カテゴリー: 管弦楽曲

ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」2

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

コリン・テイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★☆
重量級の春の祭典です。コンセルトヘボウの濃密な音色も生かされた演奏です。
第一部、冒頭からコンセルトヘボウの美しいホールトーンを伴った木管楽器の響きに魅了されます。とても伸びやかな柔らかい響きがたまらない。
春のきざし、とても重い弦です。ふくよかなホルン。豊かな響きです。フィンガーシンバルも鮮明に録れています。どの楽器も明快に録れています。豊かな響きがありながら細部まで聞こえるとても良い録音です。
音の一つ一つに力があって、リズムのキレが悪いことは決してないのですが、力があって重いです。
春のロンド、テンポは遅く大太鼓の音もものすごく重い。ドラは金属系の撥で叩いているような音がします。強烈です。
敵の都の人々の戯れ、ここでも登場する一つ一つの楽器の存在感が抜群です。音に力があるのです。また、このオケのアンサンブル能力の高さもすごい。
大地の踊り、リアルな音で、オケが一体になって迫ってきます。重い音なのですごいエネルギー感です。

第二部、濃厚、春の祭典には音が重すぎるかもしれません。この音で「ペトルーシュカ」は考えにくいです。「火の鳥」だったら深みのある良い演奏になると思います。
いずれにしても、尋常な音で演奏されてはいません。かなりショッキングな春の祭典が展開されています。
色彩感がとても豊かですがホールトーンも伴っているので、原色のキツイ色合いではない。
11拍子からかなりテンポが速くなりました。スピード感もオケが一体になっているので見事!
祖先の呼び出しも速いテンポで小気味良い。
同じ曲でも、指揮者が違うと、どうしてこんなにも空気を変えることができるのでしょうか。不思議なくらい違いがあります。

デイヴィスの指揮の場合でもオケの集中力をすごく引き出していて、緊張の糸がピーンと張り詰めています。ですから、静寂感と少し冷たい空気を感じることができます。団員の気持ちが緩んでいると絶対に感じることができない空気感です。
これほど重い春の祭典は、誰にでもお勧めできる演奏ではありませんが、いくつかの演奏を聴いた人には絶対に聞いてほしい一枚です。

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、かなり締まったファゴット。とても静まった空気感です。克明に動く各々の楽器がマルチ録音を印象付けます。
春のきざし、バネのように弾む弦。短く強いホルン。ティンパニもバネがあります。とにかく色んな楽器が手に取るように分かる克明な演奏です。金管は激しく咆哮することは無く、案外冷静です。
誘拐、容赦なく咆哮するホルン。トロンボーンも強烈です。
春の踊り、重く尾を引くコントラバス。速めのテンポでさっさと進みます。元気の良い演奏です。ティンパニは三つの音をはっきりと分けて演奏しています。ピッコロの後もスピード感のある演奏です。
敵の都の人々の戯れ、屈託無く伸び伸びと鳴り響く金管。木管も統率が取れていて見事なアンサンブルです。
賢者の行列、本来なら音量が落ちるはずのホルンが全く音量を落とさずに演奏します。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、全ての音が前に出で来て色彩のパレットを広げたようです。

第二部:いけにえ
序奏、大太鼓が入ると崩れ落ちるように重くなります。いろんな楽器の動きが明快に分かります。
乙女たちの神秘なつどい、艶やかで色気のあるビオラ。アルトフルートからは速めのテンポでさっさと進みます。引き締まったホルン。ゆっくりと重い11拍子。
いけにえの賛美、色彩が豊かでバネのように弾むリズム。
祖先の呼び出し、ティンパニはあまり激しくありません。ファゴットもあっさりとしています。
祖先の儀式、弱奏と強奏の差がとても大きいです。トゥッティのエネルギーは巨大です。
いけにえの踊り、ティンパニがミュートされているのでリズムがとても先鋭です。研ぎ澄まされたトロンボーン。

マルチマイクでいろんなパートがとても鮮明で、とても元気な演奏でした。色彩感も豊かで、シカゴsoのパワーもさすがでした。

ピエール・ブーレーズ/クリーブランド管弦楽団

ブーレーズ★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、ブーレーズの演奏だと無機的な感じがしますが、思った以上に音楽的でメロディも美しいですし豊かな表現です。奥から鋭いトランペット。
春のきざし、あまり密度が濃く無い弦。トランペットは凄く鋭いです。とても冷静で狂気のような感じはありません。
誘拐、金管はとても良く鳴っています。
春の踊り、ゆっくりと引きずるような弦。大きく歌うホルン。鋭利な刃物のように鋭い演奏で、温度感も冷たい感じです。
敵の都の人々の戯れ、ゆったりと大きく構えた余裕さえ感じる演奏です。弦もトランペットも余裕しゃくしゃくで演奏しています。
賢者の行列、ホルンはあまり音量を落とさずそのまま演奏しています。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、ここもゆっくりとしたテンポで鋭いトランペットが鳴りますが、堂々としています。

第二部:いけにえ
序奏、第一部の序奏のようにとても豊かな表現です。くっきりと浮かぶクラリネット。
乙女たちの神秘なつどい、ささくれ立ったようで美しくないビオラ。僅かに金属的な響きのヴァイオリン。かなりの勢いで演奏される11拍子。
いけにえの賛美、鋭くはじけるトランペット。途中でテンポが遅くなりました。
祖先の呼び出し、颯爽とした金管。ティンパニはあまり激しくありません。
祖先の儀式、緊張感のあるヴァイオリン。あまり激しくないホルン。
いけにえの踊り、鋭い響きとリズムも切れのある鋭い演奏です。容赦なく立ち上がる金管のザクザクとした響き。

鋭い響きで、突き刺さるような演奏でしたが、歌うところはしっかりとした表現で、メリハリのある良い演奏でした。ただ、ブーレーズは常に完璧にコントロールしているので、オケが突き抜けて来るようなことは全くありませんでした。
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アンドレス・オロスコ=エストラーダ/hr交響楽団

エストラーダ★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、ゆっくりとしたテンポで豊かな表情で歌うファゴット。Ebクラもメリハリの効いた表現です。
春のきざし、短く重い弦。鋭いトランペット。ティンパニは軽いです。明るいホルン。内声部の旋律が浮かび上がります。
誘拐、バランスの良い充実した響きです。ここぞと言うところで金管が突き抜けてきます。大太鼓もズシンと響きます。
春の踊り、木管から弦に移るところでテンポを落としました。マスの響きの一体感もとても良いです。最後でテンポを落としました。
敵の都の人々の戯れ、ティンパニはやはり軽いです。とても落ち着いていて熱狂するような咆哮はありません。
賢者の行列、抑えたホルン。チューバの方が強いです。ギロが強く響きます。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、とても堅実で安定した演奏で危なげなところが全くありません。

第二部:いけにえ
序奏、柔らかく繊細な表現。
乙女たちの神秘なつどい、一つ一つの楽器の密度が高くね透明感も高い響きでとても美しいです。大太鼓の重量感のある響きを伴った11拍子。
いけにえの賛美、凄い躍動感ど情報量です。音楽にも勢いがあって力強いです。
祖先の呼び出し、ティンパニの頂点でズシンと来ます。ファゴットはテヌートでした。
祖先の儀式、伸びやかで色彩感も豊かです。強く咆哮するホルン。
いけにえの踊り、情熱的で、オケも献身的に表現しています。最後のクレッシェンドは凄かったです。

強烈な咆哮はありませんでしたが、かなり積極的な表現で、密度の濃い演奏を聞かせてくれました。オケも上手く安定感もあって良い演奏でした。
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スタニラフ・スクロヴァチェフスキ/ミネソタ管弦楽団

スクロヴァチェフスキ★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、離れたところから柔らかく響くファゴット。ゆったりとしたテンポで伸びやかな演奏です。艶やかなEbクラ。ビリビリとしたトランペット。
春のきざし、重量感のある弦。落ち着いたテンポです。トランペットは軽く演奏しています。ティンパニも軽いです。激しい咆哮はありません。
誘拐、響きが引き締まっていて、見通しが良く色んな音が聞えてくる感じがします。
春の踊り、速いテンポの弦。ティンパニが入った部分では、普通聞えないビーと言う響きが聞えます。
敵の都の人々の戯れ、弾むようなホルン。弦もティンパニも弾みます。トランペットのフラッターが強調されます。
賢者の行列、ホルンはかなり抑えています。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、トランペットが鋭く、その間にホルンが浮き出てきます。

第二部:いけにえ
序奏、美しい弦。ふくよかなホルンと色彩感も豊かです。
乙女たちの神秘なつどい、細身で艶やかなビオラ。速めのテンポであっさりと進むアルトフルート。文字通り叩きつけるような11拍子。
いけにえの賛美、オケはスクロヴァチェフスキに鍛えられたのかかなり上手いです。
祖先の呼び出し、速いテンポで、ティンパニはあまりクレッシェンドしません。シャープで鋭い金管の響きは心地良いものです。
祖先の儀式、あまり強くないホルン。弱音部分は静寂感があります。
いけにえの踊り、鋭い金管と硬い音のティンパニが演奏を引き締めています。

鋭くシャープな演奏で、贅肉を削ぎ落としたような演奏はとても心地良いものでした。ミネソタoもかなり鍛えられていて上手かったです。
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ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」3

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

レナード・バーンスタイン/ロンドン交響楽団

icon★★★★
LPの当時は4チャンネル録音だったと思います。残響成分が多すぎて細部が分からないような録音でしたが、CDになって余分な成分をカットしたようで、聞きやすくなりました。
春の祭典を音楽的に聴かせてくれています。1974年の録音

第一部:大地礼賛
比較的速いテンポであっさりとした序奏です。かなり奥まったところから鋭い音のトランペット。
春のきざし、録音のせいか密度の薄い弦。ホルンはバリバリとした音です。録音が捉えきっていないだけで、かなり強烈なffを吹いているのは伝わってきます。ダイナミックレンジは狭い録音です。ティンパニも大太鼓も流れているようであまり強烈ではありません。ふくよかなホルン、シャープなトランペット。これも録音のせいか?ズレて聞こえるところもありますが・・・・・・・・・。
誘拐、かなり強烈に演奏しているようなのですが、録音がライヴ過ぎて角が取れてしまっています。
春の踊り、コントラバスが強いですが、重量感はありません。金管のホルタメントも強調されていますが、突き抜けては来ません。
敵の都の人々の戯れ、抉るように激しいホルン。ティンパニも凄いです。
賢者の行列、トランペットも強烈になりました。
大地の踊り、いろんな楽器が入り混じって混濁します。元々の録音の狙いもあったのか、リズムよりもメロディを歌うことに重点を置いているような演奏に感じます。残響成分が多いので、リズムのキレはどうしても悪くなってしまうので、激しいリズムの隙間にあるメロディを感情込めて歌っている演奏です。春の祭典がこんなにメロディアスな作品だったのかと驚かされます。

第二部:いけにえ
序奏、冒頭は速めであっさりしています。聞こえないほど遠くにいるトランペット。特に第二部ではアゴーギクも効かせて表情豊かです。残響成分が多いので金管の響きも気持ちいいし、メロディも歌うので、心地よい演奏になっています。
惜しむらくは、録音がもう少し良ければ、もっと評価された演奏だったと思います。
乙女たちの神秘なつどい、美しく歌うビオラ。色彩感もかなり鮮明です。ホルンもオーボエも歌います。勢いのある11拍子ですが、重量感はありません。
いけにえの賛美、スピード感のある演奏です。かなり乗って演奏している感じで楽しそうです。
祖先の呼び出し、ファゴットのメロディも哀愁に満ちて泣かせるほどです。無機的に演奏されることが多い春の祭典ではありえないことだと思いますが、それをやってのけたバーンスタインも凄いです。
祖先の儀式、打楽器を伴ったホルンはかなり強く演奏しています。
いけにえの踊りでは、ティンパニも思いっきり引っ叩いていますし、金管も吹きまくっているようですが、聞き手側に音が届いてこないので、凶暴な演奏には聞こえません。

録音の仕方によっては全く違う印象になったかも知れませんが、私にとっては、良い演奏でした。

イゴール・マルケヴィッチ/スイス・ロマンド管弦楽団

マルケヴィッチ★★★★
1982年のライブ録音

第一部、ライブとは思えない静寂感。虚飾を取り去ったようなシャープな演奏で、実に整然としています。
金管がかなり控えめな録音で、春のきざしのトランペットやホルンは、遥かかなたにいるようです。
ティンパニは近い。ドラは薄いものを使っている。
ゴージャスな響きはなく、むしろ簡素で作品の素の部分を聞かせてくれているようです。
金管がかぶってこないので、ffでも他のパートの動きも分かる。ライブでこれだけのバランスを保って演奏する能力は凄く高いものだと思います。
春の祭典の狂ったような高揚感もありません。しかし、これだけ複雑な音楽を整然と演奏されるとア然としますね。

第二部、速めのテンポであっさり。とにかくムダな表現をあえて極力避けているようです。
金管の咆哮も感じとしては十分伝わってくるのですが、音圧としては来ないので、ダイナミックレンジが狭い感じで、春の祭典のCDとしては、聴き易いです。
「無駄なものを削ぎ落とすとこんな作りになっているのか」と、今まで聞いていたグラマラスな春の祭典は何だったんだろうと考えさせられます。
ん~。何なんだろう。春の祭典に爆発するエネルギーや豪快に鳴る抜群に上手いオケの演奏を聴きたい人にはお勧めできません。

春の祭典を聞きあさっている人には一度聞いてみて欲しい演奏です。

マイケル・ティルソン・トーマス/ボストン交響楽団

icon★★★★
贅肉を削ぎ落とした、筋肉質でシャープな春の祭典です。若きトーマスの意欲作!

第一部、暗闇の中からロウソクの炎の立ちのぼるようなファゴットの美しいソロ。やはり良い演奏には静寂感があります。ピリッとした緊張感が漂っています。
春のきざし、一体になって締まった弦楽器。暴発しない金管が演奏をさらに引き締めている。大太鼓ももやもやした響きは残さない。小さめの楽器を使っているのでしょうか。
春のロンド、ここで少し穏やかな雰囲気になります。でも、ホルンは細身の音です。ティンパニが強烈に叩きつける部分もありますし、金管の咆哮もありますが、きちんとコントロールされていて、暴走は有り得ません。このあたりは、指揮者の能力の高さをうかがわせます。

第二部、とても繊細な弦楽器の演奏です。整然と整った演奏。この曲を混濁させることなく、聴かせる事ができる指揮者はそう多くはいないと思います。その意味では、マイケル・ティルソン・トーマスの能力の高さは凄いと思います。
極端に突出する部分もないので、この演奏がすごく印象に残るものにはなりにくいかもしれませんが、春の祭典を見事に整理して整然と演奏したことは、実はもの凄いことなのだと思います。

デッドなホールで奏者もあまり音を長く残さずに演奏して、モヤモヤするのを極力排除して、曲の構成を突きつけてきたような演奏でした。ボストンsoはそんなに上手いとは思いませんが、かなり頑張って演奏しています。

ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

メータ/1978★★★★
メータが颯爽とニューヨークへ乗り込んで最初の録音です。

第一部、若干クレッシェンドぎみに入るファゴット。静寂感があって、この先を期待させる序奏です。
登場する楽器それぞれがとても表情豊かです。
トランペットが変わったミュートをつけているような音です。
弦がコントラバスの重い音も伴って力強い音です。ホルンが鳴りきらないような変な音。
トランペット、トロンボーンは強力です。ティンパニも良い音で切り込んできます。テューバも含めた金管が炸裂します。打楽器も躊躇無く来ます。
緩い部分はゆったりとしたテンポでメリハリもあり聞けます。
いろんな打楽器が聞こえて凄い最後。やはり、これぐらい鳴り切らないと面白くないです。

