カテゴリー: 管弦楽曲

リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」

リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」は、アラビアンナイトの世界を音楽で描いた、非常に華やかで幻想的な交響組曲です。

どんな曲?

  • アラビアンナイトの世界: 千夜一夜物語の語り手、シェヘラザードが王様のために紡ぐ物語を音楽で表現しています。
  • 4つの楽章で構成: 各楽章がそれぞれ異なる物語を表しており、まるでアラビアンナイトの冒険物語を聴いているような感覚になります。
  • 東洋的な雰囲気: 東洋の楽器の音色を取り入れたり、独特なリズムを用いたりすることで、神秘的な雰囲気を醸し出しています。
  • 海の描写が印象的: 第1楽章「海のシンドバッドの船」では、大海原を航海する様子が音楽で生き生きと描かれています。

たいこ叩きのリムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」名盤試聴記

キリル・コンドラシン/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、海とシンドバッドの舟、巨大な響きの冒頭。続く木管がすごく小さく対比が見事です。ヴァイオリンのソロも繊細な音を上手く捉えています。シルキーな弦の響きがとても美しい。力みが無く、広大な空間を感じさせるテュッティと繊細で表情豊かな弱音部で作り上げられる音楽に聞き惚れます。

二楽章、カレンダー王子の物語、奥ゆかしいヴァイオリン・ソロ。とても良く鳴るトロンボーン、トランペット。どの楽器も考えられる最高の音色で次々と登場してきます。コンドラシンの指揮はどっしりと構えてとてもスケールの大きな演奏をしています。コンセルトヘボウ独特の深みのある音色で色彩豊かに、濃厚に描かれて行きます。シンバルも素晴らしい音です。

三楽章、若い王子と王女、比較的あっさりと演奏された主題。スネアのリズムに乗ってチャーミングな木管のソロ。奥ゆかしく、耳障りな音は一切出さないヴァイオリンのソロ。

四楽章、バグダッドの祭り。海。舟は青銅の騎士のある岩で難破。終曲。とても丁寧なヴァイオリン・ソロ。ソロを担当しているヘルマン・クレバースの信念のようなものを感じさせるソロです。濃厚な表情付けによって、作品が生き生きとしています。伸び伸びと鳴り響くトロンボーンもとても心地良いです。最後まで奥ゆかしく繊細なソロも見事でした。

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

icon★★★★★
一楽章、チューバが底辺をしっかりと支えた冒頭。ピンポイントで寂しい響きのフルート。細身で艶やかなヴァイオリン独奏。穏やかな海に揺られて海の主題、舟の主題が演奏されます。トゥッティでも音が荒れることは全く無く、とても美しい演奏です。トーンとしてはブルー系の涼しげで清潔感のある響きです。

二楽章、どことなく懐かしいファゴットのカレンダー王子の主題。とても繊細なガラス細工を見るような、触ると壊れてしまいそうですが、キラキラと輝いてとても美しいものを見ているような感覚です。トロンボーンの強奏も強く吹いているのは響きから分かるのですが、実際の音圧としての強さはあまり感じません。速いパッセージも難なくこなす凄い技術です。色彩感も豊かでリムスキー=コルサコフのオーケストレーションが見事に再現されていますが、水彩画のような色彩で濃厚と言う感じではなく、サラッとした色彩です。

三楽章、途中でちょっと間があったり、ゆったりと歌うヴァイオリン。滑らかで美しいクラリネット。聴いていてとてもリラックスさせてくれます。適度なチューニングのスネアドラム。小物打楽器もさりげなく上手い。ヴァイオリン独奏は線が細いのですが、音に力があってキリッと立っています。

四楽章、難しい演奏をいとも簡単にやってのける名人芸の連続に唖然とさせられます。トランペットの速いタンギングも見事です。頂点のトロンボーンも音色からは強奏しているのは分かるのですが、音圧として届いては来ません。艶やかなヴァイオリン独奏で曲を閉じました。

コンドラシンのスケールの大きな演奏とは対照的な繊細なガラス細工のような演奏で、この美しさはとても魅力的でした。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、非常にゆっくりと穏やかな冒頭。静寂に浮かび上がる木管。細身で美しいヴァイオリン・ソロ。海のうねりをあまり感じさせない主部。登場してくるソロがどれも瑞々しく美しい。強奏部分では、奥まったところでホルンが激しくビーンと鳴ります。トロンボーンもトランペットも突き抜けてきます。強弱の振幅が非常に激しい演奏です。激しい部分と穏やかな静けさの対比も見事です。

二楽章、弱音から始まり歌いながら次第に大きくなるヴァイオリン・ソロ。続くファゴットもオーボエもとても遅いテンポで歌います。メロディを担当する楽器を際立たせて、とても色彩感豊かな演奏になっています。中間部のトロンボーンは控え目でした。その後、トロンボーンとトランペットが掛け合う部分は強めに演奏しました。続くクラリネットのソロは強弱の幅を持った歌に溢れたソロでした。この遅いテンポでも集中力を維持し続けるオケの技量のすばらしいです。また、遅いテンポやチェリビダッケ独特の表現によって新しい発見もたくさんあって、とても興味深い演奏です。最後はアッチェレランドしました。

三楽章、遅いテンポで、ゆったりと弱音で広々とした雰囲気の弦の主題はとても心地良いものです。伸びやかなクラリネットやフルートの速いパッセージ。すごくテンポを落とし、音量もおとした中間部のスネアドラムと木管の旋律。同じ旋律を音を短く切って演奏するあたりから音量もテンポも上がりました。すごく繊細な弦の響きが美しい。細身のヴァイオリン・ソロもとても美しい。締まった音のホルンも美しい。夢心地の御伽噺の世界へと連れて行かれます。

四楽章、この楽章は通常の演奏より若干遅い程度です。三楽章のゆったりとした音楽から、とても動きのある音楽へ変化しました。動きもあり、色彩感もとても豊かです。音楽の表現も濃厚で、作品に込められた物語の場面を描いて行くようです。打楽器の活躍も見事です。広々とした大海原を想像させるような壮大で圧倒的なクライマックスです。消え入るような弱音で演奏されるヴァイオリン・ソロ。

非常に遅いテンポで、作品を描き切りました。濃厚でスケールの大きな見事な演奏でした。

ヴァレリー・ゲルギエフ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2005年ライヴ

ゲルギエフ★★★★★
一楽章、勢いのあるシャリアール王の主題。甘くとろけるようなヴァイオリンのソロ。とても濃厚な色彩で、それぞれの楽器がくっきりと浮かび上がりリムスキー=コルサコフのオーケストレーションの妙がとても良く表現されています。

二楽章、とても艶やかなヴァイオリンのソロです。哀愁に満ちたファゴットのカレンダー王の主題のソロ。ビーンと響くトロンボーン。どのソロも極上の響きで登場します。オケの響きにも深みがあって、一体になった表現も素晴らしいです。

三楽章、とても優美なヴァイオリンの主題。次第にテンポを速めますが、自然な歌で原色のような濃厚な色彩も魅力的です。スネアに乗って歌うクラリネットもとても表情豊かでした。一抹の寂しさを感じさせるようなヴァイオリンのソロと木管の掛け合い。

四楽章、畳み掛けるように演奏するヴァイオリンのソロ。リズムに締りがあってとても躍動感があります。速いテンポでめまぐるしく変化する音楽。名人芸のような演奏を展開するウィーンpo。クライマックスでの金管の炸裂!壮絶な演奏です。艶やかで際立った存在感を示すヴァイオリンのソロはとても美しく力もあります。

とても濃厚な色彩で、引き締まったリズム感の良い躍動感のある演奏で、音楽の振幅もとても大きな素晴らしい演奏でした。
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クラウス・ペーター・フロール/ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

フロール★★★★★
一楽章、フワッと柔らかい響きです。豊かな低音を含んだヴァイオリンのソロ。とてもゆっくりと波に揺られるような海の主題。とても穏やかな海です。残響が豊かでとても柔らかい響きが心地良い演奏なのですが、その分、濃厚な色彩感はありません。

二楽章、太い低音と繊細な高音を併せ持つヴァイオリンのソロ。哀愁を感じさせるファゴットのソロ。この楽章もゆっくりとしたテンポです。トロンボーンもゆっくりと伸びやかで柔らかい表現です。荒々しくなことは無く、雄大な演奏です。弱音の繊細さもなかなか惹きつけるものがあります。

三楽章、ここまでの演奏に比べると速めのテンポを取っていますが、タメがあったりしてとても豊かに歌います。スネアが入ったところのクラリネットは小さく入って少しふくらみました。締まった打楽器と柔らかく豊かな弦の対比もとても良いです。最後はぐっとテンポを落として柔らかい弦がささやきます。

四楽章、あまり力を入れずに柔らかい冒頭。あまり活発な動きや濃厚な色彩ではありませんが、柔らかく音楽に浸るような演奏はとても魅力的です。

リムスキー=コルサコフらしい濃厚な色彩感はありませんでしたが、とても柔らかく伸びやかな演奏は、これでとても魅力的なものでした。どっぷりと音楽に浸ることができる演奏でした。

エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

スヴェトラーノフ★★★★★
一楽章、冒頭から爆演の気配です。フルートは遅いテンポで穏やかでした。艶やかで粘っとしたヴァイオリンのシェエラザードの主題。ゆったりと揺られる海の主題。潤いのある木管のソロ。この楽章はそれほど爆発することなく過ぎて行くと思ったら、トランペットが朗々と鳴り響きます。濃厚な色彩ですが、金管は奥から響いてくるので、とても立体感があります。

二楽章、とても豊かに歌うヴァイオリンのシェエラザードの主題。哀愁があり、暖かいファゴット。オーボエは間接音を含んでとても美しいです。中間部のトロンボーンはビブラートを掛けて少し下品なくらい咆哮します。クラリネットのソロも美しく豊かな表情です。色彩はとても濃厚です。最後は加速して激しく終わりました。

三楽章、速めのテンポで弾むリズムをスタッカートぎみにしたり、タメを作ったりして歌います。クラリネットのソロもとても大きな表現でした。くっきりと鮮度の高い弦。スタッカートが多用される独特な表現です。

四楽章、ゆっくりと丁寧に演奏されるシェエラザードの主題。祭りの主題は次第にテンポが速くなります。クラリネットのソロはとても強く表現します。速いテンポで追い立てるように鬼気迫る演奏です。めまぐるしい木管の速いパッセージ。激しく咆哮する金管。最後もねっとりとしたヴァイオリンのソロでした。

非常に濃い演奏でした。ねっとりとしたヴァイオリンのソロから下品なくらいの咆哮を聞かせるトロンボーン。そして速いテンポで追い立てるような四楽章など、変化に富んでいて濃厚な演奏でとても聞き応えがありました。
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ユーリ・テミルカーノフ/サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団

テミルカーノフ★★★★☆
一楽章、意外に繊細で力で押すようなことの無いシャリアール王の主題。艶やかで生き生きとしたシェラザードの主題。穏やかに揺れる海の主題。霞がかかったような録音で、あまり色彩感や力感は伝わって来ません。弦ははっきりしていますが、特に金管があまり響いて来ません。

二楽章、速いテンポでサクサクと進みます。中間部のトロンボーンも柔らかく遠いです。クラリネットのソロは滑らかで表現も幅広いです。オケはムラヴィンスキー時代のゴリゴリとした力強さは無くなっていますが、しなやかで柔らかい響きになっています。

三楽章、最初の二つの音をゆっくりと演奏しました。大きな表現は無く淡々と進みます。中間部の木管は踊るように活発な表現です。ヴァイオリンのシェエラザードの主題はねっとりとした豊かな表現です。

四楽章、遅めのテンポで音を短めに演奏する冒頭部分。ヴァイオリンのシェエラザードの主題はここでもねっとりとしています。主部に入ると速めのテンポで活発な動きのある表現です。録音の問題か、金管のエネルギー感が伝わって来ません。難破の場面でも金管は奥まっていて遠くで鳴っているような感じです。最後のシェエラザードの主題も濃厚な表現です。

ねっとりと濃厚なシェエラザードの主題と、あまり大きな表現をせずに淡々と進む他の部分の対比が独特でした。ただ、録音の問題で金管が奥まっていてエネルギー感が無かったのは残念でしたが、なかなかセンスの良い演奏に感じました。
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ロリン・マゼール/クリーブランド管弦楽団

マゼール★★★★☆
一楽章、荒々しくトロンボーンが響くシャリアール王の主題。細く繊細なシェエラザードの主題。ゆったりと大きく揺れる海の主題。ピーンと張った生きのいい音楽。いろんな音が聞こえて来ます。表現力も豊かで色彩感も豊かです。

二楽章、とても繊細で艶やかなヴァイオリンのソロ。木管のソロがとても美しいです。中間部のトロンボーンの質感もとても良いです。精緻なアンサンブルでとても見通しが良いです。表現にも締りがあって、緩むことがありません。

三楽章、速いテンポでほとんど思い入れの無い主題。透明感が高く細部まで見通せるようなアンサンブルの精度は素晴らしいです。打楽器は控えめです。主部が戻るとまた速いテンポです。この速さはちょっと速過ぎるような感じがします。

四楽章、少し薄いですが、透明感の高い冒頭。静かで美しいヴァイオリンのソロ。弦は大きな表現ですが、金管は軽く控えめです。見事に整ったアンサンブルで絶妙なバランスの演奏です。難破の場面でも金管が吼えることは無くしっかりと制御されています。

精緻でバランスが良く透明感の高い美しい演奏でした。ただ、三楽章の主部の速いテンポが少し速過ぎたような感じで全体のバランスを崩しているような感じがしました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」の名盤を試聴したレビュー

リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」2

たいこ叩きのリムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
一楽章、豊かな残響の中に速めのテンポで開始しました。凄く艶やかで前面に出てくるヴァイオリン独奏。とても色彩感が濃厚です。テンポは速めでグイグイ音楽を引っ張って行きます。温度感もあって妖艶な雰囲気が上手く表現されています。荒れ狂う海のような激しい表現です。ソロはどのパートもさすがにベルリンpoと思わせる美しいものです。トゥッティでの思いっきりの良さはすごく、音の洪水が溢れ出るようです。

二楽章、艶やかで表情豊かなヴァイオリン独奏です。オーボエのソロも歌に溢れています。トロンボーンやトランペットもマルチマイクで捕らえられているようで、分離して定位します。この楽章も速めのテンポで元気はつらつです。テンポが速いせいか、若干雑な印象も受けます。

三楽章、この楽章も速めで、美しい旋律をゆったりと楽しみたいと思う気持ちを置いて行かれてしまいます。スネアは締まった良い音です。

四楽章、この楽章も速めのテンポで勢いがあります。遅いところは思い切ってテンポを落として濃厚に表現します。速いテンポで息つかせる暇も無くどんどん音楽を進めて行きます。

速いテンポで勢いのある演奏でしたが、若干雑な印象でロマンティシズムにかけるような感じがしました。

フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団

ライナー★★★☆
一楽章、パリッと豪快に鳴るシャリアール王の主題。対照的に繊細なシェエラザードの主題。アメリカのオケらしい明快な響きです。割と淡白でストレートです。豪快に鳴る金管はショルティ時代に出来上がったのではなく、ライナーの時代にすでに備わっていたというのが、この演奏から分かります。

二楽章、このヴァイオリンのソロもとてもストレートで回りくどい表現はしません。すっきりと鳴るトロンボーン。テンポの大きな動きがあってアッと思わされました。金管はとても良く鳴りますが、しっかりとコントロールされていて暴走はしません。しっかりとした音の芯の強い音で、大きな表現はありませんが、とても印象に残る演奏です。

三楽章、微妙な表現はありますが、基本的にはストレートです。ゆっくりとたっぷりとした表現になる部分もありますが、シェエラザードの主題からはまたストレートであっさりとした表現になります。テンポの動きは何度もあります。

四楽章、とても明快でon.offがはっきりしています。一点の曇りも無いような晴れ晴れとした海です。トランペットの速いタンギングもすっきりと何の苦も無く演奏されます。物凄く歯切れの良い演奏で、爽快です。難破の場面でも晴れ渡っているようなクリアーな演奏です。

およそ混濁すると言う事の無い演奏で、終始晴れ渡っているようなストレートな表現でした。聞いていて爽快ではありましたが、もう少し凝った表現もあって良かったのではないかと思いました。
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レオポルド・ストコフスキー/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
一楽章、勢いの良い出だしの直後に一旦音量を落としてクレッシェンドしました。艶やかでねばりさえ感じるヴァイオリン独奏。あまりうねりのない伴奏音型。強弱やテンポの変化が頻繁にあり、とても注意深く演奏しています。ストコフスキーの作品への思い入れもかなりのものだったのだと感じます。勢い良く鳴るホルン。基本的には速めのテンポでどんどん先へ進みます。

二楽章、一楽章から続けて入りました。ファゴットのソロには奥行き感がなく、浅い響きのように感じました。中間部のトロンボーンは巨大な響きでした。オリジナルには無いシロフォンが聞こえました。オケはそつなく演奏をこなしています。ただ、録音によるものなのか、演奏に深みを感じません。楽器から離れた音が反響板に跳ね返って、ホールに広がっていくような豊かな奥行き感がないのです。

三楽章、木管のソロがカデンツァのように自由に演奏されます。豊かなメロディに身を任せて心地よい気分になります。優しい弦の響き。小物打楽器も上手い。特にスネアが締まった良い音をしています。黄昏るような弦の弱音がとても美しい。最後に少しずつ少しずつテンポが遅く演奏された部分はすばらしい表現でした。

四楽章、ヴァイオリンのソロの前のコントラバスが強烈でした。打楽器はシンバルも含めてすばらしい響きです。

良いところもたくさんあった演奏でしたが、響きに奥行き感がなく、浅い演奏になってしまったのが残念でした。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★★
一楽章、ノイズが混じって騒々しいシャリアール王の主題。艶やかで妖艶なヴァイオリンのソロ。かなりギスギスした響きでちょっと聞きづらいです。もっと新しい録音の音源を聞きたかったです。オケは明快に鳴っています。on.offがはっきりしていて、トゥッティなどはとてもストレートに鳴らしています。

二楽章、遠く淡白に感じるファゴットのソロ。表現がストレートで晩年の老獪な表現とはかなり違います。木管のソロは軽々と速いパッセージを演奏します。

三楽章、テンポも微妙に動いて表現する主題。ゆったりとしていて穏やかです。締まったスネアに乗って軽快に演奏されるクラリネット。この楽章でもon.offがはっきりとしています。

四楽章、とても柔らかい音になった最初のヴァイオリンのソロ。トゥッティはエネルギーがあります。凄いスピード感で演奏が進みます。テンポは速いですが、オケの技術は見事です。

ストレートな表現で、オケの技術も見事なものでしたが、録音の古さから豊かな色彩感を感じることはできませんでした。
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イヴァン・フィッシャー/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

