カテゴリー: シベリウス:交響詩「フィンランディア」名盤試聴記

シベリウス 交響詩「フィンランディア」

シベリウスの「フィンランディア」は、フィンランドの国民的な象徴として愛されている、壮大な交響詩です。

フィンランドの魂を歌った名曲

  • フィンランドの自然と人々: フィンランドの広大な自然、厳しい冬、そして自由を求める人々の姿を音楽で表現しています。
  • 民族の誇り: 19世紀末、ロシア帝国の支配下にあったフィンランドの人々は、この曲に自分たちの誇りと希望を重ね合わせました。
  • 自由への願い: 抑圧された状況下で生まれたこの曲は、自由への切なる願いを込めています。
  • 力強いメロディー: 力強いメロディーとオーケストラの壮大な響きは、聴くものの心を打ち震わせます。

曲の構成と聴きどころ

  • 荘厳な序奏: 静かに始まり、徐々に高揚していく序奏は、聴くものの心を掴みます。
  • 民族的な旋律: フィンランドの民謡を思わせるような旋律が、郷土への愛着を深めます。
  • クライマックス: 力強いコーラスとオーケストラの合奏によるクライマックスは、聴く者に感動を与えます。

たいこ叩きのシベリウス 交響詩「フィンランディア」名盤試聴記

レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★★
暗く悲しみがこみ上げるような重い響きの序奏。木管に続く弦がマルカートぎみに一音一音刻みつけるように演奏します。感情を込めて歌うオケ。ティンパニも強く入ります。Allegro moderatoの僅かにくすんだ金管。細身のホルン。Allegroのフィンランディア賛歌は人数があまり多くは無い感じで発音もはっきりとしています。静かにはじまりますが、次第に力強く国民の結束を呼びかけるような歌でした。最後は合唱も加わって壮大で力強く終わりました。

フィンランドでは第二の国歌と言われる曲で、ヘルシンキpoにとっては十八番でしょう。感情の込められた演奏で、フィンランディア賛歌も次第に力強くなり、最後も壮大で力強いものでした。

コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
長い音をクレッシェンドして重苦しい雰囲気を演出していますが音そのものは明るく良く鳴っています。木管に続く弦は軽くアクセントを付けています。悲しみがにじみ出ます。Allegro moderatoはゆったりとしたテンポですが、カラヤンの演奏ほど遅くはありません。Allegroは力強いホルン。見事に揃った弦のアンサンブル。感情を込めて歌うフィンランディア賛歌。トゥッティの見事な充実した響きです。最後はボストンsoとの録音のようなせっかちにはならず堂々したバランスの良い終結でした。

明るい響きでしたが重苦しい雰囲気や悲しみを上手く演出した序奏。Allegroからの力強いホルンや精度の高いアンサンブル。感情を込めたフィンランディア賛歌。トゥッティのロングトーンの充実した響き。どこを取っても満足いく演奏でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★★
少し奥まっていますが、充実した響きです。重苦しい弦。どっしりとした安定感があります。ロシアの圧政に苦しむ重苦しさがとても良く表現されています。テンポが速まって力強い演奏になります。フィンランディア賛歌はあまり粘らずにあっさりと演奏されます。最後は輝かしく勝利の歓喜に溢れています。

とても描写力のある演奏で、場面場面の表現がとても上手く説得力のある演奏でした。若干奥まった音場感でしたが、トゥッティの厚みなどはさすがにベルリンpoだと感じさせられました。
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ネーメ・ヤルヴィ指揮 イェーテボリ交響楽団

ヤルヴィ★★★★★
速めのテンポで振幅も大きく表現の豊かな序奏。木管や弦も重苦しい雰囲気があります。Allegro からはさらに速いテンポで快活な表現でとても積極的です。フィンランディア賛歌はロシアの圧政に苦しむ悲哀を歌うような陰のある演奏です。金管も明快に鳴り響き、ティンパニのクレッシェンドも強烈な感情がとてもこもった演奏でした。

速めのテンポで、大きな表現と明快に鳴り響く金管による振幅の大きな演奏で、感情のこもった演奏でした。
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山田 和樹指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 東京混声合唱団

