カテゴリー: 管弦楽曲

ヴァレーズ イオニザシオン

エドガー・ヴァレーズの「イオニザシオン(Ionisation)」は、1931年に発表された、現代音楽において革命的な意味を持つ打楽器アンサンブルのための作品です。この曲は、伝統的な旋律や和声から離れ、純粋に「音のリズムと音色」に焦点を当てたものとして知られています。作曲当時のヴァレーズは、音楽において「音響の科学的探究」を目指し、リズムや音の物理的な特性に基づいた表現を追求していました。「イオニザシオン」はその探求の成果であり、彼の代表作のひとつとされています。

「イオニザシオン」の特徴と楽器構成

  1. 打楽器アンサンブルによる革新的な編成 この曲は、13人の演奏者によって演奏され、各演奏者が1つから複数の打楽器を担当します。楽器編成にはティンパニ、バスドラム、スネアドラム、シンバル、ウッドブロック、カウベル、タンブリン、トライアングルなど、多様な打楽器が含まれており、シロフォンやピアノの低音域も使われます。また、サイレンやライオンズ・ロア(ライオンの鳴き声を模した効果音)など、通常のオーケストラにはない特殊な楽器も使用されており、これが独特な音響空間を生み出しています。
  2. リズムと音色の探求 「イオニザシオン」の最大の特徴は、リズムと音色を組み合わせた音響の探求にあります。曲はメロディや調性から解放され、純粋にリズムの構造が音楽の流れを決定しています。リズムは非常に複雑で、多層的なパターンが交錯し、まるで複数の音の粒子がぶつかり合っているかのように聞こえます。このリズムの組み合わせと打楽器の音色の違いが、独自の音響的な宇宙を作り出しています。
  3. タイトルの意味と音響イメージ タイトル「イオニザシオン」は、電離(イオン化)を意味し、物理的な過程に由来しています。ヴァレーズは、音楽がエネルギーや力の流れを表現できると考え、この曲のタイトルには「音の粒子が分解し、再構成されるプロセス」を暗示しています。つまり、「音の電離」が行われるイメージを反映させているのです。こうしたコンセプトは当時の音楽において非常に斬新で、科学やテクノロジーから影響を受けたものでした。
  4. 空間と動きの感覚 「イオニザシオン」は、音が空間内を移動し、様々な方向から響いてくるような立体的な音響効果を生み出しています。この音の動きや空間的な広がりは、ヴァレーズの作品の特徴の一つであり、彼が「音の彫刻」とも呼ぶ感覚が具現化されています。楽器が重ねられたり、急激に消えたりすることで、音の流動性と動的な感覚が強調され、音楽の枠を超えた体験を提供しています。

全体の印象と影響

「イオニザシオン」は、打楽器のみを用いた最初の大規模な現代音楽作品の一つとされ、20世紀の音楽における重要なマイルストーンとなりました。音楽におけるリズムと音色の探求を新たな次元に引き上げ、後の作曲家に大きな影響を与えました。特にリズムに焦点を当てた構成や、音の物理的特性への意識は、ミニマル音楽や電子音楽、さらには実験音楽など、様々なジャンルにインスピレーションを与え続けています。

そのため、「イオニザシオン」は、音楽の表現がメロディや和声の枠を超え、音そのものの力を探求するという新しい可能性を示した作品と評価されています。

使用楽器
Player 1 : Chinese Cymbal , Orchestral Bass Drum , Tamtam(High) , Cow Bell
Player 2 : 2 Tamtam(High/Low) , Gong , Cow Bell
Player 3 : Bongo , Tenor Drum , 2 Orchestral Bass Drum
Player 4 : Tenor Drum , Military Drum
Player 5 : Siren(High) , Lion’s Roar
Player 6 : Siren(Low) , Slap-stick , Guiro
Player 7 : 3 Wood Block , Triangle , Claves
Player 8 : Snare Drum , 2 Maracas(High/Low)
Player 9 : Snare Drum , Suspended Cymbal , Tarole
Player 10 : Pair of Cymbals , Sleigh Bells , Chimes
Player 11 : Guiro , Castanets , Glockenspiel(Keyboard Style with Resonators)
Player 12 : Tambourine , 2 Anvil , Tamtam(Very Deep)
Player 13 : Slap-stick , Triangle , Sleigh Bells , Piano

ピエール・ブーレーズ/ニューヨーク・フィルハーモニック

★★★★★

だるい感じの冒頭。広い空間に音が広がります。大太鼓がクレッシェンドして、静かに演奏される主題。後ろでボンゴが残響を伴って響きます。Slap-stickがパチッと強く響きます。タロール(胴が浅く径も小さいスネア)は抜けが良く軽い響きです。Military Drumは割と引き締まった響きです。アクセントはどのスネアも強めです。Lion’s Roarはギーッとなります。サイレンは極端に小さく町の遠くで鳴っている感じです。打音は一つ一つが立っていて、細かい楽器もとても鮮明です。冷たい空気感の中に音が広がって行きます。小さい音が空間に広がって美しいです。衝撃と共に崩れ落ちて、細かい打楽器が動き回ります。

とても冷静で全ての音を聞かせるような情報量の多い演奏で、空間も感じさせる良い演奏でした。

ケント・ナガノ/フランス国立管弦楽団

ニガノ★★★★☆

暗い中に静かに鐘や2種類の低い響きサイレンが鳴る怪しい雰囲気。ライオンの唸り声の後に大きくクレッシェンドした後にスネアのリズムが出現します。その後ろでボンゴがリズムを刻みます。軽いアクセント。次にタロール(胴が浅く径も小さいスネア)が同じ主題を演奏します。抜けの良い音ですが、タロールらしいハイピッチではありませんしスネアが緩く他の大きいスネアとのチューニングの方向性が違います。次にミリタリードラムが同じ主題を演奏します。こちらは重い音で、楽器の色彩感が強く出ています。後ろで様々な楽器が動いています。金属系の打楽器とサイレンが鳴ります。どの楽器も強く出て来ることは無く、自然なバランスで演奏されている分、色彩感は乏しいように感じます。チューブラベルやピアノも入り、ライオンの唸り声も入って、破滅的な雰囲気になって曲は終わります。

この曲は、音が空間にどのように広がるかや色彩感や空気感を楽しむ作品ではないかと思います。その意味では少し魅力に乏しいように感じました。

ストラスブール・パーカッション・グループ

ストラスブール・パーカッション・グループ★★★★☆

猫が鳴くような異様な響きのサイレンが奥から響き、他の打楽器は前にいます。軽快な主題ですが、少し緩くミュートしているような響きです。サイレンの奥行き感はとても良いです。タロール(胴が浅く径も小さいスネア)は抜けの良い響きですが、ハイピッチでは無いですが、アクセントはとても強くパシッと決まります。ミリタリードラムは深い胴でドドドとマットな響きです。様々な楽器が前に出てきてくっきりと浮かび上がりまがLion’s Roarは少し陰に隠れています。サイレンが強めでとても異様な雰囲気を醸し出します。最後は壊滅的で崩れ落ちるような雰囲気よりもとても力強い演奏でした。静かな部分の音が拡散していく部分があまり感じ取れず、比較的強い音が支配的な演奏でした。13人で演奏するように書かれた曲を6人で演奏するように編曲して演奏しているとのことですが、特に技術的に無理をしているような部分は全く感じませんでした。

マルチモノのような録音で、一つ一つの楽器は鮮明に捉えられていますが、空間をあまり感じることが出来ませんでした。

ズービン・メータ/ロスアンジェルス・パーカッション・アンサンブル

メータ★★★★

とても浅い音場感。サイレンも含めて色んな楽器が登場します。多くの楽器が前に来ます。速いテンポで、軽快に演奏される主題。Slap-stickがパチーンと強く響きます。Lion’s Roarはゴリゴリとした響き。タロール(胴が浅く径も小さいスネア)は、とても軽い良い響きです。Military Drum少し緩いチューニングであまり重くありません。テンポは速く、強弱の変化も明快で、活発な演奏です。サイレンもあまり奥まってはおらず、浅くマットです。とても簡単にやってのけた感じで、刺激も無く流れて行きました。最後は、衝撃はありますが、崩れ落ちるような雰囲気ではありませんでした。

躍動感があって、元気な演奏でしたが、奥行き感や空間に音が広がる感じが無く、あまり音を楽しめませんでした。

ピエール・ブーレーズ/シカゴ交響楽団

ブーレーズ★★★★

とても静かですが、広がりのある音場感。金属系打楽器が鳴って、大太鼓はあまり聞こえず、主題に入ります。軽い主題。後ろで小さくボンゴが響きますがあまり残響は感じません。とても軽めのアクセント。タロール(胴が浅く径も小さいスネア)は径が小さいと分かる響きです。Military Drumはあまりはっきりと違いが分かりませんでした。情報量はとても多いです。サイレンはニューヨークpoとの演奏をさらに弱くしている感じで、ほとんど聞こえません。最後は絶望的な破壊を感じる衝撃です。

Military Drumの胴の深さや重さを感じなかったのは残念でした。また、サイレンはいくら何でも抑え過ぎだと思います。

スザンナ・マルッキ/アンサンブル・アンテルコンタンポラン

スザンナ・マルッキ★★★

スネアoffのロールが大きい冒頭。サイレンが響き。あまり大きくクレッシェンドせずに主題に入ります。少し胴鳴りがしているようなスネアです。軽いアクセント。Lion’s Roarゴーッと鳴ります。タロール(胴が浅く径も小さいスネア)は、スネアは緩めですが、高い響きです。Military Drumは胴の深さはあまり感じませんがブツブツとした深い胴のスネア独特の響きです。サイレンはかなり弱めです。ライヴのせいか、弱音の静寂感があまりありません。最後もあまり大きな衝撃では無く、全体に角が無く、自然に流れるような演奏でした。

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The Oberlin Percussion Group

★★★

金物打楽器が大きめで、サイレンも高い音です。あまり大きくクレッシェンドせずに主題に入ります。ゆっくりめで、とても大きく強弱を付けて演奏します。ボンゴも大きめです。Tarole(胴が浅く径も小さいスネア)は引き締まっています。トゥッティでテンポが遅くなったり変化も大きい演奏です。全体に騒々しい感じがあります。最後の衝撃はあまり大きくなし、ここまでの騒々しさとは違った雰囲気です。静かな空間に音が広がって行く雰囲気では無く、自分が思っているイメージとは違いましたが、こんな演奏もあるんだと感じる演奏でした。

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アマディンダ・パーカッション・グループ、モンド・クァルテット、ブダペスト・リスト音楽院の学生

★★★

豊かな響きです。低いサイレン。色んな楽器が鮮明です。あまり大きくクレッシェンドせずに主題にはいります。速めのテンポで胴鳴りしているスネア。Tarole(胴が浅く径も小さいスネア)がかなり強く入ります。Military Drumも最初のスネアを使っています。リムショットなどもあり、あまり聞いたことの無い音が聞こえます。「何だこりゃ」というような表情の客席が面白いです。最後はあまり大きな衝撃ではありませんでした。

かなり色んな音が聞こえる演奏でしたが、起伏はあまり大きくありませんでした。

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パスカル・ロフェ/フランス放送フィルハーモニー管弦楽団とフランス国立管弦楽団の打楽器奏者

パスカル・ロフェ★★

硬い響きのサイレン。サスペンドシンバルも大きめ。あまりクレッシェンドせずに主題に入ります。緩めのスネア。アクセントの一撃は強めです。Tarole(胴が浅く径も小さいスネア)は詰まった響きです。Military Drumは胴鳴りがしているような響きです。全体で演奏した時のスネアの緩さで全体が緩い感じになります。録音もデッドなので、あまり空間や奥行き感を感じません。ピアノの衝撃はあまり強くありませんでした。