第二部、少し音が粗いかもしれません。繊細な弦を聴くことはできないです。でも、場面場面の表現は上手くできているので、聞き入ることができます。オケのメンバーの集中力も高いようで、ピリッとした空気感を感じることができます。
私は、評論家がどんな評価をしようが、無音時に、このピリッとしてちょっと冷たい空気感が無い演奏は良い演奏だとは思えません。CDであっても、その場のメンバーが作り出す空気がピリッとしていたり、なんとなくザワついていたりすることがあります。
オケのメンバーが集中して、一つのことを成し遂げようとする空気はCDにも収録されるものです。
その面では、この演奏には十分な集中力があるし、実際オケの発する音にも方向性が感じられます。
ホルンは全体を通して独特の音です。ビーっと言う感じの鳴り方ではありません。割った音ではなく、太い音がします。
ティンパニが締まった良い音で気持ちが良い!この演奏では、テューバが随所で良い役割を果たしています。
ホールが少し金属的な響きを持っているようで、木質の柔らかい残響ではありません。

この演奏は、メータとニューヨーク・フィルが新たな門出に期待を込めて、お互いの力を出し尽くした演奏だと思います。

マイケル・ティルソン・トーマス/サンフランシスコ交響楽団

トーマス★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、クレッシェンドして始まるファゴット。ゆっくりとしたテンポでねっとりとした表現です。Ebクラがスタッカードぎみです。鋭く突き刺さるトランペット。
春のきざし、フワッとしていて奥まって静かな印象の弦。テヌートぎみに演奏する部分がありました。キリキリと鋭く響くトランペット。
誘拐、とても軽く演奏している感じで、力を振り絞るような感じはあまりありませんが、ここぞと言うところでは絶叫します。
春の踊り、速めのテンポであっさりと進む弦。ここでも金管の絶叫はかなり凄いです。
敵の都の人々の戯れ、軽いティンパニ。トランペットは鋭く響きますが、他のパートはそんなに強くはありません。
賢者の行列、トランペットは強烈です。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、軽いですが、鋭くシャープな演奏です。怒涛のようなエネルギーはありません。最後大太鼓が大きくクレッシェンドしました。

第二部:いけにえ
序奏、繊細な表現。重い大太鼓。とても少ない人数で演奏しているように小さくなります。トランペットはすごく弱いです。
乙女たちの神秘なつどい、離れたところでサラサラとした響きのビオラ。オフぎみで淡白な響き。大太鼓のバネのように弾む11拍子。
いけにえの賛美、大太鼓がとても強調されている感じです。
祖先の呼び出し、速めのテンポでファゴットも弾みます。
祖先の儀式、遠くて静かです。アルトフルートは歌いました。硬いシンバルが強い中ホルンが響きます。
いけにえの踊り、ミニチュアのように小さい音場感ですが、ティンパニが強烈にリズムを刻みドラも金属的な響きで入って来ます。トランペットも強烈です。ティンパニの音色は抜群に良いです。弦は控えめですが、金管はかなり強いです。最後のティンパニが独特なリズムを刻む部分の音色や金管の突き刺さるような演奏はとても良いです。

とても小さい音場感でした。ほとんどは抑え気味が軽く演奏されましたが、ここぞと言うところでは強烈な表現もありました。ただ、都会的でシャープな感じは常にありました。
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ヴァレリー・ゲルギエフ/ロンドン交響楽団

ゲルギエフ★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、凝った表現のファゴット。あまり強くないトランペット。春のきざしへ向けて加速します。
春のきざし、そのままの勢いで入ります。テンポが速いので、弦は小じんまりしています。ティンパニもあまり強く叩きません。速いテンポで慌ただしいです。
誘拐、速いテンポでオケが全開になることはありません。
春の踊り、オーボエはたっぷりとテンポを落としてねっとりと演奏されます。ドラはとても軽い音です。リミッターがかかったように金管が奥まっています。
敵の都の人々の戯れ、濃厚な色彩ですが、金管の咆哮はありません。
賢者の行列、金管は強く演奏しているようですが、録音の問題か、あまり突き抜けて来ません。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、ドラがとても軽いので、重量感を感じません。

第二部:いけにえ
序奏、ゆらゆらと揺れ動きながらとても静かな演奏です。トランペットが入る前に長い間がありました。トランペットは弱いです。
乙女たちの神秘なつどい、ゆっくりと演奏されるアルトフルート。詰まったように重量感の無い11拍子。
いけにえの賛美、バチッと入る大太鼓。
祖先の呼び出し、テヌート演奏が続きます。ファゴットは豊かな表現です。
祖先の儀式、
いけにえの踊り、テヌートぎみで柔らかく演奏されるトロンボーン。間があったりしました。トロクボーンのグリッサンドをゆっくり演奏しました。最後の音はキーロフとの録音と同じように長く演奏しました。

独自の表現が散りばめられた演奏でした。ただ、キーロフとの録音のような衝撃はありませんでした。
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フランソワ=グザヴィエ・ロト/レ・シエクル

ロト★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、僅かに細い響きのファゴット。トランペットはあまり聞えません。
春のきざし、細く軽い弦とそれに一体となったホルン。ファゴットの合間の弦はかなり音量を落として演奏しました。トランペットやホルンもあまり突き抜けては来ません。
誘拐、ホルンは今の楽器のように豊かにビリビリとは鳴りません。弦の強弱の変化はとても統率が取れていて見事です。
春の踊り、鋭く抉るような金管。リピートがあるのでしょうか?普通は通り過ぎる部分でリピートがありました。
敵の都の人々の戯れ、
賢者の行列、ホルンはかなり弱く演奏しています。トランペットも独特の音色です。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、古楽器による演奏ですが、現代の楽器との演奏と大きな違いは感じません。

第二部:いけにえ
序奏、ヴァイオリンのソロがあまり聞き取れません。暗闇と緊張感を感じさせる演奏です。
乙女たちの神秘なつどい、とてもソフトなアルトフルート。11拍子の前で大きな間を空けて、ティンパニ中心の11拍子でした。
いけにえの賛美、凄いスピード感です。
祖先の呼び出し、ここも速いです。とても歯切れの良い金管。
祖先の儀式、とても静かです。
いけにえの踊り、間をあける部分がありました。

初演当時の楽器での演奏とのことでしたが、ベートーヴェンからの100年の進歩は大きく、現在の楽器と大きな違いは感じませんでした。見た目ではホルンがロータリーではなくピストンなくらいです。間を空けることが何度もありロトならではの研究の成果なのかも知れません。全体としては爆発するような強いエネルギーはありませんでしたが、整った演奏だったと思います。
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ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」4

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン/オランダ放送室内フィルハーモニー管弦楽団

ズヴェーデン★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、ショルティの演奏に比べるとかなりマイルドで溶け合った楽器。鋭いトランペット。少し静寂があってからファゴットが入りました。
春のきざし、あまり激しさは感じない弦。トランペットも抑えています。マルチマイクの克明な演奏に比べるととてもマイルドで平板な感じがします。金管はあまり強いエネルギーはありません。
誘拐、録音によるものなのかも知れませんが、あまり激しい咆哮は無く大人しい感じです。
春の踊り、ゆっくり目の弦。大暴れすることなく落ち着いて整った演奏です。
敵の都の人々の戯れ、オフな録音のためかも知れませんが、限界まで演奏するような必死な演奏ではありません。
賢者の行列、やはり冷静です。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、きれいなタンギングのトランペット。

第二部:いけにえ
序奏、丁寧に表現が付けられています。トゥッティの爆発はありませんでしたが、弱音の表現はなかなかです。
乙女たちの神秘なつどい、濃厚ではありませんが、色彩の変化がとても良いです。ヴァイオリンもホルンも美しい。ティンパニが目立つ11拍子。
いけにえの賛美、ブレンドされた響きなのですが、その分原色の濃厚な色彩はありません。
祖先の呼び出し、ティンパニはあまり強打しません。
祖先の儀式、静寂感のあるピイツィカート。ホルンの激しい咆哮。
いけにえの踊り、ブレンドされた響きはとても良いものです。ティンパニも硬めで強い音です。

ブレンドされた美しい響きでマイルドな演奏でした。オケは限界まで咆哮することは無く、落ち着いた演奏で、強烈な個性も感じませんでした。
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ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー/ロンドン交響楽団

icon★★★
一部、極めて常識的な出だし。ゆっくりな春の兆しです。予想したような爆演ではありません。全体的にゆっくりとしたテンポで音楽が進んで行きます。
金管の咆哮も録音のせいか控え目に響きます。整った演奏です。ロンドンsoはそつなく演奏しています。ロジェベンがオケに限界を要求するような場面はありませんでした。

二部、冒頭はあまり静寂間はありません。
淡々と音楽が進んで行きます。可も無く不可もなくというような演奏です。
11拍子はゆっくりでした。テンポが全体にゆったり目だった他は、そんなに特徴のある演奏ではないような感じがしました。

オトマール・スウィトナー/シュターツカペレ・ドレスデン

icon★★★
第一部、すごく雰囲気のあるファゴットです。ゆったりとした弦のピチカート続く弦は一音一音克明に刻みます。作品にふさわしくエネルギッシュですが、折り目正しく端正な演奏はスゥイトナーらしいです。とてもアンサンブルが整っていて整然としています。しかし、ここぞと言う場面での咆哮はすさまじいものがあります。硬質なティンパニが響きにモヤモヤしたものを残さず演奏を引き締めています。

第二部、比較的大きめ極端に絞った印象のない音で開始しました。アルトフルートがホールの響く音がとても良い雰囲気です。11拍子の前のミュートしたホルンとトランペットはすごく弱く演奏しました。11拍子へ入る前に間を置きました。ティパニが刻むリズムがとても克明です。ここでもファゴットがとても良い響きです。

この時代にこれだけ整然とした演奏ができていたことに驚きます。

クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団

アバド★★★
第一部:大地礼賛
序奏、豊かな残響で柔らかいファゴット。バスクラが強調されることも無く、とても自然なバランスです。
春のきざし、左右いっぱいに広がる弦。ショルティの演奏ほど克明ではありませんが、楽器の動きは良く分かります。美しいホルン。トランペットは突き抜けて来ません。
誘拐、ここぞと言うところでエネルギーの爆発が無くて拍子抜けします。
春の踊り、ティンパニが柔らかい音でリズムがはっきりと聞えて来ません。
敵の都の人々の戯れ、ホルンやトランペットが膜を突き破ってくるように鮮明に響きます。すっきりと爽やかな響きです。
賢者の行列、ギロがはっきり聞えます。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、かなり強くは演奏していますが、限界近い咆哮はありません。

第二部:いけにえ
序奏、豊かで伸びやかで、緊張感はありません。
乙女たちの神秘なつどい、豊かに歌うビオラ。11拍子の前のドラが強く入りました。
いけにえの賛美、濃厚な色彩と強烈なトランペット。
祖先の呼び出し、大きなクレッシェンドはしないティンパニ。静かなファゴット。
祖先の儀式、速めのテンポで前へ前へと進みます。良く動いて豊かな表情です。強弱の振幅が大きいホルン。
いけにえの踊り、ティンパニが柔らかく、全体の印象をソフトにしているように感じます。

柔らかいティンパニが象徴するように全体に柔らかくふくよかな演奏で筋肉質で贅肉をそぎ落としたような精悍な演奏ではありませんでした。
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イゴール・マルケヴィッチ/日本フィルハーモニー交響楽団

マルケヴィチ★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、Ebクラの登場あたりから少しテンポが遅くなっていますが、表現はあまりありません。デッド近いトランペット。
春のきざし、かなりデッドで薄い響きです。トランペットが不協和音でぶつかり合うのも良く分かります。大太鼓は強烈に叩きました。オケはかなり頑張っています。
誘拐、ベタッとした大太鼓。奥行き感があまり無く、楽器の動きは克明に分かります。
春の踊り、少し速めの弦。金管はかなり頑張っているようですが、デッドなので、響きがマットで輝きがありません。
敵の都の人々の戯れ、デッドなので、楽器の動きはとても良く分かるのですが、全体の響きが融合しないのと響きを伴った大きな感じが無いのが残念です。
賢者の行列、チューバがかなり強いです。ドラも強烈です。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、金管が吠えると弦が聞えなくなります。大太鼓が最後に大きくクレッシェンドしました。

第二部:いけにえ
序奏、冒頭からトランペットが聞えます。弱音部分は音が太らないので、細部まで克明です。
乙女たちの神秘なつどい、サラッとしていて艶やかさの無いビオラ。ピツィカートに入る手前で大きくテンポを落としました。硬い打撃の11拍子。
いけにえの賛美、デッドなので騒々しいです。
祖先の呼び出し、しっかりクレッシェンドするティンパニ。
祖先の儀式、速めのテンポでデッドな響きをカバーするような演奏。アルトフルートも速いテンポです。金管の短い音が残響が少ないので、とても短く「ヘ」をこいたような感じです。
いけにえの踊り、速いテンポですが、弦は引きずるように長い音で演奏します。ティンパニはとても良い音です。

オケはかなり頑張っていました。デッドな録音でかなり細部までさらけ出された演奏でしたが、あまりにもデッドで奥行き感の全く無い浅い音場感と残響が伴わないので、音が短く間が持たない感じもありました。
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シャルル・デュトワ/モントリオール管弦楽団

★★
序奏はすごく良い雰囲気なのですが、デュトワに荒れ狂うような演奏を求めるのはムリなのでしょうか。

第一部、とても雰囲気のある始動で、これから始まることを期待させる演奏です。色彩感豊かな音色です。
春のきざし、弾むように短めに演奏される弦。咆哮する金管。美しい音で鳴っています。
ふくよかなホルン、シャープなトランペット。なかなか良いのですが、デュトワの録音に共通する、低域のカットがなされているようで、低域が薄い感じがして、バランスが逆三角形に感じられて、腰高な印象になってしまいます。
オケは上手いのですが、都会的な春の祭典になっていて、洗練されすぎている印象です。泥臭さとは無縁の春の祭典です。
大変高度な演奏技術なのに、キンキンしていて、地鳴りのような底から湧き上がるようなエネルギーの爆発が感じられないのが、とても残念です。
すごく低い帯域まで録音はされているのですが、それよりも上の強いエネルギーを感じる部分が削がれているようで、魅力のない録音にしてしまっているようです。

第二部、弱音部分は良い雰囲気を持っています。静寂感もあるし。しかし、強奏の部分がシャープすぎる。これは、私の春の祭典に対する既成概念が強すぎるからかもしれません。
気持ちの良い音で決まるティンパニ!何も演奏には不足はないのですが、録り方が・・・・・・。
最後の部分でもティンパニと大太鼓が上手く組み合わさっているはずなのですが、大太鼓はほとんど聞こえません。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★
1978年のライブ録音。

第一部、さすがに絶頂期のベルリン・フィル。どのパートもライブとは思えない上手さを見せつけます。
低域から深い響きの弦の刻み、ライブなので響きはデッドですが、その分楽器の動きが克明に表現されます。
カラヤンのスタジオ録音では有り得ないようなバストロンホーンの突出があったり、やはりライブは面白い!スピード感がすごくあります。テンポも速いのですが、それについて行く、ベルリン・フィルのメンバーの演奏のスピード感がとても良いです。
春のロンドではかなりテンポを落として、じっくり歌っています。やはりライブだと、こういったあたりの感情移入など、スタジオ録音では聞けない面を聴く事ができて、カラヤンも人間らしい演奏するんだなあと嬉しくなります。
カラヤンだから爆演にはなり得ないですが、それでも十分にオケを鳴らした気持ち良い演奏です。
あのスタジオ録音のよそ行き演奏は何だったのか。あれはひどすぎる。

第二部、艶やかなバイオリンのソロ。さすがです。11拍子はかなり遅い。
マルケヴィッチのライブのような余分な音を削ぎ落としたようなシャープさはありませんが、カラヤンらしく磨かれた演奏を聴かせてくれます。

これを聴いてしまうと、カラヤンの春の祭典に関しては、スタジオ録音は聞きたくなくなります。

ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団

マゼール★★
第一部:大地礼賛
序奏、くっきりと浮かび上がるファゴット。残響が少ないのか少し寂しい感じがします。バスクラも強調されず自然です。トランペットはあまり強くありません。
春のきざし、これが自然なのかも知れませんが、柔らかく一音一音くっきりとはしない弦。ティンパニも軽く、ほとんど絶叫のような叫びはありません。とても落ち着いた演奏で静かです。ウィーンpoとの録音の引きずるような重さや濃厚さとは対照的な演奏です。
誘拐、ティンパニが凄く軽く叩きました。金管もとても軽いです。あまりにもおっとりした演奏で、作品の本来のイメージとはかなり違う演奏です。
春の踊り、音量は控えめで寂しい感じさえします。ティンパニは三つの音をはっきりと離して演奏しています。金管のポルタメントの部分で大きくテンポを落とします。
敵の都の人々の戯れ、テンポの動きがありますが、演奏はやはり軽いです。
賢者の行列、ホルンもチューバも遠くにいて近くでは鳴りません。トランペットなどは強く演奏しているようですが、音は迫って来ません。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、冷静で整ったアンサンブルです。とても静かです。

