シベリウス 交響曲第7番

シベリウスの交響曲第7番は、彼が1924年に完成した最後の交響曲で、わずか1楽章のみで構成されている非常に独特な作品です。シベリウスは、従来の4楽章構成の交響曲形式から離れ、この曲を交響詩のように「シンフォニア・ファンタジア」と名付けようとしましたが、最終的には「交響曲第7番」として発表しました。この作品は、シベリウスの創造的な円熟期を象徴しており、短いながらも深遠で荘厳な雰囲気が漂っています。

曲の構成と特徴

この交響曲は、1楽章構成でありながら、まるで複数の楽章が1つに凝縮されたような独自の形式を持っています。音楽は変化に富み、様々なテンポや雰囲気が移り変わるため、シベリウスの交響曲の集大成ともいえる充実感があります。

  1. 冒頭 – Adagio
    静かに始まる序奏部分では、弦楽器の豊かな響きが広がり、瞑想的で神秘的な雰囲気が漂います。ゆったりとしたテンポで始まり、低音部の穏やかな流れに乗って、徐々に厚みを増していきます。この冒頭の音楽は、静寂と壮大さが同居するような特別な美しさがあります。
  2. トロンボーンの主題
    曲の中盤に現れるトロンボーンの荘厳な主題は、この交響曲の象徴的な部分であり、シベリウスが用いたユニークな特徴のひとつです。この主題が登場することで、音楽は一層の重厚感を増し、神秘的で荘厳な空気が漂います。トロンボーンの堂々とした響きが楽曲全体の軸となり、ある種の宗教的な感覚をも呼び起こします。
  3. 音楽の流れとテンポの変化
    この交響曲は、シームレスにテンポが変わり、AdagioからAllegro、そして再びAdagioへと展開されます。その流れの中で、まるで一つの生命体のように音楽が自然に発展し、緩急のバランスが取れた構造を形成しています。この形式は、シベリウスならではの自然への深い愛情やフィンランドの風景のような、ゆったりとした変化が感じられます。
  4. 終結 – 静けさへの収束
    終盤に向けて、音楽は静けさを取り戻し、穏やかに終わりを迎えます。トロンボーンの主題が再び現れ、神秘的な空気を残しながら音楽は次第に収束していきます。大きなフィナーレを迎えるのではなく、まるで霧の中へと消えていくような形で終結し、聴き手に深い余韻を残します。

音楽的な特徴と評価

交響曲第7番は、シベリウスの晩年の音楽的な探求の集大成ともいえる作品で、緻密な構造と表現力が融合した独自の世界観を持っています。この曲の静かな美しさや内面的な深み、そして抑制されたエネルギーが、シベリウスの個性を象徴しています。彼はこの交響曲を「自然のリズム」とも表現しており、まるでフィンランドの静かな湖や広大な森のように、聴く者に自然と一体になる感覚をもたらします。

シベリウスの第7交響曲は、他の交響曲に比べて実験的でありながらも、音楽史に残る重要な作品とされています。特にこの曲は、20世紀の交響曲の可能性を広げ、音楽表現の新しい地平を切り開いたとして高く評価されています。

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たいこ叩きのシベリウス交響曲第7番名盤試聴記

パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

ベルグルンド★★★★★
柔らかく豊かな響きで、抑制的ですが、たっぷりと感情が込められた歌。神のお告げのようなトロンボーン。ゆったりとスケールの大きな演奏は、後のヨーロッパ室内oとの演奏では聞けなかったものです。ほの暗い雰囲気は独特のものです。絶妙なバランスで荒ぶることもありません。どっしりと落ち着いていて、テンポが速い感じは全く受けません。終結部の神々しさは素晴らしいものです。

柔らかく豊かな響きと、ほの暗い雰囲気。絶妙なバランスで荒ぶることの無い演奏でした。神々しい表現は素晴らしいものでした。

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パーヴォ・ベルグルンド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団

icon★★★★★
深いところから次第に迫りくる何かを感じさせる冒頭。続いて静かで厳かな演奏です。ゆったりとして伸びあがるようなフルートのメロディ。霧が立ち込める中から響いてくるような幻想的な音楽。力みも無く柔らかく美しいトロンボーン。スケルツォ的な部分での緻密なアンサンブル。見事な精度です。シベリウス独特の寒い空気感もはっきりと存在しています。表現も細かく付けられていて無表情になることはありません。終結部で再現されるトロンボーンは神々しい雰囲気でした。ホルンは神の声のようです。最後の分厚い響きが沈んでいくのも素晴らしいものでした。