硬いサイレンと緩いスネア。どちらも好きな響きではありませんでした。

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パリ・パーカッション・グループ

パリ・パーカッション・グループ

低いサイレンが突然大きくなります。Lion’s Roarが動物の唸り声らしい響きです。あまり大きくクレッシェンドせずに主題に入ります。かなり深く緩いスネア。Tarole(胴が浅く径も小さいスネア)も緩いですが、先の深い胴のスネアとの対比ば良く出来ています。Military Drumも最初のスネアを使っています。サイレンは程よいバランスですが高低差があまりありません。最後の衝撃はあまり強く無く、色彩も音量の変化もあまり無く、音のオブジェとしては、あまり一つ一つの音が際立っていないような感じがしました。

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管弦楽曲名盤試聴記

チャイコフスキー 序曲「1812年」 ムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」 リムスキー=コルサコフ 「スペイン奇想曲」 リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」 R・シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 R・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」 シベリウス 交響詩「フィンランディア」 ストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」 ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」 レスピーギ 交響詩「ローマの噴水」 ホルスト 組曲「惑星」 ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編) レスピーギ 交響詩「ローマの松」 コダーイ 組曲「ハーリ・ヤーノシュ」 レスピーギ 交響詩「ローマの祭り」

チャイコフスキー 序曲「1812年」

チャイコフスキーの序曲「1812年」は、1880年に作曲された壮大な作品で、ナポレオン率いるフランス軍がロシアに侵攻し、ロシア軍がモスクワを防衛した「祖国戦争」を描いた音楽です。この曲はロシアの勝利を記念して書かれ、モスクワでの救世主ハリストス大聖堂の落成式で演奏されることを目的としていました。演奏に大砲が使われるなど、特別な演出が取り入れられていることでも有名で、今では祝祭的な場面や花火大会などで演奏される人気の曲です。

曲の構成と特徴

「1812年」は、戦争の緊張感やロシアの勝利への歓喜がドラマチックに描かれ、ロシア民謡やフランス国歌などを取り入れた印象的な構成となっています。

  1. 導入部
    静かな序奏で始まり、ロシア正教の聖歌「主よ、人々の救いを」を引用しています。この聖歌は、侵略者からの守護を祈るロシア国民の祈りを象徴しており、悲壮感と敬虔な雰囲気が漂います。静かで荘厳な導入部から、次第に戦いの緊張が高まっていきます。
  2. 戦いの描写
    導入部が終わると、フランス軍の侵攻を表現する緊張感あふれるテーマが現れます。ここでは、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」が引用され、フランス軍の進軍と勢いを象徴しています。「ラ・マルセイエーズ」が力強く演奏される一方で、ロシアの旋律が不安定に絡み合い、激しい戦闘が展開されるような緊迫感が感じられます。
  3. ロシア軍の反撃と勝利
    フランスの進撃に対するロシアの抵抗が次第に強まり、やがてフランス軍が退却する様子が描かれます。この場面では、ロシアの民謡や伝統的なメロディが力強く響き、祖国を守ろうとするロシア軍の勇ましさが表現されています。
  4. クライマックスと祝祭
    終盤にはロシアの勝利を祝う壮大なクライマックスが登場し、再び聖歌「主よ、人々の救いを」が勝利のテーマとして力強く演奏されます。ここで大砲が鳴り響き、鐘が鳴り渡る演出が加わり、戦争の勝利と平和の訪れを華々しく祝う雰囲気が最高潮に達します。この迫力あるフィナーレでは、ロシアの勝利と平和への祈りが力強く響き渡ります。

音楽的意義と評価

序曲「1812年」は、チャイコフスキーの愛国心と、ロシアの歴史や文化に対する深い敬意が込められた作品です。戦争の緊張感と勝利の歓喜を壮大に表現し、聴く者に強い印象を与えます。この曲は、特に野外演奏や祝典で人気があり、実際の大砲の発射や教会の鐘の音を取り入れることで、視覚と聴覚の両方で楽しめるエンターテインメント性の高い作品となっています。

チャイコフスキー自身はこの作品に対して少し距離を置いていたとされ、「外向きの劇的表現に偏った作品」として純粋な芸術性を感じにくいと考えていたようです。しかし、その劇的で圧倒的なスケール感と華やかさから、今ではチャイコフスキーの代表作の一つとされ、多くの人々に愛されています。

たいこ叩きのチャイコフスキー 序曲「1812年」名盤試聴記

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
Largo速いテンポですが、ドン・コサック合唱団の合唱がナポレオン軍が迫りくる悲壮感を上手く表現しています。弦だけの演奏よりも盛り上がりが凄く振幅の大きい表現です。このような小品に対するカラヤンの演出力はさすがです。オケが入ってからはテンポを速めにとってグイグイと音楽を進めて行きます。分厚い響きです。Andanteスネアはすごく締まった音で良いです。速めのテンポで音楽が弛緩することなく、とても良く歌い聞き手を惹きつけます。Allegro giusto戦闘部分もすごくテンポが速いですが、飽きさせることなく音楽を聴かせてくれます。マットで近い金管が大迫力です。とても良く歌う第二主題。ロシア民謡も歌心いっぱいです。二度目の戦闘部分も速いテンポで一気に進みます。響きが分厚く次から次からと泉のように音楽が湧き出してくるようです。シンバルがとても良い音で鳴っています。弱音で演奏されるホルンのラ・マルセイエーズが響きを伴ってとても美しいです。金管が近くなったり遠くなったりするのはマルチマイクのミキシングのせいか?いかにも作り物っぽい大砲です。とにかくテンポが速い!弦が駆け降りるメロディを演奏する前に大きく加速とクレッシェンドをしました。駆け降りる弦もとても厚みがあります。Largoパイプオルガンでも鳴っているかのような鐘の響き。オケのフルパワーを印象付けるようにシンバルが埋もれるように弱く叩いています。Allegro vivaceやはり作り物っぽい大砲です。スネアのオープンロールが美しいです。

1812年を一気に聴かせてくれました。表現力豊かな演奏で分厚い響きでしかもオケが抜群に上手い!ただ、録音が古いためにミキシングでいじり過ぎて金管が近くなったり遠くなったりするところがが唯一の欠点か?

サー・ゲオルク・ショルティ/シカゴ交響楽団

icon★★★★★
Largoゆっくりとしたテンポで感情のこもった開始です。バレンボイムとの演奏よりも息が合っているようです。不安げな雰囲気も表現されています。まだ余裕を残しているのでしょうが、十分に鳴る金管です。Andante締まったスネアが良い音です。後のホルンは締まった響きです。Allegro giusto戦闘場面はテンポが速いです。金管と弦はバランスが取れています。ロシア民謡は速いテンポのままさらりと過ぎて行きました。二度目の戦闘場面は不穏な空気から始まります。金管は抑え気味です。速めのテンポですが、良く歌う第二主題。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは明るく締まった響きです。これもリアル感のある大砲でオケを覆い隠すぐらいの音量でした。駆け下りるような音形でもあまりエネルギー感は落ちずにそのままの勢いでした。Largo鐘の音がかなり強調されています。オケは少し奥に引っ込んでいるような感じです。トランペットのハイトーンが突き抜けて来ます。Allegro vivaceロシア国歌はトロンボーン全開ですが、大砲がかなり強いバランスで鳴っています。終わりにかけて少しテンポを速めて最後にぐっとテンポを落として終りました。

充実したオケの響き。たっぷりと歌う部分とあっさりと過ぎて行く部分のコントラストもありました。大砲や鐘などの鳴り物を強調した録音も祝典的な雰囲気を盛り上げています。それにしてもシカゴsoのパワー全開は凄いです。

ムスティラフ・ロストロポーヴィチ/バイエルン放送交響楽団

ロストロポーヴィチ★★★★★
Largo息が長くたっぷりと歌います。暖かい木管。オーボエもとても良く歌います。スケールの大きな表現の金管。Andanteとても音量を抑えたスネア。ゆっくり目のテンポでギャロップのような歩みです。Allegro giustoここでもゆっくりとしたテンポで演奏します。サラッとした爽やかな響きです。この盛り上がりの終盤では熱い響きになりました。音量を抑えた第二主題ですが、ここでも感情のこもった歌を聞かせます。ロシア民謡も歌っています。二度目の戦闘シーンの冒頭はあまり不穏な空気はありません。金管はかなり余裕を残しています。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは浅く明るい響きです。オケは全開になります。駆け下りるような音形へ向けてクレッシェンドがあり、弦だけになると少し音量が落ちました。Largoゆったりとしたテンポで充実した分厚い響きです。鐘は柔らかく遠くで鳴っているような感じです。Allegro vivace大砲は実射のようです。堂々としたテンポで終わりました。

ゆったりとしたテンポで豊かに歌い、トゥッティでは堂々とした分厚い響きの熱演でした。あまり期待していなかったのですが、なかなかの演奏でした。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

スヴェトラーノフ★★★★★
Largoゆっくりとしたテンポでたっぷりと歌う弦ですが、少し高域が持ち上がっているような録音のように感じます。起伏の大きい第一主題。頭の音を強いアクセントで演奏するヴァイオリン。ギンギンに鳴る金管。Andante歯切れのいい木管。メロディの最後の音を強く演奏するホルン。Allegro giusto物凄く激しい演奏です。テンポも速い。いかにも戦闘場面を描写しているような感じです。金管もかなり激しく演奏しています。とても感情を込めて歌う第二主題。ねっとりとした表現です。速いテンポのロシア民謡。二度目の戦闘シーンは不穏な空気に包まれます。そして、とても動きのあるオケ。金管の咆哮。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズはふくよかで明るい響きです。そして全開になるオケ。大砲は大太鼓で代用しているようであまり大きくは聞こえません。駆け下りるような音形の手前で一旦音量を落としてクレッシェンドしました。そのままの勢いで弦の駆け下りる音形にはいります。Largo明るく全開のトランペット。鐘はカリヨンのようにはっきりとした音で一音一音がはっきりしています。Allegro vivaceグリンカの歌劇「イワン・スサーニン」に差し替えられています。

スヴェトラーノフらして力強い演奏でした。とても表現力豊かで戦闘場面の描写もとても良かったと思います。第二主題の歌も心のこもったものでした。大砲の音はあまり聞こえなくて、効果をあまり狙わずに正面から作品と対峙したもののようです。高域が持ち上がった録音の効果で激しさが増して聞こえたのかも知れません。
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ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団

ゲルギエフ★★★★★
Largoゆっくりと柔らかい音色で切々と語りかけて来ます。金管も柔らかい響きで深みがあります。Andante大きめの音量で演奏される木管とホルン。弦が入るとホルンは弱くなります。Allegro giusto弱い音から始まり、すぐにガツガツと刻む弦が登場します。厚みのあるホルン。トランペットがマルカードぎみに演奏しました。シンバルが長い尾を引いて美しく響きます。第二主題はテンポの揺れもあって豊かに歌います。厚みのある響きです。ロシア民謡はゆっくりとしたテンポですがあっさりと演奏しています。二度目の戦闘シーンは落ち着きのないザワザワとした胸騒ぎのような表現から始まります。響きも分厚く金管もかなり強く吹いています。二度目のロシア民謡は速いテンポでした。弱音で演奏されるホルンのラ・マルセイエーズはふくよかでとても柔らかい響きでした。全開になるオケ。大砲はあまり迫力はありませんでした。駆け下りる音形に向かってクレッシェンドとアッチェレランドで弦の駆け下りる音形に突入しました。弦だけになっても音量は落ちません。Largoトランペットの咆哮はかなりです。鐘はカチカチと響くカリヨンと大きく低い響きのものが組み合わさっています。Allegro vivace賑やかに堂々と終わりました。

