ストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」
ストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」は、ロシアの三大バレエ音楽の一つで、初演は1911年。ロシアの伝統やカーニバルの雰囲気が色濃く反映された作品で、ストラヴィンスキーの初期の代表作です。
「ペトルーシュカ」は、ロシアの謝肉祭で操られる人形たちの物語を描いており、主人公ペトルーシュカ(ピエロのような人形)、愛される人形のバレリーナ、そして力強いムーア人の3人を中心に進行します。物語では、恋するペトルーシュカがバレリーナに思いを寄せますが、ムーア人に叶わず、悲劇的な運命を辿ります。
音楽は軽快で多彩なリズムと華やかなオーケストレーションで知られ、ピアノや管楽器が独特の役割を担い、街の喧騒や祭りの喧騒が巧みに表現されています。特に有名なのが「ペトルーシュカの音型」と呼ばれるリズミカルなモチーフで、ペトルーシュカの感情や運命を象徴しています。
たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」名盤試聴記
シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団
★★★★★
第一場、軽ろやかで色彩感豊か、華麗でシャープな演奏。
デュトワ/モントリオールsoの録音の特徴である低域のカットが功を奏して、耳障りもよく、とても軽快で清清しい演奏になっています。押し付けがましいところがないので、とても聴きやすい。どの楽器もチャーミングでなかなか良いです。
第二場、寂しげな場面が描かれています。響きがクールなので、寂しさをより強調しているように思います。このオケにはストラヴィンスキーの三大バレエのうちペトルーシュカが最も適していると思います。
第三場、軽快な踊りの場面や流れるような美しい旋律、合いの手に時折入る軽妙な楽器たちの登場もとても上手くバランスがとれています。
第四場、まばゆいグロッケンやアコーディオンと化したオーケストラ。トロンボーンやテューバも重くないので、とても聴きやすい。
シャルル・デュトワ/ロンドン交響楽団
★★★★★
デュトワならではの色彩感とともに力強い演奏。1911年版
モントリオールsoとの録音のような低域の一部をカットされたような録音ではなく、ワイドレンジです。
色彩感も豊かですし、低音域も力強いのでメリハリがしっかりついていて良い演奏です。どのパートをとっても上手いし、金管も気持ちよく鳴らしていて個人的にはモントリオールsoとの録音より、こちらの方が好きです。
それぞれのパートの音が立っていて、存在感がしっかりあります。また、デュトワの特徴だと思いますが、シャープで切れ味鋭く、また登場する楽器が整然と整っています。
シャープで美しい演奏なので、作品の本質には迫っていないと言われるかもしれませんが、演奏水準は極めて高いと思います。
強弱の振幅がしっかりと低音域も伴って演奏されるので、ティンパニの一撃なども強烈で、演奏が変化に富んでいるので、聞いていて楽しいです。
クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団 1985ザルツブルクライヴ
★★★★★
謝肉祭の市、速めのテンポで強い推進力があります。オケの表現もとても積極的です。アバドはベルリンpoの音楽監督になる前の方が音楽に主張があって良かったと思います。
ペトルーシュカの部屋、フルートのソロもはっきりとした表情がありました。音楽が生き生きとしていて躍動感があります。強弱の振幅も大きく、色彩も明快です。
ムーア人の部屋、ここも速めのテンポです。
謝肉祭の市(夕景)、ここも速めのテンポですが、オケがアバドの指揮に献身的に応えているところがとても良いです。オケの敏感な反応でとても色彩感豊かな演奏になっています。
速めのテンポを基調に積極的で色彩感豊かな演奏でした。オケもとても良い反応をしていました。
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エンリケ・バティス/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
第一場、シャリシャリした響きで低域があまり含まれていない感じの録音です。歯切れのいいシャキッとした演奏です。色んな楽器の動きが克明です。かなり高域が強調された録音で、とても華やかに聞こえますが、大太鼓が長い余韻を残して響きます。美しく歌うフルート。勢いがあって力強いです。
第二場、低域があまり含まれていないので、とても清涼感のある演奏になっています。ミュートしたトランペットやトロンボーンがかなり強く演奏します。金管が遠慮なく吹くので、とても色彩感が濃い演奏になっています。
