ブルックナー 交響曲第8番

ブルックナーの交響曲第8番は、彼の作品の中でも最も壮大で神秘的な交響曲の一つで、深い精神性や荘厳な雰囲気に満ちた作品です。「オルガンのよう」と評される重厚なオーケストレーションが特徴で、宇宙的ともいえるスケールで聴く者を圧倒します。以下、各楽章について簡単に説明します。

1. 第1楽章:Allegro moderato

暗く厳粛な雰囲気で幕を開け、徐々に高まっていく壮大なテーマが提示されます。冒頭から低弦が鳴り響き、徐々に強さを増していくこの楽章には、運命的な重さと荘厳さが感じられます。ブルックナー特有の繰り返しが用いられており、宗教的でありながらも時折悲劇的な要素も垣間見えます。音楽が流れるにつれて、天上と地上が交錯するような、広がりのある空気感が漂います。

2. 第2楽章:Scherzo. Allegro moderato – Trio. Langsam

このスケルツォは、ブルックナーの交響曲の中でも特に強い印象を残す楽章です。運命的で不気味なリズムが印象的で、力強くも不安げな旋律が繰り返されます。自然の風景や森の中を連想させるような神秘的な雰囲気が漂い、ブルックナーの独自のリズムが聴き手を揺さぶります。トリオ部分では対照的に、穏やかで優雅なメロディが現れ、一時の安らぎをもたらします。

3. 第3楽章:Adagio. Feierlich langsam; doch nicht schleppend

このアダージョは、ブルックナーが自ら「心からの祈り」と評したように、深い祈りと崇高さが込められた楽章です。ゆっくりとしたテンポで、美しくも重厚な旋律が展開し、時間が止まったかのような静謐な雰囲気が漂います。心の奥深くに響くような感動的な旋律が次第に盛り上がり、最後には壮大なクライマックスに達します。この楽章は特にブルックナーの宗教的な信念や精神的な側面が色濃く反映されており、聴き手に深い敬意と感動をもたらします。

4. 第4楽章:Finale. Feierlich, nicht schnell

フィナーレはまさに堂々たる締めくくりです。重厚なオーケストラが雄大なメロディを奏で、壮大なスケールで展開します。ブルックナーの音楽の特徴である、「止まらずにどこまでも続いていく」ような雰囲気が感じられ、圧倒的な迫力と希望に満ちた結末へと導かれます。彼が持つスケールの大きさや宇宙的な視点が表現され、最後の瞬間まで荘厳な雰囲気が続きます。

全体の印象

交響曲第8番はブルックナーの交響曲の中でも最高傑作と称され、非常に精神的で壮麗な作品です。その壮大なスケールと深い宗教的な情緒は、聴き手を神聖な世界へと誘います。ブルックナーが持つ「音楽を通じて祈りを捧げる」という信念が、楽曲全体を通じて感じられる、非常に奥深い交響曲です。

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たいこ叩きのブルックナー 交響曲第8番名盤試聴記

カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★★★★
一楽章、歌心にあふれる第一主題。陰影を伴ったクラリネット。編成も大きくスケールの大きな演奏です。一転して明るく流れるように美しく歌われる第二主題。第三主題も積極的な表現です。下降音型のすさまじい咆哮。提示部も壮大な咆哮。オケに一体感があり咆哮する部分では、たまったマグマを一気に放出するようなすごいエネルギーがあります。弱音部の美しいホルン。強烈な「死の予告」。消え入るようなコーダでした。

二楽章、ゆったりとしたテンポです。ここでも表情豊かな演奏です。ホルンのすごい咆哮!ジュリーニってこんなにオケを咆哮させる指揮者だったっけ?と改めて思います。美しい木管。音一つ一つが立っていて、とてもくっきりとした表情です。古風な響きのティンパニ。色彩が濃厚でしかも輪郭がくっきりしています。芯のしっかりしたフルート。随所で表現される歌がすばらしいです。トリオでも何度かホルンの咆哮があり、起伏に富んだすさまじい演奏です。

三楽章、すごく丁寧に作品を慈しむように演奏されます。すごく感情移入されていて、この楽章も豊かな歌に満ちています。この世のものとは思えない美しいハープ。透明感のある第二主題。陰影を伴ったクラリネット。すごい静寂感があり集中力の高い演奏です。作品への感情移入に圧倒されます。美しい音楽に身をゆだねることができる数少ない演奏の一つです。12/8拍子での第一主題の咆哮も壮絶でした。最高潮のアルペッジョのすさまじい咆哮。それに続く低弦のうなりも作品への共感からのものだと思います。そして穏やかに音楽は静まって、遠い彼方に行ってしまうように終ります。

