ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」2
たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記
コリン・テイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
★★★★☆
重量級の春の祭典です。コンセルトヘボウの濃密な音色も生かされた演奏です。
第一部、冒頭からコンセルトヘボウの美しいホールトーンを伴った木管楽器の響きに魅了されます。とても伸びやかな柔らかい響きがたまらない。
春のきざし、とても重い弦です。ふくよかなホルン。豊かな響きです。フィンガーシンバルも鮮明に録れています。どの楽器も明快に録れています。豊かな響きがありながら細部まで聞こえるとても良い録音です。
音の一つ一つに力があって、リズムのキレが悪いことは決してないのですが、力があって重いです。
春のロンド、テンポは遅く大太鼓の音もものすごく重い。ドラは金属系の撥で叩いているような音がします。強烈です。
敵の都の人々の戯れ、ここでも登場する一つ一つの楽器の存在感が抜群です。音に力があるのです。また、このオケのアンサンブル能力の高さもすごい。
大地の踊り、リアルな音で、オケが一体になって迫ってきます。重い音なのですごいエネルギー感です。
第二部、濃厚、春の祭典には音が重すぎるかもしれません。この音で「ペトルーシュカ」は考えにくいです。「火の鳥」だったら深みのある良い演奏になると思います。
いずれにしても、尋常な音で演奏されてはいません。かなりショッキングな春の祭典が展開されています。
色彩感がとても豊かですがホールトーンも伴っているので、原色のキツイ色合いではない。
11拍子からかなりテンポが速くなりました。スピード感もオケが一体になっているので見事!
祖先の呼び出しも速いテンポで小気味良い。
同じ曲でも、指揮者が違うと、どうしてこんなにも空気を変えることができるのでしょうか。不思議なくらい違いがあります。
デイヴィスの指揮の場合でもオケの集中力をすごく引き出していて、緊張の糸がピーンと張り詰めています。ですから、静寂感と少し冷たい空気を感じることができます。団員の気持ちが緩んでいると絶対に感じることができない空気感です。
これほど重い春の祭典は、誰にでもお勧めできる演奏ではありませんが、いくつかの演奏を聴いた人には絶対に聞いてほしい一枚です。
サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団
★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、かなり締まったファゴット。とても静まった空気感です。克明に動く各々の楽器がマルチ録音を印象付けます。
春のきざし、バネのように弾む弦。短く強いホルン。ティンパニもバネがあります。とにかく色んな楽器が手に取るように分かる克明な演奏です。金管は激しく咆哮することは無く、案外冷静です。
誘拐、容赦なく咆哮するホルン。トロンボーンも強烈です。
春の踊り、重く尾を引くコントラバス。速めのテンポでさっさと進みます。元気の良い演奏です。ティンパニは三つの音をはっきりと分けて演奏しています。ピッコロの後もスピード感のある演奏です。
敵の都の人々の戯れ、屈託無く伸び伸びと鳴り響く金管。木管も統率が取れていて見事なアンサンブルです。
賢者の行列、本来なら音量が落ちるはずのホルンが全く音量を落とさずに演奏します。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、全ての音が前に出で来て色彩のパレットを広げたようです。
第二部:いけにえ
序奏、大太鼓が入ると崩れ落ちるように重くなります。いろんな楽器の動きが明快に分かります。
乙女たちの神秘なつどい、艶やかで色気のあるビオラ。アルトフルートからは速めのテンポでさっさと進みます。引き締まったホルン。ゆっくりと重い11拍子。
いけにえの賛美、色彩が豊かでバネのように弾むリズム。
祖先の呼び出し、ティンパニはあまり激しくありません。ファゴットもあっさりとしています。
祖先の儀式、弱奏と強奏の差がとても大きいです。トゥッティのエネルギーは巨大です。
いけにえの踊り、ティンパニがミュートされているのでリズムがとても先鋭です。研ぎ澄まされたトロンボーン。
マルチマイクでいろんなパートがとても鮮明で、とても元気な演奏でした。色彩感も豊かで、シカゴsoのパワーもさすがでした。
ピエール・ブーレーズ/クリーブランド管弦楽団
★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、ブーレーズの演奏だと無機的な感じがしますが、思った以上に音楽的でメロディも美しいですし豊かな表現です。奥から鋭いトランペット。
春のきざし、あまり密度が濃く無い弦。トランペットは凄く鋭いです。とても冷静で狂気のような感じはありません。
誘拐、金管はとても良く鳴っています。
春の踊り、ゆっくりと引きずるような弦。大きく歌うホルン。鋭利な刃物のように鋭い演奏で、温度感も冷たい感じです。