分厚い響きと豊かな表現で、強弱の振幅も大きな演奏でした。マリインスキーのオケがこれだけ分厚い響きの演奏をすることに驚きました。この作品は特に戦闘シーンのオーケストレーションが薄いと思うので、この部分を厚く聞かせる演奏はなかなか良いと思います。
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レオポルド・ストコフスキー/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ストコフスキー★★★★★
Largo冒頭からいきなりストコフスキー節です。テンポや強弱が大きく変化します。テンポが遅くなって引いて行く表現がとても良いです。金管はかなり強く演奏します。Andanteほとんど木管だけが聞こえます。弦が入って木管が抜けるとようやくホルンが聞こえます。突然のホルンの咆哮。Allegro giustoゆっくりとしたテンポですが、アクセントを強くしっかりと演奏します。低音楽器の動きも分かり響きの薄さはあまり感じません。金管はかなり強く演奏しています。揺れるように大きく歌う第二主題。とても遅いテンポですが、飽きさせずに聞かせます。ロシア民謡もゆっくりとしたテンポで、少し寂しさを感じさせる表現です。二度目の戦闘シーンは一回目よりもテンポを速めています。弦が積極的な表現をしています。弱音で演奏されるホルンのラ・マルセイエーズはミュートしているようです。大砲は人工的な音でした。少しクレッシェンドとアッチェレラントして駆け下りるような音形に入りました。Largoは入りは遅かったのですが、すぐに少しテンポが速くなりました。鐘はカラカラと賑やかに鳴っています。Allegro vivaceロシア国歌は合唱になります。途中でオケがフェード・インして来ます。最後は鐘だけが残ってフェード・アウトして終わります。

この曲でもストコフスキー節全開でした。交響曲などでこの表現をされると途中で辟易することもありますが、このような曲なら抵抗なく聞くことができます。大きな表現や仕掛けも面白く聞けるものでした。オケの響きも低域がしっかりと支えているもので厚みがありました。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:序曲「1812年」の名盤を試聴したレビュー

チャイコフスキー 序曲「1812年」2

たいこ叩きのチャイコフスキー 序曲「1812年」名盤試聴記

リッカルド・ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団

ムーティ★★★★☆
ゆっくりとしたテンポでたっぷりと歌うLargo。一抹の寂しさを感じさせる演奏は迫りくるナポレオン軍に対する恐れを表現しているのでしょうか。トロンボーンは思いっきり強く入って来ます。Andanteでは激しく吹かれるホルン。Allegro giusto金管の後ろで演奏される弦の嵐のような激しさや厚みがありません。金管は良く鳴っています。第二主題は優雅に美しく歌われます。ロシア民謡風の旋律は泥臭い表現でした。大太鼓は力のある響きですが、シンバルは貧弱です。実射をミキシングしたような大砲の音はなかなかリアルでした。Largo輝かしい金管と壮麗に鳴り響く鐘の音がとても良いです。Allegro vivace力強くロシア国家が吹奏されて終わりました。

充実したフィラデルフィアサウンドで豪華な演奏でした。ただ、弦の響きが若干薄かったのが唯一残念なところでした。
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ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

メータ★★★★☆
Largo大きな呼吸でテンポも動いて歌います。速いテンポで軽いトロンボーン。Andante軽快な木管。ホルンはほとんど強くなりませんでした。Allegro giusto柔らかい弦。あまりガリガリとアクセントを付けた演奏はしません。ここでも金管は軽く、弦とのバランスも良いです。第二主題もとても良く歌います。ロシア民謡はあっさりとした表現でした。二回目の戦闘シーンも弦の表現はとても豊かです。金管はここでも軽めの演奏です。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズはゆっくり目のテンポでふくよかで明るい響きです。金管全開で大砲は左右から大きく響きます。駆け下りるような音形にはいってもほとんど音量が落ちずにそのままの勢いでした。Largo柔らかい金管と豊かに響く鐘。弦が大きく強弱の変化を付けて入ります。Allegro vivaceロシア国歌も力強い演奏です。

この当時のメータの演奏を象徴するような歌に溢れた演奏でした。オケは全開になることは無く、最後まで余裕のある演奏でしたが、オケの響きが僅かに薄かったのが唯一気になる点でした。
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小澤 征爾/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

小澤★★★★☆
Largo広がりがあり豊かな弦の響きです。速めのテンポですがとても感情のこもった歌です。抑えたトロンボーン。ホルンやトランペットは普通に強いです。Andante軽快な弦。スネアはあま聞こえません。Allegro giustoガツガツとエッジを立てて強くアクセントを演奏する弦。残響を伴って美しいトランペット。第二主題もテンポは速いですが、豊かに歌っています。二回目の戦闘シーン冒頭は不穏な空気が表現されます。金管は全開にはなりません。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは明るく締まった響きです。大砲は遠くから響いて来ます。駆け下りるような音形に向けて大きくクレッシェンドしました。Largoも速いテンポです。カランカランと鳴る鐘。Allegro vivaceバランスの良いオケの響きで余裕のある美しい演奏でした。大砲は遠くで鳴る花火のような音でした。

速いテンポで、常に余裕を残して美しい響きで最後まで演奏しました。弱音部分では豊かな歌もありました。ただ、この作品にストレス解消を求める人には欲求不満になるかも知れません。
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ズービン・メータ/フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団

メータ★★★★☆
Largo合唱から始まります。あっさりとした表現でテンポも速めです。ティンパニが入るとホルンが咆哮します。ヴァイオリンが強調された表現です。金管は軽く演奏しています。Andanteヴァイオリンが豊かに歌います。Allegro giustoここでもテンポは速めで楽器の動きが明快です。弦の動きは激しいですが、金管は軽く演奏しています。第二主題は川の流れのようにとうとうと歌います。ロシア民謡でも合唱が入ります。この合唱はなかなか趣きがあります。二回目の戦闘シーンも弦は激しく演奏しますが、金管はそれほど激しくはありません。弱音で演奏されるホルンのラ・マルセイエーズは少し硬めの響きです。大砲は実射なのか火の手が上がります。駆け下りるような音形に向かってクレッシェンドしました。Largo合唱も加わって盛大な盛り上がりです。Allegro vivaceバンダと合唱も加わって全開です。

合唱やバンダも加わってお祝いムード満点の演奏でした。野外コンサートなので、美しい響きはあまり感じられませんでしたが、聴衆を盛り上げるにはとても効果的な演奏でした。
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ダニエル・バレンボイム/シカゴ交響楽団

icon★★★★
Largo割と速めのテンポの冒頭で艶やかな弦でとても良く歌います。ゆったりとしたオーボエ。余裕を残した金管ですが、十分に鳴っています。Andanteスネアに続くホルンは締まった音です。Allegro giustoゆっくりとしたテンポでガツガツと刻む弦。金管は余裕の演奏です。バックの弦は少し薄い響きです。ロシア民謡はゆったりとしたテンポで感情を込めて十分に歌われます。二度目の戦闘シーンもゆったりとしたテンポです。トロンボーンの食いつきが若干早いような気がします。金管は柔らかく伸び伸びと鳴り響きます。弱音のラ・マルセイエーズは引き締まった響きです。全開のパワーはさすがです。大砲は実射を別録りしたものを合成したものか。かなり生々しい音でした。駆け下りるような音形は若干薄い響きになります。Largo充実した金管の見事な響きです。鐘の響きは硬質です。Allegro vivaceロシア国歌と高音楽器が若干ズレますがとても良く鳴り響く演奏は気持ちの良いものです。

全開時の弦の響きの薄さやアンサンブルのズレなどはありましたが、シカゴsoの全開パワーを十分味わえる演奏でした。

ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

icon★★★★
Largoすごく歌い込まれた冒頭です。アゴーギクも効かせてテンポが動きます。オーボエが入るむところからのテンポは遅いです。金管の咆哮も凄いです。Andanteスネアは遠い位置にいます。可愛い表現の木管。美しく歌う弦。Allegro giustoゆっくりとしたテンポですが、あまりガツガツと強いエッジのある演奏ではありません。金管はかなり頑張ります。それでも純音楽としての節度ある美しい演奏です。控え目で奥ゆかしい第二主題。ロシア民謡も歌います。民謡が川の流れのようにとうとうと歌われます。二度目の戦闘シーンもゆっくりとしたテンポです。荒れ狂うような演奏にはならず整然とした美しい演奏です。あっさりとした表現の第二主題。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズはふくよかで柔らかい響きです。大砲はありません。金管の伸びやかな音が印象的でした。トゥッティのパワー感は凄いです。駆け下りるような音形も大きくエネルギー感が落ちることはありませんでした。Largo輝かしい金管の伸びやかで美しい響きは見事です。Allegro vivaceロシア国歌に合わせて大砲が入りました。堂々としたテンポのまま終わりました。

豪華絢爛で堂々とした1812年でした。純音楽としての完成度も高いと思います。

アンタル・ドラティ/ミネアポリス交響楽団

ドラティ★★★★
Largoかなりのオンマイクのようで生々しい音です。切々と訴えかけてくる弦。表情豊かな演奏です。オーボエも生々しいですがかなりデッドな録音です。ベルの中にマイクを突っ込んだようなトロンボーン。Andanteスネアの粒立ちもはっきりしています。Allegro giusto弦の人数が少ないような感じに響きます。とてもデッドなので金管の音もリアルなのですが、編成が小さく感じてしまいます。第二主題は残響が少ないのでちょっと痛い感じがしますが良く歌います。ロシア民謡はテンポを少し落としています。二度目の戦闘シーンは速めのテンポで活発な表現です。打楽器も炸裂します。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは明るく勇壮です。オケも全開、大砲も強烈に炸裂します。駆け下りるような音形では少し音量が落ちます。Largoオケも全開ですが、鐘も盛大で豪華に鳴り響きます。Allegro vivace物凄く強烈な大砲です。

かなりのオンマイクでデッドな録音だったので、オケの編成が小さく感じました。でもリアルな音はなかなか聞き応えのあるものでした。強烈な大砲や豪快に鳴り響く鐘など、この当時の録音としては最先端のものだったのでしょう。演奏もクライマックスでの全開の迫力がとても良かったと思います。
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マーク・エルダー/ハレ管弦楽団

エルダー★★★★
近い位置で伸びやかな弦。あまり大きな起伏の無い第一主題。最初の戦闘シーンでも金管などは近く、かなり思い切って咆哮します。ロシア民謡風の主題にも工夫がみられて独特の表現です。続く激しい部分も積極的で前のめりになります。鐘が鳴らされるLargofは輝かしい充実した響きです。

かなり近接したオケの音場感の録音でした。思い切った表現や積極的に前へ進むような部分もあり、なかなか良い演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:序曲「1812年」の名盤を試聴したレビュー

チャイコフスキー 序曲「1812年」3

たいこ叩きのチャイコフスキー 序曲「1812年」名盤試聴記

シャルル・デュトワ/モントリオール管弦楽団

icon★★★☆
豊かなホールの響きを伴って伸びやかな弦の演奏です。
落ち着いたテンポで音楽が進みます。ブラスセクションの余裕のある響きも心地よい。
スネアの締まりのある良い音です。続くホルンも豊かな響きです。
大太鼓の音がほとんど聞こえません。スッキリとした演奏ですが、響きに厚みが感じられません。もっとロシア音楽的な怒涛の響きがあった方が良いと思いますが、洗練された美しい響きが身上のデュトワとモントリオールsoにはムリな要求でしょうか。
弦楽器と管楽器のバランスがしっかり取られていて、金管が暴走するようなところがありません。
大砲は左右中央と位置を変えて発射されました。ここでもオケは余裕を残しています。鐘は低音を伴った良い響きです。
突然シンセサイザーの登場です。これは必要ないと思うのですが・・・・・・。

余裕を十分残した美しい演奏でした。

ユーリ・テミルカーノフ/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

テミルカーノフ★★★☆
Largoサラッとした伸びやかな響きでとてもゆっくりとしたテンポで感情を込めて歌います。かなり下品に吹くトロンボーン。Andanteホルンが途中から少し強くなります。艶やかで美しい弦。Allegro giusto一転して速いテンポになります。あまり大きく盛り上がることはありません。第二主題もとても速いテンポであっさりと演奏します。ロシア民謡もかなり速いです。二度目の戦闘シーンも速いテンポで金管が咆哮することも無く、大きなエネルギーを放出することはありません。やはりロシア民謡はとても速いです。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは高い音にアクセントを付けて演奏します。大砲の実射がありました。その後急加速して駆け下りるような音形ではガクッと音量が落ちました。Largoここまで抑えていたエネルギーを放出するような輝かしく盛大な演奏になりました。Allegro vivaceゆっくりと刻みつけるような演奏です。軍の金管も増強されています。最後は花火も打ち上げられます。

