マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」

マーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」は、彼の交響曲の中でも最も壮大で、スケールの大きい作品です。特に、千人以上の演奏者が必要とされるほどの大編成であるため「千人の交響曲」とも呼ばれます。マーラー自身もこの作品を「交響曲の世界」と称し、すべての音楽要素を結集した究極の作品として位置づけました。

1. 構成と特徴

交響曲第8番は、マーラーの他の交響曲と異なり、2つの部分(楽章)から成り立っています。それぞれが独立したテーマを持ちますが、全体を通じて「神聖なる愛」と「人間の救済」が一貫したテーマとして表現されています。

第1部:賛歌「来たれ、創造主なる聖霊」(Veni Creator Spiritus)

  • 第1部は、中世のラテン語賛歌「来たれ、創造主なる聖霊」に基づき、キリスト教の神聖なる霊に呼びかける祈りのような音楽です。
  • 圧倒的な合唱とオーケストラが一体となって、壮麗な響きを生み出します。この部分は力強く荘厳で、聴く者に深い感動を与えるスケールの大きい音楽です。
  • いくつかの旋律や動機が繰り返され、次第にクライマックスに向かっていく様子は、まるで「神の降臨」を音楽で表現しているかのようです。

第2部:ゲーテ『ファウスト』第2部からの場面

  • 第2部は、ゲーテの『ファウスト』の最終場面に基づき、ファウストの魂が神の愛に救われる過程を描いています。この部分では、登場人物がオーケストラや合唱に加わり、オペラ的な要素も取り入れられています。
  • 第2部は瞑想的で幻想的な雰囲気が漂い、第1部とは対照的に内面的な探求が進められます。さまざまな声部が入り混じりながら、ファウストが神に導かれる様子がドラマティックに展開されます。
  • 最後は「永遠の女性的なもの」によって魂が救われ、壮大なクライマックスで幕を閉じます。このフィナーレは圧巻で、合唱が天に向かって昇るような響きを奏でることで、霊的な高揚感を聴衆に与えます。

2. 「千人の交響曲」とは?

  • 「千人の交響曲」という名前は、1910年の初演時にマーラーの指揮で実際に千人を超える演奏者が参加したことに由来します。一般的に、オーケストラ、独唱者8人、二重合唱、児童合唱が求められ、その規模の大きさが「千人の交響曲」として名を残すことになりました。
  • しかし、必ずしも千人が必要なわけではなく、あくまで「壮大さ」を象徴する名称として広く使われています。

3. 音楽的特徴

  • 第8番は、マーラーの他の交響曲に比べて、明るく肯定的な響きを持っています。これまでのマーラーが描いた「苦悩」や「孤独」といったテーマが影をひそめ、代わりに「救済」や「愛」という普遍的なテーマが前面に押し出されています。
  • 旋律は複雑でありながらも、親しみやすく、マーラーの特色である劇的なクライマックスが随所に登場します。
  • また、全体を通して一貫した調性(変ホ長調)で統一され、音楽の進行が非常に緻密でスムーズに進むのもこの作品の特徴です。

4. 歌詞とテーマ

  • 歌詞には、ラテン語の聖歌とドイツ語のゲーテの詩が使われ、宗教的テーマと文学的テーマが融合しています。第1部は神聖な霊の降臨を、第2部は人間の救済と神の愛を描いています。
  • 特に第2部では、ファウストの物語を通して、人間の過ちや救済が表現され、聴衆に深い哲学的・宗教的な問いかけを行っています。マーラーはこの作品を通して、人間が愛と神の導きによって「永遠の救済」に到達できるという信念を表現しています。

5. まとめ

マーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」は、彼の作品の中でも最もスケールが大きく、宗教的な崇高さと哲学的な深さを備えた作品です。合唱とオーケストラが一体となり、圧倒的な力強さと美しさで神聖な世界を描き出し、聴く者に壮大な感動を与えます。この交響曲は、マーラーの生涯における「救済と愛の賛歌」とも言える作品であり、マーラーが到達した「音楽による宇宙観」を示す傑作です。

