ストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」は、彼の初期の代表作であり、壮大で幻想的な物語と豊かなオーケストレーションで知られる作品です。1909年にセルゲイ・ディアギレフの依頼で作曲され、1910年にバレエ・リュスによってパリで初演されました。この成功により、ストラヴィンスキーは一躍脚光を浴び、後の「ペトルーシュカ」や「春の祭典」と並ぶ革新的な作品へとつながっていきました。
1. 物語の背景と構成
「火の鳥」は、ロシアの民話に基づいたファンタジー色の強い物語で、火の鳥とその魔法の力、英雄イワン・ツァレーヴィチ、邪悪な魔王カスチェイ、不思議なクリーチャーたちが登場します。
あらすじは以下のようなものです:
- 火の鳥との出会い:若き王子イワンは森で火の鳥に出会い、鳥を捕まえますが、命乞いをする火の鳥を逃がしてやることにします。そのお礼として、火の鳥は彼に自分の羽を一本渡し、困ったときに助けることを約束します。
- カスチェイの魔法の城:イワンはカスチェイの城に迷い込み、そこで囚われの姫たちと出会います。しかし、カスチェイに捕まってしまい、命の危機に陥ります。
- 火の鳥の助け:イワンは火の鳥の羽を使い、火の鳥が現れてカスチェイとその手下たちに魔法をかけ、彼らを倒します。
- 解放と結婚:カスチェイの力が破れ、囚われていた姫たちが解放され、イワンと姫が結ばれます。物語は彼らの幸せな結婚とともに幕を閉じます。
2. 音楽の特徴と各セクション
「火の鳥」の音楽は、壮大なオーケストラの響きと、ロシア民謡のエッセンスが融合した非常に豊かな内容で、全曲版には20以上のセクションが含まれています。ここでは主要なセクションを紹介します。
- 序奏:不気味で暗い低音の響きから始まり、魔法の森の幻想的な雰囲気が描かれます。この序奏部分で、カスチェイの城の不気味さや魔法の力を感じさせる音楽が提示されます。
- 火の鳥の登場:オーケストラが一転して華やかになり、火の鳥の軽やかで神秘的な飛翔が描かれます。ここでは、華やかで速いパッセージが使われ、火の鳥の美しさと不思議な存在感が音楽で表現されます。
- 王女たちの踊り:カスチェイに囚われた姫たちの優美な踊りが描かれ、柔らかく抒情的な旋律が流れます。ここにはロシアの民族的な響きが取り入れられており、イワンが出会う姫たちの美しさが感じられます。
- カスチェイとその一党の魔法の踊り:不気味で緊張感に満ちた音楽が展開され、カスチェイとその手下たちの登場が迫力を持って描かれます。突き刺すようなリズムと不協和音の使用で、カスチェイの恐ろしさが表現されます。
- 子守唄 (火の鳥の回帰):火の鳥がカスチェイの手下を眠らせる場面で、低音の柔らかな旋律が繰り返される、美しく静かな部分です。火の鳥の魔法の力が効果を発揮し、カスチェイの力が徐々に弱まっていきます。
- フィナーレ:壮大で力強い結末を迎える部分で、イワンと姫たちが解放され、希望と幸福の響きが満ち溢れます。徐々にクライマックスに向かって高揚していく音楽は、カスチェイの力が完全に破れ、物語がハッピーエンドを迎える場面を象徴しています。
3. オーケストレーションの巧みさ
「火の鳥」は、ストラヴィンスキーのオーケストレーションの才能が遺憾なく発揮された作品です。彼はこの作品で、以下のような革新的な技法を使用しています:
- 色彩豊かな楽器の組み合わせ:ホルン、木管楽器、パーカッションなどが巧妙に組み合わされ、ファンタジックで鮮やかなサウンドが作り出されています。
- 新しいリズムの探求:複雑で変則的なリズムが多用され、特にカスチェイの一党の踊りでは、テンションの高いリズムが不気味さを際立たせています。
- 異国情緒とロシア民謡の融合:ストラヴィンスキーは、ロシアの民族音楽や異国情緒を取り入れることで、火の鳥の異世界感を引き立てています。
4. 全曲版と組曲版
「火の鳥」には全曲版のほか、演奏時間を短縮した組曲版も存在し、1911年版、1919年版、1945年版の3つが特によく知られています。これらの組曲版は、全曲版の主要なセクションをまとめ、コンサート向けに編曲されたものです。特に1919年版は、最も頻繁に演奏される組曲で、全曲版に比べて簡潔で親しみやすい構成になっています。
5. まとめ
「火の鳥」は、幻想的な物語と巧妙なオーケストレーションが魅力のバレエ音楽です。物語の魔法的な雰囲気やロシア民話のエッセンスが音楽に込められ、ストラヴィンスキーの作曲家としての革新性を存分に示しています。異国情緒と民族的な要素が織り交ぜられたこの作品は、聴く者に異世界の冒険と感動を与え、ストラヴィンスキーの名を一躍世に広めた名作です。