フィッシャー★★★
一楽章、厚みがあってフワーっとした響きでテヌートぎみに演奏されるシャリアール王の主題。シェエラザードの主題まではかなり遅いテンポでした。柔らかく穏やかな海の主題。暖かく柔らかい響きで膨張したような巨大な響きです。

二楽章、暖かいシェエラザードの主題。ファゴットがとてもリアルで近いです。中間部の弦は分厚い響きで、ミュートしたトランペットも強く響いて来ます。クラリネットのソロはテンポの動きもあってとても濃厚な表現です。ファゴットのソロもクラリネットと同様です。

三楽章、少し速めですが、とうとうと歌う主題。中間部の木管はタイトに締まった演奏で弦の緩やかな演奏と対比されます。ねっとりと尾を引くような濃厚なヴァイオリンのソロ。遠くから響くシンバルが美しいです。

四楽章、テンポの大きな動きや歌うところではしっかりと表現しています。難破の場面はとても柔らかく雄大で、荒れ狂う波のイメージはありません。

柔らかく雄大な響きでしたが、木管などは締まった表現もあり、ねっとりとしたヴァイオリンのソロも印象的でした。ただ全体としては柔らかい響きが支配的であまり活発な動きや濃厚な色彩は感じませんでした。
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バリー・ワーズワース/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ワーズワース★★★
一楽章、トロンボーンがかなり強く響くシャリアール王の主題。艶やかでねっとりとしていてとても良く歌い美しいシェエラザードの主題。穏やかに揺られる海の主題。トランペットがかなり強く絶叫します。金管を積極的に鳴らして激しい表現です。

二楽章、細身で艶やかなヴァイオリンのソロはとても表現が豊かです。遅いテンポで哀愁漂うファゴットはテンポも自由に動きます。ヴァイオリンはとても爽やかな響きです。中間部のトロンボーンはやはりかなり強く演奏します。クラリネットのソロは強弱の変化も大きく付けて滑らかな演奏でした。濃厚な色彩ではありませんが、澄んだ響きで清涼感のある演奏です。

三楽章、静かで伸びやかな主題。中間部のスネアはあまり聞こえませんが、チューニングは緩いようです。ヴァイオリンのソロは常に濃厚です。

四楽章、軽く薄い冒頭。ふくよかで柔らかいヴァイオリンのソロ。フィッシャーとコンセルトヘボウの演奏に比べると打楽器の締まりがありません。コンセルトヘボウの打楽器は凄く上手かったです。難破の場面もトロンボーンが強く響きますが、全体の厚みはあまりありません。

おおらかで伸び伸びとした演奏でしたが、打楽器の締まりが無いせいか、全体のリズムの締まりが無いのか、ちょっと緩い演奏に感じました。
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Andriy Yurkevych/スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

Yurkevych★★★
一楽章、重厚なシャリアール王の主題。粘りと艶のあるシェエラザードの主題。とてもゆっくりと揺られる海の主題。伸びやかで美しい木管。ゆったりとしたテンポでオケもとても良く鳴りますが、音楽が平板でうねりのようなものがあまりありません。

二楽章、チェコの弦と言われるだけのことはある艶やかで非常に美しいシェエラザードの主題です。オーボエもホールトーンを伴ってとても美しいです。テンポはやはり遅く、少し表現が硬直しているような感じで、柔軟さがありません。中間部のトロンボーンやトランペットも伸びやかに抜けて来ます。アンサンブルも少し緩いところがあります。

三楽章、ゆったりと安らかな主題。テンポの動きもあって豊かに歌います。アンサンブルの緩さはここでも頻繁に顔を出します。主部が戻るとまたゆったりとした豊かな歌でとても心地良い演奏です。

四楽章、速いテンポで太い響きのシェエラザードの主題。アクセントなどがあまり強くないので、平板に聞こえてしまうようです。緩いアバウトなアンサンブルはオケの特徴なのか?ハワーのある金管を中心とした伸び伸びと鳴るオケには魅力があるのですが・・・・・。最後のシェエラザードの主題もゆっくりととても豊かな表現です。

ヴァイオリン・ソロの艶やかで豊かな表現や、三楽章の主題のゆったりとした豊かな歌などとても魅力的な表現もありましたが、平板に聞こえてしまう部分や、緩いアンサンブルなど、ちょっと残念な部分もありました。
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アンドレ・プレヴィン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

プレヴィン★★
一楽章、明るいシャリアール王の主題。立体感のあるヴァイオリンのソロとハープ。ゆらゆらと穏やかな海の主題。チューバが効いていて分厚いブラスのサウンド。オケは積極的に鳴り響きます。色彩感もゲルギエフ程の濃厚さはありませんが、豊かです。

二楽章、尾を引くようなねっとりとしたソロでは無くサラッとあっさりとしたヴァイオリンのソロ。ビンビンと鳴るトロンボーンですが、響きにはあまり分厚さがありません。クラリネットのソロにもあまり潤いが無い感じがします。

三楽章、少し淡泊な表現で、あまり艶やかさの無い弦の主題。アゴーギクを効かせたりして歌うことはありません。自然と言えば自然な表現で、あまり大きな表現などありませんが、あまりにも抑制的で欲求不満になりそうです。中間部のスネアが入った後もテンポの動きはありません。

四楽章、とてもあっさりとしたヴァイオリンのシェエラザードの主題。演奏には派手さは全く無く、地味に作品をそのまま演奏している感じで、面白く聞かせようと言う考えは無いような演奏です。難破の場面では金管がかなり強く演奏していて、明らかにこの曲の頂点を築いています。最後のヴァイオリンのソロもあっさりとした表現です。

とてもあっさりとした表現で、作品を面白く聞かせようと言う考えは無いような演奏でした。あまりにも淡泊で、もう少しサービス精神があっても良いのではないかと感じました。
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チョン・ミョンフン/パリ・バスティーユ管弦楽団

チョン★★
一楽章、力強いシャリアール王の主題ですが、フルートが入る前の音を短く処理しました。平板なシェエラザードの主題。小さく定位する木管。木管と絡むヴァイオリンが独特の表現でとてもあっさりとしています。ティンパニが凄いクレッシェンドです。このティンパニに乗ってオケも熱いトゥッティを聞かせます。

二楽章、あまり歌わずのっぺりとしたシェエラザードの主題。雰囲気のあるファゴット。オーボエは良く歌いますがここでも独特の節回しです。中間部で伸び伸びと鳴るトロンボーン。フランスのオケらしい明るいクラリネット。速いテンポで音楽の起伏も激しいですが、静まるところはゆったりとしています。

三楽章、静かに演奏される主題は朗々と歌われる感じでは無く淡々と演奏されます。中間部も速いテンポでサラッと進みます。静と動が交錯する表現はとても見事です。トゥッティのオケが一体になった迫力はなかなかです。

四楽章、かなり速く躍動感のある冒頭。ヴァイオリンのソロはやはりほとんど歌わずのっぺりとした表情です。速いテンポでエッジの立った祭りの主題。普段聞くほとんどの演奏に比べるとかなり速いテンポで攻撃的な感じさえします。難破の場面では突然トランペットが突き抜けて来たりしてハッとさせられます。

とても個性的な演奏で、際立った表現もありましたが、独特な節回しや音の処理などちょっと抵抗のある表現もありました。独特な表現が所々顔を出すので全体の統一感が今一つだった感じがありました。
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アーサー・アーノルド/モスクワ交響楽団

アーノルド★★
一楽章、低音のゴリゴリとした響きと上に乗る響きが柔らかいシャリアール王の主題。あまり起伏は激しく無く、淡々と流れて行きます。

二楽章、歌うところは歌っていて表現はあるのですが、録音に常に何かグチュグチュとしたノイズが付きまとっているような感じで、スッキリしません。中間部のトロンボーンもあっさりとしています。トランペットが遠くから響きます。強弱の振幅が音圧として届いて来ません。色彩感も乏しいです。何となく音楽が流れて行く感じで、演奏に引き込まれるようなことはありません。

三楽章、速めのテンポで少し落ち着きの無い主題。中間部は舞曲風の雰囲気が良く表現されています。録音はナローレンジで弦は柔らかく聞えます。また、ヴァイオリンのソロは遠くにいます。

四楽章、厚みの無いトゥッティ。色彩感も乏しく、とても淡い色彩です。よく聞くとしっかりと表情が付けられているようなのですが、この録音だと密度が薄くあまり細部が分かりません。

録音の問題なのか、色彩感が乏しく、響きの厚みも無く、表情もあまり分かりませんでした。
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ヨス・ファン・インマゼール/アニマ・エテルナ

インマゼール
一楽章、後方からトロンボーンがビーンと鳴り響くシャリアール王の主題。とても艶っぽくアゴーギクを効かせてたっぷりと歌うシェエラザードの主題。あまり古楽器オケだと感じさせるような響きはありません。しいて言えばティンパニぐらいか。

二楽章、一楽章とは違い速いテンポですっきりと演奏されるシェエラザードの主題。ヴァイオリンのソロは鋭い響きです。中間部のトロンボーンは柔らかくテンポの動きもありました。クラリネットのソロもビリビリとした響きです。一楽章では古楽器オケと感じさせる響きはあまりありませんでしたが、この楽章では古楽器の特徴がとても良く出た演奏です。響きが鋭角的で、少し冷たい感じです。

三楽章、速いテンポで鋭い響き、独特の歌いまわしの主題。速く舞うようなフルート。他の演奏には無い表現が幾度も表れます。

四楽章、とても速く淡白な冒頭とシェエラザードの主題。モダン楽器の演奏に慣れていると、この演奏にはとても違和感があります。リムスキー=コルサコフの色彩感豊かで豪華な演奏とは違い、何か貧粗な演奏のような感じがします。響きも薄く、色彩感やテンポの設定も独特のものがあります。このテンポや表現は作曲当時の演奏様式などを研究した結果なのかも知れませんが、あえてこの演奏を世に出さなければいけない理由が分かりません。

独特の表現と薄い響き、リムスキー=コルサコフの色彩感豊かで豪華な演奏をイメージすると見事に裏切られます。この演奏の資料的価値は理解しますが、鑑賞する演奏としての価値は疑問です。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」の名盤を試聴したレビュー

R・シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」

リヒャルト・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は、ドイツの民間伝承に登場するいたずら好きの道化師、ティルの愉快な冒険を音楽で描いた交響詩です。

曲の魅力と特徴

  • ユーモラスで活き活きとした音楽: ティルのいたずらや逃走劇が、音楽のいたるところに現れ、聴いていると自然と笑顔がこぼれてしまいます。
  • 物語性: 各楽器がティルや周囲の人々、出来事を表現しており、音楽を聴くだけで物語が頭に浮かぶような構成になっています。
  • 変化に富んだ音楽: ティルの性格や状況に合わせて、音楽の雰囲気が大きく変化します。穏やかなメロディーから激しい追跡劇まで、様々な表情を見せるのが特徴です。
  • オーケストラの高度な技巧: ティルの様々な表情や行動を表現するために、オーケストラの楽器が高度な技巧を駆使しています。

曲の構成と聴きどころ

  • ホルンによるティルの登場: 作品の冒頭、ホルンが軽快な旋律を奏で、ティルが登場します。
  • 様々なエピソード: ティルが市場で騒ぎを起こしたり、僧侶に扮して説教をしたり、恋に落ちたりと、様々なエピソードが音楽で描かれます。
  • 追跡と逃走: ティルが人々に追いかけられ、様々な手段を使って逃げる様子がスリリングに描かれます。
  • 最後は捕まる?: 最後はティルが捕まってしまうのか、それともまた新たな冒険へと旅立つのか、聴く人それぞれの解釈が楽しめます。

たいこ叩きのR・シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
速目のテンポでの開始です。控え目なホルンのテーマ。トゥッティのすさまじい響きは見事です。ダイナミックの変化が大きく、語り口の上手さを感じさせます。艶やかで存在感抜群のヴァイオリン・ソロ。ソロの前の金管の表情もとても豊かでした。整然としていながらも、凄い咆哮が聞かれます。裁判から絞首台の金切り声の描写なども見事でした。大編成のオケの機能美を見事に発揮したすばらしい演奏でした。

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★★
筋肉質のホルン。締りのある響き。とても機能的で敏感に反応するオケです。静寂感もあり集中力の高い演奏です。ティルの悪戯の様子が高機能なオケによって見事に表現されます。オケは屈託なく気持ちよく鳴り響きます。特に抜群のアンサンブルで切れの良い金管の響きは見事です。

筋肉質でしかも抜群のアンサンブルで鳴り響く高機能なオケを使って見事な描写でした。すばらしい演奏でした。

ワシリー・シナイスキー/読売日本交響楽団

シナイスキー★★★★★
速めのテンポで豊かな表情です。ホールに響く残響も豊かで、静寂感も感じます。とても厚みのあるトゥッティ。活発で反応の良いオケの演奏で、ティルのいたずらが目に浮かぶようです。金管も見事に鳴り響き、読響もとても上手いです。軽快で決して重くならない演奏が作品にピッタリです。

軽快なテンポと豊かな色彩でティルのいたずらを楽しげに表現したとても良い演奏でした。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

ショルティ★★★★★
活発な動きがあって筋肉質な響きです。金管も明快に鳴り響きます。色彩感もとても濃厚でR・シュトラウスのオーケストレーションがとても良く分かります。はじけ飛ぶような猛烈なエネルギーの放出です。オケの見事な機能を見せ付けられるような完璧なアンサンブルと輝かしい響き。濃厚な表現はありませんが、これだけ明快に鳴り響くオケの名人芸には脱帽です。

もう、こんなに見事に鳴り響くオケは出現しないのではないかと思わせるほど見事な演奏でした。濃厚な表現はありませんが、これだけ明快に鳴り響くオケの名人芸には脱帽です。
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ルドルフ・ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデン

ケンペ★★★★★
速いテンポでくっきりとした演奏です。深みのある美しい響きです。ティルのいたずらで大騒ぎになる雰囲気はありますが、とても整然としていて落ち着いた穏やかな演奏ですが、ここぞと言うところでは思い切って金管を強奏させます。テンポの動きもあります。最初は速めのテンポでしたが、途中からはゆったりとしたテンポで音楽に浸ることができます。

ショルティの豪快な筋肉質の演奏とは違いますが、穏やかでどっぷりと音楽に浸ることができる演奏はなかなか良かったです。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★★
軽快なティルのテーマ。濃厚な色彩で場面場面を描いて行きます。羊の皮独特の響きのティンパニが締まった響きで切り込みます。ウィーンpoが持っている濃厚な色彩を十分に生かした演奏です。後年のベルリンpoとの録音にも通じる引き締まった表現がとても良いです。厚みのある響きではありませんが、とても切れの良い演奏で金管が気持ちよく鳴り響きます。

ウィーンpoらしい濃厚な色彩で描かれた演奏で、とても表現は豊かでありながら整然と整った演奏は見事でした。
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佐渡 裕/RAI国立交響楽団

佐渡★★★★★
ゆったりとしたテンポで豊かな表情です。テンポの動きもあり、振幅も大きな演奏です。かなり作品の描写を意識した演奏で、ティルの愉快ないたずらが表現されて、場面場面の表現が変化します。オケも豪快に鳴らされて爽快です。

作品の描写を意識した演奏で、豊かな表現でした、オケも豪快に鳴らされて振幅の大きな演奏でした。
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クリストフ・エッシェンバッハ/シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭管弦楽団

エッシェンバッハ★★★★★
柔らかく伸びやかな冒頭。ティルのテーマは激しく活発です。その後は起伏の激しい演奏です。激しいホルンで市場の大騒ぎが表現されます。見事に鳴り響く伸びやかな金管が見事です。物凄くダイナミックな演奏でかなり聞き応えがあります。柔らかく繊細な弱音から、豪快に鳴り響く金管まで、とても表現も豊かな演奏です。テンポの動きも自然でとても良いです。

凄く振幅の大きな演奏で、柔らかく繊細な弱音から、豪快に鳴り響く金管まで、とても表現も豊でした。ライヴでありながらとても完成度の高い演奏でした。
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ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団

マゼール★★★★☆
穏やかな冒頭。音を短めに弾むようなホルンのティルのテーマ。ゆっくりとのっそのっそと歩くような表現です。とても大きく構えた大人の演奏です。金管がし突出することも無くどっしりとしています。その分、ティルのいたずらで大騒ぎするような雰囲気はありません。マゼールらしくテンポの大きな動きもあります。一体感のある充実した響きは素晴らしいです。死刑の場面ではEbクラの金切り声をゆっくり粘っこく表現したり、トゥッティで音量を抑えてクレッシェンドしたりこの辺はマゼールらしいです。冒頭の「むかしむかし」の弦のとても穏やかな表現もとても良いです。

ゆったりとしたテンポで大きく構えた演奏でしたが、所々でマゼールらしい大見得を切るような表現もあり、このような作品にはとても合っていました。オケの一体感のある響きも充実していてなかなか良かったです。
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トーマス・ダウスゴー/DR放送交響楽団

ダウスゴー★★★★☆
静寂感の中から静かに始まりました。ホルンのティルのテーマは音を短めに演奏します。ホールに響く残響が美しいです。色彩感は濃厚です。咆哮するホルン。僧侶に変奏した場面では弦が音を短めに演奏します。テンポが遅い部分では少し停滞する感じもありますが、大きくテンポを速める部分もあり変化があります。音圧としては感じませんが金管はかなり強く演奏しています。テンポの動きもありなかなか表現が豊かです。

色彩感も豊かでしたし、強弱の振幅も大きくなかなか良い演奏でしたが、テンポの遅い部分で少し停滞した感じがあったのが残念でした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/ロシア国立交響楽団

ロジェストヴェンスキー★★★★☆
速めのテンポで躍動感があって生き生きとした表情の演奏です。濃厚な色彩と豊かな歌で作品を描写します。ロシアのオケ独特の強く重い響きがあり、フワッとした柔らかさはほとんどありません。ロジェストヴェンスキーらしい濃厚でねっとりとした尾を引くような表現です。

かなり濃厚でねっとりとした表現で、フワッとした柔らかさはほとんどありませんでしたが、これはこれで良かったです。
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ベルナルド・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★
美しい響きを伴った演奏です。登場してくる楽器の表情もとても豊かです。シンバルやラチェットなども鮮明です。控え目なヴァイオリン独奏。奥行き感があって、美しい響きです。ただ、演奏が純音楽的で、描写性には若干欠けるように感じます。

カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ベーム R・シュトラウス「ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」★★★★
速めのテンポで始まります。テーマは一般的なテンポです。表情は豊かですが、カラヤンが指揮するベルリンpoの豪華絢爛な響きとは違い少しマットなくすんだ響きがします。ベルリンpoにしては珍しいカチンと硬い響きのシンバル。牛馬を解き放し、市場は大騒ぎになる場面でもおもちゃ箱をひっくり返したような色彩感溢れる音の洪水にはならず、整然としています。ヴァイオリ・ソロの最後をritしました。オケの響きが溶け合って一体感のある演奏ですが、その分R・シュトラウスのオーケストレーションが少し削がれているように感じます。

