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ストラヴィンスキー バレエ音楽「火の鳥」全曲

ストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」は、彼の初期の代表作であり、壮大で幻想的な物語と豊かなオーケストレーションで知られる作品です。1909年にセルゲイ・ディアギレフの依頼で作曲され、1910年にバレエ・リュスによってパリで初演されました。この成功により、ストラヴィンスキーは一躍脚光を浴び、後の「ペトルーシュカ」や「春の祭典」と並ぶ革新的な作品へとつながっていきました。

1. 物語の背景と構成

「火の鳥」は、ロシアの民話に基づいたファンタジー色の強い物語で、火の鳥とその魔法の力、英雄イワン・ツァレーヴィチ、邪悪な魔王カスチェイ、不思議なクリーチャーたちが登場します。

あらすじは以下のようなものです:

  • 火の鳥との出会い:若き王子イワンは森で火の鳥に出会い、鳥を捕まえますが、命乞いをする火の鳥を逃がしてやることにします。そのお礼として、火の鳥は彼に自分の羽を一本渡し、困ったときに助けることを約束します。
  • カスチェイの魔法の城:イワンはカスチェイの城に迷い込み、そこで囚われの姫たちと出会います。しかし、カスチェイに捕まってしまい、命の危機に陥ります。
  • 火の鳥の助け:イワンは火の鳥の羽を使い、火の鳥が現れてカスチェイとその手下たちに魔法をかけ、彼らを倒します。
  • 解放と結婚:カスチェイの力が破れ、囚われていた姫たちが解放され、イワンと姫が結ばれます。物語は彼らの幸せな結婚とともに幕を閉じます。

2. 音楽の特徴と各セクション

「火の鳥」の音楽は、壮大なオーケストラの響きと、ロシア民謡のエッセンスが融合した非常に豊かな内容で、全曲版には20以上のセクションが含まれています。ここでは主要なセクションを紹介します。

  • 序奏:不気味で暗い低音の響きから始まり、魔法の森の幻想的な雰囲気が描かれます。この序奏部分で、カスチェイの城の不気味さや魔法の力を感じさせる音楽が提示されます。
  • 火の鳥の登場:オーケストラが一転して華やかになり、火の鳥の軽やかで神秘的な飛翔が描かれます。ここでは、華やかで速いパッセージが使われ、火の鳥の美しさと不思議な存在感が音楽で表現されます。
  • 王女たちの踊り:カスチェイに囚われた姫たちの優美な踊りが描かれ、柔らかく抒情的な旋律が流れます。ここにはロシアの民族的な響きが取り入れられており、イワンが出会う姫たちの美しさが感じられます。
  • カスチェイとその一党の魔法の踊り:不気味で緊張感に満ちた音楽が展開され、カスチェイとその手下たちの登場が迫力を持って描かれます。突き刺すようなリズムと不協和音の使用で、カスチェイの恐ろしさが表現されます。
  • 子守唄 (火の鳥の回帰):火の鳥がカスチェイの手下を眠らせる場面で、低音の柔らかな旋律が繰り返される、美しく静かな部分です。火の鳥の魔法の力が効果を発揮し、カスチェイの力が徐々に弱まっていきます。
  • フィナーレ:壮大で力強い結末を迎える部分で、イワンと姫たちが解放され、希望と幸福の響きが満ち溢れます。徐々にクライマックスに向かって高揚していく音楽は、カスチェイの力が完全に破れ、物語がハッピーエンドを迎える場面を象徴しています。

3. オーケストレーションの巧みさ

「火の鳥」は、ストラヴィンスキーのオーケストレーションの才能が遺憾なく発揮された作品です。彼はこの作品で、以下のような革新的な技法を使用しています:

  • 色彩豊かな楽器の組み合わせ:ホルン、木管楽器、パーカッションなどが巧妙に組み合わされ、ファンタジックで鮮やかなサウンドが作り出されています。
  • 新しいリズムの探求:複雑で変則的なリズムが多用され、特にカスチェイの一党の踊りでは、テンションの高いリズムが不気味さを際立たせています。
  • 異国情緒とロシア民謡の融合:ストラヴィンスキーは、ロシアの民族音楽や異国情緒を取り入れることで、火の鳥の異世界感を引き立てています。

4. 全曲版と組曲版

「火の鳥」には全曲版のほか、演奏時間を短縮した組曲版も存在し、1911年版、1919年版、1945年版の3つが特によく知られています。これらの組曲版は、全曲版の主要なセクションをまとめ、コンサート向けに編曲されたものです。特に1919年版は、最も頻繁に演奏される組曲で、全曲版に比べて簡潔で親しみやすい構成になっています。

5. まとめ

「火の鳥」は、幻想的な物語と巧妙なオーケストレーションが魅力のバレエ音楽です。物語の魔法的な雰囲気やロシア民話のエッセンスが音楽に込められ、ストラヴィンスキーの作曲家としての革新性を存分に示しています。異国情緒と民族的な要素が織り交ぜられたこの作品は、聴く者に異世界の冒険と感動を与え、ストラヴィンスキーの名を一躍世に広めた名作です。

4o

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「火の鳥」名盤試聴記

コリン・デイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★★
イントロダクション、暗闇から耳を澄ませば聞こえてくるような低弦のメロディ。ゆっくりとしたテンポでモヤがかかったようなくすんだ響き。

カスチェイの魔法にかかった庭、ゆっくりと丁寧な表現です。遅いテンポもあってとても重量感があります。

火の鳥の出現、潤いと深みのある響き。

火の鳥の踊り、遠いクラリネット。雫がしたたり落ちるような潤いのある弦。とても濃厚な色彩です。

王子に捕らえられた火の鳥、瑞々しく美しい響きです。

火の鳥の哀願、くすんだ響きの中からシルクのようなヴァイオリン。重低音を含んだ大太鼓。オケの一体感があるとても濃厚な演奏です。デイヴィスの間の取り方もとても良いです。遠くから響くようなホルン。シロフォンも際立って響きます。

魔法にかけられた13人の王女たち、涼やかでシルキーなヴァイオリン。暖かいクラリネット。伸びやかなフルート。

黄金の果実とたわむれる王女たち、とてもしっかりとまとまっていて暴走するようなパートは一切ありません。とても反応の良いオケです。表現もとても引き締まっています。

イワン王子の不意の登場、柔らかく美しいホルン。穏やかな弦。

王女たちのロンド、瑞々しく美しい演奏です。ブレンドされた響きはまろやかですが、ソロで出てくる楽器は鮮明です。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠くからと近くから響くトランペット。潤いのある木管。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、眩いばかりのグロッケン。気持ちよく鳴り響く金管。

不死の魔王カスチェイの登場、重量感のある大太鼓。不気味な雰囲気があります。

イワン王子とカスチェイの対決、大太鼓の響きがとても良いです。

王女たちの哀願、シルキーなヴァイオリン。襲い掛かってくるような金管。

火の鳥の出現、ブレンドされてまろやかな響きです。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、生き生きとした木管。

カスチェイらの凶暴な踊り、深いところから鳴り響くチューバ、反響も含まれている切れの良いトロンボーン。雫がしたたり落ちるようなトランペット。若干大人しい感じです。金管の色彩感はとても濃厚です。

火の鳥の子守歌、哀愁に満ちて豊かに歌うファゴット。しっとりとした弦もとても美しいです。

カスチェイの目覚め、暗いトーンから華やかなファンファーレになりました。

カスチェイの死の深い闇、とても静かです。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、美しい残響を伴って清々しい響きのホルン。瑞々しい弦とのコントラストも見事です。潤いのあるトランペット。弦だけになったところで一旦大きくテンポを落とします。とても豪華なクライマックス。

深深とした潤いに満ちた色彩豊かな火の鳥
コンセルトヘボウ独特の深みのある響き、艶やかな弦、珠玉のようにちりばめられた木管楽器。演奏を引き締める打楽器。
場面に応じて、しっかり主張し表現豊かです。
どの楽器も潤いに満ちて大変美しい。濃厚な色彩、夢心地のような音楽の虜になります。濃い音でしかも、切れ味鋭いトランペット、超低域まで揺さぶる大太鼓、眩いばかりのグロッケン。
デイヴィスの指揮も重心が低く、堂々としています。
哀愁に満ちたファゴットの子守唄。どのパートをとっても完璧な演奏です。

デイヴィスのストラヴィンスキーの三大バレエでは、この「火の鳥」が最も成功した演奏でしょう。

ピエール・ブーレーズ/ニューヨーク・フィルハーモニック

ブーレーズ★★★★★
イントロダクション、速めのテンポでハープやトランペットがくっきりしています。かなりシャープです。

カスチェイの魔法にかかった庭、当時のマルチ・モノの録音を感じさせるとても鮮明な一つ一つの楽器です。

火の鳥の出現、とても鮮明で生き生きとしています。ニューヨークpoもこのころになるとアンサンブルも反応もとても良くなっています。

火の鳥の踊り、ブルー系の響きで、とてもシャープです。バーンスタイン時代とはまるで違います。

王子に捕らえられた火の鳥、とにかく明晰です。オケの反応も敏感です。

火の鳥の哀願、マルチマイクらしい近接した楽器の鮮明な動きです。大きな表現はありませんが、細部まで見通せる演奏はさすがです。ニューヨークpoもとても美しいです。クラリネットもとてもクリアです。

魔法にかけられた13人の王女たち、清々しいヴァイオリン。透明感のある木管。手に取るように分かる明晰さです。

黄金の果実とたわむれる王女たち、生き生きと動き回る楽器達。オケもとても反応良く見事です。ブーレーズの統率力も見事です。

イワン王子の不意の登場、ホールの残響を伴ったホルン。くっきりとしたクラリネット。

王女たちのロンド、くっきりと鮮明で色んな楽器の動きが出に取るように分かります。この当時のCBS独特のカサカサとささくれ立ったような感じも無く潤いに満ちています。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、ビリビリと鳴るトランペットが左右から聞こえます。活発な動きです。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、凄みのあるチューバ。めまぐるしく動き回るオケ。

不死の魔王カスチェイの登場、フワッと柔らかい大太鼓。

イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりとしていて切れ味の良い金管。

王女たちの哀願、ロマンティックに歌います。切れ味鋭いオケ。嵐のような大太鼓。

火の鳥の出現、鮮明な木管。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、鮮明なシロフォン。コントラバスも鮮明です。

カスチェイらの凶暴な踊り、切れ味抜群で鮮明です。ブーレーズに完全にコントロールされているオケ。精緻で見事です。チューバがハタハタと響きます。小物打楽器も目の前にあるような鮮明さです。

火の鳥の子守歌、伴奏からかろうじて浮き上がるファゴット。深く感情を込めることはありません。

カスチェイの目覚め、暗いトーンで染められています。

カスチェイの死の深い闇、深みのある美しい響き。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、遠くから響くホルン。とても良い雰囲気です。ブルブルと響くチューバ。意外とモノトーンのようなクライマックスでした。

ヴァレリー・ゲルギエフ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ゲルギエフ★★★★★
イントロダクション、ゴツゴツとした冒頭。トランペットがはっきりと出てきます。

カスチェイの魔法にかかった庭、表現は積極的です。

火の鳥の出現、積極的で反応の良い演奏です。

火の鳥の踊り、ブレンドされた暖かい響きです。色彩感は枯れた感じです。

王子に捕らえられた火の鳥、

火の鳥の哀願、暖かく分厚い響き。木管の豊かな色彩。遠く硬質なホルン。

魔法にかけられた13人の王女たち、ライヴなので極上の美しさではありませんが、木管は生き生きしています。ヴァイオリンのソロも豊かな表現です。

黄金の果実とたわむれる王女たち、活動的な動きです。

イワン王子の不意の登場、ウィンナホルンらしい響きです。穏やかで柔らかい弦。控えめなクラリネット。

王女たちのロンド、アゴーギクを効かせて歌うオーボエ。テンポも微妙に動いています。鋭いピッコロ。歌うフルート、感情に合わせてテンポが大きく動きます。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠近の対比があるトランペット。とても豊かな表現の弦。木管はゆっくりと感情を込めた演奏です。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、ゆっくりとしたテンポです。眩いグロッケン。

不死の魔王カスチェイの登場、チューバが芯の強い音で主張します。

イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりとして良く鳴るトロンボーン。テンポの激しく動きます。

王女たちの哀願、艶っぽく歌います。金管は大きくritしました。間も大きく空けました。

火の鳥の出現、シンバルは分離されている感じで、木管の動きが良く分かります。木管と弦の動きにはっきりとした表現付けがあります。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、速いテンポでぐいぐい進みます。シロフォンが凄いです。

カスチェイらの凶暴な踊り、奥から響くトロンボーン。かなり凶暴な表現です。金管は遠慮無く吹きます。ティンパニが意表を突いた強打。荒れ狂うような凄い演奏です。

火の鳥の子守歌、速めのテンポですが、感情を込めて歌うファゴット。最後はかなりテンポが遅くなりました。

カスチェイの目覚め、ゆっくりと演奏されるファンファーレ。

カスチェイの死の深い闇、探り合うような静けさです。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、たっぷりと歌うホルン。ゆっくりと演奏するハープとそれに続く弦。濃厚な色彩で鳴り響く金管。最後は速いテンポになりました。なかなかの力演でした。
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イオン・マリン/ロンドン交響楽団

マリン★★★★☆
イントロダクション、とてもゆっくりとしたテンポで豊かに表現する弦。トランペットがはっきりと聞こえます。

カスチェイの魔法にかかった庭、色彩感が豊かで、表現の幅も広い演奏です。楽器の動きも克明です。

火の鳥の出現、柔らかい響きです。

火の鳥の踊り、ここでもゆっくりとしたテンポで細部まで克明に描いて行きます。

王子に捕らえられた火の鳥、ゆっくりとしたテンポでとても丁寧です。

火の鳥の哀願、ゆっくり丁寧なヴァイオリンのソロ。イギリスらしいクラリネット。ゆっくり目で演奏される木管。暖かい響きです。バランスの良いトランペット。かなり遠いホルン。ファゴットもゆっくりです。

魔法にかけられた13人の王女たち、抑えたヴァイオリン。豊かに歌うフルート。

黄金の果実とたわむれる王女たち、凝縮されて濃厚です。表情もとても豊かです。

イワン王子の不意の登場、ふくよかで、歌うホルン。とても柔らかい弦。かなり抑えたクラリネット。

王女たちのロンド、伸びやかで粘るピッコロ。続く木管も濃厚な表現です。テンポも動いて美しい旋律に酔いしれるような感じです。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、ゆっくりとしたテンポで、強弱の振幅も大きいです。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、ゆっくりです。地獄の釜の蓋が開いたようなチューバの響き。確認するようにゆっくりとしたテンポです。

