、伸びやかな第一主題。ホルンも奥行き感があります。整って美しいトッゥティ。ゆったりとしたテンポで美しい第二主題。第三主題もゆっくりですが、豊かな響きと奥行き感のある良い響きです。第一主題の再現も力強くしかも美しい。第三主題の再現も堂々としています。輝かしいコーダも見事でした。

二楽章、わりとあっさりとしている弦。オーボエが入ると悲壮感が漂います。第二主題も美しく流れますがあまり感情移入されている感じはありません。悲しみがこみ上げるような第三主題。

三楽章、見事に鳴るトロンボーン。めまぐるしい楽器の動きも見事です。中間部のホルンもとても伸びやかです。

四楽章、あっさりとした弦。第一主題もあまり激しくはありません。第二主題はやはりあっさりとしています。濃厚なトゥッティと対比しているようです。とても落ち着いた第三主題。全体的にゆっくりとしたテンポです。コーダのトロンボーンも嬉しくなるほど見事な鳴りようでした。

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セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

★★★★★

一楽章、柔らかく深みのある第一主題。柔らかくブレンドされた響きです。チェリビダッケ特有の極端に遅いテンポではありません。色彩感には乏しい第二主題。第三主題はあっさりとした表現であまり重量感はありません。展開部でも異様な遅さでは無く、待ち切れなくなるようなことはありません。透明感があって切れのいい響きなのですが、分厚い響きでは無く、低域があまり感じられない薄い響きです。

二楽章、感情の込められた弦。弦の波の中から訴えかけるオーボエの第一主題。第二主題はとても美しい。切々と祈りの音楽です。第三主題は重く悲しい。打ちひしがれた末に呆然とするような悲しさがあります。とても美しい演奏です。トランペットも悲痛な叫びです。

三楽章、積極的で動きのある主部。木管の表情も厳しいです。トッティは少し薄いですが、充実した響きです。中間部のホルンはとても明るい響きです。主部が戻ってとても切れ味の良いトロンボーン。微妙な強弱の変化もとても良く訓練されている感じです。

四楽章、不安でうつろな弦。鋭く強い第一主題。踊りたい気持ちをグッと抑えるような第二主題。金管が強奏しても余裕があって美しい響きです。コーダは伸びやかなトロンボーンが美しい演奏でした。

フアンホ・メナ/BBCフィルハーモニック

メナ★★★★★

一楽章、唸るような第一主題。クッキリとしたホルン。ティンパニの強打。強いトランペットのトゥッティ。とても濃厚な色彩感です。切々と歌う第二主題。密度が高く濃厚でキラキラと光を放っています。あっさりとしていた第三主題。重厚な第一主題の再現。激しいティンパニと輝かしいコーダ。

二楽章、豊かに歌い深みのある弦。強い色彩で美しい第二主題。少し重い雰囲気になりますが、やはり美しい第三主題。奥から訴えて来るトランペット。

三楽章、反応の良いオケ。鋭い切れ味の金管。豊かな残響に響く中間部のホルン。トゥッティは見事な響きです。

四楽章、かなり速いテンポの弦。第二主題も速めで躍動感があります。コーダのトロンボーンはあまり強くありませんでしたが、鋭いトランペットと良く鳴るティンパニが良かったです。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★☆

一楽章、遠くで唸る第一主題。颯爽としたテンポで進みます。トゥッティは若干テンポを落として壮大です。第二主題はあまり雰囲気が無く、テキパキと仕事を片付けるやり手社員のような印象です。洗練された美しい響きです。第三主題も都会的でブルックナーの自然は感じません。素朴なブルックナーのイメージとはかなり違う都会的で洗練された華やかな演奏です。コーダの響きも鋭利です。

二楽章、一転して、良い流れで悲し気なオーボエの第一主題。この楽章はとても丁寧です。第二主題も感情が乗っていて音楽に浸ることが出来ます。第三主題もゆっくりと悲しい葬送行進曲で切々と訴えかけて来ます。金管も悲痛な叫びです。夢見るように終わりました。