デヴィッド・ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

ジンマン★★★
微妙なテンポの動きがあります。トロンボーンは全開になりません。いたずらをたくらむティルの怪しい行動を表現するような演奏です。金管は常に余裕を残した美しい響きですが、ティルのいたずらで大騒ぎになるような雰囲気は表現されません。

かなり金管を抑えた演奏で、あまりエネルギーを放出するようなことはありませんでした。ティルのいたずらを描写するような演奏ではありませんでした。
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オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団

クレンペラー★★★
生々しく鮮度が高い音です。遠くから次第に近づいてくるティルのテーマ。私は相性が悪いのだと思いますが、クレンペラーの演奏は雄大と言えばその通りなのですが、凝縮された濃密さがあまり感じられません。テンポも頑として動きませんが、他の演奏では聞えないいろんな音が聞こえて来ます。作品の描写などはほとんどありませんが、新しい発見もさせてくれる演奏でした。

頑として動かないテンポ。作品の描写は無く、淡白な表現で、作品そのものを忠実に演奏したものでした。クレンペラーの演奏は何故か密度が薄く感じてしまいます。
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エーリッヒ・ラインスドルフ/ボストン交響楽団

ラインスドルフ★★★
ライヴ録音でデッドな響きですが、生き生きとして活発な演奏です。敏感に反応するオケがとても良いです。僧侶に変奏した場面はあっさりと淡白な表現です。デッドな分濃厚で引き締まった響きになっています。金管が強い音を長く吹き伸ばさず、すぐに音量を落とす部分が多く、ちょっと気になります。

速めのテンポで活発表現と濃厚な響きの演奏でしたが、金管が強い音を長く吹き伸ばさずすぐに音量を落とす表現が気になりました。
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ヨーゼフ・カイルベルト/バンベルク交響楽団

カイルベルト★★
あまり起伏が大きく無く穏やかな演奏です。打楽器が強調されています。オケの特性かあまり色彩感は濃厚ではありません。ティルのいたずらで大騒ぎなるような雰囲気はあまり表現されません。アンサンブルの緩い部分もあります。作品に対してはとても真面目なアプローチの演奏です。

とても真面目なアプローチで、作品の描写を積極的に表現した演奏ではありませんでした。
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ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

メータ★★
とても近いホルンのティルのテーマ。全体の響きはブレンドされて柔らかいです。ティパニが遅れたりするアンサンブルの乱れもあります。テンポの動きもありますが、録音にもよるのか、色彩感や表現はあまり伝わって来ません。「むかしむかし」のテーマが回帰すると、ゆったりとしたテンポで音量の変化も大きくたっぷりとした表現になります。

offぎみの録音だったのか、あまり色彩感が無く、トゥッティでは団子状態になるような響きでした。表現などもあまり伝わって来ない演奏で、あまり楽しい演奏には感じませんでした。
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ダリル・ワン/ヴィクトリア交響楽団

ワン
豊かな残響で、フワーっとした響きです。カメラワークが全く定まらないので、かなり変な映像です。アンサンブルの乱れは所々で見受けられます。色彩感や表現は豊かですが、雑然としていてキリッと締まった感じがありません。

雑然とした感じで締まりの無い演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・R・シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」の名盤を試聴したレビュー

R・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」

リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」は、ニーチェの哲学書『ツァラトゥストラはかく語りき』にインスパイアされた交響詩です。人間の精神が、生命の誕生から超人への昇華へと至る壮大な旅を音楽で描き出しています。

曲の魅力と特徴

  • 壮大なスケール: オーケストラの膨大な音響と、ドラマティックな展開が特徴です。
  • 哲学的な深み: ニーチェの哲学が音楽に昇華されており、聴く人に深い思索を促します。
  • 生命の賛歌: 生命の誕生、成長、そして超人への昇華という壮大なテーマが、力強く描かれています。
  • 象徴的な音楽: 各楽器が様々な象徴的な意味を持ち、物語を彩ります。

曲の構成と聴きどころ

  • 冒頭のトランペット: 印象的なトランペットのファンファーレは、生命の誕生を象徴しています。
  • 様々なテーマ: 「人間の運命」、「科学」、「愛」など、様々なテーマが音楽で表現されます。
  • クライマックス: 終盤の壮大なクライマックスは、人間の精神の究極的な到達点を表しています。

たいこ叩きのR・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1973年

カラヤン★★★★★
導入部、重量感のあるパイプオルガン。テヌートで演奏されるトランペット。二つの音は速く間隔を詰めて演奏します。硬質なティンパニ。色彩感豊かで最後に残るパイプオルガンも鮮明です。

世界の背後を説く者について、推進力のある冒頭。多声的で柔らかく伸びやかな弦のコラール。その後大きく盛り上がり、カラヤンのスタジオ録音らしく完璧なバランスの演奏です。

大いなる憧れについて、爽やかな響きで、豊かな表現の弦。色彩感もとても豊かです。カラヤンのライヴを聞くようなスピード感のある演奏です。

喜びと情熱について、オケ全力投球するような凄みがあります。溢れ出すような豊かな弦。トロンボーンが強く抜けて来ます。

墓場の歌、とても濃厚に歌うオーボエ。とても豊かな色彩のパレットです。他の演奏とは格が違うような感じがします。

学問について、凄く音量を落としたコントラバス。強弱の振幅もとても大きいです。後半の動きのある部分のも木管も通常よりも音量を落としてさりげなく演奏するのもなかなかです。

病より癒え行く者、伸び伸びと鳴り響くトロンボーン。すごい情報量です。前のめりでスピード感と凄みがあります。集中力もとても高いと思います。

舞踏の歌、艶やかで伸びやかなヴァイオリンの美しいソロ。色気たっぷりの濃厚なソロです。トゥッティの物凄い情報量と弓をいっぱいに使うような弦のスピード感と全開の金管のパワーは凄いです。

夜の流離い人の歌、嵐のように渦巻くトゥッティ。弦だけになるとこれまでの嵐が嘘のように静まります。

絶頂期のカラヤンとベルリンpoの演奏にあっぱれです。前のめりで凄みのある表現。物凄く振幅の大きな演奏で、表現もとても豊かでした。この曲のベストだと思います。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★★
導入部、超低域を含んでゴロゴロと力強いパイプオルガン。割とシャープなトランペット。続く二つの音は豪快に金管が鳴って間を開けて演奏しています。ミュートしてゴムが弾むように力強いティンパニ。分厚く豪快に鳴り響くトゥッティは爽快でもあります。

世界の背後を説く者について、混沌とせずに非常に明快です。柔らかく伸びやかな弦のコラールは非常に美しい。

大いなる憧れについて、メロディをくっきりと浮かび上がらせます。コントラバスも動きがはっきりと聞き取れます。

喜びと情熱について、とても良く交通整理されていて、分かりやすい演奏です。トロンボーンもほぼ全開です。

墓場の歌、あまり歌うことはなく、どちらかと言うとメリハリをはっきりと付けてダイナミックで明快な演奏をしています。

学問について、コントラバスの分厚い響きに他の楽器が乗ります。とても色彩感が豊かで眩いほどです。

病より癒え行く者、背後で複雑に動く弦がありますが、金管がくっきりと浮かび上がります。自然の動機のトゥッティは凄く分厚い充実した響きでした。トランペットやクラリネットもくっきりと明快です。

舞踏の歌、美しいヴァイオリン独奏。いろんな楽器の動きが手に取るように分かります。豪快に鳴るオケのパワーに圧倒されます。もの凄いエネルギーです。

夜の流離い人の歌、衝撃音よりもしっかりと音程が聞き取れる鐘。極端な弱音で演奏されることはありません。弱音でも明快に楽器を鳴らします。

オケを豪快に鳴らした明快な演奏で、ダイナミックです。とにかくオケが高性能です。これだけ豪快に鳴らし切られると圧倒されます。素晴らしい演奏でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年

icon★★★★★
導入部、かなり低い音も含んでいるパイプオルガン。間接音を含んで遠くから響くようなトランペット。続く二つの音は速めです。ティンパニは軽く遠目に響きます。トゥッティでも全開にはならず、テンポも速めで力みの無い演奏です。

世界の背後を説く者について、静寂感の中から弦のトレモロが響きます。弦のコラールは間を取ったりして歌います。とても美しいです。とても積極的な表現意欲を感じさせる演奏です。夢心地のような美しさです。

大いなる憧れについて、コントラバスは残響を伴っていて動きははっきりしません。

喜びと情熱について、波が押し寄せるように浮き沈みする表現。見事に鳴り響くオケ。ベルリンpoの機能美を見せつけるようです。

墓場の歌、静かですが、複雑に動くパートがさらりとやってのけます。

学問について、重量感のあるコントラバス。モノトーンのようなマットな色彩からヴァイオリンが登場してから華やかで色彩感が豊かになります。

病より癒え行く者、トロンボーンも抑え気味でマットな響きです。自然の動機のトゥッティは巨大な響きでした。トランペットは奥まったところから軽く演奏されるのが次第に強くなります。

舞踏の歌、ニュートラルですが、僅かに艶を感じさせるヴァイオリン独奏。とても表現が積極的でカラヤンがR・シュトラウスを得意にしていたのが分かる気がします。自信を持って表現しています。洪水のように溢れ出す豊かな音。トゥッティのエネルギー感は凄いものがあります。

夜の流離い人の歌、硬質な鐘の響き。広い空間を感じさせる弦。静寂の中に響く弦とクラリネット。このクラリネットも豊かな表現です。

導入部をこれ見よがしの演奏はせずに、後に続く部分を充実した表現で演奏しました。弱音の静寂感とトゥッティの巨大な響きの対比も見事でした。カラヤンの自信に溢れた表現も素晴らしかったです。

ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
導入部、割と近く、明快に響くトランペット。抑え気味のトゥッティ。音像大きく柔らかく伸びやかなティンパニ。ゆっくりと降りてくるトロンボーン。ゆったりと大きいスケールの演奏です。

世界の背後を説く者について、伸びやかで豊かに歌う弦のコラール。ロスpoの弦がとても分厚く伸びやかです。

大いなる憧れについて、デッカの優秀な録音で、細部まではっきりと聞こえます。とても立体的で生き生きとしています。

喜びと情熱について、明快な動きのホルン。とても表現が積極的です。トロンボーンやチューバもくっきりと浮かび上がり濃厚な色彩感です。

墓場の歌、清涼感のある弦。この頃のメータの表現意欲が旺盛で生き生きとした演奏がとても良いです。

学問について、活発で生気に溢れた躍動感のある演奏です。

病より癒え行く者、オケが一体になって動くアンサンブルは見事です。演歌のこぶしが回るようなねっとりとした濃厚な表現です。もうこれ以上表現を付けられないと思うくらい表現し尽くされています。

舞踏の歌、艶やかでクローズアップされたヴァイオリンのソロ。ソロも木管もとても豊かな表情です。活発に舞い踊ります。濃厚で鮮明な色彩。強く突き刺さるトランペット。分厚く情報量の多いクライマックス。

夜の流離い人の歌、情報量の多いトゥッティ。表現意欲も旺盛でとても豊かに歌います。

この頃のメータを象徴するような豊かな表現の演奏でした。ねっとりとした濃厚な表現はなかなか聞き応えのあるものでした。

アントニオ・パッパーノ/ローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団

icon★★★★★
導入部、深みのあるパイプオルガン。遠くから響くトランペット。二つの音をしっかりと分けて演奏します。オケは少し離れたところにいて、トゥッティでもはっきりと弦が聞えます。

世界の背後を説く者について、淡々とした弦のコラール。

大いなる憧れについて、爽やかな響きの弦。僅かに遠い金管。

喜びと情熱について、奥まったホルン。起伏が大きく濃厚な色彩と積極的な表現です。響きも引き締まっています。

墓場の歌、清涼感があって美しい弦。

学問について、深みのあるコントラバスとその上に乗る高弦のサラサラとしたコントラストも見事です。

病より癒え行く者、鮮明な録音もあって、細部の動きも明快です。トランペットは明るくくっきりとしています。

舞踏の歌、たっぷりとお色気たっぷりのヴァイオリンのソロ。熱気のあるトゥッティも見事です。

夜の流離い人の歌、鮮明な色彩と彫りの深い表現。弦だけになるとゆったりとしたテンポでロマンティックな表現です。

積極的な表現で、鮮明な色彩感と熱気を感じさせるトゥッティと聞き所の多い演奏で、なかなか良かったです。
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ファンホ・メナ/BBCフィルハーモニック

icon★★★★★
導入部、かなり力強いパイプオルガン。二つの音は分かれています。速いテンポのティンパニ。全体に速いテンポであっさりと演奏します。

世界の背後を説く者について、鮮明で情報量が多いです。テンポが揺れて歌う弦のコラール。細部の動きも克明に表現されます。

大いなる憧れについて、程よく歌い、起伏にとんだ立体的な演奏です。

喜びと情熱について、表現意欲が旺盛で、大きな起伏のある演奏です。トロンボーンはあまり突き抜けて来ませんが、オケが一体になった盛り上がりはなかなかです。

墓場の歌、くっきりと浮かび上がる木管。

学問について、コントラバスはゴリゴリと硬質な響きです。登場してくるパートがとても鮮明に描かれています。

病より癒え行く者、うごめくような低音楽器の動きが克明に描かれています。激しさもあります。

舞踏の歌、くっきりとしていますが、速めのテンポであっさりと進むヴァイオリンのソロ。動機の変化に伴って雰囲気がガラッと変化します。激しいトゥッティ。

夜の流離い人の歌、激しいまま突入します。次第に落ち着いて弦だけになると伸びやかで広大な雰囲気です。ヴァイオリンのソロも豊かに歌います。

これ見よがしな導入部では無く、作品を全体として捉えた演奏で、表現の振幅もとても大きく起伏に富んだ演奏でした。
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ルドルフ・ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデン

icon★★★★★
導入部、トゥッティをかなり抑えて演奏しています。ティンパニは硬くミュートされたような音です。三度目のトランペットの後は速いテンポであっさりとした演奏でした。

世界の背後を説く者について、速めのテンポであっさりと演奏される冒頭。柔らかい弦のコラールですが、あっさりとしていて大きく歌うことはありません。

大いなる憧れについて、激しい起伏は無く、比較的穏やかな表現ですが最後で急激に盛り上がりました。

喜びと情熱について、この部分はティンパニのクレッシェンドも含めて動きもありかなり激しい表現です。

墓場の歌、あっさりとしたオーボエ。

学問について、かなり抑えたコントラバス。

病より癒え行く者、ここではかなりオケを開放して強い響きの自然の動機でした。トランペットのハイトーンは少し苦しそうでした。かなりエネルギッシュです。

舞踏の歌、大きな表現は無く、自然に流れていくヴァイオリンのソロ。オケが一体になって動く感じはとても見事です。トゥティのパワー感もなかなかです。激しく吠える金管。

夜の流離い人の歌、強く鳴らされる鐘。弱音をことさら抑えることなく豊かな表現です。

あっさりとした表現があったかと思うと激しく吠える金管もあったりと、とても多彩な表現でした。さすがにR・シュトラウスを得意にしていたケンペらしい演奏でした。
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クラウス・テンシュテット/シカゴ交響楽団

★★★★★
導入部、シカゴsoらしく明快に鳴り響く金管。ティンパニも重量感があります。堂々とした演奏でした。

世界の背後を説く者について、イコライザーでいじってあるようなメタリックな響きの弦のコラール。多声的な響きは感じられませんでした。

大いなる憧れについて、ザラザラとした響き。唸りを上げるコントラバス。かなり起伏の激しい演奏です。

喜びと情熱について、粘っこい表現です。トロンボーンも思いっきり突き抜けて来ます。かなり金管が吠えます。

墓場の歌、オーボエや弦もくっきりとしていて濃厚です。

学問について、後半の木管や弦は活発な動きで躍動感があります。

病より癒え行く者、オケはかなり積極的に演奏しています。自然の動機の前はかなりテンポを動かしました。巨大な自然の動機。登場する楽器も明快な色彩で描かれていて濃厚です。

舞踏の歌、一音一音に感情が込められたようなヴァイオリンのソロ。豊かな表現で活発に動くオケ。生き生きとしてとても活発です。クライマックスで全開になります。

夜の流離い人の歌、激しく金管が吠えます。感情のこもった弦。

テンシュテットらしい振幅の大きな、感情のこもった濃厚な表現の演奏でした。オケもテンシュテットの要求に見事に応えています。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・R・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の名盤を試聴したレビュー

R・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」2

たいこ叩きのR・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」名盤試聴記

カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★
導入部、重低音までは含んでいないですが、それらしく響くパイプオルガン。モワーッとした響きで始まるトランペット。トゥッティで入る二つの音は速く演奏されます。柔らかいティンパニ。盛り上がりはあり賑やかになりますが、少し響きが薄いような感じがあります。

世界の背後を説く者について、弦のトレモロがモヤーッとした感じになります。弦のコラールは艶やかではありませんが、サラッとしていて美しいです。

大いなる憧れについて、コントラバスが唸りを上げますが、もやもやしていてあまり力がありません。

喜びと情熱について、活発に動きます。オケも集中力が高く、積極的に表現します。

墓場の歌、録音は古いので低域は軽いですが、1958年の録音とは思えない美しい音です。

学問について、混沌としている音楽が次第に目を覚ますように明確になって来ます。

病より癒え行く者、エネルギッシュに音が交錯しますが表現は自然体で、特に濃厚な表現などはありません。控え目なトランペット。音の洪水のように溢れ出しますが眩い色彩感ではありません。

舞踏の歌、ヴァイオリン独奏は枯れた響きです。オケが一体になったガッチリとした骨格はすばらしいです。噴水のように溢れ出す音。色彩感はあまりありませんが、密度は濃いです。

夜の流離い人の歌、鐘は衝撃音が強く響きはあまり聞き取れません。最後はあまり静寂感はありませんでした。

このような曲の場合、録音の古さはどうしてもハンデになりますが、自然体でガッチリとした演奏はなかなか聞きごたえがありました。

マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★
導入部、速いテンポで軽く演奏されます。この部分を豪快には演奏せず、とてもあっさりとした演奏でした。

