カテゴリー: ホルスト

ホルスト 組曲「惑星」

グスターヴ・ホルストの組曲「惑星」(The Planets)は、20世紀初頭に作曲された管弦楽作品で、各楽章が太陽系の7つの惑星にちなんで名付けられています。この曲は1914年から1917年にかけて作曲され、占星術的な性格に基づき、それぞれの惑星が象徴する特性が音楽で描かれています。ホルストの代表作であり、色彩豊かなオーケストレーションと個性豊かな楽章で聴衆を魅了し続けています。

各楽章の内容と特徴

  1. 第1曲「火星 – 戦争をもたらす者」
    激しいリズムと不協和音が特徴のこの楽章は、「戦争の象徴」とされる火星を描いています。5拍子の力強いリズムが不安感を煽り、迫力と緊張感のある音楽が展開されます。重厚で不気味な響きが、戦争の荒々しさや破壊力を表現しています。この楽章はとりわけ印象的で、映画音楽にも大きな影響を与えました。
  2. 第2曲「金星 – 平和をもたらす者」
    対照的に、金星は穏やかで美しい音楽です。柔らかな響きと温かいメロディが特徴で、平和や癒しを表現しています。管弦楽の滑らかな音色が、安らぎに満ちた空間を作り出し、戦いの後の静けさと和解を感じさせます。
  3. 第3曲「水星 – 翼のある使者」
    軽やかで速いテンポのこの楽章は、「メッセンジャー」を意味する水星の素早い動きを表現しています。高い音域の木管楽器や弦楽器が活躍し、せわしないながらも楽しく躍動的な雰囲気が漂います。
  4. 第4曲「木星 – 喜びをもたらす者」
    「惑星」組曲の中でも特に人気のある楽章で、力強く喜びに満ちた音楽が特徴です。中間部の荘厳なメロディは「我らが祖国イギリス(I Vow to Thee, My Country)」として親しまれています。このメロディは温かく、壮大で、希望と誇りに満ちた感情を呼び起こします。
  5. 第5曲「土星 – 老人の神」
    土星の楽章は、死や老いといったテーマを描き、ゆっくりとした重々しい音楽です。鐘の響きやゆったりとしたリズムが、老齢や運命の重みを象徴し、静かで敬虔な雰囲気が漂います。音楽は次第に深みを増し、内省的で哲学的な感覚を与えます。
  6. 第6曲「天王星 – 魔術師」
    風変わりで、予測不可能な雰囲気を持つこの楽章は、魔術師や奇人といったイメージを連想させます。ユニークなリズムと大胆な音響が、ミステリアスで冒険的な性格を表現しています。強烈なリズムと管楽器の鮮やかなパッセージが繰り返され、聴く者を驚かせるような楽章です。
  7. 第7曲「海王星 – 神秘主義者」
    最後の楽章である「海王星」は、神秘的で静かな音楽です。音が徐々に遠ざかるようにフェードアウトするエンディングが特徴で、遠くへ消えゆくような音響効果を用いています。神秘的で超越的な響きが、宇宙の未知の領域や深遠さを表現し、組曲全体の終わりに相応しい不思議な余韻を残します。

音楽的な特徴と影響

「惑星」は、ホルストの巧みなオーケストレーションと多様な音響効果が際立つ作品です。彼は管弦楽のすべての楽器を効果的に使い、リズムや音色、ハーモニーを巧みに操ることで、各惑星が象徴する特性やイメージを鮮やかに描き出しています。また、「火星」や「木星」のテーマは映画音楽などに大きな影響を与え、後世の作曲家たちにも多大なインスピレーションを与えました。

ホルストの「惑星」は、天文学ではなく占星術の視点で描かれているため、地球や冥王星(当時未発見)は含まれていませんが、神秘的な宇宙観と人間の感情や思想を融合させた、壮大でドラマチックな作品として、今も多くの人々に愛されています。

4o

たいこ叩きのホルスト 組曲「惑星」名盤試聴記

サー・エードリアン・ボールト/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
火星、リズムを強調したような明確な刻み、ゆったりとしたテンポ。初演者であり、5度目の録音ということもあり、堂々とした風格さえ感じる演奏です。
楽器の描きわけがはっきりしていて、色彩も豊かです。
中間部もアゴーギクを効かせて十分に歌っています。
最晩年の録音ですが、アンサンブルが乱れることもなく、色彩感豊かで、むしろ若々しささえも感じられる良い演奏です。
金星、こちらは、速めのテンポをとっています。淡々と進みますが、作品を慈しむような丁寧な演奏です。作品を知り尽くしているボールトらしく、テンポも大きく動かします。
水星、この曲も速めのテンポです。その分、この曲の愛らしさが表現されています。良い演奏と言うのは、音が立っています。このCDも音の粒立ちが良いです。
木星、こんどは、非常にゆったりしたテンポでスケールの大きな木星です。オケのメンバーが指揮者に共感している演奏は、集中力が音に現れるもので、一音一音の扱いが丁寧で、音が集まってくる。
中間部は、すっきりとあっさり淡々と演奏されています。大人の演奏だなあと思わされます。さすがに巨匠の風格です。
あっさりするところは、あれ?と思うほどあっさり、歌うところは、ねばっこく対比がしっかりされているので、聴いていて飽きない。
土星、冒頭部分では、宇宙の神秘的な様子が上手く描き出されています。クレッシェンドを伴って登場してくる金管が神々しい!後半の弦の響きも美しい。
天王星、冒頭はちょっと切れがないか?この曲にしてはちょっと重いような気が私にはします。また、この曲ではアンサンブルの乱れも少しあります。ちょっと重すぎて間延びする感じです。
海王星、CDで聴くと、オマケのようにくっついている曲のように思いがちですが、生で聴くととても重要に曲なんですね。それがなかなか2chのステレオでは再現できないのが、はがゆいところです。
細部の表情にもすごく配慮されている良い演奏です。
霧が除除にかかるようにいつの間にか入る女声合唱。これが生だととても良いのですが・・・・・。