第二部:いけにえ
序奏、大太鼓が入っても軽いです。トランペットはかなり弱いです。
乙女たちの神秘なつどい、伸びやかに歌うビオラ。アルトフルートから少しテンポが速くなります。かなり締まったホルン。11拍子の前で間をあけました。11拍子はあまり重くありませんが、一つ一つしっかりとゆっくりと演奏しました。
いけにえの賛美、弦を中心に音楽が作られていて金管が飛びぬけて来るようなバランスにはなりません。
祖先の呼び出し、ゆっくりとしていますが、伸びやかではありません。
祖先の儀式、アルトフルートも遠くです。ホルンもそんなに強くはありません。
いけにえの踊り、遠いオケで、音があびせ掛けられるような演奏には全くなりません。マゼールも全く冷静に演奏している感じです。

咆哮とは程遠い演奏で、軽く冷静な演奏でした。演奏がそうだったのか、録音がそうだったのかは分かりませんが、このような演奏もありなのかも知れませんが「春の祭典」でストレスを発散したいような人には全く不向きな演奏でした。
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Olari Elts/エストニア国立交響楽団

Olari Elts★★
第一部:大地礼賛
序奏、クレッシェンドして入ったファゴット。楽器の出入りがはっきりしていて、動きが良く分かります。Ebクラはスタッカードぎみでした。トランペットはあまり強くありません。
春のきざし、勢いのある弦。トランペットが前に出てきます。危なっかしいホルン。金管の咆哮はありません。
誘拐、かなり控え目な金管。
春の踊り、硬いマレットで叩く大太鼓。
敵の都の人々の戯れ、ティンパニはあまり聞えません。ホルンも弱いです。木管がテヌートで演奏します。
賢者の行列、かなりの低域まで含んだ大太鼓。ここでもホルンは抑えています。大太鼓がズシんと響きます。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、鋭い響きのトランペット。最後、大太鼓が大きくクレッシェンドしました。

第二部:いけにえ
序奏、控えめな弦が繊細で美しいです。聞えないくらい弱いトランペット。弱音がとても味わい深いです。
乙女たちの神秘なつどい、細身ですが、とても柔らかいビオラ。弦がとても美しいです。弦のボウイングがはっきり聞える11拍子。
いけにえの賛美、荒れ狂うような咆哮も無く大人しい演奏です。
祖先の呼び出し、速めのテンポで軽く進みます。ファゴットはテヌートです。
祖先の儀式、速めで淡々と演奏されるアルトフルート。打楽器を含んだオケは凄いエネルギーですが、ホルンはそんなに強くありません。
いけにえの踊り、ここも軽い演奏でサラッと進みます。大太鼓だけが強烈です。

小さいミスは散見されましたが、全体には軽くサッと流したような演奏でした。大太鼓だけが強烈に入ってくるバランスも少し違和感がありました。
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ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」5

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

ヨエル・レヴィ/アトランタ交響楽団

レヴィ★☆
第一部:大地礼賛
序奏、あまり小細工の無いストレートな演奏です。整然としていて編成が大きくないような感じさえします。
春のきざし、やはりすっさきりとしていて小さくまとまった感じがあります。金管も咆哮はしません。
誘拐、過不足無く金管も鳴りますが、ただ楽譜通りに演奏している感じで、特徴がありません。
春の踊り、この指揮者の没個性は「復活」の演奏でも感じましたが、教科書通りの模範演奏のようで、面白みは全くありません。
敵の都の人々の戯れ、ティンパニは強いですが、他は常識的な範囲です。
賢者の行列、全て予想の範囲内で、ワクワクするような驚きはありません。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、最後は大きくクレッシェンドしました。

第二部:いけにえ
序奏、ここも特徴らしいものは無く普通に進みます。
乙女たちの神秘なつどい、淡々と、表現も無く進みます。かなりダイナミックな11拍子。
いけにえの賛美、速いテンポですが、オケは絶対に暴走はしません。常に常識的な範囲で、私には安全運転のように感じてしまいます。
祖先の呼び出し、ティンパニはかなりクレッシェンドしました。
祖先の儀式、ダイナミックに咆哮するホルン。大太鼓も重いです。
いけにえの踊り、かなり慌てたような速いテンポ。テンポは速いですが、やはり制御されて暴走は一切しない演奏です。

全く危なげない模範演奏のようなつまらない演奏でした。レヴィの個性などは全く感じませんでした。
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ピエール・ブーレーズ/クリーブランド管弦楽団

icon
第一部、雰囲気のある序奏です。美しい音で録音されています。
バランス感覚は良いのですが、ブーレーズも歳なのか、昔のような抉り出すような鋭さは影を潜めて、丸い演奏。ドラティよりは練られているけれど・・・・・・。
面白くないレベルはあまり変わらない。

第二部、なんとなく音楽が流れて行く感じで、春の祭典を聞いているとは思えないくらいです。
ここまで、過去の作品として演奏したことに価値があるのか。

私には、分かりませんでした。

アンタル・ドラティ/デトロイト交響楽団

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第一部、とても落ち着いた序奏。巨匠の風格と言うか、微動だにしない余裕が感じられます。
大人の演奏と言う感じで狂気のような部分は皆無です。とても安心して聴けるのですが、春の祭典には何かスリルのようなものを求めてしまうのは私だけでしょうか。
ゆっくりした足取りで堅実だし、手馴れているようです。
ドラティとしては十八番でもあり、演奏回数も多いのでしょう。とても落ち着いててい、スピード感がありません。金管楽器を絶叫させるようなこともありませんし、あまりにも意外性が無さ過ぎて、ちょっとつまらない。
むしろ、変に抑えられていて、開放感がありません。私などは単純に気持ちよく爆発してくれれば、それ以上は望まないのですが・・・・・(^ ^;
ドラティはこの演奏から何を伝えようとしているのか、私には全く分かりません。

第二部、ここでも特別なことは何も起こりません。テンポを速めても乗り遅れる打楽器。
ドラティは「春の祭典」を完全に過去の作品に追いやってしまったようです。しかし、ドラティ自身がこの作品を愛しているのだろうか?

全てが、中庸で危なげない。 面白くない。全然面白くない!

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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第一部、序奏、残響の少ないホールで速めのテンポで演奏されるファゴット。奥行き感があって、神秘的な雰囲気があります。
春のきざし、しっかりと刻まれる弦。ホルンは短く弱めです。とても整然としていて、泥臭さはありません。
誘拐、金管が咆哮するような強烈な表現はなく、カラヤンが絶対にオケを暴走させないように制御しているようです。
春の輪舞、この音楽の持つ凶暴さなどは一切出さずに、美しい演奏に終始しています。ベルリンpoも余裕で演奏しているように感じます。
敵の部族の遊戯、作品から距離を置いて、とても冷静に演奏しています。
長老の行進、ホルンは一人で演奏しているかのようにピッタリ合ったアンサンブルです。
長老の大地への口づけ、
大地の踊り、オケを爆発させることはなく、上品ですが、聴いていて熱くなるような演奏ではありません。

第二部、序奏、聴き手を引き付けるような静寂感はありません。あまりにも簡単に演奏していて、緊張感も感じません。
乙女の神秘的な踊り、アルトフルートも少し速めのテンポであっさりと演奏しました。美しい弦。
選ばれし生贄への賛美、オケはフルパワーではなく、とても軽い曲を聴いているような錯覚に陥ります。
祖先の召還、ティンパニのクレッシェンドも僅かでした。合間のファゴットもあっさりとしていました。
祖先の儀式、常に余力があり、必死に演奏しているような緊張感が感じられないのが不満になります。
生贄の踊り、ベルリンpoの分厚い響きも感じません。

ベルリンpoが余裕綽々で軽~く流して演奏したような、緊張感や必死さを感じない演奏で、ちょっと残念でした。

サー・サイモン・ラトル/バーミンガム市交響楽団

ラトル
第一部:大地礼賛
序奏、自然な音場感ですが、普通では聞えないクラリネットが聞えたりします。トランペットはかなり奥まっています。
春のきざし、割と静かな弦。浅いホルン。トランペットは奥で音が出てきません。ティンパニも優しいです。トゥッティでも音は引っ込んでいて強弱の変化に乏しいです。
誘拐、音量も抑え気味なのか、音場感も狭く箱庭を見ているような感じです。
春の踊り、平板で淡々と進んで行きます。ドラも軽い音です。金管は全く前に出てきません。
敵の都の人々の戯れ、遠くから響いて来るような金管。とても軽くてスケールが小さい演奏に感じます。
賢者の行列、ホルンは抑えられて、チューバの方が強いです。トゥッティでも全く金管が前に出てきません。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、響きからすると金管もかなり鳴っているようなのですが、録音が全く金管を捉えていないので、演奏が小さいです。

第二部:いけにえ
序奏、漂いながら寄せては返すように強弱が変化します。トランペットはとても弱いです。
乙女たちの神秘なつどい、細かく表現が付けられています。テンポも動いて生き生きとしています。ゆっくりと、弦のボウイングが良く聞える11拍子。
いけにえの賛美、重く引きずるようなテンポです。
祖先の呼び出し、かなりクレッシェンドするティンパニ。
祖先の儀式、淡々と演奏されるアルトフルート。金管が入るととたんに奥へ引っ込んでしまいダイナミックな演奏にはなりません。どうしてここまで抑えなければいけないのか分かりません。
いけにえの踊り、ゆっくりとしたテンポで金管を抑えたバランスはここでも一緒です。ティンパニも軽いです。チューバは強いのですが、トランペットは極端に抑えたバランスです。

トランペットを極端に抑えた録音のバランスで、野生の粗野な迫力などは全く伝わって来ませんでした。
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小澤 征爾/ボストン交響楽団

小澤
第一部:大地礼賛
序奏、速めのテンポでとてもあっさりとした演奏です。バスクラなどはほとんど聞えないくらいです。トランペットはチビッたような感じです。
春のきざし、かなり低い音も伴った弦。トロンボーンもチビッたような煮え切らない感じの演奏です。思い切りオケを鳴らさないので欲求不満になりそうです。
誘拐、速いテンポで金管を思い切り鳴らさない演奏で、煮え切りません。
春の踊り、Ebクラとバスクラのメロディはゆっくりでした。ピッコロが入る前に間がありました。
敵の都の人々の戯れ、テンポが速めで雑然とした感じになりました。
賢者の行列、大太鼓はとても軽いです。チューバがとても強いです。キューっと締まったトランペット。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、大太鼓が入る部分は弦が引きずるような演奏です。埃っぽいトランペット。

第二部:いけにえ
序奏、
乙女たちの神秘なつどい、カサカサしてあまり美しくないビオラ。ホルンがゆっくり目で明るく美しい演奏でした。ゆっくりと弦のボウイングがはっきり聞える11拍子。
いけにえの賛美、色彩感はあまり濃厚ではありません。ほとんど単色のような感じさえします。
祖先の呼び出し、あまりクレッシェンドしないティンパニ。
祖先の儀式、ゆっくりと確実な歩みです。ミュートしたトランペットはかなり抑えています。
いけにえの踊り、抑えたティンパニ。ここでも中途半端に金管を鳴らす部分があって、スッキリしません。

とてもユニークな演奏でしたが、チビッたような金管の煮え切らない演奏は理解できませんでした。
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ロリス・チェクナヴォリアン/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

チェクナヴォリアン
1977年の録音
第一部、ビリビリ言うバスクラ、あまり緊張感のある出だしではなかった。Ebクラはかなり強く表情豊かに演奏されたけれど、トランペットは控えめでした。
春のきざし、ホルンが異常に近くにいてバフバフ言っています。
不思議な感覚にさせられる微妙なテンポの動きがあって、一瞬トランス状態になったような錯覚を感じました。
場面の終わりで演奏が緩むことがあって、不思議な演奏です。チェクナヴォリアンの癖なのか、フレーズの終わりや場面の終わまで、気を抜かずに演奏していないので、ダレた印象があります。
春のロンドの弦楽器のアンサンブルが乱れます。何か全体的に緊張感の乏しい演奏に感じてしまうのですが・・・・・・。

第二部、打楽器の重いロールが闇を演出するのに非常に効果的です。ゆっくりとした足取りで演奏されますが、どうも緊張感がなくて、聞き手に迫ってくるものがない。
スコアを見ていないので、厳密なところは分かりませんが、かなりアンサンブルは乱れているように聞こえます。
爆演を組み合わせたCDですが、明らかにマータに軍配が上がります。
祖先の儀式のティンパニの音色も演奏になじまない、個人的にはもっと締まった音を望みたいです。アルトフルートのブレスもはっきり分かるし、どうなっているのでしょう?
ホルンは絶叫しますが、その他のパートがバラバラで、爆演なら何でも良いわけではない。
いけにえの踊り、リズムが流れてしまっていて、オケのメンバーが拍をしっかり感じていないようで、終始締まりの無い爆演だったなあ。

ジェームズ・レヴァイン/メトロポリタン・オーケストラ

icon
第一部、トランペットの音の処理が独特です。渇き気味の音で潤いがありません。
春のきざしからは激しい演奏なのですが、雑な感じを受けます。表情もつけているのですが、音の扱いが丁寧じゃない印象を受けます。
金管の咆哮も凄いし、ティンパニの強打もすごいのですが、おもちゃ箱をひっくり返したような雑然さがあるのはナゼでしょう?
大太鼓の重低音もなかなか良い音です。個々の楽器は良い音を出しているのですが、全体としての一体感が乏しい。いろんな表現を試しているのも評価できるし、いい加減な演奏をしているわけではないと思うのですが、乱暴に聞こえてしまいます。

第二部、なんとなく吹きやすい音量で吹いている感じで静寂感は全くと言って良いほどありません。
爆演と言うにふさわしい演奏です。指揮者のコントロール下にない爆演のような気がします。みんなやりたい放題!