たいこ叩きのストラヴィンスキー バレエ音楽「火の鳥」名盤試聴記
コリン・デイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
★★★★★
イントロダクション、暗闇から耳を澄ませば聞こえてくるような低弦のメロディ。ゆっくりとしたテンポでモヤがかかったようなくすんだ響き。
カスチェイの魔法にかかった庭、ゆっくりと丁寧な表現です。遅いテンポもあってとても重量感があります。
火の鳥の出現、潤いと深みのある響き。
火の鳥の踊り、遠いクラリネット。雫がしたたり落ちるような潤いのある弦。とても濃厚な色彩です。
王子に捕らえられた火の鳥、瑞々しく美しい響きです。
火の鳥の哀願、くすんだ響きの中からシルクのようなヴァイオリン。重低音を含んだ大太鼓。オケの一体感があるとても濃厚な演奏です。デイヴィスの間の取り方もとても良いです。遠くから響くようなホルン。シロフォンも際立って響きます。
魔法にかけられた13人の王女たち、涼やかでシルキーなヴァイオリン。暖かいクラリネット。伸びやかなフルート。
黄金の果実とたわむれる王女たち、とてもしっかりとまとまっていて暴走するようなパートは一切ありません。とても反応の良いオケです。表現もとても引き締まっています。
イワン王子の不意の登場、柔らかく美しいホルン。穏やかな弦。
王女たちのロンド、瑞々しく美しい演奏です。ブレンドされた響きはまろやかですが、ソロで出てくる楽器は鮮明です。
夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠くからと近くから響くトランペット。潤いのある木管。
城番の怪物どもに捕らえられる王子、眩いばかりのグロッケン。気持ちよく鳴り響く金管。
不死の魔王カスチェイの登場、重量感のある大太鼓。不気味な雰囲気があります。
イワン王子とカスチェイの対決、大太鼓の響きがとても良いです。
王女たちの哀願、シルキーなヴァイオリン。襲い掛かってくるような金管。
火の鳥の出現、ブレンドされてまろやかな響きです。
火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、生き生きとした木管。
カスチェイらの凶暴な踊り、深いところから鳴り響くチューバ、反響も含まれている切れの良いトロンボーン。雫がしたたり落ちるようなトランペット。若干大人しい感じです。金管の色彩感はとても濃厚です。
火の鳥の子守歌、哀愁に満ちて豊かに歌うファゴット。しっとりとした弦もとても美しいです。
カスチェイの目覚め、暗いトーンから華やかなファンファーレになりました。
カスチェイの死の深い闇、とても静かです。
カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、美しい残響を伴って清々しい響きのホルン。瑞々しい弦とのコントラストも見事です。潤いのあるトランペット。弦だけになったところで一旦大きくテンポを落とします。とても豪華なクライマックス。
深深とした潤いに満ちた色彩豊かな火の鳥
コンセルトヘボウ独特の深みのある響き、艶やかな弦、珠玉のようにちりばめられた木管楽器。演奏を引き締める打楽器。
場面に応じて、しっかり主張し表現豊かです。
どの楽器も潤いに満ちて大変美しい。濃厚な色彩、夢心地のような音楽の虜になります。濃い音でしかも、切れ味鋭いトランペット、超低域まで揺さぶる大太鼓、眩いばかりのグロッケン。
デイヴィスの指揮も重心が低く、堂々としています。
哀愁に満ちたファゴットの子守唄。どのパートをとっても完璧な演奏です。
デイヴィスのストラヴィンスキーの三大バレエでは、この「火の鳥」が最も成功した演奏でしょう。
ピエール・ブーレーズ/ニューヨーク・フィルハーモニック
★★★★★
イントロダクション、速めのテンポでハープやトランペットがくっきりしています。かなりシャープです。
カスチェイの魔法にかかった庭、当時のマルチ・モノの録音を感じさせるとても鮮明な一つ一つの楽器です。
火の鳥の出現、とても鮮明で生き生きとしています。ニューヨークpoもこのころになるとアンサンブルも反応もとても良くなっています。
火の鳥の踊り、ブルー系の響きで、とてもシャープです。バーンスタイン時代とはまるで違います。
王子に捕らえられた火の鳥、とにかく明晰です。オケの反応も敏感です。