四楽章、一転して、厳しい表情の咆哮です。続く第二主題はまた作品への共感を強く感じさせます。第三主題にもちょっとした表情付けがあります。「死の行進」もすさまじい咆哮ですがとても豊かな響きです。分厚い弦楽合奏。再現部の前にも何度か激しい咆哮。再現部で再び激しい咆哮ですが暴走することはなく、きちんと整った見事な演奏です。荘厳なコーダのワーグナーテューバ。輝かしい終結でした。

作品への共感が見事に表されたすばらしい演奏でした。

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、とても静かに探るような冒頭の第一主題です。奥行き感があり深い低音に支えられた強奏。あっさりとした第二主題。豊かに歌うフルート。美しいトロンボーン。第三主題は強弱の変化がありとても豊かです。弦楽器も艶やかで美しい。弱奏では空間を感じさせる良い録音です。とても激しい壮絶と言ってもいい「死の予告」。

二楽章、速目のテンポで生き生きとした音楽です。フルートがとても良く鳴り美しい。音が立っていてオケの集中力の高さを伺わせます。強奏部分でも少し余力を残しています。強奏の後に残る残響も美しい。合間に入るハープの存在感も大きいです。テンポに推進力があり、音楽が生きています。

三楽章、夢見るような始まりから次第に現実の世界へ引き戻されます。上昇型のアルペッジョは音を短めに演奏して躍動的な表現でした。美しいハープがとても前に出てきます。天上界をイメージさせるワーグナーテューバ。ホルンの咆哮!豊かな自然をイメージさせる木管。12/8拍子になってから、波が次から次へと押し寄せるように音楽がせまって来ます。クライマックスの上昇型アルペッジョはゆったりと大きい演奏でした。夕暮れを思わせるような、どこか寂しげなコーダ。

四楽章、速目のテンポで始まりました。十分に鳴っていますが、音量は少し控え目です。第二主題の弦はシルキーで美しい。第三主題も速目で生命感を感じる推進力があります。「死の行進」も十分に鳴っていますが、全開ではありません。再現部の第一主題は途中でテンポを落としました。分厚い低音にガッチりと支えられたしっかりとした構造の演奏です。とても静かなコーダの入り。巨大なものが待ち構えている予感をさせてくれます。いろんな主題が織り交ぜられて壮大に曲を閉じました。

シルキーな弦の美しさやいろんな情景をイメージさせてくれる演奏はすばらしいものでした。

セルジュ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

チェリビダッケ ブルックナー交響曲第8番★★★★★
一楽章、非常に遅いテンポです。うごめくような第一主題。重い低音を基調にした重厚な響きが印象的です。滑らかで伸びやかな第二主題。とても豊かな響きです。テンポが遅いからかもしれませんが、とてもどっしりとしていて安定感があります。伸び伸びととても良く鳴るオケです。fffでもきっちりとコントロールされていて決して暴走はしません。「死の予告」の屈託の無い伸びやかなすばらしい響き。最後は大きくritして終りました。

二楽章、この楽章はそんなに遅くはありません。ここでも咆哮することはなく、きちんとバランスを保ってコントロールされています。トリオはゆっくりとしたテンポになりました。チェリビダッケが幼い子供に読み聞かせをしているように丁寧に細部にまで神経を行き渡らせているのが良く分かります。チェリビダッケの徹底した訓練によって作り出されたのであろうか、すばらしい響きです。

三楽章、作品に没入して行く冒頭です。天上的な雰囲気に満ちています。豊かで美しいワーグナーテューバ、まさに神の世界を表現しています。すばらしく合った響き。壮大なテュッティ。テンポは遅い。終結部も美しい和音に乗ってメロディが奏でられのがとても魅力的でした。

四楽章、堂々とした冒頭に輝かしいトランペットの響き。ハーモニーがとても美しく響きます。第三主題も一体になった分厚い響きです。非常にゆったりとした「死の行進」。テュッティは非常に重厚な響きですばらしいです。再現部も力強い響きですが、咆哮すると言うようなイメージではなく、しっかりとコントロールされています。第一楽章、第一主題の再現はものすごく遅いテンポでした。神秘的なコーダの導入。コーダの終結も非常に遅いテンポで雄大に演奏されました。