伸びやかで美しい響きでした。前半はあまりエネルギーを放出しないような抑えた演奏でしたが、Largoからは輝かしく堂々とした演奏になりました。ただ、第二主題やロシア民謡のすごく速いテンポや駆け下りるような音形で音量がガクッと落ちるなどちょっと納得行かない部分もありました。
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ウラディミール・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

フェドセーエフ★★★☆
Largoゆっくりとしたテンポと暖かい響きでとても良く歌う演奏です。抑えた音量で入って大きくクレッシェンドする金管。Andante豊かな残響をともなってふくよかに響くホルン。Allegro giusto遅いテンポで確実に刻みます。響き渡るシンバル。金管はホールの響きに溶け込んであまり突出して来ません。第二主題は速めのテンポでさりげない歌でとても洗練されています。ロシア民謡はさらに速くなります。二度目の戦闘シーンでも長く尾を引き響き渡るシンバルが美しい響きです。トロンボーンのラ・マルセイエーズはスタッカートぎみに演奏しました。ロシア民謡はテンポが速すぎて落ち着きません。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは筋肉質で男性的です。金管が全開とまでは行きませんがかなり強く演奏します。大砲は大太鼓です。駆け下りるような音形の前はテヌートぎみに演奏しました。Largo盛大に鳴り響く鐘。トランペットがクレッシェンドします。ビブラートが強く強弱の変化を付けて演奏しています。 Allegro vivaceロシア国家はテヌートぎみにねちっこく演奏します。

表現の幅が広く変化に富んだ演奏でした。ただ、テンポが速く落ち着かないロシア民謡やビブラートを強くかけて強弱の変化をつけて演奏するトランペットなどちょっとやり過ぎの感も無きしもあらずです。
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大植 英次/大阪フィルハーモニー交響楽団

大植★★★☆
Largoマイクの位置が楽器に近い感じの録音です。木管もとても近いです。細部の表現よりも作品を大きくとらえて表現している感じです。Andanteマイク位置が近いので色彩感も濃厚です。Allegro giusto速いテンポでかなりガツガツと角の立った演奏です。最近では珍しいマルチマイク録音のようで、金管も非常に近いパートがあります。シンバルが気持ちよく鳴り響きます。第二主題も速めのテンポです。一つ一つのフレーズを歌うことはあまりしませんが、もっと大きい単位での音楽の起伏があります。二度目の戦闘シーンも速いテンポで、ここでもガツガツと演奏される弦。録音によるものだと思いますが、非常に激しい感じは出ています。タンブリンも鮮明に聞こえます。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは浅い響きです。速いテンポで頂点に向かいます。シンセサイザーの大砲はそれらしく聞こえました。かなり激しい頂点でした。Largoミキサーで金管のレベルを抑えているような感じであまり突出して来ないと言うか、引っこんでいる感じです。Allegro vivace金管よりも弦や木管の方がよく聞こえる録音には違和感を感じます。

マルチマイクの録音で、ミキサーでかなりバランスをコントロールしているような感じでした。コーダで金管がフルパワーで演奏する部分でも弦や木管がはっきり聞こえる録音には違和感を感じました。演奏そのものは作品を大きく捉えて起伏のある表現の演奏でした。
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エイドリアン・リーパー/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

リーパー★★★☆
Largo伸びやかで柔らかい弦の穏やかな演奏です。奥行き感のある木管が絡んで美しいです。第一主題も柔らかいです。かなりダイナミックに鳴る金管。Andante速いテンポで弾むような木管。ふくよかで柔らかいホルン。Allegro giusto柔らかいですが、しっかりとエッジの効いた弦。シンバルが炸裂します。金管はとても穏やかで、戦闘シーンというような描写ではありません。第二主題は硬い響きになり、歌もほとんどありません。二度目の戦闘シーンも柔らかく穏やかな金管。打楽器はアンバランスなくらい強烈です。弱音で演奏されるホルンのラ・マルセイエーズは浅く明るい響きです。スケールが大きく全開になるオケ。大砲も重低音を含んでリアルでした。駆け下りるような音形へ向けて大きくクレッシェンドとアッチェレランドしました。Largo鐘がかなりクローズアップされています。Allegro vivaceここでも堂々とした全開の演奏はなかなかの迫力です。

基本的には柔らかい響きの演奏でしたが、第二主題が硬い響きになったのが気になりました。戦闘シーンは穏やかで戦闘を描写したものとは感じられませんでした。最後の大砲の入る部分の全開のオケの響きは見事でした。大砲も重低音を含んだ良い音でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:序曲「1812年」の名盤を試聴したレビュー

チャイコフスキー 序曲「1812年」4

たいこ叩きのチャイコフスキー 序曲「1812年」名盤試聴記

レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

バーンスタイン★★★
Largo涼しげな音色で穏やかな演奏です。唸りを上げる第一主題。Andanteホルンよりも弦の方が強いバランスです。Allegro giustoあまりアクセントを強く演奏していません。第二主題はバーンスタインらしく良く歌います。ロシア民謡は速めのテンポです。二度目の戦闘場面はとても速いテンポでかなり慌ただしいです。トロンボーンのラ・マルセイエーズがスタッカートぎみに演奏されます。第二主題はやはり歌うのですが、どこか乱暴な感じがします。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは硬く締まった響きです。オケが引っ込み大砲が強調されます。駆け下りるような音形に向かって猛烈なアッチェレランドをしました。Largoトロンボーンが良く響きますがアンサンブルは雑に感じます。Allegro vivaceやはり大砲を強調してオケは引っ込んだバランスになります。最後にスネアがクレッシェンドしました。

バーンスタインらしく良く歌い表現も大きな演奏でしたが、アンサンブルが雑で乱暴な感じがありました。
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エリック・カンゼル/シンシナティ交響楽団

カンゼル★★★
Largo柔らかくマイルドな弦です。ゆっくりとしたテンポでたっぷりと歌う演奏です。非常にゆっくりとした第一主題。金管が登場する部分でテンポが速くなりました。金管は軽く演奏しています。Andante爽やかな騎馬隊の行進です。Allegro giustoここでもゆっくりとしたテンポで金管が咆哮することは無く、とても冷静な演奏です。第二主題は僅かにテンポを速めてあっさりとほとんど感情を込めずに進みます。二度目の戦闘場面もゆっくりと淡々と進みます。感情の起伏などは無くどちらかと言うと平板な演奏です。大砲はかなりの迫力ですが駆け下りるような音形は貧弱です。Largoここでも金管は全開にはなりません。鐘は低い音も含んで荘厳な響きです。Allegro vivace大砲は凄いのですが、演奏には熱気を感じることはできませんでした。

本物の大砲を録音したことで有名な演奏ですが、メインは大砲で、大砲を聴くためだけの演奏のように感じました。強烈な大砲に比べて演奏はとても醒めていて熱気を感じるような演奏ではありませんでした。
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ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★☆
Largo合唱で始まります。カラヤンの演奏のような起伏の大きな表現ではありません。通常の弦の演奏に近い表現です。長い音符で大きくクレッシェンドしました。パイプオルガンも入ります。かなり大きな盛り上がりです。第一主題はゆっくり入って次第に速くなるような表現でした。軽い演奏の金管。シンバルがとても古臭い音です。Andante歯切れの良い木管。ホルンは明るい音です。Allegro giustoゆっくり始まります。一音一音刻むように演奏する弦。あまり厚い響きではありません。第二主題はテンポの動きもあって深く歌います。二度目の戦闘場面は不穏な雰囲気はありません。音が短めであまり迫力の無いトロンボーン。弱音で演奏されるラ・マルセイエーズは柔らかく豊かな響きでした。盛大に鳴り響く大砲。オケは全開では無い感じです。Largo全開になっているようですが、アンサンブルが悪いのか、幼稚な響きに感じます。Allegro vivace大砲が左右に飛び交います。最後は鐘の響きだけが残りました。

合唱やパイプオルガン、左右に飛び交う大砲や最後に残る鐘の余韻など、音響的には工夫を凝らした演奏でしたが、古臭いシンバルや幼稚な響きを感じさせたりあまり良い演奏には思えませんでした。
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アントニオ・パッパーノ/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

パッパーノ★★
Largo深みがあって良く歌います。分厚い第一主題。抑えたトロンボーン。その他の金管も抑えた表現です。Andanteくっきりとした表現の木管。弦もはっきりとした表現です。ホルンは奥にいるような感じです。Allegro giusto一気に活発な表現になりますが、響きはあまり厚くありません。第二主題は速めのテンポですが揺れ動くような表現がなかなか良いです。二度目の戦闘シーンでも金管は奥から響きます。ロシア民謡も踊るように弾んだ表現です。弱音で演奏されるホルンのラ・マルセイエーズは凄く速いテンポです。大砲は大太鼓です。金管はかなり奥まっています。大砲の後に銃が撃たれました。Largoブレンドされた柔らかい響きの中にカラカラと鐘が鳴り響きます。Allegro vivaceここでも控え目なバランスで演奏されるトロンボーン。銃が楽譜のタイミングとは関係なく撃たれています。

野外コンサートと言うこともあったのか、金管が常に奥まっていて爆発すること無く終わりました。揺れ動くような表現や独特なテンポ設定など、個性的な表現もありましたので、もう少し条件の良い状態での演奏を聴いてみたいと思いました。
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アントン・ナヌート/リュブリャナ交響楽団

ナヌート
Largo最初の音が途切れています。祈るように神聖で静かな演奏で大きな動きはありません。とても軽い第一主題。薄い響きの金管。シンバルが早く音を止めます。続く弦も硬直しているような硬い表現です。Andante音楽が弾みません。とても平板な演奏です。Allegro giusto四角四面で音楽が揺れ動くことが無く間が悪い感じがします。コルネットが突然速く演奏します。第二主題も硬い表情で遊びが全くありません。とても窮屈な演奏です。二度目の戦闘シーンもまるでアマチュア・オケの演奏を聴いているようなメトロノームに合わせた演奏のようにカチッとしています。金管も吠えるようなことは無く、大人しい演奏です。弱音で演奏されるホルンのラ・マルセイエーズも硬い表現でした。大砲は大太鼓です。オケが一体になったようなパワー感は無くバラバラな印象です。薄い弦。Largo軽薄な響きです。軽い鐘。Allegro vivaceトロンボーンはかなりの力演です。

とても硬直した表現で、揺れ動くようなテンポの動きも無く、メトロノームに合わせたような硬い演奏でした。オケの響きも厚みなどは全く無くバラバラな感じで、そのうえ平板な演奏には全く楽しめる要素はありませんでした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・チャイコフスキー:序曲「1812年」の名盤を試聴したレビュー

ムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」

ムソルグスキーの交響詩「はげ山の一夜」は、神秘的でドラマティックな音楽で、多くの人の心を捉えてやまない名曲です。

どんな曲?