さすがに、惑星を知り尽くしたボールト渾身の名演奏でした。ただ鳴らせば良いというようなアプローチではなく、一つ一つの曲を丁寧に描き分けた良い演奏でした。
時には、重い部分もありましたが、そんなことは軽微なことです。

ロリン・マゼール/フランス国立管弦楽団

マゼール★★★★★
火星、ゆっくりとしたテンポで一音一音確実に刻むコル・レーニョ。波が寄せるように押しては引く演奏が続きます。少し硬質なユーフォニアム。崩れ落ちるような怒涛の響き。クライマックスの豪華で溢れるような音の洪水。
金星、とても豊かで多彩な響きです。伸びやかで柔らかい響きで繊細で、静寂感もあります。
水星、動きがはっきりとしていますが、決して下品では無く、品があっておしとやかです。録音も瑞々しくてとても良いです。
木星、テンポも動きますが、強い表現は無く自然な演奏です。非常に美しい響きで、艶やかで輝かしいトランペットや瑞々しい弦など、とても素晴らしいです。中間部もテンポを落とさず自然な表現です。嫌味な表現などは無くマゼールらしく無い感じがします。最後にはスネアのロールが入りました。
土星、一音一音区切るようなフルート。あっさりと淡白なトロンボーン。速いテンポでどんどん進みます。金管のクレッシェンドはとても大きくかなりのエネルギーです。パイプオルガンはあまり強くありません。
天王星、美しい残響を伴ったファゴットや弦のリズム。濃厚な色彩で鮮やかに目の前に広がるオケ。パイプオルガンのグリッサンドの前にティンパニが突然強打しました。トランペットの絶叫のような響きもとても美しいです。
海王星、冷たさを感じさせるヴァイオリンもとても美しいです。彼方から柔らかく響いて来る女声合唱。

全く期待せずに聞きましたが、良い意味で予想を裏切るとても良い演奏でした。表現は自然でしたが、濃厚な色彩のパレットをいっぱいに広げ、豪快で溢れ出すような音の洪水や、繊細で美しい響きなど、素晴らしいものでした。
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ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

メータ★★★★★
火星、くっきりと粒だったコル・レーニョ。マルチマイクの際立った分離で左右に広がるオケ。とても大きな表現とトロンボーンの下のパートを強く吹かせているのが特徴です。色彩も濃厚で引き込まれるような演奏です。
金星、とても静かです。少しマットなホルン。テンポは速めですが、表現はこってりとしています。テンポも動いて自在な表現です。当時は何をやっても当たっていたメータが奔放に表現している印象です。
水星、速いテンポですが、雑にはならず、とても神経が行き届いた演奏です。突然ティンパニが飛び出して来ます。
木星、明快に歌う演奏が続きます。色んな楽器の動きも手に取るように分かる録音も当時の最先端です。中間部では分厚い響きで豊かで伸びやかな歌です。最後はテンポを速めて終わりました。
土星、ダイナミックレンジが広いので、とても静かに始まります。重量感と深みのあるコントラバス。短めの音でカラッとしたトロンボーンとトランペット。大きな表現で歌う木管。コンサートでは絶対に聞こえないようなリアルな音です。パイプオルガンが入る部分でも枯れた表現では無くむしろ生き生きとしています。
天王星、抑えた金管。ミュートされたティンパニ。チューバが存在感があります。色彩感が豊かで常に歌っているような楽しい演奏です。ティンパニのリズムがとても明快です。トロンボーンの下のパートが凄いです。
海王星、表現豊かなフルート。柔らかく遠くから響いて来る女声合唱。とても神秘的な合唱です。

若いメータが自由奔放に伸び伸びと表現した演奏でした。速めのテンポで色彩感がとても豊かで、積極的に描いた演奏はとても良かったです。
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アンドレ・プレヴィン/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★☆
火星、広帯域にバランスよく録られている感じです。スケールが大きい感じです。ffでも混濁することなく良いです。
超低域も聞き取れるし、演奏もスケールが大きくてバランスも良いし、なかなか良い演奏です。
中間部はあまりテンポを落とさずに自然に進みます。
金星、細身のホルンの音が郷愁を誘います。ちょっと寂しげな感じが独特ですが、プレビンの語り口の上手さを感じます。火星のスケールの大きさと、寂しげな金星の対比がとても良いです。
水星、速めのテンポで、おちゃめな天使を描いているのでしょうか。次々に登場するソロもチャーミングです。
木星、中庸なテンポです。表情が豊かですし色彩も豊かで楽しいです。中間部のメロディは速いテンポでちょっとそっけない感じです。このCDもしっかり音が立っている。集中力もあり良い演奏です。ロイヤル・フィルはロンドンを拠点にするオケの中では一段格が落ちるような感覚を持っていたのですが、このオケも他のオケに引けを取らず上手いですね。驚きました。
土星、暗闇の中の荒涼として凍りついた土星を描いているようです。プレビンの演奏はとても絵画的な演奏で、表題を上手く表現していて、なかなか聞かせます。弦のメロディも美しい。老巨人が一歩一歩歩しかも力強く歩くような描写です。
天王星、ちょっと拍子抜けしたような冒頭でした。もうちょっとしっかり鳴らして欲しかったです。ティンパニにもう少し張りのある音色を求めたいです。この曲はアンサンブルの乱れも少しあったし、全体の中では、ちょっと不出来な一曲だったように思います。終結部はなかなか良かったです。
海王星、あまり表情がなく、平板な演奏です。