とても遅いテンポにもかかわらず音楽がギューっと凝縮されたような演奏で、美しい響きですごく完成度の高い演奏でした。

朝比奈 隆/NHK交響楽団

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一楽章、積極的な表現の第一主題。ディミヌエンドしたときの空間がとても良い雰囲気です。地から湧き上がるような低音に支えられた強奏。一転して明るい第二主題。木管も積極的に歌います。N響の編成も大きいように感じさせる豊かな響きです。下降音型のトランペットも良く鳴っています。N響もこの頃になるととても充実した響きです。展開部終盤のfffはかなり激しい響きでした。分厚い響きの「死の予告」。消え入るようなpppで終りました。

二楽章、冒頭のヴァイオリンの繊細な表現。ダイナミックの幅がものすごく広く消え入るような弱音から、咆哮まで表現の幅がとても広い演奏です。トリオのゆったりとした安定感のある響き。どっぷりと音楽に浸っていられるような演奏です。再びスケルツォ主部が戻り、充実したブラスセクションの響き。弱音の弦にも動きがありとても豊かな表情ですばらしい演奏です。

三楽章、波が緩やかにせまって、また引いていくようなヴァイオリンの主題。深い響きです。美しい木管のソロ。薄日が差し込むようなワーグナーテューバ。天が鳴り響いているようなすばらしい響きです。クライマックスはゆっくりと克明に演奏しました。音楽が時折「神の世界」を垣間見せてくれます。夕日が沈むような黄昏で終りました。

四楽章、強烈なティンパニ。他のパートもかなり力強く演奏しています。音楽が生きているかのように何かを訴えてきます。ここでも充実した響きを聞かせた「死の行進」。とてもよく歌うホルン。再現部の第一主題は最初よりも強く演奏されたようでしたが、非常に美しいものでした。コーダの繊細なヴァイオリン。終結の圧倒的なパワー感。日本人によるブルックナー演奏がこんなにもすばらしいとは、本当に驚きました。

ギュンター・ヴァント/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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一楽章、重く豊かな表情の第一主題。何かに攻め立てられるような切迫感。トゥッティでは分厚い巨大な響きが聴かれました。第二主題は柔らかくしなやかな歌です。第三主題は木目の細かい下降音型、そしてスケールの大きなトゥッティ。強烈ですが、鳴りきった美しさのあるfff。オケの上手さなのか、録音の良さなのか、とても整然としていてバランスの良い響きです。錯乱状態のような壮絶なクライマックス。静寂の中に消えていくコーダ。

二楽章、元気の良いホルンから深みのある弦の主要主題が奏でられます。ホルンの下降音型の直前に大きくクレッシェンドしました。強弱の変化が大きくティンパニも大きくクレッシェンドして、ヴァント渾身の演奏です。トリオ冒頭部分ではパイプオルガンのような分厚い響きが印象的です。ハープを含めて登場してくる楽器がとても鮮明に浮かび上がります。スケルツォ主部が戻ると再び動きのある音楽が展開されます。

三楽章、深みと厚みのある弦。ヴァイオリンの旋律と伴奏の強弱の出入りに敏感に反応しますが、強い感情移入はありません。木管楽器群はとても生き生きとした音色で登場します。充実した分厚い響き。第一主題の二回目の再現のあたりになるとかなりオケの響きも壮絶な叫び声のように激しくなってきます。輝かしく見事なクライマックスでした。分厚い弦の響きの中を縫うように演奏されるハープが美しくとても存在感があり、印象に残ります。夕日が沈むように終わりました。

四楽章、スピート感と勢いがある金管の第一主題。魂の響きのように昇華された凄味があります。一転して幻想的な雰囲気を醸し出す第二主題。歌う第三主題。速めのテンポで一気に演奏される「死の行進」も凄い迫力で迫ってきます。展開部で現れる第一主題も回数を重ねるごとに壮絶な響きになって行きます。再現部の第二主題もさすがきベルリンpoと思わせる厚い響きです。静寂の中から美しく上昇音型を演奏するヴァイオリン。圧倒的なパワーで力強く締めくくりました。

ベルリンpoの分厚い、圧倒的なパワーと弱音の美しさ。それにヴァントの気迫が加味されたすばらしい名演でした。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

カラヤン★★★★★
一楽章、暗闇の中にろうそくの炎の見えるような静かで伸びやかな第一主題。地の底から湧き上がるようなトゥッティ。明るく開放的な第二主題。トランペットが強く全体の響きを支配しているような感じです。壮絶なクライマックス(死の予告)。コーダのクラリネットは静寂の中に美しく響きます。

二楽章、力が抜けて自然な主要主題。トランペットに比べるとホルンは奥まっています。やはりトランペットが突出しています。中間部はゆったりとのどかで落ち着いた演奏です。大きな仕掛けや強い主張はありませんが、自然体で作品に身を任せたような演奏です。