火の鳥の哀願、マルチマイクらしい近接した楽器の鮮明な動きです。大きな表現はありませんが、細部まで見通せる演奏はさすがです。ニューヨークpoもとても美しいです。クラリネットもとてもクリアです。
魔法にかけられた13人の王女たち、清々しいヴァイオリン。透明感のある木管。手に取るように分かる明晰さです。
黄金の果実とたわむれる王女たち、生き生きと動き回る楽器達。オケもとても反応良く見事です。ブーレーズの統率力も見事です。
イワン王子の不意の登場、ホールの残響を伴ったホルン。くっきりとしたクラリネット。
王女たちのロンド、くっきりと鮮明で色んな楽器の動きが出に取るように分かります。この当時のCBS独特のカサカサとささくれ立ったような感じも無く潤いに満ちています。
夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、ビリビリと鳴るトランペットが左右から聞こえます。活発な動きです。
城番の怪物どもに捕らえられる王子、凄みのあるチューバ。めまぐるしく動き回るオケ。
不死の魔王カスチェイの登場、フワッと柔らかい大太鼓。
イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりとしていて切れ味の良い金管。
王女たちの哀願、ロマンティックに歌います。切れ味鋭いオケ。嵐のような大太鼓。
火の鳥の出現、鮮明な木管。
火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、鮮明なシロフォン。コントラバスも鮮明です。
カスチェイらの凶暴な踊り、切れ味抜群で鮮明です。ブーレーズに完全にコントロールされているオケ。精緻で見事です。チューバがハタハタと響きます。小物打楽器も目の前にあるような鮮明さです。
火の鳥の子守歌、伴奏からかろうじて浮き上がるファゴット。深く感情を込めることはありません。
カスチェイの目覚め、暗いトーンで染められています。
カスチェイの死の深い闇、深みのある美しい響き。
カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、遠くから響くホルン。とても良い雰囲気です。ブルブルと響くチューバ。意外とモノトーンのようなクライマックスでした。
ヴァレリー・ゲルギエフ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★★★
イントロダクション、ゴツゴツとした冒頭。トランペットがはっきりと出てきます。
カスチェイの魔法にかかった庭、表現は積極的です。
火の鳥の出現、積極的で反応の良い演奏です。
火の鳥の踊り、ブレンドされた暖かい響きです。色彩感は枯れた感じです。
王子に捕らえられた火の鳥、
火の鳥の哀願、暖かく分厚い響き。木管の豊かな色彩。遠く硬質なホルン。
魔法にかけられた13人の王女たち、ライヴなので極上の美しさではありませんが、木管は生き生きしています。ヴァイオリンのソロも豊かな表現です。
黄金の果実とたわむれる王女たち、活動的な動きです。
イワン王子の不意の登場、ウィンナホルンらしい響きです。穏やかで柔らかい弦。控えめなクラリネット。
王女たちのロンド、アゴーギクを効かせて歌うオーボエ。テンポも微妙に動いています。鋭いピッコロ。歌うフルート、感情に合わせてテンポが大きく動きます。
夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠近の対比があるトランペット。とても豊かな表現の弦。木管はゆっくりと感情を込めた演奏です。
城番の怪物どもに捕らえられる王子、ゆっくりとしたテンポです。眩いグロッケン。
不死の魔王カスチェイの登場、チューバが芯の強い音で主張します。
イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりとして良く鳴るトロンボーン。テンポの激しく動きます。
王女たちの哀願、艶っぽく歌います。金管は大きくritしました。間も大きく空けました。
火の鳥の出現、シンバルは分離されている感じで、木管の動きが良く分かります。木管と弦の動きにはっきりとした表現付けがあります。
火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、速いテンポでぐいぐい進みます。シロフォンが凄いです。
カスチェイらの凶暴な踊り、奥から響くトロンボーン。かなり凶暴な表現です。金管は遠慮無く吹きます。ティンパニが意表を突いた強打。荒れ狂うような凄い演奏です。