三楽章、とても振幅の大きな主部です。見事に鳴り響く金管。中間部のホルンは明るくあまりふくよかではありません。

四楽章、演奏に慣れて来たのか、1楽章で感じた都会的な印象はありません。第二主題はとても優しい演奏です。こだまするように見事に受け継がれる第三主題。第三主題以降はとてもゆったりとしたテンポで堂々とした演奏です。第二主題の再現も優しく美しい。強力な響きの中に埋もれるのうなトロンボーンの第一主題で終えました。

一楽章があまりにも都会的だったのが残念です。

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スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン放送交響楽団

スクロヴァチェフスキ★★★★☆

一楽章、遠くて浅い響きの第一主題。柔らかいトッゥティ。別に動くホルンがはっきりと聞こえます。儚い雰囲気の第二主題。とてもゆったりとしていて味わい深いです。第三主題もマイルドな響きで暴力的ではありません。第一主題の再現もあまり重厚な響きでは無く、柔らかく穏やかです。テンポや音量の変化などがありました。コーダはティンパニは控えめでトランペットが突き抜けて来ます。

二楽章、あまり大きな表情は無い弦。ゆっくりと虚ろなオーボエの第一主題。ゆっくりととても感情のこもった第二主題。第三主題も感情が込められた良い演奏です。天上の音楽のような美しさ。この楽章はこの演奏が最も素晴らしいと感じました。

三楽章、奥まったトロンボーン。トランペットが強かった。金管にあまりパワーを感じません。ゆったりとした中間部のホルン。金管があまり炸裂しない代わりに弱音の柔らかく美しい演奏はとても良いです。

四楽章、あまり表情の無い弦。ホルンの第一主題もあまり力強くはありません。第二主題は微妙なテンポの動きがあります。金管は強く吹いてもあまり音圧となって迫って来ません。コーダはトロンボーンが叫ぶ手前でテンポを落として広大なスケールで終わりました。

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オットー・クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

★★★★☆

一楽章、とてもゆっくりとしたテンポで始まる第一主題。堂々とした佇まいのトゥッティ。慈しむような第二主題。ヨッフムの録音と近い年代ですが、こちらの録音はとても潤いがあって伸びやかです。金管が強奏しますが、荒くは無く堂々としている第三主題。ゆったりとした第一主題の再現も余力があってスケールの大きな表現です。コーダも素晴らしい響きの演奏でした。

二楽章、一楽章から一転して、普通のテンポです。少し速いくらいかも知れません。深く沈む弦。哀愁に満ちたオーボエの第一主題。金管も入って振幅の大きな演奏です。第二主題はあっさりと演奏します。引きずるように重い第三主題。自然に高揚する金管。ブルックナーらしい素朴な雰囲気があります。

三楽章、控えめのトロンボーン。モヤーッとした響きからトランペットが突き抜けて来ます。木管も生き生きとした表現です。ふくよかなホルンは次第に強くなります。

四楽章、あまり悲観的では無く、比較的落ち着いている弦。ホルンはあまり咆哮せず、トランペットの方が強いです。でも充実した響きです。揺れ動くような第二主題。第三主題はあまり前へ進みません。コーダはもっとスケールの大きな表現が欲しかった。

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ケント・ナガノ/南西ドイツ放送交響楽団

ナガノ★★★★☆

一楽章、静かに演奏されますが、唸りを上げるような第一主題。シルキーで充実したトゥッティ。方々へ散らばるような第二主題。おおらかな第三主題。金管での第一主題の再現も伸びやかで美しい。途中で一旦音量を落としました。コーダのティンパニは少し浅い響きですが、全体としては伸びやかで美しい響きです。

