カテゴリー: ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」名盤試聴記

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)

ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」は、もともとピアノ独奏曲として作曲された作品で、彼の友人である画家ヴィクトル・ハルトマンの遺作展にインスピレーションを受けて1874年に書かれました。この作品は、ハルトマンの絵画やデザインを音楽で表現しており、各楽章が異なる絵を描写しています。1922年にはフランスの作曲家モーリス・ラヴェルがこのピアノ曲をオーケストラ用に編曲し、現在ではラヴェル編のオーケストラ版が非常に人気です。

ラヴェルはオーケストレーションの名手であり、各楽器の特性を活かしてムソルグスキーの音楽を色彩豊かに再現しています。この編曲によって、「展覧会の絵」は一層の躍動感と豊かな響きを持つようになり、世界中のオーケストラで愛されるレパートリーとなっています。

曲の構成と内容

「展覧会の絵」は10曲の小品と「プロムナード」と呼ばれる間奏曲から成り立っています。以下は主な楽章の内容です。

  1. プロムナード
    展覧会を見て回る人の歩みを表現した曲で、トランペットやホルンで演奏される堂々としたテーマが特徴です。このテーマは随所に登場し、聴き手を次の絵へと案内する役割を果たしています。
  2. こびと(グノーム)
    不気味な響きが特徴の楽章で、こびとのいびつな姿や奇妙な動きを表現しています。弦楽器や木管楽器の低音がうごめくように奏でられ、不安感を煽ります。
  3. 古城
    古びた城の静寂と物寂しさを描いた曲で、哀愁漂うサクソフォンのメロディが特徴です。これはラヴェルの編曲によるもので、独特の音色が幻想的な雰囲気を醸し出しています。
  4. テュイルリーの庭
    子供たちが遊んでいる庭の情景が描かれた軽快な楽章です。軽やかなフルートと木管楽器のやりとりが、子供たちの無邪気な遊びを感じさせます。
  5. ビドロ(牛車)
    大きな牛車がのっしりと進む様子を描いており、低音の重厚なリズムが印象的です。ラヴェルは管楽器の音色を巧みに使い、牛車が遠ざかっていく様子を表現しています。
  6. 卵の殻をつけたひなどりのバレエ
    可愛らしいひな鳥の踊りを描写した楽章で、木管楽器が繊細なメロディを奏でます。小鳥がぴょんぴょん跳ね回るようなリズミカルな音楽が特徴です。
  7. サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
    2人のユダヤ人、サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレが対話する場面を描いた楽章です。厳かで威圧感のあるテーマと、対照的に小心者のシュムイレを描く不安定な音楽が対比的に展開されます。
  8. リモージュの市場
    賑やかな市場の喧騒を描いた楽章で、木管楽器や弦楽器が入り乱れて演奏され、忙しない雰囲気が伝わります。
  9. カタコンベ
    パリの地下墓地カタコンベの暗い雰囲気を描いた曲です。深く低い音が響き渡り、静かな恐怖感が漂います。幽霊の囁きや死者への祈りを思わせる静寂の中、神秘的な雰囲気が広がります。
  10. バーバ・ヤーガの小屋
    ロシアの民話に登場する魔女バーバ・ヤーガの恐ろしい小屋が描かれた楽章です。猛烈な速さで駆け巡る音楽が、小屋が脚を持って動き出す様子を想像させます。力強い金管楽器が不気味さを演出し、魔女の恐ろしさが感じられます。
  11. キエフの大門
    最後を飾る壮大な楽章で、キエフの大門が描かれています。勇壮なテーマが金管楽器で力強く奏でられ、威厳と荘厳さが溢れるフィナーレとなっています。鐘の響きやオーケストラ全体の厚みのある音色が、聴き手に圧倒的な印象を残します。

ラヴェル編曲版の特徴と評価

ラヴェルは、各楽器の特性を活かし、ピアノ曲を色彩豊かで迫力あるオーケストラ作品に仕上げました。特に「古城」のサクソフォンや「キエフの大門」の壮大な金管の響きなどが加わり、ムソルグスキーの原曲に新たな魅力を与えています。彼の編曲は「展覧会の絵」のイメージをより鮮やかにし、視覚的な美しさやドラマ性を増しています。この編曲版は、オーケストラ作品としても非常に高く評価され、今日でも世界中で愛される名作です。

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たいこ叩きのムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
「プロムナード」ゆっくりと輝かしいトランペット。やわらかいトゥッティ、爽やかな弦楽合奏。「こびと」速いテンポで一気に弾く冒頭。柔らかく美しいシンバル。ゆっくりと歩むような中間部。ラヴェルのオーケストレーションの色彩感の豊かさが見事に表現されています。「プロムナード」ゆっくりと柔らかいホルン。チャーミングな木管。「古城」ビィブラートをかけて美しいsaxのソロ。弦楽器の弱音も見事なアンサンブルで美しい演奏です。哀愁に満ちたファゴット。古い城の寂しげな風景を連想させる演奏です。「プロムナード」最初のプロムナードよりかなり遅いテンポでスラーで演奏されるトランペット。「テュイルリーの庭」特に表情を付けているわけではありませんが、オケの見事なアンサンブルと美しさに圧倒されます。「ビドロ」とても美しいチューバのソロ。特に高音の美しさは見事としか言いようがないほどです。「プロムナード」色彩感濃厚な木管。「殻をつけたひなの踊り」遠くで踊るような木管の動きがすばらしい。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」巨大なサミュエル・ゴールデンベルクとか弱いシュミュイレの対比も見事です。「リモージュの市場」人工的な加工をしたのではないかと思うほど柔らかいホルン。賑やかな市場の描写もすばらしい。「カタコンブ」見事に鳴り切るトロンボーン。金管のアンサンブルも絶妙です。輝かしいトランペット。「バーバ・ヤーガの小屋」生き生きとした動きがあって、色彩感も豊かな演奏です。弱音部では奥行感を感じます。「キエフの大きな門」ゆったりと伸びやかでスケールの大きな冒頭です。静寂感のある弱音部。輝かしい終結でした。