敵の都の人々の戯れ、ゆったりと大きく構えた余裕さえ感じる演奏です。弦もトランペットも余裕しゃくしゃくで演奏しています。
賢者の行列、ホルンはあまり音量を落とさずそのまま演奏しています。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、ここもゆっくりとしたテンポで鋭いトランペットが鳴りますが、堂々としています。
第二部:いけにえ
序奏、第一部の序奏のようにとても豊かな表現です。くっきりと浮かぶクラリネット。
乙女たちの神秘なつどい、ささくれ立ったようで美しくないビオラ。僅かに金属的な響きのヴァイオリン。かなりの勢いで演奏される11拍子。
いけにえの賛美、鋭くはじけるトランペット。途中でテンポが遅くなりました。
祖先の呼び出し、颯爽とした金管。ティンパニはあまり激しくありません。
祖先の儀式、緊張感のあるヴァイオリン。あまり激しくないホルン。
いけにえの踊り、鋭い響きとリズムも切れのある鋭い演奏です。容赦なく立ち上がる金管のザクザクとした響き。
鋭い響きで、突き刺さるような演奏でしたが、歌うところはしっかりとした表現で、メリハリのある良い演奏でした。ただ、ブーレーズは常に完璧にコントロールしているので、オケが突き抜けて来るようなことは全くありませんでした。
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アンドレス・オロスコ=エストラーダ/hr交響楽団
★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、ゆっくりとしたテンポで豊かな表情で歌うファゴット。Ebクラもメリハリの効いた表現です。
春のきざし、短く重い弦。鋭いトランペット。ティンパニは軽いです。明るいホルン。内声部の旋律が浮かび上がります。
誘拐、バランスの良い充実した響きです。ここぞと言うところで金管が突き抜けてきます。大太鼓もズシンと響きます。
春の踊り、木管から弦に移るところでテンポを落としました。マスの響きの一体感もとても良いです。最後でテンポを落としました。
敵の都の人々の戯れ、ティンパニはやはり軽いです。とても落ち着いていて熱狂するような咆哮はありません。
賢者の行列、抑えたホルン。チューバの方が強いです。ギロが強く響きます。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、とても堅実で安定した演奏で危なげなところが全くありません。
第二部:いけにえ
序奏、柔らかく繊細な表現。
乙女たちの神秘なつどい、一つ一つの楽器の密度が高くね透明感も高い響きでとても美しいです。大太鼓の重量感のある響きを伴った11拍子。
いけにえの賛美、凄い躍動感ど情報量です。音楽にも勢いがあって力強いです。
祖先の呼び出し、ティンパニの頂点でズシンと来ます。ファゴットはテヌートでした。
祖先の儀式、伸びやかで色彩感も豊かです。強く咆哮するホルン。
いけにえの踊り、情熱的で、オケも献身的に表現しています。最後のクレッシェンドは凄かったです。
強烈な咆哮はありませんでしたが、かなり積極的な表現で、密度の濃い演奏を聞かせてくれました。オケも上手く安定感もあって良い演奏でした。
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スタニラフ・スクロヴァチェフスキ/ミネソタ管弦楽団
★★★★☆
第一部:大地礼賛
序奏、離れたところから柔らかく響くファゴット。ゆったりとしたテンポで伸びやかな演奏です。艶やかなEbクラ。ビリビリとしたトランペット。
春のきざし、重量感のある弦。落ち着いたテンポです。トランペットは軽く演奏しています。ティンパニも軽いです。激しい咆哮はありません。
誘拐、響きが引き締まっていて、見通しが良く色んな音が聞えてくる感じがします。
春の踊り、速いテンポの弦。ティンパニが入った部分では、普通聞えないビーと言う響きが聞えます。
敵の都の人々の戯れ、弾むようなホルン。弦もティンパニも弾みます。トランペットのフラッターが強調されます。
賢者の行列、ホルンはかなり抑えています。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、トランペットが鋭く、その間にホルンが浮き出てきます。
第二部:いけにえ
序奏、美しい弦。ふくよかなホルンと色彩感も豊かです。
乙女たちの神秘なつどい、細身で艶やかなビオラ。速めのテンポであっさりと進むアルトフルート。文字通り叩きつけるような11拍子。
いけにえの賛美、オケはスクロヴァチェフスキに鍛えられたのかかなり上手いです。
祖先の呼び出し、速いテンポで、ティンパニはあまりクレッシェンドしません。シャープで鋭い金管の響きは心地良いものです。
祖先の儀式、あまり強くないホルン。弱音部分は静寂感があります。
いけにえの踊り、鋭い金管と硬い音のティンパニが演奏を引き締めています。
鋭くシャープな演奏で、贅肉を削ぎ落としたような演奏はとても心地良いものでした。ミネソタoもかなり鍛えられていて上手かったです。
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