不死の魔王カスチェイの登場、あまり大きく盛り上がらず、硬い響きの大太鼓。

イワン王子とカスチェイの対決、押さえ気味のトロンボーン。良く鳴るトランペット。

王女たちの哀願、細身で美しいヴァイオリン。金管は抑え気味ですが、打楽器は強いです。

火の鳥の出現、

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、かなり遠いシロフォン。トランペットがビリビリと鳴ります。

カスチェイらの凶暴な踊り、かなり軽い入りです。ゆっくり目で動いています。かなり冷静な演奏です。

火の鳥の子守歌、次第にテンポが遅くなって豊かに歌うファゴット。オーボエもたっぷりと歌います。

カスチェイの目覚め、混沌としたコントラファゴット。切れ味の良いシャープな金管。

カスチェイの死の深い闇、ここもゆっくりで、とても静かです。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、次第に近付いてくるようなホルン。とても抑えた弦。鋭く輝かしいトランペット。最後は速めのテンポになって、存分にオケを鳴らして終わりました。
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エルネストアンセルメ/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

アンセルメ★★★★
イントロダクション、物々しい響きです。マイルドな管です。ヴァイオリンのグリッサンドが強調されています。

カスチェイの魔法にかかった庭、豊かな表現のファゴット。柔らかい弦のクレッシェンド。

火の鳥の出現、少し重い感じです。

火の鳥の踊り、ゆっくり目ですが、細部まで見通しが良い感じではありません。

王子に捕らえられた火の鳥、ゆっくりとしていて確実な足取りです。

火の鳥の哀願、かなり抑えたヴァイオリンのソロ。ここもゆったりとして余裕を感じさせる演奏です。弦に伸びやかさがありません。豊かに歌うオーボエ。抑え気味で柔らかいトランペット。

魔法にかけられた13人の王女たち、涼しいヴァイオリン。伸びやかなフルート。

黄金の果実とたわむれる王女たち、柔らかく奥行き感があります。ゆっくり目なのが少し野暮ったい感じになります。

イワン王子の不意の登場、伸びやかなホルン。はっきりと入るクラリネット。

王女たちのロンド、安定感のある落ち着いた演奏です。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠近の対比ははっきりとしているトランペット。とてもゆっくりと濃厚です。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、軽く演奏している金管。テンポはゆっくりです。

不死の魔王カスチェイの登場、崩れるような大太鼓。

イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりと刻み込むようなトロンボーン。金管が強く演奏する部分もゆっくりでした。

王女たちの哀願、太いヴァイオリン。しっかり音を切って強い金管。強烈なホルン。

火の鳥の出現、丁寧な演奏です。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、ゆっくりとしたテンポです。硬いシロフォン。大きく盛り上がります。

カスチェイらの凶暴な踊り、軽いチューバ。トロンボーン、トランペットは強いです。ゆっくりとしたテンポです。整然としていて、凶暴な感じはありません。ティンパニのクレッシェンドは凄いです。

火の鳥の子守歌、あまり寂しい感じにはならずにファゴットが入りました。ファゴットも大きな表現はありません。あまり感傷的にはなりません。

カスチェイの目覚め、ゆっくりと色んな楽器が響くファンファーレ。

カスチェイの死の深い闇、ここもゆっくりで、明確に描いて行きます。漂うような弦。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、速めのテンポで演奏されるホルン。爽やかな弦。抑え気味でゆっくりと演奏される金管。大太鼓が入る前にritしました。
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シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

デュトワ★★★★
イントロダクション、緩い感じです。デュトワの演奏にしてはあまり楽器がくっきりと浮かび上がりません。ホルンはシャープでした。

カスチェイの魔法にかかった庭、潤いがあまり無く、カサカサした印象です。弦は大きくクレッシェンドしました。

火の鳥の出現、少しoffぎみで淡い色彩感で少し線が細い感じです。

火の鳥の踊り、奥まって小じんまりとしている感じです。

王子に捕らえられた火の鳥、offぎみなので密度が薄い感じがします。

火の鳥の哀願、細身のヴァイオリンのソロ。涼しく薄い響き。淡々としていて平板な感じです。表現が奥ゆかしくあっさりとしています。かなり遠いホルン。シロフォンもかなり遠いです。

魔法にかけられた13人の王女たち、オケは上手いのですが、コンセルトヘボウのような魅力的な響きではありません。ダイナミックの変化も少なく平板な感じです。

黄金の果実とたわむれる王女たち、offぎみで、少し遠くで聞く感じで、密度が少し薄い感じがします。強弱の変化もとても穏やかです。

イワン王子の不意の登場、表現のあるホルン。くっきりと浮かび上がるクラリネット。

王女たちのロンド、少しだけ遠いですが、とても美しいです。安心して身をゆだねることができる演奏です。タメがあったりもします。最後はかなりゆっくりになりました。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠くと近くの対比がはっきりとしているトランペット。ゆっくりと丁寧に感情の込められた演奏です。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、気持ちよく鳴る金管。

不死の魔王カスチェイの登場、ビリビリと鳴るトロンボーン。透明感のある木管。

イワン王子とカスチェイの対決、ビーンとなるトロンボーン。気持ちよく鳴り切る金管。

王女たちの哀願、細身のヴァイオリン。トロンボーンとトランペットは思いっきり鳴ります。

火の鳥の出現、シンバルが弱めで木管の動きが良く分かります。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、遠いシロフォン。すっきりと細身の響きです。

カスチェイらの凶暴な踊り、軽く入りました。金管はとても気持ちよく鳴ります。涼しい響きで凶暴な感じはありません。

火の鳥の子守歌、くっきりと浮かび上がるファゴットですが、とてもあっさりとした演奏です。

カスチェイの目覚め、ゴロゴロとあまり重量感の無いコントラファゴット。ファンファーレはあまり明るい響きではありませんでした。最後に強烈なトロンボーンが入りました。

カスチェイの死の深い闇、繊細で美しい弦。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、残響を伴って豊かな表現のホルン。生き生きとしたフルート。このコンビらしいスッキリとしたスマートな響きのクライマックスでした。
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ユッカ=ペッカ・サラステ/ケルンWDR交響楽団

サラステ★★★☆
イントロダクション、速めのテンポです。柔らかいですが、トランペットがはっきりと聞こえます。

カスチェイの魔法にかかった庭、速めのテンポで手際よく片付けて行く感じです。

火の鳥の出現、ライヴですが、かなり鮮明です。

火の鳥の踊り、ゆっくり目で細部まで鮮明ですが、色彩感は濃厚ではありません。

王子に捕らえられた火の鳥、豊かな残響で滑らかです。

火の鳥の哀願、艶やかなヴァイオリンのソロ。豊かな響きを伴って浮かび上がる木管。色彩感が少し豊かになって来ました。朗々と響くホルン。

魔法にかけられた13人の王女たち、清々しく美しいヴァイオリン。フルートもホルンもハープくっきりと浮かび上がります。艶やかなヴァイオリンのソロ。伸びやかに歌うフルート。

黄金の果実とたわむれる王女たち、とても柔らかいです。めまぐるしく動き回ります。

イワン王子の不意の登場、ちょっと乱暴な感じがするホルン。

王女たちのロンド、歌ってはいますが、速めのテンポで淡々と進みます。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、マットなトランペット。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、チャイムがかなり強いです。チャイムの影に隠れるトランペット。深みのあるチューバ。木管の速いパッセージが盛大です。

不死の魔王カスチェイの登場、

イワン王子とカスチェイの対決、全体に埋もれるような金管。

王女たちの哀願、糸を引くような粘りのあるヴァイオリン。崩れ落ちるような打楽器。

火の鳥の出現、ゆったりと動きがとても良く分かります。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、ゆっくりです。木管がとても大きな表現です。

カスチェイらの凶暴な踊り、ホールに響き渡る一撃。豊かな残響で生き生きとした演奏です。盛大に鳴り響きます。

火の鳥の子守歌、哀愁を感じさせるファゴット。速めのテンポですが、豊かな残響があるので、とても良い雰囲気です。

カスチェイの目覚め、あまり強く演奏しないファンファーレ。

カスチェイの死の深い闇、はっきりとした動きの弦。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、豊かな残響でふくよかなホルン。エネルギーの爆発よりもバランスの良いクライマックスでした。
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ピエール・ブーレーズ/シカゴ交響楽団

ブーレーズ★★★☆
イントロダクション、速めのテンポで暗い雰囲気です。楽器はニューヨークpoの時とは違ってブレンドされています。

カスチェイの魔法にかかった庭、精密機械のような見通しの良さはさすがです。

火の鳥の出現、ブレンドされた落ち着いた響きです。

火の鳥の踊り、余裕のある滑らかな演奏です。トランペットも濃厚な感じではありません。

王子に捕らえられた火の鳥、ゆったりとしたテンポで余裕しゃくしゃくです。

火の鳥の哀願、暖かく淡白な色彩です。遠く硬質なホルン。

魔法にかけられた13人の王女たち、枯れた響きのヴァイオリン。何かを強調するようなことが無いので、サラッと流れて行きます。

黄金の果実とたわむれる王女たち、きりっと粒立った木管。

イワン王子の不意の登場、少し硬質なホルン。サラッとしている弦。締まりのあるクラリネット。

王女たちのロンド、速めのテンポであっさりとした演奏です。キッチリと刻むように進みます。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、サラッと軽い演奏です。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、ゆっくりで遠近の対比が強調されています。かなり遅いです。

不死の魔王カスチェイの登場、一気に大太鼓までクレッシェンドしました。

イワン王子とカスチェイの対決、ものすごく遅いテンポです。金管が強くなってからテンポが速くなりました。

王女たちの哀願、あまり色彩感は濃厚ではありません。

火の鳥の出現、

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、柔らかいシロフォン。輝かしく鳴るトランペット。

カスチェイらの凶暴な踊り、軽めに入りました。とても整っています。凶暴な感じはあまりありません。

火の鳥の子守歌、あっさりと演奏するファゴット。とても淡々と進みます。

カスチェイの目覚め、明るいファンファーレ。

カスチェイの死の深い闇、次々と湧き上がるような弦。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、ゆったりとしたテンポで筋肉質のホルン。さすがに力のある金管。見事なバランスで鳴り響きます。
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ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ハイティンク★★★
イントロダクション、くっきりとしたトロンボーン。どの楽器も明瞭に浮かび上がります。

カスチェイの魔法にかかった庭、残響成分が少な目で、細身です。弦のクレッシェンドは大きかったです。

火の鳥の出現、暖かく鮮明な色彩感。

火の鳥の踊り、デイヴィス/コンセルトヘボウoほど色彩感は濃厚ではありませんが滑らかに流れて行きます。

王子に捕らえられた火の鳥、ニュートラルな響きであまり特徴がありません。

火の鳥の哀願、ゆっくりとしたヴァイオリンのソロでした。コンセルトヘボウのような濃厚な色彩感が無く、音色的な魅力を感じないのは残念です。ハイティンクの指揮なので、大きな表現はありません。遠くから硬い響きのホルン。

魔法にかけられた13人の王女たち、細いホルン。美しいのですが、強い個性がありません。オケは卒なく上手いです。

黄金の果実とたわむれる王女たち、コンセルトヘボウ時代にはあれほど魅力的な響きを生み出していたハイティンクがなぜこんなに個性の無い響きの演奏をしているのか不思議です。堅実で落ち着いた足取りです。

イワン王子の不意の登場、ふくよかで美しいホルン。色彩感の無い弦。

王女たちのロンド、サラサラとした弦が美しい。ゆっくり演奏されるピッコロ。ハイティンクにしては珍しく、テンポがとても遅くなる部分があります。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠くと近くで響くトランペットは控え目です。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、力を入れずに軽めの演奏です。

不死の魔王カスチェイの登場、暗闇のようなファゴット。

イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりとしたテンポで短めのトロンボーン。

王女たちの哀願、大太鼓はドカンと来ますが金管は抑え気味ですが見事なバランスです。

火の鳥の出現、シロフォンが入る前は遅いです。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、静かでゆっくりです。確実に刻む弦。

カスチェイらの凶暴な踊り、凄く抑えられた演奏で、凶暴さはありませんが、1拍でドカンと来る部分の迫力はなかなかです。

火の鳥の子守歌、寂しげな雰囲気の中で美しく歌うファゴット。弦と弓が摩擦している感じのヴァイオリン。

カスチェイの目覚め、重いコントラファゴット。くすんだファンファーレ。あまり大きなコントラストの変化はありません。

カスチェイの死の深い闇、弦が各パート一人ずつのような静けさです。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、ふくよかなホルンですが、少しマットです。清楚で美しい弦。大太鼓の強打。色んな音が鳴り響き、最後は豪華な響きになりました。

オケは上手いし、ハイティンクもそつなく演奏しています。
もう少しホールの響きも含めた奥深い音色を求めたいです。
アンサンブルの精度など上手さについては文句の付けようがないくらいです。ただ、ハイティンクの指揮はかなり聞き込まないと良さが分からないです(私の場合)。目だった表現や強い主張をするタイプの指揮者ではないので、安定感は抜群ですが、スリルや刺激を求めても外されます。
女王たちのロンドでは木管の美しい旋律。夜明けでも木管の上手さは際立っています。
もう少し神秘的な雰囲気が欲しいところです。大太鼓にも地響きするような深みのある低音を求めたいところですが、少し小さい楽器を使っているのでしょうか。それとも録音の問題か?
火の鳥出現からは遅めのテンポでじっくり表現をつけた演奏をしています。だんだん盛り上がって行きますがテンポを煽ることはありません。ハイティンクらしい演奏です。
カスチェイの踊りでも金管の炸裂とまでは行きません。抑制の効いた演奏を続けています。
時に、テューバが突出したり変わった解釈を見せます。
終曲では、ここでも突出する大太鼓。これにはびっくりさせられます。

クリストフ・フォン・ドホナーニ/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

ドホナーニ★★
イントロダクション、しっかりとした足取りです。バランスはなかなか良いです。

カスチェイの魔法にかかった庭、たどたどしいホルン。豊かな語り口のファゴット。弦が一体になったようなクレッシェンド。

火の鳥の出現、音の立ち上がりがなだらかで、あまり反応が良い感じではありません。

火の鳥の踊り、速めのテンポで活発な動きです。

王子に捕らえられた火の鳥、音がたくさんあって騒々しい感じです。少しもたつく感じの木管。

火の鳥の哀願、軽い大太鼓。整然と整った感じがありません。柔らかいホルンですが、少し危なっかしい感じもありました。ファゴットも速いテンポです。

魔法にかけられた13人の王女たち、木管があまり魅力的な音色ではありません。ヴァイオリンのソロは艶やかでした。

黄金の果実とたわむれる王女たち、速いテンポで追いたてます。

イワン王子の不意の登場、細い音でビブラートをかけるホルン。

王女たちのロンド、速いテンポで素っ気無い演奏です。美しい旋律をじっくりと味わうことが出来ません。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、抑えたトランペット。その後はゆっくりです。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、打楽器はほとんど聞こえません。