世界の背後を説く者について、深みのある冒頭。自然な弦のコラール。この部分も粘ったような表現は無く比較的あっさりと演奏されます。

大いなる憧れについて、コンセルトボウらしい濃厚な色彩感と奥行きのある演奏で生き生きとしています。

喜びと情熱について、雄大な響きです。柔らかいトロンボーン。

墓場の歌、豊かに歌うオーボエ。色彩感が濃厚で情報量も多い感じがします。

学問について、最初の部分はとても静かです。躍動感のある木管。

病より癒え行く者、生き生きとした動きのある表現です。木管も生き生きとしています。グロッケンは奥行きを感じさせる響きです。

舞踏の歌、あっさりとした表現のヴァイオリンのソロですが、他の楽器と有機的に組み合わさって演奏されて行きます。

夜の流離い人の歌、あっさりとサラッと流れて行きます。

あまり大きな表現は無く、あっさりとした演奏でしたが、濃厚な色彩感はさすがコンセルトヘボウと言う感じでした。
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ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

メータ★★★★
導入部、色んな音を含んだパイプオルガン。遠く暗闇から響くようなトランペット。金管の二つの音で一気に太陽が差し込むようです。ティンパニは硬質な音であまり響きが残りません。かなり派手な色彩感です。アメリカのオケらしく豪快に鳴り響く金管。

世界の背後を説く者について、混沌とした複雑さはあまり感じさせない冒頭。力が抜けて自由に動く弦のコラール。とても豊かな響きです。

大いなる憧れについて、抑えた部分とトゥッティの振幅がとても大きいです。

喜びと情熱について、ロサンゼルスpoとの旧録音のような積極的な表現ではありませんが動きは活発です。

墓場の歌、清涼感があって艶やかな弦。

学問について、控えめな表現で穏やかに進みます。木管も躍動感は無く穏やかです。

病より癒え行く者、金管は明快に鳴り響きます。トランペットが浮き上がるほどくっきりと演奏します。

舞踏の歌、強弱を明快に付けたヴァイオリンのソロ。情報量が多く豊かな弦。シャープな響きで、一気に爆発するトゥッティはなかなかの迫力です。

夜の流離い人の歌、

ロサンゼルスpoの時代に比べるとメータも大人になったなーと感じさせる演奏でしたが、その分面白みには欠ける感じは確かにありました。
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ヴォルフガング・サヴァリッシュ/フィラデルフィア管弦楽団

★★★☆
導入部、左右いっぱいに広がるオケ。ティンパニは速いテンポです。音が短めで少しせっかちでした。

世界の背後を説く者について、ここも速いテンポで落ち着きません。弦のコラールはゆったりと穏やかで美しいです。

大いなる憧れについて、オケは激しく動きますが、整然としています。

喜びと情熱について、フィラデルフィアoとは思えないような渋い響きで、色彩感はあまり感じません。音楽の起伏もあまり大きく無く、自然に流れて行きます。

墓場の歌、オーボエもあまり感情を込めずあっさりと演奏されます。

学問について、伸びやかで穏やかにいろんな楽器が絡みます。木管もあまり躍動感がありません。

病より癒え行く者、サヴァリッシュは表面的な効果には全く気持ちが行っていないのでしょう。純音楽として誠実に演奏することを徹底しているようです。ひっかかるところは全く無くサラッと流れて行きます。

舞踏の歌、速めのテンポで躍動感があるヴァイオリンのソロ。かなり積極的にオケをドライヴしています。トゥッティはかなりのエネルギー感です。

夜の流離い人の歌、とても静かで穏やかな弦。

外面的な効果には目もくれず、ひたすら作品を忠実に音にする演奏でした。オーマンディの頃のフィラデルフィアoとは全く違う演奏だったと思います。
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クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
導入部、超低域はあまり含まれずガラガラと鳴るパイプオルガン。かなり遠くから響くトランペット。続く二つの音は間隔を開けて余韻を残して演奏します。あまり強打はしないティンパニ。モノトーンのように色彩感の無い演奏です。

世界の背後を説く者について、静かに淡い色彩で、柔らかい表現です。

大いなる憧れについて、オフぎみの録音で、あまり激しい動きが伝わってきません。

喜びと情熱について、うねりのようになって激しい演奏をしているようなのですが、この録音からはストレートには伝わってきません。

墓場の歌、ヴァイオリンの冷たい響き。

学問について、極めて抑えた音量で演奏される低弦のフーガ。木管もあまり活発な表現はありません。

病より癒え行く者、自然の動機のトゥッティは分厚く大きい響きでした。不気味な低弦。トランペットやEbクラがR・シュトラウスらしい雰囲気を醸し出します。激しくなってもやはりモノトーンのような色彩感です。

舞踏の歌、テンシュテットらしい踏み込んだ表現もあまり感じません。やはりライヴじゃないと本領を発揮しないのでしょうか。穏やかで広々とした雰囲気です。ホルンはかなり咆哮しています。

夜の流離い人の歌、かなり低い響きを伴った鐘が空気を一変します。ヴァイオリンのソロも艶やかなのですが、色彩感はモノトーンです。

テンシュテットの演奏としては、あまり踏み込んだ表現が無かったように感じました。響きもモノトーンで音場感もオフぎみで熱気が伝わってきませんでした。この頃のEMIの録音の悪さなのでしょうか。

クリストフ・フォン・ドホナーニ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
導入部、くすんだトランペット。アンサンブルがあまり良くありません。音も短めでどっしりとした感じはありません。

世界の背後を説く者について、柔らかく大きなメタがあったりする弦のコラール。録音によるものか、弦の艶やかさはありません。

大いなる憧れについて、マットな弦。左右いっぱいには広がらず少し奥まったオケ。

喜びと情熱について、offな録音によるものなのか、オケの激しさはほとんど伝わって来ません。

墓場の歌、あまり色彩感は無く、穏やかです。

学問について、自然体で淡々と音楽が進んで行きます。滑らかな木管。

病より癒え行く者、くっきりと浮かぶトランペット。

舞踏の歌、楽しそうに戯れるヴァイオリンのソロと木管。表現は控えめですが、節度のある表現です。トゥッティでもオケは全開にならず、落ち着いた表現です。

夜の流離い人の歌、鐘が鳴り響き暗闇に落ちて行くようなトゥッティ。とても落ち着いた弦。

弱音の落ち着いた穏やかな表現はとても良かったですが、絶対に全開にならないトゥッティは少し欲求不満になりそうな感じでした。
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ジュゼッペ・シノーポリ/シュターツカペレ・ドレスデン

icon★★★
導入部、倍音が強くあまり低い響きを伴わないパイプオルガン。速いテンポでくすんだ響きのトランペット。さらに前へ進むようなティンパニ。この演奏もかなりあっさりとしていました。

世界の背後を説く者について、平面的で浅い音場感。感情を込めて歌う弦のコラールですが、多声的な感じはあまりありません。

大いなる憧れについて、モノトーンのように渋い色彩感。激しい起伏はありません。

喜びと情熱について、弦を中心に大きな流れから、トロンボーンが突き抜けて来ます。

墓場の歌、たっぷりと歌うオーボエ。

学問について、かなり音量を絞ったコントラバス。静かに穏やかに進みます。

病より癒え行く者、トランペットは高音が苦しそうです。

舞踏の歌、ゆったりとしたテンポでさらにテンポが動き粘っこい表現のヴァイオリンのソロ。かなり激しく感情がこもった盛り上がりです。

夜の流離い人の歌、弦だけになるととても穏やかで落ち着いた雰囲気です。

モノトーンのように渋い色彩と比較的控えめな表現の演奏でした。
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ロリン・マゼール/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★
導入部、遠くから響くトランペット。ゆっくりと二つの音を演奏します。ティンパニはミュートしたように響きが残りません。全体の響きからティンパニだけが浮いています。マゼールらしくテンポを大きく落とす部分もありました。

世界の背後を説く者について、混沌としてゆったりとした冒頭。テンポも微妙に動きます。ゆっくりとたっぷり歌う弦のコラール。切々と歌い上げて行きます。

大いなる憧れについて、ゆっくりと落ち着いた表現で、あまり起伏の大きな演奏にはなりません。

喜びと情熱について、落ち着いたテンポで音楽も大きな動きは無くどっしりとしています。トロンボーンも遠くから響くようで大きな起伏にはなりません。

墓場の歌、大きな流れの中で描いているようで、激しい起伏や大きな表現はありません。

学問について、静かで穏やかな弦。木管も躍動感は無く穏やかです。

病より癒え行く者、終始遅いテンポで大きな起伏はありませんが、良く鳴るオケを使って明快な響きの演奏です。透明感が高くとても見通しの良い響きです。

舞踏の歌、ゆっくりと一音一音確かめるようなヴァイオリンのソロ。テンポが遅い分音楽の密度も薄くなっているような感じを受けます。オケもこの遅いテンポを維持し切れていないような感じがします。

夜の流離い人の歌、ここも遅いテンポで一音一音丁寧に演奏して行きます。弦だけになるととても静かですが、やはり密度が薄いような感じがします。

とても遅いテンポでしたが、表現は淡白で大きな起伏も無く、少し密度が薄い感じがしました。
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ヘスス・ロペス=コボス/ガリシア交響楽団

コボス★★☆
導入部、大太鼓をダブルストロークでロールしています。奥まってくすんだトランペット。控えめな金管。ティンパニも無理なく美しい響きです。軽く美しい演奏でした。

世界の背後を説く者について、音量を抑えた冒頭。枯れて淡々とした弦のコラール。

大いなる憧れについて、穏やかな弦。コントラバスも唸りを上げることは無く穏やかに進みます。

喜びと情熱について、マイルドな響きでオケに一体感があります。

墓場の歌、

学問について、かなり音量を抑えたコントラバス。ジワジワと感情が込み上げて来るような演奏です。

病より癒え行く者、爽やかな弦。クラリネットも透明感があります。鋭い響きのトランペット。

舞踏の歌、大きな表現は無く、あっさりと演奏されるヴァイオリンのソロ。ティンパニが控えめなので、あまり強烈な盛り上がりにはなりませんが、整った安定感のある演奏です。

夜の流離い人の歌、ここでも控えめな表現で入りました。弦だけになるととてもマイルドな柔らかい演奏です。

とても軽くあっさりとした表現で、私の持っているイメージとは正反対の演奏でした。
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ピエール・ブーレーズ/シカゴ交響楽団

icon★★
導入部、遠くから日が昇るようなトランペット。金管の二つの音はしっかりと離れて演奏されます。シカゴsoの演奏ではありますが、これ見よがしに金管を咆哮させることもなくとても地味な演奏で枯れた響きです。

世界の背後を説く者について、少し遠い金管。落ち着いて美しい弦のコラール。ブーレーズらしい鋭利で冷たい響きです。

大いなる憧れについて、offぎみの録音にもよるのか、とてもあっさりとした淡白な演奏です。

喜びと情熱について、表現の彫が深く無く、平板な表現です。トロンボーンは突き抜けて来ます。チューバは柔らかい響きです。

墓場の歌、作品そのものを忠実に再現する演奏なのだと思いますが、あまりにも表現が無いので、不満になります。

学問について、とても静かな低弦。活発な動きは無く穏やかです。

病より癒え行く者、メータの演奏にくらべると、とても淡白です。響きも浅く、あっさりとしているので、あまり魅力を感じません。オケは整然としていて楽々と演奏しています。

舞踏の歌、offぎみで枯れたヴァイオリンのソロ。目だった表現も無くサラッと流れて行きます。雑念を廃して、作品そのものを忠実に再現することの意味はあると思いますが、聞いていてここまで楽しくないとさすがにまいってしまいます。

夜の流離い人の歌、全く思い入れの無いような淡白な表現。弱音部分の緊張感もありません。

感情移入を避けて、作品そのものを表出した演奏だと思いますが、あまりにも表現が無く、聞くのが退屈でした。ブーレーズの若い頃の先鋭的な演奏から尖った部分を取り去ってしまうと、何を聞いて良いのか分からなくなります。
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ヘンリー・ルイス/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ルイス
導入部、硬い響きのパイプオルガン。二つの音はカラヤンの演奏のように詰めて演奏されます。ティンパニが入っても人工的に付けられた金属的な響きが残ります。速めであっさりとした演奏でした。

世界の背後を説く者について、ここでも速いテンポの冒頭。伸びやかさも無く、硬い響きの弦のコラール。

大いなる憧れについて、表情が硬く、四角四面な感じの演奏です。団子になるコントラバス。

喜びと情熱について、表現が抑えられているような感じがします。トロンボーンは強くはっきりと演奏されました。

墓場の歌、なんとなく演奏されている感じで表現に深みがありません。

学問について、多層的に絡み合う楽器があまり聞えず単純な演奏になっています。木管にも躍動感はありません。

病より癒え行く者、カラヤンの演奏の後に聞くととても不利なのですが、情報量の少なさはどうしても感じてしまいます。かなり寂しい演奏です。

舞踏の歌、右と左に分かれた音場感が不自然です。ゆっくりと歌うヴァイオリンのソロはなかなか良いです。全体の響きが薄く寂しい感じがあります。ホルンが激しく咆哮しますが、全体の響きはやはり薄いです。

夜の流離い人の歌、かなり強く演奏されるホルン。弦だけになってもあまり静まりません。

情報量が少なく、響きが薄く、一本調子で荒削りな感じがしました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・R・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の名盤を試聴したレビュー

シベリウス 交響詩「フィンランディア」

シベリウスの「フィンランディア」は、フィンランドの国民的な象徴として愛されている、壮大な交響詩です。

フィンランドの魂を歌った名曲

  • フィンランドの自然と人々: フィンランドの広大な自然、厳しい冬、そして自由を求める人々の姿を音楽で表現しています。
  • 民族の誇り: 19世紀末、ロシア帝国の支配下にあったフィンランドの人々は、この曲に自分たちの誇りと希望を重ね合わせました。
  • 自由への願い: 抑圧された状況下で生まれたこの曲は、自由への切なる願いを込めています。
  • 力強いメロディー: 力強いメロディーとオーケストラの壮大な響きは、聴くものの心を打ち震わせます。

曲の構成と聴きどころ

  • 荘厳な序奏: 静かに始まり、徐々に高揚していく序奏は、聴くものの心を掴みます。
  • 民族的な旋律: フィンランドの民謡を思わせるような旋律が、郷土への愛着を深めます。
  • クライマックス: 力強いコーラスとオーケストラの合奏によるクライマックスは、聴く者に感動を与えます。

たいこ叩きのシベリウス 交響詩「フィンランディア」名盤試聴記

レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★★
暗く悲しみがこみ上げるような重い響きの序奏。木管に続く弦がマルカートぎみに一音一音刻みつけるように演奏します。感情を込めて歌うオケ。ティンパニも強く入ります。Allegro moderatoの僅かにくすんだ金管。細身のホルン。Allegroのフィンランディア賛歌は人数があまり多くは無い感じで発音もはっきりとしています。静かにはじまりますが、次第に力強く国民の結束を呼びかけるような歌でした。最後は合唱も加わって壮大で力強く終わりました。

フィンランドでは第二の国歌と言われる曲で、ヘルシンキpoにとっては十八番でしょう。感情の込められた演奏で、フィンランディア賛歌も次第に力強くなり、最後も壮大で力強いものでした。

コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
長い音をクレッシェンドして重苦しい雰囲気を演出していますが音そのものは明るく良く鳴っています。木管に続く弦は軽くアクセントを付けています。悲しみがにじみ出ます。Allegro moderatoはゆったりとしたテンポですが、カラヤンの演奏ほど遅くはありません。Allegroは力強いホルン。見事に揃った弦のアンサンブル。感情を込めて歌うフィンランディア賛歌。トゥッティの見事な充実した響きです。最後はボストンsoとの録音のようなせっかちにはならず堂々したバランスの良い終結でした。

明るい響きでしたが重苦しい雰囲気や悲しみを上手く演出した序奏。Allegroからの力強いホルンや精度の高いアンサンブル。感情を込めたフィンランディア賛歌。トゥッティのロングトーンの充実した響き。どこを取っても満足いく演奏でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★★
少し奥まっていますが、充実した響きです。重苦しい弦。どっしりとした安定感があります。ロシアの圧政に苦しむ重苦しさがとても良く表現されています。テンポが速まって力強い演奏になります。フィンランディア賛歌はあまり粘らずにあっさりと演奏されます。最後は輝かしく勝利の歓喜に溢れています。

とても描写力のある演奏で、場面場面の表現がとても上手く説得力のある演奏でした。若干奥まった音場感でしたが、トゥッティの厚みなどはさすがにベルリンpoだと感じさせられました。
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ネーメ・ヤルヴィ指揮 イェーテボリ交響楽団

ヤルヴィ★★★★★
速めのテンポで振幅も大きく表現の豊かな序奏。木管や弦も重苦しい雰囲気があります。Allegro からはさらに速いテンポで快活な表現でとても積極的です。フィンランディア賛歌はロシアの圧政に苦しむ悲哀を歌うような陰のある演奏です。金管も明快に鳴り響き、ティンパニのクレッシェンドも強烈な感情がとてもこもった演奏でした。

速めのテンポで、大きな表現と明快に鳴り響く金管による振幅の大きな演奏で、感情のこもった演奏でした。
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山田 和樹指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 東京混声合唱団

山田 和樹★★★★☆
良くブレンドされた伸びやかな響き。木管も美しく繊細です。感情のこもった美しい歌もとても良いです。軽く伸びやかな金管もとても美しいです。フィンランディア賛歌は合唱の人数が少なく、大きなまとまりがありません。

力の入った演奏では無く、力を抜いて軽く演奏した感じでしたが、歌も美しく伸びやかでとても良い演奏でした。
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ユッカ=ペッカ・サラステ指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

サラステ★★★★☆
奥まったところから響く少し明るい響き。不安感のある弦。トゥッティでも咆哮することは無く、軽くスマートな演奏です。客席に陣取る合唱による、フィンランディア賛歌は感情が込められて一体感のあるとても美しい歌唱です。最後も力みの無い軽く涼しげな響きでした。

てともすっきりとした涼しげな演奏で、重苦しさから勝利に満ちた輝かしい変化はあまりありませんでしたが、スマートな演奏は魅力がありました。
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ロリン・マゼール指揮 ピッツバーグ交響楽団

マゼール★★★★☆
なだらかな音の動きの序奏。ゆっくりと悲哀を感じさせる木管と弦。たっぷりと感情のこもった演奏です。Allegroはゆっくりとしたテンポで浮き上がるホルン。アゴーギクを効かせて歌うフィンランディア賛歌。最後は壮大でした。

マゼール独特の言葉は悪いですが、こねくり回すような変化球の演奏でしたが、作品が大曲ではないのであまり気になりませんでした。良い演奏だったと思います。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★
ギラギラとして明るく力強い序奏。続く木管も豪華な響きです。弦はアクセントはありますが、レガートの中にアクセントのような感じであまりはっきりと区切る感じではありませんでした。Allegro moderatoはゆっくりと一音一音区切るように演奏します。Allegroに入ると急にテンポが速くなります。分厚い弦。いろんなパートが交錯するオーケストレーションを上手く表現しています。フィンランディア賛歌はあまり感情を込めずに淡々と演奏します。弦の賛歌はとても美しくうっとりします。シンバルはオケの編成に比べると少し径が小さいような感じがします。最後は豪華絢爛な圧倒的な響きで終わりました。