テラークは基本的にワンポイントマイクの一発録りなので、ちょっと後半の集中力が切れたのか、最後の二曲の出来は、その前の曲の表情の豊かさに比べると落ちるのが残念でした。
それでも、かなり良い演奏だったと思います。

アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団

プレヴィン★★★★☆
火星、大きな表現と濃厚な色彩感です。柔らかいユーフォニアム。他の金管はシャープです。トゥッティのエネルギー感はあまりありませんが、細部まで表現を練ってあるような聞かせどころの多い演奏です。ホルンがかなり強く咆哮する部分があり色彩感を強くしています。
金星、美しいホルン。フルートも美しいです。細く繊細なヴァイオリンのソロ。色彩の変化に富んでいてとても良い演奏です。
水星、速いテンポで活発に動き回る子供のような表現で愛らしい。
木星、ゆったりと堂々としている冒頭。テンポが速くなると活発で元気の良い演奏になります。中間部はあまり感情を込めずにあっさりと演奏します。金管はとても伸びやかに鳴り響きます。
土星、美しいトロンボーン。滑らかな弦。静寂のなかに響くフルート。一歩一歩山を登るような力強い金管。パイプオルガンの直前にはひらひらと舞うようなフルート。
天王星、硬いマレットでゆっくりと軽めに演奏したティンパニ。とても色彩感が豊かで、いろんな声部が聞えてきます。遠いティンパニに比べてスネアが凄く近いです。
海王星、意外と音量が大きく始まりました。少し離れたところから響く女声合唱ですが、遥かかなたの宇宙を感じるような漂うような柔らかさはありませんでした。

とても色彩感が豊かで、いろんな声部が聞えて来る演奏で、とても丁寧にバランスを考えた演奏でした。表現も豊かで良かったのですが、海王星の合唱に漂うような柔らかさが無かったのがとても残念です。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/フィルハーモニア管弦楽団

スヴェトラーノフ★★★★☆
火星、とても遅く重いコル・レーニョ。こってりと濃厚な表現。早くもホルンの咆哮があります。美しいユーフォニアム。ダイナミックの変化もとても大きく高カロリーな演奏です。一旦静まってもこねくり回すようなこれでもかと言うようなしつこい表現。クライマックスもかなりのエネルギーです。
金星、凶暴だった火星とは一変した柔らかく美しい表現です。火星の濃厚な表現からとてもあっさりとした爽やかな演奏になっています。
水星、速めのテンポですが、普通の演奏のようなきらびやかな感じでは無く、マットで渋い演奏です。
木星、ゆったりとしたテンポですが、火星のような凶暴な演奏ではありません。テンポの動きもあります。中間部は想像していた程歌いませんが、柔らかい演奏です。最後はかなり速くなって終わりました。
土星、ゆっくりと一音一音丁寧です。深みのあるコントラバス。巨人が一段一段階段を踏みしめて登るような力強い演奏。後半は老いて行く一抹の寂しさを鐘とパイプオルガンから感じます。とても静かです。
天王星、抑えぎみで柔らかい金管。飛び跳ねるようには弾みません。この曲ではほとんど生音を突きつけては来ませんが、最後は強烈なティンパニとトランペットでした。
海王星、濃厚な色彩で冷たい空間を描き出す木管。間接音を含まず近く強めな女声合唱。もっと空間を漂うような合唱だったら良かったのに。

こってりと濃厚な表現があったと思ったら、柔らかくあっさり爽やかになったり、渋い表現や力強い演奏だったり多彩な表現でなかなか聞き応えがありました。ただ、海王星の女声合唱が強かったのは作品のイメージに合いませんでした。
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ピーター・ウンジャン/トロント交響楽団

ウンジャン★★★★☆
火星、フワーッとして柔らかい響きで始まりましたが金管が明快に音を出します。音量を落として柔らかいユーフォニアム。叩きつけるようなリズムのクライマックス。トロンボーンもかなりのエネルギーですが、すっきりとした響きで分厚さはありません。
金星、しみじみとした表現。弦でも楽器の受け渡しでの色彩感の変化がとても良いです。
水星、ヴァイオリンが音量の変化で音色を変化させたり、とても繊細な演奏です。
木星、主役の楽器がしっかりと前に出てくるので、色彩の変化がとてもはっきりしています。中間部は音量を抑えて柔らかい演奏です。大きな表現はありませんが、色彩感の豊かな演奏で作品の魅力を上手く伝える演奏です。
土星、ゆっくりとテヌートぎみに演奏されるフルート。トロンボーンもテヌートぎみですが、あまり伸びやかではありません。トランペットもテヌートでちょっと粘着質な演表現です。
天王星、抑え気味の金管。杭を打ち込むようなティンパニ。振幅の大きな演奏ですが、スッキリとした響きで爽やかです。
海王星、とても静かにゆっくりと始まるフルートの演奏。静寂感のある繊細な表現です。柔らかい女声合唱。遠ざかって行く合唱も神秘的で美しいです。