オケの上手さを前面に押し出した演奏で、色彩感もとても豊かで、カラヤンが全体の手綱をしっかりと締めた見事な演奏でした。

カルロ・マリア・ジュリーニ/シカゴ交響楽団

icon★★★★★
アドルフ・ハーセスのシャープなトランペットの音が伸びやかに響きます。
小人ではゆっくりとしたテンポで細部まで描かれています。音楽が奥ゆかしい。
古い城のサックスのソロはやはりアメリカっぽいでしょうか。デュファイエのような豊かな響きを伴った音色よりも、芯のしっかりした音です。
ゆっくりとしたテンポで十分に歌われる音楽。
この当時、名手揃いのシカゴsoのブラス・セクションのソロはどれをとっても素晴らしいです。
バレンボイムの音楽監督に就任したあたりから、この名手たちも高齢化して入れ替わり、今ではかなり落ちたと言われていますが、ショルティの時代のシカコsoは素晴らしいです。
ビドロのジェイコブスのデューバのソロの美しく聞き惚れました。
ジュリーニはほとんどの場面をゆったりとしたテンポで描いて行きます。
オーケストラ・ショウピースのようなこの曲はシカゴsoにとってはうってつけの曲だと思いますが、まだショルティの指揮では聴いていません。
ジュリーニの奥ゆかしい演奏になれてしまうと、ショルティのあられもない演奏にギョっとさせられるかも知れません。
カタコンブの金管の分厚いハーモニーもさすがと思うものです。また、これまではただ長い音符が並んでいるだけと思っていたこの曲の一つ一つの音に表現を持たせているようなジュリーニの音楽性にも改めて感動させられます。
ジュリーニは歌の人で、ガッチリとした骨格を持っている人ではないようで、骨組みは少し弱いような感じがします。少し響きが薄くなるのが唯一の弱点かなと思います。
それでも、表情豊かな演奏にあって、若干の響きの薄さは、本当に若干であって、全体の評価を落とすようなものではありません。
キエフの大門でもブラス・セクションの輝かしい響きもさすがです。

ジュゼッペ・シノーポリ/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★★★★
「プロムナード」艶やかで明るいトランペット。ゆったりとした弦。チューバも良く響きます。「こびと」怪しげな雰囲気が良く出ています。ここでもチューバの存在感が大きいです。「プロムナード」優しく穏やかです。テンポも遅めたりします。「古城」美しく妖艶なサックス・ソロ。ここでもテンポは遅く、たっぷりと歌いしみじみとした演奏です。「プロムナード」一転して明るいトランペット。ゴツゴツしたチューバ。「テュイルリーの庭」控え目な木管。滑らかなクラリネット。「ビドロ」高域が僅かに硬いチューバのソロ。「プロムナード」絵を見ていて気持ちが沈んだような感じを表現しています。「殻をつけたひなの踊り」繊細な弱音。非常に神経の行き届いた弱音です。「サミュエル・ ゴールデンベルクとシュミュイレ」ここでもテンポは遅めです。あまりがなり立てること無い低弦。きりっと鋭く浮かび上がるトランペット。「リモージュ」ここは速めのテンポで活発な動きを強調ます。「カタコンブ」ここでもチューバは強力です。見事に響く和音。「バーバ・ヤーガの小屋」チューバ以外は控え目で、爆発しません。弱音部でも緊張感を維持していて、静寂感があります。 「キエフの大きな門」強力なブラスセクションと木管の静寂の対比も見事です。強烈なティンパニのクレッシェンド。輝かしい終結でした。

絵を見ながら心境が変化する様子を見事に表現した演奏でした。基本は遅めのテンポですが、強力なブラスセクション(特にチューバ)と滑らかで静寂感に富んだ木管の美しい響きが印象的でした。

トゥガン・ソヒエフ/トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団

ソヒエフ★★★★★
プロムナード、硬質ですが、キリッと立ったトランペット。分厚い響きと濃厚な色彩。
こびと、反応も敏感で、表現も引き締まっています。
プロムナード、低い音で吹くにくそうなホルン。
古城、この曲に入る時の色彩の変化はとても良かったです。フランスのオケらしくサックスはとても美しいです。フルートはとても音量を抑えて入ります。表現もとても工夫されています。
プロムナード、
テュイルリーの庭、とても良く強弱を変化させて表現する弦。テンポの動きも適度です。
ビドロ、ソロはユーフォニアムです。途中で急に音量を落とす弦。表現が凝っています。
プロムナード、ここでもテンポの大きな動きがありました。
殻をつけたひなの踊り、色彩の変化も見事です。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、巨大な弦の表現です。ここでもテンポは予想外の動きです。
リモージュの市場、こんな音が隠れていたのかと言う発見もさせてくれます。
カタコンブ、伸びやかで柔らかいトロンボーンですが、力強く鳴ります。
バーバ・ヤーガの小屋、テンポが速いわけではありませんが、猛烈に突き進むような迫力です。
キエフの大きな門、速めのテンポでコンパクトです。プロムナードの旋律はスタッカートぎみに演奏しました。