不死の魔王カスチェイの登場、中音域が団子になったような感じの響きです。大太鼓も硬い音です。

イワン王子とカスチェイの対決、短く音を切るトロンボーン。ここもテンポが速いです。

王女たちの哀願、サラットして美しいヴァイオリン。デッドで独特な表現の金管。

火の鳥の出現、

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、遠くて柔らかいシロフォン。トランペットが付き抜けます。

カスチェイらの凶暴な踊り、かなり抑えられたチューバ。たどたどしいEbクラ。デッドで、あまり凶暴な感じはありません。オケの響きが一体にならずバラバラな感じがします。

火の鳥の子守歌、とてもあっさりと演奏するファゴット。

カスチェイの目覚め、デッドで浅い響きの金管。

カスチェイの死の深い闇、くっきりとしていて、あまり深みの無い弦。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、ビブラートを掛けた細いホルン。力強いトランペット。デッドであまり響きが溶け合わないので、雑然とした感じになります。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」の名盤を試聴したレビュー

ストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」

ストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」は、ロシアの三大バレエ音楽の一つで、初演は1911年。ロシアの伝統やカーニバルの雰囲気が色濃く反映された作品で、ストラヴィンスキーの初期の代表作です。

「ペトルーシュカ」は、ロシアの謝肉祭で操られる人形たちの物語を描いており、主人公ペトルーシュカ(ピエロのような人形)、愛される人形のバレリーナ、そして力強いムーア人の3人を中心に進行します。物語では、恋するペトルーシュカがバレリーナに思いを寄せますが、ムーア人に叶わず、悲劇的な運命を辿ります。

音楽は軽快で多彩なリズムと華やかなオーケストレーションで知られ、ピアノや管楽器が独特の役割を担い、街の喧騒や祭りの喧騒が巧みに表現されています。特に有名なのが「ペトルーシュカの音型」と呼ばれるリズミカルなモチーフで、ペトルーシュカの感情や運命を象徴しています。

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」名盤試聴記

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

icon★★★★★
第一場、軽ろやかで色彩感豊か、華麗でシャープな演奏。
デュトワ/モントリオールsoの録音の特徴である低域のカットが功を奏して、耳障りもよく、とても軽快で清清しい演奏になっています。押し付けがましいところがないので、とても聴きやすい。どの楽器もチャーミングでなかなか良いです。
第二場、寂しげな場面が描かれています。響きがクールなので、寂しさをより強調しているように思います。このオケにはストラヴィンスキーの三大バレエのうちペトルーシュカが最も適していると思います。
第三場、軽快な踊りの場面や流れるような美しい旋律、合いの手に時折入る軽妙な楽器たちの登場もとても上手くバランスがとれています。
第四場、まばゆいグロッケンやアコーディオンと化したオーケストラ。トロンボーンやテューバも重くないので、とても聴きやすい。

シャルル・デュトワ/ロンドン交響楽団

icon★★★★★
デュトワならではの色彩感とともに力強い演奏。1911年版
モントリオールsoとの録音のような低域の一部をカットされたような録音ではなく、ワイドレンジです。
色彩感も豊かですし、低音域も力強いのでメリハリがしっかりついていて良い演奏です。どのパートをとっても上手いし、金管も気持ちよく鳴らしていて個人的にはモントリオールsoとの録音より、こちらの方が好きです。
それぞれのパートの音が立っていて、存在感がしっかりあります。また、デュトワの特徴だと思いますが、シャープで切れ味鋭く、また登場する楽器が整然と整っています。
シャープで美しい演奏なので、作品の本質には迫っていないと言われるかもしれませんが、演奏水準は極めて高いと思います。
強弱の振幅がしっかりと低音域も伴って演奏されるので、ティンパニの一撃なども強烈で、演奏が変化に富んでいるので、聞いていて楽しいです。

クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団 1985ザルツブルクライヴ

アバド★★★★★
謝肉祭の市、速めのテンポで強い推進力があります。オケの表現もとても積極的です。アバドはベルリンpoの音楽監督になる前の方が音楽に主張があって良かったと思います。
ペトルーシュカの部屋、フルートのソロもはっきりとした表情がありました。音楽が生き生きとしていて躍動感があります。強弱の振幅も大きく、色彩も明快です。
ムーア人の部屋、ここも速めのテンポです。
謝肉祭の市(夕景)、ここも速めのテンポですが、オケがアバドの指揮に献身的に応えているところがとても良いです。オケの敏感な反応でとても色彩感豊かな演奏になっています。

速めのテンポを基調に積極的で色彩感豊かな演奏でした。オケもとても良い反応をしていました。
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エンリケ・バティス/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

バティス★★★★★
第一場、シャリシャリした響きで低域があまり含まれていない感じの録音です。歯切れのいいシャキッとした演奏です。色んな楽器の動きが克明です。かなり高域が強調された録音で、とても華やかに聞こえますが、大太鼓が長い余韻を残して響きます。美しく歌うフルート。勢いがあって力強いです。
第二場、低域があまり含まれていないので、とても清涼感のある演奏になっています。ミュートしたトランペットやトロンボーンがかなり強く演奏します。金管が遠慮なく吹くので、とても色彩感が濃い演奏になっています。
第三場、ホルンもトロンボーンも強烈です。ドラもとても良い音で入って来ます。締まりの良いスネアも気持ち良いです。
第四場、典型的なドンシャリの録音で、尾を引く大太鼓とシャリシャリとした高音域が特徴です。メリハリのはっきりとしたもしかしたら爆演に入る部類の演奏かも知れません。最後のトゥッティは強烈です。

かなり濃厚でこってりとした色彩感。金管も遠慮なく入ってくるので、かなり強烈です。もしかしたら爆演の部類に入るかも知れません。
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パーヴォ・ヤルヴィ/パリ管弦楽団

ヤルヴィ★★★★☆
第一場、キリッと立ったフルート。涼しげで爽やかな響きです。47年版です。とてもリズムが弾んでバレエ音楽らしい演奏です。ファゴットもくっきりと浮かび上がりとても色彩感豊かな演奏です。
第二場、強弱の変化も大きくとても豊かな表現です。テンポの動きも大きいです。
第三場、歌に溢れた美しい演奏です。
第四場、柔らかい響きから、突き刺さるような強い音まで、多彩な音を駆使して音楽を表現しています。金管は決して咆哮しません。かなり抑えています。最後は盛り上がって終わる版でした。

色彩感濃厚で、表現も豊かで、弾むリズムの演奏でした。トゥッティでの金管はかなり抑えられていて全体のバランスを重視していた感じでした。
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ピエール・ブーレーズ/ニューヨーク・フィルハーモニック 1975ベルリンライヴ

ブーレーズ★★★★☆
第一場、ブレンドされた響きの中からトランペットが突き抜けて来ます。テンポの動きも大きく、叙情的な部分もあります。この当時のブーレーズの演奏には「レントゲンを見るような」と言うような表現がなされましたが、この演奏からはそこまで細部が見通せるような演奏ではありませんが、バーンスタイン時代の荒れたアンサンブルから見違えるような精緻なアンサンブルに変化したニューヨークpoの演奏が聞けます。
第二場、ゆったりとしたテンポを基調にしています。
第三場、冷たい演奏では無く、表情豊かで歌もあります。ゆったりとしたテンポで音楽を味わいながら演奏しているような少し楽しい雰囲気さえあります。
第四場、トランペットが大きな表現をします。テンポの動きも感情に伴うような感じで、スタジオ録音よりも自然な人間らしい演奏です。

ブーレーズでも人間らしい暖かい演奏でした。ニューヨークpoも精緻なアンサンブルですが、楽しげな演奏でとても良かったです。
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マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2004東京ライヴ

ヤンソンス★★★★☆
第一場、小物打楽器が賑やかで華やいだ雰囲気です。ここまでは大きな表現はありませんが、爽やかでスマートな演奏です。アゴーギクを効かせて豊かに歌うフルートのソロ。ロシアの踊りのピアノもテンポの動きがありました。
第二場、第二場へ入る太鼓の連打も大きく強弱の変化を付けています。くっきりと浮かぶ楽器の濃厚な色彩はとても良いです。
第三場、トロンボーンは抑え気味でした。ファゴットも豊かに歌います。とても表現豊かな演奏です。ブーレーズのライヴに比べると細部まで鮮明で録音の進歩が伺えます・
第四場、クラリネットの高音もすっきりと抜けてとてもオケも上手いですがヤンソンスはオケを全開まで強奏しません。

テンポが動いたり強弱の変化やアゴーギクを効かせた歌など聞き所の多い演奏でしたが、これだけ上手いオケなので、全開の響きも聞いてみたい気もしました。
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ヴァレリー・ゲルギエフ/ロンドン交響楽団

ゲルギエフ★★★★☆
第一場、切れ味の良いシャープな演奏です。テンポを落として歌う部分もあります。ブレンドされた響きですが、ソロなどははっきりと粒立っています。
第二場、テンポの動きも大きいです。ソロはオケに任せているようです。場面転換の太鼓連打が間違えて入ります。
第三場、遅めのテンポで丁寧に演奏しています。それでもアンサンブルの乱れがあります。
第四場、遅いところは遅く、速いところは速いテンポでメリハリがあり生き物のような躍動感のある演奏です。とても積極的な表現で、雑味が無くスッキリとしています。激しいところも思い切った激しさになります。

テンポも強弱も大きな変化のある演奏で、雑味の無いシャープな演奏でした。アンサンブルの乱れは残念でしたが、良い演奏だったと思います。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」の名盤を試聴したレビュー

ストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」2

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」名盤試聴記

アンタル・ドラティ/デトロイト交響楽団

icon★★★★
1947年版の演奏です。
大きく広がった空間に音楽が展開されます。バレエ音楽というよりも、もっとシンフォニックな感じがします。
いろんな音が聞こえてきて楽しい!新たな発見でした。

エフゲニー・スヴェトラーノフ/ソビエト国立交響楽団

icon★★★★
一場、遅い出だし、一歩一歩確かめるようにゆっくりと確実に進みます。録音のせいか色彩感はあまりありません。バレエ音楽で踊るイメージとはかなり違った演奏で、飛び跳ねるよりも引きずる感じの演奏です。
二場、とにかく遅い。でも聴き続けるうちにこのテンポになれて来て、不自然さは感じなくなります。録音が古いせいか、楽器一つ一つが立っていないので、平板に聞こえます。とても濃厚な演奏をしているのですが、色彩感が淡白なので、聞き流せてしまいます。
三場、ゆっくりと濃厚なトロンボーン。スネアのソロの後のトランペットも遅い。ファゴットのメロディに乗っかるトランペットやフルートもすごく遅いです。
四場、バレエ音楽と言うには重過ぎる。ゆったりと朗々と歌う弦。Ebクラとテューバのメロディの部分は普通のテンポでした。最後の強奏部分でまた、非常に遅くなった、通常の二倍ぐらいの時間をかけて演奏しているのではないか。

異色の演奏として面白く聞くことができました。

シャルル・デュトワ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1980年ライヴ

デュトワ★★★★
笛吹のクラシック音楽ライヴ と オーディオの記事の笛吹さんから音源を送っていただきました。ありがとうございます。
一場、デュトワ独特のブルー系の清涼感のある響きです。セッション録音のような鋭い切れ味や華やかさは無く、マイルドな演奏です。弦を中心に音楽が作られていて、少し寂しく線が細い感じがします。ダイナミックの変化もセッション録音のような大きな変化は無く、かなり平板です。打楽器的なピアノ。かなりデッドな録音のようです。
二場、聞こえる音は全部聞こえているようには感じるのですが、なぜかとても寂しい感じがあります。ペトルーシュカの悲しみなのか?
三場、セッション録音のような金管が炸裂するような振幅の激しい演奏ではありません。ペトルーシュカがこんなに寂しく悲しげな音楽だと初めて知りました。
四場、編成が小さい感じの響きで、色彩のパレットをいっぱいに広げたような演奏ではありませんが、バレエの場面の雰囲気はとても良く表現していて、ペトルーシュカの悲哀をとても感じます。

セッション録音の色彩感豊かでダイナミックな演奏とはかなり雰囲気の違う演奏でしたが、バレエの場面をとても良く伝えてくれる演奏でした。

シルヴァン・カンブルラン/読売日本交響楽団

カンブルラン★★★★
第一場、間接音が少なくデッドです。その分楽器の動きははっきりしています。精緻な演奏ではありますが、分厚い響きではありません。
第二場、透明感が高く清潔感があって洗練されています。
第三場、とても美しい演奏なのですが、オケのパワーがあまり伝わって来ません。ただキレの良い透明感の高い響きはとても魅力的です。暖かい歌もとても良いです。
第四場、ちょっと触れば壊れてしまうようなガラス細工のような繊細さ。強い表現は無く、自然体で流れて行きますがダイナミックさや深みはあまりありません。

トゥッティの厚みやダイナミックさはありませんでしたが、透明感が高くガラス細工のような繊細な演奏はとても魅力的でした。厚みの無さは日本人の限界なのか?
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ピエール・ブーレーズ/クリーブランド管弦楽団

icon★★★
デッドなホールでの録音なのか?人数が少ないような錯覚を覚えるような音がしています。
細部まで克明に聞かせるために、あえてこのような音で録音したのか?
マスの響きもあまり溶け合わない。寂しい音です。
1911年版は編成も大きく豪華絢爛な響きがするというイメージなので、意外な演奏です。ピアノの音を聴いていると、そんなにデッドなホールではなさそうです。
管楽器を中心に音楽が作られていて、弦楽器の人数が少ないか、バランス上控えているかしているようです。
ペトルーシュカの悲哀や悲しみは見事に表現しています。
ブーレーズはニューヨークpoの音楽監督時代から最近の復帰へ至るまでに音楽に対する考えや解釈が大きく変化したように思います。
復活のCDを聴いた時にも感じましたが、ほとんどオケのフルパワーを要求していない。木管のffと金管のffを同じ音量で演奏させているような感じで、その分いろんなパートの動きが克明に聞こえてきます。
こうやって、新しい部分にスポットを当てているのでしょうか。私が思っている「ペトルーシュカ」とはかなりイメージの違う音楽になっていることは確かなのですが、これだけ各パートのバランスを保って演奏することによる効果を聞かされると納得させられます。