火の鳥の子守歌、速めのテンポですが、感情を込めて歌うファゴット。最後はかなりテンポが遅くなりました。
カスチェイの目覚め、ゆっくりと演奏されるファンファーレ。
カスチェイの死の深い闇、探り合うような静けさです。
カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、たっぷりと歌うホルン。ゆっくりと演奏するハープとそれに続く弦。濃厚な色彩で鳴り響く金管。最後は速いテンポになりました。なかなかの力演でした。
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イオン・マリン/ロンドン交響楽団
★★★★☆
イントロダクション、とてもゆっくりとしたテンポで豊かに表現する弦。トランペットがはっきりと聞こえます。
カスチェイの魔法にかかった庭、色彩感が豊かで、表現の幅も広い演奏です。楽器の動きも克明です。
火の鳥の出現、柔らかい響きです。
火の鳥の踊り、ここでもゆっくりとしたテンポで細部まで克明に描いて行きます。
王子に捕らえられた火の鳥、ゆっくりとしたテンポでとても丁寧です。
火の鳥の哀願、ゆっくり丁寧なヴァイオリンのソロ。イギリスらしいクラリネット。ゆっくり目で演奏される木管。暖かい響きです。バランスの良いトランペット。かなり遠いホルン。ファゴットもゆっくりです。
魔法にかけられた13人の王女たち、抑えたヴァイオリン。豊かに歌うフルート。
黄金の果実とたわむれる王女たち、凝縮されて濃厚です。表情もとても豊かです。
イワン王子の不意の登場、ふくよかで、歌うホルン。とても柔らかい弦。かなり抑えたクラリネット。
王女たちのロンド、伸びやかで粘るピッコロ。続く木管も濃厚な表現です。テンポも動いて美しい旋律に酔いしれるような感じです。
夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、ゆっくりとしたテンポで、強弱の振幅も大きいです。
城番の怪物どもに捕らえられる王子、ゆっくりです。地獄の釜の蓋が開いたようなチューバの響き。確認するようにゆっくりとしたテンポです。
不死の魔王カスチェイの登場、あまり大きく盛り上がらず、硬い響きの大太鼓。
イワン王子とカスチェイの対決、押さえ気味のトロンボーン。良く鳴るトランペット。
王女たちの哀願、細身で美しいヴァイオリン。金管は抑え気味ですが、打楽器は強いです。
火の鳥の出現、
火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、かなり遠いシロフォン。トランペットがビリビリと鳴ります。
カスチェイらの凶暴な踊り、かなり軽い入りです。ゆっくり目で動いています。かなり冷静な演奏です。
火の鳥の子守歌、次第にテンポが遅くなって豊かに歌うファゴット。オーボエもたっぷりと歌います。
カスチェイの目覚め、混沌としたコントラファゴット。切れ味の良いシャープな金管。
カスチェイの死の深い闇、ここもゆっくりで、とても静かです。
カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、次第に近付いてくるようなホルン。とても抑えた弦。鋭く輝かしいトランペット。最後は速めのテンポになって、存分にオケを鳴らして終わりました。
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エルネストアンセルメ/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
★★★★
イントロダクション、物々しい響きです。マイルドな管です。ヴァイオリンのグリッサンドが強調されています。
カスチェイの魔法にかかった庭、豊かな表現のファゴット。柔らかい弦のクレッシェンド。
火の鳥の出現、少し重い感じです。
火の鳥の踊り、ゆっくり目ですが、細部まで見通しが良い感じではありません。
王子に捕らえられた火の鳥、ゆっくりとしていて確実な足取りです。
火の鳥の哀願、かなり抑えたヴァイオリンのソロ。ここもゆったりとして余裕を感じさせる演奏です。弦に伸びやかさがありません。豊かに歌うオーボエ。抑え気味で柔らかいトランペット。
魔法にかけられた13人の王女たち、涼しいヴァイオリン。伸びやかなフルート。
黄金の果実とたわむれる王女たち、柔らかく奥行き感があります。ゆっくり目なのが少し野暮ったい感じになります。
イワン王子の不意の登場、伸びやかなホルン。はっきりと入るクラリネット。