二楽章、感情は込められていますが、深くのめり込むような表現ではありません。第二主題も美しい演奏です。重くはなりますが、音楽は自然に流れる第三主題。

三楽章、透明感のあるトロンボーン。美しく鳴るオケです。牧歌的な雰囲気がとても良く表現されたホルン。

四楽章、薄くモヤがかかったような弦の中にくっくりと浮かぶ表情豊かなホルンの第一主題。涼やかな第二主題。弱めに入ったコーダ。あまり突き抜けず、若干短めに演奏されたトロンボーン。

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ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

ショルティ★★★★

一楽章、遠くて軽い第一主題。見事に鳴り響くブラスセクション。あっさりとした表現の第二主題ですが、サラッとした弦も美しいです。木管もピンポイントに定位して美しいです。第三主題は速めのテンポですが、ここでも見事に鳴り響く金管。鍛え上げられたアンサンブルの精度は他の演奏とは一線を画すものです。ショルティのブルックナーは甲高い響きでブルックナーには全く合わないと思っていましたがこの演奏ではとても良い響きに聞こえます。ゆったりとしたテンポで堂々としたコーダ。金管は本当に素晴らしい。

二楽章、最初の弦はあまり大きな表現はしません。悲し気なオーボエの第一主題。第二主題もあっさりとしていて深みがありません。第三主題は、とても大切な物を扱うような注意深さで、重く美しいです。

三楽章、目の覚めるような響きのトロンボーン。切れ味抜群のトランペット。オケの上手さでは群を抜いています。中間部はゆったりと伸びやかなホルンでとても良い表現です。

四楽章、独特な表現で弱々しい弦。とても力強いホルンに続く金管も非常に力強い。とにかく見事な響きです。第二主題は特に表現は無く、この演奏では弦の部分はほとんど表現は無い感じです。木目細かくシルキーな金管の響きは本当に素晴らしいです。第三主題はあまり前には進みません。大きなテンポの動きがあってコーダに入りました。トロンボーンの第一主題かせ少しゆっくりになりました。

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ヘルベルト・ブロムシュテット/ドレスデン国立歌劇場管弦楽団

ブロムシュテット★★★★

一楽章、速めのテンポでとても表情豊かな第一主題。強い推進力があります。トゥッティでは少し響きが奥まるような感じがします。第一主題とは一転してゆったりとした第二主題。何とも言えない良い雰囲気です。デッドな感じの第三主題。第一主題の再現はやはり速いテンポでとても力強いです。第三主題の再現は暴力的な感じです。コーダも非常に力強い演奏でした。

二楽章、物思いにふけるような弦。割としっかりと地に足の付いたオーボエの第一主題。あっさりとした第二主題。尾を引くように引きずられる第三主題。金管が奥から鳴り響いて壮絶な響きになります。表現の豊かな演奏でした。

三楽章、トロンボーンがかなり奥まっています。木管は少し緩い感じです。中間部のホルンは音を短めに演奏します。

四楽章、速いテンポの弦。ホルンは強めですが、他の金管とブレンドした響きになりません。テンポの動きはありますが、淡々とした第二主題。コーダもトロンボーンがとても奥まっていてバランスが悪いです。コーダはかなりテンポが速くなりました。

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ヴォルフガング・サバリッシュ/バイエルン国立管弦楽団

サバリッシュ★★★★

一楽章、大きく歌う第一主題。ホルンも豊かな表現です。残響も豊かです。トゥッティは鋭いトランペット。第二主題も豊かな響きで美しい。第三主題は速めのテンポでスッキリとしています。第一主題の再現も速めのテンポですが、充実した響きです。透明感があってサラッとした演奏です。コーダもかなりテンポが速い。ティンパニはポコポコと言う音。

二楽章、感情のこもった弦。悲しく歌うオーボエの第一主題。第二主題も感情が込められて良い演奏です。第三主題もとても美しい。ホルンも豊かな表現で、とても良く歌う演奏です。