ただ、研究成果としての価値は十分あると思うのですが、一般人が鑑賞するという観点から考えてこの演奏をどう捉えるかは個人によってかなり評価は分かれると思います。

コリン・デイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★
火の鳥では、このコンビの重さや深さがすばらしい演奏をしましたが、ペトルーシュカでは重過ぎるような感じがします。1947年版
低音域に力があって重い音が全体の雰囲気を重くしています。
コンセルトヘボウの少しくすんだ、そして深みのある渋い音色が火の鳥では見事にマッチしましたが、ペトルーシュカでは、もう少し軽い音色を求めたいところです。
1911年版よりも1947年版の方がスネアやティンパニの扱いは派手なのですが、1911年版のように各所にちりばめられた小物打楽器のきらびやかさが無いので、個人的には1911年版の方が好きです。
ホールの響きもふくよかなので、演奏が少し鈍重に感じます。
分厚い低域の上にメロディが乗りますが、この低域に残響がつきまとうので、演奏に重さを感じてしまうようです。

登場する楽器はどれも上手いのですが、全体の響きとしてはこの曲に合っていないように気感じました。

ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー/ロンドン交響楽団

icon★★★
一場、1911年版の演奏ですが、冒頭は貧相な出だしでした。金管が控え目に録られているせいもあるのでしょうか?
ダイナミックの変化も少なくBGMを聴いているような感覚になります。
二場、ピアノもマイルドな演奏で刺激的な部分は全くありません。
三場、とても大人しい穏やかなペトルーシュカです。ところどころでテンポをぐっと落とすことがあります。金管は常に奥まったところにいて、突き抜けてくることはありません。
四場、小物打楽器も控え目です。弦や木管のフワッとした部分は上手く表現されるので良いのですが、金管があまりにも控え目過ぎて、曲のイメージとはかなり離れた演奏に聞こえてしまいます。

アンドリル・ネルソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ネルソンス★★★
謝肉祭の市、あまり躍動感が無く、地味な感じです。47年版です。
ペトルーシュカの部屋、強弱の変化が大きくなって躍動感が出てきました。
ムーア人の部屋、やはり地味で特段の個性は感じません。
謝肉祭の市(夕景)、ファゴットが独特の歌い回しです。安定感のある堅実な演奏なのですが、コンセルトヘボウらしい濃厚な色彩感はありますが、華やかさがあまり感じられません。

安定感のある堅実な演奏でしたが、地味で華やかさを感じませんでした。
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スタニラフ・スクロヴァチェフスキ/ミネソタ管弦楽団

スクロヴァチェフスキ★★☆
謝肉祭の市、鮮明な色彩で華やかです。47年版です。トライアングルがかなり強いです。速めのテンポで畳み掛けるような演奏です。
ペトルーシュカの部屋、大きな表現や主張は無い感じです。一音一音刻み付けるようなピアノ。
ムーア人の部屋、とてもゆっくりとしたテンポでたっぷりとした間があったりします。
謝肉祭の市(夕景)、かなり強く絶叫するトランペット。常に押してくるような強い感じがあって、人によっては疲れるかも知れません。格闘のあたりはかなり速いテンポでした。最後の部分でもミュートをしたトランペットがかなり強いです。

演奏がそうなのか、録音の関係なのか分かりませんが、かなり強く押しまくられる感じで、ちょっと疲れました。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

ムラヴィンスキー
一場、遠い音場感で、細部まで聞き分けることは出来ません。レンジも狭く色彩感もほとんどありません。強音部では歪みます。場面転換の打楽器が炸裂します。とにかく歪みっぽくて、何をやっているのか判別ができません。艶やかなヴァイオリン・ソロ。静寂の中に浮かび上がる木管など、良さも垣間見えるのですが・・・・・・。
二場、トランペットが奥まったところからミュートをはめて強く出てきます。テンポが動いたりもします。
三場、冒頭は、遅いテンポで濃厚に表現します。録音のせいか、ムラヴィンスキー独特の冷たい緊張感は伝わって来ません。
四場、

ムラヴィンスキーがこのような作品も演奏したと言う貴重な記録なのでしょう。

ホルスト・シュタイン/NHK交響楽団

ホルスト・シュタイン
第一場、ホルスト・シュタインとN響のペトルーシュカと聞くと何か鈍重なイメージがあるのですが、果たして演奏はどうでしょうか?やはり色彩感はあまり無く、華やかな雰囲気は全くありません。塊まったような重さがあります。この当時のN響のねっとりとして音離れが悪い響きがそのままです。
第二場、納豆が糸を引くような感じで、一つの楽器が他の楽器を振り切って抜け出てくることが無く、明快な色彩感を演出することはありません。この曲にはこのコンビは全く合わないです。
第三場、金管が全開になることも無く、色彩的には本当に中途半端です。
第四場、ホルスト・シュタインは元々作為的な表現をする人では無いので、この作品を面白く聞かせようなどとは考えていないでしょう。最後のトゥッティでもくすんだ響きで開放的に鳴り響くことはありません。

あまりにも渋い演奏で、色彩感や華やかさとは無縁の演奏で、全く楽しめませんでした。
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セルジュ・コミッショーナ/RTVE交響楽団

コミッショーナ
第一場、遅いテンポで引きずるような演奏で、およそバレエ音楽とは思えません。アンサンブルも危なっかしいところがあります。たどたどしい感じがあって、演奏するのがやっとと言った印象です。
第二場、色彩感も乏しく、華やかさも無く寂しい感じです。
第三場、練習しているような遅いテンポです。とにかく遅いです。
第四場、金管が抜けてくることも無く、色彩の変化も感じられず、奥行き感も無い演奏です。アンサンブルの乱れもたびたびあり、演奏に余裕は全くありません。

遅いテンポで、色彩感も無くアンサンブルの乱れもたびたびあり、楽しめませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」の名盤を試聴したレビュー

ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」

ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」(Le Sacre du printemps)は、1913年に初演された作品で、20世紀音楽の金字塔とされる革新的な楽曲です。野性的で力強いリズムや不協和音を多用し、従来の西洋音楽の美的基準を大きく覆しました。この作品は、ロシアの異教的な春の祭りを描いており、自然と生命の再生、そして人間の原始的なエネルギーをテーマにしています。

作品の内容と構成

「春の祭典」は2部構成で、それぞれが異教の儀式を描いています。

  1. 第1部「大地の崇拝」:この部分では、春の訪れと自然の目覚めが表現されます。牧歌的なメロディで始まるものの、急に異様なリズムや不協和音が現れ、リズムの変化が複雑に絡み合います。音楽はしばしば荒々しく、自然の力の目覚めを表現するため、次々と異なるリズムが登場し、次第に緊張が高まります。
  2. 第2部「聖なるいけにえ」:こちらでは、春の到来を祝うために「選ばれた乙女」が犠牲として踊り死ぬまで踊り続ける、という異教的な儀式が描かれます。音楽はますます激しく、リズムもさらに緊迫していき、乙女の絶望的なダンスとともに音楽も暴力的に盛り上がります。最終的に、乙女が絶命することで曲は頂点に達し、儀式が完結します。

革新的な要素

「春の祭典」は、リズム、和声、音色のすべてで当時のクラシック音楽の常識を打ち破りました。

  • リズム:複雑なポリリズムや頻繁な拍子の変化が特徴で、当時としては異例の実験的リズムが使われています。このリズムの多様性が、野生的でプリミティブな雰囲気を強調しています。
  • 和声と音響:従来の調和や伝統的な和声のルールに縛られず、不協和音や大胆な音のぶつかり合いを取り入れました。緊張感と破壊的な音響は、聴く人を圧倒します。
  • オーケストレーション:ストラヴィンスキーはオーケストラの各楽器の特性を駆使し、多彩な音色で表現力豊かに演出しています。木管楽器や打楽器の使い方が特に斬新で、自然の荒々しさや原始的なエネルギーを鮮やかに描き出しています。

初演時の反応とその後の評価

1913年にパリでバレエ・リュスによって初演された際、当時の観客にとってあまりにも革新的で野性的な内容だったため、激しい騒動(いわゆる「暴動」)が巻き起こりました。大胆な音楽と振り付けは一部の観客からの強い拒否反応を引き起こしましたが、一方で音楽家や芸術家の間ではその革新性が賞賛されました。

現在では、「春の祭典」はストラヴィンスキーの最高傑作の一つとして評価され、現代音楽に大きな影響を与えた作品とされています。その斬新なリズムや音響は、映画音楽やポップスなど多くのジャンルにも影響を及ぼしており、今でもそのエネルギーに満ちた表現が聴衆を魅了し続けています。

4o

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

エドゥアルド・マータ/ロンドン交響楽団

マータ★★★★★
マータのデビュー作です。メキシコ人らしい情熱的で色彩感豊かな名演です。
オケの爆発も尋常ではありません。私にとっては、青春時代のベストCDです。1978年の録音

第一部:大地礼賛
序奏、ビブラートとクレッシェンドして開始するファゴット、音が変わる瞬間に空気が変わります。冒頭から尋常でない雰囲気を伴っています。静寂感の中から浮き出てくるファゴットの演出はすばらしい。始まってすぐに感じる濃厚な色彩。ねばった表現のバス・クラリネット。鋭く突き刺さるトランペット。
それぞれの楽器のカラーが鮮明で、一つ一つの音が立っています。
春のきざし、全開の弦とホルン。すごいエネルギーをぶつけてきます。トランペットの咆哮も他の演奏とは比べ物にならないくらいの絶叫です。弦のボーイングも叩きつけるような激しさです。
リズム感もとても良いです。ラテンのリズム感なのだろうか。全体のリズムを引き締めるのにティンパニと大太鼓の絶妙なアンサンブルと一体感が必要だと思うのですが、この演奏はすばらしいです。
誘拐、ティンパニのリズムにタメがあって独特です。ティンパニや大太鼓が強烈でダイナミックです。
春のロンド、静かなメロディから硬質な音のティンパニ、そしてタフな金管の伸びのある咆哮と、次々に襲い掛かってきます。
敵対する二つの部族の戯れ、ティンパニが目の前で動きます。色彩が濃厚で原色で描かれているような、すごく鮮やかでそれが美しい!
賢者の行列、ホルンはあまり音量を落とさずに演奏します。ここのトランペットもすごいし、小物打楽器の動きも鮮明!
大地の踊り、強烈な咆哮ですが、アンサンブルは見事に整っています。ラッパのベルがひび割れするんじゃないかと思うくらいの第一部でした。

第二部:いけにえ
強烈な咆哮がありながら、弱音部では細部にわたって緩みなくキッチリアンサンブルしているし、表情もあります。
序奏、大太鼓が入ると崩れ落ちるような表現です。繊細なヴァイオリン。極端に音量を落とすことの無いミュートをしたトランペット。神秘的なホルン。
乙女たちの神秘的な集い、美しいビオラ。木管が粒立っていて美しいです。表現が引き締まっていてダレることがないので、聴いていて気持ちが良い。色彩はここでもとても濃厚です。ダイナミックな11拍子。
選ばれた乙女への賛美、いやぁもう人間技でここまでできるのか!ともう参りました。地を揺らすような大太鼓。締まった硬質なティンパニ。
祖先の呼び出し、三つの音を離して演奏するティンパニ。
祖先の儀式、咆哮するホルン。やはりここでもコントラストがはっきりしていて、楽器が鳴り切るので爽快感でいっぱいになります。
いけにえの踊り、鋭い音で鳴りきるトランペット。ティンパニのリズムに乗ってかなり強く入ってくるトロンボーン、ホルン、大太鼓。

やはり、凄かったです。これだけの絶叫をしても暴走しないロンドンsoの技術の高さにも驚かされますし、ここまで要求したマータにも脱帽です。ストレス発散したけりゃこれを聴け!このCDはタワーレコードの企画ディスクです。

ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

メータ★★★★★
メータのニューヨーク時代の特徴でもあるグラマラスな春の祭典です。
1990年の録音。ニューヨークを去る直前の録音になります。

第一部:大地礼賛
序奏、細身のファゴット、弱音にかなり気を使っている木管。ゆっくりと丁寧に演奏しているのが伝わってきます。とても静かです。バスクラはあまり強調されていません。マイルドであまり刺激的な音はありません。ミュートしトランペットは鋭い音でした。
春のきざし、ブレンドされて一体感のある弦。控えめなトランペットやホルン。ホルンも細身の音です。
誘拐、ここでもホルンは弱い感じがします。ホルンはニューヨークの弱点ですね。大太鼓が硬い撥でドンと入ってきて驚かされます。
春の踊り、連続する弦に続く木管の表情が印象的です。大太鼓を底辺にトゥッティの野太い響きは凄い厚みをもって迫ってきます。
敵の都の人々の戯れ、木管や弦の厚みのある響きがとても良いです。残響が豊かで楽器が分離して聞えることはありませんが、一体感はあります。
賢者の行列、強烈な咆哮はありませんが、厚みのある響きはなかなか良いです。
大地の踊り、金管の一体になったパワー感が欲しい気もします。最後のテューバは凄い!