山田 和樹★★★★☆
良くブレンドされた伸びやかな響き。木管も美しく繊細です。感情のこもった美しい歌もとても良いです。軽く伸びやかな金管もとても美しいです。フィンランディア賛歌は合唱の人数が少なく、大きなまとまりがありません。

力の入った演奏では無く、力を抜いて軽く演奏した感じでしたが、歌も美しく伸びやかでとても良い演奏でした。
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ユッカ=ペッカ・サラステ指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

サラステ★★★★☆
奥まったところから響く少し明るい響き。不安感のある弦。トゥッティでも咆哮することは無く、軽くスマートな演奏です。客席に陣取る合唱による、フィンランディア賛歌は感情が込められて一体感のあるとても美しい歌唱です。最後も力みの無い軽く涼しげな響きでした。

てともすっきりとした涼しげな演奏で、重苦しさから勝利に満ちた輝かしい変化はあまりありませんでしたが、スマートな演奏は魅力がありました。
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ロリン・マゼール指揮 ピッツバーグ交響楽団

マゼール★★★★☆
なだらかな音の動きの序奏。ゆっくりと悲哀を感じさせる木管と弦。たっぷりと感情のこもった演奏です。Allegroはゆっくりとしたテンポで浮き上がるホルン。アゴーギクを効かせて歌うフィンランディア賛歌。最後は壮大でした。

マゼール独特の言葉は悪いですが、こねくり回すような変化球の演奏でしたが、作品が大曲ではないのであまり気になりませんでした。良い演奏だったと思います。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★
ギラギラとして明るく力強い序奏。続く木管も豪華な響きです。弦はアクセントはありますが、レガートの中にアクセントのような感じであまりはっきりと区切る感じではありませんでした。Allegro moderatoはゆっくりと一音一音区切るように演奏します。Allegroに入ると急にテンポが速くなります。分厚い弦。いろんなパートが交錯するオーケストレーションを上手く表現しています。フィンランディア賛歌はあまり感情を込めずに淡々と演奏します。弦の賛歌はとても美しくうっとりします。シンバルはオケの編成に比べると少し径が小さいような感じがします。最後は豪華絢爛な圧倒的な響きで終わりました。

冒頭から明るい響きで、圧政に苦しむような苦悩の表現あありませんでした。Allegro moderatoの遅いテンポは少し間伸びした感じでした。ベルリンpoの機能は見事でしたし、豪華絢爛な響きも圧倒的でしたが、やはりシベリウスの音楽にしては分厚過ぎるように感じました。

フランツ・ウェルザー=メスト指揮 グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団

ウェルザー=メスト★★★★
地底から湧き上るような重厚な冒頭の響きは見事です。悲しみが溢れる木管と弦。サラリと爽やかに響く金管。テヌートぎみのホルン。フィンランディア賛歌もあまり感情を込めた歌ではなくあっさりと演奏しました。最後もバランスの取れた冷静な響きで終わりました。

あまり大きな振幅は無くあっさりと軽い演奏でしたが、響きは充実したものでした。
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マリス・ヤンソンス指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団

ヤンソンス★★★★
豊かな残響に広がる悲痛な響き。まとまりの良い演奏です。Allegro moderatoで一気にテンポが速くなります。シャープなトランペット。Allegroでさらにテンポが速くなって歯切れ良く爽やかな響きの演奏になります。フィンランディア賛歌はあまり感情を込めずあっさりと演奏します。明るく爽やかな響きで締めくくりました。

冒頭の悲痛な響きとAllegroからの歯切れの良い爽やかな響きとの対比もなかなか良かったです。ただ、Allegro moderatoからのテンポが少し速過ぎるような感じがしました。
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オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★
豊かな残響を伴って、遠くから響いてくるような序奏。悲哀に満ちた木管と弦。感情を表に出した大きな表現ではありませんが、内面からジワジワと込み上げてくるような表現です。Allegroからの金管は抑えられて軽く演奏していますが所々でかなり強く演奏することもあります。フィンランディア賛歌は速めのテンポであっさりと演奏しています。

