カテゴリー: ムソルグスキー:交響詩 「はげ山の一夜」名盤試聴記

ムソルグスキー:交響詩 「はげ山の一夜」の名盤は、テンシュテット/ロンドンpoの魑魅魍魎の怪しげな雰囲気を見事に表現した重量級の名盤。バレンボイム/シカゴsoはシカゴsoの機能美を極限まで追求したような見事な鳴りっぷりの演奏で爽快な名盤です。オーマンディ/フィラデルフィアoは変化に富んだ豊かな表現とテンポの動きで楽しく聴かせてくれる名盤です。スヴェトラーノフ/ロシア国立soは強烈で荒れ狂うような冒頭から追い立てるような加速、減速と豪快と柔軟が幽霊の大騒ぎと、夜明けの対比が見事な名盤です。

ムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」

ムソルグスキーの交響詩「はげ山の一夜」は、神秘的でドラマティックな音楽で、多くの人の心を捉えてやまない名曲です。

どんな曲?

  • 夜中の禿山での魔女のサバトを描いた音楽: 夏至祭の夜、禿山に魔女が集まり、悪魔的な儀式を行うという、ロシアの民話を題材にしています。
  • 妖艶で不気味な雰囲気: 暗闇の中で繰り広げられる魔女たちの踊りや、悪魔的な力が渦巻く様子が、音楽を通して鮮やかに描かれています。
  • オーケストラの力強い演奏: さまざまな楽器が複雑に絡み合い、聴く者を異次元に引き込むような迫力ある音楽です。
  • リムスキー・コルサコフによる編曲が有名: ムソルグスキーの原曲には、オーケストレーションの面で未完成な部分がありました。そのため、リムスキー・コルサコフがこれを完成させ、より洗練された形で世に広まりました。

たいこ叩きのムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
表情豊かな演奏です。強弱の変化がとても大きいです。トロンボーンは控えめで後からでるトランペットが強いです。遅めのテンポでしっかりと表情付けをして行きます。すごく重量級の演奏です。怪しげな夜の雰囲気がとてもあります。リムスキー=コルサコフよりもムソルグスキーを表現しているようです。重い音楽作りが魑魅魍魎が出没しそうな雰囲気を上手く演出しています。鐘の後もアゴーギクも効かせて丁寧に音楽を作っている感じが伝わります。クラリネットとフルートのソロも歌でいっぱいでした。

ダニエル・バレンボイム/シカゴ交響楽団

バレンボイム★★★★★
艶やかな高弦、エッジの立った低弦。余裕の全開!シカゴのパワー炸裂です。自信に満ちた堂々とした金管。シンコペーションのリズムも鋭く反応が良いです。このようなと言ったら失礼ですが、このような小品にこれだけ高機能なオーケストラが演奏するのはもったいないくらい見事なアンサンブルと豪快な振幅の演奏です。鐘が鳴った後も豊かな響きです。ニュートラルなクラリネットのソロ。笛を感じさせるフルートのソロ。
非の打ち所がないくらい気持ちよくオケが鳴り響きます。
あまりにも見事にオケが鳴り渡るので、作品の持っている、おどろおどろしい部分はほとんど表現されていませんが、ショーピースとしての価値は高いと思います。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★★★★
変化に富んだ演奏です。重厚な金管。テンポも動くし普段は聞こえない音も聞こえます。充実した暖かいフィラデルフィアサウンドがバランス良く響きます。鐘の後の歌う部分では、グッとテンポを落としてテンポも動いてじっくりと表現します。クラリネットのソロも美しいものでした。フルートのソロは爽やかな夜明けを感じさせてくれました。
色彩感も豊かですし、アゴーギクも含めて表現も幅広い演奏で、楽しく聴かせてくれます。「はげ山の一夜」をこれだけ豊かな語り口で聴かせてくれた演奏ははじめてです。

エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

スヴェトラーノフ★★★★★
追い立てるように、かなり速いテンポで荒れ狂うように攻撃的な冒頭です。強烈に鳴り響く金管。弦も豪快に鳴ります。ファゴットのメロディの前にアッチェレランドしました。ファゴットから木管、弦とつながる部分もかなり追い立てるように加速します。その後の三連音を伴う金管でガクンとテンポを落とします。金管も耳をつんざくような思いっきりの強奏です。鐘の後はテンポを落として、テンポもルバートしたり柔軟です。前半の豪快な演奏とは対照的な柔らかい表現です。クラリネットのソロもフルートのソロもゆっくりとしたテンポでたっぷりと歌います。幽霊の大騒ぎと、夜明けの対比がとても上手く、なかなか聞かせる演奏でした。

ヴァレリー・ゲルギエフ/BBC交響楽団

ゲルギエフ★★★★★
鮮烈な響きの冒頭。ティンパニも入ります。いかにも幽霊が現れそうな不気味な音楽です。思い切りの良い反応を示すオケ。リムスキー=コルサコフ版とはかなり違います。魔物たちのにぎやかな様子も生き生きと描かれています。リムスキー=コルサコフ版のような華やかさや変化はありません。夜明けの雰囲気はありませんでした。
粗野な作品ですが、洗練されたアンサンブルですっきりとした演奏に仕上げた良い演奏でした。
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クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

アバド★★★★★
速いテンポで物凄く豊かな表現です。フリークと言われるアバドの指揮ぶりも作品への思い入れを感じさせるものです。強弱の変化も大きくダイナミックです。この原典版を聞くと、リムスキー=コルサコフの編曲は大幅な改編だったんだと思います。テンポの動きもあります。柔らかく美しいオーボエ。とても表現が豊かで動きがあります。小物打楽器もさりげなくとても上手いです。オケも柔らかい響きでとても反応が良い演奏でした。
とても豊かな表現の演奏で、強弱の変化にも敏感でダイナミックでした。オケの反応もとても敏感で、とても楽しく聞くことができました。
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レオポルド・ストコフスキー/ロンドン交響楽団

ストコフスキー★★★★★
かなり録音が古い感じです。独特のアンセントの冒頭。音の上下が引き伸ばされます。トロンボーンの前にスネアが入ります。重量感のあるトロンボーン。カットがあったりリムスキー=コルサコフの版に比べるとかなり特徴的です。シロフォンが入ったり、色彩感も豊かです。怪しげな雰囲気も十分あります。テンポも大きく動いたり、自在な表現です。鐘の後はすごくゆっくりとしたテンポでたっぷりとした表現です。リムスキー=コルサコフ版ではクラリネットのソロがオーボエで演奏されます。最後は輝かしくクレッシェンドして終わりました。
ストコフスキーの強烈な色彩と描写を駆使した編曲による演奏で、その効果は抜群です。ムソルグスキーの原典版に比べると全く違う作品のようでした。魑魅魍魎の饗宴の表現にはこれくらいのアレンジは合っているように感じました。
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ズデニェク・マーツァル/ニュージャージー交響楽団

マーツァル★★★★★
合唱付きのバージョンです。独特の雰囲気です。オケは少し控えめで、合唱をクローズアップしているような感じです。男声の独唱もあります。合唱が入るとそれだけで神秘的な雰囲気になります。オケはあまり分厚い響きではなく、軽く爽やかに響いています。リムスキー=コルサコフ版では鐘の後に演奏されるメロディーがあってそこにも合唱が加わります。はげ山の一夜と言うよりももっと神聖な音楽に感じられます。クラリネットのソロもあります。その後はオーボエのソロになります。
合唱付きのバージョンで、とても神聖な音楽を聞いた雰囲気で、幽霊が現れる音楽には感じませんでしたが、同じ作品でも編曲でこんなに感じ方が変わるというのもとても興味深いものがありました。この曲の違う一面を見る上でも一聴の価値はあると思います。
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クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団

アバド★★★★★
ベルリンpoとの演奏同様、激しい表現です。こちらはセッション録音と言うこともあり細部の動きまで克明に録音されています。この演奏を聞くとアバドがこの作品をたまらなく好きだったことが伺えます。この演奏でもとても生き生きとした豊かな表現です。ベルリンpoとの演奏のような強弱の鋭い変化やテンポの動きはありませんが、この演奏でもオケの反応は敏感です。オケ全体の響きの豊かさはこちらの方があると思います。
ベルリンpoとの録音のような鋭い強弱の変化やテンポの動きはありませんでしたが、豊かな表現や細部の克明な動き、オケ全体の豊かな響きなどはこちらの方が良かったと思います。
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フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団