王女たちのロンド、安定感のある落ち着いた演奏です。
夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠近の対比ははっきりとしているトランペット。とてもゆっくりと濃厚です。
城番の怪物どもに捕らえられる王子、軽く演奏している金管。テンポはゆっくりです。
不死の魔王カスチェイの登場、崩れるような大太鼓。
イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりと刻み込むようなトロンボーン。金管が強く演奏する部分もゆっくりでした。
王女たちの哀願、太いヴァイオリン。しっかり音を切って強い金管。強烈なホルン。
火の鳥の出現、丁寧な演奏です。
火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、ゆっくりとしたテンポです。硬いシロフォン。大きく盛り上がります。
カスチェイらの凶暴な踊り、軽いチューバ。トロンボーン、トランペットは強いです。ゆっくりとしたテンポです。整然としていて、凶暴な感じはありません。ティンパニのクレッシェンドは凄いです。
火の鳥の子守歌、あまり寂しい感じにはならずにファゴットが入りました。ファゴットも大きな表現はありません。あまり感傷的にはなりません。
カスチェイの目覚め、ゆっくりと色んな楽器が響くファンファーレ。
カスチェイの死の深い闇、ここもゆっくりで、明確に描いて行きます。漂うような弦。
カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、速めのテンポで演奏されるホルン。爽やかな弦。抑え気味でゆっくりと演奏される金管。大太鼓が入る前にritしました。
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シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団
★★★★
イントロダクション、緩い感じです。デュトワの演奏にしてはあまり楽器がくっきりと浮かび上がりません。ホルンはシャープでした。
カスチェイの魔法にかかった庭、潤いがあまり無く、カサカサした印象です。弦は大きくクレッシェンドしました。
火の鳥の出現、少しoffぎみで淡い色彩感で少し線が細い感じです。
火の鳥の踊り、奥まって小じんまりとしている感じです。
王子に捕らえられた火の鳥、offぎみなので密度が薄い感じがします。
火の鳥の哀願、細身のヴァイオリンのソロ。涼しく薄い響き。淡々としていて平板な感じです。表現が奥ゆかしくあっさりとしています。かなり遠いホルン。シロフォンもかなり遠いです。
魔法にかけられた13人の王女たち、オケは上手いのですが、コンセルトヘボウのような魅力的な響きではありません。ダイナミックの変化も少なく平板な感じです。
黄金の果実とたわむれる王女たち、offぎみで、少し遠くで聞く感じで、密度が少し薄い感じがします。強弱の変化もとても穏やかです。
イワン王子の不意の登場、表現のあるホルン。くっきりと浮かび上がるクラリネット。
王女たちのロンド、少しだけ遠いですが、とても美しいです。安心して身をゆだねることができる演奏です。タメがあったりもします。最後はかなりゆっくりになりました。
夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠くと近くの対比がはっきりとしているトランペット。ゆっくりと丁寧に感情の込められた演奏です。
城番の怪物どもに捕らえられる王子、気持ちよく鳴る金管。
不死の魔王カスチェイの登場、ビリビリと鳴るトロンボーン。透明感のある木管。
イワン王子とカスチェイの対決、ビーンとなるトロンボーン。気持ちよく鳴り切る金管。
王女たちの哀願、細身のヴァイオリン。トロンボーンとトランペットは思いっきり鳴ります。
火の鳥の出現、シンバルが弱めで木管の動きが良く分かります。
火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、遠いシロフォン。すっきりと細身の響きです。
カスチェイらの凶暴な踊り、軽く入りました。金管はとても気持ちよく鳴ります。涼しい響きで凶暴な感じはありません。
火の鳥の子守歌、くっきりと浮かび上がるファゴットですが、とてもあっさりとした演奏です。
カスチェイの目覚め、ゴロゴロとあまり重量感の無いコントラファゴット。ファンファーレはあまり明るい響きではありませんでした。最後に強烈なトロンボーンが入りました。