分厚い響きはありませんでしたが、主役の楽器がしっかりと前に出てくるので、とても色彩感が豊かな演奏で、作品の良さは十分に伝わる演奏でした。

このリンクをクリックすると音源の再生ができます。 火星の後、海王星、天王星とうしろから順に再生されます。

巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ホルスト:組曲「惑星」の名盤を試聴したレビュー

ホルスト 組曲「惑星」2

たいこ叩きのホルスト 組曲「惑星」名盤試聴記

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

icon★★★★
火星、非常に軽い音の出だしです。あまり低音を伴っていないようなバランスです。反面、デュトワの録音に共通するシャープさがあります。
デュトワの録音に共通するバランスで、どこかで低音をカットしているような感じで、ほかのCDで聞くような、もやっとした響きは一切ありません。
ffの部分でもスッキリクリアな演奏ですが、やはり少し軽い。明晰で音が立っているので、気持ち良いです。
中間部は速めのテンポでねばるところはありません。
金星、この曲のようにマスの響きがない曲は低域をカットされていることに対する違和感はありません。ただ、高音域もものすごく伸びている感じではありませんので、弦の倍音を含んだ美しさはありません。ソロはどれも過不足無く上手いのですが、全体にすごく美しいと感動するような音色を聴かせてくれるわけではありません。
音の温度感が低くクールな演奏に聞こえます。宇宙空間の暗く凍てつくような様子は、この録音の温度感とマッチしていると思います。
水星、ちょっと素っ気無い感じがして、あまり面白く聞かせてはくれません。BGMのように流れて行きました。
木星、構築物としては、スタイリッシュでかっこいいです。とくにブラスのffを最高に気持ちよく聞けるように照準を合わせたような録音。これはこれで好きな人にはたまらないんだろうと思います。
しかし、イージーリスニングのようになってしまって、作品を聞き入るような聴き方の人には不満が残る演奏でしょう。
大音量でストレス解消には持って来いです。低域が薄いので、ご近所にもあまり迷惑がかからない!
土星、やはり、コントラバスのバランスが異常に絞られています。頂点へ向けて突き抜けてくることもなく、非常によく制御されていて、関心しますが、その分サプライズがありません。どこをとっても過不足無く、80点主義のような優等生的演奏のように私には感じられてしまいます。
天王星、冒頭のブラス、ティンパニは気持ち良いです。
海王星、・・・・・・・・・・・。

ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★★★
火星、静かな出だしです。コールレーニョのアタック音が立って聞こえます。奥行き感のある録音です。ffでもトロンボーンなどの中音域が厚く、太い音で鳴ります。低域もかなり下まで録音されているようです。
中間部はかなりテンポが遅いです。続く激しい5拍子もわりとふくよかな音で、強烈な印象では、ありません。ここからテンポの速い5拍子に移るまえにタメがあって面白い。
金星、細い音のホルンです。控えめな表現ではありますが、音楽をしている感じがあります。メータのニューヨーク時代は、だらしない演奏が多かったですが、この演奏は曲との相性も良いのか、引き込まれます。一本調子にならず、アゴーギクも効かせてなかなか良い演奏です。
水星、天使たちが戯れる様子が上手く表現されていて、メータの本来持っている多彩さを垣間見せてくれます。どうして、こんなに出来不出来の差があるようになったんだろう?
木星、派手な音作りではなく、むしろ渋目な音で、枯れた趣きがあります。アンサンブルも乱れることなく、安定しています。上手くツボを押さえた指揮で、さすがに十八番だなと思わせます。派手ではないけれど、かなり良い演奏の部類にはいると思います。ロスpo時代のハッタリの効いた演奏を期待すると裏切られますが、やはり、歳を重ねて、渋みも兼ね備えてきた演奏を味わうべきでしょう。
土星、テヌートで演奏されるフルートが独特です。息の長いフレーズ。トロンボーンのハイトーンも難なく目立たず、大人の土星を聞かせてくれます。でも、普通だと枯れた、そして、寒々とした雰囲気の演奏が多い中で、この演奏は暖色系で色彩が豊かな演奏です。
天王星、割と控えめなブラスとティンパニ。このCDはメータ/ニューヨークの残した演奏の中でも特に優れているCDの一つだと思います。パイプオルガンとオケの咆哮もなかなか良い!
海王星、ちょっと平板でオマケのような演奏・・・・・・。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

icon★★★★
火星、とても良いバランスでカッチリまとまっています。この録音もデュトワのCDと同じくどこかのもやっとするような周波数をカットしていると思いますが、デュトワのCDほど極端に削ぎ落としていないようで、違和感はあまりありません。
楽器の粒立ちも明瞭でスネアのロールも粒がきれいに録れています。
ブラスセクションが気持ちよく鳴ります。ティンパニは変にミュートされたような音で、ボコボコ言っています。スネアが近すぎるような感じです。
打楽器のバランスは録音時のセティングなどによってかなり違うものですが、このCDのスネアはどう考えても近すぎます。
金星、オーマンディのCD独特のマットな音です。マットでグラマラスなのがフィラデルフィア・サウンドなのかな?ホールトーンはあまり含まれず、楽器の生音を聞くような感じですが、ショルティ/シカゴsoのようなメタリックな音作りではないので、聴きやすい音です。小じんまりとまとまった演奏で、本当に小品と言うにふさわしい作りで、オーマンディは「惑星」を小品の集合体としてこの曲を捉えているのでしょうか?
水星、楽器の動きが手に取るようにわかる録音で、音楽を聴くよりも、オーディオ的な聴き方の方が向いているのかもしれません。残響成分が少なすぎて、音楽に浸るような感覚は残念ながらありません。
オケは上手い。ソロも見事ですが、名人芸と録音の良さを聴かされているようで、演奏に没入できません。
木星、ここでも、マットな音を聞かせるホルン。次から次から登場する名人芸には感服させられます。すごいオケです。しかし、録音が人工的すぎて自然な音楽を聴くのを邪魔しているように感じられてしかたがありません。名人芸を楽しむと割り切ればとても良いCDです。
マットでグラマラスなフィラデルフィアサウンド、極端なオンマイクで分析的なショルティ/シカゴso、低音のモヤモヤする帯域を思い切ってカットしてシャープで温度感の低い響きを作り出したデュトワ/モントリオールo、いずれも録音による操作であって、CDで聴く音がコンサートで響いているわけがないのです。多少そのような傾向はあったとしても、CDではかなり強調されています。これだけ強調することで、他のアーティストとは違ったカラーを明確に打ち出し、ファンを獲得することにもなっているのでしょうが、あまりにも行き過ぎると、アンチも出てくるわけで、さじ加減は難しいと思います。
このCDもフィラデルフィア・サウンドの極みだと思えるような音作りなので、一聴の価値はあるとは思いますが、あくまでも音を聞くものであって、音楽を楽しむCDではないと思います。
土星、マットな音が枯れた雰囲気を上手く表現していますが、逆にテンポが速めで、老いた老人が元気に行進するような変な感覚です。珍しく木管にミストーンが・・・・・。
ボールトのような壮大なスケール感や頂点へ向けての高揚感はありません。オケはものすごく上手いのですが、どうも小じんまりしていて、内へ内へと音がまとまっていく感じで、開放的に音が抜けてくるところがないので、スカッとしません。
天王星、気持ちよく鳴るブラスにバシッと決まるティンパニ!ここは気持ちが良い。左右に配置されたティンパニがミュートぎみでリズムがはっきり聞こえるので、面白い効果があります。
海王星、やはり、もっと豊かな響きがあって、横に揺れるような感じがあれば良いのですが、私には縦に揺れているような感じがして、とても神秘的には聞こえません。女声合唱も生々しすぎます。