三楽章、以外に鮮明な第一主題A1。自然な第二主題B1。それぞれの楽器がきりっと立っていてとても美しい演奏です。誇張が無く自然に音楽が進むので、複雑に絡む楽器の動きもサラッと何事も無く演奏されて行きます。シンバルが入ったクライマックスもとても充実した響きで見事です。

四楽章、力強く華やかな第一主題。多層的で豊かな表現の第二主題はとても厚みがあります。ひたむきに語りかけるような第三主題。「死の行進」は荒々しくは無く美しいです。第一主題の再現も荒々しくならず、とても美しいです。第二主題の再現は深く豊かな表現です。コーダは金管がことさら強奏するわけではありませんが、力強く輝かしい見事な響きで終わりました。

カラヤンの全盛期のような表面を磨き上げた演奏では無く、自然体で力みの無い演奏でした。しかし、ウィーンpoが元来持っている美しさや音楽性が見事に生かされてとても美しく見事な演奏になっていました。
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ドナルド・ラニクルズ/BBCスコティッシュ交響楽団

ラニクルズ★★★★★
一楽章、良く歌い深みのある第一主題。トゥッティもゴリゴリとした厚みがあり地獄から湧き上がるような響きです。穏やかで伸び伸びとした第二主題。金管の下降音形は鋭い響きです。金管の壮絶な響きはかなり凄いです。強烈な「死の予告」凄い咆哮です。

二楽章、速いテンポで躍動感があります。音が立っていて楽器の動きがとても克明に表現されています。くっきりとした輪郭で曖昧さがありません。

三楽章、浮遊するような第一主題のA1。前の二つの楽章で聞かせた壮絶な響きとは一転したしっかりと地に足の着いた美しい響き。夢見るようなB1のチェロ。豊かに歌うB2のワーグナーチューバ。切々と語りながら押しては引いてゆく音楽。充実した響きのクライマックス。潮が引いて行くように黄昏て行く音楽。

四楽章、金管が襲い掛かって来るような第一主題。でもバランス良く美しいです。多層的にいろんな楽器が交錯する第二主題。しみじみと語りかけるように歌う第三主題。堂々と重厚な「死の行進」。泉からこんこんと湧き上るように豊かに奏でられる音楽。トゥッティでも決して荒々しくならずに美しい響きとバランスの演奏は見事です。神の世界の扉が開かれるようなコーダ。感動的な最後でした。

トゥッティでは壮絶な響きを聞かせる部分もありましたが、それでもバランスは常に良く美しい響きを保っていました。最後は神の世界を見事に表現した素晴らしい演奏でした。
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ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団 1990年東京ライヴ

ヴァント★★★★★
一楽章、静かでどっしりとした第一主題。トゥッティは低音楽器が分厚くトロンボーンがしっかりと主張する良い響きです。明るく軽い第二主題。第三主題でも金管は強いですが、壮絶な響きにはならず。美しく整った響きです。展開部のトゥッティでもトロンボーンが見事な響きです。第二主題の再現でも余分な力が抜けた自然体の表現ですが、音楽には生命感があります。「死の予告」も混濁も無く美しい響きでスッキリとしています。

二楽章、とても明晰な演奏です。トゥッティでのクレッシェンドも全体のバランスも保ったままで見事なものでした。トリオに入ってもあまりテンポは遅くならずに進みます。大きな波が押し寄せるような音楽の動きです。オケがとても良く鳴っていて気持ちの良い響きの演奏です。

三楽章、注意深い弦の導入。フワフワと浮いているようなヴァイオリンの第一主題A1ですが、音量が上がるに従ってしっかりと地に足が付いて来ます。清涼感があって爽やかです。スピード感があって伸びやかなチェロのB2。柔らかいワーグナーチューバのB2。うねるように絡み合う楽器の動きが見事です。強弱の振幅もものすごく広く、浮遊するような弱音から咆哮する金管まで強烈な振幅です。堰を切ったように溢れ出す金管の凄さ!。シンバルが入るクライマックスも見事なアンサンブルで、キチッとしていました。コーダは良く歌って豊かな表現です。多くの演奏でこの部分で力を失って行く感じを受けましたが、この演奏はとても力のある演奏です。

四楽章、物凄い金管の咆哮とティンパニの強打。でも荒れた響きにはなりません。深く歌う第二主題。動きに力があって、生き生きとした演奏です。「死の行進」はそれまでのゆったりとしたテンポから一転して速いテンポになりました。凝縮された密度の濃い音楽です。神が登場して感動的なコーダ。眩いばかりの輝かしいトゥッティ。