冒頭から明るい響きで、圧政に苦しむような苦悩の表現あありませんでした。Allegro moderatoの遅いテンポは少し間伸びした感じでした。ベルリンpoの機能は見事でしたし、豪華絢爛な響きも圧倒的でしたが、やはりシベリウスの音楽にしては分厚過ぎるように感じました。

フランツ・ウェルザー=メスト指揮 グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団

ウェルザー=メスト★★★★
地底から湧き上るような重厚な冒頭の響きは見事です。悲しみが溢れる木管と弦。サラリと爽やかに響く金管。テヌートぎみのホルン。フィンランディア賛歌もあまり感情を込めた歌ではなくあっさりと演奏しました。最後もバランスの取れた冷静な響きで終わりました。

あまり大きな振幅は無くあっさりと軽い演奏でしたが、響きは充実したものでした。
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マリス・ヤンソンス指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団

ヤンソンス★★★★
豊かな残響に広がる悲痛な響き。まとまりの良い演奏です。Allegro moderatoで一気にテンポが速くなります。シャープなトランペット。Allegroでさらにテンポが速くなって歯切れ良く爽やかな響きの演奏になります。フィンランディア賛歌はあまり感情を込めずあっさりと演奏します。明るく爽やかな響きで締めくくりました。

冒頭の悲痛な響きとAllegroからの歯切れの良い爽やかな響きとの対比もなかなか良かったです。ただ、Allegro moderatoからのテンポが少し速過ぎるような感じがしました。
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オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★
豊かな残響を伴って、遠くから響いてくるような序奏。悲哀に満ちた木管と弦。感情を表に出した大きな表現ではありませんが、内面からジワジワと込み上げてくるような表現です。Allegroからの金管は抑えられて軽く演奏していますが所々でかなり強く演奏することもあります。フィンランディア賛歌は速めのテンポであっさりと演奏しています。

大きな表現はありませんでしたが、内面から湧き上るような表現でしたが、フィンランディア賛歌はとてもあっさりとした演奏でした。
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コリン・デイヴィス指揮 ボストン交響楽団

icon★★★
底光りするような冒頭ですが、少し響きが軽い感じで重苦しさはありません。木管に続く弦はほとんどアクセントを付けずに演奏しました。Allegro moderatoは派手さの無い金管。暗く緊張感のある弦。Allegroは浅い響きの薄っぺらいホルン。トライアングルがかなり外側を叩いているのかジーンと響きます。あっさりとしたフィンランディア賛歌。最後はせっかちなテンポであっけなく終わりました。

渋い響きですが、重苦しさはあまり無く、表現もあっさりとしていて、最後もせっかちなテンポであっけなく終ってしまいました。

シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団

デュトワ★★★
デッドで浅い響きの冒頭。Allegro moderatoからのくすんだ金管。豊かな表情の弦。Allegroからはあまり金管の咆哮は無く軽く演奏しています。ゆったりと歌い、伸びやかで美しいフィンランディア賛歌。

フィンランディア賛歌は伸びやかで美しかったのですが、金管が欧米のオケのように爽やかに鳴りきらないもどかしさがありました。
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ホルスト・シュタイン指揮 NHK交響楽団

ホルスト・シュタイン★★
速めのテンポですが、木管や弦の悲しい表現は十分です。ホルスト・シュタインらしい渋い響きです。フィンランディア賛歌もあっさりとした表現で、さっさと進みます。勝利感に満ちた開放的な最後にはならず、渋い響きのまま終わりました。

速めのテンポであっさりとした表現で、響きも渋いものでした。
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ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★
若干音を短めに演奏する金管。トランペットが強く入って来ます。途中一旦音量を落とす部分もありました。豪快に演奏される弦には重苦しさはありません。明快に鳴り響く金管。ホルンに重なるフルートもはっきり聞えてこの当時のマルチマイクの録音の異常なバランスの部分もあります。フィンランディア賛歌の合唱は鎮魂の祈りのような厳粛さは無くかなり強く、絶叫するような感じもあり、しっとりと穏やかな感じではありません。最後は力強く豪快な響きで終わりました。

明快に鳴り響く金管。絶叫するような合唱など、穏やかな部分は無く、終始押しまくるような演奏で、高性能なオケを見せ付けるような演奏に感じました。
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ヴァシリー・ペトレンコ指揮 ロイヤル・リバプール・フィルハーモニー管弦楽団

ペトレンコ★★
奥まっていて少し浅い響きです。あま感情が込められていない木管と弦ですが、テンポの動きが沈んだ感情を表現しているようです。咆哮するホルンですが、少し雑な感じがします。フィンランディア賛歌は速めのテンポであっさりと演奏されます。最後もかなり力の入った響きで終わりました。

かなり力の入ったトゥッティで、振幅の大きな演奏でしたが、少し雑な感じがありました。
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パーヴォ・ヤルヴィ指揮 エストニア国立交響楽団

ヤルヴィ★★
とても軽い響きの冒頭。その後の木管、弦もあっさりと進みます。Allegro moderatoに入るととても落ち着いたテンポで確実に進みます。感情移入よりもアンサンブルの確実さを優先したようなカチッとした演奏です。フィンランディア賛歌は男声合唱のみのようです。祈りのような穏やかさはありません。最後はゆっくりと広大な広がりのある演奏で終わりました。

オケの技量を考えてのテンポ設定なのか、遅めでカチッとしたアンサンブルで、柔軟な動きはありませんでした。フィンランディア賛歌も祈りのような荘厳さ無くちょっと残念でした。
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アリ・ラシライネン指揮 ラハティ交響楽団

ラシライネン
奥まったところから響いてくる序奏。テヌートぎみに演奏するトランペット。あっさりとした木管。Allegroからも軽く演奏される金管。フィンランディア賛歌もとてもあっさりとしていますが丁寧な演奏です。作品に対する思い入れや共感はほとんど無いように感じます。

丁寧な演奏ではありましたが、終始軽くあっさりとした表現で、作品への思い入れや共感は感じられませんでした。
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フリッツ・ライナー指揮 シカコ交響楽団

ライナー
かなりデッドでトロンボーンが浮いた感じの響きです。いかにも古臭い音がする弦。異様に近いトランペット。Allegro からは勇壮に進みます。フィンランディア賛歌はアゴーギクを効かせて歌います。

表現がどうのと言う前に録音が悪くて、作品の美しさが伝わって来ません。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・シベリウス:交響詩「フィンランディア」の名盤を試聴したレビュー

ストラヴィンスキー バレエ音楽「火の鳥」全曲

ストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」は、彼の初期の代表作であり、壮大で幻想的な物語と豊かなオーケストレーションで知られる作品です。1909年にセルゲイ・ディアギレフの依頼で作曲され、1910年にバレエ・リュスによってパリで初演されました。この成功により、ストラヴィンスキーは一躍脚光を浴び、後の「ペトルーシュカ」や「春の祭典」と並ぶ革新的な作品へとつながっていきました。

1. 物語の背景と構成

「火の鳥」は、ロシアの民話に基づいたファンタジー色の強い物語で、火の鳥とその魔法の力、英雄イワン・ツァレーヴィチ、邪悪な魔王カスチェイ、不思議なクリーチャーたちが登場します。

あらすじは以下のようなものです:

  • 火の鳥との出会い:若き王子イワンは森で火の鳥に出会い、鳥を捕まえますが、命乞いをする火の鳥を逃がしてやることにします。そのお礼として、火の鳥は彼に自分の羽を一本渡し、困ったときに助けることを約束します。
  • カスチェイの魔法の城:イワンはカスチェイの城に迷い込み、そこで囚われの姫たちと出会います。しかし、カスチェイに捕まってしまい、命の危機に陥ります。
  • 火の鳥の助け:イワンは火の鳥の羽を使い、火の鳥が現れてカスチェイとその手下たちに魔法をかけ、彼らを倒します。
  • 解放と結婚:カスチェイの力が破れ、囚われていた姫たちが解放され、イワンと姫が結ばれます。物語は彼らの幸せな結婚とともに幕を閉じます。

2. 音楽の特徴と各セクション

「火の鳥」の音楽は、壮大なオーケストラの響きと、ロシア民謡のエッセンスが融合した非常に豊かな内容で、全曲版には20以上のセクションが含まれています。ここでは主要なセクションを紹介します。

  • 序奏:不気味で暗い低音の響きから始まり、魔法の森の幻想的な雰囲気が描かれます。この序奏部分で、カスチェイの城の不気味さや魔法の力を感じさせる音楽が提示されます。
  • 火の鳥の登場:オーケストラが一転して華やかになり、火の鳥の軽やかで神秘的な飛翔が描かれます。ここでは、華やかで速いパッセージが使われ、火の鳥の美しさと不思議な存在感が音楽で表現されます。
  • 王女たちの踊り:カスチェイに囚われた姫たちの優美な踊りが描かれ、柔らかく抒情的な旋律が流れます。ここにはロシアの民族的な響きが取り入れられており、イワンが出会う姫たちの美しさが感じられます。
  • カスチェイとその一党の魔法の踊り:不気味で緊張感に満ちた音楽が展開され、カスチェイとその手下たちの登場が迫力を持って描かれます。突き刺すようなリズムと不協和音の使用で、カスチェイの恐ろしさが表現されます。
  • 子守唄 (火の鳥の回帰):火の鳥がカスチェイの手下を眠らせる場面で、低音の柔らかな旋律が繰り返される、美しく静かな部分です。火の鳥の魔法の力が効果を発揮し、カスチェイの力が徐々に弱まっていきます。
  • フィナーレ:壮大で力強い結末を迎える部分で、イワンと姫たちが解放され、希望と幸福の響きが満ち溢れます。徐々にクライマックスに向かって高揚していく音楽は、カスチェイの力が完全に破れ、物語がハッピーエンドを迎える場面を象徴しています。

3. オーケストレーションの巧みさ

「火の鳥」は、ストラヴィンスキーのオーケストレーションの才能が遺憾なく発揮された作品です。彼はこの作品で、以下のような革新的な技法を使用しています:

  • 色彩豊かな楽器の組み合わせ:ホルン、木管楽器、パーカッションなどが巧妙に組み合わされ、ファンタジックで鮮やかなサウンドが作り出されています。
  • 新しいリズムの探求:複雑で変則的なリズムが多用され、特にカスチェイの一党の踊りでは、テンションの高いリズムが不気味さを際立たせています。
  • 異国情緒とロシア民謡の融合:ストラヴィンスキーは、ロシアの民族音楽や異国情緒を取り入れることで、火の鳥の異世界感を引き立てています。

4. 全曲版と組曲版

「火の鳥」には全曲版のほか、演奏時間を短縮した組曲版も存在し、1911年版、1919年版、1945年版の3つが特によく知られています。これらの組曲版は、全曲版の主要なセクションをまとめ、コンサート向けに編曲されたものです。特に1919年版は、最も頻繁に演奏される組曲で、全曲版に比べて簡潔で親しみやすい構成になっています。

5. まとめ

「火の鳥」は、幻想的な物語と巧妙なオーケストレーションが魅力のバレエ音楽です。物語の魔法的な雰囲気やロシア民話のエッセンスが音楽に込められ、ストラヴィンスキーの作曲家としての革新性を存分に示しています。異国情緒と民族的な要素が織り交ぜられたこの作品は、聴く者に異世界の冒険と感動を与え、ストラヴィンスキーの名を一躍世に広めた名作です。

4o

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「火の鳥」名盤試聴記

コリン・デイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★★
イントロダクション、暗闇から耳を澄ませば聞こえてくるような低弦のメロディ。ゆっくりとしたテンポでモヤがかかったようなくすんだ響き。

カスチェイの魔法にかかった庭、ゆっくりと丁寧な表現です。遅いテンポもあってとても重量感があります。

火の鳥の出現、潤いと深みのある響き。

火の鳥の踊り、遠いクラリネット。雫がしたたり落ちるような潤いのある弦。とても濃厚な色彩です。

王子に捕らえられた火の鳥、瑞々しく美しい響きです。

火の鳥の哀願、くすんだ響きの中からシルクのようなヴァイオリン。重低音を含んだ大太鼓。オケの一体感があるとても濃厚な演奏です。デイヴィスの間の取り方もとても良いです。遠くから響くようなホルン。シロフォンも際立って響きます。

魔法にかけられた13人の王女たち、涼やかでシルキーなヴァイオリン。暖かいクラリネット。伸びやかなフルート。

黄金の果実とたわむれる王女たち、とてもしっかりとまとまっていて暴走するようなパートは一切ありません。とても反応の良いオケです。表現もとても引き締まっています。

イワン王子の不意の登場、柔らかく美しいホルン。穏やかな弦。

王女たちのロンド、瑞々しく美しい演奏です。ブレンドされた響きはまろやかですが、ソロで出てくる楽器は鮮明です。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠くからと近くから響くトランペット。潤いのある木管。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、眩いばかりのグロッケン。気持ちよく鳴り響く金管。

不死の魔王カスチェイの登場、重量感のある大太鼓。不気味な雰囲気があります。

イワン王子とカスチェイの対決、大太鼓の響きがとても良いです。

王女たちの哀願、シルキーなヴァイオリン。襲い掛かってくるような金管。

火の鳥の出現、ブレンドされてまろやかな響きです。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、生き生きとした木管。

カスチェイらの凶暴な踊り、深いところから鳴り響くチューバ、反響も含まれている切れの良いトロンボーン。雫がしたたり落ちるようなトランペット。若干大人しい感じです。金管の色彩感はとても濃厚です。

火の鳥の子守歌、哀愁に満ちて豊かに歌うファゴット。しっとりとした弦もとても美しいです。

カスチェイの目覚め、暗いトーンから華やかなファンファーレになりました。

カスチェイの死の深い闇、とても静かです。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、美しい残響を伴って清々しい響きのホルン。瑞々しい弦とのコントラストも見事です。潤いのあるトランペット。弦だけになったところで一旦大きくテンポを落とします。とても豪華なクライマックス。

深深とした潤いに満ちた色彩豊かな火の鳥
コンセルトヘボウ独特の深みのある響き、艶やかな弦、珠玉のようにちりばめられた木管楽器。演奏を引き締める打楽器。
場面に応じて、しっかり主張し表現豊かです。
どの楽器も潤いに満ちて大変美しい。濃厚な色彩、夢心地のような音楽の虜になります。濃い音でしかも、切れ味鋭いトランペット、超低域まで揺さぶる大太鼓、眩いばかりのグロッケン。
デイヴィスの指揮も重心が低く、堂々としています。
哀愁に満ちたファゴットの子守唄。どのパートをとっても完璧な演奏です。

デイヴィスのストラヴィンスキーの三大バレエでは、この「火の鳥」が最も成功した演奏でしょう。

ピエール・ブーレーズ/ニューヨーク・フィルハーモニック

ブーレーズ★★★★★
イントロダクション、速めのテンポでハープやトランペットがくっきりしています。かなりシャープです。

カスチェイの魔法にかかった庭、当時のマルチ・モノの録音を感じさせるとても鮮明な一つ一つの楽器です。

火の鳥の出現、とても鮮明で生き生きとしています。ニューヨークpoもこのころになるとアンサンブルも反応もとても良くなっています。

火の鳥の踊り、ブルー系の響きで、とてもシャープです。バーンスタイン時代とはまるで違います。

王子に捕らえられた火の鳥、とにかく明晰です。オケの反応も敏感です。

火の鳥の哀願、マルチマイクらしい近接した楽器の鮮明な動きです。大きな表現はありませんが、細部まで見通せる演奏はさすがです。ニューヨークpoもとても美しいです。クラリネットもとてもクリアです。

魔法にかけられた13人の王女たち、清々しいヴァイオリン。透明感のある木管。手に取るように分かる明晰さです。

黄金の果実とたわむれる王女たち、生き生きと動き回る楽器達。オケもとても反応良く見事です。ブーレーズの統率力も見事です。

イワン王子の不意の登場、ホールの残響を伴ったホルン。くっきりとしたクラリネット。

王女たちのロンド、くっきりと鮮明で色んな楽器の動きが出に取るように分かります。この当時のCBS独特のカサカサとささくれ立ったような感じも無く潤いに満ちています。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、ビリビリと鳴るトランペットが左右から聞こえます。活発な動きです。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、凄みのあるチューバ。めまぐるしく動き回るオケ。

不死の魔王カスチェイの登場、フワッと柔らかい大太鼓。

イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりとしていて切れ味の良い金管。

王女たちの哀願、ロマンティックに歌います。切れ味鋭いオケ。嵐のような大太鼓。

火の鳥の出現、鮮明な木管。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、鮮明なシロフォン。コントラバスも鮮明です。

カスチェイらの凶暴な踊り、切れ味抜群で鮮明です。ブーレーズに完全にコントロールされているオケ。精緻で見事です。チューバがハタハタと響きます。小物打楽器も目の前にあるような鮮明さです。

火の鳥の子守歌、伴奏からかろうじて浮き上がるファゴット。深く感情を込めることはありません。

カスチェイの目覚め、暗いトーンで染められています。

カスチェイの死の深い闇、深みのある美しい響き。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、遠くから響くホルン。とても良い雰囲気です。ブルブルと響くチューバ。意外とモノトーンのようなクライマックスでした。

ヴァレリー・ゲルギエフ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ゲルギエフ★★★★★
イントロダクション、ゴツゴツとした冒頭。トランペットがはっきりと出てきます。

カスチェイの魔法にかかった庭、表現は積極的です。

火の鳥の出現、積極的で反応の良い演奏です。

火の鳥の踊り、ブレンドされた暖かい響きです。色彩感は枯れた感じです。

王子に捕らえられた火の鳥、

火の鳥の哀願、暖かく分厚い響き。木管の豊かな色彩。遠く硬質なホルン。

魔法にかけられた13人の王女たち、ライヴなので極上の美しさではありませんが、木管は生き生きしています。ヴァイオリンのソロも豊かな表現です。

黄金の果実とたわむれる王女たち、活動的な動きです。

イワン王子の不意の登場、ウィンナホルンらしい響きです。穏やかで柔らかい弦。控えめなクラリネット。

王女たちのロンド、アゴーギクを効かせて歌うオーボエ。テンポも微妙に動いています。鋭いピッコロ。歌うフルート、感情に合わせてテンポが大きく動きます。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠近の対比があるトランペット。とても豊かな表現の弦。木管はゆっくりと感情を込めた演奏です。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、ゆっくりとしたテンポです。眩いグロッケン。

不死の魔王カスチェイの登場、チューバが芯の強い音で主張します。

イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりとして良く鳴るトロンボーン。テンポの激しく動きます。

王女たちの哀願、艶っぽく歌います。金管は大きくritしました。間も大きく空けました。

火の鳥の出現、シンバルは分離されている感じで、木管の動きが良く分かります。木管と弦の動きにはっきりとした表現付けがあります。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、速いテンポでぐいぐい進みます。シロフォンが凄いです。