オケは抜群に上手いし、悪い演奏ではないのですが、録音でかなり損をしているように私には思えてなりません。ちょっと残念な演奏でした。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★★★
火星、コンパクトにまとまった響きで、ダイナミックレンジはあまり大きくありません。美しいユーフォニアム。クライマックスでも余裕のあるオケ。余裕の中で整った演奏をしています。
金星、引き締まったホルン。濃厚な色彩ではありませんが、淡く美しい色彩です。テンポの変化もあって表現は豊かです。
水星、鮮明ではありませんが、キラキラと宝石を散りばめたような美しさは感じ取れます。ティンパニは硬いマレットではっきりと入って来ます。
木星、ゆったりとしたテンポでがっちりとした堅固なアンサンブルです。ふくよかなホルン。明快に鳴る金管。この当時のフィラデルフィアoの充実度を感じることができます。中間部は朗々と歌います。堂々とした演奏でとても良いです。トロンボーンの細かいパッセージも見事です。
土星、とても静かに始まり、コントラバスが大きくクレッシェンドします。ビィツィカートから速めのテンポになり、スッキリと爽やかな演奏になります。大きな頂点ではありませんが、金管は明快に鳴ります。パイプオルガンが入るあたりから人生の黄昏を感じさせる演奏です。
天王星、アクセントのある金管。ティンパニも気持ちよく鳴ります。
海王星、表情豊かなフルート。遠くから漂うような女声合唱。遠近感があってとても良い雰囲気です。

とても豊かな表現で、オケも明快に鳴る演奏でとても良かったですが、録音の制限によるのか、レンジが少し狭く若干鮮度が低い感じがあったのが残念でした。
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ジョン・ウイリアムズ/ボストン・ポップス・オーケストラ

ウイリアムズ★★★★
火星、速めのテンポで軽いコル・レーニョ。少し腰高ですが、明快にオケを鳴らして鮮やかな色彩感です。さすがに映画音楽の大家だけに演出効果は抜群で作品の聞かせどころを明快に打ち出した派手な演奏です。
金星、筋肉質のホルン。コントラストがはっきりしていて聴いていて飽きさせない演奏です。
水星、滑らかに刺激無く動くオケ。角を落としてBGMのように心地良く流れて行きます。
木星、とても軽いタッチで、力こぶを感じさせるような部分は無く、サラサラと流れて行きます。中間部は少しテンポを落として感情を込めた歌になります。明快に塗り分けられた演出効果はさすがです。最後は絶叫し、長く音を伸ばして終わりました。
土星、一転してとても静かな演奏です。弦のクレッシェンドが遠くから迫って来るようで効果的でした。トロンボーンが入るとパーッと明るくなります。フルートの表現はとても豊かでした。
天王星、少し離れた所から響いて来るような金管。ゆっくり目に進みます。テンポの変化もありますが、響きが浅く編成が小さいように感じますが、強弱の振幅はとても大きいです。
海王星、とても静かにフルートの演奏が始まります。静かに遠くから響いて来る女声合唱。オケも合唱もとても音量を落としています。

強弱の振幅やコントラストのはっきりした演奏で、聞き手を飽きさせない演奏でした。作品を面白く聞かせてくれる手腕はさすがでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ホルスト:組曲「惑星」の名盤を試聴したレビュー

ホルスト 組曲「惑星」3

たいこ叩きのホルスト 組曲「惑星」名盤試聴記

Maciej Tarnowski/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団

Tarnowski★★★☆
火星、ブレンドされた響きですが、その中からキラキラとした色彩がにじみ出ます。トゥッティでも強力なエネルギーの放出はありません。
金星、柔らかい弦の中低域。渋く艶やかなヴァイオリン。オーボエがゆっくりと歌います。ゆっくりと濃厚に描かれて行きます。
水星、速めのテンポで鮮明で明快な表現です。
木星、とても色彩感豊かなのですが、トランペットとトロンボーンの前向きラッパだけがくすんだ響きです。ティンパニはリズムがはっきりと聞き取れます。中間部は柔らかく、音量の変化もあってなかなか良い演奏です。
土星、ゆっくり一歩一歩歩くようなテンポです。柔らかいコントラバス。音程が怪しいトロンボーン。頂点になってもトランペットよりもホルンの方が強力です。
天王星、フワーッとした金管。硬質でピシッと決まるティンパニ。この曲でもホルンが強力です。打楽器はなかなか良いです。
海王星、トロンボーンの音程は本当に怪しい。凍りつくような宇宙の果ての冷たさを表現するヴァイオリン。会場を包み込むような女声合唱。最後の音量を落として消えて行くところはとても良かったです。

