目次
たいこ叩きのベートーヴェン 交響曲第2番名盤試聴記
クラウス・テンシュテット/ボストン交響楽団
★★★☆
一楽章、この全集の中では、ボストン交響楽団との共演のものは、比較的端正な出来だと思います。
他のオケとのような大暴れは少ないような気がします。
響きも欧州の一般的なオケのようなマイルドな響きで、血が飛び散るような強烈な音ではありません。いつものテンシュテットのように大きくテンポを動かすこともなく今のところは進んでいます。
二楽章、とても穏やかな音楽です。テンシュテットは音楽の振幅がもの凄く激しい指揮者ですが、激しい方向への振れは大きいですが、穏やかな方向へはあまり深く振れない傾向のように私は思っていますが、この演奏はとても穏やかな面を聴かせてくれています。
それでも、切々と語りかけてくる部分はさすがに迫るものがあります。
三楽章、
四楽章、動きのある曲の表情はとても豊かです。ボストンsoとの演奏は、テンシュテット持ち前の凶暴さは抑えられるかわりに、節度ある紳士的な演奏になるところは、意外な魅力です。
朝比奈 隆/北ドイツ放送交響楽団
★★★☆
一楽章、古めかしい音ですが演奏には凄みが感じられます。低弦が唸りを上げています。若い頃の朝比奈の意気込みが感じられる演奏です。激しい演奏でした。
二楽章、強弱の変化など晩年の演奏にはない積極的な表現です。
三楽章、この楽章も積極的な音楽運びが印象的です。
四楽章、息つく暇も与えずに一気に演奏した感じでした。
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
★★★
一楽章、ベートーベンでも、この頃の作品だったら、もっと響きが薄い方が合っているような気がするのですが、カラヤンの世界では、分厚い響きです。
この全集はどの曲も速いようです。まるで、現代の最高水準だと、これだけの演奏が出来るんだ!と見せびらかすような感覚さえ覚えてしまうのは、私の性格の悪さでしょうか。
幻想交響曲では、むしろ遅めのテンポでオケを完璧にドライブした名演だったと思うのですが、ベートーベンがなぜにこんなに速くなくてはいけないのか?
それでも、このテンポと音楽にオケがピッタリ付いてきているのは、さすがにカラヤンです。アーティキュレーションにもオケ全体が反応して、ひとつの音楽をしているのはすばらしいことです。
二楽章、現代の都会へ行けば行くほど水が濁るように、ベルリンpoの音は濁っていて底まで見通すことができません。
表面で鳴っている音は綺麗なのですが・・・・・。
この時代の作品であれば、編成を小さくしても、響きの透明度を求めるべきではないかと、個人的には思います。
この全集で感じるのは、編成を大きくして響きが分厚くなっているのに、演奏のスケールが小さいことがとても気になります。
カラヤンのブルックナーはまだ聞いたことがないのですが、こんなにスケールの小さい演奏でブルックナーをやられたらたまりませんね。
三楽章、表現は控えめで節度があります。
四楽章、一糸乱れぬ見事な演奏でした。
ロブロ・フォン・マタチッチ/NHK交響楽団
★★★
一楽章、あまり飾りっけがないけれども、骨組みのしっかりした演奏です。
N響の深い響きも魅力的です。1970年代の第九に比べると格段の進歩が伺えます。
二楽章、同じN響でもデュトワが指揮するときとは、響きの重さがかなり違います。もちろん取り上げる作品も違うので、響きが違うのは当然ですが、マタチッチの響きは重量感があります。
反面、色彩感や華やかさには乏しい感じはあります。この演奏では響きがマットな感じです。
三楽章、太い筆で描かれていくような豪快さで、優雅さとは隔絶しています。
四楽章、野太い音楽です。表面の美しさを求める演奏ではありません。
ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団
★★★
一楽章、勢いのある打撃でした。研ぎ澄まされた刃物のような鋭く輝く響き。大きな歌などは無く、淡々と流れて行きます。
二楽章、淡々としていますが、切々と迫って来ます。
三楽章、緻密な弦のアンサンブルですが、禁欲的と言うか、ほとんど歌わないので、精密機械のようです。