いろんな表現でこの作品を面白く聞かせてくれました。ソヒエフの見事な統率と色彩感豊かなオケの両者の個性が相まって素晴らしい演奏でした。
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セルジュ・チェリビダッケ/ロンドン交響楽団

チェリビダッケ★★★★★
プロムナード、ゆっくりと重い演奏です。丁寧に演奏されていますが、録音はザラザラしています。
こびと、ここも遅いテンポで弱音の表現秀逸です。遅いテンポでも金管は強く吹いています。
プロムナード、
古城、ここはこれまでのような遅いテンポではなく、少し遅い程度です。哀愁を感じさせるような演奏では無く、弱音の美しさを特に際立たせた演奏です。
プロムナード、トランペットにはノイズがつきまとっているような埃っぽい音です。
テュイルリーの庭、ここも遅いテンポで一つ一つの音を丁寧に演奏しています。
ビドロ、ソロはユーフォニアムです。かなり大きくクレッシェンドして行きます。呼吸するように波打つ弦。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、軽快に動く木管。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、弦とトランペットが絡む部分は凄みのある迫力です。
リモージュの市場、
カタコンブ、かなり強く鳴らされるトロンボーン。弱音の凝縮された響きはなかなかのものです。
バーバ・ヤーガの小屋、蒸気機関車が進むような力強さです。
キエフの大きな門、雄大な演奏でした。後のミュンヘンpoとの演奏のような変わった表現も無く、ゆったりとしたテンポの大きなスケールの演奏は良かったです。

ゆっくりとしたテンポで弱音の凝縮された生き物のように動く演奏はとても魅力的でした。また、キエフの大きな門の雄大なスケールの演奏もとても良かったです。
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ジョルジュ・プレートル/RAI国立交響楽団

プレートル★★★★★
プロムナード、遠くてソフトタッチの演奏です。
こびと、木管がはいるところからテンポが遅くなりました。録音の問題なのかダイナミックの変化があまりありません。
プロムナード、テンポの動きが多くあります。
古城、あまりビブラートをかけないサックス。テンポはとてもよく動きます。この動きは即興的な感じの動きです。
プロムナード、
テュイルリーの庭、テンポの動きは凄いです。普通の演奏ではまずあり得ないほどの動きです。
ビドロ、
プロムナード、ここでもテンポの動きは常軌を逸しています。
殻をつけたひなの踊り、プレートルがピアノを弾いているかのような自在なテンポの動きでとても楽しく聞けます。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、表現も幅があって、強弱の変化も大きいです。
リモージュの市場、速いデンポで生き生きとして活動的です。
カタコンブ、思い切った咆哮でトロンボーンが強烈に鳴ります。これほど荒々しいカタコンブも初めてです。
バーバ・ヤーガの小屋、軽く始まりましたが、トランペットやトロンボーンはかなり強く演奏しています。
キエフの大きな門、最初はあまり強弱の振幅が無いような感じでしたが、ここまで来ると物凄い振幅です。金管はかなり強く吹いています。対照的に木管のソロは消え入るようです。テンポの動きも大きいのですが、嫌味な感じはありません。

プレートルのやりたいように自由に演奏した感じでした。かなり強烈な個性の表出でした。プレートルがピアノを演奏しているかのような自在なテンポの動きと、最後の強烈な迫力と言うことなしの演奏でした。
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クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団

アバド★★★★★
プロムナード、ゆったりとしたテンポで静寂の中に響くトランペット。とても落ち着いて風格さえ感じさせる演奏です。
こびと、プロムナードから続いて滑らかで引っかかるところの無い演奏です。
プロムナード、このプロムナードもゆっくりで、絵から絵へ移る時の、作品を心の中でしみじみとかみ締めるような感じがあります。
古城、非常に美しいサックス。哀愁を感じさせるファゴット。滑らかでとても品の良い演奏です。サックスとフルートの色彩の変化もしっかりと表現しています。古い城の寂しい情景を見事に表現しました。
プロムナード、少し明るく元気に歩きました。
テュイルリーの庭、とても丁寧で、バタバタと騒ぐ感じは全く無く、静かで穏やかです。
ビドロ、ソロはユーフォニアムでしょうか。このソロも美しいです。演奏は全く荒々しくなりません。
プロムナード、少し奥まって静かな木管。
殻をつけたひなの踊り、奥行き感があって、しかもダイナミックの変化も大きい木管。とても上品で美しいです。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、寂しそうで貧弱なシュミュイレ。それに比べると圧倒的なゴールデンベルク。
リモージュの市場、速いテンポですが、市場の喧騒をあまり感じさせない磨かれた演奏です。
カタコンブ、広大に豊かに鳴る金管。
バーバ・ヤーガの小屋、濃厚で粘りのある弦。軽く伸びやかに鳴る金管。色彩感も豊かです。
キエフの大きな門、豪華で極上の響きです。輝かしい金管が見事です。終盤のトランペットの力のこもった演奏も素晴らしかったです。

滑らかでとても美しい演奏でした。オケの色彩感の引き出し方にもアバドのこだわりがあるようで、キエフの大きな門の終盤のトランペットの強奏は圧倒的でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」の名盤を試聴したレビュー