  • 夜中の禿山での魔女のサバトを描いた音楽: 夏至祭の夜、禿山に魔女が集まり、悪魔的な儀式を行うという、ロシアの民話を題材にしています。
  • 妖艶で不気味な雰囲気: 暗闇の中で繰り広げられる魔女たちの踊りや、悪魔的な力が渦巻く様子が、音楽を通して鮮やかに描かれています。
  • オーケストラの力強い演奏: さまざまな楽器が複雑に絡み合い、聴く者を異次元に引き込むような迫力ある音楽です。
  • リムスキー・コルサコフによる編曲が有名: ムソルグスキーの原曲には、オーケストレーションの面で未完成な部分がありました。そのため、リムスキー・コルサコフがこれを完成させ、より洗練された形で世に広まりました。

たいこ叩きのムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
表情豊かな演奏です。強弱の変化がとても大きいです。トロンボーンは控えめで後からでるトランペットが強いです。遅めのテンポでしっかりと表情付けをして行きます。すごく重量級の演奏です。怪しげな夜の雰囲気がとてもあります。リムスキー=コルサコフよりもムソルグスキーを表現しているようです。重い音楽作りが魑魅魍魎が出没しそうな雰囲気を上手く演出しています。鐘の後もアゴーギクも効かせて丁寧に音楽を作っている感じが伝わります。クラリネットとフルートのソロも歌でいっぱいでした。

ダニエル・バレンボイム/シカゴ交響楽団

バレンボイム★★★★★
艶やかな高弦、エッジの立った低弦。余裕の全開!シカゴのパワー炸裂です。自信に満ちた堂々とした金管。シンコペーションのリズムも鋭く反応が良いです。このようなと言ったら失礼ですが、このような小品にこれだけ高機能なオーケストラが演奏するのはもったいないくらい見事なアンサンブルと豪快な振幅の演奏です。鐘が鳴った後も豊かな響きです。ニュートラルなクラリネットのソロ。笛を感じさせるフルートのソロ。
非の打ち所がないくらい気持ちよくオケが鳴り響きます。
あまりにも見事にオケが鳴り渡るので、作品の持っている、おどろおどろしい部分はほとんど表現されていませんが、ショーピースとしての価値は高いと思います。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★★★★
変化に富んだ演奏です。重厚な金管。テンポも動くし普段は聞こえない音も聞こえます。充実した暖かいフィラデルフィアサウンドがバランス良く響きます。鐘の後の歌う部分では、グッとテンポを落としてテンポも動いてじっくりと表現します。クラリネットのソロも美しいものでした。フルートのソロは爽やかな夜明けを感じさせてくれました。
色彩感も豊かですし、アゴーギクも含めて表現も幅広い演奏で、楽しく聴かせてくれます。「はげ山の一夜」をこれだけ豊かな語り口で聴かせてくれた演奏ははじめてです。

エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団

スヴェトラーノフ★★★★★
追い立てるように、かなり速いテンポで荒れ狂うように攻撃的な冒頭です。強烈に鳴り響く金管。弦も豪快に鳴ります。ファゴットのメロディの前にアッチェレランドしました。ファゴットから木管、弦とつながる部分もかなり追い立てるように加速します。その後の三連音を伴う金管でガクンとテンポを落とします。金管も耳をつんざくような思いっきりの強奏です。鐘の後はテンポを落として、テンポもルバートしたり柔軟です。前半の豪快な演奏とは対照的な柔らかい表現です。クラリネットのソロもフルートのソロもゆっくりとしたテンポでたっぷりと歌います。幽霊の大騒ぎと、夜明けの対比がとても上手く、なかなか聞かせる演奏でした。

ヴァレリー・ゲルギエフ/BBC交響楽団

ゲルギエフ★★★★★
鮮烈な響きの冒頭。ティンパニも入ります。いかにも幽霊が現れそうな不気味な音楽です。思い切りの良い反応を示すオケ。リムスキー=コルサコフ版とはかなり違います。魔物たちのにぎやかな様子も生き生きと描かれています。リムスキー=コルサコフ版のような華やかさや変化はありません。夜明けの雰囲気はありませんでした。
粗野な作品ですが、洗練されたアンサンブルですっきりとした演奏に仕上げた良い演奏でした。
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クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

アバド★★★★★
速いテンポで物凄く豊かな表現です。フリークと言われるアバドの指揮ぶりも作品への思い入れを感じさせるものです。強弱の変化も大きくダイナミックです。この原典版を聞くと、リムスキー=コルサコフの編曲は大幅な改編だったんだと思います。テンポの動きもあります。柔らかく美しいオーボエ。とても表現が豊かで動きがあります。小物打楽器もさりげなくとても上手いです。オケも柔らかい響きでとても反応が良い演奏でした。
とても豊かな表現の演奏で、強弱の変化にも敏感でダイナミックでした。オケの反応もとても敏感で、とても楽しく聞くことができました。
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レオポルド・ストコフスキー/ロンドン交響楽団

ストコフスキー★★★★★
かなり録音が古い感じです。独特のアンセントの冒頭。音の上下が引き伸ばされます。トロンボーンの前にスネアが入ります。重量感のあるトロンボーン。カットがあったりリムスキー=コルサコフの版に比べるとかなり特徴的です。シロフォンが入ったり、色彩感も豊かです。怪しげな雰囲気も十分あります。テンポも大きく動いたり、自在な表現です。鐘の後はすごくゆっくりとしたテンポでたっぷりとした表現です。リムスキー=コルサコフ版ではクラリネットのソロがオーボエで演奏されます。最後は輝かしくクレッシェンドして終わりました。
ストコフスキーの強烈な色彩と描写を駆使した編曲による演奏で、その効果は抜群です。ムソルグスキーの原典版に比べると全く違う作品のようでした。魑魅魍魎の饗宴の表現にはこれくらいのアレンジは合っているように感じました。
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ズデニェク・マーツァル/ニュージャージー交響楽団

マーツァル★★★★★
合唱付きのバージョンです。独特の雰囲気です。オケは少し控えめで、合唱をクローズアップしているような感じです。男声の独唱もあります。合唱が入るとそれだけで神秘的な雰囲気になります。オケはあまり分厚い響きではなく、軽く爽やかに響いています。リムスキー=コルサコフ版では鐘の後に演奏されるメロディーがあってそこにも合唱が加わります。はげ山の一夜と言うよりももっと神聖な音楽に感じられます。クラリネットのソロもあります。その後はオーボエのソロになります。
合唱付きのバージョンで、とても神聖な音楽を聞いた雰囲気で、幽霊が現れる音楽には感じませんでしたが、同じ作品でも編曲でこんなに感じ方が変わるというのもとても興味深いものがありました。この曲の違う一面を見る上でも一聴の価値はあると思います。
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クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団

アバド★★★★★
ベルリンpoとの演奏同様、激しい表現です。こちらはセッション録音と言うこともあり細部の動きまで克明に録音されています。この演奏を聞くとアバドがこの作品をたまらなく好きだったことが伺えます。この演奏でもとても生き生きとした豊かな表現です。ベルリンpoとの演奏のような強弱の鋭い変化やテンポの動きはありませんが、この演奏でもオケの反応は敏感です。オケ全体の響きの豊かさはこちらの方があると思います。
ベルリンpoとの録音のような鋭い強弱の変化やテンポの動きはありませんでしたが、豊かな表現や細部の克明な動き、オケ全体の豊かな響きなどはこちらの方が良かったと思います。
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フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団

ライナー★★★★★
速いテンポでスピート感のある冒頭。トロンボーンとチューバが一体になった強奏。その後も速いテンポにもしっかりと付いて行ってカチッとしたアンサンブルです。常に前へ行こうとするスピード感とエネルギー感が凄いです。速いテンポで豪快に一気に聞かせる演奏です。金管もかなり強く吠えます。鐘の後もテンポは速いですが、動きもあります。さりげない歌であっさりと進む木管のソロ。
基本的に速いテンポで強い推進力を持った演奏でした。エネルギーの放出もかなりのもので、なかなか聞きごたえがありました。
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ロリン・マゼール/クリーブランド管弦楽団

マゼール★★★★★
ベルリンpoとの録音よりは若干遅いテンポで落ち着いた演奏です。シンバルも普通の大きさの物を使っています。とても余裕のある響きで柔らかいです。金管の三連音を含むメロディもとても軽く演奏しています。金管はそれなりに強く吹いていますが、とても美しいので、力が入っているようには感じません。鐘の後はあまりテンポの動きは僅かですが静かで美しいです。澄みきった朝に響くような美しいクラリネット。朝の冷たい空気を感じさせるフルート。
全く力みの無い美しい響きで全曲を通しました。幽霊が現れるような雰囲気とは違いますが、この美しさは特筆できるものです。木管のソロの朝のすがすがしさも素晴らしいものでした。
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ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/BBC交響楽団

ロジェストヴェンスキー★★★★★
合唱が近い録音です。マーツァルの演奏よりもダイナミックな動きがあって、幽霊の大騒ぎの雰囲気があります。夜の描写も十分です。原典版から大きく進歩した版であることが良く分かります。リムスキー=コルサコフ編曲の版で鐘の後に出てくるメロディになってもテンポの揺れはありません。クラリネットのソロはあっさりとしています。
最後はあっさりとしていましたが、前半はダイナミックで魑魅魍魎の大騒ぎを上手く表現していた良い演奏だったと思います。
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ユーリ・シモノフ/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

シモノフ★★★★★
静かに始まりました。木管の強弱の変化が大きいです。音圧としては感じませんがトロンボーンはかなり強く吹いています。ゆったりとしたテンポで雄大です。オーボエが夜中の暗闇を表現しています。ガツガツと刻む弦。トランペッとホルンの三連音を含むメロディでテンポを落として途中ど音量も落としました。ロシアのオケらしく濃厚な色彩感とエネルギー感のある演奏です。鐘の後のテンポの動きは僅かです。
濃厚な色彩感と強いエネルギーの放出のある雄大な演奏で、ロシア音楽!と言う感じでした。これだけロシア音楽らしい演奏は昨今では珍しいと思いますので、とても貴重な音源だと思います。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」の名盤を試聴したレビュー

ムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」2

たいこ叩きのムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」名盤試聴記

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

icon★★★★☆
速めのテンポです。力みの無いブラスセクション。ブルー系の響きで涼しげな美しい演奏です。とても滑らかで角が立つような部分はありません。この作品でも洗練の極みのような滑らかで美しい演奏で、泥臭さなどは全くありません。弦も木管もとても美しいです。鐘の後の弦も優雅で美しいです。滑らかで美しいクラリネット。爽やかな夜明けを感じさせるフルート。魑魅魍魎とは程遠い表現です。
ホールの響きも含めてとても美しい演奏でした。

ミヒャエル・ザンデルリング/バイエルン放送交響楽団

ザンデルリング★★★★☆
弾むような低弦。全開の演奏ではないトロンボーン。ティンパニが激しくクレッシェンドしました。オーボエが最初の二つの音をスラーで繋ぎます。余裕のある美しい響きの金管です。滑らかな弦。明るい金管が美しいですが響きは少し薄いです。デュトワの演奏を思い出させるような徹底して美しい演奏です。鐘の後もテンポは全く動きません。クラリネットのソロは少しテンポを落として豊かに歌います。フルートも同様に歌います。
オケを限界まで鳴らすことは無く、かなり余裕を持たせてとても美しい演奏でした。泥臭さとは程遠い演奏で、作品の表題性はあまり意識せずに、美しさに徹底的にこだわった演奏のように感じました。
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ロヴロ・フォン・マタチッチ/フィルハーモニア管弦楽団

マタチッチ★★★★
ゆったりとしたテンポでゴツゴツした印象です。
トロンボーンなどの旋律の直後にテンポが一旦ガクンと落ちて次第に元のテンポに戻りました。
テンポは度々遅くなっては加速します。劇的で表現の幅が広いです。クラリネット、フルートのソロの歌いまわしも独特でした。
すごく個性豊かな演奏でした。

アンドレ・クリュイタンス/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★★
強弱の激しい冒頭の表現。ブラスの強奏は余裕たっぷりでした。
力みの無い優雅な演奏です。ブラスセクションを無闇に強く吹かせることはありません。
チャイムの音がはっきり聞こえます。その後の弦の演奏はとても静かな感じです。
クラリネット、フルートのソロは自由に歌わせているようです。