カスチェイの死の深い闇、繊細で美しい弦。
カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、残響を伴って豊かな表現のホルン。生き生きとしたフルート。このコンビらしいスッキリとしたスマートな響きのクライマックスでした。
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ユッカ=ペッカ・サラステ/ケルンWDR交響楽団
★★★☆
イントロダクション、速めのテンポです。柔らかいですが、トランペットがはっきりと聞こえます。
カスチェイの魔法にかかった庭、速めのテンポで手際よく片付けて行く感じです。
火の鳥の出現、ライヴですが、かなり鮮明です。
火の鳥の踊り、ゆっくり目で細部まで鮮明ですが、色彩感は濃厚ではありません。
王子に捕らえられた火の鳥、豊かな残響で滑らかです。
火の鳥の哀願、艶やかなヴァイオリンのソロ。豊かな響きを伴って浮かび上がる木管。色彩感が少し豊かになって来ました。朗々と響くホルン。
魔法にかけられた13人の王女たち、清々しく美しいヴァイオリン。フルートもホルンもハープくっきりと浮かび上がります。艶やかなヴァイオリンのソロ。伸びやかに歌うフルート。
黄金の果実とたわむれる王女たち、とても柔らかいです。めまぐるしく動き回ります。
イワン王子の不意の登場、ちょっと乱暴な感じがするホルン。
王女たちのロンド、歌ってはいますが、速めのテンポで淡々と進みます。
夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、マットなトランペット。
城番の怪物どもに捕らえられる王子、チャイムがかなり強いです。チャイムの影に隠れるトランペット。深みのあるチューバ。木管の速いパッセージが盛大です。
不死の魔王カスチェイの登場、
イワン王子とカスチェイの対決、全体に埋もれるような金管。
王女たちの哀願、糸を引くような粘りのあるヴァイオリン。崩れ落ちるような打楽器。
火の鳥の出現、ゆったりと動きがとても良く分かります。
火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、ゆっくりです。木管がとても大きな表現です。
カスチェイらの凶暴な踊り、ホールに響き渡る一撃。豊かな残響で生き生きとした演奏です。盛大に鳴り響きます。
火の鳥の子守歌、哀愁を感じさせるファゴット。速めのテンポですが、豊かな残響があるので、とても良い雰囲気です。
カスチェイの目覚め、あまり強く演奏しないファンファーレ。
カスチェイの死の深い闇、はっきりとした動きの弦。
カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、豊かな残響でふくよかなホルン。エネルギーの爆発よりもバランスの良いクライマックスでした。
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ピエール・ブーレーズ/シカゴ交響楽団
★★★☆
イントロダクション、速めのテンポで暗い雰囲気です。楽器はニューヨークpoの時とは違ってブレンドされています。
カスチェイの魔法にかかった庭、精密機械のような見通しの良さはさすがです。
火の鳥の出現、ブレンドされた落ち着いた響きです。
火の鳥の踊り、余裕のある滑らかな演奏です。トランペットも濃厚な感じではありません。
王子に捕らえられた火の鳥、ゆったりとしたテンポで余裕しゃくしゃくです。
火の鳥の哀願、暖かく淡白な色彩です。遠く硬質なホルン。
魔法にかけられた13人の王女たち、枯れた響きのヴァイオリン。何かを強調するようなことが無いので、サラッと流れて行きます。
黄金の果実とたわむれる王女たち、きりっと粒立った木管。
イワン王子の不意の登場、少し硬質なホルン。サラッとしている弦。締まりのあるクラリネット。
王女たちのロンド、速めのテンポであっさりとした演奏です。キッチリと刻むように進みます。
夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、サラッと軽い演奏です。
城番の怪物どもに捕らえられる王子、ゆっくりで遠近の対比が強調されています。かなり遅いです。
不死の魔王カスチェイの登場、一気に大太鼓までクレッシェンドしました。
イワン王子とカスチェイの対決、ものすごく遅いテンポです。金管が強くなってからテンポが速くなりました。