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たいこ叩きのマーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」名盤試聴記

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

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第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」強力な合唱。金管はセッション録音と同じようにスタッカート気味に演奏しました。最後はテンポを落としました。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」テンポが良く動いて、音楽の起伏も激しく濃厚です。オケも強力にドライブします。
「われらが肉体の脆き弱さに」情報量の多い音楽。緊張感が伝わってくる静寂感。独唱のバランスやアンサンブルも良いです。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」すごいエネルギーの合唱。オケもすごい咆哮です。熱気に溢れた集中力の高い演奏です。鳥肌が立つようなすごい演奏です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」すごく強烈で壮大です。テンシュテットの癌の手術移行の演奏会はまさに真剣勝負だったのでしょう。オケもこれが最後かもしれないと言う緊張感からか、すばらしい力演を演じています。合唱もものすごいエネルギーの放出です。
「父なる主に栄光あれ」テンポを落としてソプラノ独唱でした。壮絶なクライマックス!すばらしい演奏でした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」強いアクセントで入った弦のトレモロ。弦のヒッィカート一つ一つにも力があり、木管の音も立っています。音楽の振幅が大きく、激しい部分は壮絶です。広がりのある合唱。
「永遠の愉悦の炎」明瞭で声が立つバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」金管はそんなに強くは入りませんでした。バリトンに比べると少し沈みぎみのバス。
「霊の世界の気高い人間がひとり」オケはビンビン鳴ります。抑えた女声合唱は美しい響きです。ダイナミックな表現のオケは見事に鳴ります。
「地上の残り滓を運ぶのは」枯れた響きのヴァイオリン独奏。強い声のアルト独唱。合唱と拮抗するテノール独唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」芯のしっかりとした実在感のあるテノール独唱は表現の幅も広いです。奥行き感のある合唱。テンポも動いて穏やかにゆったりとしたテンポになります。すごく感情のこもった女声合唱。すごく濃厚です。ソプラノ独唱もテンシュテットの指揮に合わせて表現の幅が広いです。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」デッドで実在感のあるソプラノとアルト独唱。地面が割れて湧き出すような金管。表現が統一されていて一体感のある重唱。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」明るいソプラノ独唱。途中でテンポを落として、濃厚に克明に表現します。遠くから柔らかく響く聖母。
「悔い改むる優しき方がたよ」感情の込められたテノール独唱。テンポを落として強い彫琢を刻みます。ティンパニの強烈なクレッシェンドがあったり、凄い表現です。
「移ろい行くものは なべて」ゆっくりとすごく抑えた消え入るような合唱です。合唱が全開になるクライマックス。ホルンも全開です。最後は壮絶な響きでした。

テンシュテットがまだ元気だった頃のすばらしい演奏の記録です。すごい表現力と振幅の大きな音楽は見事でした。
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サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団