ジュゼッペ・シノーポリ/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★★★
速めのテンポで、トロンボーンはかなり余裕を残して鳴っていますが全体を支配するような迫力があります。ティンパニの激しいクレッシェンドや木管の大きな強弱の変化などかなり積極的な表現です。オーボエにメロディが出るところで少しテンポを落としました。基本的に速めのテンポで軽く、ドロドロした雰囲気はほとんど無く、作品の表題をあまり意識していない演奏のように感じます。鐘が鳴ってからはゆったりとしたテンポで揺れがあって濃厚な表現になりました。クラリネット、フルートのソロもかなりテンポが遅くたっぷりと非常に濃厚に歌います。このソロはとても良かったです。
鐘が入った後のテンポを落とした濃厚な表現はあまり聞いたことの無い表現でとても良かっですが、前半があまりにもあっさりし過ぎていて肩すかしでした。

エドゥアルド・マータ/ダラス交響楽団

マータ★★★★
遠くから迫ってくるような弦。爽やかな響きのトロンボーン。シンコペーションの反応がとても良いです。オーボエ、フルートとメロディを受け継いだ後にテンポを速めました。かなり余力を残した金管がブルー系の響きで魑魅魍魎の怪しさよりもスマートな爽やかさを印象付けます。鐘の後はゆっくりとしたテンポでフレーズの終わりでテンポを落として演奏します。クラリネットのソロは豊かに歌います。暖かいフルートのソロ。
ブルー系の響きで魑魅魍魎の饗宴よりもスマートで爽やかな演奏で、あまり表題を意識した演奏ではありませんでしたが、ダラス交響楽団の美しい響きはなかなか良かったです。
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ルネ・レイボヴィツ/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

レイボヴィツ★★★★
激しい強弱の変化。トロンボーンの前にスネアが入りました。かなり激しいトロンボーン。シロフォンも入ります。木管のメロディにファゴットが追加されたり独特の編曲があります。金管のフォルテピアノクレッシェンドやシンバルの響きを残したり、予想外の部分でスネアが入ったり、スネアのリムショットがはいったり、カットもあります。テンポが極端に落ちたりやりたい放題です。ウィンドマシーンまで入ります。鐘の前にスネアと銅鑼のクレッシェンドがありました。鐘の後はほぼインテンポです。クラリネットではなくオーボエのソロです。フルートのソロの後に怪しげな低音から次第に高音楽器に移って華やかに終わりました。
ベートーヴェンの交響曲で、ベートーヴェン指定のメトロノームに厳格な演奏をしたレイボヴィツの演奏がこんなに自由奔放だったのは驚きでした。ただ、ストコフスキーの編曲ほどの強烈な色彩感などはありませんでした。
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タラニス・エコノモウ/カタール・フィルハーモニー管弦楽団

エコノモウ★★★★
追い立てるように微妙にテンポが変化する冒頭。安定したトロンボーン。ティンパニが激しくクレッシェンドしました。聞いたことの無い中東のオケと指揮者ですが、とても安定した良い演奏です。滑らかなクラリネット。アンサンブルもなかなか良いですし、響きも美しいです。鐘の後のテンポの動きは僅かです。クラリネットのソロはゆっくりとしみじみとした演奏です。
大きな表現はありませんでしたが、整ったアンサンブルと美しい響きで、模範演奏のような演奏でした。
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ウラディミール・スピヴァコフ/ロシア・ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団

スピヴァコフ★★★☆
強弱の変化が独特の冒頭の弦。トロンボーンはビーンとかなり強く鳴り響きます。突然強く入るファゴット。ミキシングで強調されたようです。トゥッティの響きと木管のソロのバランスがおかしいです。金管の三連音を含むメロディで大きくテンポを落としました。細かい音で若干もたつくような部分もありました。やはり木管が大きいです。リミッターでも掛かっているような感じがします。鐘も大きいです。鐘の後の弦もかなり強調されているような録音です。テンポの動きは僅かです。クラリネットのソロはアゴーギクを効かせるようにテンポの動きもあって豊かな歌でした。
演奏そのものは力感もあり、ソロの豊かな歌もあって良かったのですが、録音がリミッターが効いているのか、ミキサーで木管を強調したのか分かりませんが、バランスがとても不自然に感じました。
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デーヴィッド・ロイド=ジョーンズ/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

ジョーンズ★★★
表現の振幅はあまり大きくなく比較的穏やかで作品の粗野な感じはあまりありません。ロシア音楽の持つ強大なエネルギーはあまり感じません。ダイナミックの変化もあまり大きくありません。金管にはかなり余裕を持たせた演奏で、積極的な表現はほとんど無い演奏でした。
あまり振幅の無い演奏で、金管も余裕たっぷりでした。あまり作品を積極的に表現した感じは無く、作品を無難に演奏して紹介したと言う事でしょうか。
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トーマス・ルートヴィヒ/ルートヴィヒ交響楽団

ルートヴィヒ★★☆
とてもゆっくりとしたテンポです。弦は薄いですが、その分金管がかぶって来ます。テンポが遅く間延びした印象の演奏です。テンポの動きもありますが、あまり大きな表現はありません。鐘の後は薄い弦が揺ら揺らとした表現で寂しげな雰囲気が上手く表現されています。クラリネットとフルートのソロもあまり歌いません。
薄い弦と力強い金管による遅いテンポの演奏でした。テンポの遅さに間延びした印象を受ける部分もありましたが、鐘の後の揺ら揺らとした寂しげな表現はなかなか良かったです。上品な演奏でした。
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ダニエル・ナザレス/スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

ナザレス★★☆
艶やかな弦ですが、あまり強弱の変化はありません。トロンボーンも控えめで軽いです。大きくテンポを落として加速する部分もありました。ティンパニの激しいクレッシェンドや打楽器の強打が目立ちます。テンポの動きはありますが、あまり力のこもった強奏はありません。鐘の後はゆっくり目でテンポが動くのですが、少しアンサンブルが緩い感じがあります。クラリネットとフルートのソロは普通でした。
テンポの動きはありましたが、あまり強奏せずに軽く破綻の無い演奏に上手くまとめた感じの無難な演奏でした。
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レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★
抑え気味の冒頭。荒々しい金管。当時のニューヨークpoの演奏としてはアンサンブルも良いような気がしますが、それでも雑な演奏には変わりありません。テンポもほぼ一定で、変化に乏しく一本調子です。消化試合のような演奏に感じました。

イーゴリ・マルケヴィチ/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

マルケヴィチ★★
速いテンポで、シンプルな冒頭。トロンボーンが途中で弱くなってクレッシェンドする表現でした。色彩感はくすんでいて、あまり豊かな色彩感ではありません。通常、強く演奏される部分を途中で弱くしてクレッシェンドすることがよくあります。その影響もあってか、演奏自体が軽く感じます。ほとんどテンポの変化無く速いテンポのまま進みます。強く伸ばすはずの音を弱くする表現がとても多いです。木管のソロもあまり歌いません。
普通なら強く伸ばす音を弱くして、その後クレッシェンドするような表現が多かったです。演奏にはあまり色彩感が無く、軽い感じで、ロシア音楽の特徴も、リムスキー=コルサコフの特徴もあまり表現されなかったように感じました。
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セルジウ・チェリビダッケ/ミラノ・イタリア放送交響楽団

チェリビダッケ★★
いつものようにゆっくりと濃厚な表現です。トロンボーンも十分に鳴っています。大きい表現に反してスピード感の無さが気になります。奥行き感の無い金管の生音が下品に感じます。あまりの遅さに間が持たないと思ったのか、少しテンポが速くなります。鐘の後は霧が立ち込めるように、ゆっくりと静かに幽玄の世界のようです。
鐘の後の幽玄の世界のようなゆっくりと静かで奥深い演奏と、前半の浅く下品で間が持たない演奏のギャップが激しい演奏と感じました。
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ユーリ・ボトナリ/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

ボトナリ★☆
ゆっくりとしたテンポで柔らかい表現。トロンボーンも全体の響きから飛び出さず落ち着いています。ティンパニの激しいクレッシェンドがありました。金管はかなり抑えぎみです。同じリズムでも楽器が変わると表現する長さが変わります。金管の三連音を含む戦慄でガクッとテンポを落として次第に弱くなりました。テンポがかなり動く演奏ですが、このテンポの動きがあまりにも大きく不自然な感じがします。鐘が鳴った後のテンポの動きは僅かです。クラリネットのソロは大きく歌います。フルートはクラリネットのソロよりもあっさりとしています。
金管を抑えた演奏で、テンポもかなり大きく動いていましたが、少し不自然な感じがありました。また、同じリズムでも楽器によって長さが違うのも気になりました。
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ロリン・マゼール/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

マゼール
速いテンポで激しく動くので、小ざかしく感じる演奏です。厚みのあるトロンボーンですが、最後の音だけ特別に強い音で不自然です。シンバルは小さいものを使っているようでダイナミックさは全くありません。オケもドイツ的で金管が飛び抜けたバランスの演奏ではありません。テンポが速くてとても慌ただしいです。シンバルの速いパッセージはサスペンドシンバルを使っているので、クラッシュシンバルをこんなに小さい物を使う意味が分かりません。鐘が鳴った後も速めのテンポで全く作品に思い入れが無いような演奏です。クラリネットとフルートのソロも素っ気無く爽やかです。
とにかくテンポが速い!素っ気無い演奏でした。

アラン・ロンバール/ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団

icon
積極的な強弱の変化。トゥッティの響きが薄い。トロンボーンを主体にする旋律は抑え目で柔らかく演奏しました。テンポを落とすところもありますが、基本的には速いテンポで進みます。金属的な響きがするヴァイオリン。全体的には大人しい演奏で、魑魅魍魎たちが大騒ぎしているような雰囲気とはちょっと違うように感じます。後半、弦だけで弱音で演奏される部分も平板で短い時間でしたが退屈な印象でした。

ジェフ・スペクト/ミシシッピ・バレー管弦楽団

スペクト
テヌートぎみに柔らかく演奏されるトロンボーン。豊かな残響を含んだ木管。テンポの動きも少しありますが、あまり個性の強い演奏ではありません。ミスや金管の鳴りの悪さを感じさせる部分もあります。ちょっと雑な金管の演奏もあります。鐘の後もテンポの動きはほとんどありません。クラリネットは高音を出しにくそうでした。フルートもほとんど歌いません。
オケの雑な部分やアンサンブルの乱れなどもあり、演奏そのものは特に個性の無いものでしたので、ミスが気になりました。
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Garo Avessian/レバノン・フィルハーモニー管弦楽団

Avessian
低域がボンついた録音で、ホルンの音もミキシングによって強調があるようです。こもって雄大なトロンボーン。良く歌う弦。しかし、ホルンが異様なバランスです。多分カメラの位置にマイクがあって、そこにホルンのベルが向いているのだと思います。鐘もマイクの近くでしょう。鐘の後の弦も豊かに歌います。クラリネットは生き生きと瑞々しい演奏でした。
とても良く歌う弦でしたが、異様に大きいホルンのバランスがとても不自然でした。録音のバランスが良ければ演奏そのものは割りと良かったのではないかと思います。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」の名盤を試聴したレビュー

リムスキー=コルサコフ スペイン「奇想曲」

リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」は、スペインの様々な音楽様式を巧みに織り交ぜた、華やかで情熱的な作品です。

どんな曲?