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)2

たいこ叩きのムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」名盤試聴記

サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★☆
「プロムナード」低い倍音を含んだトランペット。速めのテンポではつらつと進みます。「こびと」ゆっくりめに進みますがオケは強奏部分でも爆発しません。割とあっさりとした表現です。「プロムナード」のどかで穏やかです。「古城」少し硬めの音質のサックス・ソロ。「プロムナード」ここも速めのテンポで颯爽と進みます。「テュイルリーの庭」ショルティの不器用さか、楽譜に忠実過ぎて滑らかさを欠いている部分もあります。「ビドロ」柔らかく美しいチューバ。「プロムナード」ここのプロムナードも爽やかに演奏されます。「殻をつけたひなの踊り」ひなが動き回る様子を上手く表現しています。「サミュエル・ ゴールデンベルクとシュミュイレ」弦の凄いエネルギーを感じます。悲しげなミュートを付けたトランペット。「リモージュ」明るくはつらつとしたホルン。賑やかな市場の様子で。「カタコンブ」抑え気味ですが、重く響く和音が美しい。「バーバ・ヤーガの小屋」スピード感と強いエネルギーを放出する冒頭。 「キエフの大きな門」広大なスケール感。弱音は必要以上に弱く演奏することは無く、静寂感や緊張感はありません。最後はシカゴsoのパワー全開で気持ちがスッとするような開放感でした。

ショルティの不器用なところも垣間見えたりしましたが、シカゴsoの名人芸を見せつけるような演奏には圧倒されました。

セルジウ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
「プロムナード」非常にゆっくりと伸びやかで表情豊かなトランペット。弦もとても豊かな表情で、押したり引いたりします。「こびと」もゆっくりです。最初のffで演奏される弦は速めで、後にpで演奏される弦は非常にゆっくりと演奏しました。怪しげな雰囲気の弦。最後は早くなりました。「プロムナード」ここでもゆっくりと歩くような、まさにそぞろ歩きです。弱音に神経手を使った美しい演奏です。「古城」SAXは持ち替えなのか、僅かに硬さの残る響きです。旋律の裏で動く楽器がはっきりと聞こえます。「プロムナード」ゆったりとまろやかな響きです。「テュイルリーの庭」これも非常に遅いテンポの演奏です。どの楽器も瑞々しく伸びやかです。「ビドロ」遅いテンポで美しいチューバです。ティンパニが入るあたりから少しテンポを速めました。「プロムナード」美しい木管が響き合います。「殻をつけたひなの踊り」弱音に重点を置いた演奏で、非常に神経を使った美しい演奏です。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」コントラバスがあまり聞こえないので、重い感じや厚みはありません。テンポは非常にゆっくりしていて、トランペットが入る前にさらにテンポを落としました。トランペットの裏で動く楽器もはっきりと聞こえます。「リモージュの市場」細い響きのホルン。楽器の出入りがはっきりしていて、色彩感が豊かです。「カタコンブ」美しい響きのロングトーン。かなり強めに演奏されたトランペット。沈み込むような弱音。「バーバ・ヤーガの小屋」巨大な戦車が動き出すような重量感。トランペットの登場に向けて少しテンポを速めました。チューバの旋律の部分は神秘的な雰囲気です。「キエフの大きな門」輝かしい冒頭でしたが、なぜかフレーズの最後の音を弱く演奏します。伸びきったトランペットが輝かしく美しい。トロンボーン、トランペットと続く三連符をクレッシェンドしました。強烈な鐘の響きとトランペットの輝かしい響きで、最後の音を伸ばして終わりました。

遅いテンポに待ちきれず、アンサンブルが乱れる部分や、キエフの大門の初めでフレーズの最後の音を弱くしたのが不可解な部分もありましたが、その他は遅いテンポでじっくりと聴かせてくれました。この曲の全く違う面を聴かせてくれたと思います。

キリル・カラビツ/DR放送交響楽団

カラビツ★★★★☆
プロムナード、トランペットの部分は速いテンポで活発な動きでした、弦になると僅かにテンポを落としてゆったりとした表現です。
こびと、アンサンブルの乱れもありますが、見通せるような透明感のある響きで、美しいです。
プロムナード、柔らかく暖かいホルン。
古城、哀愁を感じさせる豊かな表現のファゴット。美しいサックス。繊細な弦。
プロムナード、重量感のあるチューバ。
テュイルリーの庭、動きのある部分と穏やかな部分の対比が見事です。
ビドロ、美しいチューバでしたが最後のハイトーンは口を締めすぎです。伸びやかで色彩感も豊かです。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、宙に浮いているかのように軽い木管。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、あまり厚みの無い弦。弱々しいトランペット。描写力はなかなかです。
リモージュの市場、強弱の変化にも敏感に反応していて、市場の賑わいも良く表現しています。
カタコンブ、チューバがしっかりと支えた響き。ドラも重い響きでとても良いです。
バーバ・ヤーガの小屋、速めのテンポで活発な動きで、色彩の変化も大きいです。凄い勢いで終わりました。
キエフの大きな門、同じオケでも「惑星」の時のようなトゥッティで詰まってしまうようなことは無く、伸びやかな響きです。

ラヴェルのオーケストレーションの色彩感を見事に表現しました。ライヴのキズはありましたが、それでもとても良い演奏だったと思います。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