第二部:いけにえ
序奏、しっかりと地に足が着いた木管。大太鼓がフワーッと柔らかく尾を引きます。トランペットがとても小さな音で演奏します。
乙女たちの神秘的なつどい、マットなビオラ。ここでもホルンはふくよかな音ではなく細身です。木管と弦のアンサンブルはとても良いです。少しoffぎみで美しい弦。
いけにえの賛美、ティンパニと大太鼓のクレッシェンドが大太鼓の低域を伴って音圧として届きます。金管も抑えるところは抑えてメータも大人になったんだと思わせます。
祖先の儀式、ここでもホルンは絶叫しません、ふくよかな響きを保っています。絶叫していてもホールがそのように聞こえないホールなのかも知れません。
いけにえの踊り、いろんな楽器といろんなリズムが交錯しますが、わりと冷静。トランペットのフラッターも綺麗です。大太鼓とティンパニが一つの楽器のように有機的に結びついていて、とても良い役割を果たしています。

決して、爆演ではありませんでしたが、豊かな残響を伴った一体感のある分厚い響きで、抑制する部分と突き刺さってくるところのコントラストがあって良い演奏だったと思います。

ワレリー・ゲルギエフ/キーロフ歌劇場管弦楽団

icon★★★★★
驚愕の終結が待っています。1999年の録音。

第一部:大地礼賛
序奏、冒頭から静寂感があります。粘っこく表現いるファゴット。いろんな音が聞こえてきます。奥まってあまり鋭くないトランペット。
春のきざし、猛烈な弦。ホルンは咆哮しません。デッドな録音のようで、それぞれの楽器の動きが良く分かります。とにかくいろんな音が聞こえてきます。バチーンと硬い撥で強打する大太鼓。まさに踊りのように自由に舞うピッコロ。
誘拐、これまで聞いた春の祭典とは一味も二味も違います。バランスもテンポも!それでも違和感を感じさせないところが、ゲルギエフの凄いところなのでしょうか。トロンボーンが突然突き刺さって来ます。
春の踊り、コントラバスの弦の振れ具合まで分かります。独特のアゴーギク。速いところはもの凄く速いテンポで演奏しています。他の部分とのコントラストの上でも効果的です。金管のポルタメントも特にトロンボーンが強烈です。
敵対する町の遊戯、中央付近を叩いているような音のするティンパニ。通常はテヌートされない部分をテヌートで演奏したり、新発見の連続で聴いていて飽きさせない。しかも、絶叫するわけでもなく。もちろん過不足なく、強烈です。
賢者の行列、ホルンとチューバが強烈でした。
大地の踊り、とにかく「春の祭典」の既成概念をぶち壊されます。それが十分に成立しているから凄いです。

第二部:いけにえ
何かが深いところへ崩れ落ちていくような印象を与える序奏。ストレートミュートでは無いトランペット。いままで、旋律だと思っていた楽器を抑えて、別のパートをクローズアップして聴かせたり、いろんなことが起こります。ロシアのオケからこんなに柔軟な演奏を引き出すのも驚きです。この演奏は洗練されています。
乙女たちの神秘なつどい、加速して物凄く強い11拍子。
いけにえの賛美、ピッコロがこんな旋律を吹いていたのかとまた、新たな発見。
祖先の呼び出し、強いトランペット。ちょっとダサいティンパニ。やはり中心付近を叩いているような感じの音です。
祖先の儀式、アルトフルートが表情豊かに歌います、バックのミュートをした金管がテヌートで演奏しています。シンバルが安っぽいppの音を出しています。このオケには不釣合いな感じです。とても粘って豊かな歌のバスクラリネット。
いけにえの踊り、テンポが一瞬止まったり、アーティキュレーションの表現を誇張したり、終始「なんじゃこりゃ~!」の連続です。そして、最後に信じられないような瞬間が訪れる!

参りました。凄かった。でも、この感動は今までの一般的な「春の祭典」の演奏を知っていないと理解できないですね。いくつか聴いてからこのCDにしてください。お勧めです。

エドゥアルド・マータ/ダラス交響楽団

icon★★★★★
マータの再録音です。前作の血沸き肉踊る爆演は影を潜め、ゆったりとしたテンポの運びで細部まで克明に描いた演奏。1991年の録音

第一部:大地礼賛
序奏、クレッシェンドして入ったファゴット。ホールトーンを適度に取入れた録音、自然な音が特徴です。ゆったりとしたテンポ、オケに厚みがない分、細部まで見通せる良さがある。あまりキンキン響かないトランペット。
春のきざし、ゆっくりと踏みしめるような弦。金管は全体に抑えていると言うか、鳴らないのか、極めて静かな春の祭典です。大太鼓は強烈です。遅いテンポですが、ダレることなく丁寧に演奏しています。
誘拐、ロンドンsoとのデビューCDとは正反対の演奏になっているところが、どのような心境の変化なのか?
全く絶叫しないのですが、テンポが全体に遅いので、変に肩透かしを食ったような感覚はなくて、意外と自然に聴くことができます。全体に静かなのですが、大太鼓だけは強烈に入って来ます。
春の踊り、ホルンが大きく歌います。楽器の音はとても綺麗に録音されています。マータは爆演にしないことで、細部を描き出そうとしているのか。数ある春の祭典の中でも異質な存在です。こんなに静かな春の祭典は初めてです。金管のホルタメントも強く押しません。
敵の都の人々の戯れ、全く咆哮しませんが、楽器の質感はとても良く伝わって来ます。
賢者の行列、ホルンも抑え気味です。打楽器は存在感があります。
大地の踊り、原色の濃厚さは無く、むしろ爽やかな演奏です。デュトワやカラヤンのスタジオ録音のように上品に演奏しようとして大失敗になった例も多くありますが、これは静かにゆっくり演奏した数少ない成功例ではないかと思います。

第二部:いけにえ
序奏、冒頭からぶつかり合う音がします。ここでも、ゆっくり静かにを通しています。オケは決して下手なわけではありませんね。伸びのある音で録られています。
乙女たちの神秘なつどい、少し細いですが、美しいビオラ。ゆっくりと作品を噛み締めるようです。
いけにえの賛美、トランペットなどの咆哮はありませんが、艶やかで美しいです。ここでも大太鼓は強烈です。
祖先の呼び出し、ファゴットはテヌートで美しいです。
祖先の儀式、無表情に演奏されるアルトフルート。ミュートしたトランペットとバストランペットはスタッカートぎみの演奏でした。
いけにえの踊り、質感が良く美しいです。ティパニと大太鼓のリズムも軽いですが、ここ一発の大太鼓はやはり強烈です。この曲をこのテンポで破綻をきたさずに音楽にする能力は非常に高いと思います。一つ一つ登場する楽器の音が美しい。

これまでの春の祭典の概念を覆すような演奏に仕上がっています。
私にとって、「春の祭典は爆演ならそれで良し!」だったのですが、この演奏には完全にやられました。これほど力まず美しい音を追求し、しかも細部まで見通せる演奏をした、マータ/ダラスsoに拍手です。ブラヴォー!!!!!
これはすばらしい。マータが飛行機事故で若くしてこの世を去ったのが悔やまれます。

ウラジミール・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

フェドセーエフ★★★★★
泥臭い原色の春の祭典です。オケも大健闘!

第一部:大地礼賛
序奏、ビブラートをかけた細身のファゴットから開始。一つ一つの音を紡ぐようにゆっくりと丁寧な演奏です。バスクラがすごく粘るような演奏で、存在を主張します。鋭いミュートのトランペット。
春のきざし、ガリガリと、でも一体感のある弦、遠くで尾を引いて響くホルン。短くスタッカートぎみに演奏するトロンボーン。大太鼓は餅つきのようなベタッとした音でしたが強烈でした。細身で明るいホルン。乙女たちの踊りはまさに踊っているかのような多彩で乗りの良い演奏でした。
誘拐、木管が克明に録音されている割にはホルンが遠い。残響成分も含まれて良い効果もありますが、ちょっと遠すぎるような感じがします。
春の踊り、木管が今まで聴いたことのない旋律を浮き彫りにしてくれます。ホルンはテヌートで演奏します。ちょっと詰まった感じの音をさせるティンパニ。大太鼓はここでも硬質で強烈です。金管はそれ程咆哮はしません。
敵の都の人々の戯れ、スピート感があってなかなか面白い。
賢者の行列、地を揺らすような大太鼓。次々と音が溢れ出します。
大地への口づけ、
大地の踊り、最後のティンパニが凄い!

第二部:いけにえ
序奏、ここは柔らかいマレットの大太鼓。表情豊かなトランペット。ゆっくりと進みます。
乙女たちの神秘なつどい、ここもゆっくりとした演奏です。濃厚な色彩と濃い表現です。11拍子の前をすごくゆっくりと演奏し、11入る直前にテンポがさらに大きく動いた、かなり効果的!フェドセーエフもなかなか強烈な主張をします。オケも見事なアンサンブルをしていますし、音色もロシアそのものだから作品には合っているし、この演奏は良いです。
復活がどうしてあんなに変な演奏だったんだろう?
いけにえの賛美、ここもゆっくりと強烈な原色の色彩です。木管のアンサンブルの良さが特に印象的でした。
祖先の呼び出し、かなりクレッシェンドするティンパニと大太鼓。ファゴットはテヌート気味です。
祖先の儀式、ズシンと思い刻み。ミュートしたトランペットとトロンポーンはテヌート気味です。ホルンも咆哮します。シンバルと大太鼓がかなり強烈です。バストランペットも強く下品です。
いけにえの踊り、気持ち良いティンパニ。最後は、ロシアンサウンド炸裂!原色の音の洪水状態です。ティンパニと大太鼓が一体になった原始的なリズム。トランペットやトロンボーンは短めに演奏します。最後の一撃も強烈でした。

強烈な演奏でした。なかなかの好演です。やはり春の祭典は枯れた老人が指揮してもダメですね。まだまだ脂ぎった人が指揮しないと面白い演奏は生まれてこないと思いました。

ダニエル・バレンボイム/シカゴ交響楽団

バレンボイム★★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、豊かな残響でとても雰囲気のあるファゴット。他の楽器も克明に浮き上がります。バスクラもはっきりとしています。ハーセスのトランペットも鋭いです。
春のきざし、豪快に鳴り響く弦。ホルンもトランペットも咆哮します。非常に濃厚な色彩。原色で彩られた演奏です。シカゴsoのパワー炸裂です。
誘拐、ズシンと響く大太鼓。金管の咆哮はかなり凄いです。豊かな残響も影響していると思いますがビンビンに響きます。
春の踊り、かなり膨らむコントラバス。金管の強烈さは尋常ではありません。ゆっくりとしたEbクラとフルート。
敵の都の人々の戯れ、容赦なく吹きまくる金管。弦もサクサクと気持ち良い響きです。
賢者の行列、大太鼓がかなり低い響きを伴っています。ギロもしっかり響きますが、金管の咆哮は凄いです。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、ホールの残響も伴っているからだと思いますが、トランペットなどは物凄く鋭く突き刺さって来るようで猛烈です。

第二部:いけにえ
序奏、とても表現の振幅が大きいです。大太鼓が入る部分も大きく膨らみます。
乙女たちの神秘なつどい、少しザラついたビオラ。豊かな響きで表現もあるアルトフルート。盛大になるヴァイオリン。爆発するような11拍子。
いけにえの賛美、怒涛のエネルギーです。遠慮なく吹きまくる金管。
祖先の呼び出し、大太鼓の超低音が長く尾を引きます。
祖先の儀式、残響が長いので、静寂感は全くありません。強烈なホルンの咆哮。トゥッティはシカゴsoのパワー炸裂です。物凄い音の洪水状態です。
いけにえの踊り、強烈な金管の咆哮。遠慮の無いティンパニの強打。

残響の長いホールでの演奏で、大太鼓などは長く尾を引いていました。金管の強烈な咆哮とティンパニの強打は胸がスカッとするような感じでした。ライブでこれだけ強烈な演奏が聞けた聴衆は幸せだったと思います。
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ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」2

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

コリン・テイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★☆
重量級の春の祭典です。コンセルトヘボウの濃密な音色も生かされた演奏です。
第一部、冒頭からコンセルトヘボウの美しいホールトーンを伴った木管楽器の響きに魅了されます。とても伸びやかな柔らかい響きがたまらない。
春のきざし、とても重い弦です。ふくよかなホルン。豊かな響きです。フィンガーシンバルも鮮明に録れています。どの楽器も明快に録れています。豊かな響きがありながら細部まで聞こえるとても良い録音です。
音の一つ一つに力があって、リズムのキレが悪いことは決してないのですが、力があって重いです。
春のロンド、テンポは遅く大太鼓の音もものすごく重い。ドラは金属系の撥で叩いているような音がします。強烈です。
敵の都の人々の戯れ、ここでも登場する一つ一つの楽器の存在感が抜群です。音に力があるのです。また、このオケのアンサンブル能力の高さもすごい。
大地の踊り、リアルな音で、オケが一体になって迫ってきます。重い音なのですごいエネルギー感です。

第二部、濃厚、春の祭典には音が重すぎるかもしれません。この音で「ペトルーシュカ」は考えにくいです。「火の鳥」だったら深みのある良い演奏になると思います。
いずれにしても、尋常な音で演奏されてはいません。かなりショッキングな春の祭典が展開されています。
色彩感がとても豊かですがホールトーンも伴っているので、原色のキツイ色合いではない。
11拍子からかなりテンポが速くなりました。スピード感もオケが一体になっているので見事!
祖先の呼び出しも速いテンポで小気味良い。
同じ曲でも、指揮者が違うと、どうしてこんなにも空気を変えることができるのでしょうか。不思議なくらい違いがあります。

デイヴィスの指揮の場合でもオケの集中力をすごく引き出していて、緊張の糸がピーンと張り詰めています。ですから、静寂感と少し冷たい空気を感じることができます。団員の気持ちが緩んでいると絶対に感じることができない空気感です。
これほど重い春の祭典は、誰にでもお勧めできる演奏ではありませんが、いくつかの演奏を聴いた人には絶対に聞いてほしい一枚です。

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、かなり締まったファゴット。とても静まった空気感です。克明に動く各々の楽器がマルチ録音を印象付けます。
春のきざし、バネのように弾む弦。短く強いホルン。ティンパニもバネがあります。とにかく色んな楽器が手に取るように分かる克明な演奏です。金管は激しく咆哮することは無く、案外冷静です。
誘拐、容赦なく咆哮するホルン。トロンボーンも強烈です。
春の踊り、重く尾を引くコントラバス。速めのテンポでさっさと進みます。元気の良い演奏です。ティンパニは三つの音をはっきりと分けて演奏しています。ピッコロの後もスピード感のある演奏です。
敵の都の人々の戯れ、屈託無く伸び伸びと鳴り響く金管。木管も統率が取れていて見事なアンサンブルです。
賢者の行列、本来なら音量が落ちるはずのホルンが全く音量を落とさずに演奏します。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、全ての音が前に出で来て色彩のパレットを広げたようです。

第二部:いけにえ
序奏、大太鼓が入ると崩れ落ちるように重くなります。いろんな楽器の動きが明快に分かります。
乙女たちの神秘なつどい、艶やかで色気のあるビオラ。アルトフルートからは速めのテンポでさっさと進みます。引き締まったホルン。ゆっくりと重い11拍子。
いけにえの賛美、色彩が豊かでバネのように弾むリズム。
祖先の呼び出し、ティンパニはあまり激しくありません。ファゴットもあっさりとしています。
祖先の儀式、弱奏と強奏の差がとても大きいです。トゥッティのエネルギーは巨大です。
いけにえの踊り、ティンパニがミュートされているのでリズムがとても先鋭です。研ぎ澄まされたトロンボーン。

マルチマイクでいろんなパートがとても鮮明で、とても元気な演奏でした。色彩感も豊かで、シカゴsoのパワーもさすがでした。

ピエール・ブーレーズ/クリーブランド管弦楽団

ブーレーズ★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、ブーレーズの演奏だと無機的な感じがしますが、思った以上に音楽的でメロディも美しいですし豊かな表現です。奥から鋭いトランペット。
春のきざし、あまり密度が濃く無い弦。トランペットは凄く鋭いです。とても冷静で狂気のような感じはありません。
誘拐、金管はとても良く鳴っています。
春の踊り、ゆっくりと引きずるような弦。大きく歌うホルン。鋭利な刃物のように鋭い演奏で、温度感も冷たい感じです。
敵の都の人々の戯れ、ゆったりと大きく構えた余裕さえ感じる演奏です。弦もトランペットも余裕しゃくしゃくで演奏しています。
賢者の行列、ホルンはあまり音量を落とさずそのまま演奏しています。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、ここもゆっくりとしたテンポで鋭いトランペットが鳴りますが、堂々としています。