三楽章、控えめなトロンボーンですが、残響は美しい。フルートも豊かな響きで美しいです。中間部も豊かな響きでとても美しいです。

四楽章、表情豊かな弦。あまり咆哮しないホルンの第一主題。テンポの大きな動きもありました。ここでも丁寧に歌う第二主題。コーダは抑え気味であまりスケールの大きな感じがしませんでした。

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ギュンター・ヴァント/NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団

★★★

一楽章、重く深みのある第一主題。ホルンは細いです。トゥッティはシャープな響きです。うつろな第二主題。色彩感は豊かです。第三主題は荒々しくは無く、とても落ち着いた表現です。トゥッティで低音域があまり響かないので、重量感がありません。第一主題の再現部で、ティンパニの3連符を含むリズムがトム-トムのようなポコポとした響きであまり釜が鳴っていない感じで違和感がありました。他の演奏では聞こえなかったオーボエが聞こえたり細かいこだわりがあります。テンポや音量の変化もあり聞き所があります。美しく朗々と響くホルン。コーダのティンパニは特にポコポコとした響きで作品に全く合っていないと思います。

二楽章、良い雰囲気のたたずまいです。ひたすら祈るような第二主題です。感情も込められた良い演奏です。

三楽章、ここでのティンパニのロールは釜も鳴っていて良い音でした。トランペットがシャープです。中間部のホルンも明るい響きです。木管も動きがあって生き生きとしています。

四楽章、弦の中に、普段聞こえない木管が聞こえます。第二主題も微妙にテンポが動いています。第三主題はあまり推進力は感じられず落ち着いています。ティンパニのロールは良いのですが、最後の1発が詰まったような響きでどうしても好きになれません。コーダのティンパニのロールもボコボコとした響きで、全体の演奏は良かったと思いますが、ティンパニが曲を壊したような感じがします。

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ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク★★★

一楽章、静かに演奏される第一主題。トゥッティへ向けてテンポを速めます。ヴァイオリンが強いトゥッティ。第二主題も速めであまり味わい深い演奏ではありません。全体に速めのテンポでサクサク進みます。金管は伸びやかで美しいです。コーダも充実した金管の響きは素晴らしいです。

二楽章、思案に暮れるような弦。ゆっくりとしたテンポで美しいオーボエ。第二主題はあまり大きな表現はしませんが作品に語らせるような演奏で美しい。あっさりとした表現ですが、作品からにじみ出る悲しさがあります。

三楽章、威勢のいいトロンボーン。中間部のホルンも豊かな響きです。金管の鳴りは見事です。

四楽章、あまり表情の無い弦。濃厚な金管。トゥッティの手前で大きくテンポを落としました。第二主題もあっさりとした演奏です。畳みかけるような第三主題。コーダはあまり充実した響きではありませんでした。

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オイゲン・ヨッフム/バイエルン放送交響楽団

★★★

一楽章、録音が古いせいか音の密度が薄い感じがします。第一主題のトゥッティは少し荒々しい感じで乱暴に感じました。第二主題も密度が薄い。第三主題も響きが浅く重厚感がありません。第一主題の再現もしっとりとした落ち着きが無く、全体に雑な印象です。

二楽章、渦巻くような弦の第一主題と悲痛なオーボエの第一主題。弦の木目は荒いですが、丁寧に祈るような第二主題。第三主題も重く悲しい雰囲気がなかなか良いです。

三楽章、この楽章では、金管は乱暴ではありません、とてもシャープな響きです。木管も生き生きとしています。中間部のホルンはデッドで伸びがありません。

四楽章、しっかりと地に足が付いた弦。ホルンがやはりデッドで伸びやかではありません。ヨッフムらしい大きなテンポの動きもありました。録音がデッド過ぎて、音に滑らかさが無く、音も溶け合わないので、マスとしての美しい響きにならず、浅い響きになってしまっているのがとても残念です。録り方によってきかなり印象が変わったのではないかと思います。コーダは速いテンポです。