ちょっと聞くに堪えない演奏でした。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ
第一部:大地礼賛
序奏、モノラルで遠い音場感で、古臭い感じがします。バスクラはほとんど聞えません。トランペットも奥まっています。
春のきざし、かなり粗い弦。ホルンも歪んでいるようです。トランペットはとても軽いです。相当ザラついた響きで美しくありません。
誘拐、この曲でこれだけ古臭い録音は致命的です。
春の踊り、速いテンポであっさりと進む弦。続く木管やホルンもとてもあっさりとしています。ティンパニが入ってからも速いテンポでサラリと軽く進みます。
敵の都の人々の戯れ、ナローレンジでトランペットの高音も気持ちよく響きません。
賢者の行列、伸びやかさが無く、何かに押さえつけられているような感じがします。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、最後はかなり必死な演奏になりました。

第二部:いけにえ
序奏、速いテンポでほとんどインテンポで進みます。
乙女たちの神秘なつどい、金属的なビオラ。ピツィカートからも速いテンポで弾むようです。凄く速いテンポで駆け抜けた11拍子。
いけにえの賛美、とにかく古臭い録音が何とも言えません。
祖先の呼び出し、かなり速いテンポです。スタッカートぎみに演奏するトランペット。とにかく速くて落ち着きがありません。
祖先の儀式、

いけにえの踊り、古いラジオから聞えてくるような音で、作品の巨大な編成などは全く伝わって来ません。現在聞くバランスとはかなり違う演奏です。
古臭い録音が致命的で、巨大な編成からの濃厚な色彩などは全く伝わって来ませんでした。
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レスピーギ 交響詩「ローマの噴水」

レスピーギの交響詩「ローマの噴水」(Fontane di Roma)は、イタリアの作曲家オットリーノ・レスピーギによる交響詩で、1924年に発表されました。この作品は、ローマの街にある4つの有名な噴水をテーマにして、それぞれの噴水が異なる時間帯に見せる美しさと雰囲気を音楽で描き出しています。レスピーギはこの作品で、光、色、音を巧みに表現し、聴き手に視覚的なイメージを喚起させる力を発揮しました。

各楽章の内容と特徴

「ローマの噴水」は4つの楽章から成り、それぞれが異なる時間帯のローマの噴水の情景を描写しています。

  1. 夜明けの「ヴァッレ・ジュリアの噴水」
    曲の始まりは、朝の静けさと爽やかさを感じさせる穏やかな音楽で、ローマ郊外にあるヴァッレ・ジュリアの噴水が夜明けの光に輝く様子を表現しています。弦楽器の柔らかい音色と、ホルンやフルートによる鳥のさえずりが、徐々に目覚める自然の静寂と生命の息吹を感じさせます。
  2. 朝の「トリトンの噴水」
    次の楽章は、朝のトリトンの噴水で、華やかで生き生きとした音楽です。トリトンが水を吹き上げる様子を表現したトランペットやホルンのファンファーレが特徴で、ローマの人々が活動を始める朝のエネルギッシュな雰囲気が伝わります。ここでは、音楽が急激に展開し、都会の活気や力強さが感じられます。
  3. 昼の「トレヴィの噴水」
    第3楽章では、トレヴィの噴水が真昼の陽光に照らされてきらめく様子が描かれます。この楽章は最も壮麗で、優雅なメロディが際立ち、トレヴィの噴水の圧倒的な美しさと水のきらめきを表現しています。水が湧き出し、きらきらと輝く光の効果を、管弦楽の音色とリズムで生き生きと表現しています。
  4. 夕暮れの「メディチ荘の噴水」
    最終楽章は夕暮れから夜へと移りゆくメディチ荘の噴水で、最も静かで神秘的な音楽です。遠くに聞こえる牧歌的な旋律や、静かな響きが、日が沈みゆく荘厳な雰囲気を醸し出しています。特に、徐々に暗くなる風景や静寂を増す空気感が、低音楽器の響きと共に表現され、やがて夜の静けさとともに音楽が消え入るように終わります。

音楽的な特徴と評価

レスピーギは、色彩豊かなオーケストレーションを得意とし、この作品でも精緻で多彩な音響効果が随所に現れます。光と影、水の流れやきらめきといった視覚的な要素を、巧みに音楽で表現しているのが特徴です。レスピーギは各楽器の音色を活かして噴水の煌めきや流れを再現し、聴き手に視覚的なイメージを思い起こさせます。

「ローマの噴水」は、レスピーギの代表作として非常に高く評価されており、彼が描写音楽の達人であることを示す一作です。また、この作品は「ローマ三部作」(「ローマの松」「ローマの祭り」と共に)の一部としても有名で、ローマの美しい風景や歴史的な情景を称えるシリーズ作品の一つとして愛されています。

4o

たいこ叩きのレスピーギ 交響詩「ローマの噴水」名盤試聴記

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

icon★★★★★
夜明けのジュリアの谷の噴水、朝靄のなかから噴水が浮かび上がるような描写。いろんな音が聞こえてきます。鮮やかな色彩感です。
朝のトリトンの噴水、枯れたようなトランペットの響き。曲によって響きを変化させるフィラデルフィアサウンド!
昼のトレヴィの噴水、バストロンボーンの躍動感あるリズム、セピア色の写真を見ているかのようなトランペットの響き。名コンビの面目躍如です。
たそがれのメディチ荘の噴水、生き生きとした木管の表情。繊細な弦。すばらしい演奏でした。

ジュゼッペ・シノーポリ/ニューヨーク・フィルハーモニック

シノーポリ★★★★★
夜明けのジュリアの谷の噴水 あまり弱音を意識せずに演奏しやすい音量での開始です。テンポは速めです。
朝のトリトンの噴水 ふくよかなホルン。トゥッティでは金属系の打楽器を強調せずに渋い響きでした。シンバルも柔らかい良い音です。
昼のトレヴィの噴水 金管の古めかしい響きがとても作品に合っています。シノーポリも途中でテンポを僅かに速めました。頂点を過ぎたあたりのトロンボーンとテューバの響きが印象的です。木管楽器も太い響きで音楽に安定感を与えています。
たそがれのメディチ荘の噴水 弦合奏も分厚い響きです。フルートも太い音です。作品の描写よりもローマの歴史を感じさせてくれる演奏でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
夜明けのジュリアの谷の噴水 凄く抑えられた弱音で開始される弦。早朝の薄明かりをイメージさせる木管。静寂感があって美しいです。
朝のトリトンの噴水 ゆっくりとしたテンポで伸び伸びと演奏されるホルン。眩いばかりの色彩感です。
昼のトレヴィの噴水 ここもゆったりとしていて、オケの見事な引きを堪能できます。テヌートで演奏されるトランペットも非常に美しいです。音の洪水のように溢れ出し、オケの機能を満喫できます。
たそがれのメディチ荘の噴水 夕暮れのたそがれもとても良く表現されています。ゆっくりとしたテンポでとても丁寧に描かれています。
薄暮から眩い日の出から、音の洪水のような眩い色彩感から、夕暮れのたそがれまで、見事な表現でした。

イシュトヴァン・ケルテス/ロンドン交響楽団

ケルテス★★★★★
夜明けのジュリアの谷の噴水、速めのテンポですが、とても良く歌います。
朝のトリトンの噴水、 朝日の眩さを十分に表現しています。
真昼のトレヴィの泉、かなり激しく咆哮する金管。強烈にあふれ出す音の洪水です。
黄昏のメディチ荘の噴水、夕暮れの寂しさもとても良く表現しています。振幅の大きな表現と、描写もなかなかでとても良い演奏だったと思います。
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アントニオ・パッパーノ/サンタ・チェチーリア国立音楽院管弦楽団

パッパーノ★★★★★
夜明けのジュリアの谷の噴水、ゆったりと一音一音とても丁寧な演奏です。さらにテンポを落とすところも多くあります。これだけ作品に共感した歌を伴った丁寧な演奏は初めてです。
朝のトリトンの噴水、 強い眩さはありませんが、落ち着いています。朝を感じさせるフルート。一つ一つの音にとても細やかな神経が行き届いていて、生命力を感じさせる演奏です。
真昼のトレヴィの泉、一転して速いテンポになりますが、朗々と演奏するトランペット。ここでも生命観を感じさせる壮大な演奏が続きます。
黄昏のメディチ荘の噴水、夕暮れを感じさせるイングリッシュホルン。どのパートも実に良く黄昏を表現しています。消え入るような弱音も集中力があってとても良いです。
一つ一つの音に細心の注意をしながらとても行き届いた演奏でした。だからと言ってスケールが小さくなることも無く、とても豊かな表現と壮大な頂点を聞かせてくれました。見事な演奏でした。
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リカルド・ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団

icon★★★★★☆
夜明けのジュリアの谷の噴水 弱音の弦楽器の丁寧な演奏から、木管のソロ。歌があります。
朝のトリトンの噴水 トゥッティの眩いばかりの色彩感がすばらしい。
昼のトレヴィの噴水 躍動感のあるテンポで音楽が進みます。途中でテンポを少し速めます。まさに音の噴水のように色彩豊かな音楽です。
たそがれのメディチ荘の噴水 たそがれ感が上手く表現されています。
すばらしい演奏でしたが、ちょっと無難な感じも残りました。

アルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団

トスカニーニ★★★★★☆
夜明けのジュリアの谷の噴水、速めのテンポですが、キリッと引き締まっています。微妙にテンポが動いて表現も豊かです。
朝のトリトンの噴水、 ナローレンジですが、眩さは感じます。
真昼のトレヴィの泉、 色彩感は決して豊かではありませんが、湧き上るような力強さは見事です。オケも当時の最高レベルだったことは容易に想像できます。
黄昏のメディチ荘の噴水、夕暮れの寂しさもとても良く表現しています。モノラルであることを除けばバランスやオケの技術などは現在の演奏と遜色無いものだと思いました。
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シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

デュトワ★★★★★☆
夜明けのジュリアの谷の噴水、このコンビらしい透明感の高い響きで、水彩画のような淡い色彩でスマートな演奏です。伸びやかで繊細です。
朝のトリトンの噴水、大騒ぎすることも無く紳士的で爽やかな美しい演奏が続きます。
真昼のトレヴィの泉、ゆっくり始まってその後一転してテンポが速くなりました。かなりテンポは速いですが、オケは伸びやかに美しく鳴り響きます。
黄昏のメディチ荘の噴水、キラキラと夕日を反射する水辺のようで美しいグロッケン。ゆっくりとしたテンポでたっぷりとした表現です。夕暮れの寂しさも表現されますが、サラサラとしたとても爽やかな響きです。
緩急の変化の大きな演奏でした。ゆっくりとしたテンポの部分の表現も豊かでした。水彩画のような淡い色彩と爽やかで美しい響きが魅力的でした。
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アラン・ギルバート/ニューヨーク・フィルハーモニック

ギルバート★★★★
夜明けのジュリアの谷の噴水、 速めのテンポですが、くっきりと浮かび上がる楽器の色彩が豊かです。
朝のトリトンの噴水、 眩いばかりの色彩感。ニューヨークpoもかつての輝きを取り戻して来ているのが伺えます。
真昼のトレヴィの泉、 鋭く明快に鳴り響く金管。全開になるような感じではありませんが、熱気は感じます。
黄昏のメディチ荘の噴水、作品を必要以上に描写を強調することは無く、作品を忠実に音にした演奏のようでした。
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アンドレア・バッティストーニ/東京フィルハーモニー管弦楽団

バッティストーニ★★★★
夜明けのジュリアの谷の噴水、速めのテンポでグイグイと進みますが過不足無い表現です。
朝のトリトンの噴水、朝日の眩さはありますが、色彩感はあまり濃厚ではありません。
真昼のトレヴィの泉、シンバルが強烈ですが、他は突出する部分も無く整った演奏です。
黄昏のメディチ荘の噴水、夕暮れの寂しさはとても良く表現されています。
話題盤ですが、私には際立った演奏には感じられませんでした。整った美しい演奏ではあったと思います。
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サカリ・オラモ/フィンランド放送交響楽団

オラモ★★★
夜明けのジュリアの谷の噴水、とても大きく歌うオーボエ。クラリネットも豊かな表現です。テンポの動きがあって、大きな間を取る部分もありました。
朝のトリトンの噴水、 色彩感はあまり濃厚ではありませんが、表現は生き生きとして積極的です。
真昼のトレヴィの泉、 線が細く大きな盛り上がりにはなりません。
黄昏のメディチ荘の噴水、ここでもテンポの動きがあって、表現意欲を感じます。
テンポの動きや大きな表現などかなり積極的な演奏でしたが、真昼のトレヴィの泉の線が細く、オケが一体になった分厚い響きを聞くことはできませんでした。
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ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★★
夜明けのジュリアの谷の噴水、オーボエやクラリネットが際立っています。オーマンディはこのように主旋律を際立たせて、音楽をシンプルに分かりやすく聞かせる傾向があるように思います。
朝のトリトンの噴水、軽いホルン。小物打楽器もあまり強くは無く、眩い感じはありませんでした。
真昼のトレヴィの泉、後のRCAの録音のような老獪さは無くとても張り切った演奏で、ストレートです。
黄昏のメディチ荘の噴水、フィラデルフィアサウンドと言われた豪華な響きはまだ無く、音楽の運びも複雑さはありません。作品に正直で真面目な演奏に感じます。
主旋律が際立っていて、シンプルでストレートな演奏でした。後のRCAとの録音のような力の抜けた老獪さは無く、作品に正直で真面目な演奏だったと思います。
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ロリン・マゼール/フランス国立管弦楽団 1979Live

マゼール★★
夜明けのジュリアの谷の噴水、ゆっくりとしたテンポで豊かに歌うオーボエ。普通ではあまり聞えない旋律が表に出てきます。
朝のトリトンの噴水、 録音によるものかも奥まったホルンと金物打楽器があまり強く無く眩い感じはありません。マイルドで色彩感は乏しいです。
真昼のトレヴィの泉、 ティンパニがポンポンと響く割りに金管は遠くてあまり前に出てきません。
黄昏のメディチ荘の噴水、夕闇の寂しげな雰囲気はありますが、録音はあまり鮮明ではなく表情もあまり分かりません。
ライヴの制約からかあまり鮮明な録音では無く、金管が奥まっていて小物打楽器も鮮明ではなく描写や表現などはあまり分かりませんでした。
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シャルル・ミュンシュ/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

ミュンシュ★★
夜明けのジュリアの谷の噴水、アナログディスクの再生でスクラッチノイズがあります。遅めのテンポでさらにテンポの動きもあり、丁寧に演奏されています。
朝のトリトンの噴水、浅く軽いホルン。ここも遅めのテンポで一音一音丁寧です。
真昼のトレヴィの泉、盛り上がっても音圧が上がりません。かなり歪みっぽい感じもあります。盛り上がりに合わせてテンポも速くなります。
黄昏のメディチ荘の噴水、ここでもテンポの動きがあってなかなかロマンティックです。最後はかなりテンポが遅くなります。
ミュンシュの感情に合わせてテンポがかなり動く演奏で、なかなかロマンティックでしたが、歪みが多く盛り上がる部分で音圧を感じない録音もちょっと残念でした。
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ダリル・ワン/ヴィクトリア交響楽団

ワン
夜明けのジュリアの谷の噴水、速めのテンポですが、良く歌います。ブレスではっきりと音が途切れます。テンポの動きもあって積極的に表現しています。旋律を演奏する奏者が立ち上がって演奏しています。
朝のトリトンの噴水、浅い響きのホルン。金物打楽器は歪みっぽいです。
真昼のトレヴィの泉、オフぎみの録音でトゥッティはかなり混濁します。
黄昏のメディチ荘の噴水、静寂感や夕暮れの黄昏を感じさせるような描写は感じません。ここでもブレスで音楽が途切れます。
トゥッティで混濁する録音であまり細部は分かりませんでしたが、木管のブレスではっきりと音楽が途切れたりして、あまり優秀なオケではない感じの演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」の名盤を試聴したレビュー

ホルスト 組曲「惑星」

グスターヴ・ホルストの組曲「惑星」(The Planets)は、20世紀初頭に作曲された管弦楽作品で、各楽章が太陽系の7つの惑星にちなんで名付けられています。この曲は1914年から1917年にかけて作曲され、占星術的な性格に基づき、それぞれの惑星が象徴する特性が音楽で描かれています。ホルストの代表作であり、色彩豊かなオーケストレーションと個性豊かな楽章で聴衆を魅了し続けています。

各楽章の内容と特徴

  1. 第1曲「火星 – 戦争をもたらす者」
    激しいリズムと不協和音が特徴のこの楽章は、「戦争の象徴」とされる火星を描いています。5拍子の力強いリズムが不安感を煽り、迫力と緊張感のある音楽が展開されます。重厚で不気味な響きが、戦争の荒々しさや破壊力を表現しています。この楽章はとりわけ印象的で、映画音楽にも大きな影響を与えました。
  2. 第2曲「金星 – 平和をもたらす者」
    対照的に、金星は穏やかで美しい音楽です。柔らかな響きと温かいメロディが特徴で、平和や癒しを表現しています。管弦楽の滑らかな音色が、安らぎに満ちた空間を作り出し、戦いの後の静けさと和解を感じさせます。
  3. 第3曲「水星 – 翼のある使者」
    軽やかで速いテンポのこの楽章は、「メッセンジャー」を意味する水星の素早い動きを表現しています。高い音域の木管楽器や弦楽器が活躍し、せわしないながらも楽しく躍動的な雰囲気が漂います。
  4. 第4曲「木星 – 喜びをもたらす者」
    「惑星」組曲の中でも特に人気のある楽章で、力強く喜びに満ちた音楽が特徴です。中間部の荘厳なメロディは「我らが祖国イギリス(I Vow to Thee, My Country)」として親しまれています。このメロディは温かく、壮大で、希望と誇りに満ちた感情を呼び起こします。
  5. 第5曲「土星 – 老人の神」
    土星の楽章は、死や老いといったテーマを描き、ゆっくりとした重々しい音楽です。鐘の響きやゆったりとしたリズムが、老齢や運命の重みを象徴し、静かで敬虔な雰囲気が漂います。音楽は次第に深みを増し、内省的で哲学的な感覚を与えます。
  6. 第6曲「天王星 – 魔術師」
    風変わりで、予測不可能な雰囲気を持つこの楽章は、魔術師や奇人といったイメージを連想させます。ユニークなリズムと大胆な音響が、ミステリアスで冒険的な性格を表現しています。強烈なリズムと管楽器の鮮やかなパッセージが繰り返され、聴く者を驚かせるような楽章です。
  7. 第7曲「海王星 – 神秘主義者」
    最後の楽章である「海王星」は、神秘的で静かな音楽です。音が徐々に遠ざかるようにフェードアウトするエンディングが特徴で、遠くへ消えゆくような音響効果を用いています。神秘的で超越的な響きが、宇宙の未知の領域や深遠さを表現し、組曲全体の終わりに相応しい不思議な余韻を残します。