大きな表現はありませんでしたが、内面から湧き上るような表現でしたが、フィンランディア賛歌はとてもあっさりとした演奏でした。
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コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★
底光りするような冒頭ですが、少し響きが軽い感じで重苦しさはありません。木管に続く弦はほとんどアクセントを付けずに演奏しました。Allegro moderatoは派手さの無い金管。暗く緊張感のある弦。Allegroは浅い響きの薄っぺらいホルン。トライアングルがかなり外側を叩いているのかジーンと響きます。あっさりとしたフィンランディア賛歌。最後はせっかちなテンポであっけなく終わりました。

渋い響きですが、重苦しさはあまり無く、表現もあっさりとしていて、最後もせっかちなテンポであっけなく終ってしまいました。

シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団

デュトワ★★★
デッドで浅い響きの冒頭。Allegro moderatoからのくすんだ金管。豊かな表情の弦。Allegroからはあまり金管の咆哮は無く軽く演奏しています。ゆったりと歌い、伸びやかで美しいフィンランディア賛歌。

フィンランディア賛歌は伸びやかで美しかったのですが、金管が欧米のオケのように爽やかに鳴りきらないもどかしさがありました。
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ホルスト・シュタイン指揮 NHK交響楽団

ホルスト・シュタイン★★
速めのテンポですが、木管や弦の悲しい表現は十分です。ホルスト・シュタインらしい渋い響きです。フィンランディア賛歌もあっさりとした表現で、さっさと進みます。勝利感に満ちた開放的な最後にはならず、渋い響きのまま終わりました。

速めのテンポであっさりとした表現で、響きも渋いものでした。
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ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★
若干音を短めに演奏する金管。トランペットが強く入って来ます。途中一旦音量を落とす部分もありました。豪快に演奏される弦には重苦しさはありません。明快に鳴り響く金管。ホルンに重なるフルートもはっきり聞えてこの当時のマルチマイクの録音の異常なバランスの部分もあります。フィンランディア賛歌の合唱は鎮魂の祈りのような厳粛さは無くかなり強く、絶叫するような感じもあり、しっとりと穏やかな感じではありません。最後は力強く豪快な響きで終わりました。

明快に鳴り響く金管。絶叫するような合唱など、穏やかな部分は無く、終始押しまくるような演奏で、高性能なオケを見せ付けるような演奏に感じました。
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ヴァシリー・ペトレンコ指揮 ロイヤル・リバプール・フィルハーモニー管弦楽団

ペトレンコ★★
奥まっていて少し浅い響きです。あま感情が込められていない木管と弦ですが、テンポの動きが沈んだ感情を表現しているようです。咆哮するホルンですが、少し雑な感じがします。フィンランディア賛歌は速めのテンポであっさりと演奏されます。最後もかなり力の入った響きで終わりました。

かなり力の入ったトゥッティで、振幅の大きな演奏でしたが、少し雑な感じがありました。
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パーヴォ・ヤルヴィ指揮 エストニア国立交響楽団

ヤルヴィ★★
とても軽い響きの冒頭。その後の木管、弦もあっさりと進みます。Allegro moderatoに入るととても落ち着いたテンポで確実に進みます。感情移入よりもアンサンブルの確実さを優先したようなカチッとした演奏です。フィンランディア賛歌は男声合唱のみのようです。祈りのような穏やかさはありません。最後はゆっくりと広大な広がりのある演奏で終わりました。

オケの技量を考えてのテンポ設定なのか、遅めでカチッとしたアンサンブルで、柔軟な動きはありませんでした。フィンランディア賛歌も祈りのような荘厳さ無くちょっと残念でした。
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アリ・ラシライネン指揮 ラハティ交響楽団

ラシライネン
奥まったところから響いてくる序奏。テヌートぎみに演奏するトランペット。あっさりとした木管。Allegroからも軽く演奏される金管。フィンランディア賛歌もとてもあっさりとしていますが丁寧な演奏です。作品に対する思い入れや共感はほとんど無いように感じます。

丁寧な演奏ではありましたが、終始軽くあっさりとした表現で、作品への思い入れや共感は感じられませんでした。
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フリッツ・ライナー指揮 シカコ交響楽団

ライナー
かなりデッドでトロンボーンが浮いた感じの響きです。いかにも古臭い音がする弦。異様に近いトランペット。Allegro からは勇壮に進みます。フィンランディア賛歌はアゴーギクを効かせて歌います。

表現がどうのと言う前に録音が悪くて、作品の美しさが伝わって来ません。
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