トランペットやトロンボーンが突き抜けることはありませんでしたが、そのほかのパートは豊かな色彩感でした。ライヴならではのキズもありましたが、良かったです。
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ブラムウェル・トヴェイ/ニューヨーク・フィルハーモニック

トヴェイ★★★☆
火星、客席で録音したような感じです。コル・レーニョはほとんど聞えません。ティンパニがボンボンと鳴ります。offぎみの金管ですが、クライマックスのトロンボーンの強烈な響きはさすがです。小節の頭にアクセントを付けて演奏しています。
金星、筋肉質のホルンが遠くから響いて来ます。冷たく温度感の低い演奏です。
水星、速いテンポですが、細部はあまり良く分かりません。
木星、サラサラとした柔らかい弦。ホルンやトランペットは強く伸びやかに演奏しています。シンバルは強烈です。柔らかくうっとりするような中間部。まさに歌い上げる感じの演奏です。ライブらしい思い切ったテンポの動きもありとても良いです。
土星、密度の薄いフルート。椅子がきしむ音が聞えます。テヌートで演奏されるトランペット。トロンボーンが物凄い強奏です。チューブラベルは金属で叩いたような音です。弦や木管は色彩感が乏しいですが、トランペットとトロンボーンは凄いパワーです。
天王星、軽い金管とティンパニ。ゆっくりと始まるファゴット。ティンパニのリズムは明快です。この曲では金管の咆哮は他の曲ほどではありませんでした。
海王星、速めのテンポで生き生きとした表情です。チェレスタはあまり聞えません。遠くから柔らかい女声合唱。遠ざかって消えて行きます。

ライブの制約の中での録音で、バランスが悪いところもありましたが、ニューヨークpoのパワーの凄さは伝わって来ました。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★
火星、大きくクレッシェンド、デクレッシェンドする冒頭。トゥッティのパワー感はさすがベルリンpoです。大きく歌う表現で積極的です。クライマックスでトロンボーンが飛び抜けてきたりせず、重心の低い重い響きです。
金星、細身のホルンのソロが冷たい宇宙を感じさせます。ヴァイオリンも細く繊細で美しいです。弦の合奏もとても美しい。宇宙の暗闇もとても良く表現しいます。
水星、速めのテンポですが、整然としています。とても美しい演奏です。
木星、一転して活動的な演奏になりました。大きくテンポを落とすところもありました。中間部の有名な旋律はテンポも速く少し雑な感じがしました。ダイミックです。
土星、この曲でも宇宙の暗闇の中にいる感じがあります。美しいトロンボーン。響きはドイツのオケらしい腰の重さがあります。突然強く入ってくるトランペット。トロンボーンも強烈です。もっと枯れた雰囲気があっても良いような気もしますが。パイプオルガンの重低音がずしりと響きます。
天王星、暖かい響きのブラスセクション。ゆっくりのティンパニ。やはり腰が重いです。金管などはもっとシャープに立ち上がって欲しいと思うのですが。こういった曲はやはりイギリスやアメリカのオケの方が合っているような気がします。
海王星、この曲も宇宙の暗さや凍てつくような寒さを感じさる演奏です。ハープが海王星から見える星を表しているようにきらめきます。遠くから響いてくるような女声合唱がはるかかなたの星を表現しているようです。
ヴァイオリンの繊細な美しさはありましたが、腰が重くシャープな立ち上が無く作品に合っていなかったように感じました。

サー・コリン・デイヴィス/ロンドン交響楽団

icon★★★
火星、ビート感のある5拍子です。楽器によってマイクからの距離がかなり違うような、ちょっと違和感を感じる録音です。中間部のテンポが遅くなる前の伸ばしがかなり長かった。
もやもやする低域がないので、とても聞きやすいです。ただ、5拍子を刻むスネアの大きさの割りに、他の金管が遠くにいるような感じがします。
速い部分とゆっくりな部分との対比が良い、ゆっくりな部分をかなりテンポを落としているのがライブだなあと感じさせてくれます。
金星、ゆったりと音楽に酔うことができる演奏でなかなか雰囲気があって良いです。
水星、
木星、そつなく上手いのですが、そもそもこの曲をライブで収録しなければいけなかったのか、私には疑問です。ライブを客席で聞く分には、いろんな効果があって良いと思うのですが、この曲の全体を通してライブの燃焼度がどうのこうの言う曲ではないと思うのですが・・・・・・。
それよりも、音響の構造物としての完成度の高さが問題なのではないかと思います。
だとすると、マイクセッティングに制約のあるライブよりもスタジオ録音の方が効果はあったのではないかと思うのは私だけでしょうか。
スタジオ録音のコストの問題もあったのでしょうが・・・・・・。
土星、トロンボーンのアンサンブルが綺麗です。とても遅いテンポで味わい深い演奏です。トランペットの強力な吹き伸ばしに対して、トロンボーンなどの下のブラスが負けています。
このあたりもライブならではかも知れませんね。
天王星、遠くで鳴るシンバルが美しい!なかなか白熱した演奏です。気持ちよく伸びるブラスのロングトーン!
海王星、木管の表情が豊かで弱音ながら動きがたくさん聞き取れます。女声合唱は舞台裏か?遥かかなたのイメージが良く出ています。