第二部:いけにえ
序奏、第一部の序奏のようにとても豊かな表現です。くっきりと浮かぶクラリネット。
乙女たちの神秘なつどい、ささくれ立ったようで美しくないビオラ。僅かに金属的な響きのヴァイオリン。かなりの勢いで演奏される11拍子。
いけにえの賛美、鋭くはじけるトランペット。途中でテンポが遅くなりました。
祖先の呼び出し、颯爽とした金管。ティンパニはあまり激しくありません。
祖先の儀式、緊張感のあるヴァイオリン。あまり激しくないホルン。
いけにえの踊り、鋭い響きとリズムも切れのある鋭い演奏です。容赦なく立ち上がる金管のザクザクとした響き。

鋭い響きで、突き刺さるような演奏でしたが、歌うところはしっかりとした表現で、メリハリのある良い演奏でした。ただ、ブーレーズは常に完璧にコントロールしているので、オケが突き抜けて来るようなことは全くありませんでした。
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アンドレス・オロスコ=エストラーダ/hr交響楽団

エストラーダ★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、ゆっくりとしたテンポで豊かな表情で歌うファゴット。Ebクラもメリハリの効いた表現です。
春のきざし、短く重い弦。鋭いトランペット。ティンパニは軽いです。明るいホルン。内声部の旋律が浮かび上がります。
誘拐、バランスの良い充実した響きです。ここぞと言うところで金管が突き抜けてきます。大太鼓もズシンと響きます。
春の踊り、木管から弦に移るところでテンポを落としました。マスの響きの一体感もとても良いです。最後でテンポを落としました。
敵の都の人々の戯れ、ティンパニはやはり軽いです。とても落ち着いていて熱狂するような咆哮はありません。
賢者の行列、抑えたホルン。チューバの方が強いです。ギロが強く響きます。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、とても堅実で安定した演奏で危なげなところが全くありません。

第二部:いけにえ
序奏、柔らかく繊細な表現。
乙女たちの神秘なつどい、一つ一つの楽器の密度が高くね透明感も高い響きでとても美しいです。大太鼓の重量感のある響きを伴った11拍子。
いけにえの賛美、凄い躍動感ど情報量です。音楽にも勢いがあって力強いです。
祖先の呼び出し、ティンパニの頂点でズシンと来ます。ファゴットはテヌートでした。
祖先の儀式、伸びやかで色彩感も豊かです。強く咆哮するホルン。
いけにえの踊り、情熱的で、オケも献身的に表現しています。最後のクレッシェンドは凄かったです。

強烈な咆哮はありませんでしたが、かなり積極的な表現で、密度の濃い演奏を聞かせてくれました。オケも上手く安定感もあって良い演奏でした。
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スタニラフ・スクロヴァチェフスキ/ミネソタ管弦楽団

スクロヴァチェフスキ★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、離れたところから柔らかく響くファゴット。ゆったりとしたテンポで伸びやかな演奏です。艶やかなEbクラ。ビリビリとしたトランペット。
春のきざし、重量感のある弦。落ち着いたテンポです。トランペットは軽く演奏しています。ティンパニも軽いです。激しい咆哮はありません。
誘拐、響きが引き締まっていて、見通しが良く色んな音が聞えてくる感じがします。
春の踊り、速いテンポの弦。ティンパニが入った部分では、普通聞えないビーと言う響きが聞えます。
敵の都の人々の戯れ、弾むようなホルン。弦もティンパニも弾みます。トランペットのフラッターが強調されます。
賢者の行列、ホルンはかなり抑えています。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、トランペットが鋭く、その間にホルンが浮き出てきます。

第二部:いけにえ
序奏、美しい弦。ふくよかなホルンと色彩感も豊かです。
乙女たちの神秘なつどい、細身で艶やかなビオラ。速めのテンポであっさりと進むアルトフルート。文字通り叩きつけるような11拍子。
いけにえの賛美、オケはスクロヴァチェフスキに鍛えられたのかかなり上手いです。
祖先の呼び出し、速いテンポで、ティンパニはあまりクレッシェンドしません。シャープで鋭い金管の響きは心地良いものです。
祖先の儀式、あまり強くないホルン。弱音部分は静寂感があります。
いけにえの踊り、鋭い金管と硬い音のティンパニが演奏を引き締めています。

鋭くシャープな演奏で、贅肉を削ぎ落としたような演奏はとても心地良いものでした。ミネソタoもかなり鍛えられていて上手かったです。
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ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」3

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

レナード・バーンスタイン/ロンドン交響楽団

icon★★★★
LPの当時は4チャンネル録音だったと思います。残響成分が多すぎて細部が分からないような録音でしたが、CDになって余分な成分をカットしたようで、聞きやすくなりました。
春の祭典を音楽的に聴かせてくれています。1974年の録音

第一部:大地礼賛
比較的速いテンポであっさりとした序奏です。かなり奥まったところから鋭い音のトランペット。
春のきざし、録音のせいか密度の薄い弦。ホルンはバリバリとした音です。録音が捉えきっていないだけで、かなり強烈なffを吹いているのは伝わってきます。ダイナミックレンジは狭い録音です。ティンパニも大太鼓も流れているようであまり強烈ではありません。ふくよかなホルン、シャープなトランペット。これも録音のせいか?ズレて聞こえるところもありますが・・・・・・・・・。
誘拐、かなり強烈に演奏しているようなのですが、録音がライヴ過ぎて角が取れてしまっています。
春の踊り、コントラバスが強いですが、重量感はありません。金管のホルタメントも強調されていますが、突き抜けては来ません。
敵の都の人々の戯れ、抉るように激しいホルン。ティンパニも凄いです。
賢者の行列、トランペットも強烈になりました。
大地の踊り、いろんな楽器が入り混じって混濁します。元々の録音の狙いもあったのか、リズムよりもメロディを歌うことに重点を置いているような演奏に感じます。残響成分が多いので、リズムのキレはどうしても悪くなってしまうので、激しいリズムの隙間にあるメロディを感情込めて歌っている演奏です。春の祭典がこんなにメロディアスな作品だったのかと驚かされます。

第二部:いけにえ
序奏、冒頭は速めであっさりしています。聞こえないほど遠くにいるトランペット。特に第二部ではアゴーギクも効かせて表情豊かです。残響成分が多いので金管の響きも気持ちいいし、メロディも歌うので、心地よい演奏になっています。
惜しむらくは、録音がもう少し良ければ、もっと評価された演奏だったと思います。
乙女たちの神秘なつどい、美しく歌うビオラ。色彩感もかなり鮮明です。ホルンもオーボエも歌います。勢いのある11拍子ですが、重量感はありません。
いけにえの賛美、スピード感のある演奏です。かなり乗って演奏している感じで楽しそうです。
祖先の呼び出し、ファゴットのメロディも哀愁に満ちて泣かせるほどです。無機的に演奏されることが多い春の祭典ではありえないことだと思いますが、それをやってのけたバーンスタインも凄いです。
祖先の儀式、打楽器を伴ったホルンはかなり強く演奏しています。
いけにえの踊りでは、ティンパニも思いっきり引っ叩いていますし、金管も吹きまくっているようですが、聞き手側に音が届いてこないので、凶暴な演奏には聞こえません。

録音の仕方によっては全く違う印象になったかも知れませんが、私にとっては、良い演奏でした。

イゴール・マルケヴィッチ/スイス・ロマンド管弦楽団

マルケヴィッチ★★★★
1982年のライブ録音

第一部、ライブとは思えない静寂感。虚飾を取り去ったようなシャープな演奏で、実に整然としています。
金管がかなり控えめな録音で、春のきざしのトランペットやホルンは、遥かかなたにいるようです。
ティンパニは近い。ドラは薄いものを使っている。
ゴージャスな響きはなく、むしろ簡素で作品の素の部分を聞かせてくれているようです。
金管がかぶってこないので、ffでも他のパートの動きも分かる。ライブでこれだけのバランスを保って演奏する能力は凄く高いものだと思います。
春の祭典の狂ったような高揚感もありません。しかし、これだけ複雑な音楽を整然と演奏されるとア然としますね。

第二部、速めのテンポであっさり。とにかくムダな表現をあえて極力避けているようです。
金管の咆哮も感じとしては十分伝わってくるのですが、音圧としては来ないので、ダイナミックレンジが狭い感じで、春の祭典のCDとしては、聴き易いです。
「無駄なものを削ぎ落とすとこんな作りになっているのか」と、今まで聞いていたグラマラスな春の祭典は何だったんだろうと考えさせられます。
ん~。何なんだろう。春の祭典に爆発するエネルギーや豪快に鳴る抜群に上手いオケの演奏を聴きたい人にはお勧めできません。

春の祭典を聞きあさっている人には一度聞いてみて欲しい演奏です。

マイケル・ティルソン・トーマス/ボストン交響楽団

icon★★★★
贅肉を削ぎ落とした、筋肉質でシャープな春の祭典です。若きトーマスの意欲作!

第一部、暗闇の中からロウソクの炎の立ちのぼるようなファゴットの美しいソロ。やはり良い演奏には静寂感があります。ピリッとした緊張感が漂っています。
春のきざし、一体になって締まった弦楽器。暴発しない金管が演奏をさらに引き締めている。大太鼓ももやもやした響きは残さない。小さめの楽器を使っているのでしょうか。
春のロンド、ここで少し穏やかな雰囲気になります。でも、ホルンは細身の音です。ティンパニが強烈に叩きつける部分もありますし、金管の咆哮もありますが、きちんとコントロールされていて、暴走は有り得ません。このあたりは、指揮者の能力の高さをうかがわせます。

第二部、とても繊細な弦楽器の演奏です。整然と整った演奏。この曲を混濁させることなく、聴かせる事ができる指揮者はそう多くはいないと思います。その意味では、マイケル・ティルソン・トーマスの能力の高さは凄いと思います。
極端に突出する部分もないので、この演奏がすごく印象に残るものにはなりにくいかもしれませんが、春の祭典を見事に整理して整然と演奏したことは、実はもの凄いことなのだと思います。

デッドなホールで奏者もあまり音を長く残さずに演奏して、モヤモヤするのを極力排除して、曲の構成を突きつけてきたような演奏でした。ボストンsoはそんなに上手いとは思いませんが、かなり頑張って演奏しています。

ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

メータ/1978★★★★
メータが颯爽とニューヨークへ乗り込んで最初の録音です。

第一部、若干クレッシェンドぎみに入るファゴット。静寂感があって、この先を期待させる序奏です。
登場する楽器それぞれがとても表情豊かです。
トランペットが変わったミュートをつけているような音です。
弦がコントラバスの重い音も伴って力強い音です。ホルンが鳴りきらないような変な音。
トランペット、トロンボーンは強力です。ティンパニも良い音で切り込んできます。テューバも含めた金管が炸裂します。打楽器も躊躇無く来ます。
緩い部分はゆったりとしたテンポでメリハリもあり聞けます。
いろんな打楽器が聞こえて凄い最後。やはり、これぐらい鳴り切らないと面白くないです。

第二部、少し音が粗いかもしれません。繊細な弦を聴くことはできないです。でも、場面場面の表現は上手くできているので、聞き入ることができます。オケのメンバーの集中力も高いようで、ピリッとした空気感を感じることができます。
私は、評論家がどんな評価をしようが、無音時に、このピリッとしてちょっと冷たい空気感が無い演奏は良い演奏だとは思えません。CDであっても、その場のメンバーが作り出す空気がピリッとしていたり、なんとなくザワついていたりすることがあります。
オケのメンバーが集中して、一つのことを成し遂げようとする空気はCDにも収録されるものです。
その面では、この演奏には十分な集中力があるし、実際オケの発する音にも方向性が感じられます。
ホルンは全体を通して独特の音です。ビーっと言う感じの鳴り方ではありません。割った音ではなく、太い音がします。
ティンパニが締まった良い音で気持ちが良い!この演奏では、テューバが随所で良い役割を果たしています。
ホールが少し金属的な響きを持っているようで、木質の柔らかい残響ではありません。

この演奏は、メータとニューヨーク・フィルが新たな門出に期待を込めて、お互いの力を出し尽くした演奏だと思います。

マイケル・ティルソン・トーマス/サンフランシスコ交響楽団

トーマス★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、クレッシェンドして始まるファゴット。ゆっくりとしたテンポでねっとりとした表現です。Ebクラがスタッカードぎみです。鋭く突き刺さるトランペット。
春のきざし、フワッとしていて奥まって静かな印象の弦。テヌートぎみに演奏する部分がありました。キリキリと鋭く響くトランペット。
誘拐、とても軽く演奏している感じで、力を振り絞るような感じはあまりありませんが、ここぞと言うところでは絶叫します。
春の踊り、速めのテンポであっさりと進む弦。ここでも金管の絶叫はかなり凄いです。
敵の都の人々の戯れ、軽いティンパニ。トランペットは鋭く響きますが、他のパートはそんなに強くはありません。
賢者の行列、トランペットは強烈です。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、軽いですが、鋭くシャープな演奏です。怒涛のようなエネルギーはありません。最後大太鼓が大きくクレッシェンドしました。

第二部:いけにえ
序奏、繊細な表現。重い大太鼓。とても少ない人数で演奏しているように小さくなります。トランペットはすごく弱いです。
乙女たちの神秘なつどい、離れたところでサラサラとした響きのビオラ。オフぎみで淡白な響き。大太鼓のバネのように弾む11拍子。
いけにえの賛美、大太鼓がとても強調されている感じです。
祖先の呼び出し、速めのテンポでファゴットも弾みます。
祖先の儀式、遠くて静かです。アルトフルートは歌いました。硬いシンバルが強い中ホルンが響きます。
いけにえの踊り、ミニチュアのように小さい音場感ですが、ティンパニが強烈にリズムを刻みドラも金属的な響きで入って来ます。トランペットも強烈です。ティンパニの音色は抜群に良いです。弦は控えめですが、金管はかなり強いです。最後のティンパニが独特なリズムを刻む部分の音色や金管の突き刺さるような演奏はとても良いです。

とても小さい音場感でした。ほとんどは抑え気味が軽く演奏されましたが、ここぞと言うところでは強烈な表現もありました。ただ、都会的でシャープな感じは常にありました。
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ヴァレリー・ゲルギエフ/ロンドン交響楽団