ライナー★★★★★
速いテンポでスピート感のある冒頭。トロンボーンとチューバが一体になった強奏。その後も速いテンポにもしっかりと付いて行ってカチッとしたアンサンブルです。常に前へ行こうとするスピード感とエネルギー感が凄いです。速いテンポで豪快に一気に聞かせる演奏です。金管もかなり強く吠えます。鐘の後もテンポは速いですが、動きもあります。さりげない歌であっさりと進む木管のソロ。
基本的に速いテンポで強い推進力を持った演奏でした。エネルギーの放出もかなりのもので、なかなか聞きごたえがありました。
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ロリン・マゼール/クリーブランド管弦楽団

マゼール★★★★★
ベルリンpoとの録音よりは若干遅いテンポで落ち着いた演奏です。シンバルも普通の大きさの物を使っています。とても余裕のある響きで柔らかいです。金管の三連音を含むメロディもとても軽く演奏しています。金管はそれなりに強く吹いていますが、とても美しいので、力が入っているようには感じません。鐘の後はあまりテンポの動きは僅かですが静かで美しいです。澄みきった朝に響くような美しいクラリネット。朝の冷たい空気を感じさせるフルート。
全く力みの無い美しい響きで全曲を通しました。幽霊が現れるような雰囲気とは違いますが、この美しさは特筆できるものです。木管のソロの朝のすがすがしさも素晴らしいものでした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/BBC交響楽団

ロジェストヴェンスキー★★★★★
合唱が近い録音です。マーツァルの演奏よりもダイナミックな動きがあって、幽霊の大騒ぎの雰囲気があります。夜の描写も十分です。原典版から大きく進歩した版であることが良く分かります。リムスキー=コルサコフ編曲の版で鐘の後に出てくるメロディになってもテンポの揺れはありません。クラリネットのソロはあっさりとしています。
最後はあっさりとしていましたが、前半はダイナミックで魑魅魍魎の大騒ぎを上手く表現していた良い演奏だったと思います。
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ユーリ・シモノフ/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

シモノフ★★★★★
静かに始まりました。木管の強弱の変化が大きいです。音圧としては感じませんがトロンボーンはかなり強く吹いています。ゆったりとしたテンポで雄大です。オーボエが夜中の暗闇を表現しています。ガツガツと刻む弦。トランペッとホルンの三連音を含むメロディでテンポを落として途中ど音量も落としました。ロシアのオケらしく濃厚な色彩感とエネルギー感のある演奏です。鐘の後のテンポの動きは僅かです。
濃厚な色彩感と強いエネルギーの放出のある雄大な演奏で、ロシア音楽!と言う感じでした。これだけロシア音楽らしい演奏は昨今では珍しいと思いますので、とても貴重な音源だと思います。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」の名盤を試聴したレビュー

ムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」2

たいこ叩きのムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」名盤試聴記

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

icon★★★★☆
速めのテンポです。力みの無いブラスセクション。ブルー系の響きで涼しげな美しい演奏です。とても滑らかで角が立つような部分はありません。この作品でも洗練の極みのような滑らかで美しい演奏で、泥臭さなどは全くありません。弦も木管もとても美しいです。鐘の後の弦も優雅で美しいです。滑らかで美しいクラリネット。爽やかな夜明けを感じさせるフルート。魑魅魍魎とは程遠い表現です。
ホールの響きも含めてとても美しい演奏でした。

ミヒャエル・ザンデルリング/バイエルン放送交響楽団

ザンデルリング★★★★☆
弾むような低弦。全開の演奏ではないトロンボーン。ティンパニが激しくクレッシェンドしました。オーボエが最初の二つの音をスラーで繋ぎます。余裕のある美しい響きの金管です。滑らかな弦。明るい金管が美しいですが響きは少し薄いです。デュトワの演奏を思い出させるような徹底して美しい演奏です。鐘の後もテンポは全く動きません。クラリネットのソロは少しテンポを落として豊かに歌います。フルートも同様に歌います。
オケを限界まで鳴らすことは無く、かなり余裕を持たせてとても美しい演奏でした。泥臭さとは程遠い演奏で、作品の表題性はあまり意識せずに、美しさに徹底的にこだわった演奏のように感じました。
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ロヴロ・フォン・マタチッチ/フィルハーモニア管弦楽団