カスチェイらの凶暴な踊り、奥から響くトロンボーン。かなり凶暴な表現です。金管は遠慮無く吹きます。ティンパニが意表を突いた強打。荒れ狂うような凄い演奏です。

火の鳥の子守歌、速めのテンポですが、感情を込めて歌うファゴット。最後はかなりテンポが遅くなりました。

カスチェイの目覚め、ゆっくりと演奏されるファンファーレ。

カスチェイの死の深い闇、探り合うような静けさです。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、たっぷりと歌うホルン。ゆっくりと演奏するハープとそれに続く弦。濃厚な色彩で鳴り響く金管。最後は速いテンポになりました。なかなかの力演でした。
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イオン・マリン/ロンドン交響楽団

マリン★★★★☆
イントロダクション、とてもゆっくりとしたテンポで豊かに表現する弦。トランペットがはっきりと聞こえます。

カスチェイの魔法にかかった庭、色彩感が豊かで、表現の幅も広い演奏です。楽器の動きも克明です。

火の鳥の出現、柔らかい響きです。

火の鳥の踊り、ここでもゆっくりとしたテンポで細部まで克明に描いて行きます。

王子に捕らえられた火の鳥、ゆっくりとしたテンポでとても丁寧です。

火の鳥の哀願、ゆっくり丁寧なヴァイオリンのソロ。イギリスらしいクラリネット。ゆっくり目で演奏される木管。暖かい響きです。バランスの良いトランペット。かなり遠いホルン。ファゴットもゆっくりです。

魔法にかけられた13人の王女たち、抑えたヴァイオリン。豊かに歌うフルート。

黄金の果実とたわむれる王女たち、凝縮されて濃厚です。表情もとても豊かです。

イワン王子の不意の登場、ふくよかで、歌うホルン。とても柔らかい弦。かなり抑えたクラリネット。

王女たちのロンド、伸びやかで粘るピッコロ。続く木管も濃厚な表現です。テンポも動いて美しい旋律に酔いしれるような感じです。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、ゆっくりとしたテンポで、強弱の振幅も大きいです。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、ゆっくりです。地獄の釜の蓋が開いたようなチューバの響き。確認するようにゆっくりとしたテンポです。

不死の魔王カスチェイの登場、あまり大きく盛り上がらず、硬い響きの大太鼓。

イワン王子とカスチェイの対決、押さえ気味のトロンボーン。良く鳴るトランペット。

王女たちの哀願、細身で美しいヴァイオリン。金管は抑え気味ですが、打楽器は強いです。

火の鳥の出現、

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、かなり遠いシロフォン。トランペットがビリビリと鳴ります。

カスチェイらの凶暴な踊り、かなり軽い入りです。ゆっくり目で動いています。かなり冷静な演奏です。

火の鳥の子守歌、次第にテンポが遅くなって豊かに歌うファゴット。オーボエもたっぷりと歌います。

カスチェイの目覚め、混沌としたコントラファゴット。切れ味の良いシャープな金管。

カスチェイの死の深い闇、ここもゆっくりで、とても静かです。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、次第に近付いてくるようなホルン。とても抑えた弦。鋭く輝かしいトランペット。最後は速めのテンポになって、存分にオケを鳴らして終わりました。
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エルネストアンセルメ/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

アンセルメ★★★★
イントロダクション、物々しい響きです。マイルドな管です。ヴァイオリンのグリッサンドが強調されています。

カスチェイの魔法にかかった庭、豊かな表現のファゴット。柔らかい弦のクレッシェンド。

火の鳥の出現、少し重い感じです。

火の鳥の踊り、ゆっくり目ですが、細部まで見通しが良い感じではありません。

王子に捕らえられた火の鳥、ゆっくりとしていて確実な足取りです。

火の鳥の哀願、かなり抑えたヴァイオリンのソロ。ここもゆったりとして余裕を感じさせる演奏です。弦に伸びやかさがありません。豊かに歌うオーボエ。抑え気味で柔らかいトランペット。

魔法にかけられた13人の王女たち、涼しいヴァイオリン。伸びやかなフルート。

黄金の果実とたわむれる王女たち、柔らかく奥行き感があります。ゆっくり目なのが少し野暮ったい感じになります。

イワン王子の不意の登場、伸びやかなホルン。はっきりと入るクラリネット。

王女たちのロンド、安定感のある落ち着いた演奏です。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠近の対比ははっきりとしているトランペット。とてもゆっくりと濃厚です。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、軽く演奏している金管。テンポはゆっくりです。

不死の魔王カスチェイの登場、崩れるような大太鼓。

イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりと刻み込むようなトロンボーン。金管が強く演奏する部分もゆっくりでした。

王女たちの哀願、太いヴァイオリン。しっかり音を切って強い金管。強烈なホルン。

火の鳥の出現、丁寧な演奏です。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、ゆっくりとしたテンポです。硬いシロフォン。大きく盛り上がります。

カスチェイらの凶暴な踊り、軽いチューバ。トロンボーン、トランペットは強いです。ゆっくりとしたテンポです。整然としていて、凶暴な感じはありません。ティンパニのクレッシェンドは凄いです。

火の鳥の子守歌、あまり寂しい感じにはならずにファゴットが入りました。ファゴットも大きな表現はありません。あまり感傷的にはなりません。

カスチェイの目覚め、ゆっくりと色んな楽器が響くファンファーレ。

カスチェイの死の深い闇、ここもゆっくりで、明確に描いて行きます。漂うような弦。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、速めのテンポで演奏されるホルン。爽やかな弦。抑え気味でゆっくりと演奏される金管。大太鼓が入る前にritしました。
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シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

デュトワ★★★★
イントロダクション、緩い感じです。デュトワの演奏にしてはあまり楽器がくっきりと浮かび上がりません。ホルンはシャープでした。

カスチェイの魔法にかかった庭、潤いがあまり無く、カサカサした印象です。弦は大きくクレッシェンドしました。

火の鳥の出現、少しoffぎみで淡い色彩感で少し線が細い感じです。

火の鳥の踊り、奥まって小じんまりとしている感じです。

王子に捕らえられた火の鳥、offぎみなので密度が薄い感じがします。

火の鳥の哀願、細身のヴァイオリンのソロ。涼しく薄い響き。淡々としていて平板な感じです。表現が奥ゆかしくあっさりとしています。かなり遠いホルン。シロフォンもかなり遠いです。

魔法にかけられた13人の王女たち、オケは上手いのですが、コンセルトヘボウのような魅力的な響きではありません。ダイナミックの変化も少なく平板な感じです。

黄金の果実とたわむれる王女たち、offぎみで、少し遠くで聞く感じで、密度が少し薄い感じがします。強弱の変化もとても穏やかです。

イワン王子の不意の登場、表現のあるホルン。くっきりと浮かび上がるクラリネット。

王女たちのロンド、少しだけ遠いですが、とても美しいです。安心して身をゆだねることができる演奏です。タメがあったりもします。最後はかなりゆっくりになりました。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠くと近くの対比がはっきりとしているトランペット。ゆっくりと丁寧に感情の込められた演奏です。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、気持ちよく鳴る金管。

不死の魔王カスチェイの登場、ビリビリと鳴るトロンボーン。透明感のある木管。

イワン王子とカスチェイの対決、ビーンとなるトロンボーン。気持ちよく鳴り切る金管。

王女たちの哀願、細身のヴァイオリン。トロンボーンとトランペットは思いっきり鳴ります。

火の鳥の出現、シンバルが弱めで木管の動きが良く分かります。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、遠いシロフォン。すっきりと細身の響きです。

カスチェイらの凶暴な踊り、軽く入りました。金管はとても気持ちよく鳴ります。涼しい響きで凶暴な感じはありません。

火の鳥の子守歌、くっきりと浮かび上がるファゴットですが、とてもあっさりとした演奏です。

カスチェイの目覚め、ゴロゴロとあまり重量感の無いコントラファゴット。ファンファーレはあまり明るい響きではありませんでした。最後に強烈なトロンボーンが入りました。

カスチェイの死の深い闇、繊細で美しい弦。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、残響を伴って豊かな表現のホルン。生き生きとしたフルート。このコンビらしいスッキリとしたスマートな響きのクライマックスでした。
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ユッカ=ペッカ・サラステ/ケルンWDR交響楽団

サラステ★★★☆
イントロダクション、速めのテンポです。柔らかいですが、トランペットがはっきりと聞こえます。

カスチェイの魔法にかかった庭、速めのテンポで手際よく片付けて行く感じです。

火の鳥の出現、ライヴですが、かなり鮮明です。

火の鳥の踊り、ゆっくり目で細部まで鮮明ですが、色彩感は濃厚ではありません。

王子に捕らえられた火の鳥、豊かな残響で滑らかです。

火の鳥の哀願、艶やかなヴァイオリンのソロ。豊かな響きを伴って浮かび上がる木管。色彩感が少し豊かになって来ました。朗々と響くホルン。

魔法にかけられた13人の王女たち、清々しく美しいヴァイオリン。フルートもホルンもハープくっきりと浮かび上がります。艶やかなヴァイオリンのソロ。伸びやかに歌うフルート。

黄金の果実とたわむれる王女たち、とても柔らかいです。めまぐるしく動き回ります。

イワン王子の不意の登場、ちょっと乱暴な感じがするホルン。

王女たちのロンド、歌ってはいますが、速めのテンポで淡々と進みます。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、マットなトランペット。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、チャイムがかなり強いです。チャイムの影に隠れるトランペット。深みのあるチューバ。木管の速いパッセージが盛大です。

不死の魔王カスチェイの登場、

イワン王子とカスチェイの対決、全体に埋もれるような金管。

王女たちの哀願、糸を引くような粘りのあるヴァイオリン。崩れ落ちるような打楽器。

火の鳥の出現、ゆったりと動きがとても良く分かります。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、ゆっくりです。木管がとても大きな表現です。

カスチェイらの凶暴な踊り、ホールに響き渡る一撃。豊かな残響で生き生きとした演奏です。盛大に鳴り響きます。

火の鳥の子守歌、哀愁を感じさせるファゴット。速めのテンポですが、豊かな残響があるので、とても良い雰囲気です。

カスチェイの目覚め、あまり強く演奏しないファンファーレ。

カスチェイの死の深い闇、はっきりとした動きの弦。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、豊かな残響でふくよかなホルン。エネルギーの爆発よりもバランスの良いクライマックスでした。
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ピエール・ブーレーズ/シカゴ交響楽団

ブーレーズ★★★☆
イントロダクション、速めのテンポで暗い雰囲気です。楽器はニューヨークpoの時とは違ってブレンドされています。

カスチェイの魔法にかかった庭、精密機械のような見通しの良さはさすがです。

火の鳥の出現、ブレンドされた落ち着いた響きです。

火の鳥の踊り、余裕のある滑らかな演奏です。トランペットも濃厚な感じではありません。

王子に捕らえられた火の鳥、ゆったりとしたテンポで余裕しゃくしゃくです。

火の鳥の哀願、暖かく淡白な色彩です。遠く硬質なホルン。

魔法にかけられた13人の王女たち、枯れた響きのヴァイオリン。何かを強調するようなことが無いので、サラッと流れて行きます。

黄金の果実とたわむれる王女たち、きりっと粒立った木管。

イワン王子の不意の登場、少し硬質なホルン。サラッとしている弦。締まりのあるクラリネット。

王女たちのロンド、速めのテンポであっさりとした演奏です。キッチリと刻むように進みます。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、サラッと軽い演奏です。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、ゆっくりで遠近の対比が強調されています。かなり遅いです。

不死の魔王カスチェイの登場、一気に大太鼓までクレッシェンドしました。

イワン王子とカスチェイの対決、ものすごく遅いテンポです。金管が強くなってからテンポが速くなりました。

王女たちの哀願、あまり色彩感は濃厚ではありません。

火の鳥の出現、

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、柔らかいシロフォン。輝かしく鳴るトランペット。

カスチェイらの凶暴な踊り、軽めに入りました。とても整っています。凶暴な感じはあまりありません。

火の鳥の子守歌、あっさりと演奏するファゴット。とても淡々と進みます。

カスチェイの目覚め、明るいファンファーレ。

カスチェイの死の深い闇、次々と湧き上がるような弦。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、ゆったりとしたテンポで筋肉質のホルン。さすがに力のある金管。見事なバランスで鳴り響きます。
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ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ハイティンク★★★
イントロダクション、くっきりとしたトロンボーン。どの楽器も明瞭に浮かび上がります。

カスチェイの魔法にかかった庭、残響成分が少な目で、細身です。弦のクレッシェンドは大きかったです。

火の鳥の出現、暖かく鮮明な色彩感。

火の鳥の踊り、デイヴィス/コンセルトヘボウoほど色彩感は濃厚ではありませんが滑らかに流れて行きます。

王子に捕らえられた火の鳥、ニュートラルな響きであまり特徴がありません。

火の鳥の哀願、ゆっくりとしたヴァイオリンのソロでした。コンセルトヘボウのような濃厚な色彩感が無く、音色的な魅力を感じないのは残念です。ハイティンクの指揮なので、大きな表現はありません。遠くから硬い響きのホルン。

魔法にかけられた13人の王女たち、細いホルン。美しいのですが、強い個性がありません。オケは卒なく上手いです。

黄金の果実とたわむれる王女たち、コンセルトヘボウ時代にはあれほど魅力的な響きを生み出していたハイティンクがなぜこんなに個性の無い響きの演奏をしているのか不思議です。堅実で落ち着いた足取りです。

イワン王子の不意の登場、ふくよかで美しいホルン。色彩感の無い弦。

王女たちのロンド、サラサラとした弦が美しい。ゆっくり演奏されるピッコロ。ハイティンクにしては珍しく、テンポがとても遅くなる部分があります。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠くと近くで響くトランペットは控え目です。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、力を入れずに軽めの演奏です。

不死の魔王カスチェイの登場、暗闇のようなファゴット。

イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりとしたテンポで短めのトロンボーン。

王女たちの哀願、大太鼓はドカンと来ますが金管は抑え気味ですが見事なバランスです。

火の鳥の出現、シロフォンが入る前は遅いです。

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、静かでゆっくりです。確実に刻む弦。

カスチェイらの凶暴な踊り、凄く抑えられた演奏で、凶暴さはありませんが、1拍でドカンと来る部分の迫力はなかなかです。

火の鳥の子守歌、寂しげな雰囲気の中で美しく歌うファゴット。弦と弓が摩擦している感じのヴァイオリン。

カスチェイの目覚め、重いコントラファゴット。くすんだファンファーレ。あまり大きなコントラストの変化はありません。

カスチェイの死の深い闇、弦が各パート一人ずつのような静けさです。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、ふくよかなホルンですが、少しマットです。清楚で美しい弦。大太鼓の強打。色んな音が鳴り響き、最後は豪華な響きになりました。

オケは上手いし、ハイティンクもそつなく演奏しています。
もう少しホールの響きも含めた奥深い音色を求めたいです。
アンサンブルの精度など上手さについては文句の付けようがないくらいです。ただ、ハイティンクの指揮はかなり聞き込まないと良さが分からないです(私の場合)。目だった表現や強い主張をするタイプの指揮者ではないので、安定感は抜群ですが、スリルや刺激を求めても外されます。
女王たちのロンドでは木管の美しい旋律。夜明けでも木管の上手さは際立っています。
もう少し神秘的な雰囲気が欲しいところです。大太鼓にも地響きするような深みのある低音を求めたいところですが、少し小さい楽器を使っているのでしょうか。それとも録音の問題か?
火の鳥出現からは遅めのテンポでじっくり表現をつけた演奏をしています。だんだん盛り上がって行きますがテンポを煽ることはありません。ハイティンクらしい演奏です。
カスチェイの踊りでも金管の炸裂とまでは行きません。抑制の効いた演奏を続けています。
時に、テューバが突出したり変わった解釈を見せます。
終曲では、ここでも突出する大太鼓。これにはびっくりさせられます。

クリストフ・フォン・ドホナーニ/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

ドホナーニ★★
イントロダクション、しっかりとした足取りです。バランスはなかなか良いです。

カスチェイの魔法にかかった庭、たどたどしいホルン。豊かな語り口のファゴット。弦が一体になったようなクレッシェンド。

火の鳥の出現、音の立ち上がりがなだらかで、あまり反応が良い感じではありません。

火の鳥の踊り、速めのテンポで活発な動きです。

王子に捕らえられた火の鳥、音がたくさんあって騒々しい感じです。少しもたつく感じの木管。

火の鳥の哀願、軽い大太鼓。整然と整った感じがありません。柔らかいホルンですが、少し危なっかしい感じもありました。ファゴットも速いテンポです。

魔法にかけられた13人の王女たち、木管があまり魅力的な音色ではありません。ヴァイオリンのソロは艶やかでした。

黄金の果実とたわむれる王女たち、速いテンポで追いたてます。

イワン王子の不意の登場、細い音でビブラートをかけるホルン。

王女たちのロンド、速いテンポで素っ気無い演奏です。美しい旋律をじっくりと味わうことが出来ません。

夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、抑えたトランペット。その後はゆっくりです。

城番の怪物どもに捕らえられる王子、打楽器はほとんど聞こえません。

不死の魔王カスチェイの登場、中音域が団子になったような感じの響きです。大太鼓も硬い音です。

イワン王子とカスチェイの対決、短く音を切るトロンボーン。ここもテンポが速いです。

王女たちの哀願、サラットして美しいヴァイオリン。デッドで独特な表現の金管。

火の鳥の出現、

火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、遠くて柔らかいシロフォン。トランペットが付き抜けます。

カスチェイらの凶暴な踊り、かなり抑えられたチューバ。たどたどしいEbクラ。デッドで、あまり凶暴な感じはありません。オケの響きが一体にならずバラバラな感じがします。

火の鳥の子守歌、とてもあっさりと演奏するファゴット。

カスチェイの目覚め、デッドで浅い響きの金管。

カスチェイの死の深い闇、くっきりとしていて、あまり深みの無い弦。

カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、ビブラートを掛けた細いホルン。力強いトランペット。デッドであまり響きが溶け合わないので、雑然とした感じになります。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」の名盤を試聴したレビュー

ストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」

ストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」は、ロシアの三大バレエ音楽の一つで、初演は1911年。ロシアの伝統やカーニバルの雰囲気が色濃く反映された作品で、ストラヴィンスキーの初期の代表作です。

「ペトルーシュカ」は、ロシアの謝肉祭で操られる人形たちの物語を描いており、主人公ペトルーシュカ(ピエロのような人形)、愛される人形のバレリーナ、そして力強いムーア人の3人を中心に進行します。物語では、恋するペトルーシュカがバレリーナに思いを寄せますが、ムーア人に叶わず、悲劇的な運命を辿ります。