1990年サントリーホールライヴ
ショルティ★★★★☆
プロムナード、予想していた程鋭くないトランペット。弦は柔らかく分厚い響きです。最後は輝かしい見事な響きになりました。
こびと、奥行き感があって美しいフルート。軽々としかもブレンドされた厚みのある響きのトロンボーンとチューバ。怪しげな雰囲気も十分ありました。
プロムナード、ふくよかなホルン。とてもカラフルです。
古城、速めのテンポであまり哀愁を漂わせる演奏ではありません。
プロムナード、パリッとしたトランペット。
テュイルリーの庭、CDになった演奏よりもこなれているようでとても余裕があって自然に歌います。
ビドロ、ユーフォニアムのソロです。CDで聴くようなキンキンとした弦ではなく、とてもマイルドで柔らかい響きです。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、繊細なヴァイオリン。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、鋭いトランペット。弱々しさは感じません。かなり強い音です。
リモージュの市場、凄い精度の演奏で圧倒されます。
カタコンブ、充実した素晴らしい響きです。金管の圧倒的な響きも凄いです。
バーバ・ヤーガの小屋、トランペットがテヌートで演奏します。これはちょっと違和感があります。
キエフの大きな門、艶やかでブライトなトランペット。トゥッティの猛烈な響きはさすがにシカゴsoです。鳥肌が立つような見事な響きです。

ショルティが強い個性を出すことなく、ラヴェルのオーケストレーションを表現しました。シカゴsoのトゥッティのパワーの尋常ではない響きも感じることができました。ただ、バーバ・ヤーガの小屋のトランペットがテヌートで演奏した部分だけはいただけませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」の名盤を試聴したレビュー

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)3

たいこ叩きのムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1985-87年(デジタル)
icon★★★★
柔らかいというか、少し篭もり気味のトランペットで始まったプロムナード。この曲はカラヤンとベルリンpoの機能美を聴くには最適の曲だと思いますが、このCDの録音当時はすでにカラヤンの絶頂期を過ぎており、衰えが感じられる頃でもありました。
このレコーディングの後の来日公演でも冒頭のトランペットがミスをすると言う、ベルリンpoでは考えられないことが起こったりもしました。
この録音では、随所にベルリンpoの上手さを聴く事ができますが、録音の録り方の問題もあるのか、スケール感が感じられない、小じんまりした演奏になってしまっています。
スケールの大きさや表情の豊かさ、ソロも含めた芳醇な響きなどは、旧盤の方が勝っているのではないかと思います。
トゥッティでの輝かしい響きは、さすがベルリンpoと感じさせられる部分も随所にあります。
完璧な演奏ではあったのですが、なぜこんなに小さくまとまってしまったのか、すごく残念です。

相性は良い曲であっただけに1970年代に録音して欲しかったです。

レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★★★
「プロムナード」細い音のトランペットヴィブラートをかけた演奏です。「こびと」残響が少ないのかリアルな音がします。テンポがよく動きます。「古城」あまり甘美な響きのないサックスです。「テュイルリーの庭」遅めのテンポで表情も濃厚です。「ビドロ」一転して速いテンポです。少し雑に感じる部分も・・・・。「殻をつけたひなの踊り」とても情景描写が上手いです。木管の表現力が良いです。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」テンポも強弱も変化があり表情豊かです。「カタコンブ」いろんな表現をしているようです。「バーバ・ヤーガの小屋」表情が豊かで面白い。「キエフの大きな門」思い切った表現が新鮮でハッとさせられます。

聴いていて面白い「展覧会の絵」でした。

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

デュトワ★★★★
速めのテンポで張りのある音色の「プロムナード」。色彩感が鮮明な「こびと」。艶やかなサックスソロを聴かせる「古城」羽毛で撫でられるような弦の 美しい響き。「テュイルリーの庭」では滑らかなクラリネットが印象的です。表現力のあるテューバソロの「ピドロ」。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュ ミイレ」では金持ちと貧乏人の対比がとても上手く表現されていました。「リモージュ」アーティキュレーションに忠実な表現のようです。「カタコンブ」ブラ スセクションの充実した響き!「バーバ・ヤーガの小屋」速めのテンポで軽い感じです。「キエフの大きな門」ここでも軽い感じの演奏です。強大なエネルギー を放出するような演奏ではありません。

ムソルグスキーのロシア的な面よりもラヴェルのフランス的な面を表現したかったのでしょうか。品良く美しい演奏です。

ジャン=クロード・カサドシュ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

カサドシュ★★★★
プロムナード、パリッとした響きで鮮度の高い録音です。演奏も元気の良いものです。
こびと、速いテンポで色彩も濃厚で、トランペットも鋭く突き抜けて来ます。
プロムナード、
古城、強く哀愁を感じさせる表現ではありません。
プロムナード、
テュイルリーの庭、あまり個性の無い標準的な演奏と言う感じです。演奏そのものはそんなに悪くは無いのですが、個性が無い分魅力もあまりありません。
ビドロ、ソロはユーフォニアムでしょうか。清涼感があって美しい弦。
プロムナード、速めのテンポで朗々として色彩感が豊かです。
殻をつけたひなの踊り、この曲はテンポの動きがとても良いです。最後はホルンの激しい咆哮が意外でした。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、弦に分厚さは無く、横柄な大金持ちの雰囲気はあまりありません。ここも速いテンポで、トランペットが輝きのある響きで貧相な感じはありません。
リモージュの市場、ビリビリと響くホルン。とても爽やかで美しい演奏です。
カタコンブ、軽々と鳴り響く金管が心地良い演奏です。ラヴェルの色彩感豊かなオーケストレーションはとても良く伝えています。
バーバ・ヤーガの小屋、こでも色彩感はとても濃厚です。金管も遠慮無く鳴ります。チューバのソロの部分でも透明感が高くとても見通しの良い演奏になっています。所々で金管や打楽器を思い切り鳴らします。
キエフの大きな門、ここも速めのテンポです。整ったアンサンブルで、金管がサクサクと鳴ります。最後はかなり激しい金管でした。