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第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」はち切れんばかりに軽々と鳴り響きます。もの凄いエネルギーの放出!
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」ソプラノ独唱もオンマイクで鮮明に録られています。バックで静かに歌う合唱も実在感があります。重唱も克明です。ビンビン鳴りまくるトロンボーン。鐘の音もリアルです。
「われらが肉体の脆き弱さに」艶やかなヴァイオリン独奏。これだけ大きな編成にもかかわらず、非常に鮮明に録音されていて、いろんなパートの動きが手に取るように分かります。とても引き締まった筋肉質の演奏です。余分な響きを伴わないシャープな響き。ただ、録音された時代の技術的な限界か、最弱音のレベルを高めに設定していて、実際のダイナミックレンジはそれほど広くはありません。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」この時代にこれだけ鮮明な録音が実現していたことに驚きます。寸分の狂いもない完璧なオケと朗々と歌う独唱陣。この鳴り渡るオケに負けない豊かな声量の合唱。どれをとってもとにかく素晴らしい。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」輝かしい第一主題の再現。独唱はオケに比べて大きめの音量でミキシングされています。とにかく気持ちよく鳴り響くオケです。
「父なる主に栄光あれ」児童合唱に続いて、声量豊かなソプラノ独唱。暗闇に光り輝く神が現れて一面を眩く照らすような神々しい雰囲気がありました。「大宇宙が響き始める様子」を見事に再現し一気呵成に第一部を聴かせてくれました。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り」鋭い弦のトレモロ、空気を震わすコントラバスのピチカート。くっきりと浮かび上がる木管。筋肉質のホルン。美しいシンバルの弱音。音楽の輪郭をくっきりと描き出し、曖昧さの一切無い明快な音楽です。竹を割ったようなすっきりと割り切れた音楽が、この作品のように「生」を肯定的に表現した音楽にはぴったりです。
「永遠の愉悦の炎」表情の幅が広いバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」輝かしいトランペット。バスの独唱の後ろでも遠慮なく演奏されるオケ。独唱のバランスを録音で上げているので問題ないですが、実演では完全に独唱をかき消していると思います。
「霊の世界の気高い人間がひとり」トランペットが児童合唱に遠慮なくクレッシェンドします。児童合唱は天使と言うよりはもっと現実的な歌声です。児童合唱をかすめ通るブラスセクションの上手さには舌を巻きます。とにかくすばらしい。
「地上の残り滓を運ぶのは」艶やかなヴァイオリン独奏。豊かなアルトと児童合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」伸びやかなテノール独唱。テノールとホルンのアンサンブルもぴったり。すばらしいテノールの歌唱力。とにかく良く鳴るトランペット。ハープに乗る弦もとても現実的です。波が押し寄せるような合唱に続いてオケに溶け込むソプラノ独唱。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」くっきりと浮かび上がるソプラノ独唱。突然立ち上がる金管。ヴァイオリンと独唱の美しい絡み。独唱の間でもオケの動きははっきりと聞き取れます。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」やはりすごく現実的な児童合唱。厚く深みのあるコントラバス。
「悔い改むる優しき方がたよ」地面から湧き上がるような合唱とオケのテュッティ。強力なテノール独唱。次から次からパートが変わって押し寄せる合唱。そしてブラスの強烈な絶叫。
「移ろい行くものはなべて」一体感のある合唱。空気を突き破って届くブラスの咆哮。宇宙が鳴り響くような見事なブラスの響き。壮大なクライマックス!