王女たちの哀願、あまり色彩感は濃厚ではありません。
火の鳥の出現、
火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、柔らかいシロフォン。輝かしく鳴るトランペット。
カスチェイらの凶暴な踊り、軽めに入りました。とても整っています。凶暴な感じはあまりありません。
火の鳥の子守歌、あっさりと演奏するファゴット。とても淡々と進みます。
カスチェイの目覚め、明るいファンファーレ。
カスチェイの死の深い闇、次々と湧き上がるような弦。
カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、ゆったりとしたテンポで筋肉質のホルン。さすがに力のある金管。見事なバランスで鳴り響きます。
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ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★
イントロダクション、くっきりとしたトロンボーン。どの楽器も明瞭に浮かび上がります。
カスチェイの魔法にかかった庭、残響成分が少な目で、細身です。弦のクレッシェンドは大きかったです。
火の鳥の出現、暖かく鮮明な色彩感。
火の鳥の踊り、デイヴィス/コンセルトヘボウoほど色彩感は濃厚ではありませんが滑らかに流れて行きます。
王子に捕らえられた火の鳥、ニュートラルな響きであまり特徴がありません。
火の鳥の哀願、ゆっくりとしたヴァイオリンのソロでした。コンセルトヘボウのような濃厚な色彩感が無く、音色的な魅力を感じないのは残念です。ハイティンクの指揮なので、大きな表現はありません。遠くから硬い響きのホルン。
魔法にかけられた13人の王女たち、細いホルン。美しいのですが、強い個性がありません。オケは卒なく上手いです。
黄金の果実とたわむれる王女たち、コンセルトヘボウ時代にはあれほど魅力的な響きを生み出していたハイティンクがなぜこんなに個性の無い響きの演奏をしているのか不思議です。堅実で落ち着いた足取りです。
イワン王子の不意の登場、ふくよかで美しいホルン。色彩感の無い弦。
王女たちのロンド、サラサラとした弦が美しい。ゆっくり演奏されるピッコロ。ハイティンクにしては珍しく、テンポがとても遅くなる部分があります。
夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、遠くと近くで響くトランペットは控え目です。
城番の怪物どもに捕らえられる王子、力を入れずに軽めの演奏です。
不死の魔王カスチェイの登場、暗闇のようなファゴット。
イワン王子とカスチェイの対決、ゆっくりとしたテンポで短めのトロンボーン。
王女たちの哀願、大太鼓はドカンと来ますが金管は抑え気味ですが見事なバランスです。
火の鳥の出現、シロフォンが入る前は遅いです。
火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、静かでゆっくりです。確実に刻む弦。
カスチェイらの凶暴な踊り、凄く抑えられた演奏で、凶暴さはありませんが、1拍でドカンと来る部分の迫力はなかなかです。
火の鳥の子守歌、寂しげな雰囲気の中で美しく歌うファゴット。弦と弓が摩擦している感じのヴァイオリン。
カスチェイの目覚め、重いコントラファゴット。くすんだファンファーレ。あまり大きなコントラストの変化はありません。
カスチェイの死の深い闇、弦が各パート一人ずつのような静けさです。
カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、ふくよかなホルンですが、少しマットです。清楚で美しい弦。大太鼓の強打。色んな音が鳴り響き、最後は豪華な響きになりました。
オケは上手いし、ハイティンクもそつなく演奏しています。
もう少しホールの響きも含めた奥深い音色を求めたいです。
アンサンブルの精度など上手さについては文句の付けようがないくらいです。ただ、ハイティンクの指揮はかなり聞き込まないと良さが分からないです(私の場合)。目だった表現や強い主張をするタイプの指揮者ではないので、安定感は抜群ですが、スリルや刺激を求めても外されます。
女王たちのロンドでは木管の美しい旋律。夜明けでも木管の上手さは際立っています。
もう少し神秘的な雰囲気が欲しいところです。大太鼓にも地響きするような深みのある低音を求めたいところですが、少し小さい楽器を使っているのでしょうか。それとも録音の問題か?