音楽は軽快で多彩なリズムと華やかなオーケストレーションで知られ、ピアノや管楽器が独特の役割を担い、街の喧騒や祭りの喧騒が巧みに表現されています。特に有名なのが「ペトルーシュカの音型」と呼ばれるリズミカルなモチーフで、ペトルーシュカの感情や運命を象徴しています。

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」名盤試聴記

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

icon★★★★★
第一場、軽ろやかで色彩感豊か、華麗でシャープな演奏。
デュトワ/モントリオールsoの録音の特徴である低域のカットが功を奏して、耳障りもよく、とても軽快で清清しい演奏になっています。押し付けがましいところがないので、とても聴きやすい。どの楽器もチャーミングでなかなか良いです。
第二場、寂しげな場面が描かれています。響きがクールなので、寂しさをより強調しているように思います。このオケにはストラヴィンスキーの三大バレエのうちペトルーシュカが最も適していると思います。
第三場、軽快な踊りの場面や流れるような美しい旋律、合いの手に時折入る軽妙な楽器たちの登場もとても上手くバランスがとれています。
第四場、まばゆいグロッケンやアコーディオンと化したオーケストラ。トロンボーンやテューバも重くないので、とても聴きやすい。

シャルル・デュトワ/ロンドン交響楽団

icon★★★★★
デュトワならではの色彩感とともに力強い演奏。1911年版
モントリオールsoとの録音のような低域の一部をカットされたような録音ではなく、ワイドレンジです。
色彩感も豊かですし、低音域も力強いのでメリハリがしっかりついていて良い演奏です。どのパートをとっても上手いし、金管も気持ちよく鳴らしていて個人的にはモントリオールsoとの録音より、こちらの方が好きです。
それぞれのパートの音が立っていて、存在感がしっかりあります。また、デュトワの特徴だと思いますが、シャープで切れ味鋭く、また登場する楽器が整然と整っています。
シャープで美しい演奏なので、作品の本質には迫っていないと言われるかもしれませんが、演奏水準は極めて高いと思います。
強弱の振幅がしっかりと低音域も伴って演奏されるので、ティンパニの一撃なども強烈で、演奏が変化に富んでいるので、聞いていて楽しいです。

クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団 1985ザルツブルクライヴ

アバド★★★★★
謝肉祭の市、速めのテンポで強い推進力があります。オケの表現もとても積極的です。アバドはベルリンpoの音楽監督になる前の方が音楽に主張があって良かったと思います。
ペトルーシュカの部屋、フルートのソロもはっきりとした表情がありました。音楽が生き生きとしていて躍動感があります。強弱の振幅も大きく、色彩も明快です。
ムーア人の部屋、ここも速めのテンポです。
謝肉祭の市(夕景)、ここも速めのテンポですが、オケがアバドの指揮に献身的に応えているところがとても良いです。オケの敏感な反応でとても色彩感豊かな演奏になっています。

速めのテンポを基調に積極的で色彩感豊かな演奏でした。オケもとても良い反応をしていました。
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エンリケ・バティス/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

バティス★★★★★
第一場、シャリシャリした響きで低域があまり含まれていない感じの録音です。歯切れのいいシャキッとした演奏です。色んな楽器の動きが克明です。かなり高域が強調された録音で、とても華やかに聞こえますが、大太鼓が長い余韻を残して響きます。美しく歌うフルート。勢いがあって力強いです。
第二場、低域があまり含まれていないので、とても清涼感のある演奏になっています。ミュートしたトランペットやトロンボーンがかなり強く演奏します。金管が遠慮なく吹くので、とても色彩感が濃い演奏になっています。
第三場、ホルンもトロンボーンも強烈です。ドラもとても良い音で入って来ます。締まりの良いスネアも気持ち良いです。
第四場、典型的なドンシャリの録音で、尾を引く大太鼓とシャリシャリとした高音域が特徴です。メリハリのはっきりとしたもしかしたら爆演に入る部類の演奏かも知れません。最後のトゥッティは強烈です。

かなり濃厚でこってりとした色彩感。金管も遠慮なく入ってくるので、かなり強烈です。もしかしたら爆演の部類に入るかも知れません。
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パーヴォ・ヤルヴィ/パリ管弦楽団

ヤルヴィ★★★★☆
第一場、キリッと立ったフルート。涼しげで爽やかな響きです。47年版です。とてもリズムが弾んでバレエ音楽らしい演奏です。ファゴットもくっきりと浮かび上がりとても色彩感豊かな演奏です。
第二場、強弱の変化も大きくとても豊かな表現です。テンポの動きも大きいです。
第三場、歌に溢れた美しい演奏です。
第四場、柔らかい響きから、突き刺さるような強い音まで、多彩な音を駆使して音楽を表現しています。金管は決して咆哮しません。かなり抑えています。最後は盛り上がって終わる版でした。

色彩感濃厚で、表現も豊かで、弾むリズムの演奏でした。トゥッティでの金管はかなり抑えられていて全体のバランスを重視していた感じでした。
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ピエール・ブーレーズ/ニューヨーク・フィルハーモニック 1975ベルリンライヴ

ブーレーズ★★★★☆
第一場、ブレンドされた響きの中からトランペットが突き抜けて来ます。テンポの動きも大きく、叙情的な部分もあります。この当時のブーレーズの演奏には「レントゲンを見るような」と言うような表現がなされましたが、この演奏からはそこまで細部が見通せるような演奏ではありませんが、バーンスタイン時代の荒れたアンサンブルから見違えるような精緻なアンサンブルに変化したニューヨークpoの演奏が聞けます。
第二場、ゆったりとしたテンポを基調にしています。
第三場、冷たい演奏では無く、表情豊かで歌もあります。ゆったりとしたテンポで音楽を味わいながら演奏しているような少し楽しい雰囲気さえあります。
第四場、トランペットが大きな表現をします。テンポの動きも感情に伴うような感じで、スタジオ録音よりも自然な人間らしい演奏です。

ブーレーズでも人間らしい暖かい演奏でした。ニューヨークpoも精緻なアンサンブルですが、楽しげな演奏でとても良かったです。
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マリス・ヤンソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2004東京ライヴ

ヤンソンス★★★★☆
第一場、小物打楽器が賑やかで華やいだ雰囲気です。ここまでは大きな表現はありませんが、爽やかでスマートな演奏です。アゴーギクを効かせて豊かに歌うフルートのソロ。ロシアの踊りのピアノもテンポの動きがありました。
第二場、第二場へ入る太鼓の連打も大きく強弱の変化を付けています。くっきりと浮かぶ楽器の濃厚な色彩はとても良いです。
第三場、トロンボーンは抑え気味でした。ファゴットも豊かに歌います。とても表現豊かな演奏です。ブーレーズのライヴに比べると細部まで鮮明で録音の進歩が伺えます・
第四場、クラリネットの高音もすっきりと抜けてとてもオケも上手いですがヤンソンスはオケを全開まで強奏しません。

テンポが動いたり強弱の変化やアゴーギクを効かせた歌など聞き所の多い演奏でしたが、これだけ上手いオケなので、全開の響きも聞いてみたい気もしました。
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ヴァレリー・ゲルギエフ/ロンドン交響楽団

ゲルギエフ★★★★☆
第一場、切れ味の良いシャープな演奏です。テンポを落として歌う部分もあります。ブレンドされた響きですが、ソロなどははっきりと粒立っています。
第二場、テンポの動きも大きいです。ソロはオケに任せているようです。場面転換の太鼓連打が間違えて入ります。
第三場、遅めのテンポで丁寧に演奏しています。それでもアンサンブルの乱れがあります。
第四場、遅いところは遅く、速いところは速いテンポでメリハリがあり生き物のような躍動感のある演奏です。とても積極的な表現で、雑味が無くスッキリとしています。激しいところも思い切った激しさになります。

テンポも強弱も大きな変化のある演奏で、雑味の無いシャープな演奏でした。アンサンブルの乱れは残念でしたが、良い演奏だったと思います。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」の名盤を試聴したレビュー

ストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」2

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」名盤試聴記

アンタル・ドラティ/デトロイト交響楽団

icon★★★★
1947年版の演奏です。
大きく広がった空間に音楽が展開されます。バレエ音楽というよりも、もっとシンフォニックな感じがします。
いろんな音が聞こえてきて楽しい!新たな発見でした。

エフゲニー・スヴェトラーノフ/ソビエト国立交響楽団

icon★★★★
一場、遅い出だし、一歩一歩確かめるようにゆっくりと確実に進みます。録音のせいか色彩感はあまりありません。バレエ音楽で踊るイメージとはかなり違った演奏で、飛び跳ねるよりも引きずる感じの演奏です。
二場、とにかく遅い。でも聴き続けるうちにこのテンポになれて来て、不自然さは感じなくなります。録音が古いせいか、楽器一つ一つが立っていないので、平板に聞こえます。とても濃厚な演奏をしているのですが、色彩感が淡白なので、聞き流せてしまいます。
三場、ゆっくりと濃厚なトロンボーン。スネアのソロの後のトランペットも遅い。ファゴットのメロディに乗っかるトランペットやフルートもすごく遅いです。
四場、バレエ音楽と言うには重過ぎる。ゆったりと朗々と歌う弦。Ebクラとテューバのメロディの部分は普通のテンポでした。最後の強奏部分でまた、非常に遅くなった、通常の二倍ぐらいの時間をかけて演奏しているのではないか。

異色の演奏として面白く聞くことができました。

シャルル・デュトワ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1980年ライヴ

デュトワ★★★★
笛吹のクラシック音楽ライヴ と オーディオの記事の笛吹さんから音源を送っていただきました。ありがとうございます。
一場、デュトワ独特のブルー系の清涼感のある響きです。セッション録音のような鋭い切れ味や華やかさは無く、マイルドな演奏です。弦を中心に音楽が作られていて、少し寂しく線が細い感じがします。ダイナミックの変化もセッション録音のような大きな変化は無く、かなり平板です。打楽器的なピアノ。かなりデッドな録音のようです。
二場、聞こえる音は全部聞こえているようには感じるのですが、なぜかとても寂しい感じがあります。ペトルーシュカの悲しみなのか?
三場、セッション録音のような金管が炸裂するような振幅の激しい演奏ではありません。ペトルーシュカがこんなに寂しく悲しげな音楽だと初めて知りました。
四場、編成が小さい感じの響きで、色彩のパレットをいっぱいに広げたような演奏ではありませんが、バレエの場面の雰囲気はとても良く表現していて、ペトルーシュカの悲哀をとても感じます。

セッション録音の色彩感豊かでダイナミックな演奏とはかなり雰囲気の違う演奏でしたが、バレエの場面をとても良く伝えてくれる演奏でした。

シルヴァン・カンブルラン/読売日本交響楽団

カンブルラン★★★★
第一場、間接音が少なくデッドです。その分楽器の動きははっきりしています。精緻な演奏ではありますが、分厚い響きではありません。
第二場、透明感が高く清潔感があって洗練されています。
第三場、とても美しい演奏なのですが、オケのパワーがあまり伝わって来ません。ただキレの良い透明感の高い響きはとても魅力的です。暖かい歌もとても良いです。
第四場、ちょっと触れば壊れてしまうようなガラス細工のような繊細さ。強い表現は無く、自然体で流れて行きますがダイナミックさや深みはあまりありません。

トゥッティの厚みやダイナミックさはありませんでしたが、透明感が高くガラス細工のような繊細な演奏はとても魅力的でした。厚みの無さは日本人の限界なのか?
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ピエール・ブーレーズ/クリーブランド管弦楽団

icon★★★
デッドなホールでの録音なのか?人数が少ないような錯覚を覚えるような音がしています。
細部まで克明に聞かせるために、あえてこのような音で録音したのか?
マスの響きもあまり溶け合わない。寂しい音です。
1911年版は編成も大きく豪華絢爛な響きがするというイメージなので、意外な演奏です。ピアノの音を聴いていると、そんなにデッドなホールではなさそうです。
管楽器を中心に音楽が作られていて、弦楽器の人数が少ないか、バランス上控えているかしているようです。
ペトルーシュカの悲哀や悲しみは見事に表現しています。
ブーレーズはニューヨークpoの音楽監督時代から最近の復帰へ至るまでに音楽に対する考えや解釈が大きく変化したように思います。
復活のCDを聴いた時にも感じましたが、ほとんどオケのフルパワーを要求していない。木管のffと金管のffを同じ音量で演奏させているような感じで、その分いろんなパートの動きが克明に聞こえてきます。
こうやって、新しい部分にスポットを当てているのでしょうか。私が思っている「ペトルーシュカ」とはかなりイメージの違う音楽になっていることは確かなのですが、これだけ各パートのバランスを保って演奏することによる効果を聞かされると納得させられます。

ただ、研究成果としての価値は十分あると思うのですが、一般人が鑑賞するという観点から考えてこの演奏をどう捉えるかは個人によってかなり評価は分かれると思います。

コリン・デイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★
火の鳥では、このコンビの重さや深さがすばらしい演奏をしましたが、ペトルーシュカでは重過ぎるような感じがします。1947年版
低音域に力があって重い音が全体の雰囲気を重くしています。
コンセルトヘボウの少しくすんだ、そして深みのある渋い音色が火の鳥では見事にマッチしましたが、ペトルーシュカでは、もう少し軽い音色を求めたいところです。
1911年版よりも1947年版の方がスネアやティンパニの扱いは派手なのですが、1911年版のように各所にちりばめられた小物打楽器のきらびやかさが無いので、個人的には1911年版の方が好きです。
ホールの響きもふくよかなので、演奏が少し鈍重に感じます。
分厚い低域の上にメロディが乗りますが、この低域に残響がつきまとうので、演奏に重さを感じてしまうようです。

登場する楽器はどれも上手いのですが、全体の響きとしてはこの曲に合っていないように気感じました。

ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー/ロンドン交響楽団

icon★★★
一場、1911年版の演奏ですが、冒頭は貧相な出だしでした。金管が控え目に録られているせいもあるのでしょうか?
ダイナミックの変化も少なくBGMを聴いているような感覚になります。
二場、ピアノもマイルドな演奏で刺激的な部分は全くありません。
三場、とても大人しい穏やかなペトルーシュカです。ところどころでテンポをぐっと落とすことがあります。金管は常に奥まったところにいて、突き抜けてくることはありません。
四場、小物打楽器も控え目です。弦や木管のフワッとした部分は上手く表現されるので良いのですが、金管があまりにも控え目過ぎて、曲のイメージとはかなり離れた演奏に聞こえてしまいます。

アンドリル・ネルソンス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ネルソンス★★★
謝肉祭の市、あまり躍動感が無く、地味な感じです。47年版です。
ペトルーシュカの部屋、強弱の変化が大きくなって躍動感が出てきました。
ムーア人の部屋、やはり地味で特段の個性は感じません。
謝肉祭の市(夕景)、ファゴットが独特の歌い回しです。安定感のある堅実な演奏なのですが、コンセルトヘボウらしい濃厚な色彩感はありますが、華やかさがあまり感じられません。

安定感のある堅実な演奏でしたが、地味で華やかさを感じませんでした。
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スタニラフ・スクロヴァチェフスキ/ミネソタ管弦楽団

スクロヴァチェフスキ★★☆
謝肉祭の市、鮮明な色彩で華やかです。47年版です。トライアングルがかなり強いです。速めのテンポで畳み掛けるような演奏です。
ペトルーシュカの部屋、大きな表現や主張は無い感じです。一音一音刻み付けるようなピアノ。
ムーア人の部屋、とてもゆっくりとしたテンポでたっぷりとした間があったりします。
謝肉祭の市(夕景)、かなり強く絶叫するトランペット。常に押してくるような強い感じがあって、人によっては疲れるかも知れません。格闘のあたりはかなり速いテンポでした。最後の部分でもミュートをしたトランペットがかなり強いです。

演奏がそうなのか、録音の関係なのか分かりませんが、かなり強く押しまくられる感じで、ちょっと疲れました。
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エフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

ムラヴィンスキー
一場、遠い音場感で、細部まで聞き分けることは出来ません。レンジも狭く色彩感もほとんどありません。強音部では歪みます。場面転換の打楽器が炸裂します。とにかく歪みっぽくて、何をやっているのか判別ができません。艶やかなヴァイオリン・ソロ。静寂の中に浮かび上がる木管など、良さも垣間見えるのですが・・・・・・。
二場、トランペットが奥まったところからミュートをはめて強く出てきます。テンポが動いたりもします。
三場、冒頭は、遅いテンポで濃厚に表現します。録音のせいか、ムラヴィンスキー独特の冷たい緊張感は伝わって来ません。
四場、

ムラヴィンスキーがこのような作品も演奏したと言う貴重な記録なのでしょう。

ホルスト・シュタイン/NHK交響楽団

ホルスト・シュタイン
第一場、ホルスト・シュタインとN響のペトルーシュカと聞くと何か鈍重なイメージがあるのですが、果たして演奏はどうでしょうか?やはり色彩感はあまり無く、華やかな雰囲気は全くありません。塊まったような重さがあります。この当時のN響のねっとりとして音離れが悪い響きがそのままです。
第二場、納豆が糸を引くような感じで、一つの楽器が他の楽器を振り切って抜け出てくることが無く、明快な色彩感を演出することはありません。この曲にはこのコンビは全く合わないです。
第三場、金管が全開になることも無く、色彩的には本当に中途半端です。
第四場、ホルスト・シュタインは元々作為的な表現をする人では無いので、この作品を面白く聞かせようなどとは考えていないでしょう。最後のトゥッティでもくすんだ響きで開放的に鳴り響くことはありません。

あまりにも渋い演奏で、色彩感や華やかさとは無縁の演奏で、全く楽しめませんでした。
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セルジュ・コミッショーナ/RTVE交響楽団

コミッショーナ
第一場、遅いテンポで引きずるような演奏で、およそバレエ音楽とは思えません。アンサンブルも危なっかしいところがあります。たどたどしい感じがあって、演奏するのがやっとと言った印象です。
第二場、色彩感も乏しく、華やかさも無く寂しい感じです。
第三場、練習しているような遅いテンポです。とにかく遅いです。
第四場、金管が抜けてくることも無く、色彩の変化も感じられず、奥行き感も無い演奏です。アンサンブルの乱れもたびたびあり、演奏に余裕は全くありません。

遅いテンポで、色彩感も無くアンサンブルの乱れもたびたびあり、楽しめませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」の名盤を試聴したレビュー

ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」

ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」(Le Sacre du printemps)は、1913年に初演された作品で、20世紀音楽の金字塔とされる革新的な楽曲です。野性的で力強いリズムや不協和音を多用し、従来の西洋音楽の美的基準を大きく覆しました。この作品は、ロシアの異教的な春の祭りを描いており、自然と生命の再生、そして人間の原始的なエネルギーをテーマにしています。