  • スペインの音楽風景を巡る旅: フラメンコの情熱、闘牛の興奮、街の賑わいなど、スペインの様々な音楽要素が鮮やかに描かれています。
  • 多彩な楽器の共演: ヴァイオリン、フルート、トランペットなど、様々な楽器がソロを演奏し、それぞれの個性を際立たせています。
  • リズム感あふれる音楽: リズムが非常に特徴的で、聴いていると自然と体が動き出すような、躍動感あふれる音楽です。
  • 各楽章が異なる性格: 各楽章がそれぞれ異なる雰囲気を持っており、まるでスペインの様々な都市を巡っているような感覚を味わえます。

たいこ叩きのリムスキー=コルサコフ 「スペイン奇想曲」名盤試聴記

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

icon★★★★★
アルボラーダ、小物打楽器が賑やかですが、響きは整然としていて、とても落ち着きがあります。クラリネットのソロもとても美しい。ヴァイオリンのソロも繊細な感じです。

変奏曲、遠くから響くようなホルンが心地良い雰囲気です。とても美しい音楽です。熱狂するような音楽ではなく、清涼感さえある演奏です。

アルボラーダ、スネアドラムさえも美しい。トゥッティでもガツンと音が届くことは無く、とても冷静です。

シェーナとジプシーの歌、粒の揃ったスネアのロール。繊細なヴァイオリン・ソロ。フルートのソロも極上です。どのソロも見事!とても透明感が高く、全てを見通せるような感じさえします。

アストゥリア地方のファンダンゴ、遠くで響くスパニッシュカスタネット。艶やかなヴァイオリン。強奏部分のエネルギー感には乏しいのですが、これだけ美しい演奏を聴かせてくれれば満足です。

ダニエル・バレンボイム/シカゴ交響楽団

バレンボイム スペイン奇想曲★★★★★
アルボラーダ、ゆったりとしたテンポで、ものすごいエネルギー感です。小物打楽器は控え目ですが、十分に賑やかな雰囲気はあります。トランペットも絶妙なバランスで存在をアピールします。弓を弾ませるヴァイオリン。

変奏曲、ホールの響きを伴って豊かに鳴るホルン。濃厚な色彩感です。椅子が軋む音がします。

アルボラーダ、トランペットが気持ちよく鳴ります。ヴァイオリンのソロが少し早くなります。艶やかなヴァイオリンと滑らかなクラリネット。最後のテュッティは深い響きでした。

シェーナとジプシーの歌、シングルストロークでロールをしているのではないだろうか?それともオープンロールか?すごい技術です。輝かしいトランペットのファンファーレ。激しいヴァイオリン・ソロ。ハープの低音もリアルで音が立っています。金管も存在感があり、とても厚みがあります。

アストゥリア地方のファンダンゴ、ゆったりとしたテンポで丁寧に描かれます。リムスキー=コルサコフの色彩感豊かなオーケストレーションを見事に表現しています。

シカゴsoのパワーを遺憾なく発揮したすごい演奏でした。特に金管の活躍はすばらしかった。

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

オーマンディ★★★★★
アルボラーダ、きりっと立った音で、一音一音がしっかりと分離して聞こえます。ゆっくり目のテンポでとても丁寧に演奏されています。

変奏曲、締まったホルン。録音のせいもあると思いますが、曖昧さの全く無い演奏で、透明感がありとても見通しの良い演奏です。

アルボラーダ、とても艶やかなヴァイオリンのソロ。小物打楽器は控えめです。

シェーナとジプシーの歌、遅めのテンポで技術を見せ付けるようなヴァイオリンのソロ。陰影のあるクラリネット。豊かな表情のオーボエ。シカゴsoのキンキラキンの響きとは違い柔らかくまろやかです。

アストゥリア地方のファンダンゴ、生き生きと動く木管。全く力みも無く軽々と演奏する高い技術に脱帽です。

ゆったりとしたテンポで透明感が高く、柔らかく軽々と高い技術を見せ付ける演奏で、華やかさはありませんでしたが、中身の濃い演奏でした。
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ズービン・メータ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

メータ★★★★★
アルボラーダ、ゆったりとしたテンポで華やかです。クラリネットも余裕たっぷりに優雅なソロです。ヴァイオリンのソロも見事です。

変奏曲、たっぷりと深みのある弦。とてもゆっくりと朗々と歌うホルン。今まで聞いたことの無い表現で、音楽に身をゆだねることが出来ます。イングリッシュ・ホルンも深みのある歌です。野外コンサートなので、堅苦しくならずに伸び伸びと演奏しているのが、良い方向に作用しているような感じがします。

アルボラーダ、小物打楽器はあまり聞こえませんがスネアは大きめです。ヴァイオリンのソロが何事も無いように演奏しています。最後はティンパニの強打がありました。

シェーナとジプシーの歌、カチッとした響きのトランペット最後の高音は突き抜けて来ます。寄れ動くように歌うヴァイオリンのソロ。とのソロも見事です。ベルリンpoが楽しく乗って演奏しています。

アストゥリア地方のファンダンゴ、理屈抜きに楽しく伸び伸びとした演奏です。表現もとても積極的で、開放感に溢れた演奏です。最後の加速も興奮を煽るように効果的なものでした。

野外コンサートの開放感からも来るのでしょうが、とても伸び伸びと遠慮なく表現した演奏で、ベルリンpoもノリノリでした。大きな表現にもわざとらしさが無く、終演後の歓声も納得の演奏でした。
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ディエゴ・マテウス/スイス・ロマンド管弦楽団

マテウス★★★★★
アルボラーダ、豊かで暖かみがあり華やかです。小物打楽器もしっかりと聞こえます。

変奏曲、とてもゆっくりとしたテンポで訴えるようにホルンが深く歌います。続く弦も息遣いのような振幅のある演奏です。柔らかくしみじみとしたイングリッシュ・ホルン。一つ一つの楽器がくっきりと浮かびあがって、とても濃厚な色彩感です。

アルボラーダ、艶やかで生き生きとしたヴァイオリンのソロ。

シェーナとジプシーの歌、クローズドロールのスネア。くっきりと浮かび上がるフルート。

アストゥリア地方のファンダンゴ、カスタネットの粒もはっきりと聞き取れます。一時期低迷したスイス・ロマンドoですが、この演奏を聞くと全盛期の実力を取り戻しつつあるように感じます。

美しく、くっきりと明確な色彩感で華やかな演奏でした。息遣いのある生き生きとした演奏は素晴らしかったです。
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キリル・コンドラシン/RCAビクター交響楽団

icon★★★★☆
アルボラーダ、小物打楽器が賑やかで、華やかな雰囲気です。

変奏曲、細く締まった音のホルンです。サーッと言うヒスノイズがかなり気になります。ダイナミックに強弱の変化があり生き生きとした表情の演奏です。録音は古いですが、色彩感豊かで良い演奏です。

アルボラーダ、賑やかな冒頭の後のヴァイオリン・ソロは艶やかな音色でした。

シェーナとジプシーの歌、強いアクセントで入ったスネアのロール。トランペットらしい音色のファンファーレ。すごく感情を込めたヴァイオリン・ソロ。メリハリがあって、聞いていて飽きません。ハープのソロの後はすごく速いテンポでアンサンブルもバラバラになりますが、かまわずに突っ走ります。さらにテンポを上げます。

アストゥリア地方のファンダンゴ、少しritして入りました。音楽がとても濃厚で、聴き応えがあります。テンポの変化もこの曲にはピッタリです。

コンドラシンが表現しようとした音楽はすばらしいのですが、オケが付いて行けないところが少し残念でしたが、オケが乱れてもなりふり構わず突き進むところも面白みがあって良かったです。

アンタル・ドラティ/ロンドン交響楽団

ドラティ★★★★☆
アルボラーダ、速いテンポで小物打楽器も賑やかです。滑らかなクラリネット。とても楽しそうです。太いヴァイオリンのソロ。

変奏曲、少し細身のホルン。豊かに歌うイングリッシュホルン。合いの手に入るホルンも大きく答えます。速いテンポでサクサクと進みます。デットな録音なのか、ヴァイオリンが少しキツく聞こえます。

アルボラーダ、躍動感のあるヴァイオリンのソロ。

シェーナとジプシーの歌、深い胴のスネアでクローズドロールで演奏しています。歯切れの良いトランペット。太くマットなヴァイオリンのソロ。フルートとクラリネットのソロは速いテンポであっさりと進みます。ハープはすごく強調されています。テンポが速いので、踊るような躍動感があります。

アストゥリア地方のファンダンゴ、控えめなカスタネット。最後の盛り上がりも十分で、加速して終わりました。

最初のアルボラーダから賑やかで華やかな演奏で、テンポも速いので躍動感もあって、良い演奏でしたが、録音がデッドなのかヴァイオリンがキツい部分もありました。
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キム・ボンミ/コリア・ソロイスツ・オーケストラ

キム★★★★☆
アルボラーダ、奥行き感のある美しい響き。華やかさも十分あれます。

変奏曲、ビブラートをかけているような感じで細身のホルン。まろやかで柔らかいイングリッシュ・ホルン。

アルボラーダ、あまり弾まないヴァイオリンのソロ。

シェーナとジプシーの歌、くすんだ響きのトランペット、若干アンサンブルの乱れがあります。ゆっくりと演奏されるヴァイオリンのソロですが、激しく叩きつけるような弓使いではありません。とても丁寧です。

アストゥリア地方のファンダンゴ、カスタネットのリズムに乗る演奏です。強い色彩感はありませんが、雰囲気のある演奏です。最後は凄いアッチェレランドで終わりました。

強い色彩感はありませんでしたが、華やかさや雰囲気を感じさせる演奏で、女性らしい丁寧な演奏にも好感が持てました。
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Maxim Eshkenazy/クラシックFMオーケストラ

Eshkenazy★★★★☆
アルボラーダ、鮮明な響きではありませんが、厚みはあります。小物打楽器も賑やかです。ヴァイオリンのソロはあまりダイナミックではありません。

変奏曲、ゆっくりとしたテンポで歌う弦。色彩感も十分にあります。

アルボラーダ、ここでも賑やかな演奏です。

シェーナとジプシーの歌、ゆっくりとしたトランペットのファンファーレ。あまり粘りが無くあっさりとしたヴァイオリンのソロ。フルートのソロはあまり鳴りが良くない感じです。強弱の変化が少し緩い感じがします。

アストゥリア地方のファンダンゴ、奥行き感もあって良い演奏です。流れるような演奏で、ひっかかるところがありません。最後の加速もまあまあでした。

聞いたことの無いオケと指揮者だったので、期待せずに聞きましたがなかなか良い演奏でした。割となだらかに変化する演奏でしたが、賑やかさや奥行き感もあり、良かったです。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・リムスキー=コルサコフ:「スペイン奇想曲」の名盤を試聴したレビュー

リムスキー=コルサコフ 「スペイン奇想曲」2

たいこ叩きのリムスキー=コルサコフ 「スペイン奇想曲」名盤試聴記

レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

バーンスタイン★★★★
アルボラーダ、とてもゆっくりとしたテンポで清涼感があって丁寧な演奏です。

変奏曲、細い響きのホルン。テンポの動きもあって良く歌う弦。イングリッシュホルンの合間に入るホルンがとても思い切り良く入ります。

アルボラーダ、ゆっくりと木管やトランペットがはっきりと演奏します。いろんな楽器の動きがとても良く分かります。キャラキャラと鳴る木管やポコポコと響くホルン。ヴァイオリンのソロにミスがあったようです。最後はテンポを速めて終わりました。

シェーナとジプシーの歌、アメリカのオケらしく鋭く鳴るトランペット。たっぷりとした演奏のヴァイオリンのソロ。速く素っ気無いフルートのソロ。ソロが終わると速いテンポの演奏になりました。

アストゥリア地方のファンダンゴ、テンポが良く動きますが、テンポが速くなった時にちょっと雑な面が顔を出します。最後にテンポを速めた部分はなかなかの迫力でした。

テンポがとても良く動く演奏で、ゆっくり丁寧な部分と、速いテンポで雑になるところもありました。表現も濃厚な表現と素っ気無い部分も共存しています。とても魅力的な部分とちょっと・・・と感じる部分がありました。
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マリス・ヤンソンス/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

ヤンソンス★★★★
アルボラーダ、あまりエッジが立っていない柔らかくまろやかな演奏です。クラリネットは強弱の変化のあるソロでした。落ち着いたヴァイオリンのソロ。

変奏曲、明るく豊かなホルン。静かににじみ出るような歌の弦。大きな表現はありませんが、さりげない歌のある演奏です。

アルボラーダ、小物打楽器はあまり目立たず賑やかな雰囲気はあまりありません。はっきりとリズムを刻むトランペット。滑らかなヴァイオリンのソロ。

シェーナとジプシーの歌、明るく鋭いトランペット。少し枯れたヴァイオリンのソロ。さらりと演奏されるフルート。豊かな表情のクラリネット。間接音を含んで豊かに響くハープ。マットで艶やかさがあまり無い弦。