最初はあまり個性の無い演奏のようでしたが、曲が進むにつれて、強い個性が出て来ました。とても美しい弦と、爽快に鳴り響く金管。色彩感も豊かで、透明感も高い演奏で聞き終った時点では満足感がありました。
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グスターボ・ドゥダメル/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

ドゥダメル★★★★
プロムナード、メリハリのはっきりとした演奏で、躍動感がありはつらつとした演奏です。表現も積極的です。
こびと、轟音を上げる弦。とても積極的で大きな表現です。
プロムナード、ホルンも豊かな表現です。歌える部分は全て歌うような意欲的な演奏です。
古城、美しいサックスも歌います。とにかく表現意欲は凄いです。
プロムナード、明るいトランペット。
テュイルリーの庭、ここでも考え尽くされた表現です。
ビドロ、チューバのソロのようで、深みのある響きです。このソロも感情が込められています。凄い大曲を聴いているようなこってりとした重さがあります。
プロムナード、ここでもコントラバスが轟音を上げます。
殻をつけたひなの踊り、鮮明で、まるでひなが目の前を動き回るかのような表現です。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、威張り散らした大金持ちらしい弦の表現です。トランペットもひ弱ではありません。
リモージュの市場、活発で引き締まった表現で、めまぐるしく動く弦。
カタコンブ、分厚くしかも軽々と鳴り響く金管。
バーバ・ヤーガの小屋、叩き付けるティンパニ。凄い勢いの演奏です。ファゴットのソロの後ろのフルートのトリルも音量が変化します。弦のスピード感が凄いです。
キエフの大きな門、最後が途切れてしまいました。思っていた程分厚い響きや咆哮はありませんでした。

考えられる表現を尽くしたような演奏で、とても積極的でした。オケも唸りを上げるような鳴りで、とても良かったのですが、最後が途切れてしまったのが残念でした。

Long Yu/中国フィルハーモニー管弦楽団

Long Yu★★★★
プロムナード、スラーで演奏されているようなトランペット。鮮明な弦とくすんだような金管が対照的です。
こびと、勢いのある弦。木管もキリッと引き締まって浮き上がります。
プロムナード、想像していたよりもオケは上手いです。
古城、少し硬いサックスですが、良く歌います。サックスとは対照的に無表情なファゴット。音符の扱いがちょっと変わっています。
プロムナード、ここでもスラーのトランペットですが、鮮明な弦とは違ってくすんだ響きです。。
テュイルリーの庭、大きな表現で、とてもはっきりしています。
ビドロ、ソロはユーフォニアムです。独特の表現が随所にあります。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、繊細なヴァイオリンと活発に動く木管。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、荒々しい弦。ひ弱さは感じないトランペット。
リモージュの市場、浅く硬いホルン。表現は大きいです。
カタコンブ、かなり強いトロンボーンとチューバ。深みが合って厚いコントラバス。
バーバ・ヤーガの小屋、ギョッとするようなトロンボーンや金管の咆哮。アンサンブルが緩い部分もあります。終わりもバラバラでした。
キエフの大きな門、あまり壮大さはありません。表現はここでもとても積極的です。オケを強く鳴らしますが、テンポが速くて落ち着きがありません。

とても積極的な表現とオケも積極的に鳴らす演奏で、なかなか聞き応えがありました。アンサンブルの緩い部分もありましたが、良い演奏だったと思います。
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フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団

ライナー★★★★
プロムナード、すっきりとシャープで表現も豊かな演奏です。オケも力強くエネルギーに溢れています。
こびと、うなりを上げる弦。克明で、くっきりと浮かび上がる楽器。シカゴsoの第一期黄時代と言われるのも分かります。
プロムナード、とても良く歌う管楽器。
古城、薄く独特の響きのサックス。
プロムナード、明るく明快なトランペット。
テュイルリーの庭、明暗が描き分けられます。
ビドロ、若干硬いですが、美しいソロ。だんだんと力がこもって来ます。ゆっくり目で力強いです。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、活発な木管。美しく繊細な弦。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、かなり荒っぽいゴールデンベルクです。トランペットもそんなにひ弱ではありません。
リモージュの市場、暗い響きのホルン。若干アンサンブルが乱れたような弦。
カタコンブ、頭が強くその後すぐに力を抜く金管。最初はかなり軽いです。
バーバ・ヤーガの小屋、硬いティンパニが心地良い響きです。はつらつとした表現です。
キエフの大きな門、広大な広がりはありませんが、とても良く鳴る金管です。クラッシュシンバルの径が小さいのが少し気になります。トランペットやトロンボーンが強く下のパートがあまり聞えず、底辺を支えていない感じがありました。

とても表現意欲のある演奏で、なかなか良かったです。この頃からのシカゴsoの特徴なのか、金管がとても強力で、コントラバスなどが支え切れていないような感じがありました。
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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

ヤンソンス★★★★
プロムナード、柔らかいですが、くすんだ響きのトランペット。積極的に表現します。
こびと、色彩や表現がこってりしていてとても濃厚です。非常に積極的に歌います。
プロムナード、柔らかいホルン。
古城、ファゴットもサックスも聞き手を引き込むような表現です。繊細な表現の弦など、表現し尽くされている感じの演奏です。
プロムナード、
テュイルリーの庭、速いテンポで活発に動きます。弦が出るとテンポを落として濃厚な表現になります。
ビドロ、美しく豊かに歌うユーフォニアムのソロ。ゆったりとしたテンポで広大です。
プロムナード、全曲を通してとても豊かな表現で積極的です。
殻をつけたひなの踊り、ユーモラスに動き回るひながとても良く描写されています。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、あまり分厚い響きでは無く強大さを感じさせないゴールデンベルク。打楽器が追加されています。
リモージュの市場、ゆっくりめですが、強弱の変化も明快です。
カタコンブ、ドラが強く印象的に入ります。重厚なブラスの響き。
バーバ・ヤーガの小屋、重量感があって表現も大きい演奏です。
キエフの大きな門、ソフトで軽い演奏です。テンポも速めです。最後まで軽く金管を抑えてバランス重視の演奏でした。