ゲルギエフ★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、凝った表現のファゴット。あまり強くないトランペット。春のきざしへ向けて加速します。
春のきざし、そのままの勢いで入ります。テンポが速いので、弦は小じんまりしています。ティンパニもあまり強く叩きません。速いテンポで慌ただしいです。
誘拐、速いテンポでオケが全開になることはありません。
春の踊り、オーボエはたっぷりとテンポを落としてねっとりと演奏されます。ドラはとても軽い音です。リミッターがかかったように金管が奥まっています。
敵の都の人々の戯れ、濃厚な色彩ですが、金管の咆哮はありません。
賢者の行列、金管は強く演奏しているようですが、録音の問題か、あまり突き抜けて来ません。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、ドラがとても軽いので、重量感を感じません。

第二部:いけにえ
序奏、ゆらゆらと揺れ動きながらとても静かな演奏です。トランペットが入る前に長い間がありました。トランペットは弱いです。
乙女たちの神秘なつどい、ゆっくりと演奏されるアルトフルート。詰まったように重量感の無い11拍子。
いけにえの賛美、バチッと入る大太鼓。
祖先の呼び出し、テヌート演奏が続きます。ファゴットは豊かな表現です。
祖先の儀式、
いけにえの踊り、テヌートぎみで柔らかく演奏されるトロンボーン。間があったりしました。トロクボーンのグリッサンドをゆっくり演奏しました。最後の音はキーロフとの録音と同じように長く演奏しました。

独自の表現が散りばめられた演奏でした。ただ、キーロフとの録音のような衝撃はありませんでした。
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フランソワ=グザヴィエ・ロト/レ・シエクル

ロト★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、僅かに細い響きのファゴット。トランペットはあまり聞えません。
春のきざし、細く軽い弦とそれに一体となったホルン。ファゴットの合間の弦はかなり音量を落として演奏しました。トランペットやホルンもあまり突き抜けては来ません。
誘拐、ホルンは今の楽器のように豊かにビリビリとは鳴りません。弦の強弱の変化はとても統率が取れていて見事です。
春の踊り、鋭く抉るような金管。リピートがあるのでしょうか?普通は通り過ぎる部分でリピートがありました。
敵の都の人々の戯れ、
賢者の行列、ホルンはかなり弱く演奏しています。トランペットも独特の音色です。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、古楽器による演奏ですが、現代の楽器との演奏と大きな違いは感じません。

第二部:いけにえ
序奏、ヴァイオリンのソロがあまり聞き取れません。暗闇と緊張感を感じさせる演奏です。
乙女たちの神秘なつどい、とてもソフトなアルトフルート。11拍子の前で大きな間を空けて、ティンパニ中心の11拍子でした。
いけにえの賛美、凄いスピード感です。
祖先の呼び出し、ここも速いです。とても歯切れの良い金管。
祖先の儀式、とても静かです。
いけにえの踊り、間をあける部分がありました。

初演当時の楽器での演奏とのことでしたが、ベートーヴェンからの100年の進歩は大きく、現在の楽器と大きな違いは感じませんでした。見た目ではホルンがロータリーではなくピストンなくらいです。間を空けることが何度もありロトならではの研究の成果なのかも知れません。全体としては爆発するような強いエネルギーはありませんでしたが、整った演奏だったと思います。
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ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」4

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン/オランダ放送室内フィルハーモニー管弦楽団

ズヴェーデン★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、ショルティの演奏に比べるとかなりマイルドで溶け合った楽器。鋭いトランペット。少し静寂があってからファゴットが入りました。
春のきざし、あまり激しさは感じない弦。トランペットも抑えています。マルチマイクの克明な演奏に比べるととてもマイルドで平板な感じがします。金管はあまり強いエネルギーはありません。
誘拐、録音によるものなのかも知れませんが、あまり激しい咆哮は無く大人しい感じです。
春の踊り、ゆっくり目の弦。大暴れすることなく落ち着いて整った演奏です。
敵の都の人々の戯れ、オフな録音のためかも知れませんが、限界まで演奏するような必死な演奏ではありません。
賢者の行列、やはり冷静です。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、きれいなタンギングのトランペット。

第二部:いけにえ
序奏、丁寧に表現が付けられています。トゥッティの爆発はありませんでしたが、弱音の表現はなかなかです。
乙女たちの神秘なつどい、濃厚ではありませんが、色彩の変化がとても良いです。ヴァイオリンもホルンも美しい。ティンパニが目立つ11拍子。
いけにえの賛美、ブレンドされた響きなのですが、その分原色の濃厚な色彩はありません。
祖先の呼び出し、ティンパニはあまり強打しません。
祖先の儀式、静寂感のあるピイツィカート。ホルンの激しい咆哮。
いけにえの踊り、ブレンドされた響きはとても良いものです。ティンパニも硬めで強い音です。

ブレンドされた美しい響きでマイルドな演奏でした。オケは限界まで咆哮することは無く、落ち着いた演奏で、強烈な個性も感じませんでした。
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ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー/ロンドン交響楽団

icon★★★
一部、極めて常識的な出だし。ゆっくりな春の兆しです。予想したような爆演ではありません。全体的にゆっくりとしたテンポで音楽が進んで行きます。
金管の咆哮も録音のせいか控え目に響きます。整った演奏です。ロンドンsoはそつなく演奏しています。ロジェベンがオケに限界を要求するような場面はありませんでした。

二部、冒頭はあまり静寂間はありません。
淡々と音楽が進んで行きます。可も無く不可もなくというような演奏です。
11拍子はゆっくりでした。テンポが全体にゆったり目だった他は、そんなに特徴のある演奏ではないような感じがしました。

オトマール・スウィトナー/シュターツカペレ・ドレスデン

icon★★★
第一部、すごく雰囲気のあるファゴットです。ゆったりとした弦のピチカート続く弦は一音一音克明に刻みます。作品にふさわしくエネルギッシュですが、折り目正しく端正な演奏はスゥイトナーらしいです。とてもアンサンブルが整っていて整然としています。しかし、ここぞと言う場面での咆哮はすさまじいものがあります。硬質なティンパニが響きにモヤモヤしたものを残さず演奏を引き締めています。

第二部、比較的大きめ極端に絞った印象のない音で開始しました。アルトフルートがホールの響く音がとても良い雰囲気です。11拍子の前のミュートしたホルンとトランペットはすごく弱く演奏しました。11拍子へ入る前に間を置きました。ティパニが刻むリズムがとても克明です。ここでもファゴットがとても良い響きです。

この時代にこれだけ整然とした演奏ができていたことに驚きます。

クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団

アバド★★★
第一部:大地礼賛
序奏、豊かな残響で柔らかいファゴット。バスクラが強調されることも無く、とても自然なバランスです。
春のきざし、左右いっぱいに広がる弦。ショルティの演奏ほど克明ではありませんが、楽器の動きは良く分かります。美しいホルン。トランペットは突き抜けて来ません。
誘拐、ここぞと言うところでエネルギーの爆発が無くて拍子抜けします。
春の踊り、ティンパニが柔らかい音でリズムがはっきりと聞えて来ません。
敵の都の人々の戯れ、ホルンやトランペットが膜を突き破ってくるように鮮明に響きます。すっきりと爽やかな響きです。
賢者の行列、ギロがはっきり聞えます。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、かなり強くは演奏していますが、限界近い咆哮はありません。

第二部:いけにえ
序奏、豊かで伸びやかで、緊張感はありません。
乙女たちの神秘なつどい、豊かに歌うビオラ。11拍子の前のドラが強く入りました。
いけにえの賛美、濃厚な色彩と強烈なトランペット。
祖先の呼び出し、大きなクレッシェンドはしないティンパニ。静かなファゴット。
祖先の儀式、速めのテンポで前へ前へと進みます。良く動いて豊かな表情です。強弱の振幅が大きいホルン。
いけにえの踊り、ティンパニが柔らかく、全体の印象をソフトにしているように感じます。

柔らかいティンパニが象徴するように全体に柔らかくふくよかな演奏で筋肉質で贅肉をそぎ落としたような精悍な演奏ではありませんでした。
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イゴール・マルケヴィッチ/日本フィルハーモニー交響楽団

マルケヴィチ★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、Ebクラの登場あたりから少しテンポが遅くなっていますが、表現はあまりありません。デッド近いトランペット。
春のきざし、かなりデッドで薄い響きです。トランペットが不協和音でぶつかり合うのも良く分かります。大太鼓は強烈に叩きました。オケはかなり頑張っています。
誘拐、ベタッとした大太鼓。奥行き感があまり無く、楽器の動きは克明に分かります。
春の踊り、少し速めの弦。金管はかなり頑張っているようですが、デッドなので、響きがマットで輝きがありません。
敵の都の人々の戯れ、デッドなので、楽器の動きはとても良く分かるのですが、全体の響きが融合しないのと響きを伴った大きな感じが無いのが残念です。
賢者の行列、チューバがかなり強いです。ドラも強烈です。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、金管が吠えると弦が聞えなくなります。大太鼓が最後に大きくクレッシェンドしました。

第二部:いけにえ
序奏、冒頭からトランペットが聞えます。弱音部分は音が太らないので、細部まで克明です。
乙女たちの神秘なつどい、サラッとしていて艶やかさの無いビオラ。ピツィカートに入る手前で大きくテンポを落としました。硬い打撃の11拍子。
いけにえの賛美、デッドなので騒々しいです。
祖先の呼び出し、しっかりクレッシェンドするティンパニ。
祖先の儀式、速めのテンポでデッドな響きをカバーするような演奏。アルトフルートも速いテンポです。金管の短い音が残響が少ないので、とても短く「ヘ」をこいたような感じです。
いけにえの踊り、速いテンポですが、弦は引きずるように長い音で演奏します。ティンパニはとても良い音です。

オケはかなり頑張っていました。デッドな録音でかなり細部までさらけ出された演奏でしたが、あまりにもデッドで奥行き感の全く無い浅い音場感と残響が伴わないので、音が短く間が持たない感じもありました。
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シャルル・デュトワ/モントリオール管弦楽団

★★
序奏はすごく良い雰囲気なのですが、デュトワに荒れ狂うような演奏を求めるのはムリなのでしょうか。

第一部、とても雰囲気のある始動で、これから始まることを期待させる演奏です。色彩感豊かな音色です。
春のきざし、弾むように短めに演奏される弦。咆哮する金管。美しい音で鳴っています。
ふくよかなホルン、シャープなトランペット。なかなか良いのですが、デュトワの録音に共通する、低域のカットがなされているようで、低域が薄い感じがして、バランスが逆三角形に感じられて、腰高な印象になってしまいます。
オケは上手いのですが、都会的な春の祭典になっていて、洗練されすぎている印象です。泥臭さとは無縁の春の祭典です。
大変高度な演奏技術なのに、キンキンしていて、地鳴りのような底から湧き上がるようなエネルギーの爆発が感じられないのが、とても残念です。
すごく低い帯域まで録音はされているのですが、それよりも上の強いエネルギーを感じる部分が削がれているようで、魅力のない録音にしてしまっているようです。

第二部、弱音部分は良い雰囲気を持っています。静寂感もあるし。しかし、強奏の部分がシャープすぎる。これは、私の春の祭典に対する既成概念が強すぎるからかもしれません。
気持ちの良い音で決まるティンパニ!何も演奏には不足はないのですが、録り方が・・・・・・。
最後の部分でもティンパニと大太鼓が上手く組み合わさっているはずなのですが、大太鼓はほとんど聞こえません。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★
1978年のライブ録音。

第一部、さすがに絶頂期のベルリン・フィル。どのパートもライブとは思えない上手さを見せつけます。
低域から深い響きの弦の刻み、ライブなので響きはデッドですが、その分楽器の動きが克明に表現されます。
カラヤンのスタジオ録音では有り得ないようなバストロンホーンの突出があったり、やはりライブは面白い!スピード感がすごくあります。テンポも速いのですが、それについて行く、ベルリン・フィルのメンバーの演奏のスピード感がとても良いです。
春のロンドではかなりテンポを落として、じっくり歌っています。やはりライブだと、こういったあたりの感情移入など、スタジオ録音では聞けない面を聴く事ができて、カラヤンも人間らしい演奏するんだなあと嬉しくなります。
カラヤンだから爆演にはなり得ないですが、それでも十分にオケを鳴らした気持ち良い演奏です。
あのスタジオ録音のよそ行き演奏は何だったのか。あれはひどすぎる。

第二部、艶やかなバイオリンのソロ。さすがです。11拍子はかなり遅い。
マルケヴィッチのライブのような余分な音を削ぎ落としたようなシャープさはありませんが、カラヤンらしく磨かれた演奏を聴かせてくれます。

これを聴いてしまうと、カラヤンの春の祭典に関しては、スタジオ録音は聞きたくなくなります。

ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団

マゼール★★
第一部:大地礼賛
序奏、くっきりと浮かび上がるファゴット。残響が少ないのか少し寂しい感じがします。バスクラも強調されず自然です。トランペットはあまり強くありません。
春のきざし、これが自然なのかも知れませんが、柔らかく一音一音くっきりとはしない弦。ティンパニも軽く、ほとんど絶叫のような叫びはありません。とても落ち着いた演奏で静かです。ウィーンpoとの録音の引きずるような重さや濃厚さとは対照的な演奏です。
誘拐、ティンパニが凄く軽く叩きました。金管もとても軽いです。あまりにもおっとりした演奏で、作品の本来のイメージとはかなり違う演奏です。
春の踊り、音量は控えめで寂しい感じさえします。ティンパニは三つの音をはっきりと離して演奏しています。金管のポルタメントの部分で大きくテンポを落とします。
敵の都の人々の戯れ、テンポの動きがありますが、演奏はやはり軽いです。
賢者の行列、ホルンもチューバも遠くにいて近くでは鳴りません。トランペットなどは強く演奏しているようですが、音は迫って来ません。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、冷静で整ったアンサンブルです。とても静かです。

第二部:いけにえ
序奏、大太鼓が入っても軽いです。トランペットはかなり弱いです。
乙女たちの神秘なつどい、伸びやかに歌うビオラ。アルトフルートから少しテンポが速くなります。かなり締まったホルン。11拍子の前で間をあけました。11拍子はあまり重くありませんが、一つ一つしっかりとゆっくりと演奏しました。
いけにえの賛美、弦を中心に音楽が作られていて金管が飛びぬけて来るようなバランスにはなりません。
祖先の呼び出し、ゆっくりとしていますが、伸びやかではありません。
祖先の儀式、アルトフルートも遠くです。ホルンもそんなに強くはありません。
いけにえの踊り、遠いオケで、音があびせ掛けられるような演奏には全くなりません。マゼールも全く冷静に演奏している感じです。