音楽的な特徴と影響

「惑星」は、ホルストの巧みなオーケストレーションと多様な音響効果が際立つ作品です。彼は管弦楽のすべての楽器を効果的に使い、リズムや音色、ハーモニーを巧みに操ることで、各惑星が象徴する特性やイメージを鮮やかに描き出しています。また、「火星」や「木星」のテーマは映画音楽などに大きな影響を与え、後世の作曲家たちにも多大なインスピレーションを与えました。

ホルストの「惑星」は、天文学ではなく占星術の視点で描かれているため、地球や冥王星(当時未発見)は含まれていませんが、神秘的な宇宙観と人間の感情や思想を融合させた、壮大でドラマチックな作品として、今も多くの人々に愛されています。

4o

たいこ叩きのホルスト 組曲「惑星」名盤試聴記

サー・エードリアン・ボールト/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
火星、リズムを強調したような明確な刻み、ゆったりとしたテンポ。初演者であり、5度目の録音ということもあり、堂々とした風格さえ感じる演奏です。
楽器の描きわけがはっきりしていて、色彩も豊かです。
中間部もアゴーギクを効かせて十分に歌っています。
最晩年の録音ですが、アンサンブルが乱れることもなく、色彩感豊かで、むしろ若々しささえも感じられる良い演奏です。
金星、こちらは、速めのテンポをとっています。淡々と進みますが、作品を慈しむような丁寧な演奏です。作品を知り尽くしているボールトらしく、テンポも大きく動かします。
水星、この曲も速めのテンポです。その分、この曲の愛らしさが表現されています。良い演奏と言うのは、音が立っています。このCDも音の粒立ちが良いです。
木星、こんどは、非常にゆったりしたテンポでスケールの大きな木星です。オケのメンバーが指揮者に共感している演奏は、集中力が音に現れるもので、一音一音の扱いが丁寧で、音が集まってくる。
中間部は、すっきりとあっさり淡々と演奏されています。大人の演奏だなあと思わされます。さすがに巨匠の風格です。
あっさりするところは、あれ?と思うほどあっさり、歌うところは、ねばっこく対比がしっかりされているので、聴いていて飽きない。
土星、冒頭部分では、宇宙の神秘的な様子が上手く描き出されています。クレッシェンドを伴って登場してくる金管が神々しい!後半の弦の響きも美しい。
天王星、冒頭はちょっと切れがないか?この曲にしてはちょっと重いような気が私にはします。また、この曲ではアンサンブルの乱れも少しあります。ちょっと重すぎて間延びする感じです。
海王星、CDで聴くと、オマケのようにくっついている曲のように思いがちですが、生で聴くととても重要に曲なんですね。それがなかなか2chのステレオでは再現できないのが、はがゆいところです。
細部の表情にもすごく配慮されている良い演奏です。
霧が除除にかかるようにいつの間にか入る女声合唱。これが生だととても良いのですが・・・・・。

さすがに、惑星を知り尽くしたボールト渾身の名演奏でした。ただ鳴らせば良いというようなアプローチではなく、一つ一つの曲を丁寧に描き分けた良い演奏でした。
時には、重い部分もありましたが、そんなことは軽微なことです。

ロリン・マゼール/フランス国立管弦楽団

マゼール★★★★★
火星、ゆっくりとしたテンポで一音一音確実に刻むコル・レーニョ。波が寄せるように押しては引く演奏が続きます。少し硬質なユーフォニアム。崩れ落ちるような怒涛の響き。クライマックスの豪華で溢れるような音の洪水。
金星、とても豊かで多彩な響きです。伸びやかで柔らかい響きで繊細で、静寂感もあります。
水星、動きがはっきりとしていますが、決して下品では無く、品があっておしとやかです。録音も瑞々しくてとても良いです。
木星、テンポも動きますが、強い表現は無く自然な演奏です。非常に美しい響きで、艶やかで輝かしいトランペットや瑞々しい弦など、とても素晴らしいです。中間部もテンポを落とさず自然な表現です。嫌味な表現などは無くマゼールらしく無い感じがします。最後にはスネアのロールが入りました。
土星、一音一音区切るようなフルート。あっさりと淡白なトロンボーン。速いテンポでどんどん進みます。金管のクレッシェンドはとても大きくかなりのエネルギーです。パイプオルガンはあまり強くありません。
天王星、美しい残響を伴ったファゴットや弦のリズム。濃厚な色彩で鮮やかに目の前に広がるオケ。パイプオルガンのグリッサンドの前にティンパニが突然強打しました。トランペットの絶叫のような響きもとても美しいです。
海王星、冷たさを感じさせるヴァイオリンもとても美しいです。彼方から柔らかく響いて来る女声合唱。

全く期待せずに聞きましたが、良い意味で予想を裏切るとても良い演奏でした。表現は自然でしたが、濃厚な色彩のパレットをいっぱいに広げ、豪快で溢れ出すような音の洪水や、繊細で美しい響きなど、素晴らしいものでした。
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ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

メータ★★★★★
火星、くっきりと粒だったコル・レーニョ。マルチマイクの際立った分離で左右に広がるオケ。とても大きな表現とトロンボーンの下のパートを強く吹かせているのが特徴です。色彩も濃厚で引き込まれるような演奏です。
金星、とても静かです。少しマットなホルン。テンポは速めですが、表現はこってりとしています。テンポも動いて自在な表現です。当時は何をやっても当たっていたメータが奔放に表現している印象です。
水星、速いテンポですが、雑にはならず、とても神経が行き届いた演奏です。突然ティンパニが飛び出して来ます。
木星、明快に歌う演奏が続きます。色んな楽器の動きも手に取るように分かる録音も当時の最先端です。中間部では分厚い響きで豊かで伸びやかな歌です。最後はテンポを速めて終わりました。
土星、ダイナミックレンジが広いので、とても静かに始まります。重量感と深みのあるコントラバス。短めの音でカラッとしたトロンボーンとトランペット。大きな表現で歌う木管。コンサートでは絶対に聞こえないようなリアルな音です。パイプオルガンが入る部分でも枯れた表現では無くむしろ生き生きとしています。
天王星、抑えた金管。ミュートされたティンパニ。チューバが存在感があります。色彩感が豊かで常に歌っているような楽しい演奏です。ティンパニのリズムがとても明快です。トロンボーンの下のパートが凄いです。
海王星、表現豊かなフルート。柔らかく遠くから響いて来る女声合唱。とても神秘的な合唱です。

若いメータが自由奔放に伸び伸びと表現した演奏でした。速めのテンポで色彩感がとても豊かで、積極的に描いた演奏はとても良かったです。
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アンドレ・プレヴィン/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
火星、広帯域にバランスよく録られている感じです。スケールが大きい感じです。ffでも混濁することなく良いです。
超低域も聞き取れるし、演奏もスケールが大きくてバランスも良いし、なかなか良い演奏です。
中間部はあまりテンポを落とさずに自然に進みます。
金星、細身のホルンの音が郷愁を誘います。ちょっと寂しげな感じが独特ですが、プレビンの語り口の上手さを感じます。火星のスケールの大きさと、寂しげな金星の対比がとても良いです。
水星、速めのテンポで、おちゃめな天使を描いているのでしょうか。次々に登場するソロもチャーミングです。
木星、中庸なテンポです。表情が豊かですし色彩も豊かで楽しいです。中間部のメロディは速いテンポでちょっとそっけない感じです。このCDもしっかり音が立っている。集中力もあり良い演奏です。ロイヤル・フィルはロンドンを拠点にするオケの中では一段格が落ちるような感覚を持っていたのですが、このオケも他のオケに引けを取らず上手いですね。驚きました。
土星、暗闇の中の荒涼として凍りついた土星を描いているようです。プレビンの演奏はとても絵画的な演奏で、表題を上手く表現していて、なかなか聞かせます。弦のメロディも美しい。老巨人が一歩一歩歩しかも力強く歩くような描写です。
天王星、ちょっと拍子抜けしたような冒頭でした。もうちょっとしっかり鳴らして欲しかったです。ティンパニにもう少し張りのある音色を求めたいです。この曲はアンサンブルの乱れも少しあったし、全体の中では、ちょっと不出来な一曲だったように思います。終結部はなかなか良かったです。
海王星、あまり表情がなく、平板な演奏です。

テラークは基本的にワンポイントマイクの一発録りなので、ちょっと後半の集中力が切れたのか、最後の二曲の出来は、その前の曲の表情の豊かさに比べると落ちるのが残念でした。
それでも、かなり良い演奏だったと思います。

アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団

プレヴィン★★★★☆
火星、大きな表現と濃厚な色彩感です。柔らかいユーフォニアム。他の金管はシャープです。トゥッティのエネルギー感はあまりありませんが、細部まで表現を練ってあるような聞かせどころの多い演奏です。ホルンがかなり強く咆哮する部分があり色彩感を強くしています。
金星、美しいホルン。フルートも美しいです。細く繊細なヴァイオリンのソロ。色彩の変化に富んでいてとても良い演奏です。
水星、速いテンポで活発に動き回る子供のような表現で愛らしい。
木星、ゆったりと堂々としている冒頭。テンポが速くなると活発で元気の良い演奏になります。中間部はあまり感情を込めずにあっさりと演奏します。金管はとても伸びやかに鳴り響きます。
土星、美しいトロンボーン。滑らかな弦。静寂のなかに響くフルート。一歩一歩山を登るような力強い金管。パイプオルガンの直前にはひらひらと舞うようなフルート。
天王星、硬いマレットでゆっくりと軽めに演奏したティンパニ。とても色彩感が豊かで、いろんな声部が聞えてきます。遠いティンパニに比べてスネアが凄く近いです。
海王星、意外と音量が大きく始まりました。少し離れたところから響く女声合唱ですが、遥かかなたの宇宙を感じるような漂うような柔らかさはありませんでした。

とても色彩感が豊かで、いろんな声部が聞えて来る演奏で、とても丁寧にバランスを考えた演奏でした。表現も豊かで良かったのですが、海王星の合唱に漂うような柔らかさが無かったのがとても残念です。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/フィルハーモニア管弦楽団

スヴェトラーノフ★★★★☆
火星、とても遅く重いコル・レーニョ。こってりと濃厚な表現。早くもホルンの咆哮があります。美しいユーフォニアム。ダイナミックの変化もとても大きく高カロリーな演奏です。一旦静まってもこねくり回すようなこれでもかと言うようなしつこい表現。クライマックスもかなりのエネルギーです。
金星、凶暴だった火星とは一変した柔らかく美しい表現です。火星の濃厚な表現からとてもあっさりとした爽やかな演奏になっています。
水星、速めのテンポですが、普通の演奏のようなきらびやかな感じでは無く、マットで渋い演奏です。
木星、ゆったりとしたテンポですが、火星のような凶暴な演奏ではありません。テンポの動きもあります。中間部は想像していた程歌いませんが、柔らかい演奏です。最後はかなり速くなって終わりました。
土星、ゆっくりと一音一音丁寧です。深みのあるコントラバス。巨人が一段一段階段を踏みしめて登るような力強い演奏。後半は老いて行く一抹の寂しさを鐘とパイプオルガンから感じます。とても静かです。
天王星、抑えぎみで柔らかい金管。飛び跳ねるようには弾みません。この曲ではほとんど生音を突きつけては来ませんが、最後は強烈なティンパニとトランペットでした。
海王星、濃厚な色彩で冷たい空間を描き出す木管。間接音を含まず近く強めな女声合唱。もっと空間を漂うような合唱だったら良かったのに。

こってりと濃厚な表現があったと思ったら、柔らかくあっさり爽やかになったり、渋い表現や力強い演奏だったり多彩な表現でなかなか聞き応えがありました。ただ、海王星の女声合唱が強かったのは作品のイメージに合いませんでした。
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ピーター・ウンジャン/トロント交響楽団

ウンジャン★★★★☆
火星、フワーッとして柔らかい響きで始まりましたが金管が明快に音を出します。音量を落として柔らかいユーフォニアム。叩きつけるようなリズムのクライマックス。トロンボーンもかなりのエネルギーですが、すっきりとした響きで分厚さはありません。
金星、しみじみとした表現。弦でも楽器の受け渡しでの色彩感の変化がとても良いです。
水星、ヴァイオリンが音量の変化で音色を変化させたり、とても繊細な演奏です。
木星、主役の楽器がしっかりと前に出てくるので、色彩の変化がとてもはっきりしています。中間部は音量を抑えて柔らかい演奏です。大きな表現はありませんが、色彩感の豊かな演奏で作品の魅力を上手く伝える演奏です。
土星、ゆっくりとテヌートぎみに演奏されるフルート。トロンボーンもテヌートぎみですが、あまり伸びやかではありません。トランペットもテヌートでちょっと粘着質な演表現です。
天王星、抑え気味の金管。杭を打ち込むようなティンパニ。振幅の大きな演奏ですが、スッキリとした響きで爽やかです。
海王星、とても静かにゆっくりと始まるフルートの演奏。静寂感のある繊細な表現です。柔らかい女声合唱。遠ざかって行く合唱も神秘的で美しいです。

分厚い響きはありませんでしたが、主役の楽器がしっかりと前に出てくるので、とても色彩感が豊かな演奏で、作品の良さは十分に伝わる演奏でした。

このリンクをクリックすると音源の再生ができます。 火星の後、海王星、天王星とうしろから順に再生されます。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ホルスト:組曲「惑星」の名盤を試聴したレビュー

ホルスト 組曲「惑星」2

たいこ叩きのホルスト 組曲「惑星」名盤試聴記

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

icon★★★★
火星、非常に軽い音の出だしです。あまり低音を伴っていないようなバランスです。反面、デュトワの録音に共通するシャープさがあります。
デュトワの録音に共通するバランスで、どこかで低音をカットしているような感じで、ほかのCDで聞くような、もやっとした響きは一切ありません。
ffの部分でもスッキリクリアな演奏ですが、やはり少し軽い。明晰で音が立っているので、気持ち良いです。
中間部は速めのテンポでねばるところはありません。
金星、この曲のようにマスの響きがない曲は低域をカットされていることに対する違和感はありません。ただ、高音域もものすごく伸びている感じではありませんので、弦の倍音を含んだ美しさはありません。ソロはどれも過不足無く上手いのですが、全体にすごく美しいと感動するような音色を聴かせてくれるわけではありません。
音の温度感が低くクールな演奏に聞こえます。宇宙空間の暗く凍てつくような様子は、この録音の温度感とマッチしていると思います。
水星、ちょっと素っ気無い感じがして、あまり面白く聞かせてはくれません。BGMのように流れて行きました。
木星、構築物としては、スタイリッシュでかっこいいです。とくにブラスのffを最高に気持ちよく聞けるように照準を合わせたような録音。これはこれで好きな人にはたまらないんだろうと思います。
しかし、イージーリスニングのようになってしまって、作品を聞き入るような聴き方の人には不満が残る演奏でしょう。
大音量でストレス解消には持って来いです。低域が薄いので、ご近所にもあまり迷惑がかからない!
土星、やはり、コントラバスのバランスが異常に絞られています。頂点へ向けて突き抜けてくることもなく、非常によく制御されていて、関心しますが、その分サプライズがありません。どこをとっても過不足無く、80点主義のような優等生的演奏のように私には感じられてしまいます。
天王星、冒頭のブラス、ティンパニは気持ち良いです。
海王星、・・・・・・・・・・・。

ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★★★
火星、静かな出だしです。コールレーニョのアタック音が立って聞こえます。奥行き感のある録音です。ffでもトロンボーンなどの中音域が厚く、太い音で鳴ります。低域もかなり下まで録音されているようです。
中間部はかなりテンポが遅いです。続く激しい5拍子もわりとふくよかな音で、強烈な印象では、ありません。ここからテンポの速い5拍子に移るまえにタメがあって面白い。
金星、細い音のホルンです。控えめな表現ではありますが、音楽をしている感じがあります。メータのニューヨーク時代は、だらしない演奏が多かったですが、この演奏は曲との相性も良いのか、引き込まれます。一本調子にならず、アゴーギクも効かせてなかなか良い演奏です。
水星、天使たちが戯れる様子が上手く表現されていて、メータの本来持っている多彩さを垣間見せてくれます。どうして、こんなに出来不出来の差があるようになったんだろう?
木星、派手な音作りではなく、むしろ渋目な音で、枯れた趣きがあります。アンサンブルも乱れることなく、安定しています。上手くツボを押さえた指揮で、さすがに十八番だなと思わせます。派手ではないけれど、かなり良い演奏の部類にはいると思います。ロスpo時代のハッタリの効いた演奏を期待すると裏切られますが、やはり、歳を重ねて、渋みも兼ね備えてきた演奏を味わうべきでしょう。
土星、テヌートで演奏されるフルートが独特です。息の長いフレーズ。トロンボーンのハイトーンも難なく目立たず、大人の土星を聞かせてくれます。でも、普通だと枯れた、そして、寒々とした雰囲気の演奏が多い中で、この演奏は暖色系で色彩が豊かな演奏です。
天王星、割と控えめなブラスとティンパニ。このCDはメータ/ニューヨークの残した演奏の中でも特に優れているCDの一つだと思います。パイプオルガンとオケの咆哮もなかなか良い!
海王星、ちょっと平板でオマケのような演奏・・・・・・。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

icon★★★★
火星、とても良いバランスでカッチリまとまっています。この録音もデュトワのCDと同じくどこかのもやっとするような周波数をカットしていると思いますが、デュトワのCDほど極端に削ぎ落としていないようで、違和感はあまりありません。
楽器の粒立ちも明瞭でスネアのロールも粒がきれいに録れています。
ブラスセクションが気持ちよく鳴ります。ティンパニは変にミュートされたような音で、ボコボコ言っています。スネアが近すぎるような感じです。
打楽器のバランスは録音時のセティングなどによってかなり違うものですが、このCDのスネアはどう考えても近すぎます。
金星、オーマンディのCD独特のマットな音です。マットでグラマラスなのがフィラデルフィア・サウンドなのかな?ホールトーンはあまり含まれず、楽器の生音を聞くような感じですが、ショルティ/シカゴsoのようなメタリックな音作りではないので、聴きやすい音です。小じんまりとまとまった演奏で、本当に小品と言うにふさわしい作りで、オーマンディは「惑星」を小品の集合体としてこの曲を捉えているのでしょうか?
水星、楽器の動きが手に取るようにわかる録音で、音楽を聴くよりも、オーディオ的な聴き方の方が向いているのかもしれません。残響成分が少なすぎて、音楽に浸るような感覚は残念ながらありません。
オケは上手い。ソロも見事ですが、名人芸と録音の良さを聴かされているようで、演奏に没入できません。
木星、ここでも、マットな音を聞かせるホルン。次から次から登場する名人芸には感服させられます。すごいオケです。しかし、録音が人工的すぎて自然な音楽を聴くのを邪魔しているように感じられてしかたがありません。名人芸を楽しむと割り切ればとても良いCDです。
マットでグラマラスなフィラデルフィアサウンド、極端なオンマイクで分析的なショルティ/シカゴso、低音のモヤモヤする帯域を思い切ってカットしてシャープで温度感の低い響きを作り出したデュトワ/モントリオールo、いずれも録音による操作であって、CDで聴く音がコンサートで響いているわけがないのです。多少そのような傾向はあったとしても、CDではかなり強調されています。これだけ強調することで、他のアーティストとは違ったカラーを明確に打ち出し、ファンを獲得することにもなっているのでしょうが、あまりにも行き過ぎると、アンチも出てくるわけで、さじ加減は難しいと思います。
このCDもフィラデルフィア・サウンドの極みだと思えるような音作りなので、一聴の価値はあるとは思いますが、あくまでも音を聞くものであって、音楽を楽しむCDではないと思います。
土星、マットな音が枯れた雰囲気を上手く表現していますが、逆にテンポが速めで、老いた老人が元気に行進するような変な感覚です。珍しく木管にミストーンが・・・・・。
ボールトのような壮大なスケール感や頂点へ向けての高揚感はありません。オケはものすごく上手いのですが、どうも小じんまりしていて、内へ内へと音がまとまっていく感じで、開放的に音が抜けてくるところがないので、スカッとしません。
天王星、気持ちよく鳴るブラスにバシッと決まるティンパニ!ここは気持ちが良い。左右に配置されたティンパニがミュートぎみでリズムがはっきり聞こえるので、面白い効果があります。
海王星、やはり、もっと豊かな響きがあって、横に揺れるような感じがあれば良いのですが、私には縦に揺れているような感じがして、とても神秘的には聞こえません。女声合唱も生々しすぎます。

オケは抜群に上手いし、悪い演奏ではないのですが、録音でかなり損をしているように私には思えてなりません。ちょっと残念な演奏でした。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★★★
火星、コンパクトにまとまった響きで、ダイナミックレンジはあまり大きくありません。美しいユーフォニアム。クライマックスでも余裕のあるオケ。余裕の中で整った演奏をしています。
金星、引き締まったホルン。濃厚な色彩ではありませんが、淡く美しい色彩です。テンポの変化もあって表現は豊かです。
水星、鮮明ではありませんが、キラキラと宝石を散りばめたような美しさは感じ取れます。ティンパニは硬いマレットではっきりと入って来ます。
木星、ゆったりとしたテンポでがっちりとした堅固なアンサンブルです。ふくよかなホルン。明快に鳴る金管。この当時のフィラデルフィアoの充実度を感じることができます。中間部は朗々と歌います。堂々とした演奏でとても良いです。トロンボーンの細かいパッセージも見事です。
土星、とても静かに始まり、コントラバスが大きくクレッシェンドします。ビィツィカートから速めのテンポになり、スッキリと爽やかな演奏になります。大きな頂点ではありませんが、金管は明快に鳴ります。パイプオルガンが入るあたりから人生の黄昏を感じさせる演奏です。
天王星、アクセントのある金管。ティンパニも気持ちよく鳴ります。
海王星、表情豊かなフルート。遠くから漂うような女声合唱。遠近感があってとても良い雰囲気です。

とても豊かな表現で、オケも明快に鳴る演奏でとても良かったですが、録音の制限によるのか、レンジが少し狭く若干鮮度が低い感じがあったのが残念でした。
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ジョン・ウイリアムズ/ボストン・ポップス・オーケストラ

ウイリアムズ★★★★
火星、速めのテンポで軽いコル・レーニョ。少し腰高ですが、明快にオケを鳴らして鮮やかな色彩感です。さすがに映画音楽の大家だけに演出効果は抜群で作品の聞かせどころを明快に打ち出した派手な演奏です。
金星、筋肉質のホルン。コントラストがはっきりしていて聴いていて飽きさせない演奏です。
水星、滑らかに刺激無く動くオケ。角を落としてBGMのように心地良く流れて行きます。
木星、とても軽いタッチで、力こぶを感じさせるような部分は無く、サラサラと流れて行きます。中間部は少しテンポを落として感情を込めた歌になります。明快に塗り分けられた演出効果はさすがです。最後は絶叫し、長く音を伸ばして終わりました。
土星、一転してとても静かな演奏です。弦のクレッシェンドが遠くから迫って来るようで効果的でした。トロンボーンが入るとパーッと明るくなります。フルートの表現はとても豊かでした。
天王星、少し離れた所から響いて来るような金管。ゆっくり目に進みます。テンポの変化もありますが、響きが浅く編成が小さいように感じますが、強弱の振幅はとても大きいです。
海王星、とても静かにフルートの演奏が始まります。静かに遠くから響いて来る女声合唱。オケも合唱もとても音量を落としています。

強弱の振幅やコントラストのはっきりした演奏で、聞き手を飽きさせない演奏でした。作品を面白く聞かせてくれる手腕はさすがでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ホルスト:組曲「惑星」の名盤を試聴したレビュー

ホルスト 組曲「惑星」3

たいこ叩きのホルスト 組曲「惑星」名盤試聴記

Maciej Tarnowski/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団

Tarnowski★★★☆
火星、ブレンドされた響きですが、その中からキラキラとした色彩がにじみ出ます。トゥッティでも強力なエネルギーの放出はありません。
金星、柔らかい弦の中低域。渋く艶やかなヴァイオリン。オーボエがゆっくりと歌います。ゆっくりと濃厚に描かれて行きます。
水星、速めのテンポで鮮明で明快な表現です。
木星、とても色彩感豊かなのですが、トランペットとトロンボーンの前向きラッパだけがくすんだ響きです。ティンパニはリズムがはっきりと聞き取れます。中間部は柔らかく、音量の変化もあってなかなか良い演奏です。
土星、ゆっくり一歩一歩歩くようなテンポです。柔らかいコントラバス。音程が怪しいトロンボーン。頂点になってもトランペットよりもホルンの方が強力です。
天王星、フワーッとした金管。硬質でピシッと決まるティンパニ。この曲でもホルンが強力です。打楽器はなかなか良いです。
海王星、トロンボーンの音程は本当に怪しい。凍りつくような宇宙の果ての冷たさを表現するヴァイオリン。会場を包み込むような女声合唱。最後の音量を落として消えて行くところはとても良かったです。

トランペットやトロンボーンが突き抜けることはありませんでしたが、そのほかのパートは豊かな色彩感でした。ライヴならではのキズもありましたが、良かったです。
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ブラムウェル・トヴェイ/ニューヨーク・フィルハーモニック

トヴェイ★★★☆
火星、客席で録音したような感じです。コル・レーニョはほとんど聞えません。ティンパニがボンボンと鳴ります。offぎみの金管ですが、クライマックスのトロンボーンの強烈な響きはさすがです。小節の頭にアクセントを付けて演奏しています。
金星、筋肉質のホルンが遠くから響いて来ます。冷たく温度感の低い演奏です。
水星、速いテンポですが、細部はあまり良く分かりません。
木星、サラサラとした柔らかい弦。ホルンやトランペットは強く伸びやかに演奏しています。シンバルは強烈です。柔らかくうっとりするような中間部。まさに歌い上げる感じの演奏です。ライブらしい思い切ったテンポの動きもありとても良いです。
土星、密度の薄いフルート。椅子がきしむ音が聞えます。テヌートで演奏されるトランペット。トロンボーンが物凄い強奏です。チューブラベルは金属で叩いたような音です。弦や木管は色彩感が乏しいですが、トランペットとトロンボーンは凄いパワーです。
天王星、軽い金管とティンパニ。ゆっくりと始まるファゴット。ティンパニのリズムは明快です。この曲では金管の咆哮は他の曲ほどではありませんでした。
海王星、速めのテンポで生き生きとした表情です。チェレスタはあまり聞えません。遠くから柔らかい女声合唱。遠ざかって消えて行きます。

ライブの制約の中での録音で、バランスが悪いところもありましたが、ニューヨークpoのパワーの凄さは伝わって来ました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
火星、大きくクレッシェンド、デクレッシェンドする冒頭。トゥッティのパワー感はさすがベルリンpoです。大きく歌う表現で積極的です。クライマックスでトロンボーンが飛び抜けてきたりせず、重心の低い重い響きです。
金星、細身のホルンのソロが冷たい宇宙を感じさせます。ヴァイオリンも細く繊細で美しいです。弦の合奏もとても美しい。宇宙の暗闇もとても良く表現しいます。
水星、速めのテンポですが、整然としています。とても美しい演奏です。
木星、一転して活動的な演奏になりました。大きくテンポを落とすところもありました。中間部の有名な旋律はテンポも速く少し雑な感じがしました。ダイミックです。
土星、この曲でも宇宙の暗闇の中にいる感じがあります。美しいトロンボーン。響きはドイツのオケらしい腰の重さがあります。突然強く入ってくるトランペット。トロンボーンも強烈です。もっと枯れた雰囲気があっても良いような気もしますが。パイプオルガンの重低音がずしりと響きます。
天王星、暖かい響きのブラスセクション。ゆっくりのティンパニ。やはり腰が重いです。金管などはもっとシャープに立ち上がって欲しいと思うのですが。こういった曲はやはりイギリスやアメリカのオケの方が合っているような気がします。
海王星、この曲も宇宙の暗さや凍てつくような寒さを感じさる演奏です。ハープが海王星から見える星を表しているようにきらめきます。遠くから響いてくるような女声合唱がはるかかなたの星を表現しているようです。
ヴァイオリンの繊細な美しさはありましたが、腰が重くシャープな立ち上が無く作品に合っていなかったように感じました。

サー・コリン・デイヴィス/ロンドン交響楽団

icon★★★
火星、ビート感のある5拍子です。楽器によってマイクからの距離がかなり違うような、ちょっと違和感を感じる録音です。中間部のテンポが遅くなる前の伸ばしがかなり長かった。
もやもやする低域がないので、とても聞きやすいです。ただ、5拍子を刻むスネアの大きさの割りに、他の金管が遠くにいるような感じがします。
速い部分とゆっくりな部分との対比が良い、ゆっくりな部分をかなりテンポを落としているのがライブだなあと感じさせてくれます。
金星、ゆったりと音楽に酔うことができる演奏でなかなか雰囲気があって良いです。
水星、
木星、そつなく上手いのですが、そもそもこの曲をライブで収録しなければいけなかったのか、私には疑問です。ライブを客席で聞く分には、いろんな効果があって良いと思うのですが、この曲の全体を通してライブの燃焼度がどうのこうの言う曲ではないと思うのですが・・・・・・。
それよりも、音響の構造物としての完成度の高さが問題なのではないかと思います。
だとすると、マイクセッティングに制約のあるライブよりもスタジオ録音の方が効果はあったのではないかと思うのは私だけでしょうか。
スタジオ録音のコストの問題もあったのでしょうが・・・・・・。
土星、トロンボーンのアンサンブルが綺麗です。とても遅いテンポで味わい深い演奏です。トランペットの強力な吹き伸ばしに対して、トロンボーンなどの下のブラスが負けています。
このあたりもライブならではかも知れませんね。
天王星、遠くで鳴るシンバルが美しい!なかなか白熱した演奏です。気持ちよく伸びるブラスのロングトーン!
海王星、木管の表情が豊かで弱音ながら動きがたくさん聞き取れます。女声合唱は舞台裏か?遥かかなたのイメージが良く出ています。

ジェイムズ・レヴァイン/シカゴ交響楽団

icon★★☆
火星、コルレーニョの下を演奏している低域が重く厚い。ブラスセクションが気持ちいいくらいに思いっきり鳴りまくります。ちょっと雑に感じる部分はレヴァインが指揮した演奏には必ず付き物のようです。レヴァインの指揮に精緻なものを求めるのはムリなのでしょう。ユーフォニアムは美しいし、その後のトランペットも歯切れの良い演奏です。コントラバスも唸っています。トランペットとスネアが合いません。こんな単純なミスもそのままとは・・・・・。レヴァインが指揮をすると、どこのオケの演奏でも埃っぽい演奏になってしまうのも不思議です。
金星、オケは文句なく上手いのですが、レヴァインはf方向へは音楽を作りますが、p方向へは全然ダメだと思います。静寂感が全くない。静寂感に伴ったピーンと張った冷たい空気感がないのです。
水星、速いテンポ、厚みのあるオケ。特に表情が豊かなわけでもなく、上手いオケの名人芸が淡々と進んで行きます。活発に動くオケはなかなかです。
木星、私はレヴァインとの相性が悪いのか、なぜこの演奏がレコード・アカデミー賞を受賞する演奏なのか理解できません。金管が思いっきり鳴るのはショルティも同じですが、ショルティの演奏はしっかりと制御されているのですが、レヴァインは暴走しているような感じがします。オケが全く抑えることなく豪快に鳴り響くので、色彩感も濃厚なのですが・・・・。
トランペットのブレスもはっきり分かるし、オケのメンバーが指揮者を尊敬して、自分たちのできうる限りの演奏をしようとしているとは、到底思えません。
土星、ここも静寂感は無く、演奏しやすい音量で演奏しているように感じます。金管が伸びやかに鳴る部分は確かに爽快感があるのですが、静かな部分が騒々しいのです。
天王星、伸びやかな金管。マットで詰まったようなティンパニ。絶叫する金管のパワーには圧倒されます。
海王星、ここも騒々しくて、静寂感や張り詰めた冷たい空気感はありません。女声合唱は少し距離があって良い雰囲気です。