作品の内容と構成

「春の祭典」は2部構成で、それぞれが異教の儀式を描いています。

  1. 第1部「大地の崇拝」:この部分では、春の訪れと自然の目覚めが表現されます。牧歌的なメロディで始まるものの、急に異様なリズムや不協和音が現れ、リズムの変化が複雑に絡み合います。音楽はしばしば荒々しく、自然の力の目覚めを表現するため、次々と異なるリズムが登場し、次第に緊張が高まります。
  2. 第2部「聖なるいけにえ」:こちらでは、春の到来を祝うために「選ばれた乙女」が犠牲として踊り死ぬまで踊り続ける、という異教的な儀式が描かれます。音楽はますます激しく、リズムもさらに緊迫していき、乙女の絶望的なダンスとともに音楽も暴力的に盛り上がります。最終的に、乙女が絶命することで曲は頂点に達し、儀式が完結します。

革新的な要素

「春の祭典」は、リズム、和声、音色のすべてで当時のクラシック音楽の常識を打ち破りました。

  • リズム:複雑なポリリズムや頻繁な拍子の変化が特徴で、当時としては異例の実験的リズムが使われています。このリズムの多様性が、野生的でプリミティブな雰囲気を強調しています。
  • 和声と音響:従来の調和や伝統的な和声のルールに縛られず、不協和音や大胆な音のぶつかり合いを取り入れました。緊張感と破壊的な音響は、聴く人を圧倒します。
  • オーケストレーション:ストラヴィンスキーはオーケストラの各楽器の特性を駆使し、多彩な音色で表現力豊かに演出しています。木管楽器や打楽器の使い方が特に斬新で、自然の荒々しさや原始的なエネルギーを鮮やかに描き出しています。

初演時の反応とその後の評価

1913年にパリでバレエ・リュスによって初演された際、当時の観客にとってあまりにも革新的で野性的な内容だったため、激しい騒動(いわゆる「暴動」)が巻き起こりました。大胆な音楽と振り付けは一部の観客からの強い拒否反応を引き起こしましたが、一方で音楽家や芸術家の間ではその革新性が賞賛されました。

現在では、「春の祭典」はストラヴィンスキーの最高傑作の一つとして評価され、現代音楽に大きな影響を与えた作品とされています。その斬新なリズムや音響は、映画音楽やポップスなど多くのジャンルにも影響を及ぼしており、今でもそのエネルギーに満ちた表現が聴衆を魅了し続けています。

4o

たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」名盤試聴記

エドゥアルド・マータ/ロンドン交響楽団

マータ★★★★★
マータのデビュー作です。メキシコ人らしい情熱的で色彩感豊かな名演です。
オケの爆発も尋常ではありません。私にとっては、青春時代のベストCDです。1978年の録音

第一部:大地礼賛
序奏、ビブラートとクレッシェンドして開始するファゴット、音が変わる瞬間に空気が変わります。冒頭から尋常でない雰囲気を伴っています。静寂感の中から浮き出てくるファゴットの演出はすばらしい。始まってすぐに感じる濃厚な色彩。ねばった表現のバス・クラリネット。鋭く突き刺さるトランペット。
それぞれの楽器のカラーが鮮明で、一つ一つの音が立っています。
春のきざし、全開の弦とホルン。すごいエネルギーをぶつけてきます。トランペットの咆哮も他の演奏とは比べ物にならないくらいの絶叫です。弦のボーイングも叩きつけるような激しさです。
リズム感もとても良いです。ラテンのリズム感なのだろうか。全体のリズムを引き締めるのにティンパニと大太鼓の絶妙なアンサンブルと一体感が必要だと思うのですが、この演奏はすばらしいです。
誘拐、ティンパニのリズムにタメがあって独特です。ティンパニや大太鼓が強烈でダイナミックです。
春のロンド、静かなメロディから硬質な音のティンパニ、そしてタフな金管の伸びのある咆哮と、次々に襲い掛かってきます。
敵対する二つの部族の戯れ、ティンパニが目の前で動きます。色彩が濃厚で原色で描かれているような、すごく鮮やかでそれが美しい!
賢者の行列、ホルンはあまり音量を落とさずに演奏します。ここのトランペットもすごいし、小物打楽器の動きも鮮明!
大地の踊り、強烈な咆哮ですが、アンサンブルは見事に整っています。ラッパのベルがひび割れするんじゃないかと思うくらいの第一部でした。

第二部:いけにえ
強烈な咆哮がありながら、弱音部では細部にわたって緩みなくキッチリアンサンブルしているし、表情もあります。
序奏、大太鼓が入ると崩れ落ちるような表現です。繊細なヴァイオリン。極端に音量を落とすことの無いミュートをしたトランペット。神秘的なホルン。
乙女たちの神秘的な集い、美しいビオラ。木管が粒立っていて美しいです。表現が引き締まっていてダレることがないので、聴いていて気持ちが良い。色彩はここでもとても濃厚です。ダイナミックな11拍子。
選ばれた乙女への賛美、いやぁもう人間技でここまでできるのか!ともう参りました。地を揺らすような大太鼓。締まった硬質なティンパニ。
祖先の呼び出し、三つの音を離して演奏するティンパニ。
祖先の儀式、咆哮するホルン。やはりここでもコントラストがはっきりしていて、楽器が鳴り切るので爽快感でいっぱいになります。
いけにえの踊り、鋭い音で鳴りきるトランペット。ティンパニのリズムに乗ってかなり強く入ってくるトロンボーン、ホルン、大太鼓。

やはり、凄かったです。これだけの絶叫をしても暴走しないロンドンsoの技術の高さにも驚かされますし、ここまで要求したマータにも脱帽です。ストレス発散したけりゃこれを聴け!このCDはタワーレコードの企画ディスクです。

ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

メータ★★★★★
メータのニューヨーク時代の特徴でもあるグラマラスな春の祭典です。
1990年の録音。ニューヨークを去る直前の録音になります。

第一部:大地礼賛
序奏、細身のファゴット、弱音にかなり気を使っている木管。ゆっくりと丁寧に演奏しているのが伝わってきます。とても静かです。バスクラはあまり強調されていません。マイルドであまり刺激的な音はありません。ミュートしトランペットは鋭い音でした。
春のきざし、ブレンドされて一体感のある弦。控えめなトランペットやホルン。ホルンも細身の音です。
誘拐、ここでもホルンは弱い感じがします。ホルンはニューヨークの弱点ですね。大太鼓が硬い撥でドンと入ってきて驚かされます。
春の踊り、連続する弦に続く木管の表情が印象的です。大太鼓を底辺にトゥッティの野太い響きは凄い厚みをもって迫ってきます。
敵の都の人々の戯れ、木管や弦の厚みのある響きがとても良いです。残響が豊かで楽器が分離して聞えることはありませんが、一体感はあります。
賢者の行列、強烈な咆哮はありませんが、厚みのある響きはなかなか良いです。
大地の踊り、金管の一体になったパワー感が欲しい気もします。最後のテューバは凄い!

第二部:いけにえ
序奏、しっかりと地に足が着いた木管。大太鼓がフワーッと柔らかく尾を引きます。トランペットがとても小さな音で演奏します。
乙女たちの神秘的なつどい、マットなビオラ。ここでもホルンはふくよかな音ではなく細身です。木管と弦のアンサンブルはとても良いです。少しoffぎみで美しい弦。
いけにえの賛美、ティンパニと大太鼓のクレッシェンドが大太鼓の低域を伴って音圧として届きます。金管も抑えるところは抑えてメータも大人になったんだと思わせます。
祖先の儀式、ここでもホルンは絶叫しません、ふくよかな響きを保っています。絶叫していてもホールがそのように聞こえないホールなのかも知れません。
いけにえの踊り、いろんな楽器といろんなリズムが交錯しますが、わりと冷静。トランペットのフラッターも綺麗です。大太鼓とティンパニが一つの楽器のように有機的に結びついていて、とても良い役割を果たしています。

決して、爆演ではありませんでしたが、豊かな残響を伴った一体感のある分厚い響きで、抑制する部分と突き刺さってくるところのコントラストがあって良い演奏だったと思います。

ワレリー・ゲルギエフ/キーロフ歌劇場管弦楽団

icon★★★★★
驚愕の終結が待っています。1999年の録音。

第一部:大地礼賛
序奏、冒頭から静寂感があります。粘っこく表現いるファゴット。いろんな音が聞こえてきます。奥まってあまり鋭くないトランペット。
春のきざし、猛烈な弦。ホルンは咆哮しません。デッドな録音のようで、それぞれの楽器の動きが良く分かります。とにかくいろんな音が聞こえてきます。バチーンと硬い撥で強打する大太鼓。まさに踊りのように自由に舞うピッコロ。
誘拐、これまで聞いた春の祭典とは一味も二味も違います。バランスもテンポも!それでも違和感を感じさせないところが、ゲルギエフの凄いところなのでしょうか。トロンボーンが突然突き刺さって来ます。
春の踊り、コントラバスの弦の振れ具合まで分かります。独特のアゴーギク。速いところはもの凄く速いテンポで演奏しています。他の部分とのコントラストの上でも効果的です。金管のポルタメントも特にトロンボーンが強烈です。
敵対する町の遊戯、中央付近を叩いているような音のするティンパニ。通常はテヌートされない部分をテヌートで演奏したり、新発見の連続で聴いていて飽きさせない。しかも、絶叫するわけでもなく。もちろん過不足なく、強烈です。
賢者の行列、ホルンとチューバが強烈でした。
大地の踊り、とにかく「春の祭典」の既成概念をぶち壊されます。それが十分に成立しているから凄いです。

第二部:いけにえ
何かが深いところへ崩れ落ちていくような印象を与える序奏。ストレートミュートでは無いトランペット。いままで、旋律だと思っていた楽器を抑えて、別のパートをクローズアップして聴かせたり、いろんなことが起こります。ロシアのオケからこんなに柔軟な演奏を引き出すのも驚きです。この演奏は洗練されています。
乙女たちの神秘なつどい、加速して物凄く強い11拍子。
いけにえの賛美、ピッコロがこんな旋律を吹いていたのかとまた、新たな発見。
祖先の呼び出し、強いトランペット。ちょっとダサいティンパニ。やはり中心付近を叩いているような感じの音です。
祖先の儀式、アルトフルートが表情豊かに歌います、バックのミュートをした金管がテヌートで演奏しています。シンバルが安っぽいppの音を出しています。このオケには不釣合いな感じです。とても粘って豊かな歌のバスクラリネット。
いけにえの踊り、テンポが一瞬止まったり、アーティキュレーションの表現を誇張したり、終始「なんじゃこりゃ~!」の連続です。そして、最後に信じられないような瞬間が訪れる!

参りました。凄かった。でも、この感動は今までの一般的な「春の祭典」の演奏を知っていないと理解できないですね。いくつか聴いてからこのCDにしてください。お勧めです。

エドゥアルド・マータ/ダラス交響楽団

icon★★★★★
マータの再録音です。前作の血沸き肉踊る爆演は影を潜め、ゆったりとしたテンポの運びで細部まで克明に描いた演奏。1991年の録音

第一部:大地礼賛
序奏、クレッシェンドして入ったファゴット。ホールトーンを適度に取入れた録音、自然な音が特徴です。ゆったりとしたテンポ、オケに厚みがない分、細部まで見通せる良さがある。あまりキンキン響かないトランペット。
春のきざし、ゆっくりと踏みしめるような弦。金管は全体に抑えていると言うか、鳴らないのか、極めて静かな春の祭典です。大太鼓は強烈です。遅いテンポですが、ダレることなく丁寧に演奏しています。
誘拐、ロンドンsoとのデビューCDとは正反対の演奏になっているところが、どのような心境の変化なのか?
全く絶叫しないのですが、テンポが全体に遅いので、変に肩透かしを食ったような感覚はなくて、意外と自然に聴くことができます。全体に静かなのですが、大太鼓だけは強烈に入って来ます。
春の踊り、ホルンが大きく歌います。楽器の音はとても綺麗に録音されています。マータは爆演にしないことで、細部を描き出そうとしているのか。数ある春の祭典の中でも異質な存在です。こんなに静かな春の祭典は初めてです。金管のホルタメントも強く押しません。
敵の都の人々の戯れ、全く咆哮しませんが、楽器の質感はとても良く伝わって来ます。
賢者の行列、ホルンも抑え気味です。打楽器は存在感があります。
大地の踊り、原色の濃厚さは無く、むしろ爽やかな演奏です。デュトワやカラヤンのスタジオ録音のように上品に演奏しようとして大失敗になった例も多くありますが、これは静かにゆっくり演奏した数少ない成功例ではないかと思います。

第二部:いけにえ
序奏、冒頭からぶつかり合う音がします。ここでも、ゆっくり静かにを通しています。オケは決して下手なわけではありませんね。伸びのある音で録られています。
乙女たちの神秘なつどい、少し細いですが、美しいビオラ。ゆっくりと作品を噛み締めるようです。
いけにえの賛美、トランペットなどの咆哮はありませんが、艶やかで美しいです。ここでも大太鼓は強烈です。
祖先の呼び出し、ファゴットはテヌートで美しいです。
祖先の儀式、無表情に演奏されるアルトフルート。ミュートしたトランペットとバストランペットはスタッカートぎみの演奏でした。
いけにえの踊り、質感が良く美しいです。ティパニと大太鼓のリズムも軽いですが、ここ一発の大太鼓はやはり強烈です。この曲をこのテンポで破綻をきたさずに音楽にする能力は非常に高いと思います。一つ一つ登場する楽器の音が美しい。

これまでの春の祭典の概念を覆すような演奏に仕上がっています。
私にとって、「春の祭典は爆演ならそれで良し!」だったのですが、この演奏には完全にやられました。これほど力まず美しい音を追求し、しかも細部まで見通せる演奏をした、マータ/ダラスsoに拍手です。ブラヴォー!!!!!
これはすばらしい。マータが飛行機事故で若くしてこの世を去ったのが悔やまれます。

ウラジミール・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

フェドセーエフ★★★★★
泥臭い原色の春の祭典です。オケも大健闘!

第一部:大地礼賛
序奏、ビブラートをかけた細身のファゴットから開始。一つ一つの音を紡ぐようにゆっくりと丁寧な演奏です。バスクラがすごく粘るような演奏で、存在を主張します。鋭いミュートのトランペット。
春のきざし、ガリガリと、でも一体感のある弦、遠くで尾を引いて響くホルン。短くスタッカートぎみに演奏するトロンボーン。大太鼓は餅つきのようなベタッとした音でしたが強烈でした。細身で明るいホルン。乙女たちの踊りはまさに踊っているかのような多彩で乗りの良い演奏でした。
誘拐、木管が克明に録音されている割にはホルンが遠い。残響成分も含まれて良い効果もありますが、ちょっと遠すぎるような感じがします。
春の踊り、木管が今まで聴いたことのない旋律を浮き彫りにしてくれます。ホルンはテヌートで演奏します。ちょっと詰まった感じの音をさせるティンパニ。大太鼓はここでも硬質で強烈です。金管はそれ程咆哮はしません。
敵の都の人々の戯れ、スピート感があってなかなか面白い。
賢者の行列、地を揺らすような大太鼓。次々と音が溢れ出します。
大地への口づけ、
大地の踊り、最後のティンパニが凄い!

第二部:いけにえ
序奏、ここは柔らかいマレットの大太鼓。表情豊かなトランペット。ゆっくりと進みます。
乙女たちの神秘なつどい、ここもゆっくりとした演奏です。濃厚な色彩と濃い表現です。11拍子の前をすごくゆっくりと演奏し、11入る直前にテンポがさらに大きく動いた、かなり効果的!フェドセーエフもなかなか強烈な主張をします。オケも見事なアンサンブルをしていますし、音色もロシアそのものだから作品には合っているし、この演奏は良いです。
復活がどうしてあんなに変な演奏だったんだろう?
いけにえの賛美、ここもゆっくりと強烈な原色の色彩です。木管のアンサンブルの良さが特に印象的でした。
祖先の呼び出し、かなりクレッシェンドするティンパニと大太鼓。ファゴットはテヌート気味です。
祖先の儀式、ズシンと思い刻み。ミュートしたトランペットとトロンポーンはテヌート気味です。ホルンも咆哮します。シンバルと大太鼓がかなり強烈です。バストランペットも強く下品です。
いけにえの踊り、気持ち良いティンパニ。最後は、ロシアンサウンド炸裂!原色の音の洪水状態です。ティンパニと大太鼓が一体になった原始的なリズム。トランペットやトロンボーンは短めに演奏します。最後の一撃も強烈でした。

強烈な演奏でした。なかなかの好演です。やはり春の祭典は枯れた老人が指揮してもダメですね。まだまだ脂ぎった人が指揮しないと面白い演奏は生まれてこないと思いました。

ダニエル・バレンボイム/シカゴ交響楽団

バレンボイム★★★★★
第一部:大地礼賛
序奏、豊かな残響でとても雰囲気のあるファゴット。他の楽器も克明に浮き上がります。バスクラもはっきりとしています。ハーセスのトランペットも鋭いです。
春のきざし、豪快に鳴り響く弦。ホルンもトランペットも咆哮します。非常に濃厚な色彩。原色で彩られた演奏です。シカゴsoのパワー炸裂です。
誘拐、ズシンと響く大太鼓。金管の咆哮はかなり凄いです。豊かな残響も影響していると思いますがビンビンに響きます。
春の踊り、かなり膨らむコントラバス。金管の強烈さは尋常ではありません。ゆっくりとしたEbクラとフルート。
敵の都の人々の戯れ、容赦なく吹きまくる金管。弦もサクサクと気持ち良い響きです。
賢者の行列、大太鼓がかなり低い響きを伴っています。ギロもしっかり響きますが、金管の咆哮は凄いです。
大地へのくちづけ、
大地の踊り、ホールの残響も伴っているからだと思いますが、トランペットなどは物凄く鋭く突き刺さって来るようで猛烈です。

第二部:いけにえ
序奏、とても表現の振幅が大きいです。大太鼓が入る部分も大きく膨らみます。
乙女たちの神秘なつどい、少しザラついたビオラ。豊かな響きで表現もあるアルトフルート。盛大になるヴァイオリン。爆発するような11拍子。
いけにえの賛美、怒涛のエネルギーです。遠慮なく吹きまくる金管。
祖先の呼び出し、大太鼓の超低音が長く尾を引きます。
祖先の儀式、残響が長いので、静寂感は全くありません。強烈なホルンの咆哮。トゥッティはシカゴsoのパワー炸裂です。物凄い音の洪水状態です。
いけにえの踊り、強烈な金管の咆哮。遠慮の無いティンパニの強打。

残響の長いホールでの演奏で、大太鼓などは長く尾を引いていました。金管の強烈な咆哮とティンパニの強打は胸がスカッとするような感じでした。ライブでこれだけ強烈な演奏が聞けた聴衆は幸せだったと思います。
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