咆哮とは程遠い演奏で、軽く冷静な演奏でした。演奏がそうだったのか、録音がそうだったのかは分かりませんが、このような演奏もありなのかも知れませんが「春の祭典」でストレスを発散したいような人には全く不向きな演奏でした。
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Olari Elts/エストニア国立交響楽団

Olari Elts★★
第一部:大地礼賛
序奏、クレッシェンドして入ったファゴット。楽器の出入りがはっきりしていて、動きが良く分かります。Ebクラはスタッカードぎみでした。トランペットはあまり強くありません。
春のきざし、勢いのある弦。トランペットが前に出てきます。危なっかしいホルン。金管の咆哮はありません。
誘拐、かなり控え目な金管。
春の踊り、硬いマレットで叩く大太鼓。
敵の都の人々の戯れ、ティンパニはあまり聞えません。ホルンも弱いです。木管がテヌートで演奏します。
賢者の行列、かなりの低域まで含んだ大太鼓。ここでもホルンは抑えています。大太鼓がズシんと響きます。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、鋭い響きのトランペット。最後、大太鼓が大きくクレッシェンドしました。

第二部:いけにえ
序奏、控えめな弦が繊細で美しいです。聞えないくらい弱いトランペット。弱音がとても味わい深いです。
乙女たちの神秘なつどい、細身ですが、とても柔らかいビオラ。弦がとても美しいです。弦のボウイングがはっきり聞える11拍子。
いけにえの賛美、荒れ狂うような咆哮も無く大人しい演奏です。
祖先の呼び出し、速めのテンポで軽く進みます。ファゴットはテヌートです。
祖先の儀式、速めで淡々と演奏されるアルトフルート。打楽器を含んだオケは凄いエネルギーですが、ホルンはそんなに強くありません。
いけにえの踊り、ここも軽い演奏でサラッと進みます。大太鼓だけが強烈です。

小さいミスは散見されましたが、全体には軽くサッと流したような演奏でした。大太鼓だけが強烈に入ってくるバランスも少し違和感がありました。
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ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」5

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

ヨエル・レヴィ/アトランタ交響楽団

レヴィ★☆
第一部:大地礼賛
序奏、あまり小細工の無いストレートな演奏です。整然としていて編成が大きくないような感じさえします。
春のきざし、やはりすっさきりとしていて小さくまとまった感じがあります。金管も咆哮はしません。
誘拐、過不足無く金管も鳴りますが、ただ楽譜通りに演奏している感じで、特徴がありません。
春の踊り、この指揮者の没個性は「復活」の演奏でも感じましたが、教科書通りの模範演奏のようで、面白みは全くありません。
敵の都の人々の戯れ、ティンパニは強いですが、他は常識的な範囲です。
賢者の行列、全て予想の範囲内で、ワクワクするような驚きはありません。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、最後は大きくクレッシェンドしました。

第二部:いけにえ
序奏、ここも特徴らしいものは無く普通に進みます。
乙女たちの神秘なつどい、淡々と、表現も無く進みます。かなりダイナミックな11拍子。
いけにえの賛美、速いテンポですが、オケは絶対に暴走はしません。常に常識的な範囲で、私には安全運転のように感じてしまいます。
祖先の呼び出し、ティンパニはかなりクレッシェンドしました。
祖先の儀式、ダイナミックに咆哮するホルン。大太鼓も重いです。
いけにえの踊り、かなり慌てたような速いテンポ。テンポは速いですが、やはり制御されて暴走は一切しない演奏です。

全く危なげない模範演奏のようなつまらない演奏でした。レヴィの個性などは全く感じませんでした。
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ピエール・ブーレーズ/クリーブランド管弦楽団

icon
第一部、雰囲気のある序奏です。美しい音で録音されています。
バランス感覚は良いのですが、ブーレーズも歳なのか、昔のような抉り出すような鋭さは影を潜めて、丸い演奏。ドラティよりは練られているけれど・・・・・・。
面白くないレベルはあまり変わらない。

第二部、なんとなく音楽が流れて行く感じで、春の祭典を聞いているとは思えないくらいです。
ここまで、過去の作品として演奏したことに価値があるのか。

私には、分かりませんでした。

アンタル・ドラティ/デトロイト交響楽団

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第一部、とても落ち着いた序奏。巨匠の風格と言うか、微動だにしない余裕が感じられます。
大人の演奏と言う感じで狂気のような部分は皆無です。とても安心して聴けるのですが、春の祭典には何かスリルのようなものを求めてしまうのは私だけでしょうか。
ゆっくりした足取りで堅実だし、手馴れているようです。
ドラティとしては十八番でもあり、演奏回数も多いのでしょう。とても落ち着いててい、スピード感がありません。金管楽器を絶叫させるようなこともありませんし、あまりにも意外性が無さ過ぎて、ちょっとつまらない。
むしろ、変に抑えられていて、開放感がありません。私などは単純に気持ちよく爆発してくれれば、それ以上は望まないのですが・・・・・(^ ^;
ドラティはこの演奏から何を伝えようとしているのか、私には全く分かりません。

第二部、ここでも特別なことは何も起こりません。テンポを速めても乗り遅れる打楽器。
ドラティは「春の祭典」を完全に過去の作品に追いやってしまったようです。しかし、ドラティ自身がこの作品を愛しているのだろうか?

全てが、中庸で危なげない。 面白くない。全然面白くない!

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon
第一部、序奏、残響の少ないホールで速めのテンポで演奏されるファゴット。奥行き感があって、神秘的な雰囲気があります。
春のきざし、しっかりと刻まれる弦。ホルンは短く弱めです。とても整然としていて、泥臭さはありません。
誘拐、金管が咆哮するような強烈な表現はなく、カラヤンが絶対にオケを暴走させないように制御しているようです。
春の輪舞、この音楽の持つ凶暴さなどは一切出さずに、美しい演奏に終始しています。ベルリンpoも余裕で演奏しているように感じます。
敵の部族の遊戯、作品から距離を置いて、とても冷静に演奏しています。
長老の行進、ホルンは一人で演奏しているかのようにピッタリ合ったアンサンブルです。
長老の大地への口づけ、
大地の踊り、オケを爆発させることはなく、上品ですが、聴いていて熱くなるような演奏ではありません。

第二部、序奏、聴き手を引き付けるような静寂感はありません。あまりにも簡単に演奏していて、緊張感も感じません。
乙女の神秘的な踊り、アルトフルートも少し速めのテンポであっさりと演奏しました。美しい弦。
選ばれし生贄への賛美、オケはフルパワーではなく、とても軽い曲を聴いているような錯覚に陥ります。
祖先の召還、ティンパニのクレッシェンドも僅かでした。合間のファゴットもあっさりとしていました。
祖先の儀式、常に余力があり、必死に演奏しているような緊張感が感じられないのが不満になります。
生贄の踊り、ベルリンpoの分厚い響きも感じません。

ベルリンpoが余裕綽々で軽~く流して演奏したような、緊張感や必死さを感じない演奏で、ちょっと残念でした。

サー・サイモン・ラトル/バーミンガム市交響楽団

ラトル
第一部:大地礼賛
序奏、自然な音場感ですが、普通では聞えないクラリネットが聞えたりします。トランペットはかなり奥まっています。
春のきざし、割と静かな弦。浅いホルン。トランペットは奥で音が出てきません。ティンパニも優しいです。トゥッティでも音は引っ込んでいて強弱の変化に乏しいです。
誘拐、音量も抑え気味なのか、音場感も狭く箱庭を見ているような感じです。
春の踊り、平板で淡々と進んで行きます。ドラも軽い音です。金管は全く前に出てきません。
敵の都の人々の戯れ、遠くから響いて来るような金管。とても軽くてスケールが小さい演奏に感じます。
賢者の行列、ホルンは抑えられて、チューバの方が強いです。トゥッティでも全く金管が前に出てきません。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、響きからすると金管もかなり鳴っているようなのですが、録音が全く金管を捉えていないので、演奏が小さいです。

第二部:いけにえ
序奏、漂いながら寄せては返すように強弱が変化します。トランペットはとても弱いです。
乙女たちの神秘なつどい、細かく表現が付けられています。テンポも動いて生き生きとしています。ゆっくりと、弦のボウイングが良く聞える11拍子。
いけにえの賛美、重く引きずるようなテンポです。
祖先の呼び出し、かなりクレッシェンドするティンパニ。
祖先の儀式、淡々と演奏されるアルトフルート。金管が入るととたんに奥へ引っ込んでしまいダイナミックな演奏にはなりません。どうしてここまで抑えなければいけないのか分かりません。
いけにえの踊り、ゆっくりとしたテンポで金管を抑えたバランスはここでも一緒です。ティンパニも軽いです。チューバは強いのですが、トランペットは極端に抑えたバランスです。

トランペットを極端に抑えた録音のバランスで、野生の粗野な迫力などは全く伝わって来ませんでした。
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小澤 征爾/ボストン交響楽団

小澤
第一部:大地礼賛
序奏、速めのテンポでとてもあっさりとした演奏です。バスクラなどはほとんど聞えないくらいです。トランペットはチビッたような感じです。
春のきざし、かなり低い音も伴った弦。トロンボーンもチビッたような煮え切らない感じの演奏です。思い切りオケを鳴らさないので欲求不満になりそうです。
誘拐、速いテンポで金管を思い切り鳴らさない演奏で、煮え切りません。
春の踊り、Ebクラとバスクラのメロディはゆっくりでした。ピッコロが入る前に間がありました。
敵の都の人々の戯れ、テンポが速めで雑然とした感じになりました。
賢者の行列、大太鼓はとても軽いです。チューバがとても強いです。キューっと締まったトランペット。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、大太鼓が入る部分は弦が引きずるような演奏です。埃っぽいトランペット。

第二部:いけにえ
序奏、
乙女たちの神秘なつどい、カサカサしてあまり美しくないビオラ。ホルンがゆっくり目で明るく美しい演奏でした。ゆっくりと弦のボウイングがはっきり聞える11拍子。
いけにえの賛美、色彩感はあまり濃厚ではありません。ほとんど単色のような感じさえします。
祖先の呼び出し、あまりクレッシェンドしないティンパニ。
祖先の儀式、ゆっくりと確実な歩みです。ミュートしたトランペットはかなり抑えています。
いけにえの踊り、抑えたティンパニ。ここでも中途半端に金管を鳴らす部分があって、スッキリしません。

とてもユニークな演奏でしたが、チビッたような金管の煮え切らない演奏は理解できませんでした。
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ロリス・チェクナヴォリアン/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

チェクナヴォリアン
1977年の録音
第一部、ビリビリ言うバスクラ、あまり緊張感のある出だしではなかった。Ebクラはかなり強く表情豊かに演奏されたけれど、トランペットは控えめでした。
春のきざし、ホルンが異常に近くにいてバフバフ言っています。
不思議な感覚にさせられる微妙なテンポの動きがあって、一瞬トランス状態になったような錯覚を感じました。
場面の終わりで演奏が緩むことがあって、不思議な演奏です。チェクナヴォリアンの癖なのか、フレーズの終わりや場面の終わまで、気を抜かずに演奏していないので、ダレた印象があります。
春のロンドの弦楽器のアンサンブルが乱れます。何か全体的に緊張感の乏しい演奏に感じてしまうのですが・・・・・・。

第二部、打楽器の重いロールが闇を演出するのに非常に効果的です。ゆっくりとした足取りで演奏されますが、どうも緊張感がなくて、聞き手に迫ってくるものがない。
スコアを見ていないので、厳密なところは分かりませんが、かなりアンサンブルは乱れているように聞こえます。
爆演を組み合わせたCDですが、明らかにマータに軍配が上がります。
祖先の儀式のティンパニの音色も演奏になじまない、個人的にはもっと締まった音を望みたいです。アルトフルートのブレスもはっきり分かるし、どうなっているのでしょう?
ホルンは絶叫しますが、その他のパートがバラバラで、爆演なら何でも良いわけではない。
いけにえの踊り、リズムが流れてしまっていて、オケのメンバーが拍をしっかり感じていないようで、終始締まりの無い爆演だったなあ。

ジェームズ・レヴァイン/メトロポリタン・オーケストラ

icon
第一部、トランペットの音の処理が独特です。渇き気味の音で潤いがありません。
春のきざしからは激しい演奏なのですが、雑な感じを受けます。表情もつけているのですが、音の扱いが丁寧じゃない印象を受けます。
金管の咆哮も凄いし、ティンパニの強打もすごいのですが、おもちゃ箱をひっくり返したような雑然さがあるのはナゼでしょう?
大太鼓の重低音もなかなか良い音です。個々の楽器は良い音を出しているのですが、全体としての一体感が乏しい。いろんな表現を試しているのも評価できるし、いい加減な演奏をしているわけではないと思うのですが、乱暴に聞こえてしまいます。

第二部、なんとなく吹きやすい音量で吹いている感じで静寂感は全くと言って良いほどありません。
爆演と言うにふさわしい演奏です。指揮者のコントロール下にない爆演のような気がします。みんなやりたい放題!

ちょっと聞くに堪えない演奏でした。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ
第一部:大地礼賛
序奏、モノラルで遠い音場感で、古臭い感じがします。バスクラはほとんど聞えません。トランペットも奥まっています。
春のきざし、かなり粗い弦。ホルンも歪んでいるようです。トランペットはとても軽いです。相当ザラついた響きで美しくありません。
誘拐、この曲でこれだけ古臭い録音は致命的です。
春の踊り、速いテンポであっさりと進む弦。続く木管やホルンもとてもあっさりとしています。ティンパニが入ってからも速いテンポでサラリと軽く進みます。
敵の都の人々の戯れ、ナローレンジでトランペットの高音も気持ちよく響きません。
賢者の行列、伸びやかさが無く、何かに押さえつけられているような感じがします。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、最後はかなり必死な演奏になりました。

第二部:いけにえ
序奏、速いテンポでほとんどインテンポで進みます。
乙女たちの神秘なつどい、金属的なビオラ。ピツィカートからも速いテンポで弾むようです。凄く速いテンポで駆け抜けた11拍子。
いけにえの賛美、とにかく古臭い録音が何とも言えません。
祖先の呼び出し、かなり速いテンポです。スタッカートぎみに演奏するトランペット。とにかく速くて落ち着きがありません。
祖先の儀式、

いけにえの踊り、古いラジオから聞えてくるような音で、作品の巨大な編成などは全く伝わって来ません。現在聞くバランスとはかなり違う演奏です。
古臭い録音が致命的で、巨大な編成からの濃厚な色彩などは全く伝わって来ませんでした。
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