金管が豪快に鳴り響くところは爽快感があって良いのですが、弱音も同じように騒々しく静寂感がありません。
私は、レヴァインが世界の一流オケを指揮して、それなりの評価を得ていることが理解できません。
レヴァインがミュンヘンpoの音楽監督のポストを短期間で追われたのは分かるような気がします。チェリビダッケの考えすぎとも思えるくらいの精緻な音楽作りとは正反対。こんなに考えずに指揮をする人がミュンヘンの聴衆に理解されるはずがない。
ミュンヘンpoのメンバーにしてみれば、徹底したリハを要求するチェリダッケに辟易としていただろうから、何も言わないレヴァインは組みし易い相手であったのでしょう。
そういう意味では、ミュンヘンpoのメンバーにもナメられて迎い入れられたのだと思うし、そのことが聴衆の反発を買ったのではないかと想像しています。

Valeriy Platonov/ペルミオペラバレエ劇場管弦楽団

Platonov★★☆
火星、第一ヴァイオリンが4プルトしかなく、かなり編成が小さいので、弦に対して金管が強いです。粘っこい金管の表現。凶暴なトロンボーンの咆哮。5拍子のリズムを刻むトランペットも強いです。
金星、かなり強く入るホルン。艶やかで粘っこいヴァイオリン。編成が小さいこともあって、登場する管楽器がくっきりと浮かび上がり濃厚な色彩になっています。
水星、かなり速いテンポです。ちょっと寂しくなる所もありました。チェレスタはRolandで代用です。
木星、金管が伸ばす音を押すので、ちょっと下品に感じる部分もあります。テンポは大胆に変化します。中間部は速いテンポで少し雑な表現です。
土星、静かな中に旋律が浮かび上がります。音の始末が雑なところが散見されます。金管はかなり強く咆哮します。パイプオルガンは入っていないようです。
天王星、あっさりとした金管。タメが無いのでとてもあっさりとしています。
海王星、女声合唱はあまり距離が離れた感じではありません。

金管が強くて色彩感も濃厚な演奏でしたが、音の扱いが丁寧では無く、特に音の始末で雑な部分があったのが残念でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★
火星、波打つようなコル・レーニョ。旋律もとても豊かに歌います。ユーフォニアムとはかなり違うバリバリとした響き。とても良く歌う演奏ですが、録音の古さかダイナミックレンジはあまり広くありません。後のベルリンpoとの録音のようなボッテリとした重さはありません。
金星、まだこの作品が十分に知られていなかった時代の演奏なので、今聴くとかなり個性的な表現です。宇宙の暗く冷たい感じはあまりありません。
水星、かなり速めのテンポで活発な動きの演奏です。ティンパニはあまり強く演奏されず変化があまり表現されません。
木星、控えめで穏やかな演奏ですが、やはり表現は大きいです。速めのテンポでホルンは細い響きです。中間部の弦の旋律はとても豊かに歌います。最後も涼しげな響きでした。
土星、ピーンと張り詰めたような静寂感はありません。温度感もあまり低くありません。ここでもとても大きな表現で積極的です。コントラバスのピィツィカートが強調されたり古いマルチマイクの特徴が出ています。金管が絶叫するような大きな盛り上がりにはなりません。鐘がとても特徴のある薄い鉄板を叩いたような音です。
天王星、響きが薄い金管。ティンパニはウィーンpoの特徴のある音ですが、弱いです。オケは決して全開にはならず、薄い響きです。まだ、作品がこなれていないのか、少し奇妙な部分もあったりします。
海王星、速めのテンポで音量も大きめで始まります。芯が強い女声合唱。漂うようには現れません。少しザラザラとした響きです。

とても積極的な表現の演奏でしたが、作品がこなれていないのか、少し奇妙な演奏になっている部分もありました。
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レオポルド・ストコフスキー/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

ストコフスキー★★
火星、録音年代が古いわりには、リアルなコル・レーニョ。カチッとしていて明快に鳴るオケ。速いテンポではつらつとしています。最後にドラのクレッシェンドがありました。
金星、あまり伸びやかではないホルン。木管は鮮明です。とても鮮度の高い木管ですが、他には特に個性は感じません。
水星、テンポの動きがあったりします。チェレスタがかなり大きく録られています。
木星、少し歪みっぽいですが、締りがあって鮮明な演奏です。タンブリンが入る部分は音を短めに演奏します。中間部はストレートでグイグイと前へ進みます。トランペットがザラザラした音です。
土星、かなりオンマイクで録られている木管。トロンボーンは伸びやかさがありません。速いテンポで進んでいると思ったら突然のブレーキでテンポが遅くなります。金管の上昇はかなり速いテンポで全く粘りません。その後また遅くなります。
天王星、乱暴な金管。速いテンポで攻撃的な印象の演奏です。テンポの動きや独特の表現もあります。
海王星、かなり弱く遠い女声合唱。

ストコフスキーの指揮なので、いろんなことをやってくるかと期待?しましたが、特に目立つことは火星の最後のドラのクレッシェンドぐらいで、後はテンポの動きや間を取らないところぐらいでした。表現もあまり積極的では無く、金管の乱暴な響きなどちょっと期待外れでした。
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Pablo Heras-Casado/デンマーク放送交響楽団

Casado★★
火星、静かに探るように始まりました。詰まったような浅い響きです。クライマックスでテンポを速めますが、トロンボーンは抑え気味で肩透かしです。とにかく奥行き感の無い浅い響きで、魅力がありません。
金星、ふくよかなホルン。色彩感豊かな木管。弦も美しく色彩感が豊かです。アゴーギクを効かせてたっぷりと歌うオーボエ。
水星、活発に弾む演奏ではありませんが、やはり色彩はとても良いです。フルートに独特の表現がありました。
木星、トゥッティになると飽和してしまうように音が詰まってしまう感じでマットな響きになってしまいます。中間部は広々とした空間をイメージさせる演奏でとても良いです。木管がとても生き生きとした表現です。
土星、美しいトロンボーン。トランペットもくっきりと浮かび上がります。ゆっくりとした歩みです。大きな盛り上がりにはなりません。音量を抑えている時はとても美しく濃厚なのですが、トゥッティになるととたんに詰まってしまって伸びやかさが無くなります。
天王星、硬く締まったティンパニ。短く音を切ったファゴット。シロフォンが少し慌てています。オケがスッキリと鳴りきることが無く開放感がありません。
海王星、やはり弱音では濃厚な色彩です。この演奏全体でアンサンブルの乱れは感度かありました。とても表情が豊かです。女声合唱も強めで存在感がありますが、表現力があってとても良いです。

弱音はとても濃厚な色彩で良かったのですが、トゥッティになるととたんに音が詰まったようになって伸びやかさが無くなります。何か開放されない抑圧感があってあまり気持ちよく聞くことが出来ませんでした。
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ネヴィル・マリナー/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon
マリナーといえば、アカデミー室内管弦楽団のイメージなので、このような編成の大きな曲をどのように演奏するのか、あまりイメージできません。
火星、落ち着いたテンポで、冒頭の5拍子の刻みにも強弱をつけて積極的な始まりです。この5拍子の強弱の変化がところどころにあり、旋律よりも5拍子の刻みを中心に音楽が作られているような感じです。
中間部でもティンパニのロールの強弱などもかなり強調されています。アンサンブルの乱れも散見されます。
逆に、旋律のブラスの爆発はありません。終始柔らかい音色で、ちょっと欲求不満になりそうな「火星」です。
金星、コンセルトヘボウの録音にすれば、あまり美しいホールトーンが聞かれない。普段はもっと艶やかで潤いのある響きだと思うのですが、この演奏ではあまり魅力が出ていないです。マリナーはこの大きな編成を掌握しきれていないような感じがします。
水星、速めのテンポです。なんとなく終わってしまった感じでした。
木星、音が短めです。安っぽい音のグロッケン。色彩感はとても豊かです。
土星、テンポ設定も含めて、私にはあまり共感できる演奏ではありません。
天王星、色彩感が豊かですが、やはり音の扱いなど、納得できないところが多いです。
海王星、ゆらゆらと漂うような感覚ではなく、縦乗りのようで、しっくりきません。ちょっと全曲を通して合わなかった感じは否めないです。

レナード・スラットキン/フィルハーモニア管弦楽団

スラットキン
火星、ゆったりとしたテンポですが、ねっとりとはしていません。爽やかな演奏です。イギリスのオケらしくユーフォニアムは美しいです。トゥッティはかなり抑えていて金管の爆発はありません。
金星、ふくよかなホルン。生気に溢れて生き生きとした木管。枯れた弦と色彩感豊かな木管が対照的です。テンポが自由に動いています。
水星、速いテンポですが、活発に動くようなエネルギーは感じません。
木星、ゆっくり目の演奏ですが、何か小さくまとまったような演奏で、スケール感がありません。中間部の弦も大事に置きに行ったような小さい演奏で、弓をいっぱいに使ったボウイングをしている感じがありません。
土星、とてもまとまりが良くて、飛びぬけてくる音は一切ありません。手堅くまとめている分、小さい演奏になってしまっていて、演奏に活気がありません。
天王星、とても軽い金管とティンパニ。スラットキンが何を主張したいのか全く分かりません。
海王星、透明感が高い木管。児童合唱は遠いです。

主張らしい主張の無い演奏で、小さくまとまったスケールの小さい演奏で、聞いているのが退屈でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ホルスト:組曲「惑星」の名盤を試聴したレビュー

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)

ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」は、もともとピアノ独奏曲として作曲された作品で、彼の友人である画家ヴィクトル・ハルトマンの遺作展にインスピレーションを受けて1874年に書かれました。この作品は、ハルトマンの絵画やデザインを音楽で表現しており、各楽章が異なる絵を描写しています。1922年にはフランスの作曲家モーリス・ラヴェルがこのピアノ曲をオーケストラ用に編曲し、現在ではラヴェル編のオーケストラ版が非常に人気です。

ラヴェルはオーケストレーションの名手であり、各楽器の特性を活かしてムソルグスキーの音楽を色彩豊かに再現しています。この編曲によって、「展覧会の絵」は一層の躍動感と豊かな響きを持つようになり、世界中のオーケストラで愛されるレパートリーとなっています。

曲の構成と内容

「展覧会の絵」は10曲の小品と「プロムナード」と呼ばれる間奏曲から成り立っています。以下は主な楽章の内容です。

  1. プロムナード
    展覧会を見て回る人の歩みを表現した曲で、トランペットやホルンで演奏される堂々としたテーマが特徴です。このテーマは随所に登場し、聴き手を次の絵へと案内する役割を果たしています。
  2. こびと(グノーム)
    不気味な響きが特徴の楽章で、こびとのいびつな姿や奇妙な動きを表現しています。弦楽器や木管楽器の低音がうごめくように奏でられ、不安感を煽ります。
  3. 古城
    古びた城の静寂と物寂しさを描いた曲で、哀愁漂うサクソフォンのメロディが特徴です。これはラヴェルの編曲によるもので、独特の音色が幻想的な雰囲気を醸し出しています。
  4. テュイルリーの庭
    子供たちが遊んでいる庭の情景が描かれた軽快な楽章です。軽やかなフルートと木管楽器のやりとりが、子供たちの無邪気な遊びを感じさせます。
  5. ビドロ(牛車)
    大きな牛車がのっしりと進む様子を描いており、低音の重厚なリズムが印象的です。ラヴェルは管楽器の音色を巧みに使い、牛車が遠ざかっていく様子を表現しています。
  6. 卵の殻をつけたひなどりのバレエ
    可愛らしいひな鳥の踊りを描写した楽章で、木管楽器が繊細なメロディを奏でます。小鳥がぴょんぴょん跳ね回るようなリズミカルな音楽が特徴です。
  7. サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
    2人のユダヤ人、サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレが対話する場面を描いた楽章です。厳かで威圧感のあるテーマと、対照的に小心者のシュムイレを描く不安定な音楽が対比的に展開されます。
  8. リモージュの市場
    賑やかな市場の喧騒を描いた楽章で、木管楽器や弦楽器が入り乱れて演奏され、忙しない雰囲気が伝わります。
  9. カタコンベ
    パリの地下墓地カタコンベの暗い雰囲気を描いた曲です。深く低い音が響き渡り、静かな恐怖感が漂います。幽霊の囁きや死者への祈りを思わせる静寂の中、神秘的な雰囲気が広がります。
  10. バーバ・ヤーガの小屋
    ロシアの民話に登場する魔女バーバ・ヤーガの恐ろしい小屋が描かれた楽章です。猛烈な速さで駆け巡る音楽が、小屋が脚を持って動き出す様子を想像させます。力強い金管楽器が不気味さを演出し、魔女の恐ろしさが感じられます。
  11. キエフの大門
    最後を飾る壮大な楽章で、キエフの大門が描かれています。勇壮なテーマが金管楽器で力強く奏でられ、威厳と荘厳さが溢れるフィナーレとなっています。鐘の響きやオーケストラ全体の厚みのある音色が、聴き手に圧倒的な印象を残します。

ラヴェル編曲版の特徴と評価

ラヴェルは、各楽器の特性を活かし、ピアノ曲を色彩豊かで迫力あるオーケストラ作品に仕上げました。特に「古城」のサクソフォンや「キエフの大門」の壮大な金管の響きなどが加わり、ムソルグスキーの原曲に新たな魅力を与えています。彼の編曲は「展覧会の絵」のイメージをより鮮やかにし、視覚的な美しさやドラマ性を増しています。この編曲版は、オーケストラ作品としても非常に高く評価され、今日でも世界中で愛される名作です。

4o

たいこ叩きのムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
「プロムナード」ゆっくりと輝かしいトランペット。やわらかいトゥッティ、爽やかな弦楽合奏。「こびと」速いテンポで一気に弾く冒頭。柔らかく美しいシンバル。ゆっくりと歩むような中間部。ラヴェルのオーケストレーションの色彩感の豊かさが見事に表現されています。「プロムナード」ゆっくりと柔らかいホルン。チャーミングな木管。「古城」ビィブラートをかけて美しいsaxのソロ。弦楽器の弱音も見事なアンサンブルで美しい演奏です。哀愁に満ちたファゴット。古い城の寂しげな風景を連想させる演奏です。「プロムナード」最初のプロムナードよりかなり遅いテンポでスラーで演奏されるトランペット。「テュイルリーの庭」特に表情を付けているわけではありませんが、オケの見事なアンサンブルと美しさに圧倒されます。「ビドロ」とても美しいチューバのソロ。特に高音の美しさは見事としか言いようがないほどです。「プロムナード」色彩感濃厚な木管。「殻をつけたひなの踊り」遠くで踊るような木管の動きがすばらしい。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」巨大なサミュエル・ゴールデンベルクとか弱いシュミュイレの対比も見事です。「リモージュの市場」人工的な加工をしたのではないかと思うほど柔らかいホルン。賑やかな市場の描写もすばらしい。「カタコンブ」見事に鳴り切るトロンボーン。金管のアンサンブルも絶妙です。輝かしいトランペット。「バーバ・ヤーガの小屋」生き生きとした動きがあって、色彩感も豊かな演奏です。弱音部では奥行感を感じます。「キエフの大きな門」ゆったりと伸びやかでスケールの大きな冒頭です。静寂感のある弱音部。輝かしい終結でした。