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ブルックナー交響曲第6番2

ダニエル・バレンボイム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

バレンボイム★★

一楽章、とても表情のある第一主題。木管もクリアーです。横に広がるようなトゥッティであまり重厚感はありません。第二主題は淡白です。弦も美しいです。第三主題は音量を変化させる部分もありましたが、とても軽い響きでブルックナーとは思えません。コーダもかなり腰高です。テンポの動きもありますが、あまり魅力のある演奏ではありません。

二楽章、たっぷりと表現される弦。悲痛さは無く、普通に演奏されるオーボエ。整然としていて美しい第二主題。重く悲しい第三主題。

三楽章、スッキリとした響きのトロンボーン。とても精緻なアンサンブルなのですが、低音域がとても薄い。中間部に入ってもクリアーで精緻な響きはとても見事です。

四楽章、不安な雰囲気のある弦。第二主題は特に表情はありません。コーダは特にトロンボーンが突き抜けてはきませんでした。

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マリス・ヤンソンス/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ショルティ★★

一楽章、ほの暗く重い第一主題。ふくよかなホルン。リミッターがかかったようにトゥッティが前に出て来ません。奥ゆかしい表現の第二主題。第三主題も金管が奥まってしまって、ダイナミックの変化がほとんど無く平板です。ウィーンpoらしい濃厚な色彩感もあまり感じられません。音色からするとかなり強く吹いているようですが、実際の音圧にはならないコーダ。

二楽章、とても悲しい第一主題。テンポの動きはありますが、淡々と進む第二主題。重く暗い悲しみがこみ上げる第三主題。それにしても録音年代が新しいにもかかわらず、この録音状態は何ななんでしょう。

三楽章、速めのテンポです。この奥まったトロンボーンが何とも言えない不満に感じます。ゆったりしたテンポでふくよかなホルンはとても良い雰囲気です。

四楽章、テンポは大きく動く第一主題。第二主題も録音のせいなのか枯れた響きで色彩感がほとんどありません。落ち着いた第三主題。やはりトロンボーンが全く前に出てこないコーダ。

せっかくの演奏を録音が台無しにしたような印象でした。

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シモーネ・ヤング/メルボルン交響楽団

ヤング★★

一楽章、速いテンポで大きく歌う第一主題。トランペットが奥まっていて、ヴァイオリンが良く聞こえるトゥッティ。第二主題も速めのテンポで、あまり味わいがありません。オケの響きも艶やかで美しいのですが、何となく流れて行く感じで、聞かせどころが無い感じです。リミッターが掛かったようにトゥッティの音量が大きくなりません。第三主題の後もかなりテンポが速くなります。テキパキと仕事をこなして行くキャリア・ウーマンのようで、ブルックナーらしい素朴な雰囲気に欠ける演奏です。コーダも都会的に感じました。

二楽章、大きな表現の弦。オーボエは明瞭です。第二主題も大きめの表現で、作品から滲み出るような深みがありません。第三主題もはっきりとした表現です。

三楽章、やはりトゥッティで音が引っ込むような不自然さがあります。とてても活発に動くのはとても良い表現で、作品に合っています。ゆったりとしたホルンが朗々と歌い、なかなか良い中間部。

四楽章、この楽章も速いテンポです。テンポのせいもあると思いますが、何か流れ作業のような感じがします。第二主題も表現が大きく、奥ゆかしさが無く、幼稚な感じがします。コーダき気持ちよく鳴り響くトロンボーンでした。

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ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団

★★

一楽章、少し速めのテンポで力強い第一主題。トゥッティに向けて畳みかけます。とても歯切れの良い演奏です。第二主題も速めでじっくりと音楽を味わうような雰囲気にはさせてくれません。とても軽く速い第三主題。とても良く金管を鳴らす演奏で、テンポの動きもありますが、全体に騒々しい演奏です。コーダもかなり速いテンポで畳みかけます。

二楽章、深みのある弦に悲し気なオーボエの主題が乗ります。第二主題はあまり感情が乗らずあっさりとした印象です。第三主題はとても悲痛で重い雰囲気が良く出ています。感情を込めて強く押す部分もありました。