アストゥリア地方のファンダンゴ、色彩感はあまり濃厚ではありません。トゥッティの盛り上がりはかなりのものです。最後のテンポの追い込みも見事でした。

テンポの動きはとても良い演奏でした。表現も程よく付けられた演奏でしたが、マットな弦に象徴されるような色彩感があまり無い感じがとても残念でした。
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エミール・タバコフ/富川フィルハーモニック管弦楽団

タバコフ★★★★
アルボラーダ、賑やかで華やかです。クラリネットのソロも表情たっぷりです。

変奏曲、明るく美しいホルン。弦の呼吸が浅い感じがして息苦しく感じます。

アルボラーダ、韓国の地方オケなのかも知れませんが、なかなか良い演奏をしています。

シェーナとジプシーの歌、トランペットも良い音でした。ヴァイオリンのソロはちょっと丁寧過ぎるか?オーボエのソロも豊かな表現でした。分厚い響きとダイナミックさはあまりありません。

アストゥリア地方のファンダンゴ、色彩感も豊かですが、打楽器のアンサンブルの乱れとヴァイオリンが安っぽい響きなのが、僅かに気になります。

厚みやダイナミックさはありませんでしたが、色彩感も豊かで、表情もそこそこある良い演奏でした。
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ユーリ・シモノフ/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

シモノフ★★★☆
アルボラーダ、とてもゆっくりとしたテンポであまり賑やかな雰囲気では無く、落ち着いた感じです。さりげないヴァイオリンのソロ。

変奏曲、奥行き感のあるホルン。ここでもとても静かな演奏をしています。

アルボラーダ、やはり遅いテンポで賑やかな色彩感では無く、渋い表現の演奏です。

シェーナとジプシーの歌、ねばりのあるトランペット。フルートのソロはたっぷりとしたタメのある豊かな表現でした。

アストゥリア地方のファンダンゴ、とにかくゆっくりです。最後はテンポを速めて終わりましたが、終始渋い色彩で、躍動感も感じませんでした。

終始遅いテンポで、賑やかさは無く、渋い色彩感の演奏でした。躍動感などもほとんど感じませんでしたが、不思議と悪い演奏には感じませんでした。
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アンドレ・クリュイタンス/フィルハーモニア管弦楽団

icon★★★
アルボラーダ、落ち着いた響きの中から滑らかなクラリネット、あまり艶のないヴァイオリン。

変奏曲、ゆったりとしたテンポで細身のホルン。ヴァイオリンがマットな響きで作品の華やかさとは異質な感じがします。

アルボラーダ、小物打楽器があまり前面に出てこないので、賑やかな感じではありません。滑るようなクラリネット。

シェーナとジプシーの歌、スネアが緩いスネアドラムのロール。軍楽隊の太鼓のような雰囲気です。コルネットのように柔らかいファンファーレ。録音が時々歪むところがあります。

アストゥリア地方のファンダンゴ、スパニッシュカスタネットが切れの良い音を響かせます。終わり少し手前のアッチェレランドにはゾクッとさせられました。

特にオケの名人芸のような部分も無く、なんとなく終わりました。これもクリュイタンスのセンスの良さか?

ポール・パレー/デトロイト交響楽団

パレー★★★
アルボラーダ、物凄く速いテンポの演奏ですが、きっちりと演奏されています。

変奏曲、速いテンポで縮こまったようなホルン。とてもあっさりとしています。

アルボラーダ、このテンポでも雑にならないのはさすがです。

シェーナとジプシーの歌、少しギザギサするスネア。ヴァイオリンのソロはテンポを落としてたっぷとりした表現です。ソロが終わると独特の間のある弦の演奏ですが、これはちょっと違和感のある間で、流れが失われます。

アストゥリア地方のファンダンゴ、最後は物凄いアッチェレランドで終わりました。

基本的には凄く速いテンポで一気に演奏したものでした。オケの精度も高くパレーのオーケストラ・ビルダーとしての能力の高さを感じさせる演奏でした。シェーナとジプシーの歌での弦の間には少し違和感を感じました。
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ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス/デンマーク放送交響楽団

ブルゴス★★☆
アルボラーダ、締りがあってシャープな演奏です。小物打楽器も賑やかです。豊かな表情のクラリネット。

変奏曲、引き締まって美しいアンサンブルを聞かせるホルン。穏やかで動きのあまり無い演奏です。

アルボラーダ、僅かに重い感じで躍動感があまりありません。最後はテンポを落としました。

シェーナとジプシーの歌、ちょっとギザギサのスネア。速いヴァイオリンのソロ。もっとたっぷのと聞かせても良いような気もしますが・・・・・。テンポも少し遅めなのですが、時間がとても長く感じます。

アストゥリア地方のファンダンゴ、とても時間がゆっくりと流れるような感じです。最後はテンポを速めて終わりました。

あまり動きが活発では無く、時間がゆっくりと流れるような感じでした。色彩感もあまり感じることは無く、華やかさもあまり感じませんでした。
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ロリン・マゼール/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

マゼール★★
アルボラーダ、とても元気な演奏です。クラリネットのソロも愛嬌がある表現です。ヴァイオリンのソロは控えめです。

変奏曲、美しいホルン。少しザラつくヴァイオリン。弦のトレモロが波打つようです。on、offがはっきりとした演奏です。明快に強弱の変化を付けて演奏します。

アルボラーダ、小物打楽器はあまり聞こえず、クラリネットのバランスが強いです。さりげなく上手いヴァイオリンの艶やかなソロ。

シェーナとジプシーの歌、オープンロールで粒がはっきりとしたスネア。近くで演奏しているようなトランペット。ソロはどれもさすがにベルリンpoです。ソロの後は速いテンポであまり落ち着きがありません。ちょっと慌ただしく雑にも感じます。

アストゥリア地方のファンダンゴ、オケとスパニッシュ・カスタネットがずれます。速いテンポをさらに速くして終わります。

華やかな感じよりも、かなり速いテンポの力技のような感じの演奏でした。テンポが速いために雑に聞こえる部分もありました。
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Ayyub Guliyev/サフォノフフィルハーモニー管弦楽団

Guliyev★☆
アルボラーダ、フワーッと広がる響きです。豊かな残響を伴って滑らかなクラリネット。ヴァイオリンのソロもオフぎみで美しく響きます。

変奏曲、ホルンも雄大に響きます。

アルボラーダ、オフぎみの録音なので音の芯があまり感じられません。最後はアッチェレランドして激しくティンパニがクレッシェンドしました。

シェーナとジプシーの歌、トランペットもフワーッとしています。ヴァイオリンのソロはゆっくりと濃い表現です。オーボエのソロは少し安定感がありませんでした。この録音もカメラのマイクで録っているようで、シンバルが近く、コントラバスが遠いので、厚みがありません。

アストゥリア地方のファンダンゴ、カスタネットがあわてます。最後は猛烈なアッチェレランドで終わりました。

かなりオフマイクでの録音で、フワーッとした広がりのある演奏でしたが、、その分音の芯の無い演奏でもありました。アンサンブルの乱れやソロの不安定な部分もありました。
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アラン・ロンバール/ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団

icon
アルボラーダ、速いテンポで打楽器が賑やかですが、打楽器が抜けると寂しい感じです。

変奏曲、細い音のホルンが寂しげです。響きが浅く表情も淡白でそっけない演奏です。後半はテンポを上げて弦がスタッカートぎみに演奏する部分もありました。

アルボラーダ、音が集まってこなくて散漫です。

シェーナとジプシーの歌、ファンファーレの響きにも明るさがなく寂しい響きでした。ヴァイオリンのソロもマットで艶やかさがありません。濃厚でエネルギッシュな音楽ではなく、つや消しで華やかさがありません。

アストゥリア地方のファンダンゴ、カスタネットはとても上手い。スペインの明るい色彩よりも哀愁さえ感じる演奏は何なんだろう。弱弱しいトランペット。終わりに向けてアッチェレランドして盛り上げますが、全体を支配する暗い響きはいかんともしがたい。

アーサー・フィードラー/ボストン・ポップス・オーケストラ

フィードラー
アルボラーダ、柔らかくマイルドな響きです。滑らかなクラリネット。マイルドな響きの分、色彩感はあまり濃厚ではありません。

変奏曲、深みがあって美しいホルン。霞がかかったようで、ヴァイオリンのハッとさせるような鮮明な響きはありません。

アルボラーダ、マイルドな響きの分一体になったまとまりはあります。ヴァイオリンのソロも鮮明に浮かび上がることはありません。

シェーナとジプシーの歌、少し距離があるようなトランペット。カーテンの向こう側で演奏しているようなヴァイオリンのソロ。一つ一つのソロを強調したような録音ではありませんが、さりげなく上手いです。

アストゥリア地方のファンダンゴ、高音域のレベルが落ちているようで、カスタネットの音も立っていません。モノトーンのような色彩感の無い演奏になっています。最後のテンポの加速も僅かでした。

マイルドでモノトーンのような色彩感の乏しい演奏でした。録音による問題だと思いますが、作品の華やかさは全く伝わって来ませんでした。
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ウラディミール・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団

フェドセーエフ
アルボラーダ、かなり混濁した録音です。キンキンと共鳴するクラリネット。歪も多いです。

変奏曲、美しいようにも感じますが、歪んでいるホルン。

アルボラーダ、ベターっとしていて、あまり弾まないヴァイオリンのソロ。

シェーナとジプシーの歌、かなり騒々しいスネア。かなり粘るヴァイオリンのソロ。長く尾を引くシンバル。周波数特性のどこかにかなり鋭いピークがあるようです。フルートもキンキンと鳴ります。

アストゥリア地方のファンダンゴ、録音が酷くて演奏の特徴などはほとんど分かりませんでした。最後もテンポを速めずに終わりました。

フェドセーエフの演奏を期待して聞いたのですが、録音が酷くて何がどうなっているのか全く分かりませんでした。
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エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団

アンセルメ
アルボラーダ、録音レベルが低く、意外と薄い響きです。小物打楽器は賑やかですが、響き自体が寂しいです。暖かいヴァイオリンのソロ。

変奏曲、奥行き感のあるホルン。暖かい弦。あまり粘っこく歌わないイングリッシュ・ホルン。後半は少しテンポが速くなります。

アルボラーダ、響きは暖かいのですが、厚みが無く寂しいです。

シェーナとジプシーの歌、明るく華やかなトランペット。ヴァイオリンのソロも隙間があるように密度が薄いです。木管のソロはいずれもテンポが速く素っ気ない感じでした。こんなにシンプルだったっけ?と思わせる程音が少ないです。

アストゥリア地方のファンダンゴ、とにかく寂しい薄い響きで、悲しくなるような演奏です。全体が盛り上がらないところでむなしく響く金管。

とにかく寂しくて薄い響きでした。作品の華やかなイメージとはかけ離れた演奏で、聞いていて悲しくなってしまいました。最後も盛り上がらないところにむなしく響く金管にやりきれない思いがありました。
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カレル・マーク・チチョン/ラトヴィア国立交響楽団

チチョン
アルボラーダ、低音が歪んでいます。

変奏曲、ホルンも歪んでいて聞き取りにくいです。ゆっくりと歌うイングリッシュ・ホルン。歪みはかなりひどいです。

アルボラーダ、ヴァイオリンのソロとオケのアンサンブルが僅かにズレる部分もありました。

シェーナとジプシーの歌、エッジの立ったヴァイオリンのソロ。歪みっぽくて荒れた響きで、美しくありません。

アストゥリア地方のファンダンゴ、ヴァイオリンのソロとフルートのアンサンブルも合いません。

歪みがひどくて、全く美しさはありませんでした。アンサンブルの乱れも少しあって良い部分は全く感じませんでした。
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