オケの上手さを前面に押し出した演奏で、色彩感もとても豊かで、カラヤンが全体の手綱をしっかりと締めた見事な演奏でした。

カルロ・マリア・ジュリーニ/シカゴ交響楽団

icon★★★★★
アドルフ・ハーセスのシャープなトランペットの音が伸びやかに響きます。
小人ではゆっくりとしたテンポで細部まで描かれています。音楽が奥ゆかしい。
古い城のサックスのソロはやはりアメリカっぽいでしょうか。デュファイエのような豊かな響きを伴った音色よりも、芯のしっかりした音です。
ゆっくりとしたテンポで十分に歌われる音楽。
この当時、名手揃いのシカゴsoのブラス・セクションのソロはどれをとっても素晴らしいです。
バレンボイムの音楽監督に就任したあたりから、この名手たちも高齢化して入れ替わり、今ではかなり落ちたと言われていますが、ショルティの時代のシカコsoは素晴らしいです。
ビドロのジェイコブスのデューバのソロの美しく聞き惚れました。
ジュリーニはほとんどの場面をゆったりとしたテンポで描いて行きます。
オーケストラ・ショウピースのようなこの曲はシカゴsoにとってはうってつけの曲だと思いますが、まだショルティの指揮では聴いていません。
ジュリーニの奥ゆかしい演奏になれてしまうと、ショルティのあられもない演奏にギョっとさせられるかも知れません。
カタコンブの金管の分厚いハーモニーもさすがと思うものです。また、これまではただ長い音符が並んでいるだけと思っていたこの曲の一つ一つの音に表現を持たせているようなジュリーニの音楽性にも改めて感動させられます。
ジュリーニは歌の人で、ガッチリとした骨格を持っている人ではないようで、骨組みは少し弱いような感じがします。少し響きが薄くなるのが唯一の弱点かなと思います。
それでも、表情豊かな演奏にあって、若干の響きの薄さは、本当に若干であって、全体の評価を落とすようなものではありません。
キエフの大門でもブラス・セクションの輝かしい響きもさすがです。

ジュゼッペ・シノーポリ/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★★★★
「プロムナード」艶やかで明るいトランペット。ゆったりとした弦。チューバも良く響きます。「こびと」怪しげな雰囲気が良く出ています。ここでもチューバの存在感が大きいです。「プロムナード」優しく穏やかです。テンポも遅めたりします。「古城」美しく妖艶なサックス・ソロ。ここでもテンポは遅く、たっぷりと歌いしみじみとした演奏です。「プロムナード」一転して明るいトランペット。ゴツゴツしたチューバ。「テュイルリーの庭」控え目な木管。滑らかなクラリネット。「ビドロ」高域が僅かに硬いチューバのソロ。「プロムナード」絵を見ていて気持ちが沈んだような感じを表現しています。「殻をつけたひなの踊り」繊細な弱音。非常に神経の行き届いた弱音です。「サミュエル・ ゴールデンベルクとシュミュイレ」ここでもテンポは遅めです。あまりがなり立てること無い低弦。きりっと鋭く浮かび上がるトランペット。「リモージュ」ここは速めのテンポで活発な動きを強調ます。「カタコンブ」ここでもチューバは強力です。見事に響く和音。「バーバ・ヤーガの小屋」チューバ以外は控え目で、爆発しません。弱音部でも緊張感を維持していて、静寂感があります。 「キエフの大きな門」強力なブラスセクションと木管の静寂の対比も見事です。強烈なティンパニのクレッシェンド。輝かしい終結でした。

絵を見ながら心境が変化する様子を見事に表現した演奏でした。基本は遅めのテンポですが、強力なブラスセクション(特にチューバ)と滑らかで静寂感に富んだ木管の美しい響きが印象的でした。

トゥガン・ソヒエフ/トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団

ソヒエフ★★★★★
プロムナード、硬質ですが、キリッと立ったトランペット。分厚い響きと濃厚な色彩。
こびと、反応も敏感で、表現も引き締まっています。
プロムナード、低い音で吹くにくそうなホルン。
古城、この曲に入る時の色彩の変化はとても良かったです。フランスのオケらしくサックスはとても美しいです。フルートはとても音量を抑えて入ります。表現もとても工夫されています。
プロムナード、
テュイルリーの庭、とても良く強弱を変化させて表現する弦。テンポの動きも適度です。
ビドロ、ソロはユーフォニアムです。途中で急に音量を落とす弦。表現が凝っています。
プロムナード、ここでもテンポの大きな動きがありました。
殻をつけたひなの踊り、色彩の変化も見事です。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、巨大な弦の表現です。ここでもテンポは予想外の動きです。
リモージュの市場、こんな音が隠れていたのかと言う発見もさせてくれます。
カタコンブ、伸びやかで柔らかいトロンボーンですが、力強く鳴ります。
バーバ・ヤーガの小屋、テンポが速いわけではありませんが、猛烈に突き進むような迫力です。
キエフの大きな門、速めのテンポでコンパクトです。プロムナードの旋律はスタッカートぎみに演奏しました。

いろんな表現でこの作品を面白く聞かせてくれました。ソヒエフの見事な統率と色彩感豊かなオケの両者の個性が相まって素晴らしい演奏でした。
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セルジュ・チェリビダッケ/ロンドン交響楽団

チェリビダッケ★★★★★
プロムナード、ゆっくりと重い演奏です。丁寧に演奏されていますが、録音はザラザラしています。
こびと、ここも遅いテンポで弱音の表現秀逸です。遅いテンポでも金管は強く吹いています。
プロムナード、
古城、ここはこれまでのような遅いテンポではなく、少し遅い程度です。哀愁を感じさせるような演奏では無く、弱音の美しさを特に際立たせた演奏です。
プロムナード、トランペットにはノイズがつきまとっているような埃っぽい音です。
テュイルリーの庭、ここも遅いテンポで一つ一つの音を丁寧に演奏しています。
ビドロ、ソロはユーフォニアムです。かなり大きくクレッシェンドして行きます。呼吸するように波打つ弦。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、軽快に動く木管。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、弦とトランペットが絡む部分は凄みのある迫力です。
リモージュの市場、
カタコンブ、かなり強く鳴らされるトロンボーン。弱音の凝縮された響きはなかなかのものです。
バーバ・ヤーガの小屋、蒸気機関車が進むような力強さです。
キエフの大きな門、雄大な演奏でした。後のミュンヘンpoとの演奏のような変わった表現も無く、ゆったりとしたテンポの大きなスケールの演奏は良かったです。

ゆっくりとしたテンポで弱音の凝縮された生き物のように動く演奏はとても魅力的でした。また、キエフの大きな門の雄大なスケールの演奏もとても良かったです。
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ジョルジュ・プレートル/RAI国立交響楽団

プレートル★★★★★
プロムナード、遠くてソフトタッチの演奏です。
こびと、木管がはいるところからテンポが遅くなりました。録音の問題なのかダイナミックの変化があまりありません。
プロムナード、テンポの動きが多くあります。
古城、あまりビブラートをかけないサックス。テンポはとてもよく動きます。この動きは即興的な感じの動きです。
プロムナード、
テュイルリーの庭、テンポの動きは凄いです。普通の演奏ではまずあり得ないほどの動きです。
ビドロ、
プロムナード、ここでもテンポの動きは常軌を逸しています。
殻をつけたひなの踊り、プレートルがピアノを弾いているかのような自在なテンポの動きでとても楽しく聞けます。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、表現も幅があって、強弱の変化も大きいです。
リモージュの市場、速いデンポで生き生きとして活動的です。
カタコンブ、思い切った咆哮でトロンボーンが強烈に鳴ります。これほど荒々しいカタコンブも初めてです。
バーバ・ヤーガの小屋、軽く始まりましたが、トランペットやトロンボーンはかなり強く演奏しています。
キエフの大きな門、最初はあまり強弱の振幅が無いような感じでしたが、ここまで来ると物凄い振幅です。金管はかなり強く吹いています。対照的に木管のソロは消え入るようです。テンポの動きも大きいのですが、嫌味な感じはありません。

プレートルのやりたいように自由に演奏した感じでした。かなり強烈な個性の表出でした。プレートルがピアノを演奏しているかのような自在なテンポの動きと、最後の強烈な迫力と言うことなしの演奏でした。
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クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団

アバド★★★★★
プロムナード、ゆったりとしたテンポで静寂の中に響くトランペット。とても落ち着いて風格さえ感じさせる演奏です。
こびと、プロムナードから続いて滑らかで引っかかるところの無い演奏です。
プロムナード、このプロムナードもゆっくりで、絵から絵へ移る時の、作品を心の中でしみじみとかみ締めるような感じがあります。
古城、非常に美しいサックス。哀愁を感じさせるファゴット。滑らかでとても品の良い演奏です。サックスとフルートの色彩の変化もしっかりと表現しています。古い城の寂しい情景を見事に表現しました。
プロムナード、少し明るく元気に歩きました。
テュイルリーの庭、とても丁寧で、バタバタと騒ぐ感じは全く無く、静かで穏やかです。
ビドロ、ソロはユーフォニアムでしょうか。このソロも美しいです。演奏は全く荒々しくなりません。
プロムナード、少し奥まって静かな木管。
殻をつけたひなの踊り、奥行き感があって、しかもダイナミックの変化も大きい木管。とても上品で美しいです。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、寂しそうで貧弱なシュミュイレ。それに比べると圧倒的なゴールデンベルク。
リモージュの市場、速いテンポですが、市場の喧騒をあまり感じさせない磨かれた演奏です。
カタコンブ、広大に豊かに鳴る金管。
バーバ・ヤーガの小屋、濃厚で粘りのある弦。軽く伸びやかに鳴る金管。色彩感も豊かです。
キエフの大きな門、豪華で極上の響きです。輝かしい金管が見事です。終盤のトランペットの力のこもった演奏も素晴らしかったです。

滑らかでとても美しい演奏でした。オケの色彩感の引き出し方にもアバドのこだわりがあるようで、キエフの大きな門の終盤のトランペットの強奏は圧倒的でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」の名盤を試聴したレビュー

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)2

たいこ叩きのムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」名盤試聴記

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★☆
「プロムナード」低い倍音を含んだトランペット。速めのテンポではつらつと進みます。「こびと」ゆっくりめに進みますがオケは強奏部分でも爆発しません。割とあっさりとした表現です。「プロムナード」のどかで穏やかです。「古城」少し硬めの音質のサックス・ソロ。「プロムナード」ここも速めのテンポで颯爽と進みます。「テュイルリーの庭」ショルティの不器用さか、楽譜に忠実過ぎて滑らかさを欠いている部分もあります。「ビドロ」柔らかく美しいチューバ。「プロムナード」ここのプロムナードも爽やかに演奏されます。「殻をつけたひなの踊り」ひなが動き回る様子を上手く表現しています。「サミュエル・ ゴールデンベルクとシュミュイレ」弦の凄いエネルギーを感じます。悲しげなミュートを付けたトランペット。「リモージュ」明るくはつらつとしたホルン。賑やかな市場の様子で。「カタコンブ」抑え気味ですが、重く響く和音が美しい。「バーバ・ヤーガの小屋」スピード感と強いエネルギーを放出する冒頭。 「キエフの大きな門」広大なスケール感。弱音は必要以上に弱く演奏することは無く、静寂感や緊張感はありません。最後はシカゴsoのパワー全開で気持ちがスッとするような開放感でした。

ショルティの不器用なところも垣間見えたりしましたが、シカゴsoの名人芸を見せつけるような演奏には圧倒されました。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
「プロムナード」非常にゆっくりと伸びやかで表情豊かなトランペット。弦もとても豊かな表情で、押したり引いたりします。「こびと」もゆっくりです。最初のffで演奏される弦は速めで、後にpで演奏される弦は非常にゆっくりと演奏しました。怪しげな雰囲気の弦。最後は早くなりました。「プロムナード」ここでもゆっくりと歩くような、まさにそぞろ歩きです。弱音に神経手を使った美しい演奏です。「古城」SAXは持ち替えなのか、僅かに硬さの残る響きです。旋律の裏で動く楽器がはっきりと聞こえます。「プロムナード」ゆったりとまろやかな響きです。「テュイルリーの庭」これも非常に遅いテンポの演奏です。どの楽器も瑞々しく伸びやかです。「ビドロ」遅いテンポで美しいチューバです。ティンパニが入るあたりから少しテンポを速めました。「プロムナード」美しい木管が響き合います。「殻をつけたひなの踊り」弱音に重点を置いた演奏で、非常に神経を使った美しい演奏です。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」コントラバスがあまり聞こえないので、重い感じや厚みはありません。テンポは非常にゆっくりしていて、トランペットが入る前にさらにテンポを落としました。トランペットの裏で動く楽器もはっきりと聞こえます。「リモージュの市場」細い響きのホルン。楽器の出入りがはっきりしていて、色彩感が豊かです。「カタコンブ」美しい響きのロングトーン。かなり強めに演奏されたトランペット。沈み込むような弱音。「バーバ・ヤーガの小屋」巨大な戦車が動き出すような重量感。トランペットの登場に向けて少しテンポを速めました。チューバの旋律の部分は神秘的な雰囲気です。「キエフの大きな門」輝かしい冒頭でしたが、なぜかフレーズの最後の音を弱く演奏します。伸びきったトランペットが輝かしく美しい。トロンボーン、トランペットと続く三連符をクレッシェンドしました。強烈な鐘の響きとトランペットの輝かしい響きで、最後の音を伸ばして終わりました。

遅いテンポに待ちきれず、アンサンブルが乱れる部分や、キエフの大門の初めでフレーズの最後の音を弱くしたのが不可解な部分もありましたが、その他は遅いテンポでじっくりと聴かせてくれました。この曲の全く違う面を聴かせてくれたと思います。

キリル・カラビツ/DR放送交響楽団

カラビツ★★★★☆
プロムナード、トランペットの部分は速いテンポで活発な動きでした、弦になると僅かにテンポを落としてゆったりとした表現です。
こびと、アンサンブルの乱れもありますが、見通せるような透明感のある響きで、美しいです。
プロムナード、柔らかく暖かいホルン。
古城、哀愁を感じさせる豊かな表現のファゴット。美しいサックス。繊細な弦。
プロムナード、重量感のあるチューバ。
テュイルリーの庭、動きのある部分と穏やかな部分の対比が見事です。
ビドロ、美しいチューバでしたが最後のハイトーンは口を締めすぎです。伸びやかで色彩感も豊かです。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、宙に浮いているかのように軽い木管。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、あまり厚みの無い弦。弱々しいトランペット。描写力はなかなかです。
リモージュの市場、強弱の変化にも敏感に反応していて、市場の賑わいも良く表現しています。
カタコンブ、チューバがしっかりと支えた響き。ドラも重い響きでとても良いです。
バーバ・ヤーガの小屋、速めのテンポで活発な動きで、色彩の変化も大きいです。凄い勢いで終わりました。
キエフの大きな門、同じオケでも「惑星」の時のようなトゥッティで詰まってしまうようなことは無く、伸びやかな響きです。

ラヴェルのオーケストレーションの色彩感を見事に表現しました。ライヴのキズはありましたが、それでもとても良い演奏だったと思います。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

1990年サントリーホールライヴ
ショルティ★★★★☆
プロムナード、予想していた程鋭くないトランペット。弦は柔らかく分厚い響きです。最後は輝かしい見事な響きになりました。
こびと、奥行き感があって美しいフルート。軽々としかもブレンドされた厚みのある響きのトロンボーンとチューバ。怪しげな雰囲気も十分ありました。
プロムナード、ふくよかなホルン。とてもカラフルです。
古城、速めのテンポであまり哀愁を漂わせる演奏ではありません。
プロムナード、パリッとしたトランペット。
テュイルリーの庭、CDになった演奏よりもこなれているようでとても余裕があって自然に歌います。
ビドロ、ユーフォニアムのソロです。CDで聴くようなキンキンとした弦ではなく、とてもマイルドで柔らかい響きです。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、繊細なヴァイオリン。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、鋭いトランペット。弱々しさは感じません。かなり強い音です。
リモージュの市場、凄い精度の演奏で圧倒されます。
カタコンブ、充実した素晴らしい響きです。金管の圧倒的な響きも凄いです。
バーバ・ヤーガの小屋、トランペットがテヌートで演奏します。これはちょっと違和感があります。
キエフの大きな門、艶やかでブライトなトランペット。トゥッティの猛烈な響きはさすがにシカゴsoです。鳥肌が立つような見事な響きです。

ショルティが強い個性を出すことなく、ラヴェルのオーケストレーションを表現しました。シカゴsoのトゥッティのパワーの尋常ではない響きも感じることができました。ただ、バーバ・ヤーガの小屋のトランペットがテヌートで演奏した部分だけはいただけませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」の名盤を試聴したレビュー