第三場、ホルンもトロンボーンも強烈です。ドラもとても良い音で入って来ます。締まりの良いスネアも気持ち良いです。
第四場、典型的なドンシャリの録音で、尾を引く大太鼓とシャリシャリとした高音域が特徴です。メリハリのはっきりとしたもしかしたら爆演に入る部類の演奏かも知れません。最後のトゥッティは強烈です。
かなり濃厚でこってりとした色彩感。金管も遠慮なく入ってくるので、かなり強烈です。もしかしたら爆演の部類に入るかも知れません。
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パーヴォ・ヤルヴィ/パリ管弦楽団
★★★★☆
第一場、キリッと立ったフルート。涼しげで爽やかな響きです。47年版です。とてもリズムが弾んでバレエ音楽らしい演奏です。ファゴットもくっきりと浮かび上がりとても色彩感豊かな演奏です。
第二場、強弱の変化も大きくとても豊かな表現です。テンポの動きも大きいです。
第三場、歌に溢れた美しい演奏です。
第四場、柔らかい響きから、突き刺さるような強い音まで、多彩な音を駆使して音楽を表現しています。金管は決して咆哮しません。かなり抑えています。最後は盛り上がって終わる版でした。
色彩感濃厚で、表現も豊かで、弾むリズムの演奏でした。トゥッティでの金管はかなり抑えられていて全体のバランスを重視していた感じでした。
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ピエール・ブーレーズ/ニューヨーク・フィルハーモニック 1975ベルリンライヴ
★★★★☆
第一場、ブレンドされた響きの中からトランペットが突き抜けて来ます。テンポの動きも大きく、叙情的な部分もあります。この当時のブーレーズの演奏には「レントゲンを見るような」と言うような表現がなされましたが、この演奏からはそこまで細部が見通せるような演奏ではありませんが、バーンスタイン時代の荒れたアンサンブルから見違えるような精緻なアンサンブルに変化したニューヨークpoの演奏が聞けます。
第二場、ゆったりとしたテンポを基調にしています。
第三場、冷たい演奏では無く、表情豊かで歌もあります。ゆったりとしたテンポで音楽を味わいながら演奏しているような少し楽しい雰囲気さえあります。
第四場、トランペットが大きな表現をします。テンポの動きも感情に伴うような感じで、スタジオ録音よりも自然な人間らしい演奏です。
ブーレーズでも人間らしい暖かい演奏でした。ニューヨークpoも精緻なアンサンブルですが、楽しげな演奏でとても良かったです。
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マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2004東京ライヴ
★★★★☆
第一場、小物打楽器が賑やかで華やいだ雰囲気です。ここまでは大きな表現はありませんが、爽やかでスマートな演奏です。アゴーギクを効かせて豊かに歌うフルートのソロ。ロシアの踊りのピアノもテンポの動きがありました。
第二場、第二場へ入る太鼓の連打も大きく強弱の変化を付けています。くっきりと浮かぶ楽器の濃厚な色彩はとても良いです。
第三場、トロンボーンは抑え気味でした。ファゴットも豊かに歌います。とても表現豊かな演奏です。ブーレーズのライヴに比べると細部まで鮮明で録音の進歩が伺えます・
第四場、クラリネットの高音もすっきりと抜けてとてもオケも上手いですがヤンソンスはオケを全開まで強奏しません。
テンポが動いたり強弱の変化やアゴーギクを効かせた歌など聞き所の多い演奏でしたが、これだけ上手いオケなので、全開の響きも聞いてみたい気もしました。
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ヴァレリー・ゲルギエフ/ロンドン交響楽団
★★★★☆
第一場、切れ味の良いシャープな演奏です。テンポを落として歌う部分もあります。ブレンドされた響きですが、ソロなどははっきりと粒立っています。
第二場、テンポの動きも大きいです。ソロはオケに任せているようです。場面転換の太鼓連打が間違えて入ります。
第三場、遅めのテンポで丁寧に演奏しています。それでもアンサンブルの乱れがあります。
第四場、遅いところは遅く、速いところは速いテンポでメリハリがあり生き物のような躍動感のある演奏です。とても積極的な表現で、雑味が無くスッキリとしています。激しいところも思い切った激しさになります。
テンポも強弱も大きな変化のある演奏で、雑味の無いシャープな演奏でした。アンサンブルの乱れは残念でしたが、良い演奏だったと思います。
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