ジェイムズ・レヴァイン/シカゴ交響楽団

icon★★☆
火星、コルレーニョの下を演奏している低域が重く厚い。ブラスセクションが気持ちいいくらいに思いっきり鳴りまくります。ちょっと雑に感じる部分はレヴァインが指揮した演奏には必ず付き物のようです。レヴァインの指揮に精緻なものを求めるのはムリなのでしょう。ユーフォニアムは美しいし、その後のトランペットも歯切れの良い演奏です。コントラバスも唸っています。トランペットとスネアが合いません。こんな単純なミスもそのままとは・・・・・。レヴァインが指揮をすると、どこのオケの演奏でも埃っぽい演奏になってしまうのも不思議です。
金星、オケは文句なく上手いのですが、レヴァインはf方向へは音楽を作りますが、p方向へは全然ダメだと思います。静寂感が全くない。静寂感に伴ったピーンと張った冷たい空気感がないのです。
水星、速いテンポ、厚みのあるオケ。特に表情が豊かなわけでもなく、上手いオケの名人芸が淡々と進んで行きます。活発に動くオケはなかなかです。
木星、私はレヴァインとの相性が悪いのか、なぜこの演奏がレコード・アカデミー賞を受賞する演奏なのか理解できません。金管が思いっきり鳴るのはショルティも同じですが、ショルティの演奏はしっかりと制御されているのですが、レヴァインは暴走しているような感じがします。オケが全く抑えることなく豪快に鳴り響くので、色彩感も濃厚なのですが・・・・。
トランペットのブレスもはっきり分かるし、オケのメンバーが指揮者を尊敬して、自分たちのできうる限りの演奏をしようとしているとは、到底思えません。
土星、ここも静寂感は無く、演奏しやすい音量で演奏しているように感じます。金管が伸びやかに鳴る部分は確かに爽快感があるのですが、静かな部分が騒々しいのです。
天王星、伸びやかな金管。マットで詰まったようなティンパニ。絶叫する金管のパワーには圧倒されます。
海王星、ここも騒々しくて、静寂感や張り詰めた冷たい空気感はありません。女声合唱は少し距離があって良い雰囲気です。

金管が豪快に鳴り響くところは爽快感があって良いのですが、弱音も同じように騒々しく静寂感がありません。
私は、レヴァインが世界の一流オケを指揮して、それなりの評価を得ていることが理解できません。
レヴァインがミュンヘンpoの音楽監督のポストを短期間で追われたのは分かるような気がします。チェリビダッケの考えすぎとも思えるくらいの精緻な音楽作りとは正反対。こんなに考えずに指揮をする人がミュンヘンの聴衆に理解されるはずがない。
ミュンヘンpoのメンバーにしてみれば、徹底したリハを要求するチェリダッケに辟易としていただろうから、何も言わないレヴァインは組みし易い相手であったのでしょう。
そういう意味では、ミュンヘンpoのメンバーにもナメられて迎い入れられたのだと思うし、そのことが聴衆の反発を買ったのではないかと想像しています。

Valeriy Platonov/ペルミオペラバレエ劇場管弦楽団

Platonov★★☆
火星、第一ヴァイオリンが4プルトしかなく、かなり編成が小さいので、弦に対して金管が強いです。粘っこい金管の表現。凶暴なトロンボーンの咆哮。5拍子のリズムを刻むトランペットも強いです。
金星、かなり強く入るホルン。艶やかで粘っこいヴァイオリン。編成が小さいこともあって、登場する管楽器がくっきりと浮かび上がり濃厚な色彩になっています。
水星、かなり速いテンポです。ちょっと寂しくなる所もありました。チェレスタはRolandで代用です。
木星、金管が伸ばす音を押すので、ちょっと下品に感じる部分もあります。テンポは大胆に変化します。中間部は速いテンポで少し雑な表現です。
土星、静かな中に旋律が浮かび上がります。音の始末が雑なところが散見されます。金管はかなり強く咆哮します。パイプオルガンは入っていないようです。
天王星、あっさりとした金管。タメが無いのでとてもあっさりとしています。
海王星、女声合唱はあまり距離が離れた感じではありません。

金管が強くて色彩感も濃厚な演奏でしたが、音の扱いが丁寧では無く、特に音の始末で雑な部分があったのが残念でした。
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ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★
火星、波打つようなコル・レーニョ。旋律もとても豊かに歌います。ユーフォニアムとはかなり違うバリバリとした響き。とても良く歌う演奏ですが、録音の古さかダイナミックレンジはあまり広くありません。後のベルリンpoとの録音のようなボッテリとした重さはありません。
金星、まだこの作品が十分に知られていなかった時代の演奏なので、今聴くとかなり個性的な表現です。宇宙の暗く冷たい感じはあまりありません。
水星、かなり速めのテンポで活発な動きの演奏です。ティンパニはあまり強く演奏されず変化があまり表現されません。
木星、控えめで穏やかな演奏ですが、やはり表現は大きいです。速めのテンポでホルンは細い響きです。中間部の弦の旋律はとても豊かに歌います。最後も涼しげな響きでした。
土星、ピーンと張り詰めたような静寂感はありません。温度感もあまり低くありません。ここでもとても大きな表現で積極的です。コントラバスのピィツィカートが強調されたり古いマルチマイクの特徴が出ています。金管が絶叫するような大きな盛り上がりにはなりません。鐘がとても特徴のある薄い鉄板を叩いたような音です。
天王星、響きが薄い金管。ティンパニはウィーンpoの特徴のある音ですが、弱いです。オケは決して全開にはならず、薄い響きです。まだ、作品がこなれていないのか、少し奇妙な部分もあったりします。
海王星、速めのテンポで音量も大きめで始まります。芯が強い女声合唱。漂うようには現れません。少しザラザラとした響きです。

とても積極的な表現の演奏でしたが、作品がこなれていないのか、少し奇妙な演奏になっている部分もありました。
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レオポルド・ストコフスキー/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