現実的すぎる部分も若干ありましたが、オケのパワーを如何なく発揮したすばらしい演奏でした。

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

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第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」豊かな残響の中伸びやかな合唱が響きます。スタッカートぎみのトランペット。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」距離感のある独唱。ステージ上にいる独唱を客席の少し後ろで聞くような良い音場感です。とても美しい合唱の弱音部。表現も豊かです。ティンパニの打撃に間があります。沈み込むようなホルンの咆哮。
「われらず肉体の脆き弱さに」マットなヴァイオリン独奏。どのパートも豊かな表情です。テンポも動きます。テンシュテットの作品への共感が伺われます。とても柔らかい表情の独唱。同じようにソフトにサポートするオケ。とても良い演奏です。
「そが光にてわれらが感ずる心を高めたまえ」テュッティで合唱が豊かに広がり、ブラスが突き抜けてきます。重量感のあるパイプオルガンが存在を主張します。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」包み込むような豊かな合唱がとても心地よい雰囲気です。
「父なる主に栄光あれ」テンポが動いてとても強い感情が込められているようです。最後はritして終えました。パイプオルガンのペダルの音に乗る輝かしいブラスセクション。「大宇宙が響き始める」音楽でした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」繊細な弦のトレモロ。憂鬱な雰囲気を醸し出す木管。静寂の中から次第に音楽が盛り上がり、また波が引いて行くように静まります。表現力豊かなホルンの強奏。小さくピンポイントで定位するチャーミングな表情のフルート。聴き手を引き付ける合唱の弱音。とても神秘的な雰囲気がピーンと張り詰めていて見事です。
「永遠の愉悦の炎」とても自然なバランスのバリトン独唱。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」バスの独唱とバックのオケの絶妙のアンサンブル。とても美しいオケの響き。
「霊の世界の気高い人間がひとり」児童合唱もとても整然として整っていて非常に上手いです。
「地上の残りの滓を運ぶのは」ここでも天空から降りそそぐような児童合唱がとても良いです。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」豊かな声量で訴えかけてくるテノール独唱はすごい表現力です。天国を感じさせるハープとオケの演奏。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」アルト独唱も表現の幅が広い。この演奏では木管楽器がとても魅力的な音を聴かせてくれます。
「傾けさせたまえ、世の類いない聖母さま」児童合唱がとても優秀です。場面によってガラッと声質を変えます。ソプラノも遠近感があるような歌唱が見事です。
「悔い改むる優しき方がたよ」地面から湧き上がるような合唱。空を舞うような児童合唱。とても色彩豊かなオケ。
「移ろい行くものはなべて」神秘的な女声合唱が独唱と相まって複雑なハーモニーを奏でます。パイプオルガンに乗っかる合唱が生への賛歌を歌い上げます。最後は大きくクレッシェンドして壮大なクライマックスでした。

見事にこの作品を描き切りました。すばらしい演奏でした。

エド・デ・ワールト/オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団

ワールト★★★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」豊かな響きを伴って壮大に響きます。凄く大きい編成のような感じがします。金管の響きも輝かしい。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」太い声のソプラノが感情を込めて歌います。独唱に合わせて抑揚のある合唱。金管の輝かしい響きはすばらしい。ゴツい響きの鐘。
「われらが肉体の脆き弱さに」一つ一つの音の動きがとても鮮明です。盛り上がる部分もしっかりとした音量で盛り上げました。細かく動く部分は残響が多いのもあってか、あまり緊張感はありません。金管はとにかく良く吹きます。太い声のバス。奥から突き抜けて来る金管。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」豊かに広がる合唱。バランス良く響き渡る金管。独唱も柔らかく溶け込んでいます。とにかく壮大です。ホールいっぱいに響き渡るスケール感は見事です。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」充実した分厚い響き。まさに大宇宙が響き始める様子です。
「父なる主に栄光あれ」感情の込められた独唱。合唱が入ると一気に空間が広がります。すばらしい演奏でした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」緩やかな導入。ゆったりとしたテンポで伸びやかに歌う木管。さらにテンポを落として濃厚に刻み付けて行きます。オケを大きく鳴らして振幅の大きな表現。ピーンと通るフルート。
「永遠の愉悦の炎」柔らかいバリトン独唱。起伏の大きな歌唱です。終盤にオケも大きく盛り上がります。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」盛り上がりを引き継いだトランペット。バスの独唱も柔らかい。合い間のオケも十分な存在感です。
「霊の世界の気高い人間がひとり」潤いがあって豊かな響き。天使の歌声のような女声合唱。見事に気持ちよく鳴るオケ。
「地上の残り滓を運ぶのは」美しいヴァイオリン独奏の後ろで揺れ動く女声合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」柔らかく語り掛けるようなテノール独唱。透き通るようなオケの響きが美しい。女声独唱も伸びやかで柔らかく美しい。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」ゆったりと非常に伸びやかで瑞々しいソプラノ独唱です。オケの響きもとても美しい。轟き渡るトランペット。立体感のある音場空間。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」残響を伴って美しいソプラノ独唱。マンドリンもキラキラとした響きで美しい。高音域も伸びやかで豊かな声量のソプラノ独唱でした。さらに遠くから豊かな残響をともなった聖母。
「悔い改むる優しき方がたよ」柔らかく太いテノール独唱。スケール大きく盛り上がるオケ。美しい弦。壮大な合唱。音の洪水のように次々と湧き上がる音楽。ビンビン鳴るトロンボーン。
「移ろい行くものは なべて」ゆっくりとしたテンポで厳かな雰囲気の合唱。突出するソプラノ独唱。揺れのある音楽。力強い合唱。鳴り渡る金管。この曲を結ぶにふさわしい壮大な終結でした。