とても表現の豊かな演奏でしたが、金管を強く演奏することは無く、振幅があまり大きい演奏ではありませんでした。
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 ・ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」の名盤を試聴したレビュー

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)4

たいこ叩きのムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」名盤試聴記

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

icon★★★☆
「プロムナード」艶やかなトランペットですがブレスで音が途切れるのが気になります。暖かみのある響きの「こびと」です。サックスのソロも暖かい響きの「古城」です。「テュイルリーの庭」ゆったりとしたテンポで豊かな表現です。速いテンポで味わいのない「ビドロ」です、表情も淡白です。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」ミュートを付けたトランペットが哀愁に満ちた演奏でした。「リモージュ」賑やかな市場の音楽としては大人しい演奏でした。「カタコンブ」奥まったところで響くブラスセクション、アタックが雑な印象も・・・。「バーバ・ヤーガの小屋」速めのテンポです。金管大活躍です。「キエフの大きな門」全開でした。

アルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団

トスカニーニ★★★☆
プロムナード、ナローレンジで粘りのあるトランペット。パリッと響く金管。
こびと、足取りの重い弦。かなりダイナミックで明快な表現。強く押し付けてくるようなトランペット。
プロムナード、美しく歌う木管。
古城、細く硬めなサックス。テンポの動きはありませんが、情感豊かな歌が溢れています。即物的と言う評価は当たらない感じの演奏です。
プロムナード、元気な演奏です。
テュイルリーの庭、ゆったりとしたテンポで豊かに歌います。
ビドロ、一転して速いテンポでグングン進みます。硬い響きのソロはユーフォニアムのようです。
プロムナード、キリッとしていて鮮明な木管。
殻をつけたひなの踊り、落ち着いたテンポでひなの動きを明快に表現します。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、力強く荒々しいゴールデンベルク。かなり強いシュミュイレ。
リモージュの市場、マットなホルン。ここでも活発な動きを表現しています。
カタコンブ、強弱の振幅の大きな演奏で、トランペットやトロンボーンがかなり強いです。
バーバ・ヤーガの小屋、硬いマレットで叩いているティンパニ。トランペットやトロンボーンは強烈です。
キエフの大きな門、速めのテンポで音も短めで盛大な演奏です。広大なスケール感は無く、せっかちな感じです。最後はムソルグスキー的で粗野な演奏でした。

即物的と言われるトスカニーニの演奏にしては、表情も豊かで歌に溢れた演奏でしが、最後の二曲が荒い感じで、個人的には好きではありませんでした。
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クリスチャン・ヤルヴィ/フランス国立管弦楽団

ヤルヴィ★★★☆
プロムナード、
こびと、弦が唸りを上げることも無く穏やかです。
プロムナード、
古城、美しいサックス。とても哀愁を感じさせる寂しげな演奏です。
プロムナード、速めのテンポであっさりとしています。
テュイルリーの庭、表情は豊かに付けられています。
ビドロ、ユーフォニアムのソロです。若干浅い響きですが、伸びやかで美しいです。
プロムナード、全体的に速いテンポをとっています。
殻をつけたひなの踊り、清潔で瑞々しい響きです。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、唸りを上げるほどの豪快さは無いゴールデンベルク。ゆっくり目でひ弱なシュミュイレ。次第に豪快に演奏する弦。
リモージュの市場、フランスらしい明るいホルン。たどたどしい感じで若干の乱れがあります。
カタコンブ、地面から這い出るような金管の重厚な響き。
バーバ・ヤーガの小屋、速いテンポで凄い勢いの演奏です。豊かな残響も手伝って音場が広がります。
キエフの大きな門、一転してゆったりとしたテンポで広々とした雰囲気の演奏です。プロムナードのメロディが再現されるあたりからテンポが速くなりました。

速めのテンポを基調にした演奏で、曲ごとの表現の変化もありましたが、強い印象はありませんでした。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

icon★★☆
とても元気の良い「プロムナード」。一転して口ごもったような「こびと」の冒頭、後半は遅いテンポで炸裂。フランスのサックスとは明らかに違って硬い音色の「古城」かなり遅いテンポでたっぷりと演奏します。「テュイルリーの庭」も遅い。「ビドロ」も遅く、重く引きずるような弦。「殻をつけたひなの踊り」ラヴェルの編曲よりもムソルグスキーを強く感じさせる原色でちょっと粗野な感じがあります。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」ではラヴェル編では登場しないサスペンド・シンバルが出てきます。「カタコンブ」では強烈な金管の咆哮!大太鼓も登場します。とにかく強烈です。「バーバ・ヤーガの小屋」スタッカートぎみのトランペット。「キエフの大きな門」高らかに吹き鳴らされるトランペット。全体的に雑な感じがしました。

エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団

アンセルメ★★☆
プロムナード、明るくピーンと張ったトランペットですが、息が持たないような感じでブレスの前に音が弱くなります。ワイドレンジではありませんが、まとまりのある響きです。
こびと、スピード感が無くもたつくような弦。色彩感はあります。あまり強く演奏しない金管。ムソルグスキーの作品よりもラヴェルの方に主眼を置いた演奏のようです。
プロムナード、サラッとした色彩感です。
古城、哀愁たっぷりのサックスはなかなか美しいです。
プロムナード、
テュイルリーの庭、スラーで演奏される木管。
ビドロ、速めのテンポで物々しい雰囲気です。チューバは少し硬い音でブレスがはっきりしています。
プロムナード、ラヴェルの編曲の妙を聞くことができます。
殻をつけたひなの踊り、色彩感が豊かで軽妙な動きがとても良いです。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、ザラッとしていてあまり重く無い弦。物悲しいトランペット。
リモージュの市場、強弱の変化などはあまり大きく無く、引き締まった表現ではありません。自然にサラッと流れて行く感じの演奏です。
カタコンブ、明るい響きで、「墓」をイメージさせるような感じはありません。金管も大きく咆哮することは無く、作品を自然に演奏している感じです。
バーバ・ヤーガの小屋、トランペットが他のパートに比べると強く、突き抜けて来ます。生き物のように動くオケ。とても豊かな表現です。
キエフの大きな門、重心があまり低くなく、伸びやかな広々とした響きにはなりません。弱音もあまり音量を落とさず緊張感もありません。

あまり強い個性は感じられない演奏で、自然な演奏でしたが、オケの響きにも魅力が無く強く惹かれるような演奏ではありませんでした。
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アラン・ロンバール/ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★
「プロムナード」少し硬質な響きのトランペット、テンポは速めです。オケの響きには厚みがありません。「こびと」弦の速いパッセージがあまりはっきりしない上に音量も不足しています。「プロムナード」オーボエがくっきりと浮かび上がります。「古城」弦のデリケートな表現。とても感情が込められた歌です。少し硬いですが明るいsax。「プロムナード」コントラバスが弱いので響きに厚みがありません。「テュイルリーの庭」残響成分もあまり含まれていないようで、響きが硬く一流オケの響きに比べると明らかに見劣りします。「ビドロ」チューバではなくユーフォニアムを使っているような音です。「プロムナード」時折木管が瑞々しい響きを聴かせてくれます。「殻をつけたひなの踊り」「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」やはりコントラバスがほとんど聞こえないので、サミュエル・ゴールデンベルクの凄味はありません。シュミュイレはここでも硬い音です。「リモージュの市場」細くふくよかさの無いホルン。たどたどしい感じでした。「カタコンブ」控え目な金管。トロンボーンのハイトーンが少し不安定な感じでした。死者への呼びかけは神秘的でした。「バーバ・ヤーガの小屋」軽い響きです。オケが一体になったようなパワー感は感じません。音が集まって来ていないようです。「キエフの大きな門」どうも一体感がなくバラバラな感じです。

オケの技量が未熟で、演奏するので精一杯と言う感じで、表現する余力など無いように感じました。

ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団

セル★★
プロムナード、明るく元気の良い演奏です。色彩感は淡いです。
こびと、モゴモゴとした弦。テンポは速めで、小さくまとまった感じでスケール感がありません。
プロムナード、スタンダードのような、無難な演奏です。
古城、少し硬いサックス。
プロムナード、トランペットと一緒にトロンボーンも演奏しているようです。
テュイルリーの庭、シンプルで情報量が少ない感じです。
ビドロ、ソロはユーフォニアムのようですが、この響きも硬いもので、少し雑な演奏です。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、控えめな表現で、あまり活発な動きではありません。
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、荒々しい弦。
リモージュの市場、ここでは動きが活発で、豊かな表現ですが、やはり響きはシンプルで、余分なものは取り除かれているような感じです。
カタコンブ、雑な感じがあったり、壮絶な響きがしたりします。
バーバ・ヤーガの小屋、オケの人数が少ないような錯覚を感じるような小さく広がりや奥行きの無い響き。トランペットはスタッカートで演奏します。
キエフの大きな門、On・Offが無く常にOnの状態で、単純に感じます。ティンパニのクレッシェンドなど独自の加筆もあります。

録音の古さも影響しているとは思いますが、余分な響きが全く無く、とてもシンプルで広がりや奥行き感の無いスケールの小さい演奏でした。
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イーゴリ・マルケヴィチ/NHK交響楽団

マルケヴィチ
プロムナード、僅かに速いテンポ。薄い響きの弦。
こびと、モゴモゴした弦。軽く抑え気味のトロンボーン。
プロムナード、筋肉質のホルン。
古城、何か響きに一体感が無く、融合した響きにになりません。
プロムナード、明るいトランペット。
テュイルリーの庭、とてもゆっくりとしたテンポでテンポも大きく動きます。感情の赴くままに動くようなテンポはとても心地良いものでした。
ビドロ、テノールチューバのソロもそれなりに美しいのですが、どこか寂しい響きです。
プロムナード、
殻をつけたひなの踊り、
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ、
リモージュの市場、強弱の変化は緩く引き締まった動きではありません。
カタコンブ、
バーバ・ヤーガの小屋、
キエフの大きな門、

テンポの動きはあるのですが、響きがバラバラで薄く、融合した柔らかい響きではありませんでした。
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ジェームス・レヴァイン/メトロポリタン・オーケストラ

icon
この演奏はひどいです。オケの投げやりな演奏。
これほどやる気の無い演奏を聴いたのは初めてです。
音、一つ一つを大切に扱うような部分は全く感じられませんでした。これまでレヴァインの演奏をいくつか聴きましたが、どれも良いと思えた演奏はありませんでしたが、この「展覧会の絵」はその最たるものです。
クラシック音楽業界でレヴァインが重用されるのが、私には理解できません。

ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」の名盤を試聴したレビュー