マタチッチ★★★★
ゆったりとしたテンポでゴツゴツした印象です。
トロンボーンなどの旋律の直後にテンポが一旦ガクンと落ちて次第に元のテンポに戻りました。
テンポは度々遅くなっては加速します。劇的で表現の幅が広いです。クラリネット、フルートのソロの歌いまわしも独特でした。
すごく個性豊かな演奏でした。

アンドレ・クリュイタンス/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★★
強弱の激しい冒頭の表現。ブラスの強奏は余裕たっぷりでした。
力みの無い優雅な演奏です。ブラスセクションを無闇に強く吹かせることはありません。
チャイムの音がはっきり聞こえます。その後の弦の演奏はとても静かな感じです。
クラリネット、フルートのソロは自由に歌わせているようです。

ジュゼッペ・シノーポリ/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★★★
速めのテンポで、トロンボーンはかなり余裕を残して鳴っていますが全体を支配するような迫力があります。ティンパニの激しいクレッシェンドや木管の大きな強弱の変化などかなり積極的な表現です。オーボエにメロディが出るところで少しテンポを落としました。基本的に速めのテンポで軽く、ドロドロした雰囲気はほとんど無く、作品の表題をあまり意識していない演奏のように感じます。鐘が鳴ってからはゆったりとしたテンポで揺れがあって濃厚な表現になりました。クラリネット、フルートのソロもかなりテンポが遅くたっぷりと非常に濃厚に歌います。このソロはとても良かったです。
鐘が入った後のテンポを落とした濃厚な表現はあまり聞いたことの無い表現でとても良かっですが、前半があまりにもあっさりし過ぎていて肩すかしでした。

エドゥアルド・マータ/ダラス交響楽団

マータ★★★★
遠くから迫ってくるような弦。爽やかな響きのトロンボーン。シンコペーションの反応がとても良いです。オーボエ、フルートとメロディを受け継いだ後にテンポを速めました。かなり余力を残した金管がブルー系の響きで魑魅魍魎の怪しさよりもスマートな爽やかさを印象付けます。鐘の後はゆっくりとしたテンポでフレーズの終わりでテンポを落として演奏します。クラリネットのソロは豊かに歌います。暖かいフルートのソロ。
ブルー系の響きで魑魅魍魎の饗宴よりもスマートで爽やかな演奏で、あまり表題を意識した演奏ではありませんでしたが、ダラス交響楽団の美しい響きはなかなか良かったです。
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ルネ・レイボヴィツ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

レイボヴィツ★★★★
激しい強弱の変化。トロンボーンの前にスネアが入りました。かなり激しいトロンボーン。シロフォンも入ります。木管のメロディにファゴットが追加されたり独特の編曲があります。金管のフォルテピアノクレッシェンドやシンバルの響きを残したり、予想外の部分でスネアが入ったり、スネアのリムショットがはいったり、カットもあります。テンポが極端に落ちたりやりたい放題です。ウィンドマシーンまで入ります。鐘の前にスネアと銅鑼のクレッシェンドがありました。鐘の後はほぼインテンポです。クラリネットではなくオーボエのソロです。フルートのソロの後に怪しげな低音から次第に高音楽器に移って華やかに終わりました。
ベートーヴェンの交響曲で、ベートーヴェン指定のメトロノームに厳格な演奏をしたレイボヴィツの演奏がこんなに自由奔放だったのは驚きでした。ただ、ストコフスキーの編曲ほどの強烈な色彩感などはありませんでした。
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タラニス・エコノモウ/カタール・フィルハーモニー管弦楽団