残響豊かなホールで、とてもスケールの大きな演奏は、まさに大宇宙が響き始める様子でした。すばらしい演奏だったと思います。
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ベルナルド・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1988年

ハイティンク★★★★★
第一部、「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」すごく編成が大きいような壮大で深い響きです。
「いと高きにある恵みにて満たしたまえ」とても良く響く独唱陣。オケも気持ちよく鳴り響きます。
「われらが肉体の脆き弱さに」遠くから響くような合唱。細く美しいヴァイオリン独奏。全体の響きに溶け込む独唱。奥行き感のある鐘。表現が締まっていて、とても俊敏に反応するオケ。
「そが光にて、われらが感ずる心を高めたまえ」緊張感のある心地よい響きです。
「現れたまえ、創造の主、聖霊よ」すごいエネルギー感。輝かしいブラスの響きもすばらしい。深い合唱の弱音。
「父なる主に栄光あれ」すごく声が伸びるソプラノ独唱。合唱に奥行き感があって立体的な空間演出です。最後は圧倒的なすばらしい響きでした。

第二部、「ポコ・アダージョ(森の梢揺らぎて靡き寄り)」すごく抑えた弦のトレモロ。続く部分も抑えた音量で、和音も見事に響きます。テンポも動いて、ゆったりと濃厚な表現もします。一つ一つの音に力があって、とても深い音楽です。弱音は消え入るように注意深く演奏されます。
「永遠の愉悦の炎」豊かな歌声のバリトン。揺れがあってとても音楽的です。
「わが足もとで、岩の断崖が重たく」しっかり金管が出てきて色彩がくっきりしています。朗々と感情を込めて歌うバスの後ろで動くオケも攻撃的に出入りしていて、すごくメリハリの効いた音楽です。
「霊の世界の気高い人間がひとり」ホールの響きを伴って豊かな女性合唱。オケが色彩豊かに響きます。気持ちよく鳴り響くブラスセクション。
「地上の残り滓を運ぶのは」細身で静かなヴァイオリン独奏。柔らかいアルト独唱。美しい女性合唱。
「ああ、世界を統べたもう最高の女王よ」伸びやかなテノール独唱。オケも色とりどりの色彩で独唱を支えます。登場する楽器がきりっと立っています。細身で艶やかなヴァイオリン独奏。優しく穏やかなソプラノ独唱。
「パリサイ人の嘲りにもかかわらず」響きを伴って伸びやかなソプラノ独唱。オケの色彩も深く濃厚です。金管も奥深くから響くような感じです。表現力豊かな重唱。
「傾けさせたまえ、世に類いない聖母さま」奥行き感を感じさせ豊かな児童合唱。振幅の大きいソプラノ独唱。天からかすかに聞こえるような聖母の歌声。
「悔い改むる優しき方がたよ」湧き上がるようなオケと合唱の響き。表現の幅が広いテノール独唱。クライマックスへ向けて次第に熱気が込み上げてきます。オケが軽々とすごいパワーを見せつけます。
「移ろい行くものは なべて」神秘的で深い合唱。ゆっくりとこの曲の最後を味わうような弱音部。鳥肌が立つような凄いエネルギーで壮大なクライマックスです。

すばらしい統率力でこの大曲をまとめ上げたハイティンクの手腕は凄いものです。オケも独唱、合唱も上質で極上のものですばらしい演奏でした。
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巨匠たちが残したクラシックの名盤を試聴したレビュー ・マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」の名盤を試聴したレビュー

投稿者: koji shimizu

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