火の鳥出現からは遅めのテンポでじっくり表現をつけた演奏をしています。だんだん盛り上がって行きますがテンポを煽ることはありません。ハイティンクらしい演奏です。
カスチェイの踊りでも金管の炸裂とまでは行きません。抑制の効いた演奏を続けています。
時に、テューバが突出したり変わった解釈を見せます。
終曲では、ここでも突出する大太鼓。これにはびっくりさせられます。
クリストフ・フォン・ドホナーニ/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
★★
イントロダクション、しっかりとした足取りです。バランスはなかなか良いです。
カスチェイの魔法にかかった庭、たどたどしいホルン。豊かな語り口のファゴット。弦が一体になったようなクレッシェンド。
火の鳥の出現、音の立ち上がりがなだらかで、あまり反応が良い感じではありません。
火の鳥の踊り、速めのテンポで活発な動きです。
王子に捕らえられた火の鳥、音がたくさんあって騒々しい感じです。少しもたつく感じの木管。
火の鳥の哀願、軽い大太鼓。整然と整った感じがありません。柔らかいホルンですが、少し危なっかしい感じもありました。ファゴットも速いテンポです。
魔法にかけられた13人の王女たち、木管があまり魅力的な音色ではありません。ヴァイオリンのソロは艶やかでした。
黄金の果実とたわむれる王女たち、速いテンポで追いたてます。
イワン王子の不意の登場、細い音でビブラートをかけるホルン。
王女たちのロンド、速いテンポで素っ気無い演奏です。美しい旋律をじっくりと味わうことが出来ません。
夜明け、イワン王子、カスチェイ城に突入、抑えたトランペット。その後はゆっくりです。
城番の怪物どもに捕らえられる王子、打楽器はほとんど聞こえません。
不死の魔王カスチェイの登場、中音域が団子になったような感じの響きです。大太鼓も硬い音です。
イワン王子とカスチェイの対決、短く音を切るトロンボーン。ここもテンポが速いです。
王女たちの哀願、サラットして美しいヴァイオリン。デッドで独特な表現の金管。
火の鳥の出現、
火の鳥に魅せられたカスチェイの手下どもの踊り、遠くて柔らかいシロフォン。トランペットが付き抜けます。
カスチェイらの凶暴な踊り、かなり抑えられたチューバ。たどたどしいEbクラ。デッドで、あまり凶暴な感じはありません。オケの響きが一体にならずバラバラな感じがします。
火の鳥の子守歌、とてもあっさりと演奏するファゴット。
カスチェイの目覚め、デッドで浅い響きの金管。
カスチェイの死の深い闇、くっきりとしていて、あまり深みの無い弦。
カスチェイの魔法が消え、石にされていた騎士たちがよみがえる:フィナーレ、ビブラートを掛けた細いホルン。力強いトランペット。デッドであまり響きが溶け合わないので、雑然とした感じになります。
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