四楽章、音楽に躍動感が無く、表面だけが動いているような感じがします。コーダから加速して凄い勢いです。
コーダの凄い勢いを印象付けるために、その前を淡々と無表情に演奏したかのようでした。四楽章のコーダまではほとんど印象に残らない演奏でした。
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フランス・ブリュッヘン/オランダ放送室内管弦楽団
★★
一楽章、ゆったりと厚みのある響きです。そんなに速くはない第一、第二主題。現代楽器のオケの柔らかい響きで弦もビブラートを掛けている中でティンパニだけが、バロックティンパニで使うような木のマレットで硬い音で叩いているのに違和感があります。あまり歌うことも無く、強弱の変化にも敏感に反応しないですし、淡々とした平板な印象の演奏です。
二楽章、あまり音量を落とさない第一主題。演奏しやすい音量で演奏しているようで、緊張感はありませんが厚みのある暖かい響きは美しいです。表面が強い強弱の変化が無くなだらかに均されたような、サラサラと流れるような音楽です。
三楽章、この楽章もあまり速いテンポではありません。どうしても緩い感じが付きまといます。
四楽章、腰が重い感じで、反応が鈍い印象です。最後の音が異常に小さかった。オケが出るのを躊躇したような最後でした。
厚みのある美しい響きでしたが、強弱の反応が敏感では無く、腰の重い、鈍い演奏でした。ベートーベンの音楽を聴いている感じはありませんでした。
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ジェイムズ・ロックハート/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
★
ミスもないし、ケチをつける必要もないとは思うのですが、私の聴き方には合わない演奏だったと思います。
集中力が音になって現れてこないと、こちらも聴く気持ちが薄らいできます。残念ですが、私はこの全集を再度聴くことはないだろうと思います。
グスタフ・クーン/ボルツァーノ・トレント・ハイドン管弦楽団
★
一楽章、確実な足取りの序奏。そのまま大きくテンポを速めずに進む第一主題。この指揮者の演奏はどれもそうなのですが、スピード感やダイナミックな強弱の変化が無く起伏に乏しい音楽で、聞きようによっては、緩い演奏に聞こえてしまいます。
二楽章、静かに淡々と進みます。ほとんど起伏の無いのっぺりとした演奏です。特別なことは何もしない演奏は、楽譜に忠実だともいえますし、誠実な演奏だとも言えますが、私にとっては退屈な演奏です。
三楽章、速めのテンポで始まり、トリオでテンポを落としました。ほとんど表情が無く、緩いです。
四楽章、常識的な範囲を決して逸脱しない演奏には安心感もありますが、ワクワクするような期待感も無い演奏には魅力を感じることはできませんでした。
個性を感じることはできませんでした。緩い演奏です。
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リッカルド・ムーティ/ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団
★
一楽章、ゆっくりとした二打。落ち着いて、しっかりとした足取りです。テヌートぎみに演奏した第二主題。時折すごく古めかしい音がします。強弱の変化にはあまり敏感な反応は無く、ベートーベン独特のバネのような強靭な音楽ではありません。
二楽章、ねばったり、深く歌ったりすることは無く、あっさりと進みます。
三楽章、速めのテンポなのですが、残響成分が少ないのか、響きに豊かさがありません。
四楽章、デッドな録音のためか、音が近く、溶け合いません。強弱の変化も控えめで、響きも薄くあまり魅力を感じる演奏ではありません。
響きが薄く、デッドで、音が近く溶け合わない響きは聞いていてちょっと辛かったです。演奏も、強弱の変化などに対しても敏感に反応することは無く、ベートーベンらしいバネのような音楽は聞けませんでした。
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