ストコフスキー★★
火星、録音年代が古いわりには、リアルなコル・レーニョ。カチッとしていて明快に鳴るオケ。速いテンポではつらつとしています。最後にドラのクレッシェンドがありました。
金星、あまり伸びやかではないホルン。木管は鮮明です。とても鮮度の高い木管ですが、他には特に個性は感じません。
水星、テンポの動きがあったりします。チェレスタがかなり大きく録られています。
木星、少し歪みっぽいですが、締りがあって鮮明な演奏です。タンブリンが入る部分は音を短めに演奏します。中間部はストレートでグイグイと前へ進みます。トランペットがザラザラした音です。
土星、かなりオンマイクで録られている木管。トロンボーンは伸びやかさがありません。速いテンポで進んでいると思ったら突然のブレーキでテンポが遅くなります。金管の上昇はかなり速いテンポで全く粘りません。その後また遅くなります。
天王星、乱暴な金管。速いテンポで攻撃的な印象の演奏です。テンポの動きや独特の表現もあります。
海王星、かなり弱く遠い女声合唱。

ストコフスキーの指揮なので、いろんなことをやってくるかと期待?しましたが、特に目立つことは火星の最後のドラのクレッシェンドぐらいで、後はテンポの動きや間を取らないところぐらいでした。表現もあまり積極的では無く、金管の乱暴な響きなどちょっと期待外れでした。
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Pablo Heras-Casado/デンマーク放送交響楽団

Casado★★
火星、静かに探るように始まりました。詰まったような浅い響きです。クライマックスでテンポを速めますが、トロンボーンは抑え気味で肩透かしです。とにかく奥行き感の無い浅い響きで、魅力がありません。
金星、ふくよかなホルン。色彩感豊かな木管。弦も美しく色彩感が豊かです。アゴーギクを効かせてたっぷりと歌うオーボエ。
水星、活発に弾む演奏ではありませんが、やはり色彩はとても良いです。フルートに独特の表現がありました。
木星、トゥッティになると飽和してしまうように音が詰まってしまう感じでマットな響きになってしまいます。中間部は広々とした空間をイメージさせる演奏でとても良いです。木管がとても生き生きとした表現です。
土星、美しいトロンボーン。トランペットもくっきりと浮かび上がります。ゆっくりとした歩みです。大きな盛り上がりにはなりません。音量を抑えている時はとても美しく濃厚なのですが、トゥッティになるととたんに詰まってしまって伸びやかさが無くなります。
天王星、硬く締まったティンパニ。短く音を切ったファゴット。シロフォンが少し慌てています。オケがスッキリと鳴りきることが無く開放感がありません。
海王星、やはり弱音では濃厚な色彩です。この演奏全体でアンサンブルの乱れは感度かありました。とても表情が豊かです。女声合唱も強めで存在感がありますが、表現力があってとても良いです。

弱音はとても濃厚な色彩で良かったのですが、トゥッティになるととたんに音が詰まったようになって伸びやかさが無くなります。何か開放されない抑圧感があってあまり気持ちよく聞くことが出来ませんでした。
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ネヴィル・マリナー/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon
マリナーといえば、アカデミー室内管弦楽団のイメージなので、このような編成の大きな曲をどのように演奏するのか、あまりイメージできません。
火星、落ち着いたテンポで、冒頭の5拍子の刻みにも強弱をつけて積極的な始まりです。この5拍子の強弱の変化がところどころにあり、旋律よりも5拍子の刻みを中心に音楽が作られているような感じです。
中間部でもティンパニのロールの強弱などもかなり強調されています。アンサンブルの乱れも散見されます。
逆に、旋律のブラスの爆発はありません。終始柔らかい音色で、ちょっと欲求不満になりそうな「火星」です。
金星、コンセルトヘボウの録音にすれば、あまり美しいホールトーンが聞かれない。普段はもっと艶やかで潤いのある響きだと思うのですが、この演奏ではあまり魅力が出ていないです。マリナーはこの大きな編成を掌握しきれていないような感じがします。
水星、速めのテンポです。なんとなく終わってしまった感じでした。
木星、音が短めです。安っぽい音のグロッケン。色彩感はとても豊かです。
土星、テンポ設定も含めて、私にはあまり共感できる演奏ではありません。
天王星、色彩感が豊かですが、やはり音の扱いなど、納得できないところが多いです。
海王星、ゆらゆらと漂うような感覚ではなく、縦乗りのようで、しっくりきません。ちょっと全曲を通して合わなかった感じは否めないです。

レナード・スラットキン/フィルハーモニア管弦楽団

スラットキン
火星、ゆったりとしたテンポですが、ねっとりとはしていません。爽やかな演奏です。イギリスのオケらしくユーフォニアムは美しいです。トゥッティはかなり抑えていて金管の爆発はありません。
金星、ふくよかなホルン。生気に溢れて生き生きとした木管。枯れた弦と色彩感豊かな木管が対照的です。テンポが自由に動いています。
水星、速いテンポですが、活発に動くようなエネルギーは感じません。
木星、ゆっくり目の演奏ですが、何か小さくまとまったような演奏で、スケール感がありません。中間部の弦も大事に置きに行ったような小さい演奏で、弓をいっぱいに使ったボウイングをしている感じがありません。
土星、とてもまとまりが良くて、飛びぬけてくる音は一切ありません。手堅くまとめている分、小さい演奏になってしまっていて、演奏に活気がありません。
天王星、とても軽い金管とティンパニ。スラットキンが何を主張したいのか全く分かりません。
海王星、透明感が高い木管。児童合唱は遠いです。

主張らしい主張の無い演奏で、小さくまとまったスケールの小さい演奏で、聞いているのが退屈でした。
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