エコノモウ★★★★
追い立てるように微妙にテンポが変化する冒頭。安定したトロンボーン。ティンパニが激しくクレッシェンドしました。聞いたことの無い中東のオケと指揮者ですが、とても安定した良い演奏です。滑らかなクラリネット。アンサンブルもなかなか良いですし、響きも美しいです。鐘の後のテンポの動きは僅かです。クラリネットのソロはゆっくりとしみじみとした演奏です。
大きな表現はありませんでしたが、整ったアンサンブルと美しい響きで、模範演奏のような演奏でした。
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ウラディミール・スピヴァコフ/ロシア・ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団

スピヴァコフ★★★☆
強弱の変化が独特の冒頭の弦。トロンボーンはビーンとかなり強く鳴り響きます。突然強く入るファゴット。ミキシングで強調されたようです。トゥッティの響きと木管のソロのバランスがおかしいです。金管の三連音を含むメロディで大きくテンポを落としました。細かい音で若干もたつくような部分もありました。やはり木管が大きいです。リミッターでも掛かっているような感じがします。鐘も大きいです。鐘の後の弦もかなり強調されているような録音です。テンポの動きは僅かです。クラリネットのソロはアゴーギクを効かせるようにテンポの動きもあって豊かな歌でした。
演奏そのものは力感もあり、ソロの豊かな歌もあって良かったのですが、録音がリミッターが効いているのか、ミキサーで木管を強調したのか分かりませんが、バランスがとても不自然に感じました。
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デーヴィッド・ロイド=ジョーンズ/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

ジョーンズ★★★
表現の振幅はあまり大きくなく比較的穏やかで作品の粗野な感じはあまりありません。ロシア音楽の持つ強大なエネルギーはあまり感じません。ダイナミックの変化もあまり大きくありません。金管にはかなり余裕を持たせた演奏で、積極的な表現はほとんど無い演奏でした。
あまり振幅の無い演奏で、金管も余裕たっぷりでした。あまり作品を積極的に表現した感じは無く、作品を無難に演奏して紹介したと言う事でしょうか。
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トーマス・ルートヴィヒ/ルートヴィヒ交響楽団

ルートヴィヒ★★☆
とてもゆっくりとしたテンポです。弦は薄いですが、その分金管がかぶって来ます。テンポが遅く間延びした印象の演奏です。テンポの動きもありますが、あまり大きな表現はありません。鐘の後は薄い弦が揺ら揺らとした表現で寂しげな雰囲気が上手く表現されています。クラリネットとフルートのソロもあまり歌いません。
薄い弦と力強い金管による遅いテンポの演奏でした。テンポの遅さに間延びした印象を受ける部分もありましたが、鐘の後の揺ら揺らとした寂しげな表現はなかなか良かったです。上品な演奏でした。
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ダニエル・ナザレス/スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

ナザレス★★☆
艶やかな弦ですが、あまり強弱の変化はありません。トロンボーンも控えめで軽いです。大きくテンポを落として加速する部分もありました。ティンパニの激しいクレッシェンドや打楽器の強打が目立ちます。テンポの動きはありますが、あまり力のこもった強奏はありません。鐘の後はゆっくり目でテンポが動くのですが、少しアンサンブルが緩い感じがあります。クラリネットとフルートのソロは普通でした。
テンポの動きはありましたが、あまり強奏せずに軽く破綻の無い演奏に上手くまとめた感じの無難な演奏でした。
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レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★
抑え気味の冒頭。荒々しい金管。当時のニューヨークpoの演奏としてはアンサンブルも良いような気がしますが、それでも雑な演奏には変わりありません。テンポもほぼ一定で、変化に乏しく一本調子です。消化試合のような演奏に感じました。

イーゴリ・マルケヴィチ/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

マルケヴィチ★★
速いテンポで、シンプルな冒頭。トロンボーンが途中で弱くなってクレッシェンドする表現でした。色彩感はくすんでいて、あまり豊かな色彩感ではありません。通常、強く演奏される部分を途中で弱くしてクレッシェンドすることがよくあります。その影響もあってか、演奏自体が軽く感じます。ほとんどテンポの変化無く速いテンポのまま進みます。強く伸ばすはずの音を弱くする表現がとても多いです。木管のソロもあまり歌いません。
普通なら強く伸ばす音を弱くして、その後クレッシェンドするような表現が多かったです。演奏にはあまり色彩感が無く、軽い感じで、ロシア音楽の特徴も、リムスキー=コルサコフの特徴もあまり表現されなかったように感じました。
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セルジウ・チェリビダッケ/ミラノ・イタリア放送交響楽団