上品で格調高く、表現力も十分でした。終結部で再現されるトロンボーンとそれに絡むトランペットなどの神々しい響きは素晴らしいものでした。

レイフ・セーゲルスタム指揮 ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団

icon★★★★★
粒のはっきりしたティンパニ。次第に迫り来るように少しクレッシェンドした上昇音階。荘厳な雰囲気の中で戯れるようなフルート。大きく歌うフルートと他の木管。分厚い響きです。トロンボーンの第一主題にはあまり神々しさは感じられませんでした。楽器の動きがとても活発です。ティンパニのクレッシェンドも金管のクレッシェンドも激しいです。三度目のトロンボーンも神々しさはありませんでしたが、その後はとても激しい表現になりました。最後も分厚く充実した響きでした。

分厚く充実した響きで、激しい表現の演奏でした。神々しさはありませんでしたが、積極的に動く演奏は魅力がありました。

コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

icon★★★★★
ドロッとしたティンパニ。音階の上昇に従ってクレッシェンドします。歌のあるフルート。とても厳粛な雰囲気で曲が進みます。まるで神を導き入れる儀式のようです。天から響くようなトロンボーンの主題が神の降臨のようで、とても神秘的です。個々の楽器の色彩がとてもはっきりしていて、激しく盛り上がる部分では目が眩むようでさえあります。中間で現れるトロンボーンは少し荒れた雲間から神の光が照らされるようでした。スケルツォ的な部分でも落ち着いた表現でした。トゥッティのエネルギー感はとても凄く強弱の振幅もとても幅広いです。再びの神の降臨のようなトロンボーンにはホルンやトランペットも従えて壮大です。そしてホルンによって残照のような響きで彩られます。

神々しいトロンボーン。色彩感豊かで激しく盛り上がる部分では目が眩むほどでした。作品そものもに語らせる演奏でしたが、これだけ見事に作品の素晴らしさを伝える演奏はそう無いと思います。

レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

バーンスタイン★★★★★
冒頭から、晩年のバーンスタインらしい非常に感情のこもった表現です。とても豊かな表現。雄弁なトロンボーン。シベリウスらしい演奏ではありませんが、振幅も大きく個性豊かな演奏にはそれなりの説得力があります。作品の持つ神々しさよりも人間臭い演奏なのですが、バーンスタインの作品への愛情を随所に感じることが出来る演奏で、この演奏はこれで良いと感じます。これだけ激しい振幅のある演奏だとマーラーのようにも聞えますが、バーンスタインの内面ではこのような音楽が鳴り響いているのでしょう。これだけ強烈な個性を表出するのは、とても勇気のいることですし、これまでの既成概念に捉われない演奏を堂々と行う強い意志もすばらしいと思います。

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ダニエル・ハーディング指揮 マーラー・チェンバーオーケストラ

ハーディング★★★★★
暗闇から湧き上るような弦。雑味が無く純粋です。大きなうねりの中からトロンボーンが出現します。北欧の澄んだ空気感があります。振幅も激しい演奏です。透明感が高く、ハーディングの指揮に機敏に反応するオケの見事なアンサンブルも素晴らしい。ティンパニの劇的にクレッシェンドも凄い!

激しい振幅でしたが、透明感が高く見事なアンサンブルの素晴らしい演奏でした。
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オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団

ヴァンスカ★★★★★

暗闇から次第にはっきりとした形を現す弦。暖かく穏やかな木管。力みが無く穏やかな自然体で伸びやかです。とても安らかな気持ちになる演奏です。大空に鳴り響く神の声のようなトロンボーン。どこを取っても余裕のある美しい響きです。激しい部分は激しいですが、それでも音が硬くなったりせず、とても自然です。

これだけ自然体で美しい演奏は素晴らしいです。
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シベリウス:交響曲第7番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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