素晴らしいバランスとアンサンブルの精度で、多彩な表現で密度の濃い演奏でした。神が登場する感動的なコーダの導入部分から眩いトゥッティの輝かしい終結に象徴されるような見事な演奏でした。
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ケント・ナガノ/ベルリン・ドイツ交響楽団

ナガノ★★★★★
一楽章、ゆっくりと分厚く克明な第一主題。分厚い低域がとても印象に残ります。揺れるように波打つ第二主題。新鮮で鋭利な感覚の演奏です。ゆっくとしたテンポで濃厚に音楽を描いて行きます。とても巨大な空間を感じさせる伸びやかで豊かな響きの演奏です。次々と泉から音が溢れ出すような「死の予告」。

二楽章、表情が豊かで活発に動く主要主題。細部にいたるまで細密な表現があります。透き通るような透明感の高い美しく伸びやかな響き。ライヴ録音でありながらこれだけ美しい響きは素晴らしいです。トリオもとても豊かな表現で美しく歌います。濃厚な色彩なのですが、とても伸びやかで空間がどこまでも続いているような感じで見事な演奏です。

三楽章、非常にゆっくりとしたテンポで中に浮いているような第一主題A1。ゆっくりと昇って行くA2、とても美しいです。感情が込められて深みのあるB1。穏やかな空をイメージさせるワーグナーチューバのB2。ゆっくりと丁寧に進む音楽にどっぷりと身をゆだねることができてとても心地良い演奏です。トゥッティも荒れること無くとても美しい響きです。暖かくなる第一主題の2回目の再現。シンバルが入る部分はスケールの大きな見事な響きでした。日が暮れていくような寂しさを感じさせるコーダ。

四楽章、空間に大きく柔らかく広がる第一主題。深く感情を吐露するような第二主題。柔らかいですが、深く刻み込むような第三主題。巨大な響きでどこまでも広がっていくような「死の行進」。余裕を残した柔らかい響きなのですが、心に迫って来るような迫力があります。木管も艶やかで伸びやかな表現です。とてもゆっくりと始まるコーダ。ご来光が訪れるような感じです。太陽が燦然と輝き始めて曲が終わりました。

柔らかい伸びやかな響きで、空間にどこまでも広がっていくような巨大なスケールの演奏でした。心に迫って来るような深い表現や密度の濃い表現など、どこをとっても素晴らしい演奏でした。
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サー・レジナルド・グッドオール/BBC交響楽団

グッドオール★★★★★
一楽章、遠くから近づいてくるような第一主題。とてもゆっくりです。雄大なトゥッティ。頻繁にタメがあって音楽の息遣いが感じられます。第二主題もゆっくりで、トロンボーンも余裕を残した演奏です。第三主題もゆっくりで優雅です。とても安らかで穏やかな音楽が続きます。「死の予告」も狂気のような演奏にはなりません。うるさくは無く雄大です。コーダもゆっくりと静かに消えて行きます。

二楽章、ゆっくりと確実な足取りの主要主題。ホルンも咆哮とは無縁の演奏です。この楽章でもタメがあります。トリオもゆっくりとしたテンポで自由に解き放たれたように歌います。テンポも大きく動きます。

三楽章、弱く繊細な第一主題A1。感動的に歌うA2。B1も豊かに歌います。少し響きは浅いですが、広大な空間をイメージさせるワーグナーチューバ。全く力みの無い自然体でありながら、自然で豊かな歌と雄大なスケールがとても心に残ります。全く絶叫しない金管。自然な抑揚で演奏されています。シンバルが入る部分でもトランペットは奥に控えていて絶対に突出して来ません。力みが無くとても自然で美しいコーダ。

四楽章、この楽章もゆっくりで地面から湧き上がるような第一主題。決して絶叫はしませんが、とても雄大です。ゆったりと深く歌う第二主題。第三主題もなだらかで広々とした空間を感じさせます。余裕たっぷりの「死の行進」。タメがあったりもします。何とも言えない余裕たっぷりの穏やかで広大なスケールの演奏で、どっぷりと音楽に浸ることができます。コーダも最初はとても柔らかく最後は少し力の入った演奏でした。

ゆったりと余裕たっぷりでスケールの非常に大きな演奏でした。テンポの動きもあり、歌うところは伸びやかに歌い、トゥッティでは全く絶叫することなく堂々と演奏し切った見事な演奏だったと思います。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・ブルックナー:交響曲第8番の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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