三楽章、この楽章は中庸なテンポです。木管の表現は引き締まった感じではありませんでした。中間部は共鳴する周波数があるようで、ホルンが強く鳴ったりする音があります。

四楽章、割と安定感があってあまり不安げでは無い弦。第二主題の前に、急にテンポを落とす部分もあります。第三主題はその場にいて、あまり強い推進力は感じません。客席には観客がおらず、放送用の収録だったのか、ライヴ独特の盛り上がりも無く、特に惹かれる演奏ではありませんでした。

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チョン・ミョンフン/ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団

チョン★★

一楽章、割と速めのテンポで提示される第一主題。左チャンネルしか音が出ていません。ゆったりと歌たう第二主題。録音もあまり良くは無く、かなり荒れた音です。第三主題は軽い響きです。第一主題の再現ではあまり音圧を感じない奥まった響きです。コーダのトランペットは力強い。

二楽章、深く歌う弦。オーボエに悲痛な雰囲気はありません。あっさりとしていてあまり表情の無い第二主題。ゆっくりととても悲しい第三主題。

三楽章、速めのテンポです。トロンボーンはかなり奥でほとんど響いて来ません。続く木管もあまり敏感な強弱の付け方ではありません。とてもゆったりとして、朗々と歌う中間部。

四楽章、あまり表情の無い弦。力強さのあまり無いホルンの第一主題。金管の部分で大きくテンポを落としました。第二主題はとてもあっさりとしています。第三主題も推進力は感じません。片チャンネルしか音が出ていないこともあり狭い音場感で、ブルックナーらしい広大で重厚な雰囲気はありませんでした。

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リッカルド・ムーティ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ムーティ★☆

一楽章、静かなヴァイオリンの刻み。あまり重量感の無い第一主題。ゆったりとしたトゥッティ。第二主題は淡白であまり主張が無いように感じました。第三主題は強烈にオケを鳴らさず穏やかです。テンポが大きく動いて第一主題の再現になりました。コーダのティンパニもウィーンpo独特の羊皮の音です。

二楽章、大きく歌う弦。悲し気なオーボエの第一主題。第二主題はかなりあっさりとしています。第三主題も重く引きずるような感じは無く、あっさりとしています。

三楽章、かなり速めの主部。ふくよかなホルンの中間部ですが、やはりあっさりとした演奏で、作品への思い入れがあまり感じられません。

四楽章、この楽章も速いテンポです。ホルンの主題は鳴り切らない感じがあります。テンポが大きく動く部分もあります。弦だけで演奏される部分がとてもあっさりしていて、魅力に欠けます。コーダもオケを咆哮させることも無く、全体にあっさりとしていて、強い主張の無い演奏でした。

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ロベルト・パーテルノストロ/ロイトリンゲン・ヴュルッテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団

一楽章、豊かな残響の中に浮かぶ第一主題。間接音が多いので、音が繋がって聞こえます。ゆったりとした第二主題。豊かな残響の割には腰高な響きです。第三主題も低音が薄い感じです。展開部はぎこちない感じがします。トランペットの第一主題の再現も力強さがありません。とにかく腰高でブルックナーらしい響きではありません。コーダではティンパニがポコポコと独特の響きで、全体の一体感もありません。

二楽章、この楽章はわりと穏やかでバランスの良い演奏です。第二主題はあまり伸びやかではありません。

三楽章、ティパニが膨らんでトロンボーンが凄く奥まっていてあまり聞こえません。フルートの表現にも厳しさが無く、緩い表現です。大聖堂に響く残響は凄いです。中間部のホルンも尾を引く残響は素晴らしいです。

四楽章、残響が長いのにオケの響きに潤いが無い感じで少し不思議な演奏です。演奏が軽く、ブルックナーらしい重量感がありません。コーダもバラバラな感じで充実した響きではありませんでした。