チェリビダッケ★★
いつものようにゆっくりと濃厚な表現です。トロンボーンも十分に鳴っています。大きい表現に反してスピード感の無さが気になります。奥行き感の無い金管の生音が下品に感じます。あまりの遅さに間が持たないと思ったのか、少しテンポが速くなります。鐘の後は霧が立ち込めるように、ゆっくりと静かに幽玄の世界のようです。
鐘の後の幽玄の世界のようなゆっくりと静かで奥深い演奏と、前半の浅く下品で間が持たない演奏のギャップが激しい演奏と感じました。
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ユーリ・ボトナリ/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

ボトナリ★☆
ゆっくりとしたテンポで柔らかい表現。トロンボーンも全体の響きから飛び出さず落ち着いています。ティンパニの激しいクレッシェンドがありました。金管はかなり抑えぎみです。同じリズムでも楽器が変わると表現する長さが変わります。金管の三連音を含む戦慄でガクッとテンポを落として次第に弱くなりました。テンポがかなり動く演奏ですが、このテンポの動きがあまりにも大きく不自然な感じがします。鐘が鳴った後のテンポの動きは僅かです。クラリネットのソロは大きく歌います。フルートはクラリネットのソロよりもあっさりとしています。
金管を抑えた演奏で、テンポもかなり大きく動いていましたが、少し不自然な感じがありました。また、同じリズムでも楽器によって長さが違うのも気になりました。
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ロリン・マゼール/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

マゼール
速いテンポで激しく動くので、小ざかしく感じる演奏です。厚みのあるトロンボーンですが、最後の音だけ特別に強い音で不自然です。シンバルは小さいものを使っているようでダイナミックさは全くありません。オケもドイツ的で金管が飛び抜けたバランスの演奏ではありません。テンポが速くてとても慌ただしいです。シンバルの速いパッセージはサスペンドシンバルを使っているので、クラッシュシンバルをこんなに小さい物を使う意味が分かりません。鐘が鳴った後も速めのテンポで全く作品に思い入れが無いような演奏です。クラリネットとフルートのソロも素っ気無く爽やかです。
とにかくテンポが速い!素っ気無い演奏でした。

アラン・ロンバール/ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団

icon
積極的な強弱の変化。トゥッティの響きが薄い。トロンボーンを主体にする旋律は抑え目で柔らかく演奏しました。テンポを落とすところもありますが、基本的には速いテンポで進みます。金属的な響きがするヴァイオリン。全体的には大人しい演奏で、魑魅魍魎たちが大騒ぎしているような雰囲気とはちょっと違うように感じます。後半、弦だけで弱音で演奏される部分も平板で短い時間でしたが退屈な印象でした。

ジェフ・スペクト/ミシシッピ・バレー管弦楽団

スペクト
テヌートぎみに柔らかく演奏されるトロンボーン。豊かな残響を含んだ木管。テンポの動きも少しありますが、あまり個性の強い演奏ではありません。ミスや金管の鳴りの悪さを感じさせる部分もあります。ちょっと雑な金管の演奏もあります。鐘の後もテンポの動きはほとんどありません。クラリネットは高音を出しにくそうでした。フルートもほとんど歌いません。
オケの雑な部分やアンサンブルの乱れなどもあり、演奏そのものは特に個性の無いものでしたので、ミスが気になりました。
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Garo Avessian/レバノン・フィルハーモニー管弦楽団

Avessian
低域がボンついた録音で、ホルンの音もミキシングによって強調があるようです。こもって雄大なトロンボーン。良く歌う弦。しかし、ホルンが異様なバランスです。多分カメラの位置にマイクがあって、そこにホルンのベルが向いているのだと思います。鐘もマイクの近くでしょう。鐘の後の弦も豊かに歌います。クラリネットは生き生きと瑞々しい演奏でした。
とても良く歌う弦でしたが、異様に大きいホルンのバランスがとても不自然でした。録音のバランスが良ければ演奏そのものは割りと良かったのではないかと思います。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」の名盤を試聴したレビュー